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2017年おすすめ作

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カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2019年9月 7日 (土)

百舌シリーズ完結か~。それにしても長く続いたシリーズであった。

Photo_20190906233701 「百舌落とし」 逢坂剛(集英社)

1986年に「百舌の叫ぶ夜」が出版されて以来,30有余年。ほぼ私の社会人生活とも同期が取られる長きに渡って出版されてきた「百舌」シリーズの完結編である。思えば,私は逢坂剛の本は,「カディスの赤い星」を皮切りに,この百舌シリーズのみならず,イベリア・シリーズ,禿鷹シリーズ,岡坂神策シリーズ等,結構な数を読んできた。まぁ,結局のところ,逢坂剛のストーリーテリングのファンだったと言ってよいだろう。そうした中で,この「百舌」シリーズもテレビ・ドラマ化されたり,映画化されたりしたが,映画は機内エンタテインメントで見て,酷評した私だが,書物の方は,いいものもそうでもないものもありながら,ずっと読ませ続けてくれる作品だったと思う。

その「百舌」シリーズの完結編であるが,先日ここにアップした「ノースライト」に比べると,あっという間に読み終えてしまったのには結構驚いてしまった。ページをめくらせる力はまだまだ健在と思わせるが,ストーリーにはちょっと無理がある気もした。シリーズ完結というからには,まぁこういう結末かなぁと思っていた通りの展開ではあったが,非常に面白く読むことができたのは,やっぱり好きだからだろうなぁ。

長年のシリーズにおいて,登場人物の造形が変わることはないので,今回もお馴染みのキャラクターが,お馴染みの感じで登場して,ストーリーが展開されるが,前作との間隔が長くなり過ぎたり,シリーズ前半のストーリーの記憶が薄れているため,なんでそうなるの?みたいな部分がない訳でもない。しかし,そうは言っても,映画的な感覚を持っていて,読んでいて面白いシリーズだったなぁと改めて思った次第。まぁ,今回の作品は完結を記念して甘いと思いつつ星★★★★としてしまおう。いやいや,それにしてもお疲れさまでした。

2019年8月25日 (日)

横山秀夫の本にしては読了に時間が掛かってしまった「ノースライト」

Photo_20190822170501 「ノースライト」 横山秀夫(新潮社)

横山秀夫の本は大概の場合面白い。「クライマーズ・ハイ」然り,「64」然りなのだが,この本については,読了に無茶苦茶時間が掛かってしまった。一言で言えば,サスペンスが盛り上がらないというか,ストーリーの回り道の多い前半のリズムが私には合わなくて,全然ページをめくる手が進まなかったというのが実態なのだ。後半になってやや持ち直すのだが,全体を通して言うと,私が期待した横山秀夫の作品とは異なるものだったとしか言いようがない。

横山秀夫の本ならば,これよりずっと優れた作品があるというのが実感であり,ブルーノ・タウトにこだわり過ぎたっていうのが正直なところ。結末もちょっとねぇ...ってことで星★★★が精一杯。

2019年8月15日 (木)

久しぶりに本を読んだ:「むらさきのスカートの女」

Photo_20190812121101 「むらさきのスカートの女」今村夏子(朝日新聞出版)

現在の住まいに引っ越してからというもの,通勤環境の変化もあって,昨今はあまり本を読まなくなってしまった私であるが,久しぶりに読んだのがこれである。第161回の芥川賞を受賞した作品として,結構注目された作品だろう。

なかなか面白いストーリーだと思うのだが,シュールな展開と言ってもいいかもしれない。「むらさきのスカートの女」をストーカーのように追う一人称の「私」の感情にストーリー中の変化はない一方,「むらさきのスカートの女」の生活パターンの変化により,誰がまともで,誰がまともでないのかがわからなくなるというところに面白さがあると言ってもよい。そういう意味で,私は全然作風は違うが,一体誰が一番の善人なのかと考えさせられた吉田修一の「悪人」をちょっと思い出したりしていた。

淡々とストーリーが展開する前半から,激しくストーリーが動く後半と,展開はよく考えられているように思える。そうした意味ではエンタテインメント性を持った純文学と言ってもよいかもしれない。だからと言って,今村夏子の既出の作品まで読みたいという気持ちにまではさせてもらっていないが,読む人によって,いろいろな解釈ができてしまうところが面白いところである。いずれにしても,この一人称で語るような人間とは絶対お近づきになりたくないが(笑)。そういうかたちでも感情移入させるところがうまいんだろうなぁ。星★★★★。

2019年4月 2日 (火)

くすっと笑える一方,しんみりもさせてくれる「続 横道世之介」。

Photo_14 「続 横道世之介」吉田修一(中央公論新社)

久しぶりの本のネタである。本作に関しては,前作での展開を知る人間にとっては,まさかの続編の登場であった。本編の「横道世之介」は私も好きな本で,2010年のベストにも選んでしまったぐらいだ。吉田修一という作家は面白くて,実にシリアスな本を書くかと思えば,「横道世之介」のような本も書いてしまうところがユニークである。あまりに「悪人」や「さよなら渓谷」等とのトーンの違いは,本当に同じ作家かと思わせる(記事はこちら)。

今回も前作のトーンは引き継ぎながら,本の中にも出てくる「善良」なるキャラクターとしての横道世之介の姿が淡々と描かれるが,くすりと笑わせてくれる一方,本の後半なんて,私はカフェで読みながら実はしんみりとしてしまっていた。これは時節柄というか,私個人の現在の心象を反映してしまったかなと思えるところもあるが,それでもこれは面白い本であった。

この本の魅力は出てくる登場人物が全て善良に思えるという,性善説に則ったようなところにあって,自分で言うのもなんだが,強面の割にお人好しな私の性格に訴求してきてしまうのである。過去と現在が交錯する描き方となっているが,ここでは経緯が描き切れていない部分があるのも事実であるが,そこは読者の想像力で補えってことと解釈しておこう。

実に爽やかな読後感を与えてくれるこういう書物は,殺伐とした現代にとって実に貴重なものだと言いたい。大いに楽しんだ私である。星★★★★☆。好きだなぁ,こういう本。って前作にも同じような感想を書いているが,やっぱり好きなのだ(笑)。

2019年1月16日 (水)

ようやく到着:Norman SeeffによるJoni Mitchell写真集

"Joni: The Joni Mitchell Sessions" Norman Seeff

Joni発注していた写真集がデリバリーされた。これまで,Norman SeeffはJoni Mitchellのアルバム・ジャケットも飾っており,"Hejira"のカヴァーのポートレートが最も知られているところだろう。Norman Seeffって人は,写真に個性が出る人で,あぁ,これってNorman Seeffだよなぁ,あるいはNorman Seeffっぽいと感じさせる。そんなNorman SeeffはJoni Mitchellと1972年以来,15年間に渡ってフォト・セッションを行ったが,それを集成したのがこの本ということになる。昨年はJoni Mitchellの生誕75周年だった訳だが,それとも同期してのリリースってことになるのだろう。

ここに記録されたJoni Mitchellのイメージを一言で言えば,カッコいい。写真を眺めていて,アーティストとしての存在感が強く出ているなぁと感じざるをえない。

本のサイズが結構でかくて,収納場所に困ってしまうが,これはJoni Mitchellファンであれば,必携の写真集。ということで,Norman Seeffのサイトから販売しているプリントとポスターのイメージを拝借して貼り付けておこう。

Joni_sessions_3

Joni_sessions_2

2018年12月 8日 (土)

随分と印象が変わってきた平野啓一郎:「ある男」

「ある男」 平野啓一郎(文藝春秋)

Photo平野啓一郎が「日蝕」でデビューした時,なんと敷居の高い小説だろうと思ったのも随分前のことだが,その後,「決壊」のようなキリキリするような話を書いたかと思えば,「マチネの終わりに」のような恋愛小説を手掛けて,私の中で,この人の印象は随分と変わってきた。その平野啓一郎が「マチネの終わりに」に次いで発表した小説を先日読み終えた。

一言で言えば,随分この人の書く小説はわかりやすくなったと思う。そして,この本,非常に面白く読める。「愛したはずの夫は、まったくの別人であった。」というキャッチコピー通りの展開なのだが,そこに挿入される主人公である弁護士,城戸の夫婦間のやり取りや,その他の登場人物の造形が一つ一つ考えさせられるところがある。やや,ストーリーの展開に,そんなことあるか?と思わせる部分もあるが,そこは話の面白さに目をつぶることとしよう。

ネット上では,主人公の城戸が,在日三世から帰化をしたというプロファイルに文句をつけているネトウヨみたいな連中もいるが,そうした設定がなければ,ヘイト・スピーチに関するくだりも全く意味をなさなくなる。そもそも作家が自身の思想や考え方を小説に投影して何の問題があるのかと思ってしまうが,そうした社会の不寛容さが,この小説を執筆する際のボトムラインにあったのではないかと思ってしまう。

いずれにしても,ストーリーの展開についついページをめくらされ,そして,読後感はある種の清涼感を覚えさせるのは「マチネの終わりに」同様である。感情移入の点では,私にとっては「マチネの終わりに」の方が好きだが,この小説もよくできていると思わせてくれて,満足感のあるものであった。星★★★★☆。結局,この人の小説は,私にフィットするってことかもしれないなぁ。

2018年11月 1日 (木)

「ガリレオ」シリーズ久々の新作:相変わらず面白いねぇ。

「沈黙のパレード」 東野圭吾(文藝春秋)

Photo_2「ガリレオ」シリーズの長編としては「真夏の方程式以来なので,7年ぶりぐらいってことになるはずである。私はなんだかんだ言って,このシリーズと加賀恭一郎シリーズはついつい買ってしまうが,今回も面白く読ませてもらった。

昨今の東野圭吾の小説は映像化が前提みたいになっているのではないかと思える部分もあるが,本作なども,映像化にはぴったりのネタが揃っているし,かつ映像化された時のキャスティングはどうなるのかなんてついつい考えてしまう。本作最大の悪役は誰が演じるのかが興味の焦点と言っては言い過ぎか(苦笑)。

いずれにしても,理系出身者らしい東野らしいトリックだよなぁなんて思うのは毎度のことだが,やや登場人物が多くて戸惑う部分もある。しかし,加賀恭一郎シリーズ同様,東野圭吾のストーリーにはそこはかとなく「人情」が通奏低音のように流れているところが人気の所以かもしれない。まぁ,もう少し「ピカレスク」な部分があってもいいように思うが,そういう時代ではないのかもしれない。

私としては「真夏の方程式」よりは面白かったって感じだな。ってことで,星★★★★。

2018年8月14日 (火)

出張の道すがら読んでいた「パット・メセニーを聴け!」

「パット・メセニーを聴け!」 堀埜 浩二(ブリコルール・パブリッシング)

Photo先日のバングラデシュの出張時に気楽に読める本を持って行こうと思って,出張前に買った本である。「~を聴け!」ってのは,亡くなった中山康樹の専売特許かと思っていたら,新たな人が出てきているってことだな。

まぁ,私も長年のPat Methenyのファンな訳で,この本に取り上げられている音源のかなりのものは保有している。そうした中で,やはりどうしても好みというのは出てくる訳であるし,何でもかんでもPat Methenyであればよいと言うつもりも毛頭ない。

それに対して,この人の論調は,あまねくPat Methenyの音楽,ディスクは優れていたり,聞きどころがあるという感じで,ほんまか?と言いたくなってしまう。まぁ,本人も「ありえたかもしれない,ライナーノーツの一気読み」なんて書いているが,ライナー・ノーツそのものにはそれこそあまり批評性はなく,美点を見出だすことに主眼が置かれることを考えれば,この本の論調自体にも問題はないのかもしれない。

しかし,やたらめったら名作,傑作,必聴とか言われると,私としては冷める。例えば,私はMetheny/Mehldauは,Brad Mehldauが遠慮し過ぎていて,あまり評価していないのだが,そういうところには目が全く向いていないところに限界を感じるし,"Zero Tolerance for Silence"や"Sign of 4"すら,著者にとっては興奮の材料なのかと思うと,へぇ~とならざるをえない。明らかに著者が評価していないのがTony Williamsの"Wilderness"ぐらいではないかとさえ思えてしまうのが,私にはさすがに行き過ぎではないかと思えるのだ。

大変な労作だとは思うが,中山康樹が持っていた批評性とユーモアがここには感じられないのが残念。そもそも老眼が厳しくなる私のような年寄りに,このフォントの小ささは苦痛でしかないということははっきり言っておこう。

そうした中で,明らかな校正もれがあるのは,書籍としては決定的な難点。だって,冒頭から早速誤植だもんねぇ。まぁ,あまりにマニアック過ぎて,校正者としてはついていけなかったのかもしれないが...(苦笑)。星★★★。

2018年5月31日 (木)

原尞の14年ぶりの新作なのだが...。

「それまでの明日」 原尞(早川書房)

Photo主題の通り,原尞による14年ぶりの新作小説である。探偵沢崎の復活は,嬉しい限りではあるのだが,正直ってこの話はどうも面白みに欠ける。前半こそ,おぉっ,ハードボイルドだねぇと思わせるのだが,段々話がだらけてくる。最後は人情小説みたいになってしまい,何じゃそれはということで,ページのめくりがどんどん遅くなっていった私である。

沢崎が時代錯誤のようなヘビー・スモーカーってのも気になるが,馴染みのキャラも出てくることの無理やり感が強く感じられるのも難点。これはちょっと厳しいし,がっくりきたというのが実感。前半に免じて星★★とするが,次作が出ても買うのを躊躇するかもしれないって感じなのだ。

原尞が次なる作品を世に問うのか,これを以て引退とするのか微妙なところではないかって感じること自体が,長年の読者としては残念。そんな作品である。

2018年1月 9日 (火)

正月休みに読んだ「屍人荘の殺人」だが...。

Photo「屍人荘の殺人」 今村昌弘(東京創元社)

正月休みを使って読んだのが,「このミス」ほかで絶賛されているこの本。気楽に読める本と思って年末に買ったものだが,う~む...。

本格ミステリーとしては論理の組み立てに矛盾はないので,そうした点に注目しながら読んでみると面白いのかもしれないが,この設定はさすがに...って感じであった(ネタバレになるので,詳しく書けない)。ある意味,この設定はギミックそのものであり,次作は一体どうするのよ?と言いたくなるストーリーである。まぁ,そこそこ面白くは読ませてもらったが,この訳のわからない設定を用いなければ,業界ランキングで評価されないのだとすれば,それは実は不幸なことではないかと思わされた一冊。全面否定はしないが,さすがにこれは無理があった。星★★★で十分だろう。

この手のランキングに頼るよりも,自分の審美眼を信じて本は買った方がいいねという事例。特に私の場合は「このミス」とは相性悪いねぇ(苦笑)。

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