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カテゴリー「Brad Mehldau」の記事

2019年11月 1日 (金)

コレクターはつらいよ(25):突然フランス映画のサウンドトラックを担当したBrad Mehldau。

Mon-chien-stupide "Mon Chien Stupide" Original Soundtrack by Brad Meldau (My Music)

突然リリースされた映画のサウンドトラックをBrad Mehldauが担当していると知ってしまったからにはさぁ困った。この映画,以前Brad Mehldauが音楽を担当した「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」同様,Charlotte GainsbourgとYvan Attal夫妻主演の新作コメディとのことであるが,前の映画の縁もあって再登板となったのだろうか。

「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」のサントラはCDとしてもリリースされているが,本作の方は今のところダウンロードのみのようである。「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」 の方は別アーティストの音源も含んでいるコンピレーション的なものだったが,こちらは全面的にBrad Mehldauがピアノを弾いているように聞こえる。

冒頭の"Henri's Lament"から嬉しくなるようなトリオ演奏が聞こえてくるが,アルバムとしてはちゃんと曲として成立しているものと,あくまでも映画のバックを構成するための「サウンド」のような曲もあれば,弦を交えた室内楽のような曲もある。しかしソロで"And I Love Her"とかをやられると,6月のよみうり大手町ホールでのソロ公演の記憶が蘇ってしまう。電車の中で聞いていても思わずくぅ~っとなってしまった私である。

やっぱりサントラだよなぁと思わせる部分もあるが,これならCDで出してもいいのではないかと思えるような演奏ぶりであった。いずれにせよ,こういうのが突然出てくるのがコレクター泣かせってやつだよねぇ。ということで,ストリーミングでも全然かまわないのに,きっちりダウンロードもした私である。コレクターはつらいのだ。

尚,演奏者は全くデータがないが,トリオ演奏はレギュラー・トリオ,バスクラはJoel Frahmあたりだろうか。追って情報が出てきたらアップデートしたい。まぁ,普通の人はストリーミングで聞いて下さいってことで(笑)。

2019年10月31日 (木)

ついに到着:Brad Mehldau全面参加のChase Bairdのアルバム。

_20191029 ”A Life Between" Chase Baird(Soundsabound)

最近はAntonio SanchezのMigrationに参加して,知名度も上がってきたChase Bairdのアルバムなのだが,本作については実はかなり前から注目をしていた。ネット・サーフィンをしていて,Chase Bairdがこのアルバム制作資金を集めるためにクラウド・ファンディングを行っていて,そこにはBrad Mehldau,Nir Felder,そしてAntonio Sanchezが参加すると書かれていたからである。しかし,資金集めには結構苦労しているのを見ていて,プロジェクトも頓挫したかと思っていたのだが,このアルバムが今年の8月ぐらいにはストリーミングで聞けるようになって,完成したことはわかっていた。そして,Chase BairdのFBのページを見ていると,CDもプレスしているらしいことも察していたので,ひたすらフィジカルなリリースを待っていた私である。

そして,CDリリースが正式にアナウンスされて,発注したのが確か10月初旬のことだったが,約4週間もかかってようやく我が家に到着したので,現物を聞いているところである。リーダーのChase Bairdには申し訳ないが,私がこのCDを購入したのは,あくまでもBrad Mehldauの参加によるものであることは明確な事実である。しかし,Migrationでの演奏を聞いていると,サックス・プレイヤーとしてのChase Bairdも相応に期待は持てることがわかっていたので,結構期待の新譜だったと言ってよい。

しかし,正直言ってしまうと,アドリブ・ラインはかなり魅力的に響く一方で,Chase Bairdの書く曲に関してはやや力不足な気がする。サウンドがこのメンツゆえに成立したと言ってしまうと見も蓋もないが,特にNir Felderのギターがハードな感覚を付与して,相当出来を押し上げたように感じてしまう。Brad Mehldauがここに参加した経緯はよくわからないが,こうした音楽とBrad Mehldauの相性は決して完璧だとは思わない。それでも”Dream Knows No End"で聞かせるピアノ・ソロなんて見事なもの。Antonio Sanchezは相応のドラミングで対応していると思うが,このバンドにBrad Mehldauが必要だったかと言われると,う~むとなってしまう。もちろんいるに越したことはない。だが,私には,むしろアルバム・リリース記念のライブで共演していたJohn Escreetの方が,このバンドのサウンドにはマッチするかもなぁなんて思えてしまったのも事実なのだ。まぁ,私のようなリスナーがいるので,売上の増大には貢献しているとしても,バックのキモはやっぱりNir Felderの方だろう。テナーとギターのユニゾンを聞いていると,ちょっとUnity Bandを想起させるところもあったし。

いずれにしても,コンテンポラリーなサックスのアルバムとしては注目すべき作品であることは間違いないが,アルバム全体の出来としては星★★★☆ぐらいが妥当だと思う。録音のせいか,サウンドに今一歩キレがないのも惜しい気がする。エンジニアはJames Farberなんだけどねぇ。そして,いかんせん今のところ国内での入手が容易ではないのが最大の難点。私はCDに$20,送料に$20払ってゲットしたが,ご関心のある方は,そのうちDUあたりが大量に買い付けてからの入手でも遅くないかもな~(苦笑)。私はBrad Mehldauコレクターゆえに,手に入れられる時に,手に入れるための出費も仕方がないってことで,まぁいいや。

Recorded on January 12, 2018

Personnel: Chase Baird(ts),Brad Mehldau(p), Nir Felder(g), Don Chmielinski(b), Antonio Sanchez(ds)

2019年7月 6日 (土)

コレクターはつらいよ(24):Pedro Martinsの新作に1曲客演。

_20190706 "VOX" Pedro Martins (Heartcore)

またも更新が滞ってしまった。そして,ほぼ半年ぶりに「コレクターはつらいよ」シリーズである。今回はKurt RosenwinkelのレーベルからリリースされたPedro Martinsのアルバムである。主題の通り,Brad Mehldauが参加しているのは"Origem"1曲のみであるが,そのほかにもKurt Rosenwinkelはもちろん,クリポタやAntonio Loureiroとかが参加している。更に面白いと思ったのは,このシリーズで前回取り上げたCrane Like the BirdのKyle Craneも参加しているから,この辺の人脈ってつながっているのねぇって感じである。正直言って,このPedro Martinsと言う人の声はやや線が細くて,よく言えば繊細だが,音程が不安定に聞こえるところがあり,歌手としての印象としてはイマイチである。PedroはPedroでも,Pedro Aznarと比べるとだいぶ落ちるという感じである。まぁアルバムとしてはなかなかよく出来ているとは思えるが,だからと言って,Brad Mehldauの参加なかりせば,買うほどのものとは思っていない。

それでもってBrad Mehldauであるが,先日のライブを観た感じとは結構違うように思える。まぁ,曲がかなりのソフト・タッチってこともあるが,結構ポップな感じのソロを取っていて,「いかにも」Brad Mehldauという感じではない。しかし,ソロ後半になるとMehldauらしさも出てくるようには思えるが,この感覚の違いはおそらく本作におけるミキシングによる「音の加工」による影響も大きいと思えた。私としては,いつものBrad Mehldauと違う感じが聞けるというのも悪くないことではあるが,敢えてBrad Mehldauを使う理由があったかと言うと答えは微妙である。それでも全公式音源の保有を目指す以上,文句は言っていられないのである。だから「コレクターはつらいよ」なのだが(苦笑)。

2019年6月 5日 (水)

改めてのBrad Mehldau@よみうり大手町ホール

Brad-mehldau-solo

改めてBrad Mehldauのソロ・ライブのセット・リストがアップされたので,今一度振り返ってみたい。セット・リストからもわかる通り,冒頭3曲は完全即興だったようである。そこからはBeatles,と言うよりもPaul McCartneyの曲が3曲というのが目を引く。前回のホール公演でもPaulの曲は結構やっていたから,ミュージシャンとしてのシンパシーを感じる部分があるのだろう。私は"Dear Prudence"のようなJohn Lennonレパートリーもやって欲しいところだが,贅沢は言うまい。

そして意外な選曲としては"Linus and Lucy"だろう。今までレコーディングしたこともないはずだが,Brad Mehldauがこんな曲をやるとは思わなかった(と言いつつ,曲名が思い出せていなかった私)。

いずれにしても,前半を即興及びMehldauオリジナルで固め,後半にスタンダードやポップ・チューンを交えるというのがここのところのBrad Mehldauのルーティーンなのかもしれないが,今回は冒頭の3曲が相当の集中力を感じさせるものであり,後半は美的な部分と時折そこにダイナミズムを交えるという絶妙のバランスのライブだったと言ってよいだろう。因みにアンコールは"I Fall in Love Too Easily"からだったと思うが,最後まで集中力の切れないソロ・ピアノを堪能した私である。 ということで,行ってよかった,ファンでよかったと思える満足すべき一夜であった。

<Set List>
Untitled (B. Mehldau)

Untitled (B. Mehldau)
Untitled (B. Mehldau)
Waltz for J.B. (B. Mehldau)
Blackbird (J. Lennon/P. McCartney)
And I Love Her (J. Lennon/P. McCartney)
I Fall in Love Too Easily (J. Kern)
Get Happy (H. Arlin)
Linus and Lucy (V. Guaraldi)
Mother Nature's Son (J. Lennon/P. McCartney)

Live at よみうり大手町ホール on June 3, 2019

Personnel: Brad Mehldau(p)

2019年6月 4日 (火)

Brad Mehldauのソロをよみうり大手町ホールで聞く。

Bm-solo-piano 今回のBrad Mehldauの来日がアナウンスされた時,トリオでのライブとソロでのライブが告知されていた。Brad Mehldauフリークを自認する私としては,これはどっちも行かねばってことになるわけで,先日の東京国際フォーラムでのトリオでのライブに続いて,今回,よみうり大手町ホールでのソロに行ってきた。

読売新聞社東京本社ビルにあるこのホールは,キャパが500人程度,そして今回はPAなしのピアノの生音での演奏となった。冒頭から実にクラシカルな響きのピアノを聞かせて,一瞬,これはどうなるのかと思ったのだが,驚きは2曲目にやって来た。おそらくは即興で演じられた2曲目において,私がかつて聞いたことがないようなタッチをBrad Mehldauが聞かせたと思えたからである。おそらく2曲目は20分近い演奏だったと思うが,聞いていて,まだ長大なソロをやっている頃のKeith Jarrettを彷彿とさせる演奏だっと言っては言い過ぎか。しかし,ここで聞かれたトーンはフォーク,あるいはゴスペル・タッチでのKeithの演奏に結構近いのではないかと思ってしまった。そのほかの曲においても,同じような感覚を覚える瞬間もあったというのが正直なところである。

今回演奏された曲については,インプロヴィゼーションと思しき曲以外は聞いたことがあるのだが,The Beatlesの3曲と“Get Happy”を除くと曲名が思い出せない。そのうち,セットリストがアップされるだろうから,改めてとするが,今回演じられたBeatlesの曲は"Blackbird","And I Love Her",そして"Mother Nature’s Son"だったはずだが,"Blackbird"が原曲の美しさをそのまま反映させた演奏だったのに対し,ほかの2曲にはかなり強烈なカデンツァを施すという感じで,実はそこにもKeithライクな感覚を覚えていた私である。

トリオでのライブが,Brad Mehldauのオリジナルと,スタンダードまたはジャズ・オリジナルで占められていたのに対し,Beatlesを3曲やったのは意外なのか,それとも意図的なのかはBrad Mehldauに聞いてみないとわからない。まぁ,それでもあの"Blackbird"は昇天必至の演奏だったと確信している。

今回の演奏については,セットリストが上がってから改めて書くことにしたいが,今回,何よりも残念だったのは私の隣に座っていた女性客である。演奏が始まって,ステージに視線を向けていても飛び込んでくる彼女のスマホのバックライトは,音楽を聞くことへの集中の妨げ以外の何ものでもなかった。私は我慢がならず,彼女にスマホの使用をやめるように依頼した訳だが,なぜステージが始まっているのにLINEだかチャットでのやり取りをしなければならないのか,全く意味不明である。世の中の人間がスマホに支配されているように思える今日この頃だが,映画館でスマホを使うバカと同じぐらいの低劣な行為には業を煮やしていたと言わざるをえない。

もう一つ,運営側に文句を言うならば,サイン会をやるのはいいが,CD購入者先着50人というのはまぁいいとして,サイン会のフロアで知り合いを待つことも許さないというのはどういうことなのか?別にこっちは写真を撮ろうと思っている訳でもないし,迷惑をかけるつもりもないが,ああした運営は人を不愉快にさせるだけだ。

ミュージシャンは基本的にオープンな人が多いから,別にCDの購入者とだけ交流したいと思っている訳ではないはずだ。普通のジャズ・クラブなら気軽に話しかけて,サインにだって応じてくれる人がほとんどである。そもそも私はMehlianaでの来日時に,Brad Mehldauには何枚かのCDにサインをもらっているし,"Elegiac Cycle"の楽譜本にもサインをもらっているので,今回敢えてサイン会に参加する理由もなかったが,訳のわからない,あるいはまったく意味のない排除的な対応は正直言って拝金主義的で感じが悪いのはもちろん,会場担当者の対応も,なぜそこで待っているのがダメなのか全く論理的な説明ができないのは不愉快以外の何ものでもなかった。演奏は素晴らしいものだったと思えるだけに,以上の2点は実に残念であったが,これはBrad Mehldauの責任ではない(きっぱり)。

でも,今回,Brad Mehldauは(いい意味で)別次元に行ってしまったなぁと思っていた私である。それについては改めて書く機会を見つけよう。

Live at よみうり大手町ホール on June 3, 2019

Personnel: Brad Mehldau(p)

2019年6月 2日 (日)

実に素晴らしかったBrad Mehldau Trio@東京国際フォーラム

Brad-mehldau-trio-live

Brad Mehldauがトリオで来日するのは実に久しぶりのことのはずだ。前回は2012年だから7年ぶりってのは間が空き過ぎではないかと思ってしまうが,MehlianaやJoshua Redmanとのデュオでも来ているので,それほど久々感はない。しかし,前回のトリオ公演には正直言って不満があった私(その時の記事はこちら)なので,今回はPAに左右されない演奏が聞きたいと思って,東京国際フォーラムに乗り込んだ私である。

今回のライブについてはFBページが設けられており,全公演のセットリストがアップされているが,毎日違う曲をやっているようだ。東京国際フォーラムでのセットリストは下記の通りであるが,冒頭の"Sehnsucht"からして,非常に美しい響き,そしてコンサート・ホールらしいPAにまず安心した私である。それにしても,冒頭2曲で完全に聴衆をうっとりさせるのに成功したと思わせるに十分。実に素晴らしい演奏であった。特に私が痺れたのは"From This Moment on"だったが,この演奏を聞いて,Brad MehldauというピアニストはCole Porterの曲と実にマッチするという点である。そして,アンコール前に弾かれた”When I Fall in Love"の終盤のカデンツァの美しいことよ。

そして,アンコール3曲がこれまた素晴らしい。"Tenderly"という曲がこれほど魅力的に響いた経験はなかったと言ってもよいし,"Secret Love"なんて,非常にテンポを落とした形で演奏されつつ,曲の持つ美しさ,あるいは「秘めたる恋」を体現するような演奏には心底まいってしまった私である。

更に,今回はJeff Ballardのドラミングにも感心させれた。このトリオにぴったりなサトルな感覚だけでなく,決してうるさくならないドラミングは彼への評価を一段高めるものだったと言ってよい。Larry Grenadierも結構長いソロ・スペースを与えられていて,実力発揮していたが,私には今回はJeff Ballardが印象に残ったと言っておこう。

私としては7年前のトリオ公演のリベンジを完全に果たしたという感じで,実に満足度の高いライブであった。当然のことながら6/3に予定されているソロ公演への期待は更に高まった私である。

尚,上の写真はおそらくサントリー・ホールでのライブの時のものと思われるが,FBページより拝借したもの。東京国際フォーラムもほぼ同じ感じだった。

<Set List>
Sehnsucht (B. Mehldau)
Gentle John (B. Mehldau)
Bee Blues (B. Mehldau)
Inchworm (F. Loesser)
Backyard (B. Mehldau)
From this Moment on (C. Porter)
When I Fall in Love (V.Young/E. Heyman)

<Encore>
Tenderly (W. Gross)
Secret Love (S. Fain/P.F. Webster)
Long Ago and Far Away (J. Kern, I. Gershwin)

Live at 東京国際フォーラム ホールC on June 1, 2019

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

2019年5月21日 (火)

Brad Mehldauの新譜”Finding Gabriel”は美しさとスリルを共存させたコンセプト・アルバム。実に面白い。

Finding-gabriel_1 "Finding Gabriel" Brad Mehldau(Nonesuch)

既にストリーミングでも2曲が公開されていたBrad Mehldauの新譜がリリースされた。最初に公開された"The Garden"を聞いた時から,本作がかなりの問題作であることはわかっていたが,こうして全編を聞いてみると,これは確かに問題作という評価も可能だが,むしろ聖書を題材として作り上げたコンセプト・アルバムという評価の方が適切である。

一番の話題はヴォイスが加わっていることだと思うが,聖書を題材としたことからすれば,「聖歌」をイメージしてのことと解釈することも可能だろう。ここでのヴォイスは男声と女声のミックスであるが,Gabriel Kahaneの声が,Pat Metheny GroupにおけるPedro Aznarのような感覚を覚えさせる瞬間があったのは面白い。その一方でこのアルバムを特徴づけているのがシンセサイザーの響きであり,聖歌とシンセサイザーというアンマッチな感覚さえ与える組合せから作り出されるサウンドが実に面白い。それでも全然難しいところはないし,美的な感覚を与える瞬間もあれば,例えば冒頭の"The Garden"後半に聞かれるスリリングな展開もあるという,緩急と様々な要素を交錯させた響きなのだ。

Brad Mehldauが典型的なジャズから離れた音楽をリリースするのはこれまでもあったことだし,彼の越境型の活動を考えれば,今回のアルバムのリリースも驚くほどのことではないのかもしれない。しかし,Brad MehldauのWebサイトにも,かなり深い聖書に関する記述があり,聖書が彼の創作に影響を与えたことは紛れもない事実であり,それを反映させた音楽として聞いていると,これが聖歌のように聞こえてくる瞬間もあるから不思議である。

ドラムスのMark Guilianaは結構激しく,そして手数多く叩く瞬間もあるが,全体的には彼にしては抑制された感じがする。なぜならば,これはビートを強調した音楽ではないし,Mehldauが言うように聖書を"one long nightmare or a signpost leading to potential gnosis"とするような哲学的な感覚を付与した音楽なのだから,そういう風になるのも当然か。だが,その一方で6曲目"The Prophet Is a Fool"にはDonald Trumpへの強烈な批判的なトーンも現れて,さまざまな感情が交錯する。

こういうところが頭でっかち的に見えて,鼻につくってリスナーも世の中にはいるだろうが,Brad Mehldauは昔からこういう人なのである。様々な文学やクラシック音楽も吸収した上で作り上げられた彼の音楽性が強く表れたアルバムと言えるだろう。やはりこの人のやることは面白い。間もなくに近づいた東京でのトリオ,そしてソロ公演はどのようになるのか?おそらくこのアルバムとはほとんど関係ない世界の演奏をしてしまうはずだが,本当に幅広い人である。我ながらBrad Mehdauには甘いと思うが,やっぱり星★★★★★だ。だって面白んだもん。

Recorded between March 2017 and October 2018

Personnel: Brad Mehldau(p, synth, el-p, perc, vo, and others), Mark Guiliana(ds), Becca Stevens(vo), Gabriel Kahane(vo), Kurt Elling(vo), "Snorts" Malibu(vo), Ambrose Akinmusire(tp), Michael Thomas(fl, as), Charles Pillow(ss, as, b-cl), Joel Frahm(ts), Chris Cheek(ts, bs), Sara Caswell(vln), Lois Martin(vla), Noah Hoffeld(cello), Aaron Nevezie(sampler)

2019年4月11日 (木)

意表を突いたところにあったBrad Mehldauのデジタル音源。

Thank-you "Thank You." Mark Guiliana Featuring Brad Mehldau(ダウンロード)

ブログのお知り合いのkenさんからの情報でその存在を知った音源である。これはMark Guilianaの名義でBandcampで販売されているのだが,作曲はGuilianaながら,演奏はBrad Mehldauが一人で行っているようである。この曲は亡くなったMark Guilianaのお母さんの生前に,Mark Guiliana自身が演奏した最後の曲だそうである。それを演奏するのに最適なのはBrad Mehdauということで,演奏を依頼したものらしい。

これが実にしっとりした演奏である。Mark Guilianaの母への感謝が静かに表現されていて,それをBrad Mehldauが演奏するのだから,これは痺れる。誰よりもMark Guiliana自身が,この演奏を聞いて感涙にむせんだかもしれないと思うのは私だけか。いずれにしても美しい友情と親子愛が生んだ麗しい演奏。

kenさん,ご紹介ありがとうございました。

Personnel: Mark Guiliana(composer),Brad Mehldau(p, synth)

2019年4月 8日 (月)

Brad Mehldauの新作,"Finding Gabriel"は5/17リリース予定。これはまたまた問題作と言われそうだ。

Finding-gabriel NonesuchレーベルのWebサイトでも告知されているが,Brad Mehldauの新作"Finding Gabriel"が5/17にリリースされる予定である。本作はシンセサイザーとMarc Giulianaのドラムスでベース・トラックが構成されたようであるが,そこにAmbrose AkinmsireのトランペットやJoel Frahmのテナーが加わるだけでなく,今回のアルバムのキモはおそらくはヴォーカリストの参加であろう。

既にアルバムからは"The Garden"の1曲だけ,ストリーミングで聞けるし,映像もついたものがYouTubeでも公開されているが,これだけ聞いていると,プログレと言ってもよいような響きと言っては言い過ぎか。ヴォーカルはあくまでもサウンドの一部としてのものであり,歌詞はない。アルバムではBrad Mehldauの完全独演(オーバーダビングあり)による演奏も3曲あるようだ。Brad Mehldauの音楽の多様性は前々からわかっていることではあるが,これは問題作扱い確実なアルバムとなるだろう。

そしてこのジャケである。何がBrad Mehldauに起こったのかと言われても仕方ないような,いまだかつてないテイストであるが,YouTubeで公開されている"The Garden"の映像を見ても何のこっちゃって気もするので,これは確信犯だろうなぁ。いずれにしても5/17を楽しみに待つことにしよう。

2019年1月27日 (日)

コレクターはつらいよ(23):Crane Like the Birdsの新作に1曲客演。

"Kaleidoscope" Crane Like the Birds Fraturing Sabina Sciubba & Brad Mehldau(自主制作,ダウンロード)

CranelikethebirdartLAを拠点とするシンガー,ドラマーであるKyle CraneのプロジェクトらしいCrane Like the Birdsというグループ(プロジェクト?)の同名のアルバムがリリースされ,そこに1曲,Brad Mehldauの名前があることをFBで知った。フィジカルな媒体としては出ていないようなので,早速Brad Mehldauの名前のある"Kaleidoscope"をダウンロードした私である。

Kyle CraneもCrane Like the Birdsも私には初耳の名前だと思うが,Daniel Lanois人脈の人らしく,Brad Mehldauの参加もその縁と思っていた私である。また,本作にはKurt Rosenwinkelも参加しているとの情報もあるのだが,ダウンロード音源ゆえに詳細,真偽のほどは不明。だが,FBにBrad Mehldauが,本作への参加はRosenwinkelの紹介が縁とも書いているので,おそらくはRosenwinkelも参加していると思われる。更に,Wikipediaの情報によれば,映画「セッション」の一部のドラムス演奏シーンはKyle Craneによるものらしい(但し,クレジットはされていないようだ)。こうして情報を集めるとへぇ~って感じである。

それでもって,この"Kaleidoscope"だが,9分を越える曲の後半に,いかにもBrad Mehldauらしいピアノを聞かせていて,実に嬉しくなってしまった私である。越境型ミュージシャン,Brad Mehldauの真骨頂ってところだろう。こういうのを追っかけるのも大変な訳だが,こんなピアノを聞かせてくれるなら大歓迎である。

因みに,Brad Mehldauだが,2月後半から欧州において,英国人テノール歌手,Ian Bostridgeとのデュオで歌曲の夕べをやるらしい。シューマンとBrad Mehldauがカーネギー・ホールほかからの委嘱により書き下ろした"The Folly of Desire"をやるとのことだが,越境具合が半端じゃないねぇ。

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