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カテゴリー「Brad Mehldau」の記事

2012年5月 5日 (土)

コレクターはつらいよ(12):フランスのヴォーカルのバックでピアノを弾くBrad Mehldau

Micheleanna_mimouni "Entre Ombre Et Lumiere" Michèle-Anna Mimouni(Lebel Ames)

実に久々の「コレクターはつらいよ」である。ほぼ2年振りにこの主題の記事を書くことになった。Brad Mehldauの音源収集についてはかなり一生懸命と言ってよい私だが,最近のMehldauは相当ビッグネーム化しているので,他のミュージシャンのアルバムに参加したとかいう情報もかなり入りやすいし,私にはJens Linge氏というMehldauディスコグラファーの強い味方がいるので,ほかの人よりは情報もかなり迅速に入ってくると思っている。

しかし,最近はLinge氏も仕事が忙しいのか,情報の更新頻度は一時期よりはかなり間が空くようになってきている。その彼が直近で情報を更新したのは4月半ばのことだったが,当然それはMehldauの新作"Ode"のリリースを受けてのものであろうと考えていた私である。だが,念のため,ほかのアルバムについても新情報がないかどうかを確認していたらあった,あった。それがこのアルバムである。

私が知る限りにおいては,今回の情報のアップデートまではこのアルバムはLinge氏のディスコグラフィーには載っていなかったはずである。だからこそ,今回このアルバムを見つけてびっくりしてしまった。なぜ驚いたかと言えば,このアルバムがほぼ5年前にリリースされていたにもかかわらず,彼のレーダー・スクリーンに引っ掛からなかったことにある。彼には相応の協力者がいて,いろいろ情報交換をしているはずにもかかわらずである。それほどマイナーなアルバムと言ってよいかもしれないし,ググるにしても,相当注意深くやっていかないとこのアルバムには到達するまい。このアルバムの情報を見つけて,いろいろ探したのだが,あっても日本ではなぜか無茶苦茶高い。ということで,本国フランスに直接発注と相成った。はっきり言って,送料が高く付くって感じだったが,まぁこれは仕方がない。

Michèle-Anna Mimouniはジャズ・ヴォーカリストと呼んでよい音楽をここで展開しているが,特徴的なのが基本的にフランス語で歌っていることであろう。そんな彼女のアルバムになぜMehldauがって感じなのだが,その秘密はMehldauのオリジナル"Ron's Place"と"Dusty McNugett"にフランス語詞をつけて歌っているからだということと判断して間違いないだろう。2曲目のタイトル・トラックが"Ron's Place",5曲目の"Ma Bohème"が"Dusty McNugett" である。Mehldauの歌伴はご夫人のFleurine以外は珍しいということもあるが,いかにもMehldauらしいピアノを聞かせていて,ファンにとってはこれだけで満足度が高い。

また,Mimouniの歌も,このサウンドにフランス語というところにはそこはかとなく違和感があるとともに,2曲のスタンダード"Beautiful Love"と"Them Their Eyes"の英語での歌唱はいかにもフランス人の英語って感じではあるが,サウンドとしては決して悪くない。むしろ,これはかなりいいのではないかと思えるような出来なのである。ついでに言っておくと,最後の曲の伴奏はPierre de Bethmann(あのPrysmのBethmannである)なのである。ここではピアノに乗ったモノローグのような展開も聞かれるが,それがいかにもフランス的な感覚を感じさせて面白いと思った。でもライナーも全部フランス語なんで,全くわからんというのが難点だなぁ(頑固なフランス人,というよりも,非フランス語圏のリスナーを意識していない?)。

いずれにしても,情報なかりせば決して出会うことのなかった音源であるが,こういうのまでフォローするのは大変なのだ。何度も言うが,やっぱりコレクターはつらいのだ(だったらやめれば...という声も)。

Recorded: April-December 2006

Personnel: Michèle-Anna Mimouni (vo, p), Brad Mehldau (p on 1, 2, 4, 5), Rémi Vignolo(b), Karl Jannuska(ds), Pierre de Bethmann(p)

2012年3月18日 (日)

Brad Mehldau Trio待望の新譜

Ode "Ode" Brad Mehldau Trio(Nonesuch)

Brad Mehldauがトリオとしてのアルバムを最後にリリースしたのは2008年のVanguardでのライブのことである。スタジオ盤ということになれば,2006年リリースの"House on Hill"まで遡るし,それはJorge Rossy在団中の残りテイクであった。Jeff Ballardがドラマーになってからということであれば,更に彼らの初作である2005年リリースの"Day Is Done"まで遡らなくてはならない。そのアルバムについては,私はAmazonのユーザ・レビューに次のように書いている(ブログを始める前のことだ)。

「冒頭のRadioheadの"Knives Out"から素晴らしい出来を予感させる新Mehldauトリオの快作である。まずは新加入のドラマー,Jeff Ballardとの相性が気になるところであるが,その"Knives Out"からして痺れるような快演であり,このメンバー・チェンジがこのトリオにとって少なくともネガティブな要因となってはいないことを証明している。その後も自作やChris Cheek作の曲に加えて,Burt Bacharach,Nick Drake,Beatles,Paul Simon等,ポップ畑の名曲を自在に料理した本盤はこのトリオの新しい可能性を示したものであろう。(以下略)」

その後,彼らはMetheny/Mehldauや,トリオとしての活動を通じて,その音楽を深化させたことはライブ盤(あるいはブート音源)を聞いても想像に難くないが,ここのところ,Mehldauが個人の活動に力を入れていたこともあり,トリオとしての活動も抑制され,かつアルバムが発売されなかったため,多くのリスナーの渇望感を煽っていたことは間違いない事実である。だからこそ,本作のリリースがアナウンスされた時には,私は逸早く反応したし(記事はこちら),大きな期待を寄せてきた。発売日が3/13から3/20に一週間延びただけで残念に思ってしまうところに私の気持ちが表れているが,買い物ついでにショップをのぞいたら入荷していたので,ネットでの注文をキャンセルして,すかさずゲットした私である。

冒頭のMichael Breckerに捧げた"M.B."からしてぞくぞくするような出来である。全編を通じて,トリオの緊密な演奏が展開されており,レギュラーとしての非常に高いレベルでの「濃度」が感じられることは誠に喜ばしい限りである。時にハード・ドライビングに,時にエレジー的にと曲調の違いはあれども,全編を通じて非常にテンションの高い演奏集だと言ってよい。さすがである。もちろん,これだけのテンションの高さであるから,ジャズの一つの側面であるリラクゼーションをもたらすような音楽とは言えない。はっきり言って締め上げられる感覚すら覚える瞬間があるのも事実である。しかし,これはピアノ・トリオというフォーマットを使っての表現を追求した結果としての音楽だと思えば納得できるものだろう。

以前,Brad Mehldauのアルバムは"Art of the Trio"というシリーズでリリースされていたが,ここに至って,彼らの演奏の芸術的なレベルは更に上がったと言えるように思える。今回はMehldauのオリジナルで固めているが,改めてスタンダードに取り組んだら一体どういうことになってしまうのか。7月の来日公演が本当に楽しみになってきた私である。私がMehldauの追っかけだという贔屓目もあるかもしれないが,これは誰が聞いてもレベルの高い作品であることは間違いない。ジャズ・ファン必聴の好アルバムである。星★★★★★。

Recorded on November 17, 2008 & April 19, 2011

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

2012年2月 3日 (金)

Brad Mehldau Trioの新作は3/13発売

Mehldautrioode 昨日「Brad Mehldauの楽歴を振り返る」シリーズの記事をアップしたばかりだが,そんな私のところに昨日Nonesuch Recordsから届いたEメールに,Brad Mehldauのトリオによる新作の情報が記載されていた。今回は全曲未発表のMehldauによるオリジナルをトリオで演じるもので,アルバム・タイトルは"Ode",即ち特定の人々に捧げる叙情詩ってことになるが,いずれにしても,トリオとしてのアルバムは2008年の"Live"以来であるから,これはめでたい。トリオとしての活動が渇望されている(Vanguardでの新年早々のライブの人気ぶりがそれを物語っている)ことに対するMehldauのアクションとも言えるが,ついでに来日も決まった(7月らしい)ようなので,今度こそは行かねば。

全曲未発表とは言っても,"Kurt Vibe"のように既に公開映像(記事はこちら)の中で演奏されている曲もあるので,これらの曲はライブの場では演奏されてきたはずである。しかし,実在,架空の人物双方をテーマにした曲とは関心が高まって当たり前である。"Kurt Vibe"はKurt Rosenwinkelに,"M.B."はMichael Breckerに,"WWyatt's  Eulogy for George Hanson"は映画「イージー・ライダー」の登場人物に,そして"Twiggy"なんて曲もある。録音は11曲中8曲が2008年の録音で残り3曲が2011年と,またまたおやおやって感じだが,そうは言っても3/13が楽しみになってきた。早く来い来い,3/13。

2012年2月 2日 (木)

Brad Mehldauの楽歴を振り返る:第3回

Young_at_art "Young at Art" Jesse Davis(Concord)

Brad Mehldauの楽歴の中で,Fresh Sound New Talentでのアルバムを除いて,ワーナーでの初リーダー作"Introducing"を吹き込むのが1995年である。彼の楽歴を振り返る中で,おそらくは注目の新人であった頃の90年代前半の作品として,今回は本作を取り上げることとしたい。

Jesse Davisはニューオーリンズ出身のアルト奏者であるが,結構うまい人でありながら,ポピュラリティという点ではいつまで経っても地味なような気がする。本作を聞いていても,バップに根差したナイスなフレージングを聞かせており,まぁConcordレーベル好みっていう感じがする人だと言ってもよいかもしれない。そんなDavisとBrad Mehldauが共演したのは,本作にも参加しているPeter Bernstein人脈か,あるいは前回紹介したAllen Mezquida盤でも共演したLeon Parkerの紹介か。

ここではDavisのオリジナルを中心に,何曲かのスタンダードやジャズ・オリジナルを交えるというよくあるタイプの構成であるが,ハイブラウでもなければ,コンテンポラリーでもないが,一定のレベル以上を確保した演奏が聞くことができる。ちょっと軽いような気もするが,演奏としてはかなりコンベンショナルな展開である。Mehldauもまだまだ修行の身って感じで,こうした比較的伝統に根ざしたような演奏においても,強烈な個性とまではいかずとも,やはりこれは注目に値すると思わせるようなピアノ・ソロを聞かせているのは大したものである。今のMehldauであれば,ソロにせよ,バッキングにせよ,もう少し鋭さを持って臨むだろうが,まだ22歳の時の演奏であるから,やはりそこまでは至っていないのは仕方ないとしても,修行中のMehldauって感じがなんとも初々しい。

いずれにしても,Mehldauの参加なかりせば,私がこのアルバムを購入することはなかったはずであり,Davisの印税収入には間違いなく貢献しているが(笑),それでも本作ももう少し日が当たってもよさそうなConcordらしいアルバムではある。星★★★☆。

Recorded on March 24 & 25, 1993

Personnel: Jesse Davis(as), Peter Bernstein(g), Brad Mehldau(p), Dwayne Burno(b), Leon Parker(ds), Ted Klum(as on 8)

2012年1月 8日 (日)

Brad Mehldauの楽歴を振り返る:第2回

Allen_mezquida001 "A Good Thing" Allen Mezquida (Koch)

このブログで,「Brad Mehldauの楽歴を振り返る」と題して,彼の初レコーディング(のはず)のChristopher Hollydayのアルバムを取り上げた(記事はこちら)のは昨年(2011年)の11月であった。また同様の趣旨で記事を書こうなんて言いながら,2か月も経過してしまったが,久々の第2回である。このアルバムは,比較的地味な作品であるが,Mehldauのキャリアでは比較的初期のレコーディングとして今回選択してみた。

Allen Mezquidaという人のキャリアは今ひとつよくわからないのだが,ジャズ界から現在はアニメーション界に転身をしたらしいという相当変わった経歴と言ってよい。しかし,ここではきっちりとしたジャズ・ミュージシャンとしての仕事をしており,アルバムのクォリティはかなり高い。ハード・スインガーというよりも,ややダークなイメージを持ったアルト・サックス奏者だと思う。このアルバムは92年後半のレコーディングということで,Mehdauが22歳当時の演奏である。但し,リリースされたのは96年のようである。なぜ,4年近くもお蔵入りしていたのかはわからないが,メンバーの中で,リーダーが最も無名というところも影響しているかもしれない。一方で,ベースのSmithが5曲のオリジナルを提供していているので,彼らの双頭アルバムとも言ってよいだろう。

そうした中でのMehldauであるが,ここではBill Maysとピアノを分けあっていて,Mehldauh参加は4曲である。ここではBill Maysとのフレージングの違い(というかトーンの違い)が結構はっきり出ていて,聴き比べるのも面白いのだが,それにしても落ち着いたトーンで,渋いフレーズを繰り出す姿は22歳とは思えない出来である。私はこのアルバムを初めて聞いた時から,結構評価しているつもりだが,久しぶりに聞いても,これはかなりレベルが高い演奏だったと感じられるものになっている。Christopher Hollydayのアルバムの時にも書いたが,Mehldauは若い頃からかなり大人な演奏をしていたことを再確認させられるアルバム。星★★★★。地味なアルバムであるが,ネット上では比較的入手は容易。当時のライジング・スターとしてのMehldauの参加で売ろうとしたのかという,うがった見方をしてはリーダーに失礼か(笑)。いずれにしても埋もれさせるには惜しい佳作である。

Recorded on September 18, 19 and October 1, 1992

Personnel: Allen Mezquida(as, p), Brad Mehldau(p), Bill Mays(p), Sean Smith(b), Leon Parker(ds)

2012年1月 2日 (月)

年末にフランスから届いた"Elegiac Cycle"の譜面

Elegiac_cycle "Elegiac Cycle: Complete Transcription and Analysis" Phillippe Andre(Outre Mesure)

この本がBrad MehldauのWebサイトに紹介されていて,コンプリートを目指すならこれもっていうことで,わざわざフランスに発注したものである。私はピアノが弾けるわけではないのだが,ここでの分析やMehldauへのインタビューは気になって当然である。しかし,送料込みにすると財布には決して優しいものではなかったが,それでもこれは仕方があるまい。

"Elegiac Cycle"はBrad Mehldauによる初のソロ・アルバムであるが,コンセプト・アルバムとしての色彩が強く,純然たるジャズというよりも記譜された部分の方が多いのではないかと思わせる作品であった。よって,この作品が好きか嫌いかと問われれば,「微妙」と答えるジャズ・ファンも多いのではないかと思う。しかし,Mehldauのピアニストとしての魅力を十分に感じさせる作品であり,ある意味「問題作」と言ってもよかったものかもしれない。

この本は,同作に収められた全曲を譜面化したものであり,そこに分析を施すというスタイルになっている。フランスの出版社のものだが,英仏2カ国語対応となっているので,分析部やインタビュー部は英語で読めばいい話である。私はまだちゃんと目を通しきれていないのだが,これはアルバムを聞きながら眺めているといろいろな発見があるのではないかと思わせてくれるものであり,今後,時間を掛けて"Elegiac Cycle"という作品に対峙していくことになるかもしれない。

しかし,なぜ,今このタイミングで"Elegiac Cycle"なのかはわからないが,それでもこうした書籍が出てくるところに,現代のピアノ・シーンにおけるBrad Mehldauの重要性が示されているようにも思う。本の背表紙にはジャズ・ミュージシャン,クラシックのミュージシャン,そしてミュージシャンでない一般人もそれぞれの読み方ができると書いてあるから,私はBrad Mehldauのファンという立場で,この本にじっくり取り組みたいと思っている。

2011年12月31日 (土)

2011年:私のベスト3+α

これまで,2011年5回に渡って回顧してきたが,音楽に限って,2011年の私のベスト3は何だったかを明らかにしたい。

Loureedmetallica_lulu これまでの記事をご覧頂けば,ある程度想像はつくかもしれないが,今年,私にとってナンバー1となったアルバムはLou Reed & Metallicaの"Lulu"である。この作品がデリバリーされて,初めて聞いた時の衝撃というか,私は電撃を受けたように感じてしまったぐらい,この作品には最初からまいってしまった。とてつもない深みを音楽から感じたのは久しぶりの体験だったと思う。よって,今年のナンバー1はこれだとその時から決めていた。

Live_in_marciac_2 "Lulu"があまりにも強烈だったので,ほかの2作が悩みどころになるわけだが,次席はBrad Mehldauの"Live in Marciac"にしたい。ソロ・ピアノではあるが,強烈にジャズを感じさせる演奏として,このアルバムは強く印象に残っている。本作を含め素晴らしい作品をリリースしたBrad Mehldauであるが,私としてはつくづくBrad Mehldauのファンでよかったと思った1年である。今後,彼はどこへ向かっていくのかと心配にもなるが,真の実力者であるとともに,年を追うごとに凄みが増してきている。多くのリスナーがそうであるように,そろそろトリオでの吹き込みも期待したいところではあるが,この創造性を維持してくれるなら,文句は言うまい。これからも彼の活動は追い掛けていきたいと思う。

Maria_rita そして,もう1枚は今年のマイ・ブームを作り出したMaria Ritaの"Elo"である。私はこれまで彼女の音楽を聞いたことがなかったことをまさに恥じた一枚。慌てて,逆時系列で彼女の作品を聞いていった私である。Maria Ritaのファンにとってはこの作品は最高ということにはなっていないようだが,私にはこのシンプルなバックで,素晴らしいグルーブを生みだすこれぞブラジル音楽という魅力を感じてしまった。

これらが2011年を代表する作品であるとは限らないが,私にとってはさまざまな要素を含めてこの3作をベスト作とすることにしたい。

Ondrej001 そして,本来は本年の回顧(ジャズ編)で取り上げるはずであった,チェコのテナー奏者Ondrej Stveracekを改めて紹介しておきたい。その記事を書いたとき,完全に失念してしまったのだが,まさに今年最大の発見,あるいは今年のRising Starとでも呼びたいテナーサックス奏者である。スタジオ盤もよかったが,私を更にしびれさせてくれたライブ盤をここにはアップしておこう。CDの入手は楽とは言わないが,ネットで注文もできれば,iTunesでダウンロードもできる。是非多くの人に聞いて欲しいという思いもこめた。

ということで,今年は震災もあれば,職場の環境の変化等,私にとっては辛くもいろいろ考えさせられることが多かった。そうした中で,音楽は私の生活の支えになっていたことは間違いなく,音楽によって救われたことも多々あった。来年はもう少しましな1年になることを期待しつつ,今年の音楽界は豊作だったなぁと改めて振り返る大晦日である。

読者の皆さんには,本年もしょうもないブログにお付き合い頂きましてありがとうございました。来年は6年目に突入するこのブログですが,引き続きよろしくお願い致します。

では,皆さん,よいお年をお迎え下さい。

2011年12月29日 (木)

2011年を回顧する(その5):音楽(ジャズ)編

2011年を振り返ってみれば,ジャズ界はかなりの豊作だったと言っていいように思う。特に今年前半から中盤にかけての,良作ラッシュは記憶にないほどのものだった。私のブログには2011年おすすめ作なるフィールドが右側にあって,ここを見ていれば,今年,私が気に入ったアルバム(星★★★★☆以上の新譜)はすぐにわかるわけだが,2010年よりもはるかに掲示している作品数が多いことがお分かり頂けるだろう。そういう意味では,ジャズに限らず,作品的には充実した一年だったと言えるように思う。

Live_in_marciac そうした中で,改めて振り返ってみれば,今年の私にとってのジャズでの最高作はBrad Mehldauの"Live in Marciac"ということになってしまうように思う。録音は5年前に遡るが,その時点で極めて高いレベルの演奏を展開していたBrad Mehldauにはまさに驚かされたというか,ソロでこのような演奏をしてしまえば,聴衆が熱狂するのも当たり前だと思ってしまう。私がBrad Mehldauのコンプリートを目指すということを差し引いても,この作品は極めて高く評価されて然るべき作品だと思う。Mehdauと言えば,もう1枚,Kevin Haysとの美しいデュオを聞かせた"Modern Music"も忘れ難い。ついでに年末に出た「トリオの芸術」ボックスの未発表ライブ音源も嬉しいものであり,まさにMehldauファンにとっても忘れられない1年だったと言ってもよいかもしれない。更に,MehldauのメンターであるFred Herschのヴァンガードにおけるソロ・ライブもよかったことも追記しておこう。

Prysm 一方,インパクトという観点ではPrysmの"Five"にとどめを刺す。彼らにとっては久々のアルバムとなった本作が,多くのブロガーの皆さんの支持を集めるのは,この強烈なインパクト,スピード感に対して感じる快感ゆえではないかと思う。このアルバムに関する記事を書いたとき,私は「火傷に注意」と記したが,それぐらいの高揚感をおぼえるある意味ハード・ロック的なアルバムである。

Michel_polga また,同じくインパクトが強い作品としては,Fabizio Bossoがモーダルにラッパを吹きまくったMichele Polgaとの"Live at the Panic"は私のBossoに対するイメージを覆した作品であった。正直言って,お気楽ハードバップでもいいのだが,こうしたよりハードボイルドな路線は本当に歓迎したいと思ってしまう私である。やりゃできんだからさって感じであるが,期待以上の音が聞こえてきて嬉しくないリスナーはいないのである。とにかくこれはよかった。また,サウンドというよりも,音楽としての面白さという点では,Nguyên Lêの"Songs of Freedom"が魅力的だった。

Faithful 静謐系ではMarcin Wasilewskiの"Faithful"がECMレーベルらしい美しさ炸裂ということで,やはり今回も期待に応えてくれたと思う。とにかく,最近の彼らの音源にははずれはなく,透徹な美学というのは彼らの音楽のためにあるとさえ言いたくなってしまうような素晴らしさである。ポーランドってのは冬は物凄く寒いところだが,あの寒さに耐えながら,音楽を生みだすというところは,北欧にも通じる部分があるのかもなぁなんて思ってしまう。それにしても,本当にこの人たちがアルバムを出すたびに,まいった,まいったと連呼する私である。

Gravity また,Wasilewskiとはちょっとスタイルは違うがJulian & Roman Wasserfuhrの"Gravity"がロマンティシズム溢れる演奏で,思わずおぉっ!となってしまった。ドイツのミュージシャンから,このようなロマンティックなサウンドが聞けるとは思っていなかったので,これは純粋に驚いたと言ってもいいだろう。"Five"や"Live at the Panic"と同列で,こうした作品をベスト作に挙げる私はやはり精神分裂症なのか...(苦笑)。しかし,Mehldauを除けば,これらの作品をリリースしているのがみんな欧州のレーベルだということに気がつく私。アメリカ・メジャーにはあまり期待できないのかもしれないなぁなんて思ってしまう。

そうは言いながらも米国系のレーベルにもPar Martinoの新作,James Farm,Gary Burtonの新バンド等,光る作品がないわけではない。だが,欧州系レーベルの「わかってるね」感が一歩も二歩も上回っているように感じている私である。米国メジャーに期待するのであれば,MilesのBootleg Seriesのような発掘が中心になっていくかもしれない。

Gretchen_parlato 尚,私が日頃あまり手を出さないジャズ・ヴォーカルだが,今年聞いた中ではGretchen Parlatoの"The Lost And Found"が非常によかった。私はこのアルバムを取り上げた時,「サウンドがずっとコンテンポラリーなので,私にはカテゴリーなど関係ない女性ヴォーカルとして聞けてしまった」と書いたわけだが,結局,ジャズ・ヴォーカルを前面に押し出していない感覚が私が気に入る理由なのだろうと思う。こうしたところに私の嗜好が如実に表れているなぁなんて感じてしまったが,いいものはいいのである。

ということで,ほかにもまだまだいいアルバムはあったと思うが,記憶に残った作品ということでは上述のような感じだろう。そしてJazz Man of the YearはBrad Mehldauということにしよう。また贔屓目強過ぎと言われそうだが,今年の作品はLee KonitzたちとのBirdlandでのライブも含めて,どれも優れていたのだから,文句は出ないだろう。

最後に,自分だけのレーダーだけではいくつかの作品には出会っていないはずであり,こうした作品をご紹介頂き,新しい音楽に触れる機会を与えて頂いたブログのお知り合いの皆さんに感謝したいと思う。

2011年12月 7日 (水)

早くも到着:Brad Mehldauの「トリオの芸術」ボックス!

Mehldautrioartofthetriobox "The Art of the Trio Recordings: 1996-2001" Brad Mehldau Trio (Nonesuch)

いやいや早くも到着である。嬉しいねぇ。以前の記事にも書いたとおり,このボックスはWarner時代の「トリオの芸術」シリーズ全5作の集成ボックスである。いくら私がMehldauのコンプリートを目指すからと言ってそれだけなら買わないが,このアルバム,未発表のVillage Vanguardのライブ音源が7枚目のディスクとして入っているから,買わないわけにはいかないのである。

一昨日のMahavishnuと同じような売り方と言えるが,あちらは買わないで,こちらは買うというのが私のMehldau狂いゆえである。またこうして嵩張る箱モノが増えて,ますます収納は苦しくなる一方だが,それでもこれは値段も安いし,買って損はない。特に未聴の方はVol.1,Vol.3あたりから聞いてみてもらえば,彼らの演奏がいかに魅力的かわかると思う。

ということで,年末年始は改めてMehldauがブレイクしたこのシリーズにゆっくりと耳を傾けることとしたい。ライブ音源については改めて記事をアップしたいと思う。

2011年11月 2日 (水)

Brad Mehldau:祝Down Beat読者投票2冠!

201112cover 嬉しいニュースである。私は米国Down Beatのデジタル版の読者であるが,これから私の手許に届くはずの12月号で発表された第76回読者投票において,Brad Mehldauがピアニスト部門1位と"Live in Marciac"により"Jazz Album of the Year"を獲得したそうである。こうした投票自体は人気投票みたいな部分もあるが,Mehldauの実力が更に広範なオーディエンスに評価されたものとして,彼の追っかけをしている私としては非常に嬉しい限りである。

まぁEsperanza SpaldingがJazz Artist of the Yearなのかってのには???な部分もあるが,女性初の受賞だそうだから,それはそれでめでたいということにしておこう。

投票結果の詳細はデジタル・エディションがデリバリーされてからゆっくり眺めることとしたい。まずは速報ということでのこの記事のアップだが,本日,Mehldauの初レコーディングを当ブログにアップしたのも何かの偶然のように思えてきた。

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