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カテゴリー「ジャズ(2019年の記事)」の記事

2019年12月 6日 (金)

超懐かしい!Quincy Jonesの「愛のコリーダ」。

_20191204-2"The Dude" Quincy Jones(A&M)

実に懐かしい。冒頭の「愛のコリーダ」という曲名だけで日本では売れてしまったような気もするが,このアルバム,実にいい曲が揃っている。中でも私としては"Just Once","Razzamatazz",そして"Velas"の3曲が飛び抜けて好きである。

James Ingramが歌う"Just Once"はBarry MannとSynthia Weillの名コンビが書いた本当の名曲である。私は大胆にもカラオケでこれを歌うことがあるが,そう簡単にはいかない(当たり前だ!)。曲よし,歌よし,演奏よしの三拍子とはこれのことだ。"Razzamatazz"はPatti Austinがすばらしいノリで歌い,身体が勝手に動いてしまうこと必定。そして"Velas"である。Ivan Linsのこの曲をToots Thielemansのギター,口笛,ハーモニカでまるで歌うかのように演じている。このアルバムにおける唯一のインスト曲であるが,ここには歌はいらんと思わせるに十分。イントロからメイン・メロの流れはいつ聞いても感動してしまう。

と,ちょっと熱くなってしまったが,それ以外の曲も捨て曲はないと言ってもよい。もう1曲と言われれば"One Hundred Ways"を挙げるが,これに限らず,ナイスな曲揃いである。ただ,「愛のコリーダ」というアルバムの邦題がこのアルバムから私を若いころは遠ざけていたが,もっと早く聞いていれば,もっといい大人になっていたかもなぁ(爆)。結局,Quincy Jonesのアルバムにはやられてしまうということで,星★★★★☆。

それにしても,物凄いメンツが揃っている。パーソネルを眺めているだけで目がくらくらしてくる。あぁ,それって老眼のせい?ほっといてくれ!(爆)

Personnel:Quincy Jones(prod, arr, vo), Charles May(vo), James Ingram(vo), Patti Austin(vo), Jean "Toots" Thielemans(g, hca, whistle), Steve Lukather(g), Louis Johnson(b, clap), Abraham Laboriel(b), John Robinson(ds, clap), Paulinho DaCosta(perc), Herbie Hancock(el-p), Stevie Wonder(synth), David Foster(p, el-p), David 'Hawk' Wolinski(clavinet, synth, prog), Ian Underwood(synth, prog), Greg Phillinganes(synth, el-p, clap), Robbie Buchanan(synth), Lenny Castro(clap), Tom Bahler(vo), Jim Gilstrap(vo), Michael Jackson(vo), Syretta Wright(vo), LaLomie Washburn(vo), Yvonne Lewis(vo), Casey Cysick(vo), Jerry Hey(tp), Chuck Findley(tp), Bill Reichenbach(tb), Kim Hutchcroft(sax, fl), Ernie Watts(sax, fl), Larry Williams(sax, fl)

2019年12月 5日 (木)

実に久しぶりに聞いた「熱狂のコロシアム」

_20191204 "Tempest in the Colosseum" V.S.O.P The Quintet(Columbia)

「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」がまだ田園コロシアムで開催されている頃は,私は現場で演奏を聞いたことはないのだが,まぁあそこでやれば騒音問題は発生するよなぁって場所ではあった。その田園コロシアム時代にV.S.O.P.は2回出ている訳だが,2回ともライブ音源として残ったのは,今にして思えば実に素晴らしいことであった。本作を聞くのも実に久しぶりだが,やっぱりジャズ的な興奮は味合わせてくれる。

このメンツであるから,悪くなりようがないだろうと思ってしまうが,これは現場にいたら絶対燃えてしまうだろう。60年代Miles Davisクインテットから親分を抜いてFreddie Hubbardに代わるという布陣だが,HerbieとしてはMilesを復活させたいと思っていたと言われているものの,Milesがこういう音楽をやったか?あるいはFreddie Hubbardのように吹けたかと考えるとやっぱりそれは難しい。この当時はこのメンツだからよかったのである。

メンバー全員のオリジナルをやっているというところも結構好感度が上がる要因だとは思うが,冒頭の”The Eye of the Hurricane"からしてキレている。特にFreddie Hubbardの吹きっぷりが熱い。このバンドが熱狂を生む一番の要因はやっぱりFreddie Hubbardだったなぁなんてついつい思ってしまう。

このアルバムが,Herbie HancockのColumbiaボックスに含まれていたのが海外では初出だったっていうのも信じがたい事実だが,こういう演奏が東京で残されていてよかったねぇと改めて思う私である。まぁライブだけに相応の粗っぽさはあるものの,40年以上経過した今日でも楽しめてしまうところは,やはり評価しないといかんということで星★★★★☆。

Recorded Live at 田園コロシアム on July 23, 1977

Personnel: Herbie Hancock(p), Freddie Hubbard(tp, fl-h), Wayne Shorter(ts, ss), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

2019年11月25日 (月)

これは凄い!Lookout Farmの未発表ライブ音源。

_20191124”Lookout Farm at Onkel Pö's Carnegie Hall" Dave Liebman / Richie Beirach / Frank Tusa / Jeff Williams / Badal Roy (NDR Info)

未発表のライブ音源をリリースするこの"At Onkel Pö's Carnegie Hall"シリーズは,これまでもWoody ShawやらFreddie Hubbardのアルバムを当ブログで紹介してきたが,今回リリースされたのは何と,Lookout Farmである。今から10年以上前にこのブログで彼らのブートレッグを紹介したことがあるが,それも無茶苦茶燃える演奏だった(記事はこちら)のだが,今回発掘された演奏も実に強烈。凄いとしか言えない私の表現力の稚拙さを恨みたくなるような演奏なのだ。まずは皆さんに申し上げたい。買いましょう!(笑),あるいはストリーミングで聞きましょう!

冒頭の"Naponoch"のイントロからして私は金縛り状態だったと言ってもよいが,もはやフリー・ジャズ一歩手前と言ってもよいようなLiebmanのテナーにまず痺れる。家人がいないのをいいことに,ついついボリュームを上げた私である(爆)。続く"The Iguana's Ritual"のファンク・ビートに乗ったRichie Beirachのエレピを聞いて燃えなければ,この手の音楽と相性は悪いと言い切ってしまおう。もはやエグイと言ってもよいようなバンドのサウンドはリスナーを興奮させるに十分。これが時代の勢いと言うべきものかもしれないが,もの凄い爆発力である。そこからほぼLiebmanとBeirachのデュオで演じられる"I am a Fool to Want You"へと移行する,この動と静の転換の見事さに改めてゾクゾクさせられる。そして,ここでのLiebmanの無伴奏カデンツァの何と素晴らしいことよ。眼前でやられたら悶絶必至である。

それに続いてJohn Coltraneの"Your Lady"へなだれ込むのだが,Frank Tusaのベース・ソロは増幅感が強過ぎるが,このバンドにおいてはこれぐらいでないとサウンド的に対抗できないってことにしておこう。ここでのBeirachのエレピでのソロの部分は,ちょっとReturn to Forever的なところも感じさせるが,それもRhodesの音色ゆえか。最後に"Fireflies"で締めるこの時のプログラム,最高である。ファンクとロックが相俟ったようなサウンドに最後まで興奮が収まらないではないか。一瞬たりとも弛緩する瞬間がないこのアルバム,やはり音量を上げて聞くべきだ。

それにしても,何という破壊力。聴衆の反応もむべなるかな。LiebmanとBeirachの共演はまだQuestで聞けるが,このバンドのライブを見てみたかったというのももはや見果てぬ夢であるが,こうして40年以上の時を経て,改めて音源として振り返ることができる私たちは幸せである。この音源がリリースされたことには最大限の賛辞を送りたい。星★★★★★。いやぁ,まじで燃えた。私としてはこれをJohn Coltraneの"Blue World"さえ凌駕する,今年最高の発掘作とせざるをえないな。

Recorded Live at Onkel Pö's Carnegie Hall on June 6, 1975

いPersonnel: Dave Liebman(ts, ss, fl, perc), Richie Beirach(p, el-p), Frank Tusa(b), Jeff Williams(ds), Badal Roy(perc)

2019年11月23日 (土)

まさに三位一体:"Good Hope"。

_20191123"Good Hope" Dave Holland / Zakir Hussain / Chris Potter(Edition)

記事にするのが遅く成ってしまったが,またの名をCCrosscurrents Trioという3人による待望のアルバムである。Dave HollandとクリポタはHolland Quintetの時代から長きに渡って共演を続ける仲であるが,そこにタブラのZakir Hussainが加わるという異色と言えば異色な編成による演奏がどうなるかは実に興味深いものがあった。

結論から言えば,"Crosscurrents"というトリオの名前と相反するような彼らの協調ぶりに思わず嬉しくなってしまう。"Crosscurrents"とは「相反する傾向」というような意味だが,そうした相反する要素が混じり合うことによって,最高の音楽を作り出してしまうことが彼らのミュージシャンとしてのレベルを示している。

ここでのクリポタは私が通常期待するイケイケなクリポタではない。しかし,どのようなフォーマットでも,個性を打ち出しながら素晴らしいフレージングを繰り出すクリポタは健在である。クリポタに限らず,このトリオの演奏は一聴地味だと思わせる部分があるの。だが,それはステレオタイプの「激しさ」がないからだという言い方もできようが,ここでの音楽はそういうタイプの音楽を目指していないのだから当たり前と言えば当たり前なのである。Dave Hollandの見事なベース,そしてZakir Hussainの名人芸のようなタブラに乗ったクリポタのテナー(及び一部ソプラノ)を聞いて,このトリオの力を再確認し,実に嬉しくなってしまった私であった。

タブラが入ることによって,インド的なフレイヴァーが強まるという想定も成り立つわけだが,ここにはそうした民族的な要素はほとんど出てこないと言ってよい。あらゆるジャズ・ファンには容易に受け入れ可能な音楽であると同時に,あらゆる音楽ファンにとっても聞かれるべき傑作と思う。三位一体を具現化したようなこの一体感,実に恐るべしである。星★★★★★。

Recorded on September 21 & 22, 2018

Personnel: Dave Holland(b), Zakir Hussain(tabla, kanjira, chanda, madal), Chris Potter(ts, ss)

2019年11月21日 (木)

アブストラクト度の更に高まったKeith Jarrettの2016年ライブ。

_20191119 ”Munich 2016" Keith Jarrett(ECM)

これはなかなか厳しい音楽である。Keith Jarrettの昨今のソロは,昔に比べるとかなり抽象度が高まったと言うか,ほとんど現代音楽的な感覚さえ与えるものとなっている。しかし,昨年出た"La Fenice"は録音時期が本作より10年も前ということもあるだろうし,場所柄ということもあって,もう少し聞き易い演奏だったと思う。それに比べると,この2016年のミュンヘンで録音された音源は,これはKeith Jarrettとピアノの対峙の瞬間を捉えた音源に思える。特に前半部はとにかくテンションが高く,実に厳しいのである。

ミュンヘンの聴衆たちは万雷の拍手を送っているが,私が会場にいたらどう思っていたかなんて想像をしてしまった。おそらくはこのテンションと音の厳しさによって,どっと疲れが出ていたのではないかと思えてならないのである。ここで奏でられる音楽は芸術として評価しなければならないのは承知していても,冒頭の2曲などはもはや孤高の世界に入り込み過ぎではないのかとさえ言いたくなる。

こうしたパターンは最近のKeith Jarrettのライブには共通しているが,やっぱりPart IIIあたりで美的な感覚を打ち出してきて,聴衆をほっとさせるのはある意味演出と言っても過言ではない。こうしたところに若干の反発を覚えるのは,私が天邪鬼なせいだが,やはり一定のパターンというものが出来上がってしまっているように思える。Part IVがフォーク・ロック的な感覚を打ち出すのもこれもお約束みたいなものだ。まぁ,Keithとしては,最初の2曲で集中力を高めておいて,徐々に聴衆に寄り添っていくって感じなのかもしれないが,こういう感じだが毎度続いてくると,もう出れば買うみたいなことは必要ないかなとさえ思ってしまうし,ストリーミングで十分って気もしてきてしまうのだ。

ディスク2に移行すると,多少聞き易さは増してくるのだが,不思議なことにこちらのディスクには聴衆の拍手が収められていない。なんでやねん?だが,聞き続けていると,結局多くのリスナーにとってはアンコール3曲が一番の聞きものになってしまうのではないかと皮肉な見方をしたくなる。今回やっているのは"Answer Me, My Love",そして"It's a Lonesome Old Town"という渋いチョイスに「虹の彼方に」であるが,これらは実に美しく,このためにライブを聞いているのだと言いたくなってしまっても仕方がないのである。完全即興から解放された感覚がこれらの演奏に表れると言ってもよいような,実にしみる演奏なのだ。

ということで,正直言って私はアンコール・ピースを集成したアルバムを出してもらった方がいいとさえ思ってしまう。もちろん,全体のクォリティの高いことは否定するものではないが,やっぱりこう同じような感じの演奏パターンを聞かされると,さすがに微妙だと感じてしまった。星★★★★。全体としては前作"La Fenice"の方が私の好みだな。

Recorded Live at Philharmonic Hall, Munich on July 16, 2016

Personnel: Keith Jarrett(p)

2019年11月20日 (水)

ワイト島のMiles Davis。超カッコいいねぇ。

_20191117-2 "Isle of Wight" Miles Davis (Columbia)

英国のワイト島におけるフェスティバルに関しては”Message to Love"という映像があり,その中にはMilesの演奏も”Call It Anything"という名前で編集された演奏が収められていたし,この時のMilesの映像は個別にも発売されていて,私も確か保有していたように思うのだが,どこにあるかさっぱりわからない(爆)。しかし,音源となると,正式にリリースされたのは,MilesのColumbiaボックスが初出のようである。ボックスの中では"Filmore"と"Live Evil"の間のディスク#39として格納されている。ということで,久々にそのボックスからこの時の演奏の模様のCDを引っ張り出してきた。

この当時のMilesバンドの演奏は,公式盤では編集を施されたものがほとんどだが,未編集の演奏は数多くのブートレッグで聞けるから,別に珍しいものでもない。よって,このアルバムは,ワイト島の演奏が音源として「公式に」リリースされたことにこそ意義があると言える。そして,このカッコよさ。ロックの世界を凌駕するインパクトを持っていると言っても過言ではない。

この時のメンツで珍しいのはGary Bartzぐらいだろうが,演奏の感じとしてはまさにいつものこの当時のMilesバンド。ジャケ写真のカッコよさも含めて文句のつけようはないわねぇ。問題があるとすれば,件のボックス以外で公式盤としてこれを入手する術がないってことか。まぁ,映像はYouTubeでいくらでも見られるので,それで補完はできるが...。いずれにしても,超カッコいいMiles Davisを浴びるのは至福の瞬間である。できれば大音量で浴びたい訳だが,家庭環境がそれを許さず...(苦笑)。

Recorded Live at the Isle of Wight Festival on August 29, 1970

Personnel: Miles Davis(tp), Gary Bartz(ss, as), Chick Corea(el-p), Keith Jarrett(org), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds), Airto Moreira(perc)

2019年11月18日 (月)

またも出た!Woody Shawのライブ発掘音源。

_20191117 "At Onkel Pö's Carnegie Hall Vol. 1" New Woody Shaw Quintet (NDR Info)

全く同じタイトルのアルバムを昨年,このブログに取り上げた(記事はこちら)が,あちらは1982年の演奏に対し,こちらは1979年である。それだけWoody Shawのアルバムはここのところ,発掘ライブ音源として続々とリリースされているが,このアルバムを購入せねばと思わされたのは,録音があの"Stepping Stone"の翌年,メンツもベースを除いて同じというところが非常に気になったからである。その当時はWoody Shawが最も輝きを放っていた頃と言っても過言ではないと思うが,どのような演奏をするのか気になるのは当然なのだ(きっぱり)。しかも今回は2枚組である。

Woody Shawのライブ音源は1曲当たりの演奏時間が長くなる傾向があるが,このディスク1なんて,2曲で47分余りという長尺。ディスク2も3曲で45分越えというライブならではの演奏時間である。さすがに1曲20分越えは長いかなぁと思わせるディスク1であるが,Woody Shawのラッパを聞いていると,そういう時間が気にならないと思わせるほど素晴らしい。このストレート・アヘッドな響きを聞いて燃えない訳がないのだ。ある意味,ここでの演奏においてはWoody Shawが突出し過ぎているという感覚さえ与えるし,演奏の粗さも気にならない訳ではない。

しかし,私としてはディスク2に収められている演奏とかを聞くと,自然に燃えてしまうのである。私としてはディスク1よりディスク2の方を強く推したくなるのは,演奏のエネルギー量もあるかもしれないが,"Stepping Stone"との近似性もあるのは事実だろう。ディスク2に比べると,ディスク1はややルースな感覚が強いように思えてしまう。そうしたことを考えるとトータルで考えれば星★★★★ぐらいでいいと思う。それでも次から次へと出てくるものは追い掛けたくなってしまうと思わせるのはやはりWoody Shawである。

Recorded Live at Onkel Pö's Carnegie Hall on July 7, 1979

Personnel: Woody Shaw(tp, fl-h), Carter Jefferson(ts, ss), Onaje Allan Gumbs(p), Stafford James(b), Victor Lewis(ds)

2019年11月17日 (日)

Marc Coplandの新作は注目のメンツによるピアノ・トリオ。

And-i-love-her "And I Love Her" Marc Copland(Illusions Mirage)

Marc Coplandの前作"Gary"をこのブログで取り上げたのが約半年前のことだったが,それから短いインターバルでリリースされた新作はピアノ・トリオである。Drew Gress,Joey Baronとの組み合わせは,それぞれがこれまでMarc Coplandとの共演歴があるため,コンビネーションとしては鉄壁だろうと想像するに難くなく,リリースがアナウンスされた時から注目していた。ストリーミングでは結構早くから聞いていたのだが,ようやく現物を入手した。

結論から言ってしまえば,いかにもMarc Copland的な演奏である。いきなりミステリアスな雰囲気から始まるのは"Afro Blue"。そこかしこにMarc Copland的な感覚やフレージングがあって,やっぱりMarc Coplandだと思ってしまう。そして2曲目はこれまでもCoplandがやったことがあるHerbie Hancockの"Cantaloupe Island"であるが,原曲と全然イメージを変えてしまうのがMarc Coplandらしい。それに続くDrew Gressのオリジナル"Figment"はこのトリオの美学を感じさせる演奏になっていて,わかってるねぇと思ってしまう。そして,Marc Coplandのオリジナル"Might Have Seen"なんて,Marc Coplandしかこういう曲を書かんだろうという響きなのだ。

そして,よくよく考えてみれば,このトリオ,John Abercrombieの最後のクァルテットを支えたトリオである。バンマスのAbercrombieを偲んで(?)のジョンアバ・オリジナル,"Love Letter"をやって,それに続くのがこれまた実に美しくも動的な魅力にも溢れたMarc Coplandのオリジナル,"Day and Night"である。こういう演奏をされてしまうから私はこの人のファンをやめられない。そして,本作で最も注目されるであろう"And I Love Her"であるが,和声の使い方はMarc Coplandらしいものの,曲の崩しは限定的。この曲は崩しようがなかったってところかもしれないが,これも十分に美しい演奏である。私としてはついついBrad Mehldauの演奏と比較してしまうが,それでも個性の違いは明確に出るものだ。それに続くのはトリオ・メンバー3者の共作となっているので,即興で仕立てたものだと思われる"Mitzi & Jonny"。ほかの演奏と比べると,ちょっとこの曲は浮いた感じがするのはちょっと違和感がある。しかし,最後を締めるのはCole Porterの”You Do Something to Me"である。3者のソロ交換で締めるところはアルバムのクロージングとしては適切と思わせた。やっぱりいいねぇ。

一点補足するとすれば,このアルバムで特筆すべきはその音のよさだと思う。私はオーディオ・マニアでも何でもないし,家のオーディオ・セットも正直言ってしょぼいものだが,ここでの楽器音のリアリティは素晴らしいと思った。どこかのエロ・ジャケのレーベルとは全然違う,これが本当の趣味のよさ。相変わらずMarc Coplandに甘いと言われそうだが,星★★★★☆。

Recorded in August 2017

Personnel: Marc Copland(p), Drew Gress(b),Joey Baron(ds)

2019年11月16日 (土)

ちょっとしたTommy Flanaganとの逸話。

Mooses

更新が滞ってしまった。

Tommy Flanaganが亡くなったのは2001年11月16日。即ち今日はTommy Flanaganの命日である。純粋に音楽の話ではないのだが,私にはちょっとしたTommy Flanaganとの思い出がある。

多分,2000年ぐらいのことだと思うが,私は仕事でサンフランシスコに出張しており,私の友人にして,コンサルをしてくれていたMikeとノース・ビーチにあったMoose'sに食事に繰り出していた。Moose'sは食事が非常に美味しいレストランで,趣味のいいピアノ音楽を生で聞かせてくれることもあるいい店だった。サンフランシスコに行く機会があると,毎度毎度の如くMoose'sに行っていたのも懐かしい。大概の場合,ノース・ビーチは車を停めるスペースを見つけるのが大変で,Moose'sに入るまでも実は結構時間を要した記憶がある。そんな2000年の出張の折,食事を待つ間にバーで一杯引っ掛けていたのだが,何とも趣味のよいソロ・ピアノが聞こえてきた。誰が弾いているのかなぁと思って見ていたら,どう見てもTommy Flanaganだったのである。

その時,Tommy Flanaganが前の週にブルーノート東京に出演していたはずだと認識していた私だが,そもそも移動もきついし,Tommy Flanaganがこの店に出るとは思ってもいなかったので,正直なところ私自身も半信半疑だった。しかし,MikeにあのピアニストはTommy Flanaganのはずだと言ったところ,そこはアメリカ人,演奏が終了した件のピアニストに歩み寄り,"Are You Tommy Flanagan?"とストレートに聞くではないか(笑)。そして結果はやっぱりTommy Flanaganだったのだが,その後,ちょこっと本人と話す機会があり,貴方もタフだねぇなんて話をした記憶がある。

その頃のTommy Flanaganは体調が思わしくなかったと知ったのは後になってのことだが,ミュージシャンとは言え,当時のスケジューリングには無理があったのではないかと,今更のように思っている私である。そしてその翌年,Tommy Flanaganはこの世を去り,その時一緒だったMikeも2年前にこの世を去った。そしてMoose'sも今やそこにはない。それでもその時の記憶はいつまでも残るということで,ちょっとした逸話である。上の写真はMoose'sのピアノ。ここでTommy Flanaganがピアノを弾いていたと思うと,何とも感慨深い。私が生でTommy Flanaganのピアノを聞いたのは後にも先にもこの時だけ,ということで,今にして思えば非常に貴重な遭遇であった。

2019年11月 7日 (木)

突然,Hank Jonesが聞きたくなって取り出してきたのが,Keiko Leeのアルバムって何のこっちゃ。

_20191104-4"Live at Basie with Hank Jones" Keiko Lee (Sony)

早いものでHank Jonesが亡くなって今年で9年になる。91歳まで現役で演奏を続けていたというのも凄いが,矍鑠とした演奏は多くの人の記憶に残っているはずだ。それでもHank Jonesと言えば,"Somethin' Else"やらGreat Jazz Trioの諸作がいの一番に挙げられてしまうのはまぁ仕方ないのかもしれない。晩年は自身の演奏が多くなったとは言え,Hank Jonesという人はむしろ裏方として様々な音楽を支えるまさに職人であった。同じ兄弟でも,Thad JonesやElvin Jonesとはキャラが違うのが面白い。

そんなHank Jonesのピアノを突然聞きたくなって,取り出したのがこのアルバムというのが,我ながら天邪鬼であるが,Keiko Leeのバックを楚々としたピアノで支えるHank Jonesには,その人柄が如実に表れていると言ってよいと思う。プロ中のプロであるHank Jonesにとっては,ここで演じられているような曲の歌の伴奏なんてのは,それこそ朝飯前ってことになるだろうが,単なる伴奏を越え,楽興をもたらすことができるのがまさにこの人の技だろう。

Keiko Leeのディープな声は,ここでのレパートリーをこなすには十分フィットしており,Hank Jonesのピアノと相まって,実に雰囲気のあるアルバムとなった。決して昼間に聞く音楽だとは思わないが,夜の帳が降りた後に,ひっそりと聞くには適したアルバム。そして,やはりHank Jonesのピアノは録音当時87歳とは思えぬ矍鑠としたもの。今年,ブルーノートで渡辺貞夫を聞いた時にも思ったが,音楽をやっている老人というのは凄いものだと改めて思わされた。いかにもの選曲,いかにもの歌唱,演奏だが,それでもいいものはいいのだ。星★★★★☆。

Recorded Live at ベイシー on March 10, 2006

Personnel: Keiko Lee(vo), Hank Jones(p), 坂井紅介(b)

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