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2019年11月21日 (木)

アブストラクト度の更に高まったKeith Jarrettの2016年ライブ。

_20191119 ”Munich 2016" Keith Jarrett(ECM)

これはなかなか厳しい音楽である。Keith Jarrettの昨今のソロは,昔に比べるとかなり抽象度が高まったと言うか,ほとんど現代音楽的な感覚さえ与えるものとなっている。しかし,昨年出た"La Fenice"は録音時期が本作より10年も前ということもあるだろうし,場所柄ということもあって,もう少し聞き易い演奏だったと思う。それに比べると,この2016年のミュンヘンで録音された音源は,これはKeith Jarrettとピアノの対峙の瞬間を捉えた音源に思える。特に前半部はとにかくテンションが高く,実に厳しいのである。

ミュンヘンの聴衆たちは万雷の拍手を送っているが,私が会場にいたらどう思っていたかなんて想像をしてしまった。おそらくはこのテンションと音の厳しさによって,どっと疲れが出ていたのではないかと思えてならないのである。ここで奏でられる音楽は芸術として評価しなければならないのは承知していても,冒頭の2曲などはもはや孤高の世界に入り込み過ぎではないのかとさえ言いたくなる。

こうしたパターンは最近のKeith Jarrettのライブには共通しているが,やっぱりPart IIIあたりで美的な感覚を打ち出してきて,聴衆をほっとさせるのはある意味演出と言っても過言ではない。こうしたところに若干の反発を覚えるのは,私が天邪鬼なせいだが,やはり一定のパターンというものが出来上がってしまっているように思える。Part IVがフォーク・ロック的な感覚を打ち出すのもこれもお約束みたいなものだ。まぁ,Keithとしては,最初の2曲で集中力を高めておいて,徐々に聴衆に寄り添っていくって感じなのかもしれないが,こういう感じだが毎度続いてくると,もう出れば買うみたいなことは必要ないかなとさえ思ってしまうし,ストリーミングで十分って気もしてきてしまうのだ。

ディスク2に移行すると,多少聞き易さは増してくるのだが,不思議なことにこちらのディスクには聴衆の拍手が収められていない。なんでやねん?だが,聞き続けていると,結局多くのリスナーにとってはアンコール3曲が一番の聞きものになってしまうのではないかと皮肉な見方をしたくなる。今回やっているのは"Answer Me, My Love",そして"It's a Lonesome Old Town"という渋いチョイスに「虹の彼方に」であるが,これらは実に美しく,このためにライブを聞いているのだと言いたくなってしまっても仕方がないのである。完全即興から解放された感覚がこれらの演奏に表れると言ってもよいような,実にしみる演奏なのだ。

ということで,正直言って私はアンコール・ピースを集成したアルバムを出してもらった方がいいとさえ思ってしまう。もちろん,全体のクォリティの高いことは否定するものではないが,やっぱりこう同じような感じの演奏パターンを聞かされると,さすがに微妙だと感じてしまった。星★★★★。全体としては前作"La Fenice"の方が私の好みだな。

Recorded Live at Philharmonic Hall, Munich on July 16, 2016

Personnel: Keith Jarrett(p)

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コメント

ケルンやブレーメンをリアルタイムで聴いていた世代の人間としてはずいぶん遠くまで来てしまったなあと思います。
小難しいジャズや澤野みたいなヨーロッパ系や一般人からかけ離れた音楽ばかりじゃねえと、初心者向きコンピをブックオフやアマゾンでCD70枚ほど安価で買い漁ってみました。
日本人向きはかなりありきたりで、外人さんが選ぶとこうなるのかと、やっぱり50年代後半がジャズのピークだったんだなあ。
コンピのCDを片っ端から聴きながら、なぜかボブ・ディランの文庫解説本を読んでいました。
キース・ジャレットがディランのMy Back Pagesをカバーしているとジャケ写真のページを開いた途端、聞き慣れたチャーリー・ヘイデンのベースが!奇跡だ。背筋がぞっとしました。
何て地味な、役に立たない奇跡なんだ!
感動しました。
こんなこと嘘をついてもしかたありませんから、最近起こった実話です。(笑)

MRCPさん,こんにちは。返信が遅くなりました。

正直言って,昨今のKeithはおっしゃる通り「ずいぶん遠くまで来てしまった」という感覚があります。大病を患ったということもあると影響している部分もある思いますが,これが成熟と言われれば,そういう気もしますし,ある種の取っつきにくさってのが出てきたように思えます。

その一方で,私も昔のブルーノートの音源とかを聞いていると,今のKeithの音楽には感じられない「安心感」のようなものをおぼえてしまいます。今のKeithにも一定のパターンがありますが,明確なパターンは,退屈さよりも,安堵感を与えてくれるのではないかと思います。

Keithno"My Back Pages"も久しく聞いていませんので,改めて聞いてみようと思います。

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