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2019年7月23日 (火)

突然リリースされたScott Hendersonの新作。

_20190721 "People Mover" Scott Henderson(自主制作盤)

前作"Vibe Station"がリリースされたのが約4年前のことであったが,あれはあれでScott Hendersonらしいカッコいいアルバムであったと思う。そんなScott Hendersonの新作が突然リリースされた。Scott Hendersonサイトに行けば,サイン入りCDも販売しているが,基本的にはダウンロード/ストリーミング中心でのリリースだと思われるが,私はCD Babyで媒体購入したもの。今回も前作同様,レコード会社の記載がないので,自主制作ってことだろうが,面白いのは前作でドラムスを叩いていたAdam Hertzがエンジニアリングを担当していることか。結構こういう家内制手工業的なノリがこの筋のミュージシャンには多いよなぁ。

今回のアルバムを聴いてみると,いつものScott Hendersonに比べると,イケイケ感はやや抑制されているように思える。考えてみれば,スコヘンも今年で65歳ってことを考えれば,いつまでもキレッキレのイケイケってのも無理って話もあるが,抑制はされていても,何じゃこれは?みたいな変拍子もあり,十分変態なので長年のファンも満足であろう。

ベースのRomain Labayeはフランス出身のベースで,Nguyên Lêのバンドにも参加しているようである。ドラムスのArchibald Ligonniereもフランス出身のようだが,スコヘンがなぜ彼らと組んだのかは不明だが,市井のミュージシャンはスコヘンに憧れもあるだろうし,リズム側からのアプローチがあったのかもしれない。ってことで,私にとっては馴染みのないリズム隊なのだが,実力は十分に感じられるから大したものだと思った。

残念ながら,スコヘンのようなミュージシャンが自主制作でしかアルバムをリリースできないのが現実であるが,それでもちゃんとクォリティを保ってアルバムをリリースし続けることは立派なことである。こうした活動を支えるのもファンの責任というものである(きっぱり)。ただ,“Vibe Station”との比較といういみにおいては星★★★★。

因みにScott Hendersonのサイトには10月アジア・ツアーという記述があるが,日本には来るのだろうか?と言うより是非また来日して欲しいものである。

Personnel: Scott Henderson(g), Romain Labaye(b), Archibald Ligonniere(ds), Scott Kinsey(e-perc)

2019年7月22日 (月)

Steve KuhnからのJoachim Kühnってなんでやねん(爆)。

_20190720-3 "Abstracts" Joachim Kühn(Label Bleu)

名前の響きが近いからってことで,ミュージシャンのラスト・ネームのアルファベット順に格納されている我が家のCDラックにおいてはSteve KuhnとJoachim Kühnはお隣さんなのである(笑)。ってことで,昨日取り上げたSteve Kuhn盤の近辺から取り出したのが本作。

Joachim Kühnは誰しもが認める硬派のミュージシャンであろう。彼の音楽を聞いていると「甘い」感覚は皆無であり,大体において非常にテンションが高い音楽が展開される。それはJenny-Clark~Humairとのトリオでもそうだし,ソロ・ピアノにおいてもそうである。なので,プレイバックしようとするにはそれ相応の覚悟が必要な場合もある。このアルバムなんかはアルバム・タイトルからして"Abstracts"と敷居が高いと思わせるが,中身はやっぱり硬派である。

ライナーには「ジャズ・ミュージシャンが50歳になったら,何をする?」なんて書いてあって,Joachim Kühnが選んだのが「(エンジニアの)Walter Quintusとスタジオに入って,何の制約もなしに,何も考えず,演奏し,忘我の境地に至る(”Trance")ことだ。」なんて書いている。面白いおっさんだ。

それでもって展開するのが完全即興のピアノな訳だが,聞いていて何となくCecil Taylorを想起させる響きと言うべきか。背筋を伸ばして対峙しなければならないとさえ思わせる音楽だが,美的な感覚も時折挿入するものの,全編を通してタイトル通りアブストラクトな演奏が続く。厳しい音楽であり,聞く者の感情移入は不要という感じの音である。なので,こういう音楽に抵抗がない人間にとっては全然問題ないが,受け入れがたいと感じる人にとっては何がいいのか全然わからんというものだろう。現代音楽のピアノも好きな私にとっては全然問題ないが,それでもこれは「厳しい」音楽だと思う。そういう意味で,50歳の誕生日の記念を兼ねてこんな演奏をしてしまうJoachim Kühnは,やはり変なおっさんである(爆)。星★★★☆。

Recorded on February 15 and August 8, 1993 and on March 15, 1994

Personnel: Joachim Kühn(p)

2019年7月21日 (日)

久しぶりに聞いたSteve Kuhn盤。

_20190720-2 "Watch What Happens" Steve Kuhn(MPS)

私はなんだかんだと言って,Steve Kuhnのアルバムは結構保有している。だが,Steve Kuhnに限った話ではないが,ストリーミングへの依存度が高くなるにつれ,CDをプレイバックする機会は減っている。なので,このアルバムを聞くのも久々であるが,メンツもPalle DaelssonとJon Christensenという,後のKeith Jarrettのヨーロピアン・クァルテットの二人が務めていることもすっかり失念していたのだから,私もいい加減なものである。自分で言うのもなんだが,昔は結構データ魔とも言われていたこともあった私である。しかし,Googleを筆頭とするネット依存が高まって,記憶している必要がなくなると,以前はおぼえていることが当たり前であったことすら記憶に留まらなくなるということが増えてしまった。決していいことだとは言えないよなぁと改めて思ってしまうが,これも時代の流れか。

それはさておきである。MPSレーベルにはコンベンショナルなものから,やや尖がった音楽まで,いろいろなタイプのミュージシャンが去来したが,Steve Kuhnのこのアルバムは丁度中間的な位置づけにあるような感じの音である。ラストに収められたCarla Bley作の"Ad Infinitum"のイントロこそやや不思議な響きを有するが,全編を通してSteve Kuhnらしい瑞々しいピアノ・タッチが聞ける。Steve Kuhnは"Trance"のようなアルバムによって,ともすれば「耽美的」みたいなイメージもあるものの,この人は私にとっては真っ当なジャズ・ピアニストという感じがする。もちろん,独自の美学を炸裂させるアルバムもあるが,多様なスタイルをこなしながらも,モダンな感覚のピアノを聞かせてくれる人と思う。

このアルバムもそういう感じで,収録時間も36分強なので,あっという間に時間が過ぎていく。ちょいとJon Christensenのバスドラが過剰のようにも思える瞬間もあるが,全体としてはそこそこよく出来たピアノ・トリオのアルバムと言ってよいだろう。私としてはもっと好きなSteve Kuhnのアルバムもあるので,星★★★★程度の評価となるものの,久しぶりに聞いてみて,なかなかいいアルバムだと思えた。まぁ,ヴォイスを入れちゃう辺りは時代を感じるが...(笑)。それもまたSteve Kuhnらしいってことにしておこう。

Recorded on July 4, 1968

Personnel: Steve Kuhn(p), Palle Danielsson(b), Jon Christensen(ds)

2019年7月20日 (土)

中古でゲットしたJay Hoggardのソロ・ライブ。

_20190720 "Solo Vibraphone" Jay Hoggard(India Navigation)

数日ぶりの音楽記事の投稿である。前にも書いたことがあるが,私はIndia Navigationレーベルのアルバムは見つければ,基本的に買うようにしている。だからと言って必死に追い掛けている訳ではないが,先日のCecil McBee盤に続いて購入したのがこのアルバム。タイトル通り,Jay Hoggardによるヴァイブ・ソロによるライブ盤である。

Jay Hoggardという人については,GRPレーベルからもアルバムを出しているが,India NavigationとGRPというそれこそ対極みたいなレーベルからリーダー作を出してしまうところがある意味ユニークである。そして,このアルバムはIndia Navigationとしてはフリー度,アグレッシブ度控えめなアルバムとなっている。まぁ,ヴァイブ・ソロなんだから,そんなに激しくなりようもないって気もするが(笑)。

そんなJay Hoggardは今でも活動を継続しているが,レーベルもContemporaryやらGramavisionやらMuseやらと渡り歩いていて,ある意味節操がない(笑)。というか,活動の軸足はどこに置いているのか想像もつかないというのが正直なところである。そんなJay Hoggardの初リーダー作が本作。

本作はクレジットによると,米国の公共ラジオ放送NPRの番組の公開録音によるものらしいが,ヴァイブ・ソロと言えば,Gary Burtonをついつい思い出してしまう中,Gary Burtonがバリバリの現役でやっている1970年代の後半に,初リーダー作としてそうした演奏スタイルに挑むのは結構チャレンジングであったのではないか。それでもヴァイブラフォンらしい美しい楽器の響きを聞かせて,これは結構いけていると思わせる。まぁ,それはIndia Navigationというレーベルから出ているということを考えなければって感じだが,想定していたよりも実に美的かつオーセンティックな響きってところだろう。例外は曲名からして刺激的な”May Those Who Love Apartheid Burn in Hell"で,この曲については,特に冒頭部分はほかの曲とは感触が異なる。それでも決して「ど」フリーではないが。

Jay-hoggard そして,LP時代のジャケを見れば,まぁこれは売れる訳ないわねぇと思わせるものであり,そこは実にIndia Navigationらしいって気もする。尚,このCDにはLPには含まれていなかった"Airmail Special"が追加されているが,やっぱりヴァイブラフォン奏者としてはLionel Hamptonの影響は確実に受けているのねぇってこともわかって,実に興味深かった一枚。星★★★★。

Recorded Live at the Public Theater on November 18, 1979

Personnel: Jay Hoggard(vib)

2019年7月19日 (金)

ブログ更新停滞中...。

事情を知っている人もいらっしゃるが,訳あってブログ更新が停滞中。一両日中の復活を図ります。

2019年7月15日 (月)

”Talk Is Cheap”は素晴らしいアルバムだが,この拡大盤はねぇ...。

Keith-richards-talk-is-cheap ”Talk Is Cheap (Deluxe Version)" Keith Richards(Mindless)

本作のオリジナル・ヴァージョンに関しては,Keith Richardsの初ソロ作にして掛け値なしの傑作という評価は今でも揺らぐものではない。しかし,この拡大盤は正直言って買う価値はなかったと言いたい。

このヴァージョンのキモはボーナス・ディスクに格納された曲群であるが,ジャム・セッションに毛の生えた程度のものをオマケにつけられてもねぇという感覚しかない。ディスカウント目的の併せ買いとして買ったものだったが,これは全くの失敗であった。オリジナル・アルバムには喜んで星★★★★★なのだが,この拡大盤には無星で十分だ。ファンの心理につけ込んだ悪徳商売の代表。私もバカげた買い物をしたものである。くだらない。実にくだらない。

2019年7月14日 (日)

ECM移籍前のMarcin Wasilewski Trio a.k.a. Simple Acoustic Trioのライブ盤。

_20190713 "XX Festival Intenacional de Jazz de Getxo Europar Jazzaldia 1996” Simple Acousitic Trio(Hilargi)

現在はECMレーベルを代表するピアニスト,ピアノ・トリオとなったと言っても過言ではないMarcin Wasilewski Trioであるが,その昔はSimple Acoustic Trioと名乗って活動していた。私もその時代まで遡ってアルバムを保有している訳ではないのだが,彼らのSimple Acoustic Trio名義のリーダー作として唯一保有しているのが,このライブ盤である。

今や,出すアルバム,参加するアルバムの全てが素晴らしいとさえ言いたくなるような彼らだが,このアルバムがレコーディングされた四半世紀近く前から既に完成度が高かったことを改めて認識させられる作品。こういうのを聞いてしまうと,彼らのアルバムは全部買うべきなのかと思ってしまうが,ストリーミングで聞けるから,まぁそこまでは行かない(苦笑)。それでもそう思わせるに十分な魅力に満ちた演奏ぶりである。

_20190713-2 ジャケ裏の作曲者表示が適当だったりといういい加減(Ornette ColemanをD. Collemanと書いたり,WasilewskiをVasilewskiとミスタイプしている)さはあるが,演奏はその限りではなく,彼ららしいリリシズムと陰影を感じさせるこうした演奏をライブでやっているというのが凄いことである。若い時(この時,Wasilewskiはまだ20歳か21歳である)から,無茶苦茶優秀なピアニストだったのねぇと感心せざるをえない。いやいや凄いわ。驚きも込めて星★★★★★としてしまおう。

それにしても,来日時にこのアルバムにもサインしてもらってよかったわぁ(相変わらずのミーハー)。

Recorded Live during the 20th Getxo International Jazz Festival

Personnel: Marcin Wasilewski(p),Salwomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

2019年7月13日 (土)

Fred Herschとビッグバンドの共演やいかに。

_20190710 "Begin Again" Fred Hersch & the WDR Big Band (Palmetto)

私はFred Herschのファンである。それもかなりのと言ってよい。だからと言って,彼が参加しているアルバムを全部買おうとは思っていないが,基本的にはリーダー・アルバムは買う。なので,本作のリリースがアナウンスされた時も買うことは決めていた。しかし,その一方で一抹の不安も抱えていたことも事実である。Fred Herschのピアノ・スタイルはリリカルであるから,それがビッグバンドと共演するとどうなるのか?彼の繊細なタッチが活かされるのかという点が非常に気になっていたからだ。そもそも私はビッグバンドをあまり聞かないから,余計にそう思ってしまうのだ。正直言ってしまえば,Fred Herschのピアノを聞きたいならば,ソロかトリオ,あるいは一部のデュオ音源を聞いていればいいというのが実感だけに,ビッグバンドか~と思ってしまった。それはアレンジャーがあのVince Mendozaだからと言っても,やっぱり不安であった。そしてこのアルバムを聞いてみて思ったことを書いてみたい。

結論から言えば,これは悪くない。Vince MendozaもFred Herschのピアノを意識して,非常にソフトなアレンジを行っている。ある意味,昔のGil Evansのアレンジ,"Miles Ahead"辺りのサウンドのようにも響くと言えばいいだろうか。そして,Fred Herschのオリジナルの曲の美しさもちゃんと活かしている。そうした意味では成功していると言ってよいだろう。だが,ビッグバンドゆえに,ソロイストはFred Herschだけという訳にはいかない。もちろん,主役はFred Herschであることには間違いないのだが,露出は当然のことながら控えめになる。そこをどう考えるかによって,評価そのものにも変化が生じることは仕方がないだろう。

それでも,Fred Herschの持つ音楽の美学,繊細さは十分に残っていて,何度か聞いているうちに最初に感じたような違和感が薄れていくから不思議である。なので,自分としても,このアルバムは一回聞いただけで直感的に判断してはいかんという感 じになってきた。聞くほどにそのよさを感じるようになるというところか。Hersch以外のソロイストも,アンサンブルも善戦していて,このビッグバンドの間口の広さなり,実力なりも感じられる。ということで,私にとってはFred Herschを聞くならいの一番にこれってことにはならないが,昨今のFred Herschの創造力の高まりも評価したくなり,甘いとは思いつつ半星オマケして星★★★★☆としてしまおう。

Recorded between January 28 and February 4, 2019

Personnel: Fred Hersch(p), Vince Mendoza(arr, cond), The WDR Big Band: Johan Horlen(as), Karolina Strassmayer(as), Oliver Peters(ts), Paul Heller(ts), Jens Neufang(bs), Ludwig Nuss(tb), Andrea Andreoli(tb), Andy Hunter(tb), Mattis Cederberg(b-tb,tuba), Wim Both(tp), Rob Bruynen(tp), Andy Hederer(tp), Ruud Breuls(tp), Paul Shigihara(g), John Goldsby(b), Hans Dekker(ds) 

2019年7月11日 (木)

João Gilbertoの訃報からのボサ・ノヴァ続きで,今日はVerveのコンピレーション。

_20190708-2”Novabossa: Red Hot on Verve" Various Artists (Verve)

これを取り上げる前によりコンテンポラリーなミュージシャンによる"Red Hot + Rio"を取り上げてもよかったのだが,正調ボサ・ノヴァを収めたこっちを聞いていた。

このRed HotシリーズはAids撲滅を進めるためのNPOであるRed Hot Organizationが,その活動を推進するためにリリースしているコンピレーション群であるが,本作は”Red Hot + Rio"の番外編として制作されたものと思われる。そこに収められたのはインタールードを含めたVerve音源中心の全23曲のボサ・ノヴァ,サンバの名曲の数々である。

結局はコンピレーションなので,時代の変化とともに,必ずしもボサ・ノヴァ,サンバと言えない音も含まれてはいるので評価は微妙になる訳だが,非常に気持ちよく聞けるアルバムである。そうは言っても,Verve音源中心だけにやっぱりStan Getzの演奏が増えてしまうのだが,それでもRoberto MenescalやらEdu LoboやらTamba Trioやらとおいしいところは押さえてあるので,気楽にボサ・ノヴァ,あるいはブラジル音楽を聞きたいと思ったらこういうのもいいかもねぇ。こういう機会でもないとなかなか取り出さないアルバムだが,それもJoãoのおかげってことで。

2019年7月10日 (水)

今日はJoão GilbertoからのBebel Gilberto。

_20190708 "Tanto Tempo" Bebel Gilberto(Ziriguiboom)

今日はJoão Gilbertoの娘のBebel Gilbertoである。そして母親は昨日取り上げたStan Getzとのアルバムでヴォーカルを担当していたHeloisa (Miúcha) Buarque de Hollandaなので,血筋のよさは保証付きみたいなものだ。WikipediaにはBebelが両親から言われたこととして, "He taught me to be a perfectionist. But my mother taught me how to lose it."なんて書いてあるが,なるほどねぇって感じである。そうやってバランスを保つのかってことだ。写真を見ると,顔は母親のDNAが強いようだが(笑)。

このアルバム,リリースされたのは2000年のことだが,それ以来,このアルバム,結構な売れ行きを示しているらしい。私がこのアルバムを購入する気になった記憶が曖昧だが,やはりJoão Gilbertoの娘がどういう音楽をやるのかに感心があったからだろう。

そして,本作はボサノヴァにエレクトロニカをスパイスとして使ったような実にこじゃれた音楽である。まぁ,これなら一定のリスナーに受けるのもわかるし,欧米でのセールスが好調だったのは,特に米国においては,所謂スムーズ・ジャズ系のリスナーにも受け入れられたってことではないかと思える。本質的にはボサノヴァが根底にあるので,穏やかさが感じられる音楽だが,それに加えてBebel Gilbertoの声がかなり魅力的。正直なところ,私はボサノヴァはシンプルに演奏して欲しいクチなので,エレクトロニカあるいはプログラミングはもう少し控えめにして欲しいと思える"Alguem"のような曲もあるが,それでもまぁ邪魔ってほどではない。

ある意味,イージー・リスニング的にも響く部分もあるが,どういうシーンのBGMにもフィットしそうな音楽である。星★★★★。

尚,Personnelは文字が小さくて老眼にはきついので省略するが,Celso Fonsecaのギターだけをバックに歌う"Samba e Amor"なんて実に素敵なものである。そのほかにもJoão DonatoやCarlinhos Brown等が華を添えている。

2019年7月 9日 (火)

João Gilbertoを偲んで,改めてStan Getzとの共演作を聞く。

_20190707 "The Best of Two Worlds" Stan Getz Featuring João Gilberto(Columbia)

João Gilbertoの訃報を受けて,私がいの一番に聞いたのは38曲入りの「ジョアン・ジルベルトの伝説」であったが,もちろんそれだけでは終われない。と言いつつ,私はJoão Gilbertoのリーダー・アルバムは実はそれしか保有していないのだから,大したことは言えない。ということで,手許にある中で,あまり聞くチャンスは多いとは言えないColumbiaレーベルにおけるリユニオン・アルバムを取り出した。

Stan GetzとJoão Gilbertoは”Getz/Gilberto"の録音時もめたという逸話も残っているが,このアルバムは"The Best of Two Worlds"と大きく出て,しかもJoão Gilbertoはジャケでは笑顔で写っている。まぁ,お仕事でやりましたってことなのかもしれないが,このアルバム録音の翌年にはKeystone Korner出演時の録音が後に発掘され,このブログでも取り上げた(記事はこちら)。なので,実のところ,それほど無茶苦茶な不仲ではなかったのかもしれないが,商売っ気の強いStan Getzに,João Gilbertoが何らかの反感を抱いていたとしても不思議はない。そうした意味で,このリユニオン・アルバムについては,いつまで経っても"Getz/Gilberto"と比較されてあまりいい評判は聞いたことがないのだが,今回,改めて聞いてみて,実はそこそこよく出来たアルバムだと思えた。

まぁ,明らかにGetzが吹き過ぎな部分もあるところは,プロデューサーがGetz自身なのだから仕方ないとしても,その辺にブラジル音楽好きはネガティブな反応を示すことは十分考えられるが,私としては十分許容範囲ってところである。ただ,"Just One of Those Things"とかはJoão Gilbertoにはちょっと不釣り合いだろうと思えてしまう。そうした瑕疵はあったとしても,それでもこの二人の共演を聞けるというのは,先述のライブ盤同様貴重なことだと思えば文句も出ない。ってことで,星★★★★は十分与えらえると思う。

ちなみに,ここで歌っているのは当時のJoão Gilbertoの奥方のHeloisa (Miúcha) Buarque de Hollanda。そういうところも"Getz/Gilberto"にAstrad Gilbertoを出してきたのと同趣向ってのもGetzらしいねぇ。

Recorded on May 21, 1975

Personnel: Stan Getz(ts), João Gilberto(g, vo, perc), Heloisa (Miúcha) Buarque de Hollanda(vo), Al Dailey(p), Oscar Castro-Neves(g), Clint Houston(b), Steve Swallow(b), Billy Hart(ds), Grady Tate(ds), Airto Moreira(perc), Reuben Bassini(perc), Ray Armando(perc), Sonny Carr(perc)

2019年7月 8日 (月)

追悼,João Gilberto。

Joao-gilberto

João Gilbertoが亡くなった。言うまでもなく,ボサ・ノヴァの開祖の一人として,多大な影響力を持つ人だった。そして,"Getz/Gilberto"により,ブラジル音楽とジャズの橋渡しをしたことでもその功績は多大。更に彼がいなければ"Saudade"という表現がこれほど世に認知されることもなかったのではないかとも言いたくなる。まさに巨星墜つとはこのことである。世界はまた大きな宝を失った。

R.I.P.

2019年7月 7日 (日)

1曲目冒頭の響きに驚いてそこでやめてはいけない”Wishes”

_20190706-2 "Wishes" Kochi(East Wind)

先日,East Windレーベルの第1作,その名も"East Wind"のアルバムについて,このブログに書いた。その後,NYに渡った菊地雅章と日野皓正が組んで吹き込んだアルバムが本作である。グループ名のKochiは「東風」であるから,East Windやんけ!って話もあるが,敢えてKochiとした理由は謎である。

それはさておきであるが,このアルバムの冒頭には多くのリスナーが驚き,戸惑うのではないか。まさに雅楽の響きを模したものであり,菊地は琵琶まで弾いてしまうし,更にシンセで笙みたいな音を出しているのだから,これはやっぱり驚く。しかし,ここで挫折しては,このアルバムの本質に触れることなく終わってしまうことは言うまでもない。あくまでも雅楽のような響きは導入部に過ぎず,その後に来るファンク・フレイヴァーこそが本作の魅力である。バンドのメンバーからしても,Anthony Jacksonを除けば,Miles Davisのバンド関係者が集まっていて,Milesの隠遁がなければ,こういう音楽をやっていたのかもしれないと思ってもよさそうな音である。2曲目の"Caribbean Blue"を聞いていると,後の「ススト」のプロトタイプと呼びたくなるような音である。

"East Wind"とは全然タイプが違うが,70年代中盤にこのようなアルバムが作られていたということは結構凄いことではあるが,やはりMiles Davisの影響下にある音楽という評価も成り立つだろう。主役はあくまでも菊地と日野であるが,助演したメンバーもそれぞれに聞きどころありであり,特にDave Liebmanのフルートにはしびれるねぇ。星★★★★☆。

Recorded on August 11, 12 & 14,1976

Personnel: 菊地雅章(p, el-p, org, synth, 琵琶),日野皓正(tp, perc), Steve Grossman(ts, ss), Dave Liebman(ss, fl), Reggie Lucas(g), Anthony Jackson(b), Al Foster(ds), Mtume(perc)

2019年7月 6日 (土)

コレクターはつらいよ(24):Pedro Martinsの新作に1曲客演。

_20190706 "VOX" Pedro Martins (Heartcore)

またも更新が滞ってしまった。そして,ほぼ半年ぶりに「コレクターはつらいよ」シリーズである。今回はKurt RosenwinkelのレーベルからリリースされたPedro Martinsのアルバムである。主題の通り,Brad Mehldauが参加しているのは"Origem"1曲のみであるが,そのほかにもKurt Rosenwinkelはもちろん,クリポタやAntonio Loureiroとかが参加している。更に面白いと思ったのは,このシリーズで前回取り上げたCrane Like the BirdのKyle Craneも参加しているから,この辺の人脈ってつながっているのねぇって感じである。正直言って,このPedro Martinsと言う人の声はやや線が細くて,よく言えば繊細だが,音程が不安定に聞こえるところがあり,歌手としての印象としてはイマイチである。PedroはPedroでも,Pedro Anzarと比べるとだいぶ落ちるという感じである。まぁアルバムとしてはなかなかよく出来ているとは思えるが,だからと言って,Brad Mehldauの参加なかりせば,買うほどのものとは思っていない。

それでもってBrad Mehldauであるが,先日のライブを観た感じとは結構違うように思える。まぁ,曲がかなりのソフト・タッチってこともあるが,結構ポップな感じのソロを取っていて,「いかにも」Brad Mehldauという感じではない。しかし,ソロ後半になるとMehldauらしさも出てくるようには思えるが,この感覚の違いはおそらく本作におけるミキシングによる「音の加工」による影響も大きいと思えた。私としては,いつものBrad Mehldauと違う感じが聞けるというのも悪くないことではあるが,敢えてBrad Mehldauを使う理由があったかと言うと答えは微妙である。それでも全公式音源の保有を目指す以上,文句は言っていられないのである。だから「コレクターはつらいよ」なのだが(苦笑)。

2019年7月 3日 (水)

結局買っちゃったLinda Ronstadtの発掘ライブ。

Live-in-hollywood "Live in Hollywood" Linda Ronstadt(Rhino)

以前,このアルバムをストリーミングで聞いて,非常によい出来だと思ったし,記事には「これなら買ってもいいかなぁと思いつつ,ストリーミングで聞けるのであればそれでもいいかって思うようになってしまった私も変わったものだと思うが,これはそれこそ買ってもよいと思わせるに十分なナイスなアルバム」とまで書いている(その時の記事はこちら)。だったらさっさと買えばいいものを,今頃になってやっぱり買ってしまった。

確かにストリーミングでいろいろな音源を聞けるのはいいのだが,基本的に通勤途上でヘッドフォンで聞く音楽と,しょぼい送致ながら,家のオーディオで聞く音は違うと思ってきたのも事実であるから,やはり保有に値する音楽は購入すべきだと思うようになった。ということで,改めて聞いているのだが,やっぱりこれいいわ。

まさにLinda Ronstadt黄金時代。素晴らしい。YouTubeにその時の映像がRhinoからアップされているので貼り付けておこう。曲は”You're No Good"。

2019年7月 2日 (火)

”Guardian Angels”:これほど購買意欲をそそらないジャケットはそうそうない(爆)。

_20190630-2 "Guardian Angels" Miroslav Vitous (Trio→AMJ)

CDにしてもLPにしても,パッケージは大事だと思う。思わずジャケ買いをしたくなるようなアルバムってのもある一方,音楽的な内容にかかわらず,全く購買意欲をそそらないアルバムも世の中には存在する。本作なんて後者の代表みたいなものだ(きっぱり)。一体,このジャケだけを見てこのアルバムを聞きたいと思う,あるいは買いたいと思うリスナーがいるだろうか?それぐらい疑問を呈したいジャケット・デザインである。ライナーには担当者の記載があるが,よくこれで出したねぇと逆に感心してしまう。こういうのをはっきり言って趣味が悪いと言う。

それはさておきである。このアルバム,今のところMiroslav Vitousのリーダー作となっているが,私の記憶ではリリース当時はジョージ大塚との双頭作扱いではなかっただろうか?そうでなければ,このジャケの前面に二人の顔が並んでいることの説明がつきにくいが,まぁこのアルバムがジョージ大塚の「マラカイボ・コーンポーン」のリリースを受けて開催されたライブの合間にレコーディングされたものだからという説明も可能か。しかし,再発された時の帯にはMiroslav Vitous wih John Scofieldなんて書かれて,実態と違うんじゃないの?と思ったのもCDがリリースされた頃だから,もはや随分前のことである。私が保有しているCDは99年の再発リリースだからもう20年も前やんけ!光陰矢の如し。

中身を聞いてみると,確かにMiroslav Vitousのリーダー作と言ってもいい構成である。アコースティック,エレクトリック奏法で十分なソロ・スペースが確保されているが,エレクトリック・ベースが相当カッコよく聞こえる。しかし,私がこのアルバムを,このジャケにも関わらず購入したのはそのメンツにある。だって,Vitous,ジョージ大塚に加えて,ジョンスコに,ケニカーに山口真文である。これは当然期待したくなって当たり前のメンツと言ってよい。

ではあるのだが,作品としてはセッション・アルバムとしてそこそこの出来とは思いつつ,このメンツならもっとできそうだよねぇと思ってしまう。シャッフル・ビートが爽快なジョンスコ・オリジナルの"Off to Baffalo"とか,フュージョンっぽいよさが出たケニカー・オリジナル「新幹線」(笑)とかもあるのだが,どうもフォーカスが定まらないのだ。ケニカーは結構いい線行っているとも思えるが,ジョンスコはあまりジョンスコらしさを感じさせないしねぇ。

まぁ,一種のセッション・アルバムにそんな完成度を求めてもどうなのかねぇと思うが,繰り返しになるが,このメンツならもう少しハイブラウに攻めてもよかったように思える。ということで,相応の聞きどころもあるが,星★★★ぐらいだろうなぁ。

Recorded on November 9-11, 1978

Personnel: Miroslav Vitous(b, synth), Kenny Kirkland(p, rhodes, el-p, synth), John Scofield(g), ジョージ大塚(ds),山口真文(ss)

2019年7月 1日 (月)

来日が楽しみになってきたCamila Mezaの新作”Ambar”。

_20190630 ”Ambar" Camila Meza & the Nectar Orchestra (Sony Masterworks)

前作"Traces"も素晴らしかったCamila Mezaの新作がリリースされた。今回はストリーミングで対応しようかと思ったのだが,来日が決まってしまってはこれはちゃんと聞かざるを得ない,そしてライブに参戦せざるをえないということで,早速のゲットである。

前作の記事を書いた時に,私は「彼女の声が素晴らしい。更に,彼女のギタリストとしての技量が半端ではない」と書いている(記事はこちら)が,その感覚は本作においても不変である。しかし,今回の新作のキモはそこにストリングスを加えたNectar Orchtstraとの共演にあると言ってよい。これがまた実に素晴らしい。コンテンポラリーな響きも有する中,決してイージーな感覚ではなく,完全なコラボレーションが成立しているではないか。

曲はCamila Mezaのオリジナルに加え,ブラジル系2曲に,Eliott SmithやなんとDavid BowieとPat Metheny Groupの共演作"This Is Not America"が収められているところに,彼女の音楽の指向が聞いて取れるような気がする。"This Is Not America"はオリジナル・ヴァージョンを更にダークにした感覚を打ち出していて面白い。だが,ブラジル系の曲との相性はそれを上回っているように感じられる。やはりチリ出身というラテンの血はこういうところに効いてくるってことだろうか。

尚,最後に収められた"Cucurrucucu Paloma"はオリジナルのライナーには記述がないようなので,シークレット・トラックなのか,日本盤のボートラなのかは不明ではある。ライナーの通り,Camila Mezaのオリジナル,"Fall"で締めてもいいようにも思うが,この古いメキシコ歌謡はクロージングには最適ってことで,聞き終えても実に心地よいアルバムであった。ということで,来日への期待も込めて星★★★★★としてしまおう。いや~,これはええですわ。そして,このアルバムがわずか2日で録音されていることには,正直驚きを隠せない。それって実は凄いことなのではないかとさえ思えるクォリティなのだ。

最近Gretchen Parlatoのアルバムが出てこず,Esperanza Spauldingもちょっと違う世界へ行ってしまっているように思える中で,今や私のこの手のヴォーカリストへの期待はCamila Mezaに集まってしまうということだろう。とにもかくにも来日への期待を高めてくれたアルバムである。

そして,本作とほぼ時期を同じくして,彼女がメンバーとして参加したRyan Keberle & the Catharsisの新作もリリースされている。そっちも注目だよねぇ。ストリーミングでちょっと聞いた感じは,以前のEsperanza的に響いたが,改めてちゃんと聞いてみることにしよう。

Recorded on June 12 & 13, 2017

Personnel: Camila Meza(vo, g), Eden Ladin(p, key, juno, celesta),Noam Wiesenberg(b), 小川慶太(ds,perc), 大村朋子(vln),Fung Chern Hwei(vln), Benjamin von Gutzeit(vla), Brian Sanders(cello)

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