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2019年6月30日 (日)

「ハウス・ジャック・ビルト」:何ともエグい映画で,評価は難しい。

The-house-that-jack-built 「ハウス・ジャック・ビルト(”The House that Jack Built")」(’18,デンマーク/仏/スウェーデン/独/ベルギー)

監督:Lars von Trier

出演:Matt Dillon, Bruno Ganz, Uma Thurman, Siobhan Fallon Hogan, Sofie Gråbøl, Riley Keough

問題作を連発するLars von Trierの新作であるが,これまたR+18に指定されても仕方がないサイコパス映画。この映画が恐ろしいのは,Matt Dilllon演じる主人公Jackが,なぜ人を殺すのかという理由がほとんど提示されないことである。Trierには"Antichrist"って映画もあったが,これも日本的に言うならば,神も仏もあったものではないという感じである。それがラスト・シーンというか,絵画的な感覚さえ示す「エピローグ」によって大団円を迎えるってのが,西洋的宗教感の反映かもしれない。

いろいろ書いてしまうとネタバレになるし,この映画のエピローグの解釈は人それぞれだとは思うが,誰がどう見てもここで示されているのは,下の絵のイメージから想起される物語である。

だが,これだけエグい表現が続くと,絶対2回は見たいと思わないのも事実である。こういう映画がほぼ満席ってのにも驚いたが,どういう客層なのやらと思いつつ,ポップコーン喰いながら見る映画では決してない(きっぱり)。悪い映画とは言わないが,絶対に好きになれない。そうした感覚も含めて星★★☆。David Bowieの"Fame"の使い方はばっちりはまっていたが,それだけでは評価できないし,どっと疲れが出るしねぇ。

Photo_20190629173101

2019年6月29日 (土)

70年代らしい熱い音が凝縮された”East Wind”

_20190629 "East Wind" 菊地雅章(East Wind)

East Windレーベルの発足第一弾を飾るから"East Wind"なのかはさておき,菊地雅章の70年代中盤の実に熱い音を収めたアルバムである。思えば,East Windってレーベルはいろいろなタイプの音楽が混在しているレーベルであったが,日本発のレーベルとして,非常にレベルの高い作品をカタログ化した点で,評価してもし足りないってところだろう。

ここでのベースを務めるJuni BoothはMcCoy Tynerとの共演歴もあるが,まさにMcCoy Tynerの音楽を彷彿とさせる音が冒頭から迸るって感じである。これは激しい。いかにもその当時の音って感じの音である。まぁ,私はその当時はリアルタイムでジャズを聞いていた訳ではないから,後追いでこの時代感ってのを感じている訳だが,時代の個性みたいなものは間違いなく存在していたと思う。ここに収めらっれた音は,まさにそういう感じなのだ。

当時のLP時代において,A/B面1曲ずつってのはなかなかチャレンジングなものだったとは思うのだが,前曲を通じてだれたところを感じさせないのは立派。フロントを構成するのが日野皓正と峰厚介なのだから,おかしなことになる訳はないとは思いつつ,これは強烈である。まぁ,菊地雅章のうなりはどうなのよってのは常々感じてしまうのだが,演奏の暑苦しさ(笑)ゆえにそれほど気になるってほどではない。但し,私にはどうしても馴染めないことは否定の仕様のない事実だが...。

それでも,East Windというレーベルの端緒を成し,時代を切り取ったという観点のみならず,演奏だけ聞いていても,今でも実に楽しめるアルバムだと思う。星★★★★☆。

それにしても,早いもので菊地雅章がこの世を去って,間もなく4年か。私も時間の経過がどんどん早くなる年齢になってしまったってことだな(苦笑)。

Recorded on July 3, 1974

Personnel: 菊地雅章(p), 日野皓正(tp),峰厚介(ts),Juni Booth(b),Eric Gravatt(ds)

2019年6月28日 (金)

Celso Fonseca / Ronald Bastosコンビの第1作。

_20190624 "Sorte" Celso Fonseca & Ronaldo Bastos(Dubas Musica)

私がこの二人のアルバムを聞いたのは"Paradiso"が最初のことであった。そのアルバムがあまりに素晴らしかったので,Celso Fonsecaのアルバムはその後も買っていたが,どうしても"Paradiso"を越えることがないというが正直なところである。だから,最近は買っていないし,先日も何枚かはリッピングして売ってしまったというのが実態なのだ。だが,全て売ってしまった訳ではない。このコンビの第1作である本作(但し,2001年の再発盤)はちゃんと手許に残っている。しかし,久しく聞いていなかったので,本当に久しぶりに聞いたのだが,これがまた何ともシンプルで穏やかなアルバムであった。

一部にストリングスやJacques Morelenbaumのチェロが入る以外は,Celso Fonsecaの弾き語りである。これが実に心地よいボサノヴァ的感覚を生み出して,久しぶりに聞いて,こんなによかったのかと思ってしまった。多分,私の保有しているCDには同じような感覚を与えてくれるものが何枚も眠っている可能性も高いが,こんなことではいかんねぇ(苦笑)。私にとっては”Paradiso"を上回るものではないとしても,これは実によかった。ということで,反省も込めて星★★★★☆。

いずれにしても,久々に"Paradiso"も聞いてみることにしよう。尚,ライナーには「幸運」の文字が躍っているが,ポルトガル語で"Sorte"は「幸運」の意味なんだねぇ。改めてこの作品の魅力に気づけた私は「幸運」だったってことで(笑)。

尚,Ronaldo Bastosはソングライターとしての参加であり,演奏には関わっていないというところも実は結構凄いことだと今更ながら思える。

Personnel: Celso Fonseca(vo, g), Jacques Morelenbaum(cello, arr), Eduardo Souto Neto(arr) with strings

2019年6月27日 (木)

今更ながらNina Simoneにしびれる。

_20190623-3 "Jazz as Played in an Exclusive Side Street Club" Nina Simone(Bethlehem)

日本においては「ファースト・レコーディング」として,海外においては"Little Girl Blue"としても知られるNina Simoneのデビュー・アルバムである。私はこのブログにも何度も書いているように,ジャズ・ヴォーカルの熱心な聞き手ではないが,その一方ではソウルにしろ,シンガー・ソングライター系は男声/女声問わずちゃんと聞いているし,好きなミュージシャンも沢山いるから,やはり嗜好の問題ってところかもしれない。一方,Nina Simoneはその後の活動を踏まえれば,ジャズ・ヴォーカルの範疇に留めることには抵抗があるし,事実Rock & Roll Hall of Fameの殿堂入りもしているから,米国においてもそういう捉え方をされていると言ってよい。

しかし,Nina Simoneについて,私が保有しているアルバムはこれだけなのである。これは中古で入手したはずだが,そのまま放置しており,ほとんど聞いた記憶がないという体たらくである。なので,Nina Simoneとはほぼ縁のない生活を送ってきた私だが,今回改めて聞き直してみて,このアルバムをちゃんと聞いてこなかったことを深く後悔した私である。素晴らしい歌唱,そして声である。とても録音当時24歳だったとは思えない成熟ぶりではないか。

そして,その成熟度合いは,本作に含まれている"I Loves You, Porgy"が英国The Guardian誌が選ぶNina Simoneのトップ10ソングの第1位に選ばれていることからしても明らかだろう。本作はその後のNina Simoneのキャリアの出発点となり,基盤となったということで,実に意義深いアルバムであったということになる。

こういうアルバムをまともに聞いてこなかったことを反省し,この期に及んでではあるが星★★★★★としよう。とにもかくにも素晴らしく,渋い。

Recorded in 1957

Personnel: Nina Simone(vo, p), Jimmy Bond(b), Al Heath(ds)

 

2019年6月26日 (水)

Leszek MożdżerによるKomeda集。何とも美しい。

_20190623-2 "Komeda" Leszek Możdżer(ACT)

タイトル通り,Leszek MożdżerがKrzysztof Komedaの曲を演奏したソロ・ピアノ集である。Komedaの曲では最も知られているのは映画「ローズマリーの赤ちゃん」の中の”Sleep Safe and Warm"だろうが,ちゃんとそれも収録されている。

私にとって,ポーランドと言えば,Marcin Wasilewskiである。なので,ファンの方には申し訳ないが,Leszek Możdżerについては何枚かアルバムは保有していても,私にとってはMarcin Wasilewskiを上回る存在とは言えない。なので,プレイバック回数もそんなに多い訳ではないのだが,久しぶりにこのアルバムを聞いてみて,その美しさには改めて驚かされてしまった。さすがショパンを生んだ国である。激しいタッチを示す瞬間もあるにはあるのだが,基本的にはロマンティシズムに満ちたアルバム。そう言えば,Marcin WasilewskiもKomeda曲集を吹き込んでいるが,やはりポーランドのピアニストに対するKomedaの影響力は絶大ってことだろう。そうは言いながら,私はWasilewskiもECMに吹き込むようになってからが基本(例外的に保有しているのはライブ・アルバムだけ)なので,Komeda集は聞いていないのだが...。

いずれにしても,本作はピアノの美しい響きに身を委ねていればOKみたいな感じだが,ライナーにもある通り,これならクラシック好きのリスナーにも十分受け入れられるものと思う。美しくて,うまい。大したものである。星★★★★☆。

Recorded on March 8-11, 2011

Personnel: Leszek Możdżer(p)

2019年6月25日 (火)

本当はLPで欲しかったが,CDでゲットした”Alternate Spaces”。

_20190623 "Alternate Spaces" Cecil McBee(India Navigation)

India Navigationというレーベルは,いかにも1970年代を感じさせる音のアルバムを出していて,見つければ買うようにしているレーベルである。私が保有しているところで言うと,Chico Freeman,Hamiet Bluiett,Arthur Blythe,そしてDavid Murrayって感じで,全然追っかけているうちにも入らないが,あくまでも見つければ買うと思ってもらえればよい。

そうしたIndia Navigationレーベルのアルバムの中で,何とか入手したいと思っているのが,Pharoah Sanders盤と本作であった。Pharoahの方はアホみたいな値段がついているし,そもそも現物も見たことがない。その一方,このCecil McBee盤も中古市場では結構な高値がついているので,ほとんど諦めムードみたいなところもあったのだが,結構格安な価格で出品通知を受信したので,即発注である。国内盤で帯がなかろうが,ソフトケースに入れ替えてあろうが,そもそも私がソフトケース利用者だけに何の問題にもならない(笑)。

このアルバムに惹かれるのは,まずもってこのジャケットである。何とも雰囲気のある写真ではないか。だからこそ,このアルバムは本当はLPで入手して,部屋にこのジャケを飾りたいと思ってしまうようなアルバムである。

音楽に関しては,決して取っつきやすいものではない。半ばフリー的な感覚を残しながら,しかし決して「ど」フリーではない。いかにもIndia Navigationレーベルらしい演奏と言ってもよい。所謂ロフト・ジャズの時代を切り取った音楽。そうした中で魅力的に響くのがChico Freeman。フルートはイマイチながら,バスクラ,テナー,ソプラノでは実にいい感じの音とフレージングを提供している。ラッパのJoe Gardnerはよりフリー的なアプローチを聞かせるって感じか。Don Pullenがあまり暴れていないのは意外と言えば意外。

そうした中で,Cecil McBeeはリーダー,コンポーザーとしてきっちりアルバムをまとめたって感じだが,私にとってはやはりChico Freemanの存在感が大きいアルバム。まぁ評価としては星★★★★ってところだろう。

Personnel: Cecil McBee(b), Don Pullen(p), Chico Freeman(ts, ss, b-cl, fl), Joe Gardner(tp), Allen Nelson(ds), Famoudou Don Moye(perc)

2019年6月24日 (月)

発掘音源その3はWoody Shaw。

Basel-80 "Basel 1980" Woody Shaw(Elemental Music)

発掘音源という観点で,このところのWoody Shawの音源ラッシュはかなり凄いことだと思う。早いもので今年で没後30年ということになるWoody Shawであるが,彼の評価を改めて高めるに値する音源が続々とリリースされるのは非常にいいことだと思う。これも先日リリースされたアルバムであるが,ライブにおける彼の演奏の質の高さを改めて実証するような音源である。タイミングで言えば,Columbiaレーベルで"For Sure"をリリースした時期のライブ音源であるが,脂が乗り切った感じとはまさにこのことか。出る音源のほとんどが満足の行くレベルにあるってのは,結構凄いことだし,どれだけ彼らのライブが充実していたかの証左であろう。

冒頭の"Invitation"からして実に渋い。普通ならばもう少し速いテンポでやりたくなるところをミディアムで演奏して,つかみはOKという感じである。そして"Stepping Stone"でもやっていたVictor Lewisのオリジナル"Seventh Avenue"でギアを上げる。次の"In Your Own Sweet Way"でフリューゲルホーンに持ち替え,一転してリリカルなプレイを聞かせるが,ソロになると熱いフレーズも交えた演奏に転じていく。こういうのを聞くと,ライブの筋書き,あるいはメリハリをちゃんと考えているねぇってのがよくわかる。そして,1stセットの締めは"Stepping Stone"である。ちょいとメロディ・ラインは軽く響くが,Woody Shawのソロの切れ味の鋭いことと言ったら...。Carter Jeffersonとのソロ交換もたまりまへん。聴衆が燃えるのも当然である。そして,それに煽られたかのようなLarry Willisのピアノ。お~いぇい!の世界である。

ディスク2は"Love Dance"で幕開けである。Joe Bonnerが書いた,曲名とはややアンマッチと思えるダークでモーダルな曲は,実にWoody Shawにフィットした感じがする曲である。Larry Willisのソロが先発するが,これまたカッコいい。しかし,やはりこの曲での主役はWoody Shawのソロである。ラッパのフレーズってこうあるべきだとさえ言いたくなるような見事なソロと言いたい。Woody Shawに比べるとStafford Jamesのベース・ソロなんかは冗長な感覚が増してしまうのは仕方ないところか。そして,"'Round Midnight"でも曲とのフィット感が半端ではない。この曲は何と言ってもMilesのヴァージョンが有名なので,Woody Shawも例のブリッジの部分等,アレンジメントはかなりの部分で「採用」しているが,このWoody Shawヴァージョンも十分に魅力的。そこからいきなりStafford Jamesのオリジナル"Teotihuacan"へなだれ込む。ここでも火を噴くようなWoody Shawのフレーズを聞いているだけで,多くのリスナーは満足してしまうはずである。そして,それがCarter Jeffersonのソプラノにも火をつけるって感じだ。カッコよ過ぎである。エンディングは”Theme for Maxine"。最後にオマケで翌年のオーストリアにおける"We'll Be Together Again"が入っているが,これはメンツが変わって,ワンホーン。ブレーメンでの同じクァルテットでのライブにはこの曲は含まれていなかったから,これもよしとしよう。

ってことで,ブレーメンのライブとほぼ同列に捉えてもいいと思える出来のアルバムであるが,ブレーメン盤をより高く評価して,これは星★★★★☆としよう。

いずれにしても,私としてもこういうWoody Shawの発掘音源ばかり聞いていないで,Columbiaのボックスを再聴して,改めて彼の楽歴を振り返るも必要だと思ってしまった。

Recorded Live at Foyer Stadtthater, Basel, Switzerland on January 16, 1980 and in Lustenau Austria on June 20, 1981

Personnel: Woody Shaw(tp, fl-h), Carter Jefferson(ts, ss), Larry Willis(p), Stafford James(b), Victor Lewis(ds), Mulgrew Miller(p), Tony Reedus(ds)

2019年6月23日 (日)

発掘音源2枚目はNeil Young。Stray Gatorsとのライブってのがいいねぇ。

_20190622-2_20190622154101"Tascaloosa" Neil Young & Stray Gators(Reprise)

発掘音源の2枚目は兄貴ことNeil Youngである。彼が1972年に"Harvest"をリリースした後のライブ活動の記録ってことになるだろうが,Stray Gatorsとのライブと言えば"Time Fades Away"である。以前から"Time Fades Away 2"的なアルバムを出す,出すと兄貴は言っていたようだが,ついに先日リリースされたのが本作である。

何と言ってもこのアルバムのポイントは曲である。"After the Gold Rush"やら"Heart of Gold"やら"Old Man"やら"Don't Be Denied"をやっていることからしてポイントが高い。やはりこの頃のNeil Youngの音楽は実に魅力的である。ストリーミングで聞いた時は,ちょっと軽く響いたように感じたが,CDで聞くといい感じに響くから不思議である。やはり通勤途上に「ながら」で向き合っているのと,部屋で聞くのでは環境が違うってことだろうなぁと思うが,いずれにしてもこれは実にいい。グランジのゴッドファーザー化したNeil Youngもいいが,往年のファンってやっぱりこの辺を最も好んでしまうのだろうと言わざるをえない。

実に瑞々しいフォーク・ロックとでも言うべきアルバムだが,私の初期の音楽体験にかなり大きな影響を与えたのがCSN&Yの”4Way Street"だったことからしても,そこから45年近く経過しても,こういう音楽に対するシンパシーは全然変わらないってことだ。私も芸がないと思うが,こういうのは星★★★★★しかつけようがないのだ(笑)。それが惚れた弱みってことだ(と開き直る)。久しぶりに"Time Fades Away"のLPでも聞いてみるかね。

Recorded Live at University of Alabama on February 5,1973

Personnel: Neil Young(vo, g, p, hca), Ben Keith(pedal steel, vo), Jack Nitzche(p, vo), Tim Drummond(b), Kenny Buttrey(ds)

2019年6月22日 (土)

発掘音源の嵐。一発目はKing Crimson。

_20190622 "Live in Newcastle" King Crimson(DGM Live)

昨今,いろいろな発掘音源がリリースされており,私のような年寄りは,新しい音楽も聞きたいと思うものの,古い音源に郷愁を感じてしまうことはよくある話だと思う。ということで,最近,私が購入する音源のうち,こうした発掘音源が占める比率が高まっているのだが,今日はそのうち,King Crimsonである。

私はKing Crimsonの遅れてきたファンと言ってよく,昔はYesの方が好きだったということはこのブログにも書いたことがある。しかし,今やYesがヨイヨイ・バンドと化したのと対照的に,King Crimsonは今でも現役感満々の演奏を聞かせていて,それらは近年のライブ盤でも聞くことができる。そうしたKing Crimsonのアルバムの中でも,私は"Lark's Tangues in Aspic"(太陽と戦慄)が一番好きで,その時のラインアップのアルバムに魅力を感じている。なので,後年リリースされたライブ盤も結構持っているし,”Larks’ Tongues in Aspic"15枚組ボックスも保有しているのだから,そのボックスの間隙を埋めるようなこうした音源までフォローしなくてもいいんじゃないの?と言われてしまえばその通りである。しかし,この時期,このメンツ(Jamie Muir入り)というこの音源には抗い難い魅力があり,ついつい買ってしまうのが「性」と言うやつである。

そして,この音源,やはりアグレッシブなKing Crimsonの本質を捉えていて,実に嬉しくなってしまう。ほとんどフリー・ジャズみたいな展開を示す瞬間すらあり,この人たち,完全にロックのカテゴリーを超越してしまっていると思わせるのだ。このアルバムは途中に挿入される"Improv"2曲を覗いて,"Larks' Tongues in Aspic"の通りの曲順で演奏されるが,演奏はほぼ完成レベル。そして"The Talking Drum"における完璧なグルーブを聞けば,興奮しないリスナーはいるまい。残念ながら最後の”Larks’ Tongues in Aspic Part 2"は,ここから盛り上がるというところでフェード・アウトとなるのが実に惜しいが,それでもこの音源は,アルバムが完成に向かっていく姿を捉えていて,かなり貴重と言ってよいと思う。

いずれにしても凄い人たちである。星★★★★★しかあるまい。改めてボックスの音源も聞いてみるか(大変だけど...)。

Recorded Live at Odeon in Newcastle on December 8, 1972

Personnel:Robert Fripp(g, mellotron), David Cross(vln, mellotron), John Wetton(b, vo), Bill Bruford(ds), Jamie Muir(perc, allsorts)

2019年6月20日 (木)

今更ながらのHadrien Féraud(笑)。

_20190619 "Hadrien Féraud" Hadrien Féraud(Dreyfus)

近々Dean Brown,Dennis Chambersとの強力トリオで来日することが決まっているHadrien Féraud。名前は昔から知っているし,音も聞いている。しかし,日本には何度か来ているはずだが,ライブでは見たことがない。しかし,これだけのバカテク・ミュージシャンである。見たくなるのが当たり前ということで,今回こそはということでライブに参戦する気満々の私である。

本作はストリーミングでも聞けるが,保有していてもいいだろうってことで,中古でゲットしたものだが,改めて今回聞いてみて,この人のベースのフレージングは,一般的なベースのそれではない。まるでスパニッシュ・ギターのようなフレージングさえ聞かせる技はまさにバカテク。正直言って,やり過ぎだろうって気もする。Dominique Di Piazzaのような別のバカテク・ベーシストとソロ合戦までやらなくたって...と思われても仕方がないが,録音当時,まだ20代前半だったHadrien Féraudの「若気の至り」感ありありである。しかし,超絶技巧ハード・フュージョンの快感みたいなものを感じずにはいられないのも事実で,私としては快感の方がやり過ぎ感をはるかに上回ってしまう。

参加しているミュージシャンは一部ゲストを除けば,あまり知らない人の名前が並んでいるが,これだけまぁよくハードにやるわって感じである。75分に渡ってこういう演奏を聞かされると,最後にはどっと疲れが出てしまうが,それでもJohn McLaughlinは誰がどう聞いてもJohn McLaughlinであったということを改めて感じさせる個性炸裂を楽しむことも一方でできてしまう。その一方で"Giant Steps"を入れてしまうのはJacoの"Donna Lee"にあやかったか?みたいなところもあり,やっぱり若いねぇって思ってしまう。

それでもついつい耳をそばだたせるだけの魅力はあるアルバムであり,今回,30代半ばになったHadrien Féraudの生の演奏を聞くのも楽しみであるが,その前のお勉強ってことで。この激しさについつい評価も甘くなり,星★★★★。

Personnel: Hadrien Féraud(b,key),Jean-Pierre Como(p, synth), Gerald Féraud(key), Thierry Eliez(p, synth), Michael Lecoq(key), Jim Grandcamp(g), John McLaughlin(g), Bireli Lagrane(g), Jean-Marie Ecay(g), Dominique Di Piazza(b), Linley Marthe(b), Jon Grandcamp(ds),Julien Teleyan(ds, perc), Damien Schmit(ds), Mokhtar Samba(ds, perc), Vincent Peirani(accor), Marc Barthoumieux(accor), Flavio Boltro(tp)

2019年6月17日 (月)

もはやカテゴライズ不能:Esperanza Spauldingの“12 Little Spells“。

_20190615-2 ”12 Little Spells" Esperanza Spaulding(Concord)

先日,ショップに久々に行ったときに,併せ買いのディスカウントをゲットするために,最後に付け足したのが実はこのアルバムであった。昨年,ストリーミングでリリースされ,音源は以前から聞けたし,今でもストリーミングで聞けるのだから,別に媒体を買わなくてもいいではないかと言われればその通りだが,まぁいいや。

それでもって,既にストリーミングで聞いていても,そこかしこに現れるのは,いかにもEsperanza Spauldingらしいフレージングであったり,彼女の歌いっぷりな訳だが,もはやこれはジャズにカテゴライズする意味はほとんどないと思えるアルバムだと思った。もともと公開されていた12曲に,本作は4曲を追加してフィジカルでリリースしたものだが,強烈なコンセプト・アルバムと呼べるもので,相当好き嫌いはわかれるはずである。

私はこの人の前作"Exposure"(世界7,777枚限定だそうだ)は存在すら知らなかったからもちろん聞いていないし,その前の"Emily's D+Evolution"も保有はしているものの,ブログの記事にはしていない。その一方で,オーチャード・ホールやBlue Note東京でのライブは見ているので気にはしているのだが,どちらかと言えば,私にとってはこの人はライブの方がフィットする感じである。今回のアルバムも,実に良質の音楽とは思えるが,Esperanzaの持つ心地よいファンク・フレイヴァーが明確には打ち出されていないところが,私としては残念にも思えてしまう。

どちらかと言えば,昨今のEsperanza Spauldingは,アーティストとしての創造への欲求が強まっていて,いろいろな取り組みをしているという感じがするが,それが私のようなリスナーの受容度を越えてしまったような気がするということである。そういう意味では全面的には支持できないというのが本音だが,メンバーによる演奏は実によく出来ていて,特にレギュラーで活動しているギターのMatthew Stevensの貢献度が大きい。ということで,私としては試みは評価して星★★★★ぐらいってところか。こういう風に書いていると,私の音楽の嗜好というものが,以前ほど何でもありではなくなって,好みってのが明確になっているように感じるのはやはり加齢のせいってことだろうなぁ(苦笑)。

Personnel: Esperanza Spaulding(vo, p, org, b, orchestral bass drums), Mathew Stevens(g, b, vo), Justin Tyson(ds, org, synth, beats, prog), Aaron Burnett(sax), Burnis Travis(b, vo), Morgan Guerin(b, synth, vo), Corey King(vo), Rob Schwinner(continuum), Eric Reed(fr-h), Laura Weiner(fr-h), Brandon Ridenour(tp), John Blevins(tp), Richard Harris(tb, b-tb), Julietta Curenton(fl, piccolo), Katie Hyun(vln), Sami Merdinian(vln), Margaret Dyer Harris(vla), Yves Dharamraj(cello), Reiki Choir(vo)

2019年6月16日 (日)

Gilberto Gil全面参加のRoberta Sáの新作。

_20190615 "Giro" Roberta Sá(Deck)

Roberta Sáのアルバム,"Delirio"がリリースされたのが2015年10月ぐらいで,このブログに記事をアップしたのが翌年2月のことであった(記事はこちら)。その時にもこの手の音楽についつい惹かれてしまう私は大いにほめたわけだが,それから4年弱の時を経ての新作である。今回のキモはアルバムにGilberto Gilが全面的に参加していることだと思うが,曲作りにも全面的にかかわっているのだから,相当の入れ込み具合である。ついでに4曲目にはJorge Ben Jorも参加して場を盛り立てているが,本質的には相変わらずのRoberta Sáの清楚な声を聞いていればいいって気もする。

本作も実にいいアルバムだと思うのだが,私としてはよりシンプルな音,例えば8曲目"A Vida de Um Casal"のような感じで全編攻めてもらうと更にこのアルバムに評価が高まったのではないかと思える。結局は音に対する好みだと思うのだが,私がブラジル音楽にはメロディ・ラインとシンプリシティを求めてしまう傾向が強いのかもしれないと思ってしまう。そういうことで,3曲目"Cantando as Horas"のような曲にはバックのアレンジが過剰に感じられて,違和感を覚えるのも事実なのだ。

しかし,全編を繰り返し聞いていると,段々味わい深さも増してくる部分もあって,いいアルバムだとは思えてくる。そういう意味でも3曲目の浮いた感じが何とも惜しい。そこを減点して星★★★★としておこう。

Personnel: Roberta Sá(vo), Jorge Ben Jor(vo), Gilberto Gil(g), Ben Gil(g), Alberto Continentino(b), Domenico Lancellotti(ds, perc), Pedro Miranda(perc, vo), Yuri Queiroga(g), Danilo Andrade(key), Laurenco Vasconcellos(vib), Pedro Mibielli(arr, vln), Glauco Fernandez(vln), Nicolas Kurassik(vln), Daniel Albuquerque(vla), Iura Ranevsky(cello), Mestrinho(accor), Jorge Continetino(arr, fl), Marion Sette(arr, tb), Diogo Gomes(arr, tp, flh), Raul Mascarenhas(ts, fl), Ze Carlos "Bigorna"(as, fl), Milton Guedes(fl), Joana Queiroz(cl), Milton Guedes(bugpipe), Banda Giro(arr), Felipe Abreu(arr), Alfredo Del-Penho(vo), Joao Cavalcanti(vo)

2019年6月14日 (金)

上海に行って思ったこと。

Photo_18

2泊3日で上海に出張してきた。上海に行くのは結構久しぶりで,多分3年半ぶりぐらいになると思うが,久しぶりに行ってみて,随分街が綺麗になったなぁって感じがした。初めて上海に行ったのはずいぶん昔のことだが,その頃は道路もまだそれほど整備されておらず,タクシー運転手の車幅感覚に感動した覚えがあるが,今やインフラも整備された都会の街であった。

それはさておき,今回,中国に出張ということで,Facebookはつながらないと思っていたのだが,条件次第ではつながることがわかった。それが上海だけなのか,それ以外の都市でもそうなのかは,最近中国に行く機会が減っている私にはわからないが,多分次の条件ならつながるはずだ。

  1. 日本のキャリアのSIMを使っていること
  2. 現地でWIFIではなく,キャリアに接続すること

多分,これだけである。ただ,接続にはポーズがかかったような間が発生するから,当局には間違いなくモニタリングされているんだろうなぁと思いつつ,かまわずアクセスしていた私である。

今回は短い出張だったとは言え,中華料理三昧みたいな生活をしていて,相当胃には厳しい出張だったと言えるが,それでも現地の食は堪能できたと言ってよい。これぞ出張者の役得って気もするが,たった二晩の食事でも,かなりの破壊力で迫ってきた。こういう時の朝食はお粥に限るってことで,最終日の朝もお粥をいただいたわけだが,それでも帰国のフライトでは結構どよ~んとした感じで過ごしていた私である。だから普通なら機内エンタテインメントで映画を見るのが通例の私が,今回は全く映画を見ていないのである。フライトも短いから中途半端だって判断もあったとは言え,ちょっともったいなかったかなと思っている。

まぁ,今後も当分は中国に出張する機会はそんなにないだろうから,今回は今回ってことで。それにしても,空港も随分と変わった感じがして,以前との違いを強く感じた私であった。ということで,写真はホテルから撮った上海の街。近所にあったユニクロのビルが妙に目立っていたなぁ。

それにしても疲れた。いつも通り出張はつらいよってことで。

2019年6月12日 (水)

中古で仕入れたジョンスコ,77年のライブ。

_20190611 "Live" John Scofield(Enja)

このアルバム,昔から存在は知っていても,なかなか縁がなかったものである。それでも,結構ジョンスコらしからぬバンドのメンツも気になるところであったし,一部Apple Musicでも聞けるこのアルバムの曲を聞いて,おぉっ,こんなによかったのかと思って,隙あらば(笑)購入するかと思っていたのも事実である。そして,先日ショップに久しぶりに行ったら,丁度適当な値段での中古があった,あった,ってことでの購入である。

このアルバム,ジョンスコがトリオ・レーベルから初リーダー作を吹き込んだのが1977年だと思うが,それとほぼ時期を同じくして,ドイツのEnjaからリリースされたライブ・アルバムである。だが,私はこのアルバムをジャズ喫茶でもあまり聞いた記憶がないというのが不思議だが,既にこの段階で,ジョンスコの変態的なフレージングは出来上がってしまっている。元からこういう人なのだ。実はEnjaに吹き込んだ81年のライブは既に保有している私だが,ライブ盤としての熱量としてはこっちの方が上ではないかと,今回聞いて思ってしまった。特にCD化の際追加された"Air Pakistan"は強烈。リリカルなピアノと思われがちなRichie Birachが激しいピアノ・プレイを聞かせており,バンドとしてのドライブ感が実にいいねぇ。

Milesのバンド,あるいはデニチェンとのファンク・バンドとも響きは違っても,最初からジョンスコはジョンスコだったのだと改めて感じさせられ,そして実にいいアルバムだと思ってしまった私。私がジョンスコをちゃんと聞き始めたのはGramavisionレーベルの時代からだが,このアルバムを聞き逃していたのは失敗だったと強く感じてしまった。反省も込めて星★★★★☆としよう。

それにしても,"Softly as in a Morning Sunrise"冒頭でのピアノのカデンツァは,実にRichie Beirachらしいと思ってしまった。これも個性ってところだな。

Recorde Live at "Domicile" in Munich on November 4, 1977

Personnel: John Scofield(g), Richie Beirach(p), George Mraz(b), Joe LaBarbera(ds)

2019年6月10日 (月)

久々にショップに行って仕入れたアルバムから,今日はMatt Slocum。

_20190609 "Sanctuary" Matt Slocum(Sunnyside)

最近はほとんどショップに行くこともなくなり,CDを購入する場合でもほぼ通販に依存しているが,先日,久しぶりにライブ前に時間があったので,ショップを覗きに行った。覗きに行くとついつい手が出てしまうということで,何枚かゲットしてきたのだが,そのうちの一枚がこれである。

Matt Slocumって名前は認識していたが,アルバムを購入するのはこれが初めてのはずである。今回は明確にメンツ買い。先日のジョンスコとのライブの記憶も新しいGerald Claytonがピアノ,そしてBrad Mehldau Trioを支えるLarry Grenadierがベースとあっては,これはちょっと期待してしまう。まぁ,よくよく見てみれば,Matt SlocumとGerald Claytonは結構共演作が多く,結構レギュラーに近いかたちで活動しているって感じだろうか。

本作やこれまでのアルバムのジャケを見ると,この人の美的なセンスみたいなものを感じさせるが,ある意味ECMのアルバムにも共通するようなテイストがジャケからは感じられる。当然,ゴリゴリのジャズではないだろうと思って聞き始めてみると,なるほど静謐な響きの中に,リリシズムを感じさせる演奏である。これがなかなかいい。決してダイナミズムに溢れた音楽だとは思わないが,決してカクテル的でもない。丁度いいぐあいのリリシズム,美的感覚と言えばよいだろうか。趣味がいいのである。逆に言えば,ドラマーがリーダーのアルバム,あるいは冒頭のSufijan Stevensの"Romulus"を覗いてMatt Slocumのオリジナルで固められたとはなかなか想像しがたい音が連続する。即ち,これがMatt Slocumの音楽性ってことになるだろう。

全編を通して,響きは一貫しているが,逆に言えば刺激に乏しいって言い方もできるかもしれない。しかし,これは3者のタッチもあるが,相当に趣味のいい音楽として,認知度を高めるためにもちょっと甘いと承知で星★★★★☆としてしまおう。それにしてもGerald ClaytonもMatt Slocumも30代だから,若手と言うよりは中堅って感じかもしれないが,なかなかやるもんだ。

Recorded on August 7 & 8,2018

Personnel: Matt Slocum(ds),Gerald Clayton(p),Larry Grenadier(b)

2019年6月 9日 (日)

Simon Phillips@Blue Note東京参戦記

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またも更新が滞ってしまった。記事をアップするたびにライブ行ってんじゃね?みたいになっているが,仕事の合間に行っているのだ(笑)。Simon Phillipsが来日するとなんだかんだ言って見に行っている私だが,だからと言って上原ひろみとやっているのは見たことはない(きっぱり)。今回はProtocol初作発売30周年ということでの記念ライブみたいな感じだが,本人がそんな気分だったかどうかは謎である。

まぁ、そんなことは別にしても,実にタイトな演奏を聞かせてもらって,大いに楽しんだ私である。正直言ってバンドとしてはリーダーが目立ち過ぎではないかと思えるほどのミックスだったが,それでもSimonのドラミングは実に決まっていたと言っていいだろう。ギターの新人、Alex SillはAllan Holdsworth的あるいはFrank Gsmbale的なスムーズなピッキングで聞かせるところがあったし,サックスのJacob Scesneyだって,ちゃんとジャズのイディオムを吸収しているのはわかるのだが,Simon Phillipsの前では存在感が薄いというのは仕方がないかなぁと思っていた私である。そういうバンドなんだから問題はないのだが。いずれにしても「タイト」っていう表現はSimon Phillipsのためにあると言っても過言ではないと思った一夜。

セットリストはブルーノートのサイトによれば次の通りのようだ。上の写真も拝借。

  1. Narmada
  2. All Things Considered
  3. Azores
  4. Moments of Fortune
  5. Pentangle
  6. Celtic Rain(Encore)

Live at Blue Note東京 on June 5, 2019, 2nd Set

Personnel: Simon Phillips(ds), Jacob Scesney(ts, as), Alex Sill(g), Otmaro Ruiz(key), Ernest Tibbs(b)

2019年6月 5日 (水)

改めてのBrad Mehldau@よみうり大手町ホール

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改めてBrad Mehldauのソロ・ライブのセット・リストがアップされたので,今一度振り返ってみたい。セット・リストからもわかる通り,冒頭3曲は完全即興だったようである。そこからはBeatles,と言うよりもPaul McCartneyの曲が3曲というのが目を引く。前回のホール公演でもPaulの曲は結構やっていたから,ミュージシャンとしてのシンパシーを感じる部分があるのだろう。私は"Dear Prudence"のようなJohn Lennonレパートリーもやって欲しいところだが,贅沢は言うまい。

そして意外な選曲としては"Linus and Lucy"だろう。今までレコーディングしたこともないはずだが,Brad Mehldauがこんな曲をやるとは思わなかった(と言いつつ,曲名が思い出せていなかった私)。

いずれにしても,前半を即興及びMehldauオリジナルで固め,後半にスタンダードやポップ・チューンを交えるというのがここのところのBrad Mehldauのルーティーンなのかもしれないが,今回は冒頭の3曲が相当の集中力を感じさせるものであり,後半は美的な部分と時折そこにダイナミズムを交えるという絶妙のバランスのライブだったと言ってよいだろう。因みにアンコールは"I Fall in Love Too Easily"からだったと思うが,最後まで集中力の切れないソロ・ピアノを堪能した私である。 ということで,行ってよかった,ファンでよかったと思える満足すべき一夜であった。

<Set List>
Untitled (B. Mehldau)

Untitled (B. Mehldau)
Untitled (B. Mehldau)
Waltz for J.B. (B. Mehldau)
Blackbird (J. Lennon/P. McCartney)
And I Love Her (J. Lennon/P. McCartney)
I Fall in Love Too Easily (J. Kern)
Get Happy (H. Arlin)
Linus and Lucy (V. Guaraldi)
Mother Nature's Son (J. Lennon/P. McCartney)

Live at よみうり大手町ホール on June 3, 2019

Personnel: Brad Mehldau(p)

2019年6月 4日 (火)

Brad Mehldauのソロをよみうり大手町ホールで聞く。

Bm-solo-piano 今回のBrad Mehldauの来日がアナウンスされた時,トリオでのライブとソロでのライブが告知されていた。Brad Mehldauフリークを自認する私としては,これはどっちも行かねばってことになるわけで,先日の東京国際フォーラムでのトリオでのライブに続いて,今回,よみうり大手町ホールでのソロに行ってきた。

読売新聞社東京本社ビルにあるこのホールは,キャパが500人程度,そして今回はPAなしのピアノの生音での演奏となった。冒頭から実にクラシカルな響きのピアノを聞かせて,一瞬,これはどうなるのかと思ったのだが,驚きは2曲目にやって来た。おそらくは即興で演じられた2曲目において,私がかつて聞いたことがないようなタッチをBrad Mehldauが聞かせたと思えたからである。おそらく2曲目は20分近い演奏だったと思うが,聞いていて,まだ長大なソロをやっている頃のKeith Jarrettを彷彿とさせる演奏だっと言っては言い過ぎか。しかし,ここで聞かれたトーンはフォーク,あるいはゴスペル・タッチでのKeithの演奏に結構近いのではないかと思ってしまった。そのほかの曲においても,同じような感覚を覚える瞬間もあったというのが正直なところである。

今回演奏された曲については,インプロヴィゼーションと思しき曲以外は聞いたことがあるのだが,The Beatlesの3曲と“Get Happy”を除くと曲名が思い出せない。そのうち,セットリストがアップされるだろうから,改めてとするが,今回演じられたBeatlesの曲は"Blackbird","And I Love Her",そして"Mother Nature’s Son"だったはずだが,"Blackbird"が原曲の美しさをそのまま反映させた演奏だったのに対し,ほかの2曲にはかなり強烈なカデンツァを施すという感じで,実はそこにもKeithライクな感覚を覚えていた私である。

トリオでのライブが,Brad Mehldauのオリジナルと,スタンダードまたはジャズ・オリジナルで占められていたのに対し,Beatlesを3曲やったのは意外なのか,それとも意図的なのかはBrad Mehldauに聞いてみないとわからない。まぁ,それでもあの"Blackbird"は昇天必至の演奏だったと確信している。

今回の演奏については,セットリストが上がってから改めて書くことにしたいが,今回,何よりも残念だったのは私の隣に座っていた女性客である。演奏が始まって,ステージに視線を向けていても飛び込んでくる彼女のスマホのバックライトは,音楽を聞くことへの集中の妨げ以外の何ものでもなかった。私は我慢がならず,彼女にスマホの使用をやめるように依頼した訳だが,なぜステージが始まっているのにLINEだかチャットでのやり取りをしなければならないのか,全く意味不明である。世の中の人間がスマホに支配されているように思える今日この頃だが,映画館でスマホを使うバカと同じぐらいの低劣な行為には業を煮やしていたと言わざるをえない。

もう一つ,運営側に文句を言うならば,サイン会をやるのはいいが,CD購入者先着50人というのはまぁいいとして,サイン会のフロアで知り合いを待つことも許さないというのはどういうことなのか?別にこっちは写真を撮ろうと思っている訳でもないし,迷惑をかけるつもりもないが,ああした運営は人を不愉快にさせるだけだ。

ミュージシャンは基本的にオープンな人が多いから,別にCDの購入者とだけ交流したいと思っている訳ではないはずだ。普通のジャズ・クラブなら気軽に話しかけて,サインにだって応じてくれる人がほとんどである。そもそも私はMehlianaでの来日時に,Brad Mehldauには何枚かのCDにサインをもらっているし,"Elegiac Cycle"の楽譜本にもサインをもらっているので,今回敢えてサイン会に参加する理由もなかったが,訳のわからない,あるいはまったく意味のない排除的な対応は正直言って拝金主義的で感じが悪いのはもちろん,会場担当者の対応も,なぜそこで待っているのがダメなのか全く論理的な説明ができないのは不愉快以外の何ものでもなかった。演奏は素晴らしいものだったと思えるだけに,以上の2点は実に残念であったが,これはBrad Mehldauの責任ではない(きっぱり)。

でも,今回,Brad Mehldauは(いい意味で)別次元に行ってしまったなぁと思っていた私である。それについては改めて書く機会を見つけよう。

Live at よみうり大手町ホール on June 3, 2019

Personnel: Brad Mehldau(p)

2019年6月 3日 (月)

久々に聞いたWarren Zevonの”Sentimental Hygiene”。こんなにヘヴィなアルバムだったか...。

_20190602 "Sentimental Hygiene" Warren Zevon(Virgin)

先日,このブログでWarren Zevonの"The Envoy"を取り上げた時,今度はVirginレーベルのアルバムも聞き直してみるか,みたいなことを書いた(その時の記事はこちら)。このアルバムは私がまだNYCに在住していた頃に現地で購入したもののはずである。NYCにいた頃は手持ちのCDの数も限られていたので,結構な頻度で聞いていたような気もするが,最近は全然聞いていなかったように思う。そして久々に聞いてみると,かなりヘヴィなテイストを持ったロック・アルバムであった。

そもそも冒頭のタイトル・トラックからして,Neil Youngのギター・ソロがいかにも兄貴な感じの激しさなのだが,アルバムのトーンとしても一貫して激しさを感じさせるものだったのは,何とも意外な気がしてしまった。こんな感じだったっけ?って思うのは,いかにこの音源から離れていたことの裏返しだが,これは純粋なロック・アルバムとしていけていると思ってしまった。よくよく見てみれば,バックはほとんどの曲でR.E.M.のメンバーが支えているから,ロック・テイストが強いのも当たり前なのだが,そんなことに今更気づいている私もどうなのよって感じである。

本作は"The Envoy"後にAsylumレーベルとの契約を打ち切られて,レーベルをVirginに移しての第1作になる。アルバムとしては"The Envoy"から5年も経っているから,Warren Zevonにも再起に向けた意気込みが強く,それがこうしたアルバムのトーンに影響を与えたと言えるのではないかと思える。Warren Zevonの声とかには全然変化はないが,間違いなく激しさは増している。感覚的に言えば,Iggy Popの”Brick by Brick"にさえ近い感覚をおぼえてしまった。それは決して悪い意味ではない。私は”Brick by Brick"も相当好きなので,私の好みってことである。だが,最後の"Leave My Monkey Alone"に関しては,テイストが違い過ぎて,これは...って気がする。この曲だけGeorge Clintonがアレンジを施しているが,そういうことならさもありなんだが,やっぱり浮いている。

いずれにしても,せっかく再起を期するのに,この地味なジャケはどうだったのかねぇと思ってしまう。これじゃ音楽が刺激的でも,購入意欲が上がらない人多数ではなかったのか。ということで,このアルバムが売れたという話もあまり聞いたことがないなぁ。しかし,これはなかなか
いいアルバムだと思う。星★★★★。

Personnel: Warren Zevon(vo, g, p, key), Peter Buck(g), Neil Young(g), Waddy Wachtel(g), Brian Setzer(g), Blackbird McKnight(g), Mike Campbell(g), Rick Richards(g), David Lindley(lap steel, saz), Darius(sitar), Jai Winding(key), Amp Fiddler(key), Jorge Calderon(b, vo), Mike Millls(b), Tony Levin(b), Leland Sklar(b), Flee(b), Bill Berry(ds), Craig Krampf(ds), Bob Dylan(hca), Don Henley(vo), Stan Lynch(vo), Michael Stipe(vo), Jennifer Warnes(vo)

 

2019年6月 2日 (日)

実に素晴らしかったBrad Mehldau Trio@東京国際フォーラム

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Brad Mehldauがトリオで来日するのは実に久しぶりのことのはずだ。前回は2012年だから7年ぶりってのは間が空き過ぎではないかと思ってしまうが,MehlianaやJoshua Redmanとのデュオでも来ているので,それほど久々感はない。しかし,前回のトリオ公演には正直言って不満があった私(その時の記事はこちら)なので,今回はPAに左右されない演奏が聞きたいと思って,東京国際フォーラムに乗り込んだ私である。

今回のライブについてはFBページが設けられており,全公演のセットリストがアップされているが,毎日違う曲をやっているようだ。東京国際フォーラムでのセットリストは下記の通りであるが,冒頭の"Sehnsucht"からして,非常に美しい響き,そしてコンサート・ホールらしいPAにまず安心した私である。それにしても,冒頭2曲で完全に聴衆をうっとりさせるのに成功したと思わせるに十分。実に素晴らしい演奏であった。特に私が痺れたのは"From This Moment on"だったが,この演奏を聞いて,Brad MehldauというピアニストはCole Porterの曲と実にマッチするという点である。そして,アンコール前に弾かれた”When I Fall in Love"の終盤のカデンツァの美しいことよ。

そして,アンコール3曲がこれまた素晴らしい。"Tenderly"という曲がこれほど魅力的に響いた経験はなかったと言ってもよいし,"Secret Love"なんて,非常にテンポを落とした形で演奏されつつ,曲の持つ美しさ,あるいは「秘めたる恋」を体現するような演奏には心底まいってしまった私である。

更に,今回はJeff Ballardのドラミングにも感心させれた。このトリオにぴったりなサトルな感覚だけでなく,決してうるさくならないドラミングは彼への評価を一段高めるものだったと言ってよい。Larry Grenadierも結構長いソロ・スペースを与えられていて,実力発揮していたが,私には今回はJeff Ballardが印象に残ったと言っておこう。

私としては7年前のトリオ公演のリベンジを完全に果たしたという感じで,実に満足度の高いライブであった。当然のことながら6/3に予定されているソロ公演への期待は更に高まった私である。

尚,上の写真はおそらくサントリー・ホールでのライブの時のものと思われるが,FBページより拝借したもの。東京国際フォーラムもほぼ同じ感じだった。

<Set List>
Sehnsucht (B. Mehldau)
Gentle John (B. Mehldau)
Bee Blues (B. Mehldau)
Inchworm (F. Loesser)
Backyard (B. Mehldau)
From this Moment on (C. Porter)
When I Fall in Love (V.Young/E. Heyman)

<Encore>
Tenderly (W. Gross)
Secret Love (S. Fain/P.F. Webster)
Long Ago and Far Away (J. Kern, I. Gershwin)

Live at 東京国際フォーラム ホールC on June 1, 2019

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

2019年6月 1日 (土)

John Scofield Combo 66@Blue Note東京参戦記:やらかしちまった!

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更新が滞ってしまった。先日,John Scofieldの新バンド,Combo 66のライブを観るために,ブルーノートに行ったのはいいが,またやらかしてしまった私である。実は当日,このステージの前に会社の飲み会があり,酒は控えめにしておこうと思いつつ,結構飲んでしまった。開演10分前に到着した頃は,自分では大丈夫だと思っていたのだが,途中15分ぐらいの記憶がない!セットリストでは”Au Prevave"もやったとのことだが,そこの記憶がない。あの時の感覚で言えば,おそらく15分ぐらいは「落ちて」いたはずである。実に情けない。

それはさておきである。このバンド,実力者の集団である。私はジョンスコのライブはほとんど縁がなく,実際に彼のライブを観たのは,在米中のSweet Basilでのライブに遡るはずだから,既に四半世紀以上前のことである。それ以降も私はジョンスコとはつかず離れずって感じだが,全部買うとか,そういうことではないのだが,このバンドのメンツはやはり魅力的に見える。とは言いながら,今回のライブに行く予習のために買ったもので,それまではストリーミングで聞いていたのだから,えらそうなことは言えない(苦笑)。

そして,今回のライブであるが,おぼえている範囲で言えば,結構響きはオーセンティックだと言ってよいが,ジョンスコの変態的なフレージングは健在。まさにあの響き,One And Onlyである。そして彼を支えるメンツ,やはりレベルが高い。特にBill Stewartの煽りは素晴らしく,バンドをドライブさせる推進力はビルスチュに依存していたと言ってもよいだろう。そしてGerald Clayton。さすがの血筋を感じさせるフレージングには才能を感じさせるもので,ピアノもオルガンもうまいものである。オルガンのペダルは使っていなかったようだが,それでもオルガンから生み出されるブルージーな感覚はジョンスコとの相性もよかったと思う。そして,目立たないながらもしっかりとボトムを支えるVicente Archerって感じで,クァルテットとしては実によく出来た組合せってところであろう。

こういうバンドのライブに接する機会を得ながら,短い時間とは言え,寝落ちしてしまった私は実にアホである。ライブの前に飲み過ぎてはいかんということは,昨年のSimon Phillipsのライブでも経験済みであったにもかかわらず,同じ過ちを繰り返してしまった。反省,反省。尚,上の写真はブルーノートのWebサイトから拝借。

Live at Blue Note東京 on May 29, 2019,2ndセット

Personnel: John Scofield(g), Gerald Clayton(p, org),Vicente Archer(b),Bill Stewart(ds)

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