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カテゴリー「ジャズ(2018年の記事)」の記事

2018年7月16日 (月)

初めて聞いたMaterialの"One Down":無茶苦茶カッコいいじゃん。

"One Down" Material(Celluloid)

One_down先日,私はこのアルバムを縁あってApple Musicでストリーミングで聞いたのだが,それが私にとってのこのアルバムの初聞きであった。Materialについては,だいぶ前に彼らのデビュー・アルバム"Memory Serves"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,その当時としては尖がったグループであったことは間違いないとしても,その後を追い掛けることは当時の私にはなかった。だから,このアルバムについても未聴のままだったわけだが,そのストリーミングを聞いた時,おぉっ,これはカッコいいと思ってしまった私である。挙句の果てにCDまでゲットしてしまった(笑)。

これはMaterial版ファンク&ソウルって感じの演奏,歌唱が収められており,これがなかなか楽しめるのである。驚いたことにと言うか,今は亡きWhitney Houstonのメジャー・デビュー前の歌唱も入っており,その伴奏にはなんとArchie Sheppというどういう組み合わせやねん?と言いたくなるような"Memories"なんて,今にして思えば「へぇ~」と言わざるを得ない。また,Fred Frithのノイジーなギターで始まる"Time Out"なんてPrinceのようにさえ聞こえる。こういう音楽をMaterialとしては指向していたのかってこともわかって,実に興味深いアルバムである。まぁ,Nile Rogersがギターで参加する曲はまるでChicそのものだが(笑)。

そのほかにいろいろなヴォーカリストが参加して,賑々しいアルバムであるが,この段階では既にドラマーであったFred Mahrは脱退していたようで,彼の名はボートラとして入っている"Bustin' Out"に認められるだけである。その後,Materialのメンバーはプロデューサーとしても活躍するが,既にFred Mahrはこういう路線とは違うものを目指していたということであろう。

_20180715しかし,リリースから35年以上経っている割に,今の耳で聞いてもこれはカッコいいと思ってしまうのは私が同時代人だからなのかもしれない。それでも結構楽しめてしまうということで星★★★★。私としてはファーストよりもこっちの方が楽しめるかもしれないなぁ。

残念ながら私がネットでゲットした中古盤はジャケ違いであるが,そっちの画像も貼り付けておこう。

Personnel: Bill Laswell(b), Michael Beinhorn(synth), Fred Mahr(ds), Nona Hendryx(vo), B.J. Nelson(vo), R. Bernard Fowler(vo), Noris Night(vo), Whitney Houston(vo), Nicky Skopelitis(vo, g), Thi-Linh Le(vo), Jean Karakas(vo), Nile Rogers(g), Fred Frith(g), Ronnie Drayton(g), J.T. Lewis(ds), Tony Thompson(ds), Yogi Horton(ds), Raymond Jones(el-p), Oliver Lake(as), Archie Shepp(ts), Danile Ponce(perc)

2018年7月13日 (金)

長年保有していても,ほとんど聞いてないJack DeJohnetteのアルバム。

"Music We Are" Jack DeJohnette(Golden Beams)

_20180708_3長年,保有していてもちっともプレイバックしないアルバムってのはいくらでもある(爆)のだが,発売から既に10年近くが経過している本作もそうした一枚だが,ちょいとした気まぐれで取り出してきてみた。

Jack DeJohnetteを支えるのは,Wayne Shorter Quartetでもバンド・メイトのDanilo PerezとJohn Patitucciなので,おかしなことにはならないはずだという思いでこのディスクを購入したはずだ。正直なところ,初めて聞いた時にピンと来なかったという印象が強く,そのため「放置」に近い状態が続くという感じである。それでもって,今回久しぶりに聞いてみてどうだったか?

やっぱりピンと来ない(苦笑)。いきなりピアニカを多重録音した"Tango African"からして,「う~む」となってしまう。その後聞き続けても,どうも捉えどころがないというか,こ。のアルバムのポイントがどこにあるのか絞り切れない状態が続くのである。DeJohnetteが吹くピアニカは,Astor Piazzolaの世界をなぞったもののようにも聞こえる部分もあるし,静謐なパートでは,現代音楽あるいはアンビエントな世界さえ感じさせる。

そんな感じなので,私は大いに戸惑うのである。このメンツである。ドラムスをBrian Bladeに代えれば,The Children of the Lightってことになるが,そのトリオの演奏が一筋縄でいかないことはライブでも実証されていた(記事はこちら)が,本作での演奏はそれほどの自由度を感じさせる訳でもないし,ジャズ的なスリルを強く感じさせる訳でもない。リズムがスリルを感じさせる"Cobilla"のような曲はあるが,こういうタイプの演奏を多くのリスナーは期待するのが普通ではないかと思うのだ。なので,アルバム全体としては私としてはかなりフラストレーションがたまる状態が続いてしまうのである。

Jack DeJohnetteはライナーに次のように書いている。"What I like most about doing this project is the love and care and spiritual passion that everyone put in to making this an incredibly enjoyable experience." それはやっている彼らにとってはそうかもしれないが,聞いてるリスナーにはそうでもなかったという例と言っておこう。そういう意味で私は本作は失敗作だと思う。私のしょぼいシステムで聞いても,音がいいのはよくわかるが...。星★★。

Recorded on February 22-24, 2008

Personnel: Jack DeJohnette(ds, pianica), John Patitucci(b, el-b), Danilo Perez(p, key)

2018年7月12日 (木)

亡き父が買うCDとしては意外な"Harlequin"

"Harlequin" Dave Grusin & Lee Ritenour(GRP)

_20180708_5_2一時期のGRPレーベルというのは,まさに飛ぶ鳥も落とす勢いであり,それこそImpulseレーベル等も参加に収めていたのも懐かしい。フュージョンやスムーズ・ジャズ系の音源はそれこそ本当にたくさん出ていたが,一定のレベルは常に維持していたと思う。本作はそのレーベル・オーナーの一人であるDave Grusinと,レーベルを代表するミュージシャンであったLee Ritenourの双頭リーダー作である。

 私は,GRPレーベルのアルバムは結構保有しているが,このアルバムは自分で買ったものではない。なぜか亡き父の遺品である。私の父はそもそもモーツァルト好きの人であり,ジャズも聞かなかった訳ではないが,どちらかと言えば,スイング/トラッド系のアルバムを買っていた。そんな父に私が,父の日にジャズ・アルバムを何枚か送るようになったのはいつ頃のことだったか。それ以降は,モダン,あるいはコンテンポラリーなジャズも結構聞くようになっていて,Brian Blade Fellowshipのファースト・アルバムやKenny Kirklandのアルバムを気に入っていたのも懐かしい。だが,フュージョンに手を出すとはとても思えず,なぜこのアルバムを保有していたのかは,全く謎である。私が認識している限り,父が保有していた典型的なフュージョン・アルバムはこれだけなのである。本来なら私自身が買っていても全然不思議はないし,その後のRitenourのGRPでのアルバムもほとんど買っていることからすれば,これを買っていなかったことの方がはるかに不思議なのだ。

そんなこともあり,それを実家から私が持ち帰り,私の家に置いているわけだが,実は持ち帰ってから一回も聞いていなかったなぁってことで,プレイバックをしてみた。

結論からすれば,典型的なフュージョンと言えるが,Lee Ritenour個人のアルバムであったらもう少しスピード感のある曲を入れたかもなぁと思わせる。ある意味これはナイトキャップにも適するであろう大人なアルバムである。私としてはその後"GRP Super Live"でも演奏した"Early A.M. Attitude"は非常に馴染み深かったが,それ以外の曲はおそらくちゃんと聞いた経験はないと思う。このアルバムがリリースされて,33年目にこうして聞いているってのも不思議な感じがするが,これはまぁ父に感謝せねばなるまい。

Dave GrusinとLee Ritenourはその後も共演を続け,2015年には一緒にブルーノート東京に出演しているが,その時のGrusinの元気な演奏ぶりからはとても当時81歳だったとは思えなかった。それを遡ること約30年であるから,裏ジャケに写るご両人も当然若いよなぁ。そんな二人の演奏は,Ivan Linsを3曲でヴォーカルに迎えていることが特徴となるが,私としてはインストだけで行っても全然問題なかったのではないかと思っている。もちろん,華を添える効果はあるが,Ivan Linsの世界が強くなり過ぎる面もあるように感じる。まぁ,Ivan Linsがいい曲を書いているのは事実なので,ここはこれでよしとしよう。元祖スムーズ・ジャズって感じで星★★★★。

Recorded in January thru March, 1985

Personnel: Dave Grusin(p, key),Lee Ritenour(g), Jimmy Johnson(b), Abraham Laboriel(b), Carlos Vega(ds), Harvey Mason(ds), Paulinho Da Costa(perc), Alex Acuna(perc), Ivan Lins(vo), Regina Werwick(vo), Carol Rogers(vo), Marietta Waters(vo)

2018年7月11日 (水)

"Captain Marvel"と言ってもStan Getzの方ね(笑)。

"Captain Marvel" Stan Getz (Columbia)

_20180708_2_2映画「アベンジャーズ」シリーズの次作において,登場が確実視されているキャラクターが「キャプテン・マーベル」だが,「アベンジャーズ」に登場する前に,自身を主人公とする映画の公開も決まっているのだから,Marvelも商売がうまいよねぇ(笑)。しかも,それを演じるのがBrie Larsonってのはある意味凄いキャスティングだ。

しかし,ジャズ界において"Captain Marvel"と言えば,本作ということになるが,改めてアルバムのジャケ(特に裏ジャケ)を見てみると,若干はコミックの「キャプテン・マーベル」を意識していないような気がしないでもない。だが,本作の重要性はそんなことではなく,あくまでもStan GetzがChick Coreaのレパートリーを中心に,超豪華と言ってよいメンツでレコーディングしたということにあることは言うまでもない。後にライブでもAirtoを抜いたメンツで再演されるプログラム(ライブ盤に関する記事はこちら)であるが,曲目を見れば,Stan Getz版Return to Foreverと呼んで問題ないことは,ジャズ・ファンならば一目瞭然である。即ちECMでの"Return to Forever"と,ポリドールから出た"Light as a Feather"のほぼ合体形+αなのだから,それだけでも「おぉっ!」となるわねぇ。

そして,Chick CoreaのRhodesに乗って,テナー1本で演奏されるこれらの曲は,オリジナルとはまた異なった味わいがあって,非常に面白い。しかもGetzの演奏は快調そのもの。何を吹いてもいけるねぇ,とついつい思わせてくれるStan Getzである。

それにしても,このメンツがどういう理由で構成されたのかは,いまだによくわからないものの,これだけのメンツを集められてしまうところが,Stan Getzのまた凄いところと言えるかもしれない。まぁ,この頃は,Tony Williamsはさておき,Chick CoreaやStanley Clarkeはまだそれほどのビッグネームとは言えない頃であるから,難しくなかったのかもしれないが,今にして思えば,こういうメンツでレコーディングを行っていたStan Getzのある種の時代を見る目と言うのを感じる。星★★★★☆。

Captain_marvel尚,全然関係ないが,Brie Larsonが演じるCaptain Marvelのポスターが公開されているので,ついでに貼り付けておこう。脈絡なしでも"Captain Marvel"は"Captain Marvel"ってことで(爆)。

Recorded on March 3, 1972

Personnel: Stan Getz(ts), Chick Corea(el-p), Stanley Clarke(b), Tony Williams(ds), Airto Moreira(perc)

2018年7月10日 (火)

奥方Fleurineの新作にBrad Mehldauが4曲で客演。

"Brazilian Dream" Fleurine (Sunnyside)

_20180708Brad Mehldauは奥方Fleurineのアルバムにも結構ゲスト参加しているが,今回の新作も同様である。アルバム・リリース後のライブにもゲストで出ているから,随分奥さん思いだといつも感心してしまう。私が彼女のアルバムをこのブログで取り上げたのはもう10年以上前の"San Francisco"になる(記事はこちら)が,彼女のアルバムはそれ以来ってことになるのかもしれない。"San Francisco"でも感じられたブラジリアン・フレイヴァーが今回は更に強まって,タイトル通り完全にブラジル的なアルバムになっている。

今回,Brad Mehldauはrhodesとピアノで4曲に客演しているが,あくまでもバッキング中心の,楚々としたプレイぶりである。このアルバムにはクリポタことChris Potterも3曲で客演しているが,4曲目"Ausencia de Paixao(Passion)"において、テナー・ソロで場をかっさらうのとはちょっと違う(笑)。もちろん,Mehldauも6曲目"My King"や"Sparkling Gemstone"等でソロは聞かせるが,出しゃばった感じはない。だからと言って,決してクリポタが出しゃばっているという訳ではないので念のため。あくまでもおぉっ,クリポタ!と思わせるだけである(笑)。

今回はバックのミュージシャンも"Boys from Brazil"としてブラジル人で固めているが,彼らはFleurineのWebサイトの情報によれば,NYCをベースにして活躍している人たちのようである。そういう人たちのサウンドをバックにしたFleurineは,オランダを出自とするにしては,いい感じのブラジル感を醸し出している。私はブラジル音楽もそこそこ好きだが,そんな私でも非常に心地よく聞くことができるアルバムになっている。彼女はギターでここに収められたオリジナルを作曲したらしいが,かなりブラジルにはまっているってことなのだろう。

もちろん,リアルなブラジル音楽を聞くなら,私はMaria Ritaのアルバムを選ぶだろうが,それでもBrad Mehldauやクリポタの客演もあり,これは相応に評価してもよいと感じている。聞いてもらえばわかるが,ちゃんとブラジル音楽になっているのである。そうした点も加味して,甘いの承知で星★★★★☆としてしまおう。尚,レコーディング日の記載はあるが,年が書かれていない。多分2017年だろうということで下記のような記述にしておく。

Recorded on May 30 & 31, 2017(?)

Personnel: Fleurine(vo, g), Ian Faquini(g), Eduardo Belo(b), Vitor Goncalves(p, accor, rhodes),Rogerio Boccato(perc), Chico Pinheiro(g), Brad Mehldau(p, rhodes), Chris Potter(ts, ss, a-fl) with Strings and Horns

2018年7月 8日 (日)

Antonio Sanchezはビッグバンド化しても素晴らしいが,私としてはコンボの方がいいと思う。

"Channels of Energy" Antonio Sanchez(CAM Jazz)

_20180707リリースされてから待てど暮らせどちっともデリバリーしないAmazonからHMVに発注替えをして,今頃になってこのアルバムが到着した。本作がリリースされたのは3月下旬だったはずだから,約3カ月半遅れとなってしまって,なんだか新譜として紹介するのもしまりがない(爆)。

それはさておきである。Antonio Sanchezのアルバムはどれも出来がよく,興奮度も高い音楽だと思っている。これまでのアルバムについても,私はかなり高く評価してきたつもりである。そんな彼の音楽はビッグバンド化しても,優れたものになるだろうという予測は簡単につく。本作もアレンジと指揮は名手,Vince Mendozaであるから,作品としての成功は約束されたようなものである。本作も聞いてみれば,モダン・ビッグバンドのアルバムとしてはよく出来たものという評価は可能だと思う。WDR Big Bandの面々のソロも立派なものである。

それはそうなんだが,私がビッグバンドのアルバムをあまり聞かないこともあるだろうが,私はここで演奏されている曲については,コンボで演奏したものの方が興奮度が高かったように思えるのである。私がAntonio Sanchezに求めるものは,演奏の熱量ということもあるが,それがビッグバンド化によって,やや薄まった感覚がある。これはあくまでも好みの問題ではあるが,私としてはこのアルバムに満足はしながら,Antonio Sanchezの本質はこれではないだろうと思ってしまった。

ただ,実によくアレンジされていて,2枚組で80分を越えるヴォリュームも一気に聞かせる力は十分にあるし,Antonio Sanchezのプッシュも効いている。結局どのような編成でも叩けるというドラマーとしての多才ぶりは十分に捉えられているが,でもやっぱり,私はコンボでの熱い演奏の方が好み。ということなので,完全に個人的な好みの問題ではあるが,星★★★★ってところに落ち着かせよう(苦笑)。

Recorded on December 5-10, 2016

Personnel: Antonio Sanchez(ds), Vince Mendoza(arr, cond), Johan Horfen(as), Karolina Strassmayer(as), Oliver Peters(ts), Paul Heller(ts), Jens Neufang(bs), Wim Both(tp), Rob Bruynen(tp), Andy Haderer(tp), Ruud Bruels(tp), John Marshall(tp), Lorenzo Ludeman(tp), Martin Reutner(tp), Jan Schneider(tp), Ludwig Nuss(tb), Shannon Barnett(tb), Andy Hunter(tb), Mattis Cederberg(b-tb), Paul Shigihara(g), John Goldsby(b), Omer Klein(p, el-p)

2018年7月 2日 (月)

話題沸騰。John Coltraneの未発表音源の発掘。

"Both Directions at Once: The Lost Album" John Contrane(Impulse)

_20180701John ColtraneはPrestige,Atlantic,Impulseとレーベルを渡り歩いたが,巨人としての地位はやはりImpulseレーベルにおける諸作によって確立したと言っても過言ではないだろう。そんなImpulseレーベルにおける完全未発表音源が発見されたとすれば,それはまさに大きなニュースである。このアルバムのリリース情報が世の中に出回った時に,私はたまたまNHKの「ニュースウォッチ9」を見ていたのだが,まさかNHKのニュースでこのアルバムに関する情報が報じられるとは予想していなかった。裏を返せば,それだけのビッグ・ニュースということになるが,世間一般の人がそのニュースを聞いてどう思ったのかってのは極めて興味深い。

それはさておきである。6/29に全世界同時リリースというのが,このアルバムに対する世の中の期待値,あるいはその位置づけを裏付けているようにも思える。そしてこのアルバムを最初に聞いたのはテナーの聖地,新橋のBar D2においてであったが,家に帰って冷静に聞いた後の感触を書いてみたい。

ライナーにはJohn Coltraneの息子,Ravi Coltraneが"To my ears, it was a kicking-the-tires kind of session."と述べているという記述がある。それはそうなのかもしれないし,ちゃんとアルバムとしてのリリースを意図したものだったのかは,マスター・テープが失われているので,何とも言えない。だが,このレコーディングにプロデューサーであるBob Thieleがいたかどうかは全くの謎であり,このアルバムの位置づけは実はよくわからない。Raviが言うように,リハーサル的なものだった可能性も,リリースを意識した録音だった可能性の両方が存在する。

そして,音源を聞いてみると,誰がどう聞いてもColtraneのサウンドが聞こえてくるわけだが,"Nature Boy"はさておき,オペレッタ「メリー・ウィドウ」から"Vilia"のような曲をやっているのが,ほかの曲から浮いた感じがしたのは事実である。この辺りをどう評価するかは各々の聞き手に委ねられるということだろうが,この曲,”Live at Birdland"のCDのボートラとしても,本作と同日の録音が収録されているようだ。私個人としてはちょっとイメージが違うってところだろうか。

だが,全編を通して聞けば,Coltraneクァルテットは快調そのものである。本作はJohnny Hartmanとのアルバムの前日だが,以前はこの頃,あるいは"Ballads"吹き込みの頃のColtraneが,マウスピースの不調に悩まされていたというような情報があったが,それはガセネタだったのではないかと思いたくなるような吹きっぷりなのである。実際にColtraneがインタビューでそう語ったという話もあるのだが,演奏を聞いている限り,そんなことはないように思える。マウスピースの件が事実だとしても,この頃には既に復調していたということなのかもしれない。

いずれにしても,世に出ただけで感謝すべきアルバムであり,多少の瑕疵には目をつぶって,歴史的価値を重視して星★★★★★としてしまおう。久しぶりに,このクァルテットのスタジオ音源を集成したボックスが聞きたくなった。

Recorded on March 6, 1963

Personnel: John Coltrane(ts, ss), McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)

2018年6月28日 (木)

これまた久々のEric Dolphy: "The Illinois Concert"

Eric_dolphy

"The Illinois Concert" Eric Dolphy (Blue Note)

_20180624誰でもわかることだが,これはEric Dolphy屈指の傑作ではない。そんな思いもあって,私は本作を購入して,暫くしてからこのアルバムをクロゼットに押し込んでいたので,実はこのアルバムを聞くのは非常に久々であった。

私はかなりのDolphy好きではあるが,なぜそんな私がこのアルバムに冷たいのかと言うと,多くの人から賛同を得られると思うが,ライブの開催場所であるイリノイ大学のバンドを加えた演奏によるところが極めて大である。正直言って,6曲目"Red Planet"で加わるブラス・セクションも,最後の"G.W."で加わるビッグバンドもなくてよい存在なのである。当時の大学生たちに場を与えるということは,まぁわからないではないが,正直言って彼らの演奏は「蛇足」以外の何ものでもない。邪魔とまでは言わなくとも,いらぬ存在であることは間違いないのである。まぁ,若き日のCecil Bridgewaterなんかがいるが,そんなことは問題にはならない。

その印象は久々に聞いた今回も変わらなかったが,最後の2曲以外の演奏は,こんなによかったっけ?と思わせるほど印象がよかった。間違いなく,サイドマンのレベルに問題があるとしか思えないEnjaの"Berlin Concerts"なんかよりずっとよく感じる。もちろん,音はそんなによくないし,これを聞くなら別のもっと出来のよいアルバムを聞いていりゃいいじゃんというのも確かである。しかし,Dolphyのアルバム(特に発掘盤)は,Dolphyの技を聞ければいいという話もあって,このアルバムはHerbie Hancockの参加というオマケはあるものの,聞きどころはあくまでもDolphyだと思える。最後の2曲だって,Dolphyだけ聞いていればいいのである。

とにかくバスクラのソロで演じられる"God Bless the Child"とかにはさぶいぼ立つわって言いたくなる。本当に凄いプレイヤーであったことを改めて思い知らされたアルバム。星★★★★。

それにしてもカッコいいジャケットである。この写真を撮ったのはLee Tannerという人だが,彼が撮ったDolphyの写真がネット上にあったので,それも貼り付けておこう。カッコよ過ぎである。くぅ~っ。

Recorded Live at the University of Illinois on March 10, 1963

Personnel: Eric Dolphy(as, b-cl, fl), Herbie Hancock(p), Eddie Khan(b), J.C. Moses(ds)

2018年6月27日 (水)

Dave Liebmanの"Fire":これはあらゆる意味で厳しい...。

"Fire" Dave Liebman(Jazzline)

_20180623_3Dave Liebmanは多作の人である。リーダー作はもちろん,神出鬼没にほかの人のアルバムにもゲスト出演しているから,一体何枚ぐらいアルバムがあるのやら...って感じである。日本で真っ当に情報を抑えているのは,新橋のテナーの聖地,Bar D2のマスターぐらいではないか。

そんなLiebmanがKenny Werner,Dave Holland,Jack DeJohnetteというリズム・セクションを伴ってアルバムをリリースすると知れば,購入意欲が高まる好き者は多いはずである。ピアノをRichie Beirachに代えれば,名作"First Visit"と同じメンツであり,あの世界の再現を期待してしまう。しかしである。ここで展開されるのはほぼフリー・インプロヴィゼーションと言うべきもの。別にフリーが悪いという訳ではない。私はLiebmanがEvan Parkerと対峙した"Relevance"は全面的に支持している(記事はこちら)し,フリー・ジャズにも抵抗はない。しかし,このアルバムには,このメンツならではと言うべき激烈感を感じることができなかったのは残念である。

火花が散って,それが燃え上がり,それが大火となり,地獄を見て,最後は灰燼に帰すという曲目を見れば,タイトル通り「火」をテーマにしたコンセプト・アルバムなのかと思いたくなるが,その燃え上がり方がどうにも私には中途半端に聞こえるのだ。燃え上がるなら,もっと徹底的に燃え上がって欲しいと思ってしまう。Liebmanにはそれができるはずだと思うがゆえに,ちょっとこのアルバムは私にとっては期待はずれだったと言わざるをえない。

演奏そのものの質は高いとは思うが,タイトル・トラック冒頭におけるピアノなんて,調律してんのか?と思いたくなるのも事実であり,もっと「ぐわ~っ」とならないと,どうにも私としては居心地が悪いと言うか,全面的に楽しめないのである。

私としてはDave Liebmanははまだまだ"Relevance"で聞かせたパワーが発揮できると思うので,これではやはりイマイチと言わざるをえないというのが実態。Liebmanのソロは聞きどころがあるのに免じて星★★★とするが,何度もプレイバックするような音楽だとは全く思っていない。音楽そのものも厳しいが,聞き続けるのも厳しい。

Recorded in April, 2016

Personnel: Dave Liebman(ts, ss, wooden-fl, c-fl), Kenny Werner(p), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds)

2018年6月26日 (火)

久しぶりに聞いたJ.J. Johnsonのアルバム

"Standards-Live at the Village Vanguard" J.J. Johnson (Antilles→Emarcy/Universal)

_20180623_2いつも取り出せる場所には置いてあっても,プレイバックの回数が少ない音源はいくらでもある。これに限らず,J.J. Johnsonの何枚かのアルバムは,「一軍」の棚に入れてあるが,聞く回数は全然多くない。これもそんな一枚。もともと,このアルバムはAntillesレーベルから出ていたものだが,このレーベル,私にとってはGil Evansの"Priestess"をリリースしたことだけでも価値があるが,Ronald Shannon Jacksonのような尖がったアルバムも出していたところは,さすがIslandレーベルの傘下だけのことはある。

そうしたレーベルからJ.J. Johnsonのようなコンベンショナルなミュージシャンのアルバムも出てしまうというのが不思議なところはあるが,まぁ,それはさておきである。J.J. Johnsonは70年代はもっぱらテレビや映画の仕事で過ごしたようだが,80年代に入って,ジャズ演奏を復活させたようである。そして,このアルバムは1988年のVanguard出演時の模様を収めたものだが,本作とこれの姉妹作である"Quintergy"とどちらが先にリリースされたのかは覚えていないが,確か"Quintergy"が先だったような...。私は両方のアルバムを保有しているが,今日は後にEmarcyから再リリースされたこちらを取り上げよう。因みに"Quintergy"が本作同様再リリースされたかどうかもよくわかっていない。

"Standards"というタイトルはついているが,2曲J.J.のオリジナルも入っている。そのほかはまぁよく知られた曲が入っているが,Monkの"Misterioso"なんて確かにテーマ部はMonkのメロディだが,アドリブ部は普通のジャズとなっていて,これはこれでありだなぁと思わせる。いずれにしても,軽快な部分としっとりした部分を兼ね備えた優れたコンベンショナル・ジャズだと言ってよいと思う。そうした中で後半に演じられる「枯葉」はテーマを崩して演奏し,あの超有名なテーマ・フレーズを提示しないのが面白い。まぁ,そうは言ってもあのSarah Vaughanの「枯葉」のような超絶的な崩しとスリルは感じさせないが...。

だが,このアルバムはジャズ・クラブのライブならではの適度なリラクゼーションが感じられて,実に聞いていて心地よいアルバムであることを再認識。バックのメンツも好演。Stanley Cowellってのはちょっと意外な気もするが,極めてまとも。また,Ralph Mooreも堂々たる吹奏ぶりで大したものである。星★★★★。

Recorded Live at the Village Vanguard on July 9 & 10, 1988

Personnel: J.J. Johnson(tb), Ralph Moore(ts, ss), Stanley Cowell(p), Rufus Reid(b), Victor Lewis(ds)

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