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2018年12月19日 (水)

Antonio Sanchez同様に,怒りを音楽へと昇華させたWayne Escoffery。

"Vortex" Wayne Escoffery(Sunnyside)

_20181218このアルバムを新譜と呼ぶには,リリースから時間が経ち過ぎているが,まぁ今年のリリースだから許してもらうことにしょう。正直言って,このアルバム,ほかのアルバムとの抱き合わせで購入したものなのだが,これを見逃していた(聞き逃していた)ことは実にもったいないことだったと反省した一枚である。

Wayne EscofferyはTom Harrellのバンドで,その名前が知られるようになったというのが妥当なところだろうが,昨今はリーダーとしてもアルバムをリリースしていて,私も彼のアルバムは結構買っているし,Cotton Clubでのライブも見に行った(その時の記事はこちら)。このアルバムはその時のライブとベース以外は同じメンツで吹き込まれているが,メンツゆえにライブでも激しさを打ち出した彼らだったが,本作の演奏も相当の熱量で迫ってくる。それはDavid KikoskiにRalph Petersonという剛腕を従えているということもあるが,この熱量を生んでいるのがWayne Escofferyの差別への怒りである。そうした観点ではAntonio Sanchezの新作同様に,この音楽を生み出すモチベーションは怒りなのである。

だが,そうした怒りは露骨に表現されるというよりも,非常に活力のあるジャズ・アルバムとして出来上がったところがよい。こういう熱い演奏を聞いていると,やっぱりジャズにはこういうエネルギーが必要な時もあるよなぁと思う。美的なジャズもまたよしではあるが,たまに聞くフリー・ジャズや,こうしたタイプの演奏を聞いていると,ジャズという音楽の懐の深さを改めて感じた私である。正直言ってこのジャケは購買意欲をそそるものではないが,それでもこの音楽を聞いたら,その魅力はすぐにわかるってところである。

なので,私も結構贔屓にしているJeremy Peltの1曲でのゲスト参加が不要にさえ思えてしまうという具合なのだ,いずれにしても,Wayne Escofferyの実力,そしてサイドマンの力量も十分に感じられる力作。もっと早く聞いておくべきであった。星★★★★☆。

Recorded on March 4, 2016 and March 7, 2017

Personnel: Wayne Escoffery(ts, ss), David Kikoski(p), Ugonna Okegwo(b), Ralph Perterson, Jr.(ds), Jeremy Pelt(tp), Kush Abadey(ds), Jaquelene Acevedo(perc)

2018年12月17日 (月)

出張中に見た映画('18/12編)

Movies_2018_12

今回の欧州出張は,結構体力的にもきつく,いつもよりは控えめな本数になってしまったが,それは正直言って,見たいと思える映画が少なったからだということもできる。

実のところ,今回見たのは次の5本なのだが,どうもなぁという感覚が強い。JALももう少し機内エンタテインメントの映画を考えた方がいいと思った出張であった。

  1. 「ザ・プレデター(The Predator)」
  2. 「スカイスクレイパー(Skyscraper)」
  3. 「日日是好日」
  4. 「ザ・スクエア 思いやりの聖域(The Square)」
  5. 「マイル 22(Mile 22)」

実は期待していたのはカンヌでパルム・ドールを取った「ザ・スクエア 思いやりの聖域」だったのだが,なんでこの映画が評価されるのか,そして2時間半以上の尺が必要なのか全く理解できなかった私である。むしろ,なんてことはないストーリーなのだが,ほのぼのしてしまう「日日是好日」の方がはるかに真っ当な映画に思えた私であった。

そのほかの3本は,チョイスした自分を呪いたくなるようなしょうもない映画。「スカイスクレイパー」なんて,「タワーリング・インフェルノ」をはるかにくだらなくした映画に過ぎないし,「ザ・プレデター」なんて,オリジナルの「プレデター」の足元にも及ばない愚作であった。「マイル22」は95分間ドンパチを続けるというこれまた噴飯ものの映画であった。そもそもそんな簡単にハッキングってできるんかい?って思ってしまったが。いずれにしても,選択肢が少ないんだから仕方ないって話もあるが,今回はまじでがっくりきた。

ってことで,一番面白く見られたのは「日日是好日」。時の流れが女優の見た目に反映されていないのはイマイチ感もあるが,樹木希林に免じてよしとしよう。それにしても多部未華子は可愛くなったねぇ(笑)。

2018年12月16日 (日)

帰国前のロンドンにて。

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スイスからロンドンに移動し,ひと仕事こなして帰国の途についた私である。

ロンドンからの帰国便は夜出発なので,土曜日の昼はフリーってことで,久々にTate Modernに行ってきた。

ロンドンは悪天候で,アプローチのあまりよくないTate Modern訪問は結構きつい道のりであった。まぁ,それでも絵画,彫刻,インスタレーションと強烈なコレクションは壮観であった。

そして実に面白かったのがChristian Marclayの”The Clock“。これって映像のコラージュなのだが,実際の時刻とシンクロした映像が映されるのだ。私が見ていたのは14時過ぎだったが,”Hook“とか,”The Taking of Pelham 123“とか,”3:10 to Yuma“が組み合わされて,例えば14:17ならそういう映像が組み合わされるというユニークな作品であった。全部見るには24時間って凄いよねぇ。

ってことでTate Modernの造形がわかる写真と”The Clock“のポスターをアップしておこう。それにしても寒かった。

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2018年12月14日 (金)

バーゼルの風情

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スイスのバーゼルでの仕事が終わり,これからロンドンに移動し,もう一仕事である。

バーゼルという街は初めて来たが,国際決済銀行の本部があるとは思えない,こじんまりとした街であった。ある意味,非常に落ち着いた雰囲気があって,きっと住みやすいところだと思わせる。

空港に着いた時は,スイス側とドイツ/フランス側の出口が分かれていることに気づかず,難儀してしまった。

いずれにしても,仕事で来ているので,街の様子を見聞する余裕はなかったが,それでも昨日のランチタイムに会場を抜け出し,1時間ほど散歩できてよかった。ってことで,写真はライン川を渡って向かった大聖堂への道すがら。公開時間ではなかったので,聖堂内に入れなかったのはつくづく残念。それにしても,写真からも想像できるような底冷えのする街を歩くのも風情があったってことで…。

2018年12月12日 (水)

この記事がアップされる頃には...

前にも同じような記事をアップしたことがあるが,またも海外出張である。今年は本当に海外が多くて,師走になってまで行くことになることになるとは思わなかった。

それでもって,今回の出張先はスイスのバーゼル。スイスに仕事で行くのはジュネーヴ以来,2回目だなぁ。ということで,バーゼルの街並みの写真をアップしておくが,仕事での短期の滞在ゆえ,美しい街並みを愛でる余裕はないかなぁ。それでも大聖堂だけは是非行ってみたいものだ。

それにしても,この観覧車は...。私から言わせれば,町の景観を台無しにしているように思うが...。

Basel

2018年12月11日 (火)

JLF解散後にリリースしたJeff Lorberのソロ・アルバム第1弾。

"It's a Fact" Jeff Lorber(Arista)

_20181208_2なんだかんだ言ってJeff Lorberの音楽が好きな私であるが,いつも書いているように,そこに感じるのは「中庸の美学」なのだ。突出したことはやらないが,安定感のあるフュージョンを聞きたければ,私はJeff Lorber,特にJeff Lorber Fusion(JLF)のアルバムを聞けばいいと思っている。だからと言って,何でもいいという訳ではないし,私もJeff Lorberのアルバムをすべては保有していないから,大したことは言えた筋合いではない。しかしである。やはりこの人の音楽は一般的なリスナーに対しても十分な訴求力を持つものだろうと思っている。どういう場にでも合ってしまうってところだろうか。

そんなJeff Lorberが第1期(?)のJLFを解散して,ソロ名義でリリースした第1作が本作。振り返ってみれば,1982年のリリースなので,既に35年以上前なのねぇ。正直言って私がこの人の音楽に目覚めたのは,ずっと後のことであり,リアルタイムでは聞いていない。それはJLFについても同じである。ジャズ喫茶でプレイバックされているのは聞いたことがあるかもしれないが,若い頃には彼らの音楽の魅力に気づく余裕もなかったかもしれないなぁと思ってしまう。

このアルバムも購入したのは後付けで,しかも中古でのゲットではなかったかと記憶しているが,JLFからよりポップな感覚を強めたってところであろう。まだこの頃はKenny GがKenny Gorelickで参加しているのも懐かしいが,JLFのタイトさよりも,よりライトな感覚が強くなっているところをどう評価するかってところではないかと思う。私としては,タイトさが残る"Full Moon"やら"Always There"のような曲が好みではあるが,後のスムーズ・ジャズなるカテゴリーの萌芽と言ってもよいような演奏。それを時代を先取りしていたとまで言おうというつもりはないが,それがJeff Lorberのプロデューサーとしての嗅覚につながっているのかもしれないなんて思ってしまった。

でも正直言って,私はJeff Lorber名義のアルバムより,JLFのアルバムの方にはるかにシンパシーを感じてしまうのも事実なのだ。ってことで,ちょっと軽いなぁってこともあり,星★★★ぐらいにしておこう。評価はその程度だが,楽しんで聞けるのは間違いない。

Personnel: Jeff Lorber(p, key, g), Marlon McClain(g), Nathan East(b), John Robinson(ds), Greg Walker(vo), Arnold McCuller(vo), Sylvia St. John(vo), Lynne Davis(vo), Kenny Gorelick(ts, ss, fl), Paulinho Da Costa(perc), Tom Browne(tp, fl-h), Pat Kelly(g), Pete Chrstrieb(horn)

2018年12月10日 (月)

またもユーミン。今日は「悲しいほどお天気」。

「悲しいほどお天気」 松任谷由実(東芝EMI)

_2018120812月に入り,新譜もそうは入ってこないってことで,なぜかユーミンをプレイバックする機会が増えているのは,単なる気まぐれなのだが,今日は「悲しいほどお天気」である。

このアルバムは結構地味な感じがするのだが,ユーミンのファンの中ではこのアルバムが結構好きな人がいるのではないか?ライブでも定番のように演奏されていた(と言っても,彼女のライブなんて何年も見たことはないので,現在はどうかは知る由もないが...)"DESTINY"のような人気曲もあるが,印象的な佳曲の多いアルバムだと思っている。そして,各々の曲に英語タイトルがついているのが面白いが,ちゃんと歌詞と連動したタイトルになっていて,なるほどねぇと思わせる。

  1. ジャコビニ彗星の夜(The Story of Giacobini's Comet)
  2. 影になって(We're All Free)
  3. 緑の町に舞い降りて(Ode of Morioka)
  4. DESTINY
  5. 丘の上の光(Silhouetts)
  6. 悲しいほどお天気(The Gallery in My Heart)
  7. 気ままな朝帰り(As I'm Alone)
  8. 水平線にグレナディン(Horizon & Grenadine)
  9. 78
  10. さまよいの果て波は寄せる(The Ocean And I)

冒頭の「ジャコビニ彗星の夜」からして,しっとりしたいい曲だが,2曲目の「影になって」なんて,メロウ・ソウルっぽいアレンジも決まっていて,心地よいのだ。そして爽やかな感覚の「緑の町に舞い降りて」の後に来る"DESTINY"の曲調は,ある意味このアルバムの中では浮いている。このディスコ的な感じを持つベース・ラインも現れるノリのよいバックの演奏に対して,歌われる歌詞の暗いことよ(笑)。だって,「冷たくされていつかは見返すつもりだった それからどこへ行くにも着かざってたのに どうしてなの 今日に限って やすいサンダルをはいてた」って凄い歌詞だよねぇ。このギャップが強烈なのだ。それに続く「丘の上の光」との曲調の落差も大きい。

LP時代ならばB面に移ってからの構成もA面と似ている感じがする。A面の"DESTINY"に相当するのが"78"ってことになるが,上田正樹がアレンジを担当したバックのコーラスが,ほかの曲との違いを際立たせている。タイトル・トラック「悲しいほどお天気」というしっとりした佳曲で始まり,「気ままな朝帰り」に聞かれる「家なんか出てしまおう」の部分のフレージングや歌いっぷりなんて,おぉっ,ユーミン的って思わせるのも微笑ましい。「水平線にグレナディン」なんて高水健司のベース・ソロが入るというのも珍しいが,「海を見ていた午後」を彷彿とさせる。そこへタロットをテーマにした"78"は"DESTINY"同様の異質感があるのだ。アルバムの構成にメリハリをつけるという点では,まさにメリハリがついているのだが,メリハリつき過ぎって感じもする。そして最後が「さまよいの果て波は寄せる」だもんなぁ。Eaglesの"Hotel Claifornia"で言えば,"Last Resort"的なエンディングって感じ。

これも実は久しぶりに聞いたのだが,それでもやっぱり好きだなぁ。

2018年12月 9日 (日)

Art Ensemble of Chicagoのボックスが届く。いつ聞くねん?(苦笑)

"The Art Ensemble of Chicago and Associated Ensembles" Various Artists(ECM)

Aec_and_associated_ensembles一部の好き者の間(爆)で話題のボックス・セットである。ECMにおけるArt Ensemble of Chicago(AEC)のアルバムと,AECのメンバーが参加したアルバムを集成したものであり,18アルバム,21枚組のセットである。正直なところ,これを全部聞くのは大変だなぁと思いつつ,私はECM好きの割に,ここに入っているかなりの数のアルバムを保有していなかったので,丁度ええわということで購入である。

なぜ,かなりの数を私が保有していないか?それは不勉強ゆえにAECの音楽の魅力がよくわかっていなかったということが一番大きい。そうは言いながら,AECが山下洋輔と共演した"First Time"やら,Brigitte Fontaineとやった「ラジオのように」とかも聞いているし,Lester Bowieのリーダー及び参加アルバムは比較的持っている。結局のところ,AEC単独での活動,あるいはそこで展開される音楽にやや苦手感があったのかもしれないなぁと思っている。ということで,今日は18アルバム中"I"となっている"Nice Guys"をプレイバックしている。

"Nice Guys" The Art Ensemble of Chicago(ECM)

Nice_guys思えば,私はこのアルバムを,昔LPで保有していた。多分買ったのは10代の後半だったと思うが,その頃には全くこういう音楽を理解できていなかったというのは上述の通りである。だから売り払うのも早かった。その後,私はどっぷりとECMというレーベルにはまっていくわけだが,それでもAECはフォローの対象からははずれていたのである。

ということなので,このアルバムを聞いたのは何十年ぶりってことになってしまうが,やっぱり変わっているというか,この人たちにしかできない音楽だなぁって気がする。完全なフリーではなく,それこそ「アンサンブル」として演じられるところが,この人たちの面白さなのかなぁと改めて感じた私である。でも,最後に収められた"Dreaming of the Master"とかの路線は非常によかった。多分,以前はB面のこの曲まで行きつかなったんだろうなぁ(笑)。星★★★★。

Recorded in May 1978

Personnel: Lester Bowie(tp, celeste, b-ds), Joseph Jerman(ts, ss, as, sopranino, cl, fl, conch shell, vib, gongs, congas, whistles, vo), Roscoe Mithcell(as, ts, ss, piccolo, fl, oboe, cl, gongs), Malachi Favors Maghostut(b, perc, melodica), Famoudou Don Moye(ds, bells, bike horns, congas, tympani, marimba, bongos, chimes, conch shells\, whistle, wood blocks, cowbells)

2018年12月 8日 (土)

随分と印象が変わってきた平野啓一郎:「ある男」

「ある男」 平野啓一郎(文藝春秋)

Photo平野啓一郎が「日蝕」でデビューした時,なんと敷居の高い小説だろうと思ったのも随分前のことだが,その後,「決壊」のようなキリキリするような話を書いたかと思えば,「マチネの終わりに」のような恋愛小説を手掛けて,私の中で,この人の印象は随分と変わってきた。その平野啓一郎が「マチネの終わりに」に次いで発表した小説を先日読み終えた。

一言で言えば,随分この人の書く小説はわかりやすくなったと思う。そして,この本,非常に面白く読める。「愛したはずの夫は、まったくの別人であった。」というキャッチコピー通りの展開なのだが,そこに挿入される主人公である弁護士,城戸の夫婦間のやり取りや,その他の登場人物の造形が一つ一つ考えさせられるところがある。やや,ストーリーの展開に,そんなことあるか?と思わせる部分もあるが,そこは話の面白さに目をつぶることとしよう。

ネット上では,主人公の城戸が,在日三世から帰化をしたというプロファイルに文句をつけているネトウヨみたいな連中もいるが,そうした設定がなければ,ヘイト・スピーチに関するくだりも全く意味をなさなくなる。そもそも作家が自身の思想や考え方を小説に投影して何の問題があるのかと思ってしまうが,そうした社会の不寛容さが,この小説を執筆する際のボトムラインにあったのではないかと思ってしまう。

いずれにしても,ストーリーの展開についついページをめくらされ,そして,読後感はある種の清涼感を覚えさせるのは「マチネの終わりに」同様である。感情移入の点では,私にとっては「マチネの終わりに」の方が好きだが,この小説もよくできていると思わせてくれて,満足感のあるものであった。星★★★★☆。結局,この人の小説は,私にフィットするってことかもしれないなぁ。

2018年12月 5日 (水)

久しぶりにユーミンでも。

"流線形 ’80" 松任谷由実(東芝EMI)

_20181204なぜか突然のユーミンである。このアルバムがリリースされたのは1978年。ってことはもう40年前になってしまうのかと感慨にふける私である。

私がユーミンの音楽に目覚めたのはかなり遅く,基本的には後追いである。どの辺りからリアルタイムで真っ当に聞き始めたかと言えば,多分"Pearl Pierce"だったろうか。あのアルバムはマジで好きだった。なので,このブログにも記事をアップしている(記事はこちら)。そして,彼女の最高傑作は"Misslim"と疑わない私である(記事はこちら)。それでもって今日は本作なのだが,40年前のアルバムにしては,全然古い感じがしないのは大したものである。そして,いい曲が揃っているわ。

このアルバムでは「埠頭を渡る風」が最大のヒット曲だろうが,「ロッヂで待つクリスマス」なんて改めて聞いてみるとマジで懐かしいだけでなく,実によく出来た曲である。"Corvett 1954"にゲストで出てくる来生たかおのヴォーカルもいいよねぇ。その後お,徐々にユーミンもバブル的な音楽になっていく中で,この辺りのアルバムの感覚ってのは懐かしくも,今でも甘酸っぱい感覚を思い出させる。

さすがにリリースから40年も経つと,特にホーン・セクションのアレンジとかにはいかにも昭和歌謡的なところを感じさせる部分もあるが,今となってはそれがまたいいのである。やっぱりこの頃のユーミンは魅力的であった。"Misslim"と"Pearl Pierce"を最高としたとしても,これは十分星★★★★☆にできるな。さて,次は何を聞くかなぁ(笑)。

2018年12月 4日 (火)

超久しぶりに聞いた"The Falcon and the Snowman"

”The Falcon and the Snowman: The Original Motion Picture Soundtrack" Pat Metheny Group (EMI Manhattan)

_20181202これを聞くのは何年ぶりだろうか?実を言ってしまえば,このアルバムはクロゼットの奥にしまわれていて,日頃プレイバックの機会はなかった。少なくとも,現在の家に引っ越してからは一度も聞いていないはずだ。そんなアルバムだが,先日,別のCDを探していて,これと"Song X"を久々に取り出してきた私である。

まぁ,これは映画(邦題は「コードネームはファルコン」)のサウンドトラックなので,通常のPat Metheny Groupの演奏と同等に扱うべきではないが,久しぶりに聞いてみると,結構彼ららしいサウンドもあって,特にPedro Aznarが加わる2曲はいい感じだと思える。ただ,やっぱりハイライトはDavid Bowieと彼らの共演である"This Is Not America"ってことになるのは仕方ないだろうねぇ。PMGとしては最新(最後?)の来日公演である2009年1月のBlue Note東京でのライブでもこの曲をやっていたのが懐かしい。

実に久しぶりに聞いたのだが,結構あっという間に時間が経ってしまって,実はまぁまぁ楽しめるアルバムだったのだなぁなんて思った私である。

それはさておき,映画の方は名匠John Schlesingerが監督した作品でもあり,Sean Pennも出ていることを考えると,ちょっと見てみたいような気もする。このJohn Schelsingerが撮った作品ではオスカーも取った「真夜中のカーボーイ」(誤植ではない!) が最も有名だろうが,実は「マラソンマン」とかも好きなんだよねぇ。あれはLawrence OlivierによるDustin Hoffmanの拷問シーンが怖かった。いずれにしても,結構渋い映画も多い,今にして思えばいい監督だった。

Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Lyle Mays(p, synth),Steve Rodby(b), Paul Wertico(ds, perc), Pedro Aznar(vo), David Bowie(vo), with National Phiharmonic Orchestra and Ambrosian Choir

2018年12月 3日 (月)

まだまだ出るんだろうなぁ,Keith Jarrettのライブ音源。

"La Fenice" Keith Jarrett(ECM)

_20181201_2Keith Jarrettのライブ音源はある程度のインターバルを置いて,いろいろな場所での音源がそれこそいろいろ出てくる。そして,録音からどうしてこんなに寝かしておく必要があるのかと思わせることも多いが,これもそんな作品である。録音は2006年7月19日であるから,12年以上前である。そして,クラシックの殿堂のようなところの音源もあって,ウィーン国立歌劇場やスカラ座やカーネギー・ホールでのアルバムもあって,これもそうした流れのアルバムである。

最近のKeith Jarrettのソロは,以前のように長大なソロ曲はやらず,だいたいセット当たり5,6曲の即興を行うのが一般的だと思う。前半は現代音楽的なアプローチを強く聞かせ,後半には美的なメロディを増やし,アンコールの小品で痺れさせるって感じの演奏が多いと思う。本作もおそらくはディスク1が前半部,ディスク2が後半ということだと思うが,やはり現代音楽的アプローチが前半は強く出ている。しかし,Part IIIにおいて,いかにもKeithらしいフォーク的な色合いが出てきて,安心感(笑)を結構早く感じられるようになる。そしてその後のPart IVも美しい演奏だし,Part Vはブルージーな感じで,最近の私が聞いたKeith Jarrettのライブより,はるかに聴衆に寄り添った感じがするのがよい。これも場所の成せる業か。ディスク2に移っても,聴衆を突き放す感覚はなく,これはイタリアの聴衆と,La Feniceという場所が影響しているとしか思えない(苦笑)。だって,2曲目には早くもオペレッタ「ミカド」から"The Sun Whose Rays"のような曲をやってしまうのである。

Keith Jarrettは2014年の大阪のライブで完全にキレたことからもわかるように,相当神経質な感じもする人だが,この時はどうも様子が違うと思いたくなるようなピアノの弾きっぷりである。もちろん,それは悪いことではなく,この時の聴衆にとってはまさに幸せなことであったと言わざるを得ない。

こんな調子でアルバムをリリースされるのは,こっちにとっても大変なのだが,こういう演奏なら大歓迎である。星★★★★☆。

それにしてもこのヴェネツィアにあるフェニーチェ劇場,素晴らしい造形である。こういうところで演奏した記録をアルバムとして出したくなるのはアーティストとしては当然か。劇場内部の写真もアップしておこう。美し過ぎるよなぁ。こんなところでオペラを見てみたいものだ。

Recorded Live at Gran Teatro La Fenice, Venice on July 19, 2006

Personnel: Keith Jarrett(p) 

La_fenice

2018年12月 2日 (日)

またも出た!Woody Shawの未発表音源。これはワンホーンだけに貴重。

"Live in Bremen 1983" Woody Shaw (Elemental Music)

Woody_shaw_bremen昨今,Woody Shawの未発表音源が続々とリリースされているが,このブログでも10月には"At Onkel Pö's Carnegie Hall Vol. 1"をアップしている(記事はこちら)し,あれもなかなかいいアルバムであった。あちらは本作の前年で,本作のメンツにSteve Turreを加えたクインテットであったが,こちらはWoody Shawのワンホーン。Michael Cascunaのライナーにもある通り,なぜSteve Turreがいないのかはわからないのだが,Woody Shawのワンホーン・アルバムはあまりないので,これは実に嬉しいリリースである。そしてこれがまたいい出来なのである。

冒頭の"You and the Night and the Music"こそ軽く始まる感じだが,2曲目のWoody Shawオリジナル"Rahsaan' Run"のスリリングな展開を聞いて燃えないジャズ・ファンはいないだろう。全編を通じて,このメンバーによる実力十分の演奏が収められていて,これは満足度が高い。特に急速調の曲におけるWoody Shawの火を噴くようなフレージングはどうだ!これぞWoody Shawと思いたくなるが,これほどエキサイティングな演奏は彼のキャリアでも珍しいのではないだろうか。クァルテットとしての爆裂具合も楽しい。ある意味,Mulgrew Millerってこんなピアノだったかと思わせるのも事実である。特に,彼のオリジナル,"Pressing the Issue"は強烈なアップテンポで,燃える~。

とにかくこういう音源は出してくれただけでもありがたい。これより前に出た東京のライブはFM放送の音源をCD化しただけで,ラジオでの紹介音声も入っていたりして,CDを買う気になれなかったが,これはそれとはレベルが違う。Woody Shawファン必聴の音源と評価したい。もちろん星★★★★★としよう。

Recorded Live at Post Aura,, Bremen on January 18, 1983

Personnel: Woodt Shaw(tp, fl-h), Mulgrew Miller(p), Stafford James(b), Tony Reedus(ds)

2018年12月 1日 (土)

Antonio Sanchezの怒りとスリリングな音楽への昇華。

"Lines in the Sand" Antonio Sanchez & Migration(CamJazz)

_20181201最近,ショップに行くことも滅多にない私だが,ちょっと空いた時間があったので,久しぶりにDUのJazzTOKYOに行った。中古は収穫なしに終わったが,新譜として本作がリリースされていたので,珍しくもショップで購入である。

Antonio Sanchezはメキシコから米国への移民として,日頃からTwitterなどでDonald Trumpへの批判を行っている。米国の国の成り立ちを考えれば,私のような「トランプ嫌い」のリベラルな人間は,彼が怒りを発露するのも当然だと思える。

それを音楽的なメッセージとして出してきたのが彼のソロ・プロジェクト作"Bad Hombre"だったと思うが,本作は更にそのメッセージを強固に打ち出したものとなっていることは,ライナーからも明らかである。裏ジャケにはライナーの最後の文章である"I'm a proud immigrant. A proud Mexican and a proud American that feels torn by the injustices that are being perpetrated against so many innocent people in search of a better life. This album is dedicated to them and their journey."が掲げられている。これこそがこのアルバムの意味を如実に表している。

そうしたメッセージをどう受け止めるかも重要だが,純粋に音楽だけを聴いていても,これは極めて高いテンションを以て制作されており,まさにAntonio Sanchezらしいスリリングな演奏を聞くことができる。Migrationとしての前作である"Meridian Suite"ではSeamus Blakeがサックスを吹いていたが,今回はサックスがChase Bairdに代わっている。

このChase Bairdという人,Sanchezに加えて,Brad Mehldau,Nir Felderなどとアルバムを吹き込んでいることは間違いないのだが,一向にリリースされる気配がない。おクラ入りの憂き目に遭わないことを期待したいが,本作ではAntonio Sanchezの強烈な音楽に十分貢献していて,このメンバー・チェンジは大きな影響を与えていないと感じられる。また,前作ではゲスト扱いだったヴォーカルのThana Alexaがバンド・メンバーとして名を連ねている。

70分に渡って発露されるAntonio Sanchezの怒りは,このスリリングな音楽へと昇華しているが,この音楽が現在のアメリカの状況の変化にどの程度貢献しうるかについては定かではない。しかし,Antonio Sanchezとは言わずにおれぬ,やらずにおれぬという切迫感からこうした音楽を生み出したと思え,私としてはその意気を評価するとともに,Antonio Sanchezの音楽のクォリティの高さに今回も圧倒されたと言わざるをえない。

今日から師走であるが,年末に現れた強烈な作品として高く評価したい。星★★★★★。

Recorded in August, 2018

Personnel: Antonio Sanchez(ds, vo, key), John Escreet(p, rhodes, synth), Matt Brewer(b), Thana Alexa(vo, effects),Chase Baird(ts, EWI),Nathan Shram(vla), Elad Kabilio(cello)

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