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2018年12月31日 (月)

皆さん,よいお年をお迎え下さい。

今年も大みそかとなった。とにかく,今年は海外出張が多く,大いに体力を使った訳だが,何とか乗り切ったってところか。しかし,ブログの更新頻度は以前より確実に低下してしまった。まぁ,今年ぐらい海外出張続きだと,仕方がないところもあるが,その割に現地でのライブの模様とかはアップしているのだから,気楽なものである。

ともあれ,仕事にも若干変化があり,いろいろあった一年であったが,来年はどうなるのかにも思いを馳せつつ,本ブログの2018年を締めくくりたい。皆さまのアクセスに感謝します。

それでは皆さま,よいお年をお迎え下さい。

2018年12月30日 (日)

2018年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)

2018_albums_4

今年を回顧するのも今回が最後。最後はジャズのアルバムに関する回顧で締めよう。今年もジャズに関してはそこそこ新譜も購入したし,相応の枚数を記事にした。もちろん,聞いても記事にしていないものもあるが,それは優先順位を下げてもまぁいいだろうというものである。

そんな中で,ブログの右側に掲載している今年の推薦盤が,かなり高い比率でECMレーベルによって占められていることは明らかで,私のCD購入の中心がECMになってしまっていることの裏返しと言っても過言ではない。そんなECMにおいて,私が今年最も感銘を受けたのがMarcin Wasileuski Trioの"Live"であった。彼らの音楽の美的な部分と,ライブにおけるダイナミズムが結びついて,これが実に素晴らしい作品となった。彼らのアルバムのレベルは総じて高いが,ますますこのトリオが進化していることを如実に示したものとして,今年の最高作はこれを置いてほかにないと思えた。今回,改めて本作を聞いたが,来年1月の来日が実に楽しみになってきた私である。

ECMにおいては,Bobo Stensonの"Contra la Indecisión"も素晴らしかったし,Norma Winstoneの映画音楽集もよかった。Barre Phillipsのベース・ソロ作にはECMレーベルの愛を感じたし,Ben Monderが効いていたKristijan Randaluの"Absence"も印象深い。そのほかにも優れたアルバムが目白押しだった。そうしたECMにおける次点のアルバムを挙げると,暮れに聞いたAndrew Cyrilleの"Lebroba"ではないかと思っている。記事にも書いたが,このアルバムの私にとっての聞きどころはWadada Leo Smithのトランペットであったわけだが,この切込み具合が実にいいと思えた。

中年音楽狂と言えば,Brad Mehldauなのだが(爆),今年も彼自身のアルバムや客演アルバムがリリースされて,非常に嬉しかった。リーダー作が2枚,Charlie Hadenとの発掘音源,ECMでのWolfgang Muthspiel作,奥方Fleurineのアルバムで4曲,そしてLouis Coleのアルバムで1曲ってのが,今年発売された音源ということになるはずだが,その中ではチャレンジングな"After Bach"を推すべきと思っている。ジャズ原理主義者からすれば,こんなものはジャズとは言えないってことになるだろうが,ジャンルを越境するのがBrad Mehldauなのだということを"After Bach"は強く感じさせてくれた。

ジャズという音楽に興奮度を求めるならば,これも年末に届いたAntonio Sanchezの新作"Lines in the Sand"が凄かった。SanchezはWDR Big Bandとの共演作"Channels of Energy"もリリースしたが,興奮度としては,"Lines in the Sand"の方が圧倒的であり,これぞAntonio Sanchezって感じさせるものであった。このエネルギーを生み出したのはトランプ政権への怒りだが,メッセージ性がどうこうというレベルをはるかに越えた興奮度を生み出したことは大いに評価したい。

もう一枚の興奮作はJohn McLaughlinとJimmy Herringの合体バンドによるMahavishnu Orchestraの再現ライブ,"Live in San Francisco"であった。McLaughlinももはや後期高齢者であるのだが,何なんだこのテンションは?と言いたくなるのは,以前4th DimensionのライブをBlue Note東京で見た時と同様である。いずれにしても,ロック的な興奮という点では,このアルバムを越えるものはないだろう。

そのほかに忘れてはならないアルバムとしてあと3枚。1枚は本田珠也の"Ictus"である。これは2018年の新年早々ぐらいにリリースされたものであり,記憶が風化しても仕方がないのだが,このアルバムを聞いた時の印象は実に鮮烈であった。こうした素晴らしいアルバムが日本から生まれたことを素直に喜びたい。実に強いインパクトを与えてくれた傑作であった。

そしてCharles LloydとLucinda Williamsの共演作,"Vanished Gardens"を挙げたい。アメリカーナ路線を進むCharles LloydがLucinda Williamsという最良と言ってよい共演者を得て,かつ80歳を越えたと思えぬ創造力を維持しながらリリースした本作は,前作"I Long to See You"には及ばないかもしれないが,今年出たアルバムにおいて,決して無視することができない存在感を示している。ここにWayne Shorterのアルバムを入れていないのは,あのパッケージ販売が気に入らないからであって,音楽だけならもっと高く評価していたと思えるが,Shorterの分までCharles Lloydを評価したい。

最後に今年の最も美的なアルバムとして,Lars DanielssonとPaolo Fresuという好き者が聞けば涎が出てしまうような組合せによるデュオ・アルバム,"Summerwind"を挙げておこう。聞き手が想像し,期待する世界を体現するこの二人による超美的なサウンドにはまじで痺れてしまった。世の中がこのように穏やかなものとなることを祈念しつつ,今年の回顧を締めくくりたい。

2018年12月29日 (土)

2018年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)

2018_albums_1

今年を回顧する記事の3回目はジャズ以外の音楽にしよう。昨今はよほどのことがないと,新譜を買う場合でも,ストリーミングで試聴して購入するのが常となっているので,以前に比べると,購入枚数は劇的に減っているし,以前なら中古で買ったであろうアルバムも,そんなに回数も聞かないことを考えると,そっちもストリーミングで済ませるようになってしまった。

そんなことなので,先日発売されたミュージック・マガジン誌において,今年のベスト・アルバムに選ばれているような作品もほとんど聞けていないような状態で,何が回顧やねん?と言われればその通りである。そんな中で,今年聞いてよかったなぁと思う作品は次のようなものであった。

<ロック/ポップス>Tracy Thorn:"Record"

<ソウル>Bettye Lavette:"Things Have Changed"

<ブルーズ>Buddy Guy:"Blues Is Live & Well"

<ブラジル>Maria Rita: "Amor E Musica"

そのほかにもNeil YoungやRy Cooder,Ray Lamontagneもよかったが,聞いた時の私への訴求度が高かったのは上記の4枚だろうか。その中でも最も驚かされたのがBuddy Guy。録音時に80歳を越えていたとは思えないエネルギーには心底ぶっ飛んだ。また,Bettye Lavetteはカヴァー・アルバムが非常に素晴らしいのは前からわかっていたのだが,今回のBob Dylan集も痺れる出来であった。しかし,印象の強さという点で,今年の私にとってのナンバー1アルバムはBuddy Guyである。しかし,買いそびれているアルバムもあってMe'Shell Ndegéocelloのカヴァー・アルバムもいいなぁと思いつつ,ついついタイミングを逃してしまった。これを機に買うことにするか,あるいはストリーミングで済ませるか悩ましい。

そして,今年は新譜ばかりではないが,現代音楽のピアノをよく聞いた年であった。特にECMから出たものが中心であったが,心を落ち着かせる効果のある,ある意味私にとってのヒーリング・ミュージックのような役割を果たしていたと言っていこう。

Joni_mitchell_isle_of_wight最後に映像に関して言えば,何はなくともJoni Mitchellのワイト島ライブ。いろいろと議論を呼んだこの時の演奏であるが,凛としたJoniの姿を見られただけで感動してしまった私である。Joni Mitchellと言えば,今年生誕75周年のトリビュート・コンサートが開催されたが,若々しいJoniの姿,声にはやはりファンでよかったと思ってしまう。Joniと言えば,Norman Seeffとのフォト・セッションの写真集を発注済みなのだが,まだ到着していない。そちらは今年中に来るか,越年するかわからないが,そちらも楽しみに待つことにしよう。

2018年12月27日 (木)

買ってしまったDave BrubeckのColumbiaボックス。

"The Columbia Studio Albums Collection 1955-1966" Dave Brubeck Quartet(Columbia)

Brubeck_box私は長年のPaul Desmondのファンである。Desmondのアルトから紡ぎ出される音色,フレージングが無茶苦茶好きなのだ。だが,そのPaul Desmondが長年活動したDave Brubeck Quartetのアルバムは,実はほとんど保有していない。私が保有しているDesmondのアルバムはあくまでも,Desmondのリーダー・アルバムなのだ。

正直言って,Dave Brubeckという人は,ダリウス・ミヨーに師事したというキャリアもあり,普通のジャズ・ピアニストとは異なる感じがする。更に"Take Five"等の曲が有名過ぎて,硬派のジャズ・ファンからはそっぽを向かれるタイプの人である。よく言われるのが,Brubeckのピアノはスイング感に乏しいという批判もあるし,私が若い頃通ったジャズ喫茶でも,聞いた記憶はほとんどない。

そんな私がどうしてこのボックスを買う気になってしまったかと言えば,毎度お馴染み新橋のテナーの聖地,Bar D2においてこのボックスのアルバムが連続再生されていたからなのだ。相変わらず,私はDave Brubeckのピアノには大して魅力は感じないものの,アルバム"Gone with the Wind"等で聞かれるPaul Desmondのアルトを聞いてしまっては,これはやはりPaul Desmondのために買わねばならんと思ってしまったのである。まぁ,19枚組で8,000円もしないということのお買い得感もあり,ついつい発注してしまった私である。

先日,Art Ensemble of Chicagoボックスも届いたばかりで,いつ聞くのよ?と聞かれれば,そのうちとしか言いようがないが,正直言って,AECボックスよりは敷居ははるかに低いので,短時間で聞き通せそうな気もする(ほんまか?)。実際,AECボックスはまだ1枚しか聞いていないのに,こっちはもう2枚聞いてるしねぇ(笑)。Paul Desmondの魅力はやはり抗い難いところがあるのだ。

ということで,このボックスもゆっくり年末年始を通じて聞くことにしようと思った次第。それにしても,こんなにあったのかと思うぐらいアルバムをリリースしていたのねぇ。知ってるアルバムの方が少なかったのが面白かった。

2018年12月26日 (水)

2018年の回顧:映画編

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今年は例年に増して海外出張が多かったので,見た映画の本数も,機内エンタテインメントの方が圧倒的多数ということになってしまった。家で見たものを除いて,数えてみたらなんと,都合53本,そのうち劇場で見たものは10本しかないが,結構な本数になってしまった。まぁ,ライブも映画もって訳にはいかないので,映画館通いが減るのも仕方がないが,もうちょっと劇場で見たかったなぁとも思う。

そうした中で,今年見た中で決定的な映画ってあんまりなかったなぁってのが実感である。しかし,よくよく振り返ってみると,一番よくできていたのは「万引き家族」ではなかったかと思える。安藤サクラをはじめとする役者陣の演技もよかったが,是枝裕和の脚本,演出も実に味わい深く,これならカンヌでパルムドールを取ることに異議はない。先日の出張中に見た「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を全く評価できなかった私としては,カンヌの審査基準も当てにならないと思えたが,「万引き家族」の方はその他の海外での評価も高く,オスカーにもノミネートが期待されるところ。

もう一本,私に強烈な印象を残したのが「スリー・ビルボード」であった。Frances McDormandとSam Rockwellがオスカーの主演女優賞,助演男優賞を取ったのが当然と思える強烈な演技は,今年最初に見た映画であったにもかかわらず,今でも鮮烈な記憶として残っている。脚本と演技の質が高いことが如実に表れていた映画。私は監督賞もMartin McDonaughが取るべきだったと思う。そのほかでは切なさが際立つ「君の名前で僕を呼んで」や,実によく出来たアニメ「リメンバー・ミー」が記憶に残る。

機内エンタテインメントで見た中では,最も印象に残っているのが「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」だったと思う。これはお馴染みの実話に基づく話であるが,実によく出来た映画であった。放送禁止用語連発の映画で,それだけでも印象に残るが,映画的にも見応え十分の作品だったと思う。

Photo_2あとは「午前十時の映画祭」で「七人の侍」を見られたのは実に嬉しかった。これはゴルフが悪天候でキャンセルとなったための棚ぼたのようなものだったのだが,それにしてもこの大迫力はスクリーンで見るべきものだと改めて思ったとともに,やはりこの映画,宮口精二がカッコよ過ぎである。素晴らしい。

そして,今年後半においては「ボヘミアン・ラプソディ」の異様な盛り上がりには驚いた。本作に関しては記事にも書いた通り,映画としてはいけていない部分は多々あるのだが,それを上回るQueen,そしてFreddie Mercuryというアイコンの持つ力の大きさを思い知らされたと言うべきだろう。日頃映画館には行かないかもしれない中高年を劇場に通わせただけでも,本作は評価すべきである。ということで,本家QueenによるLive Aidにおける演奏の模様を貼り付けて,今年の映画の回顧としよう。

 

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2018年12月25日 (火)

年末になって届いたFred Herschの未発表ライブ音源がいいねぇ。

"Trio '97@ the Village Vanguard" Fred Hersch (Palmetto/King International)

_20181224Fred Herschにとって,名門Village Vanguardはホームグラウンドのようなもので,来年も新年早々に出演が決まっている。そんなFred Herschが自身のトリオでVanguardに初出演したのが1997年のことだそうである。その時の音源が残っていて,それがこの度めでたくリリースされた。

録音されてから既に20年以上の時が経過しているので,現在のFred Herschのスタイルよりはやや力感が強いように感じられる。まぁ,その間には昏睡状態に陥っていた時期がはさまれているので,違いがあるのは当然と言えば,当然かもしれない。

しかし,ここで聞かれる音楽は,その後に通じるFred Herschの美学が表れていて,実に素晴らしい。私にとってはホリデイ・シーズンのギフトとして大いに楽しんだ。それはFred Herschのファンにとっても同様のはずで,彼のキャリアを振り返る時に,非常に意味のある音源の発売を素直に喜びたい。

今回,私が珍しくも国内盤を購入したのは,それは偏にボートラの"The Neaness of You"が聞きたいがゆえである。ライブの場でなら,アンコールとしてソロで演奏されてもよい曲だと思うが,ここでのしっとりしたトリオ演奏で締めくくられるディスクは,行く年を送るに相応しい余韻を残すと言えるだろう。リリースされたことを喜ぶという意味も込めて,甘いとは知りつつ星★★★★★としよう。

Recorded Live at the Village Vanguard on July 18, 1997

Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Tom Rainey(ds)

2018年12月24日 (月)

2018年の回顧:ライブ編

年の瀬も迫ってきたので,そろそろ今年の回顧をしなければならない時期となった。まずは,今年はもう行く予定のないライブから。

今年も結局ライブは24本見たはずである。去年は31本見ているから,若干減ったとは言え,月2本ペースである。結構行っているねぇ。そのうち,NYC出張中が6本。どれも印象に残っているが,やはり毎回出張する度に行っている55 Barは印象深いし,楽しい。超狭い空間で,クレジット・カードも使えないが,それでもあの雰囲気で,Mike SternやWayne Krantzが出ているのだから,稀有な体験ができる場所であることに変わりはない。私は見られなかったが,先日にはJohn Escreet,Matt Brewer,それにAntonio Sanchezというバンドにクリポタがシット・インしたと,クリポタがFBに上げていた。そんな瞬間に遭遇したら悶絶確実だが,そういうことが起こる街なのだ。その時の模様が一部インスタに上がっているので,URLを貼り付けておこう。これだけでも悶絶である(こちら)。

そうした中で,今年のベスト・ライブは何だったかと考えると,興奮度からすると,Adam Rogers Diceだっただろうか。珍しくも私は1st,2nd通しで見たのだが,1stが変態ファンクだったのに対し,2ndはジャズマン・オリジナルやスタンダードも交えるということで,両方見ないと,彼らの本質は理解できないではないかとさえ感じる部分もあったが,やっぱり燃えてしまった。ちょっと古い映像だが,雰囲気はそう変わらないので,彼らの55 Barでの演奏の模様を貼り付けておこう。

 

 

そして,Fred Herschのピアノ・ソロもいつもながら素晴らしかった。昨今のアルバムでは,ややアブストラクトな感覚が出てきているHerschであるが,Cotton Clubでのソロは,彼のピアノの美しさを堪能できるライブであった。やはり彼のピアノはいつ聞いても素晴らしい。こちらもやや古い映像になるが,Cotton Clubでもアンコールで弾いた"Valentine"の演奏を貼り付けておく。

 

また,友人からのお誘いで,Paul McCartneyの国技館ライブに行けたのは本当にラッキーであった。もちろん,ドームで見るのもいいのだが,国技館クラスの会場で彼らの演奏を見ることは至福であった。そのライブの中でも私の懐かしさを刺激した"From Me to You"の模様を。ブート映像なので,いつまで有効かわからんが,まぁよかろう。

 

しかし,私としての反省事項もある。今年最初に行ったライブである,Blue Note東京におけるSimon Phillips Protocolの演奏は,会社の新年会の後に駆け付けたため,既に酒が回った私は,猛烈な睡魔に襲われて,途中から記憶なしという体たらく。それ以外のライブではそういう失敗はなかったが,体調は万全にして臨まないといかんと改めて反省。

 

来年も既にライブの予定はそこそこ入っているが,1月からPat Methenyの新グループやら,Marcin Wasileuskiやらと大いに楽しみにしたい。

2018年12月23日 (日)

年末で記事の更新が滞ってしまった。ってことで,今日はECMのAndrew Cyrille作。

"Lebroba" Andrew Cyrille(ECM)

_20181223先日,海外出張から帰国してから,体力的な限界を感じる中,年末の飲み会とか,ゴルフとかもあり,音楽をゆっくり聞いている暇もなかったというのが実感だ。そのため,記事の更新が滞ってしまったが,ここにも何度か書いているように,以前だったら,投稿の間を空けることに抵抗があったが,最近はそうでもなくなってきたというところに,私も加齢を感じるとともに,ブログへの向き合い方にも若干の変化を感じる。できるときにやればいいのであって,無理に書く必要もないってところである。それによって,PV数は伸びなくなるが,まぁ素人なので,別にそれは大したことでも,クリティカルなことでもない。そうは言いつつ,やめる気もないのだが...。ってことで,今日はこのアルバムである。

Andrew CyrilleってECMとあまり結びつかないイメージだったのだが,Ben Monderのアルバムに参加して,更にはリーダー作として,"The Declaration of Musical Independence"を発表して,そして本作につながる訳だが,全てが総帥Manfred Eicherではなく,Sun Chungのプロデュースという共通項がある。Eicherが引退した後のECMレーベルは,このSun Chungに引き継がれていくと思うが,以前にも書いた通り,この人のプロデュース作には独特なアンビエンスが感じられるという印象が強い。

そして,今回はドラムス~ギター~トランペットという変則的な編成で演じられるが,前作にも参加していたビルフリはさておき,このアルバムのキモは私はWadada Leo Smithのラッパだと思う。比較的静謐な音場を切り裂くWadada Leo Smithのトランペットは静かな中にも,独特の興奮を生み出していて,これはいいと思えてしまう。以前のECMにもこういう変則的な組み合わせのセッション・アルバムが存在したが,そうした感覚を思い出させるものとも言える。

ビルフリはベースレスでも関係ないわって感じで,独特な音場を構築しながら,フレージングはらしさをとことん打ち出してきて,Andrew Cyrille名義のアルバムでありながら,3者のコラボ的な部分が強く感じられるし,曲も持ち寄りであるから,緊密な連携作であることは間違いない。

いずれにしても,このアルバム,ECM的なカラーを持たせながらも,こういうアンビエンスはどうよ?って感じの音作りで,私は大いに気に入ってしまった。でもやっぱり本作はWadada Leo Smithがその価値を高めたのは間違いない。星★★★★☆。

Recorded in July, 2017

Personnel: Andrew Cyrille(ds),Wadada Leo Smith(tp), Bill Frisell(g)

2018年12月19日 (水)

Antonio Sanchez同様に,怒りを音楽へと昇華させたWayne Escoffery。

"Vortex" Wayne Escoffery(Sunnyside)

_20181218このアルバムを新譜と呼ぶには,リリースから時間が経ち過ぎているが,まぁ今年のリリースだから許してもらうことにしょう。正直言って,このアルバム,ほかのアルバムとの抱き合わせで購入したものなのだが,これを見逃していた(聞き逃していた)ことは実にもったいないことだったと反省した一枚である。

Wayne EscofferyはTom Harrellのバンドで,その名前が知られるようになったというのが妥当なところだろうが,昨今はリーダーとしてもアルバムをリリースしていて,私も彼のアルバムは結構買っているし,Cotton Clubでのライブも見に行った(その時の記事はこちら)。このアルバムはその時のライブとベース以外は同じメンツで吹き込まれているが,メンツゆえにライブでも激しさを打ち出した彼らだったが,本作の演奏も相当の熱量で迫ってくる。それはDavid KikoskiにRalph Petersonという剛腕を従えているということもあるが,この熱量を生んでいるのがWayne Escofferyの差別への怒りである。そうした観点ではAntonio Sanchezの新作同様に,この音楽を生み出すモチベーションは怒りなのである。

だが,そうした怒りは露骨に表現されるというよりも,非常に活力のあるジャズ・アルバムとして出来上がったところがよい。こういう熱い演奏を聞いていると,やっぱりジャズにはこういうエネルギーが必要な時もあるよなぁと思う。美的なジャズもまたよしではあるが,たまに聞くフリー・ジャズや,こうしたタイプの演奏を聞いていると,ジャズという音楽の懐の深さを改めて感じた私である。正直言ってこのジャケは購買意欲をそそるものではないが,それでもこの音楽を聞いたら,その魅力はすぐにわかるってところである。

なので,私も結構贔屓にしているJeremy Peltの1曲でのゲスト参加が不要にさえ思えてしまうという具合なのだ,いずれにしても,Wayne Escofferyの実力,そしてサイドマンの力量も十分に感じられる力作。もっと早く聞いておくべきであった。星★★★★☆。

Recorded on March 4, 2016 and March 7, 2017

Personnel: Wayne Escoffery(ts, ss), David Kikoski(p), Ugonna Okegwo(b), Ralph Perterson, Jr.(ds), Jeremy Pelt(tp), Kush Abadey(ds), Jaquelene Acevedo(perc)

2018年12月17日 (月)

出張中に見た映画('18/12編)

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今回の欧州出張は,結構体力的にもきつく,いつもよりは控えめな本数になってしまったが,それは正直言って,見たいと思える映画が少なったからだということもできる。

実のところ,今回見たのは次の5本なのだが,どうもなぁという感覚が強い。JALももう少し機内エンタテインメントの映画を考えた方がいいと思った出張であった。

  1. 「ザ・プレデター(The Predator)」
  2. 「スカイスクレイパー(Skyscraper)」
  3. 「日日是好日」
  4. 「ザ・スクエア 思いやりの聖域(The Square)」
  5. 「マイル 22(Mile 22)」

実はこの中で期待していたのは,カンヌでパルム・ドールを取った「ザ・スクエア 思いやりの聖域」だったのだが,なんでこの映画が評価されるのか,そして2時間半以上の尺が必要なのか全く理解できなかった私である。むしろ,なんてことはないストーリーなのだが,ほのぼのしてしまう「日日是好日」の方がはるかに真っ当な映画に思えた私であった。

そのほかの3本は,チョイスした自分を呪いたくなるようなしょうもない映画。「スカイスクレイパー」なんて,「タワーリング・インフェルノ」をはるかにくだらなくした映画に過ぎないし,「ザ・プレデター」なんて,オリジナルの「プレデター」の足元にも及ばない愚作であった。「マイル22」は95分間ドンパチを続けるというこれまた噴飯ものの映画であった。そもそもそんな簡単にハッキングってできるんかい?って思ってしまったが。いずれにしても,選択肢が少ないんだから仕方ないって話もあるが,今回はまじでがっくりきた。

ってことで,一番面白く見られたのは「日日是好日」。時の流れが女優の見た目に反映されていないのはイマイチ感もあるが,樹木希林に免じてよしとしよう。それにしても多部未華子は可愛くなったねぇ(笑)。

2018年12月16日 (日)

帰国前のロンドンにて。

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スイスからロンドンに移動し,ひと仕事こなして帰国の途についた私である。

ロンドンからの帰国便は夜出発なので,土曜日の昼はフリーってことで,久々にTate Modernに行ってきた。

ロンドンは悪天候で,アプローチのあまりよくないTate Modern訪問は結構きつい道のりであった。まぁ,それでも絵画,彫刻,インスタレーションと強烈なコレクションは壮観であった。

そして実に面白かったのがChristian Marclayの”The Clock“。これって映像のコラージュなのだが,実際の時刻とシンクロした映像が映されるのだ。私が見ていたのは14時過ぎだったが,”Hook“とか,”The Taking of Pelham 123“とか,”3:10 to Yuma“が組み合わされて,例えば14:17ならそういう映像が組み合わされるというユニークな作品であった。全部見るには24時間って凄いよねぇ。

ってことでTate Modernの造形がわかる写真と”The Clock“のポスターをアップしておこう。それにしても寒かった。

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2018年12月14日 (金)

バーゼルの風情

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スイスのバーゼルでの仕事が終わり,これからロンドンに移動し,もう一仕事である。

バーゼルという街は初めて来たが,国際決済銀行の本部があるとは思えない,こじんまりとした街であった。ある意味,非常に落ち着いた雰囲気があって,きっと住みやすいところだと思わせる。

空港に着いた時は,スイス側とドイツ/フランス側の出口が分かれていることに気づかず,難儀してしまった。

いずれにしても,仕事で来ているので,街の様子を見聞する余裕はなかったが,それでも昨日のランチタイムに会場を抜け出し,1時間ほど散歩できてよかった。ってことで,写真はライン川を渡って向かった大聖堂への道すがら。公開時間ではなかったので,聖堂内に入れなかったのはつくづく残念。それにしても,写真からも想像できるような底冷えのする街を歩くのも風情があったってことで…。

2018年12月12日 (水)

この記事がアップされる頃には...

前にも同じような記事をアップしたことがあるが,またも海外出張である。今年は本当に海外が多くて,師走になってまで行くことになることになるとは思わなかった。

それでもって,今回の出張先はスイスのバーゼル。スイスに仕事で行くのはジュネーヴ以来,2回目だなぁ。ということで,バーゼルの街並みの写真をアップしておくが,仕事での短期の滞在ゆえ,美しい街並みを愛でる余裕はないかなぁ。それでも大聖堂だけは是非行ってみたいものだ。

それにしても,この観覧車は...。私から言わせれば,町の景観を台無しにしているように思うが...。

Basel

2018年12月11日 (火)

JLF解散後にリリースしたJeff Lorberのソロ・アルバム第1弾。

"It's a Fact" Jeff Lorber(Arista)

_20181208_2なんだかんだ言ってJeff Lorberの音楽が好きな私であるが,いつも書いているように,そこに感じるのは「中庸の美学」なのだ。突出したことはやらないが,安定感のあるフュージョンを聞きたければ,私はJeff Lorber,特にJeff Lorber Fusion(JLF)のアルバムを聞けばいいと思っている。だからと言って,何でもいいという訳ではないし,私もJeff Lorberのアルバムをすべては保有していないから,大したことは言えた筋合いではない。しかしである。やはりこの人の音楽は一般的なリスナーに対しても十分な訴求力を持つものだろうと思っている。どういう場にでも合ってしまうってところだろうか。

そんなJeff Lorberが第1期(?)のJLFを解散して,ソロ名義でリリースした第1作が本作。振り返ってみれば,1982年のリリースなので,既に35年以上前なのねぇ。正直言って私がこの人の音楽に目覚めたのは,ずっと後のことであり,リアルタイムでは聞いていない。それはJLFについても同じである。ジャズ喫茶でプレイバックされているのは聞いたことがあるかもしれないが,若い頃には彼らの音楽の魅力に気づく余裕もなかったかもしれないなぁと思ってしまう。

このアルバムも購入したのは後付けで,しかも中古でのゲットではなかったかと記憶しているが,JLFからよりポップな感覚を強めたってところであろう。まだこの頃はKenny GがKenny Gorelickで参加しているのも懐かしいが,JLFのタイトさよりも,よりライトな感覚が強くなっているところをどう評価するかってところではないかと思う。私としては,タイトさが残る"Full Moon"やら"Always There"のような曲が好みではあるが,後のスムーズ・ジャズなるカテゴリーの萌芽と言ってもよいような演奏。それを時代を先取りしていたとまで言おうというつもりはないが,それがJeff Lorberのプロデューサーとしての嗅覚につながっているのかもしれないなんて思ってしまった。

でも正直言って,私はJeff Lorber名義のアルバムより,JLFのアルバムの方にはるかにシンパシーを感じてしまうのも事実なのだ。ってことで,ちょっと軽いなぁってこともあり,星★★★ぐらいにしておこう。評価はその程度だが,楽しんで聞けるのは間違いない。

Personnel: Jeff Lorber(p, key, g), Marlon McClain(g), Nathan East(b), John Robinson(ds), Greg Walker(vo), Arnold McCuller(vo), Sylvia St. John(vo), Lynne Davis(vo), Kenny Gorelick(ts, ss, fl), Paulinho Da Costa(perc), Tom Browne(tp, fl-h), Pat Kelly(g), Pete Chrstrieb(horn)

2018年12月10日 (月)

またもユーミン。今日は「悲しいほどお天気」。

「悲しいほどお天気」 松任谷由実(東芝EMI)

_2018120812月に入り,新譜もそうは入ってこないってことで,なぜかユーミンをプレイバックする機会が増えているのは,単なる気まぐれなのだが,今日は「悲しいほどお天気」である。

このアルバムは結構地味な感じがするのだが,ユーミンのファンの中ではこのアルバムが結構好きな人がいるのではないか?ライブでも定番のように演奏されていた(と言っても,彼女のライブなんて何年も見たことはないので,現在はどうかは知る由もないが...)"DESTINY"のような人気曲もあるが,印象的な佳曲の多いアルバムだと思っている。そして,各々の曲に英語タイトルがついているのが面白いが,ちゃんと歌詞と連動したタイトルになっていて,なるほどねぇと思わせる。

  1. ジャコビニ彗星の夜(The Story of Giacobini's Comet)
  2. 影になって(We're All Free)
  3. 緑の町に舞い降りて(Ode of Morioka)
  4. DESTINY
  5. 丘の上の光(Silhouetts)
  6. 悲しいほどお天気(The Gallery in My Heart)
  7. 気ままな朝帰り(As I'm Alone)
  8. 水平線にグレナディン(Horizon & Grenadine)
  9. 78
  10. さまよいの果て波は寄せる(The Ocean And I)

冒頭の「ジャコビニ彗星の夜」からして,しっとりしたいい曲だが,2曲目の「影になって」なんて,メロウ・ソウルっぽいアレンジも決まっていて,心地よいのだ。そして爽やかな感覚の「緑の町に舞い降りて」の後に来る"DESTINY"の曲調は,ある意味このアルバムの中では浮いている。このディスコ的な感じを持つベース・ラインも現れるノリのよいバックの演奏に対して,歌われる歌詞の暗いことよ(笑)。だって,「冷たくされていつかは見返すつもりだった それからどこへ行くにも着かざってたのに どうしてなの 今日に限って やすいサンダルをはいてた」って凄い歌詞だよねぇ。このギャップが強烈なのだ。それに続く「丘の上の光」との曲調の落差も大きい。

LP時代ならばB面に移ってからの構成もA面と似ている感じがする。A面の"DESTINY"に相当するのが"78"ってことになるが,上田正樹がアレンジを担当したバックのコーラスが,ほかの曲との違いを際立たせている。タイトル・トラック「悲しいほどお天気」というしっとりした佳曲で始まり,「気ままな朝帰り」に聞かれる「家なんか出てしまおう」の部分のフレージングや歌いっぷりなんて,おぉっ,ユーミン的って思わせるのも微笑ましい。「水平線にグレナディン」なんて高水健司のベース・ソロが入るというのも珍しいが,「海を見ていた午後」を彷彿とさせる。そこへタロットをテーマにした"78"は"DESTINY"同様の異質感があるのだ。アルバムの構成にメリハリをつけるという点では,まさにメリハリがついているのだが,メリハリつき過ぎって感じもする。そして最後が「さまよいの果て波は寄せる」だもんなぁ。Eaglesの"Hotel Claifornia"で言えば,"Last Resort"的なエンディングって感じ。

これも実は久しぶりに聞いたのだが,それでもやっぱり好きだなぁ。

2018年12月 9日 (日)

Art Ensemble of Chicagoのボックスが届く。いつ聞くねん?(苦笑)

"The Art Ensemble of Chicago and Associated Ensembles" Various Artists(ECM)

Aec_and_associated_ensembles一部の好き者の間(爆)で話題のボックス・セットである。ECMにおけるArt Ensemble of Chicago(AEC)のアルバムと,AECのメンバーが参加したアルバムを集成したものであり,18アルバム,21枚組のセットである。正直なところ,これを全部聞くのは大変だなぁと思いつつ,私はECM好きの割に,ここに入っているかなりの数のアルバムを保有していなかったので,丁度ええわということで購入である。

なぜ,かなりの数を私が保有していないか?それは不勉強ゆえにAECの音楽の魅力がよくわかっていなかったということが一番大きい。そうは言いながら,AECが山下洋輔と共演した"First Time"やら,Brigitte Fontaineとやった「ラジオのように」とかも聞いているし,Lester Bowieのリーダー及び参加アルバムは比較的持っている。結局のところ,AEC単独での活動,あるいはそこで展開される音楽にやや苦手感があったのかもしれないなぁと思っている。ということで,今日は18アルバム中"I"となっている"Nice Guys"をプレイバックしている。

"Nice Guys" The Art Ensemble of Chicago(ECM)

Nice_guys思えば,私はこのアルバムを,昔LPで保有していた。多分買ったのは10代の後半だったと思うが,その頃には全くこういう音楽を理解できていなかったというのは上述の通りである。だから売り払うのも早かった。その後,私はどっぷりとECMというレーベルにはまっていくわけだが,それでもAECはフォローの対象からははずれていたのである。

ということなので,このアルバムを聞いたのは何十年ぶりってことになってしまうが,やっぱり変わっているというか,この人たちにしかできない音楽だなぁって気がする。完全なフリーではなく,それこそ「アンサンブル」として演じられるところが,この人たちの面白さなのかなぁと改めて感じた私である。でも,最後に収められた"Dreaming of the Master"とかの路線は非常によかった。多分,以前はB面のこの曲まで行きつかなったんだろうなぁ(笑)。星★★★★。

Recorded in May 1978

Personnel: Lester Bowie(tp, celeste, b-ds), Joseph Jerman(ts, ss, as, sopranino, cl, fl, conch shell, vib, gongs, congas, whistles, vo), Roscoe Mithcell(as, ts, ss, piccolo, fl, oboe, cl, gongs), Malachi Favors Maghostut(b, perc, melodica), Famoudou Don Moye(ds, bells, bike horns, congas, tympani, marimba, bongos, chimes, conch shells\, whistle, wood blocks, cowbells)

2018年12月 8日 (土)

随分と印象が変わってきた平野啓一郎:「ある男」

「ある男」 平野啓一郎(文藝春秋)

Photo平野啓一郎が「日蝕」でデビューした時,なんと敷居の高い小説だろうと思ったのも随分前のことだが,その後,「決壊」のようなキリキリするような話を書いたかと思えば,「マチネの終わりに」のような恋愛小説を手掛けて,私の中で,この人の印象は随分と変わってきた。その平野啓一郎が「マチネの終わりに」に次いで発表した小説を先日読み終えた。

一言で言えば,随分この人の書く小説はわかりやすくなったと思う。そして,この本,非常に面白く読める。「愛したはずの夫は、まったくの別人であった。」というキャッチコピー通りの展開なのだが,そこに挿入される主人公である弁護士,城戸の夫婦間のやり取りや,その他の登場人物の造形が一つ一つ考えさせられるところがある。やや,ストーリーの展開に,そんなことあるか?と思わせる部分もあるが,そこは話の面白さに目をつぶることとしよう。

ネット上では,主人公の城戸が,在日三世から帰化をしたというプロファイルに文句をつけているネトウヨみたいな連中もいるが,そうした設定がなければ,ヘイト・スピーチに関するくだりも全く意味をなさなくなる。そもそも作家が自身の思想や考え方を小説に投影して何の問題があるのかと思ってしまうが,そうした社会の不寛容さが,この小説を執筆する際のボトムラインにあったのではないかと思ってしまう。

いずれにしても,ストーリーの展開についついページをめくらされ,そして,読後感はある種の清涼感を覚えさせるのは「マチネの終わりに」同様である。感情移入の点では,私にとっては「マチネの終わりに」の方が好きだが,この小説もよくできていると思わせてくれて,満足感のあるものであった。星★★★★☆。結局,この人の小説は,私にフィットするってことかもしれないなぁ。

2018年12月 5日 (水)

久しぶりにユーミンでも。

"流線形 ’80" 松任谷由実(東芝EMI)

_20181204なぜか突然のユーミンである。このアルバムがリリースされたのは1978年。ってことはもう40年前になってしまうのかと感慨にふける私である。

私がユーミンの音楽に目覚めたのはかなり遅く,基本的には後追いである。どの辺りからリアルタイムで真っ当に聞き始めたかと言えば,多分"Pearl Pierce"だったろうか。あのアルバムはマジで好きだった。なので,このブログにも記事をアップしている(記事はこちら)。そして,彼女の最高傑作は"Misslim"と疑わない私である(記事はこちら)。それでもって今日は本作なのだが,40年前のアルバムにしては,全然古い感じがしないのは大したものである。そして,いい曲が揃っているわ。

このアルバムでは「埠頭を渡る風」が最大のヒット曲だろうが,「ロッヂで待つクリスマス」なんて改めて聞いてみるとマジで懐かしいだけでなく,実によく出来た曲である。"Corvett 1954"にゲストで出てくる来生たかおのヴォーカルもいいよねぇ。その後お,徐々にユーミンもバブル的な音楽になっていく中で,この辺りのアルバムの感覚ってのは懐かしくも,今でも甘酸っぱい感覚を思い出させる。

さすがにリリースから40年も経つと,特にホーン・セクションのアレンジとかにはいかにも昭和歌謡的なところを感じさせる部分もあるが,今となってはそれがまたいいのである。やっぱりこの頃のユーミンは魅力的であった。"Misslim"と"Pearl Pierce"を最高としたとしても,これは十分星★★★★☆にできるな。さて,次は何を聞くかなぁ(笑)。

2018年12月 4日 (火)

超久しぶりに聞いた"The Falcon and the Snowman"

”The Falcon and the Snowman: The Original Motion Picture Soundtrack" Pat Metheny Group (EMI Manhattan)

_20181202これを聞くのは何年ぶりだろうか?実を言ってしまえば,このアルバムはクロゼットの奥にしまわれていて,日頃プレイバックの機会はなかった。少なくとも,現在の家に引っ越してからは一度も聞いていないはずだ。そんなアルバムだが,先日,別のCDを探していて,これと"Song X"を久々に取り出してきた私である。

まぁ,これは映画(邦題は「コードネームはファルコン」)のサウンドトラックなので,通常のPat Metheny Groupの演奏と同等に扱うべきではないが,久しぶりに聞いてみると,結構彼ららしいサウンドもあって,特にPedro Aznarが加わる2曲はいい感じだと思える。ただ,やっぱりハイライトはDavid Bowieと彼らの共演である"This Is Not America"ってことになるのは仕方ないだろうねぇ。PMGとしては最新(最後?)の来日公演である2009年1月のBlue Note東京でのライブでもこの曲をやっていたのが懐かしい。

実に久しぶりに聞いたのだが,結構あっという間に時間が経ってしまって,実はまぁまぁ楽しめるアルバムだったのだなぁなんて思った私である。

それはさておき,映画の方は名匠John Schlesingerが監督した作品でもあり,Sean Pennも出ていることを考えると,ちょっと見てみたいような気もする。このJohn Schelsingerが撮った作品ではオスカーも取った「真夜中のカーボーイ」(誤植ではない!) が最も有名だろうが,実は「マラソンマン」とかも好きなんだよねぇ。あれはLawrence OlivierによるDustin Hoffmanの拷問シーンが怖かった。いずれにしても,結構渋い映画も多い,今にして思えばいい監督だった。

Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Lyle Mays(p, synth),Steve Rodby(b), Paul Wertico(ds, perc), Pedro Aznar(vo), David Bowie(vo), with National Phiharmonic Orchestra and Ambrosian Choir

2018年12月 3日 (月)

まだまだ出るんだろうなぁ,Keith Jarrettのライブ音源。

"La Fenice" Keith Jarrett(ECM)

_20181201_2Keith Jarrettのライブ音源はある程度のインターバルを置いて,いろいろな場所での音源がそれこそいろいろ出てくる。そして,録音からどうしてこんなに寝かしておく必要があるのかと思わせることも多いが,これもそんな作品である。録音は2006年7月19日であるから,12年以上前である。そして,クラシックの殿堂のようなところの音源もあって,ウィーン国立歌劇場やスカラ座やカーネギー・ホールでのアルバムもあって,これもそうした流れのアルバムである。

最近のKeith Jarrettのソロは,以前のように長大なソロ曲はやらず,だいたいセット当たり5,6曲の即興を行うのが一般的だと思う。前半は現代音楽的なアプローチを強く聞かせ,後半には美的なメロディを増やし,アンコールの小品で痺れさせるって感じの演奏が多いと思う。本作もおそらくはディスク1が前半部,ディスク2が後半ということだと思うが,やはり現代音楽的アプローチが前半は強く出ている。しかし,Part IIIにおいて,いかにもKeithらしいフォーク的な色合いが出てきて,安心感(笑)を結構早く感じられるようになる。そしてその後のPart IVも美しい演奏だし,Part Vはブルージーな感じで,最近の私が聞いたKeith Jarrettのライブより,はるかに聴衆に寄り添った感じがするのがよい。これも場所の成せる業か。ディスク2に移っても,聴衆を突き放す感覚はなく,これはイタリアの聴衆と,La Feniceという場所が影響しているとしか思えない(苦笑)。だって,2曲目には早くもオペレッタ「ミカド」から"The Sun Whose Rays"のような曲をやってしまうのである。

Keith Jarrettは2014年の大阪のライブで完全にキレたことからもわかるように,相当神経質な感じもする人だが,この時はどうも様子が違うと思いたくなるようなピアノの弾きっぷりである。もちろん,それは悪いことではなく,この時の聴衆にとってはまさに幸せなことであったと言わざるを得ない。

こんな調子でアルバムをリリースされるのは,こっちにとっても大変なのだが,こういう演奏なら大歓迎である。星★★★★☆。

それにしてもこのヴェネツィアにあるフェニーチェ劇場,素晴らしい造形である。こういうところで演奏した記録をアルバムとして出したくなるのはアーティストとしては当然か。劇場内部の写真もアップしておこう。美し過ぎるよなぁ。こんなところでオペラを見てみたいものだ。

Recorded Live at Gran Teatro La Fenice, Venice on July 19, 2006

Personnel: Keith Jarrett(p) 

La_fenice

2018年12月 2日 (日)

またも出た!Woody Shawの未発表音源。これはワンホーンだけに貴重。

"Live in Bremen 1983" Woody Shaw (Elemental Music)

Woody_shaw_bremen昨今,Woody Shawの未発表音源が続々とリリースされているが,このブログでも10月には"At Onkel Pö's Carnegie Hall Vol. 1"をアップしている(記事はこちら)し,あれもなかなかいいアルバムであった。あちらは本作の前年で,本作のメンツにSteve Turreを加えたクインテットであったが,こちらはWoody Shawのワンホーン。Michael Cascunaのライナーにもある通り,なぜSteve Turreがいないのかはわからないのだが,Woody Shawのワンホーン・アルバムはあまりないので,これは実に嬉しいリリースである。そしてこれがまたいい出来なのである。

冒頭の"You and the Night and the Music"こそ軽く始まる感じだが,2曲目のWoody Shawオリジナル"Rahsaan' Run"のスリリングな展開を聞いて燃えないジャズ・ファンはいないだろう。全編を通じて,このメンバーによる実力十分の演奏が収められていて,これは満足度が高い。特に急速調の曲におけるWoody Shawの火を噴くようなフレージングはどうだ!これぞWoody Shawと思いたくなるが,これほどエキサイティングな演奏は彼のキャリアでも珍しいのではないだろうか。クァルテットとしての爆裂具合も楽しい。ある意味,Mulgrew Millerってこんなピアノだったかと思わせるのも事実である。特に,彼のオリジナル,"Pressing the Issue"は強烈なアップテンポで,燃える~。

とにかくこういう音源は出してくれただけでもありがたい。これより前に出た東京のライブはFM放送の音源をCD化しただけで,ラジオでの紹介音声も入っていたりして,CDを買う気になれなかったが,これはそれとはレベルが違う。Woody Shawファン必聴の音源と評価したい。もちろん星★★★★★としよう。

Recorded Live at Post Aura,, Bremen on January 18, 1983

Personnel: Woody Shaw(tp, fl-h), Mulgrew Miller(p), Stafford James(b), Tony Reedus(ds)

2018年12月 1日 (土)

Antonio Sanchezの怒りとスリリングな音楽への昇華。

"Lines in the Sand" Antonio Sanchez & Migration(CamJazz)

_20181201最近,ショップに行くことも滅多にない私だが,ちょっと空いた時間があったので,久しぶりにDUのJazzTOKYOに行った。中古は収穫なしに終わったが,新譜として本作がリリースされていたので,珍しくもショップで購入である。

Antonio Sanchezはメキシコから米国への移民として,日頃からTwitterなどでDonald Trumpへの批判を行っている。米国の国の成り立ちを考えれば,私のような「トランプ嫌い」のリベラルな人間は,彼が怒りを発露するのも当然だと思える。

それを音楽的なメッセージとして出してきたのが彼のソロ・プロジェクト作"Bad Hombre"だったと思うが,本作は更にそのメッセージを強固に打ち出したものとなっていることは,ライナーからも明らかである。裏ジャケにはライナーの最後の文章である"I'm a proud immigrant. A proud Mexican and a proud American that feels torn by the injustices that are being perpetrated against so many innocent people in search of a better life. This album is dedicated to them and their journey."が掲げられている。これこそがこのアルバムの意味を如実に表している。

そうしたメッセージをどう受け止めるかも重要だが,純粋に音楽だけを聴いていても,これは極めて高いテンションを以て制作されており,まさにAntonio Sanchezらしいスリリングな演奏を聞くことができる。Migrationとしての前作である"Meridian Suite"ではSeamus Blakeがサックスを吹いていたが,今回はサックスがChase Bairdに代わっている。

このChase Bairdという人,Sanchezに加えて,Brad Mehldau,Nir Felderなどとアルバムを吹き込んでいることは間違いないのだが,一向にリリースされる気配がない。おクラ入りの憂き目に遭わないことを期待したいが,本作ではAntonio Sanchezの強烈な音楽に十分貢献していて,このメンバー・チェンジは大きな影響を与えていないと感じられる。また,前作ではゲスト扱いだったヴォーカルのThana Alexaがバンド・メンバーとして名を連ねている。

70分に渡って発露されるAntonio Sanchezの怒りは,このスリリングな音楽へと昇華しているが,この音楽が現在のアメリカの状況の変化にどの程度貢献しうるかについては定かではない。しかし,Antonio Sanchezとは言わずにおれぬ,やらずにおれぬという切迫感からこうした音楽を生み出したと思え,私としてはその意気を評価するとともに,Antonio Sanchezの音楽のクォリティの高さに今回も圧倒されたと言わざるをえない。

今日から師走であるが,年末に現れた強烈な作品として高く評価したい。星★★★★★。

Recorded in August, 2018

Personnel: Antonio Sanchez(ds, vo, key), John Escreet(p, rhodes, synth), Matt Brewer(b), Thana Alexa(vo, effects),Chase Baird(ts, EWI),Nathan Shram(vla), Elad Kabilio(cello)

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