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2017年7月31日 (月)

Amazon Primeで「ブラック・レイン」を見たのだが,こんなに酷かったか?

「ブラック・レイン」('89,米,Paramount)

Photo監督:Ridley Scott

出演:Michael Douglas,Andy Garcia,高倉健,松田優作,Kate Capshaw,若山富三郎

この映画を見るのも久しぶりのことである。前に見たのはレンタル・ビデオだったはずであるが,印象に残っているのは,松田優作の悪役ぶりと,Andy Garcia演じるCharlieが殺されるシーンであった。

だが,久々にこの映画を見てみて,何とも無茶苦茶な映画だと思った。この映画が公開されたのはまさに日本がバブル絶頂の頃と言ってもよいが,こんな映画を大阪を舞台に撮ってしまうのが時代を反映している。そんな時代はさておき,この映画がダメなのは,あまりにもシナリオに唐突感があることだろう。そもそも,アメリカからの出張刑事であるMichael Douglasが無茶苦茶な捜査はするは,拳銃はぶっぱなすはってのに無理があるが,なんで健さんが大阪府警の刑事という役柄の中で,サブ・マシンガンぶっぱなしてるのよ?なんて言い出したらきりがないのである。

まぁ,エンタテインメント・アクションなんだから,そんなことには目をつぶれよと言われれば,その通りであるが,そうは言いながら,もう少し作りようってものがあるだろうってことである。大阪の工業地帯の映像なんか,「ブレード・ランナー」的な感覚があるのがRidley Scottらしいが,弟のTony Scottが撮った「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズのどこかにも同じような感じがあったようにも思える。どうせ大阪を舞台にするなら,元地元民としては,もう少し大阪の持つ下世話さを打ち出してもらいたかったものである(笑)。まぁ,ロケで大阪感を出しているだけで,実際には別のところで撮られた映像が多いらしいので,まぁ仕方ないか。

いずれにしても,アメリカ人にとっては,Michael Douglasを見るための映画ってことにはなろうが,我々としては,日本の役者をちゃんと揃えていることから,もう少しいい映画にできたのではないかと思わざるをえない。もったいないと言えば,非常にもったいない映画。星★★。

2017年7月30日 (日)

Geri Allenを偲んで,"The Nurturer"を聞く。

"The Nurturer" Geri Allen(Somethin'else/Blue Note)

_20170729Geri Allenが亡くなったのは去る6/27のことである。まだ60歳。ミュージシャンとしてはこれからという年齢での早逝は惜しいと言わざるをえない。日本であれば大西順子に当たる存在が,私はGeri Allenだと思っている。私にとっては剛腕というイメージが強い人であった。剛腕が言い過ぎなら,硬派と言ってもよい。

私は決して,彼女の音楽の熱心な聞き手だった訳ではないので,アルバムも参加したものは別にして,リーダー作は"The Nurturer"しか保有していないはずである。私がこのアルバムを買ったのはNYC在住中だったはずで,私が保有しているのは米国盤である。このアルバムを初めて聞いた時,おぉっ,なんとスリリングなサウンドと思ったことは今でも鮮明に覚えている。

このアルバムはほとんどのミュージシャンがデトロイト出身という人脈で演奏されているが,もともとデトロイトは,多くのジャズ・ミュージシャンを輩出した町である。Tommy Flanagan然り,Barry Harris然り,Kenny Burrell然り,Pepper Adams然り,Paul Chambers然り,Curtis Fuller然りである。そういう土壌であるから,Geri Allenもジャズとの接点は幼少の頃から強かったと思われるが,それにしても,非常に力強いサウンドである。ジャズという音楽の持つ「スリル」を十分に示した傑作だと思う。

こうした素晴らしい作品を残して世を去ったGeri Allenであるが,教育者としてもピッツバーグ大学で教鞭を執り,多くの若いミュージシャンのメンターとなっていたはずである。彼女を惜しむ声は尽きないが,本作を久しぶりに聞いて,改めてその才能が失われたことを残念に思った私である。

R.I.P.

Recorded on January 5 & 6, 1990

Personnel: Geri Allen(p), Marcus Belgrave(tp, fl-h), Kenny Garrett(as), Robert Hurst(b), Jeff Watts(ds), Eli Fountain(perc)

2017年7月29日 (土)

Charles Lloyd New Quartet? まぁ,それはさておき...(笑)。

"Passin' Thru" Charles Lloyd New Quartet(Blue Note)

Passin_thru昨年,Charles Lloydがリリースした"I Long to See You"は素晴らしいアルバムであった。私は聞いた瞬間から,去年のベスト作の1枚になると確信していたが,結局昨年のナンバーワン・アルバムは"I Long to See You"だったと思っている。そして,今年の1月のBlue Note東京でのライブも,御大は少々お疲れではあったが,そこでもいい演奏を聞かせてくれたと思っている。

そんなCharles LloydがNew Quartet名義でBlue Noteレーベルからリリースした新作である。ここで不思議なのは,このNew Quartetの面々は,ECMの時代から共演しているので,"New"でもなんでもないのだが,敢えて"New Quartet"を名乗る意味はどこにあるのかは全くの謎である。

このアルバムの1曲目は懐かしや"Dream Weaver"で幕を開けるが,イントロはフリー的な展開も示しながら続き,肝心のテーマが出てくるまでは結構時間が掛かる。この演奏でもそうなのだが,このバンドはフリーなアプローチが強いのが特徴と言える。おそらくこういう要素はJason Moranゆえって感じがする。誤解を恐れず言えば,Jason MoranはAndrew Hill的なのだ。前作はアメリカーナなルーツ・ミュージック的なサウンドも提示していたのに対し,このアルバムはよりジャズ的,そしてそれもかなりの熱量を持つ演奏だと言ってよい。これが来年80歳になろうとしているCharles Lloydによって生み出されているということ自体が凄い。

全編,昨年のライブ音源で占められているが,まさに老いてますます盛んとはこのことだろう。もちろん,これはバックを支える優秀な面々から,エネルギーをもらっているところはあるだろうが,Charles Lloydという人の創造力にはまさに恐れ入るしかない。"I Long to See You"と比べても遜色のないアルバムとは思うが,前作が私のツボにはまり過ぎたことから,本作は星★★★★☆とするが,それにしても大したものである。

Recored Live at Montreux Jazz Festival on June 30 and at The Lensic, Santa Fe, New Mexico on July 29, 2016

Personnel: Charles Lloyd(ts, fl), Jason Moran(p), Reuben Rogers(b), Eric Harland(ds)

2017年7月28日 (金)

Underground - クリポタ = Dice(笑)

"Dice" Adam Rogers(Agate)

DiceChris Potter Undergroundとしての活動は休業中のクリポタであるが,現行Undergroundの残り3人がAdam Rogersのリーダーシップのもとにアルバムを出した。その名も"Dice"。これはバンド名も兼ねているようである。

私はこのメンツにKevin Haysを加えたFima Ephron Groupのライブを昨年,NYCの55 Barで見ているが,その時には私は「クリポタがいないことにより,ややおとなし目の演奏だった」なんて書いている。まぁ,その時はFima Ephronがリーダーだったこともあるが,今回はどうか?その時の演奏が悪かったというのではない。ただ,セッション的な色彩が強く,ややルースに感じられたのは事実だったから,このアルバムのトーンについては不安がなかった訳ではない。

しかし,はっきり言ってしまえば,これはUndergroundの演奏を彷彿とさせるファンクネスに満ちた演奏であった。更に曲の途中でテンポが変わる様は,まるでWayne Krantzのようである。こういう音を出されては私のようなこの手のサウンド好きは何の文句もない。その一方で,ブルーズマン,Fred McDowellに捧げた"The Mystic"ではデルタ・ブルーズを想起させるような演奏を聞かせて,これも面白い。更になんとWillie Nelsonの"Crazy"もやっているが,この辺りは昨今のBill Frisellの方向性とも合致する部分があるのかもしれない。私にはこうした演奏はJoe Henryがプロデュースした作品のバックのギター・サウンドを想起させる部分があった。ルーツ・ミュージック的なのである。だが,彼らの演奏の本質的な魅力は,やはりファンク度が強い曲にこそ表れると思ってしまうのが,Undergroundファンの性というところか。

この演奏を聞いていると,こういう音は55 Barにピッタリだと言いたい。ここで聞かれるような演奏を,あの場所,あの空間で聞いていたら,確実に悶絶するだろうと思える演奏。甘いとは思いつつ,売れて欲しいので星★★★★☆。ついでに来日もしてくれぃ(無理か...)。それにしても,録音から3年近く経ってようやくリリースってのもどうなのかねぇ。やっぱり売れないのか(爆)。

ちなみにジャケ写真は"Grand Central 1990"というタイトルのもの。これもいいねぇ。

Recorded on October 17 & 18, 2014

Personnel: Adam Rogers(g, cl, b-cl, synth, org, el-p, perc, sample, loop), Fima Ephron(b), Nate Smith(ds)

2017年7月26日 (水)

加納美佐子はどうしているのだろうか?

"3 Purple Circles" Misako Kano(Jazz Focus)

_20170724私がこの音源を聞かせてもらったのは,毎度お馴染み新橋のテナーの聖地,Bar D2でのことであったはずである。Bar D2でこれがプレイバックされるのは,偏にDave Liebmanの参加によるところではあるが,私はLiebmanのプレイも気に入ったのだが,このアルバムのハイブラウな雰囲気にまいってしまったのであった。まぁ,Liebmanが参加しているぐらいだから,音が軟弱な訳はないのだが,この加納美佐子という人,フリー的なアプローチも交えて,正直言って硬派である。

加納美佐子という人が活躍したのは90年代後半,せいぜい21世紀の初頭ぐらいまでって感じで,今やネットでさえほとんど情報も得ることができないのはなぜなんだろうか?このアルバムを聞いていると,非常に実力のあるピアニストに思えるのだが,やっている音楽があまりにハイブラウなので,ポピュラリティを確保するってのは難しかったとは思うが,それでも見逃すには惜しい才能の持ち主だと思える。

ここではリーダーのオリジナルに加え,Ornette Colemanが2曲,更には"You Don't Know What Is Love","Prelude to a Kiss"というスタンダードが加わるが,"You Don't Know What Is Love"でのLiebmanのテナーが変態的である(笑)。Liebmanのみならず,バンド全体がバラッドとしてのムードとは対極にあるような演奏をしているではないか。

私が面白いと思ったのはOrnetteの"Ramblin'"であるが,フリーから8ビートに移行しながら,全編に渡って女性とは思えないようなタッチを聞かせる10分を越える長尺の演奏である。Ornetteへのシンパシーを示すところに,加納美佐子という人の本質が表れると言っては言い過ぎかもしれないが,もう1曲の"Broken Shadows"といい,加納美佐子によるOrnetteのインタープリテーションは誠に興味深い。Ornetteの音楽の魅力をうまく切り取っていると感じさせるに十分である。

更にタイトル・トラックのスリリングな響きを聞けば,これって反応する人が多いだろうと思ってしまうが,こんな演奏を聞かせていた加納美佐子がシーンから消えてしまったのは,本当にもったいないと思わせるに十分な佳作だと思う。星★★★★。

Recorded on May 28 & 29, 1999

Personnel: 加納美佐子(p),Dave Liebman(ts,ss),Mark Helias(b), 武石聡(ds)

2017年7月25日 (火)

今日は懐かしいCorea & Burtonの「抒情組曲」

"Lyric Suite for Sextet" Chick Corea & Gary Burton (ECM)

_20170722このアルバムが出たのは1983年のことなので,それからもう35年近くが経過している。Gary Burtonが音楽生活から引退した今,この名デュエットをもう聞くことはできないが,特に彼らがECMに残したアルバム群は不滅の輝きを持つものと言ってよい。しかし,このアルバムが出た時は,それまでのアルバムに比べると,若干違和感を以て迎えられたような気がする。それでも,アルバム・リリース後,セクステットで来日公演を行った時には,会場(中野サンプラザだったかなぁ)に武満徹の姿もあったのが懐かしい。

多少なりともクラシックを聞いている人であれば,「抒情組曲」と聞くと,アルバン・ベルクを思い出してしまう人が多いだろうが,そう聞くと身構えるのが当然である(笑)。しかし,当然のことながら,アルバン・ベルクの音楽とは全く違うものであることは言うまでもない。

ここにあるのは,いつものように美しいCorea & Burtonのデュオに弦楽四重奏が加わるということだけである。よって,よりクラシックとの融合を期待すると,もう少しバックのクァルテットとの連動性があってもいいように感じるわけだが,私としては,これはこれで十分にありだと感じる。

もちろん,このご両人のアルバムで,これを一番だという気は毛頭ない。彼らの最高傑作は誰がなんと言おうと,チューリッヒのライブ盤である(私がブログ開設直後に書いた記事はこちら)。ライブ盤に聞かれたテンションはここでは強くは感じられず,美的感覚に重きが置かれているように思える。結局このアルバムへの評価がわかれるのは,これの前作がそのチューリッヒのライブ盤だったということもあるだろう。基準をそちらに置かれては,分が悪いのは当然なのだ。

だが,久しぶりにこのアルバムを聞いてみて,その音楽の美しい響きを再認識できたことはよかった。その後,この二人はHarlem String Quartetとの共演盤も残しているが,私としては,徐々にこのデュエットへの関心が薄くなっていたこともあり,印象にあまり残っていないのに比べれば,このアルバムへの記憶は強く残っていると思っていたが,自分が思っていた以上に美的なアルバムだったと言っておこう。星★★★★。

Recorded in September 1982

Personnel: Chick Corea(p),Gary Burton(vib), Ikwhan Bae(vln), Carol Shive(vln), Karen Dreyfus(vla), Fred Sherry(cello)

2017年7月24日 (月)

"Signs of Life"と同じメンツでライブ同窓会。

"Signs Live!" Peter Bernstein(Smoke Sessions)

_20170721Peter BernsteinがCriss Crossレーベルに"Signs of Life"というアルバムを吹き込んだのは1994年12月のことであった。それから約20年経過した2015年1月に,アルバムと全く同じメンツが集ってライブを行った時の実況盤である。

録音当時,リーダーBernsteinは27歳,Brad Mehldau24歳,Christian McBride22歳,Gregory Hutchinson24歳という初々しいバンドが,20年を経て,それこそ音楽的な成長を遂げた姿を聞かせるのは何とも嬉しいことではないか。

Peter BernsteinとBrad Mehldauは"Signs of Life"前後にも共演する機会があり,最も古い音源は92年の"Somethin's Burnin'",新しいところでは2014年のJimmy Cobbの"The Original Mob"まで続いている。彼らはJimmy Cobbのバンド・メイトだったはずで,それが続いているというのは麗しき友情と言うべきか(笑)。

オリジナルの"Signs of Life"も久しく聞いていないので,単純な比較はできないが,比較的コンベンショナルなセッティングな中で,私にとってはBrad Mehldauがどういうソロを聞かせるかというところに関心が行ってしまうのは,彼のファン故しかたないことではあるが,ここでもツボを押さえた魅力的なソロを随所で聞かせていて,私としては大満足である。そして,彼のリーダー・アルバムとは違うので,バッキングにも気を利かせて対応しているのが効いて取れ,やはり優秀なミュージシャンは,何をやっても優秀ということを改めて感じさせられる。

収められているのは基本的にPeter Bernsteinのオリジナルであるが,それ以外で選ばれているのが,Theloneous Monkの3曲というのはやや意外な気もするが,違和感なくプレイしている。Mehldauも"We See"では,ややMonk的(と言っても,大してMonkっぽくないのだが...。笑)なソロもやっていて,へぇ~と思ってしまうが,それも珍しいってことで。

2枚組で,各々が70分を越える収録時間で,正直お腹いっぱいになってしまうが,それでもこのメンツが,改めて集い,これだけの演奏を聞かせたことは,このときNYCの会場にいたオーディエンスにとって,実にラッキーだったと思う。星★★★★☆。

Recorded Live at Jazz at Lincoln Center on January 5, 2015

Personnel: Peter Bernstein(g), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Gregory Hutchinson(ds)

 

2017年7月23日 (日)

Mitch Watkinsの"Curves":一時期のEnjaにはこういうアルバムが多かった。

"Curves" Mitch Watkins (Enja)

_20170717このアルバムを購入したのも,多分私が在米中のことだったと思うが,もう四半世紀以上前のことである。Enjaレーベルはその後も活動を続けているが,ややフリーがかった音源も多いEnjaにおいて,90年代初頭の頃は本作のようなコンテンポラリーなサウンドも多かったように思う。Leni Stern然り,Wayne Krantz然り,Barbara Dennerlein然りである。このアルバムもバックにBob Berg,そしてデニチェンが入っていることからしても,音は想像がつきそうなものだが,想定通りの感じである。

本作も,Enjaの再発シリーズで廉価で出て,聞いた人も増えたのではないかと思うが,こうしたハイブラウ・コンテンポラリーなセッティングにおけるBob Bergのカッコよさがファンにとってはたまらない。しかし,このアルバムはBob Bergだけではなく,Mitch Watkinsのギター・プレイも聞きどころが多く,こうしたサウンドを好むリスナーにとっては,無条件にOK!と言いたくなるようなアルバムである。

Mitch_watkinsその後のMitch Watkinsの消息はよくわからないが,今回,Webでサーチしてみると,テキサス州オースティンをベースとするライブ活動は継続しているようだが,Leonard Cohenともやっていたっていうのはここでの演奏からは想定外な事実もわかってしまった。まさにへぇ~って感じだが,有能なギタリストはなんでもできるってことにしておこう。但し,このアルバムのジャケと今の姿は結構違うが(笑)。まぁ,時代の流れだよねぇ。私の変貌ぶりも人のことは言えないし(爆)。

いずれにしても,Bob Bergのプレイと,デニチェンのドラミングとも相まって,結構このアルバムは刺激的なものに仕上がっていると思う。もちろん,マイキーだったら,もっと激しいが(笑)。ということで,ちょいと甘目と思いつつ,星★★★★。

Personnel: Mitch Watkins(g, g-synth), Bob Berg(ts), Jay Anderson(b), Dennis Chambers(ds)

2017年7月22日 (土)

Amazon Primeで「荒野のストレンジャー」を見た。何年振りか。

「荒野のストレンジャー("High Plains Drifter")」('73,米,Universal)

High_plains_drifter監督:Clint Eastwood

出演:Clint Eastwood,Verna Bloom,Marianna Hill,Mitchell Ryan,Jack Ging

唐突だが,この映画を本当に何十年ぶりかで見た(多分30年以上ぶり)。なんでそんな気になったかと言えば,映画情報サイト,IMDbを見ていて,私の好きな「ペイルライダー」よりも,ユーザの評価が高かったからである。私が大昔にこの映画を見た時の印象は,辛気臭くて,訳の分からん映画というものだったから,どうしてこの映画が,私がよくできていると評価している「ペイルライダー」よりも,更に高く評価する人が多いのかに関心があったからである。

今回,久しぶりに再見しても,やっぱり辛気臭い。「ペイルライダー」だって暗い話だが,あちらには「シェーン」へのオマージュがあって,もう少し救いがある話だったが,この映画は,謎に包まれ,そしてほとんど救いがない。ということで,私のこの映画に対する評価は変わらず,高くはなりえない。星★★☆。今や,押しも押されぬ巨匠となったEastwoodだが,まだまだこの頃は監督としては駆け出しだったってことである。

ちなみに,この映画,Eastwoodは6週間で撮り終えたそうであるが,昔から早撮りだったのねぇ(笑)。ついでに言っておくと,低予算感がひしひしと感じられるのもご愛敬。

2017年7月21日 (金)

昨日に続いてKenny Kirklandのピアノ・トリオでの演奏を。

"One for Namesake" Robert Hurst (DIW)

_20170716_3昨日,Kenny Kirklandがピアノ・トリオで演じた"Thunder & Rainbows"を取り上げたが,今日も続けてKenny Kirklandである。本日はベースのRobert Hurstがリーダーを務め,ドラムスはElvin Jonesという魅力的なメンツで録音された作品である。

本作はRobert Hurstのリーダー作なので,1曲を除いて,Hurstのオリジナルで占められているところが,"Thunder & Rainbows"との違いである。冒頭の"Incognegrio"から軽快にスタートし,期待させる幕開けである。ただ,総じて演奏のクォリティは高いのだが,私ならこのメンツにはもっとハードな演奏があってもいいと思ってしまう。やや淡々とした演奏が続くことで,Kenny Kirklandのピアノで燃えたい!と思う私の欲求はやや満たされないものとなっている。

もちろん,このメンツであるから,変な演奏という訳ではないのだが,Elvin Jonesがフィーチャーされる"Swing on Swole"のような曲もあるものの,それはたった2分35秒であり,ほとんどドラムス・ソロだけみたいな展開なので,これもどうなのかねぇと思ってしまう。

まぁ,もともと,このアルバムのプレイバック回数がそれほど多くないのは,そうした点に対する不満があったからだとも言えるのだが,久しぶりに聞くまでそんなことはすっかり忘れていた(爆)。いずれにしても,このメンツなら,もっとできたんじゃないのっていう感じもあって星★★★☆。改めて聞いて,これは二軍落ちだと思えた作品(爆)。悪くはないんだけどね。

Recorded on November 18 & 19, 1993

Personnel: Robert Hurst(b), Kenny Kirkland(p), Elvin Jones(ds)

2017年7月20日 (木)

今,改めてKenny Kirklandを聞く。今日は"Thunder & Rainbows"。

"Thunder & Rainbows" J.F.K.(Sunnyside)

_20170716_2このアルバム,いろいろなジャケットやタイトルで発売されていて,どれがオリジナルなのかわからない(多分下の写真のもの?)のだが,私が保有しているのは,国内盤。内容は同じなんだから気にしなければいいのだが,後に"Megawatts"名義でリリースされたジャケットは,購入意欲を減退させるものなので,それは無視したいが,この国内盤もねぇ...って感じの趣味である(苦笑)。

どうもいろいろ見ていると,もともとJazz from Keystone名義でリリースされたと思われる作品であるが,ここはKenny Kirklandのピアノ・トリオにおけるプレイに注目すべきだろう。早いものでKenny Kirklandが亡くなって,来年で20年になるが,本当に早逝が惜しまれる名バイ・プレイヤーであった。もちろん,唯一残したリーダー作も最高と言ってよい作品(記事はこちら)だが,リーダー作でなくとも,彼の残したソロは本当に記憶に残る。代表的なものはStingの"Bring on the Night / When the World Is Running Down You Make the Best of What's Around"におけるソロだが,あの激烈なソロによって,Stingのライブ盤の価値が決まったと言っても過言ではない。

JfkそんなKenny Kirklandであるが,Wynton MarsalisやBranford Marsalisのバンドでのアルバムももちろん素晴らしい演奏を聞かせるわけだが,ピアノをもっと聞きたいという場合,このアルバムか,Robert Hurstの"One for Namesake"ってことになる。この2枚については,Kenny Kirklandのアルバムとしてラックに収まっている。今回,久しぶりにこのアルバムを聞いたのだが,やはりKenny Kirklandの切れ味は鋭いと思わせる。そして,今回,改めて聞いて感心したのがJeff 'Tain' Wattsの煽りである。見事に演奏をドライブしていると思わせる。

こういう演奏を聞いていると,Kenny Kirklandといい勝負をしていたのは,若い頃のJoey Calderazzoだと思うのだが,Calderazzoが今や若干渋い演奏をするようになったことを考えると,Kenny Kirklandが存命であればどうなっていたのかと想像してしまう。だが,Kenny Kirklandのオールマイティ度を考えると,結構いろいろなミュージシャンのバックで重宝がられていたのではないかと思う。

今回,このアルバムを改めて聞いて,例えば,"You And Night And the Music"のような曲を,これほどハード・ドライビングに演奏するピアノ・トリオってなかなかないと思ってしまう。いずれにしても,わくわくするような快演。星★★★★☆。

Recorded on July 24 & 25, 1991

Personnel: Jeff 'Tain' Watts(ds), Charles Fambrough(b), Kenny Kirkland(p)

2017年7月19日 (水)

私にとってのMarc Copland最高作は今でもこれ。

"Haunted Hearts & Other Ballads" Marc Copland Trio (hatOLOGY)

_20170716私はMarc Coplandのファンだとこのブログにも何度も書いてきたし,彼のアルバムも結構取り上げてきた。しかし,私がこの人の演奏にはまったのはこのアルバムを聞いた時だと思っているし,その印象は今でも変わらない。よって,今でも私にとってのMarc Coplandの最高傑作は本作だと思っている。だから,Marc CoplandがJohn Abercrombieと来日した時に,サインをもらおうと持って行ったCDにこれが含まれているのは,私にとっては当たり前のことなのだ。

ジャケット同様,仄暗い雰囲気の中で,美的な旋律を奏でるMarc Coplandの美学に完璧にやられたという感じだったのである。だからお前は暗いと言われるかもしれないが,こうした音楽に身を委ねることのできる幸せさを感じて何が悪い?と開き直ろう(笑)。

レパートリーは3回演奏される"My Favorite Things"から,スタンダード,更にはColtrane,Mal Waldron,そしてStingまで非常に幅広いが,どれもがMarc Coplandの個性に染め上げられたバラッド集になっているのが素晴らしい。どこから聞いても,私にとってはケチのつけようのない傑作。スイングしなけりゃ意味ないねって人には向かないが,この表現の前には私は星★★★★★である。いつ聞いても,何度聞いても素晴らしい。

ちなみに私が保有しているのは2nd Editionだが,本作は,現在はタイトルを"Haunted Heart"だけにして,かつジャケも違う写真にしてリリースされているので念のため

Recorded on April 2, 2001

Personnel: Marc Copland(p), Drew Gress(b), Jochen Rueckert(ds)

2017年7月18日 (火)

買ってしまったKraftwerk 3-D The Catalogue

"3-D The Catalogue" Kraftwerk (Klingklang)

Kraftwerkこのボックス,出てから結構時間が経っているが,全部聞いてから記事をアップしようということで,随分遅くなってしまった。

これは彼らがこれまでリリースしたアルバムを,ライブで再現するという企画アルバムであるが,演奏そのものはスタジオ版と大きな違いがあるという訳ではない。スタジオ版の集成ボックス"The Catalogue"をライブ化したものであり,Kraftwerkの音楽は正直言って,スタジオとライブで大きな違いがあるとも思えないので,買うか買うまいか悩んだ末に買って,結局音だけではわからないなぁということで,映像版まで買ってしまった私である。

まだ,映像版は見ていないのだが,ステージの演出も結構重要という気がして,これは本来,最初から映像版を買っておけばよかったってことになるかもしれないが,そんなに映像をまめに見る人間ではない私にとっては,CD版も必要だったということにしておこう。あぁ,無駄遣いと言えばその通りだが,まぁしゃあない。

KraftwerkはどうやったってKraftwerkなので,当然,私のような人間は星★★★★★としてしまうが,やっぱりこれは映像を見て評価すべきかと思う。悪いはずはないが(苦笑)。

Kraftwerk: Ralf Hütter, Henning Schmitz, Fritz Hilpert, Falk Grieffenhagen

2017年7月17日 (月)

Coltrane没後50周年。今日は改めて"Village Vanguard Again"を聞く。

"Live at the Village Vanguard Again" John Coltrane(Impulse!)

_20170715_21967年7月17日にJohn Coltraneが亡くなって今年で50年である。毎年同じことを書いているが,Coltraneの命日がやって来ると,私はまた一つ年齢を重ねることになっている。去年は62年のGrazの音源を取り上げたが,今年はこれである。

私は夏場になると,レゲエと並んで,フリー・ジャズを聞きたくなるという変態であるが,この音源におけるフリー度は,はっきり言ってそんなに高いと思えない。これぐらいなら普通にやり過ごせる。もちろん,こういう音楽に耐性がない人にとっては聞くに堪えないってことになってしまうが,ここで聞かれるColtraneの情念は,私は実に素晴らしいと思えるのだ。

実を言うと,私は後期のColtraneのアルバムにはあまり手を出してこなかったのだが,本作を随分後になって入手した時には,全然問題ないと思ったし,食わず嫌いはいかんと思えるものだった。"Naima"にしても,"My Favorite Things"にしても,Coltraneのオハコのような曲であるが,Atlanticとの違いは顕著で,Coltraneが日々変転を遂げていたことは誰の耳にも明らかだろう。

正直言って暑苦しいが,それでもボリュームを上げて聞くと何とも言えない快感を得られる。星★★★★★。改めてColtraneの素晴らしさを堪能した私である。それにしても,Pharoah Sandersの演奏は何度聞いても笑える無茶苦茶さ(でも好き:爆)。それに比べれば,Coltraneのソロのなんと真っ当なことか。

Recorded Live  at the Village Vanguard on May 28, 1966

Personnel:John Coltrane(ts, ss, b-cl), Pharoah Sanders(ts, fl), Alice Coltrane(p), Jimmy Garrison(b), Rashied Ali(ds), Emanuel Rahim(perc)

2017年7月16日 (日)

Bryan Ferry色に染め上げられたカヴァー曲集

"Taxi" Bryan Ferry(Reprise)

Taxi私はなんだかんだと言って,Roxy Musicだけでなく,Bryan Ferryのアルバムも保有しているのだが,それは偏に彼の作り出すムードが好きだからと言ってもよいかもしれない。このアルバムは最後の1曲を除いて,カヴァー曲集となっているのだが,見事なまでにBryan Ferry色に染められている。

ある程度知られている曲と,そうでもないような曲が混ざっていると思うが,おそらくはオリジナル色は低減され,どれもがBryan Ferryの音楽性の範疇で歌われている。もはやこれはオリジナルをリスペクトするというよりも,Bryan Ferryとしてどう歌うかっていうアルバムである。例えば,Goffin / Kingの"Will You Love Me Tomorrow?"やトラッドの"Amazing Grace"のムードを聞けば,私の言いたいことはわかって頂けるはずである。ある意味,これは強烈な個性と言ってよいものであって,これがBryan Ferryの真骨頂って気もする。

もちろん,人によっては,これはやり過ぎって感じる場合もあるだろう。しかし,私にとっては,このムード優先でいいのである(きっぱり)。ということで,これも久しぶりに聞いたのだが,ずっぽしとBryan Ferryの世界にはまってしまった私である(笑)。星★★★★。私の感じるところをおわかり頂くために,YouTubeにアップされている"Will You Love Me Tomorrow?"の映像を貼り付けておこう。

それにしても,全く結びつきそうもないFlaco Jimenezまで,伴奏に引っ張り出してくるって結構凄いことだよなぁ。

Personnel: Bryan Ferry(vo, p, synth, org), Carleen Anderson(vo), Robin Trower(g), Neil Hubbard(g), David Williams(g), Michael Brook(g), Greg Phillinganes(vib, synth), Chris Stainton(org), David Sancious(org), Flaco Jimenez(accor), Nathan East(b), Steve Pearce(b), Steve Ferrone(ds), Andy Newmark(ds), Mike Giles(ds), Luis Jardim(perc), Maceo Parker(as), Andy Mackey(as), Mel Collins(ts), Richard T. Norris(prog)

2017年7月15日 (土)

ちょっと間が空いてしまったが,出張中に見た映画(17年6月編):「夜に生きる」

「夜に生きる("Live by Night")」('16,米,Warner Brothers)

Live_by_night監督:Ben Affleck

出演:Ben Affleck,Elle Fanning,Siena Miller,Remo Girone,Zoe Saldana,Brendan Gleeson

随分と間が空いてしまったが,先日のシンガポール~マレーシア出張の際に見た映画である。Ben Affleckは監督しては「ザ・タウン」,「アルゴ」とその手腕が素晴らしいところを示してきた。その新作ゆえに期待してしまう。

今回も「アルゴ」同様,現代と異なる古い禁酒法時代設定の中での「コスチューム・プレイ」であり,結構ハードなクライム・アクションになっている。見た時はまぁまあ面白いかなぁと思っていたのだが,よくよく考えると,どうもストーリーの展開が唐突で,特にBen Affleckが受刑期間を終了してからの展開にはちょっと無理があった。これは演出よりも,脚本の瑕疵だと考えた方がよいと思うが,なんとももったいない。

例えば,Elle Fanningの役回りは,ストーリー上,本当に必要だったのかと思わせるようなものであり,適切に脚色していれば,もっとスピーディな映画になったのではないかと感じるのだ。私は「アルゴ」を非常に高く買っているので,「アルゴ」が比較の基準となってしまうことは,Ben Affleckにとってはハードルを上げることとなるわけだが,やっぱりこれは「アルゴ」には遠く及ばないものと言ってよい。Elle Fanningにしても,Siena Millerにしても,女優としての新しいイメージを作ろうとしたのかもしれないが,私にとっては,イメージ違い過ぎだよなぁってところ。ということで,星★★★ぐらいにしておこう。

2017年7月14日 (金)

懐かしい~:小曽根真版スムーズ・ジャズ。

"Starlight" 小曽根真(JVC/GRP)

_20170709_2これは懐かしいアルバムである。私がNYCに住んでいたのは1990年8月から92年6月という短い期間であったが,その間に多くの音楽に接し,結構な枚数のCDを購入した。記憶は定かではないが,300枚弱ぐらいは買ったと記憶している。本作も私の在米中に購入したものなので,私が保有しているのはアメリカ盤である(ジャケが国内盤と色使い等が異なる)。

このアルバムがリリースされた1990年当時は,スムーズ・ジャズというコンセプトが喧伝され始めた頃だと思うが,本作もジャケにはJVCと書いてあるものの,現地でのディストリビューションはGRPが行っていたもの。そういう時代だったのである。今や,小曽根真がこういうタイプの音楽を演奏することはほぼなくなったと言ってよいだろうが,今にして思えば,本当に懐かしいサウンドである。

このアルバムは特に前半の曲は,スムーズ・ジャズとしてよくできていると思うし,現地のFMステーションでもよくプレイバックされていた(私が聞いていたのは今はなきWQCD:またの名をCD101.9)。LP時代言えば,A面に相当する前半5曲はいいと思う。その後に控える"Sky"のような曲は,あまりにポップ過ぎというか,ここまで軽くされると...という感じになってしまうし,後半の曲は総じて地味に聞こえてしまう部分があるため,昔も私は前半しか聞いていなかったような気がする。そういう意味では前半のような感じで押せばよかったと思えるので,前半星★★★★,後半星★★★で,やや甘目の星★★★☆ってところではないかと思う。

Personnel: 小曽根真(p, key, synth, perc), MALTA(as), 芳野藤丸(g),松原正樹(g),道下和彦(g),岡沢章(b),伊藤広規(b),樋沢達彦(b),渡嘉敷祐一(ds),Scott Latham(ds), 村上 "Ponta" 秀一(ds),Joe Strings

2017年7月13日 (木)

Kenny Wheelerの"All the More":静謐さとスリルを兼ね備えるアルバム。

"All the More" Kenny Wheeler (Soul Note)

_20170708_4CDラックを見ていて,あぁ,これも久しく聞いていないなぁということで取り出したアルバムがKenny Wheelerである。このアルバム,なんと言っても,メンツがいいよねぇ。Azimuthのバンド・メイト,John Taylorに,ドラムスはBill Evansの最後のトリオを支えたJoe LaBarbera,そしてベースは名手,Furio Di Castriではまぁ悪いはずはない。

アルバムとしては静的な部分と,動的な部分が混在するものとなっているが,Kenny Wheelerのラッパも彼らしく響く。そうした中で,このアルバムの魅力は冒頭の"Phrase One"のTaylorのイントロからしてはっきりしている通り,明らかにJohn Taylorのピアノにある。美的なサウンドから,スリリングなソロまで,このアルバムのテクスチャーの根幹を築いているのは,John Taylorだと言いたい。

そもそも私はトランペットのワン・ホーン・アルバムを結構好むので,そうした嗜好に合致していることもある。ライナーを書いているのはなんと,Evan Parkerだが,Evan Parkerによれば,Kenny Wheelerのワンホーン・アルバムは,ECMでの"Gnu High"以来とのことである。ワンホーン・アルバムとしての要素と同時に,やはり私にとってはJohn Taylorである。"Mark Time"のピアノ・ソロのなんと素晴らしいことよ。Kenny Wheelerのトランペットはやや鋭角的に響く部分があって,音の好き嫌いがわかれるかもしれないが,John Taylorのピアノは誰にでも受け入れられるものと思う。

久しぶりに聞いてみて,このアルバムは,John Taylorを聞くためのものということにしておきたい。星★★★★。尚,ライナーではEvan Parkerは"Kind of Bill"がJoe LaBarbera作とし,クレジットでは"Nontheless"がJoe LaBarbera作となっているが,どっちが正しいのか?私は"Kind of Bill"をBill Evansと"Kind of Blue"にかけて説明したEvan Parker説を取りたいと思う。

Recorded on Octorber 31 and November 1, 1993

Personnle: Kenny Wheeler(tp, fl-h), John Taylor(p), Furio Di Castri(b), Joe LaBarbera(ds)

2017年7月12日 (水)

Joni Mitchellつながりで,次はIndioだ(笑)。

"Big Harvest" Indio(A&M)

_20170708_3昨日のDavid Baerwald同様,これもJoni Mitchellが参加したアルバムである。そして,こちらにもLarry Kleinがプロデュースで絡んでいる。当時はJoniとLarry Kleinは結婚していたので,旦那の仕事を盛り上げるJoniって感じである。このCDはDavid Baerwaldと並べて,Joni Mitchellの棚に置いてあったので,これまた久しぶりに聞いてみたのだが,これがまたよいのだ。

IndioはGordon Petersonというカナダ出身のシンガー・ソングライターの別名である。リリースしているのは本作だけだと思うが,この一作で消えてしまったのは惜しいと思わせるような作品となっている。曲調は非常にウェットな感じで,ブリティッシュ・ロックと言っても通じる感じである。例えば,Peter Gabrielとの共演で知られるDavid Rhodesの参加などは,そうしたトーンに影響を与えているようにも思える。

そして,本作ではJoni Mitchellの参加が3曲,かつ,タイトル・トラックでは,ちゃんとJoni Mitchellとわかるかたちで登場するので,彼女のファンは嬉しくなってしまう。我ながらオタクだと思うが,好きなものは好きなのだから仕方がない。

だが,Joni Mitchellの参加は置いておいても,このアルバムはよくできていると思わせるし,曲が粒ぞろいなのである。本作は曲,演奏のどちらを取っても,もっと知られるべき音楽だと思える。ヴォーカルがやや弱いと感じさせる部分があるのと,7曲目の"The Seasons of the Light"が明らかにほかの曲とトーンが違うのにはやや違和感があるが,全体的に見れば,これはかなりいいアルバムである。やや甘目とは思いつつ,星★★★★☆。

Personnel: Gordon Peterson(vo, g, p, key, org, perc), Larry Klein(b, key, vo), Bill Dillon(g,mandolin, vo), David Rhodes(g), Steven Lindsay(org), Van Dyke Parks(accor), Micky Feat(b), Vincent Collaiuta(ds), Manny Elias(ds), Alejandro Neciosup Acuna(perc),Denny Cummings(perc), L. Subramanium(vln), Tony Pleeth(cello), Adrian Brett(wind instruments), Padul Ridout(additional sounds), Joni Mitchell(vo), Michelle Newbury(vo), Karen Peris(vo), Brenda Russell(vo)

2017年7月11日 (火)

David Baerwaldのアルバムを久々に聞く。

"Bedtime Stories" David Baerwald (A&M)

_20170708_2昨日取り上げた"The Passion of Charlie Parker"において作詞を担当していたのがDavid Baerwaldであることを知り,彼のアルバムも何年も聞いていないなぁということで,久々にCDトレイに乗せた私である。

このアルバムを購入したのは,偏にJoni Mitchellが1曲だけながら参加しているからというかなりオタクな理由によるのだが,Joni Mitchellの参加なくしても,聞きどころの多いアルバムである。そもそもJoniが参加しているのは"Liberty Lies"という曲だが,そこでのJoniによるコーラスは,Joniらしさを強く感じさせるものではないので,それがこのアルバムの評価を決めるものではないのは当然だ。例えば,Joniのコーラスという意味で,私の中のロール・モデルはEric Andersenの"Blue River"につきる。それに比べれば,ここはあくまでもゲストとしての位置づけでしかないし,よくよく聞かないとJoniだってわからないだろう。

サウンドとしては,1980年代後半から1990年代前半のインダストリアル・ロック的な部分があり,例えて言えば,Richard Marx的なところもあるように聞こえる。しかし,曲としてはRichard Marxに比べると,もう少しウェットで,ひねりが効いているように感じる。いずれにしても,いい曲を書く人だと思う。そう言えば,Sheryl Crowのデビュー作"Tuesday Night Music Club"でも重要な役割を果たしていたので,ソングライターとしての資質はわかっていたが,歌手としてもいけているのである。

突出したところはないかもしれないが,今聞いても結構魅力的なアルバムである。星★★★★。

Personnel: David Baerwald(vo, g, key, b, mandolin, cumbus), Rich Stekol(g), Greg Leisz(steel-g), Bill Dillon(g), Larry Klein(b, g, key), Mike Urbano(ds), Vinnie Colaiuta(ds), Steve Lindsey(org), Joni Mitchell(vo), Maxine Waters(vo), Tommy Funderburk(vo), Gene Elders(vln), Greg Adams(tp), Lee Thornburg(tp), Stephen Kupla(bs), Emilio Castillo(ts), Steve Grove(ts), Steve Berlin(sax), Alejandro Acuna(perc)

2017年7月10日 (月)

実にユニークなCharlie Parkerトリビュート盤。

"The Passion of Charlie Parker" Various Artists (Impulse)

_20170708これは実にユニークなCharlie Parkerへのトリビュート・アルバムである。プロデューサーのLarry Kleinが書いているように,現代にCharlie Parkerが生きていたら,こういう演奏をしたのではないかというかたちでのインタープリテーションを施し,Charlie Parkerの人生を辿るという趣旨の作品である。よって,典型的なビ・バップ表現で演じられるものではない。

ほぼ全曲でヴォーカリストが加わるとともに,伴奏陣はかなりコンテンポラリーな布陣である。そして作詞を手掛けているのが,懐かしやDavid Baerwaldである。David Baerwaldと言って,わかる人はもはや少ないかもしれないが,David Rickettsと組んだDavid + Davidというバンドでの"Boomtown"という結構いいアルバムや,その後のソロ・アルバムにはJoni Mitchellが1曲だけ参加した"Bedtime Stories"があった。"Bedtime Stories"はLarry Kleinが一部でプロデュースを担当していたから,随分長い付き合いの末の,今回の作詞家としての参加ってことになる。

Charlie Parkerの曲と言えば,バップ・テイストってのがお決まりのパターンなのに対し,ここでの演奏はどちらかと言えば,ソフトでけだるい感じを打ち出していて,結構ムーディだと言ってもよい。この伴奏陣からすれば,もう少し激しい演奏があってもよさそうなものだが,ここは意図的にそういうかたちにしていると思える。それがプロデューサー,Larry Kleinの狙いであり,それは成功していると言ってよいだろう。Billy ChildsによるLaura Nyroトリビュート,"Map to the Treasure: Reimagining Laura Nyro"でも素晴らしいプロデュースぶりだったLarry Kleinの見事な手腕もあり,非常に楽しめる作品となった。

これは普通のトリビュートではないが,こういうのも絶対ありだと思わせるに十分な作品。いいねぇ。星★★★★☆。尚,クレジットでMark Guilianaの名前のスペルがGiulianaと間違って記載されているのはご愛敬。でもそう思っちゃうのも納得なんだよねぇ(苦笑)。

Personnel: Madeleine Peyroux(vo), Barbara Hannigan(vo), Gregory Porter(vo), Jeffrey Wright(vo), Luciana Souza(vo), Kurt Elling(vo), Kandace Springs(vo), Melody Gardot(vo), Camille Bertault(vo), Donny McCaslin(ts), Ben Monder(g), Craig Taborn(p, el-p, org), Scott Colley(b), Larry Grenadier(b), Eric Harland(ds), Mark Guiliana(ds)

2017年7月 9日 (日)

やってきました,Pink Floydの回顧展の本とTシャツ。

Pink_floyd_book_2現在,ロンドンのVictoria & Albert Museumでは"Their Mortal Remains"と題するPink Floydの回顧展が開催されている。先日,ロンドンに出張した際には,行けるものなら行きたかったのだが,展覧会開始から間もなかったこともあり,私の滞在期間中のチケットは全て売り切れていて,残念ながら行くことができなかった。

ならば,グッズだけでもと思い,Victoria & Albert MuseumのWebショップを見に行っても,本もTシャツも売り切れている状態が続いていた。現在では在庫が復活し,本に関しては今や,Amazon等でも買えるのだが,私はどうしてもTシャツが欲しかったので,送料(これが結構な金額)は掛かるが,英国に発注していたものが,デリバリーされた。

Pink_floyd_t_2本についてはハード・カバーを買ったのだが,この本の表紙はレンチキュラー印刷(見る角度によって,絵柄が変わるあれね:笑)の凝ったもの。結構なページ数があるので,読むには時間もかかるだろうが,持っているだけで嬉しくなるような本である。

一方のTシャツは"Dark Side of the Moon"をモチーフとしたもので,こじゃれた感じがいいねぇ。ということで,あぁ無駄遣いって話もあるが,まぁいいのである。ってことで,イメージを見て頂こう。

2017年7月 8日 (土)

Larry Coryellの遺作(?)はなんと11th House名義。

"Seven Secrets" Larry Coryell's 11th House(Savoy Jazz)

_20170706惜しくもLarry Coryellが亡くなったのが今年の2月のことであった。そのLarry Coryellの遺作と思しき作品が先頃リリースされたのだが,なんと懐かしや11th House名義である。しかもドラムスはこれまた昨年の12月に亡くなったAlphonse Mouzonである。更にフロントにはRandy Brecker,そしてベースはこれまた懐かしやJohn Leeに,Coryellの息子,Julianを加えた布陣によるハードなフュージョン・アルバム。

Julian Coryellを除くメンバーの平均年齢は60代後半となるはずだが,それにしてはやっている音楽は激しい限りである。ロック調あり,ファンク調あり,更にはアコースティック・ギター・ソロありと,曲はバラエティに富んでいるが,基本的には相当熱い(暑苦しい)音楽と言ってもよいが,この手の音楽が好きなリスナーのツボに入るタイプの音楽と言ってよいだろう。ここでの音楽を聞いている限り,このバンドからLarry CoryellとAlphose Mouzonが鬼籍に入るとは全く信じがたいような演奏群である。

曲はメンバーの持ち寄りであるが,Larry CoryellとAlphonse Mouzonが4曲ずつ,Randy Breckerが2曲,そしてJohn Leeが1曲(Dennis Haklarとの共作)と言った具合であり,プロデュースもバンド・メンバー全員によるものというかたちで,しっかりグループとしての表現を志向している志は認める必要があるだろう。正直言って,曲は玉石混交とは思うが,演奏としては予想以上に楽しめるものとなっている。それだけにライブも見てみたいと思わせる作品だったが,Larry CoryellとAlphonse Mouzonが亡くなってしまっては,それも夢のまた夢ってことになってしまった。

だが,亡くなる前に,これだけのフュージョン・アルバム,そして11th Houseという懐かしい名前でアルバムを制作していたことだけでも,彼らに感謝せねばならないだろう。Larry CoryellとAlphonse Mouzon追悼の気持ちも込めて,普通なら星★★★☆~★★★★ぐらいのところ,甘いのを承知で星★★★★☆としてしまおう。

Personnel: Larry Coryell(g),Julian Coryell(g), Randy Brecker(tp), John Lee(b), Alphonse Mouzon(ds)

2017年7月 7日 (金)

渋くも素晴らしいPat Martino~Gil Goldsteinデュオ

"We'll Be Together Again" Pat Martino (Muse)

Well_be_together_againPat Martinoが70年代にMuseレーベルに吹き込んだ作品はどれを買っても失敗することはないと思うが,これは買い漏らしていたもの,というかエレピとのデュオという編成もあって,買うのを躊躇しているうちに,オリジナル・ジャケのCDの入手が難しくなってしまったのであった。今回,めでたく中古盤屋で見つけてゲットした。

このアルバム,学生時代にジャズ喫茶でよくかかっていたような気がするのだが,通しでちゃんと聞いた記憶はあまりない。そして,今回,改めて聞いてみて,買わずにおいた自分がアホだったと反省した。すこぶるよい作品である。編成ゆえに,Pat Martinoらしい速射砲のようなフレージングはそれほど登場しないが,静謐で渋くも素晴らしい演奏が展開されている。先日取り上げたSteve Kuhnのアルバムも「夜にしか聞かない」と書いたが,この作品も完全に夜向きの作品である。カウンターだけのバーに座って,シングル・モルトでも飲んでいる時に,このアルバムが小音量でプレイバックされたりしたら,その店はそれだけで趣味がよいと思ってしまう。そういう作品である。

ここで聞かれるPat Martinoのフレージングに身を委ねていれば,それだけでジャズの神髄に触れるとでも言うべき幸せを感じてしまう。いいですわ~。星★★★★☆。しかし,せっかくのデュオなんだから,Gil Goldsteinとの双頭名義にしてもいいようなものだが,まぁ,この頃はGil Who?になっちゃっただろうから仕方ないか(笑)。

Recorded on February 13 & 17, 1976

Personnel: Pat Martino(g), Gil Goldstein(el-p)

2017年7月 5日 (水)

Bob Berg入りのValery Ponomarev盤。う~ん...,曲がなぁ。

"A Star for You" Valery Ponomarev(Reservoir)

_20170704Art Blakey & the Jazz Messengerにも在籍したValery Ponomarevは典型的なハードバッパーと言っていい人である。そんなPonomarevがなんとBob Bergを迎えて吹き込んだのが本作である。Bob Berg好きの私としては当然食指が動く。

演奏は総じて快調と言ってよいものである。Bob Bergのアドリブを聞いていると,やっぱりいいよね,Bob Berg!と言いたくなってしまうが,アルバム全体を聞いていると,どうにもリーダー,Ponomarevの書くオリジナル曲が面白くない。タイトル・トラックなんて,Burt Bacharachの"Alfie"の出来損ないのように聞こえるのだ。アドリブを聞いている限りは全然問題ないのだが,テーマ吹奏が始まると,違和感の方が勝ってしまうという珍しいアルバム。結局のところ,Ponomarevは演奏能力は高いのだが,作曲能力がそれについてこれないというのが致命的に思える作品。

だから滅多に聞かないんだという話もあるが,今回久々に聞いてみて,正直に思ったのが上記の感想である。まぁ曲として許せると思えるのが"Uh Oh"1曲ではさすがに苦しい。ということで,星★★☆ぐらいとしておこう。

Recorded on April 3, 1997

Personnel: Valery Ponomarev(tp), Bob Berg(ts), Sid Simmons(p), Ken Walker(b), Billy Hart(ds)

2017年7月 4日 (火)

Steve Kuhnの夜にしか聞かないアルバム(笑)

"Jazz 'n (E) motion" Steve Kuhn (BMG France)

_20170703どう聞いても,これは朝や昼にフィットしないよなぁって音楽がある。このSteve Kuhnのソロ・アルバムなんてその最たるものだ。

これは90年代の後半にシリーズものの1枚としてリリースされたアルバムで,映画音楽をソロ・ピアノで演じるというものである。ほかにPaul BleyやAlan Jean Marrie等が出ているらしいが,それらは未聴だが,まぁ,Steve Kuhnを保有していれば私はそれでよい(きっぱり)。

90年代後半のリリースにもかかわらず,ここで演じられるのは基本的に古い映画音楽である。一番新しいのが1973年の"Last Tango in Paris"である。そして一番古いのがChaplinの"Smile"である。1曲だけSteve Kuhnのオリジナルがあるが,それは1977年に"Imaginary Film",即ち想像上の映画音楽として書かれたものであり,あくまでも例外である。

企画として安直だと言われればその通りである。しかし,Steve Kuhnのピアノにおけるロマンティシズムを感じるにはこういうアルバムがあってもいいと思うし,夜,世間が寝静まってからの時間帯に,一人静かに聞くには適切なのである。カクテル・ピアノ的に響くと言えば反論の余地はないが,それでもSteve Kuhnの弾く"Last Tango in Paris"ははまり過ぎだろう。たまらないのである。

もちろん,これをSteve Kuhnの最高傑作だなんて言うつもりもないが,ある意味,Steve Kuhnの異色作ながら,万人が「膝を抱えられる」(笑)として,この世界に浸ればいいと思う。実を言うと本作を聞いたのは,相当久しぶりだったのだが,やっぱり"Last Tango in Paris"にはまってしまった私。そのほかにも「夜千」やら,"Emily"やら,"Invitation"やらと食指が動く曲ばかりである。いいねぇ。そうは言ってもせいぜい星★★★★ってところだが。それでも大甘だな(爆)。

Recorded on June 15, 1997

Personnel: Steve Kuhn(p)

尚,ご参考までに,ここに収められている映画は次のようなもの。皆さん,何本知っているかなぁ?(笑)

"All American"(正確に言うと,これは映画ではなく,ブロードウェイ・ミュージカルのはず)
「ラスト・タンゴ・イン・パリ」
「踊る大紐育」
「夜は千の眼を持つ」
「悪人と美女」
「卑怯者の勲章」
「質屋」
"Lady in the Dark"(日本未公開のはず)
"Invitation"(日本未公開のはず)
「モダン・タイムス」

2017年7月 3日 (月)

これを聞くのはいつ以来か:Jack Wilkinsの"Call Him Reckless"

"Call Him Reckless" The Jack Wilkins Trio(Musicmasters)

_20170702私は結構長い間,Jack Wilkinsをフォローしてきた。それは彼が優れたテクニックを持ちながらも,全く注目されることがないことを不憫に思っていることもあるが,やはり彼がRandy Brecker,Eddie Gomez,そしてJack DeJohnetteと吹き込んだアルバムの印象が強かったからである。一般にはMichael Brecker入りの"You Can't Live without It"の人気が高いかもしれないが,私はそっちは買い損なってしまったので,この2枚をカップリングした"Merge"が出るまでちゃんと聞いていなかった。よって,私にとってのJack Wilkinsは前者がそのイメージを作り上げている。

そんなJack Wilkinsはその後も数は多くないが,リーダー作をリリースしているが,どれもイマイチ印象に残らない。起死回生を狙ったBrecker BrothersにEddie Gomez,Jack DeJohnetteというメンツで臨んだ"Reunion"というアルバムもあったが,それも印象薄では,本人には申し訳ないが,どうやったって人気が上がる訳がないのである。結局Jack Wilkinsがブレークしたって話は聞かないまま,彼ももはや古希を過ぎた。

そうは言っても,Jack Wilkinsのテクニックが大したものだったというのはこのアルバムでも明らかだ。サブタイトルに"Classics in Jazz"とあるように,スタンダードもやっているのだが,そこにWilkinsのオリジナルが3曲(1曲はドラマーのMike Clarkとの共作)加わるプログラムの中で,強烈なフィンガリングを聞かせる。そのうまさは誰しもが認めるものだと思うが,なんでこの人がもっと注目を浴びなかったのかについては,音楽より技が勝ってしまう部分があったからではないかと思う。サウンドがコンベンショナルな中,うまいことはわかっても,やはり地味なのである。結局のところ,共演者に恵まれれば,相応に注目されるのだが,本質的に共演者も地味なのがJack Wilkinsって人なのだと思う。

本来はギター・トリオというのは,ギタリストの実力を示すには最適なフォーマットのはずである。だが,Jack Wilkinsのギターは相応の響きながら,私にはここではMike Clarkがミスキャストだったように思えてならない。そもそもHeadhuntersで叩いていた人が,こういう音楽にはフィットしないだろうと思ってしまうのである。"Nardis"ではギターとドラムスのデュオのような展開に途中でなるのだが,ちっとも高揚感が得られないのは,ドラムスのプッシュが足りないように感じるのだ。タイトル・トラックはいきなりフュージョン(あるいはHeadhunters)・ライクなファンクになってしまうし。なんでやねん。Mike Clark共作だから仕方ないか。その後がWilkinsの多重録音によるBill Evans作"B Minor Waltz"で終了ってのは,どういうプロダクションやねん!と文句の一つも言いたくなる。

ということで,これはJack Wilkinsとしてはその技を見せたアルバムではあるのだが,音楽は技だけでは成り立たないということを感じさせる作品と言ってよいだろう。星★★★。なんかもったいないよねぇ。

Recorded in May 1989

Personnel: Jack Wilkins(g), Steve LaSpina(b), Mike Clark(ds)

2017年7月 2日 (日)

Hudson:このメンツならもう少し激しくやらないとなぁ...。

"Hudson" DeJohnette Grenadier Medeski Scofield(Motema)

Hudson意外なメンツによるバンドがオリジナルのほかに,フォーク/ロック系の曲を演奏するという企画を聞いた時,特にカヴァー曲の選曲が面白いと思って購入したアルバムである。ライナーによれば,彼らが初めて演奏したのは2014年のWoodstock Jazz Festivalでのことだそうであるが,かつ,メンバーが全員Hudson Valley在住ということで,このバンド名がついたようである。Hudson Valleyと言っても,北はAlbany,Troyあたりから,南はWestchesterまでということで,非常に広いエリアになるので,彼らがご近所ってことにはならないかもしれないが,共通項はHudson Valley在住ってことになる。

このメンバーを見れば,John Medeskiとジョンスコはジャム・バンド・スタイルでの演奏で共演してきているが,そこにJack DeJohnetteが加わるとどういうことになるのかというところに関心が高まるのだが,ジョンスコとDeJohnetteはTrio BeyondでLifetimeにトリビュートする演奏をしているから,今回もそういう感じかなぁと想像してしまう。だが,DeJohnetteも今年75歳になることを考えれば,昔のようにガンガン叩くってことはないとしても,結構抑制感のある叩きっぷりなのがまず意外である。また,Bob Dylanの"Lay Lady Lay"をレゲエ・タッチでやったり,これがほんまにDeJohnetteかってところがあるのも事実である。

それにしても,穏やかというか,淡々としていると言うか,このメンツから想定していた音とはちょっと違う感じが続く。Larry Grenadierはまぁこの感じかなって気もするが,ほかの3人はもっと激しいと思っていた。例えば,Joni Mitchellの"Woodstock"は,ほぼオリジナルに忠実なメロディ・ラインでジョンスコが弾いており,かなりストレートで,暴れるところはない(というより,この曲では暴れようがないだろうが...)。

そんな演奏の中で,ようやくこういう感じだよなぁって思うのはJimi Hendrixの"Wait until Tomorrow"まで待たなければならない。曲がジミヘンだけに,おとなしくやるってのはほぼ無理って話もあるが,やっぱりこういうのを期待してしまうのが人情なのである。

しかし,その後が続かない。"Dirty Ground"ではなんとヴォーカルが入り,アメリカン・ロック的な演奏が繰り広げられる。Jack DeJohnetteとBruce Hornsby(!)の共作によるこの曲は,決して悪い曲ではない。むしろいい。だが,このメンツによるアルバムに入っていることの違和感が強烈なのである。純粋に音楽として楽しむ分にはいいのだが,どうしても「う~む」となってしまった私である。誰がリードを取っているのかはわからないが,このアメリカン・ロック的なヴォーカルはかなりいいとしても,このアルバムに入っていること自体が,「えっ?」って感じなのである。

"Tony Then Jack"はタイトルからすれば,Tony WilliamsとJack BruceのLifetime組への新たなトリビュートだろうが,それですらそんなには激しくはならないところに,やはりフラストレーションを感じるのは仕方ないのかもしれない。リスナーなんて勝手なものと思いつつ,これだけ?って思ってしまうのである。The Bandの"Up on Cripple Creek"もこの人たちでなければならない必然性はないし,最後の"Great Spirit Peace Chant"で完全終戦。なんでこうなるのよって感じのエンディングで,違和感はピークに達するという作品である。一体何を思ってのエンディングだったのか。謎としか言いようがない。全体としては悪いと思わないが,星★★★が精一杯の問題作。Trio Beyondを改めて聞いてみるか。

Personnel: Jack DeJohnette(ds, tom-tom,, wooden-fl, vo), Larry Grenadier(b, vo), John Medeski(p, rhodes, org, wooden-fl, vo), John Scofield(g, wooden-fl)

2017年7月 1日 (土)

ようやく落ち着いて音楽に関して書ける。そこでアップするのがRoger Watersってのは強烈だが(笑)。

"Is This the Life We Really Want?" Roger Waters(Columbia)

Roger_watersここのところの国内外の出張続きで,正直なところ,ブログに記事をアップするのが難しい時期が続いていたのだが,ようやく連続出張も終了し,ようやく自室で音楽を聞ける環境になった。疲れているのだから,こういう時はもう少しおとなしい音楽を聞いてもいいような気もするが,今日はRoger Waters,25年ぶりのスタジオ作である。

昔,「笑っていいとも!」の中に,「おじさんは怒ってるんだぞ!」なるコーナーがあったと記憶しているが,まさにRogers Waters版,「おじさんは怒ってるんだぞ!」って感じのアルバムである。サウンドは,いかにもPink Floyd的であり,年齢を重ねたリスナーにとっても問題のないつくりなのだが,歌詞が結構激しい。既に古希を過ぎているRoger Watersがこうしたアルバムを作り上げることは,よほど腹に据えかねたのだろうと想像することはたやすい。ブックレットに掲載された写真(↓)を見れば,その怒りの矛先が,Donald Trumpといううつけ者に向いていることは間違いないし,Roger Watersの憤懣やるかたない思いが,歌詞の端々に感じられる。それにしても,"A Leader with No Brains"とはよく言ってくれたものである。

正直言って,私がPink Floydを聞くようになった時に,既にバンドにはRoger Watersはいなかった(私にとってのプログレはまずはYesがあり,そしてKing Crimsonだったのだ)のだが,このアルバムを聞くと,Pink Floyd的なサウンドは,Roger Watersがそもそもは作り上げたものなんだろうと感じるような音である。その後のDave Gilmourが実質的なリーダーとなったPink FloydはRoger Waters的なところを結構なぞっていたってことなんだろう。

本作を聞いていると,さすがにヴォーカルはきついなぁって感じで,絞り出すようなトーンと感じられる部分もあるが,それよりも,私としては,このサウンドが今,このタイミングでどう受け止められるかには非常に関心がある。だが,音楽的なところはさておき,私としては,怒りを発露し,音楽に乗せるという行為はあって然るべきものだと思えるし,超リベラルな私のような人間には,Roger Watersの怒りは理解できるものである。

であるから,純粋音楽的に評価するのと,このRoger Watersの姿勢を評価するという2面で考えなければならないが,音楽的に見ても,私はPink Floydの"Endless River"よりこちらの方が好きだし,Roger Watersの姿勢には大いにシンパシーを感じるということで,星★★★★☆としておこう。

Personnel: Roger Waters(vo, acoustics, bass),Nigel Godrich(arr, sound collage, key, g), Jonathan Wilson(g, key), Gus Seyfferts(b, g, key), Joey Waronker(ds), Roger Manning(key), Lee Pardini(key), Lucius: Jesse Wolfe & Holly Laessig(vo)

Trump

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