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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2017年5月31日 (水)

全くノーマークだったRalph Towner参加のJavier Girotto盤。

"Duende" Javier Girotto Aires Tango with Ralph Towner(CAM Jazz)

_20170528_5私はRalph Townerのかなりのファンである。さすがに多作のOregonまで全部フォローはしていないが,ECMにおけるTowner名義のアルバムは全部保有しているし,Townerが参加しているアルバムもECMだけでなく,できるだけチェックするようにしている。

とは言え,全然知らないアルバムもあるわけで,これは昨年リリースされたものらしいが,存在をRalph TownerのFacebookファン・ページで知って発注したもの。リーダーのJavier Girottoのことは知らないので,ギャンブル的なところはあったが,まぁいいやってことで。本作は全12曲が収められているが,奇数曲がTownerのオリジナルで,Ralph Townerは自作にのみ参加である。

Javier Girottoはアルゼンチン生まれながら,現在は欧州を拠点とするサックス奏者で,このAires Tnagoは結成して20年以上になるらしいが,バンド名称からも想像できる通り,タンゴ的な色彩を感じさせるメロディ・ラインを持っている。しかし,私の中では単語と言えば,どうしてもAstor Piazzollaが基本になってしまうので,哀愁を帯びたメロディだけでは納得がいかない。そういう意味で,Javier Girottoのオリジナルは,私にはテンション,パッションが足りない部分があるのは事実である。そういうこともあって,私の関心はどうしてもRalph Towner参加曲に向いてしまうのは仕方がないことである。

どうせなら,Ralph Towner全面参加として欲しかったところだが,贅沢は言わないとしても,やはり曲としての魅力からしても,Ralph Townerに依存するところ大のアルバムと言ってよい。冒頭のTowner作のタイトル・トラックの最初を聞いただけで,おぉっ,と思ったのは早とちりであったが,Ralph Townerのファンであれば,聞いておいて損はない。どういう縁があっての共演だったかはわからないが,Oregon的室内楽的アプローチを想像しておいてもらえば,印象が大きくはずれることはないが,Oregonとはイメージは結構違う。しかし,Oregonの新譜のリリースを控える中,それに向けての準備運動と考えることにしよう。奇数曲星★★★★,偶数曲星★★☆で甘めの星★★★☆ってことにしておく。

Recorded on September 21, 22 and 23, 2016

Personnel: Javier Girotto(ss), Alessandro Gwis(p, sampler, electronics), Marco Siniscalco(el-b), Michele Rabbia(ds, perc)

2017年5月30日 (火)

中古でゲットしたGary Peacock盤から,まずは"December Poems"。

"December Poems" Gary Peacock(ECM)

_20170528_6昨日のDavid Tornに続いて,これも中古でゲットしたもの。そもそもECMにはGary Peacockのアルバムがあるにもかかわらず,一部の作品は廃盤化してしまい,結構入手が難しくなっていた。しかし,今回の新宿DUにおけるECM中古盤特集では,基本的に押さえたいと思っていたPeacockのアルバムが全部手に入ってしまった。逆に言うと,なんでGary Peacockのアルバムの入手が難しくなってしまったのか不思議でならないのだが,この作品も,Gary Peacockの多重録音含めたソロ演奏が中心なので,もちろん売れる作品でないことはわかる。しかし,聞いてみると,これがよいのである。

本作には2曲でJan Garbarekが参加しているものの,そのほかの4曲はPeacockだけによるものとなると,やはりフォーマットとしてはチャレンジングである。私も,やはり身構えてしまうのは当然で,だからこそこれまで購入してこなかったという話もある。しかし,思い込みはいかん。Gary Peacockのベースの音は極めて魅力的に録られており,小音量で聞いても,そのクォリティの高さは明らかなのである。

曲名からしても,「冬」を意識したアルバムを,初夏の今頃聞いている私も考えものだが,これから暑くなっていく時期に,涼やかさを求めるのにも使えるのではないかとさえ思ってしまう。だが,クール一辺倒というわけでもなく,リズミックなパターンや,Garbarekとのデュオにおいては2者が絡み合い,渡り合う感覚も生み出しているので,季節にとらわれる必要はない。こうして聞いてみると,ECM好きならば,どんな時に聞いても抵抗感なく受け入れてしまうような作品と言えよう。

それにしても,Gary Peacockのベースの音の素晴らしいことよ。それだけでも聞く価値はあると言っておこう。星★★★★☆。

Recorded in December 1977

Personnel: Gary Peacock(b), Jan Garbarek(ss, ts)

 

2017年5月29日 (月)

今度は中古でゲットしたECM盤ということで,まずはDavid Torn。

"Best Laid Plans" David Torn(ECM)

Best_laid_plansこのブログにアップする記事のかなりの比率をECMレーベルの作品が占めているのは,読者の皆さんならご承知のことと思うが,そうは言っても,私も保有しているECMの作品は多分半分もいかないぐらいではないかと思う(正確に数えたことはない)。だから,後付けで買おうと思っていても,いつの間にやら廃盤になってしまっているアルバムも結構ある。今回仕入れた本作とか,これと一緒に買ったGary Peacockのアルバム(それらは追ってアップしたい)などはなかなかお目にかからない。

今回,新宿のDUでECM中古盤特集の告知があって,気になっていたのだが,全然行く暇がなかった。そこには確かにこのアルバムの写真が掲載されていたから,おぉっと思ってはいても,行けないのでは仕方がない。もう売れていても仕方ないなぁという気持ちで行ったら,まだあった(笑)。やはりECMは特定の筋のリスナー向けなのかなぁなんて思ってしまったが,まぁ,買えたからよしとしよう。ちょっと値段は高かったが...。でも目玉が飛び出るほどではない。

そもそもDavidはECMレーベルっぽくない人である。ECMの"Cloud About Mercury"は異色中の異色と言ってもよいメンツによるものだし(記事はこちら),その後のアルバムもかなりハードルが高い。それでも本作については,これまたECMらしくないジャケからもずっと気になっていたのである。そして,パーカッションとのデュオってのも気になる。

結論から言えば,私が聞いたECMのDavid Tornの作品ではこれが一番好きかもしれないってところである。ロック的なタッチを交えつつ,ハイブラウな雰囲気を醸し出すところは,これがDavid Tornの本質だろうと思ってしまう。正直言ってしまえば,David Tornについては,ECM以外でリリースされた"Polytown"(記事はこちら)や"Levin Torn White"(記事はこちら)の方が好きなのだが,ここでの音はどちらかと言うとそっち系の音だと思えることが大きな要素である。ということで,これは間違いなく買って正解というところである。星★★★★。

Recorded in July, 1984

Personnel: David Torn(g), Geoffrey Gordon(perc)

2017年5月28日 (日)

これも中古でゲットしたChico FreemanのIndia Navigation盤。

"Chico" Chico Freeman(India Navigation)

_20170527_2今にして思えば,India Navigationというレーベルは,現在だからこそ見直すべきレーベルのように考えられる。70年代後半の空気感を切り取りながら,今聞いても結構尖がりつつも,魅力的なサウンドとなっているのは立派だと思える。なので,私は中古でこのレーベルを見つければ買うというのが原則であり,Hamiet Bluiett然り,Arthur Blythe然りであるが,今回はChico Freemanである。ジャケがサイケだねぇ(笑)。

Chico FreemanのIndia Navigation盤については"The Outside Within"と"Spirit Sensitive"を保有しているが,どちらも素晴らしい出来だっただけに,このアルバムを中古盤屋で見つけた時はうれしくなってしまった。なぜかバックイン・レイ側に黄ばみがあるものの,そんなことはまぁ気にしていられない(笑)。ということで,中古CDとしてはちょいと高かったのだが,ゲットした私である。

本作がIndia Navigationレーベルでは第1作となるはずのChico Freemanであるが,それにしては制作方針がチャレンジングである。1曲を除いて,Chico FreemanとCecil McBeeとのデュオ,そしてラストの1曲はクインテットによるライブ音源なのだ。これはかなり野心的な作りだと言ってよいが,それでもChico Freemanの魅力は十分に捉えられていると言ってよいと思う。決してフリーではないが,だからと言ってコンベンショナルでもないという線で,絶妙なバランスを保ちつつ,やはりどちらかと言えば先鋭的なサウンドになっていると言ってよい。それが非常に刺激的に響くのである。

そうは言っても,"The Outside Within"や"Spirit Sensitive"と比べるとどうなのよと言われると,それらには及ばないかなぁって気もするが,それでも十分魅力的なChico Freemanの演奏を聞くことができるし,Cecil McBeeの音がまたいいねぇ。ということで,ちょっと甘めの星★★★★☆。

Personnel: Chico Freeman(ts, b-cl, fl), Cecil McBee(b), Muhal Richard Abrams(p), Steve McCall(ds), Tito Sampa(perc)

2017年5月27日 (土)

全然知らなかったTom Costerのハード・フュージョン盤を中古でゲット。

"Let's Set the Record Straight" Tom Coster(JVC)

_20170527私はこのブログで,Tom Costerの"The Forbidden Zone"を長年聞いているという記事をアップしたことがある(記事はこちら)。リーダーに加えて,Bob Berg,Scott Hendersonというメンツは,この手の音楽が好きな私にとっての好物と言ってよいが,それに先立つこのアルバムも同系統のメンツで吹き込まれていたことは全然知らなかった。それを先日,中古盤屋をうろついていて,見つけてきてゲットしたものである。だって,Bob Berg,デニチェン,Frank Gambale,それにAlphonso Johnson等が参加しているのだから,これはほぼ間違いない(笑)。

聞いてみれば,完全に"The Forbidden Zone"とほぼ同じ路線である。逆に言えば,パターン化しているが,これがTom Costerの個性だと思えば,そんなに気にならないし,こういう音はいいねぇと思ってしまう私も単細胞である。

まぁ,Tom Costerのアルバムはいつもそうなのだが,ラテン・フレイヴァーを入れることで緩んでしまう瞬間があるのがちょっと惜しいのだが,そこは元Santanaである。それもしゃあない(爆)。

いずれにしても,こっちがTom Costerに期待する音は本作でも十分楽しめるし,"The Forbidden Zone"や"From the Street"同様のハード・フュージョン的高揚感は味わえる。星★★★★。尚,最後の1曲にVital Informationのバンド・メイト,Steve Smithが参加している。

Personnel: Tom Coster(key), Bob Berg(sax), Frank Gambale(g), Alphonso Johnson(b), Dennis Chambers(ds), Raul Rekow(perc, vo), Karl Perazzo(perc, vo), Steve Smith(ds), Tom Coster, Jr.(key, synth)

2017年5月26日 (金)

Stanley Clarke@Blue Note東京,Pat Martino@Cotton Club連続参戦記

Img_6240

今年はライブに行っている本数がかなり多いが,2日連続ってのは,海外出張中を除けば,一昨年のWayne KrantzとMehliana以来のことだろう。今回はStanley ClarkeとPat Martinoという全く毛色の違うライブの連荘となった。

まずはStanley Clarkeであるが,当初から予想できたこととは言え,ベースがリーダーだとこうなるよなぁって感じの演奏だったと言ってもよい。Stanley Clarkeだったらもう少し集客がよさそうなもんだと思えたのだが,7割程度の入りってところか。私は半額未満のクーポンを使っているというのにである。そんなものなのかなぁと思ったが,演奏を聞いていても,エンタテインメントとして十分かというと,やはりバンドのメンバーにもう少し華があってもいいってところだろう。特にドラムスのMichael Mitchellは若さゆえってところもあるかもしれないが,明らかに叩き過ぎである。加えて2キーボードであるが,ソロイストとしてのメインはRuslan Sirotaの方かもしれないが,私はCaleb McCampbellのグルーブの方が気持ちよかったと思う。

それにStanley Clarke本人も,エレクトリックよりも,アコースティックの方がずっといいではないかと思わせるのが,これまた意外であった。少なくとも,私が心地よさを感じたのは,アコースティック・ベースの方である。まぁ,Stanley ClarkeのAlembicのベースの音がしつこく感じる(あるいは飽きる)からだとも言えるが,これは本当に意外としか言いようがない。いずれにしても,Stanley Clarkeはもう少し強力なソロイストがいないと,バンドとしては今一つ感があるというのは仕方がないところか。

ちなみに上の写真は,客席からスマホで隠し撮りしたものに編集を加えたものだが,我ながらなかなかいけている(爆)。

Pat_martino_at_cotton_clubそしてその翌日に行ったのがPat Martinoである。私は2009年のNYC出張中にPat Martinoのライブを,現地のBirdlandで見ている(その時の記事はこちら)が,それ以来のMartinoのライブである。今回はギター,オルガン,ドラムスのトリオであるが,ネットで見てみると,このメンツでの活動は相当長いようである。

今回は2日間限りということもあるのかもしれないが,非常に集客もよく,ほぼフルハウスの中演奏が始まった。Pat Martinoは相変わらずで,見た目は学者か,哲学者かって感じだが,その風貌から,あのフレージングが出てくるのだから,ギャップが激しい。若干"Footprints"で緩んだかなぁって気もするが,全編を通してMartino節全開と言ってもよかった。そして何よりも笑ってしまったのが,オルガンのPat Bianchiがソロを取っていようがなんだろうが,ギターのボリュームを下げることなく,コードで煽るのである。これこそ,ギタリスト・リーダーの鑑である(笑)。完全にリーダーはわしじゃ!モードであった。Pat Bianchiは,やや弾き過ぎ感もあるが,それなりに受けていた。むしろ私はドラムスのCarmen Intorreに感心していた。ステディなのだが,無駄はないし,ソロもなかなか行ける。これは結構いいドラマーだと思っていた私である。

そうは言っても,やっぱりこのバンドはPat Martinoである。今年で73歳になるので,今後何度来日できるかはわからないが,まだまだ現役で行けるって感じである。今回はサイン会もなかったが,チャンスがあれば,是非本人と話してみたいと思っている。なので,またの来日を期待したいところである。

この2日間のライブを振り返れば,間違いなくPat Martinoの圧勝であったと言っておこう。

Live at Blue Note東京 on May 24, 2017

Personnel: Stanley Clarke(b), Ruslan Sirota(p, key),Caleb McCampbell(key), Michael Mitchell(ds)

Live at Cotton Club on May 25, 2017

Personnel: Pat Martino(g), Pat Bianchi(org), Carmen Intorre(ds)

2017年5月25日 (木)

Jaco全盛期の輝きを捉えた未発表音源。

"Truth, Liberty & Soul" Jaco Pastorius (Resonance)

Jaco貴重な未発表音源を次から次へとリリースするResonanceレーベルから出たアルバムには,注目に値するものが多いが,これまた強烈な音源があったものである。

これは米国の公共放送,NPRで放送された音源のソースを完全公開したものであるが,これまでブートなどで聞かれた演奏は一部の音源がオミットされた不完全版だったらしいが,これはその完全版ということで,長時間に渡って,Jaco Pastoriusの凄みを感じさせる演奏を聞ける貴重音源となっている。そもそも,これはKool Jazz Festival,場所はAvery Fisher Hallという,ジャズ・ミュージシャンにとっての晴れ舞台のような機会である。Jacoとしても燃えるのは当然だが,それにしてもこれは素晴らし音源である。

正直言って,私は1984年にGil Evans OrchestraのゲストとしてLive under the Skyに出演したJacoを見て,完全に狂っていると思った(その音源に関する記事はこちら)が,この演奏はその2年前ぐらいのものであり,たった2年で人間はこんなにも変わってしまうのかと思わざるをえないし,何がJacoに起こったのかと改めて思ってしまう。私のように,Jaco Pastoriusというミュージシャンに特別の思い入れのない人間でも,天才を発揮した時のJacoの凄さはちゃんと感じられるつもりである。

例えば,本作の冒頭の"Invitation"のバックで弾けるJacoの演奏を聞いていれば,それだけで燃えるというのが普通の反応だろう。そして,ここに参加した強烈なメンツ(ホーン・セクションだけでも凄い名前が揃っている)による圧倒的なグルーブを聞かされてしまっては,84年の狂ったJacoのことは忘れることができるってものである。これは黙って聞いて,天才としてのJacoの演奏を認識すればいいということだろう。Disc 2の前半こそやや中だるみ感があるものの,この圧倒的な演奏には星★★★★★しかあるまい。よくぞ発掘してくれたというのが正直な思いである。

繰り返すが,私はJacoに対して特別な思い入れはない。しかし,そんな私でも,これは万人に勧めたくなるようなアルバムである。同じ年に日本で録音された"Twins I&II"に匹敵する名ライブであり,結局はこの年がJacoのピーク,あるいは最後に輝いた年だった。

Recorded Live at Avery Fisher Hall on June 27, 1982

Personnel: Jaco Pastorius(b, vo), Bob Mintzer(ts, ss, b-cl), Randy Brecker(tp), Othello Molineaux(steel ds), Don Alias(perc), Peter Erskine(ds), Toots Thielemans(hca), Bob Stein(as), Lou Marini(ts), Frank Wess(ts), Howard Johnson(bs), Randy Emerick(bs), Alan Rubin(tp), Leew Soloff(tp), Jon Faddis(tp), Ron Tooley(tp), Kenny Faulk(tp), David Taylor(tb), Jim Pugh(tb), Wayne Andre(tb), John Clark(fr-h), Peter Gordon(fr-h), David Burgeron(tuba)

2017年5月24日 (水)

Ondřej Štveráček参加のNajponkのライブ盤。よくやるわ。

"Live at the Offece Vol.4" Najponk Trio & Tenor Titans (Gats Production)

_20170521私を含めた一部の好き者(爆)が,ジャズ界の「おんどれ君」と呼ぶOndřej Štveráčekであるが,本人のWebサイトでも,音を聞いても,Coltrane愛が炸裂するこのテナー奏者には,固定的リスナーが私の周りに少なくとも3人(笑)はいる。しかし,彼のアルバムは入手がなかなか大変なのがやっかいで,日本に入ってくることが少ない。なので,私は直接本人やチェコのショップに発注しているのだが,今回のアルバムは,いつもと違って,入手が容易だったのは助かる。しかも値段が安い。と思ったら,本作は日本のガッツ・プロダクションの制作ではないか。それがまずへぇ~であった。まぁ,そうは言っても,本作はおんどれ君以上に,日本で固定ファンが付いているであろうNajponkをリーダーとするセッションとして企画されたものと想像する。それでもおんどれ君に対する注目度が少しでも上がれば,それは決して悪いことではない。

アルバムの企画としては,タイトルからもわかるが,2テナーをフロントに据えた典型的ブローイング・セッションと言っていい。しかもやっている曲が,ブルーズやモードなんだから,そりゃあそうなるわ。それはそうなのだが,おんどれ君の日頃のライブに接することができないはるか日本のリスナーにとっては,あぁ,やっぱりこういう感じでやってんのねぇって感慨を覚えてしまうぐらい吹きまくるおんどれ君である。ここに収められているような演奏を眼前で繰り広げられたら,あまりの吹きっぷりに,「笑いながら」悶絶してしまうこと確実である(爆)。

そういう意味では満足度は高いとも言えるが,アルバムとしてはどうなのかねぇと思ってしまう部分もある。最後に"All Clean"のリハーサル・テイクを収録しているが,ソロの出来がよかったとしても,こういうのは「蛇足」と言ってもよいものだろう。

それでもおんどれ君のファンを納得させるには十分と思えるし,難しいことを言わず,彼らのブローイングを楽しんでいればいいということではあるが,これなら星★★★☆程度でよかろう。いずれにしても,日本制作でOndřej Štveráčekが参加したアルバムができるとは思っていなかっただけに,これは嬉しい「誤算」ではあったが,ちょっと制作の仕方が安直なんだよねぇ。ちょっと惜しいなぁ。

Recorded Live at the Office on October 2016

Personnel: Najponk(p), Ondřej Štveráček(ts),Osian Roberts(ts), Taras Voloschuk(b), Marek Urbanek(ds)

2017年5月23日 (火)

Wayne Krantzの初リーダー作,"Signals"を改めて聞く。

"Signals" Wayne Krantz(Enja)

Signals先日,Wayne Krantz入りのMichael Formanekのアルバムを取り上げたので,今日はKrantzの初リーダー作である"Signals"を取り上げることにしよう。

私はミュージシャンではないので,彼らが初リーダー作にどのような思いを込めるかについては,想像の域を出ないのだが,このWayne Krantzの初リーダー作には,様々なフォーマットでの演奏を入れて,マーケットに打って出ようという気概が感じられる。いきなり,冒頭からDon Aliasとのデュオで幕を開けるというのは大胆な展開である。そして,デニチェンらを従えたバンド形式が3曲,Don Aliasとのデュオが2曲,Leni Sternとのデュオが2曲,Hiram Bullockにベースとドラム・プログラミングを任せて1曲,そしてソロが3曲という具合である。

バンドでのサウンドが一番フュージョンぽく響き,その他の曲においては,Wayne Krantzのフレーズにはカントリー的なフレイヴァーも含まれている感じもして,非常に面白い。だが,Wayne Krantz的なフレーズはまだまだ控えめって気がする。しかし,ソロで演じられる曲を聞いて,何と見事なリズム感なのかと思ってしまう。注目はバンド・サウンドに向きがちだとは思うが,実は,私としてはDon Aliasとのデュオ"Alliance"やソロで演じられる"One of Two"や"Two of Two"にこそ,この当時のWayne Krantzの魅力が発揮されているように思える。

ある意味,バンドでやった3曲はセールスを考えてのこととも言えるようにさえ感じるのは穿ち過ぎかもしれないが,現在に至るまでWayne Krantzのファンである私としては,上述のような感じである。やや欲張った感があるのは事実である。だが,ほぼ新人のデビュー作としては,結構よくできていると評価してよいと思う。星★★★★。

YouTubeにKrantz,LeFebvre, Carlockの最凶メンツで55 Barで本作のタイトル・トラックをやった時の音源(映像はない)が上がっているので,貼り付けておこう。アルバムでの響きと全然違うねぇ。

Recorded in May and June, 1990

Personnel: Wayne Krantz(g), Leni Stern(g), Jim Beard(key), Anthony Jackson(b), Hiram Bullock(b, drum-prog), Dennis Chambers(ds), Don Alias(perc)

2017年5月22日 (月)

Micheal FormanekのEnja作にはWayne Krantzの名が...。

"Wide Open Spaces" Michael Formanek (Enja)

_20170514_2先日,Michael FormanekのECM作"Small Places"を取り上げて,どうもピンと来ない感じがしていた私だが,いろいろネットを徘徊してて,彼のEnjaのアルバムにWayne Krantzが参加していることを知り,どうしても聞きたくなってしまった。しかし,某サイトでは飛んでもない値段がついていて,何じゃそれはと思っていたのだが,eBayではお手頃価格で出ているではないか。価格の落差に踊りきつつ,eBayで発注してゲットした私である。

私の関心事はほとんどWayne Krantzがこのアルバムが録音された90年当時,どういう演奏をしているかに尽きる。そもそもWayne KrantzとEnjaレーベルのつながりは結構深く,本人の初リーダー作"Signals"も同レーベルからであったし,Leni Sternとの共演作などもあった。"Signals"の録音は90年5~6月,本作はそれを更に数カ月遡るが,リーダー作録音に向けての素地は整っていたということかもしれない。まぁ,そうは言っても,キャリアとしてはまだ初期の頃のWayne Krantzである。その後のギター・サウンドとは異なり,まだまだ普通のプレイぶり(笑)である。

そして,Michael Formanekであるが,この頃から硬派な音楽である。そもそも編成が変わっているし,Greg Osbyが参加していることからしても軟弱になりようがない(爆)。冒頭の"Edge to Edge"からして,非常にスリリングなサウンドであり,大いに期待を持たせるが,あっという間に終わってしまう。そもそも全15曲で55分弱というのが,曲数が多い感覚があるが,最長でも9曲目"Home, at Home"で8分35秒である。そして,色々なタイプの曲が並んでおり,一種のコンセプト・アルバムのように捉えることも可能かもしれない。リーダーもライナーでは"Each piece is like another chapter, and what unifies them is a basic set of themes that comes from a kind of central place. All the music is connected to that in very vague ways."なんて言っているし。

そんなわけで,アルバムとしては,それなりに聞きどころはあるのだが,私としては"Edge to Edge"のような曲で押してもよかったのではないかと思う。更に,このアルバムにはヴァイオリンのMark Feldmanが参加しているが,私はFeldman抜きのクァルテットでも面白かったのではないかと思う。いずれにしても,Wayne Krantzの楽歴を振り返る上では,これはこれで聞いておいて損はないと思える作品。まぁ,全体評価としては星★★★☆ぐらいだろう。

Recorded on January 25 & 26,1990

Personnel: Michael Formanek(b), Greg Osby(as, ss), Wayne Krantz(g), Mark Feldman(vln), Jeff Hirshfield(ds)

2017年5月21日 (日)

Gordon Goodwin's Big Phat Band@Blue Note東京参戦記

Big_phat_bandblue_note_tokyo_2

私はBlue Note東京のJam Session会員っていうのになっているのだが,7回ライブに行くと,招待状がもらえるということで,今回のライブに参戦となった。この招待状では本当はBlues Brothers Bandに行きたかったのだが,出張日程と重なってしまい,Big Phat Bandのライブをチョイスとなった。たまにはビッグ・バンド・ジャズもいいかってことで(笑)。

Big Phat Bandはコンテンポラリーな響きを持つビッグバンドという印象が強いが,メイン・ソロイストにEric Marienthalを擁するからそういう感じも強くなるってことである。今回はBuddy Richの生誕100年を記念してのパートも含むということであるが,私としてはコンテンポラリーな感じが強い方がいいなぁと思っていたので,その辺は若干微妙というところもあったが,まぁよかろう。

ライブを見ていて,やはりハード・ドライビングな演奏の方が楽しめるのは間違いないところで,私はそういう曲調の方が楽しめたのは事実である。今回はBuddy Rich記念プログラムというところで,ドラムスのRay Blinkerの活躍が大きかったが,結構歳は喰っていそうなのに,パワフルなドラミングには圧倒された。メンバーも相応の実力者が揃っていて,ソロの力量も感じられたのはなかなかよかった。

Bpb_at_bnt_verticalそれにしても,今回は私の予約番号は#28ということもあり,出遅れ感があったのだが,客席(自由席)はそれほどの混雑ぶりでなかったのはなぜなのか?大量にキャンセルが出た可能性もあるが,結果的にはステージ至近の席についた私である。あまりにステージが近いので,見ていて音量に負けるのではないかと思っていたが,それほどではなかったのはよかった。ちなみに私の席とステージの距離感はこんな感じ。

尚,上の写真はBlue Note東京のWebサイトから拝借したもの。

Live at Blue Note東京 on May 18, 2017

Personnel: Gordon Goodwin(band leader,p,ts,ss), Eric Marienthal(as,ss,piccolo,fl), Sal Lozano(as,piccolo,fl,cl), Brian Scanlon(ts,fl,cl), Jeff Driskill(ts,fl,cl), Adam Schroeder(bs,bcl,fl), Wayne Bergeron(tp), Mike Rocha(tp), Jamie Hovorka(tp), Dan Savant(tp), Francisco Torres(tb), Charlie Morillas(tb), Eric Hughes(tb), Craig Gosnell(b-tb), Justin Smith(g), Ray Brinker(ds), Joey DeLeon(per)

2017年5月20日 (土)

ようやく発見,行方不明だった"This Is Chris"

"This Is Chris" Chris Conner(Bethlehem)

This_is_chris私は基本的に,よく聞くCD(一軍ってやつである)はミュージシャンのラスト・ネームのアルファベット順に並べているので,一軍のCDが見当たらないってことはあまりない。しかし,先日記事にしたように,ボックスを買って,もとのCDを売却してもすっかり忘れていたRoxy Musicの"Avalon"のような例もあるので,偉そうなことは言えない。

しかし,この"Thisi Is Chris"も久しく行方不明になっていて,どうしたのかわからない状態であった。普通だったら,John ColtraneとMarc Coplandの間にあるはずの本作がなぜか見つからなかった。結局は,CDの並べ替えのタイミングで,置き場所が大幅にずれていたことによって,見つからなかっただけというアホみたいな話だったのだが,見つからないと気になって仕方がなかったというのも事実だ。井上陽水ではないが,「探すのをやめた時,見つかることもよくある話で」,本作も,別のCDをプレイバックしようとしたときに,「あれ,こんなところに...」って感じで見つかっただけの話である。これって,一軍のCDもちゃんと聞いていないんじゃないの?と言われても反論できないことの証だが,まぁいいや(爆)。

それでもって,本作も久しぶりに聞いたのだが,夜も更けた時間に,くつろぎたいと思った時にこれほどぴったりのCDもないなぁなんて感じてしまった。適切なスイング感,適切なムーディさ,そして小音量で聞いても,全然問題ないと思わせるこの内容が素晴らしい。ジャズ・ヴォーカルをほとんど聞かない私がそう言うのだから,間違いない(笑)。

明らかに黒人のヴォーカルとは異なりつつ,Chris Connerのハスキーな声は強烈にジャズを感じさせる。Anita O'Dayとどっちがいいんだと聞かれると答えに窮するが,どっちもよいからそれでいいのである。久しぶりに聞いて,これほど寝る前のひと時を快適に過ごさせてくれたことも評価し,これは星★★★★★である。全編で30分弱ってのも,ナイトキャップには丁度いいし...。また,ジャケも強烈にジャズ的な感じだと思うのは私だけ?

Recorded in April, 1955

Personnel: Chirs Conner(vo), Herbie Mann(fl), J.J, Johnson(tb), Kai Winding(tb), Ralph Sharron(p), Joe Puma(g), Milt Hinton(b), Ossie Johnson(ds)

2017年5月18日 (木)

直感を信じて買って大正解のRose Cousins

"Natural Conclusions" Rose Cousins(自主制作盤)

Rose_cousins某誌でこのアルバムの紹介を見て,Joe Henryプロデュースということを知り,猛烈に興味が湧いた私である。Joe Henryのプロデュースしたアルバムは正直言って玉石混交で,はずれはまじではずれることがあるのだが,基本的には信頼に値する人だ。これはApple Musicで冒頭の1曲を聞いて,自分の直感を信じて買いを決意したものだ。

Rose Cousinsというシンガーについては全く知らなかった。Wikipediaで調べてみると,カナダのシンガー・ソングライター。2006年にデビューした時にはアラサーだったという遅咲きのシンガーで,現在は不惑を迎えている。Apple Musicで聞いた時からちゃらちゃらしたところはないと思っていたが,だてに年齢を重ねていないと思わせるような音楽性である。

カナダのシンガー・ソングライターと言えば,私のアイドル,Joni Mitchellと同じってことになるが,Joniの音楽とはちょっと違うとしても,これはこれで非常によくできたアルバムであり,優れた曲集となっている。そんな彼女が,これはKickstarterというクラウド・ファンディングを使って制作したアルバムだが,PledgeMusicなら私も投資していたなぁと思えるほど,これはよい。そもそも,私はシンガーソングライターは渋めの男声が好きなのだが,女声についても,相応のリスナーである。代表はJoni Mitchellだが,Rickie Lee Jonesでも,Laura Nyroでも,Carly Simonでも,Carol Kingでも全然問題ない。まぁそれでも,どのシンガーを聞いても,キュートな声ではないということはおわかり願えよう。私にとっては,大人の声でないといかんのである。

そして,このRose Cousinsであるが,まさに私のツボと言ってもよい。最近聞いた女性シンガーのアルバムでは,何と言ってもRachawl Yamagata推しの私だが,この作品は,Rachael Yamagataと同じぐらいよい。Joe Henryのプロデュースよろしく,この人の歌手としての魅力を十二分に捉えていると言ってよいだろう。私はこういう音楽には弱いのである。声よし,曲よし,伴奏よしである。この手の音楽で久々にしびれたというのが正直な思いである。皆さんにより広く知ってもらうために星★★★★★としてしまおう。それでもこのジャケでは売れないか...(爆)。しかし,まじでこれはよい!ストリーミング環境のある方は,騙されたと思って,ものは試しで聞いてみて頂きたい。

Personnel: Rose Cousins(vo, g, p), Jay Bellerose(ds, perc), Asa Brasius(steel-g), David Piltch(b), Zachariah Hickman(b, vo, arr), Gord Tough(g), Aaron Davis(key, org, p), Kinley Dowling(vla, vln, vo), Miranda Mulholland(vo), Caroline Brooks(vo), Jill Barber(vo)

2017年5月17日 (水)

Wolfert Brederode Trio@武蔵野スイングホール参戦記

_20170516_2

ECMからリリースした"Black Ice"も素晴らしかったWolfert Brederodeのトリオを見るために,会社から結構遠いのだが,武蔵境にある武蔵野スイングホールに行ってきた。

アルバムそのものも素晴らしく,このブログにも「美しくも青白く光る炎のような音楽であり,いかにもECM的なアルバム。」と書いた(記事はこちら)。そして,ライブで展開された音楽も,ほぼアルバムのイメージを踏襲したものであり,新曲もやったが,基本的には"Black Ice"からのレパートリーを演奏していた。

このトリオは,ソロ回しなどにはほとんど関心がないというような,リーダーのピアノを中心としながら,ベースとドラムスが絡みつくような演奏を繰り広げるというパターンで,まさに三位一体とでも言うべき演奏方法であったと思う。そこに聞かれるWolfert Brederodeのピアノの美しいことよ。美的で繊細,時にアブストラクト,そして時にダイナミズムも感じさせる非常にいい演奏であった。そして,彼を支えるリズム隊もうまい。ベースの音もよいし,ドラムスの切り込みはかなり鋭い。そうして作り上げられた音場はまさにインタープレイだったのである。

演奏を聞きながら,誰かに影響を受けているのかなぁなんて思いながら,誰ってのが思い浮かばない。ちょっとEnrico Pieranunzi風に聞こえる瞬間もあったが,全体を通して聞いていると,オリジナルなスタイルなんだろうなぁっていうのが結論。

Wolfert Brederodeはこれまでも何度か来日しているようであるが,私が彼の音楽の魅力に接したのは去年が初めてだった。その感覚を忘れず,告知が出た瞬間にチケットをゲットし,今回のライブに行けたのは非常に良かったと思う。ECMらしい音をライブで聞く喜びって感じか。ということで,今回の戦利品も写真をアップしておこう。

Live at 武蔵野スイングホール on May 16, 2017

Personnel: Wolfert Brederode(p), Gulli Gudmundsson(b), Jasper van Hulten(ds)

2017年5月16日 (火)

Avishai CohenによるECM第2作もいい出来である。

"Cross My Palm with Silver" Avishai Cohen(ECM)

_20170514Avisha CohenがECMからアルバム"Into the Silence"をリリースしたことには驚かされたが,ECM的なサウンドになっていたのにも驚かされたのが昨年の早春のことである。それから約1年強のインターバルでアルバムがリリースされることは,Avisha CohenがManfred Eicherの審美眼に適ったってことだろうが,今回もECM的な魅力に満ちたアルバムとなっている。

そもそも私は,ラッパのワンホーンという編成が結構好きなので,それだけでもポイントが高いが,この静謐な中にも,相応のダイナミズムを共存させるAvishai Cohenのトランペットの響きには,心惹かれてしまう。こうした響きは,以前であれば,Thomaz Stankoあたりがこういう音を出していたかなぁなんて気もするが,最近彼のアルバムも聞いていないので,正しいかは自信がない(苦笑)。

それはさておき,ここでのAvishai Cohenのトランペットの響きが何とも魅力的に捉えられている。よくよく見れば,これもAaron Parksの新作同様,フランス南部にあるPernes-les-Fontainesという都市の,Studios Ls Buissonneなるスタジオで,Gerald de HaroとNicolas Baillardのコンビのエンジニアリングによって録音されている。ということは,今後はこのフォーメーションがECMの録音でも増えていくということなのかもしれないが,今回も見事なまでにECM的サウンドである。

Avisha Cohenを支える3人も,出過ぎたところなく,バックアップに徹している感覚もあるが,もし,Nasheet Waitsがバンバン叩いていたら,こういうサウンドにはなりえない。Fred HerschともやっていたWaitsのことである。ちゃんとわかっているってことだろう。全編を聞いても,一貫性が保たれていて,これはやっぱりよくできていると思う。星★★★★☆。

YouTubeに本作の予告編のような映像がアップされていたので,貼り付けておこう。映像で見るとまた別の印象を与えるねぇ。

Recorded in September 2016

Personnel: Avishai Cohen(tp),Yonathan Avishai(p), Barak Mori(b), Nasheet Waits(ds)

2017年5月15日 (月)

日野元彦の"Sailing Stone":このアルバムが出た頃は驚いたものだ。

"Sailing Stone" 日野元彦(Fun House)

_20170506_3主題の通りである。これは確かジャズ喫茶で聞かせてもらって,一発でまいってしまった記憶がある。まずはメンツである。Dave LiebmanにMike Sternが参加している。そして,更に驚いたのがRolling Stonesの曲を4曲も演奏しているではないか。

このアルバムを購入した頃には,私はMike Sternの結構なファンになっていたはずだが,ここでの演奏を聞いてもまたまた痺れてしまったのを覚えている。例えば,"(I Can't Get No) Satisfaction"ではゆったりとしたテンポで演奏されるのだが,そこに現れるマイキーのソロの魅力的なことよ。これぞマイキーって感じなのである。正直言ってしまえば,私がこのアルバムを購入したのは,このマイキーのソロあるがゆえというところは否定できない。ギターとしてはもう一人,Mike Mullerという人も参加しているが,ソロはほぼマイキーの独壇場である。"Angie"なんて痺れるわ~(笑)。

それにしても,凄いメンツである。ベースにSteve Swallowを据え,オルガンをKaren Mantlerに弾かせるって,どういうセンスだろうか?もちろんいい意味でだが,この編成には正直驚かされる。

まぁ,曲によって,イマイチな感じがないわけではないが,私としてはマイキーのギター,Liebmanのサックスと,それを比較的静かにプッシュする日野元彦が聞けるだけで満足度が高い。実のところ,これを聞くのも久しぶりだった訳だが,マイキーのギターは本当に効いていたことを再確認した。そして,日野元彦の兄貴,日野皓正がStonesの"Lady Jane"に1曲だけ客演するが,これが素晴らしいバラッドになっているのは特筆もの。全体を通して聞けば,星★★★★には十分値する。

こうなったら,Led Zeppelinの曲もやった"It's There"も聞くとするか。

Recorded on November 23-26, 1991

Personnel: 日野元彦(ds),Dave Liebman(ts, ss), Mike Stern(g), Mike Muller(g), Karen Mantler(org, hca), Steve Swallow(b), 日野皓正(cor)

2017年5月14日 (日)

どうやってゲットしたか記憶が曖昧なMMW(笑)。

"Electric Tonic: July 4, 1998" Medeski Martin & Wood(自主制作盤)

Electric_tonicMedeski Martin & Woodは"Tonic"というアコースティックのアルバムをBlue Noteレーベルからリリースしているが,本作はそれに先立ってTonicに出演した時に,エレクトリック・セットで録音されたもの。確かMM&WのWebサイトで入手したように思うのだが,MM&Wの大したファンでもない私がどうしてこれを入手しようと思ったのかは記憶が曖昧である(爆)。おそらく,入手が難しくなりそうだとのせこい感覚で買ったに違いない。

そもそも,私はMM&Wの音楽に大した興味があるわけではなく,あくまでもJohn Scofieldの"A Go Go"からのつながりに過ぎない。MSM&Wの"Out Louder"も買ったものの,実はあんまりぴんときていなかった。それでも"Tonic"は購入しているし,その流れで本作も買ったと思う。

さすが自主制作盤だけあって,ジャケの手作り感が顕著で,デジパックの表と裏にはステッカーを貼って体裁を整えたってところである。そこにも書かれているが,"100% Improvised Music"として演じられたこの演奏は,まぁ面白いと言えば面白いんだが,正直言って何度も聞きたくなるようなものではなく,あくまでもドキュメントとして捉えた方がよい作品である。"A Go Go"をベースに考える私のようなリスナーとしては,もう少しアーシーでファンク的なところがないとやっぱり厳しいってところである。ってことで,星★★★ぐらいにしておこう。

尚,Tonicは2007年にクローズしてしまったが,その路線はJohn ZornがArtistic Directorを務めるThe Stoneに引き継がれたってところだろう。

Recoded Live at Tonic on July 4, 1998

Personnel: John Medeski(org), Billy Martin(ds, perc), Chris Wood(b)

これも久しぶりのPaul Chambers

"Paul Chambers Quintet" Paul Chambers(Blue Note)

_20170506_2_2昨日,Oscar Pettifordを取り上げたので,その勢いで(笑)Paul Chambersである。Paul Chambersと言えば,私がジャズを聞き始めた最初期に"Bass on Top"を購入したこともあって,"Bass on Top"は結構な回数を聞いている。しかし,中古でゲットし,一軍の棚に収まっている本作については,そんなにプレイバックの機会が多いわけではない。しかし,久々に聞いてみて,ジャズの快楽ってこういう感じだよなぁなんて思っていた私である。

"Bass on Top"はPaul Chambersの代表作とは思うが,本作はDonald ByrdとClifford Jordanの2管が加わることにより,"Bass on Top"よりもBlue Noteレーベル的なサウンドになっていると言ってよい。また,ここでは,アルコ・ソロもあるものの,どちらかと言えば,ピチカート主体で野太い音を聞かせるPaul Chambersのベースが楽しめる。

プログラムとしても,スタンダード2曲,Paul Chambersのオリジナル2曲にBenny Golsonの2曲を加えるという魅力的なもの。演奏は快調そのものであり,突飛なところはないとしても,ジャズってのはこういうもんだと言いたくなるような演奏が収められている。

また,本作にはTommy FlanaganとElvin Jonesという,当時のJ.J. Johnson Quintetの同僚二人が参加していることのポイントが高いが,Flanaganの安定感抜群のピアノに,Elvin Jonesのスティックもブラシも素晴らしいドラミングを聞かされては,心地よさが更に増すと言ってもよい。ElvinとしてはFlanaganの"Overseas",あるいはJ.J.の"Dial J.J.5"とほぼ同時期の演奏と言えるだろうが,Coltraneとの演奏よりは抑制されてはいるものの,演奏をドライブさせる推進力は見事なものである。録音当時,Elvinは29歳だったので,若手ってわけではないが,既に完成されていることは言うまでもない。

いずれにしても,このBlue Noteらしさに溢れた演奏を聞いていて,本当に心地よさを覚えていた私である。こういう演奏を聞いて,嫌いだって人はいないだろうとさえ思ってしまうような作品。星★★★★☆。

こういうことだから,ちゃんと手持ちのアルバムは機会を見つけて聞かねばならんということを改めて感じさせてもらった。

Recorded on May 19, 1957

Personnel: Paul Chambers(b), Donald Byrd(tp), Cliff Jordan(ts), Tommy Flanagan(p), Elvin Jones(ds)

2017年5月13日 (土)

Oscar Pettiford:滅多に聞かないアルバムだなぁ。

"Oscar Pettiford Volume 2(Another One)" Oscar Pettiford(Bethlehem)

_20170506しょっちゅう同じようなことを書いているが,保有はしていても,滅多にプレイバックすることがないアルバムは結構あって,それらもちゃんと聞かないといかんという気持ちはあるものの,さてどれからと思ってしまうのも事実である。本作も「あまり聞かない」方の代表(苦笑)。

ジャケには"Volume 2"と書かれているが,ライナーにはBethlehemにおける第3作という表記もあり,一体どうなってんねん?と突っ込みたくなるが,まぁそれはさておきである。おそらくは前2作は10インチ盤としての発売だったので,LPフォームとしては"Volume 2"ということだろうと想像する。

本作はオクテット編成で,アレンジもしっかりされている作品で,久しぶりに聞いてみると,ハードバップ的と言うよりも,ウエスト・コースト的な感覚もあって「へぇ~」と思ってしまった。それぐらい聞いていなかったということである(爆)。ここでのオクテットはCafe Bohemiaでレギュラーで演奏していたらしいが,いつもこんな感じだったというわけではないようには思える。どちらかというと"Noble"な演奏ぶりである。

Oscar Pettifordという人は,いろいろな人のバックでも演奏していて,レコーディングも多いはずだが,リーダー作となると,"In Hi-Fi"あたりが一番著名だろうか。本作はその次ぐらいに知られているって感じだろうが,チェロでソロを取ったりするのも,当時としては面白い試みだったんだろうなぁなんて思う。また,Pettifordの一番有名なオリジナルであろう,"Bohemia After Dark"もやっているが,これも落ち着いた感じの演奏になっているのがユニークに聞こえる。ってことで,たまにはこういうのもいいねぇってことで,星★★★★。

尚,ここでピアノを弾いているDon Abneyは日本にも在住していたそうだ。へぇ~。

それにしても,ジャズを感じさせるジャケだよねぇ。

Recorded on August 12, 1955

Personnel: Oscar Pettiford(b, cello), Donald Byrd(tp), Ernie Royal(tp), Bob Brookmeyer(tb), Gigi Gryce(as, cl), Jerome Richardson(ts, cl, fl), Don Abney(p), Ossie Johnson(ds)

2017年5月12日 (金)

"Virtuoso":このアルバムも久しぶり過ぎていつ以来なのかわからない。

"Virtuoso" Joe Pass (Pablo)

Joe_pass私はこのアルバムをジャズを聞き始めてまだ間もない頃に買っている。その時の感想は「よくわからん」というものだったのが正直なところである。ギターのテクニックとしては凄くうまいんだろうなぁってのは感じていたものの,ここに収録されている大スタンダード曲(1曲だけJoe Passのオリジナル・ブルーズが入っているが...)もほとんど,原メロディすらちゃんと認識できていない身にとっては,これはちょっと背伸びが過ぎたかもしれない。今となっては,このアルバムは原曲を認識した上で聞かないと,その魅力は多分掴み切れないと思える。今ならば,「ほぉ~,そうやる?」みたいな感想も出てくると思えるが,当時の私では到底そんな感慨すらなかった。

そして,もう一つ,当時の私にとって違和感があったとすれば,ほとんどの曲で,多少の増幅はあっても,ギターの生音に近い音で録音されていることだろう。電気を通して,いかにもジャズ・ギターっていう音がするのは"Here's That Rainy Day"ぐらいなのである。言い訳がましいかもしれないが,キャリア浅かりし私が,なんとなく「所謂」ジャズ・ギターとイメージが違うって思うのも無理はないのである。更に,増幅した音を拾っている訳ではないので,いろいろなノイズ(例えば,ボディに触れる音とか)も拾ってしまうところに,何とも言えない違和感があったのも事実である。今にして思えば,無知とは恐ろしいが,ティーンエイジャーのジャズに関する経験も浅い中ではそういうこともあったということである。

久しぶりに本作を聞いてみて思ったのは,ソロ・ギターでアルバムを一枚吹き込んでしまうってのは,もの凄くチャレンジングだったろうなぁってことである。今となっては,相応の名盤として認識されているとは言え,これがリリースされた時,多くのリスナーはどう思ったのかってのは非常に興味深い。ムーディな感覚やスウィンギーな感覚が同居しているが,これだけやってしまうJoe Passも凄ければ,やらせてしまうNorman Granzも大胆だったなぁと言わざるをえない。

だが,正直に言ってしまえば,本作にケチをつけるつもりはないが,こういう演奏はLPのA面,B面というかたちで聞くのが適切だと思える。CDとして1枚これを聞き続けるっていうのは,どうしても満腹感が勝るような気がする。Joe Passの業績と革新的なアルバムだったということは評価できても,アルバムとしては星★★★★ぐらいでいいと思う。

Recorded on August 28, 1973

Personnel: Joe Pass(g)

2017年5月11日 (木)

Stan Getzの"The Master":今や簡単に手に入るが,ずっと廃盤状態だったんだよねぇ。

"The Master" Stan Getz(Columbia)

_20170504またまたStan Getzである。このアルバムはそもそも1975年に録音されながら,リリースされたのは1982年という,お蔵入りアルバムと言ってよいような作品である。まぁ,当時はフュージョン全盛期と言ってよいから,こういったストレートなアルバムをリリースしても売れないという判断もあったかもしれないが,実はなかなか快調なGetzを収めた作品である。

録音からリリースされるまで時間が掛かっただけでなく,このアルバムは,実は結構見つけるのが難しい時期が長かったように思う。だから,私はGetzのColumbiaのコンプリート・ボックスに本作が入ってリリースされた時に,速攻でゲットしたのだが,今や廉価盤でも簡単に手に入るのだからいい時代である。

Stan Getzはリリシズムを感じさせるソロ・フレーズやソフトな音色が一つの個性とも考えられるが,もちろんそれだけの人ではなく,ハード・ドライヴィングな演奏もやろうと思えば,当然やれる。本作もバラッドは"Lover Man"1曲に留め,ハードなStan Getzのブローイングが楽しめる作品である。突出したところはないとしても,絶対平均点は上回るGetzらしい作品という感じであるが,珍しいのはRalph Towner作の"Raven's Wood"のような曲をやっていることだろうか。そうした曲への目配りが聞いているところが,Getzの審美眼と言ってもよいと思う。

まぁ,Getzにしてみれば,一丁上がりみたいな感じで作れてしまうアルバムかもしれないが,それでもこのクォリティを保っているなら文句はないってところ。星★★★★。

Recorded on October 1, 1975

Personnel: Stan Getz(ts), Albert Dailey(p), Clint Houston(b), Billy Hart(ds)

2017年5月10日 (水)

Stan Getzが好きだとか言いながら,あまり記事は書いてないってことで,今日は"Sweet Rain"。

"Sweet Rain" Stan Getz(Verve)

Sweet_rain私はなんだかんだと言って,Stan Getzが好きだとこのブログにも書きながら,未発表音源などは記事にしつつも,Getzの名アルバム群については大して記事にしていない。振り返ってみれば,"Stan Getz Plays","Getz / Gilberto","Cool Velvet",そして"In Stockholm"ぐらいしかアップしていない。しかし,結構いろんな機会でプレイバックはしていることからすると,記事が少な過ぎるのだと思う。ってことで,今日は超名盤とは言えないが,捨て難い作品として本作をチョイスである。

本作のポイントはMiles Davisのバンドに参加する前のChick Coreaが参加していることに尽きると思うが,Chick Coreaのオリジナル"Litha"と"Windows"を演奏していることも大きな要素となっている。その後,GetzとChickは後年"Captain Marvel"をリリースし,モントルーでもライブで演奏をしているので,これが一回限りのことではないが,この頃はまだChick Coreaも新人に毛の生えた程度ということで,Getzは有能な新人にチャンスを与え,Chickはその期待に応えるべく助演に徹しているという感じか。"Captain Marvel"は”Stan Getz Plays Chick Corea"みたいなものだから,完全にChick Coreaの位置づけが違うのである。

Getzはいつもの通りの吹きっぷりということでもいいと思うが,Chick Coreaのオリジナルという新レパートリーを得ても,何も変わらないというのが,GetzのGetzたる所以である(きっぱり)。ちょっとGrady Tateが叩き過ぎた感じがしないわけでもないが,全体を通して聞けば,これはやはりよくできたアルバムと評価すべきであろう。私としては,LPであればB面の方をより高く評価したい。星★★★★☆。

Recorded on March 21 & 30, 1967

Personnel: Stan Getz(ts), Chick Corea(p), Ron Carter(b), Grady Tate(ds)

2017年5月 9日 (火)

Michael Formanekの"Small Places":これも買ってからほとんど聞いてなかったかもなぁ。

"Small Places" Michael Formanek (ECM)

Small_placesMichael Formanekというベーシストは,Fred Herschとも共演しているので,比較的コンベンショナルなセッティングでも対応可能な人であるが,どちらかと言えば,ハイブラウなバンドでの演奏が多い印象が多い。このECMのアルバムでも,Tim Berne, Craig TabornにGerald Cleaverというかなり尖ったメンツであるから,音の方は推して知るべしであった(笑)。

大体,予想がついてしまうメンツということは,ちゃんとプレイバックしたのかどうかも記憶が曖昧な私だが,いずれにしても,久しぶりにプレイバックしてみて(初めてではないはずだ...),やっぱりねぇという音である。一言で言えば,ハイブラウ。フリーと伝統の狭間を行く音楽。曲は全てリーダーのオリジナル。

こういう音楽の難しいところは,違うアルバムでも,結構同じような演奏に出くわすことがあって,どれがどれだかわからなくなることである(苦笑)。ちゃんと聴き分けができるレベルまでちゃんと聴けよというお叱りを受けそうだが,やはり昔の音楽との接し方とは変わってしまったところがあり,よほどのことがないと,同じアルバムを何度もプレイバックするということは少ない。だから,このアルバムも,例えば,ほかのTim Berneのアルバムと同じように感じてしまうところもあるのが事実だ。

まぁ,こういう音楽もECMの特徴と言ってよいだろうが,その一方で,決して耳に優しい音楽ではないから,この手の音楽が好きなリスナーはさておき,一般のリスナーにはかなり厳しい音源だと言ってもよいだろう。告白してしまえば,私はこの記事を書くためにプレイバックしていて,途中で居眠りしてしまったのだが,よくこれで寝られるねという考え方と,眠りに誘う音楽という考え方のどちらを取るかで,リスナーの音楽的嗜好がわかるかもしれない(爆)。ということで,嫌いではないとしても,これはしょっちゅう聞きたくなるアルバムではないというのが正直なところ。星★★★☆。

尚,Gerald Cleaverが弾いているShruti Boxっていうのは,ドローン効果を生むための楽器らしい。初めて聞いたなぁ(笑)。

Recorded in December 2011

Personnel: Michael Formanek(b), Tim Berne(as), Craig Taborn(p), Gerald Cleaver(ds, shruti box)

2017年5月 8日 (月)

ECMからクリポタの新作がリリース。これが実によい。

"The Dreamer Is the Dream" Chris Potter(ECM)

The_dreamer_is_the_dreamECMレーベルからクリポタの新作がリリースされた。"The Sirens","Imaginery Cities"に続く第3作はクァルテット編成である。振り返ってみれば,ECMからクリポタがアルバムを出すと聞いた時に,Undergroundで聞かせるようなイケイケ感と,ECMのレーベル・カラーが合わないのではないかと思わせたのは,"The Sirens"の記事をアップした時にも書いた(記事はこちら)。しかし,ECMの総帥,Manfred Eicherが評価したのは,激しくブロウするクリポタというよりも,トータルなミュージシャンとしてのクリポタだと思わせた。

今回の新作においても,冒頭の"Heart in Hand"から,非常にメランコリックな響きに満ちている。しかし,James Farberの見事なエンジニアリングもあって,クリポタの本質と言うべき,サックスの音色が捉えられていると思える。2曲目の"Ilimba"においては,こちらが期待するようなクリポタ的なフレージングを聞かせて嬉しくなってしまうし,随所にクリポタらしさも表れている。その一方で"Memory And Desire"のような曲では,室内楽的な響きすら感じさせ,クリポタの音楽性の広さが聞いて取れる。

一聴して,クリポタ的イケイケ感は,それほど強くないとしても,アルバム全体を通して聞いてみると,これは実によくできていると思ってしまうようなアルバムである。この感覚,ここにも参加しているJoe Martinの2009年作"Not by Chance"を思い出させる(記事はこちら)。本作のメンツは"Not by Chance"のピアノをBrad MehldauからDavid Virallesに代えたものだが,一聴しただけでは地味に聞こえるのだが,"Not by Chance"のじわじわ来るよさと同じような感じを思い出させる。

いずれにしても,クリポタのミュージシャンとしてしての質の高さを十二分に捉えたアルバムとして,私は本作を高く評価したい。ECMのアルバム前2作もよくできていたと思うが,静的な部分とダイナミズムを兼ね備えた作品として,私はこれが一番いいように思う。ということで,クリポタにはついつい甘くなり,星★★★★★。

尚,クリポタのクレジットにあるilimbaというのは,カリンバに似たタンザニアの民族楽器らしい。へぇ~(笑)。

Recorded in June 2016

Personnel: Chris Potter(ts, ss, b-cl, cl, fl, ilimba, samples), David Viralles(p, celeste), Joe Martin(b), Marcus Gilmore(ds, perc)

ついでながら,この演奏よりもっと激しいクリポタをご所望の皆さんのために,Snarky Puppyのライブに乱入したクリポタの映像を貼り付けておこう。画像が揺れるのがちょいと気持ち悪いが,これは激しいでっせ(笑)。

2017年5月 7日 (日)

Aaron ParksのECM第2作は何とも美的。

"Find the Way" Aaron Parks (ECM)

Find_the_wayAaron ParksがECMでソロ作"Arborescence"をリリースしてからやく3年半,ついにその第2作がデリバリーされたので,早速聞いてみた。今回はピアノ・トリオ編成であるが,ベースのBen Streetはさておき,ドラムスがBilly Hartというのがやや異色に思える。と同時に,私にとってはちょっとそれが不安要因でもあった。

私がAaron Parksのソロ・アルバムに期待するのは,繊細でリリカルで美的なピアノである。そうした観点では,全編を通じて,期待通りの音が聞こえてくる。ただ,冒頭の"Adrift"に顕著なのだが,Billy Hartがちょっと叩き過ぎという感じがしないわけではない。これがミキシングのせいというわけではないと思うが,繊細なピアノには,もう少し繊細な叩き方があってもよいと思わせる。正直言って,Aaron Parksに合うと思えるのは,パワーもありながら,繊細さも打ち出せるEric HarlandやKendrick Scottあたりでないかと思う。全体を通じて聞けば,Billy Hartも楚々としたドラミングを聞かせているとは思うが,どうしても1曲目の印象が残ってしまうのである。5曲目,"The Storyteller"でも同じような感覚を覚えるのも事実。

しかし,そうした点を除けば,Aaron Parksの書くオリジナルの美しさ,紡ぎだされるソロ・フレーズのリリカルさを含めて大いに楽しめる作品となっている。欧州的なピアノとは違うリリカルさ(明らかに違うのだ)をECMで聞かせるところに,この人の力量を感じるとともに,本当に美的なピアノを弾く人だと改めて感心させられた。前回来日時には,ホーン入りのアルバムを吹き込みたいなんて言っていたが,総帥Manfred Eicherとしても,トリオとしての美学を優先したってところだろう。いずれにしても,この演奏,私の好物と言ってよいサウンドである。星★★★★☆。半星引いたのは上述のBilly Hartに対するちょっとした違和感ゆえ。

尚,本作は,フランス南部にあるPernes-les-Fontainesという都市の,Studios Ls Buissonneなるスタジオで録音され,エンジニアもGerald de HaroとNicolas Baillardという人が務めている。これって私が知る限りでは,ECMでは初めて,あるいは珍しいパターンなのではないかと思うが,それでも完全なECMサウンドになっているのがEicherマジックか(笑)。

このアルバムを聞いて,Aaron Parks Trioでの来日を期待するリスナーは多いはずである。私ももちろんその一人ってことで...。

Recorded in October 2015

Personnel: Aaron Parks(p), Ben Street(b), Billy Hart(ds)

2017年5月 6日 (土)

GWに見た2本目は「ムーンライト」。

「ムーンライト("Moonlight")」('16,米,A24/Plan B)

Moonlight監督:Barry Jenkins

出演:Alex R. Hibbert, Ashton Sanders,Trevante Rhodes,Mahershala Ali, Naomie Harris,Janelle Monáe, André Holland

今年のオスカーでは,「ラ・ラ・ランド」が作品賞でも本命視されていて,作品賞の発表において,誤って「ラ・ラ・ランド」がコールされるという珍事が起きたのは記憶に新しい。実際に作品賞を受賞したのがこの映画だったわけだが,これは非常に重い映画であり,正直言って,オスカー受賞という要素がなければ,日本で公開されていたかどうかも微妙な映画である。

Chironという主人公の小学生,ハイスクール,およびその後という年代記というストーリーを見て,ようやくこの映画のポスターの意味を理解した私だったが,そこには麻薬の売人といういかにもマイアミらしい職業が出てくるとともに,いじめやLGBTという要素を絡めて,Chironの変遷が描かれる。それは決して単純な「成長」の物語ではないところが重苦しい。ある意味,救いのない映画とも言え,こうした映画はそれなりの覚悟がないと見られないというのが実感である。そういう意味では先日見た「ワイルド・スピード ICE BREAK」の対極にあるような映画だが,こうした映画の製作にかかわるBrad Pittの社会派的な部分炸裂である。

見終わって,正直言ってどっと疲れが出るタイプの映画であるが,この映画がオスカーのようなある意味権威主義的イベントで,作品賞を受賞したことは,大きな意義はある。白人偏重に抗議の声が上がったのが昨年で,舌の根も乾かぬうちに大きな転換を示すということで,禊ぎをしたのだというシニカルな見方も可能だろう。また,LGBTを真正面ではなく,側面から描いたとは言え,こうしたテーマの映画を評価するという感覚は,アカデミーにはこれまでは感じられなかったはずである。「ラ・ラ・ランド」の全面勝利に与するよりも,本作を作品賞に推すことで,バランスを取っただけだと言われても仕方がない部分を感じていた私である。

そう言った皮肉な見方もできるとしても,この映画のシナリオは脚色賞に値する優れた出来だし,出番は短いものの,助演男優賞に輝いたMahershala Aliは強く印象に残るのも事実である。映画としては確かによくできている。批評家の評価を合算したMetascoreが99という驚異的な数字になるのもまぁわかるのだが,それでもこの映画は厳しくも辛いものであり,そして重い。いい映画だと認めた上で,これをもう一度見る気になるかというと,そうではないというのが正直なところである。

尚,下の写真はほぼラスト・シーンに近いものであるが,これが原作である"In Moonlight Black Boys Look Blue"を意識した表現であることは一目瞭然であろう。

私としては星★★★★だが,これが批評家と一般的な人間の違いだろうな(苦笑)。

Moonligh_last_scene

2017年5月 5日 (金)

NHØPの天才を思い知らされるSahib Shihab盤。

"Conversations" Sahib Shihab (Black Lion)

Conversations_2毎度お馴染み新橋のテナーの聖地,Bar D2で飲んだくれているときに,マスターに何を掛けますか?と問われ,Sahib Shihabですかねぇと言ったらプレイバックされたのが本作である。その場でポチっとしてしまったのはいつものこと(苦笑)だが,このアルバム,私を購入に走らせたのはSahib Shihabではない。もちろん,Sahib Shihabはいつもながらの渋さではあるのだが,それよりも何よりも強烈だったのがNiels-Henning Ørsted Pedersen(長いので,以下NHØPと略す)のベースだったのである。

このアルバムが録音された時,NHØPは若干17歳だったはずである。しかし,ここに収められた演奏を聞いて,誰が17歳の演奏と想像できようか?今から四半世紀以上前に,NYCのBradley'sで初めてChristian McBrideを見た時も,彼はティーンエイジャーだったはずだが,その時にも驚いた私である。そんな私が生でこの演奏に接していたらぶっ飛んでいたこと間違いなしなのである。音がデカい。音が太い。フレーズはカッコいいしい,アーティキュレーションは完璧って,どういう暮らしをしたらこんなベースが弾けるのか?そもそもベースを習い始めたのが13歳で,翌年にはプロとして演奏ってのも信じがたいが,ここでのベースを聞いていれば,納得せざるをえない天才である。

タイトル・トラックはPart1~3で構成される組曲風であるが,そもそもPart 1から様々な曲調が現れてくるのだが,このメンツにこういう曲調が合っているかどうかは別にしても,この演奏は冒頭のNHØPのベースのイントロからして,極めて魅力的に響く。この音を聞いて何にも感じないのであれば,ジャズと相性がよくないと言いたくなるようにぞくぞくさせるように痺れる音である。そんな感じで,全編,私はNHØPのベースに注意が向いてしまうような感じである。

いやはやこれはやっぱり凄い。後年に渡って活躍するNHØPであるが,若い頃からこんな演奏をしていたのねぇって考えると感慨深い。しかもそれがコペンハーゲンの地で繰り広げられていたことを考えると,ますます興味深い。まぁ,本作が録音された年に公開された"Charade"なんかをやっているところに時代を感じさせるが,それはそれでご愛敬ってことで。アルバムとしては星★★★★ぐらいと思うが,NHØPのベースは間違いなく星★★★★★に値する。いやはや凄いですわ。

Recorded Live at Montmartre Jazzhuis on October 3, 1963

Personnel: Shaib Shihab(as, bs, ss, fl), Alan Botchinsky(fl-h), Ole Molin(g), Niels-Henning Ørsted Pedersen(b), Alex Riel(ds), Bjarne Rostvold(ds)

2017年5月 4日 (木)

懐かしの"Benny Rides Again"

"Benny Rides Again" Eddie Daniels & Gary Burton(GRP)

_20170429_2先頃引退を発表したGary Burtonであるが,一時期GRPレーベルに所属して,かなりコンテンポラリー感の強いアルバムをリリースしていたものである。だって,ホーンがBob Bergではテンション高くなるでしょう(笑)。そんなGary BurtonがGRPの10周年記念企画として,クラリネット/サックス奏者のEddie Danielsとリリースしたのが本作である。お題の通り,これはBenny Goodmanトリビュートと言ってよい作品である。

アルバムについて述べる前に,もう一人の主役であるEddie Danielsについてちょっと書いておこう。私が彼の名前を意識したのは,浪人中か,学生時代かに輸入盤屋をうろついていて見つけた"Morning Thunder"というアルバムでのことである。クラリネットでフュージョンをやってしまうという物珍しさもあって,買ってはみたものの,どうもしっくりこず,売却対象となってしまったのだが,YouTubeで聞いてみたら,冒頭の"Good Morning,Bahia"のイントロだけは今でも印象に残っていた(笑)。まぁ,それでも色物は色物ってことだったと思う。

そんなEddie Danielsはサックスも吹くが,ここではクラリネットに専念して,Benny Goodmanに捧げるということだが,そういうことになると,Gary BurtonはLionel Hamptonの役割ってことである。しかし,このアルバムが吹き込まれたのは1992年,しかもレーベルがGRPではストレートなトリビュートになる訳はないが,コンテンポラリーな感覚を持ちながらも,比較的オーセンティックな感覚も持ち合わせる演奏になっている。

このアルバムがリリースされた25年前(光陰矢の如し!)におけるBenny Goodmanの音楽の捉え方と,現在の捉え方では大きな違いもあると思うが,古き佳きスウィング・ジャズは今の人たちにはどのように感じられるのか非常に興味深い部分もあるが,上述の通り,本作はコンテンポラリーな感覚もあるので,古臭さは感じさせない。しかし,それでもこのゆったり感は今の時代のスピード感とは相容れないように感じるのは私だけだろうか。まぁ,私のようなオッサンにとっては,こういうのもありなのだが,たまに聞いているといいかもなぁと思ってしまった。と言いつつ,つい先日まで,このCDは実家に置いたままだったことは告白しておかねばならないが...(爆)。

ってことで,ちょっと甘めの星★★★★ぐらいってことにしておこう。Gary Burtonを聞くなら,これからでなくてよいが(笑)。

せっかくだから,Eddie Danielsの"Good Morning, Bahia"音源を貼り付けておこう

Recorded on January 14 & 15, 1992

Personnel: Eddie Daniels(cl), Gary Burton(vib), Mulgrew Miller(p), Marc Johnson(b), Peter Erskine(ds)

2017年5月 3日 (水)

Deodatoがオケと共演するという,いかにもな企画のアルバム

"Artistry" Deodato (MCA)

_20170429このブログにも何度か登場しているDeodatoである。私は彼のエレピが生み出すグルーブ感が好きなのだが,一昨年のどうしようもないライブを見せられて,今後は彼のアルバムはもうえぇわと思っている。そんな私でも,以前のアルバムまで手放す気はないのだが,そんな中で,中古でゲットしたまま,あまり聞いていないアルバムを取り出してきた。

これはCTIからMCAへ移籍後のアルバムだが,セントルイス交響楽団との共演ライブという,いかにもな企画のアルバム。Depdatoのアルバムは,ホーン・セクションは結構充実しているから,オケに期待されるのはストリングスってことになるだろうが,オケをフィーチャーした曲は"Farewell to a Friend"が準備されているが,ありがちな映画音楽,あるいはへなちょこなアダージェットのような響きで,別にこうしたサウンドを期待しているリスナーは多くないだろうと言いたくなる。まぁ,ライブ盤だから,こういうのもありってことだとは思うが,Deodato=グルーブだと思っている私のようなリスナーにとってはどうでもよい(きっぱり)。

だから,その次に"Super Strut"が演奏さえると,Deodatoかくあるべしと思ってしまうのである。クラシックのアダプテーションが多いDeodatoであるから,ここでも「なき王女のためのパヴァーヌ」もやっているが,そこでのストリングスの響きはよしとしても,オケと共演することによる相乗効果までは得られているとは到底言えない。セントルイス交響楽団と共演だから,"St. Louis Blues"もやっちゃいましたってのも,いかにも安易。

まぁ,そうは言いながら,Deodatoのサウンドは嫌いではないのだが,別にこれは持っていなくても問題なかろうと思える凡作と言ってよいだろう。正直言って,オケが邪魔なだけという,企画倒れ作。星★★☆。

Recorded Live at the Missisippi River Festival

Personnel: Eumir Deodato(key), John Tropea(g), John Giulino(b), Nick Remo(ds), Rubens Bassini(perc), John Eclert(tp), Larry Spencer(tp), Sam Burtis(tb), Robert Mintzer(fl, sax) with St. Louis Symphony Orchestra

2017年5月 2日 (火)

ジョンアバの"Timeless",若い頃はJan Hammerに反応してたいた私。

"Timeless" John Abercrombie (ECM)

Timeless今回も,ECM掘り起こし(笑)である。

私が高校生の頃だったと思うが,このアルバムについて耳にしたことがあった。まだECMレーベルの音楽になんの関心もない頃だったが,それは偏に,本作に参加しているJan Hammerのおかげである。

私が高校生の頃と言えば,私はジャズを聞き始めた頃で,まだ聞いている音楽の主体はロックであり,Jeff Beckのアルバムにしびれている頃である。具体的には"Blow by Blow"であったり,"Wired"であるわけだが,音楽好きの友人たちと話していて,本作の話になったはずである。なんてたって,"Wired"に参加のJan Hammerが入ったギタリストのアルバムである。若者が気になるのも仕方ない。しかし,当然のことだが,リーダー,ジョンアバも,Jack DeJohnetteも知らない頃である。無知とはある意味恐ろしいねぇ。

そんな本作を実際に耳にするまでは,結構時間が掛かったはずで,多分,ジャズ喫茶でも聞いたことはなく,自分で買って初めて聞いた感じだったのではないか。改めて,今回聞いてみて,冒頭のJam Hammerオリジナルの"Lungs"の冒頭こそは激しくやっているが,サウンド的にはそんな強烈ってわけではない。しかも,そうは言っても編成が編成だけに,少々時代を感じさせる部分があるのは事実である。特にジョンアバのギターのサウンドは,70年代っぽい音になっているのは,今となってはご愛敬。

本作が,ジョンアバにとってのECMでの初リーダー作(キャリア上もかもしれない...)のはずだが,それ以来40年以上,ECMの専属みたいになっているのだから,よほど総帥,Manfred Eicherに気に入られているんだと思う。まぁ,ここで披露されるジョンアバのオリジナルを聞けば,そういうのもうなずけるってところだろう。星★★★★。

Recorded on June 21 & 22, 1974

Personnel: John Abercrombie(g), Jan Hammer(org, synth, p), Jack DeJohnette(ds)

2017年5月 1日 (月)

久々に聞いた"Aparis"

"Aparis" Markus Stockhausen / Simon Stockhausen / Jo Thönes (ECM)

_20170426_2このアルバムを聞くのも久しぶりである。このメンツではもう1枚,”Despite the Fire-Fighters' Efforts"というアルバムもあるが,そっちも全然聞いてないしなぁ(苦笑)。

だが,今回,改めて聞いてみて,このアルバム,いい具合にフリーとファンクと静謐さをミックスさせていて非常にいいのではないかと思ってしまった。Stockhausen兄弟のうち,兄のMarkusは今でもECMに吹き込みを続けているが,弟SimonはECMからは離れてはいるものの,活動は継続しているようである。

このアルバムはSimon Stockhausenが弾くシンセサイザー,特にスラッピング・ベースのような音を出して,ファンク度を増す効果を生み出しているところに自然と身体が反応してしまう。そこにMarkus Stockhausenがエフェクターを駆使した音を乗せてくると,ECMらしからぬ展開を示す。その一方で,静謐さを見せる部分もあり,この辺りはECMらしさを感じさせる。しかし,これだけシンセサイザーを駆使した演奏というのは,やはりこのレーベルでは珍しいのではないかと思える。

いずれにしても,この響き,かなりプログレッシブな感覚も与えるが,そうした中で,牧歌的な5曲目"Rejoice"がアルバムの中では異色な響きを聞かせていて,逆に言えば,この曲が浮いている。私としては,こうした響きよりも,よりハイブラウな感覚で通した方が,アルバムのクォリティは上がったのではないかと思えるのだが,まぁ,曲の後半にはファンク度も高まるので,よしとしよう。

ECMとしては異色の作品と言ってもいいかもしれないが,時折ECMらしさも感じさせるこのサウンド,私は好きである。ちょっと甘いかなと思いつつ,星★★★★☆としてしまおう。

Recorded in August 1989

Personnel: Markus Stockhausen(tp, fl-h), Simon Stockhausen(synth, sax), Jo Thönes(ds)

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