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2014年10月13日 (月)

恥ずかしながら,板橋文夫の「渡良瀬」を初めて聞いた。

Photo 「渡良瀬」 板橋文夫(日本コロムビア)

このアルバムの世評が高いことは重々承知していたのだが,これまで接する機会に恵まれてこなかった(換言すれば,自発的に聞こうとしなかった)。暫く,廃盤状態にあったということもあるが,再発盤の値段も下がっていたので,買ってみるかってことでの購入と相成ったわけだが,これがすこぶる付きの素晴らしいアルバムであった。

最初の3曲は大スタンダードにDollar Brandのオリジナルをはさむというかたちで,その後に板橋のオリジナル4曲が配置されているが,このバランスがまずよい。冒頭の"Someday My Prince Will Come"のイントロを聞いただけでは,この曲だと認識することは難しいが,メロディ・ラインが現れて,それでつかみはOKという感じなのだ。更にDollar Brandの"Msunduza"がスピリチュアルな感覚と,山下洋輔的なフリーなアプローチを合体させてこれまたよい。続く"I Can't Get Started"はブルージーな感覚が素晴らしい。ここまででもいいのだが,板橋のオリジナル4曲に入って,これがまた更に痺れる出来である。

「利根」はいかにも日本的な音階を感じさせるものであり,一聴すると穐吉敏子的なものも感じさせるが,まさに利根川の流れを示すが如き,ゆったりしたメロディ・ラインから徐々に熱してくる感覚が魅力的に響く。ソロはMcCoy Tynerのようにも響くが,かなり日本的なMcCoyである(笑)。

ここまでが,LPで言えばA面に相当するはずだが,これだけでもいい作品であることはわかるとしても,私がLPを保有していたとすれば,B面ばかり聞いていたのではないかと想像させる部分がある。タイトル・トラック「渡良瀬」も最後に収められた"Goodbye"も,板橋文夫が森山威男ともやっているので,ある意味有名曲なのだが,この2曲の魅力は認めつつも,結構私がしびれてしまったのが,間に挟まれた"Miss Cann"だったのである。これが実に魅力的な曲で,どこかで聞いたような気になってしまうような気もするが,ついついのめり込んでしまう,そんな曲である。しかし,だからと言って前半4曲の魅力が下がるわけではなく,アルバムを一気に聞かせる魅力を持った作品だと言える。板橋オリジナルでB面を聞くのもよいが,A面の魅力も決してないがしろにしてはならないと思わせるのだ。これには正直まいった。ということで,今まで聞いてこなかったことを反省して星★★★★★。

まさに,何を今更言ってんねんと言われれば,返す言葉はないが,この歳になってこの音楽を聞いたとしても,全く聞かずに済ませることがなくてよかった~と思っている私である。いずれにしても,これって傑作だと思った私である。たまたまであるが,このアルバムが録音されたのが,今から33年前の昨日と今日だということにも因果を感じてしまう。

Recorded on October 12 & 13, 1981

Personnel: 板橋文夫(p)

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コメント

おはようございます。

このアルバム(LP)は結構時間が掛かりましたが数ヶ月前に入手しました。

実際にあるお宅で聴かせて貰い感銘したのです(システムは比べるべくもありませんが...)。

あのぶっとい腕で叩く音は想像とは裏腹に繊細かつ豪快、緩急自在で楽しめますね。

限定盤なのでこう言うモノはタイミングを逸したら入手困難になりますのでホンと情報収集しかありませんね。

CDはそうでもないのでしたっけ。

EVAさん,こんにちは。

おっしゃる通り,板橋文夫の腕力を感じさせるアルバムですよね。CDについては,限定盤ってことはないみたいです。いずれにしても,欲しいものは見つけたら即買うという判断を誤って,買い損ねたものなんていくらでもありますので,今回はその気になった瞬間発注しました(笑)。

はじめまして

「お気楽ジャズ・ファンの雑記帳」というブログを書いているazuminoといいます。最近、よく貴ブログを読んでいます。興味深い記事が多くて、勉強になります。

この「渡良瀬」は、好きなアルバムで、自分のブログでも取り上げました。CDでの復刻が有難かった1枚です。中年音楽狂さんが書かれている通りの内容だと思います。

またお邪魔させてください。よろしくお願いします。

azuminoさん,こんばんは。そして,はじめまして。コメントありがとうございます。このように拙いブログでお恥ずかしい限りです。

その一方で,同じような感覚をお持ちの方々と共感し合えるのもブログをやっているからこそだと思います。だから続けねばって考えるわけですが,どちらかというと,私の場合はこれでストレスの発散をしてるって話も...。

ともあれ,こんなブログですが,今後ともよろしくお願い致します。貴ブログにもお邪魔させて頂きます。

この記事読んで、確かにあったけど聴いてないなあ、と気になった次第。かなり高価なので出物を待ってLPを買っちまいました。それでも2枚分の価格。DUは3枚分! 最近の日本のジャズのLPの高騰には驚きます。

録音よし、内容はB面が仰せの感触で楽しめました。既視感ならぬ既聴感が日本のジャズの魅力ですが(文部省唱歌が通奏低音のように、奏者と聴き手の間に介在している)、まさにそんな一枚。この当時はマッコイの影響が強いんだなあ、と、これも愛嬌ですね。

kenさん,こんにちは。LP熱いまだ冷めやらずというところでしょうか。いつも貴ブログを拝見していて,凄いなぁと思っています。私はLP鑑賞の環境が現在整っていないため,もっぱらCDになってしまっていますねぇ。ただ,CDもとんでもない値付けをしているものもあって,なんでやねんと思ってしまいます。

それはさておきとして,本作をちゃんと聞くまであまりにも時間が掛かってしまったわけですが,今更ながらであっても,聞いてよかったと思えるアルバムでした。おっしゃる通り既聴感に溢れていつつ,時代を感じさせる部分も私たちの郷愁を誘うのかもしれませんね。

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