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2014年3月 1日 (土)

Mehliana:これはBrad Mehldauからの挑戦状か?

Mehlianatamingthedragon "Mehliana: Taming the Dragon" Brad Mehldau & Mark Guiliana(Nonesuch)

これまでにもBrad Mehldauのオフィシャル・サイトで音源が公開されたり,ブート音源も出ていたMehlianaとしての公式盤が遂にリリースされた。私は昨年の段階でブート音源を聞いて,その時の紹介記事に「アルバム・リリースの際には問題作と言われること必至だろうなぁ」なんて書いている(記事はこちら)が,まさにこれはBrad Mehldauの楽歴を振り返ってみても,これ以上の問題作はないだろうと思える。"Largo"が出た頃も問題作と言われたが,この作品の方が,一般的なリスナーに与えるインパクトははるかに強いだろう。特にBrad Mehldauのピアノが好きだという人たちにとっては,どのように感じられるのか興味深い。主題にも書いたが,これは非常に挑戦的なアルバムである。一般的なBrad Mehldauのイメージを崩し,突き破るものなのだから,とにかくびっくりする人が多いはずである。

昨年の記事の繰り返しになるが,私はブートを聞いて,『六本木のクラブ(アクセントなしで呼ばれる「クラブ」の方であって,「ク」にアクセントのあるクラブではない)あたりで流れていても違和感がないかなという感覚である。あるいはMehldauから繰り出されるフレージングはプログレッシブ・ロック的と言ってもよい』なんて書いている。こうした感覚は今,改めてこのアルバムを聞いても同じで,更に加えれば,これはNYCのイースト・ヴィレッジ的な感覚が横溢している。この尖り具合,まさにダウンタウン・イーストの香りがするのだ。

私はBrad Mehldauがコンベンショナルなジャズ・ピアニストだと思ったことはない。なぜならば,彼の選曲にはジャズ・ミュージシャンが取り上げそうにないロック系の人たちのものが含まれているし,ライブの場でも,Joe HenryやらJohn Mayer等ともライブの場で共演してしまうのである。これはフットワークの軽さだけで捉えられるものではなく,ロックも彼の音楽を構成する要素の一つであるということだと思う。そうした要素が,非常に尖ったかたちで表出されたのが本作だと言ってよいだろう。だからこそ,このアルバムを否定するのは簡単でも,そうしてしまってはMehldauの全体像を理解することができないように私は感じる。

本作の録音がいつ行われたのかはクレジットがないのでわからないが,おそらくはライブの場での共演を重ねながら,コンビネーションを熟成させていったものだと思う。彼らがNYCのSmokeで共演したのがほぼ2年前,ツアーを行っていたのが大体1年前になるが,本作の録音が先だったのか,後だったのかは気になるところではある。だが,本音を言ってしまえば,彼らの音楽はライブの場でこそより映えるような気がする。もちろん,レコーディングにおいても彼らの本質を捉えているとは思うが,ブート音源から想像される,「ライブの場で感じられたであろう」Spontaneityがやや希薄化しているようにも聞こえる。そうした点が,私の中でまだ整理がついていないのだが,それでもこれはBrad Mehldauが示したコンテンポラリー・ミュージックの一つの姿だと解釈することにしたい。Mehldauが最新のシンセサイザーを使っていないのは意図的なものであって,これもおそらくは実験的な精神に基づくものだと思う。

もちろん,これだけチャレンジングな音源である。これを何度も繰り返し聞けるかというと,ちょっと難しいかなぁというのが正直なところだが,それでもAmelia Earhartに捧げたであろう"Elegy for Amelia E."の美的な感覚はやっぱりMehldauはMehldauだと思わせる。私の中では,本作で最もフィット感が強かったのはこの曲である。これは是非,今後,アコースティック・ピアノのソロでも聞かせて欲しいなぁと思っている。その他の曲では"Just Call Me Nige"が刺激的でカッコいい。いいねぇ。

ということで,本音としてはこの作品の評価は難しいところなのだが,これを避けて通ってはならないということで,注目度を高めるためにも星★★★★☆としてしまおう。例えば,Pat Methenyには"Zero Tolerance for Silence"なんていう超問題作があったが,あそこまでアバンギャルドではないし,ずっと聞き易いので念のため。ハウスとかテクノを聞いているリスナーには何の抵抗もなく受け入れられるのではないかと思える音楽である。また,ここで聞かれるシンセの響きは往時のプログレのようでもあり,そちらの筋のリスナーにもOKではなかろうか。逆に言えば,ジャズ原理主義者には決して受け入れることができないはずである(笑)。問題作ってのはまぁそういうもんだろう。

ところで,本作のリリース後のBrad Mehldauのライブのスケジュールは,レギュラー・トリオでの欧米ツアーなのだから,本作を「売る気あんのかい?」と言いたくもなるが,そういう人なんだろうねぇ。せっかくだから,彼らが本作の発売プロモーションでやったライブの時の写真(こちらはNew York Timesから拝借)もアップしておこう。だが,この時はアルバムの発売が延期になって,タイミング悪しってやつだったのだが...(苦笑)。

Personnel: Brad Mehldau(rhodes, synth, p, vo), Mark Guiliana(ds, electronics)

Mehliana_at_highline_ballroom

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コメント

はじめてCDを聴いた時は、70分超を一気に聴かせる、ということを書いたのですが、後になってちょっと長いかな、と首尾一貫しない感想を持ってしまいました。やはり個人的にはロック的な位置付けと思うこのアルバムの背景とかサウンドに戸惑いもあったのかもしれません。場合によっては自分のアルバムコメントのテコ入れを再度しなければかなあ、とも思います。全体的には私も好きな方なんですけれども。

TBさせていただきます。

めちゃくちゃすごかった。。
久しぶりにお腹の底から痺れたって感じ。
楽しすぎる。。。。
自分のブログにアップできる自信がないのですが、とりあえず、賛同のコメントいれます。笑


910さん,こんにちは。TBありがとうございます。

まぁ,これは問題作ですからねぇ。巷では否定的な論調の方が多いように感じます。それも仕方がないことで,イメージが崩れることに対しては,違和感をおぼえるのも当然ですから...。

しかし,私の場合,昔からBrad Mehldauの追っかけをしてきて,Mehlianaの演奏もブートで聞いていましたし,オフィシャル・サイトの音源も聞いていましたから,問題作であるという認識には変わりはなくても,音としては大体は想定内だったと思います。

これだけではなく,クラシック界の人たちとの共演もしてしまう越境型ミュージシャン,Brad Mehldauの真骨頂と捉えれば,私にはありうる流れだったと思います。

ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。

Suzuckさん,こんにちは。

なかなかこの音楽を評価する人が少ないところに,Suzuckさんのコメントは素晴らしい!私も手放しでよしとはしていませんが,これはこれで認めなければならないものだと思います。是非,そちらにも記事をアップして下さいね。

1曲目のTaming the Dragonで、自ら主題を説明していますから、とても分かり易い作品と思います。まさにPMでいうZero Tolerance for Silenceと同じ立ち位置の作品でしょうが、あれに比べれば、内容的に魅力あり過ぎでしょう。商業的にもファン層を広げ成功するんじゃないでしょうか?これまでもクラシック畑の共演など異なったジャンルの音楽に挑戦しているし違和感ありません。BM自身は衝撃作を作るというよりは、自分の中にあるいろいろな自分の一側面を出したにすぎないのだと思います。元・プログレファンの私には、とても馴染みやすかったです(笑)

カビゴンさん,こんばんは。

おっしゃる通り,本作はMehldauが「自分の一側面を出したにすぎない」というものだと思います。だからこそ,この人の頭の中はどうなっているのかということになってしまいます。本当に凄いミュージシャンですよ。

これもNonesuch通販でLP/CDセットを頼んだので、まだ届いていません(泣)。それでも、MP3のDLで聴いたのですが、予想通り◎。
彼のピアノって、響きの美しさに兎に角惹かれるのですが、ローズで同じような感触を狙っているようにも思われ、ローズ・フェチとしては参ってしまいました。

kenさん,続けておはようございます。こちらもTBありがとうございます。

これは一般的なMehldauファンには厳しいところがあるでしょうが,聞いている音楽の幅の広さによって,その受容度は変わってくるような気がします。いずれにしても,私にとっては,彼の音楽は幅広い音楽体験から生まれるものと思っていますし,使っているシンセがビンテージっぽいのも何らかの意図があって,それこそプログレへもオマージュ的なところもあったのかなぁなんて思います。

「パルスの快感」は私にとっては「夜のイースト・ヴィレッジで聞こえてくる音楽の快感」って感じでしょうかねぇ。

ということで,こちらも追ってTBさせて頂きます。

音楽狂さん、こんにちは。
コメント&リンクありがとうございました。この作品がメルドーのジャズ演奏を聞きたいファンやリスナーには挑戦的でしたね。土俵は違うけど、ニールヤングやU2もある意味そんな作品を作ってきたし、僕のようなロックから入ってきているファンはこの変化は、シチュエーションや求めるものが変えてきくことになって、様々なメルドーが楽しめてよかったです。
Google Bloggerのトラバ機能は今ひとつ通常のブログの使用と違うので、リンクを張らせて頂きます。
http://musicpromenade.blogspot.com/2014/03/brad-mehldau-mark-guiliana-mehliana.html

 中年音楽狂Toshiyaさん、こんにちは。
 勝手にTBさせて頂いて申し訳ありませんでした。メルドーとなるといろいろな期待がありますが、私も古くかってはどちらかというとプログレ系ロックからミュージックには入っていますのであまり今回のアルバムは違和感なく、楽しく聴いているほうです。しかしメルドーの過去の世界からは少々戸惑ったファンも多かったと言うことでしょうね。それだけ話題も多く、これはメルドーの能力を生かした作戦かも?、なんてふと思ったりもしますが・・・・・。しかし映像を観るとやはり左の演奏操作も凄いですね。

とっつぁんさん,こんばんは。

私も音楽はロックからでしたから全然抵抗ないんです。しかも若い頃はプログレ好きでしたし。結局,Mehldauの音楽というのはトリオが基本にあるとしても,いろいろなところを自由に行き来しているわけですよね。私はそれでいいと思っていますし,それがMehldauの本質ですから。

風呂井戸さん,こんばんは。貴ブログはリンクも張らせて頂いていますから,TBも無条件に公開させて頂きました。

プログレ的なところはシンセの使い方から非常に強く感じました。私も元来のプログレ好きなので,Mehldauがやっているからと言って全く抵抗はなかったです。イメージを壊すことも時には必要ですしね。

私はこうした活動に否定的なコメントを残す人は,クラシック的な活動も非とするのか非常に関心があります。音楽なんて自分の好みで聞けばいいのですが,少なくともミュージシャンが何を思ってそういう活動をしているかは理解した上で,否定してもらえばいいと思います。それらも立派なMehldauの側面ですが。もちろん,好き嫌いは別ですが(笑)。

閣下、、

これは、CDの内容もおもしろかったのですが、皆さんの思いがとても面白かったです。
面白すぎて、なかなか、、ブログにあげられませんでした。(笑)

でも、、まぁ、、わたしの素直な感想は かっこいい!! でしたね。
今回の作品のおかげで、みんながいかにジャズピアニスト ブラッドメルドーに期待をよせてるのかが よーく わかりました!

Suzuckさん,こんばんは。人それぞれってことで(笑)。

私としてはこういう音楽は全然抵抗がありませんが,それこそ「敢えて」Mehldauでなくてもいいよねぇという気がしないわけでもありません。それでも,彼の両手を使った表現力は結構面白いと思いましたし,これが次への一歩へのステップだと考えるべきなのではないかと思います。

いずれにしても,ここでの音楽はMehldauの保守本流ではありませんが,本流からはずれているからこそ,見えてくる魅力もあるように感じます。あるいは本流をより魅力的に見せるってこともあるかもしれませんね。多分Mehldauの考えとは違うでしょうけど...。

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