2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

無料ブログはココログ

« 2014年2月 | トップページ | 2014年4月 »

2014年3月31日 (月)

感動作であるが,見ていて辛くなる「それでも夜は明ける」

Photo 「それでも夜は明ける("12 Yeras a Slave")」('13,米,Regency)

監督:Steve McQueen

出演:Chietel Ejiofor,Benedict Cumberbatch,Michael Fassbender,Brad Pitt,Lupita Nyong'o

本年のオスカー作品賞の受賞作である本作をようやく見ることができた。この映画を作ったからと言って,奴隷制度の免罪符とはならないが,それでもアメリカ人が持つ意識(おそらくは罪悪感)に影響を及ぼしたことは間違いないであろうと思わせる作品。それだけ奴隷制度のむごさがストレートに描かれるため,見ていて本当に辛くなるシーンの連続である。そして,Lupita Nyong'oはこの映画を見た上で,助演女優賞は当然と言いたくなるような素晴らしい演技であった。以下にはネタバレありなので,未見の方はご注意願いたい。

いずれにしても,白人は「悪」ばかりではないというところに,多少の救いの要素はあるわけだが,それでもこの映画は相当に厳しい映画である。そして,最後には感動が襲うわけだが,それでもChietel Ejiofor演じるSolomon Northupが去った後に残された奴隷たちの運命を考えると,不条理感はどうしても残ってしまう。そうは言いながら,私はいつものように単純に涙を流していたのだが...(笑)。

奴隷制度はアメリカ合衆国憲法修正第13条により廃止となったわけだが,ミシシッピ州がそれを批准したのは1995年という信じられない事実もあり,その後の人種差別が歴然と存在したことは否定しようがない。それが解消するには長い時間を要したということだが,この映画はそうした意識に楔を打ち込むものになっていて,当然,エンタテインメントとしての映画の側面だけでなく,テーマの重さゆえに評価が上がることは当然あるように思える。今回,この映画が作品賞に輝いたことには,そうした要素が大きいことは間違いないのである。

それにしても,憎らしさという意味ではMichael Fassbenderも相当憎々しく描かれているが,前半に出てくるPaul Danoは彼が歌う歌の歌詞からしても,えげつなく憎たらしいキャラに描かれている。思わず感情移入して,叩きのめしたくなるキャラであった。そうした役者陣の頑張りもこの映画を優れたものにしたものだと思える。とにもかくにも立派な作品である。星★★★★☆。

2014年3月30日 (日)

ゴルフ月間終了(笑)。

アメリカ在住時代に私がゴルフを始めたのが23年前のことだが,その後,娘が生まれてからというもの,ゴルフに行く回数もめっきり減り,たまに会社のコンペに参加すると,昔のイメージだけでプレイしてしまい,全く昔の見る影もない自分にストレスばかりを感じていた。わざわざぺブル・ビーチまでゴルフをしに行っていた自分は一体何だったのかなんて思ったりしていたわけである。

そんな私も,ようやく娘がある程度成長し,更には家人がゴルフを再開するのに合わせて,ぼちぼちと練習場にも通うようになり,なんと今月は会社のコンペばかりだが月間4ラウンドという,日本では記憶にないペースでゴルフをすることになってしまった。3月初旬はまだまだ寒かったが,桜の季節を迎え,真のゴルフ・シーズン到来。天気さえよければ,そこそこ楽しめるとは言うものの,スコアは相変わらずボロボロのままである。だが,さすがに4ラウンド目ともなると,ようやくわずかながら復調の気配も見えてきたが,まだまだ安定度には欠けているのが難点である。

ここ暫くは,私は「ゴルフは野を駆け,山を駆けるクロス・カントリー,つまり陸上競技だ!」と開き直ってきたのだが,もう少し練習する気にもなってきた今日この頃である。まぁ,先日,20年来使ってきたキャディ・バッグの底が抜けて,新しく買い替えたこともポジティブに影響するかもなぁ。そんなことを言っていると,クラブも...なんて言い出しかねないので,ここはまずは練習,練習ってことで。だが,月に4ラウンドもしていると,財布へのダメージは甚大である。まじで結構辛い。だったら,ゴルフに行かなきゃいいじゃん?と言われれば返す言葉なしだが,浮世の付き合いってのもあるからねぇ。ということで,めずらしくサラリーマン的な態度を示す中年音楽狂である(爆)。

いずれにしても,2週間後のコンペに向けて,また調整をすることにしよう。

2014年3月29日 (土)

Tinariwenの新作が相変わらずよい。

Tinariwenemmaarjpeg "Emmaar" Tinariwen(Anti)

早いもので,私が初めてTinariwenの音楽に接してから4年半近くの時間が経過した。その間に彼らは順調にアルバムをリリースしているが,その新作がこれである。今回の注目要素はは米国録音ってことになるだろうが,音楽としてはいつもと大して変化はないように思える。だが,今回,新作を聞いていて非常に強く思ったのが,何とも魅力的なギターの音が聞けるということである。

世の中,うまいギタリストはほかにもいるし,彼らよりテクニックに優れたギタリストだっていくらでもいるというのは事実である。しかし,今回のアルバムを聞いていて,これほど魅力的なギターの音ってなかなか聞けないのではないかと思い続けていた私である。普通のギタリストにはこのドライな感覚は出せるものではない。しかもおそらくは太いゲージを使っているであろう彼らのブルージーなギターの音を聞いていているだけで,私は痺れてしまったのである。ヴォーカルこそアフリカ的な感覚が濃厚に出るが,私はそのバックに流れるギター音に耳が釘付けって感じと言えばいいだろうか。

これは彼らのアルバムを聞いている場合,常々感じることではあり,このブログで彼らの"Aman Iman"を取り上げた時もほとんど同じようなことを書いている(記事はこちら)。私の文筆による表現力の乏しさとも言えるが,その一方で,彼らの音の魅力については私は一義的に反応しているということにもなるだろう。まぁ,いつも同じに聞こえると言えばその通りかもしれないが,この何とも言えないグルーブに身を委ねていることの幸せの方が私には勝っているのである。Tinariwen,やはり素晴らしいバンドであり,全く侮れない。星★★★★☆。

Personnel情報は改めて。

2014年3月28日 (金)

"Swiss Air":ナベサダはモーダルであったの巻

Swiss_air "Swiss Air" 渡辺貞夫(Sony)

最近は昔のジャズ音源がかなり安価でリリースされるようになって,昨今のリスナーは羨ましいなぁなんて思う一方,今まで聞いたことがない音源が手軽に聞けるようになったのは我々にとってもありがたいことである。

本作についてはブログのお知り合い,monakaさんも記事にされていたが,私は毎度おなじみ新橋のテナーの聖地Bar D2で聞かせて頂いたもの。私のなかあのナベサダのイメージを覆すような激しくもモーダルなアプローチにびっくりして発注したものである。なんてったって1,000円だし(笑)。

私がジャズを聞き始めた77~78年ごろというのはナベサダが"My Dear Life"をリリースして,当時のクロスオーバー・サウンドに取り組み始めた頃であり,私の中でのイメージはそっちの方が強い。もちろん,Great Jazz Trioと共演した"I'm Old Fashioned"や"Bird of Paradise"を聞いていたのだが,それでもどちらかというとその後の"California Shower"等に続く音楽の方が私の中では主流なのである。だが,この音源を聞かせてもらって,完全にイメージが変わったということは告白しなければならない。ナベサダには悪いが,ここまで熱くモーダルに吹けるとは思わなかったのである。

本作は2度目のモントルー・ジャズ・フェスティバルへの出演時の記録ということだが,日本人だけで構成されたクァルテットにより,アフリカ的な旋律を貴重にしつつ,リズムには8ビートを注入して相当激しく演奏している。ある意味,ここまで行くと暑苦しいという感覚さえおぼえるが,ライブにはこれぐらいの暑苦しさがあっても許されるだろうっていう感じである。このメンツのベースが岡田勉に代わって,福村博が加わると,私が「ブラバス・サウンドトリップ 渡辺貞夫 My Dear Life」をFMで聞いていた頃のメンツってことになるが,FMで聞いていてもここまでのイメージはなかったなぁと思う。

前半はモーダルにかっ飛ばしているナベサダ4であるが,このアルバムにおいて最も優れた演奏は"Sway"ではないかと思う。これは大変優れたバラッド演奏であり,本作の白眉と言ってもよい出来のように思える。アップ・テンポの曲では守新治のドラムスのドタドタ感は若干気になる私もこの"Sway"には納得してしまうのである。

いずれにしても,このアルバム,結構長い期間,廃盤状態だったと思うが,今回の再発で多くの人の耳に触れる機会が増えたのは本当によかったと思える。私も知らなかったとは言え,今,このアルバムを聞くことができてよかったと思っている。ということで自分の不明も恥じなければならないが,星★★★★☆としよう。まじで大したものである。最後に収められた"Pagamoyo"のフェード・アウトは惜しいが,まぁLP時代の産物だけに仕方があるまい。

Recorded Live at Montreux Jazz Festival on July 18, 1975

Personnel: 渡辺貞夫(as, sopranino, fl),本田竹曠(p),河上修(b),守新治(ds)

2014年3月27日 (木)

久々の新譜聞き:Vijay IyerのECM第1作

Mutations "Mutations" Vijay Iyer (ECM)

Vijay Iyerと言えば,彼のACTレーベルにおける"Accelerando"について,この人の理知的な部分と,抜群のセンスを感じさせて絶賛してしまった私(記事はこちら)であるが,それ以来の彼の作品はなんとECMからである。

「変容」というタイトルからしても,おそらく一筋縄ではいかないことは想定されたが,ピアノ,エレクトロニクス,そして弦楽四重奏団のための曲群であるから,ジャズ的なアプローチは期待してはならないことは明らかであった。そして,今回,アルバム全体を通して聞いてみて,これは当たり前ではあるが,ジャズ的なものと,ミニマル的なものと,そして現代音楽的なもののミクスチャーという印象である。弦楽クァルテットはタイトル・トラック"Mutations I-X"という組曲に登場するだけであるが,ピアノの存在感はかなり抑制されていて,この曲はVijay Iyerのピアノよりも作曲に重きが置かれたものという判断ができる。しかもよく書けている。

だが,その前後に置かれた曲との構成を考えると,アルバム全体で非常に「座り」がよく感じられるのは,アルバム構成に関するManfred Eicherの卓見だと思える。かなり難しい音楽と言ってよいこれらの曲を,このような構成に収めることによって,抵抗感が抑制されている感じがするのである。

もちろん,これは万人にとって聞き易い音楽ではないが,Vijay Iyerというミュージシャンの総合的な力量を量る上で非常に重要なアルバムになっているように思える。Manfred Eicherという知将のもと,Vijay Iyerがその才能を発揮し,作曲,演奏したものと考えればよい。"Accelerando"とは全く違う音楽であったが,私は彼の能力に改めて非常に感銘を受けたと言っておこう。但し,これをジャズというカテゴリーで聞いたとすれば,そこには大きな抵抗をおぼえるリスナーがいるであろうことには異論はない。だが,これが非常に優れた音楽であるという点については更に強調しておきたい。ジャズもミニマルも現代音楽も全部好きな私にとっては,非常に満足度の高いアルバムである。星★★★★☆。

ということで,ジャズ原理主義の皆さんには決してお薦めしないが,聞かずに放置するには惜しいアルバムである。でもなぁ,「金返せ!」と言われても対応できないしなぁ...。相応の覚悟でどうぞ(笑)。

Recorded in September 2013

Personnel: Vijay Iyer(p, electronics), Miranda Cuckson(vln), Michi Wiancko(vln), Kyle Armbrust(vla), Kivie Cahn-Lipman(cello)

2014年3月26日 (水)

John McLaughlin & 4th Dimensionライブ参戦記

John_mclaughlin_at_blue_note 昨日,ライブ後の戦利品については記事を既にアップしたが,John McLaughlin & 4th Dimensionのこのバンドとしては初来日となるライブを観に,ブルーノート東京に行ってきた。世の中,年度末の送別会シーズンということも影響しているのかもしれないし,月曜日のセカンド・セットということもあったのかもしれないが,まず驚いたのが客入りの悪さである。前回のPaolo Fresu & Omar Sosaだって月曜のセカンドでそこそこの入りだったのだから,やはり理由は前者ということになるのだろうが,それにしてもである。おそらくは半分も埋まっていなかったのではないか。しかし,そんなことは全く関係なしに,McLaughlin翁,かっ飛ばしてくれた。

曲はお馴染みの"Raju"からスタートしたが,曲としては何をやろうが,はっきり言ってMcLaughlinの場合,あまり関係ない。正直なところ,どれを聞いても同じに聞こえるし...(笑)。だが,演奏は強烈,超絶である。うまくて,速くて,激しい。これで燃えるなというのがそもそも無理である。そもそものMcLaughlin好きな私であるから,今回のライブには久々に声が出てしまったぞ。

McLaughlinのフレージングはまぁ予想通りではあるのだが,何がびっくりしたって,Etienne Mbappeのベース,特に時折見せた高速スラッピングである。私はMcLaughlinで目が点になっていたが,Mbappeのベースにはまさに瞠目させられる思いであった。このバンドにはHadrien FeraudやDominique Di Piazza等の凄腕ベーシストが去来したが,Etienne Mbappeは彼らに勝るとも劣らぬ腕の持ち主である。両手に手袋をしながらベースを弾くプレイヤーって初めて見たと思うが,それにしても強烈であった。

そして,このバンドの番頭はGary Husbandである。終演後,「俺はあんたをロンドンのPizza ExpressでWayne Krantzとやったのを見たんだぜい(約4年半前のことである)。」と言ったら,「おぉっ,Peter Erskineとやったやつだな。」なんて話が出るんだから,記憶力のいいオッサンである。だが,私が見たのは,Erskineの日ではなく,Husbandがドラムスを叩いたGwilym Simcock入りの方だと伝えると,「おぉ,そうか,そうか。」なんて反応が返ってきた。それにしても,この人,今回はキーボードがメインだが,ドラムスもいけている。私は今回のバンドでは,ドラムスのRanjit Barotのパワーだけで押しまくるが如き手数の多さと,ニュアンスの乏しさにいつも辟易とさせられるのだが,Husbandがドラムスを叩くと,Barotのそれよりもはるかに音楽的なものを感じてしまったのである。かつて,私はKeith Carlockのドラムスは歌心があると評したが,Husbandもそんな感じである。Barotのドラムスのせいで,相対的にそう思わせたというところもあるかもしれないが,私はこのバンドのドラムスなら,前任のMark Mondesirの方がよかったと思っている。つくづく私はBarotとは相性が悪いと感じてしまった。

だが,全体的に見れば,これほどタイトなハード・フュージョンのライブはなかなか見られるものではない。私は大いに楽しんだし,客入りの悪さが本当にもったいないと思えた。そして,終演後のMcLaughlinはあれほど鬼のようなフレーズを連発していたのが嘘のような,完全なイギリス紳士であった。私はますますMcLaughlinが好きになってしまった一夜。尚,写真はブルーノートのWebサイトより拝借。

Live at ブルーノート東京 on March 24,セカンド・セット

Personnel: John McLaghlin(g), Gary Husband(key, ds), Etienne Mbappe(b), Ranjit Barot(ds)

2014年3月25日 (火)

John McLaughlin:本日の戦利品(笑)

John_mclaughlin001 John McLaughlinと言えば,それなりのヴェテランにとっては避けて通れない名前のはずである。そのMcLaughlinが近年活動を共にする4th Dimensionの面々と初来日となったので,長年の彼のファンとしては,と言うか,実は私はこれまで一度もMcLaughlinを生で見たことがなかったので,ようやくの参戦ということで,ブルーノートに出掛けてきた。詳しくは改めて記事にしたいと思うが,本当に変わらない人である。とても70過ぎの爺さんの弾くギター・フレーズではないと,ライブの間ずっと思っていた私である。ということで,今日の戦利品の写真をアップしておくが,現地でのサイン会では,一人一枚でお願いしますなんて,正直せこいことを言われていたのだが,それで引っ込む私ではない。

John_mclaughlin002 と言うことで,本当は5枚持ち込んでいた(笑)のだが,アドオンするならこれにしようということで,2枚目の戦利品もアップしておこう。McLaughlinも"Electric Guitarist"(下の写真)には正直喜んでいたと思う。う~む。だったら,モントルーのボックスを持って行けばよかったが,かさばるのでやめた私であるが,この2枚は絶対いいチョイスだな(笑)。

尚,ライブはMcLaughlinらしい強烈なハード・フュージョンだったが,今回のライブで,私はGary Husbandのドラムスは趣味がよいと思った。それがなぜかは追ってご報告としよう。

2014年3月24日 (月)

Steve Young:年度末の多忙な時期にはこういうなごめる音楽が必要だ(笑)

Steve_young "Rock Salt & Nails" Steve Young (A&M)

ここのところ,年度末のバタバタが続いていることはこのブログにも書いたとおりである。こんなに多忙が続くと,さすがに刺激の強い音楽も聞いてられなくなってしまうってことで,本日はSteve Youngである。Steve Youngと言っても,San Francisco 49ersの元エースQBではない。当たり前だ(爆)。だが,Steve Youngと言えば,アメリカでは絶対NFLのYoungの方が有名で,この人の知名度は限定的だろう。しかし,日本においては,本作がブラックホークの99選にも入っていることもあり,結構知っている人(特に好き者)は知っている。

余談はさておき,このSteve Youngのアルバム,メジャーのA&Mからリリースされた,そしてTommy LiPumaがプロデューサーとは信じられない「もろの」カントリー・ロック(かつロック・フレイヴァーは限定的)である。このアルバムがブラックホーク関連以外で知られるとすれば,後にEaglesが本作に入っている"Seven Bridges Road"をカヴァーしたことによるものということになるだろうが,それはさておいても,このアルバム,非常になごめる。落ち着ける。そしていいねぇと思ってしまう。

なぜ,こういう音楽が好きなのかと問われても困るのだが,好きなものは好きで仕方ない。私が現在最も多く聞いているのはジャズかもしれないが,この手のSSWのアルバムはそれこそ一生聞けると言っても過言ではないのである。日々の暮らしに疲れた時に,こうしたSSWのアルバムは私にとっての心の潤滑材になっている。もちろん,しょっちゅう聞いているわけではないが,たまにどうしても聞きたくなる音楽。それがこういう音楽だと言っておこう。今の時代にフィットしているかと言えば,全然そんなことはないが,時代を超越する音楽があったっていいのである。私にとってはこれよりはるかに好きなSSWのアルバムも存在するが,久々に聞いてやっぱりよかったということで星★★★★★。昨日のMichel Colombierと言い,Steve Youngと言い,相当回顧的な中年音楽狂である。

Personnel: Steve Young(vo, g), James Burton(dobro, g), Gram Parsons(org), Gene Clark(hca), Dave Jackson(b), Chris Ethridge(b), Richard Greene(vln), Meyer Sniffin(vln), Don Beck(g), Hal Blaine(ds)

2014年3月23日 (日)

懐かしのMichel Colombier

Michel_colombier_2 "Michel Colombier" Michel Colombier(Chrisalis→Anthology)

Michel Colombierというと,私にとってはまずは映画音楽家としての彼があった。「相続人」,「潮騒」,そして「危険を買う男」というPhilippe Labro監督作品での仕事,特に「相続人」は関光夫がやっていた映画音楽の番組で聞いた記憶があって,途中でアップテンポに変わる部分のホーンがカッコいいなぁなんて思っていた。実を言うと,私は中学生ぐらいまでは音楽も好きだが,更に好きだったのが映画で,よく2本立てに通いながら,映画音楽の番組もよく聞いていたのである。当時は本当に関光夫の番組はよく聞いていたため,結構細かいことまで濃厚に記憶に残っている。よくエア・チェック(死語!)してたしなぁ(遠い目)。

そんな私がジャズを聞き始めて,暫くした頃に登場したのがこのアルバムである。Michel Colombierと聞いて自然に反応してしまったわけだが,本作はほとんどのリスナーにとってはColombierの映画音楽家としてのキャリアとは別の部分で注目を集めたと言ってよいはずだ。とにかくメンツである。キラ星のごときフュージョン界の有名どころがさんかしているからである。当時,本作の姉妹アルバムのようなかたちで,Flora Purimの"Every Day Every Night"もリリースされて,そちらのメンツも相当話題になったのも懐かしい(Flora Purimのアルバムに関する記事はこちら)。

だが,このアルバム,メンツがいいのはもちろんだが,映画音楽的な感覚も若干残しつつ,印象深いメロディ・ラインの曲が揃っているのもポイントが高いと言ってよい。メンツとしてはJaco Pastoriusの参加が最も注目されるのだろうが,私としては冒頭の”Sunday"においてHerbie Hancockが聞かせるMoogによるソロこそこのアルバムのポイントだと思う。イントロのColombierのピアノからして期待値を高めるものであるが,Hancockの貢献度が非常に高いのである。JacoはJacoで彼にしか出せない音で演奏しているが,私はそれよりもHancockだよなぁと思っている。

本作は3年ほど前にリマスター再発されたようだが,私が保有しているのは99年リリースのCDなので,音の違いのほどはわからないが,私の保有盤でも音に関しては不満はない。尚,クレジットではホーンはロンドン響のメンバーが吹いているとも取れるが,もしそうだとすれば,相当ファンキーに吹けるのねぇと思わせる出来である。実を言うと結構久しぶりに聞いたのだが,多少曲に出来,不出来はある(一番いけていないのが"Do It"だな...)が,これはやっぱりよくできているフュージョン・アルバムであった。まぁ,やや映画音楽臭さが強過ぎるって気がしないでもないが,その手の音楽もOKな私にとっては何の問題もなし。星★★★★。尚,Michael Breckerのソロもいけているので念のため。

Personnel: Michel Colombier(p, key, synth), Herbie Hancock(key, synth), Larry Carlton(g), Lee Ritenour(g), Ray Parker, Jr.(g), Jaco Pastorius(b), Jerry Knight(b), Peter Erskine(ds), Steve Gadd(ds), Airto Moreira(perc), Michael Brecker(ts), Tom Scott(lyricon),Michael Boddicker(prog)

2014年3月22日 (土)

久しぶりのArt Blakey聞き。

Art_blakey_album_of_the_year "Album of the Year" Art Blakey & the Jazz Messengers (Timeless)

出張続きから一旦解放されて,家で音楽でも聞くかって感じで気まぐれに選んだのがこのアルバムである。本作が録音されたのは1981年,Wynton Marsalisがまだ19歳の時のものであり,ここでのラッパを聞いていれば,そりゃ神童と言われるのも当たり前だなぁって感じの見事な吹きっぷりである。そして,メンツもなかなかのものである。私が贔屓にするBobby Watsonも吹きまくっているしなぁ。

演奏については特に文句はないのだが,せっかくのこの演奏を今イチなものにしているのはCharles Fambroughの増幅されたベース音である。まるでエレクトリック・ベースのような感じで,この違和感はいかんともし難い。折角熱いハードバップ的演奏を展開しながら,このベースはないだろうと強く思わざるをえない。これでもう少し真っ当な音でベースが捉えられていたら,このアルバムへの評価は更に上がったかもしれない。Fambroughに限らず,フロントの3管に比べると,リズム・セクションの音が硬質な感じがするが,ドラムスはBlakeyだからこんなもんかって感じでまだ許せる。ピアノがまた相当に固い音で,あまり気持ちはよくない。だがそれにも目をつぶったとしてもこのベースはダメである。これは完全に生理的に受け入れられないというレベルなのだ。私はFambroughのアルバムも保有しているが,こんなひどいベース音ではなかったはずである。ということで,完全にこれはエンジニアリングの問題と言ってもよい。

だが,彼らの名誉のために言っておけば,演奏としての質は高いので,私のような「音の好み」を気にしなければ十分楽しめるはずである。私はそれほど音にこだわるタイプではないが,それにしても趣味の悪い録音だと感じさせるのだから,これは相当である。演奏に免じて星★★★。

Recorded on April 12, 1981

Personnel: Art Blakey(ds), Wynton Marsalis(tp), Bobby Watson(as), Billy Pierce(ts), James Williams(p), Charles Fambrough(b)

2014年3月21日 (金)

ありがとうございます。いつの間にやら150万PV。

私が出張や飲み会でヘロヘロになっている間に,当ブログのPVが150万に到達したようである。一応の目標としていた100万PVに達してからほぼ1年半で50万PV上乗せしたことになるが,これも偏に読者,ヴィジターの皆さまのおかげである。

以前は10万PV上乗せするごとにご報告していたが,今回は50万PVにどれぐらい掛かるのかということで,ずっと大人しくしていた。一時期,当ブログへのアクセスは低迷期に入っていたのだが,ここのところは比較的安定している。一体何が原因だったのかよくわかっていないのだが,やはり定期的な更新は大事だよなぁって気がする。

いずれにしても,ややさぼりが多くなっている私ですが,引き続き当ブログをよろしくお願いします。

2014年3月20日 (木)

出張続きで音楽を聞けず...。

年度末だというのに,ここのところ,地方出張続きである。今週は火曜日から水曜日にかけて沖縄に出張。そして一旦東京に帰り,木曜日からは松江である。

こんな生活をしていると,とてもではないが落ち着いて音楽を聞くことは不可能である。もちろん,出張の道すがらiPodでいろいろ聞いてはいるのだが,飛行機に乗れば,すぐ眠りに落ちてしまうので,印象は薄い。ちなみに沖縄の往復で聞いていたのはHolger Czukay,George Benson,Roxy Music,ほか諸々と全く脈略なしである。今回聞いていて思ったのはGeorge BensonのCarnegie Hallのライブは結構いい出来だなぁってことだが,だからと言って記事にするほどではないってことで,何とも中途半端な感じである。

ということで,もう少し落ち着いたら音楽系の記事を書こうと思うが,来週も送別会,壮行会,懇親会と飲み会続きである。これでは多分来週も厳しいなということで予防線を張る中年音楽狂(笑)。ということで,少々停滞が懸念される当ブログである。

2014年3月18日 (火)

Victor Bailey:最近はどうしているのやら...

Victor_bailey "Bottom's Up" Victor Bailey(Atlantic)

最近はあまり噂を聞かないVictor Baileyであるが,Lenny Whiteとのバンドやらでは活動は継続しているようであるが,Jaco Pastriousの後任としてWeather Reportに加入した時には注目を浴びた頃に比べると,活動が地味になっているなぁと感じざるをえない。私が1983年に"Live under the Sky"でのWeather Reportのライブを見た時には,Omar Hakimとの超タイトと言ってよいリズム隊に結構興奮させられたものである。ただ,どうしてもWeather Reportの演奏の中では過小評価されがちなのは残念だが,本当にこの時のライブはいけていたと思う。それを実証するために,YouTubeのファイルを添付しておこう。

そんなVictor Baileyの初のリーダー・アルバムが本作である。本作がリリースされたのは1989年であるが,日本はバブル最盛期と言ってもよかった時期である。まさにこの時代らしいというか,フュージョンとブラコンをミックスしたような音楽と言ってよいが,豪華なゲストを迎え,Baileyの初リーダー作を祝福するかのごとしである。だが,Weatherのライブのような強力な演奏というよりも,メジャー・レーベルであるAtlanticからのリリースということもあり,売れ筋の音を追求したような感覚が強いのが評価の分かれ目であろう。

私としては,やはりもう少しキメるならキメるというようなはっきりした姿勢が必要だとは思うのだが,Baileyのベーシストとしての演奏の力量は捉えたものとはなっている。だからこそ,ちょっともったいない気がするわけである。まぁ,時代の産物だと言えば,その通りかもしれないが,やはりこれはもったいないと思う。本人がプロデューサーを兼ねているので,まぁ作りたいように作ったって感じだろうが,私ならほかの人にプロデュースを任せて,よりよいものを引き出したと思う。いずれにしても,この作品の違和感は完全ブラコンと言ってよいタイトル・トラック"Bottom's Up"からその次の,よくわけのわかならない"Hear the Design",そしてその後の"In the Hat"への流れに集約されているように思う。どうせなら"In the Hat"の路線(サックスのBill Evansのブルーノートでのライブ盤に収録されている曲である)でやればよかったのにねぇと思ってしまうわけである。

ということで,何だか惜しいねぇと思いつつ,若き日のWayne Krantzが1曲だけ入っていたりして,興味深いところもあるアルバムである。但し,Krantzもまだまだ個性を表現できていない時期だが...。アルバムとしては次作"Low Blow"の方がいいなぁ(記事はこちら)。ということで,"Low Blow"を星★にしているので,こっちは星★★☆ぐらいだな(笑)。

Personnel: Victor Bailey(b, synth, vo), Clyde Criner(p, key), Jim Beard(p, key), Richard Tee(org), Wayne Shorter(ss), Branford Marsalis(ss), Michael Brecker(ts), Alex Foster(ts), Bill Evans(ts), Najee(ts), Donald Harrison(as), Terence Blanchard(tp), Wayne Krantz(g), Kevin Eubanks(g), Mike Campbell(g), Rodney Jones(g), Jon Herington(g), Marcus Miller(b), Lonnie Plaxico(b), Omar Hakim(ds), Dennis Chambers(ds), Rodney Holmes(ds), Poogie Bell(ds), Jeff Watts(ds), Richie Morales(ds), Mino Cinelu(perc), Steve Thornton(perc), Mark Ledford(vo), Clarence Robinson(vo),  and Others

2014年3月17日 (月)

「エージェント・ライアン」:久々に映画の話なのだが...

Jack_ryan 「エージェント・ライアン("Jack Ryan: Shadow Recruit")」('14,米,Paramount)

監督:Kenneth Branagh

出演:Chris Pine,Kevin Costner,Keira Knightley,Kenneth Branagh

Tom Clancyの原作に基づくJack Ryanシリーズも5本目であるが,これはオリジナル脚本によるものらしい。私はこのシリーズを熱心に見ているわけではなく,「レッド・オクトーバーを追え!」ぐらいしかまともに見た記憶がない。なんでこの映画を見に行く気になったかと問われれば,頭をあまり使いたくない気分で選んだら,これにしていたというのが正直なところである。よって,正直なところ,何の期待もかけていないままで行ったようなものである。

そして,告白してしまえば,久しぶりに映画館で寝てしまったようである。途中でストーリーが完璧に飛んでいる(笑)。よって,一部,前後の脈略がつながらない部分があるのだが,それでも大して問題にならないというその程度の映画である。冒頭は結構いいのではないかと思わせるが,その後が続かないのは明らかに映画としての魅力不足。派手なアクションはそれはそれでいいとしても,非常に空虚な感じが残る。最近,Chris Pineは「スター・トレック」シリーズをはじめ,いろいろ顔を出しているが,CIAのエージェントって感じが全然しないし,何でもかんでも出りゃいいってもんじゃないだろうと言いたくなる。まだカーク船長を演じている方がいいぞ。いずれにしても,今の時代にこういうストーリーってのは無理があるのではないかと思わせる一作であるが,シリーズ化されるとのことではあっても,次は見に行かないだろうなぁ。星★★。

ということで,「それでも夜は明ける」を見に行けばよかったと大いに後悔する私(苦笑)。

2014年3月16日 (日)

Joni Mitchellの楽譜をゲットして思うこと。

Joni_mitchell_complete_so_far "Joni Mitchell Complete So Far" (Alfred Publishing)

1月には出版予定だったはずのJoni Mitchellのスタジオ盤18枚からの167曲を完全収録した楽譜集が遂にデリバリーされた。この500ページを越える楽譜集,装丁も立派なら,採用された写真も貴重なもので,これはファン必携の本であることは当然である。

そして,何よりも驚かされたことは彼女がギターで演奏した曲のうち,標準チューニングの曲が4曲しかないということである。その他のほとんどの曲が変則チューニングで占められているということ自体が物凄い事実である。そして,この本,そうしたチューニングがちゃんとクロス・リファレンスになっていて,非常にわかりやすい構成になっているのがこれまた素晴らしい。私はこの書物を座右に置いて,まずは徹底的に「逃避行」のアルバムの曲をやってみたいという衝動にかられている。とにかく,まずは"Amelia"だろうなぁ。ちなみにこの曲はオープンCチューニングで1弦からCGECGCで,親切にもC-7-5-4-3-5というチューニング・パターンまで記述されているのだ。これなら練習もしたくなるってもんだ。

Joni Mitchellを愛する者は,この本を見て,今すぐにでも彼女の40パターンを越える(!!)変則チューニングの凄さを体感すべきだと声を大にして言いたい。50部限定のJoniサイン入りのバージョンは手に入れられなかったが,そんなことが瑣末に思える優れた業績である。これさえあればJoni Mitchellの音楽を鑑賞だけでなく,自らの演奏面からも一生楽しめると思えば,星★★★★★以外にはありえない。

2014年3月14日 (金)

ディスク・ガイドとしても読み物としても面白い「JAZZ 100の扉」

Image

「JAZZ 100の扉 チャーリー・パーカーから大友良英まで」村井康司(アルテスパブリッシング)

ブログのお知り合いのkenさんやSuzuckさんが取り上げられており,ちょっと気になっていた本だが,今更ディスク・ガイドもなぁって感覚があったのも事実である。だが,出張の道すがら,読んでいたらこれが思いのほか面白い。選盤には?って部分がないわけでもないが,それはそれとしても,この面白さの原因は,ディスクの紹介文における「思わず,そうそうと首肯してしまう感覚」にあると思う。自分とも同じような感覚にシンパシーを感じてしまう。さらに言えば,書籍にはいくつも笑える表現もあって,それにビビッドに反応している自分に笑っているところもある。

これは著者とどう時代を過ごしたであろう我々のような読者にこそフィットした本だと思うので,あらゆる読者層に勧めていいものか悩むところもあるのだが,これは私が読んだディスク・ガイドの中でも「面白さ」という点ではかなりのレベルのものと言ってよいだろう。「ジャズ構造改革」なんてくだらない本もあった村井康司だが,この本で見直した。

2014年3月13日 (木)

今日は久しぶりのMilt Jacksonである。

Milt_jackson001 "Memories of Thelonious Sphere Monk: Milt Jackson in London" Milt Jackson (Pablo)

ECMの新譜も届いているのだが,なかなかそちらへの食指が伸びない状態なので,今日は気分転換にMilt Jacksonである。私はMJQに限らず,Milt Jacksonが結構好きと言ってもよいが,ことMiltに関しては亡くなった父にその魅力を教わったような気がする。実を言えば,このCDも父の遺品である。

私の父はモーツァルトが好きな人だったが,晩年にはジャズを結構好んで聞くようになっていた。ジャズ歴は私の方がずっと長かったので,父からいいレコードを推薦してくれなんて言われてしまっては,父の誕生日には毎回3枚のジャズのCDを送るというのが決まりになっていた。そんな作品で父が特に気に入っていたのがKenny Kirklandだとか,Brian Bladeだとか言われては,親父ながらいいセンスしているぜ!と私は思ってしまった。

そんな父が自分で買っていたアルバムの中に多く含まれていたものがMilt Jacksonのアルバム(MJQではない)だったのだが,今やそれらは全て私が引き継いでいる。父がMilt Jacksonが好きそうだというのはわかっていたので,Count Basie Orchestraとの共演盤は私が父に贈ったもののはずだが,それも私の手許にある。なぜ父がMilt Jacksonが好きだったのかはついぞ聞けなかったが,おそらくはMilt Jacksonの持つブルージーな感覚にクラシックと違う側面を見出していたのだろうと思う。クラシック・ファンならMJQに走りそうなものだが,MJQももちろん保有はしていても,Milt Jackson名義のアルバムの方が多いのである。

それでもって,このアルバムはタイトル通り,前半はThelonious Monkの曲で占められているが,ライブらしい熱気に溢れた作品となっていて,いつも通りのMilt Jacksonらしい楽しさが炸裂している。だが,Monkの曲をやりながら,このアルバムが珍しいのはMJQ外で"Django"をやっているってことかもしれない。John LewisとMonty Alexanderでは明らかにピアノの質が違うが,この長尺の"Django"はRay Brownによる「あの」ベース・フレーズが聞けるなど,非常に興味深いものであったが,ここに必要だったかというと微妙ではあるが,そうした中でもMiltはあくまでもMiltである。いつもと何も変わらない。このいい意味での予定調和感に私の父は快感を覚えていたように思えてならない。

いずれにしても,全編に渡って楽しめるアルバムではあるが,一番私が好きなのは中盤の"In Walked Bud"かもしれないなぁ。このドライブ感が非常に素晴らしいのである。ということで,歴史的なアルバムとかでは決してないが,ジャズという音楽が楽しめる音楽でもあるということは見事に実証されている作品である。まぁ,こういう音を聞いて嫌いだって人はあまりいるまい。ということで星★★★★。

Recorded Live at Ronnie Scott's on March 28, 1982

Personnel: Milt Jackson(vib), Monty Alexander(p), Ray Brown(b), Micky Roker(ds)

2014年3月12日 (水)

Paolo Fresuは最高であった。

Paolo_fresu ブルーノート東京でPaolo FresuとOmar Sosaのデュオを観た。FresuにはDevil Quartetではまって以来,それこそ一日千秋の思いで来日を待っていた。しかし,上海までとかは来ていながら,ちっとも日本には来てくれなかったので,実は日本が嫌いなのではないかとも思っていたのだが,そんなことはなかったようで,ようやくの初Fresuである。

今回,Omar Sosaとの共演ということで,二人のアルバム"Alma"も予習し,NPRのTiny Desk Concertでのライブの模様もチェックした上で今回のライブに臨んだのだが,これが予想を上回る素晴らしさであった。Cuba出身のSosaはエンタテインメント系なノリと美的なフレージングとリズミックなアプローチをミックスした演奏を行う一方,Fresuはエレクトロニクスも駆使しながら,時折循環呼吸による超ロングトーンも織り交ぜて,素晴らしいトランペッターぶりを炸裂させていた。かつ,この人の凄いところは,弱音でも音に乱れがないところである。あらゆる点でオーディエンスを痺れさせる吹きっぷりである。これまでのアルバムで,シーケンサーやディレイの使い方がうまいこともわかってはいたが,生で見ると,なるほどって感じであった。

Alma001_2 片やOmar Sosaもピアノをパーカッシブに弾いたり,ピアノとエレクトリック・ピアノの2台両手弾きをしたりと,テクニックも面白いのだが,何よりもおかしいのはまるで尻を振りながらのようなピアノ・プレイであった。これはまさに笑えるのだが,その一方でこの人のフレージングは非常に美的な部分も多く聞かれ,彼のピアノを聞きながら,私は昔の長大なソロをやっている頃のKeith Jarrettさえ想起していたのである。もちろん,Keithとは音楽性は違うものの,そうした感覚も聞かせることができるSosaというピアニストはなかなか侮れないと思った。

Stanley_music001 そんな二人の共演であるから,これは非常に満足度が高かったと言ってよい。ステージの後半では熊谷和徳のタップが加わったのだが,正直なところ,熊谷のタップはうまいとは思ったが,Fresu~Sosaの音楽とマッチしていたかと言えば,決してそんなことはないと思えた。リズミックなアプローチでは,タップがパーカッシブな効果を生み出してはいても,静的な音楽にはフィットしていないと思えたのは事実である。だから,熊谷には悪いが,私はFresu~Sosaのデュオをもっと聞きたい(よりはっきり言ってしまえば,タップはいらない)と思っていたクチである。まぁ,それは置いておいても,私は今回はFresuの生を見られただけで満足な訳だが,毎度のことながら,CDを持ち込んで本人とちらっと話をさせてもらった。とにかく彼には「もっと日本に来てね~」とは言っておいたが,次回は何とかDevil Quartetで来てくれないものか。ということで,今回も戦利品の写真を2枚だけアップしておこう。今回は4枚持ち込んだものの,最初はサイン会場にFresuが現れなくてひやひやしていたたのだが,しばらく遅れてやってきたのでよかった,よかった。

尚,今回もブルーノートにはタイミングの悪い奇声を上げまくるバカ・オーディエンスがいて,またも辟易とさせられたことは言っておかねばなるまい。何が嬉しくてあのような奇声を断続的に上げているのか私にはさっぱり理解できん!一部ではあるが,本当に迷惑な客が必ずと言っていいほどいるのがブルーノートの難点である。なんだかなぁ。経験的に言うと,音楽の聞き方としてはCotton Clubのオーディエンスの方がはるかにまし(おとなしいだけ?),というかああいうバカにはあまりお目に掛かったことがない。場所柄かねぇ...。だからブルーノートにはできるだけ行きたくないと思ってしまうのだ。本当にマネジメントは考えた方がいいだろう。

Live at ブルーノート東京 on March 10,セカンド・セット

Personnel:Paolo Fresu(fl-h, tp, electronics), Omar Sosa(p, key, vo), 熊谷和徳(tap)

2014年3月11日 (火)

Donald Edwardsの3枚目のリーダー作。悪いとは思わないんだけどねぇ...。

Donald_edwards "Evolution of an Influenced Mind" Donald Edwards (Criss Cross)

ドラマー,Donald Edwardsによる3枚目のリーダー作がCriss Crossより登場である。と言っても,私は彼の過去のリーダー作を聞いた訳ではないし,彼が参加したOpus 5も実はあまり評価しておらず,だったらなんで買うんだ?という声が飛んできそうであるが,それはメンツによるところ大である。このアルバムに参加しているメンツはなかなかに魅力的なのだ。

そして,このアルバムはそうしたメンツからも想定されるような現代的なサウンドを聞かせており,なかなかEdwardsもやるではないかと思わせる。曲もOrrin Evansの1曲を除いてEdwards作なのだから,これはなかなか大したものである。音楽性の高い優秀なドラマーが多く出ている現在のシーンに一歩踏み込んでくると言ってもよいかもしれない。

だが,この感じ,どこかで聞いたことがあるように思えば,Eric Harlandの"Voyger: Live by Night"と編成も一緒だし,Walter Smith IIIはかぶっているしということで,デジャブのような感覚はそうした点による部分が大きいように思える。編成は同じとは言っても,David Gilmoreのような尖ったギタリストが入っているのだから,更にハイブラウでもいいように思えるが,ここはHarland盤のような高揚感がそれほど強く感じられない。私がこのアルバムを聞いた限りで言えば,曲によって,受ける感覚がだいぶ違うように感じられ,出来不出来もあるように感じられるのだ。例えば,フリーがかった"When"等はチャレンジングな曲だとは思うが,こっちはちっとも面白くない。その一方で"Essential Passion"や"Truth of Consequence"みたいな曲をどうしてもっとやらないのかと思ってしまう。

まぁ,ミュージシャンとして,トータルな魅力を打ち出そうとしたであろうことは想像できるのだが,それが音楽として,リスナーである私たちに訴求できないのであれば,それはもったいないと言わざるをえまい。だからこそ,このアルバムについては,評価できるところもあるが,「う~む」となってしまう部分も並存してしまっているのは居心地が悪いって感じなのである。

本作を聞いて,思っていたよりは優秀なドラマーであることは認識できたとしても,まだリーダー,コンポーザーとしてはBrian Blade,Eric Harland,Clarence Penn,Antonio Sanchez等のドラマーたちを凌駕しているとは決して思わない。そういう感じの出来なのである。ということで,評価はしつつも,ちょいと点も辛くなり,星★★★。

Recorded on October 28, 2013

Personnel: Donald Edwards(ds), Walter Smith III(ts), David Gilmore(g), Orrin Evans(p), Eric Revis(b)

2014年3月10日 (月)

Dave Wecklの"Convergence",ようやくリリース。長かったねぇ。

Weckl_oliver_project_3 Dave WecklがPledgeMusicを通じて,スポンサーを募り,アルバムを制作するという話を聞いて,私は一昨年の11月の段階でPledgeしていたのだが,先日,ようやくアルバム"Convergence"の音源のダウンロードが可能になった。クレジット等は現物がまだ来ていないので詳しくはわからないが,全編に渡り,Dave Wecklらしい演奏が収められていると言っていいと思う。現物は4月になれば届くのではないかと思うが,今から楽しみである。

今回の肝はJay Oliverとのコラボの復活である。私がWecklのアルバムは結構好きだが,やはりJay Oliverが絡んでいた作品が好きだっただけに,今回はそれが嬉しい。早く来ないかなぁ...。到着したら改めて記事をアップしたい。

2014年3月 9日 (日)

花粉症炸裂!

会社のコンペでゴルフに行ったのだが,帰りの道すがらから目のかゆみ,くしゃみ,鼻水が止まらなくなってしまった。

行ったコースは非常に質のよいもので,天気もよかったので,スコアはさておき楽しめるものだったのだが,コースに林としてあれだけ杉が植えられていては,花粉症がひどくなるのも仕方ないかもしれない。天候もよく,気温も高めだったので,一気に花粉が飛んだのかもしれないが,今年は比較的症状が軽かっただけに,この発作のような状態は相当厳しい。全くもって困ったものだが,こればかりは発症してしまったのだからうまく付き合う以外ない。

しかし,今月はあと2回ゴルフがあるので,症状の悪化が心配される今日の帰り道であった。辛いねぇ。こうして,集中力は低下し,睡眠もうまく取れなくなっていき,いろいろな点で問題が発生してくること必定。はぁ~。

ということで,ゴルフ疲れもあり,音楽について書いている余裕は今日もなしってことで。

2014年3月 8日 (土)

今日もお休みです(苦笑)。

年度末なので忙しいのも仕方ないが,何かと多忙な私である。正直言って,Stonesのライブが膝に影響していて,これでは週末のゴルフも厳しいなぁんて予防線を張っている。だが,ライブ,出張,飲み会,ゴルフがローテーションしていて,なおかつ仕事も忙しいのでは,やっぱり無理ってことで,今日は(今日も?)お休みです。皆さん,すみません。

2014年3月 7日 (金)

Rolling Stones,この恐るべき老人たち。

Stones_with_hotei_2

Rolling Stonesのライブを見るために,家族ともども東京ドームに行ってきた。ドームの聴衆は明らかに平均年齢高めではあるが,私のように娘を連れている家族が隣にもいて,老若男女が集うって感じではあるが,明らかに「老」が優勢であった。

それよりも何よりも,Stonesの面々そのものが老人であるのだが,その若々しさと言ったらなんなのか?Mick Jagger:70歳,Keith Richards:70歳,Charlie Watts:72歳,Ronnie Wood:66歳という超高齢バンドとなったStonesだが,特にMickの若々しさは異常である。Paul McCartneyにも驚いたが,ステージ・アクションからすれば,Mickの方がはるかに激しいのだ。

今回の公演は日本での最終日であったが,いきなり"Jumpin' Jack Flash"からスタートし,場内はいきなり総立ちである。これが終了までなので,さすがに私にのようなおっさんにはきつい環境であったが,そんなことを言っていたら,Mickはどうするのだと思えば,甘っちょろいことは言っていられないのである。ということで,隣に娘がいるのも顧みず,歌いまくって喉も痛い私である。膝も痛けりゃ,喉も痛い,なんてぼやいているところが,年寄りの年寄りたる所以である(爆)。

今回のライブでは演奏はかなりラフになったなぁって感じがして,実のところ,その辺に適当さを感じなかった訳ではない。私がStonesのライブを見るのはこれで3回目(初回は初来日時,2回目は95年だったはず)だが,演奏としては今回が一番荒っぽかったのは事実である。特にエンディングなんて,いい加減と言われても仕方がない感じだが,それが許されるのが彼らの音楽だと言えるが,さすがにCharlie Wattsもきついかなぁって気がしないでもない。それを若さで補っているのがMick Jaggerだと言えばわかりやすいかもしれない。あのステージを走り回る姿,そしてシェイプアップされた肉体はとても70歳の爺さんとは思えない。まさに「凄い」の一言である。

3/6は日本の最終日ということもあったのかもしれないが,"Respectable"で布袋寅泰がゲスト出演したのには驚いた。加えて今回のツアーではMick Taylorが客演していたのだが,正直言って,"Midnight Rambler"以外は見せ場に欠けて,もう少し頑張って欲しかったと思っているのはきっと私だけではなかろう。しかし,バンドとしては歳は取ってもちゃんとロックしていたのだから,総体的には満足度は高かったと思う。やっぱり一緒に歌えるってのは楽しいのだ(笑)。

今回の来日は前回から8年振りということを考えると,次はないという可能性が高いが,それでもやはりプロとしての仕事はちゃんとこなすというところを見せ付けれられて,いいものを見せてもらったという気がする。だが,前回,私が東京ドームで見たのがPaul McCartneyだったので,それに比べると今回のライブはPaulには及ばなかったなぁというのが正直な思いである(Paulのライブに関する記事はこちら)。ステージへの金の掛け方も全くレベルが違うのだ。だが,それでもStonesにはStonesのよさがあるということで,とにもかくにも記憶に留めておこうと思ったライブであった。娘もこれで父親が親しんできたロックに理解を示してくれればいいのだが(笑)。彼女はBeatlesには理解が大なのだが,Stonesはどうだろうか。臆面もなく会場で歌いまくる父親には辟易としていたようなので,逆にトラウマになっていたら本末転倒だが,あれだけグッズを買ってやったのだから許してくれい(爆)。

Live at 東京ドーム on March 6, 2014

Personnel: Mick Jagger(vo, g), Keith Richards(g, vo), Ronnie Wood(g), Charlie Watts(ds), Chuck Leavell(key), Darryl Jones(b), Bobby Keys(ts, bs), Tim Ries(as, ss), Lisa Fisher(vo), Bernard Fowler(vo), Mick Taylor(g), 布袋寅泰(g, vo)

2014年3月 6日 (木)

Stones予習完了?

いよいよ3/6はRolling Stones日本最終公演である。2/26と3/4のセットリストが公開されているが,微妙に選曲が違うので,最終公演は何をやるのか楽しみである。リクエスト曲も何が選ばれるのかって感じであるが,まぁ大体の曲はいつもの通りなので,予習するほどでもないと言えばその通りである。

しかし,次があるか微妙な年齢に差し掛かった彼らなので,しっかり目に焼きつけたいということで,参戦態勢はほぼ整った。アーカイブで公開されたオフィシャル・ブートレッグも全部聞き直したし,"Love You Live"も聞いた。ついでに"Some Girls: Live in Texas '78"や"Hyde Park Live"も改めてチェックした。ここまでやっておけばまぁよかろうってことだが,とにかく,今回は家族ともどもこのライブを楽しみたいと思う。いずれにしても歌い過ぎて家族にバカにされないようにしよう(爆)。

2014年3月 5日 (水)

素晴らしきかな,Rod Stewart!

Gasolin_alley "Gasolin Alley" Rod Stewart(Vertigo)

何を今更って感じなのだが,Rod Stewartである。私も何枚かは彼のアルバムを保有しているし,実は"Foot Loose and Fancy Free"や"Vagabond Heart"なんて結構好きなのだ。だが,そんな私が,本当のRod Stewartのよさを確信したのはこのアルバムだったかもしれない。

トラッドがかったロックというか,ポップさが前面に出過ぎる前のRod Stewartのよさが非常に強く感じられる。この人はイメージで損をしているというか,その存在の軽さがロック・ヴォーカリストとしての名声に泥を塗っているんじゃないかとさえ思えるのだが,このアルバムは違う。素のよさを活かすとも言うべきアレンジメントに乗せ,オリジナルとカバー曲を絶妙にバランスさせて,全編に渡って素晴らしい歌を聞かせている傑作。こういうのを聞くと,ブリティッシュ・ロックのよさというのをつくづく感じさせる。元来,ブリティッシュよりもアメリカン・ロックの方が好きな私が言うのだから,この魅力は半端ではないということである。

とにもかくにもストレートでありながら,滋味すら感じさせるロックに徹したRod Stewartは,ちょっとパブリック・イメージとは違うかもしれないが,「スーパースターはブロンドがお好き」なんて言っているよりも,こっちの方が私にはずっと魅力的。好きなアルバムはほかにもあれど,Rodの最高傑作はこれなのではないかと思える今日この頃。星★★★★★。ジャケも渋けりゃ,メンツもいいねぇ。

Personnel: Rod Stewart(vo, g), Martin Quittenton(g), Ronnie Wood(g, b), Ronnie Lane(b, vo), Ian McLagan(p, org), William Gaff(whistle), Dennis O'Flynn(vln-b), Dick Powell(vln), Stanley Matthews(mandolin), Mick Waller(ds), Kenney Jones(ds), Pete Sears(p, b)

2014年3月 4日 (火)

第86回のアカデミー賞はまぁ落ち着くところに落ち着いたかって感じだろうか。

Cateblanchett 今年のOscarが発表になったが,まだこれから日本で公開される作品もあるので,私自身はどうこう言えないのだが,下馬評からすれば「ゼロ・グラビティ」,「それでも夜は明ける」,そして「アメリカン・ハッスル」の三つ巴だと言われていた。しかし,受賞の数では「ゼロ・グラビティ」の七冠,「それでも夜は明ける」が作品賞,脚色賞と助演女優賞,「アメリカン・ハッスル」が無冠という結果に終わったが,まぁそういう感じになるんだろうなぁって気もする。

「アメリカン・ハッスル」は私は大して評価していないが,Jennifer Lawrenceは助演女優賞の本命視されていたのは事実である。だが,昨年,彼女は主演女優賞を取っていたので,2年連続の受賞はいくらいい演技でも難しかろうと予想していたが,その通りになった。また,作品賞を「それでも夜は明ける」にするところが,アメリカらしさの典型で,これも想定通りって感じである。その分,「ゼロ・グラビティ」に監督賞を持って行き,主演男女優,助演男女優はばらつくというのもあって然るべき展開であった。数だけ見れば勝者は「ゼロ・グラビティ」ってことになるが,7部門の多くは効果や音楽のものであり,演出,脚本,演技の部門は監督賞だけである。だから,「ゼロ・グラビティ」の一人勝ちとは言い切れないと思うし,むしろ絶対的な勝者がないというのは,ある意味バランスが取れているとも言えるわけだ。

その一方で,「それでも夜は明ける」はきっといい映画だろうとは思いつつ,「あぁ,やっぱりねぇ」と思ってしまうのも事実である。そうは言いながら,今週末に公開されたら,見に行ってチェックしなきゃなぁと思っている私である。でも,年度末で仕事は忙しいし,ライブも結構あるんだよなぁ。映画を見ている暇があるのか?(爆)

ということで,今日の写真は,いつもドレスの趣味が大絶賛されるCate Blanchett様。いや~,今年もお綺麗です。そして,主演女優賞おめでとう。

2014年3月 3日 (月)

Zlatko Kaucic:メランコリックなものとフリーの共存

December_soul "December Soul" Zlatko Kaucic (Not Two)

ブログのお知り合いのmonakaさんが取り上げられていて,気になっていたアルバムを入手してきた。Not Twoというレーベルはポーランドの会社らしいが,本作のリーダーはスロヴェニア,それを支える二人はイタリアからというある意味不思議な組合せによって制作されたアルバムである。正直言ってリーダーのことは何も知らないが,ピアノ,ベースが非常に気になるメンツであることは間違いない。これなら聞きたくなるのも当然という組合せである。私はこのブログではピアノのBattagliaについての記事は書いていないと思うが,そのECM作品は非常にECMらしい美的感覚に溢れていたし,ベースのdalla PortaはPaolo FresuのDevil Quartetはもとより,Bebo Ferraとのデュエットでも優れた演奏を聞かせる人なのだから,これは気になる。

そして,今回,このアルバムを聞いてみると,かなりフリー的なアプローチが目立つ。その一方で,メランコリックなムードの曲も含まれていて,ECMレーベルの作品だと言われれば,そう思ってしまうかもしれない作品である。冒頭からして,フリー的なもの(特に出だしのベースのアルコ等)とピアノの美しい響きが混在しているところがそういう感じなのである。だが,このアルバム,決して甘い印象は与えない。むしろ,なかなか聞き通すには厳しい印象を与える音楽と言ってもよいように思える。特に3人が共作した"Jacob#1~#3"の3曲はインタールードのような比較的短めの曲なのだが,これらがそうした印象を強くしている。

だが,これはなかなか聞かせる作品であり,欧州ピアノ・トリオ好きのリスナーであれば,聞いてみて損はないと思える。特に最後に収められた14分を越える"Julijske Barve"が本作のハイライト。この曲についてはあっという間に時間が過ぎていく感じがした。星★★★★。

ちなみに,本作のエンジニアのStefano Amerioは巷で話題らしいが,確かにベースとドラムスの音の捉え方のクリアさが顕著で,相当ミキシング・レベルが高いように聞こえるため,静謐な音楽でも相応の音圧を感じさせるというところか。

Recorded in November 2011

Personnel: Zlatko Kaucic(ds,perc), Stefano Battaglia(p), Paolino dalla Porta(b)

2014年3月 1日 (土)

Mehliana:これはBrad Mehldauからの挑戦状か?

Mehlianatamingthedragon "Mehliana: Taming the Dragon" Brad Mehldau & Mark Guiliana(Nonesuch)

これまでにもBrad Mehldauのオフィシャル・サイトで音源が公開されたり,ブート音源も出ていたMehlianaとしての公式盤が遂にリリースされた。私は昨年の段階でブート音源を聞いて,その時の紹介記事に「アルバム・リリースの際には問題作と言われること必至だろうなぁ」なんて書いている(記事はこちら)が,まさにこれはBrad Mehldauの楽歴を振り返ってみても,これ以上の問題作はないだろうと思える。"Largo"が出た頃も問題作と言われたが,この作品の方が,一般的なリスナーに与えるインパクトははるかに強いだろう。特にBrad Mehldauのピアノが好きだという人たちにとっては,どのように感じられるのか興味深い。主題にも書いたが,これは非常に挑戦的なアルバムである。一般的なBrad Mehldauのイメージを崩し,突き破るものなのだから,とにかくびっくりする人が多いはずである。

昨年の記事の繰り返しになるが,私はブートを聞いて,『六本木のクラブ(アクセントなしで呼ばれる「クラブ」の方であって,「ク」にアクセントのあるクラブではない)あたりで流れていても違和感がないかなという感覚である。あるいはMehldauから繰り出されるフレージングはプログレッシブ・ロック的と言ってもよい』なんて書いている。こうした感覚は今,改めてこのアルバムを聞いても同じで,更に加えれば,これはNYCのイースト・ヴィレッジ的な感覚が横溢している。この尖り具合,まさにダウンタウン・イーストの香りがするのだ。

私はBrad Mehldauがコンベンショナルなジャズ・ピアニストだと思ったことはない。なぜならば,彼の選曲にはジャズ・ミュージシャンが取り上げそうにないロック系の人たちのものが含まれているし,ライブの場でも,Joe HenryやらJohn Mayer等ともライブの場で共演してしまうのである。これはフットワークの軽さだけで捉えられるものではなく,ロックも彼の音楽を構成する要素の一つであるということだと思う。そうした要素が,非常に尖ったかたちで表出されたのが本作だと言ってよいだろう。だからこそ,このアルバムを否定するのは簡単でも,そうしてしまってはMehldauの全体像を理解することができないように私は感じる。

本作の録音がいつ行われたのかはクレジットがないのでわからないが,おそらくはライブの場での共演を重ねながら,コンビネーションを熟成させていったものだと思う。彼らがNYCのSmokeで共演したのがほぼ2年前,ツアーを行っていたのが大体1年前になるが,本作の録音が先だったのか,後だったのかは気になるところではある。だが,本音を言ってしまえば,彼らの音楽はライブの場でこそより映えるような気がする。もちろん,レコーディングにおいても彼らの本質を捉えているとは思うが,ブート音源から想像される,「ライブの場で感じられたであろう」Spontaneityがやや希薄化しているようにも聞こえる。そうした点が,私の中でまだ整理がついていないのだが,それでもこれはBrad Mehldauが示したコンテンポラリー・ミュージックの一つの姿だと解釈することにしたい。Mehldauが最新のシンセサイザーを使っていないのは意図的なものであって,これもおそらくは実験的な精神に基づくものだと思う。

もちろん,これだけチャレンジングな音源である。これを何度も繰り返し聞けるかというと,ちょっと難しいかなぁというのが正直なところだが,それでもAmelia Earhartに捧げたであろう"Elegy for Amelia E."の美的な感覚はやっぱりMehldauはMehldauだと思わせる。私の中では,本作で最もフィット感が強かったのはこの曲である。これは是非,今後,アコースティック・ピアノのソロでも聞かせて欲しいなぁと思っている。その他の曲では"Just Call Me Nige"が刺激的でカッコいい。いいねぇ。

ということで,本音としてはこの作品の評価は難しいところなのだが,これを避けて通ってはならないということで,注目度を高めるためにも星★★★★☆としてしまおう。例えば,Pat Methenyには"Zero Tolerance for Silence"なんていう超問題作があったが,あそこまでアバンギャルドではないし,ずっと聞き易いので念のため。ハウスとかテクノを聞いているリスナーには何の抵抗もなく受け入れられるのではないかと思える音楽である。また,ここで聞かれるシンセの響きは往時のプログレのようでもあり,そちらの筋のリスナーにもOKではなかろうか。逆に言えば,ジャズ原理主義者には決して受け入れることができないはずである(笑)。問題作ってのはまぁそういうもんだろう。

ところで,本作のリリース後のBrad Mehldauのライブのスケジュールは,レギュラー・トリオでの欧米ツアーなのだから,本作を「売る気あんのかい?」と言いたくもなるが,そういう人なんだろうねぇ。せっかくだから,彼らが本作の発売プロモーションでやったライブの時の写真(こちらはNew York Timesから拝借)もアップしておこう。だが,この時はアルバムの発売が延期になって,タイミング悪しってやつだったのだが...(苦笑)。

Personnel: Brad Mehldau(rhodes, synth, p, vo), Mark Guiliana(ds, electronics)

Mehliana_at_highline_ballroom

« 2014年2月 | トップページ | 2014年4月 »

Amazon検索

2016年おすすめ作

2016年おすすめ作(本)