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2013年6月30日 (日)

ようやくゲットしたJoe Lockeの"4 Walls of Freedom":やはりBob Bergはいけている。

Joe_locke "4 Walls of Freedom" Joe Locke(Sirocco Music)

このアルバムは毎度おなじみ新橋のテナー・サックスの聖地「Bar D2」で聞かせて頂いて,Bob Bergの演奏にしびれたアルバムである。しかし,このアルバム,廃盤状態なので,なかなか高いというのがネックになって,手に入れられていなかったものだが,先日中古盤屋でめでたく発見である。しかも900円である。即買いとなった私である。

このアルバムはJoe Lockeをリーダーとしながら,Bob Bergの吹きっぷりが素晴らしい。特にBob Bergのワンホーンで演奏される6曲から構成されるタイトル・トラックには燃える。もちろん,フリューゲル・ホーンのGerald Presencerが入った曲でもBob Bergはちゃんと吹いているが,ここは前半の吹きまくりモードに身を委ねたい。

このアルバムが録音されたのはBob Bergが不慮の死を遂げる約3カ月前のことである。ここに聞かれる演奏はまさに快演であり,全くもって素晴らしいだけに,本当にBob Bergの死は惜しかったと言わざるをえない。私はやはりBob Bergが相当好きで,私へのフィット感はまさに半端ではないのである。ここでは冒頭のJoe LockeのMIDIヴァイブに一瞬のけぞるが,Bob Berg登場の瞬間から燃える。これはやはり見逃すには惜しいアルバムである。メンツも濃いしねぇ。

ということで,Bob Berg好きの方はこれを見つけたら買いましょう(笑)。星★★★★☆。

Recorded in September 2002

Personnel: Joe Locke(vib, MIDI vib, marimba), Bob Berg(ts), Gerald Presencer(fl-h), James Genus(b), Gary Novak(ds)

2013年6月29日 (土)

パーフェクトな二日酔い

仕事でバタバタしているんだったら,さっさと家に帰って休息を取ればいいではないかという話もあるが,昨日は出張帰りに飲み過ぎた。

私は人よりもお酒に対する許容量が大きく,結構「飲めてしまう」のだが,加齢とともに翌日に酒が残るということが多くなっているのが事実である。今日は久しぶりというか,パーフェクトな二日酔いになってしまった。正直なところ,午前3時ごろに家に帰って上着は脱いだものの,そのほかの服は着たままリビングの床で寝てしまっていたのだが,朝,家人と娘の冷たい視線を感じて目を覚ました時には非常にばつが悪かった。

こういう時は素直に反省すればいいかなぁと思いつつ,反省は続くことなく,また飲んでしまうというのが私の生活パターンである。この記事を書いているのはお昼近い時間だが,まだ酒は完璧に残っているのに,なんだかなぁ。

ということで,明日からはマレーシア出張だというのに,調子悪いねぇ。

2013年6月28日 (金)

出張続きで結構きつい...

昨日,島根への四連泊出張から戻ったのだが,本日(6/28)は長野に出張,そして6/30からは二泊四日でマレーシアである。さすがに体力的にもきついのだが,ここは何とか乗り切るしかない。こんな状態では音楽について書いている余裕全くなしである。困ったなぁ。

そうしたところに届いたのがJohn Legendの新作が9月リリースという情報である。オリジナルは"Evolver"以来5年振りだそうである。正直言って"Evolver"は全然よくなかったが,その後のThe Rootsとやった"Wake Up!"がよかったし,今回はプロデュースにKanye Westが復帰だそうだから,ちょいと気は早いが,今回も即買いだろうな。

2013年6月26日 (水)

耳より情報:Dave Hollandの新バンドPrismのアルバムが9月リリース!

Image

昨年,Dave Hollandが新しいバンドを結成し,ツアー時のブート音源として公開され,それが無茶苦茶カッコいいという記事をアップしたことがある(記事はこちら)。

そこにも,そのうちアルバムを出すだろうとは書いたが,件のバンド,Prismによるアルバムが9月リリースとのメールが,Dare2 Recordから届いた。すでに昨年のツアー時からスリリングな演奏を聞かせていた彼らである。アルバムへの期待が一気に高まってしまった。日本へのツアーはアナウンスされていないようだが,このバンドは是非見てみたい。だって,Holland〜Kevin Eubanks〜Craig Taborn〜Eric Harlandである。間違いない!(笑)

嘘だと思ったら(あまり褒められたことではないが)ブート音源を聞いてみて欲しい。マジで最高なのだ。期待しちゃうなぁ。

2013年6月25日 (火)

またも出張中。

1372075263626.jpg

先週に続いて地方出張中である。先週も島根県だったのだが,今回も同じく当地にて3日連続で仕事である。

だからと言って,遷宮を終えた出雲大社に行けるわけでもなければ,世界遺産,石見銀山を訪れる余裕もないので,ここはやはり飲み食いしか楽しみがない。日曜日は出雲そば,月曜日は出雲牛を食した私である。FBフレンドにはすでに公開済みだが,今日は羽根屋さんで食したそばの画像で許してもらおう。

一段目:山菜,二段目:卵,三段目:とろろ,四段目:油揚げ,五段目:天かすと大根おろしという組み合わせも渋いよね。また食べたいっす。

2013年6月24日 (月)

AOR的Chicagoのベスト盤:侮ってはならない。というより,相当好き。

The_heart_of_chicago "The Heart of Chicago" Chicago(Reprise)

今ではこのタイトルのChicagoのベスト盤はVol. 1と2にわかれてそれぞれ67年から81年のものと,82年から97年のものが出ているが,もともとは"The Heart of Chicago"と言えば,このバラッド,AOR系の曲を中心としたこのコンピレーションのことだったのだが,それも今は昔である。

ChicagoはTerry Kathを事故で失った後の低迷期を経て,David Fosterのプロデュースによって復活するわけだが,AOR化した後のChicagoなんて,と言うリスナーがいるのも事実。だが,私は変貌を遂げたChicagoもそれはそれで悪くないと思っている。"Hard to Say I'm Sorry"はカラオケの持ち歌だしなぁ(爆)。

それはさておき,このアルバムの構成はなかなか悪くない。一番古い曲が冒頭の"Chicago X"からの"If you Leave Me Now(邦題は「愛ある別れ」だったはず)"。これだって,76年の全米1位の大ヒット曲だが,この曲なんてホーン・セクションはほとんど目立っていない。よって,昔からChicagoからそういう素地を持っていたとも考えさせられる曲だが,やはりこの曲が素晴らしい名バラッドなので,アルバムとしての印象がまずは強くなる。そして続々と出てくる70年代中盤から80年代後半にかけての曲には魅力的なものが揃っていることがわかるはずである。これがオリジナル・アルバム全体を聞けばそうでもないのかもしれないが,やはり曲を選べば,ナイスな曲ばかりってことに見事になっている。

もちろん,これ以前のChicagoにだっていくらでも名曲があるというのはわかるし,よりロックを感じさせるのは前期のChicagoである。しかし,Doobie Brothersのように音楽性が全く変わってしまっても受けるバンドもあるのだから,Chicagoが変貌を遂げたところで私には,これだけの曲が揃っているのであれば文句はない。

いずれにしても,今を去ること20数年前の私の在米中には本当にこのアルバムをよく聞いていた。懐かしくも,今でも魅力は衰えていないと思わせるナイスなコンピレーション。星★★★★☆。

いやいや,それにしても懐かしい。

2013年6月23日 (日)

曲の良さが炸裂するNick Drakeカヴァー集

Way_to_blue "Way to Blue: The Songs of Nick Drake" Various Artists(StorySound)

Brad MehldauがNick Drakeの曲をレパートリーとしていることはよく知られたことであるが,私はこれまで,Nick Drakeの音楽を真面目に聞いてきたわけではない。もちろん,本人のアルバムも持っているが,そのうち聞こうと思っているような感じで,後回しにしてきたようなものである。しかし,先日,アルバム"Pink Moon"を聞いて,これまで聞かなかったことを大いに反省したものである。そういうタイミングで,リリースされたのがこのアルバムである。実を言うと,このアルバムを購入したのもScritti PolittiのGreenが参加しているからだから,動機はかなり不順だったのだが,結果的には,様々なミュージシャンがNick Drakeの曲をライブで演奏するというこの企画作を聞いて私はますますNick Drakeに魅かれることとなったと言わなければなるまい。Brad Mehldauが取り上げるのはおそらくこの心の琴線に触れるメロディである。

本作の演奏は2010年のロンドン,バービカンにおける演奏と,2011年,オーストラリアのメルボルンでの演奏が収められているが,ライブでありながら,編集によってオーディエンスの声は消されている。Nick Drakeのメロディ・ラインに触れるにはこうした演出も減点にはならないと思いたくなるほど,このアルバムはNick Drakeの曲への愛が感じられると言っては言い過ぎだろうか。

そもそも本作はNick DrakeをプロデュースしたJoe Boydの企画によるもののようだが,演奏,歌唱もいいのだが,そのバックのストリングスがDrakeの曲のよさを盛り立てるような何とも言えない絶妙な効果を上げている。どれも内省的な曲と言ってよいが,その雰囲気をこのストリングス・セクションが増幅させるのである。

ということであるから,この音楽に刺激を求めてはならない。Nick Drakeというミュージシャンが書いた曲がいかに素晴らしいのかということに身を委ねるというのが私の感覚である。これは正直言ってNick Drakeの魅力を再認識させるに十分なアルバムであり,私は相当感動したと言ってしまおう。

こうした真摯なトリビュートは本当に気持ちがよい。これまでNick Drakeの音楽を聞いたことがない人が聞けば,その魅力を確実に認識できるアルバムだと言ってしまおう。参加しているミュージシャンは必ずしもメジャーな人たちばかりとは言えないとしても,ミュージシャン達の志,心意気を買ってちょっと甘いかもしれないが星★★★★★としてしまおう。沁みる。

Recorded Live at the Barbican on January 20, 2010 and at the Elisabeth Murdoch Hall on November 15 & 16, 2011

Personnel: Kate St. John(oboe, cor anglais, vo), Neil MacColl(g), Danny Thompson(b), Zoe Rahman(p), Leo Abrahamas(g, bandora), Steve Jones(g), Martyn Barker(ds, cajon) and strings with Luluc, Scott Mathews, Green Gartside, Shane Nichoson, Krystle Warren, Robyn Hitchcock, Vashti Bunyan, Lisa Hannigan, Teddy Thompson(vo)

2013年6月22日 (土)

Keith Jarrettの新作はしびれる出来である。先日のライブよりずっといいぞ...。

Keith_jarrett_somewhere

"Somewhere" Keith Jarrett / Gary Peacock / Jack DeJohnette(ECM)

このトリオの作品が出るたびに購入を続けてきた私だが,さすがに最近はマンネリ気味かなぁなどと思いつつ,ライブにまで駆けつけてしまう(記事はこちら)のだから,結局は好きだというのはバレバレである。しかし,彼らのアルバムを聞いても100%素晴らしいということはここのところなかった。どうしても違和感が残ってしまったり,聞いていても以前のような高揚感を覚えないという感じである。特に"My Foolish Heart"なんてかなりボロクソに書いている(記事はこちら)。だが,それが私の偽らざる心境だったのである。

しかし,本作を聞いた印象は全然違う。はっきり言って,主題の通り,先日オーチャードで聞いたライブよりずっといい。そもそも冒頭の"Deep Space"からして,Keithの近年のソロ・ライブにおけるような現代音楽的なアプローチで入りながら,そこに"Solar"のテーマをダークに被せてくるという技ありのスタートである。そして,トリオとしての演奏が始まってしまえば,そこには至福の瞬間が待っている。これで完全に掴みはOKである。

そしてある意味手あかのついたスタンダードと言ってよい"Stars Fell on Alabama"を非常に美しく響かせ,"Between Devil And The Deep Blue Sea"は軽くバウンスする感じで,リラクゼーションを生み出すというところである。私にとってはこれは若干軽過ぎる感覚がないわけでもないが,それでもその次に現れる"Somewhere"の清冽とも言うべき美しさを盛り上げるためのプレリュードのようにさえ思える。Keithは本作で"Somewhere"に"Tonight"と「ウエストサイド物語」からの曲をやっているが,選曲としては意表を突くものと言ってよいはずだが,これがよい。特にタイトル・トラック"Somewhere"から,以前のKeithのソロでの演奏に聞かれたようなフォーク・ロック的なタッチで演じられる"Everywhere"へ移行していくタイミングにはぞくぞくさせられてしまった。サウンドとしてはどこか懐かしいのだが,こういう展開を私でなくても多くのリスナーが求めているのではないかと思わされた瞬間である。やはりこのトリオはこれぐらいでなければならないと思わせるし,単純なスタンダードの再構築からの逸脱が感じられるところに,私は興奮させられるのである。この感覚はオーチャードでのライブでも同じで,一歩突き抜けた時,この人たちは凄いことになってしまうということを実証したようなものである。

それに続く"Tonight"はノリのいいテンポで演じられて,前曲とのメリハリをつけながらも,Bernsteinの書いたメロディの美しさはきっちり出していると同時に,Keithのソロのフレージングが非常に素晴らしい。これもまじでいい。そして比較的あっさりとではあるが,美しく"I Thought about You"で締めるというのももたれなくていいって感じである。この余韻にまいってしまった私である。

ということで,このアルバムはレベルが高いのに加え,よく計算されて作られているという感じがする。いずれにしても,近年リリースされたこのトリオのアルバムでは間違いなく最高の出来だと思った。これなら星★★★★★である。

Gary Peacockの年齢ゆえに,このトリオでの演奏はもう難しいかもしれないが,30年間,ほとんどレベルが下がっていないというのが驚異的。でも彼らには"Never Say Never Again"と言っておこう。

Recorded Live at KKL Luzern Concert Hall on July 11, 2009

Personnel: Keith Jarrett(p), Gary Peacock(b), Jack DeJohnette(ds)

2013年6月21日 (金)

イタリア戦は惜しかったが,なかなか面白い試合であった

Photo_2 6/20の朝に放送されていたコンフェデレーションズ杯のイタリア戦は,フルに観戦できたわけではないが,収穫もあれば,課題も見つかった試合だったのではないだろうか。

私は出張中で,東京へ向かう帰りの飛行機の時間もあり,最後までは見られなかった。見ていたのは3対2とイタリアに勝ち越されたところまでで,その後は経過をTwitterでチェックしていたようなものであるから,多くを語る資格はない。

だが,日本の攻撃陣は比較的機能していたし,本田のPK,香川の振り向きざまの素晴らしいシュート,更に遠藤のFKから岡崎へのジャスト・ミート等,見ていていいねぇと思ってしまうようなプレイが結構あった。ボール支配率も上回り,シュートの本数もイタリアを上回っていたのだから,オフェンスはいい線はいっていたということである。

だが,ディフェンスには課題を残したことは間違いないだろう。簡単にボールを取られ過ぎというのもあるが,一瞬での爆発的なスピードアップに対応できていないように思えた。ある意味では攻撃への意識が強くなり過ぎて,ディフェンス面でのカバレッジが十分ではなかった部分があるように思える。瞬発力を上げて,攻守のバランス感覚を上げていかないと,FIFAランキング上位とはまだ対等に戦えないと思えた一戦である。

これで,一次リーグ敗退となったとは言え,世界の列強と戦うチャンスが得られたことはきっと来年のW杯本戦への糧にもなるだろうし,さすがに選手たちもザックも3連敗はしたくないだろう。よって,次のメキシコ戦は,手を抜かず,ベスト・メンバーで臨んで欲しいものである。

2013年6月20日 (木)

出張中につき...

毎度のことながら、出張先で飲み過ぎて、記事を書けず。ということで今日はお休みです。

2013年6月19日 (水)

ロックと呼ぶのはやや抵抗ありだが,Tangerine Dreamである。

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"Rubycon" Tangerine Dream (Virgin)

ボックス・セットの一枚として買って以来もう一年以上が経つが,相当気まぐれでないとTangerine Dreamの音楽は聞かないなぁなんて思っている。だったらなんでこれを聞いてるんだと言われれば,返答に窮する私である。結局は出張の移動中の気まぐれでしかない(笑)。

だが,聞きだすと彼らの音楽は麻薬的な魅力に満ちている。やめられなくなってしまうのである。私は彼らの音楽は決してニュー・エイジではないと書いたことがあるが,その感覚は今回も変わらない。これはもっとテンションの高い音楽である。ニュー・エイジというとリラクゼーションとかヒーリングってことになろうが,Tangerine Dreamの音楽にはそうした要素は希薄であり,むしろ緊張感に満ちているからである。

こうした音楽が今の時代にどうフィットするのかよくわからないし,それこそ40年近く前にリリースされた時にどのように受け入れられたのかもよくわからない。少なくとも1975年当時の私なら絶対聞いていない。その頃ならすでにプログレに走りつつある私だったはずだが,当時なら「何でこれがプログレやねんっ!」と毒づいていたはずである。

しかし,私も年齢を重ねて音楽への許容力が増したのか,今や全く抵抗感なしである。というよりも,むしろ快感すら覚えるというのは,我ながら笑ってしまう。時の経過と共に,音楽の嗜好が完全に変化したわけではないが,それでもこういう音楽もいいと思えるようになったのは,まぁ悪いことではないし,そう思わせるに十分ないい演奏だと思う。これも歴史の一コマってことで星★★★★★。

Personnel: Christopher Franke(synth, org, gong), Edgar Froese(synth, g, gong), Peter Baumann(el-p, org, synth)

2013年6月18日 (火)

ど,ど,どシブいコンピレーション。まじで「ど」がつくわ。

Swiss_radio_days_32 "Swiss Radio Days Jazz Live Trio Series Vol. 32" Sahib Shihab / Art Farmer / Clifford Jordan (TCB)

先日,同じシリーズのStan Getzの演奏をここでも紹介したばかりだが,同じく新橋のテナー・サックスの聖地Bar D2のマスターに聞かせてもらって,これも即発注したCDである。Stan Getz盤と異なり,ここでは主役が3人である。録音時期はバラバラではあるが,無茶苦茶渋い。そもそもSahib Shihab,Art Farmer,そしてClifford Jordanという組み合わせは普通では思いつかない,というか渋過ぎである。

このアルバムはそうした渋い面々が,Jazz Live Trioなるおそらくはスイスのバンドをバックにワンホーンで演奏した音源を集めたものだが,それにしても渋い。やっぱり渋過ぎる。

Art FarmerとClifford Jordanはわからないわけではないが,Sahib Shihabはやっぱり渋いだろう。バリトン・サックスのワンホーンっていうのが私が痺れるパターンなのだが,バックのピアノがおそらくはRhodesというのもたまらん。これがバリトン好き,Rhodes好きにはたまらないのである。

そして演奏だが,どこを切っても渋い。しつこいようだが,全面的に渋い。バラッドをやっても,ブルージーにやってもどうやっても渋いものは渋いのだ。それ以外の表現は今のところ,私にはない。私の表現力の乏しさもあろうが,この音源を聞いて頂ければわかってもらえるはずだと強弁したい。Sahib Shihabの演奏にやられて,Art Farmerのリリカルな演奏で平常心に戻り(悪い意味ではない)ながら,再度Clifford Jordanでトリップするという演奏のバランスも素晴らしいコンピレーションである。これははっきり言って子どもにはわからない世界である。いいのだ。オジさんだけが喜んでいればと言い切りたくなるマジで渋い世界である。この渋さだけで満点をつけるつもりはないが,これはやっぱり心あるオジさんに聞いて欲しいということで星★★★★☆。だが,この音源がブルーノート等の昔の音源ばかりが聞こえてくる昨今の飲み屋のBGMとして掛かることはないだろう。これを聞けるところ,それがBar D2なんだよねぇ。ということで,マスターにまた感謝。

それにしても訳のわからない記事を書いてしまったが,いいものはいいってことで。

Recorded on January 17, 1990(5-7), on October 30, 1971(1-2), and on November 12, 1977(3-4)

Personnel: Sahib Shihab(bs), Art Farmer(fl-h), Clifford Jordan(ts), Klaus Koenig(p), Peter Frei(b), Peter Schmdlin(ds, 1-4) and Alex Bally(ds, 5-7)

2013年6月17日 (月)

在米中に盛んにエアプレイされていたBasia

Basia "London Warsaw New York" Basia(Epic)

私が米国に在住していたのは1990年8月中旬~1992年6月初旬までであるが,その頃は簡易なオーディオ・セットで現地で買ったCDを聞いていたが,CDを聞く時間以上にFMを流しっぱなしにしていたものである。その時,本当に世話になったのが今は亡きWQCD New York(CD101.9)というスムーズ・ジャズ・ステーションであったが,その頃,スムーズ・ジャズにまぎれてエアプレイされる頻度ではSadeと並んで,このBasiaが二大巨頭だったように思える。加えてGloria Estefanもそこに入ってくるかもしれない。スムーズ・ジャズは基本的に「ながら~」を許容する音楽であり,耳当たりは非常によいのだが,このアルバムを聞いていると,あれだけエアプレイされるのもむべなるかなと思わせる。特によく掛かっていたのは冒頭の"Cruising for Bruising"だと思うが,たまにこの音楽を聞いていると,当時が懐かしくなってしまう私である。

今にして思えば,当時としてはこれはスタイリッシュな音楽だったのだろうなぁなんて感じてしまうが,驚いてしまうのはBasiaがポーランド出身ということである。フルネームはBasia Trzetrzelewskaと舌を噛みそうなので,Basiaと称するのは正解である(笑)。ポーランドと言えばショパン,現代のジャズ界で言えば,Marcin Wasilewski程度の認識しかない私にとっては,このBasiaの音楽はポーランドとあまりストレートには結びつかない。しかし,そんなことはどうでもよくて,このポップスのセンスに心地よく乗っていればよいように思える。こういう音源に小難しいことを言っても意味がないと思わせるようなComfortableなアルバムと言ってよい。中古盤屋では無茶苦茶安く手に入るのはそれだけ売れた証拠(ちなみに私は180円で購入したはず)だが,今聞いてもそんなに魅力は低下していないと思う。星★★★★。

それにしても,私もいろいろCDを持っているねぇと思う選盤ってことで。たまにはこういうのもよい。

Personnel: Basia Trzetrzelewska(vo), Peter White(g, accor), Marc d'Aieur(g), Andy Ross(g), Danny White(key, ds, prog), Andy Lafone(b), Julian Crampton(b), Ronnie Ross(bs, bass-sax), Bud Beadle(sax), Steve Gregory(sax), Kevin Robinson(tp), Andy Gangadeen(ds), Snowboy(perc), Robin Jones(perc), Mike Dignam(perc), Gavyn Wright(strings), Fiachra Trench(strings)

2013年6月16日 (日)

やっぱりこのRobert Palmerは最高だ!

Riptide "Riptide" Robert Palmer (Island)

Power Stationの活動を経てリリースされた,このRobert Palmerのアルバムを私は長年愛聴している。それはこれまでもそうだし,これからも変わらない。そのぐらい私はこのアルバムが好きなのである。あまりに好きだったので,私はRobert Palmerのライブにも2回行っている。1回目はロンドン出張中のHammersmith Odeon(1988年9月のはず),そして日本でも中野サンプラザに行っている。それが1989年3月のはずである。こんな短いインターバルで行ってしまうところに私のRobert Palmerへの肩入れ具合が感じられる。どちらのライブでも,やっている音楽とは全く釣り合わない感じなのだが,Palmerが粋にスーツを着こなしていたのが強く印象に残っている。

それまでもRobert Palmerと言う人は評価の高い人であったが,一般的なポピュラリティを獲得したのは本作にも収録されている"Addicted to Love"のミュージック・ビデオにもよるところ大の,その曲の大ヒットだったと思う。Power Stationが強力なロックで,それまでのPalmerの音楽からの変化にとまどったリスナーも多いはずだが,私にとっては本作が彼の音楽への入り口だったから,全然問題なしであった。振り返ってみれば,ちょうどCDの普及期にリリースされたこのアルバムを私が買ったのは,当時実習で居住していた茨城県水戸市においてのはずである。それ以来,25年以上,私はこの音楽を何度聞いても飽きることがない。それぐらい,おそらく私の音楽的嗜好にフィットしていたということだろうが,ここで展開されている音楽のハードさとPalmerの声が何とも言えぬ快感を私にもたらすのである。

このアルバムのトーンはTony Thompsonも参加していることもあり,Power Stationのアルバムを引き継いだものではあるが,そっちも結構好きだとしても,私にとってはPalmerと言えばこれである。冒頭の"Riptide"が流れると,いきなりスローな出だしで驚くが,そこからの"Hyperactive"への劇的転換は何度聞いても興奮する。そして"Addicted to Love"だが,これはやはりMTVと完全にリンクしたものではあったし,映像のインパクトが強いのは事実だが,それでも曲もいいから流行ったということには間違いない。

このアルバムの後,PalmerはこうしたHyper路線を続けたが,徐々に失速したのは残念だった。それはアルバムのプロデュースが今イチ感が強くなっていったことによるものと私は考えているが,挙句の果てに2003年には54歳で亡くなってしまったのはあまりにも早過ぎる死だった。だが,本作,更には後追いで聞いたら,全然音楽性は違うが,本作にも勝るとも劣らない"Pride"のような傑作をものにしていたのだから,ちゃんと名は残したと言うべきであろう。

今回,この記事を書くために久しぶりに通しで聞いたが,やっぱりイケているアルバムであった。私にとって非常に思い出深く,心に刻まれた傑作である。星★★★★★。本作をプロデュースしたBernard Edwardsには大いに感謝したい。

Personnel: Robert Palmer(vo, b, g, ds, key), Eddie Martinez(g), Andy Taylor(g), Wally Badarou(key), Jeff Bova(key), Jack Waldman(key), Bernard Edwards(b), Tony Thompson(ds), Donny Wynn(ds), Lenny Pickett(horn), Benny Diggs(vo), Fonzi Thornton(vo), Chaka Khan(vo arr)

ということで,やっぱりこの映像は貼り付けておこう。

ついでに本作収録ではないが,更にエロい"Simply Irresitable"のビデオも貼り付け~。

2013年6月15日 (土)

Pharoah Sanders,吼える!

Pharoah_sanders "Live..." Pharoah Sanders (Theresa→Evidence)

私は夏になると,フリー・ジャズやハードロックなど,かなり激しい音源を聞きたく傾向が強い。暑苦しさを吹き飛ばすためには,それ以上の暑苦しさが必要なんて感じているからである(笑)。このアルバムなんて,そういう気分に最適であろう。特に1曲目"You've Got to Have Freedom"のぶちかましでつかみはOKである。

私はPharoah Sandersのファンということはないのだが,ツボにはまった時のSandersは本当に凄い。このブログでもFranklin Kiermeyerの"Solomom's Daughter"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,そこでのPharoahが最たる事例。そして,ここでも"You've Got to Have Freedom"冒頭からのフリーキーなトーンを聞いて,「来た,来た,来た~」と思うのは私だけではない。ついでにテナーだけでなく,声でも吼えるPharoah Sandersに笑える。MCでもここまで吼えなくてもよかろうみたいなところがあるが,意外とPharoahの声が高いのにも笑える。イメージ的にはもっと野太い声を想像していたが,人は見掛けによらない(笑)。

そして,2曲目は1曲目と落差巨大な"It's Easy to Remember"だが,あたかもColtraneの"Ballads"に倣ったかのような演奏ぶりである。1曲目の咆哮からクールダウンしたって感じと思えばいいが,落差は大きくても納得できる演奏ぶりである。そして3曲目"Blues for Santa Cruz"で黒い感覚を打ち出し,またここでも歌い出すPharoahである。いいねぇ~。4曲目"Pharomba"は比較的抑制された曲調だが,やはり段々熱を帯びてくるPharoahが聞ける。やはりこの人熱くなる体質かと思いたくなる。最後の"Doktor Pitt"はCDのボーナス・トラックだが,約22分のなかなかいい演奏が聞ける。こういうのが未発表だったってのは信じ難いが,ここでも熱くなってくるPharoahの演奏ぶりがちゃんと収められている。特に中盤,人間ワウワウのようなトーンを聞かせた後の吹くわ,叫ぶわの炸裂ぶりは最後を締めるにはいいねぇ。熱く始まり,熱く終わる。これぞPharoahの真骨頂である。

このアルバム自体はバックのメンツもあって,演奏そのものはフリー・ジャズというカテゴリーに入れるべきものではなく,どちらかと言えば,コンベンショナルなスタイルだと言ってもいいのだが,そうした中でPharoahの突出ぶりが強烈。John HicksのピアノとIdris Muhammadのドラムスもよいが,実を言うと,私はここでベースを弾いているWalter Bookerが苦手,というよりも,この人のベース音が嫌いである。Ron Carter同様の増幅感と言うべきか。やっぱりここでも好きになれない音である。だが,バンドがバンドだけにベースが目立つということはないので,ここでは目をつぶることにしよう。

いずれにしても,ここでのPharoahは"You've Got to Have Freedom"に尽きると思うが,これ1曲だけでこのアルバムが人気盤(と言っても好き者の間だけだろうが)になるのもうなずける話である。そして,ボートラも非常にナイスということで,星★★★★☆。やはり夏にはこういう音源が必要だと思ってしまった。

Recorded Live at the Great American Music Hall on April 12(5), at the Maiden Voyage on April 16-19(1, 2) and at the Kuumbwa Jazz Center on April 20(3, 4), 1981

Personnel: Pharoah Sanders(ts), John Hicks(p), Walter Booker(b), Idris Muhammad(ds)

2013年6月14日 (金)

非常に音のいいStan Getzの放送音源

Stan_getz_swiss_jazz_days "Swiss Radio Days Jazz Series Vol.29" Stan Getz(TCB)

毎度おなじみ,新橋のテナー・サックスの聖地Bar D2で聞かせて頂き,即刻発注したものがデリバリーされた。私はかなりのStan Getz好きだが,こういう演奏を聞くとマジで嬉しくなってしまう。これは昨年リリースされた未発表音源のようであるが,1960年のJATPの欧州ツアーの一こまである。ベースとドラムスはOscar Petersonのトリオから拝借してきたものだが,ポイントはJan Johanssonのピアノということになるだろう。この時のJohanssonは28歳。瑞々しいピアノを聞かせているが,ややミックスのレベルが低いのは残念。

だが,その一方で,このアルバムのポイントを高くしているのは,半世紀以上前の録音とは思えない音のよさなのである。私は残念ながらGetzのライブを観るチャンスには恵まれなかった(というより,私がGetzの音楽に目覚めたのは実は彼の死後だったと言ってもよい)が,若い頃のGetzのライブはこんな感じだったんだろうと想像させるに十分なリアルな音である。そしていつも通りの流れるようなフレージング。素晴らしい歌心である。そして,"Woody n' You"においてはGetzのソロ冒頭ではJohanssonがバックをつけず,ピアノレス・トリオ状態でソロを吹くGetzが聞けるのだが,これがまた素晴らしい。本当に大した人である。それ以外でも意図的にJohanssonがバックでの演奏をやめる瞬間があるのは意図的なものであろうが,それにしてもこれはよい。

Getzのよいところは,曲のトーンがどんなものであろうとも,一聴してGetzとわからせてしまうところだが,ここでもGetzカラー炸裂である。こんなアルバムが出ていたことを今まで知らなかった私が,Getzのファンなどということ自体片腹痛い(爆)が,それにしても,またまたマスターにはいいものを教えてもらってしまった。Getzには名盤が多く,それらと比べるとどういう評価をすればいいのか悩ましいのだが,星★★★★☆としておこう。私が生まれる前のライブ録音でこのサウンド・クォリティなら文句は出ないはずである。

Recorded Live at the Kongresshaus, Zurich on April 8, 1960

Personnel: Stan Getz(ts), Jan Johansson(p), Ray Brown(b), Ed Thigpen(ds)

2013年6月12日 (水)

Geraldo Henrique Bulhõesって誰?と思いつつ,強烈なメンツがバックについている...

Geraldo_henrique_bulhes "Quaser" Geraldo Henrique Bulhões (自主制作盤?)

リーダーの名前は全然知らないが,Down Beat誌の広告を見ていて目が点になってしまったアルバムである。見よ,このメンツを!これを見て聞きたくないと思う人間はそうはいるまい。それほどのメンツである。クリポタ,Seamus,Adam Rogers,PatitucciにNate Smith,そしてゲストにスコヘンって,一体どういうこと?

しかし,その一方で,リーダーはブラジル出身ということぐらいしかわからないぐらい情報がネット上でもヒットしないのである。どういう縁があれば,これだけのメンツが集められるのだろうか。しかもプロデュースをしたのはAdam Rogersである。このアルバム,不思議なことはCD媒体でも発売されるはずなのだが,ダウンロード音源しか見当たらず,早いところ聞きたい私はダウンロードでの購入となった。そのため,曲ごとのメンツははっきりしない部分があるのだが,ここは耳に頼るしかない。と言ってもそれほどの耳はないが(爆)。

そして流れてくるのはまさしくこのメンツならではの音である。ゲストとリーダー(及びPattitucciもか)を除けば,Smallsに出演しているようなメンツであるから,何らかの共演歴がある中でのこういうアルバムとは思うのだが,いかにもなのである。正直言って曲のクォリティは決して高いとは思わないが,それでもそこで展開されるインプロヴィゼーションには熱くなる瞬間が多い。クリポタもSeamusも思ったほどは激しくやっていない(十分激しい?)が,それでもちゃんと吹いているのは事実。私としてはAdam Rogersがどこで弾いているのかだけがよくわからん。スコヘンは誰が聞いてもスコヘンだろうというフレージングを"Radioactive"で聞かせて笑わせてくれる。ここまで行くと誰のアルバムかわからないし,そうした意味では相当この曲が浮いていると言っても過言ではない。逆にリーダーの個性って何なのよって聞きたくなるのも事実である。

ちなみにタイトル・トラックは全く情報不足の(笑)リーダーのWebサイト(http://geraldohenrique.com/)で聞けるので,まずはお試しの上ってのもオプションであるが,このメンツである。信用を裏切ることはなかったということにしておこう。う~む,それにしても,どうやってこのメンツを...。典型的コンテンポラリー・ジャズのカテゴリーでの初リーダー作に対するご祝儀も含めて星★★★★。

Personnel:  Geraldo Henrique Bulhões(g), Chris Potter(ts), Seamus Blake(ts), John Escreet(p, key), Adam Rogers(g), John Patitucci(b), Nate Smith(ds), Scott Henderson(g), Ademir Junior(as)

2013年6月11日 (火)

予想をはるかに上回ったPat Methenyの"Tap"

Tap "Tap: John Zorn's Book of Angels, Vol. 20" Pat Metheny (Nonesuch)

昨日もちらっと触れたこのアルバム,通しで聞いてみたのだが,これはかなりよい出来である。Pat MethenyとJohn Zornというのは簡単に結びつかないが,本作はPat MethenyがJohn Zornのオリジナルを演奏するというもの。アップ・テンポの曲とスローな曲が交錯するが,アップ・テンポの曲ではジューイッシュ的なメロディ・ラインが顕著に顔を出す。しかし,それはテーマだけであって,アドリブ・パートはそうした雰囲気は希薄になる。その一方でアコースティックで演じられるスローな曲は一聴非常に美しい響きを持つが,そこはかとない毒を忍ばせる。このバランスが何ともいいのである。

そして,それを支えるAntonio Sanchezの変幻自在のドラミングがこれまた素晴らしい。パワー十分,かつその反応は先日のUnity Bandでのライブ同様にヴィヴィッドである。

John Zorn曲集と聞くと,ついついNaked City的な凶暴な音楽を想像してしまうが,John Zornという人の音楽は"News for Lulu"でも明らかな通り,決してそれだけではない。単なるフリーの枠を越えた幅広さを持っているのはわかってはいるのだが,それでもPatの演奏とこれほどフィットするとは思わなかった。

最後の"Hurmiz"におけるPatのピアノは山下洋輔かっ!みたいな感じでご愛嬌だが,このピアノのシャビーな響きが何とも面白い。このアルバム,宅録に近いはずだが,決して音が悪いわけではない中で,この"Hurmiz"のピアノだけが妙に安っぽい音に録れているが,これはその他の楽器の音の録れ具合と比べると,意図的なものを感じる。それにしても,この演奏には結構笑えた。

全体を通して聞けば,いかにもオーケストリオンみたいな音もあるが,ギタリストとしてのPatの演奏を聞くためのアルバムとしても問題はないし,過去の問題作"Zero Tolerance for Silence"のような不快感(まじであれは嫌いだ)はない。もちろん,フリー的な響きもあるが,それでもちゃんとメロディ・ラインがあった上でのインプロヴィゼーションの一部としてのフリー的展開なので,これはこれでありである。

実は私はこのアルバムはあまり期待していなかった(というより怖かったというのが正直なところ)のだが,いい意味で大いに期待を裏切ってくれた快作。繰り返しになるが,美しい薔薇に鋭い棘があるように,この音楽には美的な展開の中にも毒が忍んでいる。あるいはスリリングな展開を更に高揚させるためのフリーがある。ということで,これはさまざまな観点でPat Methenyというギタリストの魅力を引き出したアルバムだと思える。そして,Sanchezの音への貢献が大きい。ということで,私は"Orchestrion"よりこちらの方をはるかに支持する。星★★★★☆。

正直言ってしまえばこのNonesuch盤よりも,同時発売となったTzadik盤のジャケの方が好きだが,こっちの方が安かったから,こちらを購入した私。それでもいいの,いいの(笑)。

Personnel: Pat Metheny(g, g-synth, b, p, bandneon, fl-h, electronics, orchestrionic marimba, orchestra bells), Antonio Sanchez(ds)

2013年6月10日 (月)

新譜の山の中で...

ここのところガンガンCDがデリバリーされているのだが,なかなか聞く余裕がない。そうした中で,Pat Methenyの新譜"Tap"をちらっと聞いたのだが,John Zorn曲集ということで,"Zero Tolerance for Silence"みたいだったらどうしようと思っていたのだが,1曲目を聞いた限りでは,杞憂に終わったようである。

記事は改めてアップするが,1曲目については,多重録音を駆使した宅録ながら,宅録っぽさはあまり強くはなく,フリー的な要素も控えめで結構聞きやすいものになっていたのは嬉しい誤算であった。

2013年6月 9日 (日)

映像美を追い過ぎの「グランド・マスター」

Photo 「グランド・マスター(一代宗師)」('13,香港/中国/仏)

監督:王家衛(ウォン・カーウァイ)

出演:梁朝偉(トニー・レオン),章子怡(チャン・ツィー),張震(チャン・チェン)

この映画を宣伝文句に騙されてカンフー映画だと思って見に行くとガックリするはずである。これはカンフーを素材にした大河ロマンであり,カンフーはあくまでも素材に過ぎないからである。よって,これはアクション映画ではなく,あくまでもドラマなのである。

この映画,映像は美しいものの,スロー・モーションやアップ映像の多用によって,正直言って見ていて疲れるし,飽きる。アクション・シーンはまさにコリオグラフィーを見るかの如き見事さだが,いかにもワイヤーと思わせるような部分もあって,興をそぐ部分があることも否定できない。私は王家衛の前作,「マイブルーベリーナイツ」も映像のスタイリッシュさは認めつつも,どうもピンとこなかった(記事はこちら)のだが,今回の作品も踏まえれば,王家衛が撮る映像の美しさは認められるものの,本当にこの人が映画監督として優秀なのかよくわからないままである。

そして,告白してしまえば,私はこの映画を見ていて何度も睡魔に襲われてしまった。即ち,映像の美しさだけでは私の集中力は保てなかったということである。それに,冒頭に加えられた映像は何だったのか?あれは日本向けに追加されたもののように思えるが,日本語のナレーションが聞こえてきて,これは吹替え版か?と焦ったのはきっと私だけではあるまい。

いずれにしても,私にはこの映画を評価することができない。特にカンフー映画として期待して劇場に足を運んだ観衆にとっては梯子を外されること必定。もちろん,一大ロマンとして見るべきところはあるのだが,上述の通り,映像美だけでは映画としては成り立たない。チャン・ツィーは綺麗だが老けメイクは似合わない。綺麗な人を綺麗に撮るのも監督の仕事と言っておきたい。星★★☆。

2013年6月 8日 (土)

チョン・キョンファの東京文化会館でのリサイタルを振り返る

1 私の亡くなった父はモーツァルトとヴァイオリン音楽の好きな人であった。父のお気に入りのヴァイオリニストはViktoria Mullovaだったので,私も遺品として彼女のCDを受け継いでいる。MullovaはMullovaで嫌いではないのだが,私の中でのヴァイオリニストというと,チョン・キョンファ(鄭 京和,Kyung-Wha Chung)となってしまうのである。彼女は暫く一線から退いていたようだが,めでたく復活,そして今回の来日とあっては,やはり聞いてみたい。前回日本でリサイタルをやったのは15年前ということだから,次があるとも言い切れない。だったら,もっとさっさとチケット買っておけよというのに,実は彼女の来日を知ったのは5月になってからというのだからいい加減なものである。それでいろいろチケットを探していたのだが,チケット買いそびれの割には17列センターというナイスなポジションのチケットが残っていた。12,000円は痛かったが,えぇい,ままよということでの購入である。

そして今回の会場は上野の東京文化会館。私が「文化」に最後に行ったのは何の時だったか?もしかすると,学生時代,楽器の搬入のバイトで行って以来ということはないはずだが,いずれにしても,相当久々の「文化」となった。

そして,会社が引けた後,喜び勇んで上野に向かったわけだが,何とも年齢層の高い聴衆である。中年ど真ん中の私が若輩者に見えるようなご高齢者のかたまりにはびっくりしてしまったが,昨年,Lupuを見た時はここまでではなかったはずである。今回主催が都民劇場ということも影響しているかもしれないが,とにかく平均年齢は非常に高かったと思う。

そもそもチョン・キョンファと言っても,若い人たちは名前ぐらいしか知らないんだろうなぁと思えば,この聴衆の年齢層も理解できないことはないが,私の場合は彼女の弾くコンチェルトにしろ,ソナタにしろ,何とも言えぬテンション,緊張感があって本当に好きなのだ。今回はプログラムの関係で「シャコンヌ」が聞けなかったのは残念だが,それはなくとも,彼女らしい緊張感は感じられる演奏だったと思う。少なくとも第二部は。

ちょっとふっくらしたかなぁという印象のチョン・キョンファであったが,見た目は結構若々しい。今回も上の写真のようなショート・カットに,白いドレスでの登場である。冒頭のモーツァルトのソナタは軽く小手調べみたいな感じで,どうもピンとこなかったが,2曲目のブラームスになって,美しい響きを聞かせて印象は好転。そして休憩をはさんでやったシマノフスキーが彼女らしいテンションを感じさせてそうそう,これこれと思わせた。やはり彼女はこうでなくてはならない。そしてプログラム最後はフランクで締めたわけだが,もともとが美しくもダイナミズムも感じさせる曲で,これも素晴らしい演奏であった。そしてアンコールが2曲。

全体を通して聞けば,満足度は高かった。特に第二部,特にシマノフスキーが私にとっては一番よかったかなぁってところだが,ただ,今回のリサイタルでは「痺れるような感覚」,「締め上げられるような感覚」はやや薄く,これが彼女の成熟なのかなぁなんて思っていた私である。女性の年齢を書くのは失礼だが,彼女も還暦をとうに過ぎているわけで,そんなテンションの高い演奏を求めてはいけないのかもしれないが,それでも十分に彼女の技は楽しむことができたと思う。演奏を開始する前の集中力を高めようとする姿も凛凛しかった。

ついでにと言ってはなんだが,ピアノのKevin Kennerの見事な伴奏についてもちゃんと評価しなければならない。さすが第11回ショパン・コンクール2位(このときは1位なしだったので,最高位)だけのことはあると思わせた。

2013年6月 7日 (金)

またも痛風発作...

前回は4月のマレーシア出張中に発作が出たばかりなのに,約1.5カ月という短いインターバルで再発である。しかも前回と同じ場所。

これもひとえに日頃の不摂生のせいだと言われれば返す言葉もないのだが,やはり日頃の飲み過ぎの影響は否定できない。これはやはり酒量を減らすしかないと思いつつ,やめられないんだよなぁ...。今回は症状が一時的に劇的に悪化しながらも(正直一時は歩くことができないような状態だった),幸いボルタレンが非常に効くレベルであったが,それでももう暫くは発作はええですわ。

2013年6月 6日 (木)

おめでとう,日本代表なんだけど...

Pk この記事は昨日アップしようと思って書いていたのだが,なぜかアップを失念してしてしまったもの。試合直後のビビッドな感じはなくなったが,多分こう思っていたのだろうということで,(誤字脱字を除く)編集なしでアップしたい。

ワールドカップのアジア最終予選において,日本代表は極めて有利な立場にいたから,これでブラジルW杯の出場を逃すというのは正直想定できない状態であった。それでも勝負は下駄をはくまでわからないということで,埼玉スタジアムでのオーストラリア戦を応援モードで家で観戦していた私である。

試合は非常に悪い時間にしょうもないゴールで先制され,負けを覚悟した私だったが,相手のこれまたしょうもないハンドに救われて,本田のPKで同点に追いつくという,これまたなんだかなぁという結果であった。結果的にW杯出場を決められたのだから,それはそれでいいのだが,今回の試合にはやっぱり文句を言っておかなければならない。

オーストラリア代表というのは,アジア杯でも,ほかの局面でも,日本の好敵手と呼んでいい好チームである。私の場合は韓国代表との試合と同様の感覚を,オーストラリア代表にも抱く。そんなチームである。しかも日本代表はこれまでオーストラリア代表に苦汁をなめさせられてきたというのが実態である。それを考えれば,彼らを怖いと思うのが当たり前。しかし,今回のオーストラリア代表は,彼らのアジア最終予選での苦戦をなるほどと思わせるような,力強さに欠けるチームであった。見ていても全然怖くない。

試合を見ていて,あんなチームが相手なら勝つのが当たり前だと思っていたが,しょうもないゴールで先制され,結局相手のミスでPKをもらっているような展開は私にとっては想定外のものであった。繰り返すが,今回のオーストラリア代表ほど怖さを感じなかったことは,今までの彼らとの対戦を目撃した経験でも正直言ってない。カウンター・アタックのスピードだって大したことはなかったし,相手がオーストラリア代表のくせに,やばいと思わせる瞬間が少な過ぎた。

だとすれば,あの程度のチームにあの程度のゲームしかできないのでは,日本代表の実力には不安を覚えざるを得ない。今回はコンディションもあろうが,岡崎を後半のあの時間まで引っ張る理由はなかったはずである。正直言って遠藤も全然活躍していなかったのだから,さっさと清武か中村に変えるオプションもあったはずなのだが。ザックは何を見ていたのだろうか?勝てば官軍,負ければ賊軍だが,それこそ,今回のインタビューなどを見ていると完全に「勝てば官軍モード」ではないか。やっぱり気に入らない。

その一方で,絶対ほめておかなければならないのが,本田のPKである。あのPK自体はたまたま以外のなにものでもないラッキーPKだというのは皆さんおわかりになるはずである。なんせ,原因は相手のハンドだし。もちろん,オフェンスに転じた結果としての相手のハンドだということはわかるが,それでもやっぱりラッキー過ぎる。だが,あの時間で勝負がつくというよりも,そのキックで実質的にW杯の出場が決まるとなれば,尋常ならざるプレッシャーを感じるのが普通である。通常のPK戦でも多くの名選手がはずす姿を見ていれば尚更である。だが,それをど真ん中に決める本田には「俺って持ってる」って言われても反論の余地がなかった。あそこで真ん中に蹴れる人間はそうはいないはずなのだ。

今回の試合に対して文句の多い私ではあるが,本田のPKの際には,アジア杯でのPK戦で「川島,川島,川島~」と叫んでいたのと同様に,「本田,本田,本田~!!」と絶叫していたのを完全に家人に見られた私である。でも絶叫したくなる気持ちは誰にでもわかるはずだし,決めた瞬間のボルテージは無茶苦茶上がっていた。そして,世界の誰よりも早く,W杯予選を勝ち抜いたということは誠に見事。これでコンフェデ杯にも力一杯取り組めるはずである。現在の世界とのレベルの差を知る上でも絶好の機会をW杯出場権とともに得たことで,彼らのレベルが一段アップすることを確信している。

最後に言っておこう。「神様,仏様,本田様~」。そしておめでとう,日本代表。ありがとう,日本代表。

たまにはこういうのも:Michel Camilo

Michel_camilo "Michel Camilo" Michel Camilo (Portrait/Epic)

部屋のCDを整理していたら出てきたので久しぶりに聞いてみた。最初にお断りしておくが,私はMichel Camiloには思い入れもないし,本作を除けばまともに音源も聞いていない。本作がリリースされたのが1988年なので,発売されてから25年ということになるが,その間,私にとってCamiloが関心の対象になってきたことはないのである。よって,なんでこのアルバムを買う気になったのかも記憶に定かではないが,本作は米国で異常に売れていたから,一応聞いておくかって感じの軽い気持ちで買ったに違いないだろう。

冒頭の"Suite Sandrin Part 1"からぶちかましである。とにかく賑やかである。バックでドラムスを叩いているのがDave Wecklというのも賑やかさに輪をかけるとしても,それにしてもである。とにかく指がよく動きますなぁって感じである。前半Wecklと一緒に伴奏しているのがMarc Johnsonというのは信じ難いが,別にJohnsonである必要はない(きっぱり)。インタールードを挟んで,後半はリズムがLincoln GoinesとJoel Rosenblattに代わるが,RosenblattはWecklより地味でも,これぐらいでいいんじゃないのって感じである(笑)。

だが,このアルバムの人気は,ぶちかまし曲よりも,Mongo Santamariaとやった"Blue Bossa"と最後の哀愁をも感じさせる"Caribe"の2曲によるものだろう。前半にも"Nostralgia" のようなしっとりした曲もあるので,Camiloはぶちかましだけのピアニストだけだと思ってはならないのだと今更ながら考えさせられる(遅いっ!とお叱りの声が飛んできそうである)。だからと言って,今から私がこの人のファンになるわけではない(笑)が,それでもこの人の音楽性を今一度振り返るのもまぁよかろうってことでのチョイスであった。

ということで,私にとってはそれでも真面目に鑑賞する対象とはなっていないし,今後もプレイバック回数が増えることも期待できないが,思っていたよりは印象はよかったということで,星★★★★。

Recorded on January 30, 31 & February 1, 1988

Personnel: Michel Camilo(p), Marc Johnson(b), Lincoln Goines(b), Dave Weckl(ds), Joel Rosenblatt(ds), Mongo Santamaria(perc)

2013年6月 4日 (火)

出張中に見た映画(13/05編):最終回は「ストロベリーナイト」

Photo 「ストロベリーナイト 」('13,東宝)

監督:佐藤祐市

出演:竹内結子,西島秀俊,大沢たかお,小出恵介,武田鉄矢,三浦友和

先日のマレーシア出張の復路で見たのがこの映画である。私は基本的にテレビ・ドラマを見ないので,本作のTV版も見たことがないし,原作(「インビジブル・レイン」)も読んだわけでないから,そのバック・グラウンド等については全く予備知識なしで見た。そうした予備知識なしでもそれほど大きな問題はないと思わせるのはまぁ許せる。

だが,よくあるパターンというか,警察内部での主導権争いや,過去に隠蔽された問題などの扱い等,ストーリーにはもう少し工夫できないのかと文句の一つも言いたくなるような展開である。竹内結子演じる姫川玲子の一派を姫川班というらしいが,この映画は主軸はあくまでも竹内結子と大沢たかおであり,その他の登場人物の造形の希薄感が著しい。結局,竹内結子と大沢たかお+その他大勢って感じなのである。

また,ストーリーとしてもこれまたなんでそうなるのかという不可思議な展開が多く,どうも映画を見ながら???となっていた私である。特に武田鉄矢演じる勝俣の動きは全く理解に苦しむ。これが原作に起因するものであれば,原作にはその背景がもう少し描かれていたはずと思わせるし,そうでなければろくな書物ではないってことになる。一方,これがシナリオ・オリジナルの展開だとすれば,辻褄合わせのように思えてしまう。そしてエンディングもねぇ...って感じだし,映画として決着がついたのか,ついていないのかさっぱりわからない。

この映画の展開から改めてTVドラマに戻すのは難しいことを考えれば,フジTVには珍しく,商売っ気のないところは評価したくもなるが,映像としてはそこそこ悪くはないのに,シナリオの穴がどうしようもなく印象を悪くするという典型例。星★★☆。まぁ,機内エンタテインメントだからいいんだけど。

2013年6月 3日 (月)

今回仕入れたSmalls Liveシリーズの2枚目:Alex Sipiagin

Alex_sipiagin_smalls_live "Live at Smalls" Alex Sipiagin(Smalls Live)

今回,米国から飛ばしたSmalls Liveシリーズの新作は2枚。先日取り上げたWill Vinson盤と本作である。Will Vinson盤は非常にいい出来だと思った(記事はこちら)が,メンツ的には実はこちらも非常に期待値が高かった作品である。

本作のメンツを見れば,Criss Crossから出たOpus 5に近いことはすぐにわかるわけだが,Opus 5からドラマーがDonald EdwardsからNate Smithに代わっているというのがポイントが高い。Nate Smithと言えば,Chris Potter Undergroundでの超絶ドラミングも記憶に新しいが,私が以前,SmallsでSipiaginのバンドで叩くNate Smithを見た時もそれはいい仕事をしていた(その時の模様の記事はこちら)からである。あの時は今回参加のSeamus Blakeは日本公演中だったのだが,それを見逃した私はSipiaginバンドを見て溜飲を下げていたのであったのも懐かしい。

それはさておきである。ここでの演奏を聞くと,2年前に聞いたSipiaginバンドを生で見た時の感覚がよみがえる感じである。あの時の演奏よりはややコンベンショナルな感覚は強いが,それでもこれだけのメンツが揃えば,聞き手を興奮させる演奏をすることが当たり前のように思えてしまう。私の好きな"Destinations Unknown"からも2曲やってるしねぇ。

実を言うと,私はOpus 5のアルバムにはどうもピンとこなくて,2枚目の"Pentasonic"は1枚目よりはいいかなぁと思いつつ,当ブログに記事さえアップしていないし,Sipiaginの最新作"Overlooking Moments"にも超興奮ってわけにいかなかったこともあって,このアルバムを聞く前には若干の不安がなかったわけではない。だが,聞き始めてみれば,こちらの想定する通りの音が出てくるからホッと一安心である。もちろん,このメンツだったら,もっと激しく行けるとも思えるのだが,激しければいいというものでもないし,各人のソロの質が相当高いので,これもWill Vinson盤並に満足できる作品だと言ってよい。

だが,Opus 5でもそうだったのだが,SipiaginとKikoskiに比べるとSeamusにもう少し頑張って欲しいなぁと思える部分がないわけではない。ちょっとした感覚の問題なのだが,あと一息のパワフルな吹奏があれば,尚よかったように思う。全編,"Returning"のようなソロを取っていては血管が切れるかもしれないが(笑),私がSeamusの望むのはこれなのだ。ただ,そのあと一息感はSeamusのせいというよりも,本シリーズの特性であるローファイな音のせいかもしれない。多分,生で見ていたら,CDで聞く以上の興奮はしていただろうと思わせるには十分な吹奏はしていると思う。また,Nate Smithの力を示すようなメカニカルかつパワフルな演奏を期待している私にとっては,これで音がもっとよく録れていたら更に興奮しただろうと思ってしまう。もちろん,"Pass"でのソロや"Returning"でのドラミングにはSmithの実力は十分捉えられているが,リスナーは贅沢なのである。私がプロデューサーなら"Returning"を冒頭に持って行って,イケイケ感を演出したかもしれないあなぁ。

と,ああだこうだと言ってはみても,こんな演奏を眼前でしょっちゅう聞けるNYCの聴衆は羨ましい限りだと思うし,いかにも夜な夜なSmallsで演奏されているって感じの典型的な演奏とは言え,これは満足度が高い。いずれにしても,Sipiaginは絶好調をキープしている。星★★★★☆。

ということで,今回入手の2枚はどちらも逸早く入手してよかったと思っている。だったらもっとさっさと記事をアップしろってお叱りを受けそうだが,ここのところちょっと忙しかったもんで...。

Recorded Live at Smalls on June 25 & 26, 2012

Personnel: Alex Sipiagin(tp, fl-h), Seamus Blake(ts), David Kikoski(p), Boriz Kozrov(b), Nate Smith(ds)

2013年6月 2日 (日)

ようやく到着:Joshua Redmanの"Walking Shadows"

Walkingshadows "Walking Shadows" Joshua Redman(Nonesuch)

輸入盤は既に入ってきているにもかかわらず,国内盤のボーナス・トラックのために,そのリリースをずっと待っていたJoshua Redmanの新作がようやくデリバリーされた。本作はJoshua Redmanの新作とは言いながら,私にとってはBrad Mehldauプロデュース,全面参加ということの方が重要な要素であることは事実である(Joshuaには悪いが...)。

そしてこのアルバムはストリングス入り(但し,曲は半数に留まる)のバラッドを中心とした選曲によるものなので,Mehldau参加作としてはCharlie Hadenの"American Dreams"との違いが気になるところである。だが,一聴して雰囲気が随分違うと感じられる。「何が」と具体的に言えないのが辛いのだが,ストリングスのアレンジメントがこっちの方が凝った感じがするようにも思える。ここでのアレンジメントは全てMehldauが行っているわけではないのだが,Mehldauは昨年Orpheus室内管弦楽団とのツアーも行っていて,そうしたオーケストレーション経験がここにも反映しているのかもしれない。

振り返ってみれば,JoshuaとMehldauはMehldauのアルバム,"Highway Rider"において,このプロトタイプをやっていたとも考えられるが,あちらがMehldauの作編曲に重きが置かれていたのに対し,こちらは既成曲も交えてなので,よりアレンジや,Joshuaの吹奏ぶりに注目するべきと考えてよいだろう。そして,選曲がまた一筋縄ではいかない。スタンダードやWayne Shorterの"Infant Eyes"に加えて,Beatles,John Mayer,そしてBachまで入っている。John MayerとはMehldauはライブで共演したことがあるのでわからないことではないし,またMehldauらしいというか,Blonde Redheadの曲も入っていて,こういうオルタナ系音楽への目配りぶりにはいつもながら驚かされる。私は不勉強で,Blonde Redheadの音楽は聞いたことはなかったが,今回を契機にネット上で聞いてみたところ,これをこうするかぁって感じであった。私にとっては原曲はよさが全然わからないのだが,ここでは完全に私の嗜好にフィットしてしまうのだ。音楽の本質にある美しさをあぶり出したって言えばいいだろうか。とにかくびっくりである。

また,Shorterの"Infant Eyes"もShorterとは全く違った個性を打ち出して,これもびっくり。そして,Beatlesは"Let It Be"ってのはどうなのよって気もするが,これまた,ここまでストレートに吹奏しなくてもいいのではないかと思わせるような演奏で,これまたびっくり。とにかく,落ち着いたトーンで演奏されている割に,驚かされることが多いのだ。ある意味,シンプルにやっているようで,多くの仕掛けがある演奏のようにも思える。

日本盤ボーナス・トラックである"Ugly Beauty"もMonkの曲とは思えない演奏ぶりで,ここでの演奏にもJoshuaとMehldauらしいインタープリテーションが施されているというのが私の正直な感想である。

そうしたインタープリテーションの妙味を楽しもうとすれば,私はもう少しこのアルバムを聞く必要があるようにも思えるが,一聴して非常によく出来た(プロデュースされた)アルバムだと言ってよいだろう。決して熱することはないが,クールな中にも秘めたパッションを感じさせる演奏である。ウハウハした感覚は希薄なので,作品としての好みはわかれるだろうが,私としては星★★★★☆。特に"Lush Life"や"Stardust"には心底しびれた。そして,John Mayer作の"Stop This Train"のMehldauのピアノを聞いて,私は彼のファンでいてよかったと改めて思ったのであった。

Recorded on September 27–29, 2012

Personnel: Joshua Redman(ts, ss), Brad Mehldau(p, vib, tubular bells), Larry Grenadier(b), Brian Blade(ds), Laura Frautschi (Concertmistress), Avril Brown, Christina Courtin, Karen Karlsrud, Ann Leathers, Katherine Livolsi-Landau, Joanna Maurer, Courtney Orlando, Yuri Vodovos(vln), Vincent Lionti, Daniel Panner, Dov Scheindlin(vla), Stephanie Cummins, Eugene Moye, Ellen Westermann(cello), Timothy Cobb(b), Pamela Sklar(fl), Robert Carlisle(fr-h), Conducted by Dan Coleman

2013年6月 1日 (土)

出張中に見た映画(13/05編):その2は「L.A.ギャングストーリー」

La 「L.A.ギャングストーリー("Gangster Squad")」('13,米,Warner Brothers)

監督:Ruben Fleischer

出演:Josh Brolin, Ryan Gosling, Nick Nolti, Emma Stone, Sean Penn

マレーシア出張時に見た二本目の映画が本作である。これが実話に基づく話だというのだからすごい話であるが,映画としてはまぁまぁ面白く見られるのはSean Pennの怪演によるところが大きい。強烈な存在感である。ギャングと警察の対決ってのはよくあるパターンではあるが,Sean Penn演じるMicky Cohenがえげつない人間だけに,その対決の構図も激しい。

舞台が1940年代ということもあり,コスチューム・プレイにしてもいいようなものだが,その辺はあまり力が入っていない感覚が強い。その辺りの中途半端さもあれば、Ryan GoslingとEmma Stoneの恋模様を挿入することで,ストーリーの輪郭がぼけたのも評価が高まらない要因である。かなり暴力的な描写もあるので,飛行機のエンタテインメントとしても問題がないわけではない。ということで,まったりとした機内で見ている分にはそれなりなのだが,似たような舞台設定の「L.A.コンフィデンシャル」とは全く比較の対象にもならない,その程度の作品。星★★★。

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