2019年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

2017年おすすめ作

無料ブログはココログ

« 出張中に見た映画(13/04編):その2は「横道世之介」。原作のトーンをうまく引き継いでいる。 | トップページ | Seamus Blake,学生バンドに客演す。 »

2013年4月27日 (土)

出張中に見た映画(13/04編):最終回はあまりにも切ないが,映画としては圧倒的な力を持つ「愛,アムール」

Photo_3 「愛,アムール("Amour")」('12,仏,独,オーストリア)

監督:Michael Haneke

出演:Jean-Louis Trintignant,Emmanuelle  Riva, Isabelle Huppert,Alexandre Tharaud

出張の復路において,今回最後に見た映画が本作である。今年のオスカーで外国語作品賞,昨年のカンヌではパルム・ドール,セザール賞では主要部門総なめという非常に高い評価を得ている作品である。それも当然と思わせる映画であり,非常に優れた演出,脚本,演技が一体化した作品と言ってよい。だが,見ていてこれほど切なくなる映画はなかなかない。この切なさが,主役としてのJean-Louis TrintignantとEmmanuelle Rivaによる劇的な名演に大きく依存しているものであることには疑問の余地はない。

冒頭から,この映画の結末は明らかになり,そこに至る経緯が時間を追うようなかたちで描かれ,そして何とも印象的なラスト・シーンに至るという展開である。映画はほぼ全編に渡って主役二人が暮らすアパートメントにおいてのシーンに終始する。言わば演劇的な設定だと言ってもよい。そこで描かれるシーンには,人間の心の動きを映像で示すような力があり,まずそこで考えさせられる。また,さまざまなメタファーも提示されていて,それをどう解釈するかも観客に委ねられる部分があるのだが,それも決して嫌味なものではないところがよい。

そして,何よりも徐々に機能を低下させていく姿を,演技とは思えぬかたちで示したEmmannulle Rivaはやはり凄いと言わざるをえない。この映画ではRivaが話題になることが多かったように思うが,それはそれで当然としても,一方,その夫を演じるJean-Louis Trintignantも鬼気迫るものがある。高齢介護というある意味では非常にデリケートなモチーフを用いながら,ここで描かれるのはその背後にある人間の心理であるが,その微妙な心理の変化をTrintignantは見事に演じ切っていると言えると思う。

映画としては派手なところもないし,劇的な展開があるわけでもないが,こうした心理を描き切ることの物凄さということを感じざるを得ない。私がどうこう述べるよりもLe Parisienにこの映画の批評として書かれている「このストレートで容赦ない映画に観客は喉元を荒々しくつかまれた気分になるだろう。そこには安っぽい飾りものは一切ない。そうして簡素な作品は、一生忘れられない作品へと変貌する」という評価が私には最も適切なものと思える。まさにその通りである。

そして,この映画を見て感じられる切なさを,自身の人生や考え方に投影してみた時に,この映画の印象は更に強くなるのではないかと思えるのだ。これはおそらく劇場で見ていれば痺れて席を立てなかった可能性がある。ここまで来れば映画はエンタテインメントというよりも芸術である。その辺りに好き嫌いが出るのも仕方のないところだと思うが,私はこの映画には心底感心し,そして感動した。素晴らしい逸品,傑作である。Emmanuelle Rivaが本作について「私はほとんどドキュメンタリーのようだと思いました。たしかに辛い映画ですが、それは人生を濃縮したものだから当然でしょう。こういうテーマを、真実を凝視することなく描くことはできない」と語ったのに大きく首肯した私であった。星★★★★★。

尚,Emmanuelle Riva演じるAnneの弟子Alexandreを演じるAlexandre Tharaudは本物のピアニストであり,本作のサウンドトラックも彼の演奏によるものである。

« 出張中に見た映画(13/04編):その2は「横道世之介」。原作のトーンをうまく引き継いでいる。 | トップページ | Seamus Blake,学生バンドに客演す。 »

映画」カテゴリの記事

コメント

TBありがとうございます。

喉元につきつけられるような切実さが際立つ作品ですね。普段は、映画の世界と自分を切り離して観る方なのですが、思わず「自分なら?」と考えてしまいました。年末に、印象的な作品として本作を挙げて頂いたおかげで見逃さずに済みました。ありがとうございます。当方からもTBさせて下さい。

1irvingplaceさん,こんばんは。TBありがとうございます。返信の順番が入れ替わってしまい失礼しました。

この映画は見ていて辛くなるのも事実ですが,見るに値する作品だと思いました。少しでもお役に立てたのであれば幸いです。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

» Amour: 愛、アムール [あ/た/ま]
愛、アムール [DVD]クリエーター情報なし角川書店  パリに暮らす音楽家の老夫婦アンヌ(Emmanuelle Riva)とジョルジュ(Jean-Louis Trintignant)。満ち足りた2人の暮らしは、アンヌが病に倒れたことで大きく変わってしまう。手術に失敗し、半身不随になったアンヌは「...... [続きを読む]

« 出張中に見た映画(13/04編):その2は「横道世之介」。原作のトーンをうまく引き継いでいる。 | トップページ | Seamus Blake,学生バンドに客演す。 »

Amazon検索

2018年おすすめ作