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2012年10月 1日 (月)

ライブでの違和感を完全に払拭したBrad Mehldauの新作

Mehldautriowheredoyoustart "Where Do You Start" Brad Mehldau Trio(Nonesuch)

本作はリリースが遅れていて,店頭にはまだ並んでいないようだが,私のところには結構早く到着し,何度か聴いてみて,ようやく記事のアップである。

私は今年の7月にMehldauのトリオが来日し,サントリー・ホールでのライブを行った際,喜び勇んで参戦した割に,違和感を覚えながら帰途につくことになったのはこのブログでもご報告の通りである(記事はこちら)。そこにも「どうもメリハリや,ライブらしいダイナミズムを強く感じることができないと思えた」と書いているが,このアルバムにおいては,メリハリという点では何の問題もなく,ライブの時と2曲かぶっているものの,ずっとこちらの演奏の方がよく感じてしまう私である。思うにサントリー・ホールというのは彼らにはどうもフィットしていないから,ああいう風になるのではないかと感じられてしまう。クラブで聞けば,やはり印象は違ったはずである。まぁ,そうは言いながら,ロンドンではBarbicanのようなところでもやっているわけなので,日本ならばサントリー・ホールというヴェニューは仕方ないのかもしれない。だが,やっぱり納得がいっていないのは今でも変わらない。それに比べると,選曲によるアルバムの構成自体はこちらの方が優れていると思うリスナーは多いのではないだろうか。

このアルバムそのものは先にリリースされた"Ode"の姉妹編と考えるべきものであることは,録音日が全く同じであることからも明白である。違いは"Ode"がMehldauのオリジナルで占められていたのに対し,こちらは1曲を除いてカヴァー曲であることである。それもロック/ポピュラー系が多数を占めるのが特徴的である。日本でも演奏したSufjan Stevensに加え,Alice in ChainsやElvis Costelloまでもが入っているのがMehldauらしいと思えるが,本当にカヴァレッジの広い人だと言いたくなる。こういうところが音楽に対して雑食性を持つ私のようなリスナーを刺激するという部分があることは間違いない事実である。

そして,Mehldauがそうしたポピュラー曲を演奏する時,彼はそこに内在する曲の美しさを見事なまでにあぶり出す能力を示すというところが素晴らしい。"Ode"でも明らかな通り,Mehldauのオリジナルもいいものが多いが,私はやはりMehldauにはこういうかたちで,いろいろな他人の「優れてはいても,誰もが知るわけでない」曲に対する解釈を提示して欲しいと思ってしまう。Alice in ChainsやSufjan Stevensなんてジャズ原理主義者にとっては名前も存在も知られていないはずだが,Mehldauの解釈により,そうした音楽への認知度が広がりを示すならば,それはそれで間違いなく意味があるはずなのだ。そういう意味でも私は"Ode"よりもこちらを更に推したくなってしまうのである。そして,2曲加わるブラジル系(Chico BuarqueとToninho Horta)の曲と演奏の素晴らしさよ。こういう目配りも素晴らしいと思う。

私が一通り聴いている中ではJimi Hendrixで最も知られるであろう"Hey Joe"のフォーク・ロック的なタッチにKeith Jarrett的なものを強く感じていたのであるが,何度も聴いていると,それよりもElvis Costelloの"Baby Plays Around"やJohnny Mandelが書いたタイトル・トラックの美的な感覚に痺れていった私である。先日アップしたFred Herschといい,Mehldauといい,Johnny Mandelの曲が何とも似合うと思うのは私だけではあるまい。

それに加え,ここで展開される典型的ジャズ曲である"Brownie Speaks"や"Airegin"を聞いて,ジャズ・ピアニストたるMehldauの魅力を否定する人はいるまい。特に"Airegin"がいいねぇ。"Brownie Speaks"は悪くないが,曲想がMehldauにはちょっと合わないかなぁと思わせる。それでも,東京のライブで私がずっこけそうになった"Cheryl"と大違いである。特に"Airegin"ここでのアドリブの聞いてしまえば,間違いなく普通のジャズ・ファンなら反応を示すはずである。

本作はMehldauによるセルフ・プロデュースであるが,"Ode"と2枚組にするとやや冗長に聞こえたかも知れないし,どういう曲の並びにすればいいのかというのも悩ましいところであり,2枚を分売したことは正解だったように思える。いずれにしても,長いこと待たされたMehldauのトリオ作を1年で2枚も聞けると思わなかったが,2作ともに,ファンも,そうでないリスナーも納得しうる作品となったことは素晴らしい。特に私はこちらの方を評価するということで,星★★★★★としてしまおう。いつもながら私はMehldauに甘い?それはファンですからってことで(笑)。

Recorded on November 17, 2008 & April 19, 2011

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

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コメント

おはよございます。
久しぶりにシンクロして、しかもほぼ同意見です。
わたしの文章は稚拙なのですが、双子のような感想でビックリですゎ。

冒頭から、やられたぁ、って、感じでした、、Hey Joeの演奏もよかったですが、コステロの Baby Plays Aroundはほんとに深い解釈と表現で、これまた、やられたぁ。でした。。
そして、とどめにジョニーマンデルのタイトル曲。これは、反則ですよ。狡いです。もう、メロメロです。
この曲をタイトルにしたメルドーの心模様が伝わってくる感じですかしら。。

と、月曜日の朝から長くなりました。

こんにちは。

うわぁ Suzuckさんのも読んで キースやハーシュや そしてメルドー 聴いてみたいのがたくさんです。

閣下さまは メルドーファンなので たぶん メルドーにしたらいいっていうのでしょうか(笑)

『ODE』良かったですし また しばらく迷いそうです。

すずっくさん,こんばんは。TBありがとうございます。

この世の中ですずっくさんの文章を稚拙だと思っている人なんているのかなぁ(笑)。私の文章なんてすずっくさんに比べれば,比較の対象にもなりませんぜ。比喩のレベルが違うんですよねぇ。それはご自身でも認めた方がいいと思いますが。

いずれにしても,このアルバムに関しては書いてることは確かに似てますね。でもそれは嗜好が同じ何だから仕方がないでしょうってことにしましょう。それにしても好みというか,感じ方が相当一緒なのは笑えましたね。ということで,こちらからも追ってTBさせて頂きます。

Marlinさん,こんばんは。「閣下さまは メルドーファンなので たぶん メルドーにしたらいいっていうのでしょうか(笑)」ってことですが,それは違います。

全部いいから全部買いましょう(笑)。でも本当ですよ。どれを買ってもはずれはありません。保証しますぜ。

へ、マジですか?

>それはご自身でも認めた方がいいと思いますが。

閣下がいうなら、稚拙って言葉やめますが。。

が、、わたしの文章は、、誤字脱字は置いておいて、、(爆)

意味不明、って、人は結構いて、、
無駄に長い文章をどうにかせい、って、お叱りのメッセージをいただいたこともあります。
文章のコンプレックスは、子どもの頃からだわ。

そっか、、わたしの文章理解できない方が、、頭の出来が稚拙だったんだな。(スッキリ)


すずっくさん,こんばんは。返信が遅くなりました。

「わたしの文章は...意味不明」って言う人の気が知れませんねぇ。文章が長かろうが,それは人から文句を言われる筋合いではないですし。

「わたしの文章理解できない方が、、頭の出来が稚拙だった」と考えると筋が通りますね。かつ,すずっくさんの書く文章のファンってのも結構いると思いますぜ。

こんばんは。
MehldauのHPにUpされているelectric duo projectのlive teaser video、ご覧になりましたか?自分は痺れました。次のアルバムはトリオでは無いかもしれませんね。嬉しいような残念なような...

増田さん,こんばんは。おっしゃっているのはMehlianaの映像ですよね。一緒にやってるMark Guilianaって人はWayne Krantzともデュオをやったりして,手数が多いんですよねぇ。

それはさておき,何だかんだ言ってもMehldauはJohn MayerやJoe Henryともライブをやってしまう人ですから,こういうのもきっとありでしょうね。アルバムのレパートリーを聴いていてもそういう気がします。

ここでの演奏は非常に面白いですし,こういうのは絶対支持してしまいます。アルバムを出してくれてもいいし,ライブで来てくれればなおよしってところでしょう。

こんにちは〜

メルドーのこのアルバム、本当は8日以降の発送ということだったのですが(タワレコで)すぐに届いて みなさまと感動を共にできてよかったですo(^-^)o ちょっと遅いか...
初めてメルドーを聴いた時は すごく哀しげ といいますか 暗い感じの曲を弾く方だなぁと思ったのですが ゙Ode゙が わりとよかったのと その姉妹盤と言われていたのとで 購入してみてよかったです。

バラードよいですよね。
「Hey Joe」も わたしは好きです。

゙Ode゙のコメントでお薦めくださったメルドーのアルバムも まだ聴いていないので聴かなくちゃです♪

Marlinさん,こんばんは。お気に召して何よりでした。

このアルバム,私は"Ode"よりも好きです。Mehldauの美的な感覚が非常に強く出ていて,いいですね。そういうところに"Brownie Speaks"のような曲はちょっと浮いてる気がしないでもないですが,それでもこれは非常によかったと思っています。

やっぱりタイトル・トラックですねぇ。たまりません。

音楽狂さん、こんばんは。
大変遅くなりましたが、TBありがとうございました。

グランジをリアルタイムで起承転結聞いてきた身としてはなかでも最ヘビーなAlice in Chainsをとりあげたのは、なんか嬉しいというか、メルドーらしいなあと思いました。

それで、音楽狂さんがおっしゃっている、
>「優れてはいても,誰もが知るわけでない」曲に対する解釈
が見事なまでにボーカルのない「音」だけで表現されているのがこの作品の満足感に繋がっていると感じてます。(逆にOdeとの差も感じたりして・・)

こちらからもTBさせていただきます。

こんばんは。

Odeが出た時に、次にこういうのも出すよ、と、実際には連絡できないでしょうが、あれば全体の印象も変わっていたかも、と思います。こういう出方をすると好みはこっちの方かな。

たぶん時間のある時に、2枚のアルバムを録音年月で分けて、曲順までは分からないにしろ、セッション別に聴いてみる、というヒマなことをやってみようかと思います。

TBさせていただきます。

とっつぁんさん,こんばんは。返信が遅くなりました。TBありがとうございます。

"Ode"と本作のどちらがいいかと聞かれれば,私は間違いなく本作の方が好きです。もちろん,どちらも聞きごたえありですが,ここでの確信犯的な美的タッチにはまいってしまいました。Mehldauのファンでよかったと思える瞬間でした。それにしてもMehldauがSoundgardenをやったのにも驚きましたが,Alice in Chainsとは...って感じでした。本当にこの人のレパートリーは何でもありですね(笑)。

910さん,こんばんは。TBありがとうございます。

本作は痺れるような美的センスが"Ode"より際立っていたかなって気がします。ライブでのカヴァーの多さには驚きましたが,本作のような躍動と抑制のバランスが発揮されていれば,私はあのライブにもっと感動できたんだろうと思っています。

いずれにしても,ここでのタイトル・トラックは反則ですよねぇ。美し過ぎました。

ということで,こちらからもTBさせて頂きます。

皆さんが言っている通り、本作が出ると知った上で聴いていれば、前作"ode"の評価は、がらりと変っていたんじゃないかという感想になりますが、でもきっとその前提があったとしてもこっちに軍配を上げているような気がするのは。。。(^^;;

2枚分売が良かったか、2枚組が良かったかは微妙ですが、2枚出ることを事前に告知して欲しかったとは思いますかねぇ . . (悩)

TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。

oza。さん,続けてこんばんは。TBありがとうございます。

私は"Ode"が悪いとは思っていませんが,ライブでの演奏とのギャップに戸惑ったというのが正直なところです。その印象が本作によりガラッと変わってしまったんですが,こういうことをやりたかったんだろうなぁなんて後付けで納得している私です。

まぁ,どちらが好きかと言えば,私もこっちになってしまいますねぇ。やっぱりいいですもん,ここでの演奏。

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