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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2012年9月30日 (日)

久々にPolliniのバルトークを聴く

Photo "Bartok: Piano Concertos 1+2" Maurizio Pollini, Claudio Abbado & Chicago Symphony Orchestra (Deutsche Grammophon)

昔から保有しているのだが,滅多に聴かない,しかしたまに聴くとまいってしまうというレコードなりCDって実は結構あるのではないかと思う。これなんかその最たるものと言ってもよいものかもしれない。

私がこれを買ったのはLP時代で,私は高校生だったはずだが,その頃ジャズにはまり始めていた私がなぜこのアルバムを買ったのかは今となっては記憶の彼方である。しかし,私の亡くなった父は結構バルトークが好きだったので,その影響だったかもしれない。それにしても,当時としては,日頃聞いているのと結構違うタイプの音楽だったことは間違いないのだが,拒否感というのはあまりなかったように思えるのが今となっては不思議である。

これはシカゴ響という強烈なオケの伴奏も聞きものであるが,それよりも何よりもPolliniによるパーカッシブなピアノの響きに圧倒される。強烈なテクニックに裏打ちされながら,こんな曲でも全く破綻することなく打ち出されるPolliniのピアノには心底驚かされてしまうのである。やっぱりこれはいつ聞いても凄いわと思わされる。

だが,これだけ激しい音楽なので,正直言ってしょっちゅう聞きたいとは思わないのは前述の通りであるが,これはクラシック音楽に馴染みがなくても,そのパーカッシブな響きにより,この音楽に抵抗なく入り込める人も結構いるかもしれないのも事実である。まぁ皆さん,聴いてみなはれってことで星★★★★★。私は久々に聴いて,興奮してしまった...。

尚,私は本盤のCDも保有しているが,LPもいまだに持っており,そのLPにAbbadoにサインを貰ったのも懐かしい。彼がロンドン響と来日した時に,学生だった私は楽器搬入のバイトをしていて,舞台の袖からAbbadoの振りっぷりを見ながらマラ5を聞いただけでなく,このアルバムにもスタッフ経由でサインしてもらったのである。今や私の家宝の一枚であるとともに,忘れ難い経験である。で,なんでマラ5のLPではなかったのか?当時の私はマーラー嫌いだったのである(笑)。人間変われば変わるもんである。

Recorded on February 14, 19 & 22

Personnel: Maurizio Pollini(p), Claudio Abbado(cond), Chicago Symphony Orchestra

2012年9月29日 (土)

Stanley Turrentineは渋いのだ

Cherry "Cherry" Stanley Turrentine(CTI)

Earthyという言葉がどこから生まれたのかは謎である。しかし,ジャズ界においてEarthyと言ってなるほどと思えるミュージシャンって誰かと考えると,私にはStanley Turrentineではないかと思える。正直言ってしまうと私にとってはTurrentineはかなり縁遠い人(ほとんどまともに聞いていない)なので,それが正しいとは限らない。勿論,Turrentineは下品なホンカーでもなんでもなく,まともなジャズマンという評価が正しいだろうが,それでも私にとってはそういうイメージしか当てはまらないのである。こういう印象を持つのは、私の唯一のTurrentine経験であるJimmy SmithとのFat Tuesdayにおけるライブの影響があることは間違いない(それに関する記事はこちら)。そこでは洗練されているというのではなく,グルーブ勝負って感じには直球勝負的泥臭さを感じさせた。

だが,改めてCTIレーベルでの作品を聞いていると,Earthyというのもはばかられる印象を与えると同時に,思い込みって怖いよねって思ってしまう私である。今回聞いた"Cherry"の売りはMilt Jacksonとの共演だと思うのだが,Miltゆえにブルージーな感覚がもっと出るかと思いきや,一聴した感覚はもっと普遍的ジャズなのだ。ある意味,セッティングに関係なくこうした演奏を展開してしまう,バランス感覚に優れたのがTurrentineの本質ではなかったのかと思えるような作品である。

本作もメインストリームとフュージョンの中間を行くような作品だが,リズムは8ビートだろうが16ビートだろうが、ジャズ的なフレイヴァーが強烈なのには感心してしまった。端的に言えばTurrentineはどうやってもジャズ的にしかならないのである。

本作はジャズ原理主義者に言わせれば,聞くに値しない(あるいはギリギリジャズと認めてやるぜという)作品になるかもしれないのだが,私は結構楽しく聞けた。毒にも薬にもならないならないという言い方も可能と言われればその通りである。だが,本作が凡百のミュージシャンの演奏とは明らかにレベルが違うことはちょっと聞けばすぐわかることである。その事実こそがTurrentineをTurrentineたらしめているように思えるのだ。ということで星★★★★。この時代になってもCTIっていけていると思わせるのはマジで大したものである。

Recorded on May 17, 18 and 24, 1972

Personnel: Stanley Turrentine(ts), Milt Jackson(vib), Bob James(p, el-p), Cornell Dupree(g), Ron Carter(b), Billy Cobham(ds)

2012年9月28日 (金)

これは凄い!超重量級のBrotzmann〜佐藤〜森山トリオ

Yatagarasu_brotzmann_satoh_moriyama

"Yatagarasu" Peter Brotzmann / 佐藤允彦 / 森山威男(Not Two)

私は夏の暑い時期などにフリー・ジャズを聞いてはストレスを発散することもあるが,濃厚なフリーに身を委ねているとある意味での心地よさを感じることができると思っている。ただ,どういうアルバムを選べば良いかは悩むところも多い訳だが,このアルバムはメンツを見て飛びついたものである。音を聞かずともある程度のアウトプットは想定できる。そして聞いてみたら予想通り,あるいは予想を上回る激演に身をよじってしまった。

本作はただでさえ音圧が高いのだが,こういう音楽は小音量で聞いてはいかんと思わせるものである。私は購入後,新橋のテナーの聖地,Bar D2でこれを大音量で聞かせてもらったのだが,まさに快感であった。3人とも結構な年齢のはずなのによくやるわというのが正直な感想である。彼らには老成,あるいは老化という概念はないらしいと思わせる。その誰もがパワー全開だが,私が特にびっくりしてしまったのが森山威男のドラムスである。とにかく激しい。

いずれにしてもこれは私の中ではフリー・ジャズかくあるべしと言うべき作品であり、マジでたまらん。こんな演奏に立ち会えたポーランドの聴衆にジェラシーすら感じてしまう。こんな演奏滅多に聞けないと思わせるに十分な演奏である。これで燃えられなければ,フリー・ジャズと縁がないと思った方がいいと言い切ってしまおう。私にとってはDave Liebman~Even Parkerの共演盤以来の衝撃。星★★★★★。彼らが自分たちを"The Heavyweights"と呼ぶことに異論を差し挟む余地なし。

だが家庭内でこれを大音量でプレイバックしたら,家庭不和間違いなしなので念のため(笑)。

Recorded Live in Krakow, Poland on November 8, 2011

Personnel: Peter Brotzmann(as, ts, tarogato, b-flat cl), 佐藤允彦(p), 森山威男(ds)

2012年9月27日 (木)

呆れて物も言えない自民党総裁選結果

自民党のボス猿争いの結果を見て,絶望的な気分になった私である。一体自民党の国会議員はあの無責任男を再度総裁に据えるとはどういう神経をしているのか?石破茂が嫌いだから,無責任男の方に投票するというのでは,地方の党友の意思は全く無視し,かつ,あの無責任男が再び職を投げ出さないという確信があるのだろうし,これからもついていきまっせという意思表明をしたということだ。それは自分たちも無責任であることを吐露したようなものであり,勝手にすればいいのだ。

むしろ無責任男が総裁になったことにより,国民の反発は増し,次回の国政選挙では敗色濃厚だった民主党にはフォローの風が吹くかもしれない。あの無責任男の発言,立ち居振る舞いにアレルギーのようなものさえ感じているのは私だけではないはずだ。だからと言って「日本維新の会」のような日和見国会議員を集める政党が漁夫の利を得るようなことにはなって欲しくないが。

いずれにしても,改めて違う記事でつぶやいた次のフレーズを自民党国会議員の諸君には叩きつけておくわ。

「嗚呼,已矣乎」

だから政治不信はやまないのだ。恥知らずもいい加減にしてもらいたい。

2012年9月26日 (水)

Wayne Krantz観戦記:Keith Carlock物凄過ぎ!

Krantz_carlock ビルボードライブ東京においてWayne Krantzのライブを見に行った(9/24,1stセット)。私の数少ないビルボード訪問歴の中でも,極端にロビーの静けさが感じられる中「イタリア・ジャズの女神さま」とご一緒させて頂いて中に入ると,やはり聴衆の数が少ないのが気になる。前回Wayne Krantzが来日して,コットンクラブでライブを行った時でも60〜70%程度の集客はできていたと思うが,今回は更に入りが悪い。なぜ,Krantzの人気がないのか私には不思議で仕方がないのだが,まぁ,それは仕方ない。

こうした環境において,どのような演奏が展開されるか一抹の不安もあったのだが,始まってしまえば一切手抜きのないガッツのある音楽を聞かせたことに彼らの矜恃を感じた私だが,それにしても強烈だったのがKeith Carlockである。私としては猛爆ドラマーと呼びたくなる激しさであった。とにかく音がでかい。前回Carlockを見たのはJohn Mayerと来日した時,その前はKrantzとのコットンクラブであるが,前者がMayerに遠慮しながらも歌心を感じさせ,後者ではパワーと歌心の両面を感じさせた。それが今回はパワーが目立つという感じで,バンドで一番音がでかかったのはCarlockと断言したい。私は見ていて思わず笑ってしまうぐらいの強烈さであった。

そしてもう一つ,今回のライブで気になっていたのが,なぜNate Woodが参加しているのかということであった。Woodの本職はドラマーのはずであり、すわ,ベースレスのツイン・ドラムスかと思っていたら会場にはドラム・セットが2台あるではないか。しかし,演奏ではWoodはベースを中心に演奏し,時折ドラムスも叩くという感じであった。WoodとしてもCarlockにはかなわないという判断もあったかもしれないが,ベースもちゃんと弾けるのねぇと妙に感心していた私である。しかし,背景は別としても,ベースを抱えながらドラムスも叩くというのは初めて見たが,効果としては若干疑問があった。それぐらいCarlockが凄かったということである。

そして肝心のKrantzだが,やや自虐的とも思えるコメントも残しながら,演奏は彼らしいソリッドなものだったと思う。冒頭から2曲続けて歌ったのには驚いたが,私が相変わらずピンと来ていない"Howie 61"よりははるかにダイナミックで,こういうのなら全然問題ないと思わせた。だが歌おうが歌うまいが,Krantzのギター・プレイはいつも通りで,ファンにはたまらないものであったことに間違いはない。これほどのライブを展開しているバンドが集客に困るようでは本当に困る。「イタリア・ジャズの女神さま」は25日の2ndも再参戦モードだったが,私は地方出張がありかなわず。様子は改めて女神さまからお聞きすることにしよう。

いずれにしても大笑いしながら聞けるハード・フュージョンっていいよねぇ。いやはやエグいバンドである。ほとんどロックと言っても良いようなこのバンドのライブを場所柄だけでデート・コースに選んでしまっては,カップルの行く末が心配になるという余計なことも考えてしまった(爆)。どうせここを使うならBobby Caldwellだよねぇ(笑)。

2012年9月24日@ビルボードライブ東京 1st セット

Personnel: Wayne Krantz(g, vo), Nate Wood(b, ds), Keith Carlock(ds)

2012年9月25日 (火)

天地明察:映画はご明察とはいってない。

Photo 「天地明察」('12, 松竹)

監督:滝田洋二郎

出演:岡田准一,宮崎あおい,佐藤隆介,松本幸四郎,中井貴一

この映画,週末に見に行ったものの,全くの失敗であった。脇を固める連中は悪くないが,主役の岡田准一の演技は一体何なのか?入場料を取って見せるレベルではなかろう。これが決定的な弱点である。

ストーリーそのものは改歴に挑む安井算哲の姿を描くものであるが,それはそれで悪くないとしても,映画としてはこれだけの時間を掛けるようなものではない。これは脚色と編集の問題もあるが,滝田洋二郎の演出もiMDBなら"Goofs"と言われるようなおかしな部分があることに,何の問題も感じていないところに疑問を感じる。また,時の流れを反映させないメイクアップに関しても,どう考えても文句の一つも言いたくなる。

こうしたコスチューム・プレイであるから相応の予算も時間も掛けて撮影したものと思われるが,それにしてはつくりが甘過ぎるのである。見ていて途中から段々アホくさくなってしまった私である。そしてまた腹立たしいのが久石譲の音楽である。既視感(既聴感?)たっぷりのあの音楽は何なのか。いかにも持ちメロ再生産,一丁上がり的な音楽はこれまた観客をバカにしているとしか思えない。まさに噴飯ものの映画音楽。そうした点も含めて,はっきり言って映画としては気に入らないので星★で十分である。映画としては正直言って見に行くことは時間の無駄。星は脇の役者に免じてと言っておく。

前述の通り,脇の役者は結構ちゃんとやっている。笹野高史,岸辺一徳は言うに及ばず,私が受けていたのはきたろう,尾藤イサオ,そして武藤敬司というキャスティングだったかもしれない。こんなもんを撮っているようでは滝田洋二郎は大したもんじゃないな。

2012年9月24日 (月)

Brad Mehldauの新譜が到着。ゆっくり聞いていからレビューしよう。

Mehldautriowheredoyoustart これまで何年も待たされ続けた身としては,まさかBrad Mehldau Trioのアルバムが1年で2枚出るなんてことは夢想だにしなかったが,それが現実となったことは誠に喜ばしい。既にリリースについてはご紹介した本作(記事はこちら)が正式に発売された。

このアルバムがデリバリーされるのと同じタイミングで我が家にはiPhone 5なんてものが届いてしまったので,そちらの設定に忙殺され,このアルバムをちゃんと聞くというところまでは行っていない。よってレビューは改めてさせて頂くが,一聴した感じで言うと,私がサントリー・ホールでおぼえた違和感はこのアルバムでは感じなかったというところである。むしろ,アルバムとしては非常にいい感じに仕上がっていて,特に私はジミヘンの"Hey Joe"が気に入ってしまった。このフォーク・ロック的なアプローチを聞いていると,やはりMehldauはKeithの後継者であるという感を強くした。

このアルバムも"Ode"同様,2008年と2011年の録音が混在しているが,なぜMehldauがこうしたかたちを取ったかはわからないとしても,私はこの演奏群は相当いいと思っている。いずれにしても,もう少し真面目に聞き込んでから正式な記事をアップさせて頂くこととする。

2012年9月23日 (日)

"Telefon":休日に見たDVD

Telefon 「テレフォン("Telefon")」 ('77,米,MGM)

監督:Don Siegel

出演:Charles Bronson, Lee Remick, Donald Pleasence, Tyne Daly

休日にDVDを借りてきて見た映画である。この映画はなかなかソフト化されなかったものだが,めでたくDVD化され,レンタル・ショップにも並んだというものである。私の期待はDon SiegelがCharles Bronsonを使ってどういう作品に仕立てるかの一点に集中していたと言ってもよい。

映画としては冷戦後の世界の中でのアクションということになるが,ちょいとお話には無理がある。同じ仕掛けの遠隔操作で,送り込まれたスパイが行動を起こしていくということに違和感があり,これがそもそも厳しいというところである。「カプリコン1」等を取ったPeter Hyamsと「タワーリング・インフェルノ」のような大作や「夜の大捜査線」を書いたStirling Silliphantの共同脚本だが,どうも締りがない。Stirling Silliphantって人は「夜の大捜査線」でオスカーを獲得しているが,作品の波が激しく,本当に有能なのかどうなのかわからなくなってしまうことがあるが,これなんかは完全に今イチ組である。

映画そのものも金が掛かっているのか掛かっていないのか全くわからないような映画だし,Bronsonはいつもよりも地味な感じ(というか,派手なドンパチやアクションが少ない)なのは悪くはないのだが,Lee Remickはミス・キャストだとしか思えない。彼女はクールな感じの美人であるが,こういう映画にフィットしているとはとても感じられないのである。もう少し下世話な感じの女優の方がこの手の映画には合うだろう。と言いつつ誰ってのが思いつかないところが私もかなりいい加減だが(苦笑)。

この映画で面白いのは懐かしやTyne Dalyではないかと思う。彼女は「ダーティ・ハリー3」でEastwoodの相棒の女刑事役を演じたことで,私の中では記憶に残るが,ここはコンピューター・オタクのようなCIAのエージェントを演じている。はっきり言ってどうってことない役なのだが,出番がここまで多いのは不思議な感じがしたが,この時代を感じさせるコンピューターの見せ方に苦笑する人は多いはずだ。だが,1977年の映画だからまぁそれも仕方ないかってところではあるが,このTyne Daly演じるキャラは何とも不思議である。

ということで,面白いのかどうなのかと言えば,そこそこってところだが,やっぱりストーリーには無理があるなぁって感じさせる脚本が致命的で星★★☆。

2012年9月22日 (土)

ありがとうございます。ついに100万PV到達。

ブログのお知り合い,EVAさんからコメントを頂いて認識したのだが,今朝ほど当ブログのPVが100万に到達した。ブログを始めて5年9カ月弱要したことになるが,始めた当初は1日のPVがゼロ,あるいは一桁なんてことが当たり前だったことを考えると何とも感慨深い限り。但し,この数字は携帯からのアクセスは反映していないので,本当ならもう少し早く達成していたのかもしれないが,ココログ・ベーシック会員の私はそれはわからないので,本日到達ということにさせて頂く。

こんな素人のブログにかくもアクセスして頂いた方々に感謝します。今年に入って,毎日アップは難しくなっていますが,これからもできるだけ記事はアップしていきたいと思いますので,引き続きよろしくお願いします。

ちなみに100万件目のアクセスをされた方は午前4:50前後にdionのリモートホスト経由で中山康樹関連の記事をご覧になったWindows 7をお使いの方です。ありがとうございました。100万件目はその流れの中でご覧になったトップ・ページということになります。

今までのイメージとちょっと違うOregonの新作

Family_tree "Family Tree" Oregon(CamJazz)

私はこのブログにも何度も書いている通り,Ralph Townerのかなりのファンである。Ralph Townerのファンである以上,Oregonも聞くのが当然だが,それなりには聞いているとしても全作品を聞いているわけではない。私としては,TownerにはOregonの語法とソロでの語法がちょっと違うようにも感じている部分もあるのも事実だが,好みで言えば,Townerソロ作の方を好んできた。しかし,Oregonでも好きな作品はあるし,特にライブ盤は気に入ってよく聞いている。

そんな私がこのアルバムを聞いていて驚いてしまったのは,今まで私がイメージしてきたOregonの音とかなり違うように感じたからである。一言で言えば彼らにしてはビートが明確に刻まれている曲があり,そこが耳に残ってしまって妙に躍動的に聞こえる。フュージョンのようにさえ聞こえる瞬間があるから不思議である(最後の"Carnival Express"に顕著)。これはOregonのアルバムを聞いてきて感じたことのない感覚であった。こうした音楽性は私が聞いていないアルバムでも展開されていたのかもしれないのだが,少なくとも"Live in Moscow"や"In Performance"ではなかったもののように思う。

既に結成40周年を越えても,新しい音楽性を打ち出そうとするその進取の精神は素晴らしいと思うが,従来型Oregonとでも言うべき音との混合に戸惑うリスナーがいても不思議はない。バックにはTownerによるシンセサイザーの導入されており,そうした響きもこのアルバムの感覚を違ったものにしているようにも思える。その中で"Jurassic"なんてインタールード的にも響くが,サウンドはコズミックにさえ感じさせるしなぁ。とにかくへぇ~って感じなのである。

いずれにしても,私が想像していた以上に多彩な音楽が収められて,相応に楽しめる作品であることは間違いないが,やはり多少の違和感を覚えている私である。その一方で,ここでのTownerのピアノが相当に美しく,改めてその実力に驚かされたことは言っておかねばならないだろう。私がファンなのはギタリストとしてのTownerであるが,ここで聞かせるピアノのフレージングは非常にリリカルでありながら明晰な感覚もあって,これは大したものだと思ってしまった。トータルで言えば星★★★☆ぐらいにしておこう。だが,このアルバムにおけるGlen Mooreのベースは,アコースティック・ベースはこう録音して欲しいと言いたくなるような特筆ものの音の良さ。これを聞くだけでも価値があるかもしれない。

Recorded on April 24-28, 2012

Personnel: Paul McCandless(oboe, b-cl, ss, fl), Ralph Towner(g, p, synth), Glen Moore(b), Mark Walker(ds, perc, ds-synth)

2012年9月21日 (金)

大西順子の引退を惜しむ

Wow "WOW" 大西順子(Somethin' Else)

大西順子が自身のWebサイトにおいて今秋のライブ・ツアー後の引退を発表したのはショッキングな出来事であった。彼女曰く「私には自分のための演奏は出来ても、オーディエンスを満足させるパフォーマー、クリエーターにはなれない,むしろ研究者でいたいという結論に至りました。」とのことであるが,十分オーディエンスを満足させてきたと言ってよい大西がなぜこのように考えたのかは全くの謎である。彼女は一度約5年間の活動休止をしているが,よほどこの人は音楽にストイックな姿勢を持っているのかもしれないと思わせる発言である。

思えば彼女がデビュー・アルバム"WOW"をリリースしたのが1993年,レコーディング・アーティストとしては実働20年ということになるが,復活後の2作も素晴らしかっただけに,今回の引退発表はもったいないと思わせる。彼女は「既に存在するものを自分というフィルターを通して焼き直すだけだったようにも思われ」るとも書いているが,音楽なんて本当にオリジナルなものもあるが,多くの場合,誰かからの影響を受けそれを咀嚼し,解釈するということは普通に行われることではないのか。ジャズという音楽にこれだけの長い歴史がある以上,それは決して避けることはできないと私には思えてならない。

こうした発表を受けて,彼女の初リーダー作"WOW"を聞き直している私だが,今聞いても,このアルバムの大西のピアノは強靭なサウンドを持っている。言い尽くされた感があるが,極めて男性的なタッチであると言ってよいと思う。そして,ジャズの持つスリリングな感覚を十分に表現していることは見事だ。彼女のピアノは低音の使い方に結構な特徴があるが,そうした部分もこの初リーダー作からも強く感じられて,彼女が出てきた時に,そりゃ業界はびっくりするわってのが容易に理解できる。そうしたピアニストが引退するというのはやはりもったいない。もったいなさ過ぎる。

しかし,本人の意思は固そうであるから,こればかりはどうしようもないのかもしれないない。彼女の引退を惜しんでこの作品に星★★★★★を謹呈してしまおう。何度聞いても「ブリコー(もちろん"Brilliant Corners"のこと)」が強烈。

今にして思えば,最終作となった(なるであろう)"Baroque"リリース後のライブに参加できたのはラッキーだったが,引退なんて言わず,またいつでも復活して欲しいと思うのはきっと私だけではないはずである。

Recorded on September 3-5, 1992

Personnel: 大西順子(p),嶋友行(b),原大力(ds)

2012年9月20日 (木)

バドカン!

Bad_company "Bad Company" Bad Company(Swan Song)

バドワイザーの缶ビールではない(爆!当たり前だ!オヤジ・ギャグ炸裂...)。ある程度の年齢のリスナーにとっては懐かしいアルバムである。私はこのアルバムのLPを保有しているが,実家に置いたままなので,久しく聞いていなかったが,先般中古盤屋で紙ジャケ盤がリーズナブルな値段で売っていたのでついついゲットしてしまった。所謂スーパー・グループと言ってもよいバンドであったBad Companyであるが,このデビュー・アルバムは寄り合い所帯的なところを感じさせないいい出来のアルバムである。

音は極めてシンプルなのだが,非常にロック的なセンスにも溢れて聞いていて気持ちよい。もちろん,このバンドの最大の魅力はPaul Rodgersのヴォーカルということになるだろうが,今聞いてもいい声であり,素晴らしい歌手である。彼が再編Queenのヴォーカルを務めた時は驚いたが,どう考えてもQueenの曲に合わんだろうと思った私はそれは聞いていない(試しに聞いてみるか...)が,このシンプルなフォームのもとでのRodgersは実力を遺憾なく発揮したと言ってよいと思う。最後をアコースティックの"Seagull"で締めるのも渋いしねぇ。

演奏,歌唱が優れているのはもちろんだが,このアルバムをヒットさせたのはここに収められた曲のクォリティだと思う。どこから聞いても記憶に残る佳曲の連続である。こういうのを聞いてしまうと,ロックにも当然のことながら優れたメロディ・センスが求められると思ってしまう私である。売れて当然というか,売れるべくして売れたと言える作品。星★★★★★。

Hipgnosisによるシンプルながら印象的なジャケットもいいよねぇ。一度見たら忘れられない。

Personnel: Paul Rodgers(vo, g, p), Mick Ralphs(g, p), Boz Burrell(b), Simon Kirke(ds), Mel Collins(sax), Sue & Sunny(vo)

2012年9月19日 (水)

Fred Hersch:まだ新譜もアップしていないが,中古でゲットしたソロ作があまりに素晴らしく,先にアップしてしまおう。

Fred_hersch_i_never_told_you "I Never Told You: Fred Hersch Plays Johnny Mandel" Fred Hersch(Varese Sarabande)

Fred HerschのVanguardでのライブの新作に関する記事もアップしていないのだが,非常に力強さを示していて驚かされた私である。新作に関する記事はまた別の機会に譲るとして,本日は私が全く認識していなかったFred Herschのソロ作品である。Herschのディスコグラフィを見ればちゃんと載っているし,私が不勉強なだけだが,中古盤屋でジャケを見つけて,何やこれは?と思わず一人ごちた私であった。そして,この作品,値段はちょっと高かったが,買ってよかったと思わせる素晴らしい作品であった。

私はカザルス・ホールでのHerschのソロを見て以来,彼のソロ作品には一方ならぬ思い入れを持っていると思うのだが,全部が全部最高だとは思っていない。例えば"Plays Rodgers & Hammerstein"等はあまりピンときていない代表である。なぜってことは久しく聞いていないので明確には言えないのだが,聞いても痺れる感覚を得られないと感じたのだ。だが,この作品はそれとは違って知らなかったことを反省したくなるような出来である。

何がよいかと言えば,Johnny Mandelの美しい曲とHerschの相性のよさってことになるのだが,全編に渡ってHerschの美しいタッチによって紡がれていくMandelの曲が楽しめて,私は本当にうっとりする思いをしてしまった。私が気に入るHerschのソロ作品というのは,ほぼ同じような印象を与えてくれることが多いのだが,まさに本作もそうであった。こんな作品について知らなかったこと自体に自分の不明を恥じた。これはまじで最高である。

しかし,言い訳がましくなるが私がこの作品を認識していなかったのには理由もあるように思える。このアルバムについて取り上げられている記事そのものの数がかなり少ないのは事実であり,実際にググってみても,もちろんヒットしないわけではないとしても,国内ブロガーの皆さんのカバレッジも決して高くないのである。だからと言って,ちゃんとAmazonとかを見ていれば,本作にも気付いていたわけで,ここまで全くノーマークだったのは自己責任だ。

本作においてはMandelの超有名曲と言ってよい"The Shadow of Your Smile"と"Theme from M*A*S*H"が除かれている。Hersch曰く,ほかの人も取り上げるからということだが,Herschの演奏も聞いてみたかったと思いつつも,それらがなくても十分このアルバムは楽しめるし,実に素晴らしいソロ・ピアノである。星★★★★★。

しかし,よくよく調べてみれば,中古で結構ころがっていたのねぇ。正直なところ,そっちで買った方が安かったかも...なんて思ってしまうが,それでも私はこのアルバムを買ったことに一点の後悔もない。Herschファン必聴の非常に美しいアルバム。たまらん。

Recorded on September 20 & 21, 1994

Personnel: Fred Hersch(p)

2012年9月18日 (火)

「追想」:ようやくDVDで見た

Photo 「追想(Le Vieux Fusil)」('75,仏/独)

監督:Robert Enrico

出演:Phillippe Noiret,Romy Schneider,Jean Bouise,Catherine Delaporte

長年見たいと思いながら,ずっと見られずにいられた映画と言ってもよい作品を連休中にレンタルしてきたDVDで見た。監督のRobert Enricoと言えば「冒険者たち」が決定的な一作として私の心に残るわけだが,この映画は戦時中に起こった悲劇とそれに対する男の復讐劇ということであり,「冒険者たち」とはかなり毛色が違う。そこが好き嫌いのわかれる部分だろうとは思えるのだが,なかなか見応えのある作品であった。

原題は「古い銃」という意味で,それはそれでストーリーと密接な関係にあるもの(見て頂ければわかる)ながら,邦題の「追想」というタイトルも,映画の中に出てくる回想シーンの多さを考えるとなるほどと思わせる。しかし,この邦題からだけでは,この映画の本質が伝わりにくいのが難点である。

この映画はナチの残虐性と,それに対するPhillippe Noiretの復讐心こそに本質があるわけで,映画に登場する表現はかなり残酷かつえぐい部分がある。だが,戦争の中での復讐ということであるから,綺麗事ですまないのは当然のことであって,その辺りも見る人によっては受容性に違いが出てくるように思える。

正直なところ,脚本にケチをつけようと思えばいくらでもつけられるわけだが,Phillipe Noiretが人のよさそうなオッサンという風体で,激しい復讐を果たすというところのギャップにはおののいてしまう。逆にPhillipe Noiretだからこそ嘘臭さがなくなるとも思え,これはキャスティングの勝利であろう。そしてRomy Schneiderの美しさが,このある意味残酷な映画に救いをもたらす役割を果たしている。まさにクール・ビューティ。そしてNoiretの相対比較により彼女の顔の小ささが目立つ(笑)。

Photo_2 いずれにしても,この映画は厳しい映画である。娯楽として見るには辛い部分もあるかもしれない。しかし,往時の戦争のことを思えば,こういう映画も作られて然るべきという気がする。星★★★★。尚,上のイメージはDVDのパッケージだが,昔公開された時のポスターもなかなかいい(同じ写真でも構図が違うだけで雰囲気がかなり違う。いずれにしても残酷さゼロ)ので,一緒に貼り付けてしまおう。でもまぁ,これが「冒険者たち」を上回る作品かと言うと,そうではないだろうなぁ。これはこれで十分いい映画だと思うが,私は「冒険者たち」の方がやはり好きである。

2012年9月17日 (月)

「夢売るふたり」:西川美和の新作は私にとっては微妙

Photo 「夢売るふたり」('12,アスミック・エース)

監督:西川美和

出演:松たか子,阿部サダヲ,田中麗奈,鈴木砂羽,木村多江,笑福亭鶴瓶

私は映画「ゆれる」並びに「ディア・ドクター」において,西川美和の脚本並びに演出能力に強い感銘を受けた(それらに関する記事はこちらこちら)ので,今回の久々の新作にも大きな期待を寄せて劇場に足を運んだ私である。しかし,結果的には前述の2本には及ばない出来だと思えた。

この映画のストーリー自体は,前2作と同様にひねり(あるいは屈折と言ってもよい)のあるものだが,映画としての問題は登場人物が多くなることによって,映画としての展開に冗長性が生じたことである。結婚詐欺に関する話であるから,騙される側も描く必要は感じるのだが,それが挿話レベルで終わるのではなく,ストーリーの基軸に据えられるのが4人いることによって,まとまりのなさを感じさせるものになっているように感じられた。これはストーリー上仕方がなかったかもしれないとは思いつつ,もう少しシナリオを整理する余地もあったように思える。私としては137分という上映時間も致し方ない部分もあるとは言え,冗長性を排除する余地もあったのではないかと感じられた。

だが,このひねりの効いたシナリオはまさしく西川美和らしいし,役者陣も総じて好演。笑福亭鶴瓶が示す存在感が意外とも思えるが,「ディア・ドクター」の先例もあり,これはこれで大したものと評価するべきものだろう。それにしても,最近の松たか子は「告白」といい,この映画といい,ガッツを感じさせる女優だと思う。普通の生半可な女優ならこの役は演じられまい。

ということで,私としてはアンビバレントな感覚も残るが星★★★☆。

2012年9月16日 (日)

Archie Shepp:まだまだ暑い日本でこの熱い音楽を聞く

Archie_shepp "Life at the Donaueschingen Music Festival" Archie Shepp (MPS)

「ワン・フォー・ザ・トレーン」という邦題でもお馴染みのアルバムである。MPSレーベルのアルバムが廉価盤LPで出ている頃はしょっちゅう見掛けたものだが,現在このCDは廃盤のようである。まぁ,売れる音楽とは言えないから仕方がないかもしれないが,それにしてもこういう作品が入手が必ずしも容易でないというのは問題である。だが,そういう私も,Archie Sheppというミュージシャンにそれほど思い入れのなかったので,このアルバムは実はこれまで聞いたことがなかったのだ。だが今回,中古でゲットして聞いた上で,このアルバムは廃盤にしてはならんと思ってしまった。それぐらいこのアルバムはよい。

Sheppのテナーに2トロンボーン,ベース,ドラムスという変則的な編成であるが,聞こえてくるう音楽はいかにも60年代らしいフリー・ジャズである。だが,フリー・ジャズだからと言ってフリーキーな音かと言えば決してそんなことはない。十分に音楽的なフリーである。それはバックのビートが比較的い明確だからということもあろうが,それよりも何よりもフロント陣の質の高いフレージングによる部分が大きい。よってこれは決して小難しいフリー・ジャズではなく,多くの人にアピールしうる音楽であるから,フリーだからと言って恐れる必要はないと思う。

だが,私もフリー耐性が相当についたから言えるようなもので,これを私がジャズを聞き始めた高校生の頃に聞いていても全然いいとは思えなかったはずである。しかし,今の耳には「おぉっ,これっていいねぇ」と思えてしまうのだから,人間変われば変わるものである。

聞いていて微笑ましいとさえ思わされるのが「いそしぎ("The Shadow of Your Smile")」のフレージングが突如として挿入される瞬間だが,それもひとつの自然発生だったのだろうなぁと思いつつ,この熱いジャズに身を委ねていると本当に心地よいのである。特に全然暑さが和らがない今年の日本の初秋に聞くと,ますます燃えてしまうのだ。やはり暑い時期とフリー・ジャズの組合せはフィット感が強い。

Archie Sheppは後に保守化を示し,Denonレーベルの諸作では結構コンヴェンショナルな演奏を聞かせる(私がSheppのライブの放送を聞いたのもこの頃。確かHoward Johnsonがチューバで客演していた)が,この人の本質はやっぱりこっちではないのかなぁなんて聞きながら思ってしまった。いやー,それにしてもこれはいけている。人生51年を過ぎるまでこの音楽を聞かなかったことを悔やんだ私である。反省も込めて星★★★★★。67年のライブ録音にしては妙に音がいいのもMPSらしい(笑)。

Recorded Live at the Donaueschingen Music Festival on October 21, 1967

Personnel: Archie Shepp(ts), Roswell Rudd(tb), Grachan Moncur(tb), Jimmy Garrison(b), Beaver Harris(ds)

2012年9月15日 (土)

また飲み過ぎた私

またやってしまった。飲み過ぎた私はもう寝るだけ、ということで今日はお休みです。

2012年9月14日 (金)

Dave Hollandの新バンドPrismがカッコいい!

Dave_holland_prism まだ公式音源もリリースされていない中で,Dave Hollandの新バンドと思われるPrismのライブ・ブート音源を聞いた。メンツがメンツだけにハイブラウな音が出てくること必定と思っていたのだが,これが想像以上のカッコよさである。

だって,メンツがHolland以下,Kevin Eubanks(g),Craig Taborn(p, el-p),そしてEric Harland(ds)である。間違いないっていう感じのメンツだろう。唯一,Kevin Eubanksは永らく"Tonight Show"のバンド・マスターをやっていたので,もうハイブラウな音楽は難しいのかもなんて想像していた私だったが,見事に予想をいい意味で裏切ってくれた。さすが,Hollandとは旧知の仲だけのことはある。ちゃんとHollandはEubanksが枯れていないことを見抜いての起用であることは間違いない。Hollandは間もなく65歳になるはずだが,そんな歳を全く感じさせないコンテンポラリーなサウンドであり,Eubanksもかなりハードなギターでそこに大きく貢献している。

キャリアを振り返ってみれば,Hollandは旬の活きのいいミュージシャンたちをグループに迎えながら,その力を吸い取って若さを維持してきたのではないかと思いたくもなるが,今回のグループのコンテンポラリー度は半端ではない。参加しているミュージシャンのオリジナルも演奏する形になっているので,グループとしては対等感を打ち出しているのかもしれないが,こういうミュージシャンが集うところにHollandの人徳(あるいは優れたリーダーシップと呼んでもよい)を感じる。来日したら是非ライブを見てみたいと思わせるメンツであり,演奏である。従来のHollandであれば,ここに管を入れそうなものだが,Eubanksがそれを補って余りある活躍ぶりを示すし,これまで聞いた中でも相当いけているCraig Tabornがいい仕事をしているので,管が入ってなくても全然問題ない。Harlandは言わずもがなって感じか。

まじでいいですわぁ。この音源は探すところを探せばすぐヒットするので,ダウンロードに抵抗がなければ皆さんも是非。それにしてもDave Holland恐るべし。そして繰り返しになるが,ここでのTaborn,まじでカッコいいのだ!まいりました。

2012年9月13日 (木)

Milton Nascimentoのライブ盤が素晴らしい

Milton_nascimento "A Barca Dos Amantes" Milton Nascimento (Verve)

今日は本当はBob Dylanの新譜について書こうと思っていたのだが,もう少し歌詞を吟味してからにしようということで,突然Milton Nascimentoである。私はこのブログにも彼のアルバムについて書いたことがある(記事はこちら)し,素晴らしい歌手だと思う。それでもなぜか彼の音楽には私はのめり込めない部分があったことも事実である。実のところ,理由はよくわからないので,これも相性ってやつだろう。

しかし,今回中古でゲットしたライブ・アルバムは非常によかった。Milton Nascimentoの声の魅力というものを私はこのアルバムで初めて本当に理解したのではないかと思えるぐらいである。ライブ盤であるから,音場がライブ感たっぷりなのは当たり前であるが,ここでのエコーの掛かり具合が,彼の声の魅力を増幅しているように感じたのだ。これは心地よい。バックの音はかなりコンテンポラリーな感覚が強いが,それもここでの歌にはマッチしているように思える。更に何よりもWayne Shorterのゲスト出演が花を添える以上の劇的な効果を発揮している。

告白してしまえば,"Native Dancer"でさえ実はピンと来ていない部分がある私だが,そんな私にとっても,ここでの共演ぶりは文句なしである。私はこのアルバムを通勤途上に2回繰り返して聞いたのだが,まだまだ聞けるって感じだ。それは決して熱くなることはなく,あくまでも穏やかに音楽を聞かせるここでの演奏に私が大いに惹かれたからではないかと思う。繰り返すが,私は本盤で本当のMilton Nascimentoの魅力を再認識した。素晴らしい声,そして素晴らしい音楽。これこそMPBのあるべき姿と言ってもいいかもしれない。ということで星★★★★★としてしまおう。

こういうアルバムが廃盤というのは信じられないが,米国方面なら中古でいくらでも安く買えるし,国内でも事情は同じだろう。いやぁ,それにしても気持ちよい音楽である。

Recorded Live in Sao Paulo in April 1986

Personnel: Milton Nascimento(vo, g), Wayne Shorter(ss), Luiz Avellar(key), Ricardo Silveira(g), Nico Assumpcao(b), Robertinho Silava(ds, perc)

2012年9月12日 (水)

W杯アジア最終予選のイラク戦:快勝とはいかなかったが,まぁあんなものかなぁ。

Photo ブラジルW杯アジア最終予選も第4戦となった。ここまで勝ち点7でグループ首位を走る日本だが,強敵イラクに対してどういう試合をするのかが興味の焦点だった。結構危ないシーンもいくつかあったものの,オーストラリア戦に比べればロング・ボールでひやひやするということはあまりなかった。むしろ,前半に見られたイラクの精度の高いコーナー・キックの方が怖かったってところだろう。主力が出場停止で心配されたディフェンス陣も,思ったよりは機能していたので,オーストラリア戦のような痺れる感覚(はらはらドキドキ感)というのはあまりなかったって気がする。だが,先発10人を入れ替えるというジーコの奇策にてこずったのは事実であり,特に前半のドタバタ感は次戦以降の反省事項となると思う。まぁ後半,日本に疲労が蓄積してきたタイミングでエース級を交代で投入するだろうというのは見えていたから,そこへの対応はハーフタイムで検討されていたようなのはよかった。

この試合で何よりも驚いたのは香川の欠場だったわけだが,それによる攻撃力の低下が懸念される中,岡崎と前田のコンビネーションで取った1点は見事であった。岡崎のパスもよかったが,前田の反応もほめられて然るべきである。スルーパスの出し手としての遠藤がマンマークで抑え込まれる中,それを打開したのはスローインからの岡崎の切れ込みというのが素晴らしい。一瞬のすきをついて切れ込んだ上でのパス→ゴールであるから,岡崎~前田のコンビはきっと気持ちよかっただろうと推察する。本当に一瞬の出来事だったとも言えるわけで,イラク・ディフェンスにも油断があったのかもしれない。

これで日本にとって最終予選は折り返しとなるが,ここまで3勝1分けは上出来だろう。これで次のアウェイでのオマーン戦に勝てばほぼW杯出場権は固いと思えるので,こうなったらこのまま決めて欲しいものである。その時は,これまでのところ活躍度が高いとは言えない香川に頑張ってもらうこととしよう。それまでに欧州で行われるフランス,ブラジルとのテスト・マッチで更なるレベル・アップを図れればと思う。

それにしてもイラクの先発メンバーは結構レベルが高かった。ヘッドは強いし,プレース・キックは正確で強烈。試合を見ながら大したものだと感心していた私である。やはりイラクは侮れない。

2012年9月11日 (火)

Grace Jonesって面白いねぇ。

Grace_jones "Slave to the Rhythm" Grace Jones(Island)

Grace Jonesと言えば,その見た目のインパクトばかりが注目されるところがある(本作も凄いジャケだ)が,少なくとも1980年代は非常に活躍していた人と言ってよい。映画もいろいろ出てたしねぇ。それは視覚的インパクトのおかげってところはあろうが,では音楽はどうなのか?

私はGrace Jonesとはほぼ縁のない生活を送ってきた。といいつつ,彼女の20年振りのアルバム"Hurricane"が出た時は買ったのだが,それは一体いまどこにあるのかよくわかっていない。家のどこかにはあるはずだが,その程度のポジションしか占められなったというのが実情である。しかし,今回,この1985年作を中古で拾ってきて,随分と私は気に入ってしまった。

なんでこのアルバムを購入しようという気になったかと言えば,それは安かったからである。何てたって180円である。はずしたって全然問題ない。フリスク1個より安いんだからまぁいいやなのである。そして,ここで展開されるファンクの決まり具合が非常に心地よいのである。プロデュースはTrevor Hornであるが,私自身はTrevor Hornはそれほど評価していないとしても,この作品の筋の通った感じは非常によい。全編に渡って心地よいファンクに身を委ねればあっという間に時間が経っていく。

この作品の各曲にはジャーナリストPaul MorleyとGrace Jonesの会話が挿入されており,そこにGrace Jonesの自伝的な響きがあるのだが,現在リリースされているCDにはこの会話が入っていないだけでなく,曲順も違っているということらしい。私が180円で仕入れたのは幸いオリジナルのコンフィギュレーション通りのアメリカ盤なので,LPと同様の構成で本作が聞けた。そうしたことは買ってから知ったことなのだが,結果的にはそれは幸いであった。本質的にこの構成こそがこのアルバムの当初のコンセプトを正確に伝えるものだと思えるからである。しかも,曲は同じもののヴァリエーションだとも考えられるのだが,これだけ起伏をつけながら,一枚のアルバムに仕立ててしまうことも実は物凄いことのように思えてしまうのだ。

今にして思えば,時代の徒花だったと言われても仕方がない作品かもしれないが,それでもそれほど古臭さを感じさせないのは驚きである。一般に評価のわかれる80年代の音楽でも,ちゃんと生き残れる音源はあることを実証したような音である。ジャケのインパクトだけで引いてはいけない。これは今でも聞くに値する音楽だと思う。星★★★★☆。本作があまり気に入ってしまったので"Nightclubbing"を発注してしまった私である(笑)。

Personnel: Grace Jones(vo), Louis Jardim(b, perc, vo), J.J. Belle(g), S.J.Lipson(g, b, key), Bruce Wooley(key, vo, g), Andrew Richards(key), Ju Ju(ds), Little Beats(perc), Shorty Tim(perc), Frank Ricotti(perc), Joh Thirkel(tp), Guy Barker(tp), Stuart Brook(tp), Pete Beachill(tb), Geoff Perkins(b-tb), Jamie Talbert(as), Phil Todd(as), Stan Sultzman(ts), Dave Bishop(ts), Andy McIntosh(bs), John Pigneguey(fr-h), David Snell(harp), Tessa Niles(vo), The Ambrosian Singers(choir), and Others

2012年9月10日 (月)

安倍晋三はアホ晋三と改名すべきである。そして橋下徹はとち狂っている。

正気の沙汰とは思えないとはこのことである。内閣総理大臣という職を一旦投げ出した男が自民党総裁選に出馬し,次回国政選挙において自民党が勝利すれば,その職に復活しようという,安倍晋三という男の精神構造は全く理解不能である。

安倍がまさしく「職を投げ出す」というかたちで辞任をしたのはたった5年前のことである。それぐらいの時間軸の中で,国民がそのことを忘れた,あるいは水に流したとでも思っているのか?だとすれば,まさしく世間知らずのぼんぼんと呼ぶにふさわしい人間である。そもそも次回の国政選挙では民主党が敗北すれば,自民党総裁に内閣総理大臣の職が回ってくるだろうという思惑での出馬だろうが,世間からは「猿山のボス争い」としか見られていないことをこの男は理解しているのか?

こういう状況を許している責任は現在の民主党政権にあることは認めざるをえないが,ここに来ての自民党総裁選における権力闘争は「醜い」の一言である。その醜さに輪を掛けているのは安倍晋三にほかならないということをわかった上で出馬するなら,この男は本当の「恥知らず」である。一国の宰相の器ではないということをもう5年前に自分で明らかにしてしまっていることすら忘れているとすれば,もうどうしようもない。自民党員諸君も安倍が出馬しても当選させるほど,そこまではアホではあるまい(と信じたい)。

安倍晋三がアホならば,橋下徹は国民の心理を理解できないうつけ者であり,はっきり言って狂っている。ぽっと出の政治家「もどき」に国政を任せるほど,日本国民はアホではないわ。よくもまぁ,次期衆議院選挙において,「政治的な決定をやる以上は過半数」を目指すなどとほざけるものである。結局この男は数を制すれば何でもできると言わんばかりである。現状の政治に対する問題意識を提示するのは勝手だが,日本人はラディカルな変革よりも,ゆるやかな変革を求めるのではないか?この男の言動が認められてきたのは「大阪」という土壌,あるいは大阪人のメンタリティが影響していると(関西人の)私には思えるが,それが日本全国津々浦々に浸透すると思ったら大間違いである。この男を見ていると,米国で一瞬のブームを生んだ「茶会党」と全く同じではないかと思えてしまう。「言っていることは必ずしも間違っているわけではないが,問題を解決するための具体策を提示するわけではない」というのもまさに「茶会党」と同じである。「日本維新の会」改め「日本茶会党」とでも名乗ればよいのだ。

こんな男についていこうとする現役国会議員も国会議員である。結局人気取りのために橋下徹の側につこうとしていることぐらい,ほとんどの有権者に見破られているわ。全く情ない。本当に情ない。このような荒んだ政治状況を生んだ民主党には猛省を促したいが,このような茶番を繰り広げる政治家に対する不信だけが高まっているということを,彼らは本当に理解しているのか?バカバカしくてやってられないと思うのは私だけではないはずだ。

政治的なことを書くのがこのブログの目的ではないが,本当にアホくさいのである。投票行動を棄権したことがない私だが,今回ばかりは論点次第では考えざるをえない。民主党も自民党もしょうもない権力闘争をやっている暇があるんだったら,ほかにやることがあるだろうってもんだ。国民不在,国政無視もいい加減にしてもらいたいわ。こんなことに必死になっている政治家諸君には「税金泥棒」という呼び名こそ相応しいだろう。

こういうような状況であるから本音か建前かは別にして「福島のことはどうしても頭から離れなかった。この仕事を投げ出すことはできない。それが最大の理由」として,民主代表選の不出馬を決めた細野くんの相対的な評価が上がることになるのではないか。一方で,既成政党に対する批判の受け皿として橋下徹が「漁夫の利」を得るのだけは勘弁して欲しいが。

なんだかなぁ...。

2012年9月 9日 (日)

「最強のふたり」:まさしく心温まるとはこの映画のこと

Photo_2 「最強のふたり("Intouchables")」('11,仏,Gaumont)

監督:Olivier Nakache,Eric Toledano

出演:François Cluzet, Omar Sy. Anne Le Ny, Audrey Fleurot

フランス映画にしては巷では結構話題になり,評判もいい映画であるが,その理由は見ればわかる。この映画には悪人が出てこない。そして内容が本当に心温まるので,見た後の後味が素晴らしいのである。

この映画はフランスの階級社会を皮肉ったものという見方もあるが,そんな小難しいことを考えること自体無意味である。主役の二人のやり取りを見ていて,くすくす笑わせてくれる映画を素直に楽しめばいいのである。

とにかく主役の二人が好演。私はもっと泣けるのかと思っていたのだが,泣くことによるカタルシスは得られないとしても,心地よい笑いに包まれた別の意味でのカタルシスに満ちた映画であった。そして最後の最後に私はぐっときたが,こういうのを「いい映画」と言うのである。ギミックなし,派手なシーンもほぼ皆無,だが本当に幸せな気分で席を立つことができる映画である。私はこうした映画に対してすら皮肉な見方しかできない人々は不幸だと言い切ってしまおう。日頃天邪鬼な私が天邪鬼でなくなる瞬間もあるのだ(笑)。甘っちょろいと言いたければ言えばよい。そう言われても私は一切気にしない(きっぱり)。

これが実話に基づく話というのが驚き(最後に本人登場)だが,事実は小説よりも奇なり。そして映画は日頃忘れがちなヒューマンな感覚を間違いなくオーディエンスに与えてくれるはずである。この幸せな感覚を評価して星★★★★★としてしまおう。ただ,このタイトルはねぇ...(苦笑)。それでも映画としては本当に優れた作品である。こういうのを見ると映画が好きでよかったと思ってしまう。今年見た中では間違いなく最高の作品。

2012年9月 8日 (土)

作家,西川美和の新作

Photo 「その日東京駅五時二十五分発」 西川美和(新潮社)

映画の新作「夢売るふたり」が公開される西川美和であるが,そちらへの期待も高まる中,先日本屋をうろついていたら,彼女の新作が出版されていた。

映画監督としても優れた手腕を持つ西川美和が,小説家としても相当なものであることは「ゆれる」の小説版でも実証されていた(記事はこちら)ので,今回の中編にも期待を寄せた私である。 そして,この小説を読んでいて思ったのが,戦争を経験していないはずの西川が,なぜこのように終戦前後の様子を活写できるのかということであった。そのカラクリは「あとがき」において明らかにされるが,素材を見事に翻案していると言えるのではないか。まさに彼女のイマジネーションの産物である。

話は非常にたんたんと進み,決して劇的な展開を示すわけではない。それを退屈だと思う読者がいても仕方がないのだが,私は西川美和の持つアダプテーション能力を楽しんだと言えばいいだろうか。まさに「見てきたようにものを書き」って感じなのである。こうした才能が彼女の映画における脚本能力として反映されているように思えるのである。彼女の長編映画はオリジナル脚本によるものばかりだが,長編映画でも脚色ものを手掛ければ,面白いことになるのではないかと思わせてくれた佳品である。広島出身の西川美和のアイデンティティの根本に存在する「戦争」を題材としたことも西川美和らしいって気がする。星★★★★。

新作映画「夢売るふたり」にもますます期待が高まった私である。

2012年9月 7日 (金)

Lionel Louekeの新譜はRobert Glasperプロデュース

Heritage "Heritage" Lionel Loueke(Blue Note)

私はLionel Louekeとの相性が悪い。どうもこの人の声でアフリカ,アフリカっぽいサウンドが出てくるだけで,どうも居心地が悪いのである。そうしたことはこの人のBlue Note初作の"Karibe"が出た時の記事にも書いた(記事はこちら)。

私はアフリカ音楽が嫌いだとは思わないのだが,どうもジャズ・イディオムの中でアフリカ的なものが顔を出すと今イチのめり込めない感覚が強いのである。それはRichard Bonaも一緒である。よって,普通なら前のアルバムでダメだと思っているので,Louekeのアルバムを買うことはなかったのだが,そんな私がこのアルバムを買ったのは,プロデュースをRobert Glasperが行っているからにほかならない。先日の日本におけるライブでは大いに私を失望させたGlasperだったが,それでも彼の"Black Radio"は本年屈指のアルバムという評価は今でも変わっていないし,それに加えて今回のリズムがGlasperバンドのDerrick Hodge,それにドラムスが最近ではBrad MehldauとMehlianaというバンドを組んでいるMark Guilianaということもあって,かなりのファンク・サウンドが期待できるのではないかと思ったからである。

実を言うと,冒頭の音が出てきた時,そのアフリカ的ヴォイスに「あぁっ,またか...」という軽い失望感に見舞われたのだが,Louekeが歌うのをやめるとと言うか,ファンク・フレイヴァーが強まると,かなりいい感じに聞こえてしまうのである。リーダーのLouekeには悪いが,彼のアフリカ的個性を消してくれたら,もっと私には楽しめるアルバムになっていたはずである。逆にそういうタイプの曲は大いに興奮もさせられてしまった。特にアルバム後半の3曲,即ち"African Ship"や"Goree",そしてラストの"Bayyinah"がそれに当てはまる。

どうせならギタリストに徹していればもっとよかったのではないかと思えるほどなのだが,共同プロデュースをするLouekeとしてはさすがにそれは出来なかったってことだろう。まぁ,"Karibe"よりはずっと好きだが,それでももう少し突き抜けた感覚,換言すればGlasperにもっと任せるというところがあれば更によかったと思う。

繰り返すが,このアルバム,Louekeのアフリカ的なフレイヴァーが弱まると,私にとってはぞくぞくするようなサウンドになってしまうという何とも不思議なアルバムである。伴奏陣に免じて甘めの星★★★☆。やっぱり私はLouekeと相性が悪いってことである。

それにしても2曲で参加のGretchen Parlatoの使い方がもったいないと思うのはきっと私だけではあるまい。もう少しフィーチャーしてもよさそうなものだが,悪くはないとしてもまじで使い方が地味。Steve ColemanとCassandra Wilsonのような関係性で使えなかったものか。また,謝辞がDon Was(何とA&Rとしてもクレジットされている)にも与えられているのを見て不思議に思っていたのだが,Don Wasは現在のBlue Noteレーベルの社長をやっているそうである。よくよく調べていて思わずへぇ~っとなってしまった私である。

Personnel: Lionel Loueke(g, vo), Robert Glasper(p, key), Derrick Hodge(b), Mark Guiliana(ds), Gretchen Parlato(vo)

2012年9月 6日 (木)

激安で仕入れたFleetwood Mac「噂」トリビュート盤

Legacy "Legacy: A Tribute to Fleetwood Mac's Rumours" Various Artists(Atlantic)

Fleetwood Macの"Rumours"と言えば知らぬ人のないメガ・ヒット・アルバムである。このアルバムはその"Rumours"に収められた曲を順番通りに異なるアーティストがカヴァーしたコンピレーション・アルバムである。

私はこのアルバムが出た時から気になってはいたのだ。Jewelが"You Make Loving Fun"を歌っているってことがその一番の要因だが,それでも買うというところまで行かなかったのは,このアルバムで演奏している人たちが必ずしもビッグ・ネームばかりではなかったことが大きいかなぁと思っている。メジャーなのか地味なのかよくわからない人選と言えば実はその通りだと思える。それでもMick Fleetwood自身がプロデュースしているし,280円だったからまぁいいやってことでの購入である。

こういう企画盤にはCarole Kingの「つづれおり」にトリビュートした"Tapestry Revisited"という先例があるが,あっちはこれに比べるとはるかに豪華なメンツが揃っていたとも言える(あのCDを私はどこにしまったのだろうか...)。だが,本盤のメンツがやや地味だからと言って,悪いってわけではないし,オリジナルの持つ曲の魅力を活かしつつリメイクしているように思える。ほぼ全編に渡ってストレートなリメイクぶりで,ギミックは感じられない。例外はmatchbox 20とGoo Goo Dollsが"Never Going Back Again"と"I Don't to Want to Know"をマイナー・キーに仕立てたぐらいであるが,それはそれで面白い取り組みではある。

だからと言って,これがオリジナルを凌駕しているとは思えないが,ある意味耳タコのFleetwood Macの演奏とちょっと違うものが聞きたいって感じたならば悪くはない演奏集である。私が特に贔屓にするChristine McVie以外であれば,こっちでもいいやって感じである。だが,そのMcVieの曲である"You Mak Loving Fun"をこれまた私が好きなJewelが歌ってしまうと,必ずしもそうとも言えないところが私もいい加減なものである。それでもこのJewelの歌唱は今イチなんだよなぁ。やっぱりこの曲はChristineの方がいい。

ということで,いいのか悪いのか,あるいは好きなのか嫌いなのかはっきりしないわけだが,それでもたまにはこういうのもいいだろうってことで星★★★。これでもう少し,これは凄いって演奏があればもう少し評価してもいいのだが...。まぁ,280円だからいいや。いずれにしても本当に耳障りのよい曲ばかりである。

Personnel: Tonic, The Corrs, matchbox 20, Elton John, The Cranberries, Duncan Sheik, Shawn Colvin, Jewel, Goo Goo Dolls, Tallulah, Sister Hazel

2012年9月 5日 (水)

The Big 3:演奏は素晴らしいが,聞く時間を間違えた(苦笑)

The_big "The Big 3" Milt Jackson / Joe Pass / Ray Brown (Pablo)

はっきり言ってしまおう。このメンツである。悪いわけがない。そもそもMilt Jacksonという人のアベレージの高さは驚異的と言ってもいいぐらい愚作,駄作のない人である。そして,彼の持つブルーズ・フィーリング溢れるヴァイブラフォンの演奏を聞けば,ジャズを聞いたことがなくても,あぁっ,これがジャズなのねぇなんて思ってしまうかもしれない。私にとってはMilt Jacksonは極めて信頼度の高い人だと言っても過言ではない。それを支えるのがJacksonとはコンボも組んでいたRay Brown,そしてギター・ヴァーチュオーゾ,Joe Passなのだから,繰り返しになるが,やはり悪いわけがないのである。

そして,このアルバムで聞かれる演奏も,極めて安心感のあるハイ・クォリティの音楽である。本来ならグラスでも傾けながらリラックスして聞けば,これはまさにぴったりの音楽と言えるであろう。

しかしである。私がこのアルバムを久々に聞いたのが,朝の通勤途上のことであったのだから,我ながらもう少し環境を考えて音楽を選べよと言いたくなってしまう。私が通勤で使っている電車の混み具合は殺人的なものではない。座れないとしても,立って新聞は読めるぐらいの混雑度である。だが,そうだからと言って,朝の通勤電車は結局は朝の通勤電車に過ぎないのであって,少なくとも高揚感をおぼえる時間ではない。だからこそ,朝はグルーミーな感覚を払拭すべく,ある程度勢いのある音楽を聞きたいと思うのが筋なのだ。だが,私が選んだこの音楽は,そんな勢いとはある意味対極に位置するものであり,極めてリラクゼーションに溢れ,正直まったりした気分にさえさせてくれるようなものであるから,これから仕事ってタイミングにはフィットしていないこと甚だしいと言われても仕方がない。

だから,私はこの音楽を聞いていて,こりゃいいねぇなんて思いながら,ちっとも精神的な高揚感は得られないという感覚に陥っていたのである。演奏は最高なのだが,決して朝の通勤途上で聞くような音楽ではないことを理解し,ちゃんと聞くべき時間と場所を選べば,本当にナイスなアルバムである。いかにもPabloらしいビッグ・ネーム同士による「一丁上がり」みたいな演奏だという批判はあるだろうが,余裕でこれだけの演奏をしてしまうこの人たちは,やはり名人の域に達していると言ってもよいだろう。

ということで,こうしたアルバムを聞くことで,私のMilt Jackosnに対する評価は上がりこそすれ,下がることはないと言ってしまおう。作品として歴史に残るものではないとしても,ジャズという音楽のよさを雄弁に語っているアルバムである。星★★★★。ところで,現在OJCから再発されているこのアルバムのジャケは,(おそらく人工的に)カラーリングされているが,全然雰囲気が出ていない。Pabloのジャケは白黒でなければならないのだ(きっぱり)。

尚,1曲目は"The Pink Panther"という曲だが,Henry Manciniの「あの曲」ではなく,Milt Jacksonのオリジナルなので念のため。

Recorded on  August 25, 1975

Personnel: Milt Jackson(vib), Joe Pass(g), Ray Brown(b)

2012年9月 4日 (火)

音楽こそRy Cooderそのものだが,歌詞は相当辛辣。ロックだねぇ。

Electionspecial "Election Special" Ry Cooder (Nonesuch)

世の中,米国では大統領選の年である。その年に「選挙スペシャル」とはジョークがきつ過ぎるって気もするが,音楽そのものはRy Cooderらしさが全面的に感じられるのだが,歌詞は相当辛辣である。まさにRepublican(共和党)への皮肉たっぷりで,政治信条としてリベラルを公言する私のような共和党嫌いには大いに笑えてしまうような内容である。何てたって1曲目は共和党の大統領選候補者,Mitt Romneyを皮肉った"Mutt Romney Blues"だもんなぁ(笑)。

歌詞は歌詞としてじっくりながめるに値するものだとは思うが,アメリカの政治やら何やらに関心がなければ,音楽だけ聴いていればいいわけだし,十分にそれだけでも楽しめる。ただ,昔Neil Youngが"Ohio"を書いた時のように,ミュージシャンとしても「言わずにおけぬことがある」って感じの激しさを理解してこの音楽に対峙するべきもののようにも思える。

それはさておきである。このアルバムはほぼRy Cooderと息子のJoachim Cooderの2人で制作されたものであり,例外はArnold McCullerが1曲だけバッキング・ヴォーカルで参加しているだけである。それにしては音としては分厚い感じにできているし,Ry Cooderのギターの技が聞けるという点ではファンには満足度が高いはずである。

歌詞を反映して,強烈なロックを感じさせる曲もあれば,マンドリンでのどかささえ感じさせる曲もある。それらはそれらでもちろん素晴らしいが,このアルバムを聞いていて昔からのファンがうなってしまうのはRy Cooderのブルーズ表現ではないかと思える。やはりRy Cooderのスライドは素晴らしいと再認識させるものである。昨今のスライドと言えばDerek Trucksというのが相場であるが,Trucksとは音やフレージングに違いがあって,私は本当にこのアルバムを楽しんでしまった。そして収録時間の短さ(39分弱である)もあって,私は通勤(行き帰り)の途上で4回も聞いてしまったのだが,全然飽きることがない。むしろ歌詞に耳をそばだてて聴いていると,「やってる,やってる」って感じで,逆に言うと「ここまで言って大丈夫なのか?」とさえ思ってしまう。

それでもこういう音楽を聞いていると,政治信条を明確にすることを彼らは全然問題だと思っていないというところにいいか悪いかは別にして,日本との土壌の違いを感じる。まぁ,日本の政治家の場合,主義主張に与野党間で大きな違いもなく,人の税金の無駄遣いに腐心する方々ばかりなので,なかなかそうもいかないというのは理解できるが,それにしてもである。

いずれにしても,この音楽はギタリスト,マンドリニスト,そして歌手としてのRy Cooderの魅力を十分に伝えるものとして私は強く推薦したい。星★★★★☆。まぁ,こうした政治信条が気に食わないとか「音楽に政治を持ち込むな!」って方は聞かずにおけばよい話である。しかし,やはりRy Cooderの考えを理解して聞くか,無視して聞くかでは受け取り方は大きく違うはずなので,そうしたバックグラウンドは理解した方がいいように私には思えるのだ。これってやっぱりロックだろう。そう,ロックだぜぃ。

Personnel: Ry Cooder(vo, g, b, mandolin), Joachim Cooder(ds), Arnold McCuller(vo)

2012年9月 3日 (月)

アベンジャーズ:まさにマンガである。

Avengers 「アベンジャーズ ("The Avengers")」('12,米,Paramount)

監督:Joss Whedon

出演:Robert Downey, Jr., Chris Evans, Mark Ruffalo, Chris Hemsworth, Scarlett Johansson, Jeremy Renner, Samuel L. Jackson

Marvelコミックのキャラ総出演という感じの映画であり,世界で大ヒット中のこの映画はヴィジュアルの効果もよくできているし,大人も子供も楽しめてしまうのがそうしたヒットの要因であることは間違いないだろう。そうした要素も認めつつ,私がこの映画を評価するとすれば,これだけのキャラクターが出てきながら,ほぼ破綻のないシナリオに仕立てたことだろうと思う。

この映画のシナリオがよくできていると思えるのは,これまでのMarvel関係の映画を連動させたかたちで,関係性を明確化していることになると思う。よって,「アイアンマン」にしろ「マイティ・ソー」にしろ,この映画の伏線を張ってあったようだが,そうした効果もあって,ストーリには大きな破綻はないように感じられるのである。視覚的効果にばかり目が行きがちな映画の中で,こうしたストーリーに対するちゃんとした目配りは好感が持てるのだ。

もちろん,生身の人間にしては強過ぎ,あるいは万能な人々も出てきて,これは一体どういうことと思わせる部分はあるが,そこはマンガであるから大目に見よう。先日取り上げた「ダークナイト・ライジング」がChrustopher Nolanらしい陰影(あるいは暗さ)があったが,こっちの映画はそうした暗さは皆無。とにかくわかりやすい。だからこそ,これだけのメガ・ヒットになると考えてもいいだろうが,それにしてもよくやるわって感じである。それでもNYCでのド派手なアクション・シーンなど十分楽しめたので星★★★★としてしまおう。

Marvelコミックの映画化はこれからも続々と行われるようで,あまり作り過ぎると飽きられるのではないかと余計な心配をしてしまうし,「アベンジャーズ2」の製作も公開日も既に決まっているというのもどうなのよって気もするが,これだけヒットしてしまえばそれもまぁ当然かって気もする。だが,キャラ単独の映画はこれに比べると小ぶりになってしまうのかなぁとも思えてしまう。いずれにしても,これはアメ・コミの世界なので,マンガやアニメーションに別の世界を求める日本での受け方は,多分アメリカとは違うんだろうとも思えてしまった。まぁ,それでもこれはこれでいいんじゃないのかなってことで。

2012年9月 2日 (日)

Daniil Trifonov:この人はなかなかやるねぇ。

Trifonov 「チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 ほか」 Daniil Trifonov / Valery Gergiev / Mariinsky Orchestra(Mariinsky)

2010年のショパン・コンクール第3位の後,2011年のチャイコフスキー国際コンクールでピアノ部門で優勝したDaniil Trifonovという人はまだ21歳だそうである。彼の名前だけなら私はこのCDは買っていなかったかもしれないが,Gergiev/Mariinskyが伴奏でチャイコのPコンということで食指が動いてしまった。まぁ,チャイコならばArgerichを聴いてりゃいいじゃんという話もあるが,何だかんだと言ってGergievのCDは買ってしまう私である。

そしてこの作品であるが,チャイコフスキーのPコンが見事な演奏であることは間違いないのだが,私が更に驚いてしまったのが後半に収められたTrifonovによるピアノ・ソロ作品の方である。チャイコに加え,ショパンの舟歌,そしてリスト編曲のシューベルト歌曲を演奏しているのだが,特に私がまいってしまったのがシューベルトである。ダイナミズムとエレガンスを兼ね備えた演奏にはこの人のピアニストとしての才能を強く感じさせる。これを聞いていたら,Gergievが振ったPコンがどうでもいいとは言わないが,ピアノだけ聴いていても十分もとを取ったと思えてしまった。正直言って,Gergievの指揮ぶりは特にどうこう言うほどでもないかなぁって感じがあったこともあるかもしれない(私としてはもっと激しくやって欲しいところ)が,それだけにより舟歌やシューベルトが更によく聞こえてしまったようにも思える。だがここでの演奏を聞けば,すぐにこの人の才能はわかるはずである。若いのに見事な演奏群。

いやいやそれにしても大したピアニストである。今後の成長にも期待して星★★★★★としてしまおう。チャイコはもう少し音がよければなぁって感じもあるが,まぁよかろう(ちゃんとしたオーディオ装置では聞いていないので,私の誤解かもしれないが:苦笑)。

Recorded in October 2011, January and April, 2012

Personnel: Daniil Trifonov(p), Valery Gergiev(cond), Mariinsky Orchestra

2012年9月 1日 (土)

お詫び並びに訂正

8/28付のこのブログにてWoody Shawの"Woody Plays Woody"について「また出た!Woody Shawの未発表音源」と書きましたが,このアルバムに収められている音源は既にHigh Noteからリリースされているライブ音源シリーズのコンピレーションであることが判明しました。謹んでお詫び,並びに訂正させて頂きます。

そちらの記事については主題を変更し,お詫びの文章も掲載させて頂きましたので,ご了承のほどよろしくお願い致します。

コレクターはつらいよ(13):Daniel Lanoisのダウンロード音源に2曲だけ参加のBrad Mehldau

Mastercovers_0001_omniboxfront "Omni Series" Daniel Lanois(Red Floor)

これについては全くノーマークだったのだが,先日,Brad Mehldauのディスコグラファー,Jens Linge氏のサイトを訪問したら,これに関する情報がアップされていた。もともと,このアルバム,CDフォーマットでもリリースされていたようなのだが,現在はダウンロードのみとなっている。大枚はたいて限定版CDをゲットしてもいいのだが,アルバム3枚分の音源に対してBrad Mehldau参加曲が2曲ではなかなか厳しい。ここはダウンロードで我慢するか,それともコレクター魂を発揮するかで迷っている私である。今のところ,私が入手したのはダウンロード音源だが,まぁ,それで十分って言えば十分なのである。

Purple_vista_21 しかし,このボックス・セットはポストカード(そのうち1枚はこんな感じ)が封入されていたりするので,やはりコレクター心はくすぐってくれるわけで,う~む,困った。ということで,相変わらずコレクターはつらいのである。と,この記事を書くその一方で,CDはないのか探していたらあった,あった。お手頃価格(まぁ,しょうがないねってレベル)がありました。ということで,上のようなことを書きながらすかさず発注してしまった私...(爆)。馬鹿につける薬はないってやつである。ダウンロード音源は無駄になってしまったようでもあるが,CDが存在することも知らずに発注した自己責任である。まぁDRMフリーだからいいとしよう。

このアルバムは"Steel","Purple Vista","Santiago"の3種の音源からなり,Mehldauは"Steel"以外の2枚に1曲ずつ参加である。何とも言えないアンビエンスを感じさせる音源であるが,それがまたLanoisらしいってところでもあり,それをBrad Mehldauはピアノで楚々と支えているのがまた彼らしい。

ということで,世の中にはまだまだ隠れているかもしれないBrad Mehldau参加作。しかし,こういうのは正直厳しいねぇ。まぁ,仕方ないんだけど(苦笑)。

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