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2012年8月31日 (金)

嗚呼,已矣乎...

ネットを見ていて驚いてしまった。そして呆れてしまった。IT業界をリードしたきた大企業の元社長による盗撮容疑,書類送検へという話である。一大企業の社長,会長を歴任し,最高顧問まで務めたこの御仁の乱心は何ゆえか?

社会的な地位を持つ人間がこうしたくだらない犯罪でその地位を失うというのは,以前にも経済評論家にして大学教授だったU草君という前例があるが,今回の一件はU草君の一件よりも経済界,企業活動にとってははるかにショッキングだと言ってよいだろう。

今回の一件に限って言えば,この御仁が務めていた企業には責任はないかもしれない。だが,こういう人を最高顧問として担いでいたことによって,クライアントからの皮肉や冷笑に耐えざるをえない,この御仁が社長を務めた企業の営業,SE,研究者たちは誠にあわれと言わざるをえない。

主題に書いた「已矣乎」は「やんぬるかな」と読むが,その意味は『慨嘆・絶望の辞,今となっては、どうしようもない。』ということである。多くの企業人が今回の一件を知って「已矣乎」といいう気持ちになったであろうことは想像に難くない。一個人がほんの出来心でも起こしてしまった一件が,ほかの人間にどれだけ影響を与えるかもこの当年63歳の御仁がわからなかったとは思えないのだが...。

世の中,何が起こるかわからないが,これぞこの会社の広報にとってはまさしく青天の霹靂("A Bolt Out of the Blue") だったろうねぇ。この会社が"Big Blue"というニックネームを持つことからすると,"A Bolt Out of the Big Blue"ってことになって全くしゃれにもならん。しかも日経電子版に「栄枯盛衰のIT なぜ名門●●●は廃れないか」なんて記事が出たその日(8/30)にこの事件では全くギャグではないか。そもそも63歳にして「盗撮に興味があった」って,あなた中学生や高校生じゃあるまいしって感じである。

これぞまさしく嗚呼,已矣乎...。

2012年8月30日 (木)

Gloriaちゃ~ん(笑)

Gloria_estefan_greatest_hits "Greatest Hits" Gloria Estefan(Epic)

私がNYCに住んでいた頃,もっぱら私はSmooth Jazzの専門局,WQCD(CD101.9)を聞いていたのだが,このステーションはフュージョンだけでなく,アダルト・コンテンポラリーも結構エアプレイしていて,そちらでよく掛かった筆頭はSadeということになると思うが,Gloria Estefanのバラード曲も結構掛かっていたのを思い出す。それに加え,レンタカーで走っていたりすると,全米のいろいろな街でそれはしょっちゅうGloriaの声が聞かれた。とにかく懐かしいのである。当時の日本人の仲間内では「Gloriaちゃ~ん」なんて言っていたのも今となっては笑い話だが,本当の話である。今となってはGloriaも結構貫禄がついてしまった(比較的まだ体重は抑制しているようだが...)が,まだあの頃はGloriaちゃんと呼んでも違和感がなかったのだ。

このアルバムは1984年から91年の曲のコンピレーションに4曲の新曲を加えたものだが,"Go Away"を除けばラテンっぽさはそれほど濃厚に出ておらず,私としては非常に優れたポップ・アルバムとして聞いている。今の時代に聞き返してみても,このアルバムに収められている曲のクォリティは結構高い。伴奏にはシンセの音に,いかにもあの時代だなぁって感じてしまうが,それでも極端にシンセが強調されているわけではないので,心地よく聞けてしまうのである。ノリのいい曲も,バラードもきっちり歌い分けるGloriaってやっぱり受けるよなぁなんて思ってしまった。

ということで,ちょっと今日は回顧的になってしまったが,こういう音楽もたまにはいいということで。懐かしさも込みで星★★★★。

2012年8月28日 (火)

Woody Shawのライブ音源コンピレーション

Woody_plays_woody "Woody Plays Woody" Woody Shaw (High Note)

このアルバムの紹介に当たって,「また出た!Woody Shawの未発表音源」という主題で記事をアップしましたが,リサーチの結果,既出のライブ音源からのコンピレーションであることが判明致しましたので,訂正します。大変失礼しました。記事については,以下の通り,修正を施させて頂きます(加筆はアンダーライン部)。

このアルバムは結構前に入手していたのだが,アップに時間が掛かってしまった。High Note得意のWoody Shawのライブ音源集だが,今回はWoodyのオリジナルだけを集めているのがみそである。但し,これらは既にHigh Noteからリリースされているライブ・シリーズからのコンピレーションなので,それらを保有している方々にとっては不要ということになるため,購入時には注意が必要である。しかし,コンピレーションとしては結構よくできているという認識であるので,ライブ音源を複数枚買うほどでもないなぁ...,でもWoody Shawを聞いてみたいなぁというリスナーにこそ適している。

オープナーの"Little Red's Fantasy"こそミディアムであるが,ほぼ全編に渡ってWoodyらしいハード・ドライヴィングな演奏集となっていて,彼のファンならマスト・アイテムである。しかも演奏時間は全て10分を越える。

収録されたのは全てSFのKeystone Kornerにおいてであるが,録音の時期は77年,81年にわかれているものの,雰囲気に大きな差異はないので,違和感はない。但し,録音としては最高の状態とは言えないが,それでもジャズ・クラブらしい雰囲気は楽しめるはずである。

ほかのアルバムで既にお馴染みの曲も含まれているが,これはWoody Shawの当時のレギュラー・バンドのレベルの高さを認識できるものであり,Woody Shawらしく(笑),メンツとしてはやや地味ではあるが,非常に優れた演奏を聞かせる。Carter Jeffersonは1曲でソプラノが聞けるだけだが,これも結構いけている。こんなに実力あったのねぇって感じである。それもひとえにリーダーの統率力ゆえか。星★★★★。やっぱりいいねぇ,Woody Shaw。

Recorded Live at The Keystone Korner, in 1977 & 1981

Personnel: Woody Shaw(tp, fl-h), Carter Jefferson(ss), Steve Turre(tb), Larry Willis(p), Mulgrew Miller(p), Stafford James(b), Victor Lewis(ds)

2012年8月27日 (月)

「プロメテウス」:こういう映画だったのねぇ...

Promethus 「プロメテウス("Prometheus")」 ('12,米/英,Fox)

監督:Ridley Scott

出演:Noomi Rapace, Michael Fassbender, Charlize Theron, Idris Elba, Guy Pearce

「人類の起源」なんてキャッチ・コピーを使って,一体どういうことになるのかという期待を持たせる映画である。劇場に足を運んでも,この映画の予告編はかなり気になるというところであったし,何よりもRidley Scottが久々にSFに取り組むということで劇場に早速駆けつけた私である。しかし,内容は私が想定していたものとはやや違って,これは「エイリアン」の前日譚と言ってよい映画であった。そもそももう少し情報収集していれば,「想定外」ということにはならなかったのだろうが,ちょっとこれは配給会社のプロモーション方法に問題があるのではないかと思わされたことも事実である。よって,全く違う世界を期待して劇場に行った人々からはおそらく顰蹙を買うと言っても仕方があるまい。

冒頭のシークェンス等は見事なものであり,おぉっ,これはいいかもしれないと思わせるような立ち上がりであるが,徐々に「エイリアン」と同じようなトーンになっていく。もちろん,あの頃よりも更に進化している技術を使って,リアリティのある世界を作り上げ,映像的にはなかなか楽しめる映画となっているのは間違いない事実である。だが,中盤を過ぎたあたりからの映像ははっきり言ってそのリアリティゆえに,この私が「えぐい」とさえ感じるものになっていることには注意が必要である。元祖「エイリアン」はSFでありながら,これほど怖いと思わせるものはないという強烈なスリラーであり,あちらの造形も相当恐ろしかった(今でも梅田のOS劇場で見た時のショックは鮮烈に記憶に残っている)が,今回はそれよりも気持ちの悪さが先に立ってしまったというのが正直なところである。

そして,この映画の最大の問題点は,あまりに多くの疑問を残していることである。これはシナリオの瑕疵だと言われてしまえば誰も反論できないものであり,その問題が大き過ぎる。なぜ地球上の遺跡にはあのような壁画が残っていたのか?なぜ生物学者と地質学者は「あそこ」に残っていたのか?なぜ,アンドロイドであるDavidはあのような行動を取るのか?更には...(あまり書き過ぎるとネタバレになるので,この辺でやめる)といった感じで枚挙に暇がないのである。そもそも,この映画に対して「人類の起源」等というキャッチ・コピーを使い,この映画の本質を隠しているとしか思えない宣伝方法こそが最大の問題だろう。

娯楽映画としてはそこそこのものだと思うが,この映画は「エイリアン」の前日譚として見るという意思がなければ,観客の期待を裏切るものとならないか?私はこれはほとんど詐欺的な商法とさえ言ってもよいのではないかと思えるのだ。本国版のトレイラーも似たような部分もあるとは言え,ここまで詐欺的ではないし,もう少し映画の本質へのヒントが提示されている。監督のRidley Scottに文句はなくても,Foxの宣伝部には相当頭に来ている観客も多いはずである。ということで,映画としてはシナリオの破綻もあって,星★★★程度しかつけられないが,この宣伝方式にははっきりと文句を言っておきたい。これは絶対に意図的に詐欺的である。繰り返すが,この映画はどういう映画であるかの本質を理解して劇場に行くか,理解せずに劇場に行くかによって,反応は絶対に異なってくるはずなので,この映画をこれから見ようという人には,そういうもんだと思って見て下さいと言っておこう。

この映画を見ている限り,続編を制作する気満々って感じであるが,シナリオをもう少しちゃんと考えない限りは,作ってもろくなものにはならなそうであることは間違いない。それからNoomi Rapaceを主役に据えたのも私はミスキャストだと思え,続編が作られたとしても,彼女では魅力に乏しいと感じるのは私だけではあるまい。

更に私が見たのは字幕版だからいいようなものの,吹替え版で主役のNoomi Rapaceの声を担当したのが剛力彩芽ってのも明らかなミスキャストだろう。ネット上でも悪評が飛び交っているが,キャラが違い過ぎるのである。私は原則として吹替え版は見ない人間であるから被害には遭わなかったが,やはり海外の映画はオリジナル言語で楽しむべきだと思える。この映画,更にはあのキャラに剛力彩芽という選択肢はありえないし,逆の見方をすれば,こんな役をオファーされた剛力彩芽が可哀想にさえ思えてしまった私である(まぁ,引き受ける方も引き受ける方だが...)。

2012年8月26日 (日)

改めてBowieの"Heroes"を聞く

Heroes "Heroes" David Bowie(RCA)

ロンドン・オリンピックが終わってしばらくになるが,中継を見ていて,英国チームの試合になるとやたらにDavid Bowieの"Heroes"が流れていたような気がする。開会式でもそうだったし,その他の競技でもそうだったように思う。私はDavid Bowieの大ファンってわけではないが,それでも所謂ベルリン3部作,"The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars"及びベスト盤ぐらいは保有している。昔の話になるが,Bowieが「戦メリ」に出演して人気も沸騰していた頃の武道館ライブ(アルバムで言うと"Let's Dance"の頃)にも行ったのも懐かしい。新宿のMy Cityでチケット発売日の前夜から徹夜して,ライブのチケットを入手したのも懐かしいが,あれはなんでそういう気になったのかも今となっては記憶の彼方である。ライブそのものはタイトでいいライブだったと思うが,それでも私がBowieにずっぽしはまるということはなかったのである。

しかしである。私にとって,David Bowieはこの"Heroes"が最も紐づいているというか,Bowieのアルバムで最もプレイバック回数が多いのこれであることは間違いない。それはRobert Frippのギターが聞きたいからだという邪な部分もあるわけだが,それでもこのアルバムの完成度は高いと思えるし,"Low"よりははるかにロック・フレイヴァーも強く聞き易いことがあるからだと言える。それでもここでのインスト曲はやはりハードルは高いなぁと思えるところがあって,LP時代はほとんどA面しか聞いていなかった私である(苦笑)。

そして,オリンピックを見ていて,タイトル・トラックを久々に耳にしたわけだが,やはりこれはいい曲だと思えるし,Frippのギターが非常に効いている。ロックのポップな側面と,そこはかとなく陰影を感じさせる部分がうまく混在していることがこの曲の魅力のように感じられるが,それにしてもいい歌詞である。途中の次の件なんか本当にいいと思う。

I can remember standing by the wall
And the guns shot above our heads
And we kissed as though nothing could fall
And the shame was on the other side
Oh we can beat them f
 orever and ever
Then we can be Heroes just for one day

こうした歌詞を踏まえて英国チームの非公式応援歌になっていたのかは知らないが,この曲が単なる"Heroes"という響きだけで捉えてはならないものであることは明らかなように思える。そうは言いながら,この曲の魅力に改めて気がつかされたのだから,決して悪いことばかりではない。だが,David Bowieが閉会式への出演を断ったってのもわかるような気がするのである。

いずれにしても,David Bowieという人のアルバムの中でピカイチのものだと思うし,タイトル・トラックの持つ魅力はまさにエヴァーグリーンだと言ってよいと思う。そしてアルバム全体を聞いてみても収録曲のクォリティが高く,久々に聴き直して本当に優れたアルバムだと思った私である。星★★★★★。

Personnel: David Bowie(vo, key, g, sax, koto), Carlos Alomar(g), Dennis Davis(perc), Geroge Murray(b), Eno(synth, key, g-treatments), Robert Fripp(g)

2012年8月25日 (土)

本日は...

今日はロンドン・オリンピック以来耳から離れないDavid Bowieの"Heroes"について書こうと思っていたのだが,飲み過ぎてしまった~。ということで,今日はお休み,また明日にでも...。

2012年8月24日 (金)

Art 'Spike' Schloemer:思わず叫んだ,何じゃこりゃ~!これはうるさい!音数が半端ではないハード・フュージョン。でも好き(笑)。

Transfusion "Transfusion" Art 'Spike' Schloemer(Spicy Keys)

名前も知らなかった人のアルバムだし,このジャケでは普通私は買わない。そんな私にさえこのアルバムを購入させたのがFeatured Artistsの名前であった。スコヘン,デニチェン,Bunny Brunel,Hadrien Feraud,Kirk CovingtonにBob Franceschiniと来ては,ハード・フュージョンに関心があるリスナーなら反応するのが筋ってもんだ。だが,アルバムがデリバリーされて,よくよく見るとゲストが参加しているのは1~2曲ということで,何じゃそれはと思って聞いてみたのだが,これが無茶苦茶強烈かつうるさいアルバムであったので,逆に安堵してしまった私である。

しかし,このアルバム,ゲスト以外のクレジットが全く見当たらないのはどういうことだろうか?全曲,ベースとドラムスは入っているように聞こえる。ギターも複数の曲で聞こえる。だが,ギターで言えば,スコヘンは1曲フィーチャーとしか書いていない。じゃあ,ここでギター,そしてベース,ドラムスを演奏しているのはいったい誰なのか?もしやリーダーが自分で弾いているのかという推測も成り立つのだが,それにしてはどの楽器もうま過ぎやしないか?マルチ・ミュージシャンは世の中にもいるとしても,これはレベルを逸脱していると言いたいぐらいだ。私としてはゲストがそれなりにフィーチャーされた曲以外の伴奏も受け持っているのではないかと予想しているのだが,一体どうなっているのだろうか。

そして聞こえてくる音楽であるが,まさに「ザ・ハード・フュージョン」と言ってもよいぐらいの演奏群である。リーダーのSchloemaerはJoe Zawinulに影響を受けているらしいが,Zawinulよりはるかにハードな音楽をやっている。聞こえてくるヴォーカルなどはワールド・ミュージックっぽくて,そういうところはZawinul的だと言えないことはないが,ここまでハードな音楽はZawinulならやるまい。とにかく音数が多い。キーボード界の手数王と言いたくなるぐらいの音数である。そもそもゲストたちもテクニシャンの音数野郎ばかりだから,こういうサウンドが出てきても当たり前と言えば当たり前だが,私にとってはここまでやってくれれば逆に爽快ということになる。

Schloemerの書く曲が面白いものばかりと言えないところは事実であるが,それでもここまでやかましいハード・フュージョンはなかなか聞けるものではないということで,星★★★★。ゲストは当然のことながら皆いけている。スコヘン,カッコよ過ぎ~。それにしてもうるさい音楽だが,フリー・ジャズやハード・ロック同様こういうのが必要な時もあるのだ。通勤電車で聞きながら,思わずノってしまった私であった(苦笑)。いずれにしても,聴くときにはできるだけ大音量だけで楽しみたくなるようなサウンドである。

これが去年のうちに出ていたっていうのは本当なのかなぁ。全くのノーマークとはこれのことだが,それにしてもあまり話題になってないのはなぜなんだろうなぁ...。

Personnel: Art 'Spike' Schloemer(key) with Scott Henderson(g), Hadrien Feraud(b), Bunny Brunel(b), Dennis Chambers(ds), Kirk Covington(ds), Bob Franceschini(ts)

2012年8月23日 (木)

やっぱりSanbornはこのあたりのレパートリーがいいねぇ。

Dms "Tokyo Jazz Festival 2011" DMS(Bootleg)

ブート音源(ソースはFM放送)による昨年の「東京Jazz」時のオールスター・バンド,DMSのライブである。George Duke,Marcus Miller,David Sanbornの頭文字を取っただけであるが,ここにも含まれているインタビューによれば,この3人の共演はそれまでなかったということらしい。しかし,SanbornとMarcusは名コンビと言ってよいし,Dukeの音楽にも同質性が認められるから,悪いわけはない。とういうことで,レパートリーは,リーダー級が3人も揃っているので,それぞれのネタを満遍なく散りばめたって感じである。

しかし,私がこの音源を聞いていて,ここで取り上げられているSanbornの曲がアルバム"Straight to the Heart"の収録曲が中心になり,そこに"A Change of Heart"に入っている"Chicago Song"と"Double Vison"から"Maputo"と,「あの頃」の曲に集中していることから,やはりSanbornは当時が最高だったのよねぇとついつい思ってしまうわけだ。私もこのブログでSanbornのアルバムは取り上げたことがあるが,真っ先に取り上げたのが"A Change of Heart"であり,そしてSanbornの最高作を"Straight to the Heart"だと書いたこととも呼応しているように感じてしまうのである。

ということで,冒頭は"Run for Cover"からだが,ちょっと聞いたところではSanbornが高音が出ないようにも聞こえるのだが,徐々に調子を上げてくるので安心してしまった。昨今のSanbornはソウル色が結構強くなっていて,「あの頃」のカッコよさとは違う世界の音楽になっているようにも思えるが,「東京Jazz」のようなお祭りにおいてはやはりこれらの曲が映えるということであろう。

アンコールにおけるDukeとMarcusが主導するブラコンあるいはGo-Goのようなノリには若干ついていけないところもあるが,それもジャズ・フェス特有のお祭り感ということで大目に見よう。それでも,これだけの人たちの演奏なので安心して聞ける。これでバックのメンツがもう少し強力ならというのはないものねだりのような気もするが,十分健闘はしているので,特に文句はない。

世の中には"Double Vision"の再演を望む声も多いように感じるが,手っ取り早くやるならば,FourplayにSanbornが客演してリメイクするというのがいいかもしれない。と言ってもSanbornがそうした企画に乗るかどうかは微妙だが,松田聖子とも共演してしまうFourplayであるから,その可能性もないわけではあるまい。しかし,Nathan EastとMarcus Millerの個性の違いを考えると,やっぱり難しいかなぁ...?Gaddもいないしなぁ。ってことで,話が脱線したが,やっぱりSanbornはあの頃が全盛期でしたということがはっきりしたブート音源。ちなみに本音源は某所でダウンロード可能なので,為念。

Recorded Live at 東京国際フォーラム ホールA on September 4, 2011

Personnel: George Duke(p, key, vo), Marcus Miller(b, b-cl, vo), David Sanborn(as, vo), Federico Gonzalez Pena(key), Louis Cato(ds)

2012年8月22日 (水)

やっと入手したEd Bickert~Bill Maysデュオ

Bill_mays_ed_bickert "Concord Duo Series Volume Seven" Bill Mays / Ed Bickert (Concord)

Ed Bickertのアルバム"Third Floor Richard"を先日取り上げたばかり(記事はこちら)だが,またまたEd Bickertの登場である。実はこのアルバム,結構欲しくて探していたのだが,オークションでも結構高値だったので躊躇していたが,先日,比較的手頃(とは言っても送料込みで3,000円弱だから安いとは言えないが...)な価格でeBayに出たので,即ゲットである。

Ed Bickertのデュオ盤と言えば,Don Thompsonとのアルバムが2枚(片方ではThompsonはベース,もう一方ではピアノを弾いている)あって,どちらも素晴らしい出来だが,このアルバムも本当に長年気になっていたものである。相方のBill Maysであるが,私とはほぼ縁がない人であり,例外はBrad Mehldau参加のAllen Mezquidaの作品でMehldauと半々でピアノを弾いているぐらいのものだろう(記事はこちら)。もう1枚付け加えれば,Barry Manillowの"2:00 AM at Paradise Cafe"の伴奏をしているのもMaysであったが,いずれにしても私にとってはほとんど意識外の人である。

しかし,今回,この記事を書くために彼のディスコグラフィを見てみたら,あるわ,あるわ。こんなにアルバム出しているの?ってぐらいの量産ぶりである。我ながら勉強不足だなぁと思いつつ,元々はスタジオ・ミュージシャンを生業としていたようにも見える参加作の数々である。懐かしいところではDick St. Nicklausの"Magic"にも参加している。まさにへぇ~ってところである。"Magic"のCDは持っているはずだが,どこへ行ってしまったのやら...。

それはさておきであるが,本作に話を戻せば,これがやっぱり渋いアルバムであった。Bill Maysは結構実力のあるところを感じさせるフレージングを披露しているし,Ed BickertはBickertでいつも通りの余裕綽々のプレイぶりである。そういう演奏であるから,テンションをこのアルバムに求めることはまず間違いであり,これはあくまでもリラックスして聞くべき音楽である。まじでくつろげる。

そして,何よりも驚いてしまったのが,聴衆の行儀のよさである。とてもアメリカで録音されたと思えないぐらい,ちゃんと静かに聴いている。そうした雰囲気のよさもあったのだろう。ここでの二人の演奏は渋いながらも快演と言ってよいものである。ジャズ界でデュオ名人と言えばCharlie Hadenと相場が決まっているが,本作含めて3枚の素晴らしいデュオを残したEd Bickertも名人の称号を与えたいぐらいである。とにかくこれはよい。若干のミストーンもあるが,ライブなんだから,そんなことは気にしないでいいのだ。曲も演奏も私には理想的と言ってよい作品。やっぱりEd Bickertは素晴らしいのである。星★★★★☆。まじで買えてよかったわぁ~(笑)。

Recorded Live at the Maybeck Recital Hall on March 7, 1994

Personnel: Bill Mays(p), Ed Bickert(g)

2012年8月21日 (火)

Neneh Cherry & The Thing: ローファイなサウンドから浮かび上がる不思議な感覚

The_cherry_thing "The Cherry Thing" Neneh Cherry & The Thing (Smalltown Supersound)

Neneh Cherryその人に興味があるわけではないのだが,ジャズ・トリオをバックにOrnette Colemanや父のDon Cherry等の音楽をカバーすると聞いて,どういうことになるのかという関心があっての購入である。しかし,伴奏をするThe Thingはジャズ・トリオと言っても,フリー・ジャズ・トリオである。だからこそ私にとっては期待が高まってしまったのである。そもそもNeneh Cherryが真っ当なピアノ・トリオをバックに歌うわけがないのだ。だからこそどうなるのかが興味深い。

そして聞こえてくるのが,物凄くローファイな音である。これが意図的に録ったとしか思えないぐらいのローファイぶりなのである。そしてまた私は思う。これでハイファイな音だったらNeneh Cherryっぽくないし,この音楽には合わない。そんなことをNeneh Cherryがするはずがないのである(笑)。

聞こえてくる冒頭の"Cashback"からしていかにものサウンドで,嬉しくなってしまうリスナーは多いはずである。と言っても,一般のリスナーではない。Neneh Cherryと聞いて反応してしまうどちらかと言えば,ちょっとへそ曲がりなリスナーにとってである。私としてはフリー・ジャズとNenehのヴォーカルをミックスして,ファンク的な世界を生み出すのではないかと想像していたのだが,1曲目は想定通りである。しかし,全編がそうした音楽で占められているわけではない。2曲目に登場するのはSuicideをオリジナルとする"Dream Baby Dream"であるが,ファンク度は落ちるものの,ここでの演奏は1曲目に引き続いて訴求力が強い。Neneh Cherryは元々はスウェーデンの人だが,北欧的なヴォーカルとは対極にあると言ってもよい。どちらかと言えばソウル的な感覚さえ感じさせる声である。

そして展開される音楽も全然北欧の白人的ではない。伴奏をするThe Thingとてスウェーデンとノルウェイのミュージシャンから構成されるトリオだが,北欧的なところは皆無と言ってよい。特にサックスのMats Gustafssonのフリーキーな吹きっぷりは,ここまでやると爽快だぜと言いたくなるぐらいである。

ということで,ここまで書いているとこのアルバムが非常に優れているようにも思えるが,実は全編を聞いていると,狙いどころが実ははっきりしなくて,やや欲求不満が残ってしまうのである。私としてはフリーなリズムを使うのはいいとしても,もう少しファンク・フレイヴァーがあった方がこの人たちの音楽は映えるのではないかと思えたのである。そうした点を除けば,非常に面白い音楽だと思えるのだが,でもこの音楽が好きかと言えば,私の場合は微妙である。むしろ,この音楽が好きだと公言する人もいようが,それは結構スノビッシュではないかと思えるのである。まぁ,世の中にはそういう音楽も必要だが,万人に愛されるものでは決してない。

しかし,Nenehが歌わない局面では完全にフリー・ジャズ化するのはいいとしても,The Thingの本音はこっちなのねぇと強く感じさせてしまうところに,私はこのコラボレーションの中途半端さを感じてしまう。悪くはないのだが,もう少し突き抜けた音楽をやることで,相乗効果を生み出して欲しかったように思える。そこが惜しい。

まぁ,このディスクに期待をかけた私とて,相当のスノッブと言われても仕方がないが,残念ながら私をノックアウトするところまではいかなかった。ということで星★★★☆。だが,やっぱりこのローファイな音は確信犯だろうなぁ。こういう音を聞いて,雰囲気がよく出ていると思えてしまうのが,この人たちの音楽の特質ってところか。だが,この音楽がリスナーを選ぶであろうことは間違いない事実であり,お子様は決して手を出すべきではない。それにしてもこれは分類不能な音楽だなぁ。ということで,完全ジャズでもなく,完全ロックでもなく,ましてや完全ソウルでもないが,それらにカテゴライズした私。う~む,我ながらいい加減だ。

Personnel: Neneh Cherry(vo), Matts Gustafsson(ts, bs, org, electronics), Ingebrigt Haker Flaten(b, el-b, vib, electronics), Paal Nilssen-Love(ds, perc) with Christer Bother(guimbi, donso n'goni), Mats Aleklint(tb), Per-Ake Holmlander(tuba, cimbasso)

2012年8月20日 (月)

休み中に見たDVD:オリジナル版「メカニック」

Photo 「メカニック("The Mechanic")」('72,米,United Artists)

監督:Michael Winner

出演:Charles Bronson, Jean-Michael Vincent, Keenan Wynn, Jill Ireland

このブログで本作のリメイクを取り上げたことがある(記事はこちら)が,そのオリジナルについてもいつかは見てみようと思っていた。ここに来てDVDが国内でも奇跡的に再発され,休み中にレンタルしてきて見たものであるが,リメイク版もB級なら,オリジナルも典型的B級映画であった。

主演がCharles Bronsonであるから,B級映画と心して見るべきであるが,それにしてもであった。これを改めて見ると,リメイク版がストーリーの根幹は比較的忠実にオリジナルを踏襲していることがわかって面白かったが,当時のCharles Bronsonの位置づけに現在のJason Stathamがあるということになるのかなぁなんて思っていた私である。

このオリジナル版,ややシークェンスに冗長な部分もあり,もう少し編集で短く仕立てることもできたのではないかと思わせる。また,エンディングもどう解釈すべきか悩む部分があって,どうもすっきりしない。アクション映画としても派手さには欠けるし,いかにも予算を掛けてませんって感じなのもいかにもである。

まぁそれでも,当時はこういうBronsonに対するニーズがあったんだろうなぁなんて思いつつ,これほど赤いガウンとクラシック音楽が似合わない男はいないぜなんてDVDを見ながら毒づいていた私である(こう思う私の気持ちは見ればわかるはずである)。いずれにしてもB級映画をB級映画として楽しめる向きにはいいだろうと思える映画であって,私にとっては1回見れば十分って感じの映画(苦笑)。星★★★。それにしても,ここでのJill Irelandの役回りは一体何じゃ?と言いたくなるのは私だけではあるまい。これはかなり笑える。

2012年8月19日 (日)

DownBeat国際批評家投票5冠! Vijay Iyerを初めて聞く

Accelerando "Accelerando" Vijay Iyer (ACT)

先ごろ発表されたDownBeat誌の国際批評家投票で,ジャズ・アーチスト,ジャズ・アルバム,ジャズ・グループ,ピアノ,作曲(これのみRising Star)の計5部門でトップとなったVijay Iyerについては,その印象的なアルバム・ジャケットは認識していながら,これまで聞くチャンスに恵まれなかった。と言うよりも正直なところ,意図的に回避してきたように思える。だが,よくよく調べてみれば,この人,Steve Colemanのアルバムにも参加しており,それらのアルバムは聞いているのだが,記憶に残っているとは言い難かった。

しかし,これだけ高く評価されるには何らかの要因があるはずだという考えのもと,ようやくこの人のアルバムを初めて聞くこととなった。リリースから5カ月以上経過しているが,本年のアルバムなので,新譜扱いとさせて頂くが,それにしても敢えて避けてきた自分を反省させられた作品である。何ともスリリングな作品ではないか。この音楽を聞いていて,彼のルーツであるインド的なものはほとんど感じることはできない。そもそもVijay Iyerは米国生まれであり,名門Yaleで数学と物理学を専攻し,UC Berkeleyで修士並びに博士号まで得ているというところこそ数字に強く学究的なインド的であるが,ここで聞かれる演奏には,M-Baseを通過して,Andrew Hillあたりを範とする音楽を極めて理知的に演奏しているという感覚が強い。熱を帯びた演奏の中にも,クールな知性が感じられるのはそのインテリジェンスゆえであろうと思えるのだ。単に盛り上げればいいとは決して思っていない演奏ぶりである。

だが,その知性が音楽のクォリティの邪魔になるところはなく,これは近年稀に見る優れたトリオ・アルバムではないかと思わせるのである。オリジナルに交えて演奏されるカバー曲がこれまた一筋縄ではいかない。Rod Temperton作の3曲目は,オリジナルはHeatwave,ジャズ界ではGeorge Bensonの"Give Me the Night"に収められたことで知られるこの美しい曲をIyerのようなピアニストが演奏していることが異色だが,それに続くのが"Human Nature"というのも驚きである。更にはヒップホップ系のFlying Lotusの"mmmhmm"までやってしまうところに間口の広さを示すが,こういうところにも目配りがされているのが時代的には1971年生まれの彼らしい。1970年生まれのBrad Mehldauがロック・チューンをレパートリーにするセンスと似たようなところを感じてしまうのは私だけだろうか。

そのほかのカバーがHerbie Nichols,Henry Threadgill,Duke Ellingtonである。Ellingtonはさておき,Nichols,Threadgillというのが「おいおい」って感じだが(笑),違和感なくアルバムに収まっていることはかなり凄いことだと言えるように思える。そして,アルバム・タイトルが物語るように,音楽における「加速度的」訴求力(Accelerando:アッチェレランド,次第に速く)を持たせていることに私は強い感銘を受けたと言っておこう。

繰り返しになるが,こうした音楽をちゃんと聞いてこなかった私の不明を恥じた一枚。今からでも遅くないので,強く推薦してしまおう。星★★★★★。

Recorded on August 8 & 9, 2011

Personnel: Vijay Iyer(p), Stephan Crump(b), Marcus Gilmore(ds)

2012年8月18日 (土)

Me'Shell Ndegéocello全面参加の越境音楽集

Bamako_by_bus "Bamako by Bus" Daniel Freedman(anzic)

ジューイッシュ・ミュージシャン御用達のAnzicレーベルからの作品であるが,私はリーダーのDaniel Freedmanという人についてはこれが初めてのはずである。ではなぜこのアルバムを買おうと思ったかと言えば,私が結構贔屓にするMe'Shell Ndegéocelloが参加しているからにほかならない。しかも全面参加であるからこれは見逃せない。なぜ,Me'Shellがここに参加することになったかは定かではないが,彼女がプロデュースしたことがあるJason Lindner経由での参加と考えていいのではないだろうか。

Meshellがプロデュースし,Avishai Cohenも参加したJason Lindnerのアルバム"Jason Lindner Gives You Now Vs Now"(記事はこちら)はファンク色強い作品だったので,本作もそういう系統かと思っていたら,聞こえてきたのは随分違う音楽であった。アフリカを想起させるワールド・ミュージック的な要素さえも包含し,そこにファンクやジャズの要素も加わるという越境型の音楽だったのである。

そうした予想外の展開ゆえに冒頭から戸惑ってしまう部分もあるが,これはなかなか面白い音楽となっている。いろいろな音楽がごちゃまぜになっているので,とっ散らかった印象がないわけではないが,逆に人種の坩堝であるNYC的な感覚を与えるという見方もできる。そもそもタイトルとなっているBamakoとはマリ共和国の首都のことと思われるので,そもそもそうしたアフリカ的なものが出てくることはタイトルを見れば想像できると考えてもいいのである。そうしたアフリカン・フレイバーを強く打ち出すのはLionel Louekeだが,そこにジューイッシュらしい中近東的なメロディ,更にはMe'Shell Ndegéocelloが主導するファンクの要素が加わるのだからまぁこうなるだろうねぇって感じではある。そしてジャズ的な感覚を持ち込んでいるのはMark Turner参加の1曲ということになる。やはりこれは相当のごちゃ混ぜ度である。

こういう音楽であるから,強烈なノリとか,優れたメロディ・ライン等とはあまり縁がないと言ってもよく,そのあたりでの好みはわかれるところであろう。しかしながら,おそらくは彼らが夜な夜なこうした演奏をイースト・ヴィレッジで展開しているとも考えれば,腹も立たない(ジャケに写る写真も,いかにもイースト・ヴィレッジっぽい)。もちろん,もう音を少し整理してからリリースすべきという批判はあって然るべきであり,その辺りにはプロデューサーとしてのDaniel Freedmanの進歩の余地はあると言えるだろう。

いずれにしても,ジューイッシュ・カルチャーとアフリカン・アメリカン,あるいはネイティブ・アフリカンのカルチャーが混ざり合ったものとして聞く覚悟があれば,これは相応に楽しめるはずだが,なかなかそこまでを多くのリスナーに求めるのは厳しいかなぁって気がするし,それがこの音源の限界かもしれない。全編に渡って,Me'Shell Ndegéocelloの太いベースは楽しめるが,やはりそれだけではこのアルバムを何度もリピートするってのは厳しい気がする。ということで星★★★。私ならばよりファンクに徹した前述のJason Lindner作の方を評価したい。

尚,本作は今年4月のリリースなので,ちょっと遅いが新譜扱いとさせて頂く。

Recorded in June 2009

Personnel: Daniel Freedman(ds, perc, fl), Jason Lindner(p, key), Me'Shell Ndegéocello(b), Lionel Louke(g, vo), Abrahama Rodriguez(vo, perc), Yosvany Terry(vo, chekere), Avishai Cohen(tp), Mark Turner(ts), Omar Avital(b), Pedito Martinez(perc, vo), Davi Viera(perc), Mauro Refosco(perc)

2012年8月17日 (金)

デビュー前から完成されていたBrand X

Brand_x_missing_period "Missing Period" Brand X (Blueprint)

私はBrand Xというバンドを高く評価してきた。ジャズ・ロックと言うべき音楽を体現し,緊張感の高い演奏を実現してきた彼らの活動は素晴らしい業績と言ってよいものだ。そんな彼らがデビュー作"Unauthodox Behavior"以前にレコーディングしていた音源を集成したのが本作であるが,デビュー前から極めて高いレベルの演奏を聞かせていたことには驚きの念を禁じ得ない。これが,そもそも未発表だったこと自体も信じられないが,こういう音源がもはや入手が難しいということにも問題を感じてしまう私である(かく言う私もダウンロード組だが…)。

私にとっては,彼らの最高傑作は今も昔も"Livestock"であるという確信には揺るぎはないのだが,同作が録音場所やメンツの違いで曲ごとに雰囲気の違いを感じさせるのが玉に瑕であることに比べ,ここでの演奏の一貫性の方にシンパシーすら感じてしまうというのも事実である。

そして後年のアルバムに収録される曲が既に演奏されているが,タイトルはそれらをもじったものになっているのが笑える。例えば後の"Born Ugly"が"Dead Pretty"となっていると言った具合である。

いずれにしても,Phil Collinsのサイド・プロジェクトとして認知されがちなBrand Xではあるが,バンドの音源を聞いていれば,決してPhil Collinsだけのプロジェクトでないことは明らかであり,参加メンバーはあくまでも対等の立場で演奏していたはずだと思わせるに十分な演奏である。後年は歌に軸足を移すPhil Collinsが超弩級ドラマーであったことはすぐにわかってしまう強烈な演奏群である。強烈にしてテンション満点の作品。星★★★★★。

Personnel: John Goodsall(g), Percy Jones(b), Robin Lumley( key), Preston Heyman(perc), Phil Collins(ds)

2012年8月16日 (木)

David Kikoski:影の実力者?

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"Consequences" David Kikoski (Criss Cross)

このアルバムがデリバリーされてからずいぶんな時間が経っているが,ようやく記事のアップである。ということで,時間は経っているが一応新譜扱いとさせて頂く。本作をこれまで聞いていなかったわけではないのだが,しっかり聴いたという感覚がなかったので,記事のアップを躊躇していたというのが本音である。今回,お盆休みで改めてゆっくり聴く時間があり,なかなか優れたピアノ・トリオ盤となっていると感じられた。

メンツを見れば,まぁおかしなことにはならないであろうことはすぐにわかる。Christian McBride〜Jeff Wattsという盤石の布陣であり,リーダーには悪いが,リーダーが一番地味じゃんって感じである。しかし,Kikoskiもその実力は認知されているところであり,私も彼の作品をこのブログで絶賛したことがある(記事はこちら)。結局のところ,Kikoskiは実力者なのに表向きは目立ってないだけなのである。そちらのアルバムにもWattsは参加しているし,WattsのアルバムにもKikoskiも参加しているので,彼らは結構長い付き合い,あるいは馬が合うのではないかと思わせる。そこへ安定感,技量ともに抜群のMcBrideが加わるのであるから期待する(と言うよりはずれようがない)のが当たり前である。

いずれにしても,Kikoskiの特に一般的知名度における地味さ加減というのは映画の優れたバイ・プレイヤーに例えることもできるのではないかと思う。目立たないが,その人がいると画面が締まる。Kikoskiは一般的知名度は低くとも,演奏をがっちり支える。ジャズ界で言えば,現在のシーンにおいてはTommy Flanagan的な位置づけと例えるのは褒め過ぎか?しかし,Flanaganとて,70年代前半ぐらいまではそういう存在だったように思えるのである。

そしてこのアルバムであるが,いきなり既視感たっぷりのブルーズからのスタートってのが渋い選択。オープナーぐらいガツンと行けや!とついつい思ってしまうが,それにしてもこれは渋い。そしてMcBrideのベースの音の良いこと。若い頃から実力はあった(彼がまだ10代の頃,Bradley'sで初めて彼を目撃した時の衝撃はいまだに忘れられない)が,この音色は何とも素晴らしい。そして非常にバランスの取れた演奏ということで嬉しくなってしまうが,それをきっちり支えたのはMcBrideのファイン・プレイによる部分が大きい。

アルバム全体を通じて硬軟取り混ぜた演奏が続くが,私はハード・ドライビングな演奏の方が好みである。そうした意味では"Mr. JJ"が一番好きである。また,徐々に熱を帯びてくる"Russian Roulette"もいいねぇ。曲名からすると後半の緊張感が高まるのは当然だが(笑)。

そして最後をKikoskiのソロ"Never Let Me Go"で締めるのは確信犯的と言えるエンディングだろう。決まり過ぎである。ただ,その前の2部構成となっているタイトル・トラックがイマイチ面白くないのが惜しい気がする。アルバム全体を通して聞けば相応に満足感が得られる作品だが,もう一押しあればって感じなのである。まぁ,そういうところもKikoskiらしいって言えばその通りだが,この人はもっとメジャーになれると思わせるに十分な作品である。星★★★★。

Recoded in February 2012

Personnel: David Kikoski(p), Christian McBride(b), Jeff 'Tain' Watts(ds)

2012年8月15日 (水)

Billy Cobham Glass Menagerie:さすがにこれは暑苦しい

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"Observations & Reflections" Billy Cobham's Glass Menagerie (Elektra Musician)

これは暑苦しい!最初にプレイバックした瞬間にはもはやこれはハード・ロックであると思わされる。こんなもんを聞いている私も相当物好きである。

暑い夏を乗り切るためにハード・ロックやフリー・ジャズに依存する私だが,本作は想定以上にハードな演奏が収められていてびっくりしてしまう。Billy Cobhamのやることなので,ある程度の激しさは想定していても,ここでの演奏(冒頭2曲)はその想定値をはるかに越えているのである。確か今は亡きLive under the SkyにおいてRonnie Montroseも参加したTony Williamsのバンドのうるささに匹敵するような気がする。あそこにはBilly Cobhamも参加していたが,とにかくうるさかった記憶があるのだ。ジャズ界ではそれに匹敵するうるささと言えるのではないか?

この暑苦しさはCobhamのドラミングによる部分も多いが,何よりもDean Brwonのディストーションが効きまくったギターがとにかくうるさい。ロックだぜ〜。とにかくLPでA面をプレイバックすれば,その瞬間,普通のジャズ・ファンであればのけぞること必定である。

だが,中盤は普通のフュージョンになって,この落差は何やねんと突っ込みを入れたくなるのは私だけではあるまい。4曲目の"Chiquita Linda"なんてまるで歌謡フュージョンのようだし,5曲目の"Take It to the Sky"なんてゆるいカシオペアのようである。最後のタイトル・トラックになって多少持ち直すが,冒頭の激しさは結局再現できない。4ビート部なんてかなりよく,アルバムの締めくくりとしては悪くないのだが,それでもやはり落差はここでも残存している。

私としてはどうせやるならスーパー・ハードな路線で突っ走って欲しかったのだが,ちょいと中途半端な感覚が残る。だから長らく廃盤のままなのかなぁ,と思わせるが,GRP期のCobhamのアルバムは続々とリイシューされているので,これもそのうち出るかもしれない。いや,やっぱりこれは出ないか…(笑)。星★★☆。しかし,Glass Menagerieって何とも不思議なバンド名である。ガラスの動物ショーあるいはガラスの野獣って一体なに?野獣ってのはピッタリだが(苦笑)。

Personnel: Billy Cobham(ds, perc), Dean Brown(g), Gil Goldstein(p, key), Tim Landers(b)

2012年8月14日 (火)

Andrea Marcelli:お盆休みにフィットしているかは別にして,豪華メンツによるハード・フュージョン

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"Silent Will" Andrea Marcelli (Verve Forecast)

世の中お盆休みということで,私も実家に帰っているのだが,これまでであれば実家に置きっ放しにしてあるLPを聞いて温故知新モードに浸るというのが帰省時のパターンであったが,オーディオ装置のある亡き父の部屋のエアコンが不調のため,とてもではないが猛暑の中レコードを聞こうなんていう気にもならないので,今回は完全にiPodに依存する私である。

昨今はiPodに突っ込んだまま,全然聞いてない音楽も相当数あるので,ちょうどええわという感じで日頃あまり聞くチャンスの少ない音楽とか,忘却の彼方にあった音源とかに耳を傾けたいと思っている。

また,ブログの更新環境もiPad頼みということもあり,記事もいつものようにイメージを貼り付けるのもままならないってのが面倒だが,まぁそれも仕方ない。

それでもって本日取り上げるのがイタリア人ドラマー、Andrea Marcelliによる本作である。昨今は欧州ジャズにも関心を高めた私だが,それでも何でもかんでも手を出すわけではないことは当然である。だが,このもう20年以上前のこお作品の購入動機がメンツによるものであることは言うまでもなかろう。私はBob Berg〜MikeとStern組の参加がポイントなのだが,もう一方はWayne Shorter〜Allan Holdsworth組という濃厚なメンツである。

聞こえてくるのはいかにもという感じのハード・フュージョンだが,これが若干音が軽いとは言え,リスナーが嬉しくなるような音が詰まっている。特にBob Bergの吹きっぷりがハードボイルドでたまらん。Mike Sternもイケイケ・モードでファンは大喜び間違いなしなのである。Shorter〜Holdsworth組で,特にShorterが牧歌的なところも感じさせるのと全然違う(Holdsworthは我関せずって感じで弾きまくっているが,これはオーバーダビングの成せる技だな)。やはりこのBerg〜Sternコンビはこうでなくてはならないのである。これを聞いているだけでも私には買った価値があるというもの。

本作はこの手の音楽好きならば間違いなく気にいるはずだが,新品での入手は無理でも,中古なら結構簡単に手に入るのでご関心のある方は是非。星★★★★☆。

Recorded in February and August, 1989

Personnel: Andrea Marcelli(ds, perc, synth, cl), Mike Stern(g), Allan Holdsworth(g, g-synth), Mitch Forman(p), Bob Berg(ts), Wayne Shorter(ss), John Patitucci(b), Alex Acuna(perc)

2012年8月13日 (月)

たまにはこういうのも...:シンガー・ソングライターとしていけている川村結花

Lush_life "Lush Life" 川村結花(エピック)

私が決して聞きそうにない(とこのブログの読者には少なくとも思われるであろう)アルバムについて書いてみたい。多くの一般の人にとって,川村結花の名前は「夜空ノムコウ」の作曲者として認識されているものと思うが,このアルバムにも彼女によるセルフ・カバーが収録されている。もちろん,「夜空ノムコウ」はSMAPが歌わなくてもちゃんと認知されるべき傑作だと思う(だから,私はカラオケでたまにこの曲をうなる)が,そこに感じられるセンスというのはこのアルバムのほかの楽曲にもちゃんと表れている。

川村結花は東京芸大作曲家の卒業という学歴を持つが,このアルバムに聞かれるようなセンスが芸大で磨かれるとはどうしても考えにくく,これは天賦の才能と考えていいだろう。とにかく,歌詞も含めていい曲を書くのである。歌手としてもなかなかの声の持ち主であり,本質的に存在が認知されればもう少しポピュラーな存在になっていたと言ってもいい人だと思う。本人のアルバムもしばらくリリースされず,今やどちらかというとプロフェッショナル・ライターに徹している感があるのはちょっと惜しいような気がする。

そもそも私がこのアルバムを知ったのは,このアルバムの冒頭にも収められた曲と名前を同じくするジャズ喫茶のマスターからだったのだが,彼女も同店に結構通っていたらしい。私も学生時代はほぼ住みついているのではないかというような感じでその店にいることが多かったわけだが,彼女の学生時代と私が通っていた時とはタイミングはかぶっていないから,認識はできないのは当然である。しかし,本人の楽曲解説に1曲は「MILESTONE(都内某所にあるジャズ喫茶)に通いつめていた学生時代へのノスタルジー。将来に希望が持てずその癖、わかったような正論をぶちまけていた。」とあるらしいから,時を同じくすればそういう人がいれば,多分認識していただろうなぁなんて思っている。ちなみに,私はいつも同じ席に座って大概一人で飲んでいるネクラ学生として認識されていた(はず)。

ということで,私とこのアルバムの出会いは,ジャズ喫茶のマスターという仲介者を通じたものであったが,聞いてみると確かにこれが実にいいアルバムだったのである。ということで,埋もれさせるにはもったいない佳曲揃いのアルバムとして,意外感たっぷりながら本ブログで取り上げた。

アルバムのありかがわからない(家のどこかには絶対にあるのだが...)ので,伴奏陣のクレジットを記載できないが,白井良明等が参加しているはずである。繰り返すが,これはなかなかの佳品であり,ソングライターとしての実力は十分に発揮できていると思う。やっぱり埋もれさせるのは惜しい作品である。

2012年8月12日 (日)

期待が高まるClarence Pennの新作

Clarence_penn Clarence Pennが9月にリリースする新作"Dali in Cobble Hill"はそのメンツを見ただけで期待が高まる一作である。ジャケを見ればわかる通り,Chris Potter,Adam Rogers,Ben Streetとのクァルテット。これで期待するなという方が無理。Clarence Pennは既にCriss Crossでリーダー・アルバムをリリースしているようだが,私は未聴なので,リーダーとしての能力は未知数ながら,このメンツであれば,さぞやハイブラウな演奏を聞かせてくれるに違いない。

本作と同じ日にリリースされる予定のBrad Mehldauの新作とともに,今年の音楽シーズンは楽しいものとなりそうである。

2012年8月11日 (土)

サッカー日韓対決における完敗を振り返る

Photo U-23がメダルをかけて韓国と戦ったサッカーの3位決定戦は日本の完敗だったと言ってよいものだった。得点シーンも韓国のカウンターからのロング・フィードから決められたものであり,日本がロング・ボールに弱いところはA代表と同じだと思わせた。

しかし,試合を全く面白くないものにしてしまったのは,守備を固めてカウンターを狙う韓国のディフェンスに,日本のオフェンスが全く機能していなかったことである。中盤でも韓国のプレスに対抗できず,バック・パスでしか対応できない状況に,早朝観戦をした多くの日本国民がTVの前でイライラさせられたであろうことは想像に難くない。

今回の会場のピッチ・コンディションが悪かったこともあろうが,日本のパス・サッカーが機能していなかったことは明らかである。これまで機能してきた攻撃陣も韓国ディフェンスにシャットアウトされてしまってはどうしようもなかった。杉本,宇佐美を投入しても全くダメだったことに変わりはない。正直言って今回の杉本の招集は完全に失敗だったと言わざるをえない。鋭いディフェンスには杉本程度では全く通用しないことが明らかになっただけである。

今回のようにパスがダメなら,ドリブルで局面を打開できるプレイヤーの必要性を強く感じてしまったが,それに比べてワン・チャンスを確実に活かし,2得点につないだ韓国の決定力を見習わなければならない。

一方,韓国は先制するまで気負いからイエローをもらっていたが,先制後は落ち着きを取り戻し,余裕すら感じてしまったぐらいである。換言すれば,日本のオフェンスが韓国のファウルを誘うような攻撃を展開できていなかったということになる。日本の得点源となるはずのセット・プレイがほとんどなかったことも完敗の印象を強くしていると思えてならない。

ある意味,韓国は自分のやるべきことをきっちりこなし勝利を得たわけで,戦術で日本を圧倒したと言ってよい。U-23のメンバーたちは今回の敗戦を糧として,今一度自分たちに足りなかったものは何かを振り返るべきだろう。先制されたり,追いつかれてからの打たれ弱さを感じさせるセミ・ファイナル及び3位決定戦であったことは忘れるべきではない。

それにしても,返す返すも痛かったのは永井の怪我である。あれで潮目が変わってしまったことは間違いない。また,酒井宏樹も初戦の怪我の影響か,彼らしい鋭い飛び出しと高速クロスが見られなかったのは残念であった。

しかし,メダルに届かなかったとは言え,世界4位であることには胸を張って帰国して欲しい。このリベンジは女子バレーボール・チームが今夜の日韓対決で果たしてくれると信じて,バレーボールの応援をしたいと思う。

なでしこ:本当に惜しかった。でもおめでとう!

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なでしこジャパンの戦いが終わった。ファイナルのアメリカ戦の結果は1-2の惜敗であったが,振り返ってみればゲームはほぼ互角,決定的なチャンスはなでしこの方が多かったぐらいである。バーを叩いたり,紙一重のシュートもあり,その辺りにはつきのなさも感じたぐらいだが,それも勝負のあやってところだろう。

冷静に見れば,Wambach,Morganへの対応に注力したため,2得点のLloydへの対応が不十分だったようにも思えるが,それは結果論である。後半に1点返し,岩渕のインターセプトからのシュートであわや同点というところまで頑張り続けたなでしこは立派である。よって,今回の銀メダルに恥じるところは全くなく,彼女たちは胸を張るべきである。試合終了後には宮間が涙にくれるシーンが印象的だったが,メダル・セレモニーでの彼女たちの清々しい姿や表情を見ていて,心配はないと思えたことはよかった。改めて心からおめでとうと言いたい。

それにしてもである。カナダとの120分の激闘を終えたにもかかわらず,アメリカの動きに疲れが感じられなかったことはまさに驚異的である。しかも,Lloydの2点目のミドル・シュートの精度たるやこれまた驚きであった。アメリカ,敵ながらあっぱれである。今後,日米2強時代が続くかどうかはわからないが,これまで手も足も出なかったアメリカと互角と戦うようになったなでしこの成長は、W杯優勝がフロックでなかったことを実証している。これはまさに素晴らしいことであり,今後の日本女子サッカー界の未来は明るいと言って良いだろう。

今後,なでしこはチームの若返りを図ることになろうが,世界との戦いを経験したメンバーが,更になでしこを成長させてくれることを願ってやまない。いずれにしてもトーナメントに入ってからの彼女たちの戦いぶりはまさに賞賛に値する。日本サッカー界にとっても素晴らしい成果である。

これにU-23が続いて欲しいと思うのは私だけではあるまい。バレーボールとのダブル日韓戦に勝利を願う。頑張れ,日本!

2012年8月10日 (金)

U-23:日韓戦に勝利して銅メダルを獲得せよ!

セミ・ファイナルにおけるU-23の戦いぶりはちゃんと記事にしなければならないが,実は出張先での深酒の影響もあって,後半を見逃してしまった私である。よって,偉そうなことは言えないが,後から確認した限り,決勝点となったメキシコのゴールは,あまりにつまらないミスから自陣でボールを奪われた末に,見事なミドル・シュートを決められたものであることは明らかだ。連戦の疲れもあろうが,それは相手も同じ条件の中で,一瞬でも気を抜くと大怪我をするという典型的なパターンである。

そもそも,永井を先発させたものの,怪我の影響か,それまでの彼らしいキレやスピードに乏しかったことは否めない。もちろん,永井がいることによる相手に与える心理的プレッシャーを考えた上での強行出場だったように思えるが,一旦動きが鈍いことを察知されれば,恐怖心を与えられないばかりか、相手に付け入る隙を与えることになることはわかりきったことであり,今回の選手起用には疑問が残る。

最終戦となる3位決定戦が,宿命のライバルである韓国との対戦となったことには運命のようなものすら感じるが,この試合で韓国が強烈なアタックをかけてくることは明らかだろう。間違いなく韓国は目の色が違うはずだが,U-23側のモチベーションが韓国を凌駕できるかが次戦の大きなポイントとなるだろう。金メダルでなければ意味がないなどとうそぶくプレイヤーがチーム内に一人でもいればその段階で負けである。韓国はメダルに限らず、打倒日本に対する意識が高いことを考えれば,中途半端な試合への取り組みは許されない。U-23には是が非でもメダルを日本に持ち帰るつもりで戦ってもらいたい。

そのためには永井の復調が欠かせないが,永井がダメな場合のセカンド・ベストの布陣も考える必要がある。杉本がまだ活躍を示していない中,杉本の使い方もポイントになってくるように思えるが,私は大津のワン・トップでもいいと思っている。いずれにしても先制点が大きな意味を持つのは当然だが,体力的な厳しさをカバーするためには,守備に忙殺される時間を極力短くする必要があるはずだ。そのためにはオフェンスへの意識を強く持ち,スペイン戦を思い出し,中盤までに,そしてできるだけ高い位置でのプレスを徹底的に仕掛けるべきだ。

また,メキシコ戦でのようなミスは二度と犯してはならないのは当然だが,そのためには集中力を切らさないことが重要であろう。ゲーム展開にもよるが,リードして後半を迎えたならば,酒井高徳の投入タイミングが重要になるように思える。リードされていた時のシナリオはあまり考えたくないが,私なら清武のラインを上げることを優先させるだろう。チャンスの多くが清武を起点としていることを考えれば,彼を交代させるというオプションは私にはない。

いずれにしても,しびれる試合になることは必定であり,今度こそ万全の体制で臨むと言いたいところだが,前夜にクライアントとの飲み会があるんだよなぁ。大丈夫か,中年音楽狂?

でも眠かろうが,酔っ払っていようが絶対応援するもんね。皆さんもご一緒に!

2012年8月 9日 (木)

森高千里のシングル集成版のリリース

Photo 「ザ・シングルス」 森高千里(Warner Music Japan)

私はこのブログにも書いた通り,森高千里がかなり好きである。だが,そうは言いながら,「だいて [ラスベガス・バージョン]」のシングルを唯一の例外として,彼女のCDは買ったことがないというのが事実である。私にとっては彼女はレーザー・ディスクで買うべき人だったのである。その頂点に位置するのは今も昔も「見て スペシャル・ライブ」にほかならない(この作品に関する記事はこちらこちら)のだが,実は結構な数のLDを保有しているという事実は事実として認めなければならない。

そんな私だが,今回,森高千里の25周年記念盤として全シングルを集成した3枚組がリリースされたのを機に購入してしまった。とにかく私にとっては「見て スペシャル・ライブ」が全てみたいなものだけに,そこで演奏されている曲と,CD音源のギャップに結構びっくりしたりして,思わず「へぇ~」となってしまった。

いずれにしても,彼女がブレイクしたのは「17才」であることは衆目の一致するところであり,その後の曲については,メディアを通じて接する機会が多かったので馴染みもあるのだが,私にとっては音源としてはほとんど初めて聞いたと言ってよい初期のシングルが非常に面白く聞けた。正直言って,私の森高熱もその後段々下がって行ったのだが,それでも「見て スペシャル・ライブ」だけは長年に渡って別格の地位を占めてきた。だからバブル絶頂期の森高こそが私にとっては最重要な森高であって,そのあたりの曲に関心があるのも仕方ないことなのである。

そんなことを言いながら,「ザ・ストレス -ストレス 中近東バージョン-」,「だいて [ラスベガス・バージョン]」,「ハエ男」,そしてあまり多くの人が知らないカーネーションとの共演作である「夜の煙突」(今回のアルバムには未収録)は私の重要なカラオケ・レパートリー(爆)であり,やっぱり私は森高が好きなのである。今回のアルバムの購入により,また私がカラオケで森高を歌って顰蹙を買う頻度が高まることは必定であろう。いい歳こいたオッサンがよくやるわ。

それにしても25周年とは,まさに光陰矢の如しである。いずれにしても,私が「夜の煙突」をなぜ好きなのかを理解してもらうためにYouTubeの画像を貼り付けてしまおう。まじでこのPVはたまりませんなぁ。これを振りつきで私が歌っている姿を想像しただけで笑えるはずである...。

2012年8月 8日 (水)

セミファイナルにおけるなでしこの戦いぶりを見て

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オリンピックの女子サッカーで、なでしこジャパンがフランスを2-1で破って決勝に進出したことは非常に素晴らしいニュースであった。だが、冷静に戦いぶりを見ていると、ディフェンスはそこそこ機能していたものの、オフェンスには課題を残したように思う。

おそらく日本が放ったシュートは3本だと思うが、得点はいずれもセット・プレイからのものである。正確なフリー・キックを蹴った宮間は褒めて然るべきであるし、キーパーのミスを逃さずゴール前に詰めて得点した大儀見、また2点目をドンピシャのヘッドで決めた阪口も見事であった。しかし、オフェンス面を振り返れば、もう1本、大儀見がポストに当てたカウンターからのシュートと得点シーン以外にも見るべきものがなかった。

もちろん、少ないチャンスを活かす力は評価に値するのだが、なでしこが世界を驚かせたのはパスの連動性ではなかったか。その魅力が今回のオリンピックでは発揮されていないように感じているのは私だけではあるまい。とにかくパス・ミスが多く、前線へのロング・ボールのフィードにも正確性に欠けるため、攻撃にリズムが生まれないのである。セミ・ファイナルにおいては、左サイドからの川澄の突破もあまり見られなかったことも、オフェンス面では気になった点である。

そして後半になって、防戦一方になると攻撃への意識が低下し、中途半端なクリアから、セカンド・ボールをフランスに奪われるという展開が多過ぎた。ここはドリブル突破か、パスのつなぎで攻め上がる姿勢が欲しいところだったが、意識が守備にばかり向いていたように思える。その中で阪口が与えたPKがはずれたからよかったようなものの、あれで同点になっていたら、一気にフランスに逆転を許した可能性が高い。

よって、ファイナルに向けては、攻撃の精度を上げるとともに、パスのつなぎ、更にはプレスのかけどころを今一度見直すべきだろう。フランス戦ではプレスのタイミングが遅く、自陣までボールを持ち込まれることが多かったことはきっちり修正してもらいたい。

一方、気になるのがファイナルでの対戦相手、宿敵アメリカである。アメリカがカナダにあそこまで苦戦するとは思わなかったが、三たびリードを許しながら追いつき、延長後半も残り1分を切ったところでの決勝ゴールという劇的な勝ち方は、チームのモチベーションを無茶苦茶高めたであろうことは疑いの余地がない。しかし、あわやPK戦というところまで追い込まれ、120分を戦ったことによる体力面での疲弊を招いたことも事実である。フィジカルで劣るなでしことは、これで互角ってところかもしれないが、あの粘りは賞賛に値する。

ファイナルはドイツW杯決勝の再戦となったが、このファイナルにこそなでしこの真価が問われると言ってよいだろう。当然、なでしこが攻められる時間が増えるだろうが、安定したセンター・バックはよいとして、今回のオリンピックでは、サイドを破られることが多いので、ディフェンスはサイド・アタックへの防御の意識を高めて欲しい。そして早めのプレスで相手のチャンスの芽を摘んでしまうこと、それは男子U-23の戦い方にヒントがあるはずだ。ボールを支配されていても攻められているように見えないというU-23のマジックのような展開は、アメリカ戦に示唆を与えているように思えるのだ。

いずれにしても残すところ一戦のみである。なでしこには、米国を撃破して金メダルを獲得してもらうことを願ってやまない。

2012年8月 7日 (火)

やっと(?)揃えたJerry Bergonzi入りDave Brubeck3作

Dave Brubeckという人はジャズ界において非常に面白い位置にある人である。ポピュラリティは昔から大したものであるのに,ジャズ・ファンで「私,Dave Brubeckのファンです」と大きな声で叫ぶ人はあまり見たことがない。私はPaul Desmondのファンでありながら,Desmond入りのDave Brubeck作品は"Time Out"しか持っていないというのも極端かもしれないが,特に日本のジャズ喫茶族(そんなものがあればだが...)からは結構白眼視されていると言ってもよいように思える。

Dave_brubeck001 そんなBrubeckが日本において例外的に評価されている(と少なくとも私が思っている)のはJerry Bergonzi入りのクァルテットでConcordレーベルに吹き込んだ3作,即ち"Back Home","Tritonis",そして"Paper Moon"の3作であろう。Jerry BergonziとBrubeckの共演は1973年から始まっているらしいから,何もレコーディングはこの3作だけではないようだが,これらのアルバムを聞いて,Brubeckのバンドに何とも強烈なテナー奏者が加わったと認識したのはおそらくこの3作,特にConcord第1作"Back Home"においてであったように思う。ついでに言っておけば,"Back Home"でドラムスを叩いているのはButch Miles(ほかの2作はRandy Jonesにドラムスが代わる)である。Butch MilesとBrubeckというのも結びつかない取り合わせであるが,それがBergonziの参加に更にインパクトを与えたと言っても過言ではないと思う。

Dave_brubeck_tritonis これらの3作は結構入手しづらい状態が続いていたと思うのだが,ここに来て結構ネット・ショップでも簡単に買えるようになったのを受けて,以前から保有していた"Paper Moon"に加えて,遅まきながらこれらの3作を揃えることとなった。"Back Home"は日本で,"Tritonis"は米国から飛ばして,2枚で2,000円ぐらいだったから決して高い買い物だったとは思わない。そして注目はBergonziだが,どうしてBergonziがBrubeckのバンドに入ったのか,やはり不思議に思えるぐらい,通常のBergonziのトーンで吹きまくっている。

Davebrubeckpapermoon だが,これらのアルバムがBergonziの演奏があったとしても,日本で人気が高まらないのは,ベースがBrubeckの息子,Chris Brubeckのエレクトリック・ベースであることもあるだろうし,「スイング感に乏しい」というBrubeckの悪評が影響していると思われる。ついでに言ってしまえば,Chris Brubeckがトロンボーンでフィーチャーされる時にBergonziにエレクトリック・ベースを弾かせるというのもいかがなものかって話もあるが,ベースを弾いてしまうBergonziもBergonziである(笑)。

それでも"Tritonis"の終盤なんて,ややフュージョンがかった曲調でのBergonziが聞けるなど,面白いこともあるのだ。これがBergonziを聞くための最初のアルバム群であるとは思わないが,それでもまだまだ若い頃から,Bergonziがテナー奏者としてかなりいけていたということを実証する意味でも重要なアルバム群と言ってよいと思える。少なくともBergonziを聞いている限りは,ファンは楽しめるはずだ。ということで,今回は評価でなく,紹介を目的とした記事なので星はつけないが,結構面白かったと思っている。

2012年8月 6日 (月)

五輪サッカー,男女ベスト4進出という快挙

オリンピックが始まってからというものの,完全に寝不足状態が続いているのは私だけに限った話ではないだろうが,私の場合,その理由の多くがサッカーにあることは明らかである。期待はしていたが,予想以上の活躍ぶりに心踊らされる国民は多いはずだ。にわかサッカー・ファンが多く出てくるのはいつものことだが,国民の心を一つにさせる効果がスポーツにはある。それを含めても,今回のベスト4進出は快挙である。

私はこのブログでもサッカーについていろいろ書いてきたが,今回は予選リーグの戦いについては,Twitterでつぶやくだけに留めていた。いろいろ書きだしたらきりがないからであるが,予選リーグでの思いは自分のつぶやきを振り返ればわかるように,決して不満がなかったわけではない(かなり文句を言っている)。特に3戦目については,男女ともに問題のある試合であったと思っている。引き分けを狙う戦術はさておき,控え選手のプレイのクォリティにはかなり問題があったからである。しかし,それもクォーター・ファイナルに向けて主力を休ませるという効果を考えれば,文句も帳消しというところだろう。事実,男子のエジプト戦を見れば,日本の攻守もよかったとは言え,エジプト・チームが予選リーグ最終戦で疲弊して,切れ味に乏しかった(そして怪我人が多かった)ことは明らかだと思う。

Photo ではクォーター・ファイナルの2試合で何がよかったか。なでしこについては,最も怖いと思われていたブラジルのマルタをほぼ完封したことが大きい。これまで岩清水,熊谷の両センター・バックは本当にいい仕事をしていて,彼女たちの働きは見事である。多少,サイドを破られても(ちょっと今回はサイドを簡単に破られ過ぎだが...),中央が安定しているので,それほど大きな失点はしないだろうと思わせる。更にブラジル戦の収穫はこれまで得点できていなかった大儀見,大野の両フォワードがゴールを決めたことであろう。今回絶好調と言ってよい川澄とこの二人が連動すれば,次も行けると思える。だが,大儀見の一点目を演出したのは澤の素早いリスタートにあったことは間違いない。生中継での国際映像では主審が映っていて,澤のリスタートの瞬間はちらっと目に入っただけだったように思えるが,ボールの出しどころが絶妙で,カナダ戦での一点目を演出した大野への浮かせたパスと同様の最高の球出しだったと言える。今回,澤の動きは目立たないようにも思えるのだが,献身的な守備を含めて,彼女が攻守に果たしている役割は大きい。次戦はテスト・マッチで敗れたフランスだが,テスト・マッチはテスト・マッチ,五輪は五輪である。前回の敗戦を教訓とすれば,十分に決勝進出は可能だと思っているし,きっとやってくれるだろう。

Photo_2 なでしこに比べると,前評判は決して高くなかった男子であるが,英国に入って,そのチーム力がアップしているところには勢いを感じる。特に攻撃では永井,守備では吉田の活躍が光っている。センター・バックが安定していると,守備に安心感があるというのはなでしこ同様であるが,吉田のポジショニングを見ていると,若干危ないシーンはあったが,この4戦無失点という結果につながったのは,彼の守備に負うところが大きいと思える。本当に安定したバックスだ。だが,今回の男子の躍進を支えているのは,誰がどう見ても永井の俊足を活かした攻守への対応である。予選リーグのモロッコ戦にせよ,クォーター・ファイナルのエジプト戦にせよ,清武からのパス一本に高速で抜け出してゴールしているのだから,素晴らしいパフォーマンスである。更に相手がオフェンスに転じようとして押し上げようとする時に,するすると永井がプレスを掛けることによって,相手に心理的にもプレッシャーを与えるのは,相手が永井のスピードを怖がっているからにほかならない。中盤,あるいはバックスが一発ボールを奪われただけで,簡単にゴールまで持っていかれると考えれば,特にバックスからは前線へのロング・フィードに頼らざるをえなくなり,日本としてはインターセプトのチャンスが増えるというわけだ。よって,守備そのものを安定させているのは吉田だとしても,今回の戦いにおける鋭い攻守の切り替えを可能にしているのは永井にほかならない。
もちろん,日本が積極的にプレスをかけていることが攻守の切り替えを可能にしていることはスペイン戦,エジプト戦でも明らかだが,それでもやはり永井が効いていることには間違いない。その永井が,エジプト戦で負傷退場してから日本が押し込まれたのは,そうした心理的な要素がエジプトになくなったこともあったと思えるのだ。幸い,今回の負傷は打撲らしいので,準決勝には途中からでも出てくるはずだが,私としては攻守の切り替えこそがこのチームの最大の武器だと思っているので,何とか先発して欲しいと思っている。いずれにしても,今回の永井の活躍,世界に驚きを与えていることは間違いなく,海外クラブからのオファーを確実にしたと言ってもよいだろう。「ライバルはボルト」と言ってしまうこの男,本当に大したものである。

ついでに言っておくと,エジプト戦は右サイド・バック,怪我の影響もあったかもしれないが,酒井宏樹のオーバーラップが少なかったように思う。メキシコ戦では積極的な攻撃参加と彼の高速センタリングが見たい。

ということで,ここまで来たら,セミ・ファイナルも勝ち上がって,決勝でなでしこはアメリカを,そして男子はブラジルを撃破して欲しいものである。と言いつつ,男子は日韓による決勝を夢見ているところもあるのだが...(韓国のことである。絶対ないとは言い切れない)。いずれにしても,がんばれ,日本!!

ところで,男子の次戦は8/8早朝(8/7深夜)ということになるが,その日は私は仕事で松山に滞在予定である。松山と言えば,前回のアジア・カップの日韓戦を見ていた場所である。何とも偶然だが,また松山で深夜まで眠れぬ出張の夜を過ごす羽目になること必定である。また,スポーツ・バー行っちゃおうかな(笑)。

2012年8月 5日 (日)

Ed Bickertのアルバムはなかなか入手が難しい中で...

Edbickertthirdfloorricha "Third Floor Richard" Ed Bickert (Concord)

私はPaul Desmondのアルバムで聞いて以来,Ed Bickertというギタリストを贔屓にしてきたから,もうそれから30年以上にもなってしまった。しかし,そもそもが地味な人なので,日本で絶大な人気だとか支持を得るって感じの人ではないし,それは本国カナダは別にして,米国でも同じようなものではないかと思われる。そういう人なので,リーダー作,参加作含めて結構な数はあるはずなのに,多くが廃盤状態になってしまっているのは誠に残念である。よって,アルバムを手に入れようとすると,オークションに依存するか,地道に中古盤屋を回るしかないのである。本作は,先日中古盤屋においてラッキーにも入手できたものだが,聞いてみてやっぱりこりゃ渋い。いや渋過ぎる。

本作はBickertトリオをメインとして,何曲かにDave McKennaが加わるという編成で,地味に輪をかけたようなメンツによるアルバムであるから,聞こえてくる音は推して知るべしなのだが,このアルバムの渋さを増しているのはその選曲である。タイトル・トラックはCharles Lloydの曲だが,そもそもBickertがLloydの曲をやるということ自体が信じられないが,これがまずへぇ~って選曲である。また,本作にはDuke Ellingtonの曲が2曲入っているが,"Band Call","Tonight I Shall Sleep"って言われて,すぐに曲が思い出せる人はそれほどいるまい。私が知っていたのは"I Surrener, Dear"ぐらいだが,それをサンバでやるってのも意表を突き過ぎって気がしないでもない。いずれにしても,地味な人が渋い曲やればどうなるかっていう感じだが,まさに想定通りの音である。

まぁ,こんな作品であるから,売れなくても文句は言えない。いや,むしろ売れなくて当然である。しかし,こうした売れないであろうアルバムに心惹かれてしまうのがファンってものである。そうは言っても,普段のBickertのアルバムより音が硬いかなぁなんて思わせる部分もあって,若干の違和感もあり,星★★★☆ぐらいだろう。

Recorded in January 1989

Perspnnel: Ed Bickert(g), Neil Swainson(b), Terry Clarke(ds), Dave McKenna(p)

2012年8月 4日 (土)

期待通りの「ダークナイト・ライジング」

Dark_knight_rises 「ダークナイト・ライジング("The Dark Knight Rises")」('12,米/英,Warner Brothers)

監督:Christopher Nolan

出演:Christian Bale,Anne Hathaway,Gary Oldman,Tom Hardy,Joseph Gordon-Levitt,Marion Cotillard,Michael Caine,Morgan Freeman

私はChristopher Nolanのバットマン・シリーズの持つ陰影が結構好きで,実は今年公開の映画の中で,本作は見たい映画の上位に入っていたものであり,早速劇場で見てきたのだが,期待通りの出来となっている。

本作の公開に当たっては,米国コロラドでの銃乱射事件(犠牲者の方々はまさにお気の毒と言わざるをえないが,それでも何らかのかたちでも銃規制をしない米国保守層はどういう頭の構造なのか?)の発生で,プロモーションにも影響が出てしまい,その興行の成り行きが注目されたが,全世界で大ヒットしていることは間違いないようである。既に製作費を大幅に上回る興行収入を上げているという話もある。それもこの映画に期待を掛ける人間の多さを裏付けているようにも思える。

そして,この映画も非常にスケールの大きい話で,よくもまぁここまでと思えるような映像となっているが,シナリオには大きな破綻がないところが立派。コミックを原作としながらも,人間の心の闇を描いているところに,Nolanのバットマン・シリーズを評価する理由があるわけだが,今回も相当に陰鬱な感じで,「そう,そう,これ,これ」って反応を劇場で示してしまった私である。

悪玉は徹底した悪玉として描かれていることのわかりやすさはあるとしても,決定的な善という要素もないのが,この映画の特徴と言ってもよいかもしれないが,それでも全編に渡って悪玉Baneを演じるTom Hardyの悪辣ぶりが突出している。前作でJokerを演じたHeath Ledgerといい,このTom Hardyといい,本当のワルって感じなのである。それに対抗するバットマンが精神的に軟弱な部分を持っているというのが非常に面白いが,前半のChristian Baleの情けない感じが何とも言えない。

原題にある"Rises"は劇中のいろいろな要素のメタファーとなっているとは思うが,そうしたタイトルのつけ方一つからしてうまいと思わせるのは,シナリオとしてよく考えられているからだと思う。ネタバレになるので,詳しくは書けないが,中盤の脱出シークェンスでも,中だるみにならないように,ゴッサム・シティのカオスが描かれていて,決して短い映画ではないが,退屈することがなかったのは見事である。これが過去の名作に肩を並べるとは思わないとしても,私としては今年見た映画の中では一番楽しめたと言っても過言ではない。

これでNolan3部作は打ち止めということになるだろうが,キャスティングを踏襲して誰かが続けていいようにしてあるエンディングもうまいと思った。単なるアクション映画の枠を越えて,純粋映画として楽しめる一編であった。でも,Nolan以外にはこの陰影は出せないだろうなぁと思いつつ,改めてChristopher Nolanという監督の手腕を評価したくなった一作である。星★★★★☆。

2012年8月 3日 (金)

懐かしい映画のDVDの話を:「ホット・ロック」

Hot_rock 「ホット・ロック("The Hot Rock")」('72,米,FOX)

監督:Peter Yates

出演:Robert Redford, George Segal, Zero Mostel, Moses Gunn

私は音楽だけではなく,映画も好きなので,そこそこの量のDVDも保有しているのだが,買いはするものの,なかなか家で見る暇がなく,ソフトがたまる一方というのが実態である。このDVDも結構前に購入したはずなのだが,ようやく見ることができたもの。

この映画,私は以前,TV放映かなんだかで一度だけ見たことがあるのだが,ヘリコプターが出てきたなぁぐらいの記憶しかなかった。今回再見してみて,へぇ~,こんなストーリーだったっけってな感じであった。これはある意味典型的な泥棒映画なのだが,一つの宝石をめぐって,その盗難から消失,そして奪還までの複数のエピソードを積み上げているので,よく言えば次から次へと展開するストーリー,悪く言えば落ち着きのないシナリオということもできると思う。この映画の脚本を書いているのはWilliam Goldmanだが,オスカーを受賞した「明日に向かって撃て!」や「大統領の陰謀」,あるいは自作の小説を映画化した「マラソン・マン」等に比べると,はるかに軽く作った作品という感じだが,彼ならもう少し優れた脚色ができたのではないかと思ってしまうような出来にとどまっているのは残念である。

そうは言いながら,NYCでのロケーションは印象的で,今は亡きWTCがまだ工事中の姿が映っていることなど,時代を感じさせながらも,元NYC在住者たる私にとっては懐かしいシーンも多々あった。いずれにしても,宝石の警備状況もあんなんでええんかいと言いたくなるような緩さだが,当時はそんなもんだったってことか。

この映画が若干軽いタッチになっているのは,共演者であるGeorge Segalによるところも大きいと思うが,コミカルなトーンは彼ならではの部分だと思う。真面目なRedfordだけではこうはならなかっただろう。

まぁ,監督のPeter Yatesとしても「ブリット」等の作品に比べれば,肩の力が抜け過ぎって気もするが,気楽に見られる娯楽作ってところだろう。しかもあんまり金は掛かってないB級さ加減も楽しく,そういう映画として見るべきものだろう。決して肩肘張ってはならないのだ(笑)。尚,音楽はQuincy Jonesが担当しているが,映画に合わせて音楽も相当軽い感じで作ってある。Gerry Mulligan等ミュージシャンは豪華で,Mulliganのバリトン・サックスはある程度目立つように曲が書かれているように思えたが,それでもやっぱり軽いなぁ...。星★★★。

2012年8月 2日 (木)

Brad Mehldauの新作は9/18リリース:日本公演の背景にはこれがあったのかと思わせる

Mehldautriowheredoyoustart 昨日,Facebookを見ていたら,NonesuchレコードからBrad Mehldauトリオの新譜のリリース予告が。"Where Do You Start"と題された新作は前作"Ode"と対を成す作品として,今回はMehldauのオリジナル1曲を除いて,他人の作品を演奏したものとなっているとのことである。Nonesuchの情報によれば収録曲は次の通り。

1.  Got Me Wrong (Jerry Cantrell)
2.  Holland (Sufjan Stevens)
3.  Brownie Speaks (Clifford Brown)
4.  Baby Plays Around (Elvis Costello & Cait O’Riordan)
5.  Airegin (Sonny Rollins)
6.  Hey Joe (Billy Roberts)
7.  Samba e Amor (Chico Buarque)
8.  Jam (Brad Mehldau)
9.  Time Has Told Me (Nick Drake)
10. Aquelas Coisas Todas (Toninho Horta)
11. Where Do You Start? (Johnny Mandel, Marilyn Bergman & Alan Bergman)

この中で今回の日本ツアーで演奏したのは2と6(後者は東京ではやっていないが,どなたかが演奏したと書かれていたと記憶する)ってことになると思うのだが,本来は今回のライブでの演奏は,本作が発売された後に聞いていたら随分と印象が違ったのではないかと思える。少なくとも,今回のライブの段階では新作についての情報はリリースされていなかったから,私も含めてなぜああいう演奏になったのかを測りかねるオーディエンスもいたのではないかと思う。よって,今回の新作を聞いて,日本公演を振り返れば,また全く違う感覚が芽生えるかもしれないと思っている私である。

尚,Nonesuchでは既に本作のプレオーダーを受け付けており,注文するとオリジナルの"Jam"を先行ダウンロードできるという特典があるのだが,Nonesuchのポリシー変更か何だかわからんが,インターナショナルの郵送料が$16.48なんていうふざけたレートになっているので,今回は見送った。いくら本編のMP3ダウンロードがリリース当日に入手できるとは言っても,本体($16)を上回るシッピング・フィーはいくらなんでも高過ぎる。輸入盤屋への入荷を首を長くして待つこととしたい。

2012年8月 1日 (水)

Peter Serkinの現代音楽集:うだるような暑さの中で聞くにはいいねぇ。

Peter_serkin "The Ocean That Has No West and No East" Peter Serkin(Koch)

昨日のRichie Beirachの記事で,次はPeter Serkinの現代音楽でも聞いて涼もうと書いたところだが,そこにブログのお知り合い,kenさんから「確かに低温というより氷温に近いゼルキンは、夏向きかも。」なんていう絶妙なコメントを頂いてしまったこともあり,初志貫徹で聞いていたのがこのアルバム。

ジャケは何回見ても何だかなぁ(なんで北斎やねん?)なのだが,音はPeter Serkinらしい明晰な現代音楽のピアノ曲集で,暑苦しさゼロである。私はPeter Serkinの弾くBachも相当に好きだが,それを上回るのが現代音楽。全く違う音楽を見事に弾き分ける彼の見事な二面性を示しているが,訳のわからんと思われがちな現代音楽も,Peter Serkinが弾くと非常に音楽的に聞こえると思うのは私だけだろうか。

本作もWebern,Wolpe,Messiaen,武満,Knussen,Lieberman,Wuorinenと物凄いプログラムと言えばその通りだし,あるいは誰それって反応もありだろうが,そんな音楽を一気に聞き通せてしまうのは,このくそ暑さで頭がおかしくなったせいか?

なに?もとからお前の頭はおかしいだろうって?そりゃまた失礼しました(爆)。

いずれにしても,食わず嫌いはもったいないと言いたくなるナイスな演奏集。暑い夏も涼やかになるのだ。星★★★★★。次は"...In Real Time"でも聞こうかな(笑)。

Recorded on June 13 & 14, 1994

Personnel: Peter Serkin(p)

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