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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2012年7月31日 (火)

Richie Beirach:こんな猛暑にはこんな音楽でも

Richard_beirach_hubris "Hubris" Richard Beirach(ECM)

世の中はとんでもない猛暑である。こんなに暑いと通勤時間も堪えるし,外に出掛けるのも億劫になってしまうが,そういう時には暑苦しい音楽を掛けて,それよりはましだ!と考えることも一つの手(実は私はよく使う手である)だが,それがどちらかというとマゾヒスティックな部分もあるとすれば,正攻法は涼やかな音楽を聞くことに決まっている。では涼やかな音楽って何だ?と聞かれると答に窮するわけだが,このアルバムなどは聞いていて暑苦しさを感じさせないという点では丁度いいのではないかと思う。

本作はRichie Beirachが1977年にECMに吹き込んだ初のソロ・アルバムであるが,最初の国内盤が出た頃の邦題は確か「パール」だったはずだ。"Hubris"という原題を直訳すれば「傲慢」となってしまうわけだが,こんなアルバムに「傲慢」とつけるBeirachの気が知れない(笑)。彼はECMのプロデューサー,Manfred Eicherと仲違いした結果,彼の参加しているアルバムはECMのカタログから姿を消すという憂き目にあったわけだが,何が本当の原因かはよくわからない。しかし,Beirachのアルバムは結構いいものが多かっただけに,Eicherも大人げないなぁなんて思いつつ,Beirachは何をやらかしたのかと思いたくなってしまった。

それはさておきである。このアルバムを初めて聞いたとき,私はこれのどこがジャズなんだと思ってしまったのだが,今聞いてもジャズ的な感覚は極めて希薄。しかし,透明感があって,美しいピアノ・ソロが展開されていて,気持ちよくなってしまうのである。ジャケを見ていても涼しげな感覚はあるが,この暑苦しさが皆無の音楽ってのは今のような猛暑を忘れさせるには丁度いいねぇと思ってしまう。本来ならばLPのジャケを眺めつつ聞くのが正しいと思いたくなる作品である。

いずれにしても,本作がCDとしてリイシューされたのは日本だけで,本国のカタログではダウンロードのみ入手可能となっている。それでも,以前に比べればダウンロードだけでも入手できるようになっただけましという話もあるが,John Abercrombieとやった一部の作品なんてダウンロードもないぐらいの冷遇ぶりはいまだに変わっていない。そういう意味では本作がCDとして入手できる日本のリスナーはまだ恵まれていると考えるべきだろう。

それにしても美しい音楽である。ある意味,私の得意分野,膝を抱えて聞きたくなるような音楽だと言ってもよい。しかし,この猛暑の中では膝を抱えるというオプションは回避したくなるが,膝を抱えなくても,美しいものは美しいのである。こういう音楽を聞いて,素直にこの美しさに没入できなければ,それはある意味不幸なことである。ジャズであろうがなかろうが,この音楽に身を任せていれば十分に気持ち良いのだ。Keithのソロ・ピアノとも,Chick Coreaのソロ・ピアノとも違う美しさを持ったアルバムとして多くの人に推薦したいと思いたくなる好作品である。彼らのうちの誰を取るかはもはや個人の趣味の問題。私は「全部」と言いたくなる反則を繰り出すことにしたいが,やはりこの夏の猛暑を乗り切るために,何度か世話になること必定の音楽だと思う。星★★★★★。

ラストの"Invisible Corridor/Sunday Song - Monday"なんて最初の方は完全に現代音楽な響きだが,大概の現代音楽って熱くならないからいいんだよねぇ。現代音楽的響きの中から冒頭に演奏された"Sunday Song"のフレーズが聞こえてきた時の美的感覚は聞いてみなければ理解できないのだ。この曲だけちょっと浮いているが,それでもいいねぇ。

ということで,本作のおかげでちょっと涼しげになったところで,この次はPeter Serkinが弾いた現代音楽集でも聞くことにしよう(好きなんだよねぇ...,Peter Serkin)。

Recorded in June 1977

Personnel: Richard Beirach(p)

2012年7月30日 (月)

あまりにJon Andersonそっくりで笑えるBenoit David入りYes

Yesin_the_present "In the Present: Live from Lyon" Yes(Frontiers)

私は長年のYesのファンであると言っても,さすがに昨今の昔の名前で出ています的な状態になってはフォローする気にもならんというのが本音である。それでもアルバムが出るとついつい聞いてみようなんて思ってしまうのが何とも悲しい性である。このアルバムも現物は購入しなかったものの,ダウンロードで聞いてみたのだが,これがなかなか笑える出来であった。

そもそもヴォーカルのBenoit Davidという人はYesのトリビュート・バンドにいたぐらいなので,スタジオ作"Fly from Here"でもJon Anderson的なところは感じさせた(記事はこちら)が,このライブ盤ではそのそっくりぶりがまじで笑えるのだ。このライブ自体は"Fly from Here"がリリースされる前の録音なので,レパートリーそのものも古いものばかりということもあるだろうし,加入後間もないということもあるだろうが,それにしても似ている。

だが,ここでの聞きものそのものがBenoit Davidの声に集中してしまうところに,現在のYesの限界と言ってもよいわけだ。もちろん,それに加えてRick Wakemanの息子,Oliver Wakemanの弾きっぷりも関心の対象となるのだが,これまた親父とよく似ているってところもご愛嬌だが,だからどうしたと言われれば何も言い返すことができないのだ。 まぁ,"Tempus Fugit"やら"South Side of the Sky"やら"Astral Traveller",あるいは"Machine Messiah"などの珍しいレパートリーを聞かせることも,このアルバムのポイントともなりうるが,それも珍しいってことにしかならない。ご愛嬌ついでに言えば,"Owner of a Lonely Heart"におけるSteve Howeのギターは,イントロこそTrevor Rabin的なハードな音を聞かせるが,ソロになると途端にHowe的になってしまうのが笑えてしまうのだ。

やはりここまで来てしまうと,もうYesはいいですわというのが正直なところである。星は懐メロとしてのみの評価として星★★。これまでお世話になりました。いずれにしても,「これが我々の現在形」なんて開き直ったタイトルのアルバムを出すことで,老醜をさらすのはやめようよ。はっきり言ってみっともない。

Recorded on December 1, 2009

Personnel: Benoit David(vo), Steve Howe(g, vo), Chris Squire(be, vo), Alan White(ds, perc), Oliver Wakeman(key)

2012年7月29日 (日)

Brad Mehldau観戦記本編

Brad_mehldau_suntory_hall 昨日の前段から改めて7/27,サントリー・ホールにおけるBrad Mehldauトリオの演奏について書いてみたい。当日のセットリストは下記の通りである。

Great Day(Paul McCartney)
Friends(Brian Wilson)
Sanctus(Brad Mehldau)
And I Love Her(Lennon/McCartney)
Ten Tunes(Brad Mehldau)
My Valentine(Paul McCartney)

<Encore>
Untitled(Brad Mehldau)
Holland(Sufjan Stevens)
Cheryl(Charlie Parker)

一目見てわかるのは,Paul McCartney関係の曲が3曲もあること,アンコール最後の"Cheryl"を除けば,オリジナル以外ではロック系の曲で固められていることである。MehldauはこれまでもBeatles,Paul Simonに加えて,Radiohead,Soundgarden,Nick Drake,更にはNirvanaなどを取り上げてきたり,最近ではJohn MayerやJoe Henryとのライブでの共演等,ジャズに留まらない越境型の活動が目立つだけにむべなるかなという部分もあるが,必ずしもあまり知られているとは思えない曲から,その美しさを引き出そうとしているのではないかとさえ思わせる。驚いたのはSufjan Stevensまでやってしまったことだが,とにかくこの視野の広さにはびっくりしてしまった私である。

そうした選曲に対して,昨日も書いたが,演奏のクォリティには文句はないものの,彼らの演奏ぶりは私に非常にアンビバレントな感情を残した。Larry Grenadier,Jeff Ballardとのコンビネーションは進化し,トリオとしての緊密性は増している印象を冒頭のPaul McCartney作の"Great Day"から強く感じさせるいいオープニングであったとは思う。しかし,その後のBrian Wilson作"Friends"は彼らにはあまりにもポップな曲調であり,ここでまず「う~む」となってしまった私である。彼らの美学を表現するのにこの曲が最適と思えなかったのである。やはりこの曲の浮き方は半端ではなかった。

その後の展開は彼ららしい曲想に戻り,The Beatlesの"And I Love Her"なんて,原曲に対するリスペクトを十分に感じさせながらも,Mehldauらしいフレージングを交えてしびれる美しさであったし,オリジナル,"Ten Tunes"のMehldauによる長大なカデンツァはKeith Jarrett的なものを感じさせ,Keithの後継者はMehldau以外にはいないと強く感じさせたものである。 だが,こんな風に感じながらも,私には微妙な違和感が残っていたのは,曲のテンポがミディアム以下に偏っていたことと,更に3拍子,あるいは6拍子の曲が半分ぐらいを占めていることにより,どうもメリハリや,ライブらしいダイナミズムを強く感じることができないと思えたからではないか。 こうした感覚が昨日の私に"Noble"という表現を使わせたのだが,どうもお行儀が良すぎるようにすら感じさせる演奏だったと言わざるを得ない。一般的なジャズ・ファンがこのライブに足を運んでいたなら,そうした違和感はさらに強くなり,賛否両論はもっと激しいものとなる可能性もある。

そして私の違和感がピークに達したのがラストの"Cheryl"だったのだ。Charlie Parker作曲のこの曲は典型的なバップである。最後の最後にダイナミックな演奏かと思いきや,これがまた何とも緩い。テンポも上がらなければ,タッチも力強くならない。Jeff Ballardがどんなに派手目のドラムス・ソロを聞かせようが,私にはちっとも乗れなかったのである。これはスピード感の欠如が大きく影響しており,私は最後まで高揚感を得られぬままだった。 こうした感覚を覚えていたのはきっと私だけではないであろうことは,私同様に超先行予約でチケットを取ったであろう人々(私が座っていたブロックは超先行予約に確保されていたはず)が,熱烈なスタンディング・オベーションを彼らに与えていなかったことである。闇雲に立てばいいというものではない(最近,そういうオーディエンスが多過ぎるのも事実)が,今回の反応はやはり「熱狂」には欠けていたと言えるのではないだろうか。そういう意味で,私は彼らに熱烈な歓声を浴びせていたオーディエンスに対しては,「ほんまかいな」とかなり冷めた目で見ていたのである。

だからと言って,私がBrad Mehldauの追っ掛けをやめる気は一切ないが,トリオ演奏の初体験がこれというのには若干の失望感があったというのが正直なところである。ホールのソノリティゆえにクラシック的に響くところも仕方がない部分もあるだろうし,それが行儀のよさと私が感じてしまった最大の理由かもしれない。いずれにしても,本質的には演奏の質が低いということではない。今回のライブに当たっての選曲と,ペースのセッティングを誤ったということである。 そしてもう一点,印象を弱めたのがPAの不具合である。とにかくベースがよく聞こえない。ボトムの音が聞こえないがゆえに,演奏の印象を弱めていたように思えてならない。Grenadierは繊細かつ優れた演奏をしていただけにこれはやはり痛い。よく聞こえなかったのは私が座っていたブロックだけだとは思えないが,どうなんだろう...。

とにかく,私がこれまで聞いたMehldauのソロ・ライブで感じたような痺れるような感覚を,今回は強く感じられなかったのが誠に残念。"Ode"の冒頭に収められた"M.B."のような曲を一曲でも演奏していたら,印象は全く違うものとなっていたはずだ。新作"Ode"のレパートリーに全くこだわることをなく,新ネタに取り組む姿勢は認めなければならないところではあるが,それでもやはり私には違和感が残る演奏だったと結論づけざるをえない。

う~む…。好きであるがゆえに厳しくなってしまったが,私は今回のライブにはやはり納得できていない。

Live at サントリー・ホール on July 27, 2012

Personnel: Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

2012年7月28日 (土)

Brad Mehldau観戦記(その前段)

Photo サントリー・ホールにおけるBrad Mehldauトリオの演奏を見てきた。私はMehldauのファンを自認しながら,トリオのライブはこれが初めてというのが実態である。だからこそ,私は非常に高い期待を持って現地へ駆けつけた。

NobleでLyricalでBeautifulな演奏だったとは思う。クォリティは十分高かった。でもそれだけでいいのか?そんな思いがライブの間に私の頭を何度もよぎっていた。

本件はもう少し頭がクールな時にもう一度書くこととしたい。でも,現地で痛切に感じたことは,彼らの音楽はコンサート・ホールで聞くべきものとは思えないということである。私は大阪のビルボードに行きたくなってしまったのであった。

ということで続きは明日にでも。ちなみに私がいたのは(わかりにくいが)赤丸のあたり。

2012年7月27日 (金)

世の中にはまだまだ知らないアルバムがあるものだ

Johnny_griffin_live_in_tokyo "Live in Tokyo" Johnny Griffin (Philips)

いつも書いていることだが,中古盤屋をうろついていると,これまで見たこともないようなアルバムに出くわして,ついつい手が出てしまうことがある。これもそんな1枚。

私はJohnny Griffinのアルバムを保有していないことはないのだが,そんなに頻繁に聞こうという感じではない。だが,Griffinのアルバムを手放す気があるかというと,全くそのつもりもなく,たまに聞くとこれがいいのである。もちろん,歴史的な傑作ということではないのだが,それでもジャズ的な気分に溢れた作品が多い。だからこそ,彼の大ファンではなくとも,一定の評価はしているつもりである。

本作はそのGriffinが1976年に来日した時の音源であるが,LP2枚分の演奏をCD1枚に収めたものである。私のGriffinに対する認識が上のようなものなので,私としても彼の演奏を逐一フォローしているわけではないのだが,本作はジャケの印象も,レコーディングそのものも私の記憶にも全く残っていないものであった。だが,なかなかいいメンツを揃えたこのライブを聞くと,手抜きのないいい演奏をしていることは誰が聞いてもわかるだろう。冒頭の"All the Things You Are"からスリリングな演奏で,そもそも嬉しくなってしまう。

よくよく調べてみると,ここに収められた演奏のうち,最後の"Soft & Furry"を除いた4曲についてはリイシューされているので,比較的簡単に手に入るはずだが,この5曲入り国内盤はなかなか情報がヒットしない。そういう感じだから,私の記憶にないとしても,それは仕方がないだろうと開き直りたくもなるわけだ。そもそも"Johnny Griffin"で検索したことなんて今までなかったような気もするし...(笑)。

それにしてもである。全編に渡って繰り広げられるこの淀みないテナーを聞いていると,ジャズの楽しさを再確認できると言っても過言ではない。"Wee"を除いて,全て15分を越える長尺の演奏であるが,退屈するようなこともなく,これは楽しめる。こういうアルバムがなかなか手に入らないというのはリスナーにとっては不幸なことだとは思うが,そうは言ってもバカ売れするような音でもないので仕方があるまい。いずれにしても,このアルバムを入手できたことはラッキーであったと,演奏を聞いていて思ってしまった。ちょっとArt Taylorが何をしたいのかわからない瞬間があるのが惜しいが,それでも十分星★★★★には値する佳作と思う。繰り返す。Johnny Griffin,一切手抜きなしである。ただ,こうした演奏をしても,キャパは比較的小さめの郵便貯金会館(現メルパルク・ホール)が埋まったかどうかはよくわからないが,それでもこの時,現地にいた人は幸せな気分に浸れたであろうと思える音源であった。

尚,本作と同時にJohnny GriffinによるBlack LionレーベルでのCafe Montmartreのライブを集成した2枚組(先日アップしたDexter Gordonと同じような企画だ)もゲットしたので,それも追って記事にすることとしたい。

Recorded Live at 郵便貯金会館 on April 23, 1976

Personnel: Johnny Griffin(ts), Horace Parlan(p), Mads Vinding(b), Art Taylor(ds)

2012年7月26日 (木)

キュートで可愛いSusanna Hoffs:あんた一体歳なんぼ?(笑)

Susanna_hoffs "Someday" Susanna Hoffs(Baroque Folk)

可愛い~!というのが私がこのアルバムを聞いた時の第一声である。歳をばらして彼女には申し訳ないが,彼女は私より年長で今年53歳である。それにしては声が可愛過ぎる。そしてキュート過ぎる。どんな年の取り方をしとるんじゃいと思わざるをえないが,これがポップで何とも楽しいアルバムなのだ。く~っ,たまらん(笑)。

Susanna Hoffsと言えばBanglesであるが,昨年,Banglesのアルバムがリリースされた時も結構気に入っていた私である(記事はこちら)。それに加えてMatthew SweetとのUndercoverシリーズも結構好きなので,結局Susanna Hoffsが好きなんじゃん,と言われれば否定できないところだ。そして今回はなんとMitchell Froomのプロデュースのもと,上述のアルバム群よりも更にポップで,キュートなサウンドを聞かせているのである。マジで胸がキュンとなってしまう(似合わねぇ〜! 笑)ような音楽だと言っても文句は出るまい。

こういう殺伐とした時代にこういう明るいポップスがあってもいいと思うし,私は何よりもSusanna Hoffsの声にまいってしまったのであった。オマケも含めて星★★★★☆としてしまおう!(甘~い...)

皆さんは半星割り引いて聞いて下さい(何のこっちゃ)。

Personnel: Susanna Hoffs(vo, tambourine), Andrew Brassell(g, vo, marimba), Val McCullum(g), Pete Thomas(ds, perc), Davey Faragher(b), Michael Urbano(ds, perc), Bob Glaub(b), Mitchell Froom(key), Dan Higgins(fl, cl, sax), Hagai Izraeli(horns), Cris Woods(vln, vla), Adrienne Woods(cello)

2012年7月24日 (火)

「崖っぷちの男」:拾いものと言ってよい面白さ

Man_on_a_ledge 「崖っぷちの男("Man on a Ledge")」('12,米,Summit)

監督:Asger Leth

出演:Sam Worhington, Elizabeth Banks, Jamie Bell, Genesis Rodriguez, Ed Harris

この前の週末に見に行った映画であるが,これが思わぬ拾いものである。結論から言えば,この作品は映画的に結構よく出来た映画だと思う。ドンデン返しも入れ込んだシナリオ,効果的なNYCでのロケーション等々,映画的魅力は備えており,映画を見ている間にだれる瞬間もなく,非常に楽しめた。役者陣も善玉,悪玉,脇役含めて結構魅力的な造形である。特にEd Harrisの憎たらしさ。いいよねぇ。

だが,だからと言って,もろ手を挙げて絶賛できないのは,終盤の話の展開である。ネタバレになるのでここには書けないが,ある程度見えている展開,更には性急なエンディング等が,もう少し練り込まれていれば,更に「優れた」映画になっていたはずである。まぁ,こうしたアクション作品にはそうした要素はあまり必要ないと言ってしまえばその通りかもしれないが,そこのところがちょっともったいない。せっかく面白い映画に仕立てたのであるから,画竜点睛を欠いたと言えるのは惜しい。

それでも劇中のかなりの時間をホテルの窓棚のところで過ごすSam Worthingtonと,その一方で進行する侵入劇はよくあるタイプのサスペンスとも言えるが,それでもどういうことになるのかと思わせるだけの力はあったから,私としては満足である。星★★★★。先日取り上げたどうしようもない愚作「ホタルノヒカリ」に比べれば,はるかに映画的な楽しさ,映画的な矜持に溢れているから,ついつい点も甘くなるのである。

2012年7月23日 (月)

33年の眠りから覚めた"Sleeper"は超弩級の傑作

Sleeper "Sleeper" Keith Jarrett / Jan Garbarek / Palle Danilsson / Jon Christensen(ECM)

音楽を聞いていると,一瞬にしてその音楽の凄みがわかってしまうことがあるが,このアルバムがまさにそんな感じである。1979年に録音されていた音源が,33年の眠りからさめて,世間のリスナーを驚かせるから"Sleeper"というタイトルなのかと思いたくもなる,これこそ超弩級の音源である。とにかくこれは強烈である。

今や,Keith Jarrettがこうした音楽に改めて取り組むことはないであろうという諦念のようなものがこちらにもあるのだが,1979年の段階でこんな演奏をやってしまっては,本人たちにもやり尽くしたという感覚があるのかもしれない。そもそも,この時の来日時の演奏は1989年に"Personal Mountains"としてその一部が既に公開されているが,それはそれで優れた演奏であったとは思えるものの,まだこんなのが残っていたというのがそもそも信じられない。1曲あたりの演奏時間が"Personal Mountains"の方がだいぶ短かったことからすると,あちらは編集が加えられていたかもしれないが,今回の"Sleeper"はおそらくは当日の演奏の模様をほぼ無編集で捉えたものと考えてよさそうである。

それがこのような演奏だったということがまさに信じ難いのだが,美感,テンション,スリル,その他諸々の観点から言っても,本作はこのクァルテットとしてのライブである"Personal Mountains"も"Nude Ants"も完全に凌駕していると言って間違いないように思う。本当にびっくりしてしまうぐらいの出来なのだ。

私は,この当時はジャズを聞き始めてからまだ日が浅く,年齢も年齢だっただけにライブに足を運ぶようなことはなかったわけだが,その一方でこんな演奏が日本において行われていたということは,今の私にとっては残念なことである。Bernstein/IPOによるマーラー9番のライブを聞き逃したことと同じぐらいの後悔の念をおぼえ,かつ衝撃を受けてしまったと言っても過言ではない。それほどこのライブは素晴らしい。

こと細かく比較したわけではないので,"Personal Mountains"と演奏がかぶっているのかはわからないが,ECMのサイトには完全未発表とあるから,そこに偽りはあるまい。ということで,これが完全初発音源だったとすれば,なぜ,このような音楽も長い眠りにつかなければならなかったのかと逆に疑問に思わざるをえないような至高のライブ盤と言ってよい。この演奏を聞いて,何の感銘を受けられないならば,Keithとはどうやっても付き合うことは不可能だと言い切ってしまおう。数あるKeithのライブ盤の中でも確実に上位に入る素晴らしい演奏である。星★★★★★以外はありえない。

こんなアルバムを出されてしまっては,どんなジャズ・アルバムが出てきてもこれを上回ることは,少なくとも今年中には難しいだろうと言いたくなるような作品である。いずれにしても,私としては本作がKeithのヨーロピアン・クァルテットの最高作と位置付けたいと思う。繰り返す。凄い。そして素晴らしい。こんな演奏は滅多に聞けるものではない。私はこの日,その場にいた人に強烈なジェラシーを感じてしまう。ギャグではなく,彼らのスリーパーホールドに落とされた気分だが,これなら大歓迎だ。

Recorded Live at 中野サンプラザ on April 16, 1979

Personnel: Keith Jarrett(p, perc), Jan Garbarek(ts, ss, fl, perc), Palle Danielsson(b), Jon Christensen(ds, perc)

2012年7月22日 (日)

「ホタルノヒカリ」:映画界にとって何の得にもならないくだらなさ

Photo 「ホタルノヒカリ」('12,東宝)

監督:吉野洋

出演:綾瀬はるか,藤木直人,松雪泰子,手越祐也

これも先日の三連休に,家人に誘われて見に行った映画であるが,これが実にくだらない。こんなものは正直言って,映画とは認めたくないし,こんな作品を作っていること自体が,日本映画界の自殺行為だと言っておきたい。

私は本作の元ネタたるドラマも見たことがないし,原作の漫画についても一切の興味はない。よって,通常であれば,自分一人では絶対に見に行こうとは思わない。そして結局見に行った結果がこれでは...って感じである。

そもそもがイタリアの観光映画か?と言いたくなるようなものだが,海外旅行が一般的でなかった時代ならともかく,気楽にどこにでも行けるような時代に,今さらコロッセオでもなかろうし,スペイン広場でもなかろう。そして,ストーリーについても無理があるのであって,なぜ藤木直人が踊ってるんだという点についても,常人の理解を越えた展開である。

とにかく,シナリオは無茶苦茶,ストーリーはいい加減,そして一体何のためにこの映画を撮ったのかということも全く不明では評価のしようがない。話そのものは2時間ドラマで十分であり,こんなものに金を出した自分を呪いたくなった。

東宝は業績好調で大いに結構だが,こんなくだらない映画を作っている暇があるんだったら,もう少し低予算でも良心的な作品を作れと言いたい。繰り返す。こんな映画は映画として認められない。TVのスペシャル企画のドラマでももう少しまともな作品に出会えるはずであり,放送局とのタイアップに乗っただけの最低最悪,愚作中の愚作。一点たりとも優れた点が見出せないので無星(久々だ!)。全くの評価対象外の作品として,逆に記憶に残るわい。そういう映画であるから,金と時間に余裕のある方だけどうぞとしか言えん。と言っている割に,劇場が結構混んでいたことには絶望的な気分になってしまった私である。出るのは嘆息のみ。こんな映画で楽しめる人々の気が知れない。まぁ,「蓼食う虫も好き好き」としておこう。

2012年7月21日 (土)

全盛期Led Zeppelinのもの凄さ

Led_zeppelinhow_the_west_was_won "How the West Was Won" Led Zeppelin(Atlantic)

昨日書きそこなった記事に再チャレンジ(?)である。私が洋楽に目覚めたきっかけの一つがDeep Purpleだったので,私の中ではハード・ロックと言えばPurpleになってしまうのである。その後,私はプログレ~ジャズへと関心が移行していき,Led Zeppelinについて本格的に聞いたのは実は随分と後になってからだった。恥をしのんで告白してしまえば,彼らの作品をアルバム単位で買ったのは,4枚組のボックス・セットが初めて,そしてそれはNYCに在住中の頃であるから,実は30歳前後のことであった。そんな歳になるまで,こうした音楽に対してほとんど無知であったことは,もはや手遅れって感じもしたが,それでもこのボックスは私のその後の愛聴盤の一つとなってしまったのである。それからは遅れを取り戻そうとするかのように,本当によく聞いた。

そんな中で,BBCセッションやらがリリースされ,そして2003年になって突如リリースされたのがこのライブ・アルバムであった。このアルバムを聞けば,録音された1972年という時期において,彼らがいかに高いクォリティのライブを展開していたかがよくわかる。まじで凄い。勢いはもちろん,演奏のレベルが無茶苦茶高いのである。彼ら4人が一体化してまさに驀進するって感じで,これを聞いて燃えないロック・ファンはいないのではないかと思える。私は通勤や移動の道すがらで一気にこのアルバムを聞いていたのだが,声が出そうになったり,足が動きだしそうになるのを抑えるのが大変であった(笑)。

それにしてもBonzoである。これほどパワフルなドラマーっていまだかつて聞いたことがないと言ってもよい。"Moby Dick"に聞かれる超ロング・ソロなんて,ほんまによくやるわって感じである。このプッシュなくして,Led Zeppelinは成り立っていなかったと言っては言い過ぎか。しかし,このパワーこそがバンドとしてのZeppelinの押し出しを強めていたとは言えるとは思う。超強力である。

本作もリリースから10年近くが経過したが,今聞いてもその凄さには何の変化もない。本当に素晴らしいライブである。星★★★★★。こういうのがあったから,結局10枚組のボックスも買ってしまったんだよなぁ。やっぱりアホである。

尚,このアルバムのタイトルを見て,映画好きなら微笑んでしまうだろうなぁと思った。映画「西部開拓史」の原題と一緒である。西海岸での演奏の模様を収めたことに引っ掛けたタイトルには大いに受けてしまった私である。

Recorded Live at LA Forum on June 25 and at Long Beach Arena on June 27, 1972

Personnel: John Bonham(ds, perc, vo), John Paul Jones(b, key, mandolin, vo), Jimmy Page(g, mandolin, vo),  Robert Plant(vo, hca)

2012年7月20日 (金)

本日もお休みをいただきます

慢性的な飲み過ぎである。こんな状態では到底記事を書くのは無理なのだが,実は今日はLed Zeppelinを書こうと思っていたのだ!アルバムは"How the West Was Won"だったのだが,これほど後追いではまってしまったバンドというのはZeppelinが初めてかもしれない(それもかなり遅い)。その辺の話はまた改めて。ということで,本日はお休みです。

2012年7月19日 (木)

マンガだと思って見れば面白い「アメイジング・スパイダーマン」

Amazing_spiderman 「アメイジング・スパイダーマン("The Amazing Spider-man")」('12,米,Columbia)

監督:Marc Webb

出演:Andrew Garfield,Emma Stone,Rhys Ifans,Martin Sheen,Sally Field

先日の三連休にこの映画を見に行ったのだが,私はスパイダーマン・シリーズのファンというわけではない。これまでの作品は飛行機で見たように思うが,特に思い入れはない。しかし,今回は「ダークナイト・ライジング」はまだ公開前だし,家人とは「崖っぷちの男」でもなかろうということで,この映画を見に行ったのだが,笑えるぐらいマンガ的である。

一番笑えるのが敵役の「トカゲ」であるが,ほとんど怪獣映画あるいはミュータント・ニンジャ・タートルズかっ?ってな感じの造形である。こういうのをよしとしないとこの映画は楽しめないだろうと思う。このバカバカしさを受け入れられるかどうかによって,評価は大きく変わるだろう。私としてはCGやら,懐かしのNYCの風景を見ながら結構楽しみながら見ていたのだから相当単純である。

もちろん,シナリオ上,ケチをつけようと思えばいくらでもつけられるが,そこはマンガである。こうした映画にそんなまじめに文句を言ったって始まらないのである。例えば,これが「プロメテウス」だったらそうはいかないだろうが,「アメイジング・スパイダーマン」だから許されるって感じである。

それにしても,主役のAndy Garfieldはもうすぐ30歳,恋人役のEmma Stoneにしたって23歳であるから,高校生を演じるにはちょっと無理があるよねぇ。Andy GarfieldよりEmma Stoneの方が年上に見えるってのはご愛嬌だが,さすがにちょっとキャスティングに無理があるような気がするなぁ。ついでに言っておくと,この映画,3Dの効果はそこそこ感じられるつくりにはなっているが,私は3Dに全くこだわりがないので,2Dでも十分に楽しめると思ってしまった。3Dは発展途上の技術だし,3Dの効果ばかりを狙って画面を作るわけではないのだから,私は基本的に2DでOKである。そもそもメガネが鬱陶しいしねぇ。

いずれにしても,これから新たにシリーズ化されるんだろうが,その第1作としてはまずまず楽しめるものだったのではないかと思う。ということで星★★★☆。でも私は早く「ダークナイト・ライジング」が見たいのだ。今回も暗そうで期待しちゃうんだよねぇ...。

それにしてもMartin SheenやらSally Fieldは懐かしかったなぁ。彼らのような役者が出ているから,単なるマンガで終わらなかったということにしておこう。

2012年7月18日 (水)

懐かしのStones初来日の模様がアーカイブ・シリーズで登場!

Stones_tokyo_dome_2 "The Rolling Stones Live at the Tokyo Dome" The Rolling Stones (Rolling Stones Archive)

全6作のリリースが予定されているStonesのオフィシャル・ブートレッグ・シリーズであるが,何と第4弾は1990年の彼らの初来日時の東京ドームにおけるライブであった。正直言って,私はそれまでずっとBeatles派であり,Stonesについてはまぁ聞かないことはないけど...程度の聞き方しかしていなかった。だから,彼らの初来日が決まった時もチケットを取っていたわけではなかったのだが,当時の会社の同僚からチケットを譲ってもらって東京ドームに行って,完全に私は自分の認識の甘さを痛感した。まさにプロフェッショナル,素晴らしいライブであった。インダストリアル化しているって批判もあるかもしれないが,この音源を聞けば,そんなことはどうでもええわということがわかるだろう。

初来日時の模様が何らかのかたちで放送されていたかどうかは定かではないが,"Ruby Tuesday"は後にライブ盤"Flashpoint"に東京の音源が採用されていた(その他にも東京の音源はあるかもしれないが,この曲はMickの日本語のMCがかぶっているから間違いない)から,何らかのかたちで録音はされていたはずである。それはさておき,あれから22年の時が経ち,オフィシャル・ブートレッグという形態でも何でもこうして正式にリリースされたことは誠にめでたい。

この音源を聞いていて私は90年2月の東京ドームの模様を思い出していたのだが,あぁそうだったよなぁなんて思いつつ回顧的な気分でこの音源を聞いていた。90年2月と言えば,私は渡米後の行き先も最終的に決まっておらず,落ち着かない気分でいた頃であるが,この頃には私にも本当にいろいろなことがあった。人生において,後悔しても後悔しきれないことがあったのが渡米後のタイミングであったりして(人さまに言うようなことではないが...),90年前後(89年~91年と言ってもよい)はまさに激動期であった。そうしたタイミングにこのStonesの初来日もあったのだと思うと,ある意味象徴的にも思えてしまう。正直言って,私は渡米前後で性格に変化が生じたことを自覚しているのだが,そうした激動期,あるいはStonesをまじめに聞き始めた頃ともそれはかぶるのである。

Stones_tshirt まぁ,それはさておきである。90年2月,東京ドーム10回公演と言う空前の規模で開催されたStonesのライブは,私の記憶でもここに収められた勢いのままであった。そんな懐かしい音源を今,ネットからのダウンロードで聞けると言うところにも時代の流れを感じてしまうが,それでもあの時の自分を忘れたかのように乗らされてしまった私が何とも懐かしく感じられる音源である。全24曲,2時間を越える音源が,毎度のことながらFLACで9ドルってありえないよなぁ。MP3なら7ドルだし...。今回もお馴染みマーチャンダイジングもありなので,東京ライブってこともあり,ついついベロ・マークのTシャツ(結構シンプルなデザインだが,だからこそいいのだ)も発注してしまった私である(我ながらアホや~)。いずれにしても,この音源を聞きながらあの時を思い出しながら歌ってしまった。家族には決して見せられない姿だが,いやぁ,やっぱりええですわ,Stones。

レコード・コレクターズ誌最新号は本作のリリースを知ってか知らずか,Stonesのベスト・ソングス100特集だが,アーカイブ・シリーズの紹介も掲載されていながら,本作には全く触れられていないから,いつものことながら,何の前触れもなしにリリースされたってことだろう。いずれにしても日本のStonesファンなら必聴の音源。楽しくも懐かしい。

Recorded on Live at 東京ドーム on February 26, 1990

Personnel: Mick Jagger(vo, g), Keith Richards(g, vo), Charlie Watts(ds), Ronnie Wood(g, vo) and Bill Wyman(b) with Bobby Keys(sax), Chuck Leavell(p, key), Lisa Fische(vo), Cindy Mizelle(vo), Bernard Fowler(vo), Matt Clifford(key, fr-h) and the Uptown Horns

2012年7月17日 (火)

追悼,Jon Lord

Jonlord Jon Lordが亡くなったそうである。71歳。かねてよりすい臓がんとの闘病中だったとのことであるが,力尽きた。

Jon Lordと言えばDeep Purple,そのDeep Purpleは私を洋楽に目覚めさせた一因であることを考えれば,Jon Lordには私は深い感謝の念を示さなければならない。Purpleからは2002年に退いていたとのことであるが,ハードロック黄金期を支えた彼の仕事は不滅である。本日はPurpleの音源を聞いて彼を追悼することとしたい。

R.I.P.

メンツ買いのCarsten Dahlの新作

Carsten_dahl "Space Is the Place" Carsten Dahl, Arild Andersen & Jon Christensen (Storyville)

私はデンマーク出身のピアニスト,Carsten Dahlとはほとんど縁のない生活を送ってきたと言ってよい(大袈裟!)。多分,保有しているのは"In Our Own Sweet Way"ぐらいのはずで,このブログにも記事はアップしたことがない。彼には悪いが,私にとってはその程度の存在である。

ではそんな私がなぜこのアルバムを買うのか。それはバックの二人がAndersen~Christensenというコンビだからである。このご両人がバックを務めたピアノ・トリオと言えば,Bobo Stensonの"Underwear"が印象的だが,あの作品はECM初期の非常にクールな感覚に満ちた作品だったと思う。日本では一時期CD化されたはずだが,私はLPを保有しているので,CD購入は見送ったが,今にして思えば買っておけばよかったかなぁ...。それはさておき,Andersen~ChristensenはJan GarbarekのSARTのバンドや,Masqualeroなどでもチームを組んでいるから,コンビネーションとしては鉄壁と言ってよい。その彼らがCarsten Dahlのオリジナルを演奏するとどういうことになるのか。その一点への興味だけでこのアルバムを購入したと言っても過言ではない。

そしてここで展開される音楽はかなりフリーなアプローチに基づく硬質な演奏群と言ってよいと思うが,特に序盤は私は先述のBobo Stenson盤を想起してしまったのであった。"Underwear"も久しく聞いていないので記憶の正確さにはやや自信がないのだが,受ける感覚が近いように思えたのである。あるいは一時のPaul Bleyにも近いかもしれない。そういう例えに反応して頂ける方にはお分かり頂けるだろうが,そんな感じの音である。よって,一般的なピアノ・トリオとは異なるので,多くのリスナーにアピールするタイプの音楽ではない。だが,ECMレーベルのファンにとっては,抵抗なく受け入れられる類の温度感の低い演奏である。

全編を通じて,テンポの速い曲はよりスポンテイニアスな展開が多く,美メロの連続とかそういったものを期待してはならないが,スローな曲ではタイトル・トラックで突如美しいピアノのラインを聞かせたり,中盤の曲でも静謐な美感を感じさせる。更に最後の最後に美しいピアノ・ソロ"Agnete's Song"を持ってくるあたりはクロージングとしても的確な選択である。そうしたメリハリをつけたのはいいが,それでも若干の敷居の高さは否めない。だが,やはりこのメンツならではの音って気もするし,ECMレーベル・ファンの私にとってはこれはこれで十分楽しめるアルバムであった。しかし,今の時代にこの音楽でなくてもいいような気がするし,既に随分前からECMでもこうした演奏は聞かれている点を考えると,若干点も辛くなり星★★★☆。

私にとっての問題は「今,なぜ,この音楽なのか」という一点だけで,クォリティは十分高いので念のため。

Recorded on June 5, 2011

Personnel: Carsten Dahl(p, prepared piano, perc), Arild Andersen(b), Jon Christensen(ds,kalimba)

2012年7月16日 (月)

「未解決事件」:縦割りの弊害とろくでなし元警察幹部の発言

Photo 「未解決事件 グリコ・森永事件~捜査員300人の証言」 NHKスペシャル取材班(文藝春秋)

私の世代でグリコ・森永事件をおぼえていない人間はいないだろうが,結局未解決のままで終わってしまったこの事件を改めて振り返ろうというTV番組にシンクロした書籍である(ちなみに私はTV版は見ていない)。グリコ・森永事件はそれこそ所謂劇場型犯罪として非常に大きなインパクトを持っていたし,その後の書籍にもプロットにこの事件の影がちらつくなど,何らかの影響を与えたと言ってよいように思える。高村薫の「レディ・ジョーカー」然り,宮部みゆきの「模倣犯」然りである。私はTV番組は見ていないが,一体どういうことだったんだろうという関心もあり,この書物を手に取ったのだが,明らかになるのは警察という組織に縦割りの弊害が露骨に存在するということばかりである。

アメリカの映画を見ていても連邦捜査局(FBI)と地元警察の確執というのはよく描かれるわけだが,ここに描かれるのはもっと狭い府県警(大阪,兵庫,滋賀)間の壁の高さということになってしまうのではないかと思う。まぁ,アメリカでも州境を犯人がまたげば,追跡は不能になるなんてシーンは何度も見たから,どこの国でも同じようなものなのかもしれない。いずれにしても,この事件の顛末を踏まえて,現在は状況は改善していると信じたいが,警察の横の連携が取られてさえいれば,この事件は未解決に終わらなかったのではないかと今は思えるのである。

本書に書かれた内容は,警察関係者へのインタビューが中心になっているので,そこからだけではわかりえない事実もあろうし,全編を通じて同じような表現(警察に対する疑問)が繰り返し現れてくるのも仕方のない部分はあるだろうが,やはり表現の冗長性に関してはぬぐいがたい部分がある。本質的な大スクープもないのでは,ありがちな仮説ばかりが目立つ「徳川埋蔵金」やら「矢追純一のUFOシリーズ」みたいになってしまっても仕方がない(と言っても,この比喩をどれだけの人に理解してもらえるか...)としても,もう少し大胆な推論を加えるとかがあってもよかったのではないか。

もちろん,天下のNHKのやることだから,世間から簡単に突っ込みが入るような仮説を提示できるほど冒険心(度胸)があるとも思えないが,この程度ではそれ相応に時代を振り返るという意識は与えられたとしても,読み物としてはそれほど面白いとはやはり言えないだろう。そうは言いながら,私は回顧的な気分だけでページをめくっていたのも事実だが...。星★★☆。

尚,私がこの本を読んでいて最も虫酸が走る思いで読んでいたのが,『捜査幹部はこう語る - 四方修・元大阪府警本部長の「反論」』の部分(P.288~298)である。ここに書かれていること(四方の反論)はほとんど屁理屈に過ぎず,捜査の失敗すら認めず,強引に正当化しようというこの男の姿勢は不愉快極まりない。このお方,その後,見事に警察から私企業に天下ってのうのうと暮らしていながらこの発言とは恐れ入るしかないのだが,さすがキャリア組の発想は一般人(あるいは庶民)と違うわ。特に次の件はよくもまぁこんなことが言えるもんだと思ってしまった。

『「警察の捜査に失敗があった」と結ばれているが,警察としては失敗がなかったと考えている。むしろ,失敗したのは財物を取得できなかった犯人グループである。』

だとすれば,グリコの江崎社長の誘拐事件や,風評被害により,グリコや森永等の企業が被ったダメージ,更には犯人から暴行を受けた(カップルの)男性の被害はどうでもいいってことか?そういった全体の中でのプロセスを無視し,犯人グループが「財物を取得できなかった」から失敗だと平然と言ってのけるこんな男が警察の幹部をやっていては,「かい人21面相」におちょくられても仕方(四方?)がないわと思ってしまった。それこそ厚顔無恥と言われても仕方(四方?)あるまい。

いまだに忸怩たる思いを抱える当時の捜査員の心情など,この男には決して理解できないだろう。あぁ,いやだ,いやだ。

2012年7月15日 (日)

Adriana Calcanhottoのライブ盤は素晴らしい出来

Adriana_calcanhotto "Microbio Vivo" Adriana Calcanhotto(Sony)

私はブラジル音楽に造詣が深いわけではないのだが,かなりブラジル音楽は好きである。と言っても,新たにいろいろな人を開拓するとか,そういうのではなく,ほかの方のご紹介を参考にしたり,ショップでの直感に頼っての購入が多いと言ってよい。

私が初めてAdriana Calcanhottoのアルバムを購入したのは"Mare"だったのだが,それはArto Lindsayがプロデュースしていて,かつ半額値引きセールをしていたからだった。私はMarisa MonteのアルバムにおけるArto Lindsayのプロデュースぶりを評価していることもあっての購入だったが,それはそれで気持ちのよいアルバムだったとは思うが,このブログにアップするところまでは行っていなかった。その後,昨年の"O Microbio Do Samba"も買って,それなりに評価してきたつもりである。それでも私が彼女の魅力を完全に理解していたとは言い難いが,このライブ・アルバムを聞いて,私の彼女に対する評価は飛躍的に高まってしまったと言ってよい。こんなに凄いシンガーだったのか...。

とにかく,これほど心地よいライブ盤というのはなかなかあるものではない。実力十分の小編成のバックに支えられながら,ここで彼女の聞かせる歌が最高である。私はあまりの心地よさに出張の道すがら何度もプレイバックしてしまったほどである。彼女の歌がいいのはもちろんなのだが,バックの演奏も極めて適切に心地よいグルーブを生み出していて,近年聞いたブラジル音楽の中でも,Maria Ritaに勝るとも劣らないぐらい気に入ってしまった。本当に気持ち良い音楽である。

こんな演奏を聞かされては,昨年の来日公演に行かなかったことを強く悔いる私である。今年のブラジル音楽部門ベスト作最有力候補。星★★★★★。まじでたまらん。尚,クレジットにはJorge Ribeiroという人が「紙吹雪」ということで載っている(笑)。ジャケや写真からもわかるが,相当の紙吹雪を散らしたと見える。DVDも気になるところであるが,音楽だけでも十分に楽しめる。

Recorded Live in Rio De Janeiro on October 15, 2011

Personnel: Adriana Calcanhotto(vo, perc), Alberto Continentino(b), Davi Moraes(g, perc), Domênico Lancellotti(ds, perc)

2012年7月14日 (土)

豪華なメンツによるLewis NashのCellar Liveレーベルでの新作

Lewis_nash "The Highest Mountain" Lewis Nash(Cellar Live)

完全にこのメンツを見て買ってしまったと言ってよいLewis Nashの新作である。というより,メンツをネット上で見て即買いを決意した私であった。このメンツを見れば,勢いのあるハードバップ的な展開を期待してしまうが,冒頭からこちらの想定した音が出てきて嬉しくなってしまう。

Jeremy Peltは自身のクインテットで素晴らしい演奏活動を行い,Jimmy GreeneはSmalls Liveでのワンホーン盤もよかった(これは新橋のBar D2で教えて頂いたものだが,記事にはまだしていない)。そしてもはや中堅/ベテランの域に入ったRosnesとWashingtonとはLewis Nashはレギュラーで活動していると言ってもいいので,コンビネーションが悪くなるはずがない。しかもやっている曲は1曲のRosnesのオリジナルを除いて有名無名のモダン・ジャズ・オリジナルの数々である。冒険はなくても,演奏の質は保たれるセッティングだと言ってもよいだろう。

それにしても選曲が渋いのではないか?Bobby Hutchersonの"Teddy"から始まり,Monkで締める中で,タイトル・トラックはClifford Jordan,その他にもJoe Henderson,Ornette Coleman,Thad Jones,James Williamsのなどの曲も入っている。中でもThad Jonesの"Ain't Nothing Nu"はしびれる出来で,やはりこの人たちにはこういうテンポのハード・ドライヴィングな曲調が合っているように思える。そうした点はさておき,こうした曲をレパートリーにしてしまうということが大したものではないか。

いずれにしても優秀なソロイストを集め,リーダーが相応の統率力を発揮したことによって,楽しめるジャズ・アルバムとなった。Lewis Nashは作曲の才はないようだが,このリーダーシップはArt Blakey的って感じか。これは凄いとか,感動したとかいうものではないが,聞かないのはもったいないジャズ的な魅力に溢れた佳作。星★★★★。

Recorded on September 16-18, 2011

Personnel: Lewis Nash(ds), Jeremy Pelt(tp, fl-h), Jimmy Greene(ts, ss), Renee Rosnes(p), Peter Washington(b)

2012年7月13日 (金)

Cassandra Wilsonの新譜は微妙な出来...

Cassandrawilsonanothercountry "Another Country" Cassandra Wilson(eOne)

どんなに好きなミュージシャンであっても,いくらなんでも...ってことはあるはずだ。今回のCassanda Wilsonの新作は強くそういうことを感じさせる。それは多くのリスナーにとっても同じだったはずだと思うが、やはり彼女が「オーソレミオ」はないだろうってことである。もちろん歌のうまい人であるから、イメージが違うだけという話もある。だが、この曲が作り出した違和感は最後までぬぐえない。

冒頭2曲は、CSN&Yさえ感じさせるアメリカン・ロック、或いはSSW的な響きでこういうのもありかなぁと思った私だったが、それは「オーソレミオ」で一気にさめた。更にどう考えてもCassandraには合いそうにないボサノヴァ調の"Almost Twelve"があって違和感が増幅され,最後のコーラス入りの"Olomuroro"でもうどうしようもなくなってしまうのだ。そもそも彼女の声でボサノヴァを歌って欲しいと思うリスナーはそういないだろうし,更に何なのかあのコーラスはって感じである。これはNeil Youngの近作にもあったことだが,コーラスを入れることがどっちも全然いいと思えなかったのである。

私はCassandra Wilsonの歌手としての実力は高く評価しているので,その実力を発露するために彼女がいろいろトライしたくなる気持ちは理解できる。だが,それはリスナーの心に寄り添って初めて認められるチャレンジであるはずである。私にはこのアルバムを聞いていて,「私のやりたいようにやらせてもらったけど,私って何でもできて凄いでしょう?」という感覚が付きまとってどうしても高く評価できないのである。

私にとって,これはCassandra Wilsonの新機軸ではあっても,本質とは思っていない。共同プロデュースをしたFabrizio Sottiというギタリストの指向も強く反映していると思うが,それでもこれは私としては評価したくない。私が彼女に求めるものはディープに,ルーツをあぶり出すような取り組みである。このアルバムを聞いていても,彼女のいいところを感じられなかったと言っては言い過ぎかもしれないが,それにしてもである。

歌のうまさは認めても,私にはどうしても評価できないアルバムとして星★★。こんな音楽をやるためにBlue Noteを離れたとすれば,それは大きな間違いだと言っておきたい。

演奏も歌も悪くないが,それでもこれはやっぱり認められないし,認めたくないのである。ファンはわがままなのだ。だからこそ点が辛くなる。どうせなら次はJoe Henryのプロデュースでアルバムを作って欲しいものである。

Personnel:追ってアップ予定。

2012年7月12日 (木)

また飲み過ぎた私...

飲みに行く予定もなかったのに,たまたまエレベーターが一緒になったのを口実に(?),また飲みに行ってしまった私であるが,想像以上に飲んだくれてしまい,早めに辞去したにもかかわらず,かなり酔っ払ってしまった。

音楽も何を書こうか悩んでいたこともあり,今日は酔っ払いついでにお休みさせてもらおう。なんだか最近いい加減だよなぁと思いつつ,素人だからいいのだと開き直るしかあるまい。ということで,読者の皆さん,ごめんなさい。

2012年7月11日 (水)

例えて言うなら大河の流れのごときDexter Gordon

Dexter_gordon "The Montmartre Collection" Dexter Gordon (Black Lion)

中古で拾ってきた2枚組である。LP3枚分の音源を2CDに収録したお徳用盤とのことであるが,密林のマーケットプレイス等ではとんでもない値段がついている。それを考えれば,私がゲットした値段は極めてリーズナブル。中古ではあるが,定価よりちょっと安いぐらいだったからこれは儲けものって感じか。当時欧州在住中のDexter Gordonが同じく現地在住のKenny Drewらと吹き込んだナイスなライブ・アルバムである。

私はColumbiaのDexter Gordonのボックスも買ったりしているが,それはWoody Shaw目当ての部分もあったりして,決してDexter Gordonのファンってことはない。そこそこアルバムは保有していても,私としてはプレイバック率も高いわけではないが,だからと言って売り払うという判断にはならない,そんな感じの人なのである。

だが,このアルバムを聞いていて思うのは,コンベンショナルなジャズのよさが物凄くよく出ているなぁって感じなのである。中にはテンポの速い曲もあるが,それでもそこから受ける印象にはゆったり感と言うか,懐の広さを感じさせる音楽なのである。それが私には大河の流れのように感じられたわけだが,こういう音楽を聞いていると,ジャズの伝統というのは素晴らしいと感じさせてくれる演奏群である。特にスローな曲を聞いていると大河的な感覚は強まる。豪放さと悠揚さを兼ね備えた演奏と言える。

正直言って,このアルバムを聞いて,Dexter Gordonの手持ちのアルバムをちゃんと聞き直そうという気になっているのだから,それだけでも私には価値があったと思える。Rollinsの曲をやっても,明らかにRollinsとは異なる。だが,引用もうまくはまって,やはりこの人のインプロヴァイザーとしての実力は大したものだったのだということを今更ながら痛感させられたアルバムである。星★★★★☆。これこそ温故知新。中古盤屋めぐりはこれだからやめられないのである。

Recorded Live at Cafe Montmartre, Copenhagen on July 20 & 21, 1967

Personnel: Dexter Gordon(ts), Kenny Drew(p), Niels-Henning Orsted Pedersen(b), Albert Heath(ds)

2012年7月10日 (火)

Material:懐かしいねぇ。これが先鋭的と言われてから30年以上...。

Memory_serves "Memory Serves" Material (Celluloid)

懐かしい音源である。そして突然のMaterialである。先日,中古盤屋をうろついていたら,本作と,これまた懐かしやGolden Palominosのアルバムを発見し,ついつい懐かしくて購入してしまったための本ブログへの登場である。

私が大学在学中,突如としてパンク・ジャズとか,ノー・ウェイブとか訳のわからないムーブメントがジャズ界(あるいはロック界)に起こったのだが,その頃,特にアバンギャルド系のロックを聞いていた人たちにも注目されたのがこのMaterialであった。一方,コンベンショナルなジャズ・ファンからは完全に無視されるか,徹底的に白眼視されたと言ってもいいだろう。

メンツを見れば,とんがった音が聞こえてくるであろうことは今だから言えるのだが,これが出た当時なんてのは一体これは何じゃ?という感覚が強かった。それでもこれはフリー/アバンギャルドというよりもファンク・ミュージックなので,決して聞き辛い音楽だとは思わない。この程度なら正直言って今の耳ならば先鋭的でも何でもなくなってきているところに時の流れを感じざるをえない。

ある意味,これはファンクとフリー・ジャズの境界線を行くようなものだから,70年代Miles Davisのバンドと同質性がないわけではないが,聞こえてくる音楽はMilesほどハイブラウではない。どちらかと言えば踊れてしまう音楽であって,Milesよりはずっと軽い。こうした音楽が何を契機に現れたのかは私としては知る由もないが,ここにも参加しているFred FrithとLaswellのやったMasaccreのようなバンドもあったので,ロフト・ジャズとも同様に,特定のミュージシャンのコミュニティの中で同時多発的もしくは自然発生的に生まれたものだろう。いずれにしても,こういう音が一番似合うのはNYCって感じがする。

これが時代の先端の音楽だったかどうかについては議論の余地はあるとは思うが,その後,Materialのコア・メンバーであるLaswell,Beinhorn,Maherはプロデューサーとしても活躍していくので,そうだったのだと評価してもよいようには思える。何より驚いたのはFred Maherの名前をScirtti Polittiのアルバムにおいて見つけた時だったが,その後,MaherはMatthew Sweetの傑作アルバム"Girlfriend"をSweetと共同プロデュースするに至って,この3人の中で私の嗜好と最も合致していたのはMaherだと思ってしまったのであった。とにかく,Maherの場合,ここでの音楽とのギャップが大き過ぎて笑えるのだが,彼はさっさとMaterialは脱退したはずだからさもありなんて気もする。

いずれにしても,これを時代の徒花と言うのは簡単だろうが,一方のLaswellとBeinhornはHerbie Hancockの"Future Shock"(特に"Rockit")にも関わっていくことを考えれば,やはりその後のジャズ界にもある程度の影響を残したと言ってもよい。もちろん,それは"Future Shock"をどの程度評価するかというところにもよるが,ジャズ界のすそ野は間違いなく広げたはずである。

よって,本作は音楽だけで評価するよりも,その他の要素も含めてより総体的に評価するべきで,そうした点を鑑み星★★★★としておく。繰り返すが,これは基本はファンク・ミュージックであり,ジャズの概念だけで捉えるべきではないと思う。

Personnel: Bill Laswell(b), Michael Beinhorn(key, vo, g, ds), Fred Maher(ds, perc, g), Sonny Sharock(g), Fred Frith(g, vln, xylophone), Olu Dara(cor), Henry Threadgill(as), George Lewis(tb), Billy Bang(vln), Charles K. Noyes(ds, perc)

2012年7月 9日 (月)

夏になると出てくるレゲエ

Red "Red" Black Uhuru (Island)

このブログにレゲエのアルバムが出てくることは稀である。Black Uhuruの"Chill Out"をこのブログに取り上げたのももう4年前になる(記事はこちら)し,それ以来,レゲエ関連の記事はアップした記憶がない。しかしである。実は私,そうは言いながら結構なレゲエ好きで,夏になるとプレイバック頻度が高まっていくのである。我ながらワンパターンな発想,行動パターンだと苦笑せざるをえないが,鬱陶しい夏を乗り切るにはレゲエの緩やかなビート,心地よいグルーブが必要だと感じてしまう私である。

今回の"Red"は彼らの最高傑作に推す人も多い作品だが,いかにもレゲエらしいテンポとビートなので,聞いていて自然に体が揺れてしまうわけだが,"Chill Out"と比べてみれば,シャープさは"Chill Out"に譲るとしても,レゲエらしさはこちらの作品の方が濃厚なような気が する。よって,どちらが好きかは好みの問題ってところだろう。

だが,1980年代前半は彼らBlack Uhuruにとっての活動のピークであり,曲のクォリティ,演奏ともに文句をつけるところはない。ただ,私としては"Chill Out"の方が好きなので,それによってあっちが星★なら,相対的に本作は星★★★★☆となるわけだが,それでもこれは本当にレゲエらしいサウンド,ビート,そしてグルーブだと言ってよいように思える。よって,私のような季節的リスナーではなく,正調レゲエを愛する真っ当なオーディエンスはむしろこちらを評価するかもしれないなぁと思ってしまった。

いずれにしてもBlack Uhuruってのはいいグループだったなぁと思わせるナイスなアルバム。まぁ,ジャケは紅一点のPumaはキュートに写っているが,男性陣2名は相当怖いよねぇ。と言ったら,あんたの方がずっと強面じゃんとすずっくさんから言われそうだが...(爆)。 

Personnel: Michael Rose(vo), Duckie Simpson(vo), Puma Jones(vo), Sly Dumber(ds), Robbie Shakespear(b), Sticky Thompson(perc), Ranchie McLean(g), Radcliff "Dougie" Bryan(g), Mickey Chung(g), Barry Reynolds(g), Keith Sterling(p), Robbie Lynn(p)

2012年7月 8日 (日)

中年音楽狂が一肌脱ぐシリーズ(第16回):もはや異端ではないECMレーベルから

Facing_you "Facing You" Keith Jarrett(ECM)

「お店に並んでいそうでジャズをこれから聴いてみようかなぁという人にお薦めというのがありましたらご紹介ください。」というリクエストにお応えするという趣旨のこのシリーズであるが,前回から随分間が空いてしまった。そもそもこのリクエストを下さったMarlinさんもジャズ経験値が上がってきて,このシリーズももう必要ないかもなぁなんて感じているのも事実である。よって,今回記事をアップしても,次回まで随分と間が空いてしまうかもしれないし,自然消滅するかもしれないが,そこはまぁいいかってことでの今回の記事である。

今回のテーマは,ジャズ界においては,決してコンベンショナルではないし,メインストリームでもないが,どうしても無視することができないレーベルとしてのECMである。そのECMレーベルの作品として取り上げるのが今回の"Facing You"である。

Keithの作品を取り上げるのであれば,ソロであればこれでなくてもいいという気もするし,ソロ以外の編成でもいいようにも思える。ECMには「ケルン」という超人気盤があるから,そっちだっていいのだが,もうこのブログでは記事にしてしまった(かなり古いが記事はこちら)。また,もっとECMらしさを感じさせる作品はほかにもあるのだが,KeithのECMレーベルにおけるキャリアのスタートとなったという点でもこのアルバムにしてしまおう。

そもそもこのアルバムが吹き込まれた頃はKeithはMilesのバンドに在団中であった。その欧州楽旅の間隙をぬって短時間でレコーディングされた作品である。それまでもピアノ・ソロの演奏はあったとしても,完全即興でライブに挑むというのはKeithが最初だろうと考えてもいいわけだが,その端緒となったという点でこの作品は重要なのである。

後の作品とは異なり,1曲当たりの演奏時間もそれほど長くはないし,タイトルもちゃんと付いているから,これが完全即興かどうかについては議論もあろうが,いずれにしてもこれがKeithの初ピアノ・ソロ作品だという点を考えれば,本作の重要性も理解できるというものである。

現在のKeithとは異なり,まだまだゴスペルやフォーク的なタッチが濃厚に見られるところに時代を感じさせるが,"Solo Concerts"もそういうところはまだあったよなぁなんて思い出してしまう私である(今でもKeithにそういうところはないわけではないが...)。振り返ってみれば,録音からは40年以上経過しているのだから,Keithのスタイルに変化があるのは当然としても,この頃はまだまだ瑞々しいって感じがする。巨匠とは異なるスタンスで,いかにもチャレンジしたって感じがするのだ。だが,それでもその後のKeithを想起させるようなフレージングやタッチはこの段階で現れてきていたと言ってよいように思う。

Milesバンドでやっていた音楽と違い過ぎだろうという話もあるが,どちらもがKeithの本質なのだろう。そうしたことを考えるとこの人の頭の中はよくわからないってことになるが,それでもこの音楽を否定できるリスナーはそうはいるまい。いずれにしても,やはりこれはその後のKeithを考える上で重要作であることは間違いなく,それはその後のジャズ界を考える上でも非常に重要な作品だったということになるだろう。それを考えればやはり星★★★★★である。

Recorded on November 10, 1971

Personnel: Keith Jarrett(p)

2012年7月 7日 (土)

Mike Sternの新作はヴァラエティに富んだつくり

All_over_the_place "All Over the Place" Mike Stern(Heads Up)

私はMike Sternのファンである。演奏の展開やフレージングがワンパターンだと言われようが何しようが,好きなものは好きなので,仕方がない。Mikeは相変わらず55 Barに不定期に出演しているようだが,私はNYC在住中やら出張中やらにMikeが出ていると結構彼を見たくて55 Barに通っていたし,これからもチャンスがあればそれは変わらないと思う(誰が何と言おうが,MikeにはBlue Noteより55 Barの方が絶対に合っている)。

そんなSternの新作が出ると,大概の場合は買ってしまう私だが,一時期以降は昔のように絶対買う!って感じではなくなってきているのも事実である。でもやっぱり今回も買ってしまった...。ジャケに白塗りでもしたような顔で微笑むMikeの写真には思わずのけぞった。正直言ってこの人はあんまり笑わない方がいいと思っている私であるから,このジャケはちょっと薄気味悪いのである。

それはさておきである。本作はJim Beardがプロデュースに当たって,Beardは全面参加である。そしてそこで展開される音楽は非常に幅広い。Mikeがアコースティック・ギターを弾いている曲もあって,これは相当珍しいし,随分といろいろな音楽性を持った音楽をやっているなぁというのが率直な感想である。そのためにはバックのメンバーも曲想によって変えているって感じかもしれないが,ある意味物凄いキャスト(特にベースはなんじゃこりゃ~って感じである)と言ってもよい。なんたってクリポタまで参加しているしねぇ。そのバックでドラムスを叩くのはKeith Carlockなのだから濃い。

しかし,そうした豪華なキャスト,幅広さは,アルバムとして考えると,印象を散漫にさせてしまうリスクは当然あるが,そこはMike Sternである。誰がどう聞いてもStern節が炸裂しているから,Mike Sternのアルバムであるという印象は揺るがない。だが,そうは言ってもさすがにこれはやり過ぎではないかってぐらいのヴァラエティである。いかにもMikeらしい曲,Bona入りで露骨にアフリカ的な曲,Mikeとしては意表を突くような静謐な曲,ジャズ的エクスプレッションが強い曲と何でもありである。"Out of the Blue"なんて,「至上の愛」フレイヴァーまでまぶしてある。しかも一番短い曲でも5分46秒,それで全11曲,70分以上ということではさすがにげっぷが出そうになると言ってもよい。

Mike Sternの音楽性を表現するにはこれぐらいの時間が必要だという考え方もあるだろうが,さすがにこれでは聞いている方の集中力が続かない。「長いなぁ」という印象は,むしろネガティブな感覚を聞き手に植え付けてしまうところもあったのは事実である。その一方で冒頭の"AJ"なんてMikeとクリポタのチェイスで盛り上がってきたところでフェイド・アウトなんて野暮なことをやってしまうのが何とも惜しい。それなら曲数を絞ってでも,リスナーが燃えるような音楽に仕上げるってやり方だってあったはずである。

個々の曲の演奏は相当に楽しめるのだが,一つの作品として考えると,もう少しプロデュースのしようもあったのではないかと感じてしまう私である。そうした点も踏まえると甘めの星★★★☆ぐらいになってしまう(かなり甘いかも...)。もう一つ言えるのは,Mike本人はどう思っているかわからんが,Richard BonaとMikeでは必ずしも相性がいいわけではないと思っているのはきっと私だけではあるまい。音楽性が違うのだから,無理にBonaに合わせたような演奏をする必要は感じないのだが...。Bonaはうまいと思うが,彼のヴォーカルとMikeのギターの組合せにそもそも違和感があるのだ。

Ngoni_ba 尚,余談だが,奥方のLeni Sternが"Out of the Blue"で弾いているN'goni Baというのはこういう楽器らしい。アフリカ,マリあたりの民族楽器だそうである。なるほど...。世の中にはまだまだ知らないことがあるねぇ。

Personnel: Mike Stern(g), Chris Potter(ts), Bob Franceschini(ts), Bob Malach(ts), Kenny Garrett(as), Randy Brecker(tp), Leni Stern(g, N'goni Ba), Jim Beard(p, org, key), Anthony Jackson(b), Richard Bona(b, vo), Tom Kennedy(b), Esperanza Spalding(b, vo), Dave Holland(b), Victor Wooten(b), Victor Bailey(b), Will Lee(b), Keith Carlock(ds), Dave Weckl(ds), Kim Thompson(ds), Lionel Cordew(ds), Al Foster(ds), Tim Keiper(perc)

2012年7月 6日 (金)

ジョアのCMの剛力彩芽が可愛い。

Photo_2何を今更って気もするが,今年最もブレイクしたのは剛力彩芽であることに異論のある人はいるまい。現在,出演CMは18本だそうである。TVをつければ確実に彼女の出演CMにお目にかかると言っても過言ではない。ある意味出過ぎって気もするし,食傷気味になるリスクはあるが,それにしても彼女は時間の経過とともにどんどん可愛くなっているように思える。

私は正直言って彼女のどこがいいのかよくわかっていなかったのだが,その認識を改めたのがヤクルト・ジョアのCMであった。これを見てこの子は可愛いと真剣に思ってしまったのである。映像だけなら反応していなかったであろう私までもがついつい見入ってしまったのは,彼女が歌う「ジョア,ヤクルト・ジョア,誰のもの」以下の件である。この歌,私の世代には非常に懐かしく,今から40年ほど前,小柳ルミ子が歌っていたものだからだ。それ以降,この歌がジョアのCMで使われていたかについてはよくわからないが,とにかく私にはノスタルジーを掻き立てる効果は間違いなくあった。そこに映っていたのが剛力彩芽だったのだが,その表情が素晴らしく可愛いと思った私である。

年甲斐もなくって話もあるが,可愛い子を見ていると心が和む。強烈な美女でないところも万人受けする要素だろうが,それにしてもこの表情である。このCMをきっかけとして,ようやく彼女の良さに気づいた私だが,彼女を逸早くCMに起用した積水ハウスは先見の明があったと言うべきか。振り返って積水ハウスのCMシリーズを見てみると,どんどん表情が豊かになっているような気がするのも贔屓目か…。

TVドラマを見ない私にとっては役者としての可能性は未知数ながら,こうした表情を忘れずに活動を続けて欲しいものである。いや,やっぱり可愛いぜぃ。

2012年7月 5日 (木)

ECMレーベルの音楽にトリビュートしたビッグバンド作

Celebration "Celebration" Arild Andersen with Scottish National Jazz Orchestra Directed by Tommy Smith(ECM)

これはECMのサウンドとしては異色と言えるかもしれない。ECMレーベルの有名どころのオリジナル6曲に対して,あまりECMとは関係なさそうな人まで含めた7人がアレンジしたものを,Arild Andersenをゲストに迎えたビッグバンドで演奏するという企画がそもそも凄い。世の中にはECM好きが結構いるとは言え,ライブでやってしまうって結構大胆な企画のような気もするし,ゲストがAndersenというのが渋いなぁ。バンマスのTommy SmithはAndersenとも共演しているからそういう縁だろうし,小曽根真が"Crystal Silence"をアレンジしているのも,SmithとGary Burton Quartetでのバンド・メイトだったからというものだろうが,それにしてもである。比較的こじんまりとしてコンサート・ホールでの実況かなぁって感じである。

演奏されている曲の中で,相当に知られているのは"Crystal Silence"と"My Song"ってことになるだろうが,メロディがよく知られた曲だけにどうするのかと思っていたら,両曲ともAndersenに主メロディを弾かせるという対応。なるほどねぇ。メロディの印象が強いだけに,ベースをフィーチャーせざるをえなかった,あるいはゲストのAndersenに花を持たせたっていう感じだろうか。そのほかでもAndersen目立ちまくりなので,その辺は好き嫌いもあろうが,冒頭の"May Dance"のようにオリジナルのGatewayの演奏を彷彿とさせるスリリングな展開と,ECMらしい静謐さもうまく混じり合って,少なくともECMファンにとってはこれはなかなか楽しめる作品である。

面白いのはアレンジャー陣である。最後の"My Song"を担当しているGeoffrey Keezerが一番異色(レーベルと関係がありそうに思えない)だろうが,"May Dance"をChristian Jacobがアレンジしているのも珍しいと言えるのではないか。ただ,彼の曲をTommy Smithと小曽根入りのGary Burton Quartetで演奏しているから,何らかの縁あっての参加であろう。所謂人脈ってやつだ。

ここで提示されたアレンジや演奏が全て面白いかどうかには議論の余地もあると思うが,ソロイストとしてのArild Andersenはまさに泰然自若で,非常に落ち着いた音色と演奏を聞かせる。私としてはこれはこれで楽しめるし,オリジナルの演奏としての聞き比べも楽しそうだというのは"Blue Note 7"と同じノリだなぁ。どうせなら同じような企画で,2枚組で2枚目はオリジナルで固めたコンピをカップリングすればいいのにと思ってしまった。まぁEicherがそんなことするわけないか...。いずれにしても,温故知新の要素と,へぇ~っていう要素の組合せを評価して星★★★★。

Recorded in October 2010

Personnel: Arild Andersen(b) with Scottish National Jazz Orchestra: Martin Kershaw(cl,  ss, as), Paul Towndrow(as), Tommy Smith(fl, ts), Konrad Wiszniewski(ts), Bill Fleming(b-cl, bs), Ryan Quigley(tp, fl-h), Cameron Jay(tp, fl-h), Richard Iles(tp, fl-h), Tom MacNiven(tp, fl-h), Chris Greive(tb), Phil O'Malley(tb), Michael Owers(tb), Lorna McDonald(b-tb, tuba), Steve Hamilton(p), Calum Gourlay(b), Alyn Cosker(ds)

2012年7月 4日 (水)

これは面白い!George Harrisonのジャズ・アダプテーション

Harrison_on_harrison "Harrison on Harrison" Joel Harrison(High Note)

新橋のテナー・サックスの聖地Bar D2にお邪魔していると,次から次へと知らないけれども非常に興味深かったり,興奮させられるようなアルバムをご紹介頂いて,こっちとしても次から次へと発注を繰り返すというのが通常のルーティンのようになってしまった。今日ご紹介するアルバムもそんな一枚。マスターがこのアルバムをお持ちなのはDave Liebman入りという理由がメインだと思うが,私にとってはLiebmanの演奏も興味深いのだが,1曲のオリジナルを除いて,珍しくもGeorge Harrisonの曲ばかりやっているというのが更に興味をそそってしまった。

私はこのブログにも書いている通り,The Beatlesのメンバーの中ではGeorge Harrisonが一番好きで,その次がJohn Lennonってことになっているのだが,Georgeの書く曲というのはLennon/McCartneyに比べると,不思議なコード進行だったり,ちょっと違った魅力を持っているように思えるのである。それはThe Beatlesの時代もそうだし,ソロ・キャリアに入ってからも同じだと思う。それをアルバム単位でジャズにアダプテーションしてしまうというのは前代未聞と言ってよいと思うが,これがなかなかいいのだ。

このアルバムでの演奏は,結構コンテンポラリーな響きも持ちながら,フリーに近い線まで行ってしまう部分も感じられて,コンベンショナルなジャズとは一線を画している。まぁGeorgeの曲が変わった感じが多いから,こうしたアダプテーションでも受け入れてしまう部分があるように思えるのは若干贔屓目かもしれないが,それにしてもこれは面白い。冒頭の"Here Comes the Sun"からして普通ではない。オリジナルのハイ・ポジションにカポタストをはめて,軽快な響きを持たせたのとは全然違う。むしろモーダルな響きさえ持っていると言ってよいかもしれないぐらいなのだ。これをやり過ぎと感じてしまっては元も子もなく,Liebmanのようなミュージシャンが参加しているからには,これぐらいの崩しは当たり前だと言ってもよいかもしれない。そのLiebmanが1曲だけアレンジしているのが"Within You, Without You"というのがこれまた象徴的。このある意味瞑想的な曲調を,イメージを崩すことなくアレンジしているように思える。

そして,注目は"While My Guitar Gently Weeps"ってことになろうが,ここでのリーダーのギターはGeorgeへのシンパシーを十分感じさせるものだが,ここでの聞きものはLiebmanのテナー・ソロである。やや演奏のテンポが遅くて,一体どうなるのかと思わせるのだが,途中で出てくるLiebmanのテナーには一発勝負に賭ける集中力のようなものを感じさせて,これはしびれる出来だ。その後は"All Things Must Pass"所収の"Art of Dying"だが,ホーンが入っていないこともあるが,原曲をずっとジャズ的な響きに変換させていて,同じ曲とは思えないぐらいになっているのも面白い。歌っているのはリーダーだろうか(結構渋い声である)?"My Sweet Lord"もルーツ・ロック風に攻めて,なかなか渋いしねぇ。

どれも一筋縄に行かない中で,一番普通に響くのは"Beware of Darkness"だろうか。私としてはもう少しこの線とか,"My Sweet Lord"のような感じで攻めてもらってもよかったような気がしないでもないが,そうするとLiebmanの出番も減っちゃうしねぇ。ってことでこれでよかったのかもしれない。いずれにしても面白いアルバムだったので星★★★★。

Personnel: Joel Harrison(g, vo), David Liebman(ss, ts, wood-fl), David Binney(as), Uri Caine(p, rhodes), Stephan Crump(b), Dan Weiss(ds), Todd Isler(perc), Gary Versace(p), Rob Burger(org), Jen Chapin(vo)

2012年7月 3日 (火)

今日はうれしいぜぃ

001 長年の課題だった森高千里の「見て スペシャルライブ」のDVDを遂にゲットしたぜぃ。やった~!(安くはなかったぜぃ!)

あまりに嬉しくて深夜にかかわらず今晩最低は2回は見るな(爆)。最高だぜ、バブル絶頂期の森高のミニスカ。く~っ、たまらん。この時の森高にいじめて欲しいと思ったのは私だけではあるまい。それぐらい最高なのだ。とにかく見るぞ~。

002 まぁいいのよ、わかってくれる人がいれば。絶対いるから(笑)。聴衆の反応が怖いのはさておきってことで。いずれにしても私にとっての史上最強ライヴ・ヴィデオである。

いやいや、それにしても世界一の脚線美や。アンコールのボディコンもすごいぜぃ。マジで感動。25周年記念盤も買おうっと(笑)。

2012年7月 2日 (月)

風景は美しいが,あまりにも平凡な展開だった「一枚のめぐり逢い」

The_lucky_one 「一枚のめぐり逢い("The Lucky One")」('12,米,Warner Brothers)

監督:Scott Hicks

出演:Zac Ephron,Taylor Schilling,Blythe Danner,Jay R. Farguson

この映画を見ていて,一番印象に残ったのがルイジアナの紅葉だってところにこの映画の限界があるように思える。悪い映画だとは思わないが,「いかにも」のストーリーにはやはり無理があり過ぎであった。

Zac Ephronが心にトラウマを抱える帰還兵というのからしてありがちな設定だが,その心の傷具合がZac Ephronからはあまり感じられないのが痛い。この人からはまだ陰影が感じられないのである。その辺がまだ役者としての修業が足りない。また,彼が演じるLoganがコロラド(確かそう言っていたように思う)からルイジアナまでわざわざ歩いてきたと言うならば,その過程をロード・ムービーに仕立てるって手もあったが,プロデューサーとしてはZac Ephronをカッコよく見せればいいわけで,そんな筋立てにはしない。それはそれで仕方ないとしても,Taylor Schilling演じるヒロインBethと出会ってからのストーリーもこれまたいかにもである。最初から最後まで,極めて予想通りの展開で話が進んでしまうのは,ある意味安心感があっていいかもしれないが,それにしてもベタで平板な展開(ハーレクイン・ロマンス的と言っては言い過ぎか)だと言わざるをえないのである。

そんな映画であるから,私も目くじらを立てるつもりはないし,誰もハーレクイン・ロマンスに文学としての深み等を求めないのと同様に,そういう映画だと思って見ればいいのである。この映画を救っているのは,上述のようにルイジアナの風景と,Bethの祖母を演じるBlythe Dannerの見事な助演ぶり。この方,お年を召しても美しいことこの上ない。私が女性ならば,あのように年齢を重ねたいと思わせるような感じである。この映画の役者で一番よかったのは間違いなく彼女である。

まぁ世知辛い世の中で,こういうシンプルなラブ・ストーリーを見て,心の平安を得るってのも悪いことではないが,キャスティングやシナリオはもう少しひねってもよかったように思う。敵役のJay R. Fargusonもあまりにも造形(そして,彼に関するストーリーの顛末も...)が普通過ぎた。ということで,全面的に否定はしないが,星★★★が精一杯。少なくとも映画にカタルシスを求める私のようなおっさんを泣かせる手立てが欲しかったが,全くそういう要素はなし。

でもルイジアナ(私はまだ行くチャンスに恵まれていない)の風景は美しいので,思わずあそこを訪ねてくなるという効果は間違いなくあった。ルイジアナ州観光局ご推薦間違いなしの映画である。

2012年7月 1日 (日)

悪くはないが,全面的に支持できないRTF IVのライブ盤

Mothershipreturns "The Mothership Returns" Return to Forever(Eagle)

私はChick CoreaがRTF IVとしてメンバーを若干入れ替えて活動を開始するというニュースを聞いて,へぇ~っと思っていたのだが,その後公開されたフリー・ダウンロード音源を聞いていると,結構いけているのではないかと思っていた(記事はこちら)。その後,私は行っていないが,このアルバムと同じメンツで来日も果たしたわけだが,フリー・ダウンロード音源の公開から1年以上経て,遂に彼らの最新の姿を捉えたライブ盤の登場である。

そもそも,彼らの音楽が今というタイミングにおいてどのような意味を持つのかという点では,かなり微妙と言わざるをえないのが事実である。大体,Al Di Meola入りで復活した時も,正直言って大して面白いと思っていなかった私である。それでもこれだけのメンツであるから,相応の期待を寄せてしまうのが悲しい性ってところか。だが,ここに収められた"Senor Mouse"をフリー・ダウンロードの同曲と比べると,どうもダイナミズムの点で不足しているように思えてしまったのである。こちらはライブ音源なのになんでなんだろうなんて思いつつ聞き進めてみても,どうも高揚感に欠ける。全体を通しても受ける感覚に大きな違いはない。これは1曲当たりの演奏時間が非常に長くて,やや冗長感があるためなのかもしれないが,昔の私だったらもっと燃えていたはずのこうした音楽に,あまり魅力を感じないのだ。

全体的に言えば,かなりゆるい。このメンツであれば,もっとテンションの高い演奏を期待してしまうのだが,一向にわくわく,ぞくぞくしてこない。まぁ,彼らの年齢を考えればそれも仕方ないのかもしれないが,それにしても予定調和の域を出ていないのが残念。だが,これだけのメンツである。それなりに演奏は楽しめるし,ライブを見ていればきっと違う感慨もあったのだろうと思うが,善戦はしているとしても,「昔の名前で出ています」感は払拭できない。私としては,なぜ彼らのような実力者集団が1年以上前に公開されたフリー・ダウンロード音源を上回る演奏をできなかったかということに不満が募ると言わざるをえない。"Spain"で聴衆に歌わせるのもなぁ...。ライブの場ならいいだろうが,ディスクとして聞いている分には何の感慨を呼び起さないのだ。

Chick Coreaの新作が出れば,また買ってしまうのだろうが,それでももう大きな期待は寄せられないというのが正直なところである。演奏の質に免じて星★★★☆とするが,やはり長年のファンとしては微妙である。

それにしても面白いなぁと思ったのが,ライナーにMetallicaのベーシスト,Robert Trujilloがコメントを寄せていることである。彼は83年のライブに触れているが,それはDiMeola入りで一時的に復活したRTFである。あのライブ,見に行ったなぁなんて遠い目になってしまうが,それでもハード・ロック/メタル・バンドにすら影響を与えたというのは興味深い事実である。昔から越境していたんだろうなぁ,ということはよくわかって面白かった。

Personnel: Chick Corea(p, key), Stanley Clarke(b), Lenny White(ds), Jean-Luc Ponty(vln), Frank Gambale(g)

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