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2012年5月31日 (木)

クリポタ観戦記:完全無欠の鬼ライブ

Chris_potter001 Chris PotterがUndergroundを率いて待望の来日を果たすと決まった時から,絶対行くぞと決めていた私であるが,あまりに凄いので2回行ってしまったではないか。2日目1stと最終日2ndに参戦した私である。ブログのお知り合いも行かれていたということは皆さん記事にされていて,ご同慶の至りと思っている私だが,現地にもそれはそれは知り合いの山みたいな感じであった。八木ブラザース/放し飼い,某有名ブロガーさま,イタリア・ジャズの女神さま等々である。

そして,私は2回のセットを聞いたわけだが,2セットとも悶絶である。クリポタは強烈なフレージングを連発し,それで悶絶。Nate Smithの超絶変拍子でまた悶絶。Adam Rogersのソロからカッティングへの移行で更に悶絶。Fima Ephronだけはどうにも地味だったが,バンド全体でやっぱり悶絶といった具合である。

2日目のセットはパリで録音されたブートに近い曲群であったが,凶暴なグルーブを持つ"Facing East"や"Time's Arrow"がいいのはもちろんなのだが,私がまいってしまったのがAdam Rogersとのデュオで演奏された"I Fall in Love Too Easily"であった。バスクラから入り,テナーに持ち換えるという展開であったが,あまりのよさに落涙しそうになっていた私である。とにかくアンコールのRadioheadの"Morning Bell"まで,とにかく最高の演奏だったと言ってよい。最終日も同じような感じであるが,曲は結構違っていた。しかし,演奏の質は変わることなく,また,信者の数も増えたこともあり,オーディエンスの反応も相当に熱かったと言える。

いずれにしても,Undergroundの面々は客入りが多かろうが少なかろうが,一切の手抜きなし。これぞプロって感じの演奏である。帰り際にクリポタと話をしたが,あの鬼のようなフレージングが嘘のようなナイスガイであった。私は"Rumples"を聞けなかったのが唯一の心残りだが,ちゃんと戦利品もゲットしたので,彼らの生音を思い出しながら,またクリポタのCDを楽しむこととしよう。

今度はそんなに間を置かず来日して欲しいものである。いやいやそれにしても凄いバンドであった。このバンドを聞かずに現代ジャズは語れないだろうし,語って欲しくない。最高のライブとはこういうものを言うのだ。それを見逃していてはジャズ・ファンとはやはり言えまい。とは言え,Tom Harrellは来るわ,James Farmも来るわではどれに行こうか悩んでいる人もいただろうから,泣く泣く諦めた人もいるだろうが,それでもこれは見逃してはならないライブであったと断言しておく。

クリポタ,クリポタ,いぇ~い,いぇ~い!【Courtesy of すずっくさん(笑)】

Personnel: Chris Potter(ts, b-cl), Adam Rogers(g), Fima Ephron(b), Nate Smith(ds)

2012年5月30日 (水)

なぜクリポタがフルハウスにならないのか。

ライブ観戦記は別の機会に譲るとして、クリポタ、更にはUndergroundのような超絶バンドの素晴らしいライブが、満席にならないってのは一体どういうことか。そうは言っても最終日のセカンド・セットはそれなりに集客できていたが、それを支えていたのは相当数のクリポタ信者(お知り合い多数)たちだろう。いずれにしてもこのようなライブの集客にも困るようでは、日本のジャズ・ファンのレベルを疑いたくなった。

耳心地、聞き心地のよいピアノ・トリオもいいが、こうした時代をリードするバンドのライブにはもっと注目が集まるべきだと言いたい。このライブに足を運べた人は、凄いものを見た、凄いものを聞いたと自慢すべきである。私がこれまで聞いたクラブ・デイトの中でも、最上位に入る演奏であったと思う。まさに聞かずに死ねるかってところである。

恐るべし、Chris Potter Underground。続きは改めてとするが、それにしてもいいものを聞かせてもらった。ありがとう、Chris Potter。

2012年5月28日 (月)

いよいよクリポタである。

Chrispotterunderground 既に公演は始まっていて,多くの私の知り合いも駆けつけているChris Potter Undergroundのライブへの参戦が近づいた。私はこれまでクリポタのライブには全く縁がない状態であったが,ようやくである。それもUndergroundで聞けるというのは誠に嬉しい限り。Craig Tabornが抜けて,キーボード入りベースレスから,Fima Ephronのベース入りに変化したことで,サウンドには若干の変化が生じているとは思うが,キレキレのクリポタを楽しむこととしたい。おそらく公演中も,公演後も悶絶している自分の姿が目に浮かぶ(笑)。

報告は改めてとするが,きっと現地はこんな感じだろう。Alex Sipiaginのバンドで聞いた時にも強烈だったNate Smithにも期待値大の私である。燃えるぞ~。

2012年5月27日 (日)

中年音楽狂 'Was' in 大分

Photo 出張で大分を訪問した。昼はもちろん仕事ではあるが,地方出張の楽しみは地場の酒と食を楽しむことである。痛風が完治していない状態だったので,さすがに深酒とはいかないが,それでもうまいものには目がない食いしん坊,中年音楽狂である。今回の狙い目は城下カレイ。

大分は海産物には非常に恵まれているが,冬がふぐなら,夏はこの城下カレイである。食べ方はほぼふぐ同様であるが,今回は刺身をいただいた。ふぐもそうなのだが,この刺身を食する時は肝をとくのが基本である。痛風持ちにはそもそもそれだけで厳しいのだが,それでも目の前に出されたうまいものを食せずにおけない私である。

ということで,本格的には6月以降が旬だと思うが,出始めのこの時期にいただいてもそれは美味であった。ちなみにこの城下カレイ,ふぐと同じで捨てるところはないって感じで,湯引きした皮もうまいのもふぐ同様。たまにしか出張する機会はないが,やはり大分は海産物の宝庫である。ごちそうさまでした。

こんなことでは,痛風がよくなるわけもなし(爆)。

2012年5月26日 (土)

Rachael Yamagataのライブはよかった。

Rachael_yamagata 先日開催されたビルボード・ライブ東京におけるRachael Yamagataのライブに出掛けてきた。私が行ったのは21:30スタートの2ndセットである。実は当日まで行けるかどうか怪しかったのだが、何とか行けることになったので、当日になって、カジュアル・シートを予約しての参戦である。

私はこのブログでも彼女のアルバムを取り上げてきているし、結構なファンだと言ってもよいはずである。最新作"Chesapeak"は彼女がPledge Musicで資金繰りをしている際に、私も微々たる金額ながらスポンサーとなったクチであることからしてもそれはお分かり頂けると思う。

しかし,彼女のライブとなると、私が暫くライブに行くことから遠ざかっていたこともあるが、これまで縁がなかった。彼女はこれまで何度か来日しているはずだが、行きたい、行きたいとは思いつつ、その機会を逃してきたので、今回は何とか見に行きたいと思っていた。ということで、行けたことだけで満足なのだが、演奏もこれが優秀なバック・バンドにも恵まれて非常によかったと思う。編成は彼女に加えて、ギター、ベース、ドラムスにチェロという編成。チェロというのが変わっているが、彼女のアルバムでもチェロは使ってきていたからその流れの中でのバンドってことだろう。

レパートリーは新旧取り混ぜてのバランスの取れたものだったが、どの歌も聞かせどころを持ついい曲ばかりだったと思う。意外だったのはバックのメンバー、特にギターのMichael Chavezがロック・タッチを持ち込んでいたことだろう。Rachaelのアルバムにはそこはかとなくロックを感じさせる部分もあるが、今回はライブということもあり、結構激しいなぁと思わせる曲もあったからである。だが、それが悪いということではない。私はむしろ支持したいと思うような演奏であったし、バックは結構タイトな演奏を繰り広げていたのがよかった。私はチャージが結構安いので、もっと小編成かと思ったが、ちゃんとしたバンドだったのは嬉しかった。カジュアル・シートで4,500円なら完全に元を取ったと思わせてくれる内容であった。

まぁ、文句をつけようと思えば、ちょっとPAの音量がビルボードという箱に対しては過剰ではないのかとか、Rachaelのギターの腕はイマイチだとかいろいろある。しかし、私にとっては彼女の生歌が聞けただけで幸せなのである。あの声で、あの曲、特にダークな曲調を聞かされたらまいってしまうのである。

彼女には失礼ながら、以前の写真から比べると、体重は随分と増えたようにも思うが、見た目は問題ではない!あるいは東京を最後とするアジア・ツアーで爆食したのではないかとも勘繰りたくなったのも事実ではあるが、彼女の魅力はあくまでも歌なのだからいいのだ。

時が時なら、Adeleのようにバカ売れしたかもしれないにもかかわらず、彼女のポピュラリティは上がっていかないのが不思議に思えるが、このライブを聞けば、そこにいた聴衆はもっと人気が出ていいはずだと思ったのではないか。70分程度のステージではあったが、遅い時間にでも駆けつけてよかったと思えた好ライブであった。また来日することがあれば、絶対行くと思わせてくれた彼女に感謝。

2012年5月25日 (金)

本日はお休みです。

いろいろあって、記事を書いている余裕がない。仕事が忙しいのもあるが、出張続きなのもその要因。更には遅い時間にライブに行っているのでは自縄自縛って奴である。この数日は更新が滞るかもしれない。痛風はだいぶ改善しているが、今回の発作は長くて困る。まぁ、自業自得と言われればその通りだが。ということで、本日はお休みです。

2012年5月24日 (木)

入手には手間取ったが,待った甲斐もあったMarc Coplandの新作

Some_more_love_songs "Some More Love Songs" Marc Copland(Pirouet)

紆余曲折を経てようやくデリバリーされたMarc Coplandの新作である。本作もリリースしているPirouetレーベルだが,作品によって入手に時間が掛かることがあるのはどういうことなのだろう。同じCoplandの作品では"Alone"も結構苦労したが,今回も日本で発注,度重なる入荷遅れ,ついにはキャンセルを経て,結局英国から飛ばした私である。値段も安かったから文句はないが,それにしてもである。まぁいいや。

本作はタイトルからもわかる通り,2005年にリリースされた"Some Love Songs"の続編と言ってよいが,これぞCoplandに期待する美学が横溢したナイスなアルバムである。私はこのブログを始めてすぐぐらいにその"Some Love Songs"を取り上げている(記事はこちら)が,その頃は星のつけ方もややシビアで星★★★★としている。今だったら間違いなくもう半星ついているはずだが,それを考えればブログ開始当初に比べると私も甘くなったものだ。それはさておき,前作も美しいアルバムであったが,リスナーとしては同じ感覚の世界を期待するのは当然の話である。そして結果は期待通り。これぞCoplandって感じである。

"My Funny Valentine"のようにCoplandにしては意表を突いたスリリングな展開のアレンジメントもあることはあるが,基本的にはいつものCoplandの世界が炸裂している。冒頭を飾る"I Don't Know Where I Stand"はソロ・アルバム"Alone"でも演奏していたJoni Mitchellのオリジナルである。Joni Mitchell好きな私はCoplandが彼女のオリジナルを演奏してくれるだけでも嬉しくなってしまうが,この一曲だけでつかみはOKである。ここからしてたまらん世界である。"Alone"においてこの曲を聞いた時はちょっとイメージが違うかなと思ったのだが,今回,このアルバムがデリバリーされたのを契機に"Alone"も聞き直してみたらあっちもよかった(私の耳は節穴か!)。

更に意外にも思えるがCoplandはMiles絡みの曲を演奏することが多いが,ここでは"Eighty One"をやっている。Coplandの今の音楽を考えれば,Milesとの接点ってのはあまり感じられないのだが,それでもやはり影響は受けてるってことなんだろうねぇ。ある意味さすがMilesってところもあるように思ってしまうが,ここでもCopland流に咀嚼したいい感じの演奏になっている。

いずれにしても,全編を通じて,やはりこれは満足度が高い。今でも私にとってのCoplandの最高傑作は"Haunted Heart and Other Ballads"であることには変わりはないが,いつでもポイントの高いアルバムを出してくれる人だと思う。まさに信用できるミュージシャンである(但し編成はトリオ以下に限るが...)。星★★★★☆。

Recorded on October 12 & 13, 2010

Personnel: Marc Copland(p), Drew Gress(b), Jochen Rueckert(ds)

2012年5月23日 (水)

Jimmy Herringってのはよくわからんギタリストだが,かっこいい。でもアルバムとしては課題もありだな。

Jimmy_herring "Lifeboat" Jimmy Herring(Abstract Logix)

Jimmy Herringという人はよくわからない人である。一般的にはジャム・バンド系のギタリストだと考えられているようだが,それはGreatful Deadの残党その他から成るThe Deadに参加したり,Jazz Is Deadなんてバンドに参加したことがその所以だろう。また,この人,相当いろいろなバンドに神出鬼没に参加していて,その本質は実はよくわからない人である。

しかし,このブログでも取り上げたAbstract Logixのフェスティバルのライブ盤でも演奏していて,実は相当にカッコいい演奏をそこでも聞かせていた。だがその風貌はある意味哲学者のようでもあり,こんなオッサンがなんでこんなギターを弾いとるんじゃと思われてもしかたがないところがあったのも事実である。本作はそのJimmy Herringの現在のところ唯一の単独リーダー作のはずである。

私がこの作品を購入する気になったのはバックにDerek Trucks Bandのメンバーが参加しているだけでなく,Derek Trucks本人も目立たないながら客演していることにあった。なんでこういうことになるのかと言えば,Herringは確かにDerek Trucks Bandに客演した経験もあるし,ほんの一瞬,Allman Brothers Bandにもいたからという縁にもよるものだろうが,それにしても不思議なメンツである。

それはさておいても,冒頭からかなりハイブラウな演奏が展開されていて,ハード・フュージョン好きはそれで膝を乗り出すはずだ。特にアルバム前半はそういうトーンなのでかなり楽しめるだろう。だが,途中で「ジャングル・ブック序曲」が出てきて様子がおかしくなる。この選曲はアルバムとしての流れを寸断し,完全に浮いている。正直言ってこの一曲だけで冷めてしまう私である。

その後に続く曲にはGreg Osbyが客演しているのだが,Osbyが入ることによるシナジーが効いておらず,このあたりにはプロダクションの不備を強く感じてしまう。初の単独リーダー作ということもあり,プロデューサーを兼ねるHerringが自身のいろいろな側面を示そうとしたということなのかもしれないが,曲調もHerringに合っているとは思えないのである。ましてやOsbyが入っているのだったらもう少し尖った演奏をしてもよかったはずである。その辺りに作品としての中途半端さを感じさせるもったいなさ。いずれにしても諸悪の根源は「ジャングル・ブック序曲」。もう少し考えて欲しかったと思うのは私だけではないだろう。前半に免じて星★★★。これを聞くよりも前述のライブ盤のHerringの出番を聞いている方がずっとまし。う~む。Herringには後半に頻出するジャズ的なアプローチよりロック・タッチの方がはるかに似合っている。

Personnel: Jimmy Herring(g), Oteil Burbridge(b), Jeff Sipe(ds), Kofi Burbridge(p, fl), Greg Osby(as, ss), Matt Slocum(key, p, org), Derek Trucks(g), Ike Stubblefield(org), Tyler Greenwell(ds), Scott Kinsey(org), Bobby Lee Rogers(g)

2012年5月22日 (火)

いくらGeorgeが好きでもさすがにこれだけでは...

George_harrison "Early Takes Volume 1" George Harrison (Hip-O)

私はかねてからこのブログでも書いているが,The BeatlesではJohn LennonとGeorge Harrsion派である。特にGeorgeが一番好きだと言ってもいいぐらいだから,こういう音源が出れば,それは基本的に買ってしまう。だが待てよ,この音源はバカ高いDVDのプレミアム・ボックスに付帯していたものではなかったか?さすがに16,800円という値段がネックとなって,私はそちらには手を出していないが,手を出さずに正解であった。だって,私の本作の買い値は1,000円ちょっとである。ボックスをお買い上げの皆さんにはお生憎さまと言わざるをえないが,確かにひどい便乗商法ではないか。だからそんな商法を取る角川書店というのはひどい会社だと思われるのだ。

それはさておき,これはGeorge Harrisonのデモ・バージョンや別テイクを集めたものであり,結構生々しいかたちのテイクが収められていて,ファンにとってはそれなりに楽しめるものとなっているとは思う。だが,所詮はデモ音源であるから,アレンジメントも極めてラフであるし,完成系に近い別テイクと言っていいのは"I'd Have You Any Time"ぐらいであり,これはやはり素人が手を出すべきものではないだろう。このレベルの音源をオマケとしてつけるだけで,16,800円という値付けをする角川は極悪商人と言わざるをえない。

もちろん,こんな感じでGeorgeのレコーディングは進められ,徐々に完成に近づいて行ったのだろうと想像をめぐらす楽しみはあるかもしれないが,別に何度も聞きたくなるような音源ではない。これを聞いている暇があるのであれば,ちゃんとしたアルバム・ヴァージョンを聞けばいいのである。よって,これは記録としての評価はできても,音楽としての評価はしたくない。まぁVolume 1となっているので,続編が出ればきっと買ってしまうとは思いつつ,一般のオーディエンスにはこれに金を掛けるなら,ちゃんとした正式バージョンのアルバムを買いなさいと言っておこう。

こういうのを出すのもいいが,それだったらSplinterとかAttuitudesやらをCD化して欲しいもんだ。

2012年5月21日 (月)

何だかなぁ~のSantanaの新作

Shape_shifter "Shape Shifter" Santana(Starfaith)

Santanaの新譜はインスト・アルバムということでそれなりに期待していた私である。私は何だかんだと言って,Santanaの音楽は好きだし,アルバムについても結構保有している。もちろん,Santanaの音楽に求めるところはリスナーそれぞれだったとしても,哀愁を感じさせながらも情熱的なギター・ソロを聞きたいと思う人は結構多いはずである。

だが,この新作を聞いていると,どうも私にはSantanaらしさが感じられないのである。冒頭のタイトル・トラックから不思議な出だしで,これはどうなるのかと思わせつつ,曲は今イチながらも相応のロック的な感覚を生み出すのはまぁよい。しかし,その後がよろしくない。これはアコースティック・ギターを結構使っていることにもよるかもしれないが,それにしてもである。ようやく終盤のいかにもSantanaらしい12曲目"Canela"に至って,この感覚がなぜもっと前面に出なかったのかと感じてしまった私である。祝祭的なところも,官能的なところもあまりないのでは,Santanaの音楽に求める要素がなさ過ぎるではないか。かつ,曲のクォリティにも大いに疑問を感じる。

もちろん,音楽に新機軸を持ち込むことは時として必要だが,このアルバムを聞いていて思ったのは,Richie Blackmoreが"Blackmore's Night"のアルバムを出した時の違和感に近いものを感じるということだ。求めているものと違うのだ。もちろん,これまでは企画モノのような音源が続いていたSantanaであるから,逆にこれが彼の本音なのかもしれないのだが,アルバムを通して聞いていてもずっとそうした違和感が続いてしまうのはやはり厳しい。メロディ・ラインもなんだかスムーズ・ジャズと言っても通ってしまいそうな感じの演奏もあるしなぁ。ミュージシャンの思惑とリスナーの期待がすれ違うと言うべきだろう。一部激しくやっている曲もあるものの,そうした感覚が続かないのではちょっと寂しい。

結局のところ,この演奏であれば,Dennis Chambersがドラムスを叩く必要はないだろうと思えるし,私には今後も続けて出るらしいインスト・アルバムを改めて購入する意欲はこれでは湧かない。まぁ,こういうこともあるのは勉強だと思えばいいのだが,それにしてもこれは緩過ぎた。星★★。アルバム・タイトルでもある"Shape Shifter"とは様々な姿に変化する妖怪のことでもあるが,多様な姿への変身を見せたかったということなのかもしれないが,収録されている曲は確かに多様であっても,繰り返すがこれは私の求めるものではない。

尚,アルバムのブックレットには参加ミュージシャンの記述が見当たらないが,Wikipedia等によれば,次の通りらしい。

Personnel: Carlos Santana(g), Chester Thompson(key), Salvador Santana(key), Benny Rietveld(b), Dennis Chambers(ds), Paul Rekow(perc), Karl Perazzo(perc), Andy Vargas(vo), Tony Lindsay(vo)

2012年5月20日 (日)

Wayne Krantzファンへの耳より情報

Wayne_krantz_iridium Wayne Krantzの新作"Howie 61"は若干微妙と言うべき作品だった(記事はこちら)が,そこにも書いたようにKrantzには「アルバムはアルバム,ライブはライブという割り切りがあるのではないか」という私の考えを確認するには,このアルバムの発売ライブがIridiumでの演奏の模様を確認してみる必要があると思っていた。

そこに突如現れたのが4/15のWayne Krantz / Kieth Carlock / Tim Lefebvreという顔ぶれによるライブの模様のダウンロード音源である。新作もリリースしたAbstract Logixのサイトで購入可能な音源であるが,約80分のライブの模様が10ドルで購入できる。まだ全部聞いていないのだが,冒頭から展開される演奏は明らかにアルバムのテイストとは異なるいかにもKrantzらしい演奏なのだ。レビューについては追ってアップすることにしたいが,ちょっと聞いただけでも,「これよ,これよ,これなのよ」って感じの音である。やっぱりこっちが本音なのではないか。

ライブ・セット全体が1本のmp3(192kbps)に格納されているので,曲目等のクレジットは一切ないが,それもいかにもKrantzらしいってことで。いずれにしてもWayne Krantzファンは必聴の音源である。たまりません。

2012年5月19日 (土)

追悼,Chuck Brown

Chuck_brown 既にTwitterではつぶやいたが,5/16に"Godfather of Go-Go"ことChuck Brownが亡くなった。あの強烈なライブにもう触れることができないのは誠に残念である。

私は幸い,彼のライブを二回見ている。一度はバブル期に芝浦インクスティック(だったはず),二度目は7〜8年前のNYC出張中に、現地のライブハウス(場所からするとこれまたVillage Undergroundだったはず)においてである。後者についてはまさにたまたまであり,狭い小屋で彼らのライブを見られたのはまさに僥倖であった。

私がChuck Brownの音楽に初めて接したのはFM放送(「ゴールデン・ライブ・ステージ」だったかな…)でのライブ音源だったのだが,コール&レスポンスを多用したGo-Goビートに参ってしまったのを今でもよく覚えている。Go-Goそのものはソウル,ファンク,ジャズをごちゃまぜにしたような音楽であるが,そこではコール&レスポンスがノリの重要な要素を果たしているように思う。ライブにおいては,本来はバンドのコール&レスポンスであるものにオーディエンスが参加するってことになるので,聴衆は踊り狂うだけでなく,時として歌い狂う(笑)必要が出てくる。Brownのライブに行ったことがある人ならわかるはずだが,この掛け合いが無茶苦茶楽しいのである。そして彼らのライブは長い。3時間は当たり前。バンドも体力が必要なら,聴衆も体力が求められるわけだ。だからNYCで見た時は私は水分補給のため,ウイスキーだかジン・トニックだかを飲みまくっていた(爆)。

それはさておきである。Chuck Brownの音楽はそういう音楽であるから,ライブでこそその魅力を発揮する。スタジオ盤が悪いというのではないが,ライブに勝るものはないのである。だからこそ私としてもライブ盤(またはライブ音源)を聞いて盛り上がるというのが,彼にとっての追悼になると思うのである。アルバムであればほぼライブ盤と言ってよい"Any Other Way to Go"ということになるだろうが,アメリカの公共ラジオ・ネットワークに"Tiny Desk Concert"というプログラムがあり,そこでChuck Brownの2010年9月のスタジオ・ライブの模様がダウンロードできる(詳しくはこちら)。これは時間も30分弱と短く,Brownにしてはやや地味だが,やっぱりChuck Brownだっていう演奏をしている。

本当に"Godfather of Go-Go"という呼び名が相応しいタフなオヤジであった。R.I.P.

2012年5月18日 (金)

出来のいいピアノ・トリオだが,ECM色は希薄なSteve Kuhnの新譜。でもこれはよい。

Wisteria "Wisteria" Steve Kuhn(ECM)

ECMレーベルのSteve Kuhnのアルバムにはいいものが多く,Joe Lovanoとやった"Mostly Coltrane"も最高な作品だったと思う。そんなKuhnのECMからの新譜だから期待するのが人情。しかもSwallow~Baronとのトリオならおかしなことになるわけがない(きっぱり)。今回のアルバムは3者の名前が並列して書いてあるから,Kuhnのリーダー作であるが,この3者のコラボレーションというところへのこだわりがあるのかもしれないが,やはりこれはいいと思う。

主題にも書いた通り,ECMレーベル色はそれ程濃厚ではない。むしろ希薄と言っていいぐらいに適度にスインギーさも持ち合わせたピアノ・トリオ作となっている。冒頭のイントロこそECMっぽく幕を開けるが,そうしたトーンは継続しない。Swallowがいつも通りエレクトリック・ベースを引いていることがその要因ではなく,アルバム全体としてそういう感じなのだ。だが,ECMというレーベル・カラーにこだわりをもたなければ,これは美しくも楽しいアルバムである。

また,選曲の妙にも触れておく必要がある。Kuhn,Swallowの優れたオリジナルに加え,"Romance"はDori Caimi,"Permanent Wave"はCarla Bley,そしてタイトル・トラックはArt Farmerの作品である。"Romance"や"Wisteria"に特に強く感じられる彼らの美学にはやはりまいってしまう。これらの曲を選ぶにはそれなりの理由があるのだと強く感じさせる出来なのだ。

もちろん,Swallowのエレクトリック・ベースに違和感をおぼえるリスナーもいるかもしれないが,KuhnとSwallowの長年の共演を聞いてきている私としてはこれでいいのだ(バカボンのパパかっ!)。そうでなければ,このアルバムをこれほどリピートして聞きたいと思わないだろうし,聞くたびに別のタイミングで「おぉっ,いいじゃん」と唸ってしまうこともなかろう。いずれにしてもとても3人併せて200歳を越える人たちが作ったとは思えない創造力と美しさだと言っておこう。しびれるような緊張感はないが,これは多くの人が楽しめるアルバムであることは間違いない。星★★★★☆。本当に大した(老)人たちである。

Recorded in September 2011

Personnel: Steve Kuhn(p), Steve Swallow(b), Joey Baron(ds)

2012年5月17日 (木)

水戸にて食した凄いボリュームのそば

Photo 最近,仕事で水戸に出張する機会が多い私である。私は会社に入って最初の2年間,勝田市(現ひたちなか市)で仕事をしていたので,水戸は懐かしい街である。たった2年間ではあったが,完璧な茨城弁の使い手となって東京に戻ったことからしても,愛着がある証拠であろう。私は関西人ではあるが,今なら関西弁よりも間違いなく茨城弁の方がうまいはずだ(爆)。ついつい,水戸に行くとアクセントが変わってしまうのである。

それはさておきだが,水戸は日帰り圏なので,なかなか夜に現地の食を楽しむことは少ないのだが,今回は昼食でいただいた超弩級ボリュームのけんちんそばである。水戸と言えば「水戸黄門」だが,実はこのそばをいただいたのが「黄門そば」というお店である。営業は11時から14時までの3時間しかやっていないというのが潔いが,今回お邪魔した際には12:30過ぎにはそばが売り切れるという「人気店」である。なぜか?

写真のそばのボリュームを見て頂ければおわかりになるであろう。このボリューム(大盛だが...)で800円である。見ただけでお腹がいっぱいになってしまうような量だが,実際に食していてもなかなかそばが減らない。量という観点でのコスト・パフォーマンスを考えれば,ここを訪れる人が結構いることも納得いくだろう。それにしても凄い量であった。これでけんちんのお代り自由って,そんな奴がいるのだろうか?と一人ごちた私であった。もう暫くそばはいいかなぁみたいな感じである(嘘)。それにしてもびっくりした。だが,我ながらよく食うなぁ。だからメタボなのだ(爆)

また,甚だ余談ながら,出張中から左足に痛みが出てきて,東京に戻った頃には鈍痛に...。これは間違いなく痛風発作だろう。憂鬱になってきた。こんな大盛食ってる場合ではないのだ(反省)。

2012年5月16日 (水)

辻褄合わせに過ぎない「エス」

Photo 「エス」 鈴木光司(角川書店)

ゲリラ・プロモーション等を通じて「貞子3D」が話題になる中,その原作として出版されたのがこの本である。鈴木光司については「エッジ」をこのブログで酷評したことがある(記事はこちら)が,今回は久々の「リング」シリーズだけにまぁ読んでみるかということで手に取ったがこれがやはり失敗であった。

「野生時代」に掲載された1章,2章はそれなりの不可思議感もあって,結構期待しながら読んでいたのだが,今回この本のために書き下ろされた3章,4章でこの人の悪い癖である「説明的」な展開に堕してしまうのである。これでは何のこっちゃにしかならないし,肝腎の貞子の出番が...って感じなのでは,これを映画の原作としていいのかとも言いたくなる。映画の方は未見だが,あれはどう考えても山村貞子のキャラが前面に打ち出されていることを考えると,映画とは明らかに違う。

ビデオ・テープの時代から,PCにおける画像の世界へと変容するというのはよかったのだが,この辻褄合わせに過ぎないストーリーは,あの超愚作「ループ」と同じような感覚を覚えさせる。これこそデジャブではないか。ということで,この作品で鈴木光司を完全に見限った。「エッジ」でやめておけばよかったのだが,まんまとメディア・ミックスにやられた私である。星★。もう彼の本を買うことは金輪際ないと言い切っておこう。最悪。

2012年5月15日 (火)

抱腹絶倒とはいかなくてもクスクスできる「テルマエ・ロマエ」

Photo 「テルマエ・ロマエ」('12,東宝)

監督:武内英樹

出演:阿部寛,上戸彩,北村一輝,市村正親,宍戸開,竹内力,笹野高史

ヤマザキマリの原作は読んだことはないが,何となく笑いたいという感覚もあって見に行ったのがこの映画である。主題にも書いたとおり,抱腹絶倒まではいかないが,全編に渡ってクスクスしながら見られる映画である。

まぁ,ケチをつけようと思えばいくらでもつけられる(少なくとも話や時間軸は相当に無茶苦茶)が,こういう映画はバカバカしさを楽しめばいいのだという感じである。CMとのタイアップなど,メディア・ミックスも功を奏して,私が見た時は満席というヒットぶりであるから,こうしたバカバカしい笑いを求めている人が結構多いということだろうか。メディア・ミックスあるいはプロモーションという観点では「貞子3D」もなかなか強烈だが,今年を振り返るとき,この2本の映画の宣伝ぶりが思い出されるかもしれないと思えてしまった。

それにしても,ローマ人に扮する役者陣の顔の濃さには実際に笑えるが,「平たい顔族」との落差がでか過ぎである。それを見ているだけでも可笑しいのである。世の中の憂さを暫く忘れて笑っていられる映画って貴重だなぁとも思う。ということで,点数も甘くなり半星オマケで星★★★☆。これだけヒットすると,続編もありかねぇ...。

2012年5月14日 (月)

久々にAndy Summers & Robert Frippを聞く

I_advance_masked "I Advance Masked" Andy Summers & Robert Fripp(A&M)

私はKing Crimsonのそこそこのファンであり,Policeも人並みには聞いているという感じのリスナーである。その両バンドのギタリスト共演と言うことになれば,間違いなくFrippの方に関心が向くということになるのだが,その一方で,ジャズ/フュージョン色を濃厚にしたAndy Summersのソロ・アルバムも結構好きなのも事実である(彼の"World Gone Strange"に関する記事はこちら)。

このアルバムは私の記憶が確かならば米国在住中に購入したものだと思うが,その頃からCrimsonみたいだなぁという印象が強かったが,それはそれから20年を経過した今でも大きな変化はない。いかにもFrippらしいフレーズが出てきたり,1980年代初頭のCrimsonのやっていた音楽との同質性は強いと思う。だからと言って,Summersの個性が出ていないということでもなく,両者の「共演」アルバムとしては実はよくできているのではないかと思えてしまうのである。

もちろん聞いていて無茶苦茶興奮するというタイプの音楽でもないし,繰り返し繰り返し聞きたくなるタイプの音楽でないことも確かである。しかし,ギタリストとしては目の付けどころ多数と感じられるアルバムであることは間違いなく,スリリングな展開とアンビエント的な展開が混在して,私は飽きることなく聞けてしまうタイプの音楽である。当時のCrimsonがAdrian Belewのヴォーカルが目立ち過ぎの部分がなかったわけではないと感じるリスナーは,オール・インストのこのアルバムではFrippのギターに集中できるということにもなるかもしれない。

いずれにしても,Andy Summersはこの後,John Etheridgeとのアコースティック・ギターのデュオ・アルバムも出しているが,それとは全く違う音楽となっているのはやはりFrippの影響だろうねぇ。結局はFripp色濃厚なのだ。まぁ,後半に進むにつれて,結構鑑賞音楽としては厳しい展開になっていく(苦笑)が,ファンとしてはそれはそれで問題なしってことで星★★★★。

しかし,こんなもんのPVを作るってのも凄いことだ。まさに何じゃこりゃの世界だが,笑えるので画像も貼り付けてしまおう。これを見てAndy SummersがFrippより4歳年長と言うのは信じ難い。ちなみにSummersは今年古希を迎える...。

Personnel: Andy Summers(g, g-synth, synth, b, perc), Robert Fripp(g, g-synth, synth, b, perc)

2012年5月13日 (日)

追悼,Donald "Duck" Dunn

Donald_duck_dunn 驚いた。昨日まで東京でライブをやっていたDonald "Duck" Dunnが滞在中のホテルで亡くなっているのを発見されたそうである。よりによって東京での客死,それも昨日のライブをこなした後の突然の逝去には言葉もない。

昨日,ブルーノート東京に行っていた聴衆は彼の最後の雄姿を見たということで,歴史の目撃者になってしまったわけだが,それにしてもこれこそ青天の霹靂。さぞや今回一緒に来日したEddie FloydもSteve Cropperもショックを受けていることだろう。

何はなくともご冥福をお祈りしたい。R.I.P.

Alex SipiaginのArtistShare盤の嬉しいオマケ

Alex_sipiagin_live_at_birs_eye001 Alex SipiaginはCriss Crossから快作を連発していて,今,コンテンポラリーでスリリングなラッパを聞きたいなら彼に限るって感じがしている。そんな彼がArtsitShareから"Live at Bird's Eye"(画像は同作のもの)というライブ盤をリリースしていることはご存知の方もいらっしゃるだろう。

私も先日,遅ればせながらこのアルバムを入手したのだが,これをArtistShareのサイトから購入すると約70分の未発表ライブ音源のダウンロードができるようになっている。これがSipiaginのワンホーン・クァルテットということで,バリバリ吹きまくるSipiaginが聞けてファンは必聴って感じである。ArtsitShareはクリポタの"Ultrahang"にもオマケ2曲のダウンロードを付けていたりして見逃せないのである。

ちなみに日本にもこのSipiaginのCDは入ってきたことはあるにはあるようだが,このダウンロード権がどうなっていたのかは謎である。まぁ,ArtsitShareのサイトで簡単に購入できるから全然問題ないが,こういう音源を見逃すのはもったいなさ過ぎる。ということで,ファンの方はArtsitShareのサイトで購入しましょう。ちなみにデータは下記の通り。収録場所はローマのようである。

尚,ここにも収められているPat Metheny作の2曲がどういう経緯で提供されたのかはAlex Sipiaginのサイト(奥方,マンデイ満ちるが書いたアルバム"Returning"のライナー・ノート)に説明されている。これを読むとPatっていい奴だよなぁなんて思ってしまう。ご関心のある方はこちらをどうぞ。

Recorded Live at Villa Cellimontana, on July 16, 2006

Personnel: Alex Sipiagin(tp), Henry Hey(p, key), Dario Deidda(b), Gene Jackson(ds)

2012年5月12日 (土)

Keithの"I Loves You, Porgy"に思わず落涙した私

Keith_solo Keith Jarrettが5/11のソロ公演のアンコールで弾いた"I Loves You, Porgy"があまりに美しく,思わず涙がこぼれてしまった私である。総じてスローな曲で見せた美的な感覚は,近年稀に見るものだったと思うが,その白眉がこの"Porgy"であった。感動した。

画像は昨年のものだが,今回もこんな感じ。

2012年5月11日 (金)

Smalls Liveシリーズに私の行ったLage Lund登場!

Lage_lund_four "Live at Smalls" Lage Lund Four (Smalls Live)

私がNYCのSmallsを訪れたのは昨年のGW中の出張時だったが,その時にも報告したSmallsにおけるLage Lundのライブ音源がリリースされた。その時の様子はこちらに詳しいが,自分が行ったライブの音源がリリースされるってのは何となく嬉しいもんだよねぇ。ということで,音はこれから聞くが,去年の様子を思い出しながら楽しむこととしたい。

尚,Smalls Liveのシリーズと言えば,ペラペラのジャケと相場が決まっていたが,今回はゲートフォールド型(ダブル・ジャケット)になっていてビックリ。多少余裕ができたってことか?(笑)。

2012年5月10日 (木)

音は悪いがリアルなBrand Xが聞ける"Live at the Roxy"

Brand_x_roxy "Live at the Roxy LA" Brand X (Zok)

私は何だかんだと言って,Brand Xというバンドが結構好きな方だと思っている。"Livestock"なんてやっぱり最高のジャズ・ロックだよねぇと今でも感じるし,やはりいいアルバムである(記事はこちら)。

そんな彼らの米国における"Product"期のライブの模様を収めたアルバムであるが,ジャケからして怪しげで胡散臭げである(笑)。見てもお分かりの通り,ブート臭プンプンではあるが,マイナー・レーベルからとは言え,正真正銘の公式リリースである。Robin Lamleyのライナーによれば,彼らはライブ音源をせっせと録りためていたらしいのだが,ほとんど消失してしまったらしい。そんな中でたまたま生き残ったテープをソースとする音源とのことだが,正式なレコーディングを目的としてはいないので,音は大したことはない(と言うより,ブートの方が音がよい場合もあると思えるような音)。しかし,Brand Xというバンドのライブはこんな感じだったんだねぇと理解することができる音源となっている。

バンドとしては名人級の腕を持つ人たちばかりであるから,テンションは強烈である。これはやはり燃えてしまう音源だと言えるが,それにしてもPercy Jonesのベースは異常。Phil Collinsのドラマーとしての腕も異常。いやいやまじでうまいのである。

そうした中でアルバム"Product"にも収められているヴォーカル入りの"Don't Make Waves"が明らかにほかと違う感じを持っていて浮いている。なんだかPhil CollinsがPhillip Baileyとやった"Easy Lover"さえ想起させるようなポップな感覚を持っていて,これがGoodsallの作曲と言うのがにわかには信じ難いが,結局,Brand Xと言うバンドは売れなかったために,こういう打開策みたいな曲も必要だったのかなぁなんて思わざるをえない。

そうは言いながらも,それを除けば(と言っても嫌いなわけではない)相当ハイブラウな演奏群であり,これはこれでやはり楽しめてしまった私である。やっぱりいいバンドだよねぇ。星★★★★。

Recorded Live at the Roxy Theater on September 23, 1979

Personnel: Phil Collins(ds, vo), Robin Lamley(key), John Goodsall(g, vo), Percy Jones(b), Peter Robinson(key)

2012年5月 9日 (水)

今頃になって"Burn"をアルバムで聞く

Burn_30th_anniversary "Burn(30th Anniversary Edition)" Deep Purple (EMI)

このブログでも既に書いた通り,Deep Purpleというバンドは私の洋楽の原体験においてかなり重要な位置づけにある。特に"Made in Japan"の影響は大きいのだが,実のところ,それは音楽としては若干ながら後追いということになる。よって,私がチャート・アクション含めてリアルタイムでPurpleの音楽に意識して接したのは「紫の炎」が最初ってことになるように思う。日本ではシングル・カットされたのがこのタイトル・トラック"Burn"だったわけだが,本当に小学校卒業するか,中学校に入り立ての私にとって,これほどカッコいいと思える音楽はなかったと言っても過言ではないぐらいこの曲には痺れていた。これぞクラシック,あるいは完全無欠のハードロックだと思った。

それぐらい好きならアルバムを買えばよさそうなものだが,私がステレオ装置を買う(正確には「買ってもらう」だが...)のはもう少し後のことであり,まだこの当時はFMに依存していた頃である。そして私が自分でLPを買う頃の年齢になると私はもはやプログレに走りつつあったため,このアルバムについては結局聞かずじまいのまま時間が経過したのである。それを50を過ぎた今頃になって聞いてみようと思うのだから私も物好きと言われれば一言もないが,とにかく聞きたいと思ったから聞いただけの話である。

このアルバムのポイントはヴォーカルがIan GillanからDavid Coverdaleに代わり,ベースがRoger GloverからヴォーカルもいけているGlen Hughesに交代した影響がどの程度あるかというところに尽きると思う。まぁ私はWhitesnakeも好きだったりして,Coverdaleには全く抵抗がないこともあるし,あの"Burn"もあるからまぁ大丈夫だろうとは思っていた。しかし,これが想像以上にPurpleというバンドに変化をもたらしていたことに今更ながら気づかされたのである。ある意味正調Deep Purple的ハードロックは"Burn"だけであり,その他の曲はブギーっぽさやファンク風味が感じられるのが,Purpleの従来のイメージと明らかに違う。だが,それが失敗かと言えば,これは新機軸としてありだろうと思わせるのである。おそらく往時にはこのイメージの変化に戸惑ったリスナーも多いのではないかと思えるのだが,今にして思えば私にはこのメンバー・チェンジは悪くなかったと思える。それによって,Richie Blackmoreのギターも従来とは違って聞こえてくるから不思議なものである。

ということで,タイトル・トラックはそれこそ何度聞いたかわからないこの作品をアルバムとして聞いてみたら,結構いけていたというまさしく「温故知新」と言うべきものであった。私はこの路線は今更ではあるが支持したい。星★★★★☆。でも最高なのは誰がどう言ってもタイトル・トラックだが...。

Personnel: David Coverdale(vo), Richie Blackmore(g), Jon Lord(key), Glen Hughes(b,vo), Ian Paice(ds)

2012年5月 8日 (火)

B級映画もここまで行くと笑える:「吸血鬼ゴケミドロ」

Photo 「吸血鬼ゴケミドロ」('68,松竹)

監督:佐藤肇

出演:吉田輝男,佐藤友美,高英男,北村英三,高橋昌也,金子信雄,楠侑子

GW中にたまりにたまったDVDを見ようと思っていたのだが,あいにく体調を崩し,結局見たのはこれだけという体たらくである。この映画はブログのお知り合い,crissさんが昔見たイメージを記されていて,その内容からこの映画のタイトルを調べるお手伝いをさせて頂いたのだが,調べていて「へぇ~」と思うこともあったし,丁度DVDが廉価での再発にもなるということで買っておいたものである。

単純に言えば地球侵略ものの映画である。しかし,侵略ものとは言え、「ボディスナッチャー/恐怖の街」(この映画の記事はこちら)のような痺れるような恐怖はない。また,SFホラーと言いながら,ちっとも怖くないってのはいかんともしがたいのだが,それでもこれは高英男の怪演もあって,なかなか面白い。というよりバカバカしさが何とも言えず面白いのである。

映画そのものも時代感を反映してか,暗いストーリーが展開されるのだが,そこにはかなり無理があるのはご愛嬌ってところか。佐藤友美は崖下を逃亡したりしながらも,最後まで綺麗なままだし...。ということで,映画としては突っ込みどころ満載なのだが,いずれにしても,メッセージとしては反戦,あるいは厭戦的って感じか。そうした中で展開されるシーンは特撮はしょぼい(見ればわかるが,人形使いはまさに笑える。今なら絶対CGでもっとえげつない描写になるだろう)し,シナリオは同じようなシークェンスの繰り返しが多いということで,映画としては結局はB級そのものって感じである。だが,そうした中にもメッセージを無理やりにでも込めようというところに気概も感じてしまう私であった。

いずれにしても,こういう映画は理屈をこねずに,時代を肌で感じればいいというような映画だと思う。つけようと思えばつけられるが,こういう映画に星をつけることにはほとんど意味はなかろう。まぁある意味でのカルト映画なのだから...。Quentin Tarantinoがこの映画のファンだってことがその証左である。

それにしても凄いポスターだ。これも結構笑える。ポスターにはあたかも裸の美女に噛みつくような様子が書かれているが,映画にはこんなシーンは出てこない。ちょっとしたセクシー感で集客を図ろうという意図が感じられて涙ぐましいねぇ(笑)。そもそもこのポスターを見てこの映画を見たいと思った人間はどれぐらいいたのやら...。まぁこれも時代ってことで。

2012年5月 7日 (月)

Wes MontgomeryのA&M3部作を続けて聞く

Wes_montgomery_a_day_in_the_life "A Day in the Life","Down Here on the Ground","Road Song" Wes Montgomery (A&M)

Wes Montgomeryが亡くなる前にA&Mレーベルに吹き込んだアルバムは商業的な成功は収めつつも,ジャズ的なスリルは希薄になってしまったということで,ジャズ・ファンの間での評価ははっきり言って低いだろう。今回,GW中に部屋の片づけをしながら,この3部作を続けて聞いたのだが,これらを聞くこと自体が物凄く久しぶりのことだった。

Down_here_on_the_ground 私がジャズを聞き始めた頃には"A Day in the Life"をよく聞いていて,それこそ今でもほとんどのソロが歌えてしまうぐらいよく聞いていた。そのほかの2作はジャズ喫茶では聞いたことがあったが,Don Sebeskyのアレンジがしょぼいというか,作品を追うごとにイージー・リスニング化していき,全く馴染めないという印象だった。今回,音源を久々に聞いてみて,そうした印象に大きな変化はないのだが,"A Day in the Life"はまだまだジャズ的な感覚が残っていたのだなぁと思わされた。Wesもまだまだブルージーな感覚を残している。あとの2枚のアルバムでもDon Sebeskyのアレンジが絡んでこない限りはジャズ的にも聞こえるのに,オーケストレーションが加わっただけで途端に雰囲気が変わってしまうのが痛い。

Road_song まぁ,これはあくまでもジャズのすそ野を広げるとともに,Wesには膨大な印税収入をもたらしたということになるだろうが,"Full House"や"The Incredible Guitar"との落差は確かに大きい。しかし,WesにはA&M以前のアルバムからこうしたイージー・リスニング的な指向は表れていたようにも思うので,彼の意図に反してこれらのアルバムが制作されたとは言えないように思う。だから聞き手がどう思おうが,Wesには知ったことではなかったのかもしれない。その一方で,ほぼ全編を通じてオクターブ奏法を聞かされ続けると,さすがに3枚続くと飽きてくるもの事実である。もちろん,これらの3枚を続けて聞く物好きはそれほどいないだろうから,単体で聞く限りはそうでもないだろうが,それにしてもである。

いずれにしても作を追うごとにジャズ的な高揚感も低下していくように思えるこの3作であるが,だからと言って批判するならばやはり聞いてからでなければならないし,続けて聞けば上述の通り,"A Day in the Life"がいかにまだまだジャズ的だったかがはっきり分かるというものである。更に言えば,"Road Song"は緩過ぎるのである。ということで,作品としての出来も新しくなる毎に落ちていくが,それでもこれはこれでも誰が聞いてもWesの音楽であるということは認めなければならないとともに,聞いていて今まで意識していなかったバックのサウンドが聞こえたりして,面白い部分もあった。

暇にまかせての聞き方ではあったが,たまにはこういうのもあっていいと思った連続聞きであった。まぁそうは言ってもイージー・リスニングはイージー・リスニングなので,本当にお気楽なものではあるが...。そして"Full House"に帰っていく私である(笑)。

2012年5月 6日 (日)

濃い~メンツが濃い~ゲストを迎えた"3+3"だが...

33 "3+3" Romano Sclavis Texier(Label Bleu)

これは好き者にとっては相当の話題作と言ってよいのではないかと思わせる作品である。主役の3人でさえ濃いメンツと思われるところに,迎えるゲストがEnrico Rava,Nguyen Le,そしてBojan Zである。そして作品も題して"3+3"では一体どうなってしまうのかと思うのが人情である。

まぁ"3+3"とは言っても,冒頭は全員の演奏で始まるが,全編セクステットでやっているわけではなく,基本的には主役3人に残り3人のうちの誰かが加わるという形態である。1曲目の"Vents Qui Parlent"から相当激しくやっているが,特にLeのロック・タッチのギターが強烈。まぁRomanoの叩く8ビートはどうもドタドタ感が強くてどうなのよって気がしないでもないが,やはりこれだけのメンツが揃うと圧巻である。

2曲目のRavaのオリジナル"Ravages"は一転してフリー的なアプローチで,私は彼らにはこういうアプローチがいいのではないかと思ってしまう。3曲目のLeオリジナル"Idoma"はソウル/レア・グルーブ的なリズムとRomanoの相性が今イチに感じられるだけに特にそういう思いを強くしてしまう。演奏はスリリングなだけに,どうも1曲目同様にRomanoのドラムスの違和感があるのだ。そして4曲目はまたまたフリー的なアプローチへ転じ,5曲目のBojan Zオリジナルではチェンバー・ミュージック的な感覚から王道ジャズ的な感覚へって感じで,アルバムを聞いていて何だか山あり谷あり感が強い。こう言っては何だが,ゲストが参加しないで,主役3人でやっている演奏の方がいいと思えてしまうのだ。その感覚は6曲目の"Rituel A Trois"で確信に変わる。これこそスリルって感じの演奏ではないか。

全編を通じてそんな感じであり,どうもゲストが加わったことによるシナジーがあまり感じられないのが残念である。メンツによる期待値が大きいだけに,もう少しできたのではないかと思わざるをえない一作。演奏全体の水準は高いと思うが,Romanoには8ビートは似合わないことが如実に明らかになったこともあり,私としては今一歩評価できない残念作。星★★★。惜しいねぇ。

Recorded in June 2011

Personnel: Aldo Romano(ds), Louis Scravis(cl, sax), Henri Texier(b), Enrico Rava(tp), Nguyen Le(g), Bojan Z(p)

2012年5月 5日 (土)

コレクターはつらいよ(12):フランスのヴォーカルのバックでピアノを弾くBrad Mehldau

Micheleanna_mimouni "Entre Ombre Et Lumiere" Michèle-Anna Mimouni(Lebel Ames)

実に久々の「コレクターはつらいよ」である。ほぼ2年振りにこの主題の記事を書くことになった。Brad Mehldauの音源収集についてはかなり一生懸命と言ってよい私だが,最近のMehldauは相当ビッグネーム化しているので,他のミュージシャンのアルバムに参加したとかいう情報もかなり入りやすいし,私にはJens Linge氏というMehldauディスコグラファーの強い味方がいるので,ほかの人よりは情報もかなり迅速に入ってくると思っている。

しかし,最近はLinge氏も仕事が忙しいのか,情報の更新頻度は一時期よりはかなり間が空くようになってきている。その彼が直近で情報を更新したのは4月半ばのことだったが,当然それはMehldauの新作"Ode"のリリースを受けてのものであろうと考えていた私である。だが,念のため,ほかのアルバムについても新情報がないかどうかを確認していたらあった,あった。それがこのアルバムである。

私が知る限りにおいては,今回の情報のアップデートまではこのアルバムはLinge氏のディスコグラフィーには載っていなかったはずである。だからこそ,今回このアルバムを見つけてびっくりしてしまった。なぜ驚いたかと言えば,このアルバムがほぼ5年前にリリースされていたにもかかわらず,彼のレーダー・スクリーンに引っ掛からなかったことにある。彼には相応の協力者がいて,いろいろ情報交換をしているはずにもかかわらずである。それほどマイナーなアルバムと言ってよいかもしれないし,ググるにしても,相当注意深くやっていかないとこのアルバムには到達するまい。このアルバムの情報を見つけて,いろいろ探したのだが,あっても日本ではなぜか無茶苦茶高い。ということで,本国フランスに直接発注と相成った。はっきり言って,送料が高く付くって感じだったが,まぁこれは仕方がない。

Michèle-Anna Mimouniはジャズ・ヴォーカリストと呼んでよい音楽をここで展開しているが,特徴的なのが基本的にフランス語で歌っていることであろう。そんな彼女のアルバムになぜMehldauがって感じなのだが,その秘密はMehldauのオリジナル"Ron's Place"と"Dusty McNugett"にフランス語詞をつけて歌っているからだということと判断して間違いないだろう。2曲目のタイトル・トラックが"Ron's Place",5曲目の"Ma Bohème"が"Dusty McNugett" である。Mehldauの歌伴はご夫人のFleurine以外は珍しいということもあるが,いかにもMehldauらしいピアノを聞かせていて,ファンにとってはこれだけで満足度が高い。

また,Mimouniの歌も,このサウンドにフランス語というところにはそこはかとなく違和感があるとともに,2曲のスタンダード"Beautiful Love"と"Them Their Eyes"の英語での歌唱はいかにもフランス人の英語って感じではあるが,サウンドとしては決して悪くない。むしろ,これはかなりいいのではないかと思えるような出来なのである。ついでに言っておくと,最後の曲の伴奏はPierre de Bethmann(あのPrysmのBethmannである)なのである。ここではピアノに乗ったモノローグのような展開も聞かれるが,それがいかにもフランス的な感覚を感じさせて面白いと思った。でもライナーも全部フランス語なんで,全くわからんというのが難点だなぁ(頑固なフランス人,というよりも,非フランス語圏のリスナーを意識していない?)。

いずれにしても,情報なかりせば決して出会うことのなかった音源であるが,こういうのまでフォローするのは大変なのだ。何度も言うが,やっぱりコレクターはつらいのだ(だったらやめれば...という声も)。

Recorded: April-December 2006

Personnel: Michèle-Anna Mimouni (vo, p), Brad Mehldau (p on 1, 2, 4, 5), Rémi Vignolo(b), Karl Jannuska(ds), Pierre de Bethmann(p)

2012年5月 4日 (金)

Tom Harrellのラッパに包み込まれるようなアルバム

Humanity "Humanity" Tom Harrell & Dado Moroni (abeat)

GWの休みを利用して,乱雑極まっていたCD群の整理をしていたのだが,我が家ではPCの横にスライド書棚があって,そこに「一軍」とも言うべきCDが格納してあり,それ以外は「二軍」がベッドの下の引き出し,そして「三軍」以下が段ボール箱行きということになっている。格が下がれば下がるほど,取り出しにくくなるので,そういうアルバムはさっさとiTunesに突っ込んでしまうに限る。

そうした我が家の環境において,当然のことながら,格納場所の入れ替えというものは発生する。今まで「一軍」扱いだったものが,新たに購入したすぐれたアルバムにとって代わられるということもままあるわけである。逆に,新譜はせっせとiTunesに格納しているからいいものの,既保有のアルバム群についてはiTunesの利便性にかまけて,実のところ,最近何を「一軍」にしていたかもはっきりしなくなっていたのも事実である。今回,整理の意味もあって,その「一軍」アルバムを見ていて,そう言えば,こんなのも持っていたなぁなんてことで引っ張り出して聞いているのがこのアルバムである。編成はシンプルにHarrellのラッパに,Moroniのピアノである。そして,吹いているのはイントロとMoroniのオリジナル1曲を除けば,スタンダード。久しぶりにこのアルバムを聞いたのだが,天気の悪い時に聞く(この記事を書いている段階では外は結構な雨降りである)と,味わい深いとともにHarrellのラッパのサウンドに惚れ惚れしてしまった。

Tom Harrellのトランペット,あるいはフリューゲル・ホーンのサウンドはいつもソフトさを感じさせてくれるものであり,それこそFreddie Hubbardとは全然違う音が聞けるのだが,それに加え,Moroniのピアノがソリッドでシャープな響きを持っているので,更にそうしたHarrellのソフト感が増幅されているようにも思える。またそれがいいバランスだっていう気がするのだ。そしてHarrellによって奏でられる優しいスタンダードにそっと身を委ねればいいのだという感じがしてしまうのである。

そんなサウンドであるから,このアルバムはしょっちゅう聞こうという気にはならないかもしれないが,ある特定のタイミングではどうしても聞かずにいられないタイプの音楽と言ってよいかもしれない。オリジナルを演奏するHarrellもよいが,スタンダードにはまた格別の味わいがあるということを見事に示したアルバム。星★★★★☆。私はこのアルバムについての記事を書いた気になっていたのだが,どうも勘違いだったようである。そんなこんなもあって実に久しぶりに聞いたが,Harrellの優しいサウンドに包まれたような気になってしまった。ユーミンではないが,ジャズ版「やさしさに包まれたなら」ってところだ。

Recorded on April 6, 2007

Personnel: Tom Harrell(tp, fl-h), Dado Moroni(p)

2012年5月 3日 (木)

Lars Danielsson:しびれるような美しさ

Lars_danielsson_tarantella_2009 "Tarantella" Lars Danielsson(ACT)

中古で拾ってきたアルバムである。私はLars Danielssonのリーダー・アルバムはあまり買っていないように思う。例外は"Melange Bleu"ぐらいで,私の中ではいろいろな人の共演者としての位置づけの方が強いことは間違いのない事実である。しかし,私の周りのブロガーの皆さんにはLarsのファンが結構いらっしゃるので,ものは試しというわけではないが,中古でリーズナブルな値段だったので聞いてみるかというのが購入の動機であった。しかもドラムスがEric Harlandというほんまに合うんかい?という組み合わせだったのも私の興味を引いたのである。

そして聞いてみて出てきた音楽の美的な感覚に私は驚いてしまった。ジャズの範疇で捉えること自体がもはや無意味と言ってもいい美しい音楽である。特にタイトル・トラックの美しさは何だろうか。イタリアの6/8拍子の舞曲である"Tarantella"としては,これなら踊る前に聴き入ってしまうのではないかと思わされるような出来である。これはまじでしびれる。

そもそも冒頭からびっくりするような静謐さと美しさが充満したアルバムであるが,"Traveler's Wife"は明らかにJ.S. バッハ的な楽想を示しているし,そこかしこにクラシカルな感覚が提示されているし,さまざまな曲想が含まれたアルバムである。しかし,作品としての一貫性は貫かれていて,ここに感じられるのはよくできた短編小説集的な趣というところだろうか。共演者も楚々とした演奏で応えており,Eric Harlandって何でもこなせるのねぇと別の意味での感心の仕方をしてしまった私である(笑)。だが突出しているのはLars本人とLeszek Mozdzerのピアノであることは間違いない。

ACTレーベルにはこうした美的な感覚に溢れたアルバムも結構あるように思えるが,これはまた筋金入りの美的アルバムと言ってよいように思う。私の得意のフレーズを使わせてもらえば,一人暗い部屋で膝を抱えて聞きたいアルバムである。星★★★★☆。いやぁ~,こりゃええですわ。これだけ美的な感覚をおぼえたのはChris Minh Dokyの"Scenes from a Dream"以来かもしれない(記事はこちら)。

Recorded in April, August and October, 2008

Personnel: Lars Danielsson(b, cello, b-vln), Leszek Mozdzer(p, celesta, harpsichord), Mathias Eick(tp), John Parricelli(g), Eric Harland(ds, perc)

2012年5月 2日 (水)

Somiのヴォーカルに惹かれるわけ:声,曲,伴奏とのバランスが素晴らしい

Somi "If the Rains Come First" Somi(ObliqSound)

先日ちらっと紹介したSomiだが,彼女はルワンダ,ウガンダにそのルーツを持ちながらも,育ったのは基本的にアメリカの人である。幼少期にお父さんの仕事の関係でザンビアにも滞在していたらしいが,こうしたバックグラウンドもあり,ワールド・ミュージックの文脈で語られがちなのは仕方がないかもしれない。

しかし,ここでの音楽を聞いていて,アフリカ色が濃厚かと言えば,決してそんなことはないように思える。伴奏陣の中にそうした香りがするのは間違いない。しかし,それはアクセントにこそなれ,それが主体というわけではない。むしろ,ここに私が感じるのは一時期のSadeにでも通じると言ってもよい魅力的なヴォイスと,軽度なファンクの適切なコンビネーションなのである。このコンテンポラリーなサウンドに,彼女の魅力的なヴォーカルが乗っただけでまさに一聞き惚れした私であった。

私は冒頭の"Hot Blue"において百々徹が弾くRhodesが聞こえた瞬間に「これはっ...」と反応してしまったのだが,Somiの囁くようなヴォーカルとバックアップ陣の相性も素晴らしいのである。そして,全ての作曲に彼女が携わり,全曲彼女が作詞した曲のクォリティも文句なしである。これはまさしく発見だと言ってもよい。

とにかく,この音楽であればSade好きなリスナーには受け入れられること確実であろう。あるいはEverything But the Girlにアフリカン・フレイヴァーをまぶした感じと言ってもよいが,SadeもEBTGも両方好きな私にとってはまさに大ヒットと言ってよいアルバムである。こういうアルバムを店頭でかけてくれた某ショップには感謝したい。

Sadeの最新作にがっくり来ていた私にとっては砂漠のオアシスのように思えたと言っては大袈裟か。でもそれぐらいフィット感の強いアルバムであった。あまりに好きなので,オマケして星★★★★★を謹呈してしまおう。この気持ちのよさを理解してもらうには聞いて頂くしかない。最近聞いた女性ヴォーカルではGretchen Parlatoと並んで好きだと言ってもいいだろう。Gretchenにしろ,Somiにしろ,こんな優れたミュージシャンを紹介するObliqSoundというレーベル,まさに侮れない。今年の新譜ではないが,あまりに気に入ったので,今年のおすすめ作にも載せてしまおう(反則だが...)。

Recorded in April & May, 2009

Personnel: Somi(vo), Michael Olatuja(b, prog, key), Herve Samb(g,), 百々徹(p, rhodes), Madou Kone(perc), Nathaniel Townsley(ds), Hugh Masakela(tp), David Gilmore(g), Micehle Locatelli(g), Liberty Ellman(g), Julien Machet(perc), Alicia Olatuja(vo), David Hunter(vo)

2012年5月 1日 (火)

スリルと美的な感覚を兼ね備えた変則トリオ・アルバム

Lighthouse "Lighthouse" Simcock Garland Sirkis (ACT)

ピアノ~サックス~ドラムスと言えば,昔の山下洋輔トリオと同じ編成であるが,音楽のタイプは全然違う(当たり前だ)。しかし,この変則的な構成の中で,ここで聞かれる音楽は非常にコンテンポラリーな感覚を持ちながらも,スリルと美感を併せ持った優れた作品である。

Gwilym Simcockと言えば,昨年の"Impossible Gentlemen"でもいい仕事をしていた(記事はこちら)が,彼がこのような編成での演奏に取り組んだのは,恩師であるTim Garlandの誘いらしい。Tim Garlandと言えば,Chick CoreaのOriginやBill BrufordのEarthworks等での活動で知られるが,私にとってはあまり縁深いミュージシャンではない。そもそも英国出身のミュージシャンは一部を除けば,私の主たる関心の外にいるのだから仕方がないのだが,いずれにしてもGarlandはそれほど目立つタイプのミュージシャンとは言えないだろう。

一方のSimcockはブログのお知り合いの皆さんの注目度も高いミュージシャンであり,私もロンドンで彼のライブを見ている(記事はこちら)。その時はWayne Krantz目当てだったのだが,Simcokについては「ピアノはまるでHerbie Hancockのようで、なかなか鋭いフレージングを聞かせていた」なんて書いている。そして,その時のリーダーはと言えば先日渡辺香津美との共演盤をリリースしたJanek Gwizdalaだったし,ドラムスはGary Husbandだったのだから,なかなか強烈なメンツだったということになる。こういうメンツとの共演を考えれば,Simcockがコンテンポラリーな演奏をすることはまぁ当然と考えることも可能である。

そして,ここで展開されている音楽もそうした予想にそったものとなっているが,冒頭から相当スリリングな展開で,まずそこでつかみはOKである。そして,ドラムスを叩いているAsaf Sirkisがこれまた結構な叩きっぷりで,かなり強烈な印象を残している。この人はイスラエル出身で,現在はロンドンを拠点としているようだが,Bill Brufordが注目しているという事実からしても,そっち系統のドラマーであることはわかるが,結構なテクニシャンと聞いた。

そして,スローな曲では,特にSimcockが美的なフレーズを聞かせる瞬間があって,ここでまたはっとさせられてしまうという展開となっており,全編を聞いていても飽きることがない。いずれにしてもロンドン発のコンテンポラリー・ジャズとしてこれは推薦に値するアルバムと言えると思う。Garlandが私の好きなバスクラをもう少し吹いてくれるとなおよかったが,それでも星★★★★☆としてしまおう。このユニットはGalandのコンセプトをライブで再現することを目的としたものらしいが,十分に期待を上回る出来を示したことでついつい点も甘くなる私である。

Personnel: Tim Garland(ts, ss, b-cl), Gwilym Simcock(p, melodica), Asaf Sirkis(ds, perc, hang drum)

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