最近のトラックバック

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

無料ブログはココログ

« 2011年12月 | トップページ | 2012年2月 »

2012年1月31日 (火)

今年はじめて劇場で見た映画がこれ:「J・エドガー」

Jedgar_2 「J・エドガー("J. Edgar")」('11,米,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Leonardo DiCaprio, Naomi Watts, Armie Hammer, Judi Dench

週末に,今年ようやく映画を見るために劇場を訪れることができた。しかも二本はしごである。その一本目に選んだのが,私がひいきにするClint Eastwood監督の新作である。本作はFBIの長官を長きに渡って務めたJ. Edgar Hooverに関するドラマであるが,これが相当重苦しい。

そもそもがHooverという人間像が嫌らしさの極致のようなものであり,それをメイクも含めてDiCaprioが相当頑張って演じているのだが,どうもセリフ回しが単調というか,メイクで人相は老けても声が変わらないところに違和感が大きいのが難点である。それはさておき,ここで描かれているのはHooverという人間が長期に渡って権力の座にあったことによる問題点を指摘しているが,そもそも私が超リベラルな人間なので,Hooverみたいなタカ派の代表みたいな人間を受け入れ難いところにこの映画に対する反感が生じてしまうのである。2時間以上に渡ってこんなキャラクターの人物像を見せられてはさすがにぐったりしてしまった。

昨今のEastwood監督の作品には強烈なヒューマニズムを感じさせるものが多いが,本作はどちらかと言えばHooverという人物を描くことに注力したため,いつものような鑑賞後の清涼感がないのも辛い。

だからと言って,これはこれで見どころの多い作品であるが,やや時間が長い(と言っても137分だが...)のと,(映画の中の)現在と過去の二元的なドラマを延々見せられるところにも難点があり,編集をもう少し工夫すれば,さらに面白い映画になったのではないかと思う。Naomi Wattsは美人がもったいないような老けメークのシーンが多くて可哀想な気もしたが,よくもこんな地味な役を引き受ける気になったものだと感心してしまった。

いずれにしても,Eastwood監督の作品としては,ここ数年では一番失望感が強いものとなったのは残念だが,それはあくまでもドラマとしての性格であって,Eastwoodの責任ばかりではないように思える。星★★★☆。それにしても疲れた。

2012年1月30日 (月)

総天然色ウルトラQ第2弾到着す。

Photo 第1弾がリリースされてから約5カ月,ついに「総天然色ウルトラQ」第2弾の到着である。こちらにはなんてったって「2020年の挑戦」やら「悪魔っ子」やら「あけてくれ!」やら色が付いたらどうなるねんというエピソードが満載である。ということで,早速ケムール人走りが見たくて「2020年の挑戦」を見たが,暗い色調のこのエピソード,なるほどという色使いであったが,あの人間を消す「消去エネルギー源」はああいう色だったのねぇなんて,妙な感心の仕方をしていた私である(あいにくこちらの画像は白黒だが...)。

いやいやそれにしても懐かしい。やっぱり「ウルトラQ」は私の原点と言ってもよい番組である。ついでに「あけてくれ!」も見たが,相変わらず身につまされる話である。子供番組じゃないよねぇ,あの話...(とわかる人だけわかって下さい)。

いずれにしても,値段は高いが,買わずにいられなかった私であった。これからゆっくり楽しませてもらうことにしよう。

2012年1月29日 (日)

今,改めて「サキコロ」を聞いてみる。

Saxophone_colossus "Saxophone Colossus" Sonny Rollins(Prestige)

本作を取り上げるなら「一肌脱ぐ」シリーズでもいいのだが,今回は別枠で取り上げてみたい。「サキコロ」というニックネームもつく,ジャズを少しでもかじったことがある人間なら知らぬ者はない傑作である。こういう作品を取り上げる場合,「何を今更」という気持ちにもなるし,一体何を書けというのかという気持ちにならないわけでもない。しかし,たまたまiPodでシャッフルしていたら,"St. Thomas"が聞こえてきて,やっぱり耳をそばだててしまった私である。それがトリガーになって,改めてアルバム全体を通して聞くことになったが,これは本当の傑作である。

とにかく,冒頭の"St.Thomas"のイントロのRoachのドラムスからしてワクワクするような出だしである。このアルバムに確実に彩りを添え,作品を一段上に引き上げたのはこのRoachのドラムスだとさえ言い切ってしまいたくなる。イントロのドラム,途中のドラム・ソロ,そしてその後に飛び出すRollinsのテナー・ソロ。これぞジャズの醍醐味と言わずして何と言うとさえ言いたくなる快演である。そして,Rollinsの野太いサックスが魅力的な"You Don't Know What Love Is",そしてドライブ感が楽しい"Strode Road"と,LPで言えばA面の3曲は本当に魅力的である。急~緩~急という感じのバランスもよく,演奏に加えて,プロダクションのよさも特筆されるものであって,これだけでも超傑作に値する。

LPでのB面はおなじみ"Moritat"から始まるが,Rollinsの代名詞とでも言えそうになったこの曲の演奏も,ほかのどの演奏よりもここでの演奏が理想的かつ優れたものであることは間違いない。だが,私がこの曲に感じる魅力は曲そのものというよりも,エンディングに聞かれるRollinsのソロに集約されているような気がするし,最後のざっと打ち合わせただけで,スポンテイニアスに演奏されたと思しき"Blue 7"においても,Rollinsのテナー・ソロのレベルが極めて高いことに驚かされるのである。まさに神がかりの一瞬と言ってもよい。そもそも"Moritat"ってそんなにいい曲なのかと思っていたが,今回の発見はエンディングのよさだったのである。もちろん,そうした演奏を支えたのがTommy FlanaganやDoug Watkinsだと言ってもよいのだが,B面においても,Max Roachには通常のアルバム以上にソロ・スペースも与えられているように感じて,Rollinsのこの演奏を生みだすのをサポートしたのはやはりRoachだと思ってしまう私である。極論かもしれないが,Roachなしにはこの演奏は生まれていなかった可能性すら感じる。

しかし,一旦こんな演奏を生みだしてしまえば,それがリスナーにとっての期待値になってしまうところがミュージシャンにとっては辛いところであるが,Rollinsも現在に至るまで「巨人」としての活動は続けているとしても,「サキコロ」を筆頭とする50年代の素晴らしさを凌駕したことはその後のアルバムにはないと敢えて言い切ってしまおう。それぐらいここでのRollinsがよ過ぎるのである。換言すれば奇跡的な演奏だと,それこそ今更ながら思ってしまった私である。

どちらかと言えばA面の方が好きだった私は,もっぱらそちらばかり聞いていたのだが,今回,通して聞いてみて,B面におけるRollinsのソロの魅力にも気付かされたという温故知新的な瞬間であった。まさにケチのつけようのない傑作である。星★★★★★。

余談だが,私がこのアルバムのLPを買った頃のジャケットではRollinsの表情なんてうかがえない真っ黒なシェイプだったのが,本当はこういうジャケットだったのねぇと思わされるのが添付したイメージである。

Recorded on June 22, 1956

Personnel: Sonny Rollins(ts), Tommy Flanagan(p), Doug Watkins(b), Max Roach(ds)

2012年1月28日 (土)

関アジ,関アジ...

Photo 福岡出張の夜,食事で関アジをいただいたが,これはうまかったなぁ。歯ごたえ最高。これと一緒に食したのがイカの活き造り。久しぶりに目玉,エンペラ,ゲソがうねうねしたイカの刺身を食べたが,これまた歯ごたえ最高。その後に食したそのゲソの塩焼きもうまかった。やはり福岡はいいところであった。ということで,写真は関アジだけアップだが,見るだけでもうまそうだよなぁ。くぅ~っ。

来月の再度の福岡出張時にはさて何を食せるのか。楽しみである。

2012年1月27日 (金)

本日もやはり...

本日は福岡に出張中なのだが、やはり今日も記事を真っ当に書ける状態にないことは予想通りであった。ということで今日はおとなしく寝るとしよう。

しかし、博多はやはりうまいもの(+α:謎...)の宝庫で、またまた移住したいと感じるナイスな場所である。福岡には来月もまた出張予定だが、楽しみだなぁ(笑)。ということで、今日もサボりだが、明日はまじめなモードに戻りたいと思う(ほんまか?)。

2012年1月26日 (木)

中年音楽狂,音楽を聞けず...

珍しくも仕事がかなり忙しく,音楽をちゃんと聞けていない。現在,プレゼン・ネタの準備が集中してしまって,まじで余裕なしである。パラレルで3本はさすがにきついわ。よって,記事も書けないのは仕方ないのだが,こういう時に限って,夜になると上司からのお誘いである。サラリーマン,中年音楽狂としてはそれも断れないわけで,今日はお休みです。

本日は地方出張も予定されているので,明日も更新はかなり厳しいかもなぁ。まぁ,たまには暇人の中年音楽狂にもこういうことがあるってことで...。読者の皆さん,ごめんなさい。

2012年1月25日 (水)

どこかで必ず耳にしたEarl Klugh

Earl_klugh "Dream Come True" Earl Klugh (Liberty)

世の中の小売業の店舗や,マス・メディアのBGMに使われる音楽というのはその時代の反映という気もするが,Joe Sampleの"Ashes to Ashes"とこのアルバムは本当にいろいろなところで使われていたという感覚が強い(Joe Sampleに関する記事はこちら)。ということで,このアルバムに収められた音楽については多くの人が,「必ず」どこかで耳にしていると思う。その筆頭は2曲目の"Doc"ではないかと思うが,これが使われていたのは「ルックルックこんにちは」だっただろうか?その他の曲もFMのバックや小売店で相当流れていたと記憶している。

そうした使われ方をするのは,当然のことながら耳当たりがいいからだと言ってもよいが,それは毒にも薬にもならないから可能なのだと悪態をつくことも可能ならば,一般にアピールするとは言わずとも,邪魔にならない音楽,即ち心地よさを提供するからだと反駁することも可能だろう。まぁ,こうした音楽が鳴っている背後で,小難しいことを考えている人間はいないだろうが,ジャズだなんだと意識しなくても,す~っと入ってくる音楽であることに異論をはさむ余地はない。

こういう音楽だから,Earl Klughの音源の中でも相応に売れたはずのこのアルバムが,かなりの長い期間に渡って廃盤だったのはなぜなんだろうか。今や"Dream Come True / Crazy For You / Low Ride"の3作をまとめたコンピレーションとして容易に手に入るようにはなったが,それまではこうした決して高値がつきそうにないアルバムに,本当に無茶苦茶な高値がついていたのが不思議でならなかった私である。そこまでして購入するようなアルバムだとは思っていないから,今回の再発に喜んだリスナーも多いのではないだろうか。

だからと言って,これが重要なアルバムかと言えば,全然そんなことはない。所詮はよくあるフュージョンのアルバムだと言ってよいが,Dave Grusin配下から登場したEarl Klughが本当に一人立ちしたという印象を与えるとともに,ジャズなんて意識させなくても,フュージョン(それも相当ソフトなもの)を「気持ちよくもそこはかとなくジャズ的なもの」として多くの人の意識に植え付けたという点では意義もあったと言っていいだろう。

いずれにしても,このアルバムに小難しいことは無用。私にとってはこれもまた別の懐メロなのである。単純に楽しめばいいのだ。星★★★。浪人中に足しげく通ったジャズ喫茶(本当は硬派な店だったはずだが...)で結構よく掛かっていたことを思い出すだけでも懐かしいねぇ。そういう時代だったのだ。

Recorded September 1979 thru January 1980

Personnel: Earl Klugh(g), David Briggs(p, el-p), Darryl Dybka(el-p), Mickie Roquemore(p, key), Greg Phillinganes(key, g), Perry Hughes(g), Reggie Young(g), Lloyd Green(pedal steel), Hubie Crawford(b), Mike Leech(b), Marcus Miller(b), Gene Dunlap(ds), James Brown Bradley Jr.(ds), Dr.Gibbs(perc), Frank Floyd, Krystal Davis, Yvonne Lewis(vo)

2012年1月24日 (火)

Hamiet Bluiettはフリー・ジャズなのか?

Birthright "Birthright" Hamiet Bluiett(India Navigation)

主題に答えるとすれば,Yesのようであり,Noでもある。私の感覚で言えば,「否」の感覚が強い。私はHamiet Bluiettは根本的にはブルーズの人だと思っているのだが,演奏するフォーマットがWorld Saxophone Quartetやら,本作のような無伴奏ソロやらと,確かにフリーだと思われても仕方がない部分がないわけではない。しかし,この人のリーダー・アルバムを聞いてみれば,これってフリーじゃないと感じることの方が多いのである。このブログでもBluiettのVanguardのライブを取り上げたことがある(記事はこちら)が,そこにも書いたとおり,「至極真っ当」な演奏をする人なのだ。実を言ってしまえば,私はかなりこの人が好きなのである。この野太いバリトン・サックスの音,たまりません。

そうは言いつつも,本作のように無伴奏バリトン・サックス・ソロとなれば話は相当違ってくる。ある意味,自由度しかないようなソロ演奏であるから,通常のBluiettの演奏よりもフリーなアプローチが増すのは当然である。しかも,ここに収められた演奏であるから,一般のリスナーにとっては相当ハードルが高いのも事実。そうした観点では「よい子は手を出してはいけません」という感じの演奏である(笑)。

サブタイトルに"A Solo Blues Concert"とあり,確かにブルージーな感覚がないわけではないが,これがブルーズかと言われれば微妙と答えるしかあるまい。そんな演奏ではあるが,Bluiettのバリトン・サックスの技(超絶技巧とかそういう類ではない)を楽しめることはできる。だが,やはり50分近くバリトン・サックス1本というのはいくら好きでもちょいときつい。こういう演奏だから,余計にフリーにカテゴライズされてしまうのではないかと思ってしまう。だって,普通ならやらないもんなぁ。

こうした演奏が今の時代にどのように評価されるかは別にして,いかにも70年代だなぁなんてこの音源を聞いていて思ってしまった私である。ある意味ではビジネスとは離れた世界で,クリエイティビティを追求できた時代なのかもしれない。いずれにしても,こういう演奏にチャレンジしたBluiettの意欲は評価しつつも,やっぱりきついということで星★★★☆。私はちゃんとリズムに乗ったHamietの方が好きなのだ。

Recorded Live at the Kitchen in 1977

Personnel: Hamiet Bluiett(bs)

2012年1月23日 (月)

中山康樹の新刊:なんだかなぁ...

Photo 「かんちがい音楽評論(JAZZ編)」 中山康樹(彩流社)

私は中山康樹については,アンビバレントな感覚を持っている。「マイルスを聴け!」シリーズには世話になっているが,「ジャズ構造改革」には首肯できても納得しかねる部分があったからである。私はこの人は正直な人なのだと思う。批判を承知で「意図的に」問題提起を行っているだろうし,言っていることの多くの部分に,そうだよねぇと感じさせる部分があることは否定しない。しかしである。考え方によっては揚げ足取りだと言われても仕方がないような部分もあるように思えてならない。

例えば,ネット上での記事や論考はすぐに手直しができるというのは事実である。だからこそ,ネットにはネットにフィットした情報発信のパターンがあるとも言えるわけである。なんでもかんでも無責任に情報を垂れ流していいということではないが,そうしたメディアの特性を無視して,ツイッター上の発言がどうのこうのというのはいかがなものかという気がする。中山康樹以外にも情報の受け手がいることや,彼らには彼らなりの受け止め方があることも考慮すべきである。

確かにここでの批判は確かにロジカルに行われていると思うが,ネット上での発言や表現を取り上げて,難癖をつけているようにも思える。だとすれば,中山康樹がこれまでリリースしてきた書物は論理的な誤謬や,情報の誤りがゼロかと言えば,そんなことはないだろう。本書に書かれているようなことを言うのであれば,自著は完璧だという自負でもあるんだろうと皮肉の一つも言いたくなるが,私はこれまでの,あるいは今後の彼の著作の「粗さがし」をしたくなったのも事実である。

もはや評論の体をなしていない自称「ジャズ評論家」に対する批判はどんどんやればいいと思うし,メディアを利用し,言い訳を展開していると言われても仕方のない菊地成孔みたいな輩を批判するのは大いに結構。「スイングジャーナル」がなぜ休刊になったかも,私はこのブログでSJを批判していたから,それもよくわかる。だが,論理性を盾にして何でもかんでも論破しようという姿勢ははっきり言って大人げないし,読後の後味が非常に悪い。言っていることはある程度正しいとしても,彼の主張を100%是とする人間はそうはいるまい。とにかく感じが悪い。しかもこの装丁,ページ数でこのプライシング(\1,680)は何なのだろうか。結局商売っ気が見え隠れするだけだと再度皮肉を付け加えておく。中身が薄い割には値段が高いと私が言い切った「アガルタとパンゲアの真実」と同じじゃん。星★★。

こんな本を書いている暇があるんだったら,まっとうな音楽評論を展開することにフォーカスすればいいのだ。中山の理屈に読者が無理やり付き合わされるだけの本だと言っておく。あぁ,しょうもな。

2012年1月22日 (日)

静かなサスペンスが素晴らしい「ゴーストライター」

Photo 「ゴーストライター("The Ghost Writer")」('10,英/仏/独)

監督:Roman Polanski

出演:Ewan McGregor, Pierce Brosnan, Olivia Williams, Kim Cattrall, Timothy Hutton, Eli Wallach

この映画は昨年の夏ごろ,日本では限定的に公開されたもので,どれぐらいの人が見たかは定かではないが,見たいと思っていたのに見逃していたもの。私は「密林」のモニターとしてこの映画のDVD-Rを受け取って見たものであるが,これがなかなかの佳品である。ベルリン映画祭で銀熊賞(監督賞)やセザール賞の監督賞を受賞したのもうなずける。

何がいいか。Polanskiの描くサスペンスというと,私は「フランティック」のように,わけのわからないまま巻き込まれていくというパターンを思い出すのだが,本作もまさにそうした感じである。映像もストーリーも静かなものだが,その静かな展開の中で,サスペンスを盛り上げるという感じなのである。ちょっと見た目が怪しいって感じの登場人物が多いのはご愛嬌だが,誰を信じて,誰が信じられないのかというのはHitchcock以来のサスペンスの王道という気もする。

ストーリーとしてはいかにもTony Blairをモデルにしたかのような元首相をPierce Brosnanが演じているが,彼にまつわる様々な陰謀が背後に描かれていて,最後にその謎が解かれるという展開である。ややラストに向けての展開は話を急ぎ過ぎた感覚はあるものの,エンディングも静かな恐怖を感じさせるものである。

この映画を見ていて,Polanskiはアメリカ嫌いなんだろうと思ったのだが,その背景には奥さんだったSharon Tateを惨殺されたり,少女淫行疑惑で有罪を食らったりという点もあろうが,シナリオにもアメリカ嫌いが如実に表れている。まぁ「戦場のピアニスト」でオスカーをもらっても,アメリカに入国すれば逮捕,収監らしいから,授賞式にも出席できなかったという無念さもあるだろう。まぁ,Polanskiは人間的にはいかがなものかというところはあるかもしれないが,映画監督としては大した人であることを実証しているから,私はそちらで評価すべきだと思っている。

いずれにしても,地味な映画ゆえに日本ではヒットしたかどうかはわからないとしても,ギミックに頼らない映画として私は評価したい。世の中,こういう映画がもっと増えて欲しいものである。ということで星★★★★☆。見たいと思っていながら見逃していた作品だったので,このモニターは嬉しかった。但し,これが先般発表されたようにキネ旬1位に本当に相当するのかどうなのかというと若干微妙ではあるが,この映画らしさが評価されたものだろうと感じてしまう私である。だが,そうした評価を受けても不思議はないと感じさせるだけの作品であった。

2012年1月21日 (土)

Antonio Faraoの緩急自在

Domi "Domi" Antonio Farao Trio(Cristal)

Antonio Faraoと言えば,リーダー作"Woman's Perfume"やNicholas Folmerとの共演作を本ブログで取り上げたことがある(記事はこちらこちら)が,私の中では結構力強いイメージが強いピアニストである。このアルバムは昨年の後半にリリースされたものの,買いそびれていたのだが,お知り合いの皆さんが褒められているので,ようやくの購入となったが,確かにこれはいいわ。

まず,iPodで聞いていてもわかる音のよさ。トリオの音楽が非常にバランスよく,かつクリアに収められていてそれだけでもポイントが高い。そして,何よりもここに収められている音楽の質が高いのだからこれは皆さん褒めるのも当然である。そうした中で,美しいメロディ・ラインの現れる曲と,ハード・ボイルドな演奏がいい具合に混ざり合って,それが音楽としてのバランスもよくしているところがいいのだ。このあたりが「やわ」に流れぬAntonio Faraoの真骨頂という気がするが,ソフト・タッチの演奏でも,それだけに終わらない美学さえ感じさせる演奏だと言っていいように思う。

"One Solution"ではHerbie Hancockのようなフレーズをぶちかましながら,その次の息子のDominique君に捧げたタイトル・トラックではやさしくも美しいまなざしを感じさせるようなメロディを紡ぐという,これこそまさに緩急自在という感じである。こうした演奏を聞いていると,Antonio Faraoのピアニストとしての懐の広さを十分に感じさせるものであり,これは本当に楽しめる。

正確に言えば,昨年リリースのアルバムであるから,2012年のお薦め盤とするには抵抗がないわけではないが,これはやはり多くの人に認知をしてもらうためにリストに載せてしまおう。やはりAnotonio Farao,いいピアニストである。星★★★★☆。本作は本作で十分に満足できる出来だが,次はFolmer盤のように,ガンガンいくところを主,美メロを従という感じでプロデュースしてくれたら嬉しいかなぁ。しかし,繰り返すがこのアルバムはよい。プロデューサーがちゃんとした耳を持っていることを実証していることに疑いの余地はない。

Personnel: Antonio Farao(p), Darryl Hall(b), Andre Ceccarelli(ds)

2012年1月20日 (金)

村上春樹のクラシック音楽への深い洞察が表れたインタビュー集

Photo_2 「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 小澤征爾×村上春樹(新潮社)

作家,村上春樹が小説の題材としてクラシック音楽を使うことはよくあることであるが,そもそもジャズ喫茶経営で音楽に対する造詣の深さはわかっていたとしても,この人の音楽の聞き方はかなり深いなぁと思ってしまった一冊である。

基本的に村上春樹がレコードを掛けながら,小澤征爾に対してインタビューを行うという形式であるが,そこで飛び出す会話や文章に,私は「音楽的」なものを感じてしまった。これまで小澤が師事したり,付き合ってきた指揮者やミュージシャンの姿が活写され,へぇ~,そうなんだ~と思わされたことも何度もあったし,よくもまぁ,いろいろなレコードを保有したり,ライブの演奏を聞きに行ったりしているもんだと感心したくなってしまうような逸話の数々である。

私も在米中は,やれカーネギーだ,エイブリー・フィッシャー・ホールだ,METだ,タングルウッドだとクラシックのライブに通う機会はあったが,日本ではなかなかそうもいかない中,作家という仕事柄というのもあるとは言え,村上春樹が音楽に充てている時間が相当あるということは誰が読んでもわかってしまう。そして,音楽理論と離れた観点から,音楽を聞いていることには,自分も同じだなぁなんて感じて嬉しくなってしまうのである。理屈ではなく,感覚で音楽を捉えることの楽しさを再確認させてくれるが,だからこそ,プロの音楽家としての小澤征爾との違いが浮き彫りになって非常に面白いとも言えるわけである。

そういう意味では,村上春樹は一人の作家として,多くの音楽ファンの立場を代弁し,小澤征爾にインタビューを試みたとも考えられるだろう。私は通勤時間や出張の移動の合間にこの本を読んでいたのだが,それこそ「時さえ忘れて」って感じで読み耽ってしまったのであった。

いずれにしても音楽と文芸が非常にいい具合に融合した良書である。取り上げる音源が小澤征爾のものが多いことや,話に出るものに古いものが多いのは仕方ないが,できればこの続編として,より現代のミュージシャンについて小澤征爾にインタビューという企画も考えて欲しいものである。ともあれ,私はこの本は大いに楽しめた。二人の偉人が揃って,シナジーを生んだってことである。ちょっと甘いが,クラシックに対する門戸を広める役割も期待して星★★★★★。これは間違いなく楽しめる。

2012年1月19日 (木)

ファンク+ロック+フリー・ジャズ=James 'Blood' Ulmer

Ulmer "Are You Glad to Be in America?" James 'Blood' Ulmer(Rough Trade)

これまた懐かしい音源である。私がRough Tradeというレーベルを知ったのはこのアルバムが最初だったんではないかと思う。ジャズ界でははっきり言って無視されていたようなものが,ロック側のリスナーから盛り上がったのが,Ulmerあたりの音楽だったのではないか。パンク・ジャズとかわけのわからない呼び方をされていたようにも記憶するが,基本的にこれはファンク・アルバムだろう。そこに強めのフリー・ジャズのフレイバーとロックの要素を混ぜたのがこの音楽だと言っていいように思う。当時のロック界にもこうした音楽はあったし,A Certain Ratioにも似たような感覚があった(と言っても私がA Certain Ratioを聞いたのは完全に後付けだが...)。だからこそ,ジャズ界より,ロック界の方が早く反応したとも思えるのだ。

それにしても,今聞いてもけたたましい。アメリカ黒人のファンクネスもろ出しという感覚のこの演奏は現在の耳で聞いても別に違和感はない。私もこのアルバムが出てから幾星霜を経て,ちょっとやそっとのことでは驚かなくなっているから,本作を聞いても,おぉっ,どファンク!って思ってしまうぐらいのことである。UlmerがOrnetteとハーモロディクス理論を実践していたとかいないとかなんてのはどうでもよい話である。David Murray,Oliver Lake,Olu Daraからなる強烈な3管をフロントに,激しくうねるUlmerのギターはロック・ファンにアピールしても当然かなとも思わせるものがあり,それに身を委ねればいいのだ。

このアルバムの成功があって,UlmerはメジャーのColumbiaと契約するのだから,これもそれなりに売れた上に,インパクトも強かったのだろうと思われるが,ただ,こういうタイプの音楽であるから,おそらくはリスナーに飽きられるのも早かったはずである。Ulmerがかなり早い時期に失速してしまったのはそういう要素が強いように思える。その後はよりブルーズ色を強めた演奏をしているようであるが,昔日のような人気を保っているとは言い難い。

しかし,時代の徒花だったと言われても仕方がないとしても,一時期にはちゃんとしたムーブメントとして,それを代表するミュージシャンとして活躍したUlmer,特に本作の価値が下がるとは思っていない。喧騒の時代に喧騒の音楽を聞きたいならばまさにぴったりだし,フラストレーションがたまったときにこれを大音量でぶちかませばすっとするだろうなんて夢想してしまう私である(実際はiPodで聞いているからなぁ...)。このアルバムを聞いたのはおそらく20年以上ぶりぐらいなのだが,今でも楽しめてしまったのはちょっと意外と言えば意外であった。星★★★★☆

Recorded on January 17, 1980

Personnel: James Blood Ulmer(g,vo), David Murray(ts), Oliver Lake(as), Olu Dara(tp), Billy Patterson(g on 4), Amin Ali(b), G. Calvin Weston, Ronald Shannon Jackson(ds)

2012年1月18日 (水)

GRP All-Stars Live in Japan:今にしてみればいいメンツであった。

Davegrusinliveinjapan "Dave Grusin & the GRP All-Stars Live in Japan"(Arista/GRP)

所謂クロスオーバー・ミュージックが流行った頃,キーボード,アレンジャーと言えばBob Jamesか,Dave Grusinかというかたちで,人気を二分(まではいかないかもしれないが)した二人だが,私としては圧倒的にGrusin派であった。それは私が映画が好きだったこともあり,映画音楽家としてのGrusinを評価していたこともあるだろうし,ナベサダとの共演も相応に影響していただろう。しかし,この二人が決定的に違うなぁと感じたのは同じような時期に,Bob Jamesが"Heads"をリリースし,Grusinが"One of a Kind"をリリースし,後者の出来の素晴らしさを私が感じ取ってしまったからだと思う。もちろん,私の音楽的な嗜好へのフィット感もあるが,アルバムとしては間違いなく"One of a Kind"の方が優れていたと思っている(同作に関する記事はこちら)。また,このツアーに前後して(どっちが先だったかかなり曖昧)リリースされた"Mountain Dance"も「Grusin,ええわぁ」という感覚を強めたことは間違いない。

そうしたDave GrusinがLarry RosenとのGRPレーベルにおいて,新人の発掘をしていたのが70年代後半,リリースはアリスタ(Earl KlughはBlue Noteだったが...)から行っていたのも懐かしいが,そうした新人を連れて行ったジャパン・ツアーのライブ盤がこれである。渡辺貞夫をゲストに迎え,更にはストリングスやホーンも参加した豪華なツアーであるが,今にしてみればいいメンツでの来日である。特にMarcus Miller~Buddy WilliamsというSanbornの"Straight to the Heart"のコンビに注目が集まっていたのも懐かしい。私もタイミングが合っていれば行っていそうなライブだが,いかんせん受験生(しかも本作録音時には一浪確定で落ち込んでいる状態)だった私はチケットをゲットする努力もしていなかったのはちょっと残念なことである。

そうした彼らの演奏を収めた本作であるが,これが長年廃盤というのはちょっと解せない。一時あれだけの隆盛を誇ったGRPレーベルそのものが,今やどういう存在なのかよくわからなくなっている中,仕方がない部分もあるが,カタログに残しておいてもよさそうなものだと思うのは私だけではないだろう。もちろん,急造バンドのライブだから,微妙~と思わせる部分もあるのだが,悪くないライブ盤である。特に名曲"Modaji"のライブの演奏ってのは感慨深い。

まぁ,"Friends & Strangers"にホーンをかぶせるのってのはどうなのよって気もするし,全部が全部最高とは思わない。特に本作の収録曲においてはTom Browneの存在価値は今イチだったと言ってもいい("Funkin' For Jamaica (N.Y.)"みたいな曲があれば別だったが...)。しかし,いかにもGrusinらしい演奏が続いていて,あの時代を強烈に感じさせるものとして非常に懐かしい。"Uh! Oh!"におけるピアノなんてここにはいないRichard Tee的だし,そのバックのBuddy Williamsのドラムスなんて,Steve Gaddのように聞こえないこともない。当時のクロスオーバー・フュージョン(特にGrusinのやっていた音楽)がミュージシャンは違えども,かなり近いテイストを持っていたことを今更ながら実証しているように思える。もう30年以上も前のことであり,まさに私にとっての懐メロである。星★★★☆。

Recorded Live at 大阪フェスティバル・ホール on March 16, 1980

Personnel: Dave Grusin(key, p), 渡辺貞夫(as), Dave Valentin(fl), Tom Browne(tp), Bobby Broom(g), Don Grusin(p, key, synth), Marcus Miller(b), Buddy Williams(ds), Roger Squitero(perc) with Horns & Strings

2012年1月17日 (火)

完全復活はまだの私に,Rachael Yamagataから届いた素敵なプレゼント

Rachael_yamagata001 "Chesapeak" Rachael Yamagata(Frankenfish)

昨日は「ヒーリング」なんて言葉を書いたが,完全復活には程遠い私である。どうして胃の痛みが消えないのか。本当に困ったものである。こうした中,肉体的な不調にフラストレーションもたまる中,私の心を和らげてくれる郵便物が米国から届いた。それがRachael Yamagataの新譜+αである。

アルバム自体は昨年の10月にとっくにリリースされており,輸入盤ショップやネットのサイトでも購入できるようになっていたし,このアルバムにも記事をアップしている(記事はこちら)。本作はPledge Musicというサイトにおいて,資金集めを実施し,それによりようやくリリースにこぎつけるという,言わばスポンサーを募っての自主制作盤みたいなものであるが,私も微々たるものながら,そのスポンサーとして参加したものである。それに対して,先行的に音源だけはMP3でデリバリーされていたものの,現物がなかなか届かずやきもきしていたのだが,ついに到着である。また,それが嬉しくなるような手作り感があって,スポンサーになりがいがあったってものである。

CDのレビューは改めて行うとして,今回届いたのがサイン入りCD,サイン入りTシャツ,そして自筆のThank Youレターである。Tシャツのイメージはアップが難しいのだが,まずはCDを見て頂きたい。私の名前が入っているではないか。ということは彼女は一枚一枚,スポンサーの名前を確認しながらCDにサインしたってことである。このパーソナル・タッチを喜ばずにいられようか。スポンサーとなった人間の数は結構多かったはずなのに,この気づかいは素晴らしい。

Rachael_yamagata002_2 更にはThank Youレターも印刷すれば済んでしまうところを,全て自筆である。こういう手作り感をオーディエンスと共有してくれるミュージシャンは本当にありがたい。もちろん,昨今はCD不況であるから,こうしたタイプの付加価値付きの商品提供が増えているのは事実である。以前取り上げたJewelのアルバムもそうだった。だが,Rachaelの対応はJewelの比ではない。これで私はますます彼女が好きになってしまった。

しかし,こうした有能なミュージシャンにレコーディングの機会すら与えられない音楽業界は一体どうなっているのか。全く困ったもんだと言っておきたいが,今日のところはこうして現物が届いたことを素直に喜びたい。こんなことならずっと応援しちゃうよ。

ちなみにこのCDはネット・ショップで簡単に手に入る(もちろん,サインはなしだが)ので,皆さんもRachael Yamagataへの応援よろしくどうぞ。

2012年1月16日 (月)

鬼の霍乱:ヒーリング編

Jakob_lindberg001 "J.S. Bach: Lute Music" Jakob Lindberg(BIS)

今回,突然のウイルス性胃腸炎で苦しんでいた私であるが,正直言って音楽を聞く気にもなれなかったというのが発症時の正直な感想である。そらが徐々に回復過程に入って,床に臥せっていながら,iPodで音楽を聞きながら休んでいたのだが,その中で最も私にフィットし,さまざまなかたちでヒーリング効果を与えてくれたのがこのアルバムであった。

調子が悪い時である。当然のことながら賑やかな音楽は聞けない。同じバッハでも山下和仁が弾いた「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」のギター版でさえ刺激が強いと感じるぐらい弱っていた私にとって,これほど適した音楽はなかったと言ってよいだろう。とにかく穏やかで美しい。そして,小音量でも全然問題ないところがまた嬉しい。Lindbergはスウェーデン出身のリュート奏者。アルバムは相当数出しているが,本作が私が保有する唯一の彼の作品のはずである(あるいはもう一枚ぐらいあったか...)。それにしてもこれはよい。バッハの曲がいいのは当たり前だが,ここで聞かれるリュートの響きが何とも素晴らしいのである。この音楽がバックにかかっていれば,どんな「ながら仕事」だって可能だと言い切ってしまいたいぐらいである。ここまでくれば,優れたアンビエント・ミュージックである。「ゴルトベルク変奏曲」がカイザーリンク伯爵の不眠症対策として演奏されたというのもこれを聞いているとうなずける話だなぁと思ってしまう。

今回,ちょっとした病気になってみて,こうした音楽の(アンビエンスによる)ヒーリング効果を本当に肌で実感したと言える。喧騒に満ちた現代にこそ,こうした音楽は絶対に必要だと感じた今回の週末であった。聞き方が半端なので,星をつけることは控えるが,本当にこの音楽には救われた思いがしたとだけ言っておこう。現代人には間違いなくこういう音楽が必要なのだ。最高の癒しの音楽である。

Recorded on July 1 - 10, 1992

Personnel: Jakob Lindberg (lute)

2012年1月15日 (日)

続・鬼の霍乱

急に体調がおかしくなり,一晩経過しても悪化はすれども改善せずという状態であったので,ついに病院行きとなった。嘔吐,下痢,腹痛,発熱という症状並びに突発的な発症という点から,私がかつてインドネシアで死にかけた「食あたり」(その時は実際には「水あたり」だったが...)も疑ったのだが,どうも「ウイルス性胃腸炎」ということらしい。プリンセス・マサコもウイルス性胃腸炎にかかっていたらしいので,世間で流行しているのかもしれないが,これには正直言ってまいった。

おそらくこのブログの読者の皆さんならば,私が相当の食いしん坊だというのはご理解頂けると思うが,その私が何も食べたいと思わないのだから重症である。しかも医者からは一日は絶食を命じられ,胃痛の状態からすれば,別にそれも苦にならないと思ったのは甘く,やっぱりお腹が空いてくるのである。私は以前,大腸憩室炎で入院を余儀なくされた時,約一週間,絶飲食を強いられたが,その時は点滴をしていたからお腹はすかなかったが,今回はもろに空腹感が襲ってきた。何とか水分摂取でごまかしているが,これではインスタント・デトックスみたいな感じだなぁなんてしょうもないことを考えてしまった。これで体重が落ちるならもうけものとポジティブに考えることとしたい。

こんな状態であるから,音楽について書けるような状態ではないが,床に臥せっていながら,ジャズやロックを聞く気分にも到底なれず,今回は昨今リッピングにいそしんでいたクラシックのピアノ音楽やギター音楽,宗教音楽等にお世話になったって感じである。

徐々に快方には向かいつつあるが,もうしばらくの休息が必要のようである(とか何とか言って,ここまで書いていること自体が異常?)。

2012年1月14日 (土)

鬼の霍乱

焦った。突然の発熱でダウンである。原因不明。からだ全体が痛いが、特に胃が変なのは珍しい。とにかく寝て治そう。

ということで今日はお休みです。

2012年1月13日 (金)

怒涛のクラシック音楽リッピング中に聞いたGershwin集

Previn_gershwin "Gershwin: Rhapsody in Blue, Piano Concert in F, An American in Paris" Andre Previn, Pittsburgh Symphony Orchestra (Philips)

現在,私は手持ちのCDのリッピングに取り組んでいるが,特にクラシックを中心にリッピングを行っている。正直言ってしまうと,私は相応のクラシックのCDを保有しているが,聞く頻度は必ずしも高くないため,取り出しやすい位置に置いているわけではなく,多くのCDが段ボール箱に詰まったままなのである。それに加えて,亡くなった私の父の遺品であるクラシックのCDもあるため,もはや収拾のつかない状態にあると言ってもよい。そうした状態からこれらの音楽を救うためにはリッピングでiPodに突っ込んでやるしかないのである。

私の父はモーツァルトが異常なまでに好きな人だったし,それに加えて自分がヴァイオリンを弾いていたこともあって,ヴァイオリンのCDも結構な数が揃っている。それに加えて特徴的なのが所謂ド派手なオーケストラ物もある程度含まれていたのだが,そうしたCDが今,私の手許にあるわけだ。

そんな中で,今回聞いたのがPrevinによるGershwin集である。George Gershwinの音楽を演奏するならばアメリカのオケがいいだろう(というか,それ以外にはちょっと考えにくい)とは思える。そうした中で,Pittsburghってのは聞いたことがなかったので,オケとしてはどうなんだろうと思って聞いたが,これが結構楽しめた。特にPrevinが弾き振りをした"Rhapsody in Blue"とピアノ協奏曲は悪くないと思った。それに比べると,「パリのアメリカ人」のスピード感の欠如と言うか,ダイナミズム不足が気になってしまった。この曲では指揮に専念することで,Previnが色々なことを考えてしまったのか,あるいは弾き振りの時はオケの自由度が高かったのかとも勘繰ってしまうが,それでもこうしてGershwinの曲をまとめて聞く機会なんてなかなかないものだから,このアルバムは重宝なものであることには間違いない。

いずれにしても,純粋クラシックと言うよりも,元祖ジャズとクラシックの融合みたいな音楽であるから,クラシックにアレルギーを感じるリスナーでもこれならOKってことにもなるかもしれないが,この演奏を聞いていると,Previnってさすが元ジャズ・ピアニストだよねぇと思いたくなるような出来である。特に"Rhapsody in Blue"。このアルバムで私が最も気に入ったのはこの演奏である。

ということで,今回,リッピングも完了したので,聞く機会も増えるだろうと思える演奏。やはりこの音楽はアメリカのオケでなければならないな。星★★★☆。

2012年1月12日 (木)

今年最初の新譜はこれ:Charlie Haden & Hank Jones

Come_sunday "Come Sunday" Charlie Haden & Hank Jones (Emarcy)

今年最初の新譜は随分と渋いところから始まってしまうが,Charlie Hadenと故Hank Jonesのデュオ作である。このご両人の作品というと,94年にレコーディングされた"Steal Away"が思い浮かぶが,ジャケの雰囲気も似ているからわかる通り,本作は前作の続編と考えてよいものである。前作は"Spirituals, Hymns and Folk Songs"という副題がついていたが,今回も同系統の音楽である。

はっきり言ってしまえば,この音楽が似合うのは教会においてだろうと思う。私は宗教音楽も好きなのだが,クラシックのそれとは全く違うタイプの音楽でありながら,アメリカの教会にはこういう音楽は間違いなくフィットするはずだと思えるのだ。それはゴスペルがアメリカの教会に似つかわしいのと同じことだと言ってもよいが,私は日曜の教会でこんな音楽がお説教の後で流れていれば,敬虔さは別としても信仰への志が増してしまうのではないかと思ってしまう。つまり,お説教のバックグラウンドで流れ,お説教の説得力を増すには本当にちょうどよいのではないかと感じられるのである。もちろん,収録されているのは宗教的な曲ばかりではないが,ここに入っている曲の組合せが,大袈裟に言えば,特にアメリカ人であれば自国の歴史を振り返らせ,自身の宗教観を見直す契機にさえなりそうな気がしてくる。こうした歴史観,宗教観の中で音楽が果たしてきた役割は決して小さくなかったのだろうと思わせるような演奏集なのだ。

若干表現が仰々しくなってしまったが,滋味に溢れた音楽でありながら,教会音楽として十分通用しそうに感じられるというのは事実である。日本でこうした音楽が受けるとは思えないのだが,私には日頃の生活に落ち着きを確保させ,日頃の生活とは全く違う何かを感じさせてくれるタイプの音楽である。去年のホリデイ・シーズンの前にこれがリリースされていれば,ヘビー・ローテーション確実だったが,松の内を過ぎてから正月番組を見ているような気分にさせられるのはちょっと残念。リリースのタイミングは重要である。だからと言って音楽的な価値は下がらないので星★★★★。でもやっぱり日本ではあまり受けないだろうな(苦笑)。

Recorded on February 2 & 3, 2010

Personnel: Charlie Haden(b), Hank Jones(p)

2012年1月11日 (水)

1981年のWynton Marsalis,誠に見事なものである。

Keystone_3 "Keystone 3" Art Blakey & the Jazz Messengers (Concord)

いつもこのブログに書いているが,私はジャズ原理主義者としてのWynton Marsalisが嫌いである。彼のくそ真面目さというか,ジャズマンとしての豪快さの欠如のようなものが,どうにも鼻につくし,それに加えてやっている音楽が面白くないのが気に入らない。Eric Claptonとの"Play the Blues"を私が酷評したのもWyntonの持つ嫌らしさをぷんぷん感じさせたからにほかならない。

では私がずっとWyntonのことが嫌いだったかと言えば,そんなことはない。彼がシーンに登場し,ラッパを吹きまくっていた頃のレコーディングには今でも魅力を感じているし,Columbiaの作品だってある時期まではちゃんと聞いてきた。正直言ってしまえば,非常に優れたトランペッターであることは間違いのない事実である。ところが彼の性格がジャズを演奏する邪魔をしているとしか思えない。だから日本では彼に対する評価がアメリカほど高まることはないし,日本においては特に彼を毛嫌いしているジャズ・ファンも結構な数は存在してしまっているように思えてならない。

だが,そうした批判も本日取り上げるアルバムでの彼の吹奏ぶりを聞いてしまえば,一体何なんだということにならざるをえまい。とにかくうまい。文句のつけようがないぐらいうまい。そして,優れたバンド・リーダーであるArt Blakeyのもと,まだまだ若いWyntonはおかしな原理主義に走らず,ラッパを吹くことに集中しているところがいいのである。これだけスリリングな演奏を展開されては,いかにWyntonに厳しい日本においてでも文句を言うファンはいるまい。うま過ぎるのが難点だとか言われてしまってはどうしようもないが,これはジャズという観点から見ても優れた演奏なのは間違いようのない事実だろう。

私はWyntonがずっとこういう路線を貫いていてくれれば,一生ついていきます~って感じのモードだったはずだが,伝統主義的な色彩を強め始めた段階で,買うアルバムの数は一気に減少してしまった。それが本当に残念なのである。それぐらい魅力的な演奏群である。さらには,兄貴のBranfordは本来の楽器ではないアルト・サックスを吹いているが,かなりいい線をいっている。うまい人は何をやってもうまいってことだろう。ピアノのDonald Brownもうまいのだが,なぜ彼が教職のポジションを優先してしまったのかは解せない。いずれにしても,1980年代前半というハードバップ・リバイバルの時代に,これならこうした音楽がリバイバルして当然だと思わせるような演奏を展開してことを実証しているアルバムである。星★★★★☆。

Recorded Live at Keystone Korner in San Francisco in January 1981

Personnel: Art Blakey(ds), Wynton Marsalis(tp), Branford Marsalis(as), Bill Pierce(ts), Donald Brown(p), Charles Fambrough(b)

2012年1月10日 (火)

いい曲が揃っているMr. Misterのベスト盤

Mr_mister "The Best of Mr. Mister" Mr. Mister(Buddah)

暫く前にブログのお知り合いのki-maさんが,Mr. Misterの"Go On..."について書かれていて,Mr. Misterって懐かしいよなぁなんて思ってしまったので,ついついこのアルバムをダウンロードした私である。

私はMr. Misterについては何ら思い入れはなかったのだが,その懐かしさの源泉が彼らの#1ヒットである"Broken Wings"と"Kyrie",特に後者によるものであることは間違いのない事実である。しかし,こうして彼らのベスト盤を聞いていると,この2曲に限らず,かなりいい曲が揃っていることがよくわかる。音は典型的な80年代サウンドだと言ってしまえばその通りであるが,アダルト・オリエンティッド・ロックの鑑みたいな感じだと言えばいいだろうか。それはRichard Pageの魅力的な声もあるだろうし,いい具合のバックの演奏にもそうした部分が感じられるのだ。

もちろんこういう音楽である。毒にも薬にもならないと言ったら言い過ぎかもしれないが,いずれにしても,日常生活を送る上で何の邪魔にもならない。音が鳴っているからと言って,多くの人を瞠目させることはないだろうし,音楽に気付かないまま通り過ぎてしまう可能性があると言えばそれもその通りである。しかし,これをよくよく聞いてみれば,Richard PageとSteve Georgeのソング・ライティングの能力は非常に高いことはよくわかるし,本当に心地よい音楽を奏でるグループであったことはすぐにわかるはずである。少なくとも,カフェとかでこういう音楽が掛かっていたら,私は嬉しくなってしまうはずである。

冷静に振り返ってみると,彼らのキャリアでは2曲の#1ヒットが目立ち過ぎて,一発屋(失礼!)と言われても仕方がないのだが,そうした評価を覆すに十分な佳曲が揃っているナイスなベスト盤である。今,2012年にこういう音楽に接しても,全然問題ないのは私が彼らと同時代をくぐり抜けているからだろうが,それにしてもこれは実際に楽しいアルバムであった。星★★★★。昨今,TVコマーシャルなどでも70~80年代の音楽に再度光が当てられることが多い(Yesの「燃える朝焼け」やBlondieまで使われているしねぇ)が,私のような中年世代をターゲットして狙うだけでなく,若い人たちにもこうした音楽の魅力が伝わればいいのではないか,とオヤジくさいことを考えてしまった(笑)。

それにしても,こういうAORをやっていたグループのドラマーであったPat Mastelottoが,後にKing Crimsonの一員となって激しい音楽を演奏していることにはちょっと驚かされる。どういう頭脳構造をしているのやら...(苦笑)。

Personnel: Richard Page(vo, g, b), Steve George(key, vo), Steve Farris(g, vo), Pat Mastelotto(ds) with Luis Conte(perc)

2012年1月 9日 (月)

中年音楽狂が一肌脱ぐシリーズ(第14回):Sarah Vaughan編

Sarah "Crazy and Mixed up" Sarah Vaughan (Pablo)

「お店に並んでいそうでジャズをこれから聴いてみようかなぁという人にお薦めというのがありましたらご紹介ください。」というリクエストにお応えするという趣旨のこのシリーズ,あまりジャズ・ヴォーカルを聞かない私でもこれなら確実に推薦できるということで本作をチョイスである。

Sarah Vaughanのキャリアのピークは1970年代後半から1980年代前半だと思うが,まさに人間国宝級の歌唱を繰り広げていたと言っても過言ではない。何を出しても絶好調,何を出しても物凄いというような感じだったと思う。そうした中で,私がジャズ的に聞いてもこれは凄いと思ったのがこのアルバム,中でも「枯葉("Autumn Leaves")」の激唱である。冒頭の"I Didn't Know What Time It Was"から素晴らしい歌唱なのだが,「枯葉」があまりに強烈過ぎて,このアルバムと言えば「枯葉」みたいになってしまう部分があるのは否定できない。しかし,もちろんそれだけではない。全てが素晴らしいのである。

バックも敢えてホーンを入れずに,やや地味と思わせるメンツが揃っているが,見事な助演ぶりである。しかし,はっきり言ってしまえば,何よりもSarahの歌唱があればいいのである。そういう意味で全てがかすんでしまう名唱の数々である。

なのではあるが,それでも「枯葉」なのである。Joe Passのギター・ソロから入り,急速調で展開されるこの演奏には,あの「枯葉」のメロディは一切出てこない。そしてSarahはスキャットだけで歌い切ってしまうという離れ業を展開しているが,これこそジャズのスリルと思わせるような演奏である。この演奏をするためにはホーン・プレイヤーが不要だったというよりも,Sarahがその役割を見事なまでにこなしてしまっているのだ。これぞプロデューサーたるNorman Granzの慧眼と言わずして何と言うか。とにかく,これは凄い。

そして,Ivan Linsの"Love Dance"や"The Island"まで歌いこなしてしまうこの懐の広さ。日本に美空ひばりあれば,米国にSarah Vaughanありみたいな感じである。ジャズ・ヴォーカルがまさにジャズのカテゴリーであることを痛切に感じさせてくれる傑作。星★★★★★。いつ聞いても凄い作品である。

でもジャケだけはいつまで経っても購買意欲は高めないが(爆)。

Recorded March 12, 1982

Personnel: Sarah Vaughan(vo), Joe Pass(g), Roland Hanna(p), Andy Simpkins(b), Harold Jones(ds)

2012年1月 8日 (日)

Brad Mehldauの楽歴を振り返る:第2回

Allen_mezquida001 "A Good Thing" Allen Mezquida (Koch)

このブログで,「Brad Mehldauの楽歴を振り返る」と題して,彼の初レコーディング(のはず)のChristopher Hollydayのアルバムを取り上げた(記事はこちら)のは昨年(2011年)の11月であった。また同様の趣旨で記事を書こうなんて言いながら,2か月も経過してしまったが,久々の第2回である。このアルバムは,比較的地味な作品であるが,Mehldauのキャリアでは比較的初期のレコーディングとして今回選択してみた。

Allen Mezquidaという人のキャリアは今ひとつよくわからないのだが,ジャズ界から現在はアニメーション界に転身をしたらしいという相当変わった経歴と言ってよい。しかし,ここではきっちりとしたジャズ・ミュージシャンとしての仕事をしており,アルバムのクォリティはかなり高い。ハード・スインガーというよりも,ややダークなイメージを持ったアルト・サックス奏者だと思う。このアルバムは92年後半のレコーディングということで,Mehdauが22歳当時の演奏である。但し,リリースされたのは96年のようである。なぜ,4年近くもお蔵入りしていたのかはわからないが,メンバーの中で,リーダーが最も無名というところも影響しているかもしれない。一方で,ベースのSmithが5曲のオリジナルを提供していているので,彼らの双頭アルバムとも言ってよいだろう。

そうした中でのMehldauであるが,ここではBill Maysとピアノを分けあっていて,Mehldauh参加は4曲である。ここではBill Maysとのフレージングの違い(というかトーンの違い)が結構はっきり出ていて,聴き比べるのも面白いのだが,それにしても落ち着いたトーンで,渋いフレーズを繰り出す姿は22歳とは思えない出来である。私はこのアルバムを初めて聞いた時から,結構評価しているつもりだが,久しぶりに聞いても,これはかなりレベルが高い演奏だったと感じられるものになっている。Christopher Hollydayのアルバムの時にも書いたが,Mehldauは若い頃からかなり大人な演奏をしていたことを再確認させられるアルバム。星★★★★。地味なアルバムであるが,ネット上では比較的入手は容易。当時のライジング・スターとしてのMehldauの参加で売ろうとしたのかという,うがった見方をしてはリーダーに失礼か(笑)。いずれにしても埋もれさせるには惜しい佳作である。

Recorded on September 18, 19 and October 1, 1992

Personnel: Allen Mezquida(as, p), Brad Mehldau(p), Bill Mays(p), Sean Smith(b), Leon Parker(ds)

2012年1月 7日 (土)

Adeleはこんなことになっていたのか...

Adele_21 "21" Adele (XL Recordings)

私はこの人のデビュー・アルバムを聞いて,歌のうまさはわかるものの,今一歩のめり込めない部分があったのは事実である。だから,このセカンド・アルバムが出た時もスルーしていたのだが,どうも周りの評価を聞いているとこれは極めて優れたアルバムらしいということで,発売からほぼ1年も経ってからようやく聞いてみたのだが,これは確かに凄いわ。

この人は発売当時はまだ22歳だったはずだが,この歌のうまさは半端ではない。しかも今回のアルバムはロック・テイストを強く感じさせて,Adeleには間違いなくファーストよりこの路線の方があっているだろうということを確信させる(少なくとも私にとってはそうだ)作品である。振り返ってみれば,私にはファーストは落ち着き過ぎていたのである。

それにしても,おそらく2011年に世界で最も売れたCDがこれというのは意外という気がしないでもないが,それは歌の持つ力の訴求力が非常に高かったことを実証しているのではないだろうか。この人(及びこの音楽)がビルボードのチャートで13週連続1位というのは実は凄いことであるが,それはおそらく非常に幅広いオーディエンスにアピールしたからにほかならない。ロック・テイストが強まったからと言っても,この音楽であれば,年齢層を関係なく受け入れられること間違いなしというところがあり,それがこの人の成功につながったと考えていいように思えた私である。更にはそこはかとなく流れるソウルなフィーリングもあり,これなら年齢ばかりか,人種も関係なく訴求すると考えられるのだ。だからと言って,オーディエンスに媚びた姿勢がないところがこれまた共感を誘うはずである。本当にこれが20代前半の音楽なのか。レベル高過ぎである。

私はファーストにピンとこなかったというだけで,このアルバムを聞かなかったことの不明を恥じたと言わざるをえない。これは本当に優れた「歌のアルバム」であり,今後の彼女の活動にも期待をかけたくなる一作。これを去年のうちに聞いていたら,間違いなくベストを争っていたはずである。それぐらいのクォリティの作品であり,そうした反省も込めて星★★★★★。とにかく予断は禁物である。本当にびっくりした。しかし同じ島国なのに,英国の音楽に関する懐は深く,ミュージシャンのクォリティはなぜこうも高いのか...。

尚,本作は参加ミュージシャンが非常に多いのでPersonnelは省略。

2012年1月 6日 (金)

「悪の教典」:年末年始に読む本としては極めて不適切?(苦笑)

Photo 「悪の教典」 貴志 祐介(文藝春秋)

「このミス」でも高く評価された作品がノベルス化されたので読んでみた。約700ページ弱,2段組の長編で嵩張ること甚だしく,通勤時にも荷物になるので,さっさと読み終えようと思いつつ,読み終わらなかったものを年末年始で読了である。私は「このミス」等のランキングはほとんど信用していないのだが,この本は舞台が私の現在の居住地ということもあり,手に取ったというのが本音である。作者が舞台としている学校は「あそこ」だろうというような描写が出てくるのは面白いのだが,これが年末年始に読む本としては最悪の後味しか与えないえげつなさである。

正直言って,フィクションにしてもこんな無茶苦茶な話はありえないし,ピカレスク小説にしても,もう少し書きようがあるだろうとまず突っ込みを入れたくなるような本である。登場人物にしろ,ストーリーにしろ,何じゃこれはというようなものばかり。特に女子高生の描き方はまさにステレオタイプである。作者の貴志祐介は私より年長なので,この程度にしか描けないことにはある程度の仕方なさというものはあろうが,それにしてもである。主人公のIQが極めて高いレベルという設定の悪漢小説ならば,その主人公の行動パターンがあまりに場当たり的,かつ思考回路が短絡的という指摘は免れない。リアリティがなさ過ぎるのである。結局のところ,自身の犯罪とどのように露見させないかしか考えていないという発想はありえない。既にここが非常識なのだ。鴉のくだりにしたってこれほど中途半端なものはなかろう。

これだけの長編を読ませる作者の力は認めないわけではないが,最後の方は読んでいて殺伐とした気分になってきたのは事実である。よって,上述の通り,この本を読むタイミングとして年末年始はまずかったと反省してしまった私である。私は以前,同じく「このミス」第1位となった歌野晶午の「葉桜の季節に君を想うということ」をこのブログで酷評したことがあるが,それと同じように,これが年間最高作とする選者(たち)のセンスがよくわからない。それだけ,日本ミステリー界のレベルが低下していることの裏返しだと言ってもいいのではないのか。後味の悪さに加えて,そうした要素も影響して私にはどうも納得がいかない。星★★。

いずれにしても,なんで西宮在住の作家が選んだ舞台が私の居住地だったのかは謎としか言いようがない(笑)が,おそらくは彼のサラリーマン時代の勤務地が近かったのだろうってことか。唯一この本を読んで,シンパシーを感じたのがDream Theaterだ,Emerson Lake & Palmerだ等というバンド名が出てきたあたり。本書のタイトルもEL&Pの「悪の教典#9(Karn Evil 9)」と多少は関係があるんだろうなぁ。ついでに言っておくと,本書を読んで「モリタート」という曲が嫌いになる人が多くても仕方がないだろうなぁ(笑)。理由はご自身で読んでからご判断を。

2012年1月 5日 (木)

今から35年前のPMG:若いねぇ...。

Pmg_blue_asphalt001 "Blue Asphalt" Pat Metheny Group(Jazz Door)

毎度毎度新年になると,私はブートレッグを取り上げているような気もするが,これもプレス盤とは言え,音源としては完全なブートレッグである。本作も,段ボール箱の中に潜んでいたものを久々に取り出して聞いたもの。これは今から約35年前のPat Metheny Group(PMG)の演奏であるが,ここにはテクノロジーに依存しないほとんど「素」のPMGの音が捉えられていると言ってもいいのではないか。

何だかんだ言ってもブート音源であるから,音は大したことはない。しかも私が持っているのはCDだが,おそらくはLP起こしのスクラッチ・ノイズも入っているから,こんなものを買うのはマニアックな人々だけでよい。しかし,この当時から聴衆の反応はヴィヴィッドで,PMGが米国内において,ある程度の人気を確保していたことをうかがわせるものになっているが,それにしても,テクノロジーに依存しないPMGというのは聞いていて懐かしい。ギター・シンセもなければ,Lyle Maysもほぼピアノ一本(+若干のシンセサイザー)での演奏である。ギターにもエフェクターもそんなに効いておらず,「素のES-175」の音に近いようにも思える(途中でデジタル・ディレイを踏んでいるようにも聞こえるが...)。

この後,PMGはどんどんポピュラーになっていって,ステージングにも金がかかっていくようになっていくが,本作が録音されたのはスタンディングでも500人程度のキャパのThe Great American Music Hallである。ヴェニューからして,今のPMGとは比べ物にならないのだが,それでも昔はこうだったのだということもわかるし,正式な音源化のための化粧を施す前の演奏はこういう感じだったんだろうねぇと思わせるような演奏の数々である。

しかもやっているのは初期のレパートリー("Watercolors"なんてもう聞くことはできまい)。"San Lorenzo"を新曲だなんて言ってるんだから,時代感は推して知るべし。加えてLarry Coryellがいた当時のGary Burtonバンドのレパートリー"Wrong Is Right"なんて曲もやっていて,とにかく初々しいのである。そうは言いながらも,すでにPatの手癖も感じられるところはあって,「昔も今も」の部分はあるが,それでも演奏自体はまだまだビッグ・ネーム化する前の純粋な勢いみたいなものを感じさせるものと言えるのではないか。曲紹介をするPatの声も若いしねぇ...。

ということで,これも時代の一断面と考えればいいのだろうが,よくもまぁこんなものまで手を出しているわと我ながら呆れてしまった。でも久しぶりに聞いてみて,面白かったのも事実である。自宅内段ボール箱あさりの効果ってところか(苦笑)。

Recorded Live at the Great American Music Hall on August 31, 1977

Personnel: Pat Metheny(g), Lyle Mays(p, key), Mark Egan(b), Dan Gottlieb(ds)

2012年1月 4日 (水)

"The Soul of Toots Thielemans":こういうのが999円なら大歓迎だ

The_soul_of_toots_thielemans "The Soul of Toots Thielemans" Toots Thielemans(Signature)

世の中CDが売れない時代になってきたが,そうした中で,続々と過去のアルバムが有名無名含めて廉価で再発になることは悪いことではない。このアルバムもそんな流れの中で999円でリリースされたものだが,正直言ってこれまでの国内盤が高過ぎたのであって,こうした"Best Value"的な流れはより強まっていくに違いない。まぁ既に保有しているアルバムが廉価でリリースされると微妙な感覚がないわけではないが,いろいろな音源が聞き易くなることはめでたい。それにしても,最近の廉価再発シリーズには,まぁよくもこんなものまでというような作品も含まれているが,こういう渋い作品に陽の目が当たることはありがたいことである。

本作ではTootsのギターとハーモニカの両方が楽しめるが,バックを支えるRay Bryantのポイントも高い。何とも軽快なアルバムである。"You Are the Sunshine"のバックのトライアングル(?)の音は読経の鉦のようで苦笑してしまうし,「日曜日の子供は退屈」のような曲は浮いているようでもあるが,全体的に見れば演奏の質はちゃんと保たれているから安心して聞ける。最後にギターと口笛のユニゾンも出てくるしね。

歴史に残るような傑作とかそういう評価の対象ではないが,くつろぎながら聞くには丁度よくて,正月の飲み疲れにはいい具合のサウンドであった。星★★★☆。

Recorded in October and November, 1959

Personnel: Toots Thielemans(harm,g), Ray Bryant(p), Tommy Bryant(b), Oliver Jackson(ds)

2012年1月 3日 (火)

ジャズ化の難しい素材であるLeonard Bernsteinをうまく仕上げたBill Charlap

Somewhere "Somewhere: The Songs of Leonard Bernstein" Bill Charlap (Blue Note)

Leonard Bernstein,偉大なる指揮者であるとともに,ミュージカルその他に多くの曲を残した作曲家である。代表的な作品は"West Side Story"ということになるだろうが,ジャズ界で取り上げられるのは"Some Other Time"がほとんどで,彼の曲に取り組んだアルバムはそれほど多くないはずである。このブログでも私はPeter AsplundによるBernstein集を取り上げたことがある(記事はこちら)が,そこにも「Bernsteinの書く曲は,必ずしもジャズ化に適したものばかりとは言えない」と書いた。著名な曲はそういう感じなのである。Bernsteinの曲は"Cool"に代表されるように,強烈にジャズを感じさせるものもありながら,特に有名な曲は曲そのものが個性が強過ぎて難しいのかなぁなんて思うのだが,いずれにしても,私の感覚ではジャズマンがBernstein集に取り組むことは決して容易ではないように感じてしまうのである。

そんなBernsteinの曲にBill Charlapが挑んだアルバムであるが,このアルバムはそうした懸念を払拭するに十分な出来と思う。正直言って,あまり有名な曲はないって感じなのだが,だからこそ,こちらも先入観がなしで聞けるからなのか,普通のピアノ・トリオに聞こえてしまうから不思議なものである。ここでも,有名曲以外はスタンダードですかい?なんて言いたくなるような演奏が多い。つまり,曲は難しいかもしれないが,リスナー側も構えて聞かなければ,実は結構楽しめてしまうのではないかと思わせるような演奏続きである。

これはBill Charlapというピアニストの実力に依存するところもありだと思うが,久しぶりに段ボールの中から取り出して聞いてみて,このアルバムが想像以上に楽しめるアルバムだったことに驚いてしまった私である。やっぱり音楽はもう少しちゃんと聞いてから判断せねばなんて反省をしてしまった年始であった。星★★★★。でも"West Side"の曲はやっぱり難しいよねぇ...(苦笑)。

Recorded on October 15 &16,2003

Personnel: Bill Charlap(p), Kenny Washington(b), Peter Washington(ds)

2012年1月 2日 (月)

年末にフランスから届いた"Elegiac Cycle"の譜面

Elegiac_cycle "Elegiac Cycle: Complete Transcription and Analysis" Phillippe Andre(Outre Mesure)

この本がBrad MehldauのWebサイトに紹介されていて,コンプリートを目指すならこれもっていうことで,わざわざフランスに発注したものである。私はピアノが弾けるわけではないのだが,ここでの分析やMehldauへのインタビューは気になって当然である。しかし,送料込みにすると財布には決して優しいものではなかったが,それでもこれは仕方があるまい。

"Elegiac Cycle"はBrad Mehldauによる初のソロ・アルバムであるが,コンセプト・アルバムとしての色彩が強く,純然たるジャズというよりも記譜された部分の方が多いのではないかと思わせる作品であった。よって,この作品が好きか嫌いかと問われれば,「微妙」と答えるジャズ・ファンも多いのではないかと思う。しかし,Mehldauのピアニストとしての魅力を十分に感じさせる作品であり,ある意味「問題作」と言ってもよかったものかもしれない。

この本は,同作に収められた全曲を譜面化したものであり,そこに分析を施すというスタイルになっている。フランスの出版社のものだが,英仏2カ国語対応となっているので,分析部やインタビュー部は英語で読めばいい話である。私はまだちゃんと目を通しきれていないのだが,これはアルバムを聞きながら眺めているといろいろな発見があるのではないかと思わせてくれるものであり,今後,時間を掛けて"Elegiac Cycle"という作品に対峙していくことになるかもしれない。

しかし,なぜ,今このタイミングで"Elegiac Cycle"なのかはわからないが,それでもこうした書籍が出てくるところに,現代のピアノ・シーンにおけるBrad Mehldauの重要性が示されているようにも思う。本の背表紙にはジャズ・ミュージシャン,クラシックのミュージシャン,そしてミュージシャンでない一般人もそれぞれの読み方ができると書いてあるから,私はBrad Mehldauのファンという立場で,この本にじっくり取り組みたいと思っている。

2012年1月 1日 (日)

あけましておめでとうございます。

皆さん,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。このブログも6年目に突入です。我ながらよく続いていると思いますが,さすがに毎日更新が厳しくなってきたのも事実です。今年もできるだけ毎日更新は心掛けますが,若干スローダウンする可能性もあるかもしれません。

今年は昨年にも増して,旧作はダウンロードに依存することが多くなると思います。つまり,中古盤は特定の基準を満たすものしか買わないということになるだろうと予想していますが,新作も聞いてみたいんだけど,買うほどでもないと感じる作品については,ダウンロードを多用するのではないかと予想しています。人間,変われば変わるものですが,物理的な制約も大きいので,これも仕方がないことだと思っています。

そんなこともあって,今年は従来に増して,温故知新モードが強まる可能性もあります。更にはクロゼットの奥深くに格納されていたCD群をリッピングする作業を継続しているので,そうした音源を取り上げる機会は必然的に増えるでしょうし,新譜についても何でも買えばいいってのではなく,ある程度数は絞り込んでいく必要を感じています。

ということで,今年一発目の音楽は何にしようか考えましたが,穏やかな新年を迎えるにはちょうどいいこのアルバムを。久しく聞いていませんでしたが思った以上に楽しめます。ということで,ここからはいつもの調子で。

Here_there_and_everywhere "Here, There & Everywhere: The Songs of the Beatles" Various Artists (Windham Hill)

このアルバムは段ボール箱の中にずっと収まったままで,久しく聞いていなかったものである。確かこれは某ショップのバーゲン品として購入したもののはずだが,こうして新年を迎えるにあたって聞いてみると,Windham Hillらしい穏やかさに溢れていて,丁度いいチョイスだったと感じてしまった。

そもそもがThe Beatlesの曲をWindham Hillレーベルのアーチストが演奏するのであるから,そうなるであろうことは想像できたわけだが,せわしない年末,年始に聞くには適している感覚が強いというところだろう。

もちろん,元ネタがThe Beatlesであるから,曲のクォリティは確保されているのは当然だが,それがWindham Hillというレーベルのカラーといい具合に混ざり合っているがゆえの心地よささと言ってもいいかもしれない。Michael Hedgesが弾く"If I Needed Someone"なんて,日頃のバカテクを抑制し,穏やかなものである。また,それがいいのである。更にTuck  & PattiとThe Beatlesの曲の親和性は半端ではない。ということで,このアルバムには評価などは不要。曲を楽しみ,穏やかさを楽しめばよいと思う。まぁ,これをジャズのカテゴリーに入れていいかどうかってのは疑問だが...。

Personnel: W.G.Snuffy Walden(g), Patti Cathcart(vo), Tuck Andress(g), Wayne Johnson(g), Liz Story(p), Michael Hedges(g), George Winston(p), Doyle Dykes(g), Angels of Venice: Eric Gorfain(vln), Peggy Baldwin(cello), Laura Halladay(fl), John Bergamo(tabla), Christopher Pellani(udu), Carol Tatum(dulcimer, key, synth), Sean Harkness(g), Tracy Silverman(vln, vla), Thea Suits(fl), Lisa Lynne(bandoura, harp, mandolin), Free Klassic: Erich Kory(cello), Real Levielle(p) with Dean Parks(g), Randy Kerber(p), Peter Kent(vln), Evan Wilson(vln), Maria Newman(vla), David Low(cello), Michael Manring(b), George Tortorelli(recorder, fl), Stephanie Fire(cello),  Gilberto "Gil" Morales(g), Jim McGrath(perc)

« 2011年12月 | トップページ | 2012年2月 »

Amazon検索

2016年おすすめ作

2016年おすすめ作(本)