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2011年11月30日 (水)

活動継続ってことね。Jeff Lorber Fusionの新作リリース。

Jlf_galaxy "Galaxy" Jeff Lorber Fusion (Heads Up)

昨年,"Now's the Time"で見事に復活を遂げたJeff Lorber Fusion(JLF)であるが,それはまさしくフュージョンを現在形で演奏し,その筋のファンを歓喜させたことも記憶に新しい(記事はこちら)。そのまま,活動を継続するかどうかはわからなかったのだが,めでたく復活第2作がリリースされた。本来のリリース日はもう少し先のはずなのだが,「黄色い」ショップにはもう売っていたのである。なんでやねん。

それはさておき,今回もJLFは好調を維持していて,ファンは間違いなく嬉しくなるはずである。前作はヴォーカル入りの曲もあったが,今回は完全インストである。前作とほぼ同じようなメンバーで録音されているが,今回も昔のレパートリーを4曲入れて長年のファンに対する配慮も万全って感じだ。"Soft Space"から"The Samba","Wizard Island"からタイトル・トラックと"City",そして"Worth Waiting for"から"The Underground"って具合である。"The Samba"なんて無茶苦茶懐かしいよねぇ。サックスの代わりにアコースティック・ギターにメロディ・ラインを弾かせ,オリジナルよりはだいぶアダルト感が強まっているが,これはこれでいいと思う。"The Underground"はエンディングがやや唐突かなと思うが,オリジナルの演奏がデジタルっぽいものだったのに,こちらは時代が進んでもサウンドがアナログに回帰しているようにさえ思わせる。多分これは意図的だろうなぁ。

Jeff Lorber曰く,本作は前作の続編ではあるが,"It features the same rhythm section, but it's even more into the jazz fusion direction. It's more energetic and the performances are tighter."という言葉通り,タイトなリズムに乗ったフュージョンらしいフュージョンが楽しめる。旧作以外ではHaslipが共作に加わるとともに,共同プロデュースも兼ねて,JLFの屋台骨を支える存在となっている。そして何よりもいいのはLorberのソロがどれもいけていることで,ピアノで弾くソロにはKenny Kirklandを彷彿とさせる瞬間もあったのは面白いと思った。Lorberのソロはバンドの中でも特に優れた出来を示していると思う。前にも書いたかもしれないが,これは完全にスムーズ・ジャズとは一線を画する音楽であって,カッコいいのである。こうしたカッコよさを保ち続けているのだから,フュージョン・ミュージック全盛期からこうした音楽に親しんできたリスナーも十分納得できるアルバムである。星★★★★。やっぱ好きだわ,JLF。

こうしてメンツも固定してきているし,12月には欧州ツアーにも出るのだから,そろそろJLFで来日してもいいんじゃないかと思うが...。まぁ多分来年は来るだろうと期待しておこう。来日したら是非見たいバンドであることには間違いない。そういう人って多いんだろうなぁ(笑)。

Personnel: Jeff Lorber(key, p, g, loop), Eric Marienthal(ss, as, ts, fl), Jimmy Haslip(b, perc),  Randy Brecker(tp), Paul Jackson Jr.(g), Larry Koonse(g), Anders "Theo" Theander(g), Michael Thompson(g), Vinnie Colaiuta(ds), Dave Weckl (Drums), Lenny Castro(perc), Dave Mann (horn)

2011年11月29日 (火)

Albert Aylerとはこういう音楽だったのか...

Ayler "Nuits De La Fondation Maeght 1970" Albert Ayler (Shandar→Water)

恥ずかしながら,私の人生でAlbert Aylerの音楽を聞くチャンスは一度もなかった。私はフリー・ジャズが嫌いなわけでもないし,山下洋輔の"Montreux Afterglow"ではAylerの"Ghost"をやる山下トリオを嬉々として聞いているのだから,Aylerアレルギーがあるわけでもない。しかし,意識的にAylerの音楽を聞いたことはないし,ジャズ喫茶でも掛かっていた記憶もない。これもひとえに縁がないということになるのだろう。

では私にとっての初Aylerとなったこのアルバムはどうだったのか。本作は"Last Recording"のVol.1 & 2として出ていたアルバムを1CDにまとめたお徳用盤であるが,実はあまたのAyler盤に手が出ない中,この"Last Recording"だけは聞いてみたいと思っていたのだが,ずっと廃盤だと思い込んでいた。そんなわけで,このCDの存在を知った時には「な~んだ」という思いがあったのだが,それにしてもこうして初めてAylerに触れることができたのだから,まずはめでたい。そんな思いも抱えて聞いたのだが,はっきり言ってこれは素晴らしいアルバムである。

Ayler_last_recording_1 楽器の定位が曲ごとにぐちゃぐちゃになったり,ピアノがほとんど聞き取れないという瑕疵はある。しかし,私がここに感じるのはそんな瑕疵を越えた宗教にも近い感覚である。もちろん,Aylerのテナーが非常にスピリチュアルな感覚をもたらすということもあるのだが,Call Cobbsのピアノが教会での伴奏のような感じなのである。Aylerのサックスに対して我関せずって感じでパラパラとやっているのは「説教の伴奏は目立ってはいかん」というところか(笑)。

Ayler_last_recording_2 よって,この音楽は明らかにフリー・ジャズではあるが,ゴスペルや教会音楽との関連性を非常に強く感じさせるものだったと言っては言い過ぎかもしれないが,でもそうなのだから仕方がない。この録音から4カ月後にイースト・リバーに浮かんでしまうAylerであるが,この精神世界はかなり深い。Aylerのアルバムには"Spiritual Unity"という作品もあるが,やはりそうした指向を持っていたミュージシャンなのではないかと思われる。

これは単なるフリー・ジャズの世界を逸脱してしまったという作品として,多くの人に聞かれるべき音楽であろう。こんな音楽をこの歳になるまで聞かなかったのは恥だが,この歳になってこそ深く心に響く音楽もあるはずである。若い頃,これを聞いていたら私はどう感じただろうか?おそらくは「何じゃこのピアノは?」という反応しか示せなかったかもしれない。しかし,今は上述のように感じるのである。

音は決してよくないし,ミキシングも無茶苦茶だが,Aylerのサックスはちゃんと捉えられていて,Aylerを聞くだけならば何の問題もないし,私にとっては苦行どころか,驚きと感動に満ちた傑作アルバムであった。星★★★★★。特に,CDでは後半にあたるVol.2の演奏には敬虔な気持ちにすらなってしまう。但し,アルバムの性格上,万人にはお薦めできないので為念。

いずれにしても,デザイン的にはCDよりも,LPのジャケの方が圧倒的にいいだろうということで,LP2枚のイメージもアップしておく。特にVol. 1のジャケの雰囲気にはしびれるよなぁ。いかにCDのジャケがいけていないか一目瞭然(笑)。

Recorded Live on July 27, 1970

Personnel: Albert Ayler (ts), Call Cobbs (p), Steve Tintweiss (b), Allen Blairman (ds), Mary Maria(vo)

2011年11月28日 (月)

強烈にクセのあるPilc~Moutin~Hoenig

Threedom "Threedom" Pilc Moutin Hoenig(Motema Music)

実を言ってしまうと私はJean Michel Pilcの演奏にはピンとこなかったというのが実態である。今回のメンツはそのピンとこなかったSweet Basilでのライブ盤のメンツと一緒だが,以前聞いた時と,リズムの二人に対する意識は大きく変わっている(その当時なら誰,それ?みたいな感じだったはず)ので,今回はどのように響くのか?とは言いながら,そのSweet Basilでのライブ盤もどこにしまったかわからないような状態で,何年も聞いていないから,今,聞いたらどういう感覚をおぼえるのかは定かではない(開き直り)。

しかし,アルバム・タイトルからして'Theree' + 'Freedom'の掛け言葉であろうから,自由度が高い演奏であることは想像できるが,このスタンダードの解体具合は自由度高過ぎと言われても仕方ないぐらいである。この崩し方はある意味クセのある音楽だと言ってもよいわけで,それが好き嫌いにもつながること必定という感じになっている。

それに比べると,それ以外の3人の共作となっている曲が普通に聞こえてしまうぐらいなのだから,いかにスタンダードに新たな解釈を加えることがチャレンジングなことであることがよく理解できるアルバムと言ってもよい。こっちも原曲を知っているだけに身構えてしまうのである。その取り組みは否定するものではないが,そうした中に面白さを見出すこともできる一方,こりゃやり過ぎだと感じることもあるのは致し方がない。私としては"Afro Blue"なんかは面白く聞けたし,全体を通しても決して嫌いではないのだが,やり過ぎ感があるのも事実である。そうした先入観がなければ,この音楽がどのようにリスナーに受け留められるのかは興味深いところではあるが,だからと言って,これをジャズに馴染みのない人に勧めるというのは無理だ。よって,一般にこのアルバムを聞くのは,ある程度ジャズを聞き込んでいる人たちということになるわけで,そこでの反応は好きか嫌いかの二者択一にならざるをえまい。

確かにこの演奏は面白い。でもそれは才気が先走っているように思えて,そこが気に入らないと言われても私には反論できないという極めてアンビバレントな感覚を与えるアルバムである。ふ~んとは思えても,それ以上の思い入れを与えられないのが私にとってのこの音楽の限界。星★★★。やっぱり私はPilcとは相性が悪いってことだな(笑)。

尚,最後の"Smile"ではHoenigがお得意のドラムスでのメロディ・ライン叩きをやっているが,はっきり言って私には全然面白いと思えない。Hoenigのファンには申し訳ないが,もうあれはいい加減にした方がいいように思える。

ところで,このアルバム,一度我が家にはデリバリーされたことになっていたのだが,現物が行方不明となってしまったため,サイトにクレームを入れたところ,再入荷するまでえらい時間が掛かってしまった。よって,タイミングとしては随分と遅れてしまったが,まぁいいや。

Recorded on March 4 & 5, 2011

Personnel: Jean-Michel Pilc(p), Francois Moutin(b), Ari Hoenig(ds)

2011年11月27日 (日)

かろうじてでも勝ってよかったシリア戦。

ロンドン・オリンピック最終予選のシリア戦を見ていて思ったのだが,シリアというチーム,かなり強かった。1対1に追いつかれた時はドローを覚悟したが,比嘉→大津のクロス+ヘッドで勝ち越したゴールは見事であった。U-22が逆境に耐える力を見せたのは大きな収穫だろう。

先のバーレーン戦ではこのチームの実力を疑問視するツイートを発した私だったが,今日も守備の甘さはほめられないとしても,先日の試合よりははるかにましなオフェンスを示したのはよかった。いずれにしても今日の勝利は大きい。

これで,ジョーカーとしての永井の活躍の余地が広まれば,このチームの攻撃力は更に増すと思われるが,この2試合は永井は見せ場がなく,本人もフラストレーションがたまっているのではないか。一度でいいから,永井のスピードを活かした縦いちのカウンターを見てみたいと思っているのはきっと私だけではないはずである。2月のアウェーのシリア戦で見せてもらおう。こうなったらアウェーでもシリアを粉砕してすっきり五輪出場を決めよう!

中古で拾ったJanis SiegelとFred Herschのデュオ:選曲の勝利だ

Short_stories "Short Stories" Janis Siegel & Fred Hersch(Atlantic)

Janis Siegelと言えばManhattan Transferの前置きが当然付いてしまうのは仕方がないところだとは思う。私も彼女の歌はマントラでしか聞いたことがないが,そこでは結構元気なハイトーン・ヴォイスを聞かせている彼女がFred Herschとの双頭リーダー作を2枚吹き込んでいることは知っていたが,今まで聞いたことはなかった。たまたま,中古盤屋をうろついていたら,あった,あった。しかも280円(!)である。これは買う,買う,絶対買うという感じの私であった。

そして聞いてみたのだが,一部,ベースとチェロ(更にコーラスの多重録音)が入るものの,基本的に二人のデュオ。これが私の中のJanis Siegelのイメージを覆す歌いっぷりで驚いてしまった。マントラでの彼女はそれはそれでいいが,私としてはこちらを圧倒的に支持したくなるような歌唱なのだ。まず声がいつもより落ち着いて聞こえる。これはFred Herschのピアノとの相乗効果という気がしないでもないが,Janisってこんな声だったっけと思わされるのである。そして,それを生みだしているのがここでの選曲ではないかと思う。

コンテンポラリーなポップ・チューンが特に前半に顕著なかたちで収められており,後半のややクラシックな選曲といい対比を見せている。だって,冒頭からJulia Fordham,James Taylor,Todd Rundgren,Joni Mitchellと続くのである。この手の音楽好きなら,この曲の並びでまいるだろう。Todd Rundgrenなんてあのマイナー作"A Capella"からの選曲である"Pretending to Care"である。へぇ~となること必定ではないか。

私としてはこの前半でまいっていたのだが,後半の曲もこれが渋い選曲で続けてまいってしまったのである。最後なんて"Never Let Me Go"だしねぇ。これはプロデューサーとしてのJanisとHerschの仕事の勝利だと思わず一人ごちた私であった。

これは味わい深く,見逃すには惜しい好アルバムであり,しかも280円。全く文句なし。Herschのピアノはこの当時(本作は1989年リリース)から十分に美しい。星★★★★☆。全く得した気分である。

Personnel: Janis Siegel(vo), Fred Hersch(p), Harvie Swartz(b), Kris Yenny(cello)

2011年11月26日 (土)

ゆるゆるのAsiaのライブ

Asia "Fantasia" Asia(Eagle Records)

Asiaが結成25周年ということで,オリジナル・メンバーで来日した時,懐かしいなぁ,行ってもいいかなぁなんて思いつつ,大昔のGreg Lake入りAsiaでがっくりきた(演奏が短過ぎたのもあるが...)のがトラウマとなって,結局行かなかった。しかし,同時代を過ごした人間としては気になるところであるし,このアルバムは聞いてもいいかなぁとずっと思っていたところへ,格安ダウンロード・サイトでMP3ゲットである。まぁ,媒体を買うほどでもないとは思っていたので,これで十分である(笑)。

それでもって,このアルバムを聞いてみたのだが,メンバーが所属したバンドのレパートリーも取り入れてしまうのはまぁ許せるとしても,メンバーの年齢を感じさせる演奏になっているのには笑ってしまった。もちろん,Asiaなんて昔の名前で出ていますの代表格みたいなものであるし,新しいファン層を確保しようなんて気もないだろうから,ある程度の年齢層以上のオーディエンスに郷愁を感じさせればいいのだと言い切ってしまうこともできるだろう。だが,年齢も近いSteve Hackettあたりが現役感バリバリなのに対してみると,これはやはりゆるい。緩過ぎる。

私は以前にもこのブログにも書いたとおり,Asiaについては1stアルバムしか評価していないと言ってもいいぐらい(記事はこちら)なので,私としては1stに偏った選曲で何の問題もない。しかし,なんだか演奏のテンポも遅く感じられて,スピード感があまり感じられないのはなぜか。よくよく聞いてみると,この何とも言えないとろい感覚というか,爺さん感を強めているのがJohn Wettonのヴォーカルにあるように思えてくるのである。年齢もあって,キーを下げて歌わざるをえないのがやはり痛い。だからこそ,ここではインストの"Fanfare for the Common Man"なんか全然問題を感じないように思える。また,Wettonのようなヴォーカリストに「ラジオスターの悲劇」を歌わせることはないだろうと思わせるようなありえない演出もマイナスに影響している。Yesの"Roundabout"は善戦しているが,それでも「ラジオスター」はないだろう。なんでここでバグルスをやらなければならないのか全く理解不能なのである。

そうした要素もあって,このアルバムはノスタルジーは刺激しても,私にとっては音楽としてはあまり楽しめるとは言えないのである。ということで,やっぱりダウンロードで正解だったと思わせるというところもあり,星★★☆が精一杯。それにしてもほめるべきは全然関係ないレパートリーのヴォーカルとベース・ラインをちゃんとやり遂げたWettonなのだが,これほど声が出ないことを痛切に感じさせられるとは思わなかった。

Recorded Live at 新宿厚生年金会館 on March 8, 2007

Personnel: Geoff Downes(key, vo), Steve Howe(g, vo), Carl Palmer(ds, perc), John Wetton(vo, b)

2011年11月25日 (金)

Ralph Townerファン必聴のイタリア映画のサントラ盤

Un_altra_vita "Un' Altra Vita" Original Soundtrack Composed by Ralph Towner (CAM)

いつも書いているように,私はRalph Townerの結構なファンである。だからと言って,コレクターを目指そうというつもりはないのだが,それでもついつい買ってしまうのがファンとしての性である。そんな私が,Ralph TownerのWebサイトに掲載されている彼のディスコグラフィで,どうしても気になっていたのがこのアルバムである。しかし,国内で見つけるのは難しそうだということもあり,それならば,CAMレーベルの本国,イタリアのサイトでゲットしたものである。このサイトには実は結構世話になっているが,今回も楽勝で入手できたことは誠にありがたい。

そうは言ってもサウンドトラックである。映画の内容は全くわからないので何とも言えないが,特定のテーマのバリエーションが何回も出てくるのは仕方がないと考えれば,このアルバムはRalph Townerのファンにはこたえられない作品だと言えるのではないか。Townerのオリジナル曲をギターとピアノ,キーボードで美しく紡いでいくという表現がぴったりの音なのだ。クレジットだけ見ると,Townerはキーボードと書いているので,珍しやギター演奏なしかと思わせるが,ちゃんとギターも6弦,12弦ともに弾いている。このあたりがラテン系の大らかさというか,いい加減さと言うべきか(笑)。

それはさておき,演奏はまさにTownerらしいのだが,面白かったのがピアノ・トリオで演奏される"Lonely Crowd"という曲。何ともBill Evans的に響くのである。こうしたところにTownerにも与えるBill Evansの影響を感じ取ってしまった私である。この曲だけがショップで掛かっていたら,相当多くの人が反応するだろうなぁと思って,一人で受けてしまった私である。

いずれにしても,映画音楽とは言え,Townerのオリジナルで固めていて,これだけファンが期待する音を出しているのだから,やはりこれはTownerファンなら必聴だと言っていいと思う。イタリアから取り寄せただけの甲斐は間違いなくあったというもの。あまりに嬉しくなってしまったので,稀少度込みで星★★★★☆としてしまおう。

Personnel: Ralph Towner(g, p, key), Fabrizio Sferra(ds), Massimo Moriconi(b)

2011年11月24日 (木)

John Scofield対MMWのライブ

Msmw "In Case the World Changes Its Mind" Medeski Scofielid Martin & Wood (Indirecto)

John ScofieldとMedeski Martin & Wood(MMW)との共演は98年の"A Go Go"に始まり,2006年にはMSMW名義で"Out Louder"をリリースしている。彼ら4人によるライブ盤が発売になったので,今なおユニットとして活動しているのかと思ったのだが,MMWのWebサイトによれば,これは2006年のライブの模様を収めたものということである。なーんだ。

それはさておき,このユニットのライブと言えば,私は未聴ながら,"Out Louder"の国内盤に6曲入りライブがおまけで付いていたからそれとかぶっているのかと思いきや,確かに4曲はかぶっているが,同じライブかどうかは詳しいクレジットが本作には付帯していないので不明である。まぁ私は件のアルバムは輸入盤の1枚モノを買ったので,このユニットのライブは本作が初めてということになる。

私の場合,ジャム・バンドの魅力がよくわかっているわけではないので,実は"A Go Go"が出た時もピンと来ていなかった。そもそも私はScofieldは"Still Warm"やデニチェンとのバンドの頃が好きなので,泥臭いファンク色を強めた演奏や,こうしたジャム・バンド的なアプローチが好みというわけではないのである。MMWに思い入れがあるわけでもないしなぁ。私が保有する彼らのアルバムはMedeskiがピアノに専念した"Tonic"と,彼らのサイトやライブ会場で販売していた100%即興の"Electronic Tonic"だけなのだ。ということで,私は彼らのファンでも何でもない(笑)。そうした前提がありながらも,このアルバムに収録された"What Now"のような激しい演奏には興奮させられるし,なかなか楽しめるアルバムだと思う。まぁ,それでも2枚組で2時間近い演奏を聞かされると,さすがにきついかなぁって気がしないでもないが,そうは言ってもこのバンドの相性は悪くないと思える。

ここで聞かれるJohn Scofieldのギターは誰が聞いてもジョンスコであるというぐらいの個性を炸裂させているが,MMWも時にブルージーに,特にファンキーにと全く対等に演奏を行っているところがいいということだと思う。"Miles Behind"のように,タイトルからも想像できるように,明らかにMilesのエレクトリック・バンドに影響されたような曲もあるところも,Milesバンド出身のジョンスコはさておき,MMWの出自を感じさせて面白い。演奏時間の長さゆえ,何回も聞きたくなるようなものではないとしても,たまにはこのユニットで演奏するのもいいのではないかと思える作品。星★★★★。

Personnel: John Medeski(key), John Scofield(g), Billy Martin(ds, perc), Chris Wood(b)

2011年11月23日 (水)

追悼:Paul Motian

Paul_motian Twitter上では情報が飛び交っていたにもかかわらず,メディア情報がちっとも出てこなくて真偽を確かめられなかったのだが,AP通信がJoe Lovanoの情報として伝えているので,本当に亡くなったということのようである。骨髄不全による合併症とのこと。

Paul Motianと言えば,一般的にはBill Evansとのトリオってなってしまうところがある意味では不幸なところであるが,Keith Jarrettとのアメリカン・クァルテットや近年のバンド・リーダーとしての異彩を放つ活動等,それだけの人でないことは明らかである。

80歳という年齢を考えれば仕方ないところもあるが,最近まで活躍ぶりが伝えられていただけにその死は誠に惜しまれる。

R.I.P.

久々にRy Cooderのアルバムを買った

Ry_cooder "Pull Up Some Dust And Sit Sown" Ry Cooder(Nonesuch)

私は昔からRy Cooderのファンだったのだが,彼の音楽を聞かなくなってしまったのはブエナビスタ・ソシアル・クラブあたりからのことである。元祖ルーツ・ミュージックと呼ぶべき音楽や,世界の音楽に対する造詣の深さを感じさせた初期のアルバム群は今でも好きなのだが,一時期映画音楽を連発したり,プロデュース業に精を出すようになってからあまり興味を持てなくなってしまったのである。

しかし,今回のアルバムは世間で,以前のRy Cooderに戻ったというようなトーンの批評が多く聞かれたため,私もRolling Stone誌の選ぶ世界100大ギタリストの第8位に位置する彼のギター・プレイが聞けるものと期待して,久しぶりに彼のアルバムを購入した。とっくに買っていたこのアルバムについての記事をなかなか書けなかったのは,単にCDの買い過ぎで追いついていないという理由によるものだが,いずれにしてもMavis Staplesの"We'll Never Turn Back"でのような演奏(記事はこちら)を求めていたことは間違いない事実である。

このアルバムを聞いていると,確かに昔のトーンに近い気もする。それはFlaco Jimenezとの共演によるところも大きいようにも感じるし,曲そのものもルーツ・ミュージック的な感覚が強いからではないかと思う。冒頭のギターのイントロも嬉しいしねぇ。今回,久しぶりにRy Cooderのアルバムを聞いて,彼の声質が歳を重ねたなぁという感覚が強かったことには驚いたが,それでもこれは多くの人がRy Cooderに求めるであろう音楽を収めていて,評価が高くなるのも当然という気がする。かく言う私もこうしたRy Cooderの取り組みを評価する一人であり,Ry Cooderかくあるべしだと感じてしまうのである。

そうは言いながら,彼が近年リリースしたアルバムを全く聞いていないのだから,彼の音楽の変遷自体を理解しているわけではないので,これが真っ当な評価かどうかと言えばかなり怪しいのだが,それでも所謂カリフォルニア3部作はコンセプト・アルバムのようでもあり,私には敷居が高いように感じられたのである。何を隠そう,私の一番お気に入りのRy Cooderのアルバムは"Show Time"なのだから,そうした感覚もご理解頂けよう。

ではなぜ記事のアップにこれほど時間が掛かってしまったのか。これはまさにCDの買い過ぎに起因していることは言うまでもないのだが,それでも「いの一番」に聞きたいと思わなかったというのが,昨今の私のRy Cooderに対する思い入れの低さを表している。だが,久しぶりに通してアルバムを聞いてみると,Ry Cooder健在を強く感じさせてくれたのが非常に嬉しかった。マリアッチ風味もあったり,いろいろな音楽を吸収していることは以前から全く変わっていない。

だが,このアルバムで最高なのは"John Lee Hooker for President"だろう。Ry Cooderのブルーズ魂が炸裂している。これはいい。ということで,久しぶりに買ってみて間違いなく正解だったと思える作品。星★★★★☆。

Personnel: Ry Cooder(vo, g, mandolin, mandola, banjo, bass, bajo sexto, marimba, key), Joachim Cooder(ds, b), Flaco Jimenez(accor), Arturo Gallardo(cl, as), Erasto Robles(tb),
Carlos Gonzales(tp), Pablo Molina(sousaphone, alto horn), Edgar Castro(perc), Terry Evans, Arnold McCuller, Willie Green, Juliette Commagere(vo), Jesus Guzman, Raul Cuellar, Jimmy Cuellar, Ismael Hernandez(vln), Robert Francis(b), Rene Camacho(b), Robert Francis(b), Jim Keltner(ds)

2011年11月22日 (火)

久々の痛風発作

ここ暫くおさまっていた発作が出てしまった。暫く忘れていた鈍痛だったが,これはやはりなった人しかわかるまい。まじで辛い。痛みで寝返りも打てないのは本当に辛い。まぁ,自業自得であるが。ということで,本日はお休みです。

2011年11月21日 (月)

プロデュース作だけでなく,Joe Henry自身の作品も...。

Reverie "Reverie" Joe Henry(Anti)

先日,Joe HenryがプロデュースしたMe'Shell Ndegeocelloの新作を取り上げたばかり(記事はこちら)だが,それはややHenry色は薄いものだったとは言え,やはり優れた作品だったと思っている。だが,その前にJoe Henry自身の新譜が出ているにもかかわらず,ちっとも記事にできていなかったのはやはりまずかろうということで,ようやくのアップである。

ここのところのJoe Henryの作品はどれも素晴らしい出来で,私は毎年のように彼の作品やプロデュース作をその年のベスト作の一つに選んできたように思う。私にとっては本当に信頼できるミュージシャンなのである。今回の作品も全く期待を裏切らない出来のものであり,これまた私はしびれてしまった。

そもそも,Joe Henryの作品というのは渋いものが多いのだが,本作は輪をかけて渋いと言うべきか。しかし,静謐な中に深い情念を感じさせるHenryのヴォーカル,それに寄り添うが如き見事なRibotのギターって感じで,そもそもからして私が好きなサウンドなのだ。いつものHenry節と言えばその通りだが,やはりこれは最高である。プロデューサーとしてのHenryを評価するのはもちろんだが,この自分の作品のクォリティの高さはこの人への信頼感を更に高めると言わざるをえない。作品として,もう少し変化があってもいいようにも思えるし,私にとっては,Henryの最高傑作は"Scar"だと思っているので,星★★★★☆とするが,それでも今年屈指のアルバムの一枚と言ってもよい。この渋さ,やはり筋金入りである。

こういうアルバムを聞かされると,彼の来日時にライブに行けなかったことを痛烈に後悔してしまう私である。しかも,今年の12/2にはロンドンでBrad MehldauとJoe Henryのデュオが予定されているではないか(http://www.wigmore-hall.org.uk/whats-on/productions/joe-henry-singer)。聞きたいなぁ...。BBCが録音して,放送してくれるのを期待しよう。

Personnel: Joe Henry(vo, g), Jay Bellerose(ds), Keefus Ciancia(p), Lisa Hannigan(vo), Jean McClain(vo), David Piltch(b), Marc Ribot(g, ukulele), Patrick Warren(org, p)

2011年11月20日 (日)

豪華キャストだが,静かに恐怖を盛り上げる「コンテイジョン」

Contagion 「コンテイジョン("Contagion")」('11,米/UAE,Warner Brothers)

監督:Steven Soderburgh

出演:Gwyneth Paltrow,Matt Damon,Kate Winslett,Lawrence Fishburne,Jude Law,Marion Cotillard

Steven Soderburghという監督は結構多作の人だが,「トラフィック」や「イギリスから来た男」等で結構痺れさせてくれる監督である。但し,私は「オーシャンズ」シリーズは全く興味がなくて,一本も見ていないが...(笑)。

そのSoderburghが撮ったウイルス・パニックものであるが,描写そのものには驚きはないものの,静かな中に恐怖感を盛り上げる感覚はまぁまぁ楽しめる。役者も揃っているので,安心感もあるが,ちょっと群集心理の描き方やワクチンの組成の過程がステレオタイプかなぁと思わせる部分があるのは残念である。だが,全体的には「なんで」と思わされるシーンがないわけではないが,シナリオとしては大きな破綻はない(特にラスト・シーンはなぜ冒頭がDay 2から始まるのかをなるほどと思わせる。)し,傑作とは言わずとも決して悪い映画ではないと思う。

ただ,かなりシリアスな映画なので,楽しめる映画かと言えば必ずしもそうではないが,今後,ありえる話として見ると結構怖い。役者陣の中ではJude Lawが嫌なキャラをうまく演じていて,大したものだと思わされる。

この映画はウイルスの蔓延を描いた映画ではあるが,その一方で怖いと思わされたのが,ネット上での情報流通の力ってことだろうか。いい情報も,悪い情報も,流れてしまえば公知となることがさらっとではあるが描かれていて,Facebookユーザに対する警告のようにも取れるシーンがあった。まぁ,これもステレオタイプな描き方とだと言ってしまえばその通りだが,それはそれとしてシナリオに織り込まれることが現代的だなぁなんて思ってしまった。

いずれにしても,これは比較的地味ながら,それなりに見せる映画だとは思う。時間も106分というのは適切。加えて,懐かしやEliott Gouldが出ていたのに妙に反応してしまった私であった。星★★★☆。しかし,一部えげつないところもあるので,気の弱い人は注意が必要ですわ。でもこの映画,日本では厳しいかもな〜。まぁ、ポスターに書いてある"Nothing Spreads Like Fear."というのは言い得て妙だが。

2011年11月19日 (土)

非常に面白かったSteve Jobsの伝記

Steve_jobs_2 「スティーブ・ジョブズ(1,2)」 ウォルター・アイザックソン著,井口耕二訳(講談社)

話題の書である。Steve Jobsの死去を受けて,急遽出版されたものであり,時代のアイコンとしてのSteve Jobsの公式な伝記ということで,ベストセラーとなっているのは皆さんご承知のとおりである。しかし,そうは言っても伝記だからねぇ。そんなに面白く読めるのかと懐疑的だったのも事実なのだが,この本は面白い。いや無茶苦茶面白い。ここ数日でペースを上げて読んだが,途中でやめられなくなる魅力すら感じてしまった。

もちろん,そうした要素は私がiPhoneやiPodのユーザであることから,どのようにそうした製品が生み出されたのかという興味もあったことは事実であるが,それよりも何よりもこのSteve Jobsの「紙一重」的な無茶苦茶さがあまりにも強烈な個性として際立っているからではないかと思う。

はっきり言ってしまえば,Steve Jobs,嫌な奴だと言われても仕方ないだろう。彼が自分の上司だったとすれば私は「狂ってる」という一言を残し,会社を去っていたのではないかと思わされるような人物である。しかし,そんなJobsが見事なコンセプトに基づいた製品を続々と生み出していく推進力となっていたのだから,その偉業は称えるべきであることには間違いないだろう。しかもJobsはPixarを買収し,その会長職にもあったのだから,この人の嗅覚は何とも凄いものだということはよくわかってしまう。だからと言って,人間としては全く尊敬できないタイプの人間であることとのギャップがあまりにも面白過ぎるのである。

業界の有名人たちも多数登場するが,ほとんどの人間がひと癖もふた癖もあり,これまた人間的には好きになれない奴が多そうだというのがこれまた面白いが,そうでもなければ,大きな成功を収めることなど無理だということなのかもしれない。

いずれにしても,こんなキャラの人間から,あの見事なプレゼンテーションが生まれるということにはある意味信じ難いことがあるとも思えるのだが,人間の心理に対する見事な洞察力を持っていたことは間違いないんだろうなぁと感じざるをえない。

この本は,そうしたSteve Jobsの暗黒面もあぶり出しながら,アップルという企業の価値をあそこまで高められたのかという観点でも面白く読めるはずである。これは単なるビジネス書としてではなく,優れた読み物として認識されるべき本だと思う。とにかくSteve Jobs,『XXとXXは「紙一重」』を地で行っている。でも絶対上司にはしたくない(笑)。星★★★★★。今年読んだ本では突出して面白かった。

2011年11月18日 (金)

Me'Shell Ndegéocelloの新作はJoe Henryプロデュース!

Weather "Weather" Me'Shell Ndegéocello (Naive)

Me'Shell Ndegéocelloと私の出会いは"Peace Beyond Passion"だったのだが,そこに聞かれる素晴らしいファンクネスに痺れたことは今でも鮮明に覚えている。とにかくこれは凄いと思った。それ以来,私はMe'Shell Ndegeocelloのファンであるが,それを上回るアルバムは結局出ていないのは少し残念ではある。それぐらい"Peace Beyond Passion"のインパクトが強いのである。

そんなMe'Shell Ndegéocelloの新作であるが,このアルバムのリリースを知った時,プロデュースがJoe Henryだと知って,一刻も早く聞きたいと思った私である。基本的に,私はJoe Henryがプロデュースしているアルバムは無条件購入することとしているが,以前,このブログで取り上げたHugh Laurie(記事はこちら)のようにダメなものもないわけではない。しかし,Joe Henryのプロデュース作品は概してクォリティが高く,大体は私の期待に応えてくれるし,音楽そのものが私の趣味と合致していることもあり,無条件購入のスタンスは崩すつもりはない。

そのJoe HenryがMe'Shell Ndegéocelloをプロデュースするとどういうことになるのかというところに興味は集中するわけだが,この2人,以前から共演経験もあるから,接点がないわけではないとしても,昨今のJoe Henry的ルーツ・ロックの世界とは違うだろうという予測はつこうというものだ。

そして結果はと言うと,いつものJoe Henryプロデュース作品とは,何となく感覚の違いがある。音楽的にはいつものように地味と言えば地味だが,サウンドがいつもと違うのである。それが何に起因するかはクレジットを見れば明らかになる。使っているミュージシャンがいつもと違うのだから,サウンドは違って当たり前である。Joe Henryプロデュース作では,Henry組とでも呼びたくなるようなミュージシャンたちが伴奏を担当することがほとんどなのだが,本作ではMe'Shell人脈のミュージシャンによる演奏がほとんどで,Henry組はJay Belleroseぐらいのものだからだ。それも1曲しか叩いていないし...。

また,このアルバムを一言で表すとすれば,「穏やか」なアルバムだと言えるのではないかと思う。"Peace Beyond Passion"に聞かれたようなヘヴィーなファンクネスはここでは聞かれない。ここで聞かれる彼女のヴォーカルにはSadeすら想起させるような部分もあって驚かされてしまうのだ。だが,その穏やかさとJoe Henryプロデュースらしい音楽とが相俟って,何とも印象深い音楽を形成していると言ってよい。こうした穏やかさは前作"Devil's Halo"からも感じられないわけではなかったが,それを更に推し進めたものと言ってもいいかもしれない。Me'Shell Ndegéocelloにこうした音楽を期待しているわけではないというリスナーもいるだろうが,これはJoe Henryとのコラボレーションによって生み出された新機軸だと言ってもいいと思う。これぞ最高傑作とは評価しないが,それでも十分聞く価値はあると思う。確かにちょっと地味かなぁって気はするが(笑)。星★★★★☆。

Personnel: Me'Shell Ndegéocello(vo, b), Chris Bruce(g, b), Keefus Ciancia(p, effects), Deantoni Parks(ds), Gabe Noel(cello, b), Jay Bellerose(ds), Benji Hughes(p)

2011年11月17日 (木)

本日出張中

昨日から福岡に出張中。案の定呑んだくれた結果、PCの電源すら入れることなく、爆睡した私である。何故それほど呑んだくれるのか?それは福岡に行けばわかる(謎)(笑)。 う〜む、いつものことながら移住したい。

2011年11月16日 (水)

中年音楽狂が一肌脱ぐシリーズ(第13回):Jimmy Smith編

The_cat "The Cat" Jimmy Smith (Verve)

「お店に並んでいそうでジャズをこれから聴いてみようかなぁという人にお薦めというのがありましたらご紹介ください。」というリクエストにお応えするという趣旨のこのシリーズ,前回はEric Dolphyを取り上げて,ハードル上げ過ぎという話もあったので,ちょっと路線を別の方向へ向けてみたい。今回はJimmy Smithである。

Jimmy SmithならばBlue Noteレーベルの作品を取り上げればいいではないかという声も聞こえてきそうだが,そこは天邪鬼の私である。直球勝負はしないのである。このアルバムはJimmy SmithがLalo Schifrinのアレンジのもとに,ビッグバンドをバックにオルガンを弾きまくったアルバムである。Lalo Schifrinと言えば,「スパイ大作戦("Mission Impossible"である)」,「ブリット」,「ダーティハリー」,「燃えよドラゴン」等の映画,TVにおけるアクションものでのスリリングなスコアを特長とする作編曲家である。そのSchifrinとJimmy Smithが合体するとどうなるのか。

このアルバムを聞いていると,こうしたモダン・ジャズが1960年代においては映画と強く結びついていたことを感じさせるものである。冒頭はAlain Delon(アラン・ドロン)主演「危険がいっぱい」のテーマ曲だし,2曲目のタイトル・トラックも同映画からのもの。更に4曲目はGeorge Peppard(懐かしの「特攻野郎Aチーム」...)主演「大いなる野望」のテーマ曲である。確かにここでの演奏を聞いていると,60年代にはこういう映画音楽が多かったように感じるから不思議である。ついでに言ってしまうと,7曲目は"Delon's Blues"ということで,Alain Delonにちなんだものとなっており,やはり映画とのつながりが強いのだ。即ち,時代を表わす代表的な「大衆向けの音」がこのアルバムには含まれていたと考えてよい。ジャズ原理主義者から言わせれば,ジャズは芸術であって,大衆向けのものではない等という考え方もあろうが,この音楽は大衆的であっても,大衆に迎合しているのではない。大衆がこの音楽を求めただけなのである。

よって,このアルバムは1964年というリリース・タイミングにおいて,当時の人々の音楽に対する感覚を認識する上での指標となるとも言える。そういう意味では非常に聞き易いアルバムではありながら,きっちりとSchifrinらしいスリルにも溢れている。もちろん,ここでの主役はSmithなわけで,彼のオルガンがいかに強力で,かつ魅力的なものであるかを見事に実証しており,これが何とも楽しいのだ。難しいところは一切なし。このグルーブに身をまかせればよい。

とは言え仕掛けは準備してある。それはバックのビッグバンドに木管がいないということである。リズム・セクション以外はブラスで固めるというのは非常に珍しいと思えるが,それがJimmy Smithのオルガンとぴったり合っているのだから見事なものだ。このアルバムはオルガンとビッグバンドの見事な共演ぶりと,更には時代を切り取ったという要素を踏まえて,聞いておいて損はないし,間違いなく楽しめるアルバムである。とにかく固いことは言わずに聞きましょう。星★★★★☆。

Recorded on April 27 & 29, 1964

Personnel: Jimmy Smith(org), Lalo Schifrin(arr, cond), Ernie Royal, Bernie Grow, Jimmy Maxwell, Marky Markowitz, Snooky Young, Thad Jones(tp), Billy Byers, Jimmy Cleveland, Urbie Green(tb), Tony Studd(b-tb), Ray Alonge, Jimmy Buffington, Earl Chapin, Bill Correa(fr-h), Don Butterfield(tuba), Kenny Burrell(g), George Duviver(b), Grady Tate(ds), Phil Kraus(perc)

2011年11月15日 (火)

明らかに変化が生じたKeith Jarrett

Rio "Rio" Keith Jarrett (ECM)

私にとって,昨今のKeith Jarrettの活動は少し荷の重いものになってきていたのは間違いない事実である。ソロは非常に緊張感が強くて,聞いていて疲れるものになっていたし,トリオにはマンネリズムすら感じていた。そういうこともあって,今年の彼のソロ・ライブも行くのを見送った私である。だからと言って,彼の新譜が出れば必ず買ってしまうことには何の変わりもないわけで,今のところ,結構アンビバレントな感覚をKeithには抱いていると言っても過言ではない。

そのKeithによる最新作がブラジル,リオデジャネイロにおけるライブ盤なのだが,このソロ・アルバム,近年私がKeithに感じていたものとかなり違う。冒頭は最近のパターンのように現代音楽的な響きを感じさせる演奏だが,それに続くここでの演奏は近年では珍しいくらいメロディが明確な響きを持っているのである。メロディアスなのはアンコールで弾くスタンダードだけのように感じさせたKeithを何がこうさせたのかはわからない。しかし,4月にレコーディングされたものをこの時期にリリースするというのは,これまたKeithには珍しいことであり,相当この時の演奏が気に入っていることを示しているようにも思える。

これがリオという土地柄を反映したものなのか,Keithの心象を反映したものなのか,あるいは聴衆により生み出されたものなのかはわからない。Charlie Hadenとの"Jasmine"がもたらした効果かもしれない。ただ,あれは2007年の作品だから直接的な影響があるとは思えないとしても,私にとってはこうした転換は歓迎したいのである。

Keith Jarrettはフリーに近い厳しい音楽も,リリカルで美しい音楽も奏でられるプレイヤーであるが,そのバランスを自身でうまく保ってきた人だと思う。トリオで演奏する時も,スタンダードだけでなく,完全即興に取り組むこともあるのはそうしたことで多少のガス抜きをしているのだろうと想像していた。そうした中で,ソロはアンコール以外はある意味,以前の大曲指向から,複数の曲による構成へと変化したものの,曲想そのものも一定の方向性(現代音楽的アプローチ)を指向し過ぎていたようにも思える。もちろん,私が前回見たKeithのソロ・ライブではストレートなブルーズも演奏して驚かされたのも事実ではあるものの,それでもやはり敷居が高く感じていたのは私だけではないはずだ。それが,今回のアルバムでは明らかに変化が生じているのは意外でもあったが,私としては嬉しいものであった。

これが一過性のものであるかどうかはわからないが,ソロ活動においてもこうした変化を見せてくれることを今後も期待したいと思う。星★★★★☆。いずれにしても,近年のKeithのソロでは最も好きなアルバムとなった。

Recorded Live in Rio de Janeiro on April 9, 2011

Personnel: Keith Jarrett(p)

2011年11月14日 (月)

由紀さおりはええですなぁ。

1969_3 "1969" Pink Martini & Saori Yuki (EMI)

何を隠そう,私は昔から結構由紀さおりが好きで,カラオケでも彼女の歌をうなっていることが多いのだ。「夜明けのスキャット」,「手紙」,「生きがい」がカラオケ三本柱である。それがどうしたっ!て声も聞こえてきそうだが,その由紀さおりがオレゴン州ポートランドのマニアック音楽集団Pink Martiniとアルバムを作ってしまったということで,どんな音になっているのかという興味だけで買ってしまったような作品である。そんなことを言っているうちに朝日新聞にも海外のiTunesジャズ・チャートで1位とか信じられないニュースも飛び込んでくるし。

そして,更に聞いてびっくりというか,ここでの音は完全な1969年の歌謡曲,あるいはポップスを再現したものとなっているではないか。これが世界各国で発売されると言うのだから,まずはそれが驚きである。収められているのも黛ジュンの「夕月」だ,ヒデとロザンナの「真夜中のボサノバ」だ,佐良直美の「いいじゃないの幸せならば」だ,更には「ブルーライト・ヨコハマ」,「さらば夏の日」,そして「夜明けのスキャット」と,思わず私の年代の人間の涙腺を緩ませるような選曲である。とにかく懐かしいのだ。1969年と言えば,私はまだ小学校の低学年であるが,音楽はその頃から好きだったのか,あるいはテレビで歌番組ばかり見ていたのかって思いたくなるほど,懐かしい。

そんな中で新鮮に響いたのが「真夜中のボサノバ」である。さすが筒美京平,いい曲を書いている。これはカラオケにあったら絶対歌いたいと思わせる曲なのだ(爆)。これがシングルのB面だったってのだから恐れ入ってしまうが,こういう曲を見つけてくるってのも凄い。しかもコーラスをつけるTimothy Nishimotoの日本語の発音って完璧に近い。日系の血が入っているとは言え,これは結構凄いことだ。

こういうライブ感覚の演奏,歌唱っていうのは今の歌謡曲では聞けないだけに,それが逆に新鮮に響くのではないかとも思いつつ,このアルバムを支えているのはやっぱり由紀さおりだよねぇと感じていた私である。昨日取り上げたMaria Ritaもよかったが,これは由紀さおりの歌唱で聞かされてしまうようなものである。これが彼女以外の歌手だったらどうなっていたか。こんなコラボを仕掛けるThomas M. Lauderdale,相当のオタクである。そのオタクぶりも評価して星★★★★。その中でもやはり最高なのは「真夜中のボサノバ」。まじでいい曲だった。ほんまにええわぁ,由紀さおり...。

甚だ余談ながら,Pink Martiniの本拠地ポートランドも久しく行っていないが,また行きたいと思わせるいい街である。先述のTimothy Nishimotoは現地のおしゃれなエリア,Pearl Districtでワインバーも経営しているらしい。こっちも行ってみたいねぇ。

Recorded between March and June, 2011

Personnel: 由紀さおり(vo), Pink Martini <Thomas M. Lauderdale(p, celeste), Phil Baker(b), Anthony Jones(ds), Dan Faehnle(g), Tim Ellis(g), Timothy Nishimoto(vo, perc) & others>

2011年11月13日 (日)

Maria Rita:伴奏はシンプルだが,このグルーブはたまらん。

Maria_rita "Elo" Maria Rita (Warner Music Brazil)

Elis Reginaの娘であるMaria Ritaのアルバムを聞くのはこれが初めてである。なぜ買う気になったかと言えば,ショップの店頭でかかっていて,その心地よいグルーブが気に入ってしまったからにほかならない。

このアルバムでMaria Ritaを支えるのはピアノ・トリオのみである。しかし,このバックが生み出すグルーブ(特にRhodesを使った時に顕著)が例えて言えばDeodatoのトリオのように心地よく,そこに乗るMaria Ritaの声が魅力的なのだから悪いはずがない。本作には非常にモダンな感覚に溢れたバック・バンドの実力が大きく貢献しているのは確かだが,だからと言ってMaria Ritaの歌唱を決して過小評価すべきではないことは当然である。とにかくこのバンド,うまいわ。そして本当にナイスなMaria Ritaの声と歌である。こういうのを相乗効果と言うのだ。

そして,この40分弱という収録時間も丁度いい。一気に聞き通して,私は会社の行き帰りで都合3回聞いてしまったではないか。それぐらい魅力的なサウンドなのである。私としては曲にバラツキがあるものの,全面的に支持ということで,星★★★★☆。

Personnel: Maria Rita(vo), Tiago Costa(p, el-p), Cuca Teixeira(ds, perc), Sylvinho Mazzucca(b)

2011年11月12日 (土)

間もなく来日:Chris Botti,粋だねぇ...

Chris_botti_in_boston "In Boston" Chris Botti (Sony)

間もなく来日するChris Bottiの今のところ最新作になるアルバム(ベスト盤は除く)であるが,何とも豪華な作品だと言える。まずバックが凄い。ジャズ界の精鋭揃いのバンドに加えてボストン・ポップスである。これだけでも豪華だが,ゲストがまた凄い。昔のバンマスのStingはわかるとしてもJohn MayerやらSteven Tyler,更にはYo-Yo Maまでいるってどういう人脈?って感じである。

そしてここで演奏される音楽はスムーズ・ジャズなんてカテゴリーを超越した極上のポピュラー・ミュージックと言うべきだろう。何とも心地よくも美しい。そして粋である。おそらくは映像化を意識して,相当に予算を掛けて制作したアルバムだと思うが,これを聞いて文句を言う人間はいるまいというぐらいよくプロデュースされたアルバム。

そもそもChris Bottiの音楽というのは,心地よさに関しては旧作でも折り紙つきなのだが,本作はそれを更に突き抜けさせたと言うべきもの。こうなるとBottiがクラブではなく,コンサート・ホールでライブをやることに納得せざるをえない。そして,クラシカルな響きとモダン・ジャズの響きをうまく融合させている点でもこのアルバムは成功していると言ってよいだろう。このバンドなら真っ当なジャズの演奏ができて当たり前であるが,Bottiもトランペッターとしてかなりの実力者であることがよくわかる。驚いたことに"Flamenco Sketches"なんかもやっているし。これがストリングスをバックにMilesとは全く違う世界になっているのも面白かった。

もちろん,総花的だという指摘もあろうが,繰り返すがこれは上質なポピュラー音楽としてのアルバムである。これはこれでちゃんと認めるべきであり,Chris Bottiが立派なエンタテイナーであることを実証したアルバム。スムーズ系もよかったが,更にBottiを見直したアルバム。星★★★★☆。

それにしてもDVD付きで1,500円そこそこって無茶苦茶安いよなぁ。消費者としては大歓迎だが。

Recorded at Symphony Hall, Boston on Septe,ber 18 & 19, 2008

Personnel: Chris Botti(tp), Billy Childs(p), Mark Whitfield(g), Robert Hurst(b), Billy Kilson(ds), Sting(vo), Dominic Miller(g), Luca Micarelli(vln), Josh Groban(vo), Mark Stephens(p), Kathleen McPhee(vo), Yo-Yo Ma(cello), John Mayer(vo), Steven Tyler(vo), Russ Irwin(vo, key), Boston Pops Orchestra conducted by Keith Lockhart

2011年11月11日 (金)

"Scissors Cut":やっぱりこの曲順がいいわぁ。

Scissors_cut "Scissors Cut" Art Garfunkel (CBS Sony)

このアルバムは既にこのブログにアップしたことがあるが,その時は米国盤に関する違和感について書いた(記事はこちら)。このアルバムについてはどう考えても国内盤の収録曲,曲順の方がいいのである。そのためにLPも実家から持ってきたものの,最近はLPを取り出して聞く余裕もなかったのだが,先日,Garfunkelの"Angel Clare"をこのブログにアップするに及んで,どうしても日本盤CDが欲しくなってしまった(病気である...)。ただ,この日本盤,永らくの廃盤状態で,中古盤屋ではお目に掛かったことがない。そういう時のeBay頼みということで,ちょっと高かったが購入した私であった。

そして久しぶりにこの曲順で一気に聞いて,このアルバムの凄さは絶対にこの国内盤の方がよくわかるということを痛感してしまった。とにかく美しい。あまりに美し過ぎるのである。こうして聞いてみると"Angel Clare"もいいが,Artの最高傑作はこれだと思いたくなる。

現在の米盤ではカットされたEric Kaz作"The Romance"がこれまた泣かせる曲なのだ。これをカットして,"Bright Eyes"を入れるレコード会社の野暮なことよ。野暮を通り越して暴挙だとも言いたいぐらいだ。

いずれにしても,国内盤に限って言えば,ネクラ親父の心を鷲づかみにして離さない大傑作。星★★★★★。たまらん。

2011年11月10日 (木)

George Garzoneが強烈な森山威男の新作,でもちょっぴり不満も。

Photo "Dazzling" 森山威男トリオ Featuring George Garzone(F.S.L.)

森山威男とGeorge Garzoneの共演と言えば,"A Live Supreme"が思い出される(記事はこちら)が,そこでもColtraneナンバーを熱く演奏していたこの二人がまたも邂逅し,改めてColtraneナンバーを中心に演奏するというアルバムである。ということで,企画自体はワンパターンだと言われても仕方ないのだが,演奏としては"A Live Supreme"よりも優れていると思えるものだった。

冒頭から"Crescent"を演奏しているのだが,これが非常に強烈な演奏で,インパクトが強く,私は一気に引きずり込まれてしまったのである。また,Garzoneは全編でテナー一本で勝負しているところも非常によい。全体を通じても演奏のインパクトの強さは変わらないのだが,曲によって出来がばらついているのがちょっと惜しい。特にずっこけるのがラストの"Bye Bye Blackbird"である。この曲だけ緩さが際立っていて,ほかの演奏のインパクトを打ち消しているように思えるのは全く惜しい。
こういうのを画竜点睛を欠いたと言うべきだろう。エンディングはその前の板橋文夫作曲の"Good Bay"でしっとり締める方がよかったのではないかと思える。それを除けば,このハイブラウさ,熱さ,そしてパワーという点で優れたアルバムである。星★★★★。絶対"Bye Bye Blackbird"で半星損している。

いずれにしてもこのアルバム,あまり大々的にはプロモーションされているようには見えないが,見逃すには惜しい作品である。

Recorded Live at Studio F on September 25, 2010

Personnel: 森山威男(ds),George Garzone(ts),田中信正(p),加藤真一(b)

2011年11月 9日 (水)

なんとLew Tabackinの"Rites of Pan"がCD化されていた!

Rites_of_pan "Rites of Pan" Lew Tabackin(Disco Mate→Inner City)

以前,このブログでこのアルバムをCD化する奇特なレーベルはないものかと書いたことがある(記事はこちら)。そこにも書いたが,「まぁまぁそう言わずだまされたと思って聞いてみて下さい」と言いたくなるような名品なのだが,長年CD化されることなく埋もれてきたアルバムだと言ってもよいだろう。それがである。2009年にCD化されていたのである。このアルバムはTabackinがフルート一本で勝負したアルバムであるが,まさに名人芸を聞かせるものだけに,この再発はLPを保有している私としても無茶苦茶嬉しい。

このアルバムがいかに優れているかは冒頭の"Autumn Sea"から明白である。プロデューサーであり,ここでピアノも弾く穐吉敏子は宮城道雄の「春の海」をアダプテーションしたことがあるのだが,それが宮城の遺族だか何だかに録音を拒否された経緯があるらしい。しかし,同じ「春の海」でも井上宗孝とシャープファイブのエレキ・ギター・バージョンがよくて,穐吉のジャズ・バージョンがダメってのは腑に落ちないが,それはさておき,それで穐吉が作曲したのが「秋の海」ということらしい。そこでのTabackinのフルートは日本的な響きを横溢させているが,そこで聞かれる穐吉のピアノ・ソロがこれまた素晴らしいのである。

私自身はフルートを吹くわけでもないが,それでもこのアルバムを聞けばTabackinのフルートがうまいことぐらいはわかるつもりである。これははっきり言って有無を言わせぬ魅力に満ちたアルバムだと言ってもいいと思う。私としてはフルートを吹かれる方々にこのアルバムを評価して欲しいと思うのだが,私は完全脱帽モードである。

Rites_of_pan_new_2 いずれにしても,このアルバムが常に入手可能な状態にあるということ自体がめでたいわけで,そのことにまずは感謝を捧げたい。ただ,この再発盤のジャケはなんやねんと思うのは私だけではないはずだ。これは絶対ない。いやありえない最低最悪のジャケと言っておく。だからと言って,この音源の価値は絶対に下がることはない。

私のような天邪鬼でも,本当に多くの人にこのアルバムを知ってもらいたいと真剣に思う稀有なアルバムである。繰り返すが,,「まぁまぁそう言わずだまされたと思って聞いてみて下さい。」

2011年11月 8日 (火)

懐かしい~!:Grand Funkの"We're an American Band"

Gfr "We're an American Band" Grand Funk Railroad (Capitol)

私はこれだけダウンロードが一般的になった現在でも,相変わらず現物主義を貫き,せっせとCDを買っているのは時代の遺物という気がするが,それでもCDを保管する場所が徐々なくなってきたことに伴い,買うものはできるだけ厳選し,ダウンロードで済ませられるものはダウンロードで済ませようかと思っている。特にこれまで買い逃してきたロックの古いアルバム等は,ダウンロードならタダみたいな値段で購入することができるので,そちらで代替することが増えてきた。

例えば,このアルバムのように,買うほどじゃないんだが,懐かしいから聞きたいなぁ,なんていうアルバムはダウンロードに限るのである。そうは言っても私が懐かしいと思うのはタイトル・トラックだけだが...(爆)。

私にとってのGFR(バンド名が長いのでGFRと呼んでいたのも今は昔)と言えば,このタイトル・トラックか,いまだにソフトバンクのCMのバックで流れる"Locomotion"ってことになるぐらいのものであり,まだ子供であったからあくまでもシングル・ヒットしか意識していないし,そもそも子供が聞いて面白いようなバンドではなかろう。だが,原初的な体験というのは不思議なもので,私が深夜放送を聞いていた頃にはこの2曲が流行っていて,相当耳に残ってしまっているのである。これがTodd Rundgrenプロデュースと知ったのはずっと後になってからのことだが,ヒットのツボを知った人だなぁと思わざるをえない。

今にして聞いてみれば,ハードロックと言ってもそれほどのへヴィネスはなく,ブギー・バンドのような響きであるとともに,結構ポップな感じがするのはキーボードの存在ゆえかもしれない。だからこそ,ボーナス・トラックで収録されているタイトル・トラックのキーボード(ほぼ)なしミックスがハードな感覚が強く感じられるのではないか。オリジナルに親しんだ私としては違和感がないわけではないが,それでもこれはこれでハードなよさが感じられる演奏である。

いずれにしても,今回,久しぶりにタイトル・トラックを聞いて懐かしさ一杯になるとともに,カラオケにあったら歌っちゃおうかなぁなんて野望さえ抱かせてくれた。こういう感覚,Steppenwolfの"Born to Be Wild"に似ているねぇ(笑)。名作とかそういう類の音楽とは思わないが,これも私の通過点。星★★★☆。

Personnel: Mark Farner(vo, g, key, hca), Don Brewer(ds, perc, vo), Mel Schacher(b), Craig Frost(key)

2011年11月 7日 (月)

Alan Skidmore:ブリティッシュにしてはかなり熱い演奏と言えそうなアルバム

Alan_skidmore "TCB" The Alan Skidmore Quintet(Philips→Vocalion)

テナーの聖地,新橋Bar D2で聞かせて頂いて気になっていたアルバムである。但し,ずっと廃盤状態だったものが少し前に再発になったので購入と相成った。

正直言ってしまうと,私にはブリティッシュ・ジャズの魅力というのがよくわかっていない。もちろん,英国出身のKenny Wheeler(厳密にはカナダ出身),John Taylor,John Surman等のアルバムはECMで親しんでいるとしても,それはECMというレーベル・カラーに染まっているからだという話もある。John McLaughlinやDave Hollandも英国出身ではないかと言われれば,それはMiles人脈からの派生として聞いてはいても,彼らを「ブリティッシュ・ジャズ」として聞いたことはない。更にGill EvansのBritish Orchestraを聞いても(記事はこちら),彼らの実力はよくわかっていることも事実なのだが,それでもそこから先に行かないのである。

これはなぜなんだろうと思うのだが,Evan Parkerのようにフリーならフリーで突き抜けてくれればいいのだろうが,ブリティッシュ・ジャズの立ち位置がどうもはっきりしないからではないかと思えるのだ。ジャズ・ロックみたいなのもたくさんあるが,私がちゃんと英国系のミュージシャンの演奏を聞いていないというのが最大の要因だとしても,やはりよくわからないのである。

しかしである。ここに収められた演奏はブリティッシュ・ジャズとしては,相当に熱い(暑苦しい)と言ってもいいようなものなのである。例えてみればBilly Harperの暑苦しさにも匹敵するような爆裂演奏集ではないか。それはタイトル・トラックに最も顕著に表れているが,Billy Harper以外でこれだけ暑苦しいのはあとは一時期のMcCoy Tynerしか思い浮かばないぐらいだ(笑)。ゲストのOsborneとSurman参加で4管だからまぁそれも当然だとしても,これがブリティッシュなのかと言いたくもなるような演奏である。更にインプロヴィゼーション部におけるフリーなトーンが強まる"Walk in and Dance out"から"AJ"の流れは更に暑苦しいのだが,ある意味,ここまでやってくれるとこっちも納得してしまうというのは山下洋輔トリオ的か。

いずれにしても,本作に参加のミュージシャンを知ることなく,このアルバムがどこかでかかっていれば,私ならばつい手に取ってしまうだろうという演奏集だ(結局好きなのだ)が,こういう演奏を聞いているとブリティッシュ・ジャズも侮れないなぁなんて思ってしまった。ただ,これだけ激しいと一般のオーディエンスにはなかなか推奨しづらいのも事実。絶対に「一肌脱ぐ」シリーズには登場しない演奏だが,私が生で聞いたら絶対燃えてしまうな。星★★★★。ええですわぁ~(やっぱり私は変態だ)。

Recorded on October 21, 1970

Personnel: Alan Skidmore(ts), Malcolm Griffiths(tb), Mike Osborne(as), John Surman(ss), John Taylor (p, el-p), Chris Lawrence(b), Tony Levin(ds)

2011年11月 6日 (日)

多様な音楽を収めた"Inner Smile"は私には微妙であった

Inner_smile "Inner Smile" Aldo Romano (Dreyfus)

Aldo RomanoとBaptiste Trotignonと言えば,既に"Flower Power"というアルバムで,往時のポピュラー・ソングを取り上げて結構笑わせてくれたが,久々の共演ということになるのだろうか。更にそこにEnrico Ravaが加わるというのだから,これは注目度の高いアルバムになるのは当然である。

冒頭の"Positano"から歌心のある演奏で,これは結構美的な展開を図るのかと思わせ,2曲目も"More"だもんなぁ。ずっとこういう路線で行くのかと思いきや,3曲目ではコレクティブ・インプロヴィゼーションのようになり,う~む,どうなっているのだ。更には"Anny's Lullaby"では盛り上がってきたところでフェード・アウトとは何を考えているのやら...。収録時間は50分弱なのにこれは解せない処置である。また,8曲目には"My Funny Valentine"とあるが,コード進行に乗ったRavaやTrotignonのアドリブが続くが,テーマは最後になってようやく出てくるという演奏。演奏としては最高なのだが,なぜこうしたのやら...。このほかにもピアノレスの演奏がカッコいい"Old Devil Moon"やピアノ・ソロながら唐突なエンディングの"Where Is Aldo"等もあり,構成としては謎が多いアルバムである。

だからと言って,このアルバムが悪いというわけではない。演奏は十分楽しめると思うのだが,私としてはもう少し一貫性の保たれたプロダクションをやって欲しいと感じてしまう演奏集である。かつ,エンディングの"I'm Getting Sentimental Over You"も何とも軽くて,アルバムを締まりのないものにしていないか。私はこの演奏ならば,エンディングには持ってこないだろうというような演奏なのである。

ということで,いいところもあれば,よくわからんところもあるというアルバムだが,全体的にはいろいろな意味での「緩さ」が感じられて,私としては非常に微妙。残念ながら,何回も聞きたいとは思わないだろうなぁということで星★★★。このメンツを揃えながら,何だか勿体ないアルバムである。

Recorded on March 1-3, 2011

Personnel: Aldo Romano(ds), Enrico Rava(tp), Baptiste Trotignon(p), Thomas Bramerie(b)

2011年11月 5日 (土)

私が長年避けてきたと言ってもよい"90125"

90125 "90125" Yes (Atco)

このアルバムが1983年にリリースされて,"Owner of a Lonely Heart"が全米1位になったのも懐かしいが,私はこの前の"Drama"も,この後の"Big Generator"も買ったのだが,このアルバムだけはどういうわけか買うことがなく,今まで来てしまったというのは嘘のような本当の話である。これがなぜなのかは自分でも謎なのだが,タイミングを失したというのが実態であろう。だいたい元来のYesファンである私は,この90125時のラインナップでのYesは横浜文化体育館でライブも見ているし,8人YesもMadison Square Gardenで見ているのだ。

ただ,私としては当時からこのアルバムに相当の違和感があったことは間違いない事実である。Trevor Rabinによるギター・サウンドはインダストリアル・ロックみたいだし,そもそもキーボードには大した才能ではないTony Kayeを連れ戻したというのも実は納得がいかなかった部分である。ここにKayeでなく,一時ツアーのメンバーとしても考えられたEddie Jobsonが参加していれば,バンドとしてももっと優れたサウンドが出せたのではないかと思えてしまう。これは絶対惜しいよなぁ。

とは言え,今までフル・アルバムとしては聞いていなくても,90年代初頭に出た4枚組ボックス"Yesyears"でも結構な数のこのメンツによる音源は聞いていたし,ライブ・ビデオもレーザー・ディスクで持っていたから,今回,気まぐれでダウンロードして聞いてみても,「初めて感」は全くない。だが,今回通して聞いてみても,Yesらしさってのはやはり希薄だったように思える。これではTrevor Rabin Band Featuring ex-Yes Membersって感じにしか聞こえないのである。私としては"Changes"のイントロ/アウトロのような変拍子的な展開がもっとあってもよいように思える。それとて,"Heart of the Sunrise(燃える朝焼け)"のような緊張感は生み出していないが...。余談だが,先日テレビを見ていたら日産ジュークのCMにその「燃える朝焼け」が使われていてびっくりしてしまった私である。最近のCMは凄いねぇ。

閑話休題。そういう感じだから,本作が米国では売れても,英国では今イチだったというのも実は納得できてしまうのである。誤解を恐れずに言えば,英国のファンはおそらく私が感じたのと同じ違和感を覚えていたのではないかと思えるのだ。そうは言っても,本作があったからこそ,その後もYesがバンドとしての活動が継続できたのではないかという気もするので,古くからのファンとしては非常に微妙な感覚を持たざるを得ないアルバムと言えるように思える。嫌いじゃないけど星★★★。

Personnel: Jon Anderson(vo), Trevor Rabin(g, key, vo), Tony Kaye(key), Chris Squire(b, vo), Alan White(ds, perc)

2011年11月 4日 (金)

「カウボーイ&エイリアン」:つまらない映画を見てしまった...

Cowboys_aliens 「カウボーイ&エイリアン("Cowboys & Aliens")」('11,米,Universal/Dreamworks)

監督:Jon Favreau

出演:Daniel Craig,Harrison Ford,Olivia Wilde,Sam Rockwell

私は007に出ているDaniel Craigを結構評価していて,リアルなスパイ物として復活させたのは彼のキャラあってのことだと思っている。だからこそ彼をひいきにしているのだが,どうもほかの出演作はあまり感心したためしがない。「インべージョン」然り,この映画然りである。これはCraigが悪いというよりも,話があまりにも無茶苦茶だからなのだが,Craigにはもう少し出演作を選べよと言いたくなる作品である。

そもそも地球侵略ものは,近現代だけを舞台にする必要はないのであって,19世紀にエイリアンの襲来があってもそれは不思議ではない。問題は,このストーリーのいい加減さである。全てが適当な展開と言ってもいいありえないシナリオは,正直言って子供だましにしかならない。(ここからはネタバレになるが...)なぜCraigが武器を装着できたのか?どうしてOlivia Wilde扮するEllaは復活するのか?なんでエイリアンは金が必要なのか?どうしてエイリアンたちはぞろぞろ表へ飛び出してくるのか?そもそもエイリアンの造形も「第9地区」なみに気色悪いが,その割に弱いし...。そもそも人間を何人もかっさらっていくシークエンスもアホくさくて見ていられん。

唯一の救いは懐かしやKeith Carradineが保安官役で出ていて渋さを爆発させているところだろうが,映画としてははっきり言って金と時間の無駄。Daniel Craigだけでなく,Harrison Fordにももう少し映画は選べよと言いたくなってしまった。

だからSteven Spielbergが製作総指揮の映画は信用ならない。取り敢えず金は掛けても中身がない映画が多過ぎる。かつRon Howardまでプロデューサーに名を連ねているのはどういうことか?こんなくだらない映画を製作している暇があったら,ちゃんと映画を作れよと言いたい。監督のJon Fevreauも「アイアン・マン」はもう少しましだったと思うが。いずれにしても,あ~,しょうもなぁ。こんな映画を見に行った自分を恨みたくなったわ。星★★。

2011年11月 3日 (木)

ようやく到着:Chick Corea~Stefano Bollaniデュオ

Corea_bollani "Orvieto" Chick Corea & Stefano Bollanin (ECM)

リリースされてから時間が経ったにもかかわらず,某サイトからちっともデリバリーされずにやきもきさせられたアルバムがようやく到着である。Chick Coreaと言えば,NYCのBlue Noteほぼ1カ月出ずっぱりという凄い11月を迎えたわけだが,70歳にして老いてますます盛んというか,本当に元気な人である。Blue Noteでは懐かしやHerbie Hancockとのデュオもあれば,Marcus Robertsとのデュオ,更にはオリジナル・エレクトリック・バンドやらGary Burtonデュオ+ストリング・クァルテットやら,ファイヴ・ピース・バンド,RTFアンプラグド,Bobby McFerrinとのデュオ等,物凄いラインアップである。また"Rendevouz in New York"のようなアルバムを出すつもりなのかと勘繰りたくもなるが,それにしてもよくやるわ。

そんなChick Coreaが息子ぐらいの年代と言ってもよいBollani(現在38歳)と共演するというのだから,一体どういうことになるのか。今年,ピアノ・デュオと言えば,Brad MehldauとKevin Haysのそれは美しい"Modern Music"という傑作があった(記事はこちら)が,あちらがクラシック的,現代音楽的な響きが強いのに対し,本作はずっとジャズ的なのが特徴である。冒頭のインプロヴィゼーションはこれまた現代音楽的なところがあり,同系統かと思わせるのだが,どんどんジャズ的な楽しさが増してくるのが面白い。こういうのがECMレーベルから出るというのは相当珍しいと思うが,それでもChickは以前からECMに吹き込んでいるし,最近はBollaniもECMでアルバムをリリースしているから,不思議でもないのかなぁ。しかし,ここに収められた音楽はECMのレーベル・カラーからはやや乖離していることは間違いない。だって楽しいんだもんなぁ(だからと言ってECMファンの私としては,ECMをけなすつもりは一切ない)。

Chickのピアノ・デュオ作はHancock,上原ひろみ,Friedrich Gulda等があるが,その中でも私はこの作品が一番楽しめたように思う(Gulda盤なんかははるか記憶の彼方だが...)。ほかの3人との相性が悪いとは言わないが,この2人の相性が圧倒的にいいように思えるのだ。楽しさもあれば,美しさも共存しているところがこのアルバムのいいところである。前述の"Modern Music"がよりストイックな美しさを追求したものだとすれば,このアルバムはもう少しリラックスして楽しめるところがよいと思う。同じピアノ・デュオ・アルバムでも作り手によってこれほど違いがあるってことを強く感じさせてくれるところに,ジャズ・ミュージシャンとしてのこの二人の個性がよく表れていると思う。"Modern Music"同様これも十分に楽しめるアルバムとして星★★★★☆。"Modern Music"との半星の違いは完全に好みの問題(爆)と演奏にちょっと感じられる粗さゆえ。

それにしても,ミュージシャン同士の交感というものは凄いものだと痛感させられる両者のヴィヴィッドな反応は本当に大したものである。

Recorded Live at Umbria Jazz Winter on December 30, 2010

Personnel: Chick Corea(p), Stefano Bollani(p)

2011年11月 2日 (水)

Brad Mehldau:祝Down Beat読者投票2冠!

201112cover 嬉しいニュースである。私は米国Down Beatのデジタル版の読者であるが,これから私の手許に届くはずの12月号で発表された第76回読者投票において,Brad Mehldauがピアニスト部門1位と"Live in Marciac"により"Jazz Album of the Year"を獲得したそうである。こうした投票自体は人気投票みたいな部分もあるが,Mehldauの実力が更に広範なオーディエンスに評価されたものとして,彼の追っかけをしている私としては非常に嬉しい限りである。

まぁEsperanza SpaldingがJazz Artist of the Yearなのかってのには???な部分もあるが,女性初の受賞だそうだから,それはそれでめでたいということにしておこう。

投票結果の詳細はデジタル・エディションがデリバリーされてからゆっくり眺めることとしたい。まずは速報ということでのこの記事のアップだが,本日,Mehldauの初レコーディングを当ブログにアップしたのも何かの偶然のように思えてきた。

突然だが,Brad Mehldauの楽歴を振り返る

Christopher_hollyday_the_natural_mo

"The Natural Moment" Christopher Hollyday(Novus)

繰り返し書いているが,私はBrad Mehldauのコンプリートを目指している。だからと言ってブートまで手を出す気はないと言いつつ,結構ブートも買っているのは事実である(爆)。しかし,その様々な演奏を聞いてみたいと思わせるピアニストがBrad Mehldauというピアニストなのだ。つい先日も,BBCの番組に出演した時に彼が弾いているPink Floydの"Hey You"の音源を見つけて喜んでいるのだから私も相当の病気である。だが,最近の私はコレクターであることに満足して,彼の音楽をちゃんと聞いていないのではないかという疑念がふつふつとわいてきて,ここに来てちゃんと聞き直すべく,Mehldau参加音源をせっせとリッピングを行ってしている最中である。

そして,今日取り上げるのがBrad Mehldauの初レコーディングと思われるこの作品。リーダーのChristopher Hollydayを私は在米中のJVCジャズ・フェスティバルで目撃しているが,その時はBobby Watsonに伍して吹きまくっていた姿が今も目に浮かぶ。Hollydayは調子っぱずれなところまでJackie McLeanのようだが,とにかくあの頃は勢いがあった。その後,1992年以降は表舞台から姿を消し,現在はカリフォルニアで教鞭を取っているらしい。何が彼をそうさせたのかはわからないが,いずれにしてもへぇ~って感じである。

この作品はそのHollydayの2枚目のリーダー作だが,Brad Mehldauが伴奏しているということは,私が彼を追いかけるようになってから知ったことであり,そうでなければ全く注目もしていなかったに違いない作品である。このアルバムが吹き込まれた頃,Hollydayは20歳そこそこぐらいであったはずで,Mehldauも録音時は20歳である。こうした若さが音にも溢れていて,はっきり言って勢いが勝っているという感じである。その後,Warner Brothersにアルバムを吹き込む段階でもまだ20代半ばだったMehldauは,そこで急速な進歩を示しているが,ここでの演奏はまだまだ青いという印象が強い。

今やモダン・ジャズ・ピアノを牽引するピアニストの一人となったMehdauにもこういう時代があったのだということを知るにはうってつけだが,この頃からフレージングはハード・バップを基調に,ちゃんとしたところを見せているのは大したもの。だが,急速調の曲が多くてアルバムが一本調子なのと,バラード表現はHollydayにはまだ難しかったという点から,本作を敢えて何度もプレイバックしたいとは決して思えないが,Mehldauの楽歴を振り返るという点では決して見逃せないことは言うまでもないことである。だって初レコーディングなんだから...。

でもやっぱりHollydayのアルトは聞いていて疲れる。それに比べれば,Mehldauなんてずっと大人だったって感じだろう。星★★★。

これからもこの振り返りシリーズ,たまに記事をアップしたいと思うが,さて,次は何にするかなぁ...。

Recorded on January 21 & 22, 1991

Personnel: Christopher Hollyday(as), Brad Mehldau(p), John Webber(b), Ron Savage(ds)

2011年11月 1日 (火)

なるほど,なかなかよくできている「猿の惑星:創世記」

Rise_of_the_planet_of_the_apes 「猿の惑星:創世記(Rise of the Planet of the Apes")」('11,米,Fox)

監督:Rupert Wyatt

出演:James Franco, Freida Pinto, John Lithgow, Brian Cox, Andy Serkis

ちまたでは結構ヒットしている「猿の惑星」最新作である。私はこの映画の公開が決まった時から,ずっと見たいと思っていたのだが,ようやく劇場に行くことができた。

私はオリジナル「猿の惑星」世代,というか,初めて「猿の惑星」が月曜ロードショーでTV放映された時,興奮しながら見た世代である。よって,このシリーズには相応の思い入れがあるが,今回は本来ならば「猿の惑星:征服」のリメイクであるところを,アルツハイマー治療薬の実験から脳が進化するとした設定がうまい。オリジナル「猿の惑星:征服」にはそもそもストーリーに無理があったのは言うまでもないのだが,この映画の展開ならわからないこともないと思えるからである。

それにしても,昔は特殊メイクと着ぐるみ対応していたのが信じられないぐらいのCG技術の進化には目を見張らされるが,それに加えてほぼ目だけで芝居をするCaeser役のAndy Serkisも大したものだと思わざるをえない。テクノロジーなくしてこの映画は成り立たないとしても,このSerkisの目の演技は褒めて然るべきだろう。

ストーリー的には,正直言って人間が悪役みたいなものだが,それにしてもサンフランシスコ中を走り回る猿軍団の姿は壮観と言ってもよいだろう。これには結構笑えてしまった私である。ツイン・ピークスから猿軍団がSFの街を見おろす姿が何とも愉快である。そしてクライマックスはまた金門橋かいっ!と皮肉も言いたくなるが,やはりSFの象徴はベイブリッジではなく,金門橋なのねぇと思ってしまった。

この映画では,あくまでも猿は被害者であり,虐げられた存在であったものが,薬の力を借りながらも猿軍団として蜂起するというのが,さまざまなメタファーとなりうることは十分考えられる話で,それが多くの人にアピールするところは想像に難くない。単なるSF/アクション映画として見るのではなく,そうした部分に目を向けないと,この映画は単なるCG大作にしかならないはずだ。しかし,そんな難しいことを考えなくても,娯楽大作としても見られるところが,昨今の観客動員に反映していると思える。まぁ,ちょっとやり過ぎではないのかと思える部分もあるが,これはなかなか楽しめる作品であった。星★★★☆。

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