予想をはるかに上回る出来のBrad Mehldauの新譜
"Modern Musuc" Brad Mehldau / Kevin Hays / Patrick Zimmerli(Nonesuch)
Brad Mehldauの新譜がリリースされた。今回はKavin Haysとのピアノ・デュオというのも話題だが,彼らのオリジナルのほかにReichやOrnette Coleman,更にはPhillip Glassまでやりながら,一番多いのがPatrick Zimmerliのオリジナル4曲+彼のアレンジというのが目を惹く。このZimmerliという人については今回が初めてだが,Brad Mehldauの高校の先輩らしく,作編曲だけでなく,Emergenceという弦楽クァルテット入りのバンドではソプラノ・サックスも吹いているとのことである。しかし,Webサイトにも"Composer"と書いてあるから,本業はあくまでも作曲家ということのようである。
Brad MehldauとKevin Haysも旧知の間柄らしいのだが,キャリア的にも似ているところもあり,お互いに同質性を認めている。そんな二人がピアノ2台で共演するということで,一体どんな音楽になるのか期待してしまう。我々の年代で言えば,ピアノ・デュオと言えば,Herbie HancockとChick Coreaのコンビを思い出すわけだが,ここでの演奏はかなり毛色が違っているというか,ジャズ的な色彩はかなり薄い。しかし,ここで表出されるピアニズム,あるいはサウンドの美的な感覚はHerbie~Chickを上回っていると言ってもいいだろう。
そして,何よりも素晴らしいのがピアノ2台による響きである。Reichの「18人の音楽家のための音楽」を見事にアダプテーションして,何とも言えないアンビエントな雰囲気を生み出したり,ピアノが絡み合うようなラインを示したりと,このコンビネーション,何とも美しい。もちろん,これをジャズの範疇で捉えることには躊躇がないわけではなく,ほとんどが「書かれた」音楽であるようにも思える。ライナーによれば,左手は書かれていて,そこに右手のアドリブを乗せるというような試みはあるが,タイトルが物語る通り,「現代音楽的」な響きが強いと言ってもよいかもしれない。しかし,出てくる響きは本当に美的な感覚に溢れていて,ジャンル分けなんてまるで無駄だと言いたくなるような音楽である。
こうした音楽はジャズにこだわりが強いリスナーにとっては「何のこっちゃ」にしかならないはずだが,ここはここに満ちた美しい響きに身を委ねるべきだろう。私はこの音楽を完全に支持するということで,星★★★★★である。やはり私はBrad Mehldauに甘いのかもしれないが,これは予断を持たずに聞けば,その響きにやられること必定の楽興に溢れていると言い切ってしまおう。
ピアノ音楽好き,ミニマル音楽好きならば,抵抗なく受け入れられるはずである。素晴らしき47分43秒。
Recorded on October 13 & 14, 2010
Personnel: Brad Mehldau(p), Kevin Hays(p), Patrick Zimmerli(composer, arr)
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今回は、Patrick Zimmerliというプロデューサを起用しKevin Haysを引き入れ..... [続きを読む]
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こんばんは。始めは「やっぱりこっち系かぁ」と思って聴いていましたが、すぐに馴染めたあたりがいつものmehldauとは違いました。その辺は3人の音楽ということなのかはわかりませんが、いろんなバランスが綺麗に取れている感じが好印象です。トラバさせて頂きます。
投稿: ki-ma | 2011年10月 5日 (水) 00時42分
TBありがとうございます。Brad Mehldau は、新しい切り口を見せてくれつつも「らしさ」を感じさせてくれる塩梅が毎回絶妙ですね。アングルを変えても輝く個性があるということでしょうか。新譜を聴くのが毎回楽しみなアーティストです。という訳でTBさせて頂きます。
投稿: 1irvingplace | 2011年10月 5日 (水) 01時25分
ki-maさん,おはようございます。TB入っていないようですので,リトライをお願いできますか?
音楽としてはおっしゃるとおりです。非常にレベルは高いんだけれども,聞き易いという印象でしょうか。いいですよね,このアルバム。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月 6日 (木) 07時17分
1irvingplaceさん、おはようございます。どんなフォーマットでも優れた音楽を聞かせてくれると、ファンでよかったとつくづく思います。
段々ジャズ・ミュージシャンからポジションが乖離してきているように思わせるのもこの人らしいなって思います。それにしてもこれは好きだなぁ。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月 7日 (金) 08時53分
おはようございます。いいっすね、この作品は、しみじみと感傷に浸れます。こういう音楽は、色んな思い出を走馬燈のように頭の中を巡らせてくれて、時間を忘れますね。ジャンルは関係なく、とにかく美しい音楽を追い求めている結果でしょうか、ロンリー・ウーマンをミニマルミュージック風にアレンジしているところがなんとも素敵です。トラバさせてくださいね。
投稿: kumac | 2011年10月 8日 (土) 06時18分
kumacさん,こんにちは。TBありがとうございます。
おっしゃる通り,この音楽にはジャンル分けは不要でしょう。"Lonely Woman"はもともとが美しい曲だとは思いますが,この二人がやるとますます...って感じでした。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月 8日 (土) 13時39分
中年音楽狂閣下、お久しぶりです。マドリード生活を終え、2月末に横浜に戻ってきました。
このアルバムは美しい緊張感がありますね。Brad、このところ冴えていますね。
投稿: カビゴン | 2011年10月 8日 (土) 17時26分
カビゴンさん,こんばんは。本当にお久しぶりです。カビゴンさんの欧州ライブ観戦の情報を羨んでいた私です。横浜ということで,私とは結構近いですね。
このアルバムは,ジャズとして捉えれば聞き手は限られるでしょうが,優れたピアノ音楽としてより多くの人に聞いて欲しい傑作だと思います。Brad Mehldau恐るべし。
いずれにしても,今後ともよろしくお願い致します。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月 8日 (土) 20時05分
Toshiya さん
ご無沙汰してます。aikです。
私のもとにも本作品が届きました。
二人のピアニストが奏でる調和の取れた美しい音。
何回もリピートしてしまいます。
Zimmerli某が、catalyst となってこの音世界を紡いでいるように感じます。
8月に本ブログで発売を知り首を長くした甲斐がありました。
PS
Joe Henry の新作も発売のようですね。此方も楽しみです。
投稿: aik | 2011年10月10日 (月) 18時08分
aikさん,こんばんは。お久しぶりです。
私もこのアルバムには期待はしながら,不安もあるという感じだったんですが,それが全くの杞憂に過ぎなかったことは誠に喜ばしい限りです。彼らの実力と相乗効果に嬉しくなってしまった一枚でした。
Brad Mehldauは一体どこまで行ってしまうんでしょうねぇ(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月10日 (月) 19時46分
音楽狂さん、こんにちは,新しいメルドーですね。
いつも刺激的な楽しさを与えてくれますね。
今回はちょっと芸術的ななか、JAZZマンの個性がきちんとでていましたね。
TBさせていただきます。
投稿: monaka | 2011年10月10日 (月) 21時38分
monakaさん,こんばんは。TBありがとうございます。
今回のアルバムは本当によかったです。やっている音楽は本質的なジャズからはどんどん離れているように感じさせることはありますが,Brad Mehldauはそれでもジャズの心は失わない人だと確信しています。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月10日 (月) 21時54分
先にトラックバックすみません。
逆トラバもありがとうございました。
これは、かっこよかったですわ。
現代音楽、って、感じで、ジャズからは離れてますが。
でも、元々、メルドーの中にはこういう要素があって、その辺が私的には時々不気味だったりしてるんですけど。(笑)
日常的にかけたくなるものかどうか疑問は残りますが、このアルバムの一連の流れは頭にしっかり残ってしまいました。
でも、パットメセニーのPMGのアルバム願うような感じで、、そろそろ、トリオでジャズど真ん中をお願いします!って、モンでしょうか。。
ありがとうございました。
投稿: Suzuck | 2011年10月12日 (水) 09時05分
すずっくさん,こんばんは。TBありがとうございます。
この音楽を聞いて「かっこいい」と言えるすずっくさんって凄いなぁなんて思いますが,私にとってはかなりツボでした。
確かにおっしゃる通り,そろそろBrad Mehldauにはトリオでのアルバムを期待したいところですが,次はさすがにトリオに戻るのではないかと思いますが...。まぁ,期待して待ちましょう。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月12日 (水) 22時30分
今回は現代音楽家らのピアノデュオ用の編曲が2曲あるということで、記譜されている割合がかなり高そうですね。それを難なくやってしまうメルドーとケヴィン・ヘイズもなかなかやりますなあ、と率直に思いました。
もともとこっち方面のサウンドが好きなので、事前も楽しみだったし、聴いて楽しめたなあ、と思いますが、1曲目は意外にもジャズのフィーリングが見え隠れしていたような気がしたのは私だけでしょうか。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年10月19日 (水) 18時08分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。返信が遅くなりまして申し訳ありません。
批判を恐れずに言えば,このアルバムに対する評価の仕方によって,リスナーの審美眼が問われる部分ってあるんじゃないかなぁと思います。
これは私にとっては絶対「あり」の音楽でしたし,想定を上回る美しさに感心したというのが実感です。ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月22日 (土) 11時54分
中年音楽狂様のブログを拝見して、新譜購入意欲を復活させつつあります。最近の購入比率はクラシック2:ジャズ1ですが、随分ジャズにも戻ってきました。このアルバムは良い意味でジャンル不詳で、Contenporary musicとしか云えませんね。アイヒャーのドキュメンターを流したり、コレ聴いたりしているときの浮遊感はなんとも云えません。
投稿: ken | 2011年10月31日 (月) 21時24分
kenさん,こんばんは。TBありがとうございます。
新譜買いも大変ですが,私は最近はロックの中古は極力買うのをやめて,ダウンロードに移行中です。ちなみに昨日はGrand Funk Railroadをダウンロードしてしまいました(爆)。
しかし,Eicherのドキュメントですか。あのコンピレーションも気持ちいいですよねぇ。まだ記事にしてませんが。Blu-rayも買ってあるんですが,全然見る暇なしです。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月31日 (月) 21時31分
たしかに、ピアノ好きには応えられないアルバムなのかもしれません。
かく言う私も
>ピアノはこう録って欲しいって(個人的に)感じているような音で
>録音されていてピアノの音を聴いているだけでも、・・・
なんてコメントを入れているくらいです。
で、この作品で表現の幅がかなり広がったんじゃないかと推察しておりまして、次作を期待したいなぁという心境になっています。
そしてその次作はやっぱりピアノトリオを期待したいところであるというのは。。。(笑)
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2011年11月 3日 (木) 17時44分
oza。さん,こんばんは。TBありがとうございます。
本作はピアノのソノリティも素晴らしいですが,Mehldau~Haysの呼吸もぴったりっていう感じです。さすがにシンパシーを感じ合っているだけのことはありかななんて思います。
Mehldauの次作は私はJoshua Redmanとのデュオ・アルバムではないかと踏んでおりますが,結果やいかに。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 3日 (木) 18時29分