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2011年8月31日 (水)

買ってしまったSHM-CD版"Yessongs"

Yessongs_shm "Yessongs" Yes(Atlantic)

いつも書いているように,日本においては低迷するCD販売を打破すべく,やたらに紙ジャケだ,SHM-CDだということで,付加価値をつけて旧作をリリースすることが極めて盛んである。私もそうしたレコード会社の策略にまんまと乗せられて結構買っているクチであり,最近ではJoni Mitchellの一気買いなんかもしてしまったことはこのブログにも書いた(記事はこちら)。そこにも書いたように,日本人のレプリカ作成時におけるオリジナルへの忠実度というのはほとんどマニアックと言ってもよいレベルであるが,Yesのアルバム群が紙ジャケ/SHM-CD版でリリースされた時もそうしたこだわりに満ちていることは,本作に付帯する解説書に記述された「こだわり」からも明らかである。

しかし,私も財務上の理由はあるし,なかなか何でもかんでもというわけにはいかないのだが,本当はこの"Yessongs"はリリースされた時に買おうと思っていたものである。しかし,予約しないでも大丈夫だろうと高をくくっていたら,あっという間に店頭からなくなってしまい,買い逃していたものである。その後,かなり無茶苦茶な値段で取引されていたりして,入手を諦めていたのだが,今回めでたく中古でゲットである。

本作の中身については既に記事にしている(記事はこちら)ので,音楽そのものについてはそちらを参照してもらえばいいのだが,まじでこのレプリカへのこだわり,尋常ではない。そもそもジャケの"Yessongs"のロゴが本来黒ではなく,英国オリジナル盤では紫に近い色合いだったなんてことを誰が知っているのかって感じだが,それでも同封されているブックレットのレプリカを見ていて,無茶苦茶懐かしくなってしまった私である。確かにLPにはこれが入っていた。国内盤の解説は確か中村とうようと黒田恭一が書いていたのではなかったか等と遠い目モードになってしまった私である。いやいやそれにしてもようやく手に入れたが,音はどうなのかってまだ聞いていない私である(爆)。

2011年8月30日 (火)

ウルトラ談義に花が咲く

主題だけ見ると何のこっちゃということになるのだが,いやいや驚いた。会社で打合せをした後,一献傾けに行ったところ,仕事のつながりは直接にはないが,ポジションは私よりずっと上の方が「ウルトラ」シリーズに子役としてご出演されていたということが明らかになって,私は萌え~となってしまった。

Photo この方,「ウルトラQ」,「ウルトラマン」,「ウルトラセブン」,「怪奇大作戦」から「怪獣ブースカ」までご出演ということなので,これは半端ではない。私は特に「セブン」マニアであるから,ご出演のエピソード「怪しい隣人」とイカルス星人話で盛り上がってしまい,思い切りマニアックなモードに突入してしまったが,それにしても世の中は広い。ついでに私の勤めている会社は別の意味で人材の宝庫だということがはっきりしてしまった。思えばこの話,「総天然色ウルトラQ」から話が派生したのかなんだったのか記憶が定かでなくなっているのだが,いやいやそれにしてもびっくりである。その方の子役時代の画像も,ググったら出るわ,出るわってことで,ここにもアップしてしまおう(ご本人の承諾なし。まずかったらごめんなさい。)。

Photo_2 本日,飲み会の席上でも帰ったらDVDでチェックします~というお約束をしてしまったので,律儀なまでに家でDVDで再確認した私だが,映像を見てそうだったのか~と重ねて感慨にふけってしまった。エピソードを見ながら,アンヌ隊員役の菱見百合子はやっぱり可愛かったが。それにしても今回の件はびっくりする話であった。本題とは全然関係ないが,ネットで見つけた白衣姿のアンヌ隊員の写真もついでにアップ(なんでやねん!)。これを見て萌えないオヤジはいるまい(爆)。やっぱ歴代最高のウルトラ女子は菱見百合子以外にない。こんな人なら毎日でも診察して欲しいわ(笑)。最高だよねぇ。たまらん。

2011年8月29日 (月)

驚きの新作:これが本当にあのEurythmicsのDave Stewartなのか。

Dave_stewart_blackbird_diaries "The Blackbird Diaries" Dave Stewart(Razor & Tie)

私はDave Stewartと言えばEurythmicsになってしまう人間である。よって,Eurythmicsが解散後は別にDave Stewartについて何の関心も払ってこなかったのだが,先日このブログにコメントを頂いたaikさんが,本作が素晴らしいと書かれていたので,ものは試しと思って聞いてみた。そしてぶっ飛んでしまった。

冒頭から,これがDave Stewart?と思わせるような野太いギター・サウンドが聞こえてきて,私はKeith Richards & the X-pensive Winosを思い出してしまった。もちろん,Stonesを想起してもいいのだが,何となくKeithのソロの方が頭をよぎったのである。これは完全にアメリカの音であって,Eurythmicsの音楽とは明らかに異なる。Eurythmicsとて,Annie Lennoxのソウルフルなヴォーカルもあったから,アメリカ的色彩が皆無とは言わない。しかし,これは完全なアメリカン・ルーツ・ロックの趣なのである。しかも"Worth the Waiting for"なんてBob DylanとDave Stewartの共作である。これに驚かないで何に驚くって感じである。しかもまんまDylanのような曲だ。

この驚きが「イメージを覆す」だけであれば,私はぶっ飛ばないが,この音楽の質の高さにぶっ飛んでしまったのである。これは私がまいってしまうタイプのアメリカン・ロックの乗りに限りなく近く,演奏も歌唱も極めて渋い。Dave StewartがプロデュースしたJoss Stoneの新作も6日で録音を完了したらしいが,本作も同じく6日で,かつ同じくナッシュヴィルで録音されているというところには2枚のアルバムは同質のものと考えられるのかもしれないが,それにしてもである。イギリス人がアメリカン・ミュージックに憧憬の念を抱くのは,今も昔も変わらないようだが,それにしてもこの徹底ぶりが凄い。それも真似ごとでなく,完全に消化したって感じなのである。まじでいいねぇ。昨今のアメリカ人がやるよりアメリカっぽい音がしていると言っては褒め過ぎかもしれないが,それぐらい一発で私を惹きつける魅力を持った音楽であった。

これはおそらくはDave StewartあるいはEurythmicsのファンというよりも,アメリカン・ロックのファンに受けるアルバムと言ってよいだろう。後半はややカントリー色が強まるが,それでも、正直言ってWeb上で公開されているMich Jaggerとのバンド,SuperheavyのPVで聞ける"Miracle Worker"より,本作の音楽の方が私にとってははるかに魅力的である。これはいい意味で近年稀に見る「たなぼた」アルバムであった。星★★★★☆。本作を聞くきっかけを頂いたaikさんに感謝したい。

それにしても,Dave Stewartに何があったのかって感じであるが,追って歌詞も堪能したくなるようなアルバムである。

Recorded on July 9 -14, 2010

Personnel: Dave Stewart(vo, g), Chad Cromwell(ds, perc), Michael Rhodes(b), Tom Bukovac(g), Dan Dugmore(g), Mike Rojas(key, accordion), Stevie Nicks(vo), Martina McBride(vo), The Secret Sisters(vo), Ann Marie Calhoun(vln), Judith Hill(vo), Sarah Buxton(vo), Hillary Lindsay(vo) Drea Rhenee(vo), Wendy Moten(vo), Amy Keys(vo), Kim Fleming(vo)

2011年8月28日 (日)

遂に出た!総天然色ウルトラQ

Q 既に記事にもした(記事はこちら)が,遂に「ウルトラQ」のカラーライズ版のボックス・セット第1巻が発売された。白黒が当たり前の「ウルトラQ」をどう着色するのかというところが非常に興味深く,早速「ペギラが来た」と「ガラダマ」の2本を見たのだが,カラーライズが今風ではなく,どちらかというと時代を感じさせる色調なのが私はよかったと思う。全部見たわけではないので,判断は早いかもしれないが,これが現代風のギラギラの色調であるよりも,やや地味目のくすんだ感じで私にはよかったと思う。

いずれにしても,ペギラの眠そうな目,ガラモンの特異な動きをカラーで見ているだけでも,何とも言えない感慨を覚えてしまった中年オヤジの私(爆)。ナメゴンのキャラ/カラーも強烈な「宇宙からの贈りもの」を早く見なければ。それにしても私もアホだなぁ。

2011年8月27日 (土)

移動の友に"Chicago at Carnegie Hall"

Chicago_at_carnegie_hall "Chicago at Carnegie Hall" Chicago(Columbia/Rhino)

昨日(8/26)は本当に久しぶりに記事のアップを休んでしまった。ブログは義務でやっているのではないので,好きな時に書けばいいのだが,どうもそうなっていなかったこともストレスの要因であったように思える。一日休むだけで大違いなのだから,単純なものだ。

それはさておき,今日はChicagoである。私は何かと出張が多いので,移動にかなりの時間を取られることがあるのは致し方ないが,そうした時に,なかなか続けて聞くのが難しいようなボックス・セットを聞くのもなかなかいいものである。今回,移動時間を使って,以前RhinoからリリースされたChicagoのライブ盤のうち,オリジナルLP4枚組に収められていた音源(CD3枚分)を続けて聞くことができた。

Chicagoと言えばブラス・ロックの代表格と言われていたが,後には音楽性を大きく変貌させ,本当にホーン・セクションが必要なのかと感じさせるようになったのも事実である。しかし,当初ホーン・セクション3人を加えた7人組であったChicagoにおいて,特に初期の音源においてはホーンが活躍する場が大きかったし,それが一つの個性となっていたことは間違いない。本作も,非常に懐かしい曲がそれこそ目白押しであるが,久しぶりにこうした演奏形態のChicagoを聞いてみて,ホーン・セクションの魅力もそうなのだが,このバンドにおいてギターのTerry Kathが果たしていた役割を強く感じさせるのである。このKathのギター・スタイルは様々な要素を吸収していて非常に魅力的であり,バンドをドライブさせる力を持っていたと言っても過言ではない。CD3枚にも及び音源を聞いていて,最も強く感じたのがその点であり,更にはChicagoが非常に演奏能力に優れたバンドだったいうことが第二のポイントであろうか。

その後のバラード路線ではPeter Ceteraの甘い声に依存していた部分もあるが,それはそれでよいとしても,初期の演奏に感じられた躍動的な部分は徐々に減少していったように思える。そうした彼らの初期の魅力を感じるには非常にいい機会だったと思う。尚,RhinoからリリースされたCDにはオリジナル未収録の曲が入ったディスク4が付帯しているが,今回はそちらは聞いていない。それなしでも星★★★★☆には十分に値するアルバムだと思う。

そもそもChicagoはシカゴにあるDePaul大学出身らしいが,同大学には優秀なビッグバンドがあり,そのあたりもこういうバンド形態に影響を与えたのかもしれないなぁなんて今更のように思ってしまった私である。後に音楽スタイルを変化させたChicagoにおいて,残っているオリジナル・メンバーがRobert Lammとホーン・セクションの3人だけというのはある意味非常に興味深い事実でもある。

Recorded Live at the Carnegie Hall on April 5 - 10

Personnel: Robert Lamm(vo, key), Terry Kath(vo, g), Peter Cetera(vo, b), Danny Seraphine(ds), Lee Loughnane(tp, perc, g, vo), James Pankow(tb, perc), Walter Parazaider(reeds, perc, vo)

2011年8月25日 (木)

ECM関連書籍:Nik Bärtschのバンド・スコア

Ronin 私はNik Bärtschによって演奏されるクールでミニマルなファンク・ミュージックとでも言えそうな音楽に相当しびれているクチだが,先日,ECMのサイトを見ていたら彼らのECM第3作"Llyria"のスコアがリリースされたということなので,さっさと買ってしまった私である。このアルバムに関してはこのブログでも記事にしたが(記事はこちら),これも非常に魅力的な作品だっただけにスコアはどうなっているのか興味深いものがあった。ちょいと値段は高かった(€38+送料)が,ECMファンはやっぱり買いだろう。だからって,これを自分で演奏するってわけではないのだが,保有していることに意義がある?

相変わらずのアホな私である。これからゆっくり時間を掛けてスコアを眺めることとしたい。

2011年8月24日 (水)

自己分析?

最近、記事を書きそびれることが多くなった。今日もまたって感じで申し訳ないのだが、これには理由がないわけではない。

私はこの4月から仕事が変わったのだが、そのストレスが重くのしかかっているのは間違いない事実である。それまではブログで勝手なことを書き散らかして、ストレス解消をしていたのとは大きな違いだ。

仕事のストレス→酒に逃避→二日酔い→記事を書きそこなう、という繰り返しなのだ。その一方で、毎日アップというルーティンからはずれてしまえば、自分に甘い私がますますいい加減になるのは必定という強迫観念があり、それがまたストレスを助長しているように思える。

継続は力なりというのは間違いない事実だが、所謂ブロガー3年限界説は、継続することの難しさの裏返しであり、その狭間に入り込んだ自分を強く感じる今日この頃である。

それでも原則毎日更新は続けたいが、多少減速するかもしれない。その時は大目に見てやって下さい。カラオケ行って、森高の「ザ・ストレス」でも歌おうっと(爆)。

2011年8月23日 (火)

週末にCDを整理してみたが...

全くの無駄だった...。私はCDはプラケースをはずして,フラッシュ・ディスク・ランチやらTowerやらのソフト・ケースに入れ替えて,収納効率の向上を図っているのだが,もはやスペース上の限界は明らかである。とにかく置くところがない。これでは家人に呆れられるのも無理もない。

そもそもCDを買い過ぎだっていうのが原因なのだが,聞かないCDをそろそろ処分する時期なのかもしれない。私がここ数年,CDやLPを処分することを一切避けてきたのは,一度売ってしまってから強く後悔することが何度もあり,結局は売り払ったCDを高値で買い直すというアホな行動を繰り返してきたからである。それが嫌で売るのをためらってきたのだが,クロゼットの奥深くにしまわれたCDはおそらくもう聞くこともないのであって,そういうものはさっさとリッピングしてしまって媒体は売ってしまうのが得策なのだ。

だからと言って,媒体の魅力はそれなりにあるので,全部ダウンロードに移行するなんてことはありえないし,難しいところである。

いずれにしても,今回久しぶりに整理をしてみて,何かを捨てなければ,もうCDやLPは置けないのだということを実感した私である。だからと言って,広い家に引っ越すなんて夢のまた夢だからねぇ。宝くじでも当たってくれないかなぁ。買わなきゃ当たらない?そりゃそうだ(爆)。

2011年8月22日 (月)

中年音楽狂が一肌脱ぐシリーズ(第11回)

Mjq_last_concert "The Last Concert" The Modern Jazz Quartet(Atlantic)

「お店に並んでいそうでジャズをこれから聴いてみようかなぁという人にお薦めというのがありましたらご紹介ください。」というリクエストにお応えするという趣旨のこのシリーズ,またも間が空いてしまったが,11回目はModern Jazz Quartet(以下MJQ)である。

MJQというバンドはPrestigeレーベルの時代から,非常に質の高い音楽を提供してきたわけだが,Milt Jacksonが得意とするブルーズと,John Lewisが得意とするクラシック的(対位法的と言ってもよいだろう)な手法をいい具合にバランスさせて,非常に上品で優雅なのだが,ジャズ的な感覚もちゃんと残すという点では稀有なバンドであったと思う。

一方,ゴリゴリ,コテコテのジャズこそがジャズのあるべき姿だというリスナーからすれば,この上品さが鼻につくとかいう批判を浴びることがあったのも事実である。そういうリスナーに限って,Milt JacksonがMJQを離れて行う演奏が好きだとかいうことが多いように思うが,例えば,Milt JacksonがOscar Petersonとやると確かに全然違う音楽になってしまうところが面白いのである。

だが,1950年代初頭から,一旦本作に収められた最終ライブまで約四半世紀に渡って,ジャズ界の人気バンドだったことは厳然たる事実であり,それはジャズ愛好者のみならず,より幅広いオーディエンスにも質は高いが,「聞き易く,訴求力が高い」音楽を提供したからこそ,これだけのキャリアを積み上げることができ,そしてメンバーもほぼMJQの活動に集中することができたはずなのである。ジャズというカテゴリーにあっても,その音楽性は幅広いものであり,これはこれでれっきとしたジャズであるという認識が成されるべきである。

この作品は後に再結成するMJQが,一度その活動に終止符を打つべく1974年にNYCで行ったラスト・コンサートの実況盤であるが,ここでもMJQらしさ,典雅さ,そしてバランスのよいブルージーな感覚など,彼らの魅力を十分感じさせるものだと思う。よって,「一肌脱ぐ」シリーズの主旨からすれば,これほどジャズ初心者にとって聞き易いものはないと言ってもよいかもしれない。

もちろん,MJQで推奨すべき作品はこれでなくてもよいかもしれないし,ここに収められた演奏が本当に最高かというとやや疑問がある部分もある。しかし,選曲からしてもMJQのベスト盤的な色彩もあるし,録音も悪くないから,取っ掛かりとしてはおそらく最適な作品ということで本作をチョイスした。再編後のMJQについては私はほとんど関心が持てなかったが,この作品はやはり「これで最後」という気概が感じられる演奏が非常に素晴らしい。星★。尚,現在は「完全版」ということで,オリジナルLPには未収録の曲も入っているが,別に完全版でなくても,このアルバムは優れたものなので念のため。

ちなみに私が最初に買ったMJQはこれか"Django"のどちらかであったが,若い頃はこっちの方をよく聞いていた記憶がある。「一肌脱ぐ」シリーズではストリングスものも取り上げてきたし,私はクラシックも結構好きなので,MJQの音楽には全く抵抗がなかったのだが,まさにこれからジャズを聞こうという人にも,これならおそらく受け入れられると思う。最初に好きになるジャズがどんなものであっても,徐々にその幅を広げていけばいいだけの話であり,本作がそうしたきっかけになれば幸いである。

Recorded Live at Avery Fisher Hall, New York on November 25, 1974

Personnel: Milt Jackson(vib), John Lewis(p), Percy Heath(b), Connie Kay(ds)

2011年8月21日 (日)

「ツリー・オブ・ライフ」:これは難しい!

Tree_of_life 「ツリー・オブ・ライフ("The Tree of Life")」('11,米)

監督:Terrence Malick

出演:Brad Pitt,Sean Penn,Jessica Chastain,Hunter McCracken

今年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した話題作である。TVコマーシャルだけ見ると,親子関係を軸にした人間ドラマだと思っていたら,これが全く違っていてある意味びっくりさせられてしまった。これは親と子,生と死に絡めて,地球の誕生や生命の進化まで描いてしまった映像詩なのである。ドラマの部分と関係のない哲学的な描写が多いため,とてもではないがエンタテインメントとは言えない。よって,話題性のみでこの映画を見に行った多くの観客が???という顔で劇場を出て行くこと必定である。

私もこの映画を見ていて,何度か睡魔に襲われる瞬間があったのだが,それでも最後まで何とか持ちこたえたというのが正直なところである。結局はシナリオはあるにはあるものの,非常に観念的なので,ストーリーを理解することは一筋縄ではいかない。そして全く説明的でないシナリオ,一瞬ブラックアウトする編集,いかようにでも解釈可能な抽象的な映像等,観客を戸惑わせる仕掛けが多数で,やはり面喰った人が多いように思えた。しかし,これは見る側の解釈の余地を与えるという点では,昨今のやたらに説明的な凡百のシナリオに比べればはるかに深い。

そして,この映画の解釈を難しくしているのが,西洋的な宗教観ではないかと思えるのである。シナリオには"Grace"という言葉が何度も登場してくるが,字幕では「恩寵」と訳されていたこの言葉,「キリスト教で、人類に対する神の恵み」という意味だそうであるから,こうした宗教観を踏まえて見る必要を強く感じていた私である。

こうした映像詩としての感覚ゆえに「2001年宇宙の旅」を引き合いに出して比較するというのはある意味でわかりやすいのかもしれないが,いずれにしても,映像の物凄さに感心はしつつも,私のような凡人の理解ははるかに超えた非常に難しい作品であったことは間違いのない事実である。

Thetreeoflifemovieposter 私にとっては近年稀に見る難しい映画であったが,映像の美しさには何度も驚かされたこの映画をプロデュースするなんて,Brad Pittもある意味では大物である。Sean Pennはセリフもほとんどないような感じだが,表情だけで演技をしてしまうところが,この人の凄いところだと思った。そんなこんなで評価は非常に難しいところであるが,映像の美しさ込みで星★★★ぐらいか。だって一回で理解するには難し過ぎるんだもの...。本当に疲れる映画であったが,この映画に相応しいのは日本版のポスターではなく,本国版の映画の中のシーンのコラージュのようなポスターだと思えるのは私だけだろうか。イメージの喚起度という点では,本国版の勝ちだと思うので,そちらのイメージもアップしておく。

いずれにしても,当初パルムドール効果で集客は図れても,それは長続きはしないだろうと思わされる問題作。

2011年8月20日 (土)

これはマジで凄い:Robert Johnsonのリストア盤

Robertjohnsoncentennial "The Centenial Collection" Robert Johnson(Sony Legacy)

ということでちゃんと記事にしなければならないのだが,また飲み過ぎてしまった私は記事を書く余裕がない。しかし,Robert Johnson生誕100周年を記念したこのアルバム,CDが出始めた頃に聞いたBruno Walterのハイドンの交響曲と同様の驚きを私に与えたと言っていいぐらい音が改善していることはちゃんと言っておかなくてはならん。詳しくはまた改めて書くが,これは凄い。テクノロジー万能とは思わないが,こういうのは大歓迎である。今までに聞いていたRobert Johnsonがうそ臭く聞こえると言っては言い過ぎかもしれないが,本当にこれがマジで凄いのである。黙って聞きましょう。詳しくは後日。

2011年8月19日 (金)

Sly Stone:ほぼ30年ぶりの新譜って凄いことだ。

Slystone_imback "I'm Back! Family & Friends" Sly Stone(Cleopatra)

新作を出すインターバルが30年っていうのは凄いことである。しかし,ライブ活動を復活させていたSly Stoneがアルバムを出すことは考えられないことではなかったとしても,1982年以来のアルバム・リリースに胸躍らせるファンってのも少なくないだろう。

私はSly Stoneのファンってわけでもないので,特段の思い入れもない中で,それでもこれは聞いておかなければならんだろうという気持ちにはなってしまう話題作である。Slyの復活を祝するように,数多くのゲストが駆けつけているという祝祭的なところも,Slyが音楽界に与えた影響を物語っているのではないか。

それにしても,このローファイな感じは,意図的に作られているとしか思えないが,現代のテクノロジーからすれば,もっと音がよくてもよさそうなものを,時代感たっぷりに仕上げたという感じか。そして,ここに収められている多くの曲がSlyのヒット曲のリメイクであるが,私のように大して彼の音楽を聞いたことがないリスナー(保有しているのは「暴動」だけである)でも,おぉっ,この曲か~というのが並んでいて,Slyの音楽と認識しなくてっも知ってるんじゃんと思わせてしまうところが凄いところである。

Sly Stoneの声が出ていないとかそういう指摘もあるが,もはやSlyが68歳だということを考えれば,それは仕方がないことであろう。しかし,一時生活保護も受けていたとかいないとかいう話もあるSly Stoneが,このアルバムをリリースするところまでの復活を遂げたこと自体がめでたいことである。そうした点も含めて,ご祝儀込みの半星オマケで星★★★★☆。

いずれにしても,私は本作を聞いて,彼の昔の音源も聞きたくなったのだが,ここはベスト盤だろうな(笑)。

Personnel: Sly Stone(vo), Jurgen Engler & Chris Letz(additional instruments), Ava Cherry(vo), Eugen Henderson(vo) with Ray Mazarek(org), Ann Wilson(vo), Carmine Appice(ds), Ernie Watts(ts), Johnny Winter(g, vo), Jeff Beck(g), Bootsy Collins(b, vo)

2011年8月18日 (木)

またやってしまった...

夏休み明け早々また飲み過ぎた。ということで,本日はまた記事を書きそこなってしまった。ヴィジターの皆さん,ごめんなさい。本当はSly Stoneの30年振りの新作について書くつもりでした。明日はちゃんと書こうっと。

2011年8月17日 (水)

今更ながらTelevisionを初めて聞いた

Television "Marquee Moon" Television(Elektra)

昨日に続いて懐メロ・シリーズである。本作も非常に安く仕入れたもの。しかし,私にとっては懐メロでもなんでもなく,まともに聞いたのは初めてなのだ。ニューヨーク・バンクの名盤として知られるこのアルバム,私の「パンク嫌い」もあってずっと聞かずにきたのだが,それでもPatti SmithとTom Verlaineの共演等もあり,気になっていたのは事実(私はPatti Smithはかなり好き)なのだ。

この1977年のアルバムを聞いて,確かに私の指向に100%フィットする音楽ではないのだが,それでも全く抵抗なく受け入れている私にも笑える。だが,このアルバムを聞けばわかるが,これはどう聞いてもパンクには聞こえない。ギターなんてクリーンなサウンドだし,演奏もまともで,やたらに怒りをぶつけるだけのしょうもないパンクとは明らかに一線を画している。

このアルバムを私がよく中古盤屋で目にするのは,「ニューヨーク・パンク」とカテゴライズされた彼らのやっている音楽が,リスナーの期待するパンクと乖離しているからではないかとも思えてくるのだが,やはりこれはパンクって感じではないのである。どちらかと言えば,後にニューウェイヴと呼ばれる音楽(これも私の趣味ではないのだが...)と相通ずるものがあるように思える。いずれにしても,21世紀となって既に10年も経過し,私もいろいろな音楽に耳を傾けてきたことを踏まえれば,これは普通のロックなのだ。

それにしても,このアルバムがRolling Stone誌が選ぶ500 Greatest Albums of All Timeの128位に位置していると知ると「へぇ~」って感じであるが,125位にStooges,126位にTalking Headsの"Remain in Light"がいるのを見ると,そうなのかぁと妙に納得感がある私である。

だが,この10分を越えるタイトル・トラックは当時としてはやはり新しかったのだろうと思わせるし,私としては初めて聞いて,印象の違いはあったものの,これは評価されて当然だろう。とにかく驚いてしまった私である。いずれにしても,リズムの刻みにはレイドバック感さえ私におぼえさせ,メロディ・ラインには哀愁さえ漂う場面があるのだから,時代の流れというのは恐ろしいものだ。当時の最先端だったかもしれないこの音楽を,発売から35年近くを経て初めて聞いたが,これも一つの歴史の断面と捉えられる時代になったということである。星★★★★☆。それにしてもこの作品は曲が粒揃いだ。それにも驚いてしまった。

しかし,昨日,今日とロック界の歴男みたいになってきたなぁ(笑)。

Personnel: Tom Verlaine(vo, g), Richard Lloyd(g, vo), Fred Smith (b, vo), Billy Ficca(ds)

2011年8月16日 (火)

新譜が夏枯れの間に懐メロを...

Christopher_cross "Christopher Cross" Christopher Cross(Warner Brothers)

今年の初夏ぐらいには優れた新譜が怒涛のように発売されて,それを追いかけるのも大変だったのだが,ここのところ,やや夏枯れ状態のようになっている(とか言ってSteve Cropperはどうするんだとか,いろいろ気になる作品はあることはある)ので,新譜はちょっとお休みし,回顧モードに入っている私である。その私の背中を後押ししたのがネットでの結構な安売りであることは間違いないのだが,それにしても円高ということもあろうが,本当にCDは安くなったものである。

ということで,本日は1979年にリリースされたChristopher Crossのデビュー・アルバムである。今回,久しぶりにこのアルバムを聞いてみて,LP時代に私はB面ばかり聞いていたんだなぁという思いを強くしたが,それにしてもこのアルバムの完成度は結構高かったということに今更のように気がつかされてしまった。これはおそらくはMichael Omartianのプロデュースの勝利である。

ポイントはここでの演奏のベーシックな部分はCrossの当時のレギュラー・バンドで行われているということである。そこに加わるのがまさに適材適所のゲストである。それはリード・ギタリストであったり,バックグラウンド・ヴォーカリストだったりするのだが,今回本当に久しぶりに聞いてみても,ちゃんとMichael McDonaldのヴォーカルやLarry Carltonのソロを覚えていたということがこのアルバムの強力さを示していると思える。とにかく記憶に残っているのだ。それは私の若い頃とシンクロしているからだということもあるだろうが,音楽の強さと同時に,おそらく当時はこのアルバムもかなりの回数聞いたことの証とも言えるだろう。

それにしてもいいメンツをゲストに揃えたものであるが,これがOmartianの人脈によるものか,Crossの音楽が評価されていたことによるものなのかは別にして,クレジットを見ていてワクワクしてくるようなメンバーだと言える。

まぁChristopher Crossの場合,このアルバムが売れ過ぎたこともあるし,"Arthur's Theme (Best That You Can Do)"という名曲を早い時期にものにしてしまったこともあり,その後の失速ぶりはある意味痛々しい部分もあるが,それでもこのアルバムの価値が下がることはないと思う。いやいや本当に懐かしかったし,今聞いてもかなりいい。星★★★★。

しかし,この人の顔と声のギャップが当時話題になったことも懐かしい。

Personnel: Christopher Cross(vo, g), Andy Salmon(b), Tommy Taylor(ds), Rob Meurer(key), Larry Carlton(g), Jay Graydon(g), Eric Johnson(g), Michael Omartian(key, vo), Lenny Castro(perc), Victor Feldman(vib), Chuck Findley(tp), Jim Horn(sax), Jackie Kelso(sax), Tomás Ramírez(sax), Don Roberts(sax), Nicolette Larson(vo), Michael McDonald(vo), Don Henley(vo), J.D. Souther(vo), Valerie Carter(vo), Myrna Matthews(vo), Marty McCall(vo), Stormie Omartian(vo)

2011年8月15日 (月)

夏休みの終わり...

夏休みもあっという間に終わってしまった。今年はどこに行くというわけでもないし,何をするというわけでもなかったのだが,実家にも行ったので,実家に埋もれているLP,LDを処分すべく,その選定を行ってきた。今回,処分の対象としたのはCD,DVDで買い直しているものであり,もうLP,LDの媒体で持っている理由もないものばかりである。おそらくは二束三文にしかならないようなものばかりだし,長年の放置でジャケもカビていたりするが,まぁ,こういうのは思い切りも必要である。

実際には,まだまだ売ってしまえばよいというものもあるが,それは次回に取っておくとして,今回はジャズ批評,SJ別冊等々も含めてジャズ系の書籍も処分してしまうことにした。これも時代の流れだと割り切ることとしたい。

2011年8月14日 (日)

Dominick Farinacci:若いのに歌心があるねぇ。

Dominickfarinacci "Dawn of Goodbye" Dominick Farinacci (eOne Music)

Dominick Farinacciは日本のレーベルとつながりが深く,私も彼の日本制作のアルバムを何枚か持っている(但し全部中古で購入)。そこでもうまいラッパだと思っていたが,その後,日本制作のワンパターン化が気になってきて,その後は彼のアルバムは買っていなかった。しかし,今回,アメリカ制作で,曲目を見てまた買ってみようかということで購入したのがこの新作である。

ここでは,Farinacciのワンホーンということもあり,これまでのアルバムにも感じられた歌心が同様に感じられる作品となっていることは評価に値するように思う。しかも結構な作品をリリースしているが,まだ28歳である。若い割には成熟した音楽を聞かせるが,逆に言えば,ちょっと老成し過ぎちゃいないかという批判も当てはまろう。

だが,私がトランペットのワンホーンが好きだということもあって,このアルバムは結構評価したいと思うのだが,最後になんで"Work Song"を持ってきたのかが疑問が残る。演奏が悪いわけではないのだが,アルバムのカラーとかなりずれてないかというところが気になってしまうのである。私としてはスタンダードだけ吹けばいいというつもりはない。しかし,これとその前の"You Made Me Love You"は米盤のトラック・リストにないので,私が購入したものはボーナス・トラック入りなのかもしれないが,この追加収録はやはり疑問である。

しかし,このアルバムについて言えば,この歌心はちゃんと評価しなければならないというのが実感である。確かに刺激は少ないが,これはリラックスするためのアルバムだと考えればいいのである。だからこそ,ここはFarinacciが考えたであろうフォーマット(タイトル・トラックで締める全9曲)がアルバムとしては望ましかったのではないかと思えてならない。もちろん,その2曲を除いてプレイバックすればいいだけの話だが,私には今回の追加の2曲は蛇足としか思えなかったということもあり,星★★★★とする。なんだか惜しいねぇ。

それにしても,このアルバムの米国での高い評価を見ていると,Farinacciに既に7枚ものリーダー作を吹き込ませた日本人の感覚も捨てたものではないのかもしれない。

Personnel: Dominick Farinacci(tp, fl-h), Dan Kaufman(p), Yasushi Nakamura(b), Carmen Intorre(ds), Keita Ogawa(perc), Jonathan Batiste(p), Ben Williams(b), Guilherme Monteiro (g)

2011年8月13日 (土)

85分という上映時間も潔い「この愛のために撃て」

Photo 「この愛のために撃て("A Bout Portant")」('10,仏)

監督:Fred Cavayé

出演:Gilles Lellouche, Roschdy Lem, Gérard Lanvin, Elena Anaya, Mireille Perrier

夏休みを利用して見に行った映画である。今回は家族連れではなく,一人で見た。そもそも私がフランス映画を見に行くことも珍しいが,この映画,昨今には珍しく上映時間が85分と短いのだが,これが一気に見せるサスペンス・アクションで,フランス映画も侮れないと思ってしまった。フランス映画の犯罪ものと言えば,以前「あるいは裏切りという名の犬」という映画をこのブログで取り上げたことがある(記事はこちら)が,こういうタイプの映画,なかなか味わいがあって,ハリウッド製よりも結構楽しめたりする。

ストーリーとしては典型的な巻き込まれ型サスペンスで,この映画は全編に渡ってのノンストップ・アクションと言っていい展開も楽しめるのだが,最大のポイントは主役に全くさえない男としてのGilles Lelloucheを配したことである。これにより,一般の観衆は感情移入がしやすくなるはずなのである(少なくとも私はそうだ)。まじでこのGilles Lelloucheという役者のさえない風貌がリアリティを増すというか,とんでもないフィクションにリアリティを加えているとさえ思うわけである。

この映画は典型的巻き込まれ型であるとともに,悪徳警官ものでもあり,敵役を演じるGérard Lanvinがこれまた憎たらしいことこの上ない。私の昔の職場で宿敵であったアメリカ人(これが似ているのだ)を思い出してしまい,ますます私は感情移入が激しくなっていたかもしれないが...(苦笑)。

いずれにしても,最近は長けりゃいいと思っているのではないかとしか感じられないような尺の映画が多い中で,こういうコンパクトながら極めてアクティブな表現を感じさせる映画は非常に小気味よい。若干,表現にえげつない部分があるがゆえのPG-12指定だろうが,いずれにしても私が行った劇場の観客の平均年齢は50歳を過ぎていたのではないかと感じられるようなもので,少なくとも青少年の姿はなし。子供にはフランス映画なんて興味がないんだろうなぁと思いつつ,この映画,公開されている劇場数が少ないので,知られることがなく終わってしまうのはちょっと惜しいという気がする。星★★★★。このテンポ,まさしく小気味よい。そして,一番の儲け役はRoschdy Lem。本来の悪玉が,最後には任侠の精神さえ感じさせるところが面白かった。

2011年8月12日 (金)

完全ノーマークとはこれのこと:The Impossible Gentlemen

The_impossible_gentlemen "The Impossible Gentlemen" The Impossible Gentlemen(Basho)

某所での紹介なかりせば,全くレーダー・スクリーンにも引っ掛からなかったであろうアルバムである。そもそもこのタイトルとジャケットだけを見て反応する人は少なかろう。しかし,これが一部で話題のGwilym Simcockのバンドであり,しかもリズムがSwallow~Nussbaumというコンビであると知れば食指が動く人も多いのではないか。Mike Walkerというギタリストについては初めて名前を聞いたが,George RussellやらKenny Wheelerでのバンドで演奏をしている英国出身の中堅プレイヤーって感じだろうか。

そして,このアルバムを聞いてみたのだが,何ともコンテンポラリーな響きが心地よい。冒頭の"Laugh Lines"からギターとピアノのユニゾンが心地よいが,キメキメのユニゾンという形態ではないので,痺れるような感覚というよりもあくまでも心地よいスリルが感じられるのである。 2曲目以降もそうした感覚は継続するが、スリルよりも心地よさの方が私にとっては勝っていた。ちょっと違うかなとも思いつつ,"Watercolors"の頃のPat Methenyを感じていた私である。特にSimcockがビアニカを吹く"Wallenda's Last Stand"は,その音がLyle Maysのオートハープのようで,ますますそうした感覚が強くなってしまった。この哀愁度はPMGとは異質ではあるが,それでもこの演奏はかなりいい。

そして,よくよく考えてみれば,編成としてはMetheny~Mehldau Quartetと同じなのだが,曲やグループとのコラボレーションとしては私はこちらの方がずっといいのではないかと感じてしまった。全体の構成としても硬軟を取り交ぜて,最後まで聞かせるところが気に入った。ラストの"Sure Would Baby"なんてかなりハードかつブルージーで,ブリティッシュ・ロック的でもあり,本当にいろいろな音楽性を聞かせるという意味でも引き出しの多いグループである。これが某サイトでは900円しない値段で売っているなんて...。この値段でなくても買って損はないアルバムである。星★★★★☆。

Personnel: Gwilym Simcock(p), Mike Walker(g), Steve Swallow(b), Adam Nussbaum(ds)

2011年8月11日 (木)

"You're under Arrest":このアルバムは評価が難しい

Youre_under_arrest "You're under Arrest" Miles Davis(Columbia)

私は80年代のMilesのライブは結構好きだった。ヘヴィーなファンクネスが感じられて,それこそ怒涛のように突き進むバンド・サウンドは何度ライブの会場に足を運んでもかなり興奮させられた。その頃のMilesバンドのレパートリーの中核を成していたのはこのアルバムの収録曲であるはずだから,私はもっとこのアルバムを好きでもいいのだが,昔からどうも私はこの作品があまり好きになれないのである。

演奏自体がダメというのではない。この作品に感じられる音のポップな「軽さ」にどうもなじめないというのが正直なところである。ライブの感覚との落差が大きいので,おそらくはミキシングのせいだと思うのだが,それにしてもやはりこの作品は音が軽い。もちろん"Time after Time"なんて,Miles以外に表現しえない世界だと言ってもよいのだが,私はやはりMilesにはもう少しヘヴィーな音を求めたい。だから,この頃の演奏は本作よりもライブで聞いた方がずっと楽しめてしまうのである。例えばレーザー・ディスクでも発売されていたモントリオールのライブなんて無茶苦茶カッコよかったと思う。

そういうこともあって,私はこのアルバムのCDを買うことをずっとためらってきた(LPは持っている)のだが,結構安売りしていたので何年かぶりに聞いてみたが,上記のような印象が変わることはなかった。John McLaughlinの久しぶりの共演,Stingのゲスト出演等,結構話題にはなったし,"Human Nature"や"Time after Time"のカヴァーもインパクトは強かった。しかし,これはやはり私がMilesに求める音(特にサウンド)ではなかったということになってしまう。

この後,Milesは更にポップな方向も交えた演奏をライブでも行うようになり,私としてはライブでのMilesにもあまり価値を見出さなくなってしまったのは残念だが,ここでのレパートリーのライブ演奏は間違いなくカッコよかった。だからこそ,このアルバムは私にとって,長年微妙なままの存在なのである。星★★★☆。尚,私が一番好きなのはD TrainのオリジナルをMiles流に料理した"Something's on Your Mind"だったりする。

Personnel: Miles Davis(tp, synth, vo), Bob Berg(ts, ss), John Scofield(g), John McLaughlin(g), Robert Irving(key), Darryl Jones(el-b), Al Foster(ds), Vincent Wilburn, Jr.(ds), Steve Thornton(perc), Stng(vo). Marek Olko(vo), James Prindville(handcuffs)

2011年8月10日 (水)

日韓戦完勝に思う。

Photo 宿命のライバルである韓国との一戦にはついつい熱くなってしまう私だが,今日の試合はまさに完勝であり,見事な試合運びと,決めるべきところを決めるという見ていて気持ちのいい試合であったことは間違いのない事実である。日本代表は確実にレベル・アップしているし,そのこと自体に異論はない。

しかし,今回の韓国代表,ちょっと切れ味や緊張感に乏し過ぎやしないか。私は試合前,ピッチに出る前に,一部の韓国代表の選手と日本代表の選手が談笑している姿が映し出されて,非常に強い違和感をおぼえていたのだが,そもそも,Jリーグでプレーしている韓国代表選手もいるわけだから,そうした風景が見られることは不思議ではないのかもしれない。だが,日本と韓国はアジアの覇権を争う永遠のライバルであり,日韓戦にはもっと緊張感があって然るべきではないのかと感じてしまうのである。

よって,今回の試合は日本代表は真剣に取り組んだのに対し,韓国代表は今までよりも親善モードが強過ぎたのではないのかとうがった見方もしたくなるわけである。もちろん,今回の日韓戦は決定的なチャンスを少なくとも2度ははずすという韓国代表の決定力不足という点に助けられた部分はあったとしても,いつもの日韓戦のような斬り合いという感覚に乏しかったように思える。確かにイエロー・カードも韓国代表は2枚食らっているから,真面目にやっていないということはないだろうが,それでも何となく淡白に感じてしまうのである。

ある意味,今回の韓国代表は草食系男子のように思えてしまったわけだが,やはり韓国代表にはニンニクや肉の香りがプンプンするような肉食系のプレーを期待したい私には,かなり疑問の残る試合であった。もちろん,韓国のことだから,W杯の3次予選になれば,まさに真剣勝負を仕掛けてくることは間違いないだろうが,それにしてもである。

今回の日韓戦,日本にとっては収穫の多いゲームだったかもしれないが,本当のバトルが待っているこの段階で,今回の完勝が悪い影響を与えなければいいがとつい思ってしまった私である。皆わかっていることだが,3次予選が始まれば,「今度は戦争だ」に変わってしまうのである。浮かれている場合ではないのだ。しかも初戦は北朝鮮である。ガリガリ削ってくること必定であるから,怪我をしないよう,パスのスピードと精度を上げて臨んで欲しいものである。あとはレイト・チャージには要注意であろう。

だが,こんなことを書いてはいるものの,香川の一点目,本田の二点目は当たりは今イチでも,ちゃんと決めているところがこれまでの日本代表とは違うというところは大いに評価しておきたい。あの体制から得点した彼らは褒められて然るべきである。

Crusadersかくあるべしのような"Scratch"

Scratch "Scratch" The Crusaders (Blue Thumb)

私がこのブログで取り上げてきたCrusadersのアルバムにはケチばかりをつけてきたような気がする(記事はこちらこちら)が,私は彼らが嫌いなわけではない。特にJoe Sampleは相当好きだと言ってもいいのだが,アルバム単位で見る(聴く)と,それらのアルバムは駄目だと思ったのである。

では私が彼らのアルバムで何がいいのかと聞かれても,全部聞いているわけではないので,ちょいと微妙なところはあるのだが,このアルバムは自信を持って薦められると思っている。ライブならではダイナミズムと,テキサス出身らしい泥臭さも含んだファンク・フレイヴァーを感じることができるという点で,これはCrusadersの「らしさ」に溢れたアルバムということができると思う。では何がいいか。Beatlesの"Eleanor Rigby"やCarol Kingの"So Far Away"のような超ポップ・チューンを演奏しても,彼らの色に染まっていること自体がいいのである。特に後者において聞かれるWayne HendersonとWilton Felderのロング・トーン(循環呼吸なのかなぁ)を聞いたら,誰だって盛り上がるだろうと言いたくなる。こういうノリが,後の洗練され過ぎたCrusadersには感じられなくなったのだと私は思う。

それにしてもである。このアルバムのいいところは演奏もそうなのだが,多くの人が認めるように,"Way Back Home"の前に収められたWaynen HendersonのMCが何とも素晴らしい。これぞ黒人的なノリである。MCからしてファンクっていうのが何とも言えない。これは本当に雰囲気たっぷりのMCであって,ちょいとやそいとでこの感覚は喋りでは産み出せないだろうと言いたくなる。

音楽として,後世に残るとか,超名盤とかいうアルバムではないかもしれない。しかし,このCrusadersというバンドの歴史の中で,このアルバムが一番好きだってリスナーは結構多いのではないだろうか。まぁLarry Carltonの出番が多ければもっとよかったって話もあるが,それでもこういう世界って今となっては結構懐かしく,かつ最近では聞けない世界ということで貴重だと思う。星★★★★。やっぱり私も好きだよなぁ。

Recorde Live at Roxy, LA in 1974

Personnel: Wilton Felder(ts, b), Wayne Henderson(tb), Joe Sample(key), Stix Hooper(ds), Larry Carlton(g), Max Bennett(b)

2011年8月 9日 (火)

John McLaughlinのWarner時代を振り返る(その1)

Music_spoken_here "Music Spoken Here" John McLaughlin(Warner Brothers)

私が認識する限り,John McLaughlinがWarner Brothersレーベルに残したアルバムは3枚ある。後の超弩級モントルー・ボックスもWarnerレーベルだが,それは今回の対象とはしない。その3枚とは今日取り上げる"Music Spoken Here"及び"Belo Horizonte","Mahavishnu"である。John McLaughlinが自らのWebサイトで述懐する通り,"Mahavishnu"以外の2枚で狙ったのは,McLaughlinのアコースティック・ギターを中心とする音楽だったわけだが,Warnerとはそうした路線では折り合いが悪かったらしい。それが,Billy Cobhamを迎えたMahavishnuの再編アルバムである"Mahavishnu"を制作するきっかけになったのかもしれない。

いずれにしても,McLaughlinがWarnerに在籍した頃は,あのスーパー・ギター・トリオが全盛の頃であるから,彼がアコースティック・ギターの可能性を追求しようとしたこと自体は理解できないわけではない。しかし,アコースティック・ギターだけでなく,当時の最新鋭機器であるSynclavierの導入が一つのアクセントであり,更にはそれを弾いていたのが当時の奥さんであるKatia Labèqueというのが一つのポイントであろう。Katiaは妹のMarielleと組んだLabèque Sistersでの活動をしていたれっきとしたクラシック畑のミュージシャンである。それがMcLaughlinと共演するという越境型の活動が話題になったのも懐かしい。余談だが,KatiaはMiles Davisの"You're under Arrest"において,"Katia Prelude"と"Katia"の2曲にその名前が取られているのも,McLaughlinが同作に参加したことと無意味ではなかろう(おそらくはスタジオに一緒にいて,美人のKatiaにMilesが目を付けたんだろう)。

私は何だかんだと言って,John McLaughlinのアルバムを保有しているわけだが,実はこのWarner時代のアルバムを結構評価していて,実は全てLPで保有しているのが,先日思い立って,これらのCDを購入することとなって,改めて聞き直しているのだが,やはりこれは悪くない。相変わらずのMcLaughlin節が炸裂しているが,それを支えるバンド・サウンドとの親和性は悪くない。本作は一時期Wounded Birdレーベルから再発されたはずなのだが,今はカタログから消えてしまっていているのが不思議だ。私は某中古サイトで結構安く購入できたからいいが,無茶苦茶な高値だったら,LPで我慢していたはずである。ほかのWarner時代の2枚はカタログに残っているだけに,これはなんでなんだろうと思わざるをえない。

いずれにしても,この英米仏混合バンド(McLaughlinは"The Translators"と呼んでいる)はメンツもいいし,演奏もいいので,なぜ過小評価なのか理解に苦しむのだが,やはりMcLaughlinはエレクトリックのイメージが強かったということなのかもしれない。だが,これはこれで私はいいと思っている。キーボードとのバランスがちょっと悪いかなぁという点は差し引いても,星★★★★ぐらいにしておいてもよいハイブラウなフュージョン・ミュージックだと思う。やはり私はMcLaughlinには甘いのか...。

尚,ジャケット・デザインは名工房Hipgnosisによるものである。彼らがジャケットのデザインをすることはジャズ界では非常に珍しいことだと思うが,よくよく調べてみたらスーパー・ギター・トリオの"Passion, Grace & Fire"もHipgnosisデザインであった。う~む,勉強になるねぇ(笑)。

しかし,その1と言ったら,ちゃんとあと2作もやらないとねぇ。プレッシャーだ。

Recorded in June - July, 1982

Personnel: John McLaughlin(g); Katia Labèque(p, synclavier); Francois Couturier(el-p, key), Jean Paul Celea(b), Tommy Campbell(ds)

2011年8月 8日 (月)

この歳にして,初めてHall & Oatesの「アルバム」を聞いた

Hall_oates "Daryl Hall & John Oates" Hall & Oates (RCA)

私は先日50歳になったが,この歳になるまで,実はHall & Oatesのアルバムというのはベスト盤を除いて買ったことがなかった(かつ聞いたこともなかった)。これまではベスト盤を聞いてりゃいいやぐらいの考え方で全然問題ないと思っていたし,往年のヒット曲はポップな魅力に溢れてはいても,だからと言って,アルバム単位で買おうと思ったこともなかった。しかし,今回は最近お馴染みの5枚組安売りシリーズとして彼らのRCA時代の音源がリリースされたので,安いこともあって購入となった。そして最初に聞いたのがこのアルバムである。彼らがブレイクしたのはRCA時代に入ってからなので,ここから70~80年代に向けての快進撃が始まったということであろう。

そして,このアルバムを聞いて思ったのは,彼らは完全にブルー・アイド・ソウルだったのねぇというサウンドである。シングル・ヒットだけ聞いていると,こうした要素はあまり強く感じられないのだが,こうしてアルバム単位で聞くと,彼らの出自は完全にソウルであることが明らかになる。逆に言えば,シングル・ヒットした曲は,彼らのポップ・サイドの性格が濃厚に表れており,それらは彼らの本音ではなかったのではないかと思えてしまうぐらいなのである。そうした意味では,シングルでは全米第1位を獲得しても,アルバムでは全米第1位になれないところが,彼らの音楽性が売れ線一筋ではないということによるものではないかと感じられてくるのである。

よって,制作の方針としては,アルバムはアルバムとして作るのだが,チャートも意識して,シングル向きの曲をアドオンするという感じにさえ聞こえてしまうのである。当時は先行するシングルをアルバムに乗せるというような時代だったから,それも難しくはなかったかもしれない。このアルバムにも"Sara Smile"が収録されているが,ほかの曲との間に性格的な違いが濃厚に感じられる。

それでも,初めてアルバム単位で聞く耳には新鮮に感じられたのは,自分の中のHall & Oatesのイメージがシングル・ヒットだけで形成されていたからにほかならないと思ってしまった。これが本当の「温故知新」なのだろうなぁという意味合いも含めて星★★★★。

それにしても,このジャケは薄気味悪いと感じるのは私だけではないだろうなぁ(笑)。

Personnel: Daryl Hall(vo, synth, g, vib), John Oates(vo, g, synth), Christopher Bond(synth, g, arr), Clarence McDonald(key), Tommy Mottola(synth), Scott Edwards(b), Leland Sklar(b), Jim Gordon(ds), Michael Baird(ds), Ed Greene(ds), Gary Coleman(perc), Sandy Allen(vo)

2011年8月 7日 (日)

期待を上回る素晴らしさ:Stéphane KereckiとJohn Taylorのデュオ

Patience "Patience" Stéphane Kerecki & John Taylor (Zig Zag Territories)

私はネットで,このジャケを見ただけで買いたいと思ってしまったアルバムである。いい写真ではないか。しかもタイトルは"Patience"即ち「忍耐」と来た。ネクラの私にはそれだけで,ますます聞きたいと思う作品だ(笑)。

Stéphane Kereckiと言えばTony Malabyの参加した"Houria"をこのブログで取り上げたことがある(記事はこちら)があるが,そこでの熱い演奏があったので,今回のピアノとのデュオはどうなるかも気になる。しかも相手はJohn Taylorである。期待するなという方が無理である。

そして冒頭のアルコの響きを聞いて,おぉっ,現代音楽のようだと感じるリスナーは多いのではないか。静謐な中に,緊張感の漂う滑り出しである。これは確かに「忍耐」が必要かとも思わせるが,そうした感覚は2曲目でなくなるから安心してよい。この作品は美的な感覚だけを追求したものではなく,あくまでの2つの楽器が対峙し合う姿を捉えたものである。よって,かなりテンションは高い。しかし,この2人の楽器による対話を楽しむという点では,かなりいけている。

元々私はJohn Taylorをひいきにしていて,彼とベースのデュオと言えば,Charlie Hadenとの"Nightfall"(記事はこちら)があるが,あちらの強烈な美的感覚とは明らかに異なっている。"Nightfall"もまた優れた作品ではあるものの,流れを分断する"Song for the Whales"という駄曲が入っていて評価を若干下げたのに比べると,このアルバムの持つストイックな響きがより魅力的に思えてくる。この対話は本当に素晴らしい。

Patience001 この作品は両者がその実力を発揮するだけでなく,演奏にシナジーをもたらしていると言っては褒め過ぎかもしれないが,暑い夏をクールダウンさせるには丁度いい響きをもたらす好盤。ジャケの写真も好きだが,インナー・スリーブの裏写真もこれまた美しいので,スキャンして画像をアップしてしまおう。いいねぇ。星★★★★☆。いずれにしても,この音楽を聞くことに「忍耐」は必要ないので念のため。

Recorded on September 27 - 29, 2010

Personnel: Stéphane Kerecki(b), John Taylor(p)

2011年8月 6日 (土)

あ~夏休み

会社が休みになるのをいいことにまた飲み過ぎてしまった。ということで記事も書かずにあっという間に寝てしまった。ということで,今日は記事もお休み。

2011年8月 5日 (金)

Phoebe Snowの紙ジャケ来る。

Second_childhood_3Never_letting_go_5It_looks_like_snow_5Against_the_grain_3

Phoebe SnowのCBS次代の4作がこの度めでたく紙ジャケで再発となった。これは彼女が今年亡くなったことによる追悼の意味が強いとは言え,一部のアルバムは入手がかなり困難になっていたことを考えると,非常にありがたい再発である。

私は以前,"Never Letting Go"をこのブログで取り上げたことがある(記事はこちら)が,今回発売になった同作を含む4枚を聞いても,印象は変わらない。やはりこの人にはNYCの香りがするのである。今にして思えば,ソウルとポップの境界線上を歩んでいたような人であるが,個性的な声,歌唱とそれを支える優れた伴奏と相俟って,どれも楽しめるアルバムとなっていると思う。

こうして連続して聞いてみると,やはり惜しい人を亡くしたと思わざるをえない。彼女が亡くなったのが今年の4月26日のことであったが,私はまだ震災のトラウマから脱却しきっていない時期だったこともあり,追悼しそこなっていた。

今回,まとめて彼女の歌唱を改めて聞いて,ここに追悼の意を表したい。R.I.P.

いずれにしても,今回の紙ジャケ盤,購入するのは相当の好き者のはずだが,彼女のアルバムが暫く高値を呼んだことを考えれば,ファンはなくならないうちに買っておいた方がよかろう。中年の私にはしみる音楽であった。

2011年8月 4日 (木)

久々のSantanaである。

Caravanserai "Caravanserai" Santana(Columbia)

私はSantanaが好きだ(きっぱり)。特に初期のアルバムやライブ盤がいいのだが,Santanaのキャリア上で,異色ではありながら,出来がいいという点で本作は忘れることができない。

冒頭の音を聞いていて,旧来のSantanaのファンは愕然としたのではないかと思うが,確かに初期3作の感覚とは明らかに違う。これはSantanaがジャズ/フュージョンに明らかに傾斜した作品だと言ってよいように思う。だからこそ,これが最初に出た時には,Santanaのパブリック・イメージを覆すものとして,大きな衝撃を与えたのではないかと思えるのである。これはミュージシャンとしてのSantanaの野心が表れた作品とも言えるが,それはある意味,Santanaのポピュラリティに影響を与えるというものでもあったはずだ。それでも出したってところにSantanaの心意気を感じる。

そうした野心的な作品であるからこそ,私はこのアルバムはインストで統一してもよかったのではないかと思っている。特に"All The Love of The Universe"のポップさは完全にこのアルバムの中で浮いてしまっていて,どうにも居心地が悪い。野心的なアルバムを作ろうとしながら,こういう曲を残すところに私は中途半端さを感じさせるのは減点対象だが,それでもこのアルバムはジャズ・ファンが聞いてもそこそこ気に入るのではないかと思える優れた演奏集である。星★★★★☆。

Miles DavisがなぜCarlos Santanaを買っていたか。そのヒントはこういう作品にあるのかもしれないと感じた通勤時間であった。いずれにしても,1972年12月7日付のRolling Stone誌で本作とMilesの"On the Corner"の2作が同じ記事の中で,Ralph J. Gleasonによってレビューされているというのは,何とも象徴的な事実だと思う。

Personnel: Carlos Santana(g, vo, perc), Neal Schon(g), Gregg Rolie(org, p, vo), Michael Shrieve(ds, perc), José "Chepito" Areas(perc), Douglas Rauch(b, g), Tom Rutley(ac-b), James Mingo Lewis(perc, p, vo), Armando Peraza(perc), Douglas Rodrigues(g), Wendy Haas(p), Hadley Caliman(sax, fl), Rico Reyes(vo), Lenny White(castanets), Tom Coster(el-p), Tom Harrel(arr)

Brad Mehldauの新譜ジャケット公開

Modern_music 先日もちらっと触れたBrad Mehldauの新譜"Modern Music"のジャケット・イメージがネット上で公開されたので紹介してしまおう。アルバムのタイトルが"Modern Music"なら,ジャケは"Modern Art"って感じだなぁ。う~む,早く聞きたい。Nonesuchのサイトで予約すると,タイトル・トラックがダウンロードできるみたいなのだが,航空便とは言え,デリバリーが遅くていらいらするので,ここは我慢,我慢。

2011年8月 3日 (水)

これまたアップに時間が掛かってしまったAdam Cruz

Adam_cruz "Milestone" Adam Cruz (Sunnyside)

このアルバムがリリースされたのは4月のはずなので,これも今更新譜扱いすることにはちょっと抵抗があるが,まぁ今年のリリースだから許してもらおう。

Adam Cruzと言っても,ヴィヴィッドに反応する人はあまりいないのではないだろうか。私が不勉強なせいもあるだろうが,最も彼が知られているのはおそらくChick Corea & Originでの演奏ではないかと思う。一方,お仲間のブロガーの皆さんには「クリポタ10」こと"Song for Anyone"が印象深い人ではなかろうか。そんな彼が豪華なメンツを迎えて放つ初リーダー作である。

昨今,ドラマーのリーダー作が増えて,そのどれもがドラムスだけでなく,優れた作曲能力を示すというものが多いが,本作も全曲,Cruzのオリジナルである。そして曲は様々な表情を持つ曲が集められており,多様多彩な作曲能力をこの人も持っていることがわかる。

だが,多くの人にとって,リーダーのCruzには悪いが,メンツ買いという側面がこのアルバムにはあるのではないかと思えてしまうぐらいのメンバーが顔を揃えている。決してメジャーとは言わずとも,その実力を多くの人が認めるミュージシャンばかりなのである。そして私は完全にクリポタ買いだったのだが,ここでのクリポタがまた切れまくっている。冒頭の"Secret Life"から「もっとやってぇ~」といいたくなるようなハード・ボイルドなソロを聞かせる。そして,アルバム全体を聞いていてもテナーが鳴り出すと耳がそば立ってしまう私である。Alex Sipiaginの新作でもそうだったが,最近のクリポタの客演の切れ味は素晴らしく,ファンも大いに納得させる出来のソロを連発してくれるところが嬉しい。それだけで,本作は買って正解。

加えて,同じく「クリポタ10」に参加していたSteve Cardenasのソロも聞きどころが多いし,その他のメンツも総じて素晴らしい客演ぶりである。Cruzのドラムスは,リーダー・ドラマーにありがちな「俺が,俺が」という感じではなく,きっちりバンドを統率する役割に徹していて,好感度大である。バッキングは的確かつ適切であり,初リーダー作としての気負いも感じさせないところは立派だ。よって,ここはCruzのトータルなミュージシャンとしての資質,演奏,リーダーとしての力等を鑑みれば,十分星★★★★には値する佳作である。これで作曲能力がもう少し高まれば更に高い評点になったと思うが,ここはまだ伸びしろを感じさせるということで,次回作への期待も込めてこの点数としておく。

Adam_cruz_live このアルバムがリリースされた後,NYCではSteve Wilsonが抜け,ベースがScott Colleyに代わったというメンツで,リリース記念ライブが行われているが,これは聞いてみたかったなぁと思うのは私だけではあるまい。雰囲気を感じるためだけにも,その時の写真をアップしてしまおう。こんな眼前でクリポタに吹かれたら,私だったら昇天確実だっただろう。羨ましいなぁ...。

Recorded on September 15 & 16, 2010

Personnel: Adam Cruz(ds), Miguel Zenon(as), Steve Wilson(ss), Chris Potter(ts), Steve Cardenas(g), Edward Simon(p, el-p), Ben Street(b)

2011年8月 2日 (火)

「コクリコ坂から」はジブリ版「三丁目の夕日」?

Photo 「コクリコ坂から」('11,東宝)

監督: 宮崎吾朗

声の出演: 長澤まさみ/岡田准一/竹下景子/石田ゆり子/風吹ジュン/香川照之

家族ともども映画を見ることが結構多くなってきた今日この頃であるが,今回はこの映画である。実はあまり大きな期待を掛けずに見に行ったのだが,この淡々としながらも,爽やかなストーリーは結構好感度大であった。

しかし,この映画が我々のような中年にポジティブな感覚を抱かせるのは,舞台が昭和30年代(東京オリンピックの前)というノスタルジーをくすぐるからだという要素が大きいように思う。しかも舞台は横浜ということもあり,当時の桜木町,山下公園,そして海を見下ろす元町界隈,更には現在では考えられないような学生気質等も描かれていて,相応に反応してしまうのである。だからこそ多少ストーリーや役者陣に問題があっても,悪い印象を持ちえないというのが正直なところだ。

こういう感覚はVFXを駆使してその当時の世界を描いた「三丁目の夕日」をアニメーションに置きかえて,ストーリーはより青春時代の恋を描き,同じような「胸キュン」(死語!)路線を狙ったと思われても仕方ないところであろう。

それでもその当時はこういうのってあっただろうなぁと思わせるところが愉快であり,それを素直に楽しんでしまった中年真っ只中の私である。よって,この映画は通常のスタジオ・ジブリの映画と違って,ほとんど子供を対象としていないと言っても過言ではない。これはあくまでも中年以上が主たるターゲットだと考えてもよいような映画である。実写で描こうと思えば,「三丁目の夕日」同様に映画化できないわけではなかっただろうが,そういう路線は「あしたのジョー」でもやっていたので,アニメーション映画としての本作はこれでよかったのだと思う。

ストーリーは原作とは随分違う部分があるようだが,それでもこういうのもありだと思う。カルチェラタンでの学生の会話そのものにゲラゲラ笑ってしまったが,いずれにしても,劇的なところは少なくても,私は結構好きな映画であった。星★★★★。こういうのがいいと思ってしまう私が年なのかもしれないが...。

2011年8月 1日 (月)

聞かずにおいたことを反省したEnrico Pieranunzi Latin Jazz Quintet

Pieranunzi_latin_quintet "Enrico Pieranunzi Latin Jazz Quintet Live at Birdland" Enrico Pieranunzi (CAM)

私はEnrico Pieranunziの長年のファンではあるのだが,彼の美学はトリオ,ベースとのデュオもしくはソロでこそ発露されると思っている私は,ほんの少数の例外を除いて,ほとんど彼のホーンとの共演盤というのは保有していない。ある意味食わず嫌いと言われても仕方がない。しかし,それでも彼が実はリリシズムだけを追求する人ではなく,ダイナミズムも持ち合わせていることはいくつかの音源でもわかっていたが,"Latin Jazz Quintet"というバンド名称がネックになって,このアルバムを避けてきたような気がする。しかし,本作を聞いてみて,それを悔いるとともに,Pieranuziによるダイナミックな演奏も非常に優れているということを明確に実証したアルバムである。

まず,彼を支えるリズムがこれまでの共演歴があったかどうかはわからないが,超強力。何てたってPatitucciとSanchezである。彼らのリズムに乗って,Pieranunziはいつも以上に熱い演奏を展開している。本作をブライドフォールドで聞いて,ピアノがPieranunziだと当てるのはなかなか難しいのではないかと思わせるぐらいなのである。だが,私が杞憂していたラテンと言っても,それほどラテン・フレイバーが濃厚なわけではないので,これだったら,もっと早く聞いときゃよかったと思わせる。
Antonio Sanchezの煽りっぷりもいいしねぇ。

フロントの二人は不勉強にしてよく知らないが,十分な好演と言ってよい。こんなバンドでの来日はほとんど想定できないだけに,こういう演奏が聞けるところがNYCのいいところだと思いたくなる。そもそもPieranunziも暫く日本に来ていないはずだが,クラブ・デイトで来れば集客もできるのにと思うと,また来日して欲しいものである。その時は来日時のライブ盤で奇声を発していたオッサンは出入り禁止にすることは言うまでもない(関連記事はこちら)。このバンドでももちろんいいのだが,やはりトリオかソロがいいかなぁ。

ということで,私にとっては最初,Pieranunziのイメージとの乖離が大きいのではないかという危惧から本作だが,今にして思えばそれは全くの間違いだったと言いたい作品である。反省も含めて星★★★★☆としておこう。

と言っても,このアルバム,CDではなく,MP3ダウンロードで購入しているところが,やっぱり私のPieranunziに対する嗜好を反映しているところではあるが...(苦笑)。ついでに余談だが,このアルバムをiPodで再生していたら,この次にかかったのがHaden~Higginsとの"First Song"であった。その落差には唖然とした私である(笑)。

Recorded Live at Birdland, NYC on November 1, 2008

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Diego Urcola(tp), Yosvany Terry(ts,as), John Patitucci(b,elb), Antonio Sanchez(ds)

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