2018年7月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

2016年おすすめ作

無料ブログはココログ

« 喜ぶべきか,悲しむべきか... | トップページ | Milt Jacksonに駄作なし(ほんまかいな?) »

2010年9月27日 (月)

比類なき美しさと言うべきBill Evans:"You Must Believe in Spring"

You_must_believe_in_spring "You Must Believe in Spring" Bill Evans (Warner Brothers)

私のブログの読者の皆さんがどういう層の方なのかはよくわからない。いろいろ解析は試みてはみるものの,正直言ってセグメンテーションは謎である。しかし,ジャズをこれから聞いてみようという方には,マニアック過ぎて敷居が高いんだろうなぁと思うことがあるのだが,確かに所謂名盤を取り上げることは少ないから,そう思われても仕方がない部分は当然あるだろう(と開き直る)。その一方で,ここ暫くは検索ワードは「山田べにこ」が1位を独走中だしなぁ。一体どんなブログやねん?

そんな中,ブログのお知り合い,すずっくさんのサイトへのレギュラー・ビジターでいらっしゃるマーリンさんから,「お店に並んでいそうでジャズをこれから聴いてみようかなぁという人にお薦めというのがありましたらご紹介ください。」というリクエストを頂いてしまったので,ここは中年音楽狂が一肌脱ぎましょう(何を大袈裟な!)ということで,取り上げるアルバムがこれである。そう言えば,先日金沢在住のこれまたブログのお知り合い,kenさんもこのアルバムを取り上げておられたので,かぶっているようではあるが,もちろん他意はない。本当にいいと思うから取り上げるだけである。

日本におけるBill Evansの人気は,没後30年の現在でも全く衰えることがないが,まぁ妥当な線で言えば,最初に聞くべきはRiverside4部作ってことになるのだろう。よって,今回の記事の趣旨からすれば本来ならその中でも最も聞きやすいであろう"Waltz for Debbie"あたりを取り上げるのが筋ってことになると思う。しかしである。私は天邪鬼なので,Bill Evansをある程度聞いているリスナーにとっても,初めてのリスナーにとっても納得できるものとして,このWarner盤を挙げたいのである。

このアルバムの素晴らしさは,アルバム全体を貫く「抑制された内省的美学」だと言ってよいものと思う。とにかく収められた「曲が良過ぎ」,「演奏が美し過ぎ」,まさにこれこそが晩年のBill Evansが到達し得た究極の美学と言っては大袈裟だろうか。では,ラスト・トリオはどうなのよという話にもなるのだが,まぁそれはそれである。もちろん,ラスト・トリオがいいのはわかっているのだが,このアルバムはそれとは別の特別な感慨をもたらすものと思っている。本作の再発CDのライナーには"The music is moody, deep and haunting"という記述があるが,まさしく言い得て妙である。このアルバムを愛するリスナーは相当数いるはずだが,そうした「ムーディで,深遠で,容易には忘れ難い」音楽的な美学に多くの人が共感し,共鳴している結果なのだと思う。

基本的にミディアム以下のテンポで演奏される曲群を聞いて,私がよく使う表現である「膝を抱えたくなる」心境になるのはきっと私だけではないはずだ。これからの秋の夜長に,部屋の照明を暗くして,膝を抱えながらこの音楽を聞いていたら,家人には「ネクラ」(あるいは「怖い」か...)と言われること間違いなしだが,思わずそうしたくなるような演奏なのである。「ネクラ」で何が悪いっ!とここでも開き直る私である。そんな演奏であるから,日頃は私の好まないEddie Gomezのベースの音色も気にならないのだから勝手なものだが,それぐらい素晴らしい演奏である。とにかく,アルバムの冒頭から展開される静謐な名演奏を聞いたら,浮世の憂さなどどうでもよくなる(というのは嘘だが...)。だが,本当にため息がもれるような演奏なのだ。そもそも私はJimmy Rowles作"The Peacocks"が好きで,この曲が入っているだけで嬉しくなってしまうクチである。ここでもこの曲の演奏はいいのだが,私個人の感覚では,全体的に見れば,演奏や曲はLP時代のA面の方がしびれる出来だと思う。多分,LPだったならば私自身,ほとんどの場合はA面をかけていたはずだと思わざるをえないのである。

ここでの音楽はあまりに内省的で,「暗い」と思う人がいても不思議ではない。しかし,人間の感情がこうした音楽を求める瞬間は必ずあるはずなのである。それがぴったり合致すると,これほど強烈に訴求してくる音楽はなかなかないと言っては言い過ぎだろうか。

尚,本作の現在の再発盤には3曲のボーナス・トラックが収められているが,これは明らかにオリジナルの曲群とはイメージが合わないから,オリジナル・バージョンへの収録が見送られたものと考えるべきであって,私には蛇足以外の何物でもない。よって,iPodにも私はこれらのボーナス・トラックは突っ込んでいない。本作はオリジナルの通り,全7曲で聞くべきものだと思っている。だって,ボーナスの2曲目は"Freddie Freeloader"だもんなぁ。なぜMilesが"Kind of Blue"において,この曲だけEvansを外して,敢えてWynton Kellyに弾かせたのかが,ここでの演奏を聞いてもよくわかるはずである。しかもEvansがここではアコースティックとRhodesの二刀流で弾いている事実も,このアルバムには絶対合わないことを示しているのである。

だが,ボートラなしのオリジナル・フォーマットで聞いている限りは,ベテランにも初心者にも愛されるべき傑作である。星★★★★★。ちなみにかなり前に,このメンバーによるライブ音源を紹介しているが,そちらもなかなか悪くない出来であった(記事はこちら)。

このように書いてはみたものの,この記事でもマーリンさんには十分敷居が高いかもなぁ。マーリンさん,ご期待にそえなかったらごめんなさ~い。でもこのアルバムなら買っても失敗はありません(きっぱり)。

Recorded on August 23-25, 1977

Personnel: Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Eliot Zigmund(ds)

« 喜ぶべきか,悲しむべきか... | トップページ | Milt Jacksonに駄作なし(ほんまかいな?) »

ジャズ(2010年の記事)」カテゴリの記事

コメント

やっぱり、暗さの傾向は似てるんだけど、、
頭の中味は、すげぇ、、違うのにねぇ。
わたしもここに納められてる彼のオリジナルはもちろんですが、ジミーロウズのピーコック大好きです。
このアルバムは、切なさはあっても暗さとは違いますよねぇ。。
でも、こういうアルバムを暗いとまとめる方もいるかもしれませねぇ。

で、、かわいかった時のわたしから、閣下にトラバしましたァ。
そう、マーリンさまは絶対気に入ると思います。
あ、マーリンさまにわたしの5年前も読んでもらえるようにコメントにもアドレス貼り付けます。(彼女携帯からなので)すみません。
http://plaza.rakuten.co.jp/mysecretroom/diary/200501080000/


こんにちは
早速の記事 ありがとうございます。

ビル・エヴァンスは
『WALTZ FOR DEBBY』と
『ON GREEN DOLPHIN STREET』をCDで持っていて 好きなピアニストです♪

聴きやすく 失敗ないですね。
音楽狂さん ご紹介のアルバムは 聴いたことがありませんが 星5つときたら 聴かねば!(笑)

ビル・エヴァンスは ファンが多いし エヴァンス派ってありましたように
他のアルバムの紹介なんかにも 「ビル・エヴァンスが好きな方にはお薦め!」なんて書いてあるショップもあります。

そしてですね
このブログや すずっくさんのブログファンが多くて ショップへ買いに出掛けると 紹介されているアルバムが 売り切れてるんですょ(泣)
『アフィニティ』も すずっくさんに紹介してもらって 出掛けたらなかった(^_^;)

でも めげずに探すぞ!
購入したら 膝を抱えてゆっくり聴きたいと思います。
ありがとうございました♪

すずっくさん,こんにちは。TBありがとうございます。改めてすずっくさんの記事を拝見していると,何だか結構トーンが近いなぁなんて思ってしまいました。でも一切参照していませんから,パクったわけじゃありませんよ(汗)(笑)。

それにしても5年前ですか。私はブログの「ブ」の字もない頃ですわ。大先輩っ!

マーリンさん,こんにちは。コメントありがとうございます。

マーリンさんはショップ派ですか。ショップにもよりますが,特にジャズはそうですが,必ずしも在庫が多い店ばかりではないので,お探しになるなら,ネットの方がはるかに楽ですよ。もちろん,ネット・ショッピングがお嫌いならその限りではありませんが,この手のアルバムなら大体在庫が切れることはないですから,24時間以内に発送されるんじゃないですかね。いずれにしても,「膝を抱えたくなる気分」を是非お試し下さい。

ところで,私は「エヴァンス派」という言い方が嫌いだというのはリンクを張ったライブ盤の記事にも書きました。逆にそれぐらい,Bill Evansってのは日本で人気があるってことなんですけど,どうも商売っ気プンプンで気に入らないです。頭が固いですかね。

なるほどこうきたか!って感じでさすがの選定ですね。私も(柄にもなく)このアルバムは長年の愛聴盤であります。

というわけで、本企画、サックス編がどうなるか楽しみです(笑)。 膝を抱えるという意味ではDonald Fagen/The Nigtflyからmaxineのブレッカー⇒ブレッカーつながりでCityscapeとか。暗すぎるしマイナーすぎますね。

こやぎさん,意外だ(爆)。人は見掛けに寄らない(笑)。

う~む,このシリーズ継続すべきかどうか悩ましいところですが,楽器シリーズで行ってみますかね。次が悩ましいなぁ。

こんばんは.最近,ジャズファンの私が面白かったクラシック盤ばかりアップするので何だなあ,と思って書いたのが,同じYou Must Believe in Spring:
http://blog.goo.ne.jp/ken_jazz/e/bf957f114f9a03746df73bb1c0806bb7
殆ど同じタイミングなので驚きました.私はLPを最近入手し,楽しんでおります.
TBします.

こんにちは

買いました♪

まだ 感想を書けるほど 聴きこなせていませんが すごく素敵なアルバムでした。

他の方も 記事で書いていたように 流れるように きれいな演奏でした。

でも「暗い」かなぁ・・・

そうでもないような
(^-^)


エヴァンスは 名盤といわれるアルバムしか聴いたことがありませんでしたが
(その程度の知識しかなくて)

とても良いアルバムに出会えて感謝です。
ありがとうごさいました。

kenさん,こんばんは。TBありがとうございます。

kenさんが最近記事にされているのはわかっていたので,このアルバムをチョイスすることにはちょっと抵抗もあったんですが,まぁいいかってことで,私も書いちゃいました。

こちらからもTBさせて頂きます。

マーリンさん,こんばんは。お気に召したようで何よりです。

このアルバム,一聴してよし,リピートしてよしで,何回聞いても飽きないと思いますよ。秋の夜長に部屋を暗くして,膝を抱えながらどうぞ(笑)。

「膝を抱えたくなる」心境、、、、、、最初に出てきた音を聴いて、全て納得しました。
ボーナストラックの分は、色彩が違い過ぎるので、出来れば、7曲だけを、エンドレスで聴いていたいと思いました。
 高音域のピアノの音色が特に響いて、語りかけてきます。
ふと、どこのメーカーのピアノだろうか?
どうして、二人は別れなければならなかったのだろう?
と、一曲目から考え、、ビル・エバンスの自伝をよく知らない私は、人間の感情と行動、紡ぎ出される音楽について考えました。
 親友のおうちで飼っているペットが亡くなった日に、ちょうど、このアルバムを入手し、励ましの言葉が見つからず、今、このアルバムを聴いています、とメールしました。
彼女は、ビル・エバンスが好きなので、もし、知っていて、音楽が力になってくれたら、うれしいですが、これだけは、本人にしかわかりません。
言葉で、伝えられないことを、音楽が伝えてくれたら、、幸いです。
私自身が、この曲に、力をもらっています。良い作品を知りました。
 ぎっくり腰、お大事にされて下さい。
私も経験あります、歯ブラシも持てませんでした。

ひまわりさん,こんばんは。やはりボートラはこのアルバムには不要ですよね。ご友人がどう思われるかは私には知る由もありませんが,私はさびしい思い,辛い思いも,このアルバムと一旦同化することで,何とか乗り越えられるのではないかと思います。

ぎっくり腰はGetting Betterですが,それにしても情けない歩き方をまだまだ続けております。ご心配をお掛けして申し訳ありません。

こんばんは

今日の日記に やっと 書けました。

すでに 数人の方が興味をもってくださいました。

音楽狂さんと わたしと すずっくさんや このアルバムを記事にされた色々な方と 聴いた感想が違ったり
わたしなんて
的外れだったりなんですが
今日の日記を読んでくださった方が このアルバムを聴いて いいなぁって思ってくれたら嬉しいなと思っています。

素敵なアルバムの ご紹介 ありがとうございました。

マーリンさん,こんばんは。人によって感じ方が違うのは当然だと思います。ご安心下さい。

いずれにしても,今まで聞いたことがない音楽に接していいなぁと感じることは,私にもよくあることです。今年も後半になりましたが,初めて聞いたミュージシャンも結構いましたから。そういうのがあるから,CD漁りはやめられないんですよね。そして家人に怒られる(爆)ということです。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/198475/49560335

この記事へのトラックバック一覧です: 比類なき美しさと言うべきBill Evans:"You Must Believe in Spring":

» YoumustBelieveinSpring/BillEvans [MySecretRoom]
エヴァンスっていうと、初期の先品が有名だったりしますが、私、このエヴァンスが好きでよくかけてしまいます。1977年の録音だけど、彼が亡くなってから世の中にでました。エヴァン... [続きを読む]

» Bill Evans: You Must Believe in Spring (1977) 改めて聞き惚れる・タマにはジャズも [Kanazawa Jazz days]
ジャ ズも勿論、聴いていない訳ではなくて、ちゃんと聴いています。クラシックの濫入で脳内快感センサーが変わってしまったので、結構聴き直しているのだ。そん な中で面白いのは、Bill EvansやKeith Jarrettは若い頃の演奏でなくて、加齢してからの演奏が気持ちよくなっ...... [続きを読む]

« 喜ぶべきか,悲しむべきか... | トップページ | Milt Jacksonに駄作なし(ほんまかいな?) »

Amazon検索

2017年おすすめ作