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2010年8月 1日 (日)

Fred Hersch待望の新作

Whirl "Whirl" Fred Hersch Trio(Palmetto)

遅れていたFred Herschのトリオ作がようやくリリースされた。今回もファンの期待を裏切らない美しい演奏集である。

私がFred Herschの音楽に魅かれる理由としては,彼がBrad Mehldauのメンターであったことが影響しているかもしれない。卵が先か,にわとりが先かの議論になろうが,Brad MehldauのピアノにはFred Hersch的なものを感じるし,Fred HerschにはBrad Mehldau的なものを感じるのである。HerschがMehldauを指導したのは事実であるから,そうした因果関係があっても当然だが,どちらのピアノにも非常に強力な表現力と,比類のないリリシズムや美しさを感じさせるのである。

Fred HerschがHIVに感染していることはよく知られており,Hersch自らがアンチAIDSの活動にも積極的に取り組んでいるが,それは当然のことながら,Herschの健康状態には常に影響を及ぼすこととなってしまう。そうした事実が,Herschの演奏が常に「白鳥の歌」を奏でているかのような,ぎりぎりの美しさを生み出していると言えるのかもしれない。よって,ここでの演奏を聞いていても,打鍵の力強さは感じられず,紡ぎだすような微妙なタッチが強く感じられるのである。それがHerschらしいと言えば,その通りなのだが,それをいつも以上に感じてしまうのである。このアルバムをレコーディングする前に,Fred Herschは2カ月近い昏睡状態にあったという話もあり,それからのリハビリテーションや,そうした状態を経過したがゆえの表現という要素もあるかもしれないとしても,それでもHerschらしい美しさは健在である。

また,リズムのHébert,McPhersonも楚々としたバッキングでHerschを支えている。Hébert(ニューオーリンズ出身のケイジャンの名前なので,フランス語読みをするらしく,カタカナで書くとアベアという発音が近いと彼のサイトには書いてある)はGerald Cleaverとの活動もあるので,フリーなアプローチもOKだろうし,McPhersonもAndrew Hillとの共演などがあるから,必ずしもHerschのレコーディング・メンバーとしては,ややキャラクターが異なると言ってもいいのかもしれないが,Herschをサポートしようという気概すら感じさせるのである。それがこうした演奏を生み出しているのであるから,彼らの貢献は決して過小評価してはならない。

いずれにしても,この作品は陰影を感じさせながらも美しさを維持した作品として,これまでのHerschの作品同様傾聴されるべきアルバムだと感じる。今後もHerschが安定した健康状態を保ち,これからも私たちに素晴らしい作品を届けてくれることを願わずにいられない。そうした要素も含めて,より多くの皆さんに聞いて頂くためにも星★★★★★としてしまおう。

いずれにしても,Herschにとってはもう来日は難しいかもしれないが,3年前のカザルス・ホールの演奏は素晴らしかった。彼がVanguard等に出演する際に,NYCに出張が入ることを祈るのみである。

Recorded in January, 2010

Personnel: Fred Hersch(p), John Hébert(b), Eric McPherson(ds)

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コメント

中年音楽狂さん、こんにちは,TBさせていただき増す。
私のほうは、貴殿よりめめしくて、なんか寂しさを多く感じてしまいました。
しょうがないといえばしょうがないのでしょうね。

monakaさん,こんばんは。TBありがとうございました。

このアルバムには,寂寥感,あるいは諦念のようなものを感じても仕方がないのかもしれません。Herschの事情を知れば知るほどという感じです。しかし,病魔にくじけず,頑張って欲しいというのが私の願いです。

TrioとしてはNight and the Music以来ですかね。私は昨年の今頃、BimhausでHersch、Hebert、Nasheet WaitsのTrioを聞いています。その後、今年の3月にもLisbonでSoloを聞きました。いやあ、意外と元気なのですよ、Fred Hersch。もしかすると、悔いのないように精力的なのか。
私のこのアルバムの第一印象は、Whirlそのもの、ああ「めくるめく」って感じです。Vertigoを感じる。だからか、音楽狂閣下とは意見が異なり、元気な音だなあ、とまで感じました。
いずれにせよ、ライブで聴けばお分かりの通り、最初の一音から最後の一音まで美しさを追求し、集中しています。信じられない美しさに浸れる、その幸せが長く長く続きますように。

カビゴンさん、お久しぶりです。そうなんですか。Hersch元気なんですか。それならそれでいいことですね。

ただ、このアルバムのタッチからはあまりそう感じなかったんですが、思い込みってやつですかね〜。

だったら日本に来て欲しいです〜。

音楽狂様
こんにちは。トラバありがとうございます。
「美しい演奏集」ってぴったりですね。トリオもよさそうだということで今ハーシュトリオ3枚到着待ちです(2枚は今日着く!)。消化できるかどうか、はは。

ki-maさん,TBありがとうございます。

私はHerschの本領はソロで発揮されると思ってはいますが,トリオはトリオでいいんですよねぇ。是非また記事をアップして下さい。お待ちしています。

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