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2010年3月31日 (水)

Luca Mannutzaの新譜を聞いて思うこと

Luca_mannutza"Tributo Ai Sestetti Anni 60" Luca Mannutza Sound Six(Albore Jazz)

最近はイタリア・ジャズを聞く機会も増えてきた私であるが,基本的にはハードバップを今日的にやらせれば,イタリア・ジャズのレベルは非常に高いと思う。このアルバムもまさにそういう感じなのだが,本作を何度か聞いて,どうしても私にはぬぐい去れない違和感が残っているのである。私のブログのお知り合いにはイタリア・ジャズをお好きな方も多数いらっしゃるので,ちょっと書くのに躊躇がないわけではないが,やはりこれは一度問題を提起しておいた方がいいのではないかと思えるので,敢えて書くことにする。

本作において私に残された違和感,それは「破綻のなさ」,「小奇麗さ」っていう感じだろうか。ジャズには色々なスタイルがあって,例えば往年のウエスト・コーストの編曲,アンサンブル重視のようなものもあるから,所謂ウエスト・コースト・ジャズに感じる感覚と同じなのではないかという話もある。しかし,ちょっとそれとは違うのである。それはこの作品が発売された時の惹句として使われていた「炎のモーダル~ハードバップ」という表現との乖離によるところも大きいのではないかと思う。

つまり,ミュージシャンの質は高いし,アドリブもそれなりにいけているので,一聴している分には全然問題はないのであるが,私の中でこの音楽を聞いていて「燃える」部分や「高揚感」が希薄なのである。だからこそ,「炎のモーダル~ハードバップ」と言われると「う~む」となってしまうのである。

こういう感覚というのは,以前このブログで取り上げたHigh Fiveのライブ盤への感想と似ている(記事はこちら)。私はそこにも書いたが「ラテン系のプレイヤーに黒人同様の情念的なプレイを求めることに無理があるのは承知しているが,それでもこの軽さはやはり ちょっと気になってしまう」というのがまさにこのアルバムにも当てはまってしまっている。同じメンバーでもライブなら違うかもしれないが,High Fiveはスタジオ盤の方が少なくとも燃えていたという感覚もあるから,一体どうなのよという気もしてしまう。

いずれにしても,私はジャズという音楽(特にハードバップ))には,幾ばくかの危なっかしさがあっていいと思っているし,多少演奏に破綻があろうとも,リスナーを唸らせるような,あるいは興奮させるようなエネルギーを感じたいクチである。もちろん,私とて,ECMレーベルの諸作を聞いている時にはそんなものは一切求めないが,読んで字のごとく「炎のモーダル~ハードバップ」と言われるならば,ハイ・エナジーの演奏の方が私はいいと思っている。

敢えてこんなことを書く必要はないという気もするが,やはりぬぐい去れない違和感はいかんともしがたいのである。High Fiveのときにも書いたとおり,これは期待値の裏返しということであるのだが,イタリアのミュージシャンには,こじんまりまとまるのではなく,もっとラテン系らしくはじけて欲しいし,ぶちかまして欲しい。西洋音楽の伝統をしょっているイタリアというお国柄も多少影響していることもあろうが,こういう調子で続けていると本当に飽きられてしまって,せっかくの質の高いミュージシャンたちが,一時的なブームで注目もされなくなってしまうのではないかと思えて心配である。そういう意識も込めて星★。

逆の意味では,ひいきの引き倒しのようになるが,同じいイタリアでもPaolo Fresuとか,Enrico Pieranunziって個性的なんだよなぁとつくづく思ってしまった私である。こんなことを書いてしまうと,皆さんから矢のようなコメントが入ってくるかもしれないが,それも仕方あるまい。そう言えば,同じような感覚をブログのお知り合いであるヨシカワさんもお書きになっていたように思うが,どうなんだろうなぁ...。いずれにしても,私もControversialだなぁと思う。性格だな(爆)。

Recorded on November 5 & 6, 2009

Personnel: Luca Mannutza (p), Andy Gravish (tp), Paolo Recchia (as), Max Ionata (ts),Renato Gattone (b), Andrea Nunzi (ds)

2010年3月30日 (火)

強面(?)ギタリストKirk Fletcherを初体験

Kirk_fletcher"My Turn" Kirk Fletcher(Eclecto Groove)

ある雑誌でこのアルバムが取り上げられていて,ちょっと気になっていたところに,Abstruct Logixからメルマガが届き,なんとMichael Landauがプロデュースということが判明し,ますます気になって買ってしまったアルバム。Kirk Fletcherのサイトによれば,カリフォルニア州出身の35歳のブルーズ・ギタリストである。これまでLandauに加えて,Fabulous ThunderbirdsやDoyle Brahmhall,更にはMichelle Branchらとの共演経験があるらしいが,その他にもLarry CarltonやRobben Fordとの共演歴もあるらしい。当然のことながら,それは彼らがブルーズ指向のアルバムを演奏する場合ではないかと想像される。しかし,本作にもLarry Carltonの息子のTravis Carltonが参加しているから,相応の付き合いがあるということかもしれない。それに加えて,ジャズ系のリスナーならChick CoreaともやっていたGary Novakの参加が気になるところであろう。

Kirk_fletcher_portrait 本作のカバーだけではわかりにくいが,とても牧師の息子とは思えぬ強面ぶりである。人を見掛けで判断してはいかんが,それにしても,いきなりこの人が前にぬ~っと現れたら怖いよなぁ(実はいい人なんだろうが...)。いずれにしても,初めて聞く人だけに,どんな音が出てくるかは興味津津であった私である。私はブルーズについては大して聞いていないので,偉そうなことを言える立場にはないが,本作は基本的には典型的なモダン・ブルーズと言ってもよいのではないかと思う。しかし,決してそれだけではなく,この人の多様な音楽性も記録されているようにも思える。例えば,7曲目の"Way Back Home"等が典型的で,単なる「ど」ブルーズではなく,レイドバックしながらも,ややフュージョン・ギタリスト的な演奏も展開している。また,9曲目"Let Me Havi It All"ではなんとJames Gadsonの参加を受けて,ファンキーに歌い,ギターを弾きまくるし,最後の曲の冒頭なんてルーツ・ロック的でもある。

まぁ,そうは言ってもやはりブルーズである。ジャズの源流はブルーズであるから,私はブルーズも聞いていて全く問題ないのだが,それでもブルーズばっかりやられては,さすがに飽きるということがないわけでもない。しかし,本作ではヴォーカルものとインストものがうまくミックスされていて,これは結構楽しめたアルバムである。特に私は後半の方が好きかなぁ。星
★。

Michael Landauはクレジットだけを見るとギターで全面参加のようにも見えるが,一部でツインでギターが聞こえるものがLandauのプレイであろう。ギタリストとしての個性は全然違うが,ライブの場でもこの二人は共演しているらしいから,意外に共通する部分が多いのかもしれない。Landauと言えば,Robben Fordとの共演アルバムももうすぐ発売のはずだなぁ。でも彼のソロ・アルバムって,実はあまり面白いと思ったことないのも事実(バックでこそ光ると思えるのだ)なので,どうしようか迷っている私である。

Personnel: Kirk Fletcher(g, b, vo), Michael Landau(g), Dave Melton(slide-g), Travis Carlton(b), Bobby Tsukamoto(b), Iver Olav Erstad(org, key), Luke Miller(org, key), Tom Fillman(ds), Gary Novak(ds), James Gadson(ds), Paulie Cerra(sax, vo), Paul Litteral(tp), Karen Landau(spoken word)

2010年3月29日 (月)

The Bird And the BeeのHall & Oatesトリビュートはかなりよい。

The_bird_and_the_bee"Interpreting The Masters Volume 1: A Tribute To Daryl Hall And John Oates" The Bird And the Bee(Blue Note)

このInara GeorgeとGreg Kurstinの2人組ユニットの名前は聞いていたし,ヴォーカルのInara GeorgeがLowell Georgeの娘ってことぐらいは認識していたが,音を聞くのは今回が初めてである。これを購入するに至ったのは,本作がHall & Oatesのカバー集で,往年のヒット曲を再演しているからという理由にほかならないのだが,これが実は非常によかった。

このバンドの音楽を一言で形容すれば,エレクトロニック・サウンドに,非常に人間的なヴォーカルを乗せるということになると思うが,本作を聞いていて,私が想像したのがYazooである。もちろん,やっている音楽は全然違うのだが,エレクトロニクス+Alison Moyetのディープで人間的な声が素晴らしかったYazooを想起してしまったのだから仕方がない。それは私がYazooが好きだからということもあるかもしれないが,そうしたことを考えるぐらいだから,この音楽の作り方がよほど私の趣味にフィットしていると言ってよいのである。

冒頭の1曲が彼らのオリジナルである以外は,Hall & Oatesの誰もが知っている曲が並んでいて,まぁほとんどひねることなくInara Georgeは歌っているのだが,この女声で歌われるHall & Oatesの曲が非常に魅力的に響いているし,そこが新鮮である。もちろん,そうしたひねりのなさに,カバーとしての面白みがないと感じる場合もあるが,原曲に対するリスペクトが感じられて私には非常に好感度が高かった。往年のHall & Oatesの曲がいかにすぐれていたかを再確認できることもこのアルバムのいい点である。ということで,これまで聞いてこなかったバンドとの嬉しい出会いへのご祝儀も含めて星★★★★☆。私はEverything But the Girlも好きだが,彼らの活動が停滞する中,私はこのバンドがあれば,しばらくはいけるかもしれないなんて思ってしまった。さぁどうするBen Watt?でも実はTracey Thornの新譜発売を心待ちにする私(爆)。

尚,今回の作品はVolume 1と呼ばれているから,当然続編を期待したくなってしまうのが人情である。一体次はだれをカバーしてくれるのか期待してしまうなぁ。本作が結構魅力的だったので,彼らの前のアルバムも買うことにしよう。

それにしてもこうしたアルバムがBlue Noteから出るってのは時代の流れを感じてしまうなぁ。まぁNora Jonesもそうだったが...。ついでだが,Inara Gerogeの声って,ちょっとLove PsychedelicoのKUMIに似ているように感じるのは私だけ?

Personnel: Inara George(vo), Greg Kurstin(key, b, ds, g, prog), Shirly Manson(vo)

2010年3月28日 (日)

なんでJeff Beckが「誰も寝てはならぬ」やねん!!

Jeff_beck"Emotions & Commotions" Jeff Beck(ATCO)

Jeff Beckがスタジオ・レコーディングを発表するのは7年ぶりだそうである。その間にもライブ盤が出たり,来日もしているから,そんなに久しぶりなのかなぁとも思ってしまうが,待望と言ってもよい作品であることは間違いない。前作は"Jeff"ってことになるが,あれも賛否両論だったような気がする。しかし,今回の作品は更に評価が分かれるのではないかと思う。

まず,冒頭からBenjamin Britten(というかJeff Beckはそれを歌ったJeff Buckleyを引き合いに出している)作曲の"Corpus Christi Carol"がオーケストラ共々に演奏され,おやおや,これは映画音楽的だと思わせるのだが,聞き進んでいくと,"Over the Rainbow"も再演しているではないか。Official Bootlegに入れておきながら,またやるとはよほどこの曲が好きらしい。まぁこれも許すとして,私が聞いていてびっくりしてしまったのが,プッチーニ作曲「誰も寝てはならぬ」(トリノで荒川静香が滑ったあの曲ですね)を,朗々とBeckが弾いているではないか。これには思わず私も電車の中で「なんでやねん」とひとりごちて突っ込みを入れてしまったではないか。一体Jeff Beckに何があったのか。

もちろん,Jeff Beckらしいスリリングなナンバーもあるにはあるが,どうも私にはこのアルバムはピンとこないのである。Jeff Beckらしい締め上げるような痺れる感覚はほとんど感じられない。歌伴でのオブリガートなんて素晴らしいものだが,でもやっぱり変だ。確かにJeff Beckはもう65歳だから,多少枯れてきても仕方がないのかもしれないが,これは我々がJeff Beckというギターの鬼神に期待する姿ではないだろう。これは偏にプロデューサーが悪いと言いたくもなるが,Trevor Hornがエグゼクティブ・プロデューサーではさもありなんってやつか。

近々来日する際には,Jeff Beckはこのアルバムからも演奏するではあろうが,それでも基本はRonnie Scott'sでのライブのような演奏になるのではないかと思うが,「誰も寝てはならぬ」をJeff Beckが弾くのを聞いて盛り上がる聴衆がいるのだろうかと思わざるをえない。もちろん,これだけの有名曲だから,クラシック,ひいてはプッチーニなんて聞いたこともない若者たちは「おぉっ,知ってる,知ってる,荒川静香のあれじゃん」などと喜ぶのかもしれんが,私がライブの場にいたとしたら,げんなりしてしまうだろうなぁ。

とにかく,私はRonnie Scott'sでのライブ映像との落差に本当に戸惑ってしまったのだが,こんなアルバムを聞いてしまっては,私がJeff Beckのアルバムを買うのはこれが最後だろうと思わず感傷的になってしまったではないか。ということで,私には全く納得がいかないので,星★★。やっぱりこれは絶対に変だ。

Personnel: Jeff Beck(g), Jason Rebello(key), Pete Murray(key, arr), Tal Wilkenfeld(b), Pino Palladino(b), Chris Bruce(b), Vinnie Colaiuta(ds), Allesia Mattalia(ds), Clive Deamer(ds), Earl Harvin(ds), Luis Jardin(perc), Joss Stone(vo), Olivia Safe(vo), Imelda May(vo), Steve Lipson(prog)

2010年3月27日 (土)

テクノとはダンス・ミュージックだったのねぇ

Luciano_2"Tribute to the Sun" Luciano (Cadenza)

私のようなオジさんにとっては,テクノと言えば,YMOやらKraftwerkってことになってしまうのだが,それらは厳密に言えばテクノ・ポップあるいはエレクトロ・ポップにカテゴライズされるべきものであって,音楽ジャンルとしての「テクノ」とは異なるものらしい。まぁ私のような一般的な音楽リスナーが,全てのジャンルをカバーするのは不可能だから,そうした誤解があったとしても仕方がないと開き直るしかないが,そうした要素ゆえに,以前このブログでRicardo Villalobosを取り上げた時も相当トンチンカン(死語!)なことを書いてしまったように思う(記事はこちら)。結局のところ,「テクノ」というのは,「ハウス」を源流とするダンス音楽だったのねぇなんてことを今更ながら知ったわけだが,その上で,昨年のテクノ音楽で圧倒的な支持を得たこのアルバムを聞いてみた。

Villalobosのときもそうだったのだが,この音楽は私にはミニマル・ミュージックにしか聞こえないのだが,その中でビートと,おそらくはサンプリングされた生音をシンクロさせた執拗な繰り返しが行われるというのが典型的なパターンだと思う。こうしたパターンはVillalobosのときにはピンとこなかったのだが,ダンス音楽としての概念がこのアルバムの方がより強く感じられたのはお勉強としては収穫であった。私のような年代は「ディスコ世代」だから,こういう音楽で「踊る」ってのは理解できないのだが,それでもこのビートに身を委ねていれば,何となく気持ちいいかもしれないなぁなどとも思えてくるから不思議である。こういうのが所謂「クラブ」ってところで流れているのかなぁ,なんてことを言っていること自体が最早ジェネレーション・ギャップか。

私はSteve Reichを筆頭に,結構ミニマル・ミュージックが好きなので,こういうのもあまり苦にはならないが,同じミニマル系の音楽として聞くならば,Nik Bartsch's Roninのような音楽の方がずっと好みである(彼らのアルバムに関する記事は
こちら)。ここまで来ると,私には音楽として評価できるのかどうなのかよくわからくなってしまったというのが正直なところ。つくづく音楽って難しいなぁと思う。でも繰り返すが,Ricardo Villalobosよりはこっちの方が好きである。まぁもう少しよく聞いてみることにしよう。

2010年3月26日 (金)

Jesper Bodilsen:どういうシチュエーションで聞けばいいのやら...でも好き。

Jesper_bodilsen"Short Stories for Dreamers" Jesper Bodilsen (Stunt)

本作の帯には女流写真家Tove KurtzweilとJesper Bodilsenのコラボレーションのように書かれているが,ライナーを読む限り,特に明確なコラボの意図は見受けられない。しかし,ライナーに挿入された写真から何らかのイメージが喚起されているということはあるのかもしれないが,まぁそれはさておきである。

このジャケット,この編成であるから,好き者の琴線に触れることは間違いなかろう。私もそうした好き者の一人である。何と言っても,ベース,ギター,トランペット,ヴァイブ(最後の曲はメロディカを吹いている)が組み合わせを変えながら,原則として静謐な音楽を奏でるのだから,だいたい最初に音が出てきた瞬間から展開は予想がつきそうなものである。しかも冒頭の"Caetano"は,文字通りCaetano Velosoへのオマージュであろうが,スローなボッサのようなかたちで演奏されるのを聞いて,思わず膝を抱えたくなってしまった私である。いずれにしても編成が編成なだけに,一般的なジャズ的な乗りのようなものとは全くと言ってよいほど縁のない音楽である。

この音楽を聞いていて,一体どういうシチュエーションならば,こういう音楽がフィットするのかということを考えていたのだが,私がいつもやっているような通勤中に聞くような音楽では決してない。例えば朝の通勤時にこんなものを聞いてしまったら,そのまま家へUターンしたくなるかもしれない。例えば,気だるい午後を無為に過ごすバックに流れていれば,それはそれでいいかもしれないのだが,その場合は,聞き流すには音楽としてよくでき過ぎの部分があって,これが難しい。ということで,私はこの音楽を聞いていて,どのようなタイミング,場所でこの音楽をプレイバックするのが最適なのか,まだ発見できていない。

純粋鑑賞音楽として捉えればそれはそれでいいのだが,その場合,冒頭の膝を抱えたくなってしまうようなこの音楽の雰囲気はどうすればいいのだと思ってしまう私である。しかし,聞き進むにつれて,これは実は静かながら明るさも秘めた音楽とも思えてくるから,全編を聞き通すことは全く苦にはならないのである。そういうことを考えると,最近は,飲み屋,そば屋,カフェその他のありとあらゆる場所で,やたらにモダン・ジャズを耳にする機会があって実は私は辟易としているのだが,こういう音楽がBGMで流れてきたら実は新鮮かもしれないなぁ等と想像してみる私である。店でこの音楽が小音量で流れていたら,つい耳をそばだててしまうかもしれないなぁとも思ってしまった。

基本的に静謐な音楽の中で,6曲目の"Marie"はUlf Wakeniusがスチール弦のギターを軽やかにカッティングしていることもあり,若干雰囲気が違うが,よい感じのチェンジ・オブ・ペースになっている。ということで,全編を聞き終わると,なかなかよくできたアルバムではないかと思ってしまった私である。Peter Asplundってこんなラッパも吹けるのねぇと変な感心の仕方もしてしまった。結局,我ながらこの音楽が好きなんじゃんというのが結論。繰り返すが,ジャズ的なフレイバーは希薄ながら,私にとってはかなり落ち着ける音楽である。星★★★★。更にこの音楽がフィットするTPOを探求することにしようか。こんなことを書いていると,「やっぱりあなたはネクラなのよ」という声が新潟方面から飛んできそうである(笑)。

ところで全くの余談だが,このTove Kurtzweilの写真は意図的にフォーカスをずらしているのが芸風のようだ。素人のピンボケ写真はみっともないだけだが,プロの意図による写真だと違って見えるのが不思議。

Recorded on March 23 & 24, 2009

Personnel: Jesper Bodilsen(b), Ulf Wakenius(g), Peter Asplund(tp, fl-h), Severi Pyysalo(vib, melodica)

2010年3月25日 (木)

Sonny Rollins:このアルバムは初めて聞いたが...

Sonny_rollins_trio_freedom_suite "Freedom Suite" Sonny Rollins (Riverside)

唐突だが,振り返ってみれば私はSonny Rollinsの音楽にはあまりちゃんと接していないのではないかと思う。もちろん,「サキコロ」や「ヴァンガード」等は聞いているし,その他のアルバムもそこそこ保有しているが,キャリアを通じて彼の音楽をフォローしてきたとは言い難い。だいたいRollinsって結構多作だから,全部を押さえるのはなかなか大変なことだと思うのだ。それでも"Way Out West"も聞いたことがないわ,インパルス・レーベルの作品も聞いたことがないわという状態で真っ当に評価できるのかというお叱りも受けそうである。まぁそれでも地元の中規模ホールでライブが奇跡的に開催されたとき(なんでうちの地元で開催なのだと本当に不思議に思ったが...)は,家人共々出掛けたりしているから,決して無視をしているのではないというかなり中途半端なリスナーぶりである。

そんな私がなんでこのアルバムなのかと言うと,本作は実は父の遺品の一枚であり,たまたま実家に帰ったときに聞いてみたものなのである。一聴してみて,正直言ってこれは悪くはないとしても,Rollinsの代表作とは言えないなぁと感じてしまった。もちろん,58年と言えば,Rollinsの全盛期に近いということもあり,フレージングは極めて魅力的である。しかし,私が感じたのは,PettifordRoachというリズムを有効に活用していないという点である。この3人ならば,もっと激しくやれたはずだと思うし,より強い昂揚感を生み出せたのではないだろうか。Roachは「サキコロ」ではもっと凄いドラミングを聞かせていたし,同じピアノレス・トリオという編成ならば,私は「ヴァンガード」の方が圧倒的に好きである。自由度が高い編成であるがゆえに,もっとハード・ドライビングな演奏を期待してしまうというのが人情である。

また,このアルバムが,よく言われるようにRollinsがポリティカルなメッセージを込めたものであれば,体制に対する「怒り」がもっと発露されていてもいいように思うのだが,そうしたメッセージ性もあまり感じられない。タイトル・トラックは敢えて"Suite"と称さなくとも,4曲の独立した曲として捉えればいいのではないかと思えるぐらいのものである。その辺に私は中途半端さを感じるし,また,LPで言えばB面に相当する小唄のような曲とタイトル・トラックとのバランスもどうなのかなぁと思ってしまうのである。ラストの"Shadow Waltz"なんて全然Rollinsらしくないし。


もちろん,私としても音楽に政治的なメッセージを持ち込むことに全く異議がないわけではない。しかし,表現手段としてそうした意思の発露に使ったっていいし,それをポジティブな力に変えられるならば,うまく使えばいいのである。結局,本来はRollinsにはそんな意図がないところに,オリジナルLPのライナーに余計なメッセージを書いてしまったからいらぬ誤解を受ける結果になったのではないかとも思えるのである。こうした見方はうがち過ぎなのかもしれないが,なんだか本当に意味が感じられないのである。

そうした作品とは言え,これだけの実力者の演奏である。彼らの実力は垣間見える瞬間は多々あるとしても,彼らの力はこの程度ではないはずなのだ。このアルバムをお好きな方もいらっしゃるかもしれないが,私にとってはあまり評価できないというのが正直なところである。星★★★が精一杯。まぁこれを聞く前に,いくらでも聞くべきRollinsのアルバムはあるでしょうって感じである。

Recorded on February 11 and March 7, 1958

Personnel: Sonny Rollins(ts), Oscar Pettiford(b), Max Roach(ds)

2010年3月24日 (水)

これまた久しぶりに聞いたJohn Beasley

John_beasley "Cauldron" John Beasley (Windham Hills Jazz)

一時期,Windham Hillレーベルはジャズ系のアルバムも制作していて,プロデューサーにはWalter Beckerを迎えていたのだが,私はそのBeckerに反応して,何枚かアルバムを購入したことがある。それも私の在米中のことであったが,あの頃はほとんど毎日のようにダウンタウン(と言ってもCity Hallや今は亡きWTCのそばである)にあるJ&R Music Storeに通っては新譜のチェックをしていたから,情報量はかなり豊富だったし,自分でいろいろ見つける楽しみもあった。このアルバムもジャズ・コーナーの新譜ラックに並んでいたものを手に取ってみて,プロデューサーがBeckerと認識し,かつ参加しているミュージシャンがなかなかよさそうだというだけの理由でゲットしたものである。これで聞いてみてガックリというようなこともあるが,これはまぁ許せるって感じだったと記憶していた。しかし,ここ何年も実家に置きっ放しだったので聞く機会が全然なかったのだが,今回,本当に久しぶりに聞いてみた。

このアルバムを購入した当時には気づかなかったのだが,John Beasleyは一時期Miles Davisのバンドに在籍したことがあって,特にこのアルバムの前半なんかはMilesの"Tutu"やら"Siesta"あたりの感覚を結構感じさせるなぁと今回思ってしまった。共演経験だけで,そうした印象を残させてしまうMilesという人の強烈さをここでも思い知らされるわけだが,アルバム全体を通して聞けば,それだけなく,ブラジルやアフリカのフレイバーも取り入れて,なかなか多彩な音楽になっている。だからと言って,強烈な個性を感じさせるほどのプレイヤーだとは思わないのだが,そこそこ聞けるアルバムだとは思う。

しかし,どうなんだろうか。ブラジル風味の"Catalina"なんて,どこかで聞いたメロディ・ラインで,これが本当にBeasleyのオリジナルなのか疑問に思える部分もある。また,全体的に地味な作りで,フュージョン・フレイバーの強いジャズ作なのだが,やはり中途半端な感じがぬぐいきれないのである。これはBeckerのプロデュース作全般に言えることだと思うのだが,全体的に感じられる当り障りのなさが,アルバム全体のカラーを不明確なものにしてしまってはいないだろうか。

結果的に見てみれば,私はどうもプロデューサーとしてのWalter Beckerを評価できないということになってしまうのだろう。それはRicky Lee Jonesの"Flying Cowboys"のときにも感じていたことだろうし,そうした印象が本作でも同様に感じられるのである。同じWindham Hill JazzのBob Sheppardの"Tell Tale Signs"ってアルバムもあったが,こちらは久しく聞いていないので何とも言えないが,ものはためし,聞いてみることにしよう。いずれにしても,私はSteely Danの音楽は好きだが,Beckerのプロデューサーとしての資質までもろ手を挙げて認めてしまうということにはならないということである。星★☆。

Personnel: John Beasley(p, synth), Steve Taveglione(ts, ss, fl, EWI), Bob Sheppard(ts, fl, b-cl), Dean Parks(g), John Patitucci(b), Ricky Minor(b), Peter Erskine(ds), Ricky Lawson(ds), Bill Summers(perc), Darrryl Munyungo Jackson(perc)

2010年3月23日 (火)

Jeff Lorber:90年代前半に買ったアルバムのうちの1枚

Jeff_lorber "Worth Waiting For" Jeff Lorber (Verve Forecast)

これも久々に聞いたアルバムである。私の在米期間中というのはおそらくスムーズ・ジャズという概念がマーケットにも強く意識され始めた頃だと思うのだが,私もその頃,結構その系統のアルバムを購入しているのが今となっては懐かしい。Nelson RangellだとかRippingtons等は結構買っているし,RippingtonsにいたJeff Kashiwaのソロ・アルバムなんてのもその後買っているのだから,かなりはまっていたのかもしれない。しかし,スムーズ・ジャズの難点は聞き心地のよさはあれども,どれを聞いてもあまり違いが感じられないという点である。よって,FMで聞いてりゃいいのであって,CDを購入する必要なんて実はないのではないかという疑問が出てくるのも事実だと思う。

そうしたことを考えれば,スムーズ・ジャズの中でも生き残るものとそうでないものの違いは曲のクォリティってことになるんだろうと思う。演奏技術は大体皆高いから,やはり曲と,ジャズの派生音楽であるがゆえのアドリブ能力が問われるということには間違いないだろう。

Jeff Lorberについては以前,このブログでも取り上げたことがある(記事はこちら)が,そこでも書いたように,ハード・フュージョンとスムーズ・ジャズの丁度あいだぐらいの,適切なバランス感覚があって,この人の音楽は聞いていてあまり飽きることがないように思える。まぁ90年前後になると,かなり打ち込みが増えてきていて,本作もかなりダンサブルな出来に仕上げてきている。私はサウンドとしては昔のJeff Lorber Fusion時代の方が好みではあるのだが,それでもちゃんとアドリブを聞かせ,単なるスムーズ・ジャズにしていないところは認めなければなるまい。これはおそらく固定的なメンバーでの「ライブ感覚」を残しているところも影響しているように思えるが,大量のゲスト・ミュージシャンを迎えて制作するというオプションもあっただろうが,こういう形態にするのJeff Lorberらしいというところか。まぁ"Columbus Avenue"のようにいかにもスムーズ・ジャズっぽい曲があるのはご愛嬌だが,この曲がLorberとBrian Brombergの共作というのは意外な感じもする。この二人ならもう少し,キメが強烈な曲を書きそうなものだが,そうなっていないのである。それに続く"Do What It Takes"もRitenourのギターが気持ちよ過ぎて,スムーズ的に聞こえる部分はあるが,最後は"Jazzery"でビートをきかせるというところに,この人のバランスのよさが出ているように思うのである。

Jeff Lorberの音楽は,もちろん聞き流すこともできるが,ちゃんと聞こうと思えば,それなりのクォリティを確保しているから聞けてしまうというところが,この世界でJeff Lorberが長年生き残っている理由のようにも思える。まぁ,これは様々なプロデューサー業で磨かれたものなのかもしれない。ということでちょいと甘いが星★★★☆。

Personnel: Jeff Lorber(key, g), Art Porter(as, ss), Gary Meak(ss), Dave Koz(as, ss), Paul Jackson, Jr.(g), Buzz Feiton(g), Lee Ritenour(g), Oliver Leiber(g), Alec Milstein(b, vo), John Robinson(ds), Vurt Bisquera(prog, perc), Paulinho da Costa(perc), Eric Jordan(vo), Janis Siegel(vo)

2010年3月22日 (月)

異色(?)のメンツによるChet Bakerトリビュート

Some_other_time "Some Other Time: A Tribute to Chet Baker" Richie Beirach / Michael Brecker / Randy Brecker / George Mraz / Adam Nussbaum / John Scofiled (Triloka)

お彼岸で実家に帰ったときに,久々に取り出して聞いてみたアルバムである。私が在米中(90年~92年)に買ったアルバムが本作同様に実家には結構埋もれているので,こういうのを久々に聞くのもまぁいいことである。

メンツだけ見ると,なんじゃこりゃ~(なんでBrecker BrothersとJohn ScofieldがChetトリビュートやねん?)の世界だが,このアルバム,久しぶりに聞いてみたら結構よかった。そもそもChet Bakerトリビュートということもあり,Bakerが曲を取り上げたBeirachが主体になってメンツを集めたようで,曲によって演奏者は変わるので,常にこのメンツで演奏しているわけではない。しかし,トリビュート・アルバムとしての体裁は整っているので,アルバム全体のトーンは,統一されていて心地よいのである。

必ずしも,Chet Bakerにゆかりのある曲ばかりを演奏しているのではないが,それでも何ともいい雰囲気での演奏なので,全編を通じて楽しめるし,参加しているミュージシャンも好演で応えていると思う。どの曲もそれなりによく出来ていると思うのだが,私が最も気に入ったのは,ピアノとベースのデュオで演奏されるタイトル・トラックである。何とも美しく仕上がった"Some Other Time"である。ここにChetのラッパを乗せたいと思うのはきっと私だけではあるまい。Michael Breckerは2曲目だけの参加であるが,"Sunday Song"と"Inborn"でしみじみとしたソロを聞かせる。

しかし,やはりここはChet Bakerトリビュートであるから,Randyの活躍が著しいのは当然である。こういう演奏を聞いていると,Randy Breckerのトランペッターとしての実力がよくわかろうというものである。一方,John Scofieldについては,1989年当時のスタイルでこのメンツとここでの曲をやるのはちょっと違和感がある。決して悪い演奏ではないのだが,私にとってはアルバムの雰囲気と相容れないところがあることは否めない事実である。"Paradox"ではスインギーにRandyと小節交換を展開するが,やはりジョンスコの音よりもフィットするギタリストがいるだろうと思えてしまうのである。私はジョンスコは好きなギタリストではあるが,このアルバムに関しては個性が強過ぎて,若干の不均衡を感じるということである。Michaelはその点,場をわきまえたという感じの演奏なのと結構違う。

それでも,最初から最後まで結構楽しんで聞けることは間違いない。星★★★☆。一時期,このアルバムを出したTrilokaレーベルって結構アルバムをリリースしていたように思うのだが,その後どうなってしまったのだろうか。久々にJackie McLeanの同レーベル作でも聞いてみることにしようか。

Recorded on April 17 & 18, 1989

Personnel: Richie Beirach(p), Michael Brecker(ts), Randy Brecker(tp, fl-h), George Mraz(b), Adam Nussbaum(ds), John Scofield(g)

2010年3月21日 (日)

Thomas Savy:バスクラ・ピアノレス・トリオへの挑戦は大成功

Thomas_savy "French Suite" Thomas Savy (Plus Loin Music)

某ショップからのメルマガで認識して,ちょっと気になっていたアルバムである。よくよくショップでジャケを見たら,ブログのお知り合い,crissさんが既に取り上げられていたアルバムではないか。さすがにお仲間の皆さんは感度が鋭い。

このアルバムがなぜ気になったかといえば,リズム・セクションを担うColley~Stewartのコンビにほかならないが,更にバスクラのワンホーン・トリオで一枚というのはかなり珍しいということもあった。私の記憶にはアルバム一枚をバスクラで通すという事例は思い浮かばないが,いずれにしても,リーダーのSavyにとってはかなりチャレンジングなセッティングである。しかも,実は私,何を隠そうバスクラの音が結構好きなのである(別に隠していたわけではないが...)。また,もう一方の主役と言ってもよいリズム隊は,クリポタのブート音源でも強烈なところを聞かせていた二人であるから,期待が高まるのは当然である。

それでもって,これがまた期待を上回るというか,これがかなりよい。リズムが強烈にプッシュする中,リーダーは一部フリーに近い展開を聞かせつつもかなりいけているフレージングを展開している。私の中ではバスクラと言えばEric Dolphyだが,SavyはDolphy同様,調性の枠内にかろうじて留まりながらも,かなり自由度の高い演奏をしていると言ってはほめ過ぎか。「フランス組曲」というタイトルからはもう少し柔な印象を受けるが,出てくる音楽はハードボイルドそのもので私は嬉しくなってしまった。こういう展開なら私は大歓迎である。

Bill Stewartの凶暴な煽りにもめげず,よくぞここまで吹き倒したThomas Savyを聞くのは初めてだが,世の中には色々な人がいるものだと思わざるをえない。彼の経歴はcrissさんのブログに詳しいので,そちらをご参照願いたいが,それでもこういう演奏を聞かせるというのは,それなりの覚悟があった上で,かつそれを乗り越えたということで,評価しなければならないと思う。最後は渋く,Coltraneの"Lonnie's Lament"で締めるというプロダクションもよい。ということで,私にとっては初物のミュージシャンであったが,私の好みにもフィットしていることもあり,星★★★★☆としたい。たいへんよくできました。

Recorded on June 23 & 24, 2009

Personnel: Thomas Savy(b-cl), Scott Colley(b), Bill Stewart(ds)

2010年3月20日 (土)

「インビクタス -負けざる者たち‐」:また感動させられてしまった

Invictus「インビクタス -負けざる者たち-(Invictus)」 (’09,米,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Morgan Freeman,Matt Damon,Tony Kgoroge,Patrick Mofokeng

私は昨年の映画のベストを「グラン・トリノ」としたのだが,このEastwoodの新作にもまたまた感動させられてしまった。我ながら単純ではあるが,いいものはいいのである。

この映画はNelson Mandelaが長期にわたる投獄から解放され,南アフリカの大統領になった時に開かれたラグビー・ワールドカップにおける背景が描かれている。ここでMandelaを演じるMorgan Freemanがはまっているが,それにしてもこの映画を見ていて思うのは,Nelson Mandelaその人の人徳である。国家の真のユニティのために,国威発揚の道具としてのスポーツを使うというのは,まぁありがちな発想と言えばそのとおりだが,この映画のセリフを聞いていると,Mandelaは本当に偉人だと感じさせられるのである。Mandelaがうだつの上がらない南アフリカのラグビー・チームの主将,Francois Piennaarに託す詩(本作の題名にもなっている)の一節,"I am the master of my fate, I am the captain of my soul."を聞いているだけで,苦しみを乗り越えてきたMandelaという人の強さが感じられ,私はそれだけでも感動してしまった。実際にMandelaがPiennaarに手渡したのはこの詩ではなかったらしく,ここはフィクションだが,そんなことははっきり言って私にとってはどうでもよい。

そして,1995年のワールドカップで南アフリカ・チームが決勝でオールブラックスを破って優勝するまでが描かれているわけだが,そうした意味でMandelaの狙いは見事に的中,国が肌の色を越えた,真のユニティを確立していくのが描かれていて,そこには非常に強いヒューマニズムを感じてしまう私は単純だと言ってしまえばその通りであるが,Eastwoodの近年の監督作に感じられるヒューマンなタッチがここでも感じられて非常に心地よかったのである。

もちろん,ケチのつけようはある。ラグビー・シーンはあまりスピードを感じられないで,やや鈍重な感覚が強いのが決定的な難点ではあるが,それでもこのストーリーは,そうした難点をカバーしてあまりある。そして,エンド・ロールで登場する実在の人物たちのポートレートを見て,よい余韻を残すのである。感動という点では「グラン・トリノ」には及ばないものの,私には見終わって幸福感をおぼえられる映画であった。こういう映画を見ていると,やはり映画は劇場で見なければならんと思ってしまった私である。星★★★★☆。

2010年3月19日 (金)

ブログとTwitterの連携

ブログを更に簡素化した形で,Twitterが参加者を増やしているのは事実であり,いろいろな企業も,Twitterをマーケティング・ツールとして有効活用しているというのは,メディアでもカバーされている通りのことだと思う。

私がブログで使っているココログでも,ある時期からTwitterとの連携機能がサポートされるようにはなっていたのだが,ブロガー間での関心の高まりは今一つというところではないかと思う。

しかし,ネットなんて,どういう人が見ているかわからないわけで,自分のブログのエクスポージャーを高められるなら,実は何でもOKである。ということで,私もTwitterの連携をここ数日行うようにしている。効果はまだわからないものの,PCの検索エンジンと異なる世界で,私のブログが認知されるチャンスも増えれば私としてはハッピーである。

ということで,ブログへの訪問者の皆さんは,私のTwitterを確認して頂けば,だいたいアップデートされた状態を把握して頂けるはずである。あちらの世界での私のハンドル・ネームはtoshiya_s_musicである。よろしければフォローして頂ければ幸いである。と言っても,このブログの更新についてアップしているだけだが...。でもこういうのは参加することに意義があるのである。

2010年3月18日 (木)

Brad Mehldauの新譜が出た:でも現物はまだだ...

Highway_rider "Highway Rider" Brad Mehldau(Nonesuch)

以前このブログでも告知をしたBrad Mehldauの新譜が発売された。もう店頭に並んでいるのは確認済みだが,私はCDが米国からデリバリーされるのを待っている状態である。私が米国から取り寄せているのは,Nonesuchレーベルのサイトで購入すると,Bradのコメントとデモ音源のダウンロードができるからであるが,何と国内盤にはその音源がCDに収録されるとのことである。そんなものをボーナストラックにするってのもなんだかなぁって気はするが,まぁそれはさておきである。

私は現物を待つ状態でありながら,実は音源には既にありついている。それはNonesuchでの購入者には自動的に320kpbps高音質MP3のダウンロード権限が付帯しているからである。つまり,現物は来なくても,高音質にリッピングされた状態の音源で聞けてしまうという,何たる手厚いサービス!さすがNonesuch。消費者の心理がよくわかっている。こういう些細なことだけでも評価したくなるが,肝腎の音楽はどうか?

本作は"Largo"に続くJohn Brionとのコラボ作である。私はMehldauの通常の姿が好きな人間であるから,ある意味新機軸と言ってよい"Largo"には特に強い思い入れはなかったのだが,だからと言って毛嫌いをしているわけではないという程度の感覚である。だから,今回,その続編的な位置づけでこの作品が出ると知っても,へぇ~という程度のものだったのだが,このある意味,以前のECMレーベル的なジャケットを見ると,これまたへぇ~という感じだったのである。そこから出てきた音楽はと言えば,これまたいつものトリオの感覚とは大きく異なるものであった。

ちゃんとしたレビューは機会を改めたいが,今回,一聴して思うのは,これはかなり渋い作りというか,最初に聞いたイメージは映画音楽のようだということであった。冒頭にMehldauの美しいピアノが聞こえた瞬間から私はそう感じてしまった。もちろん,ハードなスウィンガーも入っているのだが,全体を貫くトーンは,どちらかというと地味に聞こえるのである。しかし,それは出来が悪いというのではなく,おそらくこれは聞くたびによさがにじみだすタイプの音楽ではないかと思えるのだ。だから,私は本日はこのアルバムに星をつけることはしないで,もう少しこの音楽と時間を掛けて対峙してみたいと思うのである。いずれにしても,同じBrionと組みながら,"Largo"とは随分と感じは違うものを作ってきたなぁというのが正直な感想である。次回,ちゃんとレビューするときは,"Largo"と何が違うのかという点も含めて書いてみたいと思う。だが,現在アルバムの積んどく状態がひどいので,少し時間が掛るかもしれない。

でも,こんな渋いアルバムを作ってしまっては,中古盤屋に多数並ぶ可能性も否定できないなぁというのが第一印象と言っては言い過ぎか。私にとってはいいアルバムだが。

Personnel: Brad Mehldau(p, org, key, perc, vo), Jeff Ballard(ds, perc, vo), Joshua Redman, (ss, ts, vo), Larry Grenadier(b), Matt Chamberlain(ds, vo), Dan Coleman(cond), The Fleurettes(vo)

2010年3月17日 (水)

やっと到着:Marc Coplandのソロ作

Alone "Alone" Marc Copland(Pirouet)

発売されてから随分になるのに,入荷を延々と待たされたMarc Coplandのソロによる新作がようやく到着である。近年のジャズ界において,この手のピアノを弾かせればダントツと言ってもよいぐらいCoplandを私は好きである(だからネクラだと言われるのだが...)。彼については,このブログでもソロ・アルバムだけでも"Poetic Motion"と"Time within Time"を取り上げている(記事はこちらこちら )し,ほかにもいろいろ取り上げている。そんな彼の新作であるから,はっきり言って一日千秋の思いと言っては大袈裟だが,ず~っと期待して待っていたのに,待てど暮らせどデリバリーされないではないか。ブログのお知り合いの工藤さんのところには結構早く着いていたらしく,一体どないなってんねんと思っていた私であるが,まずはようやくの到着を喜びたい。

で,聞いてみればいきなり"Soul Eyes"だもんなぁ。完全Marc Coplandモードでの幕開けではないか。どこから聞いてもCoplandである。これでまず好き者ははまってしまう。しかし,2曲目の"I Don't Know Where I Stand"でちょっと様子が違ってくる。この曲はJoni Mitchellのオリジナルだが,Coplandにしては明るくポップなメロディ・ラインを持っているのでなんとなく健康的なのである。このアルバムにはこれ以外にあと2曲,Joniの曲が入っているが,その3曲がほかの曲とは違うイメージが強いのである。感覚的にはJoniの曲が典型的Copland的演奏をつなぐインタールードのように響くという感じだろうか。それ以外は,誰がどう聞いても,『いつものMarc Copland』である。

ただ,今回CoplandがJoni Mitchellを取り上げることは決して突然変異的なことではない。これまでもCoplandはJoniの曲を取り上げてきているから,そもそも好きな歌手であろうことは想像できるのだが,それでもいつものCoplandのスタイルからすると,特に"I Don't Know Where I Stand"はかなり明るい。ネクラな私がとまどうのは当然のことである。しかし,こういう演奏を聞いていてさえ,どうしても私にフィットしていると感じてしまうのだから,私は特にCoplandのソロとトリオへの親和性は非常に高いということだろうと思う。

ということで,好きなものは仕方がないとは言え,今回もMarc Copland的な響きにどっぷりつかって「く~っ」と言ってしまった私であった。我ながらやはりネクラである。それでもこれがソロの最高作とは思っていないので星★★★★とするが,凄く好きであることには何の変わりもないのである。Copland,何とか来日してくれないものだろうか...。Fred Herschの時と同様に,カザルス・ホールでやってくれたら,私は昇天間違いなしである。

Recorded on November 21, 2008 and June 4, 2009

Personnel: Marc Copland(p)

2010年3月16日 (火)

Kurt Rosenwinkel@国立No Trunks

Kurtrosenwinkelb ブログのお知り合い,oza。さんからの情報で開催を知ったシークレット・ライブに,我が同僚,こやぎ@でかいほうさんと出掛けてきた。3/15、国立のNo Trunksで開催されたこのライブ,40人限定だったが,もとが広い店ではないので,ぎゅうぎゅう詰めと言ってもよいぐらいだった。しかし、こういうイベントは参加することに意義があるのである。多少のアメニティの悪さは我慢する。

開演前のアナウンスによれば,バンドの到着が遅れたらしく,開演も約45分遅れ,本来2セットやるはずをぶち抜き1セットでやるという変更はあったが,演奏は十分満足できるものであった。

今回彼らは,Kurt の最新作同様,Standards Trioを名乗っていたが,演奏を聞いていて思ったのが,Keith Jarrett Trioとのパターンの類似である。即ち,冒頭はKurtのイントロ代わりの即興から入って,原メロディのスタートとともに,ベース,ドラムスがジョインするあの方式である。これは私だけが感じていることかもしれないが,少なくとも2曲を除いてはそのパターンが踏襲されたのである。私にとっては「そうだったのか!」って感じであった。

また,このバンド名を名乗ったアルバム"Reflections"はバラッド集と言ってよいものだったが,今回の演奏にはスピーディなものも含まれ,熱いRosenwinkelを期待する私のような向きにもOKというのが大変よかった。Kurtのフレーズはコンテンポラリーそのものであり,コンベンショナルな響きはほとんどない。それにはエフェクターの利用という要素もあろうが,やはりこの人は新世代のギタリストだと強く感じさせるもので大いに結構である。

選曲は隣のこやぎさんに受けまくるまさにホーン奏者好みのもので,Kurtのそうした指向も感じられて面白かった。だって,"Invitation"やら,"Stablemates"やら,更には"Inner Urge"と来ては,前世はサックス吹き?と思うではないか。アンコールは"Fall"(だったはず)だもんねぇ。"Ana Maria"をご所望のこやぎさんはかすっていたねぇ。

いずれにしても,トリオとしても大いに演奏は楽しめたし,ドラムスのRodney Greenなんてうまいものである。人材豊富だねぇ。こんなライブをご紹介頂いたoza。さんに感謝である。ちなみにセット・リストはこんな感じだったはずである。曲順は違うかもしれないが,ご参考まで。

1. Back Up (Larry Young),2. Reflections (Monk),3. Invitation (Kaper),4. Stablemates (Golson), 5. How Insensitive (Jobim), 6. Cheryl (Parker),7. Ruby My Dear (Monk),8. Inner Urge (Joe Henderson), 9.(アンコール)Fall (Shorter)

今回,現場でoza。さんだけでなく,madameさんにもお目に掛ったのだが,ゆっくりお話しできなかったのは残念だった。よろしければ,改めてオフ会でもやりたいものである。ということで,国立の世は更け,自宅に帰りついて現実に戻った私である。

ちなみに写真は今回のものではないので為念。現地では撮影禁止だったので...。

Personnel: Kurt Rosenwinkel(g), Matt Clohesy(b), Rodney Green(ds)

2010年3月15日 (月)

今年の初劇場鑑賞作はハート・ロッカーである。

Hurt_locker「ハート・ロッカー(The Hurt Locker)」('08,米,Voltage Pictures)

監督:Kathryn Bigelow

出演:Jeremy Renner,Anthony Mackie,Brian Geraghty,Guy Pearce

先日の第82回アカデミー賞で主要部門をかっさらって話題沸騰の映画を見に行った。遅まきながら,これが今年初の劇場での映画鑑賞である。家人は「アバター」を見たいと言ったので,別々の映画を見ることにし,私はこちらと相成った。

いやいやそれにしても,これは見ていて疲れるというか,非常に緊張を強いる映画である。映画そのもの,あるいはシナリオには何のギミックもないのだが,戦場の現状とはこういうものではないのかと思わせるような,リアリティがそう思わせるのかもしれない。これはイラクにおいて爆弾処理を専門に扱う部隊を描いた映画だが,実態はここまではいかなくとも,これに近い線の生活を強いられているとすれば,精神的にもおかしくなるのが出てきても仕方がないだろうなぁと思わせるのである。

しかし,だからと言って反戦的という感じはなく,表現のリアルさによって戦争に放り込まれることの恐怖というのがよく出ているのではないかと思うのである。よって,戦争当事国としての米国民にはより大きなインパクトを与えるだろうし,そうした点が,今回のオスカー・レースにおいても何らかの要素をアドオンしたはずである。

もちろん,ストーリーの内容全てが必要だったのかというと,実はそうでもなく,エピソードは少なくとも1つは減らしても映画としては成り立ったはずだと思う。そうした点で,この映画には冗長性もあるので,これがベスト・シナリオかと言われると若干疑問の部分もある。だが,ある意味ではセミ・ドキュメンタリーのようなタッチで,この映画を仕上げたKathryn Bigelowの手腕は認めなければならないと思う。いずれにしても,映画を何の予備知識もなしに見れば,この映画が女流監督によるものとは誰も思うまい。それぐらい硬派な映画なのである。そうした意味で,私は驚いてしまったが,それが一部ではなく全編なのだからますます驚きである。日本でも西川美和という素晴らしい才能に驚かされた私であるが,最近の女流監督の活躍はグローバルで共通ということであろう。

私としては,本当によくできた映画だとは思いつつも,何度も見たくなるような映画ではないというのが本音である。それは映画の性格上仕方がないかもしれないが,やはり胸が苦しくなるようなこの映画のテンションにはなかなか辛いものがあった。それでも本年,注目の一作として必見の映画だとは思うので,星★★★★☆。

これで,この映画がオスカーを取っていなければ,日本の興行ではほとんど無視されていたのではないかと思う。映画を見たのは休日ではあったが,午前ということもあり,これだけ話題でも席は半分ぐらいしか埋まっていなかった。話題になってもこれだから,やはり,日本人にはこの映画はきついのかもしれないなぁ。

2010年3月14日 (日)

私にとっては完全無欠:"Remain in Light"

Remaininlight "Remain in Light" Talking Heads(Sire)

出張から帰ってきて,ようやく音楽ネタに復帰である。出張中は調子が悪いこともあって,iPodで聞く音楽も,どうも胸に響いてこないという状態だったが,ようやく改善してきたところである。

さて,そういう状態でいきなりTalking Headsかいっ!という声も飛んできそうだが,私にとってこのアルバムは極めて重要な位置づけのものである。自分の好きな音楽というのはいくつもあるとしても,どこから切り取ってもこいつは凄いやと思わされるとは限らない。例えばユルユルの音楽に気持ちよさを感じることもあるから,「凄い」ことだけが音楽の評価にはならないというのは当然である。

Once_in_a_lifetimeしかし,そんな私にとって,テンションという意味でも,インパクトという点でも,更には音楽の出来そのものという意味でも,ケチのつけようがない,本当に「凄い」アルバムが本作品である。ある意味では,この作品と映像版"Stop Making Sense"(記事はこちら)があれば,Talking HeadsについてはOKと言ってもよい私だが,そうは言いつつ,あの特殊な形状で,かつエロいビジュアルのブツをどこに収納すればいいんじゃというベスト盤"Once in a Lifetime"は保有していても,本音はそうなのである。

とにかく,このアルバムに収められた音楽は,執拗にまで繰り返されるビートに乗って,演奏が展開されたものだが,アフリカン・ビートがどうこうというよりも,こうした連続/継続的なビートとファンクの融合というのがこのアルバムの最も重要なポイントだったのではないかと思える。そうした意味で,このファンク・フレイバーを生み出すためには,メンツの拡張も必要だったということになるのではないかと思う。この重層的な響きは4人だけでは厳しいし,ライブでの再現には黒人ミュージシャンが必要になったこともうなずける話である。

いずれにしても,私にとっては冒頭から強烈に迫ってきて,あっという間に1枚が終わってしまうのだが,LP時代にはA面ばかり聞いていたような気がする。それもこれも冒頭の"Born under Punches (The Heat Goes on)"があまりにも私への訴求力が強かったからにほかならないような気がする。とにかくこの1曲だけでもたまらん。

作品としてあまりにも世評を確立し過ぎると,反発したくなるのが常の天邪鬼な私にも例外はあるということで,これはもろ手を挙げて最高だと言いたい。しかし,上述のとおり,テンションも,インパクトも強烈である。くつろいで聞こうなんて思っては決してならないが,そうは言いつつも,強烈なグルーブに身を委ねることも可能だという摩訶不思議ながら,本当に素晴らしいアルバムである。星★★★★★。

それにしても,Robert Palmerが参加しているのは意外って言えば意外である。しかし,彼もとんがった指向もあったからまぁ不思議はないか。

Perrsonnel: David Byrne(vo, g, b, key, perc), Jerry Harrison(g, key, vo), Tina Weymouth(b, key, perc, vo), Chris Frantz(ds, perc, key, vo) with Brian Eno(b, key, perc, vo), Nona Hendryx(vo), Adrian Belew(g), Robert Palmer(perc), Jose Rossy(perc), Jon Hassell(tp)

2010年3月13日 (土)

美しいお通し

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飲み屋のお通しもここまで綺麗だと芸術的ですな。胃の具合が悪くても、目で愛でるって感じである。その後に出てきたものもうまかったことは言うまでもない。これじゃ痛風になっても文句は言えないな(爆)。

2010年3月12日 (金)

鬼のかく乱(その2)

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出張中に体調をくずした私だが、今回まいったのは、私が日頃絶対の自信を持つ胃がおかしくなったことである。

日頃は、多少体調が悪くても、食って治す、飲んで治すとか言っているのが機能しないのである。日頃、大食漢の私が飲み会でもあまり食が進まないというまれな事象に、皆さんに心配をかけてしまった。ど〜もすみません。

そんな状態でいただいたのが「桜島鍋」。今回はちゃんと食べられなかったので、いつかリベンジをしたいものである。

2010年3月10日 (水)

鬼のかく乱

私は、現在、地方出張中なのだが、夕方からどうにも調子が悪くなってしまった。こういうのは、昨年の世界一周出張以来だが、今回もかなり厳しい。

こういう時はさっさと寝るに限るが、解熱鎮痛剤を持っててよかったという感じである。今日は、生姜がたっぷり入った味噌煮込みうどんで、激しく発汗した効果を期待したい。

Leonard Cohen:恐るべき爺さんである

Leonard_cohen "Live in London" Leonard Cohen(Sony)

ずっと聞きたいと思いながら,なかなか縁がなくて時間が経ってしまうことというのは結構あることだとは思うが,このアルバムもそうした作品である。今回,ようやくというか遅ればせながらというかで入手したが,これを聞かずにきた私は強く後悔した。これは素晴らしいアルバムである。一言で言えば,深い!

Leonard Cohenは多くのミュージシャンからも尊敬を集める詩人,小説家そしてシンガーソングライターである。しかし,この人の声はかなり渋いし,音楽だけ聞いているとその魅力を完全に理解することは難しいのではないかと思う。Cohenの場合は,彼の書く詞と向き合う必要があると思えるのである。そうした意味では,ネイティブな英語の使い手でない人間にとっては,私はこの人の音楽は敷居が高いのではないかと思っているし,かく言う私も同様である。しかし,k.d. langがバンクーバー五輪の開会式で歌って深い感動を呼んだ"Hallelujah"はCohenがオリジナルだし,よくよく聞いていると,取っつきやすい曲もあることはあるのである。それでも,やはりほかのSSWやフォーク系あるいはアメリカン・ロックの歌手に比べれば地味に聞こえる部分は否めないし,言葉の問題もあるため,日本ではCohenのファンというのはそんなに多くはないのではないかと思っている。一方,このアルバムが録音されたロンドンのような英語圏では,巨大アリーナを満杯にするほどの集客力があるっていうのがそもそも驚きである。日本だったら中野サンプラザでしょうって感じの音楽であるにもかかわらずである。そもそも評価が違うのである。

私自身も,このアルバムを買うまでは"Best of Leonard Cohen"しか保有していなかったし,昔,"Death of a Ladies' Man"(ある女たらしの死)は買ったことがあるが,どうもピンとこなくて売り払ってしまった。ということで,私の中に占めるLeonard Cohenはその程度だったのだ。

しかし,このアルバムが録音された当時73歳ということもあるが,まさに悠久なる大河のような感覚を持たせるゆったりしたペースで,演奏は展開される。その中で,Leonard Cohenの有名曲が演奏されていくわけだが,後半,特にアンコールと思しきパートでポップな感覚を示して終わるというのが何とも粋である。アルバム前半ではやはり取っつきにくいかなと思わせた本作が,Cohenがライブで調子に乗ってくるように,どんどんよくなっていくのである。そして,最後には「もっとやって」と思わせるこの爺さんははっきり言って凄い。どうなっているのだと思うのはきっと私だけではないはずである。この歳にして,たっぷり2時間半近くあるライブをこなすこの人はまさに化け物と言ってもよいかもしれない。

この作品は,やはりCohenの詞を噛みしめながら聞くべきとは思うが,音楽的にも非常に高いレベルに達していて,私は電車の中でiPodで聞きながら,何度ものけぞってしまった。集中して聞いていなくても,どちらかと言えば訥弁に近いから,その気になればちゃんと聞き取れるから,おぉっ,これって魅力的な歌詞であると思わされる瞬間もあったのである。私は完全にLeonard Cohenに対する認識を改めた。これは文句なしに星★★★★★である。今から追っかけるのは大変だから,3枚組ベスト盤でちゃんと勉強しようっと。

ちなみにキーボードはNeil Larsenが弾いているのは意外と言えば意外。意外ついでにLarsenは曲も書いている(と言っても朗読のバックだが...)。

Recorded Live at O2 Arena, London on July 17, 2008

Personnel: Leonard Cohen(vo, g, p), Roscoe Beck(b, vo), Rafael Bernardo Gaol(ds, perc), Neil Larsen(key), Javier Mas(banduria, g, etc.), Bob Metzger(g), Sharon Robinson(vo), Dino Soldo(wind, hca, key, vo), Charley Web(vo), Hattie Web(vo)

2010年3月 9日 (火)

クラシックのアダプテーションはロックでも機能することを証明した一作

Elp"Pictures at an Exhibition" Emerson,Lake & Palmer(Atlantic)

私が洋楽ロックに目覚めた頃,私に大きな影響を及ぼした懐メロである。確か私が初めてこの曲を聞いたのはFMで,それは「展覧会の絵」聞き比べというプログラムであったはずである。ムソルグスキーによるオリジナルのピアノ版は聞き逃したが,ラヴェル編曲版に続いて,この演奏が放送され,私はぶっ飛んでしまった。その頃,私はクラシックにはほとんど興味はなかったのだが,同じ曲がかくもロック的な感覚を持ったまま演奏できるのかと,ある意味感動すら覚えた記憶がある。おそらくそれは私が小学校の6年生ぐらいの頃だったはずではないかと思うが,エア・チェックしたテープを私はその後ずっと聞き続けていたのである。そういう意味ではこれも同じくエア・チェックで聞いていたDeep Purpleの"Live in Japan"と同じぐらい強烈なインパクトを私に与えたアルバムと言えるかもしれない。

今,このアルバムを聞けば,確かにKeith Emersonのキーボードは時代を感じさせる。しかし,一般的にはラヴェル編曲版で賑々しく盛り上がりたいという感じのこの曲の雰囲気をロックで再現することには間違いなく成功しているだろう。しかし,私がこの演奏で一番気に入っていたのは実はGreg Lakeの歌が入る部分だったのである。そこはLPで言えばA面の比較的静謐なパートだが,久しぶりにこの記事を書くためにこのアルバムを聞いても,その感覚は変わらなかった。そして,Lakeがアコースティック・ギターが結構うまいということを認識し,彼のソロ・パートをコピーしたのは私が中学生か高校生の頃だったろうか。やっぱり私にとっては懐かしいのである。

まぁ,Keith Emersonにしても,YesのRick Wakemanにしても,クラシックの教育を受けているものだから,そうしたものへのコンプレックスなのか,シンパシーなのかよくわからないが,こうしたアダプテーションをしたがる部分っていうのはあったとしても,この演奏は十分にロックだと認められるところが半端なアダプテーションでお茶を濁す,
そんじょそこいらの普通のロック・ミュージシャンと違う。特にエンディングなんて,ラヴェル版の盛り上がりを見事に再現した見事なアダプテーションだと言ってよいのではないかと思っている私である。

このアルバムが発売された時代に,これだけインスト重視のアルバムがそれなりに売れたということはある意味で驚異的でもあるが,それでもこれだけ出来がよければ首肯できる話である。もちろん,クラシック音楽原理主義者の皆さんには絶対認められないだろうアルバムだろう。しかし,こういう音楽が契機となってクラシック音楽に関心を持つ若者もいるかもしれないと考えれば,このアルバムが果たした役割は大きかったのではないかと思う。Yesがコンサートのオープニングにストラビンスキーを使っていたのとはややレベルは違うものの,そういう出会いって結構大事だよなぁと,音楽については雑食の私は強く思う。それに比べれば,アンコール的な"Nutcracker"はいただけないが,まぁそれはここでは甘く見ておこう。

ということで,子どもの頃の私に強く影響を与えた音楽であることもあって,私にとってはいつまでも星★★★★★のアルバムである。まぁ,ちょっと面映ゆい部分はあるが,人生を振り返ればやっぱりそうなのである。

Personnel: Keith Emerson(key), Greg Lake(b, g, vo), Carl Palmer(ds, perc)

2010年3月 8日 (月)

"Rubber Soulive"とは威勢がいいが...

Soulive "Rubber Soulive" Soulive(Royal Family)

はっきり言ってしまうと,私はジャム・バンドにはほとんど関心がない。よって,Souliveもまともに聞いたことはなかったのだが,The Beatlesの超有名曲をギター~オルガン~ドラムスという編成で,ファンク・フレイバーでやるとどうなるのかという点に関心があって,このアルバムを買ってみた。この編成であるから,私が期待するのは,ソウルフルかつファンキーなアダプテーションである。ただ,曲が有名過ぎてやり辛い部分はあるだろうから,これはお気楽に見えつつ,実はチャレンジングなお題ではないのかとも思う。

そうした中で,冒頭の"Drive My Car"は快調にスタートし,うむうむ,これならいいかもと思わせるオープニングである。まぁもとがソウルフルな曲とも言えるのでそれは当然のことかもしれない。しかし,このアルバムを聞き進めていくと,どう聞いてもこの人たちに合いそうな曲と,そうでなさそうな曲がはっきりしてくるのである。まずずっこけるのが"In My Life"である。オリジナルのアレンジを結構踏襲しているのはわかるが,本来チェンバロで弾いていたものをハモンドに置き換えるだけでは不十分であり,これにはもう少し工夫が必要だったはずである。それに比べると,"I Want You"や"Come Together"のようなJohn Lennonらしいヘビーな曲は,この人たちにはるかにフィットしていると思えるのである。

まぁ編成が編成だけに,主メロをギターが担う場面が多いのは仕方がないのだが,それでももう少しアレンジの幅を広げる必要もあるだろう。ただ,上述のとおり,オリジナルが有名過ぎるのでなかなか難しいとは思うのだが,通り一遍の演奏であれば,オリジナルを聞いていればいいということになるのである。よって,こうしたアダプテーションには,ミュージシャンとしての個性を常日頃以上にぶち込むぐらいの根性がないとなかなかうまくいかないのではないかと思う。そういう意味で,私にはオリジナルへのこだわりがあまり見えない"Revolution"のような曲を評価したくなってしまうのである。結局,私がこのアルバムである程度評価したくなるのはJohnの曲が多くなってしまうのは偶然だろうか。

そうは言いながらも,曲が曲だけに,懐かしさも相まって楽しめるアルバムであることは事実なのだが,「そうくるか~」という意外性や「崩しの美学」に乏しいのが何とも残念。星★★★。ギターをサックスに変えた編成の「放し飼いトリオ」ならこれらの曲にどう挑むかちょっと興味が湧いてしまった私である。いずれにしても,単一アーチストがアルバム全体をThe Beatlesのカヴァーってのはやはりチャレンジングなものだと改めて痛感した私である。

Personnel: Alan Evans(ds), Neal Evans(org, key), Eric Krasno(g)

2010年3月 7日 (日)

ほとんど毎日やってくるTrojanウイルス

最近,我が家のメール・アカウントに差出人「UPS Delivery XXXX」(XXXXの部分の名前は毎度変わる)というzipファイル付きのメールが毎日のように届くのだが,添付ファイルはアンチ・ウイルス・ソフトにより,Trojan.Sasfis付きだと認識,駆除されている。もちろん,わけのわからないメールに添付されたzipファイルを安易に開くほどこちらもアホではないが,それにしても毎日だから困ったものである。

こういう状況であるから,アンチ・ウイルスのプログラムは絶対に必要だと強く感じる訳だが,本当にたまったものではない。アンチ・ウイルス・ソフトの新種のウイルスへの対応にも確実にタイム・ラグがあるとすれば,やはり添付ファイルの実行にはよくよく注意した方がいいということの証である。皆さんも気をつけましょう。

ちなみにメール本文には「住所の間違いで,荷物の配送ができないので,オフィスに連絡せよ」といった内容が書いてあるが,それもありえないのだが...。
それにしてもむかつく。

Wayne KrantzがCriss Cross?

David_binney_aliso "Aliso" David Binney (Criss Cross)

Wayne Krantzが日頃やっている音楽を考えれば,Criss Crossレーベルとは全く結びつかないって感じなのだが,今回,日頃から付き合いのあるらしいDavid Binneyのリーダー・アルバムに客演となった。このブログでもBinney/KrantzのコンビについてはBinneyのリーダー作"Balance"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,そちらもACTというKrantzとはあまり結び付きそうにないレーベルだったが,Criss Crossはそれ以上に意外である。まぁそうは言っても,私がこのアルバムの購入に至ったのはKrantzのせいであるから,Criss Crossの売り上げにもKrantzは貢献したってことになる。

そうは言っても,このアルバム,Krantzは全曲で参加しているわけではない。しかし,Krantz参加曲と不参加曲でかなりイメージが異なるのが面白い。むしろ,BinneyがKrantzを立てて,Krantzが参加する曲はそれっぽいものを選んだという感じだろうか。Krantzがいないだけで,演奏はコンベンショナルな響きが増しており,逆にKrantz参加曲はコンテンポラリーな響きが強いのである。Krantzがソロを取らない"Strata"だけは例外と言ってもよいが,Krantz参加曲の基本は,Binneyとユニゾンでテーマを奏でて,その後Krantzが激しくソロを取るというパターンである。これがまたまたえげつないというか,かなり凶暴なソロを取るので,場面をかっさらっていくという感じである。特に冒頭のタイトル・トラックなんてまさにそれが顕著である。ユニゾンをやっている間はおとなしい感じなのだが,ソロになった段階でキレまくりである。まぁ私なんかに言わせれば,ギタリストはこれぐらいでよろしい。もっとやれっと思わず言いたくなるぐらいであったが。

選曲はShorterが2曲,Sam Riversが1曲,Monkが1曲,Coltraneが1曲に加えてBinneyのオリジナルが4曲というのはなかなかバランスが取れているが,特にSam Riversの"Fuchsia Swing Song"がスインギーな演奏で,Binneyの快調なアルトを聞いていると,おぉ,これはCriss Crossらしいなぁと思わせる。こういう曲にはKrantzが入っていないのは言うまでもないような話だが,こういう曲ならKrantzはどういう演奏をしたのかというのもちょっと興味があるところではある。

ということで,何だかんだと言ってKrantzのことばかり書いているが,演奏はそれなりに楽しめる。しかし,David Binneyという人の本質はどの辺にあるのかは,このアルバムでは見えてこないというべきかもしれない。私はコンベンショナルな演奏をするよりも,Krantz入りの凶暴な演奏で通した方がよかったのではないかと思う。あるいは全体的にもう少しパワーで押してもらってもよかった。Shorterの曲などは,かなり曲でごまかしがきくかもしれないが,例えば,"Think of One"なんて,どうにも軽く響いてしまうのである。そのあたりはちょっと惜しい気がする。ということで,星★★★☆。

Recorded on November 2, 2009

Personnel: David Binney(as), Wayne Krantz(g), Jocob Sacks(p), John Escreet(p), Eivind Opsvik(b), Dan Weiss(ds)

2010年3月 6日 (土)

追悼,Bobby Charles

Bobby_charles 雑誌を読んでいたら,Bobby Charlesの訃報が載っていた。いささか時間が経ってしまったが,本年1/14に永眠,享年71歳だったそうである。

私のようなSSW好きにとって,Bobby CharlesのBearsvilleレーベルに残したセルフ・タイトルのアルバムは,バイブルの中の1章のようなものである。アメリカン・ロックあるいはSSWの良さをこれほど強く感じせてくれたアルバムはそう多くはない。これからこうした音楽を聞きたいという奇特な人がいれば,私は必聴5枚には確実に入れるだろう。それぐらい素晴らしいアルバムである。

私がこの訃報に触れた時,今聞いても最高だと言えるこのアルバムを聞いて追悼したことは言うまでもないが,ここに改めてご冥福を祈りたい。"Tennessee Blues"を聞いていたら,真剣に落涙しそうになった私であった。

懐かしの局地的(?)ジャズ喫茶人気盤

Eastern_rebellion_2"Eastern Rebellion 2" Cedar Walton / Bob Berg / Sam Jones / Billy Higgins (Timeless)

私がジャズ喫茶に最も入り浸っていたのは予備校時代のことである。予備校の授業をさぼっては,コーヒー一杯で何時間も粘って,読書にいそしんでいたというのももう30年前ということになってしまった。月日の経つのはつくづく早いものである。

それはさておきである。このアルバムは当時,私がよく行っていたジャズ喫茶で本当によくかかっていた。これとMcCoy Tynerの"Fly with the Wind"が双璧って感じだろうか。Eastern Rebellionの1枚目もよくかかっていたが,頻度ではこの第2作の方が上であろう。それはおそらく近隣の大学のジャズ研の連中が,Bob Bergを聞きたくてリクエストしていたのかもしれないし,店のオーナーが本当にこのアルバムを好きだったかだろう。

いずれにしても,Bob Bergはこのアルバムを吹き込んだ頃はまだ20代で,期待の新人って感じだったのだろうが,それを支えるトリオは何とも渋いメンツである。この渋いトリオとBob Bergの組合せというのがこのアルバムのキモである。WaltonとHigginsが40代,Jonesが50代ということで,Bergとの年齢差もある中,バンドとの調和は非常に素晴らしい。まぁこのアルバムには,彼らの第3作から2曲がボーナスとして最後に追加されているのだが,そちらにはCurtis Fullerが参加していることもあって,はっきり言ってだいぶ感じが違う。よって,これは私としてはなくてもいいって感じなので,この2曲はiPodにも突っ込んでいない。それでもオリジナルLPに収録された4曲はどこから聞いても相当よい。はっきり言ってしまえば,このアルバムはワンホーンだからこそいいのである。

そんな中で,4曲目の"Sunday Suite"なんてLPならB面全部を占めていた約18分の曲で,まさしく組曲らしい展開を示していてなかなか面白いが,私としてはベスト・テイクは"Ojos de Rojo"である。どこかで聞いたことがあるなぁと思っていたら,Ray Brownの"Something for Lester"やらHigh Fiveの"Five for Fun"に収録されていたノリのいい佳曲である。こういうのを聞くと,ジャズ喫茶ではジャケットを確認したくなるというものである。

いずれにしてもCedar Waltonは地味な人であるが,ある意味,こういうアルバムが局地的に愛されているというのも,この人にとっては幸せなことである。ということで,懐かしさも含めて星★★★★☆。久しぶりにGeorge Colemanが参加した第1作も聞いてみることにしようかなぁ。

ちなみに先日,ある飲み会でCedar Waltonの話で盛り上がってしまったのだが,それがこのアルバムを取り上げた動機だったりして(苦笑)。

Recorded on January 26 & 27, 1977

Personnel: Cedar Walton(p), Bob Berg(ts), Sam Jones(b), Billy Higgins(ds)

2010年3月 5日 (金)

期待に応えたCorinne Bailey Raeの2nd

The_sea"The Sea" Corinne Bailey Rae(Capitol)

Corinne Bailey Raeの大成功した1stアルバムから4年,待望の2ndアルバムがリリースされた。この間に彼女はご主人を亡くすという悲しみに直面したわけだが,私としては素直にこの復活を喜びたい。よくぞ戻ってきてくれました。

1stがかなり素敵なアルバムだったので,私は当然このアルバムにも期待したわけだが,これが予想を上回る素晴らしさだったと言ってしまおう。そもそも彼女の声がよいことは当然として,彼女が書く曲がすこぶるよい。しかも生音による演奏がまたまたよい。私のような古いタイプのリスナーは過剰な打ち込みに嫌悪感を示してしまうのだが,彼女の音楽は,ある程度ミキシングによってブーストされる音もありながら,基本は生音であるところが,それだけでも私にとっては好印象なのである。

もちろん,本人が悲劇を経験してきているので,この音楽は明るいタッチに溢れたものだとは決して言えないが,こういうトーンだからこそ,人の心を揺さぶるのではないかという感覚を私は持ってしまった。とにかく落ち着いた感覚があるので,私のような中年には最適だといってもよいような音楽である。

私はSadeの新譜には失望感が強かったが,それより先に出ていたこのアルバムをちゃんと聞かなかったのはまったく我ながらなっていない。先にこれを聞いていたら,Sadeの印象は更に悪くなったかもしれないし,逆にSadeに失望した後だったので,このアルバムが更によく聞こえてしまったというところもあるかもしれないが,それでもこれは私(だけではなく,多くの人)の心を打つに十分な作品であった。歌モノではこれまでのところ,今年一番の感動作である。星★★★★☆。

尚,参加ミュージシャンはちゃんと書いてあるが,ブックレットの文字があまりに細かくて,老眼の私には苦しいサイズのフォントなので,ここでは割愛させて頂く。

2010年3月 4日 (木)

Sean WaylandのPistachioシリーズ(?)第2弾

Pistachio2 "Pistachio 2" Sean Wayland (Seed)

先日,この作品の前作"Pistachio"を当ブログで取り上げた(記事はこちら)が,間を置かずにその続編がリリースされた。本作でも,最近話題のKeith Carlockが全13曲中7曲で叩いているし,その相方を務めるベースがTim Lefebvreでは,やはり気になろうというものである。しかし,前作がSteely Dan的なサウンドが特徴になっていたのに対し,こちらのアルバムは結構雰囲気が違っている。

一聴して前作ほどはSteely Danっぽくない。ヴォーカルも今回は入っていない。しかし,なぜか私には既視感たっぷりのサウンドで,「どこかで聞いた感じ」の曲が多いのである(それはもしかするとSteely Danっぽい部分かもしれないが)。しかも,このアルバム,録音時期が結構ずれていて,2004年の録音と,2008年の録音(Carlockは2008年録音の曲に参加)が混ざっているのである。ある意味,多様な音楽が詰め込まれているように感じられるのは,こうした録音時期の違いによるものかもしれない。

しかし,特にCarlockの参加曲は,何とも心地よいグルーブ感があるとともに,意外とサトルなドラミングも披露していて,やはりこの人才能あるわと思わせる。ここではあまり熱くなることはなく,比較的クールな色調の音楽が展開されているといってもよいが,いずれにしても,私はWaylandのエレピも気持ち良かった。
 

本作の中で,異色とすれば,それはAdam RogersとWaylandのデュオ曲,名付けて"Mathmatics",即ち「数学」である。アコギとピアノのデュオというのはこのアルバムの雰囲気とかなり違うように思えるが,インタールードと呼ぶには収録時間も長いし,この曲は結構謎である。謎はほかにもあって,なぜか最後の"Some Pulp"はブツっと途中で切れたように終わるのである。こういうのを聞いていると,実はこれは残りテイク集かという疑念もふつふつと湧いてくる。前作の録音時期と,本作の2008年の録音時期が一緒だということを考えれば,当たらずと言えども遠からずってところだろう。まぁそれでも前述のとおり,Carlock参加曲のグルーブは非常に心地よかったので,私としては許してしまうのだが...。ただ,やはり前作と比べるとどうよという話もあるので,ここは星★。但し,私はこのアルバム,決して嫌いではない。特にエレピはたいへん結構だと思っている。前作が星★☆だったので,相対評価として星★とした。

Recorded in 2004 and April, 2008

Personnel: Sean Wayland(p, key, org),  Adam Rogers (g), James Muller (g), Tim Miller(g), Tim LeFebvre (b), Matt Clohesy (b), Keith Carlock (ds), Nick McBride(ds), Andrew Gander(ds), Mark Ferber(ds)

2010年3月 3日 (水)

ゲスト・ソロイストも賑々しい"The Avatar Sessions"

Avatar_cover_160 "The Avatar Sessions: The Music of Tim Hagans" Randy Brecker, Peter Erskine, George Garzone, Tim Hagans, Dave Lebman, Rufus Reid & The Norrbotten Big Band (Fuzzy Music)

Peter Erskineが主宰するFuzzy Musicのサイトを見ていたら,なんじゃこれはというメンツのアルバムを発見した。私はビッグバンドは好きな方だとは思わないが,このソロイストを見たら聞いてみたくなるのが人情である。

Norrbotten Big Bandはスウェーデンを本拠とするモダン・ビッグバンドで,現在その音楽監督にあるのがTim Hagansだそうだが,そのHagansのオリジナルをゲストを迎えてNYCで録音したのがこのアルバムである。Tim Hagansとこのビッグバンドは既に同じレーベルで,同じくPeter Erskineを迎えた"Worth the Wait"というアルバムも吹き込んでおり,そちらはDown Beatで四つ星を獲得したそうである。また,このバンド,Scott Kinseyを迎えたアルバム(その名も"Future Miles"!!)も作っているようだから,その指向は相当コンテンポラリーだと想像させる。ErskineはStan KentonやMaynard Ferguson出身だから,ビッグバンドとの相性はいいのは当然だろうが,さて,どんなサウンドなのか。

1曲目から随分とモダンというかコンテンポラリーな響きのサウンドであり,これが現在のビッグバンドの主流的な乗りなのかなぁと思わせる。Garzoneのソロは「あのトーン」でさすがにいけている。2曲目の"Boo"なんて不思議な変拍子だし,どうせならこんな曲はエレクトリック・ベースにすればいいのに,とも思わせるような曲でもRufus Reidがアコースティック・ベースを弾いているのはちょっと微妙。全体的に見れば,変拍子やら,結構複雑な構成の曲もあって,続く3曲目の"Box of Cannoli"はFrank Fosterを記念して,IAJE/ASCAPから委嘱されたもので,いかにもそれっぽい。

ところで余談になるが,ASCAPはThe American Society of Composers, Authors and Publishersの略で、米国作曲家作詞家出版家協会というのは結構お馴染みかもしれないが,もう一つのIAJEはジャズ教育関係を中心に様々なプログラム、コンファレンスを行ってきた非営利団体International Association for Jazz Education(国際ジャズ教育者協会)
である。こういう団体が主催するコンファレンスの動員が芳しくないという理由で財政難に陥って,挙句の果てに倒産というのは凄い事実であるが。そもそも協会トップの使い込みなどいろんな疑惑があって,業界内で強い反発を生んでいたらしいから,これもまぁ当然の帰結か。

それはさておき,それに続く"Here with Me"はまさにDave Liebmanの独壇場と言ってよい美しいスロー・ナンバーである。そして本作で一番モダン・ビッグバンドらしいのが5曲目の"Palt Seanuts"である。タイトルからして"Salt Peanuts"のもじりであるから,そういう響きも当然か。6曲目はRufus Reidをフィーチャーした"Rufus at Gilly's"であるが,私はこの人のベース音があまり好きではないので,これまた微妙。ベースは私としてはReidじゃなくてもよかったんではないかと思うのだが...。そして最後はしっとりと"Song for Mirka"で締めるというプログラムは悪くない。ここではDan Johanssonのフリューゲルがいい味を出している。

ということで,私はビッグバンドにあまり関心がある人間とは言えないが,それでも現代のバンドの作品としてはそれなりに楽しめるものだったと思う。スウェーデン勢がソロを取るのは7曲中3曲だけだが,それでもレベルの高さは十分実証できている。曲は必ずしも最高とは思わないが,ソロイストの魅力もあって星
☆。また,書きそびれたが,Tim Hagansのトランペット奏者としての実力も結構高いことがよくわかる。

本作も日本にそのうち入ってくるだろうが,なんとアマゾンでは5/18発売予定になっている。現段階でそんなもんを聞いている私も相当の好き者というか,我ながらマメである。ちなみに本作をプロデュースしたのはBob Belden,エンジニアはJim Farberである。まぁこれだけでも,そんな失敗作にはならんだろうと思わせる作品ではある。

Recorded between May 10-13, 2009

Personnel: Tim Hagans(tp, arr),
Håkan Broström, Jan Thelin, Mats Garberg, Karl-Martin Almqvist, Per Moberg(sax, woodwinds), Peter Dahlgren, Magnus Puls, Ola Nordqvist(tb), Björn Hängsel(b-tb), Bo Strandberg, Dan Johansson, Magnus Ekholm, Tapio Maunuvaara(tp, fl-h), Daniel Tilling(p, el-p), Vic Juris(g), Rufus Reid(b), Peter Erskine(ds) with Randy Brecker(tp), George Gazone(ts), Dave Liebman(ss)

2010年3月 2日 (火)

ECMのマキシ・シングル?リミックス?

Khmer"Khmer - The Remixes" Nils Petter Molvaer (ECM)

ECMレーベルほど,マキシ・シングルだとか,リミックスだとかいう手法とかけ離れたレーベルはないと思うのだが,そんなECMにも例外はあったというお話である。

そもそもNils Petter MolvaerのようなトランペッターがECMにアルバムを吹き込むことも驚きだったが,そこはECMの間口の広さを示すものとしてよいのだが,MalvaerのECM第1作"Khmer"にはリミックスのマキシ・シングルが存在するのである。私はたまたま,このアルバムを米国出張中のNYCのJ&R Music World(今はどうかわからないんが,NYCのショップではここが一番安かったので,在米中には本当に世話になった。)で購入した記憶があるのだが,本作にはなんとボーナスCDが封入されているという記述があったのである。つまり,本作の米盤では"Khmer"にこのリミックスがおまけでついていたということになるが,ドイツではどうも単独のマキシ・シングルとして発売されたらしいのである。それこそ「へぇ~」って感じだが,それがMolvaerらしいと言えばMolvaerらしい。よくよくネットでリサーチしてみると,カタログ番号ECM 1560/Mというので出ていて,ジャケはここに掲示のものであるらしいのである。収録曲は私がゲットしたオマケのCDと同じで下記のとおりである。

1. Song of Sand (Single Edit), 2. Platonic Years (DJ Fjørd Mix By The Herbaliser), 3. Tløn (Dance Mix By Mental Overdrive), 4. Song Of Sand II (Coastal Warning Mix By Rockers Hi-Fi)

いずれにしても,未来派と言われるMolvaerに対して,ECMがそれなりの期待を掛けていたのではないかと想像させる話であるが,コレクターの皆さんにとってはこんなことは常識?あるいは相当マニアックなネタなのか,私はよくわからない。

ということで,久しぶりにこのアルバムもちゃんと聞いてみることにしよう。でもiPodでだな(爆)。

2010年3月 1日 (月)

ツボにはまったときのWynton Marsalisの恐ろしさ

J_mood"J Mood" Wynton Marsalis (Columbia)

ジャズ原理主義者としてのWynton Marsalisにははっきり言って辟易とさせられる部分があり,それによるトラッドを模した彼の演奏形態も私は全然いいと思ったことはない。そうしたWyntonに対して否定的な見解を持つ私でも,これは参ったと思わされるアルバムがある。本作などはその最たる事例であるが,いかにも60年代のMiles Davis Quintet的な雰囲気が横溢していて思わず唸ってしまう。このアルバムはWyntonのワンホーンであるから,もちろん全く同じではないし,雰囲気の話でしかないのだが,このアルバムを聞くたびにそうしたことを強く感じてしまう私である。これぞモダン・ジャズって感じ(特に新主流派的と言えば更に近いが,極度にフリーには傾斜しない)なのである。そういう意味ではジャズ好きのツボを刺激するアルバムと言えるのではないかと思う。

Wyntonは1961年生まれなので,私と同い年ということになるが,人間,同じ年齢でもえらい違いがあるもんだということはさておき,本作が吹き込まれた1985年当時,Wyntonは弱冠24歳である。Art Blakeyの元でシーンに登場した時から抜群のテクニックを披露していたWyntonのことであるから,この段階でもはや成熟したミュージシャンのような響きを聞かせるのが実に恐ろしいとも言えるし,当然のことと言えるかもしれない


このアルバムがワンホーンになり,ピアノにMarcus Robertsを迎えたのは,兄BranfordとKenny KirklandがStingとの共演に走った結果とも言えるが,このメンバー・チェンジは失敗してはいない。少なくとも,私のようなラッパのワンホーン好きにとっては,このフォーマットはWyntonの実力を知る上ではよかったのではないかと思っている。でもまぁ原理主義者のWyntonのことだから,当時はそんなBranfordもKirklandも「許せんっ!」ぐらいに思っていたのではないかと想像しているが,まぁそれがこういう作品につながったのだとすれば,それはそれでOKだったと言わざるをえない。

ということで,私は何だかんだと言いながらも,Wyntonのアルバムは結構保有しているのだが,ストリングス入りの"Hot House Flowers"を除けば,本作が一番好きかもしれないなぁ。先述のとおり,「これぞモダン・ジャズ」って感じなので,昼間に聞くより,夜に楽しみたいタイプの音楽だと思うが,それにしてもWyntonはラッパが本当にうまいわ。ある意味,この破綻のなさが好かれない理由なのではないかとも思っている私である。

いずれにしても,彼のアルバムもあまり聞かないので,今聞き返してみると,ほかのアルバムに関しては違う感慨もあるかもしれないが,やはりこのアルバムの第一印象はいまだに覚えているぐらい強烈だった。ということで,星★★★★☆。

Recorded between December 17 & 20, 1985

Personnel: Wynton Marsalis(tp), Marcus Roberts(p), Robert Leslie Hurst III(b), Jaff 'Tain' Watts(ds)

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