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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2010年2月28日 (日)

Sean Conneryはいいねぇ

Red_october「レッド・オクトーバーを追え!("The Hunt for Red October")」('90,米,Paramount)

監督:John McTiernan

出演:Sean Connery,Alec Baldwin,Scott Glenn,James Earl Jones,Sam Niel

先日,久しぶりにDVDを購入したうちの1枚。その時に買った「刑事ジョン・ブック 目撃者」の記事は既にアップ済み(記事は
こちら)だが,これはその抱き合わせで買ったものである。私は昔はLaser Discで映画を楽しんでおり,結構な枚数を買ってしまったのだが,LDは重くてかさばるのが難点であった。DVDの時代になって,そうした問題が解決したばかりか,値段も圧倒的に安くなったことは誠にめでたい限りである。実は今回のDVD購入の目玉は「グラン・トリノ」の破格の安値(なんと75%引きである!)だったのだが,ほかにも安かったので何枚か購入したものである。

私はこの映画は以前(多分レンタル・ビデオで)見たことがあるのだが,そのときも潜水艦映画として結構良くできているなぁと思っていた。今回,久々に(10年以上ぶり?)再見してもその感覚には変わりはなかった。潜水艦映画ってのはそんなに数は多くないが,私としては「眼下の敵」の次ぐらいに評価してもいいのではないかと思っている。それは私がSean Conneryが好きだっていうのも一因ではあるが,この映画はサスペンスフルな展開が楽しいからである。

もちろん,無駄なシーンをカットすれば,よりよくなっていたかもしれないが,それでも135分という尺をそれほど感じさせない出来になっているのは大したものである。その後の作品を考えると,監督としてのJohn McTiernanはこのあたりがピークだったと言ってもいいかもしれない。まぁこの映画の難点はソ連側の潜水艦チームが英語を喋っていることではあるが,この映画をアクション映画であると割り切れば,別に気になるほどのものではない。そもそもそれを言い出したら,昔の「十戒」やら「ベンハー」等の史劇はその舞台の言葉でセリフを喋らなければならなくなってしまうし,あまり意味のない議論のようにも思える。もちろん,リアリズム追求というオプションもあっただろうが,そうなるとSean Conneryの起用はおぼつかなくなり,ロシア人俳優を雇わなければならないという問題も発生するし。まぁ映画に何を求めるかによって,この辺の判断は変わるだろう。

Tom Clancy原作のJack Ryanものはこの後,Harrison Fordが引き継ぐわけだが,ここでのAlec Baldwinは悪くないとしても,この映画ではSean Conneryが一番魅力的なのは間違いないところが,ちょっと可哀想ではある。そのほかでは私が結構ひいきにしているScott Glennがここでも渋い。いずれにしても,Sean Conneryほど素敵に年齢を重ねられるならば本望だと思うのは私だけではあるまい。もちろん,007の頃のConneryはシャープなカッコよさを持っていたが,年を取ってからの渋さというのが本当に素晴らしい。男が惚れる男である。

ということで,この映画,いろいろケチのつけようはあるものの,潜水艦映画としてはかなりよくできていると評価してよいように思う。ということで潜水艦映画が好きな私ということもあり,星★★★★。

2010年2月27日 (土)

付けも付けたり「弦の祭典」

Rites_of_strings"The Rite of Strings" Stanley Clarke / Al Di Meola / Jean-Luc Ponty(Gai Saber)

このアルバムを聞くのも久しぶりである。

このアルバムのタイトルを見て思わずニヤッとしてしまう人はクラシックもある程度聞いている人ではなかろうか。このアルバムのタイトルは,ストラヴィンスキー作「春の祭典」の英語題"The Rite of Spring"に掛けたシャレである。本アルバムは弦楽器奏者3人だけによるアルバムだから,「弦の祭典」とはなるほどと思わせるタイトルである。しかもこの御三方,全てアコースティック(Di Meolaは一部MIDIは使っているが)で通している。

Pontyはさておき,ClarkeとDi Meolaはバカテクで名を成す人たちである。ということはこのアルバムも激しいテクニックの応酬になりそうな気がしないでもないのだが,これが意外と大人な対応をしていて,実は私はこのアルバムが結構好きである。

もちろん,それとはなしにえげつないフレーズやテクニックも挿入されているのだが,それがあまり嫌味にならない程度に抑えられているのがまずは好感度が高い。また,曲も三者による持ち寄りで,対等なポジションでの演奏ぶりもよい。彼らならば,「俺が,俺が」になっても不思議ではないのだが,あまり我も発揮していないようなのも好ましい。更にエキゾチックな感覚の曲がなかなか粒揃いなのもよいということで,私としては評価が高いのである。この人たちはツアーもやったようだから,その際にはもっと激しくやったに違いないのだが,記録として残る音源におけるこうした彼らの対応は率直に認めたいと思う。まぁその分,高揚感とかスリルには乏しいという気がしないでもないが,「大人の音楽」として考えれば妥当な線だと思う。

残念なのはStanley Clarkeの増幅したベース音。アルバムとしては評価できても,これにはやはり違和感がぬぐえない私である。それが減点材料となり星★★★★。

尚,このバンド,2007年に限定的にライブを実施したという情報もあり,今でも継続しているのかぁと思わず思ってしまった私である。でもこういう演奏なら歓迎だが。一度生で見てみたいなぁ。私としてはRTFの再編よりもこっちの方が好きなぐらいだ(と言ったら,怒られるかもなぁ...)。

Recorded in April 1995

Personnel: Stanley Clarke(b), Al Di Meola(g), Jean-Luc Ponty(vln)

2010年2月26日 (金)

石原慎太郎にオリンピック招致の資格はない

東京都知事,石原慎太郎が「「銅(メダル)を取って狂喜する、こんな馬鹿な国はないよ」と発言したそうである。世界で三本の指に入ることは立派なことではないのか。こんなことを言っているのだから,浅田真央の「銀」も認めないってことか?そもそも国民がどう思おうが,石原の知ったことではないだろう。自分が日本国民の代表だとでも思っているのだろうか。

こんな発言をする割には,東京都民の血税を無駄遣いし,リオデジャネイロに敗れたにもかかわらず,その次の五輪の東京招致にこだわり続けるこの男の頭の中は一体どうなっているのか。スポーツに対する敬意も何もあったものではない石原がオリンピックを東京へ招致するなど,それこそ片腹痛いわ。こんな発言をしながら,五輪招致に東京都民の理解を得られると思っていたら大間違いである。厚顔無恥も甚だしい。石原は国民のことを言っているのであって,アスリートのことを言っているのではないという詭弁を弄するかもしれんが,もはや手遅れである。

こんなアホが知事をやっている東京都に住んでいること自体が私を含めた東京都民の恥である。私はこれまで五輪招致にはニュートラルな立場だったが,これで石原が知事であり続ける限り,絶対反対となったことは言うまでもない。

よく頑張った浅田真央

オリンピックの女子フィギュア・スケートが終わった。はっきり言ってしまえばキム・ヨナの圧勝だったわけだが,あれだけ完璧に演技されてはいかんともしがたい。国威発揚の場となるオリンピックにおいて,日本国民からとんでもない期待を掛けられた浅田真央はある意味可哀想なぐらいだったが,ミスが2つあったにもかかわらず,総得点205点越えは立派である。普通の試合なら楽々金メダルだっただろうが,今回はキム・ヨナが凄過ぎた。

それでも,不振の続く日本チームにおいて2つ目の銀メダルなのだから,本人は無茶苦茶悔しいだろうが,胸を張って帰国して欲しいものである。世界で2番目ってのは一般人には考えられないことなのだから。

今回の試合は,トップ・クラスの選手がほとんどミスをしないというハイレベルな戦いだったので,見ているこっちの方が息苦しくなってくるぐらいだった。ショート・プラグラムを見ている時など,なぜか私まで心臓がバクバクしていたぐらいだから,本人たちはいかほどのものだったか。その中でSPで見せた
浅田真央のほぼ完璧な演技も立派であるが,それを上回ったキム・ヨナの集中力は驚異的である。浅田真央にとっては,かえすがえすもフリー・スケーティング中盤のミス2つが痛かったが,それでも代名詞となったトリプル・アクセルも全て決めたわけだから,次につながる経験を得たと思えばいいのではないかと思う。素人考えで言えば,次はトリプル・アクセルは1回にして,トリプル~トリプルのコンビネーションも入れた方がいいように思うのだがどうだろう。

それにしてもキム・ヨナである。あの女性的なスケーティングは以前のMichelle Kwanを思わせるものである。今の段階で,浅田真央がキム・ヨナに勝てないのはあの優雅さであろう。ああした身のこなしを身に付けた時,浅田真央は最強のスケーターになれるはずである。まだまだ伸びしろはあるってことである。

いずれにしても,今回の浅田真央の銀メダルは「残念」ではなく,「快挙」だということを我々は忘れてはならない。本当の実力を発揮できなければ,メダルにさえ届いていなかったのである。それを思えば,ちゃんと実力を出した上での今回の銀メダルは立派である。ということで,声を大にして言いたい。「おめでとう」と。

それにしても,本当にハイレベルないい試合だった(でもちょっとジャッジは甘めだったかもしれないが)。今回のオリンピックにおける女子フィギュアが多くの人の記憶に残るものになっただけでも,浅田真央の功績は大だ。あとは,銅メダルのJoannie Rochetteにも「おめでとう」である。SPの前々日に母を亡くすというのはいかばかりの心境かを思えば,彼女の精神力もこれまた立派。これも後世まで記憶に残るエピソードとして語り継がれるに違いない。

と,おじさんは結構感動して熱くなってしまった。ちゃんちゃん(ちょっと恥ずかしい)。

エコバニ!

Echo_the_bunnymen_3"Porcupine" Echo & the Bunnymen (Warner Brothers)

私はロックということであれば,完全にアメリカ指向で,ブリティッシュ,特にパンク,ニューウェイブ以降の音楽にはほとんど関心を持たないというのが実態であるが,それでもこうした音楽と同時代を過ごした人間としては聞いていないということではない。そもそも私がこのブログでこのバンドを取り上げること自体が意外視されるかもしれないが,このアルバムが出た当時からニューウェイブにはほとんど関心がない中,なんでこのアルバムを買ったかというと,この滝が凍りついたジャケ写真が印象的だったからである。エコバニのアルバム・ジャケットは色使いとか結構センスはいいよなぁと思わせるが,その中で,この寒々しい感覚が印象的だったのである。しかしながら,彼らのアルバムで買ったのは後にも先にもこれだけであるから,私へのフィット感はその程度だったのだが,それでもこのアルバムで聞かれるブリティッシュな響きはこの手の音楽好きにはたまらないんだろうなぁと思わせる。

ジャケの印象は寒々しいが,収められた音楽はスピード感溢れる音楽であり,クールな感覚を与えるものではない。そして,このアルバムのサウンドを特徴づけている一つの要因が"The Cutter"に代表されるShankarのヴァイオリンの響きではないかと思うのである。このリアルな楽器の響きは決してシンセでは代用がきかないと思わせるほど効果的に響いている。私は彼らのアルバムを聞いているわけではないが,少なくともこのアルバムが出た当時はU2と互角,あるいはそれ以上の活動をしていたと思うのだが,急速にバンドとしての勢いを失い,結果的にはU2に大きく水をあけられることとなったわけだ。もちろん,U2にはEno/Lanoisという名参謀がいたことが大きいのだが,結局はIan McCullochとBonoの人間性の違いによるところが大きいのではないかと考えてしまうのは不謹慎だろうか。まぁどっちがロッカーらしいかと言えば,McCullochではあるが...。

いずれにしても,このアルバムを彼らの最高傑作に挙げる人は多いが,確かに当時のバンドの勢いを十分に感じさせるものとなっている。スピード感やシャープな感覚はまさしくブリティッシュ・ニューウェイブである。私にとってはこのサウンドは,当時のブリティッシュの典型的な響きということになるが,当時も今もそうした感覚はあまり変わらないのである。即ち,私の頭の中にはブリティッシュ・ロックのある意味で代表的な音としてこのバンドの音が刷り込まれてしまっているのである。それはある意味では後続のバンドに影響を及ぼしたということにもなるだろうから,これはある程度評価しなければならないのだろうと思う。ということで星★★★★。

だからと言って,このバンドが好きかというと必ずしもそうではないし,しょっちゅう聞きたいとも思わないところは非常に微妙なのだが,それでもやっぱり「同時代」感覚ゆえに無視できないままここまで来てしまった私である。

Personnel: Ian McCulloch(vo, g), Will Sergeant(g), Les Pattinson(b), Pete De Freitas(ds) with Shankar(vln)

2010年2月25日 (木)

Keith CarlockにSeamus Blakeも参加したファンク作

Adam_klipple"Blackjack" Adam Klipple & Drive-by Leslie (Nineteen Eight)

このジャケを見て,ジャズ系のアルバムだと思う人は少なかろう。しかもバンド名はDrive-by Leslieってぐらいだからハモンドをメインで使っていると想定させる。こりゃ真っ黒けなアルバムかなぁと思ったのだが,あにはからんやいかした(黒さを感じさせない)ファンク・アルバムである。リリースは2008年らしい。私の購入動機はKeith CarlockとSeamus Blakeの参加だったのだが,Seamusの出番は3曲と少ないながら,Carlockは全面参加でこれが結構楽しい。

ソロイストではリーダーのほかにBrad Shepikの露出が大きく,この人,比較的クリーンなトーンでファンキーな味を出している。ShepikはDave DouglasとのTiny Bell Trioにも参加しているらしいが,そちらは未聴なのでこの人が本来どういう音楽性はわからないものの,こうしたファンク・セッティングでも十分いけている。

更に,私にとっては,リーダーがハモンドのほかにRhodesとWurlitzerしか弾いていないというのが,実はエレピ好きの私にとってはかなり好感度が高い。しかもそれを煽るのがKeith Carlockだからなぁ。それにしても,このCarlockの神出鬼没ぶりには感心するばかりである。この人,Steely DanやStingのようなメジャーから,こうしたマイナーまでそれこそなんでもござれではないか。それでもやはり本音はWayne KrantzやOz Noy路線というところだろうが,このアルバムにもCarlockのタイトなドラムスが大きく貢献していることは言うまでもない。

私はたまたま某ショップで見掛けて,何じゃこりゃと思いつつもメンツを見て購入したクチだが,ジャケだけ見て誤解してはならない。ファンク系ハード・フュージョンがお好みのリスナーなら必ずや気に入るはずである。一番の聞きものは5曲目の"Vishnu"(John McLaughlinへのオマージュ?)だろうか。それでも全編通じて,これは楽しめるアルバムである。星★★★★。ジャケに騙されることなく,聞いてから判断して頂ければと思う。

Personnel: Adam Klipple(org, key), Brad Shepik(g), Chris Tarry(b), Keith Carlock(ds), Seamus Blake(ts)

2010年2月24日 (水)

あの頃GRPは凄かった

Grp"GRP 10th Anniversary Collection" Various Artists (GRP)

このコンピレーションはGRPレーベルが栄華のピークにあった頃,その10周年を記念して発売した3枚組である。それこそフュージョン界におけるキラ星のごときメンツが顔を揃えているが,私の保有しているのはオマケの3インチCDがついている国内盤である。そんなオマケがついていることすらすっかり失念していたが,最近,私が盛んにリッピングを行っている副次的な効果として,そんなことにも気がついてしまった。

本作はGRPレーベルとしては10周年ということになるが,元々のGrusin Rosen Productionは本作の冒頭に収録された1972年のJon Lucienのアルバムにまでその生い立ちは遡るし,その後も70年代にはArista等からの配給を受けてきた。本作にはその当時のAngela Bofillの懐かしい音源等も含まれている。

そんな彼らがレコード・レーベルを立ち上げたのが1982年で,その初作は
 N.Y./L.A. Dream Bandの日本におけるライブ盤ということになる。このアルバムは武道館でこのライブを聞いていた私にとっては非常に懐かしいものである。本作に収められた"Countdown"におけるLee Ritenourのソロはマジに最高だったと今でも思えるような演奏である。そのライブ自体はMichael Franksがド緊張モードだったりとか,オケとの共演はなんだかなぁだったのだが,それでもこのレーベルの第1作の制作現場に立ち会えたことは本当に懐かしい。

その後,レーベルは隆盛を極め,フュージョン系は何でもGRPみたいになっていたのがこのアルバムが制作された92年前後だったと思う。私がNYCに在住していた90年~92年頃,レーベルの勢いは増しており,3日連続でBeacon TheaterでGRP Festivalってのが開催されたのだが,私はそこに3日連続で通った(プログラムは何と日替わりで,入れ替わり立ち替わりいろんなミュージシャンが登場した)ぐらいだから,このレーベルは結構好きだったということになるのだろう。

今となっては,RippingtonsやAcoustic Alchemy等を通じてスムーズ・ジャズの先鞭をつけたのはこのレーベルだったと言えるのかもしれないが,Chick Coreaやその系列はハイブラウな演奏を展開していたから,フュージョン全般をカバーしていたのがこのレーベルのいいところであった。

このコンピレーションは,全41曲(日本盤のオマケをつけると44曲),3時間半を越える大作であるが,今聞いても懐かしいし,音楽としての鮮度はそんなに落ちていないと思う。そうした意味で,Dave GrusinとLarry Rosenという総帥のもと,しっかりしたレーベル・ポリシーを持っていたと思うのだが,その後,急速に勢いを失ってしまったのはなぜなのだろうか。その辺はよくフォローしていないのだが,結局はリスナーに飽きられたということかもしれないし,Impulse等のレーベルを手中に収める等の多角化があだとなったのかもしれない。

いずれにしても,久しぶりにこのアルバムを通しで聞いたが,結構今でも好きだったなぁ,ということで,突然の記事にしてしまった。尚,参加ミュージシャンは多過ぎて書ききれないが,まさにキラ星である。今や,ネットで無茶苦茶な安値で手に入るが,ながら族御用達の音楽として未聴の方にはお薦めしたい。懐かしさと私の生活に潤いを与えてくれたことを評価して星★★★★★。それにしてもよくできたコンピレーションである。これなら一生聞けると私は真剣に思っている。

2010年2月23日 (火)

これは激しくて暑苦しい:Cindy BlackmanのTony Williamsトリビュート

Cindy_blackman"Another Lifetime" Cindy Blackman (4Q)

明らかにTony Williamsの影響を受けていると思われるCindy Blackmanが,"Another Lifetime"と大きく出たトリビュート・アルバムをリリースした。私は別に彼女への思い入れはないので,それだけだったら買っていないのだが,Abstract Logixのサイトで試聴したところ,Mike Sternの激しいギターが聞こえてきてしまったので,購入を決意したアルバムである。

試聴したトラックや,アルバム・タイトルを見る限りは,Lifetime系の激しい演奏が展開されることは想像に難くなかったのだが,これが予想を上回る激しさ,暑苦しさである。Blackmanのドラムスは,セッティングも70年代以降のTony Williamsに近似的な響きを聞かせ,まさにあんな感じの音(特にバスドラなんてそうだ)なのだが,それに輪を掛けるMike SternのギターとDoug Carnのオルガンである。Doug CarnはBlack Jazzレーベルの諸作で,その筋の方にはお馴染みだろうが,私にとってはおそらく初体験の人である。最近は活躍しているという話は聞いたことがなかったが,それにしてもそのオルガンも暑苦しい。そして,最近,これだけ激しいのはあまり聞いたことがないようなMike Sternである。音だけ聞いていても,マイキーが膝を揺らしながらプレイするさまが目に浮かぶのである。

この暑苦しさにはまさしく圧倒されてしまって,変な言い方であるが,この暑苦しさゆえに私は思わずうれしくなってしまったのである。しかし,このアルバム,この調子で全編続けるとさすがに胸やけを起こすと考えたのか,異なったメンツでの演奏も収められている。中でもJoe Lovanoとのデュオで演じられる"Love Song"はアルバムの中では異色と言えるだろうし,Vernon Reid(そう,あのLivign Colorのである)参加の"Wildlife"のややポップな感覚はやや浮いている。Lovenoのデュオなんか,Tonyの"Joy of Flying"(このアルバムはこのブログで以前酷評したことがある。記事はこちら)におけるCecil Taylorとのデュオへのオマージュかとも思いたくなるが,演奏はいいのだが,他の演奏との違いが大き過ぎるのである。

ということで,私としてはMike Stern,Doug Carnとの演奏の調子で全編を通してやってもらった方が,"Another Lifetime"としては相応しかったのではないかと思えるのである。一方で,もう一人参加しているギタリスト,Fionn Ó Lochlainnは英国出身で,SealやBilly Braggとの共演歴を持つ人らしいが,"40 Years of Innovation"ではマイキーっぽさを残しているのだが,"There Comes a Time"ではヘビーなギターでマイキーとの違いを
結構如実に出していて,こちらは面白かった。まぁ全編を通じて聞けば,ハード・フュージョンの佳作としては評価できるだろうが,やっぱりこのアルバムの構成はちょっと惜しいかなぁと思ってしまった私である。星★★★☆。

いやいや,やはりそれにしても暑苦しい。夏場には聞けないだろうなぁ。

Personnel: Cindy Blackman(ds, vo), Mike Stern(g), Fionn Ó Lochlainn(g), Vernon Reid(g), Doug Carn(org), Carlton Holmes(key), Patrice Rushen(key), Bennie Reitveld(b), David Santos(b)

2010年2月22日 (月)

出張中に見た映画(10/02編):その6(最終回)

This_is_it "This Is It"('09,米,Columbia)

監督:Kenny Ortega

出演:Michael Jackson

今回の出張は2泊4日の弾丸出張だったので,かなり肉体的にはきつかった。しかも帰国する当日は深夜の国際電話で叩き起こされ,寝不足のまま,飛行機に乗った私である。よって,帰路は2本が限界ということで,最後に見たのがこの映画である。この映画も実は途中で寝てしまい,記憶のあるシーンから見直したという噴飯ものの見方をしてしまった。まぁそれはさておきである。

この映画はMichael Jacksonの急死を受けて,コンサートのリハーサル映像として撮っておいたものを再編集したものというのはよく知られている話だが,この映画を見ていて,Michael Jacksonのコリオグラファーとしての才能がつくづくよくわかったと言える。もちろん,ミュージシャンとしては並々ならぬ才能であることは誰もが認めるところだろうが,振付について,本当にスタイルを確立していると思えてしまったのである。思えば,昔「ザッツ・ダンシング」という映画があって,自らも天才的ダンサーであったGene KellyがMichael Jacksonの才能を絶賛していたはずである。私はこの映画を見ていて,「ザッツ・ダンシング」でGene Kellyが言っていたことが改めてよくわかったと言えるだろう。

リハーサル映像とは言え,音楽的にも見ていて楽しめる部分は多々あるし,中でも最近ちまたで話題沸騰(?)のOrianthi Panagarisの"Beat It"におけるEdward Van Halenの完全コピーぶりにはお~っと唸った人も多いのではないか。カッティングのキレなども大したものである。そしてこのバックバンドの質の高さが,Michael Jacksonという人の音楽のクォリティそのものを物語っているのではないかと思えるのである。

私としては"Thriller"が彼の音楽を聞いた最後となったが,やはり大したミュージシャンであり,ダンサーであったと再認識させられた。Michael Jacksonへの追悼も込めて星★★★★。しかし,この映画,映画館で大画面,大音量で楽しむべきものであり,飛行機ではその魅力は伝わりきるまい。

2010年2月21日 (日)

出張中に見た映画(10/02編):その5

Surrogates「サロゲート("Surrogates")」('09,米,Touchstone)

監督:Jonathan Mostow

出演:Bruce Willis,Radha Mitchell,Rosamund Pike,Boris Kodjoe

ロボット物の映画ってのはいろいろあるが,この映画は人間が遠隔操作でアバターとしてのロボットを操作するというのが,今までと変わっているところかもしれない。更に,これまでならロボットが反乱を起こすってのが筋書きだが,この映画はちょっと違うのが変わっている(この辺はネタバレになるので,書きにくい)。

まぁ,しかしBruce Willisが扮するFBI捜査官の実働部隊もロボティック・サロゲートだってのはなんだかなぁの世界であるが,このWillisのサロゲートがBruce Willisなのに,髪の毛はあるわ,髭はないわで,なんだか笑ってしまった。毛が生えて,髭がないと,まるでRussell Croweを童顔にしたようにさえ見えるのである。これがまずギャグ。また,サロゲートの皮膚をめくったロボットの造形もギャグ。

また,サスペンスを盛り上げようという意図はわかるが,演出がこれまた凡庸ということで,そもそもあの愚作「T3」の監督,Mostowではこの程度で当然か。そもそも,サロゲートだらけで人間性を失った世界の中で,人間性を追求しようとする主人公というシナリオもしょうもなぁ~としか言えない。まぁ飛行機の時間潰しにはいいのだろうが,もう少しまともな映画を選べばよかったとまたまた反省した私である。星★☆。

2010年2月20日 (土)

Wayne KrantzをCotton Clubで見た

Krantz_at_cc12/18,Wayne Krantz / Keith Carlock / Tim LefebvreのトリオのライブをCotton Clubでのセカンドセットで見た。

いやいや何が強烈って,Krantzのギターは想定通りだったのだが,Carlockのドラムスがあまりにも強烈。これぞ猛爆ドラマーと言うべきなのだが,この人,パワーだけではない。ドラムスが歌っているのである。あたかもメロディを奏でるような豊かなフレージングとでも言うべきであろうか。

私はこのトリオの演奏を聞いていて,大いに燃えさせてもらったわけだが,今回の最大の収穫はCarlockだったと言っても過言ではない。先月にはこのトリオで55 Barに出たらしいが,さぞや騒がしかっただろうなぁ(でも羨ましい)。聴衆の数は多かったとは言えないが,どう見ても関心があるようには見えない人も混じっていたのが不思議な感じであった。いずれにしても,Krantzの日本での認知度はこの程度ってことなのかもしれない。

尚,今回,私はCotton Clubに初めて行ったのだが,ステージも見やすいし,なかなか好感が持てる場所であった。

それにしても,今回,演奏終了後,サイン会が始まったわけだが,CDを持参しなかったのは痛かった。結局また買うはめになってしまったではないか。あぁ無駄遣い。

2010年2月19日 (金)

出張中に見た映画(10/02編):その4

Shining 「シャイニング("The Shining")」 ('80,米,WB)

監督:Stanley Kubrick

出演:Jack Nicholson,Shelly Duvall,Danny Lloyd,Scatman Crothers

出張の往路で見た映画の4本目には強烈な映画を選んでしまった。恥ずかしながら,私はこの映画をちゃんと見たのは今回が初めてのことであった。しかし,これはやはりKubrickならではと思わせる映画であった。とにかく怖い。

この映画の怖いところは,その怖さの原因が提示されているようではっきりとは提示されないままの部分にあるのではないかと思う。結局「なんで?」という部分は残存しているように思えるが,それがホラーと言えばホラーなのである。熊(?)みたいな着ぐるみは一体何なのよとか,わけがわからん部分はあるし...

いずれにしても,本作では表情だけで取り憑かれた男を演じるJack Nicholsonが強烈である。それに比べるとShelly Duvallなんてのは女優としてはKubrickの好みではないようにも思えるのだが,いずれにしても,この人の絶叫フェースもかなり恐ろしいわ。

こういう映画を飛行機のエンタテインメントにするのもどうなのよって気もするが,私にとってはこういう機会でもないとちゃんと見ることができないので,これはこれでよかった。

繰り返すが,映像や音楽も含めて,いかにもKubrickらしい作品と思ってしまった。血の海の表現なんてすばらしいし,選曲のセンスは特に感心するところ大であったが,やはり凄い監督だったと再認識させるに十分な作品である。星★★★★☆。

2010年2月18日 (木)

出張中に見た映画(10/02編):その3

Photo_3 「ミッドナイト・イーグル」('07,日,松竹)

監督:成島出

出演:大沢たかお,竹内結子,玉木宏,吉田栄作

出張中の2本目に見た「母なる証明」が重かったので,気楽に見ようと思ってチョイスしたのがこの映画である。私はこの映画の原作をこのブログで酷評した(記事はこちら)ことがあるが,その時にも「映画化を狙ってこういう話にしたのか」と皮肉たっぷりに書いたものの,これは映画の方がまだましだと思わせる出来であった。

もちろん,文句はいくらでも言える。ステルス戦闘機の描き方なんて予算のなさを暴露しているし,自衛隊を上回る数の敵が次から次へと現れるというのもおかしな話というのは原作同様である。しかし,冬山の雰囲気は映像があった方がいいのは間違いないし,役者としては吉田栄作がいい味を出している。この人,以前取り上げた「真夏のオリオン」でも誉めたが,存在感のあるいい役者になったと思う。それに比べると玉木宏なんてちゃらちゃらしていて,彼が連発する「ジャーナリスト」としての骨っぽさは彼の演技は感じさせないし,大沢たかおも適役なのかどうなのかよくわからないのである。そもそも藤竜也が内閣総理大臣っていうのはないでしょうなぁ。

しかし,終盤に向けて,泣かせる場面はちゃんと作ってあって,その辺は映画で泣きたい私としては評価したいところもあるが,これも「アルマゲドン」的お涙頂戴と言ってしまえばそれまでである。

この映画,編集はかなり頑張ったと思えるのだが,いかんせん原作の弱さというものの解決はここでもできなかったということであろう。結構泣かしてもらったとしても,評価は高められないなぁというところである。星★★。それにしても,飛行機で見る映画で,玉木宏や竹内結子のものが多過ぎると感じるのは私だけだろうか。映画向きの役者というのもあるのかもしれないが,邦画が集客面でいかに好調とは言っても,役者が足りないと思わざるをえない。

2010年2月17日 (水)

出張中に見た映画(10/02編):その2

Photo_2 「母なる証明("마더")」 ('09,韓)

監督:ポン・ジュノ

出演:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン

今回見た映画の2本目は韓国映画である。

この映画は暗い映画である。結局最後まで謎は残るし,解決は提示されない。結局は母性の強さとそれによって発生するある種の悲劇という話であるが,もう少し結末には救いが提示されてもよさそうなものだと言いたくなるのは私だけではあるまい。

そうしたストーリー面での話はさておき,この映画の特徴はウォンビンの演技ということになるであろう。私の中でのウォンビンはもう少し男っぽい感覚があったのだが,このポスターでもわかるようにここでは紅顔の美少年(なんとなく木村拓哉に似ていると思うのは私だけではあるまい)と言うべき雰囲気を強く打ち出しながら,少し頭の弱い息子役を演じている。これをわざとらしいと言えば言えないこともないが,まぁよく頑張りましたっていう感覚は残すことには成功しているから,まずは彼には敢闘賞。

しかし,この映画の主役は母親役のキム・ヘジャにほかならない。ここでの写真は池内淳子みたいだが,今の日本でこの役を演じさせたいと思うなら余貴美子か。韓国はオモニの国とも言うべき母性の強い国だと思うが,まさしくここでの世界は母性そのものである。私はこの映画は,映画そのものとしてはよくできているとは思うものの,それでも好きか嫌いかという分類にすれば,絶対に好きにはなれないというタイプの映画である。それは先述のように救いがないからである。やっぱりこれは暗過ぎるだろう。しかし,意表を突くシナリオとそれに付随する映像表現等,見るべきものも多く,韓国映画もいろいろあるなぁとつくづく思わされたが,次はもう少し軽い映画が見たいと思ってしまったのも事実。ということで星★★★☆。

2010年2月16日 (火)

出張中に見た映画(10/02編):その1

Amelia "Amelia" ('09,米,Fox)

監督:Mira Nair

出演:Hilary Swank,Richard Gere,Ewan McGregor,Christopher Eccleston

海外出張中の楽しみ,「出張中に見た映画」シリーズである。今回は往路では4本の映画を見たが,順番にレビューしてみたい。

本作は日本未公開であるが,Joni Mitchellも歌ったAmelia Earhartに関する物語を描いた映画である。Ameliaは女性パイロットとして,大恐慌期の米国に勇気を与え,女性の社会進出に貢献した人物として認められるべき人であるが,日本での知名度なんて知れたものだろうから,この映画が日本で公開される可能性は極めて低いだろうということで,まずはこの映画をチョイスした私である。この映画の製作総指揮を主演のSwankが兼ねているので,結局は彼女がAmeliaを演じたかったのだろうというのが本当のところだろうが,Swankは結構実際のAmeliaの雰囲気を出しているが,映画としてはどうか。

一見して爽やかな印象を与える映画であるが,人間の描き方としてはちょいと表層的なのが気に入らない。映像は美しく,こういうのはブルーレイで見たいかなぁと思わせるような部分もあるが,映画としての深みを出すには心理的な描写が甘過ぎるのは減点対象になろう。例えば,もう少しAmeliaの苦悩という部分を描いていれば,もう少し違う感覚もあったはずである。また,実写フィルムをうまくシンクロさせる手法は認められるが,この方式ならば,去年私が絶賛した「ミルク」って前例があるだけに,この程度では褒められるほどのものでもないのである。

結局のところ,この映画の最大の欠陥は,何もかもが中途半端に終わっていることである。人間ドラマにもなりきれない,恋愛ドラマにもなりきれない,単なる偉人伝にもならないということで,フォーカスがぶれたのは否めないだろう。Richard Gereは地味に好演していると思うし,Swankの演技力は大したものである。しかし,演出がもう少しよければ,この映画はもう少しいいものになっていただろうなぁと思えるのである。印象が爽やかなだけにちょっと勿体ない。星★★★。

しかし,繰り返すがこの映画が日本で公開される可能性は低いだろうが,Amelia Earhartについてはもう少し知られてもいいと思う。それにしても字幕で彼女の名前がイアハートになっているのは違和感が強かった。スペルだけ見ればそう読むように日本人には思えるかもしれないが,彼女の名前の発音はカタカナで書くならエアハートであるべきだと思うし,映画の中でもどう聞いてもエアハートとしか発音していなかったはずである。人名については私は細か過ぎるのかもしれないが,これだけは譲れないのである。

2010年2月15日 (月)

この記事がアップされる頃は...

この記事がブログにアップされる頃には私はパリの空の下にいるはずである。私とパリでは取り合わせがよくないというか,全く似合っていないが,仕事だから仕方ない。しかも2泊4日の弾丸出張である。さすがにきついねぇ。まぁ時差ボケになる前に帰国できるからいいっちゃその通りなんだが。ということで今日もまたTwitterのようになってしまった(爆)。

渡航前にはフランス・モードを高めるために,フレンチ・ジャズでも聞くことにしよう。

2010年2月14日 (日)

Sadeのニュー・アルバム:9年待った甲斐はあったか?

Sade "Soldier of Love" Sade(Epic)

 

今日はSt. Valentine's Dayである。こういう日にSadeというのははまり過ぎって気がしないでもないが,いずれにしても待望のSadeの新作である。本作に関する情報はこのブログでもアップ(記事はこちら)し,私としてもその期待の大きさを発露してしまったわけだが,何と言っても9年ぶりである。もともとが寡作な人たちだから仕方がないとは言え,ライブ盤からも既に8年が経過しているというのはどうなんだろうなぁと思ってしまう。しかし,それでも私が異常なまでの期待を掛けていたことには間違いない。

しかしである。私はこのアルバムを聞いていて,今一つ没入できないところにフラストレーションを感じてしまった。どうも曲があまり面白くないのである。もちろん,この人たちのやることであるから,それなりのクォリティは維持しているとは思うが,私が彼らに期待するのはこの程度のレベルではない。Sade Aduの声もややトーンが下がったように思えるし,う~む,なんだかなぁ。もう少し,メリハリがあってもいいように思えるし...。

私がこのアルバムに感じる違和感はそれに加えて,ミキシングにもあるように思える。曲によっては打ち込み臭さがあって,私の好みではないというところもあるのかもしれない。Sade Aduの声は生々しいのだが,それが伴奏とうまくマッチしているかというとちょっと違うようにも思えるのである。

確かに余計なものをそぎ落とした結果がこういう音になるのかもしれないのだが,私はこれまでのアルバムの方がいいと思ってしまったのである。Sadeの音楽が好きなだけに,もう少しやりようがあったのではないかと思うのは私だけだろうか。それでも"Logn Hard Road"なんていい曲だよなぁと思わせるし,それに続く"Be That Easy"も沁みるが,それでも打ち込みへの違和感が影響して,どうにもアンビバレントな感じが消えない私である。ということで星★★★☆ぐらいにしておこう。

それにしても,最近,中古盤屋をうろついていると,Sadeの昔のアルバムが異常な安値でころがっているのを見ると,売れ過ぎたアルバムってこういうことになるのかなぁとも思えるのだが,売った人には,保有していればずっと聞き続ける楽しみを与えてくれるのに...と余計なお世話をしたくなる私である。このアルバムももしかすると,時間の経過とともによくなっていくかもしれない。

Personnel: Sade Adu(vo, prog), Stuart Matthewman(g, prog), Andrew Hale(key, prog), Paul S. Denmann(b) with Tony Momrelle(vo), Leroy Osbourn(vo), Martin Ditcham(ds, perc), Everton Nelson(vln), Ian Budge(cello), Gordon Matthewman(tp), Noel Langley(tp), Ila Adu(vo), Clay Matthewman(vo), Juan Janes(g), Sophie Muller(ukulele)

2010年2月13日 (土)

オリンピック開会式で流れたJoni Mitchell

バンクーバー・オリンピックが開幕したが,開会式はなんだか映像は美しいものの,冗長な演出で最後は退屈してしまったが,その中では音楽のパフォーマンスは結構楽しかった。k.d.langの"Hallelujah"なんて相当によかったが,視覚的効果も含めて最もよかったのはJoni Mitchellの"Both Sides Now"が流れた時ではなかったか。残念ながらJoniがライブで歌うことはなかったが,空中バレエとも言うべきワイヤー・アクションが,美しい映像と相俟って,非常によかったのではないかと思う。このあたりにはJoniへのリスペクトすら感じさせるものであった。

ミュージシャンの選出を見ていても,まぁ妥当な線だろうとは思ったが,Neil Youngが出たらもっと盛り上がったかもしれないなぁ。ありえないけど(爆)。

ジャケは?だが,演奏は最高だったクリポタ参加作

Contribution"Contribution"  Daniel Szabo Trio Meets Chris Potter(BMC)

ブログのお知り合い,すずっくさんのお誘いに乗らせて頂いてデリバリーを心待ちにしていたアルバムである。リーダーや参加メンバーのことは全く知らないのだが,絶好調Chris Potter参加のワンホーン・アルバムとあってはいやが上にも期待が高まろうというものである。そして完全に期待に応えた彼らは素晴らしい。断言するが,まだ本年聞いた新作アルバムは少ないものの,今年のこれまでの中では最高の出来を示した傑作である。これぞハードボイルド,我々が期待するChris Potterの姿である。気が早いが,今年のベスト盤には確実に入ってくるだろう。

冒頭の"Attack of the Intervals"からして,素晴らしいテンションである。こういう曲を書くリーダーのSzaboも大したものならば,それを堂々と受けて立つChris Potterも素晴らしい。まさにこの世界を期待しているリスナーが多いはずだが,これはたまらない。最高である。とにかく全編に渡ってこういうハイブラウな演奏が続くのだから,ファンにとっては何をかいわんやであるが,そうでない人々に対しても強く推薦したいのである(思わず熱くなる私)。

私はこのアルバムについては多くを語る必要を感じない。とにかくChris Potterの実力が遺憾なく発揮された作品として,極めて満足度が高い。そしてこうした演奏を生み出したSzaboトリオに感謝したい。ハンガリー・ジャズも恐るべし。ジャケットだけ見ていると購買意欲は高まらないが,これは掛け値なしの傑作である。皆で買いましょう。全部が全部最高とは言わないが,ちょいと甘めの星★★★★★。

すずっくさん,お誘い頂きありがとうございました。待った甲斐は確実にありました。

Recorded on August 27 & 28, 2009

Personnel: Daniel Szabo(p, el-p), Chris Potter(ts, ss, b-cl), Matyas Szandai(b), Ferenc Nemeth(ds)

2010年2月12日 (金)

まだ働いてる私…

珍しく仕事が忙しく、国民の祝日から日が変わったというのに、まだ働いている私である。というこてとで本日は開店休業(爆)。まるでTwitterのようになってしまった...。

2010年2月11日 (木)

雰囲気を変えた吉田修一:でもこれがよい。

Photo 「横道世之介」 吉田修一 (毎日新聞社)

この本は発売早々に買っていながら読めていなかった本である。

私は吉田修一のかなり熱心な読者で,ほとんどすべての彼の文章を読んでいると言っても過言ではないぐらいなのだが,新聞連載に基づくこの小説には結構とまどったというのが正直なところである。なぜならば,重苦しい雰囲気を持った「悪人」や「さよなら渓谷」と違いが大きすぎたからである。しかし,読後には非常に爽やかな余韻を残してくれたので全く問題はない。

そもそも,吉田修一としては「悪人」や「さよなら渓谷」も従来の作品とは違うトーンの小説であったが,これはがらっと雰囲気を変えた典型的な青春小説である。描かれる年代が80年代というのもノスタルジーをくすぐる部分はあるのだが,ここはだらだらした大学生としての主人公の生活が,淡々と描かれるだけなのである。そこに差し挟まれるさまざまな登場人物の現在がいい感じのスパイスのように効いている。

そして最終的にはこの小説の主人公である横道世之介という人物が,頭に残って離れなくなっているというのは凄いことである。そして,爽やかな余韻と書いたものの,実は飛行機の中で読んだ最後のページで思わずじ~んとしてしまってかなりやばかった。

これは今までの吉田修一の作風とはかなり違うのだが,この本が本屋大賞の候補に入っているのって実はよくわかるような気がする。この読後感は,プロの本屋だけでなく多くの人にもアピールするものだと思えるのである。

他愛ないと言えばその通りだが,この本,私は結構好きだなぁ。星★★★★☆。読んだ後,プチ幸福感をおぼえる作品ってあまりない。この本をほったらかしにした自分を恥じた私である。

2010年2月10日 (水)

"Super Nova"の続編とも言えそうだが,雰囲気は相当違う

Iska "Odyssey of Iska" Wayne Shorter (Blue Note)

参加しているメンツはだいぶ違うものの,編成だけ見れば"Super Nova"と似たような感じだと思えるアルバムである。しかし,本作は雰囲気からして"Super Nova"とはずいぶん異なるものとなっている。私がこのアルバムを聞いたのも随分久しぶりだったが,あれっ,こんなにおだやかなアルバムだったっけ?なんて思ってしまったというのが正直な感想だったのである。

一聴して,サウンドは静謐である。"Super Nova"の方は冒頭から強烈なテンションであったが,本作では随分とおだやかに,なんと"De Pois Do Amor, O Vazio"ではボサノバ的なタッチも聞かせるのである。曲目も"Wind"だ,"Storm"だと自然界賛歌かとも思わせるが,さすがに"Storm"に関しては曲名どおり激しい展開を示すものの,それでも全体的にはおだやかなものである。"Calm"なんて,こんなムーディなShorterのテナーは聞いたことがないというサウンドに思わずのけぞる私であった。

私は"Super Nova"が大好きなので,本作の評価は微妙ではあるが,やはりShorterにはもう少し激しい感じの方が似合うのではないか。よって,本作の中では激しさを示す"Storm"や最後の"Joy"が好みになってしまう私である。Shorterは全面的に高く評価したいが,これは星★★★☆ぐらいだろう。でももう少しよく聞いてみないとなぁ。

Recorded on August 26, 1970

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss), David Friedman(vib, marimba), Gene Bartoncini(g), Ron Carter(b), Cecil McBee(b), Billy Hart(ds), Al Mouzon(ds), Frank Cuomo(perc, ds)

2010年2月 9日 (火)

Dave Hollandの新作に関する耳より情報

Daveholland_pathwaysDave Hollandは前作"Pass It On"において,バンド編成を変更しながらも,優れた演奏を聞かせたことはこのブログでも書いた(記事はこちら)。しかし,Chris PotterもNate Smithも抜けたバンドに対しては,変態度が不足しているという不満も一部ではあるものの渦巻いていたのは事実であろう。そんなことを知ってか知らぬか,来る3月に発売されるHollandの新作"Pathways"は,編成は八重奏団となっているのだが,嬉しいことに旧五重奏団のメンバーが「全員」含まれている。つまり,Holland,Potter,Robin Eubanks,Steve Nelson,Nate Smithの旧クインテットに,前作でも参加のAntonio Hart,Alex Spiaginの二人,更にバリトンのGary Smulyanが加わるという構成である。

なぜHollandがこうした判断を下したのかはよくわからないが,これはDave Holland Big Bandの小型版という考え方も成り立つ。いずれにしても,Chris Potterの復帰はめでたい限りだが,Holland閣下のことである。またまたハイブラウな音楽を聞かせてくれることは確実であろう。Brad Mehldauの新作と並んで,この春期待の新作である。ということで,クリポタ・ファンを含めて,この新作を見逃してはならないのである。

2010年2月 8日 (月)

Rosario Giulianiのイメージを覆すコンテンポラリーな作品

Trio_ostiko "Trio Ostiko" Rosario Giuliani / Pippo Matino / Benjamin Henocq (VVJ)

私の中で欧州アルト・サックス・プレイヤーと言えば,Stefano Di Battista,Perico Sambeat,そして本作のRosario Giulianiということになっているわけだが,彼らはどちらかと言えば,保守本流というタイプのミュージシャンだと思っているところに,本作の登場である。ブログのお知り合い,crissさん,すずっくさんのご紹介記事にもあるので,本作が私の持つGiulianiのイメージを覆す作品であろうことは,事前からある程度は想定できたが,ここまでやっているとは思わなかったという点でまずは驚いた私である。

冒頭のWayne Shorter作"Footprints"から飛ばす,飛ばすって感じだが,全編を通じてかなりハイパーな演奏が続くと言ってよい。バックのMatino~Henocqというコンビがこれだけ弾きまくり,叩くまくりでは,Giulianiも煽られて当然と言えば当然だが,それにしてもこれは強烈である。そもそも私がこのリズム隊を聞くのは初めてだが,Matinoはスラッピングをはじめ,なかなかのテクニシャンであり,欧州のベーシストにはこういう人が多いなぁと妙な感心の仕方をしてしまうが,いずれにしてもこの人はなかなか聞かせる。一方のHenocqもテクニックがあるのはわかるが,聞いている環境や録音のせいもあるかもしれないが,私にはどうも腰の据わらない軽いドラムスに聞こえてしまうのである。例えば,Dennis Chambersだったら,サウンドは明らかに違うものとなっていたはずである。スピード感溢れる演奏だけに,これでもう少し重量感があればというのはないものねだりだろうか。しかし,トリオ全体で言えば,十分に楽しめる演奏にはなっているとは思うのだが,それでもなぜGiulianiがこうした演奏に取り組もうとしたのかはやはり謎である。

また,この演奏を聞いていて,私がプロデューサーだったら,Mike Sternあたりのギターを絡めると更に面白かったのではないかと思ってしまった。特にスローな曲では,Sternのコーラスが効いたギターがかぶってくると想像して一人でほくそ笑んでいた私である(爆)。

いずれにしても,コンベンショナルなジャズと,ハード・フュージョンのはざまをいい具合に行き来するという感じのこのアルバムでも,欧州のジャズ・ミュージシャンの懐の深さは明らかになったという点では,先日レビューしたLuca Mannutzaと同様の感覚を私にもたらしたアルバムであった。星★★★★。でもGiulianiのファンがこれを聞いたらどう思うのかは非常に興味深いなぁ。

Personnel: Rosario Giuliani(as), Pippo Matino(b), Benjamin Henocq(ds)

2010年2月 7日 (日)

越えなければならないハードル:"Out to Lunch!"

Out_to_lunch "Out to Lunch!" Eric Dolphy (Blue Note)

私はEric Dolphyが好きな方だとは思うのだが,私だけでなく,多くのリスナーにとっても,Dolphyの傑作と呼ばれる本作はかなりハードルが高い作品ではないかと思っている。一言で言うととっつきにくい。所謂新主流派なんてものははるかに超越して,フリー一歩手前と言っても過言ではない。調性と無調のはざまを行き交うサウンドは,ジャズ,あるいはDolphyに馴染みのないリスナーが聞いたら,何じゃこりゃという反応にしかなるまい。そういう点では,初めてDolphyを聞くのがこのアルバムだったとすれば,Dolphyへの門は固く閉ざされてしまいかねないと言っても過言ではない。私とて同じである。私が聞いた初のDolphyのアルバムは"Last Date"だったからよかったようなものの,これを最初に聞いていたら,その瞬間にDolphyはもうええわと思っていたかもしれないのである。この作品は,長年Dolphyの音楽に接してきて,確かに緊張感あふれる傑作であるとは思えるのだが,ほかのDolphyの作品を聞いて,ある程度彼の音楽の本質を掴んでからでないと,ついていくのが相当厳しいだろうと感じる。いずれにしても「楽興」という感じではなく,むしろストイシズムさえ感じさせるサウンドである。アルバムを聞き通すのは,そういう意味ではかなり疲れることに今でも変わりない。

もちろん,音楽に対する感じ方,感受性は人それぞれであるから,一発でこの音楽の魅力を理解してしまう人もいるだろうが,上の記述はあくまでも一般的なオーディエンスを対象とした場合の考え方だと理解して頂ければと思う。

その上で,このテンションの高さの原因を探るとすれば,本作に参加したメンバーと,楽器編成にあると言えるのではないかと思う。本作の緊張感を高めているのは,私の感覚ではDolphyの書いた特異な曲にもあるが,それに加えてBobby Hutchersonのヴァイブの響きが重要な役割を果たしていると思っている。そこに乗ってくるDolphyのソロ・フレーズがまた切れまくっているが,Dolphyに比べるとHubbardが保守的に響くぐらいのフレージングである。しかも,Dolphyの作品では普通のことだが,アルト,バスクラ,フルートの全てに,素晴らしい技を見せるのが,この人が偉人たる所以である。

だからと言って,敷居の高さには変わりはないから,本作を毎日聞こうなんて気には絶対にならないが,ごくたまに聞くとやはりDolphyの異能を感じることができる作品である。個人的な好みは別にして,作品としては星★★★★★である。それにしても,本作録音時,Tony Williamsは18歳である。こんな音楽にさえ違和感なく溶け込むとは何という化け物と言いたくなる。

Recorded on February 25, 1964

Personnel: Eric Dolphy(as, b-cl, fl), Freddie Hubbard(tp), Bobby Hutcherson(vib), Richard Davis(b), Anthony Williams(ds)

2010年2月 6日 (土)

コレクターはつらいよ(9):Brad Mehldauの新譜にまつわる話

Highway_riderNonesuchレーベルのWebサイト等でもBrad Mehldauの新譜が3月に発売されることは明らかになっている。今回は"Largo"以来となるJohn Brionプロデュース作で,Joshua Redmanとの久々の共演や室内管弦楽団の参加等,話題には事欠かない。当然,Mehldauのコンプリートを目論む私は買うのは当然だが,このアルバム,Nonesuchのサイトで予約すると,デモ・テイクのダウンロードというオマケがついてくるというのである。となったら,デリバリーには若干時間が掛っても,こっちで買うしかないではないか。

我ながらマニアックだとは思うのだが,目指すものがコンプリートである以上,こればかりは仕方がないな。まぁブートへの手の出し方はいい加減なものだから,大したコレクターではないということは変わっていないが...。いずれにしても3月半ばの発売を待ち焦がれる私である。

2010年2月 5日 (金)

アクセス解析を見ていてわかること,そして感謝。

先日2/3の私のブログへのアクセス数が通常よりもはるかに多い(いつもの2倍近くになっていた)のが不思議で,解析メニューを使っていろいろ見ていたら,お一人の方が400ページ以上閲覧されているではないか。こんなしょうもないブログにとっては誠にありがたいことである。しかし,こんな駄文をずっと読み続けていたら,脳味噌ウニ状態になってしまうのではないかと思わず心配になってしまった。

どなたかは存じませんが,ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。ちなみにこの方はcrissさんのサイトから当方へお越し下さったようなので,リンクを張って頂いているcrissさんにも感謝申し上げます。

それにしても,ココログは解析メニューが豊富で,データを眺めているといろいろなことがわかって実に面白いと思うのだが,皆さん,この機能を使いこなしているのだろうか?

2010年2月 4日 (木)

Luca Mannutzaのこれが本音か?

Longin"Longin'" Luca Mannutza(Wide Sound)

ハード・バップ系イタリア・ジャズが人気を博する中,High Five Quintetはじめ,Max IonataやFabrizio Bosso,更にはRoberto Gattoらとのアルバムに顔を出して,日本でも露出が高まっているLuca Mannutzaのこのアルバムは,既に私のお知り合いのブロガーの皆さんも取り上げられている。これまで,私はこの人はハード・バップ系一辺倒なのかと思っていたのだが,このアルバムを聞いてちょっと違った感覚を受けた。よって,この人の音楽に対する本音はこのあたりなのかなぁと思ったのも事実である。

この人が決してハードバップだけの人ではないというのは,Stingの曲を2曲入れるという事実,それもかなりメロディを斬新に崩していることからも結構感じられる。更には"Whisper Not"で聞かれる両手で弾かれるラインは,Brad Mehldau的にも聞こえるのである(こう思えるのは,私がBrad Mehldauマニアであることだけでなないと思うが,それにしてもへ~って感じである)。

つまり,この人はコンテンポラリーな感覚を持ちながらも,ハードバップを得意とするか,あるいは好きなのだろうという想像ができるが,それにしても今までに聞いてきた彼のピアノとはちょっと質感が異なるように思える。力強さはハードバップをやっている時と同じような感じであるが,ここでは変拍子を多用しているということも影響しているかもしれない。だからと言ってメカニカルな印象が強いわけではないところは大したものだと思う。ただ,あんまり変拍子もやり過ぎると嫌味になりかねないので,まぁほどほどにしておいてくれればいいが。いずれにしても,この人に対する私のイメージを変化させるには十分な好演集。星★★★★。やはりイタリア・ジャズのレベルは高い。この人がもう少し成熟してきたときの演奏を改めて聞いてみたいものである。

だが,この人の次作はAlbore Jazzからのセクステットによるハードバップ・セッションらしいから,本質的にはやっぱりハードバップ好きなんだろうなぁ。

Personnel: Luca Mannutza(p), Gianluca Renzi(b), Nicola Angelucci(ds)
 

P.S. ブログのお知り合い,crissさんからトラックバックを頂いているのだが,ブログ間の相性が悪くTBが入ってこないので,crissさんの記事のURLを貼り付けておきます。

http://jazzlab.blog67.fc2.com/blog-entry-572.html

2010年2月 3日 (水)

Yesの栄光:久しぶりでもむちゃくちゃよかった"Yessongs"

Yessongs "Yessongs" Yes(Atlantic)

このアルバムを聞くのは本当に久しぶりである。こんなアルバムを聞く気になるのも,iPodのおかげである。これは思わぬ効用であり,今年の抱負,温故知新のためにはiPodは欠かせぬツールであるということがはっきりした。それはさておき...。

Yesの絶頂期に吹き込まれたライブ・アルバムである。LP時代は3枚組で,中学生だか高校生だかの私がこのアルバムを買うのは結構きつい出費だった。それがCD時代になって,随分と安く買えるようになったのだから,いい時代になったものである。ただ,LPの持つ質感やRoger Deanのイラストを楽しむという行為は,CDというパッケージでは到底無理ではあるが。いくらCDを紙ジャケ化したとしても,それは所詮はLPのミニ・レプリカに過ぎないのであって,このアルバムが本来持っていたボリューム感やビジュアル・イメージを再現することにはなるまい。

しかし,本題はそんなことではない。冒頭にも書いたとおり,私はこのアルバムを随分久しく聞いていなかったのだが,今回久々に聞いてみても,このバンドの当時の凄さというのは時代が変わっても不変だということを痛感させられた。通勤中に本作をiPodで聞いていたのだが,ついつい夢中になってしまった私である。後のCD再発期になって,「危機」のボーナス・トラックとして"Siberian Khatru"のラン・スルー(リハーサル)・テイクが収められたことがあったが,そこにはこのライブ盤の同曲のような緊張感は全く感じられなかったのだが,ここでの演奏は全く違うレベルに達している。そもそも,ライブでは再現不能だと思われていた彼らの演奏が何とも見事に行われていて,しかもライブの場でも緊張感が持続されているということ自体に驚きを感じざるをえない。

私はその後,90125Yesや8人Yesのライブは見ているが,遂にこのメンツでのライブを見ることはできなかった。だが,改めてこの音源を聞いて,この当時の彼らの演奏を生で見ていたら,私はそれこそ悶絶していたに違いないと確信した次第である。

まぁRick Wakemanのソロみたいに笑ってしまう部分もあるが,それも時代の成せる業である。アルバムのどこから聞いてもそれなりに楽しめる名ライブ作品として,傑作との感想を抱いた私である。これでもう少し音がよければと思うが,それはないものねだりということにしておこう。文句なしの星★★★★★である。そして強調しておきたいのは"The Yes Album"からのレパートリーの魅力である。「こわれもの」や「危機」の陰に隠れがちな3rdアルバムであるが,ここに入っている3曲を聞けば,彼らが既にクォリティの高い曲を書いていたことが実証されていると思う。同作も併せて高く評価したい。

Personnel: Jon Anderson(vo, g, perc), Steve Howe(g, vo), Rick Wakeman(key), Chrsi Scquire(b, vo), Alan White(ds, perc), Bill Bruford(ds, perc)

2010年2月 2日 (火)

Harrison Fordの役者としての品格を高めた傑作

Witness「刑事ジョン・ブック/目撃者("Witness")」('85,米,Paramount)

監督:Peter Weir

出演:Harrison Ford, Kelly McGillis, Josef Sommer, Lukas Haas, Danny Glover, Jan Rubes, Alexander Godunov

この映画も久しぶりに見た。私はこの映画が結構好きで,レーザー・ディスクも保有していたのだが,プレイヤーもディスクも実家に置きっぱなしで,何年も見ていなかった。しかし,別のDVDを購入するときに,なぜか無性に見たくなって抱き合わせで購入したものである。しかも1,000円しないし(爆)。

この映画のよい点は,サスペンスと牧歌的なものが絶妙にブレンドしていて,最初から最後までいい緊張感が保たれていることだと思っているが,何よりもHarrison Fordが適役好演である。よくよく考えてみればHarrison Fordはスター・ウォーズでブレイクして,その後,インディ・ジョーンズにも出て,この時には押しも押されぬ大スターである。ある意味,この映画は地味な部分もあるので,敢えて本作に出なくてもよいのではないかという部分もあるが,アクションばかりの人ではないというところを示していて,役者としてのHarrison Fordの品格を高めたと言っては褒め過ぎだろうか。

いずれにしてもアーミッシュ・カウンティという舞台そのものを選んでいるところが,この映画のある意味では凄いところだが,かつそれが嫌味になっていないところがたいへんよいと思っている。アーミッシュは移民当時の生活様式を維持している人たちだが,そうした人々の生活を描いている中で,Peter Weirの視点に棘は感じられない。そしてこの何よりも映画の後味を良くしているのがJan Rubes扮するEli LappがHarrison Ford扮するJohn Bookに最後に掛ける"You be careful out among them English."というセリフである。なぜこの映画に2度登場するこのセリフがいいのかということは是非映画を見て確認して頂きたいと思う。

かつ,この映画,続編ができてもよさそうなものだが,それをHarrison Fordが断ったらしいと聞いて,私はますますこの人が好きになったのであった。それは役者として正しい選択であったと感じるのは私だけではあるまい。私はほかのどの映画よりも,この映画のHarrison Fordがいいと思っているクチなので,点も甘くなり,星★★★★☆。こんなナイスな映画が,ネット上では1,000円しないで買えるのである。未見の方は一度見て頂きたい映画である。

それにしても,この映画に出てくるKelly McGillisは"Top Gun"と違い過ぎて,ある意味笑えるが,どっちが好きかと言えば,私の場合は間違いなくこっちである。

2010年2月 1日 (月)

地味な感じだが,フレージングは切れまくりのJerry Bergonziの新作

Three_for_all "Three for All" Jerry Bergonzi(Savant)

ここのところ,High Noteの傍系レーベルであるSavantからリーダー作を結構発表しているJerry Bergonziの新作である。またもSavantからのリリースであるが,前作"Simply Put"から半年あまりという短期間での新作発売には少々驚かされる。今回は前作のメンバーからピアノが抜けたトリオであるが,一部でBergonziによるソプラノとピアノがオーバーダビングされているのが珍しい。

それにしても雰囲気のあるジャケットである。こういうのは写真を見ているだけでも嬉しくなってしまうが,今回のBergonzi,録音のせいかテナーの音は結構ソフトにも聞こえ,一聴地味な感じも受けるのだが,よくよく聞いてみるとフレージングは切れている。これはドラムスのAndrea Micheluttiが叩きまくるのではなく,地味にバッキングしているせいもあるかもしれないが,やはりテナーをブイブイ言わせる感じではない。音圧で勝負というよりも,フレージングでの勝負のように思えるのである。バンドとしてのバトル的な感覚も濃厚ではないことも含めれば,このアルバムはリスナーを瞬間風速的に一気に興奮の坩堝におとしいれる魅力というよりも,何度かよ~く聞いてみないと,そのよさが伝わりにくい作品かもしれない。

曲は全曲Bergonziのオリジナルであるが,結構不思議な感じの曲が多い。美しいメロディ・ラインというよりも,即興演奏への導入部に過ぎないと言っては言い過ぎか。しかし,このアルバムを聞いていて思うのは,Bergonziには悪いが,これはBergonziの書いた曲を聞くためのアルバムではなく,あくまでもアドリブ・パートを楽しめばいいアルバムなのではないかと思えるのである。本作はピアノレス(本人によるオーバーダビングはさておきである)ということもあって,かなり自由度高く演奏しているように感じられるので,彼の即興の技を楽しむにはかなりいいのではないだろうか。ということでちょっと甘いかもしれないが星★★★★。

それにしても,2曲目のタイトルはずばり"Obama"である。Bergonziがベースとするボストンのあるマサチューセッツ州は圧倒的民主党の牙城なのだが,先日の上院議員の補選では共和党のScott Brownが勝利するという信じられない事態が発生した。Obamaを支持しているであろうBergonziの心中やいかに(全くの余談)。

Recorded in December 2008

Personnel: Jerry Bergonzi(ts, ss, p), Dave Santro(b), Andrea Michelutti(ds)

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