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2010年1月28日 (木)

"Orchestrion":これはPat Methenyの道楽か?

Orchestrion"Orchestrion" Pat Metheny(Nonesuch)

久しぶりのPat Methenyのアルバムである。このアルバムのポイントは,本作のタイトルともなっている楽器を自動演奏するOrchestrionの採用であり,それに乗せてPatがギターを弾きまくるという構図である。このOrchestrionという仕組み,当然のことながら,プログラムに応じて演奏されるので打楽器及び鍵盤系に使われるが,ベースをどのようにコントロールしているのかは謎である。

まぁ,そうした要素は抜きにしてこのアルバムを聞いてみると,どこから聞いてもMethenyサウンドであり,Orchestrionを使っているという情報がなければ,Pat Metheny Groupによる新作と言っても通用しそうな演奏である。また,マリンバやヴァイブの音を聞いていると,Steve Reichのように聞こえる瞬間もないわけではない。

Methenyはこうしたテクノロジーを使いながら,非常にまじめに演奏しているのが彼らしいと言えば彼らしい。例えば,プログラムでやっているんだから,しゃれで絶対に人間業では不可能なスピードで不可能なフレーズを作ってもいいようにも思えるが,決してそういうことはしていない。そういう姿勢は非常に好感度が高いのだが,皮肉な見方をすれば,どうしてこういうフォームで演奏する必要があるのかというのが,ライナーを読んでいても私にはピンとこないのである。私などは,バンド・サウンドとしてできるものを敢えてテクノロジーに頼る必要はないと思ってしまうのだが,彼の頭には,多重録音によるソロ・アルバム"New Chautauqua"で果たせなかったライブにおける再現が非常に重要だったのだろうというのはわかるし,実際にツアーも既にブッキングされている。しかし,ほかは全てプログラムされた中,Methenyのギターだけを聞くというのもどうなのかなぁと思ってしまう。Orchestrionを使ったライブってのは,Pat Methenyがなんだか誰も持っていないような高いおもちゃを自慢する子供のようにも思えてしまうと言っては暴言か。

ただ,Methenyがここで作っているサウンドには機械的な部分は全く感じられないので,別にこれを聞いていて不愉快とかそういう考えは一切ない。それでも,ここまで行ってしまうと,共演ミュージシャンなんていらなくなってしまうのではないか,あるいは生身の人間同士のライブなやり取りなんて不要なのかという考えが生まれてきてしまうのも事実であり,音楽好き,あるいはMetheny好きにとってはなんだか踏絵を踏まされているような気分になるのである。

私個人としては,ここでの音楽は相応に評価する(出来は悪くない)としても,やはり今後の音楽界のことを考えれば,これって決していいことではないのではないかと思ってしまうのである。これがMethenyの一時的な道楽ということならば別にかまわないが,昨年のBlue Note東京でのPMGのライブで感涙にむせんだ私としては,こんなことに金と時間を消費しているなら,さっさとバンドとして新譜を出して欲しいというのが本音である。ということで,私は彼のアルバムであるがゆえの極めて強いアンビバレントな感覚をおぼえてしまった。よって,これは評価するのがあまりに難しい作品であり,星をつけられない(嘆息)。

Recorded in October 2009

Personnel: Pat Metheny(g, orchestrionics)

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コメント

 音楽狂様、生身の人間同士のライブなやり取り、これこそ、一番の魅力です。
コールアンドレスポンスを人間同士で行う事が、原点であると、私は思っています。
 どんどん、便利でリアルな物が世の中に出てくると、人はいらなくても、同じような気分を体感することは出来ます。
Patの音色も人工的には作れるし、演奏も可能でしょうね。
でも、それはバーチャルな世界、と常に意識できる感覚が必要ですね。
 また、機械でしか演奏できないパートが入ることは、面白い試みで、非常に意味があると思います。
子供の頃に聴いたYMOの音は、強烈な印象がありました。

音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
昨日これを買おうかとショップに行ったところ、店内に流れていました。
とても普通のメセニー・サウンドで特に追っかけではないので止めました。
もっと人間臭いイタリア・ピアノ・トリオを買ってきました。
YouTubeでも映像みましたが、ちょっと打楽器がちゃらちゃらしているようにおもいますし、結局仕上がったサウンドを楽しむわけで、実験の息は出ていないのではとおもいました。

ひまわりさん,こんばんは。私がこのアルバムに強い違和感を覚えたのは,音楽って何のためにあるんだろうかという疑問もあったと思います。

ひまわりさんがおっしゃる通り,私も「コールアンドレスポンスを人間同士で行う事が、原点である」と思いますが,それが感じられないのを楽しめるほど私は非人間的でありたくないと思ったのが最大の要因だと思います。

私のレビューを見て,いろいろ思われる方もいらっしゃるとは思いますが,ひまわりさんのコメントを頂いてほっとしました。ありがとうございました。

monakaさん,こんばんは。「ちょっと打楽器がちゃらちゃらしている」というのは,使いやすいから多用した結果ではないでしょうかねぇ。

私はテクノも嫌いではないのですが,テクノにも人間臭さを感じさせるKraftwerkのようなバンドもあるわけでして,このアルバムは...やっぱり微妙だと思います。何度聞いてもあまり好きになれそうにはないです。

どこから見ても"pat metheyでございます"な音楽ではありますが、近年これほどまでに典型的なpat metheyサウンドが出ている音楽もなかったかなぁと..

YMOから音楽に入った身としては、生楽器でその発展形を実現したということも、賞賛感に繋がってます。

TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。

oza。さん,こんにちは。TBありがとうございます。

私もYMOは嫌いではないですし,テクノロジーの利用も全面的に否定するものではありません。しかし,私がこのアルバムにおぼえる違和感は,私がCG依存の映画を嫌う感覚と似ているかもしれません。

音楽としてはPat Methenyそのものだからこそ,私には微妙なのです。6月には来日もするそうですから,自分の目で確かめるのが一番の近道かもしれませんね。

中年音楽狂さん、こんにちは。

もうこれはメセニーの道楽以外の何者でもない、と思いますが、やっぱり成功者は金に物言わせて、信じられない道楽をやってのけるもんですね。うらやましい限りです。

でも、道楽もちゃんと芸術の域まで昇華させてしまうところが、メセニーのすごいところかなって、これを聴いて思いました。

monakaさんが言われている「打楽器がちゃらちゃらしている」という表現には思わず笑ってしまいましたが、ほんと、ちゃらちゃらしてますね。なんだかユーモラスでかわいらしい打楽器群に僕は愛着を感じましたが。

この盤、賛否両論あるようですが、僕は音楽そのものよりも、制作過程にすごく興味がありますね。
ぜひ、DVDを発売してもらい、ボーナス映像としてメイキング・フィルムを観てみたいです。

ということで、TB3本、いっきにいかせてもらいます。
では、また。

crissさん,こんばんは。珍しくTBは入りました。しかし一本だけですねぇ。必要ならリトライ願います。

私はこれはMethenyの道楽とは思いますが,これをライブでどう実現するのかを見たいと思う人たちの関心を誘って,ライブを満席にさせて,それでまた金を稼ぐんじゃんと思うと,どんどん冷めていく自分がいます。

やはり私はこれは音楽的な意義は別にして,評価はしたくないです。いずれにしても賛否両論があって然るべき音楽ですね。

機械の仕組みは分からないのですがコアにはパソコンを使っているのかな、と思ってみたり、それでも機械式だと調整が大変だよな、と思ってみたり。

でも、音楽がそういうことに関わらず、いつもの彼らしい曲なので、聴いていて安心できますね。

TBさせていただきます。

910さん,こんばんは。パリにやってまいりました。
このアルバムについては記事にも書きましたし,皆さんから頂いたコメントへの返信にも書かせて頂いていますが,音楽としては認めながらも,このフォームが本当に必要なのかという疑問はいまだに大きいです。
ですから,一定の評価はしたいのですが,やっぱり好きになれないというのが正直なところです。
こちらからもTBさせて頂きます。

お久しぶりです。2月21日にBarcelonaのL’Auditoriで行われたPat MethenyのOrchestrionのソロコンサートを観てきました。2時間半のコンサートのうち2時間はこのデバイスを使って演奏していました。仕組みを少し説明し、デモンストレーションしてもくれましたが、いまいち良く分からないですね。誤解を恐れずに言うなら、Yamahaが相当協力しているところを見ても、Yamaha Electoneの発想・技術を合成音でなく、本物の楽器でやってのけているということだと思います。でもって、多分、ギターを弾きながら、いろいろ各デバイス操作が出来るようになっているようです。また、インプロバイズしたメロディーを即座に察知しリズムをつけたり、コピーしたり出来るデバイスでもあるようです。これはもしかすると、ピアニスト兼指揮者がオーケストラとコンチェルトをやっている一人で掌握している高揚感が出て来るのかもしれません。デバイスから触発されるとも言って、結構嬉々としてやってました。過去の曲ではAntoniaとStranger in townを演奏しましたが、Antoniaは流石にデバイス演奏ではお粗末、しかしStranger in townはそれなりの出来。2作目を作るという噂もあり、まだまだ発展途上というかんじでしょうか。しかし、これはソロのスタイルを本当に変えるかもしれません。自分もPMGやPMT、Secret Story Liveが良かったと思っているのでこれを肯定はしませんが、ひょっとすると化けるかも。

カビゴンさん,お久しぶりです。これってライブで見れば,それなりに面白いのかもしれません。

また,Patが嬉々としてやっていたというのも目に浮かぶようですが,やはりこのプロジェクト,私には印象がよくないです。彼がバンド活動を停止して,これ一本にかけるぐらいならわかりますが,「もうけられるうちにもうけて,自分の熱が冷めればやめるんでしょ」と皮肉も言いたくなります。次作が出ても私は買いません。私は厳し過ぎるんですかねぇ。

はじめまして。いつも楽しみに拝見しております、ki-maといいます。先日jazz&drummerのnaryさんにもお知らせさせて頂いたのですが、ここ一年の私の音楽チョイスは主に中年音楽狂さんとnaryさんで成り立っております(笑)。非常に参考になり助かっているので私もと思い、始めてもうすぐ一年になります。更新はものすごく少ないのですが、今後もなんとか続けられそうなのでリンクを貼らせていただけたらと思いコメントしました。今後も楽しみにしておりますのでよろしくお願い致します。

ki-maさん,はじめまして。ようこそお越し下さいました。

私のチョイスってかなり雑食ですが,貴ブログを拝見しましたが,ki-maさんもジャズだけにとどまらず音楽をお聞きになっていることを認識できますね。リンクの件,了解です。早速対応させて頂きます。

中年音楽狂様

コメントありがとうございました。リンク貼らせて頂きました。今後もよろしくお願いします。

雑食と言いますがそこがまたいいところで。フュージョン系やロック系はもちろん、吉田修一まで出た時は本当に嬉しくなりました(4冊くらいしか読んでませんが)。自分も遠慮なく雑食で行こうと思っております。それでは今後も楽しみにしております。

ki-maさん,こんばんは。ご丁寧にありがとうございます。

世の中にはXXXX原理主義者というのは結構いますが,私は純粋に音楽が好きなので,実はジャンルは何でもいいんです。ただ,一番好きなのがジャズなだけってことですかねぇ。

引き続きご愛顧のほどをお願い申し上げます。

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