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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2010年1月31日 (日)

David Sanbornのソウルごころ

Only_everything "Only Everything" David Sanborn(Decca)

私は以前は結構David Sanbornに入れ込んでいたものだが,最近はR&B指向が強くなるとともに,彼もだいぶ枯れた感覚が強くなってきて,あまりアルバムも買わなくなっていたのだが,今回はDeFrancescoのオルガンにGaddのドラムスという編成で,極めてアーシーな音がしそうなので,久々のSanborn盤購入となった。

そもそもこのアルバムは,Ray Chales及びHank Crawford,David "Fathead" Newmanへのオマージュであるからソウルフルなのは当たり前であるが,一時期のスタイリッシュなSanbornを想像すると,随分とイメージは異なっている。現在のSanbornのファン層は昔と変わらないのか,あるいは新たなファン層を開拓しているのかはわからないが,私はソウル・ミュージックも好きなのでこういうのもOKである。若干,録音のせいかアルトがキンキン響くような感覚もあって,本来ならもう少し泥臭いミキシングでもいいのではないかと思うが,それでもフレージングもサウンドも一発でSanbornとわかるのは,やはりこの人のスタイリストぶりを実証しているということにはなろう。とにかく,全編に渡ってここまでソウルフルなSanbornというのは,私の記憶にはない。

一方で不満もないわけではない。せっかくSteve Gaddが全編で叩いているのだから,彼のドラミングを活かしたスリリングな展開があってもいいと思うし,Joey DeFrancescoのオルガンにはもう少し黒さを感じさせて欲しいとも思う。そんな中で,そうしたサウンドを一発でブルージーな世界に引き込むJoss Stoneのヴォーカルは大したものだといいたい。とてもまだ22歳とは思えぬ本物のソウルを感じさせるシンガーである。ということで,ベスト・トラックは彼女が参加した"Let the Good Times Roll"である。もう一人のゲストであるJames Taylorは私にはミスキャストのように思える。もともとこの人は私は好きだが,ここで演奏されるようなR&Bやソウル的な音楽とはアンマッチだろう。

ということで,評価は微妙であるが,ちょいと甘めの星★★★☆ぐらいにしておこう。でも私にとってのSanborn最高作は今も昔も"Straight to the Heart"であることには変わりはない(同作に関する記事はこちら)。

しかし,この編成,サックスはテナーとアルトの違いはあるが,こやぎ@でかいほうさんの放し飼いトリオと一緒ではないか。それにしては全然サウンドがちゃいますなぁ(笑)。

Personnel: David Sanborn(as), Joey DeFrancesco(org), Steve Gadd(ds), Bob Malach(ts), Frank Baslie(bs), Tony Kadleck(tp), Mike Davis(b-tb), Joss Stone(vo), James Taylor(vo), Gil Goldstein(arr)

2010年1月30日 (土)

記事を書いている時間がない!

最近仕入れたiPod Classic 160GBのおかげで,いろいろな音源をせっせと電車の中で聞いているのだが,いかんせん記事を書いている時間がない。

明日には何かをアップできるよう頑張ります。ということで,今日は開店休業。

2010年1月29日 (金)

Lee Ritenourらしいフレージング大爆発

Captains_journey "The Captain's Journey" Lee Ritenour(Elektra)

懐かしいアルバムである。日本ではJVCが1977年にダイレクト・カッティング盤"Gentle Thoughts"(私がブログを開設してすぐぐらいに書いた本作に関する記事はこちら)と"Sugarloaf Expressを立て続けにリリースして,一気にブレイクしたLee Ritenourだが,本国側の活動において,その本領を発揮しはじめたのは私はこのアルバムからだと思っている。Epicの2作が悪いとは言わないが,まだまだあちらは青いというか,個性が希薄に感じられるが本作は違う。これはプロデュースをRitenourとDave Grusinが行ったものだが,契約関係さえなければ,GRPレーベルから出ていても全く不思議ではないし,アレンジにもGrusinが深くかかわっていることもあって,彼のカラーがかなり濃厚に出ているのが特徴である。

そうした中で,日本のリスナーとしてはJVC版"Sugarloaf Express"に収められていたそのタイトル・トラックと,"Morning Glory"の再演が気になるところであるとともに,出たのは日本の方が先だったぜということで,嬉しくなる部分もあろう。私としても,昔LPで聞いていた頃は,この2曲が入っていたA面を聞くことが多かったのだが,今回,久しぶりに聞いてみて,LPならB面に相当する後半4曲の方がいいのではないかと思えてきた。

LPのB面冒頭を飾った"Matchmakers"は,私の古い記憶が正しければ,「プロポーズ大作戦」(フィーリング・カップル5対5の方であって,決してTVドラマではない。それにしても古っ!)の何らかのコーナーのBGMでこの曲が使われていたような気もするのだが,その頃から気になっていた曲ではあった。また,誰が聞いてもSteve Gaddのドラミングも鋭い次の"What Do You Want?",更にPatti Austinのヴォーカル版も素晴らしかった"That's Enough for Me"(彼女のヴァージョンの記事はこちら)を洗練されたインストで聞かせる6曲目,そしてしっとりとしたクロージングとなる"Etude"と,このアルバムの構成はかなりいいと思う。

もはや時代を感じさせるサウンドと言うこともできる部分はあるが,今でもこのアルバムは結構魅力的である。いずれにしても,コンプレッサーを使ったテケテケ・ピッキングやカッティング,更にはフレージングと,Ritenourらしさ満載のアルバムと言ってよいが,オールラウンド・プレイヤーとしての彼らしさというのもよくわかるアルバムと言えると思う。その後もRitenourは結構な作品を残しているが,こうした70年代後半での彼のアルバムとの出会いがなければ,その後,私が相当数の彼のアルバムを買うことはなかっただろう。そういう意味も含めて,私はこのアルバムをかなり評価しているクチである。ということで星★★★★は十分付けられる。

まぁ,普通釣り上げられているのはサメかカジキでしょうってところに,ES335が釣り上げられているというこのジャケットはどうなのよって気がしないでもないが。

Personnel: Lee Ritenour(g, g-synth), Dave Grusin(p, key, synth, perc), Don Grusin(p), David Foster(p, key), Patrice Rushen(key), Ian Underwood(synth), Jay Graydon(g), Mitch Holder(g), Anthony Jackson(b), Abraham Laboriel(b), Steve Gadd(ds), Alex Acuna(ds, perc), Paulinho Da Costa(perc), Sue Evans(perc), Steve Forman(perc), Steve Thornton(perc), Larry Rosen(perc), Ernie Watts(ts, ss), Eddie Daniels(fl), Dave Valentin(fl), Ray Beckenstein(fl), Bill Champlin(vo), Patti Austin(vo), Tom Baylor(vo), Venette Gloud(vo), Carmen Twillie(vo), David Nadien(strings), Ed Walsh(prog)

2010年1月28日 (木)

言うに事欠いて何を言うのかと思わせる政治家の話

Sekou鳩山由紀夫首相の幸夫人が日本ジュエリードレッサー賞特別賞を受賞し、授賞式に出席したことについて、自民党の世耕弘成参院議員が28日の参院予算委員会で、「不謹慎」とやり玉に挙げたそうである。曰く,世耕氏は「婦人はファーストレディー。国民の感覚とかけ離れている」と批判したのだそうだ。でも彼女は元タカラジェンヌである。いい意味でも悪い意味でも,そもそも一般国民の感覚と同じに捉えられるわけがないのだが,こんなことを予算委員会で指摘することに何の意味があるのか。

だいたい,この世耕議員,父は近大理事長,祖父は元経企庁長官,伯父は元自治大臣という家系であるから,典型的ボンボンではないのか。庶民の私としてはそうした自分のことは棚に上げておきながら,「あんたに国民の感覚とかけ離れているなんて批判できるのか」と言いたくなってしまった。この人の名前でググってみれば,こんな写真がすぐ見つかるぐらいだというのがふざけていると思うが...。こんなあほくさい議論を国会でやっていること自体が国民をばかにしているとこの人には自覚して欲しいもんだ。これこそ時間と金の無駄である。国民の血税を何だと思っているのか全くわからないこの新聞記事を読んでいて非常に不愉快である。これではいくら民主党政権が失策を重ねても,普通の人間でも自民党に投票する気にはならんわ。レベル低過ぎ。

"Orchestrion":これはPat Methenyの道楽か?

Orchestrion"Orchestrion" Pat Metheny(Nonesuch)

久しぶりのPat Methenyのアルバムである。このアルバムのポイントは,本作のタイトルともなっている楽器を自動演奏するOrchestrionの採用であり,それに乗せてPatがギターを弾きまくるという構図である。このOrchestrionという仕組み,当然のことながら,プログラムに応じて演奏されるので打楽器及び鍵盤系に使われるが,ベースをどのようにコントロールしているのかは謎である。

まぁ,そうした要素は抜きにしてこのアルバムを聞いてみると,どこから聞いてもMethenyサウンドであり,Orchestrionを使っているという情報がなければ,Pat Metheny Groupによる新作と言っても通用しそうな演奏である。また,マリンバやヴァイブの音を聞いていると,Steve Reichのように聞こえる瞬間もないわけではない。

Methenyはこうしたテクノロジーを使いながら,非常にまじめに演奏しているのが彼らしいと言えば彼らしい。例えば,プログラムでやっているんだから,しゃれで絶対に人間業では不可能なスピードで不可能なフレーズを作ってもいいようにも思えるが,決してそういうことはしていない。そういう姿勢は非常に好感度が高いのだが,皮肉な見方をすれば,どうしてこういうフォームで演奏する必要があるのかというのが,ライナーを読んでいても私にはピンとこないのである。私などは,バンド・サウンドとしてできるものを敢えてテクノロジーに頼る必要はないと思ってしまうのだが,彼の頭には,多重録音によるソロ・アルバム"New Chautauqua"で果たせなかったライブにおける再現が非常に重要だったのだろうというのはわかるし,実際にツアーも既にブッキングされている。しかし,ほかは全てプログラムされた中,Methenyのギターだけを聞くというのもどうなのかなぁと思ってしまう。Orchestrionを使ったライブってのは,Pat Methenyがなんだか誰も持っていないような高いおもちゃを自慢する子供のようにも思えてしまうと言っては暴言か。

ただ,Methenyがここで作っているサウンドには機械的な部分は全く感じられないので,別にこれを聞いていて不愉快とかそういう考えは一切ない。それでも,ここまで行ってしまうと,共演ミュージシャンなんていらなくなってしまうのではないか,あるいは生身の人間同士のライブなやり取りなんて不要なのかという考えが生まれてきてしまうのも事実であり,音楽好き,あるいはMetheny好きにとってはなんだか踏絵を踏まされているような気分になるのである。

私個人としては,ここでの音楽は相応に評価する(出来は悪くない)としても,やはり今後の音楽界のことを考えれば,これって決していいことではないのではないかと思ってしまうのである。これがMethenyの一時的な道楽ということならば別にかまわないが,昨年のBlue Note東京でのPMGのライブで感涙にむせんだ私としては,こんなことに金と時間を消費しているなら,さっさとバンドとして新譜を出して欲しいというのが本音である。ということで,私は彼のアルバムであるがゆえの極めて強いアンビバレントな感覚をおぼえてしまった。よって,これは評価するのがあまりに難しい作品であり,星をつけられない(嘆息)。

Recorded in October 2009

Personnel: Pat Metheny(g, orchestrionics)

2010年1月27日 (水)

東野圭吾のピカレスク小説

Photo_2 「白夜行」 東野圭吾(集英社文庫)

先般読んだ「新参者」が結構よくできていたので,地方出張の友として購入した文庫本である。まずはその厚さ(860ページ)に圧倒されるが,これが結構読みだしたら止まらないタイプの本で,あっという間に読み終わってしまった。私が飛行機に乗っている間,ずっと本を読んでいるなんてのは珍しいが,この本はそうした例外事象を発生させたのである。

一言で言えば,これはピカレスク小説だろうが,なぜ主人公が犯罪に走るのかという主体的動機の部分や主人公の心理は一切語られず,発生する事象によってのみ主人公の心の闇が描かれるという感じになっている。途中から謎めいた部分はほとんどなくなっていくが,非常に多様な登場人物を一本の筋書きによくまとめたものだと思う。

そうしたことを評価しつつも,この本はページをめくらせる力には溢れているのだが,あまりにストーリーが極端過ぎて,さすがにこれはないだろうと思わないこともない。更に,大団円に向かっての性急なストーリー展開は,結末を急いだという気がするのである。しかも相当後味は悪いので,この本に対する評価はかなり分かれるのではないかと思う。私としては星★★★☆ぐらいだと思っているが,この救いのなさってのはやはりきつい。

それにしても,この小説は以前ドラマ化されていたようなのだが,どのように脚色されていたのか気になるところである。でも女性主人公を演じるのが綾瀬はるかってのはこの作品のイメージとはだいぶ違うように感じるのだが...。でも見てないので何とも言えない(爆)。

2010年1月26日 (火)

小曽根真参加のGary BurtonのECM作

Whiz_kids"Whiz Kids" Gary Burton Quintet(ECM)

このアルバムの国内盤が出た頃は「神童」なんてタイトルがついていたが,原題からすれば「有能な若手を集めた」アルバムってところか?その有能な若手とは小曽根真とTommy Smithってことになるのだろう。小曽根真がBerkleeでGary Burtonに師事していたのはよく知られた事実だが,小曽根がECMレーベルにおいてGaryのバンドで録音したのは本作と"Real Life Hits"のみのはずである。早いものでこのアルバムが出てから既に20年以上の年月が経過してしまった。今や小曽根は日本を代表するピアニストの一人となったと言ってもよいだろうが,そうした彼の活動を振り返る意味で久しぶりに聞いてみた。

本作で小曽根は2曲のオリジナルを提供しているが,2曲目の"Yellow Fever"なんて,リズムのせいもあるかもしれないが,まるでChick Coreaの曲のようで微笑ましい限りである。もう1曲の"La Divetta"もどこかで聞いたような感覚を覚えさせる曲であり,こういうのを聞いていると小曽根も発展途上だったのかと思わせるようなサウンドである。それでも,小曽根は結構なソロ・スペースを与えられており,Burtonの信頼も厚かったのだろうと思わせる演奏ぶりである。

もう一方のTommy Smithだが,この人のサックスがGary Burtonの繊細なヴァイブの響きとマッチしているかというと私は疑問を感じる。そもそもTommy Smithでなくても,Burtonとサックスの組み合わせはあまり成功しているとは思えないのだがどうだろうか。同じECMで後年Arild Andersenのライブ盤で聞いたTommy Smithは結構良かった(記事はこちら)から,これはバンド・サウンドとの相性だとしか思えないのである。

アルバム全体を聞いていても,そうしたサックスとのアンマッチがやはり私としてはどうも気持ちが悪い。ただ,サックスの音が消えると,いつものGary Burtonだなぁって感じになるというのが正直なところである。それが冒頭の"The Last Clown"から最後のChick Corea作"The Loop"まで変わらない印象であった。ということで,全体的に見れば悪くはないが,もろ手を挙げて推奨しかねるという意味で,星★★★が精一杯って感じの出来である。いずれにしても,Gary Burtonを聞くならこのアルバムからというものではない。

それにしても,このアルバムの5曲目はChristian Jacobのオリジナルだが,彼も当時で言えばまだ20代ではあったものの,Berkleeで教鞭を取っていたらしいから,その縁での採用かもしれない。いずれにしても,Burtonのボストン人脈ってよくよく見てみると面白いと思う。

Recorded in June 1986

Personnel: Gary Burton(vib), Tommy Smith(sax), 小曽根真(p), Steve Swallow(b), Martin Richards(ds)

2010年1月25日 (月)

Ulf Wakenius:Keith Jarrettを弾く

Notes_from_the_heart "Notes from the Heart" Ulf Wakenius(ACT)

Ulf Wakeniusと言えば,このブログではファンク・アルバム,"Grafitti"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,一般にはOscar Petersonとの活動で知名度が上がった人だと思う。しかし,このアルバムを聞いていると,この人の本質はどこにあるのかよくわからなくなるような美的なサウンドに溢れ,この多様性はBebo Ferraとも共通しているように思えてくる。

これはそのUlf WakeniusがKeith Jarrettの曲ばかりをギター・トリオで演奏したアルバムであるが,先日,中古盤屋でゲットしてきたものである。このアルバムを聞いて思うことは,Wakeniusの弾くギター・サウンドはそれだけでも美しいのだが,その素材となったKeithの書く曲,あるいは純粋即興の部分が極めて美しいメロディ・ラインを持っていることが際立っているということである。最近は純即興か,スタンダードしかやらなくなって,(書かれた)オリジナルを演奏する機会というのはめっきり減ってしまったKeithだが,こういう曲を聞かされると,十分魅力的な曲ばかりなのだから,またオリジナルを演奏してくれないものかと思いたくなるのは私だけではないはずだ。

そうした素材のよさはあるとは言いつつも,ここはWakeniusのまさにタイトル通りに心のこもった演奏ぶりをほめたい。ちゃんとトリビュートしようという精神が,ちゃんと演奏に表れていると言うべきであり,助演陣も出しゃばり過ぎず,つつましいのが好印象。そこはかとなくPat Metheny的なサウンドも思わせる部分もあるが,Methenyがスローな曲を演奏する時と同様,メロディを紡いでいくような感覚が絶妙である。へなちょこギタリストの私でも,思わずコピーをしたくなるような演奏だと思ってしまった。

演奏については,一聴するとスイートな感覚を覚えるものの,甘さ一辺倒ではなく,ハーフ・ビターという感じのほどよい甘さに私には感じられた。これはおそらく私の好みに合っているからそう感じるのだろうが,いずれにしても結構これって私のスイート・スポットだなぁと思い,ついつい点も甘くなって星★★★★☆。Wakeniusと言えば,記事にもしないでほったらかしの"Love is Real"も素敵なアルバムだったので,さっさと記事をアップせねば。

ちなみに,この作品,オスロのレインボー・スタジオで録音されており,エンジニアはお馴染みJan Erik Kongshaugである。なるほど,ECM的な響きも感じられるのは当然である。ECMは昔はギタリストの宝庫であったから,昔だったらWakeniusのアルバムがECMから出ていてもおかしくないが,この企画はManfred Eicherは認めないだろうな(余談)。

Recorded on March 21 & 22, 2005

Personnel: Ulf Wakenius(g), Lars Danielsson(b, cello, p), Morten Lund(ds)

2010年1月24日 (日)

久しぶりに「ダーティハリー2」を見た

Magnum_force「ダーティハリー2(Magnum Force)」(米,'73,Warner Brothers)

監督:Ted Post

出演:Clint Eastwood, Hal Holbrook, Mitchell Ryan, David Soul, Felton Perry

私はこのブログで,自分がClint Eastwood,ひいてはオリジナル・ダーティハリーのファンであることは書いたことがある(記事はこちら)。結局このシリーズ,第5作まで作られたが,シリーズ物の常として,第1作を凌駕することは難しいというのを実証しているような気がする。それでも,先日,別のDVDを買おうと思ってショップをうろついていたら,このDVDも結構なディスカウントで売られていたので,ついつい買ってしまった。

私がこの映画を初めて見たのは,「ダーティハリー」との2本立てだったと記憶しているが,そのときにも,一本目との落差があまりに大きくて,子供心にもこりゃいかんと思ったはずである。そもそもエピソードを詰め込み過ぎたシナリオがいけていないというのもあるし,ストーリーにも明らかに説明不足の点があるように思える。これは私がDVDを見たとき,半ば酩酊状態だったということもあるかもしれないが,それにしてもである。エピソード満載という点では,第1作も同じではないかという声もあろうが,あれにはまだ連続性というものがあったと思えるが,ここでのJohn MiliusとMichael Ciminoという後に監督業に転じる二人による脚本は,Eastwoodの魅力を見せようという気持ちはわかるとしても,どうも辻褄が合わないのである。更にそれに輪をかけるのが,Ted Postのスピード感のない演出である。この人,キャリアとしても「奴らを高く吊るせ」だの,「続・猿の惑星」だのと大した作品は残していないが,やはりこれでは駄目だろうと思わせる出来である。だいたい,ロンバード・ストリートがサンフランシスコの名所だというのはわかるが,あそこでカーチェイスのシーンを撮ろうなんてのが浅はかと言わざるをえない。真っ当な監督なら,脚本を変えるだろう。

この当時のEastwoodは40代半ばで,カッコよさではピークにあったと言ってもよいが,残念ながら,映画がこの出来ではその魅力を十二分に発揮したとは言えない。しかしながら,このパッケージに写っている写真は射撃大会のシーンからだと思うが,この苦み走った表情なんて,映画の出来はさておきしびれるねぇ。Eastwoodに免じて星★★とするが,これに比べれば第3作はまだましだったように思えてくる(ちなみに,第4作,最終作は見てもいない)。まぁ,安かったからいいけれども,やはりこのシリーズ,第1作に限るわ。

2010年1月23日 (土)

こんなんも出ました:Cate Brothers

Cate_brothers "Cate Bros." Cate Brothers(Asylum/Wounded Bird)

Cate Brothersと言って,知っている人も少なくなってしまったのではないかと思うが,このバンドのロゴって懐かしいなぁと思う中年以上のリスナーもいるのではないか。いずれにしても堂本ブラザーズ・バンドの名前の出自はAllman Brothersか,Cate Brothersのどっちかである(爆)。

Cate_bros_back EarlとEarnieの双子の兄弟(裏ジャケに写る二人を見よ!当たり前だがそっくりだ。)によるCate Brothers Bandのデビュー・アルバムはず~っと廃盤だったと思うが,発掘盤の宝庫,Wounded Birdレーベルから,初期の作品がまとめてリイシューされた。私は実は彼らの音楽を聞いたことはなかったのだが,ジャケだけで懐かしくて,このアルバムを買ってしまった。

私にとってCate Brothersの名前が摺り込まれているのは,Levon HelmがRCO All Starsで来日した時に,Booker T. JonesやDr. Johnの代わりに彼らが来日したということだけであるが,件のLevonのアルバムが異常に好きな私としては,妙にその事実だけが記憶に残ってしまったのである。更に,その後,Robbie Robertson抜きのThe Band再編にも関わったことからすると,彼らの音楽性というのはそのあたりがスイート・スポットになるのだろうと考えるのが筋である。

しかし,このアルバムから聞こえてきたのはちょっと違うタイプの音楽である。どちらかと言うとシティ・ポップにディスコ・テイストも絡めたいかにも70年代半ばの音である。う~む。デビュー・アルバムということもあって,セールスを意識したのかもしれないが,これが彼らの本質とはとても思えない。だって,RCO All Starsの音はもっと泥臭いものであったし,彼らのベースであるアーカンソーという場所ともどうもうまく結び付かないのである。

まぁこういう音楽を聞いて,私としては別に反感を覚えるということもないのだが,自分が持っていたイメージ(所詮は予断ということになるが...)とのギャップに悩んでしまったというのが正直なところである。また,このアルバムがSteve Cropperプロデュースだから,イメージの相違がますます大きくなってしまうこともあるのも事実である。さすがにLevon Helmが参加した"Standin' on a Mountain Top"なんてのはレイドバックした感覚もあるだけに,どうもなぁ。ということで,私としてはイメージに比較的近いのがこの曲と,9曲目の"Lady Luck"ってところなのではちょっと厳しい。悪くはないが,この程度なら星★★☆で十分であろう。

尚,Ernie Cateが弾いているElkaってのはイタリア製のシンセサイザーだそうである。ならSysthesizerってクレジットでいいじゃんと思ってしまったが,昔だったらヤマハのシンセが敢えてDX7なんてクレジットされていたようなものか(また余談を書いてしまった)。

Personnel: Ernie Cate(vo, key, synth), Earl Cate(g, vo), Steve Cropper(g), David Foster(p, key, synth), Carl Marsh(synth), William (Smitty) Smith(org), Scott Edwards(b), Klaus Voorman(b), Leeland Sklar(b), Bob Glaub(b), Maichel Baird(ds), Eddie Greene(ds), Levon Helm(ds), Nigel Olsson(ds), King Errison(perc), Gary Coleman(vib, perc), Brooks Hunnicut(vo), Maxine Willard(vo), Julia Tillman(vo), Terry Cagle(vo)

2010年1月22日 (金)

Shane Theriotによる泥臭いロック・インスト

Dirty_power"Dirty Power" Shane Theriot(Shose)

某ショップをうろついていたら,何ともいかしたギター・インストが聞こえてきた。ロック・ギター・インストと言えば,Jeff Beckだったり,このブログで取り上げたMark Bonilla(記事はこちら)等が代表格であるであるが,彼らの音楽とはだいぶ趣が異なり,だいぶこちらは泥臭い。本人のBioを見てみると,ニューオリンズ出身で,Neville Brothersなんかと共演しているようである。泥臭いわけだ。

サウンドもいけているが,私が気をひかれたのが,Jim Keltner,Little FeatのRichie Hayward等に加え,Sonny Landrethが参加しているという店のポップであった。このギター・サウンドにLandrethのスライドがかぶるとどういうことになるのかということで,思わず購入してしまった私である。通常,このジャケにこの字体では買う気を起さないところだろうが,これは完全に音にひかれて買ってしまったが,まんまとショップの作戦にはまっていると思わず苦笑してしまった。このサウンド,ある意味ジャム・バンドっぽいところもあるかもしれないが,ここで聞かれるファンク/ロック・フレイバーはジャズ界のジャム・バンドとは完全に一線を画していると言ってよいだろう。

それにしても全編ノリノリである。こんなものをライブでやられたら疲れて大変なことになってしまうのではないかと思うが,これはこの手のサウンドが好きなリスナーが聞いたらはまること間違いなしである。しかも音圧が強烈で,かなりのレベルでミキシングされているから,それがこのノリを増幅させている。

そして注目のSonny Landreth参加の"Mr. Ed"であるが,Landrethのスライドはさすがの貫録である。最近ではもう一人のスライド名人Derek Trucksの陰に隠れてしまった印象は否めないが,やはり彼のスライドは素晴らしいと認識させる技である。私なんかこれだけでもOKと言っては大袈裟だが,それぐらいよい。

ほかの曲も本当にノリのよさは抜群であり,中年の私でも思わず上半身をゆすりたくなるようなグルーブである。これだけのグルーブなので,ホーン・セクションなしで勝負してもよかったように思えるが,まぁあったから絶対ダメってわけでもないので,それはそれでよいが,B3を更に活用すると私の評価はもっと上がっていたかもしれない。ただ"Memphis"という曲は結構浮いているのは気になるが...。

もちろん,これが後世に残るような名作というつもりはないが,人間の特定の神経を確実に刺激するアルバムではある。ちょっと後半はだれ気味になるものの,刺激的なところを評価して星★★★★。それにしても今日日,本作のように収録時間が40分に満たないCDってのもある意味珍しくなってしまった(全くの余談)。

Personnel: Shane Therio(g, b, perc), Sonny Landreth(g, electronics), Johnny Neel(org, key, hca, vo), David Torkanowsky(org, key), "Hutch"Hutchinson(b), Adam Nitti(b), Jim Keltner(ds, perc), Doug Belote(ds), "Zigaboo" Modeliste(ds), Richie Hayward(ds), Johnny Vidacovich(ds), "Big Sam" Williams(tb), Mark Braud(tp), Roderick Paulin(sax), Kirk Joseph(souza)

2010年1月21日 (木)

追悼,Eric Woolfson

Woolfson_2 雑誌を読んでいて知ったのだが,Eric Woolfsonが腎臓がんのため,2009年12月2日に亡くなったそうである。Woolfsonと言えば,言わずと知れたAlan Parsons Projectのキー・メンバーであったが,これでAPPの復活の夢は完全に断たれたことになる。

今にして思えば,Eric Woolfsonの声というのはまさにワン&オンリーだった。64歳とはあまりに若過ぎる死である。今日は彼らのアルバムを聞いて彼を偲ぶことにしよう。

Steve Grossman:90年パリ録音のリイシュー盤

Reflections"Reflections" Steve Grossman(Emarcy)

先日,ショップをうろついていて購入した1枚である。1990年に録音されたアルバムに未発表音源を3曲プラスして再発になったものとのことである。

ピアノレスのトリオでテナーを吹きまくるというのはGrossmanによくあるスタイルだと思うが,私にとってこの頃のGrossmanはキレまくりというよりも,悠揚にテナーをブローするというイメージで,ここでもそんな感じの演奏が展開されている。それでも,ソロのそこかしこで聞かれるフレーズなんて,十分凶暴ではあるが。

Grossmanに関しては,私の同僚,こやぎ@でかいほうさんの意見を拝聴するに限るのだが,このアルバムの評価はどんなもんなのだろうか?このアルバムは,ライナーによるとお忍びでパリに来ていたGrossmanをひっ捕まえて,急ぎで録音したものということだが,お忍びだろうがなんだろうが,楽器は手放さないのねぇ(Tom Harrellもそうだったが,プロなら当たり前か)。

私がGrossmanに感じる悠揚さというのは,Grossmanが選択する曲のテンポによるものが大きいのかもしれない。このアルバムでもテンポはミディアムが多いが,"In Walked Bud"あたりのGrossmanのキレ具合ってのはなかなかいいねぇ。しかし,このアルバムで私がほれぼれしてしまったのはMal Waldron作のバラッド"Soul Eyes"である。これぞ男の中の男って感じの演奏ではないか。まさにハードボイルドである。追加曲の"A Foggy Day"なんてGrossmanに合っているとは思えない選曲もあるが,ここはこの"Solul Eyes"に浸りきりたい私である。更に追加曲の"Ray's Idea"はテンポを上げて飛ばし,一瞬"Manteca"のフレーズを引用するのも楽しい。

それでもってラストは真っ当にテーマを吹かず,アドリブで展開する"I Fall in Love Too Easily"で締めるってのはカッコよすぎだよなぁ。でもやっぱりこのアルバムの白眉は"Soul Eyes"である。星★★★★。

Recorded on September 16, 1990

Personnel: Steve Grossman(ts), Alby Cullaz(b), Simon Goubert(ds)

2010年1月20日 (水)

Bebo Ferraの新譜を聴く(2)

Luar"Luar" Bebo Ferra(EGEA)

このアルバムはまさに室内楽的な響きに満ちている。特にチェロが参加している曲(パート)ではどこまでが書かれていて,どこからが即興なのかの境界線がよくわからないと言ってもよい,と言うよりもむしろアドリブはほとんどないのではないか。そして,そこに感じられるそこはかとない哀愁。まさに古いイタリア映画を見ているかのような感覚さえ覚えさせられると言ってよい。これが本当にDevil Quartetと同じギタリストなのか!とまたまた思わされてしまう私である。このアルバムに収められた曲はBebo Ferraのオリジナルのようなのだが,この人の頭の中はどうなっているのか。某ブート・サイトでDevil Quartetの2009年のライブの音源をゲットしたばかりの私は混乱させられるばかりである。

まぁそうしたことを抜きにして,この作品を聞けば,映像に付随して聞かされるとより魅力的に感じさせられるのではないかと思う。基本的には哀愁に満ちた曲が多いが,3曲目の"L'alba di Yousif"のようにジャズ・ミュージシャンとしてのFerraやRita Marcoutulliの本性が現れてくるやや激しい曲もある。しかし,全体的に見ると,それぞれの曲を映画のシナリオに当てはめて使うことができるように感じてしまうほど,映画音楽的と言ってよいのではないか。出来のよいイタリア映画のバックに流れていたら,絶対はまるタイプの音楽である。

だが,そうした要素はジャズという音楽の中で考えると必ずしもポジティブな要因ばかりとはなならない。コンベンショナルなジャズに対するこだわりを持つリスナーにとっては,こんなもんはジャズではないという反応になることは間違いない。だが,私はジャズ原理主義者ではないので,ジャズというカテゴリーにこだわらずにいい音楽,美しい音楽として聞けばいいのではないかと思う。でもやっぱりBebo Ferraって不思議と思いつつ,星★★★☆。

尚,このアルバム,不思議なことにボーナス・トラックという表示があるものの,曲名も何も書いていない。iTunesでこのアルバムをダウンロードしようとするとボートラである9曲目の曲名は"Bonus Track"となっているのが笑わせてくれるが,これなんかまさに映画のエンディングのクレジット・ロールのバックで流れていても全く不思議はないような曲である。ここまで隠すのはもしかして著作権対策?(笑)

Recorded in April, 2008

Personnel:Personnel: Bebo Ferra(g), Rita Marcotulli(p), Marco Zdecimo(violoncello), Raffaello Pareti(b)

2010年1月19日 (火)

来日目前!Wayne Krantz温故知新:Seperate Cages

Separate_cages "Seperate Cages" Wayne Krantz / Leni Stern (Alchemy)

今年2月の来日を前に,Wayne Krantzに入れ込む状態が強化されている私だが,これは90年代にLeni Sternと吹き込んだデュオ・アルバムである。このアルバムは,日本では結構入手しづらい(と言っても,若干高いだけで,入手困難というほどではない)ので,アメリカから飛ばしたものだが,廃盤じゃなくてよかった~。

同じギター・デュオでも一昨日記事にしたBebo Ferra / Massimo Ferraとは随分違って,こちらはサウンドとしてアメリカ的感覚が強い。と言っても,Leni Sternはドイツ生まれだが,渡米後ほぼ20年という時間を経過して録音されたこのアルバムで聞かれるサウンドは,もはやアメリカに同化していると言ってよいだろう。なんてたって,ドブロも弾いているぐらいだし。

ここでの注目のポイントはKrantzがエレクトリックはテレキャス,ストラト,バリトン・ギターを使い分けながらも,多くの曲でアコースティックを演奏していることであるが,いつものエレクトリックの感覚とはかなり違う印象を与えながら,実はこれがかなりいけている。ジャケを見ると,私の保有しているMartinの000C16シリーズに似たギターをKrantzが弾いているが,フレットのインレイを見ると,もっと上のシリーズだな。だって,音が違い過ぎるし...(私とは腕も違うから当たり前だが)。

それはさておき,この作品,ジャズ的あるいはフュージョン的なフレイバーは希薄である。むしろ,歌が2曲入っていることもあって,フォーク的なタッチが強く感じられるとともに,サウンドもインティメイトなので,現在のKrantzのぶっ飛びぶりからするとだいぶ印象が違う。極論すれば,これがショップでフォーク/SSWのカテゴリーの棚に置いてあっても,全然不思議ではない。よって,この作品に現在のKrantzを期待して聞いたならば,首をかしげてしまうリスナーがいてもそれは全く不思議なことではない。しかし,こうした音楽的なバックグラウンドの積み重ねが,現在のKrantzにつながっているのだと考えれば,それはそれで興味深い事実として捉えなければならないだろう。

その上で,言ってしまうが,私はこのブログにフォーク/SSWなんてカテゴリーも持っている人間なので,こういう音楽も全くOKというか,むしろ好きである。これをKrantzがやっているから意外性があるだけであって,音楽としては私は評価したいと思っている。いずれにしても,これもKrantzの一面なのだと知ることができるという点では,このアルバムは貴重だと思う。Krantzファンならば,嫌がらずに聞いてみる価値はあると思う。星★★★★。

それにしても,3曲目はLarry John McNallyの曲で,Leni Sternが歌っているが,この人,シンガーとしてもいけていたのね。最近の活動ではヴォーカルを強化しているのもむべなるかな。Krantzも1曲歌っているが,まさにSSWみたいだなぁ。まぁ,いろいろできるってことで...。でも繰り返しになるが,この作品,結構好きな私である。

Recorded between January and March, 1996

Personnel: Wayne Krantz(g, vo), Leni Stern(g, vo)

2010年1月18日 (月)

Trilok GurtuとJan Garbarekの共演作

Gurtu "Living Music" Trilok Gurtu(CMP)

以前,このブログでTrilok Gurtuの"Crazy Saints"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,あちらはMetheny,Zawinul等のゲストが注目の的であった。本作はそのGurtuによるCMPレーベルでの91年作であり,本作の注目はJan GarbarekとNana Vasconcelosの参加ってことになるであろう。私が中古で本作をゲットした理由もそこにあったが,こうして見てみると,CMPレーベル時代のGurtu作品はゲストで目を引く戦略ってのが明らかだったようだ。この次の作品である"Usfret"もRalph TownerやDon Cherryが参加しているから,ECM関連ミュージシャンを使った対応ということもできるかもしれない。

"Crazy Saints"での音楽を私はワールド・ミュージック・フュージョンと呼んだが,本作の響きはよりコンテンポラリーな感覚が強く,特にそれはタイトル・トラックに顕著である。これはキーボードのDaniel GoyoneとベースのNicolas Fiszmanのサウンドによる部分が多いのではないかと思うが,一方,Jan Garbarekが登場するといかにもワールド・ミュージックっぽくなるのが面白い。いずれにしても,全体を通して聞いてみれば,ここでの演奏はZawinul Syndicate的と言ってもいいかもしれないもので,やっぱり結局はワールド・ミュージック・フュージョンである(爆)。

Trilok Gurutuは通常はパーカッショニストとして認知されているが,ここで聞かれる彼のドラムスが結構個性的なのは録音のせい,あるいはドラムスのセッティングのせいもあるかもしれないが,一般のドラマーとはやや異なるところを感じさせる。いずれにしても,ドラムスを叩いている時は結構タイトに響くのはインド系パーカッショニストの特徴だろうか。

このアルバムを聞いてみて,どういう層のリスナーが関心を示すのかが興味深いのだが,要はゲストにつられてって感じなのかなぁとも思う。しかし,Gurutuの名誉のために言っておけば,アルバム全体を通じて,ちゃんと聞かせる作品にはなっていて,本作も私は結構楽しめてしまった。ということで星★★★★。

それにしても,このCMPというレーベル,Trilok Gurtuに限らず,Joachim Kuhnだ,Chad Wackermanだ,David Tornだ,Jack Bruceだと脈絡がないというか,訳のわからんカタログを揃えていたが,作品の質は概して高かったなぁと今にして思えてきた。CMPがドイツのレーベルだというのもよくよく考えてみれば不思議なような気もするが,それを言ったらECMもドイツだが,なかなか興味深い事実ではある。

Recorded in August 1990 and March 1991

Personnel: Trilok Grutu(ds, perc, vo), Jan Garbarek(ts, ss), Nana Vasconcelos(perc, vo), Daniel Goyona(key, p), Nicolas Fiszman(b, g), Tunda Jegede(kora, cello), Shanthi Rao(veena)

2010年1月17日 (日)

追悼,双葉十三郎先生

映画好きたる者,何らかのかたちで双葉先生の「ぼくの採点表」はじめ,先生の著作にはお世話になったことがあるはずである。その双葉先生が昨年亡くなられていたという訃報に接し,心から哀悼の意を表したい。ブレないというのは双葉先生の評論のためにあるような言葉であり,これは日本映画界にとって大きな損失である。心よりご冥福をお祈り致します。

Bebo Ferraの新譜を聴く

Ferra"Ferra vs Ferra" Bebo Ferra / Massimo Ferra(Sardmusic)

Bebo Ferraについては新年早々,彼とPaolino Dalla Portaによるデュオ"Bagatelle"を取り上げたばかり(記事はこちら)であるが,ごく一部とは言え,巷での話題はBebo Ferraの新譜2組に向いている。本日取り上げるのはギター・デュオによる本作である。

彼らが血縁関係にあるかどうかは全然わからないのだが,アルバムのカバーの謝辞にもあるように,今回の彼らの20年ぶりの共演はPaolo Fresuの発案によるものらしい。私にとって,ギター・デュオと言えば,Larry Coryell~Stve Khanだったり,Andy Summers~John Etheridge,更にはSuper Guitar Trioの中で組み合わせを変えて行われるデュオ演奏ってことになるが,大体はバトル,テクニックの応酬という感じの演奏が多くなるようにに思える。Bebo Ferraについては,さまざまなギター・スタイルがあって,多様性を誇る人だということはよくわかっているので,どんな演奏でもこなしてしまうんだろうなぁと思っていたが,Massimo Ferraという人がどういうスタイルかわかっていなかった。だからタイトルだけ見れば,本作もバトルのような感じなのかと思っていた。しかし,ここでの演奏はだいぶ趣が異なっており,随分と穏やかな演奏が展開されている。前述の"Bagatelle"も対話的な感覚が強かったが,本作も同様である。

曲は彼らのオリジナルであるが,唯一の例外が"Blue in Green"というのは私が2009年のベストに挙げたTowner/Fresuの"Chiaroscuro"と同じではないか。よほど,イタリア人ミュージシャンにはこの曲がフィットするらしいが,この前に収められている"Cromatica"から"Blue in Green"そしてその次の"Twilight"への流れがこのアルバムの中で最も素晴らしいと思ってしまうのはきっと私だけではあるまい。

もちろん,こうした編成であるから,一枚を聞き通すにはもう少しメリハリをつけてもいいのではないかとも思わせるところはあるし,二人の共作となっている"Ferra vs Ferra(1~3)"というおそらくは二人の即興による小品もなんだかなぁという部分はあるので,全面的に評価することはできないとしても,私にとってはトラック9~11を繰り返し聞きたくなる作品である。その3曲だけ取り出せば星★★★★☆を付けてもいいぐらいだが,全体としては星★★★☆ぐらいが妥当だろう。

Personnel: Bebo Ferra(g), Massimo Ferra(g)

2010年1月16日 (土)

Pink FloydはAORである

Echoes"Echoes: The Best of Pink Floyd" Pink Floyd(EMI)

いきなり挑発的な主題である。Pink Floydのファンが見たら怒るんではないかと思ってしまうが,それはさておきである。

私はプログレッシブ・ロックは結構好きなのだが,実はPink Floydってのはあまり熱心に聞いたことがないというのが実態であった。それは子供の頃(ラジオでCarpentersなんかを聞いていた頃だ)聞いた"The Dark Side of the Moon"のよさが,その頃はさっぱりわからなかったという原体験によるものだったかもしれない。それにPink Floydと言えば,アブドーラ・ザ・ブッチャーのテーマとして「吹けよ風,呼べよ嵐」(敢えて邦題で書いてしまう)が使われていたというプロレスのイメージが強過ぎたこともあるかもしれない。しかし,彼らのコンピレーション盤"Collection of Great Dance Songs(時空の舞踏)"(それにしても何と諧謔的タイトル!)を聞いて,そんなイメージは払拭され,このブログでもDavid Gilmour"のライブ盤も取り上げた(記事はこちら)し,ある程度はバンドとしてのアルバムは保有している。しかし,今から彼らのキャリアを通じて追いかけようなんて気持ちはないという程度だから,決して大ファンとは言えない。

そんな私にとって,この2枚組ベスト盤は,彼らのキャリアを俯瞰できるという点では非常によかった。しかも中古で結構安値(2枚組で\1,000そこそこ)で仕入れられたのだから文句はない。

Syd Barrett存命中の演奏なんて時代を感じさせるものだが,特に活動後期に入ってからのPink Floydというバンドの音楽を聞いていて,私が思ったのはプログレっていうよりAOR的だなぁという感覚だったのである。それが本日の記事の挑発主題につながっているのだが,これはなぜかと言うと,彼らの音楽ではあまり激しいビートが刻まれず,たゆたう川の流れのような音楽だからなのではないかと思う。一言で言えば,落ち着いている。そこに切り込んでくるGilmourのギターには鋭さがあり,メンバーが皆ヴォーカルを取れる(Nick Masonは例外か?)ことによる多彩さも存在するが,彼らの音楽は私のような中年が聞いていても疲れることがないのである。よって,ロックの激しさというものをあまり感じさせないという点で,AORだと感じてしまったと言ってよい。

それにしても,このアルバムを聞いていると,本当にいい曲が多いバンドだったのだなぁと思わされる。しかも,このアルバムでは曲順もよく練られていて,流れがスムーズなのも素晴らしい。そんな中で,私が彼らの曲で一番好きなのは"Shine on You Crazy Diamond"なのは不変であるが,やっぱりこの曲はこのアルバムにおいても,いつ聞いてもいいわぁという魅力に溢れていた。いずれにしても,このアルバムを通じて,今更ながらPink Floydの魅力を再認識した私であった。これぞまさしく温故知新,今年の私のテーマである。ということで,星★★★★★。

Pink Floyd: David Gilmore, Nick Mason, Roger Waters, Richard Wright and Syd Barrett with other musicians

2010年1月15日 (金)

荒唐無稽ピカレスク・ハードボイルド

Photo_3 「兇弾」 逢坂剛(文藝春秋)

私は何だかんだ言って逢坂剛の本は結構読んでいるが,この人,私の中では作品の出来に波があるのは辛いのだが,それでもついつい夢中になって読まされてしまうという人である。

そんな逢坂剛はシリーズ物も結構書いているが,本書の元ネタである「禿鷹」シリーズは,超悪徳刑事ハゲタカこと禿富鷹秋の死を以て4作で完結したと思ったら(結局全部読んでいる私),本作は禿鷹外伝ときた。まぁなかなか魅力的なヤクザやおかしな刑事が登場するから,そういうのもありかなと思って読み始めたら,これがやめられない。

話は荒唐無稽である。途中からは禿富の妻,司津子が俄然主人公のようになってくるのだが,それを取り巻く登場人物はくせものばかりだし,シチュエーションも,ここまでくると「ありえねぇ~」という世界である。よって,この本を読んでいて,途中であほくさくなって投げ出す読者がいてもそれはそれで不思議ではないのだが,ある意味,このありえない世界を笑い飛ばすぐらいのつもりで読んでいれば腹も立たないだろう。

それにしても,警察内部にこんなワルばっかりだったら困るよねぇと思わされつつ,渋六興業のヤクザの方が善人じゃんと思ってしまうところが,この小説のツボである。このシリーズを映像化した場合,どういうキャストが最適かと考えるだけで楽しいというのが,この荒唐無稽さの副次的な効果と言っておこう。格好の通勤時間の暇つぶしにさせてもらっただけでなく,結末にかけては珍しくも自宅でも読み続けたってことはそれなりに面白かったってことだろう。星★★★☆。

ということで,これで禿鷹シリーズは完全に終了だろうから,次は2~3年に1冊のペースで刊行されているイベリア・シリーズ第6作の出版を待つことにしよう。でもあれも出来,不出来が激しいんだよなぁ...。

2010年1月14日 (木)

長らく廃盤のHubbard~Shawの共演盤を見つけた

Hubbard_shaw "Double Take" Freddie Hubbard / Woody Shaw(Blue Note)

このアルバムの初出は80年代後半のはずだが,長らく廃盤の状態が続いており,中古でもめったにお目に掛かったことがない。しかし,先日,たまたま立ち寄った中古盤屋で発見し,即ゲットした私である。このコンビにはもう1枚"The Eternal Triangle"というアルバムがあって,これら2枚を合体させたものもあるのだが,それなんかかなりの高額で取引されていることもあり,なかなか手が出ないため,ずっと入手できていなかった。こういうアルバムを何の気なしに発見したときの嬉しさは格別である。まぁもちろん,金さえ出せば手に入るのだが,足で稼ぐところに中古盤屋巡りの楽しさがあるのである。

V.S.O.P.でも人気を博したHubbardはさておき,Woody Shawって日本では本当に人気がなかったというか,日本でもようやく人気が出そうになった頃(89年)にあっさり亡くなってしまったという悲劇的なトランペッターである。そういう私も実は偉そうなことは全然言えなくて,Woody Shawにはまったのは随分後になってからのことである。そのきっかけは"Bemsha Swing"という2枚組だったはずだが,それから結構私のCD棚にも彼のアルバムが増えた。だからと言って,バカ高い金額を払ってまで廃盤CDを買うことはない程度のもので,熱心なファンとは言えまい。しかし,中古盤を見つけるとかなりの確率で買っているのも事実である。そこへこのアルバムを,まぁ妥当と思える値段で見つけたのだから,これは新年早々めでたい。

それはさておき,Hubbardと言えば,先日このブログで彼の"The Night of the Cookers"を取り上げて,暑苦しいだの,荒っぽいだのと書いた(記事はこちら)が,こちらはスタジオ盤だけあって,きっちりプロデュースされているから,私としては好感度はこちらの方が高い。しかも曲は偉大な先達に捧げられているような趣であり,選曲も結構である。しかも主役2人のラッパのフレーズもいいわぁと思わせる出来で思わず嬉しくなってしまった私である。ラストに据えられたKenny Dorham作"Lotus Blossom"なんてワクワクしてしまうようなチェースではないか。う~む,これはよい。

しかしである。このアルバムのCecil McBeeのベースの音は何だ?この増幅した音を聞いているだけで,演奏に没入する妨げになると言わざるをえない。McBeeのフレージングが悪いのではない。音なのである。名エンジニア,Rudy Van Gelderの仕事とは思えないようなこのベース音は,私は生理的に受け付けないと言っても過言ではない。ラッパに関しては,ナチュラルなエコーも感じられていいのに,せっかくの演奏が台無しになるような嫌悪感すらおぼえてしまった私である。これでもう少しベースが何とかなっていたら,星★★★★☆ぐらい付けたものを,そのせいで半星減点で星★★★★である。

それにしても,まだこのアルバムが吹き込まれた当時はKenny GarettはOTBで注目された頃で,まだまだ小僧的な役割しか果たしておらず,ほとんど目立っていないのはご愛嬌である。

Recorded on November 21 & 22, 1985

Personnel: Freddie Hubbard(tp, fl-h), Woody Shaw(tp), Kenny Garrett(as), Mulgrew Miller(p), Cecil McBee(b), Carl Allen(ds)

2010年1月13日 (水)

Eldar:よくぞここまで弾き倒すと言いたいところだが...

Virtue "Virtue" Eldar(Masterwork Jazz)

Eldar Djangirovという名前は聞いていたが,私がこの人のアルバムを聞くのはこれが初めてである。まだ20代前半ということながら,そこはかとなく日本的な若年寄的な顔立ちと思わせるのは,彼がキルギス出身だからか。それはさておき,本盤は中古盤で安くゲットしてきたものだが,冒頭から変拍子で飛ばすところなど,私が持った感覚は上原ひろみみたいだなぁってというものであった。

上原ひろみ同様,テクニックは素晴らしいものがあるし,これはコンテンポラリー・ミュージックの一つの姿ということもできるかもしれないが,私のような中年が聞いていると,どうも落ち着かないのは変拍子の多用によるものではないかと思う。こうしたスピードや疾走感というのはやはりEldarの年齢相応のものがあるようにも感じるが,リスナーが年を食ってしまうと,なかなかここまで行かれるとついていけないというのが本音である。よって,4曲目で"Iris"のような曲が出てくるまで,本当に落ち着けなかったと言っても過言ではない。

この人のうまさについては,文句をつける人はいないだろうし,こうした演奏をスリリングだと捉えるむきもあろう。しかし,何事もやり過ぎはいかんと思うのはきっと私だけではないはずである。おそらく,Eldarが年輪を重ねていき,成熟を遂げていけば,とんでもないことになる可能性は秘めているようにも思うが,勢いやノリだけではいつまでももたないし,おそらくはリスナーに飽きられるのも早かろう。以前の音源ではどういう演奏をしていたのかを知らないで書いているので,これは必ずしも正しい評価とは言えないかもしれないが,とにかく,私は本作に限っては聞いていてどっと疲れが出てしまって,爽快感をおぼえるということは全くなかった。

私は別にこういう音楽が嫌いな方ではないので,いつもだったら燃える!と思っても不思議ではないのに,随分感覚が違うのはテイストの相違と言わざるをえない。私は結構ハード・フュージョンも好きな方だが,昨年取り上げたアルバムで言えば,Tigran Hamasian も相性が悪かったし,人間なんだから,合うものと合わないものがあるのはある意味当然としても,これはちょっとねぇ。本作については,Eldarの将来に期待して星★☆とするが,これは絶対に音数過剰だと思う。私なんか"Lullaby Fantazia"のような曲の方が好みなのだから,これはどうしようもない。おっさんからすれば,「若気の至り」としか言えないのであるし,決して"Virtue(美徳)"とは呼べない。

それにしても,この人が昨年Blue Note東京でStephen ScottのトラとしてRon Carterと共演したというのは信じがたい。一体どんな演奏をしたのだろうか?

Personnel: Eldar Djangirov(p, key), Armando Gola(b), Ludwig Afonso(ds), Joshua Redman(ts, ss), Felipe Lamoglia(ts, ss), Nicholas Payton(tp), Ashley Brown(vo)

2010年1月12日 (火)

玉石混交のManhattan TransferのChick Corea集

Manhattan_transfer"The Chick Corea Songbook" The Manhattan Transfer(Four Quarters)

私も一時期はマントラに結構入れあげていたが,徐々に彼らに興味をなくしていってしまったのは事実である。それは濫作ぎみの彼らのアルバム制作にもあったかもしれないし,やはりグループとしての特性上,どうしてもマンネリに陥りがちな部分があったことは否定できないのではないかと思う。彼らには申し訳ないが,もはや彼らのピークはとうに過ぎているというのは否定しがたいだろう。

しかし,そんな彼らがChick Corea集を出すとなれば,それなりにそそられる部分はあったのだが,なかなか輸入盤にお目にかからない(私は帯やしょうもないライナーノートには付加価値を見出さない)ので,随分と聞くまで時間が掛ってしまった。

聞いてみて驚いたのが,やはり彼らの年齢を感じさせる声に変わりつつあるということであろうか。彼らも結成されてから40年だそうで,今のメンツに固定されてからも30年以上になるわけだからそれも当然だが,やはり私には昔の"Birdland"や"Twighlight Zone / Twilight Tone"を歌っている頃の声のイメージが強いから,それだけ私が彼らの新しいアルバムを聞いていないことの裏返しになるのだが...。まぁ,それでも私はChick Coreaのファンでもある(基本的に支持するが,彼の活動を全面的に認められないことも事実である)ことだし,聞き進めていくとなかなか面白い。

冒頭の"Free Samba"はCoreaによる新曲のようだが,いきなり彼とわかるエレピの音が聞こえてきて,それだけで嬉しくなってしまう。これってCoreaのアルバムにマントラがゲスト出演したかのような趣である。それでも快調な滑り出しと言ってよい。そして2曲目は"Spain"である。この曲はかつてAl Jarreauが歌ったバージョンが最高と言ってよい出来だったので,ついついそれと比較してしまうのは人情である。イントロは「アランフェス」の感覚を活かしているが,肝腎の"Spain"は打ち込み過剰とちょっとゆるいテンポが今イチって感じである。

その後,"Friends"から"The One Step","Children's Song #15"という懐かしいところが続くが,私が"Friends"というアルバムが好きなだけに,前者は中間部からの躍動感があまり感じられず,やや微妙であったが,後者は原曲のイメージを崩さない小品としてなかなかよい。"500 Miles High"はもともとがヴォーカル曲であるから,悪くはならないのは当然であるが,"Space Circus"は「第7銀河」所収の曲で,私は曲としては初めて聞いたのだが,はっきり言って曲が大したことがないので,可も不可もなし。Stan Getzでもお馴染み"Time's Lie"はFred Herschとの意外な相性のよさを示し,これは悪くない。次の"Childreen's Song #1"も同様。

"Pixiland Rag"は「妖精」からであるが,もともと,私はオリジナル・アルバムも評価していないから,どちらかと言うとこういう曲は入れて欲しくなかったって感じである。そして次はいかにもの"My Spanish Heart"から"Armando's Rhumba"をラテン・タッチで賑々しく演奏しているが,中間部はサルサ的な展開なのは面白い。こういうアレンジがマントラに合っているかは別にしても,ライブでやったらきっと盛り上がるんだろうなぁ。最後には冒頭の"Free Samba"の長尺バージョンが入っているが,これはなくてもよかったように思う。それだったら,最初からこっちを冒頭に据えればいいのである。

ということで,私としては結構楽しめたものもあれば,相当微妙という演唱もあって,評価が難しいところではあるが,それなりって感じではある。しかし,相当お年も召してきたマントラの4人に,まだまだチャレンジ精神があるってことはよくわかったアルバムである。そこには敬意を表して星★★★☆。しかし,私のようにChick Coreaのオリジナルにこだわらなければ,もっと楽しめるものなのかもしれないというのも事実なので,この評価はCoreaファンとしての見解も反映しているということで念のため。

Personnel: The Manhattan Transfer: Tim Hauser(vo), Cheryl Bentyne(vo), Alan Paul(vo), Janis Siegel(vo) with Chick Corea(Key), Scott Kinsey(Key), Yaron Gershovsky(p, key, prog), Fred Hersch(p), Edsel Gomez(p), Ramon Stagnero(g), Jimmy Earl(b), Gary Wicks(b), Christian McBride(b), John Hebert(b), Gary Novak(ds), Steve Hass(ds),  Billy Drummond(Ds), Airto(perc), Alex Acuna(perc), Steve Tavaguone(ss, EWI), Lou Marini(fl), Mike Pinella(tp), Robert Redoriguez(tp), Conrad Herwig(tb), Ronnie Cuber(bs), and Others

2010年1月11日 (月)

こんなアルバムもありました:今日はGeorge Garzoneである。

Jean_oh"Invisble Worth" Jean Oh(Wit)

昨日はJerry Bergonziの認識していなかったアルバムということで記事を書いたばかりだが,本日はGeorge Garzoneである。決してメジャーとは言えないGarzoneとは言え,さすが教育者,そのコネクションでかどうかはわからないが,ゲストで参加したアルバムも含めると結構な数である。そこへ来て,某ショップをうろついていたら,これまた「未知との遭遇」である。ジャケの字体なんてECMのまさにパクリって感じだし,ジャケ写真も若干それっぽいのだが,韓国人ギタリストのこのアルバムに密やかに登場したGarzoneである。しかし,メンツを見れば,Fringeの同僚,Lockwoodに加え,中堅ドラマー,Hirshfieldであるから,これは結構期待できると思って即購入した私である。

リーダーのJean Ohのサイト情報によれば,これは彼のファースト・アルバムだそうである。ソウルに生まれ,パリに渡って学んだ後に,NYCでGeorge Garzoneからも教育を受けたというのが,ここにGarzoneがいる理由に違いないが,ここでのGarzoneがこれがなかなかよい。Steve Kuhnたちとやった
"Among Friends"もよかった(記事はこちら)が,それと同じ感覚を与えてくれるトーンでここでも吹いているのである。これなら悪いはずはない。

Garzoneはサックスをブイブイ言わせるタイプではないので,日本での受けについては私は疑問視している方だが,この人は本質的には「渋い」人と考えるべきであり,聞くときもそういうかたちで聞くべきなのだと思う。ここでの演奏もそうだが,ギミックなんて何にもなしだが,心にしみる,あるいはレベルの高い演奏をするというタイプの人ではないだろうか。それでもフリー的なアプローチからコンベンショナルなトーンまで何でも吹きこなしてしまうのが,さすが教育者。逆にこれがGarzoneの個性をよくわからないものにしているとは言え,やはり大したサックス吹きであることには間違いない。それでもやはりこの人はあまり熱くならない。それが「渋い」とも言えるし,日本ではそんなに人気が出ない理由かもしれないなぁと思う私である。

本作ではリーダーのOhのオリジナルを中心にしているが,やはり私にとっての聞きどころはGarzoneのサックスであったと言ってよい。リーダーも十分健闘していて悪くないが,やはりGarzoneを聞くためのアルバムというのが人情である。まぁ,でも新人でこういうメンツに囲まれてこれだけのアルバムを作ったOhは注目すべきAsianということにはなると思うし,本作は十分星★★★★には値する佳作である。

しかし,ラス前にGarzone抜きでしっとりと"It Never Entered My Mind"をやっておきながら,ラストでFringeのような「ど」フリーになるってのはどうなのよって気はしないでもないなぁ。余韻ってものも必要だろうと思うのは私だけではあるまい。これは明らかに浮いてしまっているのが残念である。

それにしても,ジャケもそれっぽかったが,サウンドも結構ECM的な部分があると言ってもいいかもしれない。強いて言えば,John Abercrombie的って感じか。いずれにしても好き者の皆さんは要注目と言っておこう。ちなみにこのアルバムはCD Babyで購入可能なので,Garzoneファンはそちらが入手の早道だろう。

Recorded in January 2008

Personnel: Jean Oh(g), George Garzone(ts, ss), John Lockwood(b), Jeff Hirshfield(ds)

2010年1月10日 (日)

世の中にはいろいろあるんだなぁ:全然知らなかったBergonzi参加盤

Open_architecture "Open Architecture" Daniel Humair(Ninety One)

中古盤屋をうろつく場合,あれはないかなぁ~,これはないかなぁ~という思いでディスクを見ることが多いが,時に「なんじゃこりゃ~!」と思ってしまうアルバムに出会うことがある。これなんか,その代表的なものと言ってよい。過日,某中古盤屋をのぞいたときに,ドラマーのコーナーを見ていて,たまたま見つけたこのアルバム,日本盤で帯もついているが,私は今まで見たことも聞いたこともなかったアルバムである。しかし,メンツを見てびっくり。Bergonzi~Jenny-Clark~Humairという好き者が見れば,飛びつきそうなメンバーである。リズムを見れば,どうせならJoachim Kuhnも入れたいと思ってしまうが,それでもBergonziがピアノレスでこのメンツと吹き込むこと自体が素晴らしいではないか。しかも新宿ピットインのライブときた。こんなアルバムが日本制作されていたとは...。それにしても,これを発見できたことはまさに僥倖と言わずして何と言うべきか。

Daniel HumairとJerry Bergonziの共演と言えば,私はLabel Bleuの"Edges"をこのブログでも取り上げたことがある(記事はこちら)が,その当時は廃盤と思われた同盤もLabel Bleuのサイトでゲットでき,大いに興奮した私だったが,このアルバムも同様に強烈である。"Edges"はベースがMiroslav Vitousだったが,Humairと言えばやっぱりJenny-Clarkでしょって感じである。冒頭からのBergonziの切れのよさも素晴らしいし,それは3曲目"Zipper Treasure"で私を興奮のるつぼへと誘ったのである。メンツからしてもハイブラウな演奏を期待させられたが,ちゃんと期待に応える彼らはえらい。ここでの"Spring Is Here"なんて,スタンダード臭さなんて皆無だし。若干フリー的なアプローチを交えるところは,リズム・セクションの指向にBergonziが合わせたものとも言えるだろうが,この三者による演奏なら,悪くなるわけはないよなぁと思わされる。これは生で見たかったバンドであるが,それにしてもである。Bergonziの素晴らしいテナー・フレーズ満載である。このアルバムに対するご意見を,Bergonziと言えばこの方って感じの新橋Bar D2のマスターにお聞きしてみたいが,私は好きだなぁ。ということで,レア盤をゲットできたご祝儀込みで星★★★★★。

このピアノレス・トリオという編成で,Bergonziは近く新譜をリリースすることになっているが,メンツ的には圧倒的にこちらの方に魅力を感じるリスナーは多いはずである。いやいや,それにしてもラッキーだった私。こういうのって嬉しいなぁ。こういうライブをプロデュースしたDidier Boyerに感謝したい。

ちなみにカバー・アートはどこかで見た雰囲気だなぁと思ったら,やっぱりHumair作であった。

Recorded Live at 新宿Pit Inn in December, 1992

Personnel: Daniel Humair(ds), Jerry Bergonzi(ts), Jean Francois Jenny-Clark(b)

2010年1月 9日 (土)

Paolo Fresuの「天使と悪魔」:甲乙つけがたし

Angel"Angel" Paolo Fresu Quartet(BMG)

私がPaolo Fresuにはまったのは彼のDevil Quartetによる"Stanley Music"であった(記事はこちら)が,それに先立つこと約10年,同じ楽器編成で吹き込まれたのがこのアルバムである。よって「天使と悪魔」ってことになるわけだが,このアルバムも買ったままずっと放置してきていたのだが,ようやくちゃんと聞くことができた。

冒頭の"Everything Happens to Me"を聞いていると,ふむふむ,確かにDevil Quartetと感じが違って,Angelって感じだわいと思ったのも束の間,Nguyen Leの鋭いギターが切り込んできて,思わずのけぞった私である。どこが天使やねん。これはDevil Quartetと同じぐらい凶暴ではないか。タイトル・トラックはジミヘン・ナンバーだが,Nguyen Leのギターも相当激しいし...。

「天使と悪魔」の間には10年のインターバルがある(間にAngel Quartetで"Metarmoforsi"ってのもあるみたいだが未聴)が,Fresuは昔からFresuであったのだと実感させるような演奏群である。この適切なレベルのエレクトロニクスやエフェクターの使い方,更にはコンテンポラリーなギターの響き,更にはGattoってこんなスタイルもOK?と思わせるようなこれまたカッコいいRoberto Gattoによるドラミング等,聞きどころ多数で思わず嬉しくなってしまった。でも1曲だけ入るヴォーカルはいらないんじゃないの?って思うのは私だけではあるまい。彼らはインストだけで勝負できるし,この歌がアルバムのいい流れを分断しているようにしか私には感じられなかった。それが減点対象となって星★★★★☆にするが,やはり私はFresuと相性がいいというか,この人の音楽が性に合っているようである。

それにしてもこのアルバムを聞かずに放置してきた私の不明を恥じた一日であった。「天使と悪魔」,両方いいわ。今,どちらかを取れと言われると困る私である。そしてNguyen Leのイメージが完全に変わってしまったアルバムである。私が彼をまともに聞いたことがあるのはErskin,Benitaとの"ELB"だけなのだが(それも暫く聞いていないが...),それとは随分感じが違うんだもんなぁ。でもこっちのNguyen Leの方が好き。

Recorded between September 25 and 29, 1997

Personnel: Paolo Fresu(tp, fl-h, electronics), Nguyen Le(g, g-synth), Furio Di Castori(b, electronics), Roberto Gatto(ds), Ornella Vanoni(vo)

2010年1月 8日 (金)

東野圭吾の見事な構成力

Photo_4 「新参者」 東野圭吾(講談社)

「このミス」の評価はあてにしていない私だが,結構評判なので,この本を読んでみた。東野圭吾って,「容疑者Xの献身」ぐらいしか読んでいないので,作風ってのはよくわからないのだが,本作を読み通して,連作短編の趣ありと思っていたら,やっぱり連載小説だったのねぇ。しかも第1章から最終章完結まで5年に渡っているというのが凄い。

この本が評価されるとすれば,一つ一つのチャプターの中に差し挟まれた挿話が,ちゃんと辻褄が合っていて,東野圭吾という作家の構成力が,5年に渡る断続的連載という長丁場の中で発揮されたことにあるのではないかと思う。一冊の単行本として見てしまえば,大したことがないようにも思えるが,長い連載の中でのこのストーリーテリングと構成は立派なものである。

東京の下町という風情のある舞台を描いているから,まぁそれだけでも「わかる~」と思う東京人も多かろうが,そういうところもこの小説の魅力であることは間違いない。いい人過ぎる加賀恭一郎という刑事像はちょっとね~というところもあるが,それでも面白く読ませてもらった。下町の人情はステレオタイプ的だという指摘も可能だし,ギミックも何もないけれでも,これはやっぱりよくできた小説だったと思える作品である。星★★★★☆。見事な決着の付け方であった。映画にしたら面白いのではないだろうか。

2010年1月 7日 (木)

何だかんだ言って,結構好きなSteps Ahead

Nyc_2 "N.Y.C." Steps Ahead(Intuition)

元々はフュージョン系ミュージシャンが4ビートをやるとどうなるのかというのがこのバンドのコンセプトだったと思うが,時間の流れとともに,そうしたコンセプトからはずれて行ったことは間違いない事実である。しかし,そうした変化が発生したとしても,そのときどきで私はこのバンドを聞いてきたように思うし,それってファンっていうんじゃないのって言われても仕方がないレベルにはあると思っている。

そんな私でも,Michael Breckerが抜けるだけでなく,ほかにも大きなメンバー・チェンジを施した本作がSteps Aheadと言えるのかなんて思いつつ買ったのは随分と昔のことになってしまった。何よりびっくりしたのはJourneyのSteve Smithがドラムスを叩いていることであったが,今にして思えば,Steve KhanもTony Levinも居たってのは実は凄いことなのではないかと思わせる。それでもって,冒頭の"Well in That Case..."からかなりいけているサウンドではないか。このアルバムはバーゲン品のLPで買ったのが最初のはずだが,初めて聞いたとき,これはかなりいいと思った記憶があるし,今聞いても,このアルバムは悪くないと思う。むしろWarner Brothers後期のアルバムより,ずっとタイトな音がしているようにも感じられるのである(とは言え,Warner時代のアルバムも久しく聞いていないが...)。

そうは言っても,やや曲が総花的かなぁとも思わせるが,全体的に見れば,タイトによくまとまったアルバムだと言うことができると思う。昨年,"L'Image"を酷評した私ではあるが(記事はこちら),Mike Mainieriという人は,基本的に比較的平均点の高い作品を残しているよなぁとも思っているのは事実である。このアルバムもそんな印象を持たせるアルバムと言ってよいように思う。星★★★☆。

このアルバムの後,Mike MainieriがNYC Recordsを立ち上げ,更なるバンド活動を継続したことはよく知られた事実であるが,Steps Ahead自体は徐々にスローダウンしてしまったのは残念である。アルバムとしては"Holding Together"が最終作で,日本に来たのは2004年のマウント富士や2007年のBlue Noteぐらいだろうか。ファンと言う割にライブは全然追いかけてないし...(爆)。

Personnel: Mike Mainieri(vib, syn, p, perc), Bendik(ts, key), Steve Khan(g), Tony Levin(b, stick), Steve Smith(ds) with Ray Gomez(g), Rique Pantoja(p), Stephen Barber(orchstration), Bruce Martin(key, perc), Mass Kool & the African Posse(perc)

2010年1月 6日 (水)

もっと早く買っときゃよかったTomasz Stanko

Stanko"Dark Eyes" Tomasz Stanko Quintet(ECM)

私もECMレーベルのファンなので,このアルバムが出たことは認識していたし,ジャケも素敵っ♥と思っていたのだが,バックのメンツがこれまでのMarcin Wasilewskiトリオから変更になっていて,う~むと思って買い控えをしていたアルバムである。いろんなところに顔を出して何かと話題のJakob Broにも,注目のピアニストと言われるAlexi Tuomarilaにも私としては関心がなかったし,どちらかと言うと,私にとってはStankoはECMレーベルの中ではプライオリティが低い方なのだとまず告白してしまわなければならない。しかし,ベースは昨年末に"Dear Someone"というナイスなピアノ・トリオ・アルバムを出したAnders Christensenだということを認識し,かつブログのお知り合い,スズニカ男爵夫人ことすずっくさんが2009年のベスト盤に挙げておられて俄然聞きたくなってしまい,あわてて買ってきたアルバムである。発売から3カ月以内なので,新譜扱いとさせて頂いたが,ちょっと遅いよなぁ。

昨年,ポーランドに出張する機会があり,現地にStankoやWasilewskiのポスターが貼ってあるのを見て,ありえねぇと思っていた私であるが,やはりポーランドでは重鎮なのである。そうしたStankoがバックを改編した理由はよくわからないが,いずれにしろデンマーク,フィンランド混成軍をバックにした東欧/北欧混成バンドは,やはりそういうクールな音楽をここでも展開している。冒頭の"So Nice"なんていかにもの静謐なサウンドであるが,それはタイトル・トラックの"The Dark Eyes of Martha Hirsch"で4ビート的な展開を示しても,温度が低めの音楽になっているのである。そうした意味では昨日レビューしたBilly Harperと対極的な音楽だと言ってもよい。

しかし,ECMレーベルのファンの多くはそうだと思うのだが,このいかにも低温と言うべきサウンドにはまってしまうと抜けられない世界なのである。当然のことながら,私もこのサウンドは支持するのだが,いかにもNYCを描いたような曲名("Terminal 7","Grand Central","Amsterdam Avenue"等)があるにも関わらず,そんな関連性を全く見出せない曲や,最初はどこがサンバやねんと思わせる"Samba Nova"等,一筋縄ではいかないのである。だが,ECMレーベルにしてはというか,Stankoにしてはビートが明確な曲が結構含まれているのは珍しく,これまでのStankoとはちょっと違う感覚を受ける。これも共演するミュージシャンの与えた効果なのかもしれないが,これはなかなかよかった。ということで,素直にもっと早く買っときゃよかったと反省した私である。だから天邪鬼はいかんのだ。星★★★★。

それにしてもライナーに写るStankoの写真を見ると,まるでLeonard Cohenのようだと思ったのは私だけだろうか?

Recorded in April 2009

Personnel: Tomasz Stanko(tp), Alexi Tuomarila(p),  Jakob Bro(g),  Anders Christensen(b), Olavi Louhivuori(ds)


2010年1月 5日 (火)

久々の再発:Billy Harperのソーラン節

Billy_harper"Soran-Bushi, B.H." Billy Harper(Denon)

昔,私はこのアルバムをLPで保有していたが,こういう暑苦しさのよさってのがあまり理解できなかったため,随分前に手放してしまった。しかし,その後,いろいろな音楽を聞いてきて,この音源を実は猛烈に聞きたくなってしまっていたのだが,CDは長らく廃盤のままということで,「聞けないとますます聞きたくなる」状態がずっと続いていた。しかし,この度,DenonレーベルのHQCDシリーズでめでたく再発になったのを購入したものである。

私が初めてBilly Harperを聞いたのはMax Roachとの"Live in Japan"で,そちらもリーダーとHarperのバトルとも言うべき演奏を楽しんだ(記事はこちら)が,あちらも相当に暑苦しいHarperが聞けるが,本作でのHarperはその上を行っている。Max Roachの場合は,一人でもポリリズム的に聞こえるところはあるが,ここではそうした効果を狙ってドラマーを2人にしていることも暑苦しさを増幅させているようにも感じられる。

冒頭の"Trying to Get Ready"は確かに解説(オリジナルのLPからの再録)で油井正一が書いているとおり,ライブ盤にも収められていた"Calvery"と同曲のように聞こえるが,あちらでは"Traditional Arranged by Billy Harper"となっていたのが,こちらではHarperのオリジナルと書かれているのが不思議である。それはさておき,演奏はライブ盤よりもテンポを上げて,更に強烈な感覚を生み出す。これを暑苦しいと言わずに,何を暑苦しいと言うんじゃいというぐらいの激しさである。2曲目"Loverhood"はHarperの無伴奏ソロであるが,この曲と1曲目のテンポの緩急はなかなかよいし,Harperのサックスのエモーショナルな響きはかなりのものである。

しかし,このアルバムのハイライトは3曲目のタイトル・トラックということになるだろう。イントロのださい感じはCannonballの"Somethin' Else"の「枯葉」と双璧とも言いたいぐらいではあるが,その後に出てくるHarperによる「ソーラン節」のテーマ吹奏で聞かれるこぶしの回し方に見られる原曲の持つ響きの理解度が素晴らしいのである。これは凄い。ということでイントロを聞いてがっくりきてはならない。テーマが出てくるまでじっと我慢をすれば,その後はHarperらしい暑苦しさが全開となってくるのである。いずれにしても,これはもはやスピリチュアルな世界に入っていると言ってもいいし,Harperのソロの出だしなんて,Coltrane的なものが横溢している。ピアノのバックでのコンピングなんて"So What"みたいだしなぁ。演奏の中盤過ぎで,ドラムスとテナーのバトルになるというのも,フレーズはやや違えども,やはりColtrane的。いや~,これはええわ。Harperが相の手で入れる「ヤサエンヤ~サ~ノド~コイショ~」の部分のHarperの声も渋くてびっくりである。

ということで年明け早々聞く音楽としてはどうなのよって気がしないわけでもないが,たまにこういう音楽を聞くと自然に体が反応してしまう自分が怖い。久しぶりに聞いて燃えてしまった私である。星★★★★☆。

Recorded on December 15 & 17, 1977

Personnel: Billy Harper(ts), Everett Hollins(tp), Harold Mabern(p), Greg Maker(b), Horace Arnold(ds), Billy Hart(ds)

2010年1月 4日 (月)

やはりこれはWayne Shorterの異色作だろう

Shorter"Phantom Navigator" Wayne Shorter(CBS)

CBS時代のWayne Shorterのリーダー作は4枚あるが,本作と最終作"Joy Rider"はずっとカタログから消えたままになっている。それには当然何らかの理由があるはずだが,久しぶりに本作を聞いてみて,このShorterらしくない打ち込みのせいではないかと思うのは私だけだろうか。

曲やフレージングはWayne Shorterそのものなのだが,やはりこのバックのサウンドに違和感を覚えるオーディエンスは多いだろうし,再発を許可しない(?)Wayne Shorterその人自身もそう思っているのではないかと言うと,勘繰り過ぎのような気もするが,やはりこれは異色である。Shorterが一部でリリコンを吹くのも異色なら,冒頭の"Condition Red"にかぶさるShorterのヴォーカルも異色(ちょっと怖い)。

私はWayne Shorterの結構なファンではあるけれども,さすがにこのサウンド・プロダクションはいけてるとは言い難い部分があり,Shorterのアルバムの中でも,本作を聞く優先順位はついつい低くなるのは仕方ない。とは言え,マーケットでは本作はなかなか見つからないから,中古盤屋で見つけたらShorterファンはゲットしておいて損はないが,それでもである。

打ち込みは多いけれども,凡百のフュージョンとは違うことは認めよう。Shorterの個性もちゃんと出ている。しかし,これがShorterの本質かと問われれば,そんなことはないと思わず力んで言いたくなってしまうのである。これが当時のShorterが考えるフュージョン・ミュージックだったのかもしれないが,どうにもピンとこない。例えば,冒頭の"Condition Red"なんてかなりハードな曲調で驚いてしまうが,私はこういう路線で全編引っ張っておけばまだしも,その後の曲調が随分と違うから,どうにも聞いていて居心地が悪いというか,Shorterが本作で何がやりたいのかよくわからないのだ。

まぁこれはShorterにとっては過渡期の,「色々やってみました」的な実験作品だったのかもしれないが,ある意味,そうした実験に付き合わされるリスナーとしては,この音楽が気に入らなければいい迷惑ということになりかねない。また,本作はChick CoreaのMad Hatterスタジオで録音されているため,Chickが1曲で客演するが,それも不発に終わっていて,どうにも不可解な感触だけが残るアルバムとなっていると言ってよいだろう。ということで,私はこのアルバムは支持できないというコメントしかできないのだが,やっぱりこの程度ではずっと廃盤でも仕方ないかなぁ。世の中には,このアルバムを高く評価する人もいるが,私にとっては星★★☆が精一杯。

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss, lyricon, vo), Chick Corea(p), Stu Goldberg(key), Jim Beard(key), Jeff Bova(key), Mitchel Forman(key), John Patitucci(b), Gary Willis(b), Alphonso Johnson(b), Tom Brechtline(ds), Bill Summers(perc), Scott Roberts(perc), Ana Maria Shorter(vo), Jimmy Bralower(prog)

2010年1月 3日 (日)

Eddie Henderson:よきにつけ悪しきにつけ日本制作って感じのアルバムである

Eddie_henderson"Dreams of Gershwin" Eddie Henderson(VideoArts)

これも先日中古で拾ってきたアルバムだが,近々\1,000で再発されるみたいである。入手価格がその値段より安かったので,まずは安堵(爆)。

それはさておき,基本的にこのアルバムはEddie HendersonがワンホーンでGershwinナンバーを演奏する(後半3曲はオリジナルも入るが)というものであり,メンツを見れば,まぁ変なことにはなるまいというのは最初から想定できる。冒頭の"It Ain't Necesarily So"から,Hendersonのフリューゲルは十分に魅力的な響きを生み出していることは認めなければならない。

しかし,Eddie Hendersonもしくはジャズそのものに何を求めるかによって,このアルバムに対する評価は全く違ったものになってしまうのではないだろうか。私はEddie Hendersonの熱心なリスナーではないので何とも言えないが,私の記憶の中ではBilly Harperとの共演が印象に残っているので,どちらかというともう少し激しいイメージを持っている。よって,ここで聞こえてくる居酒屋のBGMとしても通用しそうな響きには若干面喰うというのも事実なのである。確かに"Summertime"等は若干アレンジを工夫している部分も感じられるものの,いかにも日本制作って感じの出来なのはどうなのかなぁって気がする。

だからと言って,演奏が破綻しているわけではないのだが,ジャズという音楽には例えば"Monk's Music"に聞かれるような破綻があってもいいやという,ある意味いい加減さがあってもいいように思えるである。そうした破綻のなさが,幅広いリスナーに対して当たり障りなく聞かせようという,日本制作らしいきっちりし過ぎた感覚が気になってしまう私は相当へそ曲がりなのかもしれない。

まぁ,それでも固いこと言わず,演奏を楽しんでいればいいじゃんという声も聞こえてきそうである。それはその通りだし,Hendersonのフレージングもなかなかに魅力的ということで星★★★☆ぐらいにしておこう。ちなみにLockeのヴァイブは結構いい感じなのだが,Haysは何とも控えめである。う~む。やっぱりHendersonのアルバムである。当たり前か。

Recorded on March 24 & 25, 1998

Personnel: Eddie Henderson(fl-h, tp), Joe Locke(vib), Kevin Hays(p), Ed Howard(b), Billy Drummond(ds)

2010年1月 2日 (土)

格安でゲットしたBebo Ferra / Paolino Dalla Porta

Bagatelle"Bagatelle" Bebo Ferra / Paolino Dalla Porta(Splasch)

今頃であれば,本来は既に入手済みのBebo Ferraの新譜2組を取り上げるべきなのかもしれないが,今年は温故知新も強化するということで,本日は中古で拾ったこのアルバムである。

もともと私がBebo Ferraに目覚めたのはPaolo FresuのDevil Quartetでの快演(記事はこちら)であったが,その後,ブログ界のスズニカ男爵夫人ことすずっくさんから,このコンビによる"Aria"をご紹介頂き,その静謐な響きに感銘を受けた私である。それ以来,同じコンビによるこのアルバムも入手したいなぁと思っていたのだが,なかなか手に入らなかったものを,先日,某中古ショップで630円(!)でゲットしたものである。これは嬉しかったなぁ。

このギターとベースという編成からすると,私はRalph TownerとGary Peacockを即座に思い出すわけであるが,このコンビも負けていない。曲を見てみると,全12曲中,Bebo Ferraが4曲,Dalla Portaが6曲,共作が2曲ということで,この響きを生み出したのは,Dalla Portaの方ではないかと思わせる構成であるが,全編を通して非常にこの手の音楽好きにはたまらない展開が続いている。「バガテル」というタイトルが示す通り,最長でも6分強の小品集ではあるが,トータルで48分そこそこというのもいい感じである。

本作は,ご両名による静かな対話的色彩が強いが,"Celeste"や"November Dance"のようにジャズ的なアプローチの曲も含まれていて,私には非常に楽しめる作品となった。また,"One for Bill"というのはBill Evansの"Waltz for Debbie"へのオマージュだろうが,こうした曲はほのぼのさせつつも,魅力的なサウンドであった。こういう編成の場合,こういう風に録音してくれいという感じのナイスな作品。星★★★★☆。

それにしても,Bebo Ferraはやはり多様なスタイルの人だなぁという気がするが,Devil Quartetの彼と,こういう演奏の彼のどちらが本質なのか,よくわからなくなってきた。まぁいいギタリストであることは間違いない。さっさと新譜も聞かねば。

Recorded in December 1999 & November 2000

Personnel: Bebo Ferra(g), Paolino Dalla Porta(b)

2010年1月 1日 (金)

謹賀新年(2010)と今年の抱負,その他

Dolphy_five_spot_1 皆さん,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

このブログも4年目に突入。今年も相変わらずの駄文を垂れ流すことになると思いますが,よろしくお付き合いのほどお願い致します。

ご挨拶モードはここまでとして...

今年も新譜に旧譜にと,さまざまな音楽を聞いていくことになるだろうが,今年はこれまでよりも若干ながらも温故知新モードを強化したいと思う。もちろん,新譜を聞くのは楽しみではあるが,旧譜の中には買ってもちゃんと聞いていないものもあれば,昔は愛聴していても,ずっと聞けていないものもある。今年はそういうアルバムにも光を当てることにも力を入れたいと思う。そうは言いつつも,やはり新譜の魅力には抗いきれず,今年もいろいろ買ってしまうんだろうなぁとは思うが...。

Dolphy_five_spot_2_2 ということで,今年の一発目はEric Dolphyである。Dolphyと言えば,"Five Spot","Out to Lunch","Last Date"というのが相場
(私はこれに"Far Cry"を加えた四本柱)だが,"Last Date"はだいぶ前にこのブログで取り上げたことがある(記事はこちら)ので,今回は"Five Spot"である。ここに収められた演奏は激烈という表現しか思い当たらない。特にDolphyがそうだ。余談ではあるが,後にTerence BlanchardとDonald Harrisonがこのアルバムのリズム・セクションをそのまま使って,このアルバムの再演を試みたというのも懐かしい。

このライブに参加したバンドのメンバーは,ジャズ界でも比較的尖ったメンツということになるだろうが,その中でもDolphyの突出ぶりが凄いのである。この当時であれば,「一体何なんだ,これは...」という反応となったに違いない異能の人ぶりだ。Booker Littleなんて,このアルバムに参加しているだけで,やや先鋭的なミュージシャンと思われている節があるようにも思えるが,ここでの演奏を聞けば,極めて真っ当かつコンベンショナルなミュージシャンであることが,Dolphyとの比較においても成り立ってしまうではないか。リズム・セクションにしても同様である。それほどここでのDolphyは強烈である。

ということで,このアルバムはVol.1でもVol.2でも楽しめる傑作ではあるが,私としてはVol.1の方を高く評価したいと思う。バスクラを吹く"Bee Vamp"なんて悶絶間違いなしである。バスクラでもアルトでもフルートでも,とにかくDolphyの切れ味は最高である。これぞ名刀。とにもかくにもこれはDolphyが残した遺産として,これからもちゃんと聞いていきたいアルバムである。評価としてはVol.1が星★でVol.2が星★☆って感じか

それにしても何とも雰囲気のあるジャケット写真である。ジャズの雰囲気をこれほど感じさせてくれるのはなかなかない。久しぶりにDolphyを聞いて,ColtraneとのVanguard Live完全盤が聞きたくなってしまった。あれも凄いからなぁ。

Recorded Live at the Five Spot on July 16, 1961

Personnel: Eric Dolphy(as, b-cl, fl), Booker Little(tp), Mal Waldron(p), Richard Davis(b), Ed Blackwell(ds)

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