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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2009年6月30日 (火)

出張中に見た映画:09/06編(5)

Bourne_identity 「ボーン・アイデンティティ(The Bourne Identity)」('02,米,Universal)

監督:Doug Liman

出演:Matt Damon,Franka Potente,Chris Cooper,Clive Owen,Brian Cox

本日から,先般のロンドン出張の帰路で見た映画シリーズである。今回は往路4本,帰路3本ということで,結構見てしまったなぁ。帰路の一本目に選んだのがこの映画である。3部作の最終作「ボーン・アルティメイタム」を,当ブログで2007年の映画ベスト作に選んでいる私だが,実はこの第1作を見るのはこれが初めてである。監督のDoug Limanはその後,「ジャンパー」のような駄作を撮っているので,期待していいものやらどうなのやらよくわからなかったが,これがすこぶる面白かった。

言うまでもなく,本作はRobert Ludlumの傑作「暗殺者」を原作とするが,原作も映画と同じタイトルを持つ三部作構成ながら,ストーリーはずいぶんと違っている。まぁそれでもこれはこれでよくできた映画である。見る前はMatt DamonがJason Bourne?と思ったのも事実だが,意外や意外,Matt Damonはアクションもいけているところを示しながら,よくもまぁこの息もつかせぬ展開を乗り切ったと言いたくなる。この映画を見て,これは実は適役だったのではないかと今にして思う私であった。「ごめんね,Matt」である。

また,この映画にはClive Owenも出ているが,彼は先日けなした「ザ・バンク」のように主役を張るよりも,こういう脇で印象を残す役の方がずっといいと思ってしまった。

いずれにしても,映画Jason Bourneシリーズのいいところは,ハイテクに頼ることなく,リアリティを残しながら,きっちりしたアクション映画になっているところだということになるだろう。この映画を見れば,続きも見たくなるもんなぁ。ということで,第3作同様,この映画も高く評価したくなってしまった私である。星★★★★☆。こうなったら,3部作のBlue-Rayボックスを買ってしまいそうな勢いである。

2009年6月29日 (月)

Jewelによる癒しの子守唄

Jewel "Lullaby" Jewel(Fisher Price)

またまたなじみのCDショップをうろついていたら,Jewelの見たこともないアルバムが置いてあった。彼女の美貌だけでも即買いなのだが,このアルバム,レーベルを見ると,米国のおもちゃメーカー,Fisher Priceとなっているではないか。しかもタイトルが「子守唄」ときては,一体どうなっているのかと気になってしまうのが人情である。

家に帰って,ライナーを見てみると,Fisher Priceは音楽にも取り組んでいて,子どもの教育によさそうなものをCDとして発売しているらしい。それにJewelが賛同して,今回のアルバムのリリースとなった模様である。「子守唄」だけに全編を通じてゆったりしたテンポの歌唱,演奏が続くが,これには癒される。

「いい歳をこいたおっさんが,何が子守唄で癒しじゃっ!」という声も飛んできそうだが,癒されるものは癒されるのである。年をとっても純朴な気持ちは忘れたくないのである。子守唄だけに,これをずっと聞いていれば,確実に安らかな眠りに誘われそうであるが,こういう音楽を子供に聞かせようというFisher Priceはえらい!!と思わず言いたくなってしまうし,こんな歌を子守唄にできるアメリカ人,カナダ人の子どもは幸せである。

それにしてもJewel_photo 何とも美しい歌声である。しかも多くの曲はJewelのオリジナルである。結局,彼女の声は世代にかかわらず,癒しの効果を持つことを実証しているようなものである。とにかく,難しいことを考えず,この音楽に身をゆだねれば,浮世の憂さも忘れられよう。よって,ストレスフルな生活を送る日本のお父さんにこそこのアルバムを聞いてもらいたいのである。ついでに,このJewelの美貌を見れば,更に癒されること間違いなしである。たまりません。音楽としてもよいが,この癒し効果を評価して星★★★★★(甘いなぁ...)。

Personnel: Jewel(vo, g), Jason "Turtle"Freese(p, accordion, triangle, mellotron), Jonathan Yudkin(vln, viola, cello, b, mandolin, fl and others), Jonathan Ahrens(b), Ken Halford(g)

2009年6月28日 (日)

Down Beat誌でたどるMiles Davisの変遷

Miles_davis 「マイルス・デイヴィス・リーダー:ダウンビート誌に残された全記録」フランク・アルカイヤー編,上西園誠訳(シンコーミュージックエンタタインメント)

この本は米国Down Beat誌に掲載されたMiles Davis関連の記事を集成したものであり,古い記事はCharlie Parkerとの演奏のレビューを記した1946年にまでさかのぼっている。それから,Milesの死後までの長年に渡って,Down BeatにどのようにMiesが評価されてきたのか,どのようなニュースが掲載されてきたのかを見るだけでも面白い。

アルバムの評価も,どこかの国のジャズ誌とは異なり,評者の視点が明確で辛口な批評も見受けられるのは面白いし,例えば'Four' & Moreのような作品が,評者Mike Zwerinにその演奏スピードが嫌われて★★★☆となっている(評価対象はリズム・セクションだけだなんて言い切っているし...)のはへぇ~って感じである。

しかし,本書を通じて最も面白く興味深かったのは,Milesによるブラインドフォールド・テストである。これを読めば,Milesがいかに勉強熱心で,優れた聴覚を持っていたかがわかるのである。100%的中とは言わずとも,かなりの確率で言い当てているのは,これはやはり大したものである。スタイリスト,Miles Davisもちゃんと過去や同時代のミュージシャンには耳を傾けていたことがよくわかるのである。もちろん,Milesらしい辛辣な表現も見受けられるが,それはそれでMilesらしいということになろう。

私は何でもかんでもMilesならいいというクチではないし,彼の亡くなる前のAvery Fisher Hallでの演奏なんて,拍手をする気にもなれなかったというのが正直なところである。それでも,やはりMilesの業績は認めざるをえないし,私にとっても最も重要なミュージシャンの一人である。そんな彼の歴史を紐解くのにはちょうどよい1冊だと思う。さまざまな評者がさまざまな視点で語っていることは,偏りを排除するという点でもよかった。重くて,値段も安くないが,出張の暇つぶし等にはちょうどよい。でも先日紹介した「ハードバップ大学」の方が,読み物としては面白かったというのが正直なところなので星★★★★。しかし,この原書が$24.95ってのはちと高いようにも思えるな~。それを考えれば¥3,150はまぁ仕方がないか。

2009年6月27日 (土)

追悼,Michael Jackson

Michael_jackson今日は全く別の記事を書くつもりだったのだが,突然の訃報が飛び込んできてしまった。今回のMichael Jacksonの突然の死には誰しもが驚かされたはずである。最近のMichael Jacksonの動静には何ら興味を抱けなった私にさえ,今回の死はあまりにも突然であった。来月にはロンドンでのライブが予定されていただけに,そのショック度が増すことは仕方あるまい。

Michael Jacksonと言えば,私の学生時代にあのモンスター・アルバム"Thriller"が発売され,私もLPを買ったクチである。今でもVincent Priceの笑い声を真似してしまうのは私だけではないだろうが,私の持ち芸となったデーモン小暮の真似にもそれが活かされていることは言うまでもない(爆)。

Michael Jacksonは音楽ももちろんだが,ダンスでも稀有な才能を発揮していたことを忘れてはなるまい。何と言っても,あのGene Kellyでさえ,映画"That's Dancing"の中で絶賛していたぐらいである。そうしたすべての要素を含めてMichael Jacksonは間違いなく時代のアイコンであった。

彼が失速したのはある意味"Thriller"がプレッシャーになってしまったのではないかとも思わせるのはEaglesにとっての"Hotel California"のようなものであろうし,奇行が目立つようになったのは,ある意味Jaco Pastoriusにも通じる部分があるように思えてならない。悩める天才か,早過ぎた傑作かという感じである。しかし私にとっては"Off the Wall"の段階でMichaelは完成されており,音楽の出来としてはやや劣るはずの"Thriller"がヴィデオを含めたパッケージとして大成功してしまったことはやや皮肉である。

しかし,そうは言いながら,私の行きつけのCDショップで追悼を込めて"Thriller"が大音量で流されているのを聞くにつけ,やっぱりカッコいいじゃんと思ってしまった私であった。これからの復活が期待された矢先だけに,これはやはり惜しまれる早逝と言わざるをえない。私も今夜は"Off the Wall"を聞いて彼を追悼することとしよう。

R.I.P. 合掌。

2009年6月26日 (金)

中年音楽狂 in ロンドン:ロンドンのど真ん中に現れたBarclaysの新店舗

005 今回のロンドン出張においては,仕事柄どうしても見ておかなければならない店舗があった。それがBarclaysが昨年12月にピカデリー・サーカスに開けたフラグシップ店舗である。ファサードからして透明性が高く,確かにこれまでのロンドンの銀行店舗とは明らかに違う。

Img_0211 ピカデリー・サーカスと言えば日本で言えば銀座ソニー・ビルとかそういう感じの場所になるが,そこに現れた店舗は,Barclaysはハイテク店舗と呼んでいるが,それは特に店舗に入ってすぐの場所にあるインタラクティブ・スクリーンに顕著である(奥にも別の仕掛けはあるようである)。今回の取材,アポなし突撃取材というか,顧客のふりをして002_2 ざっと見回しただけなのだが,ブラン ディングがしっかり店に反映されていて,なかなかに魅力的な店である。ネット上にもこの店舗の写真は結構アップされているようだが,こういうのはやはり自分の目で見るに限るのである。もちろん,写真はこっそり撮影したものであるが,雰囲気はつかんでいただけるだろう。

ATMコーナーの逆サイドに設置された情報キオスクではロンドンのさまざまな情報が検索できるのはいいが,私が端末を操作しているのが,大画面にも連携されて映っているのにはちょっと驚いた。別に見せたくてやったわけではないのだが...。これはプライバシーという点ではちょっと疑問だが,それでも結構使っている来店客がいたから,まずまずの認知度,訴求度というところかもしれない。

いずれにしても,Barclays Blueが適切に反映されていて,見た感じはかなりいいって感じである。こういうのをまさに「適切なコーポレート・カラーの反映」と呼びたくなる。この店舗はBarclaysが相当の金を掛けて取り組んだことがわかるフラグシップ店舗ということが言えるだろう。ご関心のある方はピカデリー・サーカスからリージェント・ストリートに行くすぐ脇だから,嫌でも目に入ってくるはずである。まぁでも観光客には関係ないか...。これって明らかな職業病である。

しかし,店の中には監視カメラの画面モニターがあったから,私はそこには強盗の下見に来た怪しげな東洋人のように映っているかもしれない。まぁいいや。

2009年6月25日 (木)

出張中に見た映画:09/06編(3),(4)

20century01_2 「20世紀少年 第1章 終わりの始まり」「20世紀少年 第2章 最後の希望」(’08/09,東宝)

監督:堤幸彦

出演:唐沢寿明,豊川悦司,常盤貴子,平愛梨,香川照之,石塚英彦,宇梶剛士,宮迫博之,藤木直人,生瀬勝久,小日向文世,佐々木蔵之介,石橋蓮司,中村嘉葎雄,黒木 瞳

飛行機の中で,このシリーズを2本続けて見たので,一括で記事をアップする。本来は2回に分けて記事にするべきだが,残念ながらそれほどの出来ではない。私はこの映画の予告編を映画館で見202_2 ていて,ちょっとは気になってはいたのだが,結局見に行かずじまいだったので,今回,2作をまとめて見られたのはよかった。この映画はそもそも3部作として製作されているものであり,公開のタイミングも極めて短い期間で行われるというものであるから,本質的には全部見ることを前提に作られていると考えてよい。

それでありながら,原作はコミックスで20巻を越える長編だそうだから,これを映画としてきっちりシナリオを整理するのはなかなか大変なことではないかと思わせる。私は今回2作を続けて見られたからいいようなものの,これを1本ずつ見に行くってのはどうなんだろうと思ってしまった。私からすれば,明らかに説明不足の部分は否めないため,「なんでそうなるの?」という部分がないわけではない。例えば,第1作で大爆発のシーンが出てくるが,あれだけの爆発が発生して,どれだけの人間が生き残れるというのか。原作がマンガだからと言って,あまりにもありえないのはやはり見ていて冷める。

まぁ,それでもこれだけの役者を揃えているから,それなりには楽しめるとは思いつつ,やっぱりわけがわからない。まぁでもここまで見たら,8月公開の第3章は見に行かないわけにはいかないだろうなぁとは思う。

そうした中で,第2作で成長したカンナ役で出てくる平愛梨が,何となく昔の内田有紀を思い出させる感じで,おじさんとしては結構気になってしまった。何とも凛々しい彼女を見ていて,おぉ~,いいねぇと思う中年は私だけではあるまい。しかしながら,最も適役なのは駄菓子屋のおばはんを演じる研ナオコだと思うのは私だけだろうか。まぁどうでもいいが。

しかしこの映画,総製作費60億円とか言われているが,どう考えてもそんなに金が掛かるはずはないように思える。どこにその金額が消えたのかは,私には全く理解できないままであった。まぁ日本映画としてはそれでも規模は大きな作品だとは思うが,3部作にするとしても,私はもう少し脚色してもよかったのではないかと思えるのである。星★★★。

いずれにしても,この映画で最も印象的なのは主題歌的に使われるT-Rexの"20th Century Boy"のギター・リフだと言っておこう。

2009年6月24日 (水)

笑止千万の自民党による東国原知事への衆議院選出馬要請

出張で日本を離れていると,よくわからないことが起こっても,反応が遅くなってしまう。これも何をいまさらという感じがしないわけではなかったのだが,書かずにいられない。

世の中,あきれて物も言えないことというのはままあるが,それでも今回の自民党,古賀誠選対委員長による東国原宮崎県知事への衆議院議員総選挙への出馬要請ほど馬鹿げた話は聞いたことがない。古賀誠としては、東国原を出馬させることで、党への支持回復を狙ったものだろうが,更には内閣改造があれば東国原を入閣させ、衆院選の比例代表に出す構想があったというのだから,もはや姑息と言われても何も反論できまい。

東国原も東国原である。自身を次期総裁として衆院選を戦う覚悟があるのか等と言う条件を提示したというのだから,チャンチャラおかしい。これが元コメディアンとしてのギャグというならば,申し開きもできようが,先の中山成彬の一件で,自民党から衆議院選挙への出馬を打診されたときに,宮崎県民がどういう反応を示したかを忘れたわけではあるまい。それともそうした宮崎県民の声を敢えて無視してまで国政に打って出たいというのだろうか。それならば,単なるエスタブリッシュメント指向,権力志向という謗りは免れまい。

いずれにしても,こういう人たちには世の中の政治不信が高まっているのは,政治そのものの議論をするでもなく,国民不在の政治ゲームを繰り広げるこんな政治家ばかりだからだということが全くわかっていないらしい。どうにもこうにも恥知らずばかりで情けないと感じるのは私だけではないはずである。

この程度の政党を打ち破れないならば,民主党には未来はないと考えた方がいいだろう。

出張中に見た映画:09/06編(2)

The_international 「ザ・バンク 堕ちた巨像(The International)」('09,米,MGM/Columbia)

監督:Tom Tykwer

出演:Clive Owen,Naomi Watts,Armin Mueller-Stahl,Ulrich Thomsen

出張中に見た2本目がこの映画である。私は仕事柄,金融機関をクライアントとしているのであるが,いくら陰謀うずまく金融業界とは言っても,さすがにこんな無茶な話はないだろうと思わせる。金融業界を扱うからと言って,リアルにやればいいというものではないとしても,これではコーポレート・バンキングをやっている人たちは怒るんじゃないの?と思わされる設定なのである。

いろんなロケ地が出てきて,それなりに既視感を刺激してくれる。ベルリン中央駅然り,グッゲンハイム美術館然りである。しかし,映画を見ていても,シナリオそのものはサスペンスフルなものを狙ったのだろうが,ちょいと人が死に過ぎである。そもそもグッゲンハイムであんなにドンパチやるなんてのが,無茶な設定なのである。ビジネスの世界では,こんなことってありえないよなぁ。

また,この映画,Naomi Wattsのキャラクターの造形が全くよく分からず,何とも彼女の影が薄いのである。これでは彼女のギャラがもったいないというものである。ということで,それなりに映画としては見せるものではあるが,決して高い評価はできないのである。星★★☆。どうも今回は映画のセレクションを誤っているかもしれないなぁ。

2009年6月23日 (火)

出張中に見た映画:09/06編(1)

Pink_panther_2 「ピンクパンサー2(The Pink Panther 2)」('09,米,Columbia)

監督:Harald Zwart

出演:Steve Martin,Jean Reno,Emily Mortimer,Andy Garcia,Lily Tomlin,Jeremy Irons

毎度おなじみの「出張中に見た映画」シリーズである。今回はロンドンへの短期出張中であるが,今回も飛行機の中の楽しみは映画だけと言ってもよい。この映画は,前作が面白かったので,劇場にも足を運びたかったのだが,おそらくは不入りのため,それもかなわなかったものだったので,今回の一本目はこれにした。そもそも私はSteve Martinの長年のファンなので,実は楽しみにしていたのだが,はっきり言ってこれはダメだった。

ドタバタのコメディだから,難しいことは考えないで楽しめばいいのだが,一番楽しめたのが,今回もフランス訛りを真似たSteveのセリフ回しだけでは,さすがに二番煎じ感が強いのである。また,結構いい役者を揃えているのに,それを活かしているとも思えない。Lily Tomlinなんかは結構面白いとは思うが,結局Steve Martinと伍して演じるという感じでもないし。

いずれにしても,ギャグはすべっているって感じもするし,これでは本シリーズも本作で打ち止めかと思わせる出来に留まっているのは残念である。まぁ私としてはまた,Steve Martinの怪しげなセリフ回しを真似して喜んでいればいいのだが,それにしてもこれではやっぱりなぁ。星★★。

でもEmily Mortimerって美女って感じではないのだが,コメディエンヌぶりが結構好きだなぁ。彼女だけは許すって感じである。

2009年6月22日 (月)

相当面白い「ハードバップ大学」

Photo 「ハードバップ大学:アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの天才養成講座」 アラン・ゴールドシャー著,川嶋文丸訳(P-Vine Books)

ブログのお知り合い,crissさんが取り上げられていて,どうにも気になって,広島出張の帰りの道すがら,私も読んでみたのだが,これが相当に面白い読み物である。本書の紹介にもあるとおり,「ほとんどの本は(当然ながら)バンドリーダーや時代を象徴するミュージシャンに焦点をあてて書かれているのに対し、ゴールドシャーはサイドメンにスポットライトを浴びせる方法を採っ」ており,このミュージシャンたちの証言が意外なものもあれば,へぇ~って思わせるものもあって,あっという間に読めてしまう書物になっている。

Blakeyを持ち上げる発言があるのは当然であるが,ミュージシャン(サイドマン)同士の相関関係や影響等を見ている方が実は面白い。例えば,日本ではあまり目立つとは言えないBill HardmanやJavon Jacksonが非常に高く評価されていたりするのは意外と言えば,かなり意外である。こういうのは我々素人が評価するのとはおそらく違った視点があるのだろうということにはなるが,このバンドを去来したミュージシャンの名前や逸話を見ているだけで,やはりとんでもないバンドだったのだということを再評価せざるをえなくなってしまう。

そうは言いながら,私はJMのファンというわけではないので,保有しているCDも極めて限定的であり,恥ずかしながら告白してしまえば,Blue Noteの"Moanin'"も聞いたことがないし,現在,ラックに残っているのも「バードランドの夜」と「サンジェルマン」だけである(ほかにも何枚かは持っているはずだが,どこかにしまいこまれてしまっている)。しかし,そんな私でも,この本を読んでいて,猛烈にBobby Watson入りのJMが聞きたくなってしまい(実は私はBobby Watsonの隠れたファンなのだが,JMのWatsonは聞いたことがない),思わず中古で"Heat Wave"をゲットしてきてしまった。そちらは別途記事にすることにしたいが,思わずWatsonらしいフレージングの連発に思わず嬉しくなってしまった私であった。

いずれにしても,この本はハードバップに限らず,ジャズの一断面を切り取ったナイスな書物として多くの人に推薦したい。何よりも,小難しいことを書いていないのが何よりもよいことだと思う。やはりJMは理屈でなく,リズムなのである。この装丁からすればもう少し値段は下げて欲しかったが,大いに楽しめるということで星★★★★☆。

2009年6月21日 (日)

たまらないTerence BlanchardによるJimmy McHughソングブック

Lets_get_lost "Let's Get Lost" Terence Blanchard(Sony Classical)

Terence Blanchardと言えば,このブログでも彼の映画音楽集について取り上げたことがある(記事はこちら)が,あれはあれで雰囲気満点の企画アルバムであった。それに続くかたちで発売されたのが本作だったと思うが,ライナーのサブタイトルにもある通り,"The Songs of  Jimmy McHugh"ということで,彼のソングブックであるとともに,現代の歌姫たちを迎えたこれも企画アルバムである。

その歌姫陣が凄い。現在のジャズ・ヴォーカル界を支える4人と言ってよいが,これがまた適材適所の好唱を聞かせてくれて嬉しくなる。彼女たちが参加していない曲は1曲を除いてテナーのWinstonが代わりに参加するという構成である。

こういう企画アルバムであるから,一本筋が通っていないと,総花的になりそうなリスクもあるわけだが,ここで聞かれる演奏が何とも渋く,基本的には落ち着いた演奏が多い。しかし,これが本当に筋が通った演奏であり,私はこのアルバムは何度聞いても,本当にいいと思わせてくれるのである。ヴォーカルがいいのはもちろんなのだが,それに輪をかけていいのが,Blanchardのラッパであり,歌心もテクニックも大したものである。私はこのアルバムを聞いていて,なぜこの人の人気がもっと出ないのか不思議に思えてしまうぐらいいいのだ。そもそもSony Classicalというレーベルから出たことが不思議なような気もするが,現在はBlue Noteに移籍したとは言え,やはり決定的な人気を獲得しているとは言えないのはあまりに惜しい。

このアルバムも国内盤が出たかどうかも記憶が定かではないが,きっとこれをどこかのジャズ・バーで聞いたら,耳をそばだてるリスナーは多いはずである。少なくとも私にとってはBlanchardと言えば,これということで星★★★★☆。未聴の方はものはためしで聞いて頂きたいと思う。

Recorded in January & February, 2001

Personnel: Terence Blanchard(tp), Edward Simon(p), Derek Nievergelt(b), Eric Harland(ds), Brice Winston(ts), Diana Krall(vo, p), Jame Monheit(vo), Dianne Reeves(vo), Cassandra Wilson(vo)

2009年6月20日 (土)

なるほど,こう来るかって感じのターミネーター4

Terminator_salvation 「ターミネーター4(Terminator Salvation)」('09,米,Columbia)

監督:McG

出演:Christian Bale,Sam Worthington,Anton Yelchin,Moon Bloodgood,Helena Bonham Carter,Bryce Dallace Howard

私はターミネーターのシリーズはすべて見ているが,前作はさすがに厳しいなぁと思っていた。しかし,復活の第4作は私がひいきにしているChristian Baleが出ていることもあり,やはりこれは見ないわけにはいかない。気になるところは前作"T3:Judgement Day"からどう話を展開するかというところにつきるが,なるほどって感じである。この話を作るためにはSam Worthington扮するMarcus Wrightというキャラクターが必要不可欠であり,彼がいなければ,このストーリーは成り立たなかった。

そういう事情もあって,この映画ではこのSam Worthingtonが完全なもうけ役と言ってよいが,このタイトルにある"Salvation"の意味も彼のキャラクターに由来すると考えてよいだろう。重ねて「なるほど」である。

この映画はアクション映画としてはまぁ期待通りというところであるが,人間とマシーンの交錯というところが重要であり,そのあたりは,派手なドンパチだけではない(もちろん派手なドンパチもあるが)。これ以上書くのはマナー違反になってしまうので避けるが,いずれにしても2時間弱という尺も適切で,私はT3よりはずっと楽しめた。もちろん,何じゃそれはというシナリオの弱点がないわけではないし,Arnold Schwarzeneggerへのオマージュ(CGとは恐るべきものなり)は行き過ぎって気がしないでもない。しかし,それを差し置いても許したくなるほどのChristian Bale更にはSam Worthingtonのカッコよさである。星★★★★。

それにしてもHelena Bonham Carter扮するSerena博士はこわかった...。

2009年6月19日 (金)

懐かしのPacheco & Alexander

Pacheco_alexander "Pacheco & Alexander" (Columbia)

このブログでも書いてきたとおり,私は一時期,アメリカのシンガー・ソングライター系の音楽をかなり熱心に聞いてきたのだが,このアルバムもそうした中でLPを買ったクチである。しかもこのアルバムは我が家の数少ないLP群に含まれているから,わざわざCDを買うまでもなかったのだが,なかなかLPを出して聞くというのが面倒になっている昨今,中古で手頃な価格だったのでつい買ってしまったものである。

このアルバムが発売されたのは1971年のことだが,下記のメンツを見てもらえばお分かり頂けるように,ウッドストック系のミュージシャンが参加しているから,これだけで好き者は食指が動くというものだ。更にここにThe Bandのメンバーでも入っていれば大変なことだが,このメンツだけでも十分と言える人たちである。まぁ,プロデュースをしたのがJohn Hallだから,彼の人脈と言ってもよいのだろう。

それでもって,このアルバムを久しぶりに聞いてみて思ったのは,もう何とも微笑ましいまでにフォークだよな~という感覚である。それはそれでいいのだが,Tom Pachecoが書く曲には問題はないとしても,この人,声の線が細過ぎる(Geroge Harrisonをさらにか細くするとこんな感じか)上に,あまり歌がうまくないのが難点だ。歌手としては相方のSharon Alexanderの方がずっとましに聞こえる。そんな弱点を補っているのがJohn Hallのギター・プレイであり,私にとってはこれはJohn Hallを聞くべきアルバムということになってしまう。

ということで,このアルバム,トータルな出来は悪くないとしても,それほどの名盤ってほどのものでもあるまい。まぁ伴奏陣に免じて星★★★☆とするが,私にとってはSSWにはもっと渋い声で迫って欲しいのだ。Tom Pachecoはその後も現役でアルバムを発表しているが,最近は多少は枯れた声になってはいるようでも,敢えて買うことはないかなぁ。

Personnel: Tom Pacheco(vo, g), Sharon Alexander(vo), Richard Bell(p), Harvey Brooks(b), Brad Campbell(b), Jim Colegrove(b), Richard Davis(b), John Hall(g, b, org, melodica, vo), Paul Harris(p, org, key), Howard Johnson(fl-h), Bill Keith(steel), Wells Kelly(ds), Ken Pearson(org), Clark Pierson(ds), Denny Seiwell(ds), John Simon(p), N.D. Smart(ds), Greg Thomas(ds)

2009年6月18日 (木)

Derek Trucksの限定ライブEP現る

Derek_trucks "Already Live EP" The Derek Trucks Band (Victor/SME)

Derek Trucksの最新盤"Already Free"に関しては結構高く評価している私(記事はこちらだが,先日,CDショップをうろついていたらそのジャケのヴァリエーションと言うべきアルバムが目にとまった。店のポップによれば,年に1回のRecord Store Day向けに限定発売されたものらしい。ということで,即ゲットした私である。

このアルバムでは,バンドとしてのタイトな演奏が繰り広げられていて楽しめる。Derek Trucksが狙っているのはワンマン・バンドではなく,あくまでもバンドとしてのサウンドと思わせる。そうでなければ,スタジオ・アルバムでも豪華ゲストを迎えるということもできるが,レギュラーのメンバーに対するこだわりのようなものを感じるのは私だけではないだろう。もちろん,Trucksのギターはいつもどおり安心して聞けるものであり,ファンは大いに楽しめるはずである。また,私のとってこのバンドが魅力的に響くのはTrucksのギターに加えて,Mike Mattisonのヴォーカルが渋くてよいという点も挙げておこう。

今回のアルバムの中で,私が面白いなぁと思ったのが"My Favorite Things"の収録である。もともと,Trucksはデビュー・アルバムで"Mr. PC"やら"So What"やら"Naima"を演奏していたから,"My Favorite Things"をプレイすることには不思議はない。それでも,かなりColtrane的なものを感じさせるアレンジである。もちろん,Derek Trucks Bandとしての演奏はColtraneほど重厚なものではないとしても,なかなか面白い演奏であった。本人たちもWebサイトに書いているが,このバンドにはインド音楽の影響もあるようで,ここでの演奏(フレージング)は確かにそういうところを感じさせる。しかし,基本的にはアメリカン・ロック好きが聞いても全く問題ないというものなので,こういう選曲をしていても,恐れることなく聞いてもらいたいものである。(但し,べらべらしゃべり続けたり,馬鹿げた奇声を上げる聴衆には相当冷めるが...。)

全体の演奏としてはもう少しドライビングな高揚感があってもよいように感じるので,評価としては星★★★☆程度と思うが,ファンは必聴であることは間違いない。この秋にはDoobie Brothersとダブルビルで来日するらしいが,今の旬は間違いなくこちらのバンドである(Doobiesも好きだけど...)。狭い会場で彼らだけで単独公演してくれないだろうか...。

Recorded Live at the Wilma Theatre, Missoula, Montana on September 17, 2008 and at th Lobero Theatre in Santa Barbara, California on September 21, 2008

Personnel: Derek Trucks(g), Mike Mattison(vo), Todd Smallie(b, vo), Yonrico Scott(ds), Kofi Burbridge(key, fl, vo), Count M'Butu(perc, vo)

2009年6月17日 (水)

祝・山下洋輔トリオ復活祭:「ミナのセカンド・テーマ」をついに聞く

Photo 「ミナのセカンド・テーマ」 山下洋輔トリオ(Victor)

山下洋輔トリオ結成40周年を記念して,日比谷野音でリユニオン・ライブが来る7月に開催されるらしい。歴代トリオが一堂に会するというこの企画,無茶苦茶行きたい!と思いつつ,日曜日では家族の手前無理だよなぁ。まぁそれはさておき,40周年を祝してというわけではないが,今回中古でこのアルバムを拾ってきた。

実のところ,私の洋輔体験は坂田明が加入して以降の音源ばかりで,中村誠一在籍時の音源を聞くのは初めてではないかと思う。このアルバムも昔から知ってはいたものの,このジャケを見て,ずっと避けてきたのも事実である。しかし,そんな私の今までの行動をこれを聞いて今さら悔いてしまった。それぐらいこの演奏は燃える。このアルバムは山下トリオにとって初のスタジオ録音盤ということだが,最初から山下トリオのアイデンティティは完全に確立されていたということになる。

録音のバランスからすると,ピアノのミキシング・レベルが低いのは残念だが,それでも十分山下トリオの魅力は理解できるはずである。洋輔のピアノも,中村誠一のテナーも凄いが,何よりも強烈なのが奔馬のごとき,森山威男の強烈なドラミングであろう。私は後の小山彰太のドラムスも好きだが,ドラムスの一打の重さは森山の方が上だろう。これはマジで痺れる。また,中村誠一はその後コンベンショナルな演奏が増えたと思うが,ここではきっちりフリー・ジャズをやっているのが素晴らしいし,この野太いテナーに私は参ってしまった。

いずれにしても,スピード感,ドシャメシャ感,爽快度どれを取ってもこれは高く評価しなければならないアルバムである。こんなアルバムをこの年になるまで聞かなかったなんて,山下洋輔に謝りたくなってしまった。こうなったら,「ダンシング古事記」も入手せねば。やっぱり洋輔はこういう演奏に限るわ。結成40周年のご祝儀も含めて星★★★★★である。

尚,余談ながら永らく廃盤になっていた洋輔のFrascoレーベルの諸作がSHM-CDで再発されるとのことである。私はFrascoボックスを保有しているのでどうでもいいが,せめて「モントルー・アフターグロウ」ぐらいは是非この機会を逃さずゲットして頂ければと思う。

Recorded on October 14, 1969

Personnel:山下洋輔(p),中村誠一(ts),森山威男(ds)

2009年6月16日 (火)

追悼,三沢光晴

Photo 私の年代はプロレスに血湧き肉踊らせた世代である。よって,プロレスに対していろんなことを言う輩がいようが関係ない。ショーだろうがなんだろうが,それがプロレスだと思えば腹も立つまい。

そんな私はプロレスと言えば,ジン・キニスキーだ,ダニー・ホッジだ,ブルーノ・サンマルチノだのと一々「古い」クラシック・プロレス・ファンなのは事実だが,それでも三沢光晴がタイガー・マスクの仮面を脱ぎ去ってからの打撃系(エルボー),スープレックス,そして飛び道具の組み合わせは非常に魅力的に映ったのは事実である。

その三沢が突然亡くなったというニュースは,プロレスから離れて久しい私にとってもあまりにショッキングであった。あれだけタイガー・スープレックスを決めまくった三沢(写真を見よ!)がバックドロップごときで頚椎をやられてしまうというのは嘘だろうというのが正直な感想である。しかし,亡くなってしまったものは仕方がないとしても,今やテレビ中継もない状態での突然の訃報は寂しいと言わざるをえない。

ジャンボ鶴田が亡くなった時もショックだったが,今回のショック度はそれを上回って余りある。これが日本の「プロレス」の終わりにならなければいいがというのは私の考え過ぎかもしれないが,それにしても残念である。本件に関する福澤朗のコメントを聞きたいと思うのはきっと私だけではあるまい。リングに散った三沢に感謝と哀悼を込めて合掌。ありがとう,三沢光晴。もうプロレスを見る気力がなくなったのはきっと私だけではないだろう。

2009年6月15日 (月)

全く知らなかったピアニストのアルバムを選曲で購入:結果やいかに

Greg_reitan "Some Other Time" Greg Reitan (Sunnyside)

参加しているミュージシャンは全く知らないのに,つい買ってしまうアルバムというのがある。そうした判断をさせるのは曲目とジャケットの雰囲気であるが,このアルバムもまさしくそれである。昨日のMarc Coplandの記事でも出てきたタイトル・トラックに加え,リーダーReitanのオリジナル,著名なジャズ・スタンダード,更にはBeatlesの"Dear Prudence"やPat Methenyの"Bright Size Life"所収の"Unquity Road"なんかをやっているというのが,非常に私には興味深かったのである。ジャケもまぁそれなりの雰囲気だし。ということで,発売されてからしばらく経過しているが,今年になってから発売されたアルバムということで,ここでは新譜扱いとさせて頂く。

それでもって結果はと言うと,これがなかなかの当たりであった(安堵)。冒頭の"All of You "はChick Corea的な響きも若干あるが,基本的には淡々としながらも,美しい響きを持つピアノ・トリオ・アルバムと呼んでいいだろう。さすがに本人がMySpaceで影響を受けたミュージシャンの第一にDenny Zeitlinを挙げるのもさもありなんって感じである。バックの2名もなかなかの好演で,やはり米国ジャズの人材の豊富さには驚かされると言っておこう。ベースのJack DaroはJeff GolubやRick Braunのアルバムに参加しているようだから,アコースティックながらフュージョンとの越境型ミュージシャンと思わせる一方,ドラムスのDean KobaはJeff HamiltonやJoe LaBarberaに師事したようだから,こちらはバリバリのジャズ専門であろう。

ただ,文句がないわけではない。"Giant Steps"の凝ったアレンジが成功しているとは思えないし,"Dear Prudence"の8ビート展開も疑問である。前者については,この人のピアニストとしての資質よりも,作曲者としての資質が勝った結果のオーバー・アレンジメントのようにも思えるし,後者については,私はここは8ビートを刻むのではなく,よりバラード的な展開で迫った方がよかったと思う。例えば,Brad Mehldau(彼が東京TUCでソロで弾いた"Dear Prudence"を私は今でも鮮明に記憶している)の持つ研ぎ澄まされたような美的センスをこの人が持ったときに,もう一歩先のピアニストに転じるように思えるのだ。こうした演奏がアルバムの中でやや浮いてしまっているのが残念である。

しかし,全体的に見れば,デビュー・アルバム(35歳だそうだから,決して早いデビューとは言えないが...)としては上々の出来と言ってよいだろうし,今後の活躍に期待してよいと思う。そして,この人のオリジナルはなかなかよい。さすが作曲をかなり集中的に勉強したように見えるだけのことはあるわ。星★★★☆。

Recoreded between February and March, 2008

Personnel: Greg Reitan(p), Jack Daro(b), Dean Koba(ds)

2009年6月14日 (日)

またもMarc Coplandである

Marc_copland "Time within Time" Marc Copland(Hat Hut)

先日もこのブログでCoplandのソロ・アルバム,"Poetic Motion"を取り上げた(記事はこちら)ばかりだが,私の期待を裏切らない美的世界にうっとりしてしまって,もっとソロが聞きたいなぁと思っていた。私はこのHatologyでのソロ・アルバムの存在も知ってはいたのだが,なかなか入手が容易ではなさそうだったので,米国のとあるルートから直接仕入れたものである。

Coplandは同じ曲を何度か同一アルバムに収録することをよくやるわけだが,ここで選ばれているのが"Some Other Time"である。何と3つのキーで演奏をし,4回も入っている。いつも思うのだが,Coplandのこうしたパターンは選ばれた曲をプレリュード,インタールードそしてクロージングとして使っているというものだろうが,一般のリスナーには何じゃそりゃの世界も,ファンにはOKという超贔屓目モードの私である。

それにしてもこのアルバムも,ネクラの私には非常に素晴らしく響く。現在,こういうピアノが弾けるのはCoplandとFred Hersch(余談だが,Herschの新作はソロでボサノバをやるらしい。興味津々だが,ちょっと不安。)だけだと思うが,やっぱりいいわぁ。こういう音楽をいつ聞けばいいのかとも思うが,やはり夜中に「膝を抱えながら」聞くと最高だろうと思う私はやはりネクラである。

2曲目の"River's Run"はニューヨーク・トリオの第2弾でも聞かれたが,まさしくたゆたうような「川の流れ」のような曲で,トリオもよかったが,このソロもよい。そのほかにもCoplandのオリジナルと有名ジャズ曲を交えているが,彼の書くオリジナル曲は私の心の琴線に触れる。"Some Love Songs"(これもよかったなぁ。記事はこちら。)にも収録の"Time Was"やら"Round She Goes"なんてソロでもたまらん。ジャズ曲は極めて著名な曲と言える"Footprints"にしろ,"Django"にしろ,"All Blues"にしろすっかりCopland色に染めてしまうのがこの人の凄いところである。更にラストの"Some Other Time(4回目)"の前を締めるがDon Sebesky作の"You Can't Go Home Again"という選曲に私は完全にまいってしまった。この世界にはまった人間はやはり抜け出すのに苦労するのである。やっぱり私はCoplandには点数が甘いとは思いつつこの麻薬的な響きに星★★★★☆。たまらん。

Recorded on July 28 & 29,2004

Personnel: Marc Copland(p)

2009年6月13日 (土)

George Garzoneの新作が渋くてよい

Garzone_2 "Among Friends" George Garzone(Stunt)

デンマークのStuntレーベルから発売されたGeorge Garzoneの新作は,まずSteve Kuhn,Paul Motianとの共演というのに驚かされるが,演奏を聞いてまた驚いた。バラッドとミディアム・テンポを中心とする演奏で,これが何とも渋いのである。自身のバンド,Fringeでは激しい演奏を聞かせるGarzoneであるが,こういう渋い演奏を聞かされると,本質はどちらなのかと悩んでしまうが,それでもこれはよい。

スタンダード3曲,オリジナル5曲という選曲のバランスもいいし,全体を通して演奏もかなり楽しめる。一聴して,私はColtraneの"Ballads"でも意識しているのではないかと思ってしまったのだが,先述のとおり決してバラッドだけではない。しかし,感覚的には"Ballads"的なところも強く感じさせ,雰囲気満点,こういうのはやはり夜聞きたいタイプの音楽であり,私としてはもろ手を挙げて推奨したくなってしまう。ただ,私はどうもGarzoneのソプラノはあまりいいとは思えない(特にラストの"Free"はアルバムのイメージを崩していないか?)ので,ここは全部テナーで通して欲しかったようにも思える。しかし,バックのトリオの好演もあって,これはなかなかの好アルバムとなっている。

ベースのAnders Christensenという人は聞いたことがなかったが,音色もバッキングもかなりの実力を感じさせて要注目の人と聞いた。それにしても,ライナーにある通り,Garzone58歳,Kuhn70歳,Motian77歳だそうである。それに比べてまだまだ若いと言ってよい私は一体何をしているのか。何とも複雑な気分に陥ってしまったが,これはリスナーの期待に応える佳作であることは間違いない。星★★★★。これがテナーだけだったら,半星は追加していたかもしれない。ついでながら,私が購入した盤には,Stuntのレーベル・コンピがオマケでついていたが,そちらは未聴。

Recorded on September 24, 2008

Personnel: George Garzone(ts, ss), Steve Kuhn(p), Anders Christensen(b), Paul Motian(ds)

2009年6月12日 (金)

『一駅族』,中年音楽狂

私がブログで使っているココログのニュース・コーナーを見ていたら,「密かなブーム『一駅族』」とある。どれどれと思って見てみれば,「『平日の運動に関する意識調査』の結果から、東京23区内で、通勤・帰宅中に一駅区間分ほど歩いているビジネスマンが増えていることが明らかとなった。」のだそうである。

実は私も出張しないで東京にいるときは,オフィスの最寄り駅の一駅手前で降りて歩いているから,私も立派な「一駅族」ではないか。世の中のサラリーマン諸氏と同じく,メタボリック症候群間違いなしの体型是正と運動不足解消のために始めたのだが,これが結構続いている(現在約1カ月経過)。

私は一駅歩いて,かつオフィスの階段を120段(6階分である)歩いて登るのをノルマとしているのであるが,階段を合わせるとトータルで約25分の有酸素運動ということになる。最後の階段はかなり厳しくて,オフィスに着くころにはひ~ひ~言っているが,こうしたシンプルな運動不足の解消でも思わぬところに効果として出てきている。実は一駅族を始めるとともに,週末の運動不足解消にサイクリング等に取り組むようになってから,血圧が一気に下がったのである。私は人間ドックでも高血圧を指摘されており,血圧降下剤を飲みながら暮らしていたのだが,運動を始めただけで,上の値が40近く下がって,極めて正常な値となったのである。これはちょっと嬉しかった。

しかし,まだまだ体重減にはつながっていないところが不満ながら,地方出張でうまいものばかり食べていたら,それはやせるわけがないのである。血圧が下がっただけでもよしとしよう。これから梅雨が本格化すると,駅間を歩くのはちょっと嫌な気もするが,継続は力なり。頑張らねば。それにしても今日は何ともオジンくさいネタになってしまった。

でも,みんな考えることは一緒なのねぇ。

2009年6月11日 (木)

声よし,歌よし,でもジャケは...

Leela_james "Let's Do It Again" Leela James(Shanachie)

3月に発売のアルバムなので,新譜と呼ぶにはちょっと時間が経っているが,新譜扱いとさせて頂こう。先日,近所のCDショップをうろついていて,このアルバムを見つけたわけだが,Leela Jamesってファースト・アルバムも持っていたなぁと思いつつ,今一つ印象がクリアではなかった。しかし,今回はカバー・アルバムということもあり,ジャケには全く食指は動かされなかったものの,購入と相成った。

ジャケットはいけていないが,歌と声はこれが素晴らしい。選曲はJames BrownからWomack & Womack,Stones,更にはForeigner等と幅が広いが,このディープなボイスでこんな曲を歌われたら,それだけで参ってしまうというアルバムである。まじでこれはよい。ソウルの女性シンガーのアルバムとしては声よし,歌よし,選曲よし,なおかつ適度なリラクゼーションも感じさせてかなりいけている。一躍私のヘビー・ローテーション盤入りである。それにしても,比較的新しめのソウル・ナンバー(+α)のカバー集ってのはベタなプロデュースだとは思うものの,これだけいい歌を聞かせてもらえば,文句も出ないわ。

こんなにいいアルバムが作れるのであるから,さぞやファーストもよかったのだろう。これはちゃんと聞いていなかったに違いない私が悪いということで,さっさと聞きなおすこととしよう。それにしてもファーストはメジャーのWarner Brothersからだったのに,なんでいきなりマイナー落ちしたのだろう?まぁそれでもまだまだ20代も半ばということで,花開くのはこれからである。将来への期待も込めて星★★★★★としてしまおう。気が早いがソウル部門今年のベスト盤候補である。いや~,それにしても今年は豊作である。

Personnel: Leela James(vo), Ralph Kearns(key, vo), Steve "Supe" White(ds), Christopher "Rahboo" Sabb(b), Ricardo Ramos(g), Rudy Bird(perc), Theodross Avery(sax), Kenuatta Beasley(tp), Roland Barber(tb), Tiffany T'Zelle(vo), Darchele Todd(vo), Andrea Martin(vo), Melonie Daniels(vo), Linwood Smith(vo), LaTasha Jordan(vo)

2009年6月10日 (水)

「ECMの真実」増補改訂版登場

Ecm 「ECMの真実(増補改訂版)」 稲岡 邦彌(河出書房新社)

レコード・レーベルとしてのECMについて掘り下げた著作のほぼ10年ぶりの改訂版である。ECMフリークとは言わずとも,それなりのファンである私としては初版は保有していても,その後の10年間を振り返るパートがあるこの本は買わないわけにはいかない。

比較したわけではないので,初版とどれだけ違いがあるのかはわからないのだが,第5章が「創立40周年を迎えて」がほぼ新たに追加されているか大幅に改訂されているということになるだろう。また,関係者へのインタビュー関係の記事も若干追加されているようである。また,New Seriesに関する記述が大幅に増えているようにも思う。私はさすがにNew Seriesにまでは全面的には手を出していないが,そこでの音楽が現在のECMにおいては極めて重要な地位を占めていることはわかるだろう。

久々にこの書籍を読んでも,ECMのオーナーであるManfred Eicherの美学,更にはその美学を追求するための頑固さがよく感じられるが,こうした哲学なくしてこのレーベルは成立していなかっただろうと思わせる。既に語られているRichie Beirachとの軋轢の話など,今読んでも面白い。

この本を読んでいると,今年中にECMのアルバム・カバーを集めた"Sleeves of Desire"の続編とも言うべき"The Cover of Art of ECM(仮題)",更にはその日本版とも言うべき,「ECM Catalog」がECM40周年を記念して発売されるようである。後者は1枚ずつコメントを付しているらしいので,どちらを買えばいいのかわからないが,私としてはどちらも買ってしまうのだろうなぁと思っている。その前にずっと「積んどく」状態になっている"Horizons Touched"をさっさと読まねば。

いずれにしても,ECMレーベルへの理解を深めるためには必読の書ということは間違いあるまい。星★★★★。

2009年6月 9日 (火)

1Q84:ようやく読了。

1q84_1_2 「1Q84」 村上春樹(新潮社)

私はプロファイルにも書いているとおり,村上春樹のファンであるから,本作の発売が告知された段階から首を長くして待ちわびた読者である。よって,期待値は高いというのは当たり前なのだが,今回の本作の売れ方は私の感覚ではある意味異常だ。もちろん,世の中に村上春樹のファンは多数いることは承知しているとしても,妙に渇望感を煽る新潮社のマーケティング戦略にまんまとやられているような気がしないでもないし,また,バカ売れするのはいいが,こうしたブーム的な環境の中で,この村上春樹的シュールな世界にどれだけの読者が付いて来れるのか心配になってしまう。だって訳が分からないと言ってしまえば,その通りであるから。

ネット上のレビュー等を見ていると,否定的な意見も多く見受けられるが,私は村上春樹のメタファーがどうのこうのというよりも,この人のストーリーテリングに身を委ねるタイプの読者であるから,今回も村上春樹的なるものを十分楽しませてもらった。いろいろな批判もあろうが,これだけ私の凡庸な想像力を刺激し,ワクワクさせてくれる作家はなかなかいないことを考えれば,私にとってはやはり大した作家である。

それでもって,今回の作品であるが,私は人物の造形(主人公だけでなく,脇役も含めてである)が非常に面白い一方,説明不足で終息してしまう部分,あるいはこれからどうなるのかが読めない部分もあるから,私は本作には続編が伴うのではないかと予想している。本作が上・下巻ではなく,Book1/2という体裁なのもそれを示唆しているように思えるからである。

本作を評して,村上春樹的なパターンの踏襲を「才能の枯渇」云々と言う人々もいるが,はっきり言って村上春樹には相応のパターンがあるのは事実であり,多くの読者はそのパターンを楽しんでいるということを無視しているとしか思えず,批判は全く当たらないと言わざるをえない。別にこういうものだと思えばいいのである。目くじらを立てること自体,私には無意味に思える。確かに今回の作品,やや設定に無理があるのではないかと思わせる部分がないわけではない。しかし,重要なのはこれだけの長編を一気に読ませる彼の筆力である。途中から物語の多重構造の交錯は見えてくるわけだが,私はBook2の後半でページをめくるのを止められなくなってしまったという事実は素直に評価しなければならないとは思う。

ではこれが村上春樹の最高傑作かと言えばそうではないかもしれないが,長らくの渇望感を経ても,十分楽しませてもらったという点では評価したい。実際面白かったと思うので星★★★★☆。

2009年6月 8日 (月)

Eddie Jobsonの新バンドはかなりヘビーだ

Ukz "Radiation" UKZ(Glodigital)

Eddie Jobsonが結成した新バンドのデビュー・ミニ・アルバムである。何とギターはAlex Machacek(彼のTriangle Sessionの記事はこちら)が弾いているではないか。それが私をこのアルバムに走らせた最大の要因である。

Eddie Jobsonが仕切ったことと,このバンド名からすれば,UKの発展形のような音楽性と想像するのが普通である。かつAllan Holdsworthと近似性を持つMachacekがギターなんだから尚更だが,このアルバムはUKよりもかなりヘビーな感覚が強い。特に冒頭のタイトル・トラックなんて,最近のKing Crimsonのようにも聞こえるハードさである。その割に2曲目の"Houston"なんて結構スイートな曲調で落差が大きいが。また,その次の"Tu-95"は超ハードなインスト・ナンバーなので,どこが本質かつかみにくいのも事実である。

Jobsonがこのバンドで意図したものが何なのかはよく分からない部分があるが,今回は4曲入りのEPということであり,これだけでこのバンドの全貌をつかむのは無理と考えた方がよいだろう。このバンド,今年の1月にはNYCのTown Hall(ここはミッドタウンのど真ん中にある結構歴史のあるホール)でライブもやったようだが,本アルバムのレパートリーに加え,UKやCrimsonまでやってしまったらしい。しかし,ライブ1本をこなすにはまだまだ曲が少な過ぎるという反応もあったようだから,このアルバムはEddie Jobsonのシーンへの復帰の挨拶状のように捉えればいいのではないだろうか。

それにしてもテクニシャン揃いのメンツだからフル・アルバムが出たら,やっぱり買ってしまうのかなぁとも思う。プログレ・ファンは一応聞いておいて損はないと思う。某ショップなら結構安いし。Jobsonの復帰を記念するご祝儀として星★★★★。

しかしよくよく調べてみたら,このバンド来日中じゃん!知らなかった。集客が心配だ(余計なお世話だが)。UKZのライブの後にもMachacekはMarco Minnemann,Kai Eckhardと組んでライブハウスに出るみたいだ。う~む,そっちも気になるなぁ。

Personel: Aaron Lippert(vo), Trey Gunn(10-string Touch Guitar), Eddie Jobson(key, el-vln), Alex Machacek(g), Marco Minnemann(ds)

2009年6月 7日 (日)

ラップの元祖?

The_message "The Message" Grandmaster Flash & the Furious Five (Sugarhill)

私がこの手のアルバムをこのブログで取り上げるのは初めてのことである。どちらかと言えば私の音楽的嗜好は幅広い方だと思うが,ラップやヒップホップは実はあまりその魅力がよくわかっていない。ただ,ラップでびしっと韻を踏まれた時の心地よさは理解しているつもりではあるが,それにしても私がなんでとこんなアルバムをと思われる方がいても全く不思議ではない。単なる気まぐれである(爆)。

私がラップが好きか嫌いかは別にしても,このアルバムが出たのは1982年のはずだが,それから四半世紀以上を経て,ラップは完全に市民権を得るものとなった。もはや日本語ラップまであるのだから時の流れと言うのは恐ろしい。

私が本作を初めて聞いたときには,何だかおもろい音楽だなぁと思ったことは思ったのだが,私の指向とは相容れずという感じだった記憶がある。私は完全にジャズに走っていた頃だから当たり前である。しかし,本当に久しぶりにこのアルバムを聞いてみて,ラップあるいはサンプリングもまだまだ創生期のものだなぁと思わせる時代感を漂わせている。それでも,こういう音楽が端緒となって,現在のヒップホップやラップが成立しているとすれば,このアルバムに一方ならぬ思い入れを持つリスナーがいてもそれも当然のことである。

よくよく聞かなくてもわかるとおり,いろんなネタをいじくりながら,このアルバムの曲は構成されていて,今にして思えば結構笑えるネタが多いなぁとつい懐かしんでしまった私である。このアルバムにはラップはもちろん含まれているが,ラップだけではなく,妙にスイートな曲調も含まれているのでので,私でもまぁOKってやつである。いずれにしてもアメリカの音楽界の歴史を紐解くためには聞いておいても損はあるまい。今になっても私の趣味とは言えないが,懐メロだと思えばいい話である。歴史的価値込みで星★★★★。

ちなみに,カラオケで曲が歌えなくなるととたんにラップ化する私である(爆)。私の生活にまで入り込んだラップ恐るべし,なんちゃって。

Personnel: Grandmaster Flash(vo), Grandmaster Melle Mel(vo), Cowboy (Keith Wiggins)(vo),  Duke Bootee(vo), Raheem(vo), Scorpio(vo), Doug Wimbish(b), Dwain Mitchell(key),  Ed Fletcher(perc),  Gary Henry(key), Dwain Mitchell(key), Keith Leblance(ds),  Skip McDonald(g), Jiggs Chase(Prophet),  Reggie Griffin(Prophet), Sylvia Robinson(Prophet)

2009年6月 6日 (土)

タイトルにだまされると痛い目にあうMiroslav Vitousの新譜

Vitous "Remembering Weather Report" Miroslav Vitous Group with Michel Portal (ECM)

それにしても何というタイトルだろうか。Weather Report設立メンバーながら,途中で袂を分かったVitousがなぜ?と思うのが人情のタイトルである。このタイトルを見れば,VitousがWR的な演奏に取り組むのかと多くの人が思うであろう。

しかし,Vitousはライナーで「このアルバムは極めてクリエイティブだった時代のWR作品を記念したものだが,ここではWRのレパートリーを再演するのではなく,1970年にWRに私が持ち込んだコンセプトを使って,新曲を演奏したものである。」と書いている。こういう文章を書いてしまうと,Vitousは性格があまりよろしくなくて,今だにその後のWRに怨念を抱えていているのではないかと思いたくもなってしまうが,まぁそれはそれとして置いておこう。いずれにしても,Vitousのライナーを読まなくても,これは絶対WR的になるはずはないよなぁというメンツであり,ここに収められた演奏はかなりフリーなアプローチによるものだから,一般のリスナーは要注意である。

冒頭の"Variations on W. Shorter"はVitousも書いている通り,"Nefertiti"をフラグメント化したものであるが,フラグメントと言うよりも濃厚に"Nefertiti"のメロディ・ラインが出てくるので,まずそこでのけぞってしまう。その後も全編フリー・ジャズと言ってもよい演奏であるが,テンションもレベルも高い。よって,音楽だけを評価するならば星★★★★ぐらいを付けてもいいのだが,でもやはりこのタイトルはないだろう。何ともリスナーの期待感だけを煽っておきながら,実は自分のやりたいことをやりましたっていう感じなのである。これはある意味詐欺的であって,こういうタイトルを付けるVitousの商売っ気を感じてしまって,大いに冷めてしまった私である。そうした違和感を含めるとこのアルバムには星★★★しか付けられない。

多分,同じように感じる人は他にもいらっしゃるはずだと言っておこう。何とも複雑な気分である。

Recorded fall 2006 and spring 2007

Personnel: Miroslav Vitous(b), Franco Ambrosetti(tp), Gary Campbell(ts), Gerald Cleaver(ds), Michel Portal(b-cl)

2009年6月 5日 (金)

やはりBuzz Feiton入りのDave Weckl Bandはカッコいいのだ

Synergy "Synergy" Dave Weckl Band(Stretch)

私はDave Wecklのレギュラー・バンドが結構好きで,このブログでこのバンドの前作"Rhythm of the Soul"を取り上げたことがある(記事はこちら)。そこでも指摘したのだが,当時のバンドにおいてギターのBuzzy Feitonの果たした役割の大きさである。もちろん,Feiton抜きでもWecklのバンドはかなりいい線を行っているのだが,Feiton入りの時が図抜けて素晴らしいと感じるのはおそらく私だけではあるまい。

ここでもFeitonのリズム・カッティングがキレまくっており,それがただでさえタイトなこのバンドのグルーブを更に活性化させているのである。これぞタイトル通りの"Synergy"が効いているってやつである。例えばこのアルバムに入っている"Swamp  Thing"という曲における,まさしくスワンプ臭プンプンのギター・フレーズなんて,ジャズ一辺倒のギタリストには絶対無理と言いたくなるようなものである。ロック系のセッションもこなすFeitonだからこそこのフレーズが出てくるのよねぇと言いたくなるようなものであり,この曲のギター・フレーズを聞いているだけでも,スワンプ・ロックも好きな私のような人間は激しく反応してしまうのだ。

Wecklは見る限り,自身がリーダーとなる場合にはレギュラーのバンドでの演奏に相当こだわっているようだし,日頃からの活動を通じて得られるグルーブを大事にしているように思えてならないが,それは決して悪いことではなく,私が彼のバンドが好きなのも,常にリスナーが期待するタイトなグルーブを実現してからなのである。もちろん,商業的には豪華ゲストを迎えてという方が売り上げは立つだろうが,Wecklの頭にはそうしたせこい考えはないということであろう。いずれにしてもやりたい音楽をやりたいようにやるという姿勢は評価していいし,このアルバムも私は十分楽しめた。星★★★★。

ここしばらく,Dave Weckl Bandとしてのアルバムは出ていないと思うが,是非Buzzy Feiton入りで一度来日して,キメキメの音楽を披露して欲しいものである。

Recorded between January 18 and 22, 1999

Personnel: Dave Weckl(ds, perc), Brandon Fields(ts, ss, bs, EWI, key), Buzz Feiton(g), Jay Oliver(key), Tommy Kennedy(b)

2009年6月 4日 (木)

David Darling:環境音楽としてのECM

Cello_2 "Cello" David Darling(ECM)

David Darlingによるソロ・チェロ(!)によるアルバムである。世界広しと言えども,世の中のジャズ・レーベルでソロ・チェロのアルバムを作れるのはECMをおいて他にあるまい。しかし,そんなことは別にしても,このDavid Darlingという人のチェロの響きは癖になる。

私が,この人のチェロを初めて認識したのはWim Wendersの"Until the End of the World"のサウンドトラックだったかもしれないし,ECMのアルバムにおいてだったかもしれない。ただ,私に強い印象を残したのは明らかに前者であり,サウンドトラック(コンピレーション)ながら,アルバムが非常に強い統一感を持つアルバムの中での,Darlingのチェロが非常に魅力的に響いたと記憶している。今でもそのアルバムは取り出しやすい場所に置いてあって,結構好きなアルバムという位置を占めているのは,サウンドトラックとしては極めてまれな事象である。

それはさておき,本作に収められた音源はもはやジャズでは決してない。本来ならばECM New Seriesでの発売が適切ではないのかというタイプの音源である。しかし,これこそECMのキャッチフレーズ,"The Most Beautiful Sound Next To Silence"という感じのサウンドではないのかと思う。即ち,これはもはや環境と同化したアンビエンスを生み出すものであって,私には環境音楽として捉えるのが最も適切のように思えるのである。

私は,ストレスフルな現代人にとって,こうした音楽を必要とする時があると考えており,ECMのジャズ・レーベル以外の存在意義として,こうしたタイプの音楽をかなり早い時期からリリースしていたことを挙げなければならないと常々考えてきた。

もちろん,こうした音楽を聞いて,映画のBGMのようではないかというリスナーがいてもそれは不思議なことだとは全く思わない。しかし,そんなリスナーでも世界にはこうした音楽を求めている人間がいることは認めなければならないとも思う。映画のBGMには相応の意義があるし,各ジャンルの音楽も同様のはずである。よって,この音楽は,何ら前提条件をつけることなく,ただ自然に音楽に身をゆだねればよいというのが私の感覚である。好き嫌いはあって当然だが,音楽と環境が同化してしまえば,この音楽が常に流れていても,私には苦痛とはならないのである。

一方で,これを批評的に眺めるのはすごく難しいのも事実であり,環境音楽は容易ではないとついつい考えてしまった。環境と同化しているのであれば,音楽としての評価は不要になるはずなので,星での評価対象からはずすが,気持ちのいいCDであることは間違いない事実である。

Recorded in November 1991 & January 1992

Personnel: David Darling (cello, 8-string electric cello)

2009年6月 3日 (水)

Bob Bergが吹きまくるポーランドでのライブ盤

Acoustic_quartet_2 "Exciting Story" Acoustic Quartet(Walk Away)

バンド名だけみるとなんのこっちゃと思わせるこのアルバムはテナーサックスの聖地,新橋Bar D2のマスターから教えて頂いたアルバムである。マスター得意の「これご存知ですか」攻撃を受け,私は「いつも通り」全く知らなかったアルバムなのだが,Bob Bergのワンホーンで,5曲中3曲ながらJoey Calderazzoもピアノを弾いているではないか。う~む,これだけで食指が動くのに,お店で聞かせて頂いた冒頭の「枯葉」からBob Berg吹きまくりである。"Invitation"も引用しながらブリブリ吹かれて思わず昇天寸前となった私であった。とは言え,ポーランド原盤らしいこのアルバムが入手できるのか心配だったのだが,時間は掛っても某サイトで意外に容易に入手できた。

このアルバムはポーランドのリズムにアメリカ人のサックス,ピアノが加わるという編成になっているが,ベースもドラムスも現地ではそれなりに有名な人たちのようである。特にドラムスのKrzysztof Zawadzkiは自らフュージョン・バンドWalk Away(本作のレーベルとは何らかのつながりがあるのだろう)のリーダーも務めているらしいし,フュージョン系の著名な連中(Scott Henderson,Bill Evans,Dean Brown,更にはMetro!等)とも共演経験豊富である。ZawadzkiのWebサイトには,この演奏のリーダーは彼だったと書いてあるので,彼が米国人ミュージシャンの招聘の責任者だったということか。フュージョン・バンドのリーダーとしての特質は2曲目"Sixth Sense"等によく表れているように思う。そもそもこの曲がDave WecklとOtmaro Ruizの共作らしいから,普通の4ビートにはならないのは当たり前だが。

いずれにしても,最初の2曲はピアノがDavid Kikoski,残りの3曲がCalderazzoという構成である。それにしても,よくもこれだけブイブイ言わせるような曲を揃えたものである。3,4曲目はベースのAndrezj Cudzichのオリジナル(この2曲がやや地味である)だが,全編を通じてのハード・ブローイング曲のオン・パレードである。

その中で,私の注目はCalderazzoのピアノということになるのだが,それよりも何よりもこのアルバムはBob Bergの吹きっぷりの方が上回るという感じだろうか。最後は何てたって"Impressions"だし。そもそも2曲参加のKikoskiもかなり激しい。一体どうなってるんだって感じである。こんな演奏を聞かせれば,Kikoskiも絶対日本でも人気が出ると思うのだが。Calderazzoは悪くはないが,もっと飛ばしてもよさそうにも思う。尚,タイトル・トラックでは珍しくCalderazzoがエレクトリック・ピアノを弾いており,Acoustic Quartetと名乗りながら,単なるバップ・バンドでは決してないことがわかる。これはKrzysztof Zawadzkiのフュージョン指向の反映と考えるべきだろう。

このアルバムはかなり騒々しいと言ってもいいぐらいのハード・ブローイングだが,全編聞けば相当の満腹感を味わえるはずである。特にBob Bergのファンは必聴,必携のアルバムだと思う。星★★★★。

Recorded in Glogow on November 29, 1996 and in Warsaw on December 5, 1996

Personnel: Bob Berg(ts), David Kikoski(p), Joey Calderazzo(p,el-p), Andrzej Cudzich(b), Krzysztof Zawadzki(ds)

2009年6月 2日 (火)

Ketil Bjornstad:心地よい眠りへの誘い

Floating "Floating" Ketil Bjornstad(Emarcy)

ECMレーベルにも「海」だ,「川」だというタイトルのアルバムを残しているBjornstadだが,本作は「浮遊」である。よほど水がらみのコンセプトが好きなミュージシャンらしい。本作はEmarcyレーベルから発売されたものであるが,ベースはDanielsson,ドラムスとパーカッションンはMazur,更には録音もRainbow Studioということで,プロデューサーさえManfred EicherならそのままECMから出ても不思議はないようなアルバムである。

これまでのBjornstadのアルバムでも,メロディ・ラインの美しさやたゆたうような音楽という特長はあったわけだが,そうした個性はここでも健在である。そして,その音楽がゆったり,美しく流れるものだから,普通にしていても心地よい眠りへと誘う効果抜群の音楽である。実際,私はこの記事をこのアルバムを聞きながら書いているのだが,既に何度かこうべを垂れかけたほどである。こんなメロディをこんなテンポ,演奏で弾かれたら,睡魔にも襲われて当然ではないかと思うが,それでもこのサウンドの美しさについては文句はない。現在,不眠症に悩む人にはこのアルバムを紹介したいぐらいである。おそらく効果覿面であろう。

であるから,ジャズ的なダイナミズムなんて全くなく,ここには静謐で美しい響きのみである。これをジャズだと言えるのかという議論もあろうが,編成は典型的ピアノ・トリオ(但し,Mazurはパーカッション比率高し)だし,まぁ北欧的な響きだよなぁと言えばその通りである。まぁこれはこういう音楽だと認識して聞いている分には心地よいアルバムであるということは間違いないし,私もごくまれにではあるが,たまにこのCDを取り出して聞いているのだが,間違いなく,途中で眠りに落ちて,ほとんど最後まで聞いたことがないという不思議なアルバムである。それは電車でも自宅でも全く同じである。現在,こうしてPCで聞いていても寝そうになるのだから,やはりこれはそういうアルバム,あるいは素晴らしいヒーリング・ミュージックだと思えばいいのではなかろうか。ということで,真っ当な評価ができるのか疑問だが,星★★★★を心地よいヒーリング効果に対して謹呈しよう。

Recorded in May & June, 2005

Pesonnel: Ketil Bjornstad(p), Palle Danielsson(b), Marilyn Mazur(ds, perc)

2009年6月 1日 (月)

強烈な緊張感を伴うAstor Piazzollaの大傑作

Piazzolla "Tango: Zero Hour" Astor Piazzolla(Amrican Clave/Nonesuch)

私はタンゴに関してはGidon KremerがPiazzollaへのオマージュとして発表した作品ぐらいしか聞いたことがなく,恥ずかしながら,本家Piazzollaもちゃんと聞くのは今回が初めてであった。但し,このアルバム,Kip Hanrahanがプロデュースということもあって,以前から気になっていたものなのだが,この度,めでたく中古でゲットしたものである。

私にとってはタンゴのイメージと言えば,哀愁溢れるメロディ・ラインと特異な楽器編成ということになる(やっぱりタンゴと言えば,「ラ・クンパルシータ」なのである)が,もちろんこのアルバムにもそうした特質は備わっている。しかし,おそらく凡百のタンゴ・アルバムと異なるのは,このアルバムに満ちている緊張感ではないかと思うのである。おそらく多くの人にとっても,ここに収められた音楽はタンゴのイメージを覆すものなのではないか。正直こんなにしびれるとは思わなかった。例えば,"Milonga Loca"で聞かれる弦のピチカートの響きなど,もはや現代音楽を凌駕してしまっていると言っても過言ではないし,全編,こんな演奏をされてしまっては金縛りのようになってしまう。とにかく最初から最後まですきも緩みも一切ないハイ・テンションな作品である。

当然のことながら,これはダンス音楽ではない。あくまでもこれは襟を正して聞くべき鑑賞音楽だと声を大にして言いたい。これはAstor Piazzollaが65歳の頃のレコーディングであるが,まさに巨匠の技と言うべき響きに満ちている。こんな音楽を今まで聞かずに生きてきた自分の人生を悔いたくなるほどの傑作。これはまじで素晴らしい。星★★★★★。こんなアルバムを制作してくれたプロデューサーのKip Hanrahanにも感謝したい。もっと早く聞いておけばよかった。タンゴだからと言って,このアルバムを素通りすると絶対に損をする。

それにしてもジャケに書いてあるTango + Tragedy + Comedy + Kilombo(売春宿)=New Tangoというのは謎に満ちているとともに,何とも含蓄に富むような感じだなぁ。

Recorded in May 1986

Personnel: Astor Piazzolla(bandneon), Pablo Ziegler(p), Fernando Suarez Paz(vln), Horacio Malvicino Sr.(g), Hector Console(b)

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