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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2009年5月31日 (日)

Burton / Metheny:安心して聞ける心地よさ

Quartet_live "Quartet Live" Gary Burton, Pat Metheny, Steve Swallow & Antonio Sanchez(Concord)

このバンドが日本に来たのは早いものでもう3年も前になってしまった。私は残念ながら,その時のライブは見逃したが,ついにこのバンドのライブ・アルバムがリリースとなった。

一聴して,Gary Burton,Pat Methenyらしいサウンドが飛び出し,ファンとしては嬉しい出来だと言ってよいが,これは良くも悪くも予定調和の世界である。何と言ってもこの安心感はこのメンツならではであるが,強烈なスリルには乏しいというところである。しかし,BurtonとMethenyのコンビにあっては,スリリングな展開というよりも,両者の楽しげなコラボレーションを楽しめばいいので,そこは全然問題にならない。Swallowもこの二人とは昔からのバンド・メイツであるから,激しく切り込むようなことはしないわけだが,唯一,このバンドに楔を打ち込むような役割を果たしているのがSanchezのドラムスである。私はここにSanchezがいなかったら,もっと牧歌的(あるいはゆるい演奏)になっていたのではないかと思うのだが,彼の突っ込みがこのバンドのテンションを若干ながらも上げたような気がして,Sanchezのプレイぶりを持ち上げておきたい。叩き過ぎって話もないわけではなかろうが,やはりいいドラマーである。

いずれにしても,Burton,Methenyの双方のファンである私もこのアルバムは十分楽しめたし,輸入盤は結構な安値だったので完全に元は取った。聞いていて心地よいので,しばらくはプレイバックし続けることも可能な佳作である。結構選曲がいいのもプラスのポイント。同じリユニオンでも先日酷評したL’Imageとは違うと言っておこう。星★★★★。でもMetheny関係のリユニオンなら,PMGの方が好きです~(きっぱり)。あと,このジャケは趣味じゃないなぁ。

Recorded Live at Yoshi's in Oakland on June 10 & 11, 2007

Personnel: Gary Burton(vib), Pat Metheny(g, g-synth), Steve Swallow(el-b), Antonio Sanchez(ds)

2009年5月30日 (土)

マニアックなJoni Mitchell参加のサウンドトラック

Grace_of_my_heart "Grace of My Heart" Original Motion Picture Soundtrack (MCA)

このアルバムがどの程度の人に認知されているかはわからないのだが,Joni Mitchellファンの間では有名なアルバムである。実は先日eBayに出品されているのを見つけて,叩き合い覚悟でビッドしたのだが,何のことはない。スターティング・ビッドで落札である。何となく拍子抜け。

なぜ,Joni Mitchellのファンがこのアルバムを捜すかと言うと,本作の初回盤にはJoni Mitchellが歌った"Man from Mars"がおそらく誤って収録されてしまい(裏ジャケには映画版のKristen Vigardによる歌唱と書いてある),ライセンス上の問題から,発売直後に回収の憂き目にあったものだからである。その後,Joniのヴォーカルがジャケ記載通りのKristen Vigardに置き換えられたものが正式盤として再出荷されたとのことであるが,このときの初回盤の発行枚数が4万枚,そのうち売れてしまって未回収となったものは数千枚程度と言われている。

よって,マニアの間でも,本作の入手は結構難しそうにも言われていたのだが,蓋を開けてみれば前述のとおりである。私がeBayで競り落としたものはいくつかあるが,中には激しいバトルになったものもある。本作もバトルを覚悟していただけに,決して安いとは言えないものの,この値段ならリーズナブルだというところで落札できたのはありがたかった。Joni Mitchellに関心のない人にとっては,馬鹿げた話にしか聞こえないだろうが,このような行動に私を走らせるのは,JoniとBrad Mehldauだけなのである。ファンの心理とは言え,これでは散財しても仕方ないが,内心うししとほくそ笑む私であった。

ところで肝心の音楽のことを何も書いていないが,とにかくまずはゲットできたことを喜びたいCDなのである。つくづく馬鹿につける薬はないということだ。尚,Joniのヴォーカルが収録されているCDの品番はMCAD-11510である。万一中古屋でこの番号を見つけたら即入手されたい。きっと高値で売り抜ける。但し,中身のチェックはくれぐれもお忘れなく。再発盤はMCAD-11554である。中身がすり替えられている可能性はなきにしもあらずである。

2009年5月29日 (金)

Clapton / Winwoodのライブは十分楽しめるが,Claptonが力み過ぎのような...

Clapton_winwood "Live From Madison Square Garden" Eric Clapton & Steve Winwood(Reprise/Duck)

元Blind Faithのバンド・メイトである両巨頭が久々の共演を果たしたのが2007年のCrossroadフェスティバルであったわけだが,その好評を受けて共演ライブがNYCのMadison Square Gardenで開催されたのは2008年の2月のことである。その場にいられたラッキーな人たちは極めて限定的なはずだが,ようやくそのときの模様がライブ盤となって発売された。これはやはり買わないわけにはいかぬ。

最近,絶好調と言ってよいSteve Winwoodだけでも期待してしまうのに,Claptonと共演するということで,懐かしいと共に,一体どんな演奏をするのかと思ってしまうのは自然な反応である。Crossroadフェスティバルでも映像は見られたが,5曲だけだったので欲求不満が残らなかったわけではなかったので,今回のフル・パッケージは実にめでたい。

ここで展開される演奏は予想通りのものであり,昔からのファンでも,新参者のファンでも満足できるものと言ってよいとは思うが,私にとってはClaptonのヴォーカルがやや力み過ぎ("Forever Man"などに顕著)に聞こえる部分があって,そこはちょっと減点対象だろう。しかし,ギタリストとしての腕はさすがであり,全く素晴らしいソロの連続である。

全体を通じて聞いてみれば,あまりに予定調和的で驚きはないということはあるものの,名人によるレベルの高い演奏を素直に楽しめばよいので腹も立たない。そもそもこの両巨頭に斬新な演奏を求めることは間違っているとも言えるしなぁ。

Blind Faithのレパートリーもよいのだが,私が大いに楽しめたのが"Voodoo Chile"である。"Little Wing"に続くこのJimi Hendrixの曲が,私にとってのハイライトだったと言ってもよいかもしれない。非常に強いエモーションを感じさせる演奏で,私は"Little Wing"よりもずっと気に入ってしまった。いずれにしても,私としてはWinwoodのヴォーカルが全体として楽しめた。

ということで,トータルでは星★★★★ぐらいはつけてもよいだろうが,私としてはWinwoodに他流試合だけではなく,また早々にリーダー・アルバムを作って欲しいと思ってしまう。現役ミュージシャンとしてまだまだいけている人だけに,これからも頑張って欲しいものである。

Recorded Live at Madison Square Garden on February 25, 26 & 28, 2008

Personnel: Eric Clapton(g, vo), Steve Winwood(org, p, g, vo), Chris Stainton(key), Willie Weeks(b), Ian Thomas(ds)

2009年5月28日 (木)

いいんだけどねぇ...。誰のアルバム?

Paolo_recchia "Introducing Paolo Recchia" (VVJ)

中古盤屋をうろついていて入手したアルバムである。VVJと言えば,High FiveやDoctor 3も吹き込んでいるレーベルだなぁ,しかもワンホーンだし...なんて,一昔前の私なら考えられないような動機で買ったものだ。それにしても人間変われば変わるものである。

イタリア系のアルトと言えば,Stefano Di BattsitaとRosalio Giulianiの二本柱だろうが,そこに割り込んできてもよさそうなアルトである。ライナーを開けばStefano Di Battistaが一文を寄せているが,イタリア語なので何を言っているのかはわからないとしても,やはりその系列だろうと想定させるアルバムである。

それでもって演奏はと言えば,まぁイタリアらしい典型的なハードバップである。リーダーのサックスはサックスで楽しめるのだが,BattistaやGiulianiのような切れ味はないように思える。特にスピード感ではBattistaにはまだ及ばないだろう。でもこのアルバムで一番目立っているのは実はピアノのDado Moroniではないかと思えてしまうのである。McCoy Tyner的とも言えそうなハード・ドライビングな弾きっぷりが心地よく,こいつがいけている。Tom Harrellとやっていたときもこんなんだっただろうかと思ってしまったが,ここまでやられるといかに"Featuring"とは言っても,さすがにやり過ぎではないのかと文句の一つもリーダーから出るとか出ないとか。

まぁ,そうは言いながらもリーダーのオリジナルにスタンダード,モダン・ジャズ・オリジナルを交えるというプログラムの効能もあって楽しく聞けるアルバムではある。ただ,最後がサックスの多重録音による"A Nightingale Sang in Berkeley Square"ってのはいかにものプロダクションだなぁって気もしてちょっと微妙。まるでManhattan Transferの"Mecca for Moderns"のようではないか。プロデューサーには文句の一つも言いたくなるが,まぁそれはPaolo君の責任ではないということで,星★★★☆。研鑽を積むことで,更に優れたアルバムを出すこともできそうだと期待しておこう。

Recorded on March 6, 2007

Personnel: Paolo Recchia(as), Dado Moroni(p), Marco Loddo(b), Nicola Angelucci(ds)

2009年5月27日 (水)

遅ればせながらのChris Potter 10

Chris_potter_10 "Song for Anyone" Chris Potter 10(Sunnyside)

何を今さらという気がしないでもないが,Chris Potter Undergroundの新譜も間もなく出ることだし,ずっとアップできていなかったこのアルバムを取り上げることにしよう。

実はこのアルバム,某ショップの半額セールでゲットしたものであり,そもそも評価の高かったアルバムだし,無条件購入した私である。巷のブロガーの皆さんもこのアルバムは高く評価しているが,いや~,これは買ってよかった。ありがたや,某ショップ。もっとやってくれいと言いたい。

それはさておき,このアルバムでは,Potter本人のアレンジによるストリングス,ウインドに乗って,Potterがそれこそ気持ちよさそうに吹いているが,本当にこのアルバムが凄いと思ったのは,そのPotterのアレンジメント能力である。このストリングスは凡百のミュージシャンには無理。少なくとも相応のクラシックの素養がないと無理だと言い切ってしまおう。それでいて,決してサード・ストリームのような中途半端なクラシック/現代音楽かぶれになっているのではなく,ちゃんとジャズになっていることが素晴らしいのである。決して燃え上がるような演奏ではないが,クールな中にも炎のゆらめきのようなものが感じ取れるところが何ともよい。

私はChris Potterの絶対的なファンというわけではないが,遅ればせながら私のPotterに対する評価はこのアルバムを聞いてますます上がってしまった。こんな音楽をやりながら,裏ではUndergroundをやるって,一体この人の頭の中はどうなっているのだろうか。実体がつかみにくい人だと思うが,それでもこれは相当の傑作である。星★★★★★。でもやっぱり何を今さらだよなぁ。

Recorded in August, 2006

Personnel: Chris Potter(ts, ss), Erica Von Kleist(fl), Greg Tardy(cl), Michael Rabinowitz(Bassoon), Mark Feldman(vln), Lois Martin(vla), David Eggar(cello), Steve Cardenas(g), Scott Colley(b), Adam Cruz(ds, per)

2009年5月26日 (火)

Chris Potter Undergroundの新譜が出るようだ

Ultrahang 某サイトをながめていたら,Chris Potterの新譜情報が出ていた。今回もUnderground名義で,タイトルは"Ultrahang"というらしい。彼の前作"Follow the Red Line"を2007年のベスト作の一つに挙げた私としては,一日千秋の思いで新譜の発売を待っていたのだが,ようやくである。是非是非「ウルトラ」な出来を示して欲しいものである。

しかし,レーベルはArtistshareに変更となっているのは,やはりビジネスとしては苦しかったということか。それでもこのバンド,やはり期待しちゃうなぁ。ギターがWayne Krantzではなく,Adam Rogersなのは相変わらずだが,それでも前作のライブはRogersもよかったので,今回も頑張って欲しいものである。

Chris Potterファンは6/25を楽しみに待ちましょう。

2009年5月25日 (月)

King Crimsonをも彷彿とさせる瞬間もあるTigran Hamasyan

Tigran "Red Hail" Tigran Hamasyan (Plus Loin Music)

ほかのブロガーの皆さんも取り上げられているこのアルバム,私が購入しようと思ったのは「プログレ的」という表現が多く見受けられるからだと言っても過言ではない。今まで私はHamasyanのアルバムを聞いたこともないし,皆さんの記事がなければ,この薄気味悪いジャケにはおそらく手を出していない。それでも「プログレ的」というのは気になってしまったのである。

私が洋楽を聞き始めた原点として,プログレッシブ・ロックがあることはこのブログでも書いてきたし,今でもKing CrimsonやYesなどは昔の音源を聞いている。そんな私であるから,どういう音かに関心があった。確かにこれはプログレ的であるし,ジャズのカテゴリーの中でも,相当ハードな演奏だと言ってよい。タイトル・トラックなんてサックスのサウンドゆえというところもあるが,「クリムゾンキングの宮殿」のようにさえ響くし,ギターが入ってくると,更にソリッド感が増すのである。そこに展開されるHamasyanのキーボード・テクニックというのが,このアルバムの売りになるのだろうが,それにしても強烈である。あまりの騒々しさに辟易としてしまう"Falling"のような曲には苦笑せざるをえないが。また,アルメニアのフォーク・ソングと並んで演奏されるこの人の書いているオリジナル曲が非常に個性的で,このあたりは好みが分かれるところではないかと思う。

まぁそれでも,バンドとしてはかなり頑張って作りましたという感覚が強く表れていてそれはそれでいいのだが,この「勢い」頼みの展開は,さすがにまだまだ青いかなぁと感じさせる部分が多々ある。そんな中で,ギターが参加した3曲は実にハード・ドライビングで結構。どうせならこの路線で突っ走ってもよかったのではないかと思う。

尚,一言苦言を呈するならば,ほぼ全編で聞かれるAreni Agbabianのヴォイスはどうにも私には居心地が悪い。まるでChick Coreaのアルバムに現れるGayle Moranの声のように,なくてもいいもの(Gayleが登場するアルバム全部というわけではないが,かなりの部分は私にとってはそうだ)にしか聞こえないのである。Hamasyanの故郷であるアルメニアのサウンドを目指したのかもしれないが,アルバム全体のサウンド・テクスチャーとフィットしているとは思えない。ヴォイスを使うなら使うでいいが,もう少しサウンドとのバランスを考えるべきであって,少なくとも私にとってこの声は全く不要だと言わざるをえない。

ということで,文句は並べつつも,私が入手した情報によれば,彼と私はどうも誕生日が同じ(もちろん年齢は違うが)ようだから,今後も頑張って欲しいものである。星★★★。

Recorded on August 20-22, 2008

Personnel: Tigran Hamasyan(p, key), Areni Agbabian(vo), Nate Wood(ds), Ben Wendel(ss, ts, bassoon and melodica), Sam Minaie(b), Charles Altura(g)

2009年5月24日 (日)

これまた渋いBruce Cockburnのソロ・ライブ

Bruce_cockburn "Slice O Life: Live Solo" Bruce Cockburn (True North)

怒涛のSSW/フォーク・カテゴリーの記事のアップである。これで3日連続だ。それでもって本日のお題はBruce Cockburnである。カナダでは国宝級とまでは言わずとも,かなりの有名人であるが,日本ではメジャーにならない人である。とかなんとか言いながら,私も彼のアルバムはジャケからしてシブシブの"High Winds White Sky"しか持っていないから偉そうなことは言えない。

しかし,この彼のギター1本で歌ったソロ・ライブ作はどえらくよい。何がよいかと言えば,Cockburnの声につきる。これぞシンガー・ソングライターと言いたくなるようなこの手の音楽好きにはたまらない声である。更にそれを魅力的にするのがCockburnのギターの技である。とにかくうまい。もう私なんかはこれだけでOKと言いたくなるような快作である。

きょうで3日連続となるSSW/フォーク・ネタであるが,どれをとってもはずれなし。これも今年のベスト作候補になってしまった。本当に今年はこの手の音楽の当たり年である。サウンド・チェックの模様まで入れなくても,十分傑作なのだから,それはやや蛇足といことで半星原点して星★★★★☆。しかし,これはいいわぁ。

是非今までCockburnを聞いたことがない方にも,聞いてみて欲しいと思うのは私だけではあるまい。来日してくれないかなぁ。

Personnel: Bruce Cockbun(vo, g)

2009年5月23日 (土)

Ramblin' Jack Elliott:爺さんが放った大傑作

Ramblin_jack_elliot "A Stranger Here" Ramblin' Jack Elliott(Anti-)

Ramblin' Jack Elliott,1931年生まれ,今年で78歳になる爺さんである。素晴らしい新作をものにしたBob Dylanにすら影響を与えたと言われるベテラン・フォーク・シンガーが,自らも素晴らしい傑作を放った。これは無茶苦茶よい。最高である。

本作はJoe Henryのプロデュースのもと,Elliotが世界恐慌期のオールド・ブルーズばかりを歌ったアルバムである。世界恐慌と現在の金融危機を重ねたわけではあるまがい,これが素晴らしい歌唱である。人生の年輪を重ねなければ,こんなブルーズは歌えまいと断言してしまおう。

Joe Henryは先日紹介したAllen Toussaint盤も素晴らしいプロダクションぶりだったが,アルバム単位としてはむしろこちらの方が優れていると思わせるような出来である。Elliotのバックを固めるのはいつものJoe Henry一派(Henryはプロデュースに徹しているようだが...)にDavid HidalgoとVan Dyk Parksとあっては,アメリカン・ミュージック好きにとっては悪かろうはずがないのであるが,その伴奏をはるかに上回るElliottの渋い歌いっぷりこそが本作のハイライトである。この音楽に多言は無用。これこそ傑作。確実に私は今年のベスト作に推すであろう。星★★★★★以外にありえない。本作も含めて今年はアメリカン・ロック,SSW/フォーク系のアルバムは大豊作である。素晴らしいことである。こんなアルバムをプロデュースしてしまったJoe Henry,やはり恐るべし。さぁ,皆さんだまされたと思ってこのアルバムを買いましょう。知らなければ損をするような傑作。但し,渋過ぎてお子ちゃまにはお勧めできないが。

いずれにしても,Joe Henryプロデュース,あるいはAnti-レーベルからの作品はほとんどはずれがない。最も信頼のおける制作者,レーベルという地位を確実に私の中で築きつつある。これからもこの調子でやってもらいたいものである。

それにしても,80歳に近づきながら,こんな傑作を生み出せるミュージシャンというのはまさに素晴らしい職業である。ジャンルは違うが傑作"The Gran Torino"を作ったClint Eastwoodは1930年生まれであり,ほぼElliottと同年代というのが凄い。アメリカン爺さん恐るべし。彼らをみならって,私も音楽,映画やさまざまな文化とクロスしながらクリエイティブに年を取りたいものである。

Recorded on July 21-24 and 27-29, 2008

Personnel: Ramblin' Jack Elliott(vo, g), Greg Leisz(g, mandolin, mandola, dobro, weissenborn), David Piltch(b), Jay Bellrose(ds, perc), Keefus Ciancia(p, key), David Hidalgo(g, accor), Van Dyke Parks(p, vib)

2009年5月22日 (金)

素晴らしかったBrian Bladeの歌モノ・アルバム

Mama_rosa "Mama Rosa" Brian Blade(Verve Forecast)

私はBrian Blade Felloshipのアルバム群は極めて高く評価していて,かなり好きなバンドの一つと言ってよい。そんな私でも,このアルバムを購入することに躊躇がなかったかと言えば,それは嘘になる。なぜならば,これはBrian Bladeによる歌モノ・アルバム,あるいはシンガー・ソングライターとしてのBrian Bladeのアルバムだからである。いくらドラマーとしては最高だと思い,DylanやJoniのバックすら務めるのであるから,そうした音楽性は持っているだろうとも想像し,そう言えばWoflgang Muthspielとのアルバムでもギターを弾いていたなぁなどと思い出してもである。やはりこれには不安があった。

しか~し,である。このアルバム,実に素晴らしい出来ではないか。Daniel Lanoisが絡んでいるだけのことはあって,彼のアルバムとも同質のアンビエンスさえ感じさせるが,これには正直参った。ひれ伏した。私は,アメリカン・ロック,特にSSW系の音楽も好きな人間であるが,そんな嗜好を持つ私が聞いてもこれはよい。私はFellowshipの三作目を評して「私はアメリカン・ロックやシンガー・ソング・ライターも好きだが,そうした音楽との境界を軽く越境して,素晴らしいミクスチャー音楽をデリバリーしているのがこのバンド」だと書いた(記事はこちら)が,その要因はこういう音楽もやれるBladeの特質にあったのだと思うし,その評価は間違っていなかったと思う。また,Daniel Lanoisの"Here Is What Is"を「原風景的サウンド」と呼んだ(記事はこちら)が,そうした要素もこのアルバムには強く感じられるのである。どちらのアルバムも評価している私にとって,このアルバムの評価が高くなるのは当然と言えば当然のことである。

もちろん,ドラマーとしてのBrian Bladeを期待したら,このアルバムは裏切りとしか思えまい。だが,これもBladeのミュージシャンシップの一部であるということであり,こうした懐の広さが,彼の素晴らしいドラミングを生む「もと」となっているのだと思えば,腹も立たない。トータル・ミュージシャンとしての実力を遺憾なく発揮しているのだから,これは評価すべきである。

ギターも歌も作曲も,これは大したものだと言わざるをえないし,ドラマーの余芸の範囲は越えている。よって,たとえこれがBladeのアルバムでなかったとしても,私はこのアルバムを高く評価していると思う。私にとっては今年度ベスト作候補の一つに入ってきそうなアルバムである。星★★★★★。

Personnel: Brian Blade(vo, g, ds), Daniel Lanois(g, pedal steel, b), Geoffrey Moore(g), Kurt Rosenwinkel(g), Greg Leisz(pedal & lap steel, weissenborn), Patrick Smith(pedal steel), Aaron Embry(p, vo), John Cowherd(p, org), Chris Thomas(b), Kelly Jones(vo), John Bgham(vo), Daryl Johnson(vo), Rocco Deluca(vo), Dave Coleman(MXR operator), Adam Samuels(processing), Tucker Martine(processing)

2009年5月21日 (木)

Jan Lundgren:選曲の勝利

Jan_lundgren_3 "European Standards" Jan Lundgren(ACT)

多くのブロガーの皆さんが既にレビューされているJan Lundgrenの新作である。このアルバム,ピアノ・トリオ・フォーマットであるから,Lundgrenのピアノが楽しめるのは当然なのだが,このアルバムを魅力的にしているのが選曲であることは間違いのない事実である。

カバーを開くと国名とともに曲名が書いてある。"European Standards"だけに独仏英,ハンガリー,スイス,スペイン,伊,ポーランド,オーストリア,スウェーデンと幅広い。かつ独仏伊は2曲ずつのセレクションである。これだけ多岐に渡ると,有名曲とそうでない曲のギャップは大きくなるが,冒頭がKraftwerkの"Computer Liebe"というのがまず笑わせてくれる(私は結構Kraftwerk好きなのだ)が,快調な出だしに思わず膝を乗り出す私であった。しかし,2曲目「風のささやき」の訥弁なメロディ・ラインの紡ぎ方に一瞬がっくりくるのだが,ソロになると途端によくなる。どうして最初からこう弾かなかったのかと文句も言いたくなるのが人情である。そして3曲目はBeatlesナンバーである。この辺りまで聞いていると,かなりメジャーな選曲なのかとも思わされるのだが,この"Here, There And Everywhere"が通常とは異なるテンポの設定で面白いのである。

その後も「男と女」と"Il Postino","September Song",「ローズマリーの赤ちゃん」はおなじみだが,それ以外の曲はよくわからない。Rhodesで弾かれる「男と女」なんて,かなりイージーリスニング的な作りと言ってもよいが,これはこれでよいし,4曲目以降の展開は基本的に美しいメロディ・ラインが目立つように思える。その白眉が,ラストに収められた故Esbjorn Svensson作,"Pavane: Thoughts of a Septuagenarian"のピアノ・ソロであろう。これぞまさに天上の音楽とでも言いたい余韻をアルバムに与えていて素晴らしいのである。

結局,このアルバムは,Jan Lundgrenが考える欧州を代表する曲を,彼らの感性で再構築したものであるが,私としては美的に響く曲が楽しめた次第である。ドラムスのDoltan Csorsz Jr.はスウェーデンのプログレ・バンド,Flower Kingsのドラマー(だった?)らしいのだが,ロック・ドラマーとは思えないサトルな味を見せるのが素晴らしいではないか。Bill Brufordもジャズに傾斜しているが,ロック・ドラマーと言っても侮ってはならない。

いずれにしてもこのアルバムは,選曲とLundgrenトリオの美的センスがうまく融合して,結構楽しめるアルバムとなっていると思う。Joe Sample的,あるいはイージーリスニング的な部分もあるが,トータルでは星★★★★は付けてもよかろう。これで「風のささやき」のテーマが少しでも流麗に弾かれていたら,もう半星つけていたかもしれない。惜しいねぇ。

Recorded on October 2-7, 2008

Personnel: Jan Lundgren(p, el-p), Mattias Svensson(b), Doltan Csorsz Jr.(ds, perc)

相変わらずcrissさんからのTBの調子が悪いようなので,こちらに記事を貼り付けます。 皆さんよろしくどうぞ。

2009年5月20日 (水)

本当ならば...

今頃私は異国の空の下にいたはずであった。本日は行ったことがないポーランドはワルシャワにいる頃であったのだが,皆さんご承知のとおり,新型インフルエンザの影響で海外渡航自粛である。

そんなことを言っている間に,日本でも感染事例が多く見つかるようになって,これなら行ってた方が感染リスクが少なかったのではないのかとも言いたくなってしまうが,これもまぁ仕方あるまい。でも行ってみたかったなぁ,ワルシャワ...。

これまでは,海外での感染を心配していた日本人が,今度は海外入国の際に厳重に検査をされる立場になるのではないかと思うと,ますます憂鬱になってくる。しばらく,海外渡航はないということにせざるをえないだろう。体力的には楽でいいのだが,仕事の面ではいろいろ困るなぁ。

それにしても,東京のドラッグストアでもマスクが売り切れ状態なのは,石油ショックの時のトイレット・ペーパーの一件を思い出させる。自己防衛は重要だが,このパニック性の国民性,何とかならないものだろうか。我が家は花粉症対策用マスクのストックが若干あるので当面困らないが,それにしてもねぇ。

騒々しくも痛快なBaritone Madness

Baritone_madness "Baritone Madness" Nick Brignola(Bee Hive)

今回,eBayでゲットしたこのアルバム,恥ずかしながら本作を買うのは確か3回目である。買っては売り,買っては売りで3回目である。初めて買ったのがキング・レコードから出た国内盤,2度目がBee Hive盤,そして3度目の今度もBee Hive盤である。こんなバカなことをやっているから,家人にも呆れられるのだと自覚もしているが,聞きたくなってしまったのだから仕方がない。それでも聞くのは20年振りぐらいか,あるいはそれ以上か...。

それにしてもよくもつけたり"Baritone Madness"である。バリトン・サックスのてんこ盛りとはこのことである。かつバリトン2本によるバトルがメインであるから,騒々しいことこの上ない。リーダー,Brignolaとバトルを繰り広げるのはベテランPepper Adamsである。まさにBrignolaにとっては相手としては申し分ないと言うか,燃えざるをえないパートナーであろう。そこでまた,バトルの対象となっているのがParker絡みの3曲である。これで燃えないはずがなかろう。

冒頭の"Donna Lee"からとんでもない高速テンポで目がくらくらしそうになるが,とにかくこれらのバトル・チューンはある意味やり過ぎと思えるほどのハード・ブローイング大会である。バリトン2本でも暑苦しいところに,これまた暑苦しいTed Cursonのラッパが加わると,思わず胸やけがしそうになると思うリスナーがいても仕方あるまい。まぁそれでもここまでやりつくしてくれれば,逆に痛快という話もあるし,プロデューサーもよくわかっていて,バトル3曲の後は,Brignolaのワン・ホーンで"Body & Soul",そして最後はリズム・セクションのみの"Alone Together"で締めて,行き過ぎによる胸やけを抑えようとしているのは助かる構成である。

私も若い頃であれば,この演奏を聞いてもっと熱く反応していたかもしれないが,今の年齢に達すると「やっぱりこれはやり過ぎだ」と思わなくもないが,たまにはストレス解消にこの手の音楽をできるだけボリュームを上げて聞くのもいいだろう。

このアルバムが出た当時はBrignolaは日本では全くの無名だったと記憶しているが,それでも本作一発で結構多くの人の頭の片隅には残ることとなったことは間違いないだろう。Adamsを向こうに回して一歩も引かないところは大したものである。これからこのアルバムを聞く機会がどれぐらいあるかは別にしても,たまには聞きたくなるものと期待しよう。でもボリュームを上げて聞いたら,家人の顰蹙を買うことは間違いないが。星★★★★。尚,メンツが結構豪華だったのは全く記憶から飛んでいた。これも加齢による記憶力の低下かなぁ。

Recorded on December 22, 1977

Personnel: Nick Brignola(bs), Pepper Adams(bs), Ted Curson(tp, fl-h), Derek Smith(p), Dave Holland(b), Roy Haynes(ds)

2009年5月19日 (火)

中年音楽狂:またも鹿児島に現る

Photo またまた鹿児島に出張してきた。今回は仕事はさておき,また凄いものを食することができた。人呼んで「熊襲鍋(くまそなべ)」。見よ,この鍋のでかさ(写っている人と比べれば,そのでかさがわかる)。

この料理は鹿児島の南州館でいただいたものであるが,ここにいろいろな食材を入れて食べるのだが,今回頂いたのは基本は黒豚バラ肉のしゃぶしゃぶであったから,料理名は「くろくま」と呼ぶのが正しいかもしれない。使っている鉄鍋は「熊襲鍋」ってことにはなるのだろうが,本来の「熊襲鍋」は海の幸,山の幸が入るらしいので,これは料理名としては正確には「熊襲鍋」ではない。しかし,そんなことはどうでもよい。

肉はもちろんうまいのだが,何がうまいって,プチトマトをレタスに包んで少々煮込んだのが,何とも素晴らしいトマトの甘みを引き出していて,く~っ,たまらん。

一通り,食材をいただくと,そのあとには鍋で麺をゆでで食す「くろくまラーメン」,さらにはスープを使って鶏飯(この料理に関してはこちら)のようにいただく「豚飯(とんはん)」までついてきた。デザートが「しろくま」のアイス・バーというのも泣かせる。

何度も書いているが,日本の食文化は奥が深い。行くたびに新たな発見をさせてくれる鹿児島である。訪問の機会は減ってきているが,次は何を食せるのか?

2009年5月18日 (月)

David FriesenのInner Cityレーベル作が再発されていたようである

David_friesen "Waterfall Rainbows" David Friesen(Inner City)

私にとってDavid Friesenというベーシストは,Inner Cityレーベルの諸作と紐づいているというのが実情である。なぜならば,ちょうど私がスイング・ジャーナル誌を購読し始めた1978年頃,Friesenの同レーベル作が結構評判になっていたからである。本アルバム然り,Steve Gadd参加というのが不思議な"Star Dance"然りである。このアルバムは当時「虹の階」という邦題でリリースされたと記憶しているが,私はまだまだジャズを聞き始めだったので,このアルバムには手を出さず,その後ジャズ喫茶に通うようになって何度か聞いたことがある。しかし,その頃はこのアルバムの何がいいのかよくわからなかったというのが実態である。

だが,発売から30年以上が経過して,このアルバムが気になっていた理由としては,本作にRalph Townerが参加しているからにほかならない。と言っても,中古盤でもあまり見たことがないし,CD化の望みなんてほぼないだろうと思っていたら,何のことはない。昨年,他のInner Cityレーベルのアルバムとともに再発されていたようである。それに気付いて,"Star Dance"ともども購入と相成った。それにしてもなんでこの時期に再発になったのかは全く謎だし,一体誰が買うのかと心配になってしまう(買っている自分はさておきである)。

このアルバムを今聞いてみて思うのは,フォーク・タッチからしてOregonとの音楽的同質性ではないかと思う。もちろん,TownerやMcCandlessの参加がそういう響きを生み出していることは間違いなかろうが,それにしても70年代という時代にこうしたどちらかと言うと地味で牧歌的な音楽が生まれた理由はなんだったのだろうかと思ってしまうが,私は喧騒に満ちた現在こそ,こうした音楽が聞きたくなるのではないかと考えてしまう。

それでもってTownerの出番は2曲。冒頭の"Spring Wind"で12弦を聞かせ,6曲目"Song of Switzerland"ではクラシック・ギターでFriesenとのデュオである。どちらもTownerらしい演奏であるが,12弦の方はミキシングのレベルがやや低くて,Townerファンとしてはもう少しクリアな音で聞きたかった。まぁしかし,ここは再発されてこの演奏が聞けるだけで喜ぶべきだろう。

意外なのはタイトル・トラックでフルートを聞かせるNick Brignolaである。Nick Brignolaと言えば"Bariton Madness"である。当該アルバムでPeppr Adamsとバリトンのバトルでブイブイ言わせていたBrignolaがフルートで結構いいソロを聞かせるというのは意表を突いている(ということで,"Baritone Madness"を思い出し,eBayで買ってしまった私...。バカにつける薬はない?)。また,ドラムスがBob Mosesだったりして,なんか不思議なメンツのアルバムだなぁとは思いつつ,結構このサウンドは悪くなかった。星★★★☆。

Recorded in June & August, 1977

Personnel: David Friesen(b), Ralph Towner(g), John Stowell(g), Paul McCandress(oboe, english horn, b-cl), Nick Brignola(fl), Bobby Moses(ds), Jim Saporito(perc)

2009年5月17日 (日)

これぞキャスティングの妙:サブウェイ・パニック

Photo 「サブウェイ・パニック("The Taking of Pelham 1 2 3")」('74,米,United Artists)

監督:Joseph Sargent

出演:Walter Matthau,Robert Shaw,Martin Balsam,Hector Elizondo

この映画は小品ながら大変面白いもので,映画ってのはこうあって欲しいと,公開当時に見た頃,中学生ながらも私は思ったものである。よって,この作品のDVDが出た時にはいの一番で購入したし,30数年を経て久々に再見しても,その面白さは不変であった。

本作が素晴らしいのは,地下鉄ハイジャックという特異なシチュエーションの中でサスペンスを盛り上げながら,Walter Matthauという稀有な役者のコミカルな側面もうまく活かしていることである。サスペンスを盛り上げるのはもっぱらRobert Shawという感じであるが,このキャスティングの妙により,この映画のよさが更に増したと言ってよいだろう。またこの二人だけでなく,とぼけた味を見せるMartin Balsam,ちょっとファナティックなキャラを演じるHector Elizondoも適役好演である。もちろん,ストーリーも面白いのだが,この役者陣なかりせば,この映画がここまでの傑作になっていたかはわからない。

その後,私はNYCに居住するチャンスがあったが,たまにタイトルになっている地下鉄のPelham Bay Park行き(6番)に乗ったときははぁ~,これが映画に出てきたラインか~などと妙に納得していたのも懐かしい。いずれにしても,この映画は決してメジャーな作品ではないかもしれないが,見落とすにはあまりに惜しい傑作である。星★★★★★。

今年,本作が,Denzel WashingtonとJohn Travolta主演でリメイクされるそうで,それを契機にオリジナルのこの作品への注目度が上がれば,それはそれでよかろうが,リメイクは役者はさておき,監督がTony Scottでは期待できないなぁ。しかし,是非皆さん,こちらの作品を見てリメイク作の予習をするというスタンスでも結構なので,だまされたと思って本作を見て頂ければと思う。

今にして思えば,70年代のRobert Shawは本作然り,「スティング」然り,「ジョーズ」然り,「ブラック・サンデー」然り,本当に光っていた役者だったということがよくわかる。1978年,51歳での早逝が惜しまれる役者である。

2009年5月16日 (土)

Marc Copland金太郎飴状態

Poetic_motion "Poetic Motion" Marc Copland(Sketch/澤野商会)

私はMarc Coplandの結構なファンだが,全アルバムを収集しようなどという野望は持っていない程度のファンである。しかし,新譜が出れば,大概の場合買ってしまうし,中古で見つければ,これも大概の場合買ってしまう。ということで,今回は中古でゲットしたCoplandのソロ・アルバムである。私が保有しているCoplandのアルバムはほとんどがピアノ・トリオ盤だが,ソロも聞いてみたいなぁと思っていたところだったので,渡りに船である。澤野からの発売というのはちょっと躊躇させるところはあったのだが,「スパルタカス愛のテーマ」なんかもやっているし,これはやはり買いだろうと判断した。

タイトルにもあるが,まさに"Poetic"と言ってもいいし,「リリカル」と言ってもよいCoplandのピアノの特性がよく捉えられていて,ファンとしてはうれしくなってしまう。主題には「金太郎飴」と書いたが,決して悪い意味ではない。どこから聞いても,あるいは誰が聞いてもCoplandだとわかるところが素晴らしいのである。現代のジャズ・ピアノ(もうここまで来ると,ジャズ・ピアノとカテゴライズ不能かもしれないが...)で,これだけのリリシズムを私に感じさせてくれるのはこのCoplandとFred Herschしかいないと言い切りたくなるぐらいであるが,それにしても個性がはっきりしていて彼らはよい。"One & Only"の境地に近づきつつあると言ってよい。

確かにこれを天気のよい休日の昼間に聞くかと言えば,これほど不釣り合いな音楽はないとも言える。そんなシチュエーションでこのCDをプレイバックしようものなら,家人から間違いなくクレームが出るだろう。私としては雨降りの気だるい午後,あるいは街が寝静まった後に,聞きたくなるような音楽だと言えばいいだろうか。ある意味テンポもへったくれもないような音楽だが,美しいフレーズが全編を通じて流れ出てくるという感覚を徹底して楽しみたい。

こういうタイプの音楽を好む人間は,どのように周りから見えるのかはよくわからないが,「ネクラ」と思われるリスクは否定できないとしても,好きなものは仕方がないなぁ。いずれにしても,Copland「らしさ」と美的感覚に溢れた好ソロ・アルバムである。星★★★★☆。来日してくれないものだろうか。

ところで,このアルバムには「藤あずさ」なる女性のライナーが付いているが,これほど中身のないライナーはあまり見たことがない。この人,山野楽器のジャズ・コーナーの人らしいが,店のポップだってもう少し頭を使った文章を書いているだろう。日夜,ブログで駄文を垂れ流す私も人のことを言えた立場にはないが,こういうのをつけるに値しない駄文という。当たり障りのなさばかりが目立って,音楽に対する愛情が感じられないが,小売業者だから仕方がないか。しかし『数枚を聞いて感じたのは「色々なタイプの演奏をする人だな」ということと,「ピアノの音がすごくきれい」だということ』っていう文章が,Coplandのアルバムのライナーに書かれるべき文章ではないということは誰が見たって明らかだろう。澤野も書き手はもっと選んだ方がいいだろうな。

Recorded on October 24 & 25, 2001

Personnel: Marc Copland(p)

2009年5月15日 (金)

Jacob Karlzonも参加したMads Vindingの新作

Mads_vinding "Bubbles & Ballads" Mads Vinding Trio(BRO)

昨日に続いてJocob Karlzonつながりでこのアルバムを取り上げることにしよう。実はこのアルバム,ずいぶん前に入手していたものの,なかなかちゃんと聞く機会に恵まれなかったものである。新譜はもっとタイムリーに聞かねばならないとは思いつつ,時間がそれを許さない場合もある。特に私の場合,音楽鑑賞のかなりの部分が通勤時間に依存していて,特に朝は高揚感を増すような音楽の方が好ましいのだが,このアルバム,いきなり冒頭の"Nefertiti"からダークな雰囲気で始まるから,朝の通勤時間に適しなかったというのも,ちゃんと聞くのに時間がかかってしまった理由である。

それでもってこのアルバムだが,昨日取り上げたJacob Karlzonの"today"と同様,スタンダードを中心にオリジナルを交えるというアルバムでありながら,雰囲気はかなり違う。まぁベーシストのリーダー・アルバムであるから,ベースのソロ・スペースが大きいのは当然であるが,それだけではなさそうである。"All the Things You Are"等を聞いていると,リズムの違いはあれども,ピアノのアプローチはややBrad Mehldau的に聞こえる部分もあるし,Jacob Karlzonのタッチが"today"とかなり違っているように聞こえるのである。"today"が録音されたのは2001年であるから,その間にKarlzonも飛躍したと言ってよいぐらい,私の感覚ではこちらのピアノの方がよい。せっかくここまでいいのだから,主メロはピアノに弾かせればいいと思うが(特に「おもいでの夏」なんてそうだ),Ron Carterじゃないんだからと思いつつ,そこで旋律を弾いてしまうのがミュージシャンの「性」かもしれない。それでもVindingのベースの音はそれほど抵抗なく受け入れられる音で録れているからよしとするが,私ならこうはプロデュースするまい。かつ,ベースのミキシング・レベルをもう少し下げるだろう。ここではMads自らがミキシング,マスタリングも行っているので,仕方はないが...。

それでも,音はかなりいいし,演奏も心地よい。タイトルのように"Ballads"系の曲が多いのは仕方ないとしても,このメンツのもう少しハード・ドライビングな演奏も聞いてみたいとも思うが,それはないものねだりか。Karlzonのバラードにおけるタッチは繊細で美しいが,Jacob KarlzonはPeter Asplundのアルバムでは新主流派的なところも聞かせていたから,そういう路線でもいい演奏ができそうな気がするのである。Madsのオリジナル"Flat Blues"はややそれっぽいが,いかんせん曲が今イチである。

Karlzonにも文句がないわけではない。"On Green Dolphin Street"のような曲ではKarlzonはもう少し音に連続性を持たせた,流れるような弾き方をした方がいいだろう。私がこの曲が好きだからということもあるが,フレージングはさておき,音と音のつなぎの表現には改善の余地があるようにも感じられる。いずれにしても,この演奏はベストとは言えない。

また,このアルバム,"Footprints"のあとに"Misty"をやるなんていう不思議な感覚の選曲もあり,そのあたりは???な部分はあるものの,全編で3者の連動した演奏は楽しめる。しかし,次はプロデューサーをMadsがやるのではなく,別の人間に任せることで,3者のコラボレーション・レベルを引き上げれば,更によいアルバムが生まれる可能性が高いと期待しておこう。それでも,こういうタイプのピアノ・トリオ好きが聞いたら,間違いなく気に入るだろう。凡百の「エバンス派」とは違うところがよいのである。星★★★☆。

Peronnel: Mads Vinding(b), Jacob Karlzon(p), Morten Lund(ds)

P.S. ブログのお知り合い、crissさんからTBを頂いているのだが、ブログ間の相性が悪いため、こちらに届かないので、crissさんの記事のURLを貼り付けさせて頂く。

http://jazzlab.blog67.fc2.com/blog-entry-496.html

2009年5月14日 (木)

中古で拾ったJacob Karlzon:結構いいが,本領発揮はこれからか

Today "today" Jacob Karlzon Trio (Prophone)

Jacob KarlzonにはPeter Asplundの"As Knights Conquer"で参ってしまった(記事はこちら)のだが,これは最近中古で拾ったアルバムである。スタンダードを中心に,Karlzonのオリジナルやスウェーデンのトラッド(聖歌である)を交えて演奏されるトリオ・アルバムであるが,これがなかなかよい。

実は冒頭の"Nardis"だけ聞いていると,通常より遅いテンポに面喰ってしまい,あまりいい印象を受けないのは事実なのだが,この曲や前半の数曲だけで判断しては損をする。このアルバムのよさは実は後半にあると聞いた。

私が聞いていても,"Nardis"や"Bye Bye Blackbird"は確かに今イチかなぁと思わせる。しかし,それがスウェーデンの聖歌である"Sorgen och Gladjen"やそれに先立つイントロ"Introduction to a Hymn"あたりで,急速にいい感じになるのである。これなら全部この調子でやればよかったのにと思わせるが,これにしても"In Your Own Sweet Way"にしてもいい演奏だし,"'Round Midnight"は熱い演奏が展開され,驚かされてしまうのである。

全編を通じて聞いていても,このトリオの演奏のレベルは高いと思わせるものはあるが,前述の通り,全編を後半並みの展開で演奏してくれていたら,世間での評価もずっと高くなっていたのではないだろうか。これはやっぱり惜しいと思わざるをえないが,私はそれでもこのアルバムは結構楽しめた。

もう一つ,このアルバムが損をしている要因は,アルバム・カバーであろう。どうもJacob Karlzonは最新作の"Heat"でも顔のどアップ写真を使っていたが,同様の本作もこれだけで購買意欲をそぐと言わざるをえまい。よほど顔に自信があるのかもしれないが,顔のアップばかり使うのは,一時期のPhil Collinsぐらい具合が悪いと思うのはきっと私だけではないはずである。アルバムはカバーも含めた総合芸術ということをもっと彼は理解しなければならない。そうしたことも全てひっくるめて星★★★。

Recorded on October 30 &31, 2001

Personnel: Jacob Karlzon(p), Mattias Svensson(b), Peter Danemo(ds)

2009年5月13日 (水)

こんな演奏を未発表にしておいたなんてほとんど犯罪行為である

Wr "Live & Unreleased" Weather Report (Columbia)

このアルバムをiPodに突っ込んで,通勤途上で久々に聞いたのだが,やはりこれはかなりよい。このアルバムが発売された当時,私はAmazonのレビューに次のように書いているが,感想そのものは大きく変わってはいない。

「本アルバムは,70年代中期から80年代の優れたパフォーマンスを記録しており,Wayne Shorterのサックス・ソロを聴くだけでも価値はある。また,各々の時代のリズム・セクションを比較する楽しみもあり,中でもAlphonso Johnson - Chester Thompsonのファンキーな"Black Market"(の主要)リズム隊のライブは貴重。ただ,Weatherのキャリアを俯瞰するのであれば,Miroslav Vitous在籍時の初期の演奏を1曲でも含めるべきであり,その点だけが惜しまれる。」

WRと言えば,Jaco Pastorius在籍時が最もポピュラーなのはよくわかるのだが,私はJaco加入前の演奏はもっと評価すべきではないかと思っている。Vitous在籍時の鋭い演奏もよいが,特にAlphonso Johnson在籍時はポップ度を増しながらも,ChesterやNduguというファンキーなビートも叩けるドラマーとの相性もよく,かなり楽しめてしまうのである。私は「幻祭夜話」(凄い邦題である)なんて,結構好きだったもんなぁ(初めて買ったWRのアルバムが実はこれである)。

また,後期のBailey~Hakimのリズム隊は私が目撃した唯一のWRライブ時のメンツによるものであり,非常に懐かしい。ここでの演奏を聞いていても,あの時のよみうりランドでの演奏が鮮明に蘇ってくるのである。

確かにここにVitous在籍時のハイブラウな演奏が組み入れられれば,サウンドの系列に大きな違いが生じ,アルバムとしての一貫性が保てなくなるという考えがプロデューサーとしてのZawinul~Shorterの判断としてあったのかもしれない。確かにここに"Live in Tokyo"の如き演奏が差し挟まれても,イメージは違う。しかし,どうせここまでやるんだったら,年代(ベーシストと言ってもよい)別に1枚ずつの4枚組(Vitous,Johnson,Jaco,Baileyで4枚である)にでもしてくれれば,キャリア全体を回顧することができたのにと思ってしまう。それほど,この2枚組に収められた演奏のレベルは高いのである。

いずれにしても,こんな演奏が未発表のまま眠っていたなんてことが今となっては信じられないが,このようなお宝音源はまだまだ倉庫に眠っているのではないかと期待もしたくなるような快作。もっともっと探して発掘くれないものだろうか。期待も込めて星★★★★☆。

Recorded between 1975 and 1983

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss), Josef Zawinul(key), Alphonso Johnson(b, stick), Jaco Pastorius(b), Victor Bailey(b), Chester Thompson(ds), Alex Acuna(ds, perc), Ndugu Leon Chancler(ds), Peter Erskine(ds), Manolo Badrena(perc), Robert Thomas(perc), Jose Rossy(perc)

2009年5月12日 (火)

追悼:三木たかし

Photo 三木たかしが亡くなった。以前,何かのテレビ番組に出ていた際に,ずいぶんやつれていて心配したのだが,やはり病魔と闘っていたということであろう。

三木たかしの曲には,私の年代は何らかのかたちで世話になっているとは思うが,今,彼の業績を振り返れば,そのオール・ラウンダーぶりに驚かされると言わざるをえない。テレサ・テンの名曲群や石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」はもとより,坂本冬美の「夜桜お七」,西川峰子の「あなたにあげる」,浅丘ルリ子の「愛の化石」,森山良子の「禁じられた恋」,更には「アンパンマンのマーチ」やら高校サッカーのテーマソング「ふり向くな君は美しい」とこの人の頭の中は一体どうなっているのかというぐらいの幅の広さである。まさに,演歌,ポップス,なんでもござれとはこのとこである。

そうした彼の業績を偲ぶのであれば,大ヒット曲でもよいのだが,彼に捧げるという意味ではあべ静江の「みずいろの手紙」という気分である。冒頭のセリフ「 お元気ですか そして今でも愛しているといって下さいますか」というのも懐かしいが,当時の清楚なイメージのあべ静江(このジャケ写真は今イチだが...)にこれほどフィットしていた曲はあるまい。歌手のキャラクターをも完璧に活かすことができる,レベルの高い日本を代表するプロフェッショナル・コンポーザーの一人だった。

三木たかしの64歳という若過ぎる死を惜しんで,ここに追悼の意を表する。R.I.P.

2009年5月11日 (月)

あ~あ,買っちゃった。

Kind_of_blue "Kind of Blue: 50th Anniversary Collector's Edition" Miles Davis(Columbia/Legacy)

私は"Kind of Blue"のCDもLPも保有しているし,"1958 Miles"だってLPで持っている。かつ,ブートで出た"Kind of Blue"セッションだって持っているから,このボックス・セットが出た時は私といえども購入を躊躇したものであるが,某ショップで結構な値引き率で売られているのを見て,ついつい買ってしまった。あ~無駄遣いと思いつつ,家に帰ってボックスを開けてブックレットを眺めながらにやにやしている自分のアホさ加減に呆れてしまった。

CDのソフトウェアの販売が伸び悩む中,レコード会社はさまざまな手段で,ユーザの購買意欲をそそろうと,あの手この手を使ってくるわけだが,それにはだまされないぞと思いながらも,こんなものまで買っている自分は一体何なのかと言わざるをえない。

そもそもオマケでついているLPをプレイバックする機会がどれぐらいあるかは別にして,もはやこれは持っていることだけで満足してしまうタイプのブツだとでも言わない限り,自分のアホさ加減の言い訳ができない。

まぁでもいいか。立派な付録のブックレットに免じて許す(自己弁護)。ちなみにアルバムそのものについては星の評価など無用だろう。どんなにほめちぎってものほめたりない。

2009年5月10日 (日)

Guilty:日米間の人気のギャップが激しいBarbra Streisandだが,これは特にタイトル・トラックがよい

Guilty "Guilty" Barbra Streisand(Columbia)

アメリカでは大スターのBarbra Streisandであるが,日本ではてんで人気がないと思っているのは私だけだろうか?抜群に歌はうまいが,美女って感じではないし,出る映画も日本ではあまりヒットしそうにないものが多い(例外は「追憶」ぐらいだろう)のも損をしているのではないかと思う。私も見ているだけでは決してBarbraにはそそられることはないし,アルバムもこれしか聞いたことはない

そんなBarbra Streisandであるが,例外的に日本でもヒットしたアルバムがこれである。私はこのアルバムをLPで保有しているはずだが,実家に置いたままなので,ここ何年も聞いていない。しかし,CDの中古があれば買いたいなぁとずっと思うぐらいのアルバムであったことは間違いない。しかし,なかなか中古で出会ったことがないというのも事実である。今般,私がよく行くショップの中古新入荷コーナーで発見し,即購入した具合である。

ケースを開けてみて驚いたのだが,私が買ったのはデュアル・ディスク・バージョン(1枚のディスクで表がCD,裏がDVDというあれである)ではないか。ライナーによると本作が再発されたとき,国内初回盤はデュアル・ディスク仕様だったようであるものの,帯には全然そんなことが書いていないし,全く気付かなかったが,これは結構ラッキーだった。しかし,いくら国内盤とは言え,デュアル・ディスクとも何とも書いていないばかりか,パッケージにDVD表示もないのは甚だ不思議で,もしかすると前のオーナーが単体CDとデュアル・ディスクを入れ替えたのかもしれないなどという疑念も湧いてくるが...。デュアル・ディスクは特にPCでは再生に問題が発生することも指摘されていたから,その可能性もないわけではなかろう。まぁどうでもよいが。

私にとって,このアルバムのイメージを決定づけているのは冒頭のタイトル・トラック"Guilty"である。この心地よい軽さこそが私がこのアルバムが好きな理由なのだが,2曲目の大ヒット"Woman in Love"の仰々しさよりもはるかにこの曲の方が好ましく思えるのだ。それはアルバム全編を通しても言えていて,私はBarbraが朗々と歌い上げる曲よりも,軽く流したような曲調のものの方によさを感じてしまうのである。しかしながら,結局のところ,このアルバムで私にとっての最高の曲は"Guilty"ということになってしまう。それぐらいこの曲はよいのである。

久々にこのアルバムを聞いて,私とBarbraの相性が改善するわけでは全くないが,若干の古臭さや仰々しさを感じさせつつも,やはりよくできたポップ・アルバムであったことは認めねばなるまい。それでもなお,私はタイトル・トラックに絶対的にこだわるが。これからもこのアルバムを聞くのはタイトル・トラックを聞きたくなった時だろう。星★★★☆。

Personnel: Barbra Streisand(vo), Barry Gibb(vo, g), George Terry(g), Cornell Dupree(g), Lee Ritenour(g), Pete Carr(g), Richard Tee(key), George Bitzer(key), Albhy Galuten(synth), Harold Cowart(b), David Hungate(b), Steve Gadd(ds), Bernard Lupe(ds), Joe Lala(perc), and Others

2009年5月 9日 (土)

Gary Burton対6人のギタリスト

Six_pack "Six Pack" Gary Burton(GRP)

GRP時代のGary Burtonのアルバムは玉石混交っていう気がしないでもないが,これはBurtonと6人のギタリストが共演するという企画アルバムでそれなりに楽しめる。なんと言っても,共演しているのがB.B. King,John Scofield,Kevin Eubanks,Ralph Towner,Jim HallにKurt Rosenwinkelであるから相当バラエティに富んだつくりになるのは目に見えていた

それはそれでいいとしても,どうも演奏のタイプが違い過ぎていて戸惑ってしまうというのも事実である。B.B. Kingとのブルース演奏がRalph Townerのデュオと同じアルバムに同居するというのはやはり私には違和感があるのである。演奏自体はどの曲も悪くないのだが,ギタリストのタイプが違い過ぎたというのが正直なところだろう。私はRalph Townerのファンであるから,どうせなら一枚デュオで作って欲しいぐらいに思っているだけに,ほかの曲とのアンバランスぶりは気になってしまう。また,Eubanks,HallとTowner参加曲以外でBob Bergがテナーを吹いているが,これがまたオーバー・ブローイングなのも気になるところである。私はBob Bergは決して嫌いではないのだが,Gary Burtonのアルバムにしては吹き過ぎなのである。Bergに関してはもう少し控え目でもよかった。

繰り返すが,演奏は決して悪くないのだが,プロダクションが行き過ぎというのが正直な感想である。いいメンツを揃えているだけに,惜しいアルバムである。ということで,私の注目は常にTownerとの2曲に向いてしまうという不幸なアルバム。もちろん,Jim Hallとの相性もよいことは補記しておくが,TownerとBurtonを聞きたいならECMの"Matchbook"を聞いていればいいわけで...。星★★★。

尚,2曲に参加しているKurt Rosenwinkelは,このアルバムが出た頃はまだまだ駆け出しだったと思うが,冒頭の"Anthem"なんてまるでPat Methenyのようで微笑ましい限りである。Patと言えば,このアルバムのB.B. King参加曲のプロデュースを行っているし,楽曲"Double Guatemala"も提供しているが,これは師匠Burtonへの恩返しって感じか。全然Methenyぽいところはないので念のため。

Recorded on December 28 & 29, 1991 and January 4, February 24  & April 25, 1992

Personnel: Gary Burton(vib), B.B. King(g), John Scofield(g), Kurt Rosenwinkel(g), Ralph Towner(g), Jim Hall(g), Kevin Eubanks(g), Larry Goldings(key), Malgrew Miller(p), Paul Schaffer(key), Steve Swallow(b), Will Lee(b), Jack DeJohnette(ds)

2009年5月 8日 (金)

Talちゃんに「遅くなってごめんね」と詫びたい

Tal "Transformation" Tal Wilkenfeld(自主制作盤)

Jeff Beckとの共演で急速に注目度がアップしたTal Wilkenfeldの初リーダー作である。Wayne Krantzも参加しているし,メンツ的には気になっていたのだが,何せこのジャケットに私は購入を躊躇してきたのであるが,それは間違いであった。

そもそも,私がようやく重い腰を上げる気になったのは,BeckのRonnie Scott's でのライブでの彼女の表情が可愛かったこともあるのだが,そのベース・プレイぶりにへぇ~と思わされた部分が大きい。この写真や"Crossroad Festival"の時よりも,ずっと魅力的に見えたのである。しかもWayne Krantz入りだし,これは買っておこうと決意した次第である。ここまで来るのに時間が掛ってしまったので,「Talちゃん,遅くなってごめんね」(美樹克彦かっ!と突っ込みを入れてもどれだけの人がわかるのやら...)と言っておきたい。だからと言って,彼女に私の魂の叫びが届くはずはないが。

このアルバム,参加メンバーからも察しがつくが,かなりハードなフュージョンだと言ってよい。全曲Talちゃんのオリジナル/アレンジらしいが,そうは言っても冒頭のBCなんて,まるでWayne Krantzの曲のようでもある。彼女は1986年生まれなので,このアルバムが吹き込まれたときは20歳になるかならないかの頃であり,まぁ個性を出していくにはまだまだという時期だったかもしれないが,それでもかなり健闘していると言ってよいだろう。

彼女のサイトを見ると,Krantz,Carlockとはライブ・ギグもこなしているようだから,彼女の指向はやはりそうした方向性と考えるべきだろうが,是非このトリオでもレコーディングをして欲しいと感じるのはKrantzファンの私だけではあるまい。Seamus Blakeはまぁ普通って感じだが,でもやっぱりもっと早く買っておけばよかったという反省も含め星★★★★。

しばらくはこのアルバムをハード・ウォーキングのともにすることとしよう。

Recorded on May 30 & 31, 2006

Personnel: Tal Wilkenfeld(b), Wayne Krantz(g), Geoffrey Keezer(key), Seamus Blake(ts), Keith Carlock(ds)

トラックバック不調のため,crissさんの記事をこちらに貼り付けておきます。

2009年5月 7日 (木)

"Covers"の残りテイク集の発売は嬉しいが...

Other_covers "Other Covers" James Taylor(Hear Music)

昨年,JTが"Covers"をリリースした時にも,私は結構早い時期に記事をアップし,「James Taylorのカバー集:もはや国民的歌手である」と書いた。アルバム自体もなかなか楽しめるものだったが,カバー・ソングをJT色に染めてしまうところがやはりいいのである。

ところで,"Covers"に本作に収録された3曲を追加した"Covers-Expanded Edition"なるバージョンが今年に入って発売されて,臍をかむ思いをしたリスナーも多いのではないだろうか。私もさすがにそこまでは手を出さなかったのだが,そこへ来てこのミニ・アルバムの発売というのは私自身は嬉しいものであった。しかし,よくよく考えてみると"Expanded Edition"を改めて買ってしまったファンもいるはずで,この発売形態には疑問を感じざるをえない。小出しにするぐらいなら最初から出しとけよというのが正直なところである。

ということで,発売形態には文句はあるが,音楽そのものには全く文句はない。特に私はTom Waits作"Shiver Me Timbers"にやられた。いいねぇ。思わずしみじみしてしまった私である。まぁ評価としては"Covers"同様としてもいいが,でもやっぱりこの発売形態はちょっとあこぎだなぁと思うのはきっと私だけではないはずである。よって,今回は半星減点して星★★★☆としよう。

Starbucksとは縁は切れたらしいが,Hear Musicめ,がめついぞ。

Personnel: James Taylor(vo, g, hca), Steve Gadd(ds), Jimmy Johnson(b), Michael Landau(g), Larry Goldings(p, el-p, org), Luis Conte(perc), Lou Marini, Jr.(fl, cl, sax), Walt Fowler(tp, fl-h, key), Arnold McCuller(vo),  David Lasley(vo), Kate Markowitz(vo), Andrea Zonn(vo, vln)

2009年5月 6日 (水)

コレクターはつらいよ(6):でもこういうのなら大歓迎だ

Allen_toussaint "The Bright Mississippi" Allen Toussaint(Nonesuch)

毎度おなじみ「(Brad Mehldauの)コレクターはつらいよ」である。このアルバム,Brad Mehldauは"Winin' Boy Blues"1曲のみの客演であり,こういうアルバムは全然興味がないアルバムだったら,本当にコレクター泣かせということになるのだが,このアルバムは違う。これならBrad Mehldauが参加していなくても間違いなく購入していたからである。

このアルバムは,最近,プロデューサーとして傑作を次々とものにしているJoe Henryがニューオリンズあるいはクラシック・ジャズ及びブルースの現代における再構成を図るべく制作したアルバムである。私がCDショップをうろついていて,Joshua Redmanが客演した"Day Dream"が聞こえてきて,何だこれはと思うぐらいいい演奏で,またその次の"Long, Long Journey"の真正ブルースの感覚が素晴らしく,これだけでも買いだったのである。そこに加えてMehldauが参加ということで,すかさずネットで注文した私だった。

Joe Henryと言えば,Brad MehldauはHenryの傑作"Scar"(実はここでのOrnette Colemanが素晴らしいのだ!)にも客演したことがあり,Henry関連のアルバムへの参加は想定外ではなかったが,これもあやうく見逃すところであった。あぶない,あぶない。

最近のJoe Henryのプロデュース作は米国のルーツ・ミュージックをさまざまな角度で再検証しようという姿勢が顕著なように思える。ほぼ同時期に発売されたHenryプロデュースによるRamblin' Jack Elliotの新作(これも素晴らしいのでさっさと記事にせねば...)も同様の感覚が強い。このアルバムが今までにないのは前掲の"Long, Long Journey"を除いて全編インストで構成されているということであるが,しかし,参加メンバーの素晴らしさも相俟ってこれが素晴らしい出来である。この演奏を聞いていると,彼らのルーツ・ミュージックに対するリスペクトが強く感じられるのである。私とてジャズはモダン以降の指向が強いが,それでもこの感覚を現代に蘇らせられたこのサウンドは思わず傾聴してしまったのである。

このアルバムの聴きどころはAllen Toussaintのピアノにあるという考え方もあるだろうが,それでも私としてはJoe Henryのプロデュースと音楽再構築への取り組みをより評価したいと思う。もちろん,Toussaintのピアノもヴォーカルも渋さの極致だが...。ということで星★★★★★。

それでも尚,全体のサウンドとしてはクラシック(オールド・ジャズという意味である)な響きが強いので,果たしてこの音楽が日本のリスナーに受け入れられ,どの程度のセールスが期待できるのか心配ではあるが,これは間違いなく本年ベスト作品候補とするに値する傑作である。Joe Henry恐るべし。

Recorded March 19-22, 2008

Personnel: Allen Toussaint(p, vo), Don Byron(cl), Nicholas Payton(tp), Marc Ribot(g), David Piltch(b), Jay Bellerose(ds, perc), Brad Mehldau(p), Joshua Redman(ts)

2009年5月 5日 (火)

映像版Jeff Beckライブは凄かった

Beck "Performing This Week: Live at Ronnie Scott's" Jeff Beck (Eagle Rock)

私はこの時の演奏のCD盤が出たとき「Jeff Beckの新作はまたまたライブだが,前作と何が違うねん?」なんて書いてしまって,演奏のカッコよさは認めつつもやや否定的なトーンで記事をアップしたのが昨年の11月である。その後,Jeff Beckは来日して単独公演を行うとともに,Claptonと共演までしてしまい,その後になってこのDVDが発売されたわけだが,今さらであるがこれが凄い。

この演奏はCDで聞くべきものではなく,映像つきこそが相応しい鑑賞形態である。何と言ってもJeff Beckのありとあらゆるギターの技が展開されていて,とにかく驚くとともに楽しめる。よく指弾きであんなフレージングができるものである。ライブゆえに演奏は完全無欠とは言わないが,それでもこれは本当に凄いわ。

このDVDを見ていると,バック・バンドも映像付きの方が魅力的に聞こえるから不思議である。ベースのTalちゃんなんて笑顔がキュートで,音だけよりずっといいではないか。Colaiutaのタイトなドラミングもばっちり捉えられているし。

このときClaptonがゲストで出演していたことを知っていたなら,私はさいたまスーパーアリーナの公演に駆けつけていただろうが,本当の共演に懐疑的で結局行かなかった自分を悔いるしかない。しかし,二人の共演ぶりはこの映像でも楽しめるし,相変わらずClaptonは余裕でぶちかましている。そうした悔しさを少しは忘れさせてくれる映像なのである。

それにしてもJeff Beck,還暦を過ぎたオヤジである。Bob Dylanといい,この人たちは一体どういう生活をしているのかと思わされるが,それにしてもBeckは体型もスリムでカッコいいなぁ。少しは見習わねば。また,もう少しロッカー然とした態度なのかと思いきや,結構いい人そうなのが見ていて意外ながら微笑ましかった。喜んで星★★★★★を謹呈しよう。

Recorded Live at Ronnie Scott's in London between November 27 and December 1, 2007

Personnel: Jeff Beck(g), Tal Wilkenfeld(b), Vinnie Colaiuta(ds), Jason Rebello(key), Joss Stone(vo), Eric Clapton(g, vo), Imogen Heap(vo)

2009年5月 4日 (月)

John McLaughlinの最新映像を見た

Mclaughlin_4th_dimension "Live @ Belgrade" John McLaughlin & the 4th Dimension (Mediastars Monaco)

以前このブログでも発売を予告したJohn McLaughlinのライブ映像DVDが発売された。全編エレクトリックで,ギターの弾き倒しである。McLaughlinファンならば必携のDVDである。

映像としては,カメラの切り替えが頻繁過ぎて,例えばソロイストの手許をもっと見たいという欲求の邪魔をされるとか,音声がPCM 2チャンネルだけだとか,文句のつけようはある。特に映像はイライラするぐらいアングルが変わって落ち着かないこと甚だしい。また,Dominique Di Piazzaの前に譜面台が置いてあるのだが,それを避けて撮影するのが筋だろうと言いたくなるような瞬間も多々あるのはいただけない。

しかし,このバンドの映像が見られるだけでもよしとしなければならないのだろう。McLaughlinのギターが炸裂するのは当然(フレーズはいかにもMcLaughlinで,ワンパターンと言えばまさしくその通り)として,Dominique Di Piazzaってこういう風にベースを弾いていたのねぇというのが分かったのが面白かった。私が見る限りは基本的には右手の親指と人差し指で弦をはじいているが,時折,ギターのアルペジオのように中指,薬指も加わるという感じだろうか。この奏法,Dreyfusのモナコでのライブで1曲弾いていたHadrien Feraudも同じような感じだったが,昨今の所謂バカテク・ベーシストはああいう感じなのだろうか?

また,このDVDを見ていて,ドラマーのMark Mondesirの手数の多さとそのタイトなドラミングには目が点になってしまった。それも余裕たっぷりなのである。世の中,凄いミュージシャンってのはまだまだいるんだなぁと思わざるをえないが,この人,McLaughlinにはぴったりのドラマーと言っていいだろう。

まぁここに収められているような映像を104分も見せられたら,思わず胸焼けがしてくるって話もあるが,それでもこのバンドでの来日など期待できないだろうから,やはり映像化されただけでもよしとしなければならないだろう。ちなみに音はブートCDよりはいいが,もう少しベースのバランスを上げてくれると尚よかった。ということで,音源として星★★★★,映像星★★★で,トータル星★★★☆ということにしておこう。

Recorded Live at Dvorana Dom Sindikata, Belgrad on May 16, 2008

Personnel: John McLaughlin(g), Gary Husband(key, perc), Dominique Di Piazza(b), Mark Mondesir(ds)

2009年5月 3日 (日)

前期Weather Reportの方が私は好きである

Weather_report "Weather Report" Weather Report (Columbia)

先日,東信JAZZ研究所さんが取り上げられていて,私も懐かしくなって久しぶりに聞いたアルバムである。

Weather Reportの人気が最高潮に達したのはJaco Pastorius在籍期だとは思うのだが,あれはあれで悪くないとしても,ときにポップ過ぎたことは否めないし,Shorterの出番が減っていったことも私としては残念だった。今となって振り返れば,Wayne Shorterを楽しめ,ジャズ的なスリルを楽しめるという点では,私は前期のWRの方が好きなのだろうということになってしまう。また,プレイバックの回数も,最近では前期のアルバムの方が圧倒的に多いというのも事実なのである。

このWRのデビューアルバムは,1971年という時代の中では,当時の最も先進的な音楽の姿を示しているようにも思えるのだが,本作が難しいところは実は1曲目の"Milky Way"にあるのではないかと久々に聞いて思えてきてしまった。ご存知のとおり,この冒頭の1曲目はスペイシーなZawinulのキーボードだけで演奏が展開される中,Shorterの「ぷっ」の一音がそのスペースを引き裂くという変わった演奏で,これを聞いただけで何じゃこりゃと思ってしまうリスナーも多いのではないかと思う。実は私もこのアルバムを初めて聞いた時,この一曲でおかしな印象を持ってしまい,その後の展開をちゃんと聞けていなかったのではないかと考えてしまう。

しかし,このバンドの本当の魅力は2曲目の"Umbrella"のような激しい曲調にあるのではないかと思うのである。決して混沌としているわけではないのだが,かと言ってReturn to Foreverが指向した音とは全く違うこのスリル感こそがこのバンドの魅力だったのではないか。少なくとも私にとってはそうである。そしてそうしたスリルを打ち出す曲にVitousが関与していたという事実は,彼のこのバンドでのポジションを物語っているようで興味深い。

私は後付けでこの音楽を聞いてきたので,同時代性というのは評価できないのだが,今にして思えば,ここに収められた演奏は,エレクトリック期のMiles Davisの音楽,更に言えば一部ではLost Quintetの凶暴性と極めて同質性が高い。Milesも激しい演奏ばかりでなく,"In a Silent Way"では牧歌的なところを示したような構成が,このアルバムにも感じられる。"Orange Lady"やら"Morning Lake"なんて,新しい"In a Silent Way"のようにも思えてきてしまう。"Morning Lake"はVitous作なので,そうした方面にも彼は指向が合っていたということもわかる。

結局のところ,このアルバムが素晴らしいのは,Shorter~Zawinul~Vitousの三者のバランスが均衡していた(オリジナルの提供曲数もそうだ)ことによるもののように思えるのだが,そのバランスが崩れたときに,前期WRは瓦解を始め,それとともにバンドとしての特性も変化したというのが実態であろう。

いずれにしても,今聞いてもこのアルバムのもたらすスリル感は健在であり,これからも長きに渡って聞かれるに値する傑作として星★★★★★。ただ,かなりハイブラウな演奏だから,しょっちゅう聞きたいというものではないかもしれない。かつ,昔の私にとってそうだったように,この作品,ジャズ初心者の皆さんには最初は厳しいんだろうなぁとは思いつつ,この世界はまると抜けられませんな。

Recorded in February and March, 1971

Personnel: Joe Zawinul(key), Wayne Shorter(ss), Miloslav Vitous(b, el-b), Alphonso Mouzon(ds, vo), Airto Moreira(perc), Barbara Burton(perc)

2009年5月 2日 (土)

老いてますます盛んなBob Dylan

Dylan "Together through Life" Bob Dylan (Columbia)

昨日,Mike MainieriのL'Imageのことを高齢者バンドだと揶揄したばかりだが,Bob Dylanだって高齢者である。何てったって今年で68歳だ。にもかかわらず,ここで展開されている音楽のエッジの立ち方は半端ではない。同じように年を取りながら,どうしてこうも違うのか。本当にこの人の頭の中はどうなっているのか謎である。還暦を過ぎて,この人の創造力には全く衰えるところがないと感じさせるのが凄い。

冒頭の"Beyond Here Lies Nothin'"からしてまずその音圧に驚かされるとともに,かなりヘビーなロックを感じさせる曲調である。まずこの1曲を聞いただけで,傑作の予感がプンプンする。

このアルバムにはLos LobosからDavid Hidalgoが参加する一方,Tom Petty & the HeartbreakersからMike Campbellが客演し,サウンドがどうなるのかが興味深いところであるが,レギュラー・バンドの連中とも絶妙なブレンドを示しており,まるで彼らもレギュラーのメンツのようでもある。Hidalgoが参加しているからと言って,テックス・メックス的な響きは決して濃厚ではなく,ルーツ・ロック的と言った方が適切ではないかと思う。そもそも私はMike Campbellというギタリストがかなり好きなので,彼がいることによる効果もあるとは思うが,それにしてもこれはいけている。

そうしたバンドの伴奏に乗って,様々なタイプの曲をDylanが歌っているのだが,サウンドに一貫性が保たれているので,とっ散らかった印象はない。むしろ強調したいのは粒の揃った曲で聞かれるDylanの力強さである。冒頭に書いたとおり,とても70近いオヤジの仕事ではない。このアルバムを全編聞いていくと,どこから切ってもレベルが高いことがわかるだろう。シャッフルすれば特にそういうことがわかるのではないかと思う。私はBob Dylanの大ファンというわけではないのだが,これだけレベルの高いアルバムを聞かされては,やはり参りましたと言わざるをえまい。星★★★★★を謹呈してしまおう。

ところで,私が購入したのはボーナスCD/DVD付きのバージョン(レギュラー盤と価格差が大してなかったのだ)だが,オマケなしでもこれは十分楽しめる作品だと思う。

Personnel: Bob Dylan(vo, g, p), Mike Campbell(g, mandolin), David Hidalgo(accordion, g), Donny Herron(steel-g, banjo, mandolin, tp), Tony Garnier(b), George Recile(ds)

2009年5月 1日 (金)

懐メロ的に響く"L'Image":ユル過ぎてさすがにこれは...

Limage "2.0" L'Image(Video Arts/L'Image)

このバンドのメンツを見れば,フュージョン好きは反応せざるをえないだろう。メンバーとしては"Love Play"と"Blue Montreux"の折衷のようであり,ある程度,そこから出てくるサウンドは予想できるのだが,それでも聞いてみたくなるのが音楽好きの「性」である。

L'Imageというバンドは70年代の一時期に実際に存在していたユニットらしい(ブックレットにはTony Levinを除く4人が揃って,いかにもその時代の衣装をまとっている写真が掲載されていて結構笑える)が,正式な音源は残されていないものの,上記のように似たようなメンツでのレコーディングはないわけではない。だが,彼らとしてはバンドに対する思いもあったであろうことから,このアルバムが"2.0"と題されているのであろう。とは言え,Web2.0を模したタイトルの割には目新しいサウンドが登場するわけではないのがやや微妙である。

私はMike Mainieriのこれまでの活動を評価していて,Steps,Steps Aheadその他もろもろのアルバムを保有しているし,結構好きなアルバムも多い。しかし,よくよく見てみると,Mainieriも1938年生まれ(Bernhardtも同い年である)で,もう70歳を過ぎていることを考えれば,そんなにクリエイティブなサウンドが出てくると期待してはいけないのだろうし,本質的にはこのアルバムに聞かれるような予定調和的で懐メロ的で安心感のあるサウンドに身を委ねればいいのかもしれない。

冒頭の"Praise"からしてBernhardtらしい美しいメロディが出てきて嬉しくなるのも事実だが,そのキーボードのサウンドには意図的なまでにRichard Teeのような響きが顕著であり,まるで"Love Play"とStuffの中間のようにも聞こえてしまうのである。その後も平均年齢の極めて高いバンドはそれなりのサウンドを聞かせるわけだが,タイトな演奏というよりも,メロディやリラクゼーション("Gadd-Ddagit!"の4ビート部分等に顕著である)を重視しているようにも思える。

それはそれで悪くないのだが,リスナーというのはわがままなものであり,"2.0"を名乗る以上,それなりには目新しいこともやって欲しいという欲求が出てくるのは仕方がないのである。高齢者バンドにハード・フュージョンは求めないとしても,いくらなんでもこれはユル過ぎやしないか?現在の彼らにこれ以上を求めるのは苦しいのかもしれないが,Mike Mainieriに限って言えば,北欧のミュージシャンと共演した"Northern Lights"はまだまだいけてると思わせただけに,ちょっと残念である。この「同窓会」的なノリの甘さが音楽にも出てしまったということだろうか。"Love Play"を再演するのもいいが,これまたユルいテンポで演奏されるとイメージが崩れるだけである。これでは高い評価はできないということで星★★と点数も辛くなってしまった。まぁフュージョン好きにはある程度楽しめるだろうが,このメンツならもっと頑張れたはずだ。そこが納得がいかない。爺さんたちにはちょいと手厳しいが...。

ところで,このメンツで今年の東京JAZZにやって来るらしいが,対バンが上原ひろみではオーディエンスはバンド間のギャップに頭がおかしくなってしまうのではないかと感じるのは私だけではあるまい。

Recorded between September 28 and October 4, 2008

Personnel: Mike Mainieri(vib), Warren Bernhardt(key), David Spinozza(g), Tony Levin(b, chapman stick), Steve Gadd(ds)

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