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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2009年4月30日 (木)

Joey Calderazzo温故知新

In_the_door "In the Door" Joey Calderazzo(Blue Note)

長かった出張からようやく帰還である。

出張続きで新譜が聞けない状態が続くと,iPodに入っている音源を聞くぐらいしか楽しみがない。今回頼りにしていたのがJoey Calderazzoであった。私は彼がシーンに登場してから結構ひいきにしてきたが,Michael Breckerとのバンドでの活動というよりも,彼の初リーダー・アルバムの印象が強烈だったのである。

本作はそのMicheal Breckerのプロデュースにより制作されたものだが,Breckerは控えめに1曲のみの客演で,そのほかにはJerry Bergonzi,Branford Marsalisが客演している。それにしてもこのハード・ドライビングな演奏が素晴らしいではないか。Herbie Hancock的に響くところもあるが,このスピード感は私には極めて魅力的に感じられる。

私としてはJoey Calderazzoにはこういう路線で突っ走って欲しかったのだが,徐々に彼も成熟してきたのか,ダイナミズムだけではない演奏も展開するようになってきた。それも年齢ゆえに仕方ない部分はあろう。よくよく考えてみれば,彼は1965年生まれだからもう40代も半ばなのである。このアルバムの当時のような音楽は続けていられないとしても,まだまだ枯れるには早過ぎるように思う。最近は自分のアルバムでは比較的静謐な演奏をしながら(彼のアルバム"Amanecer"に関する記事はこちら)も,Branfordのバンドでは相変わらずの演奏を聞かせるという感じで,使い分けをしているのかもしれないが,Kenny Kirkland亡き今,ハード・ドライビングなピアノと言えば,彼への期待が高いのである。

是非またこういうアルバムを作って欲しいという願いも込めて星★★★★★。いま聞いても燃える。

Personnel: Joey Calderazzo(p), Branford Marsalis(ts, ss), Jerry Bergonzi(ts), Michael Brecker(ts), Jay Anderson(b), Peter Erskine(ds), Adam Nasbaum(ds), Don Alias(perc)

2009年4月29日 (水)

中年音楽狂 in 鹿児島:新たな銀行店舗現る

Photo 久々の店舗デザインのトピックである。今回,鹿児島に出張していていろいろな出来事があったが,TVを見ていると鹿児島銀行の新しい店舗のTVコマーシャルが仕事に出掛ける時間の前に放送されていた。この店舗,かぎんWELLは4/27にオープンしたものだが,各メディアでもカバーされていたようである。

よくよく見てみるとローカル局,南日本放送のWebサイトには次のような記事が...。

『休日でも金融商品やローンなどの相談に応じる鹿児島銀行の「個人プラザかぎんWELL」が、きょう(註:4/27のことである)鹿児島市にオープンしました。「かぎんWELL」は、鹿児島市中町のコア・モール商店街にオープンしました。個人客を対象に金融商品やローン、年金、相続などの相談に応じる店舗で、スタッフは15人を配置し、プライバシーに配慮したブースが設置されています。営業時間は午前9時からで、平日は午後7時まで、土日と祝日は午後5時まで営業し、ATMも設置されています。また、指の静脈で照合する生体認証機能付きの貸金庫も設置されています。』

ということで,金融機関の店舗デザインなどというカテゴリーを持つ以上,私も現地にてファサードだけ撮影してきた。 これまでもこうしたリテール強化型店舗はいろいろあったが,従来の鹿児島銀行のイメージと異なる透明性の高いこのファサードは気になるところである。店舗の裏側には鹿児島に生息する動物の実物大のグラフィックスが配されていて,子供たちが珍しそうに見ているのが面白かったが,これはコンサル・ブースのプライバシー・スクリーンの役割も果たしている模様である。

鹿児島では近々三越が閉店する予定だが,この店は三越閉店で地盤沈下しかねない近隣地域の活性化も狙っているとのことである。コミュニティに貢献するのも地銀のタスクだとすれば,その志は認めなければなるまい。今後の同店への来店客のプロファイルが気になるところである。残念ながら出張ももう終わりだしほかの仕事もあるので,そこまでモニタリングする余裕がないのは残念であるが,注目すべき新店舗であることは間違いない。

2009年4月28日 (火)

中年音楽狂 in 鹿児島:強烈な食べ物

Photo 何度か鹿児島への出張の機会に地場のうまいものをこのブログでも紹介してきた。全部うまいものばかりだったと思っているが,今回のブツはかなり凄い。

この画像だけでどの程度ご理解頂けるかはわからないのだが,肉のぶ厚さだけは表現されているのではないだろうか。何と言っても一人前350gである。

私は1kgのステーキを完食する自信はあるが,350gの揚げ物はどうなのかと思っていた。でもバッファロー・ウイングは2ダースぐらい楽勝だからたぶん問題はないだろうとも思っていた。しかしながら,最近の出張続きで胃も肝臓も必ずしも調子がよくない中だったが,結果は楽勝であった。はっきり言ってしまえば,ソースでは完食できなかったのかもしれないが,醤油なら全く問題なしである。塩ではなく,醤油である。間違ってはいけない。

揚がるのに30分かかっても,大食いのあなたは試したくなる一品である。何?どこで食せるか?鹿児島中央駅そばの「川久」さんである。行け!食え!とだけ言っておこう。

でもとんかつはしばらく食べないかなぁ。それぐらいのボリュームである。鹿児島恐るべし。

2009年4月27日 (月)

心を揺さぶる傑作:「グラン・トリノ」

Gran_torino 「グラン・トリノ("The Gran Torino")」('08,米,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Clint Eastwood,Christopher Carley,Bee Vang,Ahney Her

ちょっと見た感じは非常に地味な印象を与え,ド派手なアクションが展開されるわけではない。いかにも小品と言うべき作品であるが,私はこのストーリーテリングの巧みさ,意表を突く展開に感動した(ネタバレにしたくないので,詳しくは書かない)。私は涙もろい人間だが,この映画で号泣したわけではない。しかし,「生と死」,「贖罪」,「責任と身の処し方」への考えを描いて,実に深く,本当に心に突き刺さる映画なのである。

Clint Eastwood扮するWalt Kowalskiは戦争によるトラウマを抱えながらも,典型的な中西部のガチガチ保守のオヤジという感じである。いかにもEastwoodにぴったりなのだが,Kowalskiの心の揺れ具合をEastwoodが見事に演じているではないか。私は「ダーティハリー」を愛する人間だが,このEastwoodのカッコよさはそれとは異なる。Eastwoodの素晴らしい年齢の重ね方とも相俟って,中年の私も憧れるような造形なのである。

これはしびれる。ギミックも何もないのに,感動させる映画の力を感じさせてくれた傑作である。しかし,冒頭にも書いたとおり,地味な印象が強い映画であるから,どの程度の集客ができるのか不安なところもある。しかし,この映画を見逃すことは罪悪だと声を大にして言いたい。当然,星★★★★★である。エンディングに流れるEastwood自身とJamie Cullumによる主題歌がこれまた実に渋い。滋味溢れるクロージング・テーマであった。

それにしても,床屋に扮したJohn Carroll LynchとEastwoodのダイアログには笑わせてもらった。深刻になりそうな映画にとって絶妙なコミック・リリーフである。

2009年4月26日 (日)

まるで魔女狩りの草彅剛逮捕劇

私は相当な酒好きである。前後不覚に陥ることはあまりなくなったが,それでも若い頃はひどい目にも相当遭ったし,現在もひどい二日酔いに悩まされることは一向に減らない。そんな人間にとっては,今回の一件は他山の石とすべき事件なのかもしれない。

確かに,イメージ・キャラクターとしてTVコマーシャルに出演させている立場や,制作費を投入して番組を作っている立場としては今回の一件は困ったもんだという反応は当然あって然るべきであるし,やはりいい大人なんだからやっていいことと悪いことの判断は自分ですべきだったのは間違いない事実である。

しかし,今回の警察の対応,メディアの反応は明らかに過剰ではないのか。酔っ払いをトラ箱にぶち込むのは日常茶飯事だろうし,それがたまたま草彅剛だったから,ここまで騒ぎが大きくなってしまっただけだろう。ビニール・シートでぐるぐる巻きにするというのは初めて聞いたが,それとて大トラにはいつも使っている手法のはずである。また,酔っ払って裸になったからと言って,家宅捜索までする必要があるのか?尿検査で何らかの薬物反応が出ているのであればわかるとしても,何も出ていないのに家宅捜索は明らかに行き過ぎであり,世間(あるいは芸能界か?)への見せしめにしてやろうという意図が明確に感じられる。

メディアもメディアである。メディアの論調,あるいは記者会見の記者やレポーターの質問を見ていると気分が悪くなる。あたかも自分は高潔かつ清廉にして,酔っ払うことなんてありませんというような口調である。酒で失敗した経験がない人間なんてそもそも少なかろう。ジャーナリストはさぞや潔癖なのだろうと皮肉の一つも言いたくなる。

ついでにうつけ者鳩山邦夫総務相にも一言言っておきたい。かんぽの宿問題やらなんやらで日本郵政にやたらにケチをつけるこの男,自分への批判を省みず,草彅への「最低の人間」発言である。翌日には取り消すという情けない行動に出たが,一体この男は自分を何様だと思っているのだろうか。私は政治家の世襲制限には懐疑的(地場を引き継ぐというのは制限し,全く影響力の及ばぬ選挙区から出馬するのが本来の筋だと思う)だが,こういう世襲の中の世襲のような非常識なうつけ者は政治の世界から一刻も早く去ってもらいたいものである。私としては今の段階で草彅がメディアに登場するよりも,鳩山がメディアに出てくる方がはるかに虫酸が走る。

いずれにしても今回は何につけ過剰反応が目立って,どうにも違和感ばかりが強くなる私である。しばらく火曜日の深夜「ぷっすま」が見られなくなるのは寂しいし,「僕らの音楽」のナレーター変更も残念である。反省すべきは反省し,できるだけ早く復帰をして欲しいと思うのは私だけではあるまい。とは言っても謹慎期間は稲垣吾郎のパターンを踏襲するのだろうが...。

2009年4月25日 (土)

Sean Pennがあまりにも素晴らしい「ミルク」

Milk 「ミルク("Milk")」('08,米,Focus Features)

監督:Gas Van Sant

出演:Sean Penn,Emile Hirsch,Josh Brolin,Diego Luna,James Franco,Alison Pill

先頃の第81回アカデミー賞でSean Pennが主演男優賞を獲得し,Dustin Lance Blackがオリジナル脚本賞を受賞した「ミルク」を見た。今回のオスカー・レースでは主演男優賞はMicky Rourkeがカムバック賞込みで本命と言われていたが,下馬評を覆したこのSean Pennの演技は確かに強烈であった。Micky Rourkeには悪いがこんな演技をされては勝ち目はなかろう。

この映画はゲイ社会の権利向上に尽力したHarvey Milk(みずからもゲイである)に関して,かなりリアルに描いているから,見ていて刺激的に感じる人もいるかもしれないが,これはあくまでも人間の権利を描いた政治ドラマであると考えるべきである。この映画は,実話に基づく話なので,当時のニュース映像やドキュメンタリー映像をうまくはめ込んで,時代感をうまく出していて,このあたりの監督,Gas Van Sant演出術には感心させられたが,それでもこの映画はやはり全編写りっぱなしと言ってよいSean Pennを見るための映画と言ってよい。

映画のラスト・シーンで本物のHarvey Milkの映像が出てくるが,私は完全にSean PennとMilkの姿がオーバーラップしてしまったぐらいである。それに加えて,助演陣も実在の人物を演じているのだが,雰囲気をよく出していて感心してしまったのである。確かにゲイを演じるというのは大げさにやればできるのではないかと思わせる節もあるのだが,Sean Pennを筆頭に,彼らの一挙手一投足がそれっぽく見えてしまうのが怖い。

いずれにしても,この映画では保守とリベラルの戦いが描かれているという気がしないでもないが,やたらに出てくる反ホモセクシュアリズムを先導した歌手Anita Bryantは,その後完全に転落の道を歩んだようだ。歌だけ歌っていればよかったものを余計なことをするからこうなるのである。私のような極端な保守主義嫌いにとってはむべなるかなの結末である。いずれにしても映画や音楽関係者にはリベラルな人間が多いが,決して彼女を全否定するような表現になっていないところには救いがある。

ということで,テーマがテーマだけに大きな集客は望めないだろうが,これは間違いなく私にとって記憶に残る一本となった。映画は娯楽だけのものではなく,大きなメッセージ発信の場になるということを実証した一作である。星★★★★★。アメリカ映画の実力,恐るべしである。

2009年4月24日 (金)

破格の安値でゲットしたFabio Zeppetella

Moving_lines "Moving Lines" Fabio Zeppetella Quartet(DDQ)

このアルバムは中古盤屋を徘徊していて,180円(!)という破格の安値でゲットしたものである。もともとがカット盤であったから,もとの価格も大したことはなかっただろうが,180円なら自販機で黒烏龍茶を買うのと大差なしだから,駄盤でも文句は出ない。それでこれがいいアルバムだったりしたら,万歳三唱である。

リーダーのFabio Zeppetellaはこのブログでも取り上げたTom Harrellの"The Auditorium Session"(記事はこちら)にも参加していたギタリストだが,そちらの記事でも私にしては珍しく「ギターのZeppetellaも結構な実力者と聞いた」なんて書いている。しかし,告白してしまえば,このアルバムを買ったときにはZeppetellaの名前なんてすっかり忘れており(イタリア系の名前はなかなか覚えきれないのだ。Daniele Scannapiecoもアンチョコなしで言えるようになったのは最近のことである),私がこのアルバムを買った最大の要因はフィーチャーされるのがKenny Wheelerという点にほかならないのである。

私はECMレーベルの諸作を通じてWheelerの演奏に接しているが,ECMのトランペッターでは実はWheelerが一番好きなのである。Azimuthもいいしねぇ。一言でいってしまえば,Wheelerはクールなサウンドの中にも熱いフレーズをまぎれこませるのがうまいと思うのだが,このアルバムでもそういう感じである。

このアルバムを支配しているのも,どちらかと言えば静謐でクールな感覚である。冒頭Wheelerはミュートで入るが,オープンになった瞬間,それを引き裂くような強烈さが現われてきて,おうおう,Wheelerじゃ~と嬉しくなってしまう。それをバックで支えるリーダー以下のトリオがこれまた雰囲気たっぷりの演奏で,いかにも欧州ジャズって感じである。Zeppetellaのギターはサウンド的にはPat Methenyぽいところを感じさせるが,結構私の好みのギタリストである。私としてはこういうサウンドだけでもOKという気がしないでもないが,これが180円だっとという事実を加味するとますます嬉しくなってしまい,評価も甘くなるというものである。私としては最後の"Il Cane Giallo"のような曲調がもう少し多ければもっと評価しただろうが,それでもコスト・パフォーマンス含めて星★★★★としてしまおう。あぁお買い得。こういうのにプチ幸せ感をおぼえてしまうのはきっと私だけではないだろう。

Recorded on January 30 & 31, 1995

Personnel: Fabio Zeppetella(g), Ares Tavolazzi(b), Fabrizio Sferra(ds), Kenny Wheeler(tp, fl-h)

2009年4月23日 (木)

非常に力強いEnrico Pieranunziの新作

Dream_dance "Dream Dance" Enrico Pieranunzi(CAM Jazz)

Pieranunzi~Johnson~Baronという長年の共演歴を持つトリオによる新作であるが,録音は遡って2004年12月なので,純粋に新録音というわけではない。しかし,このトリオである。長年のファンとしては期待するのが当たり前であるが,このアルバムにはちょっと驚いた。

録音のせいもあると思うのだが,Pieranunziのピアノが非常に力強いのである。Pieranunziはリリカルな表現から,フリー的なアプローチまでいろいろ聞かせることができるピアニストであることはわかっていたのだが,やはりイメージとしては流れるようなリリカルなプレイというのが一般的な印象であり,ここまで力強い表現を示したことは稀ではないだろうか。例えば"Pseudoscope"に聞かれるような激しいトリオ表現(Baronが煽っている)というのはあまり記憶にない。

全編を通して,そういう印象が強いのだが,それをよしとするか否かはリスナーが彼らに何を求めるかによって変わってくる。私もこのアルバムを最初に聞いた時はとまどったというのが正直なところなのだが,何度か聞いていると,このアルバムはかなりいいのではないかと思えてきたのである。

全編を通してだれたところが全くないというのは50分弱という極めて適切な収録時間も影響しているとは思うが,それでもこれだけ粒ぞろいの曲に,粒ぞろいの演奏をされてしまっては文句のつけようがない。これまでのアルバムに比べると,Johnson~Baronのミキシング・レベルも高いと思わせるが,それはこのトリオのコンビネーションが非常に高いレベルまで到達したことを彼ら,あるいはプロデューサーやエンジニアが認識した結果ではないかと考えてしまうのである。

それでもやはりこの力強さ,Pieranunziではないみたいである。一体このときの彼らに何が起こったのかと思ってしまうが,いやいややっぱり驚きである。そうは言いつつ,リリカルなPieranunziを求める人にはいかにもPieranunziらしい6曲目"Nipponno Ya‐oke"があるから心配はない。この曲を聞いたら,長年のファンでも落涙必至である。但し,この曲名,どう考えても「日本の夜明け」のミスタイプ(またはPieranunziの誤解)だろう。いい曲なのにこういうことがあると冷めてしまうなぁ。だからと言ってこのアルバムの評価が下がるということはないが。甘いPieranunziもよいが,これはこれで彼の一面を見事に捉えた作品と言わざるをえまい。星★★★★☆。

Recorded on Devember 6 & 7, 2004

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Marc Johnson(b), Joey Baron(ds)

トラックバック不調のため,crissさんの記事をこちらに貼り付けておきます。

2009年4月22日 (水)

私にはかなり微妙だったU2の新作

U2 "No Line on the Horizon" U2 (Island)

このアルバムが発売されて,結構時間が経ってしまったが,それでもまだまだ新譜として扱ってよいだろう。私はU2を見に東京ドームにも行ったことがあるぐらいで,ライブにはあまり足を運んでいない私がライブに行きたくなるぐらい期待値の高いバンドだと言ってもよい。彼らのアルバムでは今も昔も"Joshua Tree"が好きなのは間違いない事実だが,前作,"How to Dismantle an Atomic Bomb"もロックを感じさせて結構好きだった。

そんな彼らの新作だから,出れば当然買う。そして期待して聞く。だが,今回のアルバム,どうも違和感が強い。そもそも冒頭のタイトル・トラックからしてBonoの苦しげな歌いっぷりがどうも気に入らないし,全編を通して聞いてみても,どうも印象に残る曲がないのである。天下のU2のアルバムであるから,決して駄盤とまでは言わないが,このアルバムのよさというのが何回聞いても私にはわからない。

当初,アルバムのプロダクションをRick Rubinと行っていたということは,彼らとしても新しいサウンドを求めていたのではないかと思える。しかし,結局そちらは陽の目を見ず,最終的には長年のコンビであるLanois~Eno~Lillywhiteのチームとともにこのアルバムが制作されているわけだが,それ故なのかどうかは別にしても,ある意味「倦怠期の夫婦」のような感覚のサウンドになっていやしないか?U2はこれまでも様々なサウンドを実験してきていると思うが,ロッカーというのは不良でもいいから,新しい方向を追求するなり,少なくとももう少し勢いを感じさせて欲しいのである。

そうは言ってもU2ももはやベテランの領域に入ってきてそうも行かなくなってきているということかもしれないが,私はまだシャープなロックの領域で活躍をして欲しい人たちなのである。ということで,星★★☆。この調子が続くようなら,私のU2購入もこれが最後となるかもしれない。前作のパターンなら大歓迎だが。

Personnel: U2 - Bono(vo, g), The Edge(g, p, vo), Adam Clayton(b), Larry Mullen, Jr.(ds, perc) with Brian Eno(synth, vo), Danny Lanois(g, vo), Terry Lawless(p, key)

2009年4月21日 (火)

Andy SheppardがECMからリーダー作とは意外だが,これがいけている

Andy_sheppard "Movements in Colour" Andy Sheppard(ECM)

英国人サックス奏者Andy Sheppardがセルフ・タイトルのアルバムをAntillesレーベルから発売したのが1988年らしいから,もう20年以上にもなるわけだ。つくづく月日の流れるのは早いが,私は今まで彼の音楽とはほとんど接点がないままここまできた。例外はCarla Bleyのバンドのアルバムということになろうが,私の中では正直言って存在感は薄い人だったというのが正直なところである。これがECMからの発売でなければ,今回も買うことはなかっただろうが,やはり私はECMレーベルには弱く,ついつい買ってしまうのである。

そう言う意味で,私は今回のアルバムもどんな感じになっているのかなぁぐらいのもので,妙な期待は抱いていなかったのだが,さすが名プロデューサーManfred Eicherである。これがなかなかの優れたアルバムになっているではないか。だからECM好きはやめられない。

そもそも編成が変わっている。Sheppardのサックスに2ギター,ベース,タブラ(及びその他のパーカッション)という編成でどういうことになってしまうのかと思うが,これが異色とは言え,素晴らしいサウンドスケープを生み出しているのである。これにはまいった。

冒頭は「すわっ,フリー・ジャズかっ!」と思わせる出だしで一瞬出端をくじかれるのだが,それは一瞬の杞憂に終わる。全編,基本的にはフォーク・タッチを感じさせ,高揚感には乏しいものの,穏やかな中にもサックス,ギターのなかなかいいソロが展開されている。それをバックで支えるAndersenがいいのは当然として,このアルバムの響きを魅力的にしているのが実はタブラではないかと思わせるのである。世の中,叩きまくればいいと思っているタブラ奏者はいくらでもいるが,ここでタブラを叩いているKuljit Bhamraにはある種の上品ささえ感じてしまうと言えばいいだろうか。とにかく「適切」なのである。

この編成のアイディアがSheppardによるものなのか,Eicherによるものなのかは不明であるが,全曲Sheppardのオリジナルであり,私ははっきり言ってSheppardというサックス奏者に対する認識を新たにしたと言わなければならない。いずれにしてもこれはECM好きの心に結構突き刺さってくるものだと思う。ここでタブラがドラムスだったら,私の感想はずいぶん違っていたはずなのである。Arild Andersenのライブもよかったが,これも同じぐらい評価したくなる好アルバム。星★★★★☆。

Recorded in February, 2008

Personnel: Andy Sheppard(ts, ss), John Parricelli(g), Eivind Aarset(g electronics), Arild Andersen(b, electronics), Kuljit Bhamra(tabla, perc)

2009年4月20日 (月)

日頃の上原ひろみを期待してはいけない

Jazz_in_the_garden "Jazz in the Garden" The Stanley Clarke Trio(Heads Up)

このアルバムが話題になるのは,上原ひろみが参加しているからであることは間違いのない事実だと思うが,あくまでもこのアルバムのリーダーはStanley Clarkeだということを理解しないで,上原がいつものように弾きまくることを期待すると肩透かしを喰らう。あくまでも本作では上原は客演であり,彼女のリーダー作とは趣が違って当然だとしても,裏切られたと感じるリスナーがいても不思議はない。

このアルバムではClarkeは全編アコースティック・ベースで通しているが,このメンツなら敢えてアコースティックにこだわらなくてもよかったのではないかとも思いたくなるし,そもそもClarkeのベースの音が私の好みでないということもちょっと痛い。それに比べれば,Whiteのドラムスはシャープな演奏を展開しており,私の予想よりもはるかによかった。それでもって注目の上原だが,これはやはりほか2名への遠慮(?)が感じられて,ピアノの弾き倒しということにはなっていない。ただ,こうした比較的オーソドックスな表現でもちゃんとこなすというところが,この人のタフなところではあるのだが,それでもやはりイメージ通りとはいかない。

年齢的にはClarkeもWhiteも上原のほぼ倍近いにもかかわらず,ジェネレーション・ギャップは感じさせることなく演奏が展開されているのは認めよう。まぁReturn to Foreverであれだけギンギンの音楽をやっているClarkeとWhiteであるから,老成したところなど全く見せないのは予想の範囲内だが,こうした元気さがあるならば,アルバムとしても上原を迎えて,よりコンテンポラリーに,さらにはじけるぐらいでもよかっただろうというのが正直な感想である。

いずれにしても,私を含めた一般のリスナーがこのメンツに求めるのはもっとハード・ドライビングで丁々発止な音楽のはずだろうが,そういうところがあまり感じられないのはもったいないと言わざるをえないのである。演奏の質はそれなりに高いが,期待値との乖離が大きな減点要素となった。星★★★。

また,このアルバムのジャケット,もう少しなんとかならんものか。いかにも合成というこのデザインのセンスには苦笑を禁じ得ない。

Recorded on December 13 & 14, 2008

Personnel: Stanley Clarke(b),上原ひろみ(p),Lenny White(ds)

2009年4月19日 (日)

今度は映画館で見た「赤壁」

Red_cliff 「レッドクリフ Part 2 未来への最終決戦(Red Cliff 2)」 ('08:米中日韓 Lion Rock/China Film)

監督:ジョン・ウー

出演:トニー・レオン,金城武,チャン・フォンイー,リン・チーリン,チャン・チェン,中村獅童,ヴィッキー・チャオ

前作Part 1は飛行機の小さな個人用TVで見たが,こういう映画はやはり大スクリーンで,かつサラウンド音声で見なければならないと思い,Part 2は劇場で見ることにした

この映画のハイライトは,映画の後半で延々と展開される戦争シーンということになるが,とにかくこの戦闘シーンが長い。何せ上映時間の30%ぐらいは占めるぐらいに,あまりに延々と続くものだから疲れること甚だしいが,ワイヤー・アクション,CG交えながらなかなかよく出来ている。ただ,前作でも感じたのだが,ジョン・ウーはスロー・モーションあるいはコマ落としを多用し過ぎで,ちょっと映像的にはどうなのかなぁと思わせる部分もある。しかし,大物量(人も火薬も馬もである)を投入して出来上がったこの戦闘シーンだけでも一見の価値はあると言っておこう。

Zhao_wei_3 今回の作品でもリン・チーリンの美しさは健在であるが,この映画でのもうけ役はビッキー・チャオだろう。フジテレビの中野美奈子アナのようでもあるが,なかなかに可愛らしく,この人は前作よりも絶対にこちらの方がよい。次は写真のような可憐な姿の彼女を見てみたいものである。トニー・レオンはカッコよ過ぎて,さすがにここまで行くと持ち上げ過ぎではないかとも思えてくる。むしろ敵役,曹操に扮したチャン・フォン・イーの方が人間ぽく見えてしまったのはご愛嬌。

いずれにしても,ちょっと脚本に無理がある(特に前後の脈絡に弱点が感じられる)部分があることには目をつぶるとして,結構楽しめたので星★★★★。あくまでも娯楽映画として楽しめば,文句はない。まぁ,でも見た後はどっと疲れるから何回も見たいとは思わないが...。

Photo ちなみにリン・チーリンが日本での写真集発売に際して行ったサイン会の写真があったので,ここにも載せてしまおう。この写真を見る限りは,この人は可愛さも兼ね備えた美人ということになる。映画での雰囲気とは随分違うが,やっぱりたまらん。日本語も結構堪能らしいから,ポスト・チェ・ジウはリン・チーリンだろうねぇ(期待込み)。

2009年4月18日 (土)

Susan Boyle:普通のオバちゃんが世界を感動させる

Susan_boyle 世の中にはタレント発掘番組がいろいろある。日本なら昔なら「スター誕生」,米国なら"American Idol",そして英国なら"Britain's Got Talent"ということになる。そして英国"Britain's Got Talent"に登場したのがこの普通のオバちゃん,Susan Boyle,47歳無職である。4/11に放送されたこの番組で彼女が歌った映像が地球上の多くの人間を感動させたと言われる。私も実際に映像つきで彼女の歌を聞いて感動してしまった。確かに彼女の声は美しいが,決して声や歌だけに感動したのではない。それまで極めてシニカルな表情を示す審査員や聴衆の表情を一変せしめた音楽の力に感動したのである。私は涙もろい人間だが,この映像を見れば,感動の涙を流す人は多いはずだと信じたい。かつ,彼女が歌っている表情が何と素晴らしいことか。やはり音楽は素晴らしいのである。

やや感情的になってしまったが,世の中には埋もれたタレントがたくさんいるということを実証するような映像,歌唱である。あまりに感動したので,即公開である。是非お試しを。

http://www.youtube.com/watch?v=8OcQ9A-5noM&feature=related

なんだか随分ソフトなFranck Avitabileの新作

Franck_avitabile "Paris Sketches" Franck Avitabile (Dreyfus)

Franck Avitabileは私の知り合いの方が結構熱狂的なファンで,個人的にもコミュニケーションをされているぐらいだったので,その方を通じて音源を聞かせてもらったりしていたのも懐かしいが,最近ではSteve Grossmanも登場したDreyfusのライブDVDでの演奏ぶりの好感度が高かった。

そのAvitabileがJeff BeckやThe Who,更にはJohn Mayer等,ロック畑の演奏が主のPino PalladinoとECMレーベルにリーダー作を持ちながら,もともとはPeter GabrielやらSting等,こちらもロック畑から出てきたManu Katcheと共演するというのだから,どちらかと言えばビートを強調した演奏になるのではないかと思って期待して購入したアルバムである。

しかし,蓋を開けてみれば,ポップでソフトなインスト・アルバムになっていたのにはやや肩透かしを喰った感じが強い。とにかくこのリズムを活かしているとは思えない曲調が多く,やわなJoe Sampleみたいにも聞こえてしまうのである。かと言って,Joe Sampleのような強烈なタッチがあるわけではなく,なんとも凡庸なサウンドとなっているのはいかん。演奏自体はこれだけのメンツであるから,レベル的には破綻はない。だが,リスナーがこのコンビネーションに求めるのはこうした音楽ではないだろうと突っ込みを入れたくなる。

ここでの演奏は明らかにAvitabileの本質ではないと思うし,このアルバムの真の狙いがどこにあったかは知る由もない。一体プロデューサーのFancis Dreyfusは何を考えていたのか?また,Artistic DirectorとなっているPino Palladinoがこの音楽を主導したとしたのならば,彼の責任は重い。私としては,このアルバムを聞くぐらいならばJoe Sampleを聞くし,このアルバムにはほとんど存在意義を見出せないと言っては言い過ぎだろうか。ということなので,本作への評価は当然のことながら辛くなり,星★★☆ってところである。ちなみに,このメンツだと思わないでBGMだと思って流している分には何の問題もない。このメンツだから腹立たしいのである。

Recorded on October 2 & 3, 2008

Personnel: Franck Avitabile(p), Pino Palladino(b), Manu Katche(ds)

2009年4月17日 (金)

実は原田知世が好きな私...

Photo 「カコ」 原田知世(フォーライフ)

私もつくづくいろんなCDを持っているものだと思うのだが,本日は原田知世が鈴木慶一らと組んだカバー・アルバム「カコ」である。

何を隠そう私はひそかな原田知世のファンである。これでもう「ひそかな」とは言えなくなってしまうのが辛いが,それでも実のところ,TVでコーヒーのCMに彼女が出てくると胸がときめいてしまうのである。はっきり言って,今の彼女は美しい。昔から可愛かったが,今の方が女性としての成熟を感じさせて,本当に見ているだけでドキドキしてしまう。先日も「僕らの音楽」で松任谷由実と「ダンデライオン」をデュエットしていたが,彼女にくぎ付けになってしまった私であった。

Tomoyo だからと言って歌手としての原田知世のアルバムを買い集めているわけではなく,私が保有しているのは本作と,Tore Johanssonと組んだ"Clover"だけであるが,そんな彼女がTVで歌う姿を見て久々にこのアルバムを取り出してきたものである。全7曲,収録時間32分程度であるから,これはミニ・アルバムという扱いが相応しいが,それでもこのCDの価格が2,500円だったというのは時代を感じる。

本作は基本的に打ち込み中心であるが,エレクトロニクスくささはあまり感じさせることなく,原田知世の素直な歌唱を聞かせることに注力していることには好感が持てる。すべてここでは原詞で歌っているが,決して発音がいいとは思わない(特に英語は...である)ものの,雰囲気で聞かせてしまうというのがこのアルバムであろう。

それにしても何とも渋いセレクションである。Skeeter Davisのヒット曲"The End of the World"に始まり,弘田三枝子も歌ったMinaの"Un Buco Nella Sabbia(砂に消えた涙)",Marianne Faithfulが歌った"This Little Bird",The New Vaudeville Bandの#1ヒット"Winchester Cathederal",お馴染みJoni Mitchellの「青春の光と影」,Claudine Longetの"Electric Moon",そして彼女が日本語でカバーした「彼と彼女のソネット」の原曲"T'en Va Pas"ということで,年代的には鈴木慶一の趣味だろうなぁと思わせるものである。

これらの曲を彼女のキュートなヴォイスで歌われたら,これはやはりたまらん。スウェディッシュ・ポップ化した原田知世も嫌いではないが,選曲からしても中年の胸をキュンとさせるこっちのアルバムが私の好みである。いや~,やっぱり原田知世はいいのだ。なんでこれを廃盤にするのかねぇ。これを聞いて癒されるリスナーは結構いると思うのだが...。ということで,原田知世には点数も甘くなり,星★★★★☆。

このアルバムを聞いたら,彼女の昔の映画が見たくなってしまったではないか。DVD注文しようっと(爆)。

2009年4月16日 (木)

どっこい生き残っている典型的フリー・ジャズ

Gerald_cleaver "Farmers By Nature" Gerald Cleaver / William Parker / Craig Taborn (Aum Fidelity)

このアルバムを発売しているAum FidelityレーベルにはWillam Parker,David S. Ware等が所属しているから,フリー・ジャズ専門のレーベルと言ってよいのかもしれないが,フリー・ジャズらしからぬアルバム・ジャケット,またParkerはさておき,結構何でもできそうなCleaverとTabornが参加しているから,実はこれほど典型的なフリー・ジャズが展開されているとは思わなかった。

しかし,どういう世の中になっても,こうしたフリー・ジャズはしぶとく生き残っており,ちゃんと購買層も確保しているっていうのはある意味凄い事実である。これを音楽的と言ってよいのか,あるいはどういう聞き方が最適なのかというのは,だんだん加齢とともに趣味がコンベンショナルになっていく私としてもやや微妙なのだが,世界のどこかでは確実にこうしたタイプの演奏が展開されているということになる。本作もJohn Zornが音楽監督を務める"The Stone"における実況盤である。

The StoneのWebサイトには自身を称して"A not-for-profit performance space dedicated to the EXPERIMENTAL and AVANT-GARDE(実験音楽とアヴァンギャルド専門の非営利パフォーマンス・スペース)"なんて書いているぐらいであるから,この場所での演奏ならば,当然ハイブラウなフリー・ジャズであるということは容易に想定できた。そうだとしてもこれはこんな時代としてもかなり強烈なフリー・ジャズだし,ビートさえも一定感はあまり現れないというのは相当聞き手を疲れさせる。まぁNYCのイースト・ビレッジらしいと言えばまったくその通りではあるが...。

私はこうした音楽のクリエイティビティに関しては異論をさしはさむつもりはないものの,これが音楽として「美的」な要素を感じさせるかと言えば別問題である。音楽にはスリルを求めることがあるものの,スリル一辺倒ではさすがに私には厳しくなってきているのである。しかし,William Parkerなんてのは1952年生まれだから,私よりもかなり年長なわけだが,その年でこんな音楽を続けているのだからよくやるわと言いたくなる。

まぁそれでも,私も文句は言いながらも,このトリオ,レギュラーでやっているとは思えない割にはいいコンビネーションではないだろうかと感じてしまう。そもそも私が一番好きなのはこのアルバムで激しい方の"Cranes"と"Not Like Number 10"というのは私も何だかんだ言いながら好き者である。最後の"Fieda Mytlie"後半の盛り上がりもいいねぇ。でもフリー・ジャズなら私は山下洋輔のようなあっけらかんとしたところがあってもいいのではないかと思うのも一方で事実である。ということで,評価は微妙なのだが,星★★★ぐらいだろうか。だってあんまり何回も聞く気になれないもんなぁ。

Recorded Live at The Stone on June 19, 2008

Personnel: Craig Taborn(p), William Parker(b), Gerald Cleaver(ds)

2009年4月15日 (水)

Melvin Gibbs:分類不能音楽?

Melvin_gibbs_2 "Ancient Speaks" Melvin Gibbs' Elevated Entity(LiveWired)

この音楽をどうカテゴライズすればいいのだろうか?

Melvin Gibbsと言えば,私の中ではArto LindsayとのAmbitious Lovers等の活動で知られるベーシストであり,その他のキャリアを見れば,Defunktだ,Ronald Shannon Jackson's Decoding Societyだ,Rollins Bandだ,とだいたい見る人が見れば,ははぁ~と言いそうなバンドばかりである。そのほかにも,Caetano VelosoやMarisa Monte等のブラジル勢,Femi Kuti等のアフリカ勢,更には懐かしやJames Blood Ulmerとバンドも組んでいるという雑食系のミュージシャンだと言ってよいだろう。

そうした雑食のMelvin Gibbsだからこそできた音楽と言ってもよいかもしれないが,アフリカ系のビートを基調とするファンク・ミュージックっていうのが適切なところだろうか。これをジャズにしか興味のないリスナーが聞いたらおそらく卒倒間違いなしである。本作にPete CoseyやJohn MedeskiやCraig Tabornの名前を見つけたからと言って買ってはならないが,こういう名前だけでアルバムを買う人ならOKであろう。特にここでのPete Coseyは切れているし,Medeskiのバッキングもかなりいけているのも事実である。Tabornはあまり目立たないが,Coseyの参加曲は特にカッコいい。

本アルバムの発売元であるLiveWired Musicのサイトを覗いてみると,このアルバムについて次のような記述があった。

"Walking down the street in New York and unexpectedly falling into a manhole, only to discover there is an African-American underground music scene"

つまりは「NYの街を歩いていたら突然マンホールに落っこちた。するとそこにはアフロ・アメリカンの音楽シーンが存在していた」って感じだが,これはまさに言いえて妙な表現である。絶対こんな音楽はメジャーにはならないが,必ずどこかに存在しているのは間違いないのである。でもやっぱりアングラだよなぁと思いつつ,このファンクは結構はまると癖になるかもしれない。星★★★☆。但し,繰り返すが,Pete Coseyのファンは聞いて損はない。

Personnel: Melvin Gibbs(b, key, prog), Afoxe Filhos do Korin Efan(vo, perc), Amayo of Antibalas Afrobeat Orchestra(vo), Pedrito Martinez(vo), B Negao(rap), Totonho(rap), Chason Walker(rap), Ruben(rap), James Hurt(key), Mark Batson(key), John Medeski(key), Craig Taborn(key), Pete Cosey(g), Blackbyrd McKnight(g), J.T. Lewis(ds), Terreon Gully(ds), Cortejo Afro(perc), Felix Sanabria(perc), Abdou Mboup(perc), Ron Blake(horn), Casey Benjamin(horn), Graham Haynes(horn), Micah Gaugh(horn)

2009年4月14日 (火)

ノリのよいブラジリアン・アルバムだが,ここにこのメンツが必要なのか?

Rosalia "D'Improvviso" Rosalia de Souza(Schema)

このアルバムにHigh Five人脈が参加しているという事実を無視すれば,これはかなり楽しめるブラジル音楽アルバムだと言える。ノリはいい。演奏もなかなかである。全編を通じてちょっとノリがよすぎた結果,一本調子となって,メリハリが足りないという気がしないでもないが,それでもなかなかよい。High Fiveのピアニスト,Luca Mannutzaのアレンジがツボを押さえていると言えばいいだろう。

しかしである。ジャズ・ファンがこのアルバムを聞こうとする理由は,High Five一派がどういう伴奏を展開するのかという点につきると思われる。リズム隊はさておき,Fabrizzio BossoやMax Ionataにこの程度の役割しか担わせないってのは欲求不満が残ると言わざるをえまい。別にリズミックなボサノバに熱いソロはいらんという話もあるが,それなら,彼らを揃えなくてもよかろうというものである。よくよく考えれば,Mario BiondiやNicola Conteのアルバムも彼らやその一派が参加していたが,おそらく本作と同じようなノリなのだろう(違ったらごめんなさいだが...)。クラブ・ジャズなるジャンルが本当に成り立つのか私には疑問だが,もっとミュージシャンには適材適所の使い方があるべきであって,そこが私は気に入らないのである。即ち,High Fiveやその一派でなくてもできそうな音楽に,敢えて彼らを呼んできて,彼らのファンをも購買行動に巻き込むというこの商魂がたまらなく嫌である。つまりは私は本作のプロデューサーであるLuciano Cantoneが嫌なのだということになるわけだ。

そうした個人的な感覚を除けば星★★★★ぐらいつけてもよさそうなものだが,いやらしさが感じられるので星★★★である。

ちなみに彼女が歌う"Carolina Carol Bela"の映像がYouTube"にアップされているが,この映像を見る限り,サウンドがよくてもこんなクリップ作っているようじゃ今後は期待したくないなぁと思ってしまったし,いやらしさが爆発していて,見ていて感じがすこぶる悪い。High Fiveの連中が参加していても,もうこの一枚で十分だ。クリップにご関心のある方はこちらをどうぞ。きっと私の言う「いやらしさ」を理解して頂けるはずである。High Fiveとその一派は早くこうした連中と手を切るべきだ。何?それじゃ生活できない?じゃ~仕方がないが,私はもうこういうアルバムは買わん。まぁこれも勉強,勉強。

Personnel: Rosalia De Souza(vo), Luca Mannutza(p), Fabrizio Bosso(tp), Max Ionata(ts), Gianfranco Marchesti(tb), Pietro Ciancaglini(b), Lorenzo Tucci(ds), Roberto Rossi(perc), Simone Haggiag(perc), Sandro De Bellis(perc), Toco(vo), Fabrizio Costaqnza(tp), Massimi Gini(ts), Alessio Nava(tb), Marco Bianchi(vo)

2009年4月13日 (月)

すぐれたアルバムだが,曲順は日本盤の方がよい

Scissors_cut "Scissors Cut" Art Garfunkel(Columbia)

昔からLPで聞いてきたアルバムである。アルバムは実家に置いたままなので,しばらくはGarfunkelのベスト・アルバム"The Art Garfunkel Album"で彼の音楽を楽しんできたのだが,どうしても聞きたくなったので,値段も安いし,輸入盤CDで購入した。

このアルバム(特にタイトル・トラック)の美しさについては,私は以前Amazonのレビューに「何と言っても,本アルバムの魅力はArtの選曲のセンスであり,どの曲もArtの声に完璧なまでにマッチしているのが素晴らしい。アルバム全体を通して,美しい演奏,歌唱が続くが,特にタイトル曲"Scissors Cut"には陶然とする思いである」と書いたことがある。その思いは今でも変わっていない。

しかし,この輸入盤を聞いていて,私は何とも言えない違和感を覚えたのは,輸入盤と国内盤で曲順(及び曲目)が違っていることによるところが大きい。このアルバムは私としてはやはりタイトル・トラックで幕を開けて欲しいのだが,今回の購入盤では1曲目が"A Heart in New York"になっているではないか。"A Heart in New York"もいい曲だが,このアルバムのコンセプトからすれば,オープニングにはやはり"Scissors Cut"こそ相応しいのである。

だからと言ってこのアルバムの価値が下がるというわけではないが,やはり私としては国内盤のチョイスの方が正しいと思う。また,国内盤には”Bright Eyes"の代わりに,Eric Kaz作"The Romance"という曲が入っているらしいのだが,私はこのアルバムのA面ばかり聞いていたので,はっきり言って記憶が曖昧である。こうなったら次回帰省時にLPを持ち帰るしかないということか。国内盤なら間違いなく星★★★★★なのだが,この違和感ゆえに輸入盤には星★★★★としておこう。それでもやはり美しいアルバムであるが...。ちょっと惜しいなぁ。

Personnel: Art Garfunkel(vo), John Jarvis(p), Michael Boddicker(synth), Jimmy Webb(p), Larry Knechtel(key), Rob Mounsey(synth), Russ Kunkel(ds),  Pete Carr(g), Andrew Gold(g), Graham Lyle(g), Dean Parks(g), Jeffrey Staton(g), Michael Staton(g), Chris Spedding(g), Roland Harker(lute), Joe Osborn(b), Scott Chambers(b), Tony Levin(b), Lee Hurdle(b), Rick Marotta(ds), Rick Schlosser(ds), Roy Halee(ds), Allan Schwortzberg(ds), Tommy Vig(vib), Crusher Bennett(perc), Ray Cooper(perc), Paul Simon(vo), Lear Kunkel(vo), Lisa Garber(vo), Michael Brecker(ts), Lew Soloff(tp, fl-h), Edwin Roxburgh(oboe), David Campbell(arr), Del Newman(arr)

2009年4月12日 (日)

Beatlesのアルバムがついにリマスターされるようだ

HMVのWebサイトを見ていたら,次のような記事が...。

「2009年4月7日(火)ロンドンにて、英アップル社(Apple Corps Ltd.)と英EMIミュージックは、ザ・ビートルズのオリジナル・アルバム全12枚と、『マジカル・ミステリー・ツアー』、そして今回1タイトルにまとめられた編集盤の『パスト・マスターズvol.1』と『同Vol.2』の計14タイトル(16枚)が、1987年の初CD化以来、初めてデジタル・リマスターされ、2009年9月9日に世界同時発売されると発表しました!」

私は"Rubber Soul"以降のアルバムはほぼ保有しているが,これには困った。どうしよう...。 買うべきか,買わざるべきか。でも商売に乗せられているような気もするしなぁ。ハムレットの心境である。

9/9まではまだ時間があるから,よ~く考えよう。でもやっぱり買ってしまいそうで怖い...。

2009年4月11日 (土)

私が買った初のロック・アルバム(のはず)

Rick_wakeman "The Six Wives of Henry VIII" Rick Wakeman(A&M)

私の記憶が確かならば,私がステレオ装置を買って,それに合わせて初めて買ったアルバムはこれとDeep Purpleの「ライブ・イン・ジャパン("Made in Japan")だったはずである。時は中学1年の時だっただろうか。PurpleとRick Wakemanでは趣が随分違うが,当時FMで聞いて気に入っていたのが,この2つのアルバムだったはずである。それから長い年月が流れたが,やはり原初的体験はいつまでも影響を残すものであり,媒体はCDには変わったが,今でも両方とも聞いているぞ。恐ろしい。

なんでRick Wakemanだったのかはよくわからないのだが,この変拍子を含む何とも言えないインスト・アルバムが当時の私に何らかの刺激を与えたということであろう。まぁいずれにしても,このアルバムを購入した直後から私がYesに走ったことは言うまでもないが,"Close to the Edge"を聞いて,このアルバムをはるかに上回る緊張感にしびれたのも懐かしい。

そうは言いながら,このアルバム,なかなか聞かせるメロディをたくさん持っているし,演奏はタイトに決まっている。もちろん,Rick Wakeman特有の仰々しい表現やあまりにもクラシック寄りの演奏もあるが,それも含めてRick Wakemanの魅力と考えればよい話である。しかし,今聞くと,結構キーボードの音がしょぼい気もするが,テクノロジー発展途上の70年代前半ということを考えれば,それも当然である。

このアルバムはRick Wakemanの初ソロ・アルバムとして当時のYesのバンド・メイツやその前に加入していたStrawbsの面々が参加し華を添えているが,それがなくてもRick Wakemanのワンマンショーみたいなものであるから,彼のキーボード弾き倒しを聞いていれば,それなりに楽しめる。"Jane Seymour"なんてパイプ・オルガンをここまで弾いたロック・ミュージシャンはいないのではないかと思わせるほどである。

しかし,この後,Rick WakemanはYesに出たり入ったりを繰り返しながら,それこそ山のようなソロ・アルバムを出している(まさに濫作である)が,私にとってはYes在籍中以外ということではWakemanは"White Rock"で終わっているので,それ以外は聞いていないし,これからも聞くことはなかろう。それでもこのアルバムはおそらく手許には残っていくだろうし,ごくまれながら,ちゃんとプレイバックするのではないかと思っている。今となってはちょっと甘いとは思うが,原初的体験に免じて星★★★★。

しかし,最近,何とも回顧的な記事が多いなぁ。年だろうか。

Personnel: Rick Wakeman(key), Dave Winter(b), Chris Squire(b), Chas Cronik(b), Les Hurdie(b), Mike Eagan(g), Dave Lambert(g), Steve Howe(g), Alan White(ds), Bill Bruford(ds), Barry De Souza(ds), Ray Cooper(perc), Frank Riccotti(perc), Dave Cousins(banjo), Lisa Strike(vo), Laura Lee(vo), Barry St. John(vo), Sylvia McNeil(vo), Judy Powell(vo)

2009年4月10日 (金)

McCoy Tynerの暑苦しさの極致

Mccoy_tyner "Fly with the Wind" McCoy Tyner (Milestone)

今は昔の話になるが,私の予備校時代,昼の時間帯は授業にもほとんど出ることなく,ジャズ喫茶に入り浸っては,読書に明け暮れていたというのが実態である。現役受験の時は国語の点数が異常に悪くて,なぜかなぁという思いを強く持っていたが,それは読書量の不足に起因していると自分で判断したため,意地になって本を読みまくっていたのである。

その頃,私がよく行っていたジャズ喫茶で本当によく掛っていたアルバムが本作である。その当時も暑苦しい音楽だとは思っていたが,実は何がいいのかよくわかっていなかった。しかし,時間が経過して自発的にこのアルバムを聞くようになると,ちょっと違った感覚が芽生えてきた。今聞いても暑苦しいことには何の変わりもない。しかし,McCoyと言えばホーンが入っていて当たり前のところに,ここではソロを吹くのがサックスでなく,Hubert Lawsのフルートが中心なのがは今にして思えば,それまでのMcCoyとはちょっとイメージが違ったんだろうなぁと考えられるからである。

だからと言って,McCoyのピアノがそれまでと違うかと言うと全然そんなことはなく,多少はメロディアスな部分を感じさせつつも,McCoyの手癖が山のように出てくる。やっぱりついついこうなってしまうのよねぇという感じである。そこにまたよく言えば分厚い,悪く言えばこれも暑苦しいストリングスがかぶってくるのだから,暑苦しさ倍増である。それに輪を掛けるのがBilly Cobhamのドラムスである。とにかく叩きまくりである。

とここまで書いてくると,このアルバムが暑苦しさだけで,私はこのアルバムが嫌いのように思われてしまうかもしれないが,実はそんなことはない。いつも書いていることだが,私は時として音楽に高揚感を求めてしまうことがある。ハード・ロック然り,ヘビメタ然り,あるいはファンク然りである。自分でもややストレスを感じる時というのは,こういう高揚感を与えてくれるような音楽が救いとなるのである。

もちろん,しょっちゅうこの音楽を聞いていたら,頭がおかしくなってしまうだろう。それでも今にして思えば,「浪人」という特殊な環境におけるグルーミーな心理状態をこのアルバムがプレイバックされると多少は忘れていたのかもしれない。そういう心理的な効用を持っていることも考えられるアルバムで,私にとってのフラストレーション解消音楽。ちょっと不健康なような気もするが...。ストリングスの響きは現代のテクノロジーならばもう少しまともに捉えられたかもしれないが,ここで聞かれる響きが1976年という時代を反映していると思えば腹も立たない。星★★★★。でも正直言って,最初の2曲(LPのA面)しか聞かないんだなぁ。

Recorded on January 19, 20 & 21, 1976

Personnel: McCoy Tyner(p), Ron Carter(b), Billy Cobham(ds), Hubert Laws(a-fl, fl), Paul Renzi(piccolo, fl), Linda Wood(harp), Guilherme Franco(perc) & Strings

2009年4月 9日 (木)

やはり気持ちよいDeodatoのグルーブ

Deodato "Deodato 2" Deodato(CTI)

このブログでも何度か取り上げて,何だかんだと言って結構Deodatoが好きな私であるが,単体でのアルバムを何枚も買うほどの熱烈なファンではない。しかし,このアルバム,バーゲン品で安値で売っていたので,買って損はあるまいということで購入である。

Deodatoのいいところは何と言ってもRhodesの響きの心地よさである。私は彼のRhodesの響きだけでOKよと言いたくなってしまうぐらいであるが,そのRhodesの響きが今でもOKだとすれば,このアルバムでも顕著なように,ストリングスや特にブラスがかぶさると響きが古臭くなってしまうのは,リリースから35年以上経ってしまっているのだからそれは仕方がないことなのかもしれない。John Tropeaのギターも何とも時代を感じさせるしなぁ。

このアルバムはCTI第1作の「ツァラトゥストラ」の好評もあり,「ラプソディ・イン・ブルー」やら「亡き王女のためのパヴァーヌ」やらをやっているが,それは素材に過ぎないという考え方も可能である。私にとってはDeodato~Clarke~Cobhamのグルーブに身を委ねていればそれでいいのである。面白いのは"Rhapsody"でのフルート・セクションの響きで,今ならシンセサイザーで対応可能なこの音を,生のフルートで生み出しているところが,人海戦術的でいいではないか。よくよくクレジットを見ていると,ホーン・セクションにはサックスがバリトン1本しか入っていないという意外な事実を見て,Deodatoのアレンジの手段が見えてくるようにも思える。だが,ブラス偏重が響きを古臭くしているのも事実のように思えるが。

実のところ,このアルバムはクラシックのアダプテーションものよりも冒頭の"Superstrut"あるいは"Skyscrapers"のような曲の方が人気があるのかもしれないが,Moody Bluesの"Night in White Satin"なんて選曲もクラシックものだけでなく,注目してもよさそうなものである。

尚,このアルバム,ボーナス・トラックが3曲追加されているが,その中で意外なのがSteely Danの"Do It Again"の収録であろう。本来のFagenのヴォーカル・パートをおそらくはHubert  Lawsのフルートに吹かせている(響きがややしょぼい)以外は,かなり原曲に近いアレンジである。DeodatoをもってしてもSteely Danの「毒」は消せなかったということか。

今の時代にこの音楽がどういう価値を持つかは別にしても,これはこれでやはり好きだなぁ。ということで星★★★☆。

Recorded in April & May, 1973

Personnel: Eumir Deodato(key), John Tropea(g), Stanley Clarke(b), John Giulino(b), Billy Cobham(ds), Rick Marotta(ds), Rubens Bassini(perc), Gilmore Degap(perc), Hubert Laws(fl), Burt Collins, Jon Faddis, Victor Paz, Alan Rubin, Joe Shepley, Marvin Stamm(tp, fl-h), Wayne Andre, Garnett Brown(tb), Tony Studd(b-tb), Jim Buffington, Brooks Tillotson(fr-h), Joe Temperley(bs), Jerry Doddgion, George Marge, Romeo Penque(fl) and Strings

2009年4月 8日 (水)

Jon Hassell,25年ぶりのECM作

Jon_hassell "Last Night the Moon Came Dropping Its Clothes in the Street" Jon Hassell(ECM)

私はこのブログでJon HassellのECMレーベル作"Power Point"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,そこではどちらかというと否定的なトーンで書きたい放題のことを書いている。そのJon Hassellが25年ぶりにECMレーベルからアルバムを発表したのには驚いた。"Power Spot"が私には微妙な出来だったので,それだけなら踏ん切りがついたかどうかはわからなかったが,今回はライブ音源が入っているということで,いったいどういうことになっているのだろうかということで購入である。

音楽的な観点では,今回もアンビエント的な色彩濃厚であり,相変わらずのJon Hassellである。しかし,この静謐な中にゆったり流れていくような音楽は,先日書いたRicardo Villalobosのミニマル・テクノと対極にあると言ってもよいかもしれない。ライブ音源は4曲収録されているが,ライブでも,スタジオでもそこには温度差はほとんどなく,変わらぬアンビエント・ミュージックが展開されているのには思わず笑ってしまう。一体ライブの聴衆ってどんな人たちだったんだろうと余計な詮索をしたくなってしまうが,ライブでこんな音楽を聞いていたら,心地よい眠りに落ちること必定(悪い意味ではない)である。

今回のアルバム,このゆったり感がかなり気持ちよく,私としては"Power Spot"よりも好きだなぁ。この心地よさの根源はおそらくはPeter Freemanのベース・サウンドのように思うが,これをBGMにしていれば,仕事がはかどる可能性も...(そんなわけないか)。ただ,一般的なECMレーベルのファンにこの音楽が受けるとはあまり思えないが。ある特定のジャンルにこだわりを持つ人々が聞くと,面喰うこと間違いなしである。しかし,ストレスフルな現代社会において,こうしたサウンドを求める人が出てきても全く不思議ではないような気がする。結構気持ちよかったので星★★★★。

Recorded in 2008

Personnel: Jon Hassell(tp, key), Peter Freeman(b, perc), Kheir Eddine M'Kachiche(vln), Jan Bang(sampling), Dino J. A. Deane(sampling), Rick Cox(g, strings), Eivind Aarset(g), Jamie Muhoberac(key), Peter Lockett(ds), Helge Norbakken(ds), Steve Shehan(perc), Thomas Newman(strings)

2009年4月 7日 (火)

ミニマルは気持ちいいのだが,これで踊れるのかな?

Villalobos "Fizheuer Zieheuer" Ricardo Villalobos(Playhouse)

ここのところ,オンライン・ショップの新譜発売のタイミングと入荷時期が結構ずれることが多くて,新譜をあまり聞いていないものだから,日頃あまり聞いていない音楽を聞いている。

このVillalobosのCDは,テクノ領域での評判を耳にして,しかも某サイトで980円という安値だったので買っておいたものである。2曲入りとは言え,70分超の音源でこの値段なら安いのは事実である。しかし,はっきり言ってこの薄気味悪いジャケットであるから,普通なら私も絶対手を出さない。私はRicardo Villalobosの音楽を聞いたこともなかったし,通常はテクノにも関心はないのだから,こういうのを完全な「気まぐれ購入」と言う。

聞いてみると,これはテクノというよりも,私の中ではミニマル・ミュージックということになるわけだが(テクノと聞くと,もっとピコピコな感じを想定してしまうのだ,オジサンは...),ミニマル・ミュージックはその反復性を心地よいと感じられるかどうかで,そこに見出せる価値は全く変わってしまうはずである。ただ,私は基本的にミニマル・ミュージックを受け入れる方だし,この音源についても,変わったホーンのサンプリングがあったりして,「へぇ~」って感じである。まぁこれはこれでいいんではないかと思う。2曲目の"Fizbeat"なんて,ほとんどビートとそこへのヴァリエーションだけで構成されているようなものであるから,メロディ・ラインらしきものも存在しないと言ってしまってもいいのである。よって,これを本当に音楽と呼べるのかという疑問が提示されても不思議はないが,特定の場所で,映像とリンクさせるようなかたちであれば,いかようにでも使えるようにも思う。

しかし,この音楽をダンス・ミュージックとカテゴライズされると,ほんまにこれで踊れるんかいなぁと余計なお世話をしたくなってしまう。オジサンには全く縁のない「クラブ」とかいう場所では,こういう音源で若者が踊っているのかねぇ?

いずれにしても,このアルバムは場所がフィットしていれば,全然問題ないとも思えるが,家庭や通勤途上で積極的に聞こうという類の音楽では決してないとは言っておこう。

こうしたアルバムを私が当ブログで取り上げることには我ながら違和感ありで,また,私の趣味を知る人からすれば「似合わねぇ~」という声も飛んできそうだが,そこはまぁあくまでも「気まぐれ購入」ということで...。そう言えば,NYCのイースト・ヴィレッジにあるやや先鋭的なバーではこんな音楽も掛っていたように急に思い出す私である。

2009年4月 6日 (月)

Tony Williamsはこのアルバムで何をしたかったのだろう?

Tony_williams "The Joy of Flying" Tony Williams(Columbia)

昔から気にはなっていたが,買わなかったアルバムっていうのは私に限らず皆さんにもあるのではないかと思うのだが,本作などは私にとってその最たる一枚と言ってもよいかもしれない。購入意欲をそそらないジャケット,メンツからすれば基本はフュージョンのはずなのに,Cecil Taylorとのデュオが最後に入っているという事実。でも聞いてみないとわからないのだが,やっぱり不安。ということで,ずっと買わないで過ごしたきたこのアルバムを,LPで発売されてからほぼ30年を経て,中古(紙ジャケCD)でゲットである。

それにしてもわけのわからないジャケットである。白頭鷲は米国の国鳥であるが,それがなんでドラム・スティックを握っとらなあかんねんと突っ込みたくなるものである。また,イラストが何ともシャビーなので,何じゃこりゃとなるのが人情と言うものである。まずこれで減点。

次に演奏であるが,Tonyっていろいろできるのねぇとこの段階でリスナーを感心させなくても,Tony Williamsの実力はみんなわかっていたはずである。しかも冒頭のJan Hammerとのデュオは何なのだろう?タムの連打がTonyぽいよなぁと感じさせても,こんな凡百のドラマーでも叩けそうなロック・ビートを聞かせて何が面白いのか?これだったら,Jeff BeckのアルバムでJan Hammerが叩いているドラムスと何が違うのかと言いたい。スピード感もないし,全く面白くない。

George Benson参加曲はBensonのソロが聞かせるし,Hancock参加曲はHancockらしいフレーズに微笑んでいればいいのだが,それでも「何だかなぁ」なのである。私としては懐かしや"Live Under the Sky"の実況で,Ronnie Montroseのギターがいけている"Open Fire"(これは完全なロックであって,ここまで行くと,コンベンショナルなジャズ・ファンはほとんどついていけまい。エア・チェックしたテープはどこに行ったかなぁ)と最後のCecil Taylorのデュオ(こっちは完全にフリー・ジャズだが,丁々発止のやり取りが楽しい)以外はほとんど面白みを感じられなかった。

このアルバムはTony Williamsのセルフ・プロデュース作だが,結局,Tonyが何をしたかったのかよくわからないアルバムというのが妥当な評価である。あまりに総花,あまりにピンボケ。拾遺的に音源を集めただけに過ぎない凡作であり,これでは上記の2曲がいくらよくても星★★が精一杯。やっぱり,このアルバムは買わずにおいた方がよかったのだろうと反省する次第。あ~あ。

Personnel: Tony Williams(ds), Michael Brecker(ts), Tom Scott(lyricon), Jan Hammer(key), Herbie Hancock(key), Brian Auger(key), Cecil Taylor(p), George Benson(g), Ronnie Montrose(g), Stanley Clarke(b), Paul Jackson(b), Mario Cipollina(b), Ralph McDonald(perc) & Others

2009年4月 5日 (日)

安部公房全集 遂に完結!

Photo 私は当ブログの自分のプロフィールにも好きな作家の筆頭に安部公房を挙げているぐらい長年の安部公房好きである。安部が存命中,わが母校(大学)に講演で来たことがあるのだが,そのときも当時の最新刊「方舟さくら丸」を持参し,彼のサインをもらって嬉々としていた自分が懐かしいが,その本は私にとっての家宝となっている。

その安部公房が亡くなったのが1993年,そして彼の作品を網羅する全集の刊行が始まったのが1997年7月のことである。発刊当初から全30巻と銘打たれていたこの全集であるが,2000年12月の29巻の刊行を最後に,いつまで経っても最終巻である30巻が発行されないまま時は過ぎた。しかし,突然というか,ひょっこりというか,先日第30巻がめでたく発売され,遂に12年掛かって全集完結である。

私はこの全集を刊行開始以来買い続け,全巻を保有するに至ったが,1~29巻が1冊6,000円弱,この最終巻は8,400円とそれはそれは財布には結構厳しい買い物であった。音楽CDもこれもというのはなかなか成り立ちにくく,この全集が毎月のように刊行されている当時は中古盤購入比率が高まっていたように思う。それぐらい負担が大きかったのである。だが,私の老後の楽しみとしてこの全集は何としても揃えておかなくてはならないという固い決意のもとに買い続けた私である。それが完結するということには感慨を覚えざるをえない。

ということで,私はこの本はリタイアした後にゆっくり時間をかけて読もうと思っているので,評価など今のところできないし,するつもりもない。私が若い頃になぜ安部公房に惹かれ,それが数十年を経てどう感じられるのかということをを実は今から楽しみにしているのである。それはまだまだ先のことではあるが,きっと新しい発見をもたらしてくれると確信している。

2009年4月 4日 (土)

crissさんのブログ界への帰還を祝う

今日は嬉しいお知らせである。突然ブログの閉鎖を宣言されたcrissさんの「雨の日はジャズを聴きながら」であるが,この度,めでたく「冬眠終了」となり,再稼動された。

crissさんのジャズやその他の音楽への知見は,いつも感心することしきりであり,いろいろお世話になっている人も多いはずである。いろいろなご事情があったことはご自身でお書きになっているので,そちらを参照して頂きたいが,とにかくこの復帰はめでたい。ということで,リンクも復活させて頂いた。

これからも有益な情報をご提供頂けると確信している。"Welcome Back!"

2009年4月 3日 (金)

これも久々に聞いた気がする"Fast Company"

Fast_company_3 "Fast Company" Jerry Bergonzi / Joey Calderazzo / Lars Danielsson / Jukkis Uotila Quartet(Blue Jackel)

このアルバムも久しぶりに聞いたような気がするが,Jerry BergonziとJoey Calderazzoのコンビならこういう風にやって欲しいという期待に見事に応えたアルバムである。このアルバムを聞いて燃えなければ「もぐり」である。冒頭のCalderazzoのオリジナル,"The Lag"からして最高である。こういうのを胸のすくような快演と言う。曲調からしてCalderazzoらしいし。

私はBergonziの"Standard Gonz"やJoey CalderazzoのBlue Note盤等でこのコンビの演奏を楽しんできたが,このアルバムも期待を全く裏切らないハード・ドライビングな演奏がてんこ盛りである。やはりこの二人は相性がいいのである。

全8曲で73分以上の収録時間なので,1曲がかなりの長尺であるが,だれることなく聞かせるのは4人のメンバーが持ち寄ったオリジナルが結構魅力的だということもあるが,それよりもやはりこの熱い演奏(Danielssonの2曲はややクールだが...)こそがこのアルバムの魅力だろう。はっきり言って,ここでのBergonziは切れている。ここまでスピード感のあるフレージングは最近のBergonziからあまり聞けないような気もするが,これを聞けば誰しもが納得する出来だと思う。かくあるべしなのである。こういうアルバムをプロデュースしたJukkis Uotilaはよくリスナーのニーズ(あるいはBergonziの本能)をよくわかっている。星★★★★★。

しかし,このジャケットのフォーカスの甘いポートレート(いかにも合成写真ぽいのだ)は何とかならんかったのか。また,このジャズマンぽくない表情(笑顔)も私にはちょっとという感じである。演奏はいいのに,このジャケで聞く気を結構なくしている私である。iPodに突っ込むのが正解かもしれないなぁ。

Recorded on February 15 & 16, 1996

Personnel: Jerry Bergonzi(ts), Joey Calderazzo(p), Lars Danielsson(b), Jukkis Uotila(ds)

2009年4月 2日 (木)

Sealの声でソウル・クラシックを歌えばそりゃいいでしょう

Seal "Soul" Seal (Warner Brothers)

買ってから暫く未聴のまま時間が過ぎてしまったこのアルバム,Sealがあの声でソウル・クラシックを歌い上げるということであるから,当然期待できる。しかし私の不安材料はプロデューサーがDavid Fosterということであった。特にオーバー・プロデュースにならないかという点である。

一聴すると,オーバー・プロデュース感はあまりないのだが,伴奏としてこれが最適な解だったのかという点にはかなり疑問が残る。私はやはりソウルは生音で勝負して欲しいと思っているが,このアルバムではかなりの部分で打ち込みが使われているのに違和感をまず覚える。また,一部で聞かれる仰々しいストリングスはどうなんだろうとも感じてしまう。

しかし,そうした点を除けば,Sealの歌唱はかなり満足ができる出来と言ってよいのではないかと思う。どちらかというとSealの歌には独特のクセがあるようには感じながらも,いい声の持ち主が真っ当にソウルに対峙すれば,こういう感じにはなるだろう。

私としてはSealの歌そのものは高く評価したいのだが,やはり伴奏がなぁという感じである。ここにBooker T & the MG'Sがいたらどうなっていたのかと想像すると,ちょっと惜しい気がする。歌に星★★★★,伴奏が星★★★で総合では星★★★☆ってところか。やはりこれは勿体ない。

尚,ここでSealは"If You Don't Know Me by Now"を歌っているが,久しぶりにSimply Redバージョンを聞きたくなってしまった。でもあれって実家に置いてあったような...。

Personnel: Seal(vo), David Foster(key), Jochem van der Saag(key), Michael Thompson(g), Dean Parks(g), Marcus Brown(b), Nathan East(b), Teddy Campbell(ds), John Robinson(ds) and Others

2009年4月 1日 (水)

実家での発掘盤:Ulf Wakeniusのファンク

Good_groove "Good Groove" Grafitti(Lipstick)

実家にあることはわかっていたのだが,久しく聞いていなかったアルバムである。驚いたのはギターをUlf Wakeniusが弾いていることであった。それを知って今回,自宅へのお持ち帰りとなった。

このアルバムを私が購入したのはDennis ChambersとGary GraingerというJohn Scofield最強エレクトリック・バンドのリズム隊の参加によるところが大きく,プロデューサーも兼ねたリーダーと思しきHaakon Grafには何の興味もなかったし,当時はUlf Wakeniusなんて全然知らなかったからWakeniusがギターを弾いていると気がつかなくても当たり前というか,全然意識していなかったものである。私が彼の名前を意識したのはOscar Petersonと演奏を始めた頃だが,Peterson時代や現在とは随分違う印象の演奏をしているのが興味深い。

まぁこういうメンツであるから,当然サウンドはファンク指向が強いが,ハード・フュージョンという感じではなく,むしろ軽く響くのはこの重量級リズムからは意外である。よって,このアルバムを聞く際にはやや低音を強調して聞いた方がいいように感じる。そんな中でタイトル・トラック"Good Groove"やラストの"In the Pocket"は当時のPrinceの音楽のようで何とも懐かしい感じがしてしまった。

このアルバムは当時の時代を映す鏡みたいなもので,今聞いたからと言って,音楽的な感慨はあまりないのだが,Ulf Wakeniusって何でも弾けるのねぇと妙に感心してしまった次第である。そんなこと言ったらLars JanssonだってLars Danielssonだって,Bob Berg~Mike Sternコンビと激しいハード・フュージョンをやっていたぐらいだから,スウェーデンのミュージシャンってみんな間口が広いのかもしれない。いずれにしてもフュージョン好きにはある程度受け容れられる音源とは思うが,出来としては可もなく不可もなく,並ってところだろう。私としてはもっとハードなグルーブが欲しいところ。ということで星★★★。

余談だが,このアルバムが出て間もない頃,このアルバムの1曲目"Moonshine"をNHKのスポーツ番組のBGMとして使っていたのに驚いたことがある。このアルバムは国内盤も出ていないはずだから,輸入盤を仕入れた「好き者」のディレクターかなんだかがこの音源をBGMに使ったものだろうが,ついテレビに向かって「ご同慶の至り」とひとりごちたのも今は昔である。

Personnel: Haakon Graf(key), Ulf Wakenius(g), Gazry Grainger(b), Dennis Chambers(ds)

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