Sade:次回作はいつになるのか
何ともSadeらしいタイトルのアルバムである。そしてファンの期待に応え,Sadeの音楽のイメージを崩していないところが立派である。2000年にリリースされたこのアルバムが今のところ,Sadeの最新スタジオ・アルバムのはずだが,それを考えれば何とも寡作な人たちである。何てたって1984年のデビュー以来およそ四半世紀になろうと言うのに,オリジナルのスタジオ盤は5枚しかない。しかもこのアルバムがリリースされてからもはや8年である。しかし,米国出張中に聞くスムーズ・ジャズ専門FM曲ではSadeが掛からない日はないと言ってもよいぐらいだから,そんなにリリースに間が空いたと思わせないのがこれまた大したものである。ある程度時間が経過しても彼らの音楽は普遍的なのだ。
このアルバムを聞いて冒頭の゛By Your Side゛からしてその曲のクォリティにノックアウトされること必至である。もはやこれは現代のスタンダードと言ってよい素晴らしい曲である。この1曲でアルバムとしてのペースはセットされ,あとはいつもながらのSadeワールドに浸るのみである。Sadeの魅力はもちろん,ヴォーカリストとしてのSade Aduの声に依存するところは大だとしても,彼女の魅力を最大限に活かす術を知っているバンド・メンバーもきっちりほめなくてはならないだろう。
音楽をカテゴライズすることにはあまり意味がないことは承知しているが,この音楽は何に分類すればいいのだろうか?ソウル?Sade Aduの声は確かにソウルっぽいが,音楽の全体感はソウルではないなぁ。ジャズ?もちろん,純粋ジャズ・ボーカルとは呼べないなぁ。ポップス?ポップな感覚はあまりないなぁ。ということで,これはあらゆるジャンルを超越したアダルト・オリエンティッド・ミュージックとしか呼べないのである。そうした観点でリスナーがやや年齢の高い層(高齢者ではない)と思われるスムーズ・ジャズ専門局がSadeを流し続けるのは当然なのである。
誤解をおそれずに言えば,ある意味この音楽は「清冽な空気」のような音楽である。刺激には乏しいが,流れていても決して害悪にはならないばかりか,流れていたらつい耳をそばだててしまうのである。例えば谷川岳の一の倉沢で吸う空気や立山室堂の空気が都会と違うのと当然な感覚であるが,そこに行けば必ず違いがわかるし,「うまい」と思わされる感覚にSadeの音楽は似ている。しかも,一聴して「あっ,Sadeだ」とわからせるこの個性。こういう人たちはなかなかお目に掛かれない。
私としてはサウンド・プロダクションから打ち込み臭さ(ドラマー不在もあるし,おそらくは意図的にそのようにプロデュースされているはずだが...)をもう少し減らしてくれて,より生音に近い感覚でやってもらうとなおよいのだが,それでもこれはよくできた大人のためのアルバムと評価してよいと思う。私のような中年はやはりたまに聞くとはまるが,逆にこの音楽が好きという若者がいると,それはそれで怖いようにも思えるなぁ。星★★★★☆。
Personnel: Sade【Sade Adu(vo), Andrew Hale(key), Stewart Matthewman(g, woodwinds), Paul S. Denman(b)】 with Leroy Osbourne(vo), Karl Vanden Bossche(perc), Janusz Podrazik(key), Andy Nice(cello), Nick Ingman(strings arr)
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