渡辺香津美のロックごころ爆発
何とも懐かしいアルバムである。私がこのアルバムの冒頭に収められた゛Melancho゛を聞いて「King Crimsonかっ!」と叫んだのも今は昔であるが,それぐらいロックを感じさせるアルバムである。もちろん,Brufordがドラムスを叩いているからCrimsonぽく聞こえるのは当然なのだが,それだけでなく,Andy SummersとRobert Frippとの共演盤や,Jeff Beckをも想起させるアルバムである。だいたい,私がこの人たちのライブを見に行ったときのアンコールはJeff Berlinのボーカルによる゛Crossroads゛だったから,心根はロックな人たちなのである。
このアルバムが発売されてからもはや20年以上というのはある意味信じ難いが,それでも古臭いところを感じさせないのは大したものである。まぁBill Brufordが当時多用していたSimmons Drumsの音が時代を感じさせると言えばその通りだが,トータルな感覚では全く問題はない。Simmons Drumsというのは好き嫌いがわかれるところであるが,強弱のニュアンスを出すのは難しいはずである。だからこそ,ロック的なセッティングでしか使いようがないように思える。それでもこのアルバムのサウンドを特色付けているのはBrufordだと言ってもよい。さらにスラッピングを使わず指弾きに徹するJeff Berlinは本当に指がよく動くものだと感心させられてしまう。
そうしたメンツのバッキングに乗って,自由度高くロックする渡辺香津美をジャズ・ギタリストと呼ぶのは少なくともこのアルバムでは無理である。おそらく香津美が最もロックに傾斜した演奏と言ってもよいだろうが,この引出しの大きさがこの人を日本屈指のギタリストに位置付けている理由である。
「ロックが聞きたいなら,本物のロックのアルバムを聞いていればいいではないか」という話もあるが,これはこれでたまに聞きたくなるのだから仕方がない。もちろん,しょっちゅう聞きたいと思うものではないが,まぁそれでも楽しめるアルバムではある。収められた曲全部がいいというわけではないが,バンド全体の勢いとグルーブがそれを補って余りある。星★★★★。
Recorded between October and November, 1986
Personnel:渡辺香津美(g),Jeff Berlin(b),Bill Bruford(ds, perc)
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