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2008年7月24日 (木)

何とも重苦しいテーマの「決壊」

Photo_2 「決壊(上・下)」平野啓一郎(新潮社) 

最近読んだ吉田修一の「さよなら渓谷」は沈鬱な雰囲気だとこのブログに書いたが,平野啓一郎の新作「決壊」は吉田をはるかに上回る何とも陰惨なテーマを持つもので,読んでいて暗い気分に陥れられてしまったのだが,それを一気に読んでしまったというのは一体何なんだと思ってしまった。こんな本ばかり読んでいると精神衛生上よろしくないなぁと思いつつ...。

平野啓一郎の小説を読むのは私はデビュー作「日蝕」以来のことだが,私には厳か過ぎて敷居の高い作家と思わせた平野の印象が変わったのは,小川隆夫との対談本「Talkin' ジャズ×文学」や小川との共著「マイルス・デイヴィスとは誰か」で,彼の音楽的な趣味・嗜好がわかってからのことである。今回の作品にもBrad Mehdauの"Largo"やQuincy Jonesの"Body Heat"だったか"Mellow Madness"だったかが小道具として登場しているし,コルボのフォーレのレクイエムなんてのも登場すると,この人は音楽がわかっていると思わせられてしまうのである。

それはさておき,今回の作品,ネット上での悪意の流布やブロガーの心理等も描かれていて,何となく他人事のように感じられないのが,一気読みの理由の一つとも言えるかもしれないが,それにしても字面を追っているだけでもかなり残酷なシーンがあって,映画で言えば「ブラックサイト」(記事はこちら)のようなえげつなさである。その一方で,登場人物の会話や独白は相変わらず小難しくて,私のような凡人にはついて行けない部分もあるが,それでも現実社会での出来事(秋葉原の一件等)を想起(予見)させるようなこともあり,この小説はネット社会における人間心理にも触れながら,あまりにタイムリーなテーマを扱っており,かつシチュエーションもリアルと言えばリアルで,これがまた私が暗くなってしまう原因かもしれない。

そうした様々な要素を含めても,私は本作をかなりよく出来た作品だと評価せざるをえないというのが実感である。今年,私がどれだけの文学作品を読むかはわからないが,この作品は年末のベスト作品には必ずや挙げられるであろうと確信しているぐらいの出来である。但し,読了後の感覚は極めて重苦しいので,安易に手に取ることはお薦めできない。こうしてアンビバレントな感覚に陥る私である。星★★★★☆。

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