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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2008年6月30日 (月)

動くMiles Davis Lost Quintetなんだけどねぇ...

Lost_quintet_2 ゛Miles Davis Quintet Live in Copenhagen & Rome 1969" (Jazz Shot)

いきなりMilesのLost Quintetの映像が市場に出回ったので,これは買わざるをえない。彼らの演奏は音源もほとんどがブートレッグで聞くしかない状態だが,それでもそのレベルの高さは誰しもが認めるところである。ここに収められた演奏も,もはやフリー・ジャズ化した彼らのバンドの特性がよくわかるもので,映像で見ると,「へぇ~,こんな感じで演奏していたのね」というのがわかるのはファンにとってはありがたい。

しかし,映像として見た場合,前半のコペンハーゲンでの演奏はカラーなのはいいが,画質はほとんど孫コピーのような状態,後半のローマでのライブに至っては音と映像がシンクロしていなくて,居心地が悪いこと甚だしい。まぁ貴重な映像だから仕方がないとするしかないのだが,ローマの方は,データを補正するとか何とかの手立てがなかったものかと思わざるをえない。

まぁそこは天下のLost Quintet,そうした瑕疵には目をつぶり,映像を消して演奏だけを聞くとするか。うーん,それにしても何となく惜しいなぁ。

Recorded at Tivoli Konsertsal, Copenhagen on November 4, 1969 and at Teatro Sistine, Rome on October 27, 1969

Personnel: Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ts, ss), Chick Corea(key), Dave Holland(b), ack Deohnette(ds)

2008年6月29日 (日)

Pendulumボックス到着!今日はディスク2である。

Pendulum 先日記事にアップしたMosaic SelectシリーズのPendulumボックスが到着した。わが同僚のやぎさんのところには1日早くデリバリーされたようだが,それほど時を隔てずして届いたのは誠にめでたい限りである。

このボックスの1枚目はオリジナルLPと同一であり,そちらは以前に「久々に聴いた"Pendulum"」として記事をアップしているから,今日はそのうちの2枚目について書くことにしてみよう。ただ,音源としてはリミックスされているので,ディスク1もオリジナルとはやや感覚が違う可能性もあるが,まずは未発表音源優先である。

ディスク2はいきなり大スタンダード"There Is No Greater Love゛からスタートするが,このメンツらしいというかこれがかなり騒々しく,特にAl Fosterは叩き過ぎだろうという気がする。ここではRandy Breckerが先発で出るが,このBreckerは音色,フレージング両方とも今イチに思えるが,そのあとに出るLiebmanのテナーがかなり強烈。やぎさんも書いているとおり,途中から聞いてこれが"There Is No Greater Love゛と認識できる人は少数であろう。そもそもこのテンポってあり?という気もするし,勢い余って元気百倍みたいな演奏で,「若気の至り」と言い換えてもよい。

その「若気の至り」は次の゛Solar゛でも全然変わらない。ここでも先発するBreckerのソロはこちらの方がよく聞こえる。Liebmanはここでも相変わらずだが,まぁよくもここまでウネウネと吹きまくれるものだと感心しつつ,またしても燃えてしまう私である。でもこの曲の4小節交換はフロントの2人が不発であまりいけてないのが残念。ところで,この曲の終わりではMCをAl Fosterがやっている。そのあたりが特別編成っぽいと言えばそのとおりである。

"Piacadilly Lilly゛はオリジナルLPにも収録されていたが,ここではテイク違いを採用。次の゛Night & Day゛も激しくやっているので,この゛Picadilly Lilly゛が清涼剤のように思えるのが笑える。゛Night & Day゛ではFrank Tusaのベース・ソロが聞かれるが,この当時としては仕方ないかもしれないが,この増幅感はまるでエレクトリック・ベースのように思わせるところもあり,なんだかなぁである。しかし,ここでもTusa,Brecker,Beirach,Fosterに続いて最後の最後に登場するLiebmanというソロ・オーダーはなんだっ!と思わせるが,ここでもLiebmanの変態テナーが炸裂している。

尚,上では触れていないが,全編を通してRichie Beirachもピアノを弾きまくっており,今の演奏スタイルとのギャップは何?と思わせる出来。一体どっちが本質なのやら...。確かに結構変わったおっさんであったが,この変容ぶりは理解し難い部分ありである。

それにしてもライブ盤だからということもあるが,1曲の収録時間が長い。ディスク2で一番短いのが゛Picadilly Lilly゛でそれでも9分余り,そのほかは18分弱に20分超である。体調が今イチの私には1枚でお腹いっぱい。ということでディスク3は日を改めて書くことにしよう。演奏は十分熱く,大いに楽しめるが,まぁまともに評価すれば,「若気の至り」度,あるいはどれを聞いても同じように聞こえてしまうところがあるゆえ,星★★★☆としておこう。重要なのはこのボックスが発売されたことなのである。

しかし,所謂ジャズ研の連中がこれを聞いたらコピーに走るんだろうなぁというのはやぎさんのお考え同様である。ジャズ喫茶にたむろしていた一人としては,その感覚,非常によくわかる。そういう学生諸君(そういう人種が今でも残っているかは不明だが...)は5,000セット限定だからお買い求めはお早めに。これを逃せば入手は限りなく難しくなるだろう。よって今一度言おう。「これを聞かずに何を聞く!これを買わずに何を買う!」

2008年6月28日 (土)

体力の限界?

6月は地方出張が多かった。海外や日本全国行けていいですよねと言われることがあるのも事実だが、当事者は実は大変である。

移動時間は蓄積疲労と化し、今回ばかりはかなり厳しい。こういう時にはビートのきいた音楽は不要である。

今の私にはヘンデルさえ厳しく、ルネッサンス期の宗教音楽こそ相応しいように思えるから、これは重症だ。こんな日はさっさと寝る以外対処不能である。

まぁこういう日もあるなということで。プロカンでも聞いて寝よう。

今やプロカン?という方も多いだろう。プロ・カンティオーネ・アンティクアです。

何か開店休業のような記事を書いてしまった。

2008年6月27日 (金)

Jack Wilkins:ジャズ界のマイナー・リーガー?

Mexico "Mexico" Jack Wilkins (CTI)

Jack WilkinsについてはBob Brookmyerとのライブ盤を取り上げて,「Jack Wilkinsファン必聴のアルバム」という記事をアップしたことがある。Wilkinsの人気盤は当然のことながら,Brecker Brothersとの共演盤ということになるのだが,Wilkinsの持つテクニックや歌心を鑑みれば,Brecker人脈でしか注目を浴びないというのはあまりにも彼にとっては酷なことのようにも思える。しかし,人気が上がらないのは日本に限った話ではないようで,かつてWilkinsがNYCのBlue Noteの月曜日(今はどうか知らないが,同店は火曜から日曜が一般の演奏で,月曜日は比較的マイナーなミュージシャンにチャンスを与えていた)に出演したときも,あまりの不入りに本人もくさっていたという話を聞いたことがある。ただ,そのときのバンドはWilkinsとしては明らかに失敗だった"Alien  Army"だったはずだから,それもまた仕方あるまい。とは言え,やはりメジャーになれないのである。

そうしたJack Wilkinsが最もメジャーに近づいたのはCTIレーベルからPhil Woodsをゲストに迎えて"Captain Blued"と"Opal"のLP2部作を発売した頃と言ってよいと思う。このアルバム、"Fuse One"のようなパターンで、もともとは日本のマーケットを意識(あるいはキングレコードとCTIのタイアップ)して制作されたようなのだが、一体どれぐらい売れたのかは全くわからない。中古でもあまり見たことがないようにも思えるから、推して知るべしというところか。本日紹介する"Mexico"はその2枚のLPを再構成して1枚のCDにまとめ,90年代初頭の新生CTIから再リリースされたものである。よって,何曲かはオリジナルからカットされてしまっているが,メンツも悪くないし,これはこれで楽しめるアルバムである。ただ,Phil Woodsファンは,彼の参加曲が2曲しか含まれていないことに不満も感じてしまうかもしれない。

このアルバムでも,冒頭からJack Wilkinsのテクニック爆発であり,ソロで演じる"My Foolish Heart"なども悪くない出来である。Al Daileyってこんなピアノだったっけと思わせる瞬間もあり,結構スリリングな展開も示している。しかし,このアルバムですら廃盤の憂き目に長い間あっているのは本当に不幸な人である。そもそもBreckerとの共演盤だって,2枚のアルバムを1枚("Merge")にまとめられてしまっている。おそらくはこのままあまり陽の当たることなく終わってしまいそうな気もするなぁ。Jack Wilkinsがもう少し注目を浴びることを祈念して,ちょいと甘いが星★★★★としてしまおう。

Recorded during July 19-23, 1983

Personnel: Jack Wilkins(g), Phil Woods(as), Albert Dailey(p), Harvey Swartz(b), Akira Tana(ds), Carl Barry(g), Ted Moore(perc)

2008年6月26日 (木)

いつの間にやら50,000PV

6/24にこのブログのページ・ビューが50,000を越えた。始めた頃は全くアクセスのない日もあったが,開設約1年半でこれだけのアクセスをして頂いたことは誠にありがたいことである。もちろんこの数字,ユニーク・アクセスではないが,それでもこれだけ私の拙い記事(まさに素人の戯言である...)をご覧頂いていることを考えると,駄文ばかりではなく,たまにはお役に立てる情報も提供しないといかんなぁと考えてしまう。

この数字がどの程度のものなのかは私にはわからないし,著名ブロガーの方のアクセス数には遠く及ばないのは重々承知しているのだが,開設当初からせっせとアクセスしてくれた友人に感謝したい。持つべきものは友である。また,ブログを通じて新しい知己も得ることができ,そうした皆さんを通じて自分だけでは知りえなかったさまざまな音楽と接する機会が増えたことも非常によかった。

こうしたことを考えるだけでも,ブログを始めてよかったなぁと思う次第である。読者,ビジターの皆さま,引き続きよろしくお願いします。

2008年6月25日 (水)

Patti Austinは大した歌手である

Havana "Havana Candy" Patti Austin(CTI)

私がこのブログでKeiko Leeの"In Essence"を評したとき(記事はこちら)に,そのアルバムに収められた゛That's Enough for Me"について『私はこの曲はLee Ritenourのインスト・バージョンで聞いていたが,このボーカル版はなかなかよい。オリジナルのPatti Austinのアルバム"Havana Candy"が聞きたくなってしまった』と書いた。それから随分と時間は経ってしまったが,今日はそのアルバムである。

アルバムを聞いていて笑ってしまうのがDave Grusinのアレンジの個性である。私が購入した日本盤には詳しい説明はないが,誰がどう聞いてもGrusinのリズム・アレンジ,ストリングス・セクションの響きである。そういう意味ではこのアルバムはCTIレーベルのものだが,CTIと少なくとも70年代のGRPは非常に共通項が多かったことになるのである。私はこのアルバムの伴奏を聞いていて,すかさずGRPのAngela Bofillを思い出してしまったが,それぐらい似ているというか,Grusinのアレンジ・パターンが強く出ている(昔は気づかなかったが,やっぱりパターンはあるのだ)。また,当時のスタジオ・ミュージシャンの演奏というのは今にして思えば個性に満ちている。誰が聞いてもRichard Teeだし,誰が聞いてもEric Galeあるいは誰が聞いてもMichael Breckerだ。

そうしたことを抜きにしてこのアルバムを捉えれば,タイトル・トラックは明らかな失敗曲である。Patti Austinの魅力はミディアム以下の曲で発揮されており,リズミックなタイトル・トラックや,アップ・テンポの曲はどうも具合が悪い。全体的には彼女にフィットしたトーンだと思うが,タイトル曲がいけてないのは印象が悪い。それでも彼女の歌のうまさはよくわかるし,何よりも"That's Enough for Me"は名曲である。この曲ゆえに星も甘くなり星★★★★。この1曲のために買っても,今の1,500円なら私はもとが取れると思う。

Recorded in August 1977

Personnel: Patti Austin(vo), Dave Grusin(p, key), Meichael Brecker(ts), Anthony Jackson(b), Ralph MacDonald(perc), Dave Valentine(fl), Hugh McCracken(g), Richard Tee(p, key), Steve Jordan(ds), Eric Gale(g), Will Lee(b)

2008年6月24日 (火)

全くノーマークだったPieranunzi~Johnson未発表音源

Yellow_blue_suites "Yellow & Blue Suites゛ Enrico Pienranunzi & Marc Johnson (Challenge)

発売時期は若干前だったようなのだが,全くノーマークだった作品である。しかし,長年の盟友,Pieranunzi~Johnsonのデュオということでは買わないわけにはいかない。1990年録音の本作がなぜ今頃になって発掘されたのかは知る由もないが,聞けばわかるとおり,埋もれさせておくにはあまりに惜しい演奏である。

本作が録音されたのは1990年12月13日のことであるが,ということはIDAでの両者のデュオ盤゛The Dream Before Us゛録音の数日前ということになるから,これまた悪いわけはないと思わせる。そして,本当にこれがよい。

もともとはスイスのラジオ曲のためのライブ・レコーディングであるが,冒頭からPieranunziのタッチの美しさも十分な上に,両者のコンビネーションも素晴らしい。Pieranunziがライナーにも書いてようにほとんど打ち合わせもなく作り上げられた音楽とはとても思えないぐらい緊密度が高いというのはほとんど驚異である。その一方でそうしたセッティングゆえの自発性の高さを感じさせる瞬間もあり,このコンビの相性の良さを如実に示す作品となった。

タイトルにもあるように,曲が組曲的に演奏されるので,やや冗長に流れると感じさせることがあるのも事実である。また,゛Someday My Prince Will Come゛を再構築したような"Princes & Princesses゛などはなんだかなぁという気もするが,この演奏のトータルな美的感覚の前には目をつぶることにしよう。やはりレベルの高い人々である。星★★★★。

Recorded Live on December 13, 1990 at Radio Suisse Romando, Lausanne

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Marc Johnson(b)

2008年6月23日 (月)

ナルニア国物語の第2部である

2 「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛("The Chronicles of Narnia: Prince Caspian")」('08,英/米,Walt Disney)

監督:Andrew Adamson

出演:Ben Barnes, William Moseley, Anna Popplewell, Skandar Keynes, Georgie Henley, Sergio Castellitto, Liam Neeson(声の出演)

私はこの映画の第1作を友人から借りたDVDで見たのだが,それなりに楽しめたということもあり,今回第2作は劇場で見ることにした。私のような人間がこういう映画を見に行ったと言うと,「らしくない」とか「似合わない」とかいう声も聞こえてきそうだが,まぁそれはさておきである。

こういうシリーズ物の第2作はあらゆる意味で非常に難しいというのが定説である。前作に対する期待を背負う,あるいはストーリーとしては次へのつなぎに過ぎないなどと言われかねないからである。そういう意味では,この作品は比較的健闘している方ではないかと思うのだが,話の筋書きもあるが,ファンタジックな要素は前作より控え目になっており,それがそれなりにはヒットしても,第1作に遠く及ばないという米国での集客に影響を及ぼしているのではないだろうか。レーティングがいくら"PG"でも小さな子供には理解しがたい部分があるというのも事実であろう。

いずれにしても他愛のない話と言ってしまえばそれまでであるが,本作は終盤に至ってようやくファンタジーらしさを表出してくるまでの間,ストーリーとしての「ありがちさ」が目立つのが難点であろう。プリンス・カスピアンの心理の動きなんてそれこそありきたりの設定である。それでもCGはよくできているし,映像的には相応には楽しめるから難しいことは言うまい。

本作のシナリオからすると次作ではピーターとスーザンの出番はなくなるようにも思える(あるいは思わせるだけで,きっちり登場するのか?)が,次はいかなる展開を示すのだろうか。この展開は私には唐突感が強かった(なんでいきなりそうなるのかの説明が足りないのである)のだが,それが原作に忠実なのか,翻案なのかは知る由もない。だからと言って原作を読むほどの関心は私にはないが,まぁこれなら次作も時間があれば見に行ってもいいかなと思わせるぐらいの出来にはなっていると言っておこう。

尚,本作も例外ではないが,最近は野外ロケというとやたらにニュージーランドばかりで,映像的既視感に襲われるのはきっと私だけではあるまい。星★★★。

2008年6月22日 (日)

テンプレートを変えてみた

このブログを開設以来,ずーっと同じデザイン(それもかなり地味)で通してきたが,気分転換も兼ねて,テンプレートを変更してみた。

テーマは我が心の故郷(?),NYCである。最近は米国に出張する機会はあっても,とんとNYCにはご無沙汰してしまっており,ジャズ・クラブも久しく行っていないが,それでもやはり行く度にワクワクしてしまう街である。

私がNYCに居住していたのはたった22ヶ月間(もう随分と昔のことになった)だったが,それでも私は大きなインパクトを感じ続けていた。この年齢になるとまたNYCに住みたいかと聞かれればやや微妙ではあるが,それでもやはり私はNYCという街が今でも好きなのである。

ちょっと雰囲気を変えてみたが,(レギュラーの)ビジターの皆さんの反応やいかに。やや不安である。評判次第では元に戻さねば。

Marc Coplandの新作はJohn Abercrombieとの双頭作のような...

Another_place_2 "Another Place" Marc Copland(Pirouet)

Marc Copland関連の作品がPirouetレーベルから結構発売されるのは誠にめでたい限りである。このブログでレビューはしていないが,New York Recordingsシリーズもファンには嬉しい出来だった。こういう人に光をちゃんと当てるこのレーベルはちゃんと評価しないといかんと思わず声を大きくして言いたくなる。そのCoplandがまたまたPirouetレーベルから発売した新作であるが,これがいつもと何となく感じが違うのはJohn Abercrombie全面参加とドラムスがBilly Hartだからという要因が大きいように思うが,いずれにしても,ちょっと聞いた限り,Abercrombieのリーダー作にも聞こえるものとなっている。

そもそもAbercrombieはCoplandのJazz Cityレーベルにおける初リーダー作にも客演しているし,その後も共演をしていることからすると,Coplandとは積年の友人ということになろう。そうした2人がほぼ同等にオリジナルを持ち寄って作られたこの作品(そのほかにベースのGress作品1曲にCole Porter1曲である)は両者によるコラボレーション作あるいは双頭リーダー作と呼んでいいように思う。だからこそ,いつものCopland色は若干薄いのである。それをよしとするかどうかはリスナーの好みであるから,個人の嗜好にまかせればよいが,AbercrombieはECMでも多くのアルバムがあり,そちらでも楽しめると考えれば,もう少しCoplandカラーが出ていて欲しいようにファンとしては思ってしまうのである。私はECM好きであるから,Abercrombieももちろん好きなのだが,Coplandに求めるものはやはりより美的な世界なのである。

もちろん,この作品にも美しい演奏は収められているが,より締めつけられるような耽美的感覚を求めてしまうのはCoplandには酷だろうか?しかし,これは彼のリーダー作なのだから,そうした世界を求められても仕方がない部分もあるように思える。また,ドラムスもBilly Hartは万能で決して悪いドラマーではないが,CoplandにはやはりレギュラーのJochen Ruckertの方が合っているように思う。ということで,悪い出来ではないのだが,本レーベルでのNew York Recordingsや"Some Love Songs"に比べるとやや不満も残る出来ということで星★★★。

尚,本作と時を同じくしてCoplandのレギュラー・トリオとTim Hagansの共演盤(第二弾)も発売されているので,追ってレビューすることとしたい。

Recorded in July 2007

Personnel: Marc Copland(p), John Abrcrombie(g), Drew Gress(b), Billy Hart(ds)

2008年6月21日 (土)

Dave Holland Quintet:鉄壁のコンビネーション

Prime_directive ゛Prime Directive" Dave Holland Quintet(ECM)

ちまた(と言ってもごく一部局地的な話だが...)で何かと話題の゛Prime Directive"であるが,その本家バージョンを久々に聞いた。Dave HollandがこのQuintetを結成したのは1997年のことらしいが,それ以来ドラムスのBilly KilsonがNate Smithに代わった以外は不動のメンバーというのは今日のジャズ・シーンでは珍しいことである。Nate SmithはChris Potter Undergroundのメンツであるから,このメンバー交代はPotter人脈と考えていだろう。編成も結構変わっているが,Steve Nelsonのヴァイブが絶妙なアクセントになっていて,これがピアノではこうは行かないと思わせるのである。いずれにしても,少なくとも結成当時は比較的地味と思わせたメンツからこうした響きを作り出すDave Hollandのリーダーシップは大したものである。

このバンドのコンビネーションのよさはクインテットとしての第2作である本作でも既に際立っていて,極めてコンテンポラリーな響きの中にも,まさに鉄壁の演奏を展開している。タイトル・トラックはPotterのテナーとEubanksのトロンボーンが対位的にソロを展開し,この曲から聞く者の心を鷲掴みにしてしまうと言っても過言ではない。いずれにしても,単純な4ビートはあまりないのだが,変拍子でもなんでも非常に「ジャズ」を感じさせる演奏である。現在の管入りレギュラー・コンボではピカイチの実力を持つバンドであり,こういう優れたバンドはもっとメジャーになって欲しいものである。ということで,現代ジャズにおけるこのバンドの重要性も含めて星★★★★★としよう。

本作でもそうだが,Dave Holland Quintetの音楽がECMらしからぬものだということは大方のリスナーも認めるところだろうが,結局はこのバンドがECMから離れて,Hollandの自主レーベルに移行したのは,サウンド的な観点で言えば必然である。そうした意味ではECMサウンドを期待するECMファンがこのアルバムを聞くと面食らうかもしれないが,それでもこのバンドの意義を認めたECMのオーナー,Manfred Eicherの慧眼はやはり素晴らしいと言っておきたい。

Recorded on December 10-12, 1998

Personnel: Dave Holland(b), Chris Potter(ss, as, ts), Robin Eubanks(tb, perc), Steve Nelson(vib, marimba), Billy Kilson(ds)

2008年6月20日 (金)

速報!゛Pendulum゛ボックス遂に発売!!

Pendulum このブログで「Dave Liebmanの"Pendulum"ついに再発か」という記事をアップしたのは2008年3月12日のことである。それから約3ヶ月を経て,遂にMosaic Selectシリーズとして゛Pendulum゛ボックス(3枚組)が発売された。私は即刻注文である。今からデリバリーが待ち遠しい。

MosaicのWebサイトによれば,収録曲は以下の通りである。これを聞かずに何を聞く!これを買わずに何を買う!たったの$44,DHLでの送料込みでも$56だ!さぁ皆さん,買いなさい。私は今から期待で胸が張り裂けそうである。早~く来い来い゛Pendulum゛!!たまりません。

Disc One
1. Pendulum (Richie Beirach) 18:18
2. Picadilly Lilly (Dave Liebman) 7:27
3. Footprints (Wayne Shorter) 16:44

Disc Two
1. There Is No Greater Love (I. Jones-M. Symes) 17:45
2. Solar (Miles Davis)  20:11
3. Picadilly Lilly (Dave Liebman) 9:11
4. Night And Day (Cole Porter) 21:48

Disc Three
1. Blue Bossa (Kenny Dorham) 17:10
2. Well. You Needn't (Thelonious Monk) 18:25
3. Bonnie's Blue (Dave Liebman) 17:15
4. Impressions (John Coltrane) 22:20

Personnel: Dave Liebman(ts, ss), Randy Brecker(tp); Richie Beirach(p), Frank Tusa(b), Al Foster(ds).

2008年6月19日 (木)

ベーシスト必聴(だろう):Dominique Di Piazzaの初リーダー作

Di_piazza "Princess Sita" Dominique Di Piazza (Riff Raff Jazf)

これまでもJohn McLaughlin(記事はこちら)やAntonio Farao盤(記事はこちら)で取り上げてきたDominique Di Piazzaであるが,これが初リーダー作らしい。シシリーで生まれ,ジプシーの継父に育てられたと彼のバイオにはあるが,冒頭の「これがベースかっ」と思わせるアルペジオを聞けば,クラシック・ギター系の演奏経験があるに違いないと思わせるし,そのバイオからしても幼少の頃からガット・ギターを弾いてきたのではないかと感じさせる。

それにしても,冒頭の1曲を聞いて正直なところ,私は一瞬ギターかと思ってしまったのだが,ベースでこういうラインを弾くというのは相当の握力が必要なのではないだろうか。Dominique Di Piazzaという人は,スラッピング等の技は使わず,サウンドも柔らかい。そして何よりもよく動く指が特徴のベーシストなのだが,強烈に「凄い」と思わせることなく,実は大変なテクニックを見せているようにも思える。

こうしたテクニックを持つベーシストであるから,編成は小さい方がその技がよくわかるということで,今回もクラシック・ギター,ドラムスとのトリオという編成になったのだろう。ギターとベースのユニゾンで目が点になるという点では"Captain Fingers"におけるLee RitenourとAnthony Jacksonと私の中では相場が決まっているのだが,あそこまではいかないとしても,強烈なユニゾンを一部で聞かせている。しかし,それがギミックとなっておらず,平然とこなしているように感じさせてしまうのである。

但し,編成もあろうし,これがDi Piazzaの資質なのだろうが,演奏はどちらかというとクールな印象が強い。その中で,上述のように「凄い」ことを普通にやってしまっているという感覚である。私としては,もうちょっと激しい展開があってもよかったかということで星★★★☆とするが,この人には注目が必要だと感じさせる一作ではある。

ところで,Di Piazzaはこの夏,John Mclaughlin & the 4th Dimensionというバンドで欧州ツアーに出るらしいのだが,このバンド,Di PiazzaとHadrien Feraudのツイン・ベースのようにも見える。どんなことになってしまうのだろう。うーむ,見てみたいものだ。

Recorded on June 22-24 and July 22, 2007

Personnel: Dominique Di Piazza(b), Nelson Veras(g), Manhu Roche(ds)

2008年6月18日 (水)

追悼,Esbjorn Svensson

既にいろいろなブロガーの皆さんが記事にされているように,E.S.T.のEsbjorn Svenssonがダイビング中に事故死したそうである。44歳という若過ぎる死である。

私とE.S.T.の付き合いは全く浅く,実は最新作"Live in Hamburg゛が私の初E.S.T.盤だったので,私にはEsbjorn Svenssonについて細かく語る資格はない。しかし,一聴して非常に面白いトリオだということはわかっただけに,この早逝は惜しまれるところである。44歳と言えば,ミュージシャンとしてこれから油が乗ってくる時期であり,これから成熟を遂げるであろうEsbjorn Svenssonがいかなる演奏をするのかも興味深かったところのこの事故死は欧州ジャズ界にとっては大きな痛手である。私よりも若い才能豊かな人が亡くなってしまうという何ともショッキングなニュースに,「神も仏もない」と思ったのは私だけではあるまい。

謹んでご冥福をお祈りしたい。R.I.P.

2008年6月17日 (火)

Polytown:プログレ的ジャズ・ロックと言うべきか

Polytown ゛Polytown゛ David Torn / Mick Karn / Terry Bozzio (CMP)

異色のメンバーによる異色のアルバムと言うべきだろうか。このアルバムが世の中に出た当時は,JapanのMick Karnがインスト・アルバムを発表というようなかたちで語られるようなことが多かったように記憶している。しかし,Japanというバンドに何の思い入れもない私が反応したのはECM作゛Cloud About Mercury゛で知られるDavid Tornと猛爆ドラマー,Terry Bozzioの方である。特にBozzioはFrank Zappaとの共演だけでなく,あのBrecker Brothersの゛Heavy Metal Bebop゛のドラマーである。どういう音が出てくるのか興味津々となるのが,好きものの世界では普通であろう(おかしな表現だが...)。結果としてここで展開されるのはプログレ的ジャズ・ロックそのものと言ってよいのではないかと思う。こういうサウンド好きにとってはかなり好感度が高いアルバムのはずである。

本作に収められた10曲は全て3人による共作となっており,おそらくはかなり自由度が高いセッションとして展開されたものと思わせる。そういうアルバムなので,アレンジメントの精妙さとかユニゾン・フレーズがどうのこうのという展開は見られない。これは各人の楽器の響きと,何とも言えぬアンビエンスを感じとればいいような作品と言ってよいのではないだろうか。確かにBozzioは期待ほどのはじけぶりではないのだが,このサウンドの中では非常に適切と思わせるドラミングを聞かせている。

正直言って,私がこのアルバムを聞く機会は滅多にない(年に1回かあるいはそれ以下か)のだが,それでもたまに聞くと「お~,なかなかいいねぇ」と思ってしまうのである。今回も本当に久々にプレイバックしたが,私の反応に大きな変化はなしである。これは私がこうしたサウンドに対する嗜好が結構強いということもあろうが,このトリオの演奏も相応にレベルが高いのでは思わせるからである。いずれにしても,全編に渡って比較的ゆるいリズムの上で,David Tornの変態的ギター・プレイが爆発していて,前述のECM作よりはるかに私にとっては好ましい作品である。

Mick Karnに気を使ったかどうかはわからないが,ベースのミキシング・レベルがやや高過ぎという気もしないでもないが,この手のサウンド好きにはおそらく受けること必定という作品である。ただ,CMPというレーベルから出たということもあって,かなりマイナーな作品ではある。私が保有しているのは国内盤だが,こんなアルバムでも国内盤が出たのもMick Karnのおかげなんだろうなぁ。星★★★★。一応,ジャズのカテゴリーにも入れたが,ジャズ的な雰囲気は極めて希薄なので念のため。

Recorded between June 25 and July 16, 1993

Personnel: David Torn(g, key, vo & others), Mick Karn(b, b-cl, vo), Terry Bozzio(ds, perc, p, vo)

2008年6月16日 (月)

ココログ出版モニターに当たってしまった

ココログで「あなたの代わりにココログが本を作りますっ!!!!」キャンペーンというのを当選者10名でやっていて,まず当たる可能性はあるまいと何の気なしに申し込んだら,何とめでたく当選してしまった。

これは自分のブログの記事を本にしてくれるというものだが,うーむ,嬉しいような恥ずかしいような...。そもそもブログの記事なんていうのは思いつくままに書いているところがほとんどであるから,文章は日本語の観点から見てかなりいい加減な部分もあるし,校閲のチャンスもないからである。手許に届いてから赤面することになることも十分予想される事態である。

まぁ,しかし,書籍という「かたち」が残ることが結構感慨深いことであることは,以前共同編著ながら書籍を出版した経験がある私としてはよ~くわかっているので,この当選は素直に喜ぶことにしよう。また,このブログを始めたのは2007年の元日だが,書籍化されるのは2007年の記事なので,その当時のある意味フレッシュなブロガーとしての自分を回顧するにもちょうどよかろう。

このキャンペーン,書籍のかたちで2冊私の手許に届くのだが,1冊は自分で持っているとして,さてもう1冊はどうしたものかねぇ。世の中に2冊しかないとなると扱いが非常に微妙である。

2008年6月15日 (日)

スリリングなKurt Rosenwinkelのライブ

Remedy_2 ゛The Remedy: Live at the Village Vanguard゛ Kurt Rosenwinkle Group(ArtistShare)

このアルバムは以前から結構気になっていたアルバムなのだが,ようやく購入である。随分と時間が掛かってしまったが,一応新譜扱いとさせて頂く。

2006年の1月に名門Village Vanguardで録音されたこのアルバムは,おそらくはRosenwinkelのレギュラー・バンドによる演奏を収めたものであるが,これがなんともスリリングな演奏の連続で思わず嬉しくなってしまった。リーダーのRosenwinkelもよいが,それを煽るドラムスのEric Harlandがこれまたよい。バンド全体の演奏も熱く,当然のことながら,聴衆のレスポンスも相当なものである。もしライブでこの演奏を聞いていたら私も同じように反応をしていたものと思われる。

Rosenwinkelと言えば,Gary BurtonやPaul Motianとの共演を経て,Verveからリーダー作を発表してきたが,このアルバムがArtistShareから発売されたということはVerveとの契約が切れたということだろうか。確かに有能なミュージシャンであることは認識できるものの,強烈な個性のようなものを感じにくい人であったように思えるので,アルバムもどの程度売れたのかはわからない。私もBrad Mehldauが参加しているがゆえに゛Deep Song゛は保有しているし,Fresh Sound New Talentから出た゛East Coast Love Affair゛はAvishai Cohen,Jorge Rossyという濃い~メンツにつられて購入したが,今まで熱心なRosenwinkelのリスナーだったとは言えない。

しかし,このアルバムを聞いて,レギュラーでこんな演奏をしているのを知ると,もう少し注目してもいいかなとも思わせるミュージシャンである。残念なのは曲のクォリティが今一歩というところだろうが,演奏(アドリブ・パート)を聞いている限りはそういうことは気にならない。これで作曲能力が上がれば,この人には更なるブレイクが訪れるかもしれない。星★★★★。

Recorded Live at the Village Vanguard in January 2006

Personnel: Kurt Rosenwinkel(g), Mark Turner(ts), Aaron Goldberg(p), Joe Martin(b), Eric Harland(ds)

2008年6月14日 (土)

Questのライブ音源を聞いた

ブログのお知り合いのすずっくさんが,新宿ピットインでのQuestの1982年ライブを聞いていらっしゃるなんて記事を書かれているものだから,「聞きたい,聞きたい」と駄々をこねたところ,共通の知り合い,やぎブラザース(おおきいほう)経由でこの音源をお借りすることができた。

1982年と言えばQuestの1stアルバムがトリオ・レコードから出た直後ということもあり,演奏は非常に興味深いところであるが,メンツは1stのメンバーからドラムスがBilly Hartに代わったというものであり,メンバーは1stと2ndのちょうど中間と言うことになるわけである。この頃はDave Liebmanはソプラノ(とアルト・フルート)に専念しており,ここでも鋭いフレーズを連発しており,私は電車の中で聞いていて思わず興奮してしまった。演奏はフリーになりそうで,フリー一歩手前で留まるというか,何とも緊張感に溢れたものとなっているが,こんな音源(もちろんプライベート録音だが...)が残っていただけでも感謝せねばならない。

プライベート録音と言えば通常,バランスや音質には目をつぶらないといけないのは当然なのだが,この音源の臨場感溢れる録音はどうやって録ったのかとお聞きしたくなるような落涙ものとなっている。その中で,Billy Hartの叩きっぷりがほとんど常軌を逸しているという感じの激しさで,これがBilly Hart?って感じでもある。そこで割を食っているのがベースのGeorge Mrazで,Hartが叩いている間はベースの音があまり聞こえてこないというのはちょっと可哀想かなとも思ってしまう。それでも,Questとしてはこのメンツでの録音は残っていないし,演奏も素晴らしいものなので,これはやはり提供して頂いたすずっくさんに大感謝。やぎ@おおきいほうにもお手数掛けましたということでこれまた感謝。

尚,演奏では私がこの曲が好きということもあるが,"Softly as in a Morning Sunrise"にはやはり興奮させられてしまった。ジャズ初心者には絶対薦められないが,やはりQuestはナイスなバンドである。最高だ。私もNYCで一度だけQuestは見ているが,是非もう一度ライブで見てみたいバンドの一つである。

Recorded Live at 新宿ピットイン in 1982

Personnel: Dave Liebman(ss, a-fl), Richie Beirach(p), George Mraz(b), Billy Hart(ds)

2008年6月13日 (金)

Alan Parsons Projectの最高傑作リマスター盤

App "Eye in the Sky" The Alan Parsons Project (Arista)

おそらくは誰もが認めるであろうAlan Parsons Projectの最高傑作である。タイトル・トラックはもちろん,"Silence And I"や"Old And Wise"のような名曲(ややオーケストレーションが仰々しいとしてもだ)がこのアルバムの価値を決定付けていると言ってよい。やれ産業ロックだ,やれポップ過ぎるなどと批判を浴びることも多いこのバンドには隠れたファンが多いのも間違いないことはリマスター・ベスト3枚組をこのブログで取り上げた時(Alan Parsons Projectのリマスター・ベスト盤)にも書いた。いずれにしても,「ポップで何が悪い」と私のようなこのバンドのファンはそうした傾向に文句の一つも言いたくなるが,そんな批判をものともしない傑作だと私は思っている。冒頭の"Sirius"はMichael Jordanが在籍した頃のChicago Bullsのテーマ・ミュージックとなっていたはずであるが,この冒頭からのワクワクさせられる感覚からタイトル・トラックへのつなぎなんてのは今聞いても完璧ではないか。また,曲によってリード・ボーカリストを変える手法も彼らならでは。中でもEric Woolfsonの声は発売から四半世紀を経た今でも素晴らしい。

思わず力が入ってしまったが,本盤は2007年のリマスター・プロジェクトの一環として発表されたものである。もともとのLP時代から音のよいアルバムであったから,リマスターの効果についてはオーディオに詳しい方に譲るとして,このアルバムで注目されるのはボーナス・トラック6曲である。もちろん,このアルバムの価値はボーナス・トラックなしでも揺るぐものではないと思うが,それでもそこに注目が行ってしまうのはある意味致し方のないところである。

そのボーナス・トラックはデモ・バージョンに顕著な通り,派手な意匠を施す前の極めて"Naked"な感覚が強いものとなっている。"Old And Wise"は本テイクはColin Bluntstoneのボーカルによるものだったが,このWoolfsonボーカルによるボーナス・トラックにおける生の感覚は何とも言い難い魅力がある。まぁそれでも所詮デモはデモだから,これらの演奏を目当てにこのCDを買うべきではないが,オーケストレーション前のバージョンは面白いことは面白い。

いずれにしても,注目はボーナス・トラックに向いてしまったとしても,このアルバムの価値が下がるものではない。いかにオーケストレーションがインパクトの強いものであったかを知る上でもこうした"Naked"バージョンが聞けたことはよかったと思う。星★★★★★。

Personnel: Alan Parsons(key, vo), Eric Woolfson(vo, p, key), David Paton(vo, b), Chris Rainbow(vo), Elmer Gantry(vo). Lenny Zakatek(vo), Colin Bluntstone(vo), Ian Bairnsen(g), Stewart Elliott(ds), John Wallace(tp), Andrew Powell(p), Mel Collins(sax)

2008年6月12日 (木)

Cassandra Wilsonの「ほぼ」スタンダード集

Cassandra "Loverly" Cassandra Wilson(Blue Note)

ジャズというフィールドを超越して,今やアメリカを代表するディープ・ボイスと呼びたいCassandra Wilsonがほぼ全面的(但し,"Arere"はバンド・メンバーの共作なので,ほぼ即興的に歌われたものであろうし,そのほかにElmore Jamesのブルースもあり。)にジャズ・スタンダードを歌った新作である。ジャケットを見ていてCassandraもいよいよジャズ・ボーカルの大御所化を図るのかと思わせるようなポートレートである。私は彼女のアメリカン・ルーツ・ミュージック的なアルバムも大好きであった。このアルバムも曲はほぼスタンダードながら,やはり典型的なジャズ的な演唱とはなっていないのがCassandra Wilsonらしい。その代表が"St. James Infirmary゛だが,やはりCassandraはこうでなくっちゃと思わせるもので嬉しくなってしまう。ベース1本をバックに歌う"The Very Thought of You"もいいねぇ。

いずれにしても,彼女のディープ・ボイスはますます磨きがかかり,これなら何を歌ってもOKという領域に入りつつあるように思える。オープナーは"Lover, Come Back to Me"であるが,テンポは軽快,しかしボイスはディープというギャップが大きいものの,トランペットとの掛け合いも楽しい。クレジットがないのだが,別のサイトの情報によればこのラッパはNicholas Paytonが吹いているようである。"Black Orfeus"は全く別の曲のような印象を与えるし,ミュージカル"My Fair Lady"からの"Wouldn't It Be Loverly"はオリジナルのJulie Andrews(あるいは映画版でもよいが)とはこれまた全く別物にしてしまうCassandra恐るべし。

そのほかの曲にしても,我々が慣れ親しんだバージョンとはかなり毛色が異なるものになっているのはCassandraを支えるバンド・メイツにもよるところが大きいように思う。だって,かなりハイブラウなメンバーが揃っているからなぁ。いずれにしてもアメリカ音楽の本質を曲げることなく,ジャズの曲を歌っているというところがこのアルバムの最大の特徴である。一般のジャズ・ボーカル・ファンが聞けば,なんじゃこれはという反応を示そうが,私はCassandra Wilsonの音楽を高く評価しているので,いつものようにこのアルバムでも大いに楽しませてもらった次第である。ジャズ・ファンのみならず,アメリカン・ロック・ファンにも大いに薦めたい好アルバム。ロック・ファンをジャズに目覚めさせるにはこういうのがきっといいのである。星★★★★☆。

Recorded on August 13-17, 2007

Personnel: Cassandra Wilson(vo), Marvin Sewell(g), Jason Moran(p), Lonnie Praxico(b), Reginald Veal(b), Herlin Riley(ds), Lekan Babalola(perc), Rhonda Richmond(vo)

2008年6月11日 (水)

Dave Liebman + イタリア人トリオの続編

Negative_space "Negative Space" Dave Liebman / Roberto Tarenzi / Paolo Benedettini / Tony Arco (Emarcy)

昨年同じメンツで発売された"Dream of Nite"について私は「今度のDave Liebmanはかなりよい」という記事にも書いたとおり結構高く評価しているわけだが,そのアルバムと同じタイミングで録音された残りテイクが続編として発売されたので早速購入である。残りテイクだからと言って心配することはない。クォリティが落ちているとは全く感じさせない出来にまたまた感心してしまった。

今回のアルバムはLiebmanのオリジナルが3曲に"Poinciana"と"Afro Blue"というプログラムであるが,冒頭のテナーで演奏される"G.I.G"がGeorge Gershwin生誕100年を記念するとともに,Gershwin兄弟を意識して書かれた曲(90年代後半に書かれたとライナーにはある)として,Liebmanにしてはかなりコンベンショナルな響きを持つ演奏になっているのにまずは驚かされる。しかし,次の"Nagative Space"ではいつものLiebman節が炸裂して思わず笑みを誘う。

続いてやや冗長に感じさせながらも,テンポを上げていくエンディング部には乗せられてしまう"Get Me Back to the Apple"を経て,またテナーに戻って"Poinciana"である。LiebmanはAhmad JamalとSonny Rollinsのバージョンについて言及しているが,このメンツではそうした響きにならないのは当たり前である。ここでもLiebmanはテナーの方がかなりコンベンショナルな感覚を示すが,私はここでのテナーはかなり好みである。演奏も熱いし,これを生で聞いていたら相当燃えたはずである。そして最後は"Afro Blue"というのが,Liebmanとしてはベタと言えばベタではあるが,15分を越える長尺の演奏にこれまた燃えさせられてしまう。Roberto TarenziはまるでMcCoy Tynerのようなフレーズ,サウンドを聞かせる(パワーでは負けるかもしれないが...)のがまたまた笑みを誘うが,ここでのLiebmanのテナーは本作の中で最も激しくも熱い。後半にこういうのを持ってくるかという気がしないでもないが,それでもやはりよいものはよい。

このアルバムを聞いていてふと考えたのだが,前作とどっちが好みかと問われれば実はこっちの方ではないかと思えてきた。久々に前作を取り出して比較しながら聞いてみなければわからないが,何となくそのように思えるのである。

いずれにしても演奏全編を通じてLiebmanファンは安心して聞いていられるが,前作でも感じたとおり,バックを務めるこのトリオは優秀である。特にRobertoTarenziのフレージングはLiebmanのパートナーにピッタリに思えるのは私だけではあるまい。こうなれば,レギュラーで活動して欲しいものである。星★★★★。

Recorded Live on Novmeber 29, December 2 and 4, 2005 in Florence, Bari, and Lamezia Terme

Personnel:  Dave Liebman(ts, ss, recorder), Roberto Tarenzi(p), Paolo Benedettini(b), Tony Arco(ds)

2008年6月10日 (火)

さまざまな顔を持つBobo Stensonの人気作

Bobo "Very Early" Bobo Stenson(Dragon)

ECMの諸作でも知られるBobo Stensonの「人気作」と言ってよい作品であろう。Bobo Stensonという人はJan Garbarekとフリーに近い演奏をしたと思えば,自身のトリオによるECM作品では透徹な美学を感じさせ,その一方でこのブログでも紹介したDave Liebmanとの共演作(David Liebman対スウェーデン人トリオ)やヴォーカルの伴奏(今更ながらスウェーデン・ジャズのレベルは高い)等,いろいろな活動をしていて,どれが彼の本質なのかよくわからないところがあるのも事実である。

私がこの作品を「人気作」と呼んだのは,その演奏のとっつき易さゆえというところがあるように思う。しかし,Bill Evans作"Very Early"を演奏しているからと言って,Bobo Stensonは決して所謂Evans派ではない。フレージングは全然違うし,タッチも違うのである。大体選曲だって本作のボーナス・トラックを見れば,かなり変わっていることもわかる(なんてたってフォーレのパヴァーヌにColtraneの"Satellite"までやっている)。しかし,それでもこの作品は非常に聞きやすいタイプのピアノ・トリオ作品に属するものであることには何ら変わりはないから,相応の人気は確保できるのである。

私にとってこのアルバムを聞くのも実は久し振りのことだったのだが,まぁこれはこれでいいんじゃないかという感じである。緊張感はあまり感じさせない音楽だが,だからと言ってリラクゼーション過剰でもないという,いかにも捉えどころのないStensonらしい作品と言うこともできるかもしれない。私としてはStensonの本質はこれよりややフリーなアプローチにあるように思っており,この作品よりはECMでの第1作"Underwear"の方がStensonの本来の姿に近いのではないかと感じている。ということで,この作品は私の中でのStensonのポジションに惑いを生じさせるものなのである。嫌いではないんだが,両手を上げて誉めることもできない。ということで,私までもがどっちつかずな感じになってしまうという不思議なアルバムである。星★★★☆。

Recorded on December 2 & 3, 1986

Personnel: Bobo Stenson(p), Anders Jormin(b), Rune Carlsson(ds)

2008年6月 9日 (月)

私も便乗してEnrico Pieranunziである。

Parisian_portraits "Parisian Portraits" Enrico Pieranunzi(IDA)

ブログのお知り合いのmonakaさんが,本盤がEGEAから再発されたのを機に記事にされているのに影響されて,私も書いてみようと思う。PieranunziのIDA盤は永らく廃盤になっていて,オリジナルは結構な高値で取引されているそうである。そんなことは知る由もない私であったが,このアルバムを保有していたことも実はすっかり忘れていたのである。 

実は私はPieranunziのIDA盤をご丁寧にソロの本作,Marc Johnsonとのデュオ作,Johnson~Motianとのトリオ作を保有しながら,いつ買ったのかも実は定かではないし,繰り返し聞いてきたかというとそうでもないのである。これは日頃,新譜を追うので手一杯で,これまで購入してきた盤をなかなかフォローできないためだと言い訳をしてしまうのだが,それでもmonakaさんの記事を拝見しなければ,本アルバムも再聴のチャンスはこれまた先延ばしになっていた可能性が高いのである。

で,久し振りにこのアルバムを聞いてみたのだが,これが何とも美しいアルバムである。オリジナルにスタンダードを交えて展開されるPieranunziのソロの響きは「美しさ」という観点で,これまでの彼のアルバムの中でも屈指のものに数えてよいはずである。久々に再聴し,これをしばらく「在庫」状態にしておいた自分の不明を恥じたことは言うまでもない。どうせここまでやるなら全編「美的」で通してもらうのがいいのだが,"Fascinating Rhythm"だけはちょっと感じが違うのが何とも惜しまれる。それでも十分に星★★★★☆に値するアルバムではある。こんなアルバムがずっと廃盤であったというのは非常に問題だが,ジャケ違いとは言え,再発されたことは大変めでたい。Enrico Pieranunziファンは必聴の好アルバムである。

Recorded on April 2, 1990 

Personnel: Enrico Pieranunzi(p)

2008年6月 8日 (日)

吹きまくりのStefano Di Battista

Di_battista "Jazz Italiano Live 2006" Stefano Di Battista

先日取り上げたRosario Giulianiに続いて,またもJazz Italiano Liveシリーズである。今回はStefano Di Battistaである。

Di Battistaと言えば,Blue Noteレーベルでの諸作における鋭いフレージングでリスナーを思わずのけぞらせるサックス・プレイヤーであるが,このアルバムでもそのDi Battistaらしいフレージングの特長はよくあらわれていて思わず嬉しくなってしまった。いきなり"A Night in Tunisia"という選曲もあるが,そこでのアルト・ブレイクなんて速くてうまい。その後もDi Battistaらしいスピード感溢れるソロが展開されていて,ファンにとっては満足できるものと言ってよい。

しかし,このアルバムも終盤で演奏される"Mack the Knife"はDi Battistaの個性に合っているとは思えず,もう少し選曲を考えて欲しかった。また,最後にボーカルのNicki Nicolaiを迎えての"Doppi Significati"はイタリア語で歌われていて,彼女の声は結構素敵だし,まぁオマケとしてはよいのだが,Di Battistaのアルバムのクロージングとしてはどうなんだろうと思ってしまった。

このアルバム,結局のところ,サックス・プレイヤーとしてのDi Battistaの実力は十分披露しながらも,全体のプロダクションとしては若干問題があるように思えるのが惜しい。そんな中でEric Legniniの好演が光るが,それを加味しても星★★★☆というところか。う~む,やっぱり惜しいなぁ。

Recorded Live at Casa del Jazz, Rome, Italy on March 26, 2006

Personnel: Stefano Di Battista(as, ss), Eric Legnini(p), Rosario Bonaccorso(b), Andre Ceccarelli(ds), Nicky Nicolai(vo)

2008年6月 7日 (土)

聞けば聞くほど味わいが増すSteve Winwoodの新作

Winwood "Nine Lives" Steve Winwood (Columbia)

Steve Winwoodの前作"About Time"はWinwoodのハモンドが炸裂する素晴らしいアルバムであったが,それから5年ぶりの新作が発売になった。その間,Crossroad FestivalでEric Claptonと競演しただけでなく,その後,Madison Square Gardenでもジョイント・ライブを行い,新作への期待が高まっていたが,ようやくの新譜発売である。そのClaptonも1曲ながら客演し,まさにClaptonというギター・ソロを聞かせている。

一聴して,前作よりギター・サウンドが強化され,Winwoodのハモンドはそれほどでもない使われ方でないところに意表を突かれる。前作が素晴らしかっただけに,同一路線を踏襲するだろうという読みは完全にはずされた格好である。また,このアルバム,最初に聞いたときにはやや地味な印象を与えるのだが,聞けば聞くほど味わいが増すというするめのようなアルバムである。私がよく行くCDショップでもなかりのヘビー・ローテーション盤となっており,そうした店頭で大きめの音量で聞くとまたこれがよいのである。

Winwoodのボーカルはますますソウルフルでたまらんが,Winwoodのギターの技も素晴らしい。何を弾かせてもうまいものである。これはやはり天賦の才能と言わざるをえまい。

こうした演奏を聞いていると日本公演を待望せざるをえないが,難しいのだろうか。Winwoodだけで集客が厳しいなら,Claptonとのジョイントで呼んでくれるような気の利いたプロモーターはいないものか。ベテランの領域に入りながら,Winwoodの創造力は衰えを見せないだけに是非ライブで見てみたいものである。いずれにしても"About Time"には及ばないものの,これはなかなかに聞かせるアルバムである。星★★★★。

Personnel: Steve Winwood(vo, g, key), Eric Clapton(g), Jose Pires De Almeida Neto(g), Paul Booth(fl, sax), Richard Bailey(ds), Karl Vanden Bossche(perc)

2008年6月 6日 (金)

Jewelの美貌にノックアウトされるカントリー作

Jewel "Perfectly Clear" Jewel (Valory Music)

ポップに変身してファンの顰蹙を買った"0304"から一転,本来あるべきフォーク/SSW的な音楽に回帰したJewelの前作"Goodbye Alice in Wonderland"に快哉を叫んだのはきっと私だけではないはずだが,今回はカントリー・フレイバーが濃厚なアルバムを出してきた。これまではメジャーのWarner Brothers系のレーベルからの発売だったが,本作はナッシュビルの独立レーベルらしいValory Musicからのリリースである。

冒頭の"Stronger Woman"からして,発声法がカントリー的に響くので,一瞬驚かされるが,全体的に見てもカントリー・ミュージックである。これはJewelの新機軸と言ってもよかろうが,"0304"のような世界よりはるかにJewelにフィットしている。よって私はこのアルバム,デビュー・アルバムのような清楚な感覚は望めないとしても,結構好きである。

Jewel 音楽も悪くないのだが,私がまいってしまったのがジャケ写真と,ブックレットに収められたJewelのポートレート群である。私好みの美女というのはJewelのことである。絶世の美女とはもちろん言わないが,彼女の写真を見ているだけでたまらない。ここまで来ると,音楽がどうのこうのというレベルではなく,自分の好みの問題であり,私は彼女の美貌を皆さんとシェアしたいと思うという欲求にかられてしまう。はっきり言って反則に近いが,彼女の美貌だけでも星★★★★★。

ちなみにこのアルバム,発売間もないのでチャートには登場していないが,アメリカではおそらくカントリー・チャート1位を獲得するのは間違いないものと思われるぐらい好調な売れ行きを示している。米国ではカントリーはまだまだメジャーな音楽なのである。この調子ならポップ・チャートでも結構いい線まで行くかもしれない。

Personnel: Jewel(vo, g), Steve Brewster(ds), Glenn Worf(b), Mike Brignardello(b), Ethan Pilzer(b), Michael Rojas(p, key, accor), Danny Rader(g, bazouki), Mike Johnson(st-g), Jonathan Yudkin(vln, mandolin, banjo, dulcimar, vla, bazouki), Eric Darken(perc), Jason "Turtle" Freese(key), John Rich(vo), Liana Manis & Wes Hightower(vo)

2008年6月 5日 (木)

Rosario GiulianiのMilesトリビュートは...

Rosalio_giuliani "Jazz Italiano Live 2007" Rosario Giuliani

私が欧州サックス三羽烏と呼ぶうちの一人,Rosario GiulianiがEnrico Pieranunziを迎えて,"Kind of Blue"にトリビュートしたアルバムである。このアルバムをブログのお知り合い,すずっくさんにご教示頂いた段階で,即購入を決断したアルバムである。イタリアからの通販でゲットするぐらいの勢いであったから,期待値は非常に大きいものがあった。

そもそもこのアルバムを聞いていて驚かされるのは録音の素晴らしさである。これは生々しい。私が通勤中に使っているCD Walkmanでも音のよさがわかるぐらいであるから,きっちりしたオーディオ・セットで聞いたら,そのよさはもっとわかるはずである。

しかし,音源としてはどうか。はっきり言って期待が大き過ぎたのかもしれないが,やはり"Kind of Blue"の深遠な世界を再現するにはやはり無理があるようである。プレイヤーたちはそれなりに頑張っている。しかし,"Kind of Blue"がこうしたトリビュートを受け容れないレベルのものなのである。よって,オリジナルの"Kind of Blue"のレベルを期待しなければ,十分楽しめるアルバムではあろう。しかし,やはり...なのである。

そうした意味ではMilesと関係ない曲を演奏している曲の方が圧倒的に楽しめてしまうアルバムである。あまりに偉大な先達へのオマージュは難しいなぁと思わされたアルバムである。それにしても,ここで聞かれるPieranunziのゴリゴリのピアノっていうのはやはりイメージが違うように思えるのは私だけだろうか。逆に言えば,こういうピアノも弾けるんだと感心してしまった私である。星★★★。

Recorded Live at Casa del Jazz, Rome, Italy on February 16, 2007

Personnel: Rosario Giuliani(as), Enrico Pieranunzi(p), Emanuele Cisi(ts), Flavio Boltro(tp), Gianluca Renzi(b), Fabrizio Sferra(ds), Massimo Pirone(tb)

2008年6月 4日 (水)

Sonny Landreth:豪華ゲストを迎え,スライドの技は相変わらずだが...

From_the_reach "From the Reach" Sonny Landreth(Landfall)

 

現在のロック・シーンにおいて,スライド・ギターの名手と言えば,Derek TrucksかこのSonny Landrethかと相場が決まっているわけだが,そのSonny Landrethのリーダー作が自身のレーベル(らしい)Landfallから発売になった。このアルバムで驚かされるのが豪華ゲストを迎えているということである。ゲスト陣は下記のPersonnelを見て頂けばよいのだが,Landrethのリーダー・アルバムでは今までこうしたことはなかったから,レーベル立上げのご祝儀含めてというところかもしれない。いずれにしても,ロック好きが見たら,つい買いたくなるような雰囲気のあるジャケットである。

 

ここに収められた演奏であるが,私が期待するスライド・ギターの技はちゃんと収められているのでそこには文句はない。しかし,このアルバムの決定的な弱点はLandrethのボーカルにある。何とも線が細いのである。こうした骨太のロックを演奏する場合,Landrethのどちらかというとテナーに近いボイスはあまり合うように思えない。やはり,この人の音楽にはもっと力強い,あるいは渋い声のボーカリストが必要のように思う。確かにゲストのバック・グラウンド・ボーカルで補強している部分もあるにはあるが,それでもこの線の細さはやはりいただけない。

 

私としては,Sonny Landrethは強力なボーカリストのバッキングで最も光ると考えており,何と言ってもJohn Hiatt & the Gonersでの演奏が最高のように思う。それでもLandrethのスライドが聞きたくて,彼のアルバムもそこそこは買っているのだが,それでも「これは最高だ」と思える作品に出会えないのである。そうした意味で,トータルなミュージシャンシップとしては,Derek Trucksの方が上のように思う。

 

とは言いながら,Derek Trucksをバックに迎えたEric Claptonがこのアルバムで2曲客演しているのは,Sonny Landrethがミュージシャンズ・ミュージシャンであることを証明しているように思えてならない。いずれにしても,Landrethはスライド一本で勝負した方が,男気を感じさせてよりカッコいいと思うのは私だけだろうか。何とも惜しい。星★★★。

 

Personnel: Sonny Landreth(g,vo), David Ranson(b), Michael Burch(ds, perc), Steve Conn(key), Sam Broussard(g), Tony Daigle(perc), Brian Brignac(perc) with Mark Knopfler(g, vo), Eric Clapton(g, vo), Robben Ford(g, vo), Eric Johnson(g), Dr. John(p vo), Jimmy Buffett(vo), Vince Gill(g, vo), Nadirah Shakoor(vo)

2008年6月 3日 (火)

驚きのOregonとオーケストラの共演盤

Oregon_in_moscow "Oregon in Moscow" Oregon(Intuition)

これはOregonがモスクワに乗り込み,現地のオーケストラと共演したアルバムであるが,何に驚かされるって,かなり精緻なオーケストレーションが施されているということである。そのオーケストレーションは「作曲者」によるものとクレジットにあるから,Towner,McCandless,Mooreの三者によるものということになるが,こう言っては何だが,いろんな才能があるのねぇと思わざるをえない。

私はRalph Townerのファンではあるが,Oregonの熱心なリスナーとは言えないので,このアルバムのライナーで初めて知ったのだが,実はOregonはオーケストラとの共演歴は結構あるらしく,もともとは彼らがPaul Winter Consortのメンバーだった頃に遡るらしい。ここに収められているTownerの名曲"Icarus"もPaul Winter時代のオーケストレーションを踏襲したものらしいのである。

その中で,一部の曲は意図的にOregonだけで演奏されているが,Towner曰く,それらの曲は曲そのものがオーケストラ・フレイバーを持っているからだとのことである。なるほど。

いずれにしても,このアルバムをどういう層のオーディエンスが聞いているのかというのは非常に興味深いところがあるのだが,Towner好きの私にとっては彼のギターやピアノとオケが共演しているだけでも興味深いところに,上述のようにこれだけしっかりしたオーケストレーションを聞かされれば,「へぇ~」と唸らざるをえないのである。Townerのギターの技が前面に打ち出される訳ではないのだが,あまりに気持ちよくて,(いい意味で)心地よい眠りに誘ってくれること請け合いの2枚組である。

ちなみに,このアルバムのプロデューサーはPat Metheny GroupのSteve Rodbyであるが,よくもまぁこんなにお金の掛かりそうなプロジェクトをうまく仕上げたものである。Oregonファンは選曲からして嬉しかろうが,クラシック音楽ファンも納得するオーケストレーションと言ってはほめ過ぎだろうか。Oregonというバンド,なかなか奥が深い。ということでいつものことだが,やっぱり私はRalph Townerには甘いのである。星★★★★。

Recorded in June, 1999 in Moscow

Personnel: Raslph Towner(g, p, synth), Paul McCandless(oboe, eng-horn, ss, b-cl), Glen Moore(b), Mark Walker(ds, perc), with Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow conducted by George Garanian

2008年6月 2日 (月)

Gil Goldsteinが豪華メンバーで吹き込んだ異色のライブ

Gil_goldstein "Under Rousseau's Moon" Gil Goldstein (Half Note)

このアルバムが発売されてから随分な時間が経過している。発売は2006/9月だからもう1年半以上も前である。それで何を今更このアルバムなのかということなのだが,実は私はこのアルバムが出た当初,新宿のタワーレコードで本盤を試聴した上で,購入を躊躇したということは告白しておかねばなるまい。しかし,ブロガーの皆さんや知り合いの評価を聞いていると,私の審美眼がおかしかったのかと思えてきての再チャレンジとなった次第である。

なぜ,私がこのアルバムを購入するのを躊躇したかであるが,一聴した限りかなり地味なアレンジメントに聞こえたからである。これはドラムレスだから仕方がないのだが,何となく高揚感が不足しているかなと思ってしまったのである。しかし,このアルバムでGoldsteinが狙ったのは,高揚感ではなく,基本的にはGil EvansとJaco Pastoriusの音楽を再構築しようというものだから仕方ないだろう。特にGil Evans関係の3曲はかなり渋いと言えば渋いからなぁ...。

冒頭を飾るのはそのGil EvansがアレンジしたThe Bandの゛The Moon Struck One"で,これがかなり渋い。これが冒頭にあるから,このアルバムの印象として高揚感がないなんて思ってしまったのかもしれない。そもそもこの曲,Gil Evans Orchestraとしての演奏は残っていないはずで,かろうじてLee KonitzとGil Evansのデュオ盤に入っているというレパートリーである。また,"Donna Lee"をはさんで演奏されるJaco Pastoriusの゛Three Women゛と゛Good Morning Anya゛もJaco本人の公式レコーディングは残っていないというこれまたこだわりの選曲でまたも渋さ倍増なのである。しかし,聞き進んでいくうちに"Some Skunk Funk゛や゛Sarah's Touch゛のような馴染みの曲も聞こえてくるので,このアルバムを最初の方だけで判断すると印象が異なったものになろう。それがやはり私がこのアルバムを評価しそこなった要因のように思える。

本作はドラムレスなので,その分Richard Bonaのベースの比重が高くなっているが,Gil GoldsteinとしてもBonaをフィーチャーしたいという思いがあったようにも感じられる。それにしてもBonaのベースはうまい。Bonaの演奏だけを聞いていても,最終的には満足を得られると言っては言い過ぎか。

いずれにしても,このアルバム,異色の編成で録音されたユニークなアルバムである。ただし,私の嗜好に合っているかというと必ずしもそうではないのだが,Goldsteinのチャレンジ精神は評価できるものとして星★★★☆。

Recorded Live at Blue Note, NYC, on January 12 & 13, 2006

Personnel: Gil Goldstein(p, accor), Don Alias(perc), Richard Bona(b, vo), Randy Brecker(tp), Mike Mainieri(vib), Chris Potter(ts, ss, b-cl), The Zebra Coast String Trio: Joyce Hammann(vln), Lois Martin(vla), David Eggar(cello)

2008年6月 1日 (日)

出張中に見た映画(7):08/05編(最終回)

Photo 「母べえ」('08,松竹)

監督:山田洋次

出演:吉永小百合,浅野忠信,志田未来,佐藤未来,壇れい,中村梅之介,坂東三津五郎

山田洋次監督の「武士の一分」も同じように飛行機で見て,大いに泣かせてもらった。かつ私は長年のサユリストなので,吉永小百合主演とあれば,これは見たくもなる作品である。

お話は戦時中のさまざまな束縛を強いられる時代のものであり,この話が現代にどういうメッセージをもたらすのかは私には今一つ理解できない部分があった。また,既に還暦を迎えたはずの吉永小百合に,おそらくは30代後半の母親役を演じさせることには無理があり過ぎるように思える。挙句の果てに得意のスイミングまで披露させてしまうのだから,何をかいわんやである。いずれにしても,この役は吉永小百合でなければならないのかという疑問が私にはあるのだが,それは逆に日本の女優界のコマ不足ということにもなるかもしれない。

私がこの映画を見ていて好意的な見解を述べるとすれば,子役2人の可愛さではなかろうかと思う。やはり昔も今も子役は映画をかっさらっていくものである。彼女たちがこの後どういう人生を送るかはわからないが,是非今後女優として大成して欲しいと思わせる。特に志田未来は有望と見た。

尚,この映画に笑福亭鶴瓶が出演しているとあるのだが,私には彼の出演シーンの記憶がない。ということはこの映画を見ている間に居眠りをしていた可能性が大きいのだが,大筋のストーリーには何の影響もなかったようであるから,鶴瓶はコミック・リリーフ的役割だったのだろう。しかし,途中で寝てしまっている可能性もあるので,この映画については採点しないことにしておこう。

それにしても吉永小百合は相変わらずお年を感じさせない美しさであるが,サユリストを自認する私でも,今は壇れいの方がいいなぁ。彼女は実によい。サユリストのポジションは維持しつつも,これからはメインは壇れいでいきたいと思う(それがどうしたっ!)

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