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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2008年5月31日 (土)

最も4ビートに傾斜したSteps Aheadか

Steps ゛Holding Together゛ Steps Ahead(NYC)

Steps Ahead(あるいは単なるStepsでもよいが...)と言えば,Mike MainieriとMichael Breckerのコンビが前提と考えられてしまうのは致し方のないところであるが,コンテンポラリーな感覚の4ビートを生み出したということでは彼らの果たした役割は大きい。実は私はBreckerが抜けてからのSteps Ahead(Bendikが参加している頃)も結構好きでアルバムやライブも聞いてきたのだが,このアルバムはそうした彼らのアルバムの中で最もストレート・ジャズ色が濃いものと言ってもよいのではないかと思う。

もともとこのアルバムはMike Mainieriが主宰するNYCレコードのサイトでのみ購入できたものであるが,その後一部マーケットに流通するようになったのは,このアルバムの隠れた人気を裏付けるものかもしれない。本アルバムは1999年の欧州ツアーの模様を収めたものだが,このストレート・ジャズ色を生み出しているのは基本的にはMarc Johnson~Peter Erskineのリズム隊であろうと思う。このコンビ,あの名グループ,Bass Desiresのリズムであるから,比較的コンテンポラリーなリズムもいけるのは確かだが,Johnson自身はやはりどちらかというと,コンベンショナルなセッティングでのベース・プレイが主であり,エレクトリックなSteps Aheadには合うまい。

それはそれで確かなのだが,更にこのアルバムのストレート・ジャズ色を強めているのがEliane Eliasのかなりゴリゴリしたピアノである。最近はボーカリストとしての存在感ばかりが強調されているが,ピアニストとしてもかなり強力な人であることがこのアルバムを聞けば即座に理解できるはずである。はっきり言ってこれはかなり弾きまくっていて,相当の豪腕ぶりにはソフトなElianeしか知らないファンは驚かされるに違いない。

こうしたリズムに煽られて,Bob Bergは相変わらずのBerg節を連発し,Mainieriはいつもよりもコンベンショナルな響きを聞かせる。Steps Aheadがまさか"Soul Eyes゛をやるとは思わなかったが,これはSteps Aheadとして聞くとやや違和感を覚えるリスナーもいるかもしれないとしても,結構いけてるジャズ・アルバムとして知っておいて損はない。星★★★★。

Recorded Live in Europe in July, 1999

Personne;: Mike Mainieri(vib), Bob Berg(ts), Eliane Elias(p), Marc Johnson(b), Peter Erskine(ds)

2008年5月30日 (金)

おなじみの曲を独自解釈で聞かせる上原ひろみの新作

Beyond_standard "Beyond Standard"上原ひろみ(Telarc)

Chick Coreaとのデュエット盤も大変よかった上原ひろみが,自己のバンド,Hiromi's Sonicbloomでリリースした新譜である。"Beyond Standard"のタイトルどおり,お馴染みの曲が並ぶが,上原ひろみだけに一筋縄でいかないというか,かなりコンテンポラリーな響きに変容させている。冒頭の"Softly..."は私の「予想」よりもゆったりしたテンポの演奏で意表をつかれるが,好調な滑り出しである。

その後のこのアルバムに収められた演奏を聞いていて,収録された曲はあくまでも素材であり,私はどちらかと言えばバンド演奏のグルーブに身を委ねていればいいと感じてしまったクチである。逆に言えば,別にこの曲をここでこのようにやらなくてもいいのではないかと思わせる曲がないわけではない。例えば私にとっては「上を向いて歩こう」の違和感や"My Favorite Things"の不可思議な感覚(アドリブ・パートを聞いている限りは問題ないのだが...)は否めないところである。それに比べれば,彼女のデビュー・アルバムの冒頭を飾った"XYZ"のリメイク,"XYG"の方がはるかにこの人らしいというか,強烈なスピード感やグルーブを感じさせて,こうでなくてはならんと思わせるのである。

私が買ったのはDVD付の国内盤だが,国内盤のボーナス・トラックとして"Return of Kung-fu World Champion"のライブ・バージョンが収められている。しかし,本来であれば,Oscar Petersonに捧げた"I Got Rhythm"でアルバムを締めるというのがあるべき姿ではなかったかと思う。もちろん,捧げると言っても決してメランコリックになることなく,上原が鍵盤と一体化するという感じの演奏なので,しみじみ感に満ちたものではないから,こうしたボートラがついても問題ないと言えば問題ないかもしれない。しかし,エンディングにしては相当激しい演奏を改めて聞かされると疲れる。なんでもかんでもボーナス・トラックを付ければ付加価値が高まると誤解しているのではないかと思わせるレコード会社の商魂には辟易とさせられるのも事実である。どうせならたった2曲入りのDVDをつけるよりも,ライブCDをおまけとしてつけるぐらいの方がずっと潔いと思うのだが。

いずれにしても,演奏自体は十分楽しめるが,選曲やプロデュースには若干改善の余地もあるように思えるアルバムである。星★★★☆。

尚,変態ギタリストとも呼ばれるDavid Fiuczynskiはリーダーの上原と同じぐらい弾きまくっている。よくやるわ。

Recorded in January 9-12, 2008

Personnel: 上原ひろみ(p, key), David Fiuczynski(g), Tony Gray(b), Martin Varihora(ds)

2008年5月29日 (木)

追悼,Sydney Pollack

Pollack Sydney Pollackが亡くなったそうである。享年73歳。Pollackは巨匠と言うよりも職人肌の映画監督と言うべき人だったように思う。私はPollackの映画を数多く見ているわけではないが,"Tootsie"では大いに笑わせてもらったし,国連本部でのロケも話題となった"The Interpreter"もなかなか楽しめる作品だった。いずれにしても,いろいろなタイプの映画を撮れる人であったと思う。

 

また,役者としても渋い脇役で自作を中心に登場していたのも懐かしい。近年は監督業よりもプロデューサー業での活躍が目立っていたように思うが,その中でも"Cold Mountain"が白眉と言ってよいだろうか。まだまだ現役で活躍をして欲しい人であった。

 

ご冥福をお祈りしたい。

2008年5月28日 (水)

出張中に見た映画(6):08/05編

Hero 「Hero」 ('07 東宝)

監督:鈴木雅之

出演:木村拓哉,松たか子,松本幸四郎,大塚寧々,阿部 寛,勝村政信,小日向文世,八嶋智人,角野卓造,児玉 清,森田一義,中井貴一,イ・ビョンホン,国仲涼子,綾瀬はるか,香川照之,岸部一徳

しばらく書いていなかったが,2008年5月の米国出張の往復で私は計7本の映画を見たので,その続きである。

私はTVドラマに全く関心がなく,ここ数年(あるいは十数年か)TVドラマを見たことがない。よって,この映画の元ネタであるドラマがどの程度の人気を誇ったかも知らないし,キャラクター設定も全く知らないので,予備知識ゼロで見たことになる。結論から言えば,これは映画の体裁を取っているが,所詮はTVドラマの拡張版に過ぎず,「映画」としての存在意義があるのかどうかは甚だ疑問である。

まぁこれはかなりストーリー展開にも無理はあるし,劇画を読んでいるような感覚にとらわれてしまうが,いずれにしてもあまりにシナリオがつまらなくて(ありきたりなのである)文句を言う気も起こらない。この程度の作品に金を出して劇場に足を運ぶことは私の選択肢には一生ないだろうが,まぁ機内エンタテインメントであるから,まぁいいか。それにしてもタモリのしょうもない演技には思わず失笑をもらしてしまった。あんなことをやっていて恥ずかしくないのかねぇ。彼は「タモリ倶楽部」だけやっていればいいのだ。

この作品で唯一の収穫は松たか子の眼鏡姿ぐらいのものか。眼鏡は顔の一部というキャッチコピーがあったように思うが,まさにそういう感じである。

しかしながら,松たか子の眼鏡姿がいくらよくても,この作品も「映画」としては星で評価するに値しない。あくまでもTVドラマの拡張版なのだから,TVでやればいいのであって劇場でやる必要はない。

2008年5月27日 (火)

Billy Prestonのライブがバージョン違いを収録して復活

Billy_preston "Live European Tour" Billy Preston(A&M)

このアルバムが以前CDで再発された時に収められていたバージョンは米国版だそうである。それはまともなマスター・テープがそれしか残存していなかったかららしいのだが,今回はそれにオリジナルで発表された英国版の曲も追加収録しての再発である。しかも紙ジャケだけではなく,最近はやりのSHM-CD方式である。そうした点を踏まえれば,これはお買い得と言ってよいが,前回の再発盤を買った身としてはやや切ないのも事実。それでも迷うことなく購入である。ただし,UKバージョンはやはりマスター・テープがないらしく,LPからの音源起こしになっているようなので,音にはやや難があるが,それでもこの再発は貴重である。

私はBilly Prestonが結構好きで,Appleレーベルやその他の作品もいくつか保有しているが,彼のよさはやはりこの何とも言えずソウルフルなボイスということになろう。もちろん,Beatlesのバックでも聞かせたキーボードも素晴らしく,その両方を楽しめるのがPrestonのよいところである。ここでも聴衆を乗せる術を心得たPrestonの快演が聞かれる。この演奏,Rolling Stonesの前座での演奏らしいのだが,前座でこんな演奏されたら困るだろうなぁと思わせるほど,聴衆を乗せている。大したものである。

ここでの演奏に関しては詳細のクレジットがないので,参加メンバーは不明ながら,リード・ギターは当時Stonesに在籍中のMick Taylorが客演し,鋭いプレイを連発している。前座,本チャンで弾きまくるTaylorの体力やこれまた大したものと言わざるをえないが,それでもあくまでも主役はBilly Prestonである。Beatlesで名を売ったPrestonゆえ,"Day Tripper"や"Let It Be"に"Get Back"なども演奏している。まぁそれが「素晴らしい」かと言えば,必ずしもそうでもないし,演奏にも粗い部分も多々あるが,このアルバムで重要なのはあくまでも「乗り」であるから,細かいことには目をつぶることにしよう。星★★★★。

Recorded Live in 1973

Personnel: Billy Preston(vo, key), Mick Taylor(g)

2008年5月26日 (月)

黒澤を愚弄する「隠し砦の三悪人」リメイク作

Photo_2 「隠し砦の三悪人 The Last Prinecess」('08,東宝)

監督:樋口真嗣 

出演:松本潤,長澤まさみ,阿部寛,椎名桔平,宮川大輔

これはいかん。駄目だとは予想していたが,案の定駄目だった。オリジナルを脚色したのは松本潤を立てるためだが,そもそも全く松本潤に魅力を感じない私のような人間にとっては,こんなものは改悪でしかない。大体,話や演技に芸がないから,CGに頼ったり,えせ「インディ・ジョーンズ」のようなシーンを挿入しなければならないのである。椎名桔平の甲冑はまるでダース・ベイダーのようだし,なんじゃこれはと言わざるをえない。 

長澤まさみは相変わらずかわいいが,男勝りの育てられ方をしたという雪姫のキャラにはほど遠く,凛々しさを感じさせないし,ストーリー展開上仕方がないとは言え,どんどん映画の後半にはフェミニンな感覚が強くなってくるのも,なんだかなぁという感じである。戦国時代というのはそういう時代ではないはずであるという考え方をもってすれば,やはりこの脚色は受け入れ難いものがある。オリジナルの上原美佐のように太ももも見せてくれないし,おじさんとしてはガックリである。

結局,この映画の見所は何なのか全くよくわからないまま,時間だけが経過していき,私としては全く楽しめない映画であった。こんな映画を作っておいて「映画界の大先輩と何かしらの繋がりが持てたような気がする」等と外国特派員協会で語る監督の樋口には「片腹痛いわ」とだけ言っておこう。星をつける気にもならない駄作。

2008年5月25日 (日)

Keith Jarrettソロを聴いた@東京芸術劇場

Keith Jarrettのソロ公演を東京芸術劇場で聴いた。第1部は2曲,第2部は3曲,そしてアンコールは3曲,休憩をはさんで約2時間の公演であった。私は最近のKeithのソロを聞いているとPeter Serkinが現代音楽作曲家の曲を弾いたアルバムのように感じてしまうぐらい,現代音楽的な響きが強い。世の中,現代音楽愛好家なんてのは数が限られているはずで,Keithだからこそこれだけ聴衆を集めつつも,こうした演奏をしても文句が出ないと考えざるをえない。もちろん,ピアノのテクニックは素晴らしいのはよくわかるのだが,多くの聴衆が求めているのはこうした世界ではなく,昔のKeithの美旋律の世界ではないかと思うのだが...。結構Peter Serkinを愛聴している私にとっては別にかまわないが,やはりこれは一般の聴衆にとっては敷居が高いし,決して聞いていて面白い音楽とは言い切れないはずである。こうした感覚の曲は1-1,2-1,2-2が相当する。

今回,驚かされたのは1-2で「ど」ブルースを弾いたことである。Keithのソロ公演に私は何度も足を運んでいるわけではないので,レコード,CDからしか判断できないが,これだけストレートなブルースをソロで弾くというのは珍しいのではないかと思わせる。

しかし,私にとってこれぞKeithの本質と思わせたのが2-3及びアンコール3曲である。特に2-3は超スローなテンポで,これぞまさしく"The Most Beautiful Sound Next to Silence"というECM音楽の鑑のような演奏である。アンコール前の最後の曲としては素晴らしすぎである。そこからアンコール1曲目はKeithらしいフォーク~ゴスペル・タッチの曲になり,残りの2曲はスタンダード(不勉強で曲名が思い出せなかったのだが,"I Loves You, Porgy"と"Blame It on My Youth"だったような気も...。いずれにしてもそんな感じである。違っていたらごめんなさい)である。この終盤4曲の流れは私にとってはたまらないものがあった。多くの聴衆にとっても,やはり現代音楽的な世界よりもこの流れの方が明らかに受けがよかったのは明らかである。

今後,Keithがどういう世界を向いてソロ・ピアノに対峙していくのかはわからないが,私は今回のような完全即興でなくKeithの弾くショスタコービッチの「24のプレリュードとフーガ」を生で聞いてみたいような気がしたと言ってはKeithに失礼か。

いずれにしても,私は最後の4曲で昇天寸前であったので,演奏には文句はないが,惜しむらくは私がかなりひどい膝痛で演奏に集中できなかったのがかえすがえすも残念。

2008年5月24日 (土)

Gergievのマーラー・ライブ現る

Mahler_6 Varely Gergievがロンドン交響楽団(LSO)の常任指揮者になったらしいのだが,そのLSOとのライブによるマーラーの1番,6番が発売されていたので,早速購入である。最近は大型店のクラシックのコーナーを訪れる機会もあまりないし,レコード芸術誌を読んでいるわけではないので,このレコーディングのことは全然知らなかった。私の不勉強かもしれないが,出ていれば私は多分購入していたはずだから,(少なくともメジャー化した後の)Gergievがマーラーを正式レコーディングしたことはないと思う。

Gergievが振ったロシアの曲(チャイコ,ショスタコ,ストラビンスキー)等々,どれも火の出るような激演だったから,このマーラーにも期待が高まろうというものである。さすがにベルリオーズはGergievと言えども???であったが,マーラーならきっとやってくれるだろうと確信している。しかし,いかんせん私の体調が現在あまりはかばかしくないため,マーラーの交響曲を聞くという気分ではないのである。よって,この演奏に関しては体調の回復後,追って記事にしようと思うが,どうせならこのLSO Liveシリーズでマーラー・チクルスをやってしまうというのはどうだろう(とここまで書いてLSOのサイトを見たらチクルスをやるらしい)?

いずれにしても今日はジャケの写真(これは6番のもの)だけアップしておこう。

2008年5月23日 (金)

隠し砦の三悪人(オリジナル)は痛快無比

Photo 「隠し砦の三悪人」('58,東宝)

監督:黒澤明

出演:三船敏郎,上原美佐,千秋実,藤原釜足,藤田進,志村喬

やたらに「スター・ウォーズ」の元ネタ話ばかりが話題になるが,この映画はもちろん,そんなことなど関係なしに文句なしに楽しめる痛快娯楽作品である。

馬上で刀をふりかざす三船敏郎を見てかっこいいと思わない人間はいないだろうし,階段の群集シーンを見て唸らない人間もいないだろうと思わせる何とも素晴らしい演出ぶりである。また,それを支える千秋実,藤原釜足がユーモラスに笑わせてくれて,アクションばかりの映画になっていない。また,当時の新人,上原美佐は台詞回しは素人っぽいのだが,下に掲げる写真に見るような姿を見れば,なんでも許すと言いたくなるようなクール・ビューティぶりである。しかし,わずか2年で引退したらしいのは,やはり本質的に女優ではなかったということであろう。

この映画では藤田進がかなりのもうけ役である。この映画の決定的なセリフも彼の口から発せられているし,三船と藤田のやりでの対決シーンは,本当に緊迫感に満ちていて大いに楽しめる。よく言われるように,やや前半が冗長に過ぎるようにも思えない訳ではないが,それでもこれは黒澤が残した傑作の一本と評価していいだろう。星★★★★☆。

この映画もリメイク版が現在公開されているが,長澤まさみ(実は私は彼女が好きなのだ...)や阿部寛はさておき,松本潤や宮川大輔というキャストでどうやってこの映画をリメイクするのかと疑問を感じざるをえない。長澤まさみちゃんが,ここでの上原美佐のように太ももむちむち姿を披露するならば,それはそれで(個人的にも)注目に値しようが,はっきり言って映画そのものに期待することは無理だろう。

先日,「椿三十郎」のリメイクは徹底的に批判したばかりだが,アメリカのリメイク・ブームに乗って,こうした風潮が日本に伝播しているのは何とも情けない。

Photo_2

2008年5月22日 (木)

インド人ミュージシャンを迎えたJohn McLaughlinの新作はインド色薄め

Floating_point "Floating Point" John McLaughlin(Abstract Logix)

John McLaughlinの新作がインド人ミュージシャンを迎えた作品であることは承知していたのだが,もっとShakti的なインド・フレイバーの強い音楽だと思っていたら,予想と完全に異なる音楽が聞こえてきた。

このアルバムは,2007年の4月にインドで録音されたもので,McLauglinとベースのHadrien Feraud,サックスのGeorge Brooks以外は全てインドのミュージシャンであるが,サウンドはかなりコンテンポラリーなものとなっている。どこから聞いても,いつものMcLaughlin節が炸裂しており,それはそれでOKなのだが,このアルバムには決定的な欠点がある。それはドラマーである。

何とも平板というか,叩けばいいと思っているらしい,センスのないドラミングはうるさいだけで,はっきり言って私は聞くたびに不愉快になっていくのである。確かにリズムに破綻はないだろうが,ドラミングにメリハリがなく,とにかく一本調子で聞いていて疲れること甚だしい。McLaughlinも参加した"Miles from India"に参加していたGino Banksなるドラマーは優秀だと思ったが,ここでドラムスを叩いているRanjit Barotははっきり言ってイモである。もちろん,パーカッショニストもうるさ過ぎるように思えるので,彼だけの責任とも言い切れないが,それでも私はこのドラマーのせいでこのアルバムを全く評価する気がなくなってしまった。

McLaughlinのような豪腕ギタリストには,それなりのリズムでないと埋没すると思ったのか,あるいは単にミキシングのせいなのかはわからないが,とにかくこれほど辟易とさせられるドラミングを聞かされるのは珍しい。Billy Cobhamなら絶対こうは叩かないはずである。ということで,McLaughlinは本作を相当の自信作と思っているようだが,ファンとしてはミュージシャンの選択を間違えたとしか思えない。McLaughlin節がいつも通りだけに惜しい。ドラマーの方の意見も聞いてみたいところだが,私にとって,このドラマーは全く評価に値しない。McLaughlinに免じて星★★☆。

Recorded in April 2007

Personnel: John McLaughlin (g, g-synth), Hadrien Feraud (el-b), Loiuz Banks(key),  Ranjit Barot(ds); Niladri Kumar(el-sitar); Shashank Sivamani(perc), Shankar Mahadevan(vo), U.Rajesh(el-mandolin), Debashish Bhattacharya (Hindustani slide guitar), Naveen Kumar(bamboo-fl), George Brooks(ss)

2008年5月21日 (水)

待望のBrian Bladeの新作

Brian_blade"Season of Changes" Brian Blade & the Fellowship Band(Verve)

私はBrian Bladeというドラマーを高く評価していて,彼の初リーダー作は「Brian Bladeの初リーダー作はとんでもない傑作である」とこのブログに書いたことがある。そのBrian BladeがFellowshipの名のもとに第2作のアルバム"Perceptual"を発表してから早いもので8年が経過してしまった。それ以来のアルバムとなった本作であるが,このバンドの特性がよく出ていてまたまた嬉しくなる出来である。

このアルバムを聞いて思うのは,Fellowship Bandのメンバーが第1作からほとんど不変ということの凄さである。時間の流れがはやい現代において,また,Wayne ShorterからJoni Mitchellまで伴奏に引く手数多のBladeであるがゆえに,決してレギュラーな活動ができるわけではないにもかかわらず,同じメンツでバンドを維持できるのはBrian Bladeのリーダーシップゆえであろうと考えざるをえない。

私がこのバンドが好きなのは,ジャズに留まらないさまざまな音楽的な要素を包含し,非常に奥の深い世界を体現しているからにほかならない。私はアメリカン・ロックやシンガー・ソング・ライターも好きだが,そうした音楽との境界を軽く越境して,素晴らしいミクスチャー音楽をデリバリーしているのがこのバンドだと言える。やや極論に近いかもしれないが,楽器編成は確かにジャズだが,私の感覚においてはこの音楽はジャズ的ではないのである。

前2作はBlue Noteから,本作はVerveレーベルからということで,Brian Bladeの音楽業界における高いポジションが見て取れるが,アルバムもその期待を裏切らない出来である。Bladeのリーダー作中,これが最高傑作だとは思わないが,現在のジャズ界のレベルで考えればこのアルバムも十分高い評価に値する。星★★★★☆。私はゴリゴリのジャズ・マニアよりも,Joni MitchellやRy Cooderのファン,あるいはアメリカ音楽好きにこそこのアルバムを薦めたい。

全くの余談だが,私は亡き父に「父の日」のプレゼントとしてBladeのアルバムを贈ったことがあるのだが,父はモーツァルト命のような人で,ジャズに関してはどちらかと言えば初心者に近い方だったにもかかわらず,このアルバムや同じく私が贈ったKenny Kirklandのアルバムを非常に気に入っていたのが懐かしい。わが父ながらいいセンスをしていたと今にして思う。

Recorded on October 10-13, 2007

Personnel: Brian Blade(ds), Jon Cowherd(p, key), Kurt Rosenwinkel(g), Myron Walden(as, b-cl), Melvin Butler(ts), Chris Thomas(b)

2008年5月20日 (火)

ナイスなサントラ/出張中に見た映画(5):08/05編

My_blueberry_2 「マイ ブルーベリーナイツ(My Blueberry Nights)」 ('07,香港/中国/仏,Block 2 Pictures)

監督:Wong Kar Wai 

出演:Norah Jones,Jude Law,David Strathairn,Rachel Weisz,Natalie Portman

随分とスタイリッシュな映像が印象に残る映画である。Norah Jones初主演作と言ってこの映画を見に行く人がどれぐらいいるのかはよくわからないが,Norah Jonesでなくてもこの映画は作れるはずである。しかし,Norah Jonesの素人っぽさがこの映画の雰囲気に貢献しているのは事実であろう。 

ストーリーとしては大したことはない。Norah Jonesの行く先で起こる出来事をエピソードとして挿入したある意味オムニバス映画のような印象を与える。そのエピソードに登場するRachel WeiszもNatalie Portmanもいいのだが(特にPortmanのミニスカ姿がよい!),何ともシナリオはありがちというか,陳腐というかストーリーに面白みを感じさせないのは痛い。

しかし,冒頭にも書いたが,映像そのものはかなりスタイリッシュである。かなりのシーンが夜,あるいは暗いシチュエーションで占められるが,そこに現れる原色の光(特にJude Lawの店のシーンではそれが顕著である)が何とも言えないムードを醸し出している。更にコマ落としで撮影されたショットがそうした雰囲気を増幅させている。結局のところ,この映画,ストーリーよりもその映像が頭に残ってしまうという感じの映画である。それなりに楽しめるが,やはりシナリオのありきたり度が評価を一段下げたと言わざるをえない。映画としてはムードにおまけして星★★★。 

Blueberry この映画を救っているのはRy Cooderが担当した音楽である。Cooderのオリジナルは少ないが,この映画のサントラを聞けば,これを「選曲の妙」と言わずして何と言おうか。見事なまでに映画の雰囲気とシンクロしている。私はこの映画を何度も見たいとは決して思わないが,このサントラ盤は私の新たなナイトキャップ盤となりうるものとして大いに推薦したい。このサントラに限って言えば星★★★★☆。とにかく雰囲気満点である。さすがRy Cooder,いいところをついてくる。映画を見てサントラを買いたくなった久々の一枚。

2008年5月19日 (月)

5曲じゃもったいない:Pat MethenyのライブEP

Day_trip_live_2 "Tokyo Day Trip: Live EP" Pat Metheny with Christian McBride & Antonio Sanchez (Nonesuch)

私はこのブログでこのメンツによる゛Day Trip゛を「Pat Methenyの新作はファンも納得の素晴らしい出来」として結構ほめちぎったわけだが,彼らによるライブEPが発売となった。ブログのお知り合い,oza。さんがすかさず記事をアップされているのに触発されて,近所のHMVで購入である(ちなみに他店では未入荷)。

冒頭からエレクトリック・シタールがアメリカンな響きの"Troms0"に驚く(私はちょっと"As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls"を思い起こしてしまった)が,これがオープナーとして何とも言えない雰囲気を生み出しており,2曲目のいかにもこのトリオらしいスピード感に溢れたその名も"Traveling Fast"へのプレリュードとして絶妙である。3曲目は一転して美しいバラードの゛Inori゛である。もちろんこれは「祈り」であろうが,"Farmer's Trust"を思わせる世界で,これがまたたまらん。生で聞いていたら落涙していたかもしれない。

4曲目はそれまでの流れとは明らかに異なる激しい"Back Arm & Blackcharge"に驚かされる。こPMGならライブでOrnette Coleman(あるいはOrnette的)の曲を演奏するようなチェンジ・オブ・ペースとも言えるが,繰り返すがこいつは激しい。おそらく,このライブEPの一般リスナーの受容度を決めるのはこの曲への反応ではないか。まるでプログレのようでもある。そうした意味で,oza。さんがおっしゃるように"Roots of Coincidence"を彷彿とさせるというのはまさにその通り。私からすれば,このアルバムにおいて,この曲は「踏み絵」のようなものである。ハード・ロックだろうが,プログレだろうがなんでもOKの私にはサウンド的には何の問題もないが,アルバム全体の流れとしてはちょっとねぇという気はする。最後はまたまたしっとりと"The Night Becomes You"で締めているが,やはり4曲目のインパクトが強過ぎるように感じる。私がプロデューサーなら4曲目は別の曲に差し替えるだろうが,そこはプロデューサーを兼ねるMethenyの思いもあるのだろう。

ということで,プロダクションに文句がないわけではないのだが,やはりこのトリオのレベルは高いことを改めて確認させる作品。どうせなら,EPなんてケチくさいことを言わずに,2枚組で出せばよかったのにと思わせる。そうすれば"Back Arm & Blackcharge"がここまで浮くこともなかったのではないだろうか。星★★★★。

尚,本作はタイトルの通り東京録音であるが,詳細の記述がない。クレジットにはBlue Note東京スタッフへのSpecial Thanksの記述があるから,Blue Noteで録音されたことは間違いないが,日付は不明である。まぁこの演奏なら別にそんなことに文句はないが。

Recorded Live in Tokyo

Personnel: Pat Metheny(g, el-sitar), Christian McBride(b), Antonio Sanchez(ds, perc)

2008年5月18日 (日)

YellowjacketsとMike Stern:意外や意外の相性を示す

Lifecycle "Lifecycle" Yellowjackets Featuring Mike Stern (Heads Up)

私はMike Sternのファンである。であるから,基本的にSternが全面参加しているアルバムならば購入するのがポリシーである。しかしこのアルバムはその私もちょっと躊躇した。私はBob Mintzerが加入してからのYellowjacketsをあまり評価していない(今でも彼らの最高傑作はMike Russo時代の"Four Corners"だと思っている。Bob Mintzerが入ってからはなんか高揚感がないのだ)こともあるが,彼らの音楽とSternがあまり合うように思えなかったからである。しかし,それは私の予断だったようである。意外にもこのコンビネーション,なかなかに楽しい。このアルバムは2007年のモントリオール・ジャズ・フェスでの共演がきっかけとなったようだが,これは嬉しい誤算であった。

冒頭のMintzer作"Falken's Maze"からしてまるでMike SternのオリジナルあるいはSternのリーダー・アルバムの収録曲のように思わせる。その後の曲もSternのオリジナルは2曲しかないにもかかわらず,Mike Stern色が出ていて,Sternファンは嬉しくなるはずだ。Yellowjacketsのようなパーマネント・バンドと演奏してもそうしたカラーに染めてしまうのは,Sternの個性が強烈な証拠と言ってはほめ過ぎか。それでもこうした予想外の成果にSternが大きく貢献している事実は否定できまい。いかにワンパターンと言われようと(Sternのオリジナル"Double Nickel"なんてSternのリーダー作で既に聞いたような気分になる),それがMike Sternなのだと言いきってしまおう。だって,Sternが参加していない曲では見事なまでにいつものYellowjacketsに戻ってしまうのだ。

Mike Sternの最近のリーダー・アルバムはRichard Bonaを迎えたりして新機軸を打ち出そうとしているのはわかるのだが,アルバム一枚を聞きとおすのは結構辛いことがあるのも事実である。私はこのアルバムを聞いて,こうしたシナジーを生み出す他流試合は大歓迎だと言いたいし,極論すれば,Mike SternがYellowjacketsに正式に参加してしまった方が,YellowjacketsにとってもStern自らにとってもよりよい音楽を生み出せるのではないかと思ってしまった。星★★★★。

Recorded in January 2008

Personnel: Russell Ferrante(p, key, perc), Bob Mintzer(ts, ss, b-cl, cl, EWI), Jimmy Haslip(el-b), Marcus Baylor(ds, perc)

2008年5月17日 (土)

出張中に見た映画(4):08/05編

「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー(Charlie Wilson's War)」('07,米,Universal)

Charlie_wilsons_war監督:Mike Nichols

出演:Tom Hanks,Julia Roberts,Phillip Seymour Hoffman,Amy Adams

海外出張で飛行機に乗っていて得した気分になるのは,日本でまだ公開されていない映画を見られるときである。こうした飛行機での先行上映が最近は増えてきて,大変結構である。

それでもって本日取り上げる映画は,米国では既にDVDも出ていて,私のアメリカ人の友人からは「買え,買え」と薦められたものである。でも飛行機で見られるからいいもんねぇということで,結局DVDは買わなかったが,これは結構楽しめる映画であった。若干,アメリカ的ヒューマニズム表現が鼻についたり,ストーリーに甘い部分があるかなと感じさせる部分がないわけではないが,それでも全編を通して飽きることはほとんどない。このあたりに監督のMike Nicholsの手腕を感じる。

話はソ連のアフガン侵攻に対して,密かに対抗手段を講じるアメリカ下院議員の姿を描いたものだが,これが実話に基づくというのだから面白い。もしこの映画でTom Hanksが演じるような姿が本当のWilson下院議員の姿だったとすれば,これは相当笑えるし,型破りで個性的な人物だと言わざるをえない。思わずほんまかいなと言いたくなる。Julia RobertsやPhillip Seymore Hoffmanが演じた人物も実在なのかはわかりかねるが,この3者の会話は大いに楽しめる。中でもHoffmanの怪演が楽しい。星★★★★。

往路でみた3本はどれも駄作だったが,帰路の1本目にこの映画を選んだのは正解だった。

2008年5月16日 (金)

出張中に見た映画(3):08/05編

Jumper 「ジャンパー(Jumper)」('08,米,Fox)

監督:Doug Liman

出演:Hayden Christensen,Samuel L. Jackson,Jamie Bell,Diane Lane,Rachel Bilson

出張中に見た映画として「ブラックサイト」を取り上げたばかりだが,この映画にもDiane Laneが出ている。しかし,これはゲスト出演のようなものだから,この映画に関してDiane Laneがどうこう言うのは適切ではない。いずれにしてもさまざまな場所を瞬間移動できる能力を身につけた「ジャンパー」とそれをハントするパラディンのバトルを描いたものだが,はっきり言ってこれは駄作である。

何がつまらないかって,結局はCG頼みの映像でしかないということである。最近は何でもCGに頼って,映画本来のよさがどんどんなくなっているように思えることには,このブログでも異論を唱えてきたが,この映画も同じである。荒唐無稽もここまでいけばある意味文句もないという人もいるだろうが,視覚的な効果でしか訴求できないのは,映画としての自殺行為ではないかと思う。この映画にそんなものを求めること自体間違っているかもしれないが,味わいもへったくれもないこと甚だしい。

世界のいろいろな場所でロケーションが行われており,東京も結構な時間で出てくるのは日本人として興味深いところではあるが,これまた無茶な映像ばかりである。同じ東京を描いても「ロスト・イン・トランスレーション」とえらい違いである。まぁ機内エンターテインメントとしてでなければ,私はこんな映画は見ていないだろうが,繰り返しになるが荒唐無稽過ぎて,私にはついていけないレベルであった。スターウォーズといい,この映画といい,Hayden Christensenってどうなってしまうのだろうかねぇ。星★☆。

2008年5月15日 (木)

Paolo Fresu Devil Quartet:ジャケはさておき

Fresu "Stanley Music!" Paolo Fresu Devil Quartet (Blue Note)

ブログのお知り合い,monakaさんとすずっくさんが取り上げられていたアルバムである。さすがのお二人が取り上げられるだけあって,これは非常によい。何がよいって,冒頭の"Another Road to Timbuctu"からスリリングな展開で私は思わず膝を乗り出してしまったぐらいである。全編に渡ってエレクトリックとアコースティックが絶妙にブレンドした素晴らしい演奏が続く。

誤解を恐れずに言えば,このアルバムを聞いていて思ったのは,五十嵐一生の傑作アルバム"Summer's Almost Gone"に演奏の感じが似ているということである。五十嵐のアルバムはカバー・アルバムだし,このアルバムは全曲メンバーのオリジナルだから,性質は全く異なるとしても,私が言いたいのは全体を覆う雰囲気である。五十嵐のアルバムもエレクトリックとアコースティックがうまく交じりあったアルバムだったから,きっとそう感じるのだろう。

ということで,五十嵐一生の件のアルバムが好きな私が,このアルバムを好きなのはある意味当然なのかもしれないが,monakaさん,すずっくさんのご紹介なかりせば,きっと素通りしていたアルバムである。五十嵐は行きつけのジャズ喫茶のマスターに教えてもらったものだし,持つべきものはいい音楽を教えてくれるメンターである。

それはさておき,このアルバム,ジャズ・アルバムとしては非常にまれなことにシークレット・トラックが入っている。まぁその曲がなくても実はよいのではないかという気もするが,これがラテン系のサービス精神というところか。シルエットに角や尻尾が生えたジャケは???だが,音楽は大いに楽しめた。星★★★★☆。

Recorded on January 3-5, 2007

Personnel: Paolo Fresu(tp. fl-h, effects), Bebo Ferra(g, effects), Paolino Dalla Porta(b), Stefano Bagnoli(ds)

2008年5月14日 (水)

出張中に見た映画(2):08/05編

Photo 「ブラックサイト(Untraceable)」('08,米,Lakeshore Entertainment)

監督:Gregory Hoblit

出演:Diane Lane,Billy Burke,Colin Hanks,Joseph Cross

飛行機で見るにはどうなのよと言いたくなるような描写がかなりえげつない映画である。私は「リトル・ロマンス」でのDiane Laneのファンで,彼女が大人になってからも「ストリート・オブ・ファイヤー」だったり「トスカーナの休日」もDVDで買ってしまったぐらい実は好きな女優である。しかし,こういうスリラーが彼女の資質に合っているのかどうかと言うと,私としては疑問である。

何と言っても,ストリーミングで中継される殺人シーンが見るに耐えないぐらい残酷である。飛行機で見ていてもいたたまれない気分になってしまうから,こんなものは当然子供には見せられない。かつ,シナリオにも相当無理があって,犯人役のJoseph Crossがどうやってハッキングをするのかも,どうやって家に忍び込むのかもあまりに説明不足。100分という時間におさめるためには仕方のない部分もあろうが,この脚本では簡単に先も読めてしまうし,全く駄目である。ただ,メイクのせいもあるだろうが,このJoseph Crossはかなり恐い(こんな奴が本当にいたら世も末だが...)。

Diane Lane好きの私としては,結構マッチョっぽくFBI捜査官を演じる彼女は微笑ましくもあるのだが,やはりイメージが狂う。Jodie Fosterの"Brave One"もそうだったが,最近はどうしてこういう女優たちがバイオレンス映画に出るのか。そういう時代だと言ってしまえばそれまでだが,Diane Laneじゃなくてもいいだろうと思ってしまう。何とも後味のよくない映画なので星★★がいいところだろう。もう一度見たいとは決して思わない類の映画だと言っておこう。

2008年5月13日 (火)

出張中に見た映画(1):08/05編

Photo 「椿三十郎」('07,東宝/角川)

監督:森田芳光

出演:織田裕二,豊川悦司,風間杜夫,西岡徳馬,小林稔侍,中村玉緒,鈴木杏,藤田まこと

私はこのブログでこの映画を見る前から随分と激しく批判してきた。一度は予告編を見るだけでだめだと言い切ってしまったこともある(インベージョン:3度目のリメイクを参照願いたい)。そこでも予告編を見ただけで私は織田裕二のセリフ回しについて文句を書いているが,毎度毎度のことだが,海外出張時の楽しみは行き帰りの飛行機で見る映画なので,この映画も見てみた。今回はその報告である。

はっきり言ってしまえば織田裕二は完全なミスキャストである。セリフは何を言っているのかよくわからないし,そもそもの「三十郎」の持つ怪しげさに欠けるのである。これは予告編だけでも想定できた話である。しかし,映画を見ていて責任を織田に全部押し付けるのは酷なような気もしてきた。と言うのも豊川悦司も駄目(仲代達矢の鋭さなど全く感じられない)なら,もっとひどいのは若侍軍団だからである。黒澤作では加山雄三,田中邦衛以下,皆それなりの役者,演技だったと思うが,今回の若侍軍団は一体何だ?演技の「え」の字も知らないようなポッと出の兄ちゃんたちを見ていて私は不快感だけが増してしまった。また,押入れ侍は前作では小林桂樹が助演男優賞ものの演技だったが,今回の佐々木某はこれまた一体何だ?存在感ゼロである。ちゃらちゃらした兄ちゃんたちにははっきり言って時代劇は無理と思わざるをえない。

結局,今回は脚本はオリジナルをほとんど踏襲している(違いがあるとすれば,ラストの決闘シーンだけである)にもかかわらず,本作がとんでもない凡作に終わったのはほとんど役者のせいである。それは換言すれば,役者からその程度の演技しか引き出せない森田芳光の責任である。こんな映画を作っているようでは,若者の時代劇に対する関心を引き上げるのはほとんど無理。それよりも何よりも時代の先達に対して失礼である。唯一救いがあるとすればベテラン俳優陣の演技(風間杜夫はほとんど志村喬をコピーしている)であるが,それにしてもである。

この映画を2時間近くもたせているのは脚本の力以外の何ものでもない。プロデューサーの角川にはどうこう言っても無駄だとしても,監督の森田以下,若い役者は3回顔を洗って出直せと言い切りたい超凡作。評価の星に値しない。

2008年5月12日 (月)

Jimmy Smithのオルガン・ワンマンショー

The_cat "The Cat" Jimmy Smith (Verve)

これはJimmy SmithがLalo Schifrinのアレンジに乗って,まさにオルガンを弾き倒したアルバムである。全編を通じてソロイストはSmithしかいないのだから,弾き倒し状態になるのも当然なのだが,それにしても完全なワンマンショー状態である。こういう音楽は気分が落ち込んだときに聞くと元気が出てよろしいが,普通の状態で聞くとなんかどこかで聞いたことがあるように感じさせるのも事実である。これはSmithの責任ではなく,このアルバムに収められた演奏をメディアが流用したり,こうした演奏に影響されたようなBGMが多いことにほかならないのである。そうした意味で,軽いアルバムではあるが,いろいろなところに影響を及ぼしたアルバムとも言えるのではないだろうか。

冒頭からいかにも映画音楽という曲調の"Theme from Joy House"で始まるが,アレンジがやはりLalo Schifrin的というか,後の彼のTVドラマの主題曲や映画音楽的なイメージを感じさせる。後のSchifrinのアレンジメントがどうなのかわからないのだが,本作のバック・バンドの特徴として,サックス・セクションが入っていないことがある。6トランペット,4トロンボーン,4フレンチホルンそして1チューバというのはかなり変わった編成であるが,実はこれがSchifrinサウンドの鍵だったかもしれないなぁと思わせる。

収録曲のうち,4曲は典型的なブルースであるが,Jimmy Smithは譜面には弱かったらしいからこれはある意味当然である。中ではかなりテンポの速い゛St. Louis Blues゛というのが異色だが,ほとんど原曲のメロディを聞き取れないと感じるのは私の耳が悪いせいだろうか?いずれにしても,バンドとしてのアンサンブル云々よりもSmithのオルガンのフレージング重視となるのは,Smithのミュージシャンとしての資質からして当然であり,アンサンブル面はバックの譜面に強いミュージシャンに任せておけばよいのである。

まぁこれはやはりVerveレーベル,それもCreed Taylorプロデュースらしい作品とは言えるが,決してイージー・リスニングになることなく,きっちりとジャズとして自己主張している点は評価しなければならないだろう。また,Jimmy Smithのこれが最高傑作とは思わないが,やはりここでもSmithのオルガンはOne & Onlyの響きだと言えると思う。星★★★★。

Recorded on April 27 & 29, 1964

Personnel: Jimmy Smith(org), Lalo Schifrin(arr, cond), Ernie Royal(tp), Bernie Grow(tp), Jimmy Maxwell(tp), Marky Markowitz(tp), Snooky Young(tp), Thad Jones(tp), Billy Byers(tb), Jimmy Cleveland(tb), Urbie Green(tb), Tonny Studd(b-tb), Ray Alonge(frh), Jimmy Buffington(frh), Earl Chapin(frh), Bill Correa(frh), Don Butterfield(tuba), Kenny Burrell(g), Geroge Duvivier(b), Grady Tate(ds), Phil Kraus(perc)

2008年5月11日 (日)

出張はつらいよ(3):08/05編

先日シャーロットの空港で落とした財布が手許に戻ってきた。キャッシュカード,クレジットカード,運転免許証に保険証まで入っていたから,なくなっていたら大ごとだった。これでほっと一息である。恥ずかしい話だが,私は今年になって2回も財布を落としている。酒に酔った上でもないというのが情ないが,それでも今回はいい人に拾ってもらってラッキーだった。十分反省の上,今後の対応に気をつけることにしよう。

いよいよ出張も今日で終わりで,あとは明日のフライトを待つだけとなった。明日は明日で,飛行機の中でどれだけ(逆)時差ボケに対応できるかが問題である。ようやく米国時間に慣れたと思ったら帰国である。すぐに酒をかっくらった上で,眠くなるように機内で報告書でも書くことにしよう(爆)。追ってブログに記事をアップするが,アメリカに来る際に見た映画は具合が悪かったし,帰りもあまり期待できそうにない。やはりこういうときは仕事に限る(ほんまかいな)。

ところで,私は通勤途上や出張中はいつもポータブルCDプレイヤーで音楽を聞いているのだが,今回はCDプレイヤーを家に忘れてくるという愚をおかした。幸いiPODを持ってきていたので,音楽には事欠かなかったが,何とも最近どんくさいミスを重ねている。これは年だけのせいではないような気もするが,やはり基本的には年のせいなのだろう。困ったものである。

出張中にCDでも買おうかと思って,SFのVirgin Megastoreにちょこっと立ち寄ったのだが,全然コスト・パフォーマンスがよくないので,何も買わなかった。税金を考えれば,日本で買った方が間違いなく安いというのは困ったものである。品揃えの点でも問題が多く,これではAmazonに勝てないのは当たり前。DVDも残念ながら"Saturday Night Live"の第3シーズン完全版は未発売で結局買えずだし,収穫なしというのは寂しいが仕方ない。

いずれにしても,帰国したら早いところBrian Bladeの新作をゲットして聞きたいものである。

James Carterのファンク・アルバム:もっと突き抜けてくれ!

Carter"Layin' in the Cut" James Carter (Atlantic)

昨日Benny Carterの記事をアップしたので,同じCarterつながりで本日はJames Carterである(なんでやねんっ!)。それにしてもCarterはCarterでも随分と違いが大きい。

James Carterはアメリカ本国と日本における人気の落差が結構大きいミュージシャンだと思う。CarterはAtlantic~Columbiaというメジャー・レーベルを渡り歩いてきたし,NYCのBlue Noteにも出演していることからも,本国では相当の人気ぶりということが想像できる。しかし,日本においてはその多様な音楽性による捉えどころのなさが災いしたか,いつまで経ってもメジャーな存在とはなっていないように思う。本国との評価,人気の落差という観点ではDave Douglasとも相通ずる部分があるかもしれない。 

それでもって,本作はJames Carterによるファンク・アルバムで,しかも共演のメンツを見ただけで目が点になること請け合いの,相変わらずのカメレオン・ミュージシャンぶりを発揮したものとなっている。こうしたファンク・アルバムがCarterの本質かと言われれば,そうだと言い切るほど私はCarterの音楽に接していないが,それでもこれもCarterの音楽性の一つだと言うことはできるはずである。そうでなければ,ぽっと出でこれだけの激しいファンクは演奏できるものではない。あるいは何をやらせても平均点以上の演奏ができるところが,Carterのある意味凄いところと言ってもよいかもしれないが,逆に言えば「器用貧乏」と言われかねない。

本作ではCarterのフレージングやサブトーンを交えた吹奏ぶりも激しいが,バックのメンツも激しくCarterを煽っている。ギタリストが2名参加しているのでどちらと特定できない部分もあるが,特に激しいのはJef Lee Johnsonの方ではないかと思う。また,Tacumaのベースが生み出すグルーブが心地よい。但し,Westonのドラムスがミックスのせいかやや軽く響くのが残念で,ここはもっとへヴィーな感覚を生むようなサウンドにした方がよかったように思う。

その後こうした路線のアルバムはCarterは吹き込んでいないと思うが,やはりCarterファンには受けが悪かったということであろうか?私はCarterに特段の思い入れがない部分,これはこれで楽しめたのだが,日本での人気を上昇させるためにはもう一段の突き抜けが必要に思えるのも事実である。どうせファンク路線で行くなら,もう少しスピード感を持たせ,高揚感を演出できれば,もっとファンは増えるのではないかと思うのだが...。そのあたりがまだまだ半端と言えば半端なのである。

そのCarterの最新作はストレート・アヘッド路線のようだが,今後も様々な領域で活躍をして欲しいと思えるミュージシャンでありながら,本作を聞いていて,やはり彼にとってのブレイクスルーの必要性を強く感じてしまった。星★★★。

Personnel: James Carter(ts, ss, bs), Jef Lee Johnson(g), Marc Ribot(g), Jamaaladeen Tacuma(b), G. Calvin Weston(ds)

2008年5月10日 (土)

Benny Carter:モダン・スイングの楽しさ溢れるライブ盤

Benny_carter "Live And Well in Japan" (Pablo Live→OJC)

これはBenny Carterの1977年来日時の模様を捉えたライブ盤だが,これが非常に楽しいアルバムで,私がジャズを聞き始めて間もない頃から随分とお世話になったっというか,ジャズの楽しさを教えてくれたアルバムである。若干地味とは言え,十分オールスターと呼べる中編成バンドによるスインギーかつ楽しい演奏が続く傑作である。

そもそもティーンエイジャーの私がなんでこんなアルバムを買う気になったのか,かつ愛聴していたかは定かではないのだが,いずれにしても浪人中のグルーミーな気分を和ませる効果は結構あった。そういう意味でもこのアルバムには世話になっている。大学に入ってからも,よく通ったジャズ・バーで毎度毎度このアルバムのB面をリクエストしていたが,今でもやはりたまには聞きたくなるアルバムである。

このアルバム,どこから聞いても楽しいのだが,私としてはLPで言えばB面に当たる"Them There Eyes"から"It Don't Mean Thing..."への流れが最高だと思っている。だからこそB面ばかりリクエストしていたのだが,6/8拍子でテーマに入り,途中で4/4のユニゾンへ突入する"Them Their Eyes"は何度聴いてもぞくぞくする。

Carterは本業のアルトだけでなく,2曲目の"Louis Armstrong Tribute"ではトランペットも吹いているが,その曲ではJoe Newmanによるサッチモの真似が結構似ていて(真似しやすいのは事実だが)笑える。こうした曲や演奏も含めて深刻ぶらずに楽しめるジャズとして強く推薦しうるジャズのひとつの王道。こういう音楽が,現代のリスナーにどの程度受けるのかはわからないが,ジャズの懐の広さを体感しうるアルバムだと思う。ジャズの歴史を揺るがすとかそういう類のアルバムではないが,これはこれで十分評価に値する。星★★★★☆。

Recorded Live at 新宿厚生年金会館 on April 29, 1977

Personnel: Benny Carter(as, tp), Budd Johnson(ts, ss), Cecil Payne(bs), Britt Woodman(tb), Cat Anderson(tp), Joe Newman(tp, vo), Nat Pierce(p), Mandell Lowe(g), George Duvivier(b), Harold Jones(ds)

2008年5月 9日 (金)

死刑台のエレベーター:Milesの渋さ爆発

Photo "Ascenseur pour L'echafaud" Miles Davis (Fontana)

長年,この音楽はいろいろなところで耳にしていたものの,LPやCDで購入する機会をずーっと逃してきたアルバムである。今般,中古で手頃価格の紙ジャケ金蒸着CDをゲットして,積年の課題解決(大袈裟!)である。ちなみに映画そのものは私はレーザーディスクで保有しているが,ハードもソフトも実家に置いたままなので,ここ何年も見たことがないのでそろそろDVD盤の購入を考えねばなるまい。

私がこの音楽をよく耳にしていたのはジャズ喫茶によく出没していた頃なので随分前のことになるが,冒頭のテーマからして何とも印象的な音楽で,ずっと脳裏に留まる類の音楽である。その冒頭のテーマのフレーズは即興的なものとは思えない完成度(実際には書かれていたという話もある)であり,またMilesのラッパに施されたエコー処理が何とも言えないムードを生み出しており,普通のリスナーはこの1曲でまいってしまうはずである。試しに#13に収録されたエコー処理前の演奏と比べれば,その効果が体感できるはずである。映画で使用された音源はこのCDの最初の10曲であるが,やはりこれは映画のムードを決定付けるに相応の役割を果たしている音楽だと言ってよい。映画を久しく見ていないので何とも言えないものの,記憶ではLouis Malle(ルイ・マル)の映像との合致度も素晴らしかったはずである。映画のサウンドトラックとは言え,これだけの音楽を作り上げたMiles Davisはやはり恐るべき存在である。バックのメンバーも好演である。

いずれにしても,全編を通してのムーディー度ではMiles Davisのキャリアの中でも白眉とも言うべき演奏。これを昼日中に聞くのはかなり野暮であって,本質的にはナイトキャップにこそ相応しいが,演奏がブッツリ切れるなどの無粋な編集はフェード・アウトの処理を施すとか何とかならなかったものか。それには何ともさめるが,それでもこのアルバムの価値が下がることはない。星★★★★☆。

ところで,裏ジャケでJeanne Moreau(ジャンヌ・モロー)の耳にミュートを当てるMilesの写真が妙にエロチックに感じるのは私だけだろうか。

Recorded on December 4 & 5, 1957

Personnel: Miles Davis(tp), Barney Wilen(ts), Rene Urtreger(p), Pierre Michelot(b), Kenny Clarke(ds)

2008年5月 8日 (木)

出張はつらいよ(2):08/05編

今回の出張では究極と言うべきどじを踏んでしまった。シャーロットからシカゴへ移動する途中のシャーロットの空港で,上着のポケットから財布が滑り落ちたのに気づかずに移動してしまった。

しかも飛行機は,シカゴの悪天候のため,ミルウォーキーに一時着陸し,都合3時間半遅れのシカゴ到着である。ミルウォーキーに着陸した際,機内で地上係員から私に連絡が入っていると言われるまで,財布を落としたことに全く気がつかなかったのだから,どうしようもない。

仕方ないので,シャーロットから最終目的地のサンフランシスコのホテルへFedEXで送ってもらうことにしたが,昔のアメリカだったら,こんなことは考えられず,即座に財布のカードは悪用されていた可能性が高い。そういう意味では,アメリカはいい国になったものだが,それにしてもである。

パスポートとキャッシュ,それからあと何枚かのクレジット・カードは落としていないで,今のところ事なきをえているが,自分のどんくささにはあきれて物も言えない。どうもシカゴは私にとって鬼門のようである。

Hear Music恐るべし:今度はCarly Simonだ

Carly_simon ゛This Kind of Love" Carly Simon (Hear Music)

Starbucksが運営するHear MusicレーベルはPaul McCartneyを手始めに,Joni Mitchell,James Taylorと契約を結び,ある一定の年齢層以上のオーディエンスにターゲットを絞る姿勢を示してきたが,今度はCarly Simonの新作が同レーベルから発売された。

私がCarly Simonを聞くのは非常に久し振りのことである。私はCarlyと言えば゛Boys in the Trees" と゛Torch゛を愛聴してきたクチだが,特にCarlyの大ファンという訳ではない。そんな私が今回のアルバムを購入したのはJimmy Webbがプロデュースに関わっているからにほかならないのだが,このアルバム,Jimmy Webbの個性というよりも,ブラジリアン・フレイバーが強く出ている。ライナーによれば,Jimmy WebbがCarlyにブラジル音楽のアルバム制作を持ちかけたらしい。確かにこのアルバム,2007年に亡くなったコラムニストのArt Buchwaldと並んで,Antonio Carlos Jobimに捧げられているから,やはりブラジル音楽がアルバムの底辺を支える基盤となっているのは事実である。但し,全部が全部ブラジルというわけではないのだが...。

このアルバムを聞いていると,随分とCarlyの声も渋くなったものだと思わざるをえないが,全体的に見ればやはりこれは「大人向け」の「落ち着いた」アルバムである。私は必ずしもCarlyの声がブラジル系音楽に合っているとは思わないのだが,午後のひとときをお茶でも飲みながらバックに流すには適切な音楽ではある。そうした意味ではStarbucksの戦略に合致した音楽と言ってもよいのである。但し,Carlyのラップで始まる3曲目゛People Say a Lot゛はかなり浮いているが...。

私としてはもう少しJimmy Webbとのコラボレーション色を出して欲しかったような気もするが,これはこれで十分楽しめるアルバムではある。ただ,私がこのアルバムをプレイバックする頻度が゛Boys in the Tree"や゛Torch゛を上回るかと言えば,必ずしもそうではないだろうというのが正直な感想である。ただ,Art Buchwaldに捧げられた最後に収められた゛Too Soon to Say Goodbye"は泣ける出来である。この曲,Buchwaldが死期を悟りながら,ホスピスで書き上げた最後の著作と同じタイトルを持つが,アルバムの最後にこういう曲を持ってこられるとやはり涙腺がゆるむ。この曲ゆえに半星追加して星★★★☆。

尚,このアルバムではCarlyの息子Ben Taylor及び娘Sally Taylorが曲を提供しているが,やはり蛙の子は蛙である。才能は遺伝する(もちろん環境もあろうが)ということを実証しているようである。

Personnel: Carly Simon(vo, g, p, key, perc), Jimmy Webb(p, key, b, vo), Robbie Ameen(ds), Lincoln Goines(b), Peter Calo(g, vo), David Saw(g), Ben Taylor(g, vo), Cyro Baptista(perc), Rick Marotta(perc), Aaron Heick(sax, a-fl, english-horn), ben Mauro(g), William Galison(hca), Sherree Brown(vo) & Others

2008年5月 7日 (水)

Enrico Pieranunziとの初邂逅盤

No_mans_land "No Man's Land" Enrico Pieranunzi(Soul Note)

今や日本でもメジャーになったEnrico Pieranunziであるが,このアルバムが出た頃はまだまだ知る人ぞ知るの存在だったように思う。そうしたPieranunziの音楽に私が初めて接したのは多分行きつけのジャズ喫茶で聞いた"Space Jazz Trio"のように思うが,私が初めて買ったPieranunziのアルバムが本作である。

いきなり回顧モードに入ってしまうが,私がこのアルバムに関心を持ったのは当時定期購読していたDown Beatの記事を読んでのことだと記憶している。私は当時NYCに在住していたのだが,NYのレコード・ショップで全くこのアルバムを見つけることができず,結局買ったのは,友人が住んでいたボストンを訪問したときだった。購入場所はバークリー音楽院のすぐそばのTower Recordだったはずである。時は1991年1月16日(米国東部時間)。なんでそんな日をはっきりと憶えているかと言えば,私がこのCDを買った日に湾岸戦争が開戦したからである。友人のアパートメントに帰ると,CNNが開戦の臨時ニュースを繰り返し流していたのも懐かしい。

そんな記憶はさておき,このアルバム,私にPieranunziというピアニストを強く印象付けるに十分な演奏であった。オリジナル5曲,スタンダード3曲という構成もよいが,リリカルに聞かせる曲("The Man I Love"のイントロなんてかなりリリカル)から,ハード・ドライビングな曲("Blues in C"はPieranuziのイメージを覆す演奏であるが,当時はそんなことを知る由もない)までPieranunziのスタイルがよく捉えられている。このアルバムをきっかけに私はPieranunziの世界にかなりはまったので,このアルバムには感謝しなければなるまい。いずれにしても,非常にレベルの高いピアノ・トリオだと感じたというのが率直な感想である。星★★★★☆。

これを契機として私が保有するPieranunziのアルバムも随分と増えてきたが,今やピアノ・トリオという観点での枚数からすれば,Brad Mehldau,Keith Jarrett,Bill Evansと並ぶ我が家の四天王の一人になっている。あれから20年近い時が過ぎたが,これからもPieranunziは原則として押さえていきたいピアニストである。

余談だが,湾岸戦争の開戦により「戦争当時国」に身を置くという稀有な経験をしたわけだが,所詮戦地ははるか彼方であり,当事国ならではの緊張感というのはあまりなかったなぁと今にして思う。

Recorded on May 3 & 4, 1989

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Marc Johnson(b), Steve Houghton(ds)

2008年5月 6日 (火)

異色の共演:Albert Mangelsdorff vs. Jaco Pastorius

Trilogue ゛Trilogue: Live at the Berlin Jazz Days" Albert Mangelsdorff / Jaco Pastorius / Alphonse Mouzon (MPS)

Jaco Pastoriusの参加がなければ,再発されることなどほとんど期待できないかなり「フリー・ジャズ」なアルバムである。だって地元ドイツで迎え撃つのがAlbert Mangelsdorffでは相当フリーになるのが当たり前である。そうは言ってもドシャメシャなフリーではなく,4ビート展開も現れるので比較的聞きやすいのは事実だが,それでも普通のリスナーには結構敷居が高いのではないかと思う。

ということであるから,こういうアルバムを一般のJacoのファンが聞いてありがたがるとは到底思えないが,それにしても不思議なメンツである。その背景に関してはプロデューサーであるJoachim E. Beremdtのライナーに詳しいが,やはりこれは3者のいずれにとっても異色作ということにはなろう。大体,低音系のトロンボーンとベースが丁丁発止やりあうというのもあまり例がないと思うが,演奏自体はそれなりに破綻なく展開されている。Jacoもこの頃は至極まともである。

私ははっきり言ってJaco Pastoriusには何の思い入れもないし,今でも゛Live Under the Sky゛においてGil Evans Orchestraとの共演をぶち壊しにした彼の発狂ぶりには怒りがおさまっていない。それでもWeather Reportや自身のビッグバンドで一時代を築いたという事実は否定するつもりもない。エレクトリック・ベースに革命的な奏法をもたらしたのも事実であるから,評価すべきところは評価している。彼がここで全く異色とも思えるMangelsdorffとの共演も大過なくこなしたような「まとも」な状態をずっと維持していれば,あんな不幸な死に方をすることもなかったのではないかと思う。

いずれにしても,このアルバムを私がしょっちゅう聞きたいと思うかと言えば答えは゛No゛である。別に音楽的に面白いとも思わないし,Al Mouzonはフリーなフォーマットでフロントを煽れるようなドラマーではないしということで,出来としては中途半端なものと言える。また,Jacoのフレーズやサウンドにも私をのけぞらせるようなものはないのである。

はっきり言ってしまえば,世の中にはずっとスリルを感じさせてくれるフリー・ジャズはいくらでもあるし,敢えて好んでこのアルバムを聞こうと思わせる高揚感も感じられない(そんなら聞かなきゃええやんという声が飛んできそうだが...)。聴衆は盛り上がっているが,それはライブならではの反応に過ぎない。聞くための理由がJaco Pastoriusの人はどうぞという感じである。しかし私ならJacoを聞くならWRを聞くだろう。星★★。

Recorded Live at the Berlin Jazz Days on November 6, 1976

Personnel: Albert Mangelsdorff(tb), Jaco Pastorius(el-b), Alphonse Mouzon(ds)

2008年5月 5日 (月)

出張はつらいよ:08/05編

世の中がGWも真っ只中の5/3からアメリカに出張中である。今回も全米を行脚する旅だが,年々厳しくなるのが時差ボケの調整である。現在,米国東部では午前5時過ぎであるが,到着当日は珍しくも何の問題なく夜はぐっすり眠れたので,時差ボケは即解消かと思いきや,やはり甘かった。

いつも通りというか,米国東海岸の出張の場合,午前3時あるいは午前4時に目が覚めてしまうのだが,今日も全くご同様。結局2時間半程度しか寝ていない勘定になるが,一旦目が覚めてしまうと,眠りに戻るというのがなかなか難しい。今日もトライはしてみたものの,既に目が覚めてから2時間弱が経過し,もう眠れそうにない。こういう場合は仕事をするか,ブログの記事でもアップするしかない(仕事せんかいっ!)。

若い頃はもうすこし時差ボケの調整がうまくできたと思うのだが,やはりこれを「寄る年波には勝てない」と言うのだろう。また,以前なら到着当日には散歩に出掛けて,ボディ・クロックの調整に努めていたが,最近はそういうこともしなくなったというのも理由になろうが,現在滞在中のアトランタではそうも行かないのである。やはり出張初日は土地勘もあって歩いて行動ができるNYCやSFのような街が望ましいように思う。

いずれにしても今日も午前8時過ぎから延々コンベンションでプレゼンを聞かなければならないので,睡魔との戦いが待っている。カフェインを大量摂取して乗り切るしかないが,それでもあと1時間でもいいのでもう少し寝たいなぁ。やはり出張はつらいのである。

期待を上回る出来だった"Miles from India"

Miles_from_india "Miles from India" Various Artists (Times Square)

全然期待しないで聞いた音楽がことのほかよかったときというのは気持ちのいいものである。このCD等はまさにその好例。インドのミュージシャンとMilesバンドOBの共演と言ってもなかなか食指が動くものではないのだが,中古盤(未開封)で見つけたのでまぁいいかということで購入したものであるが,これが予想を上回る出来であった。

私はこのアルバムを聞く前にはもっとインド色が強烈に出ているのかと思っていたのだが,実はそうでもなく,インディアン・フレイバーが絶妙なスパイスとして効くレベルなのである。そして音楽はMiles本人が不在でも,Milesの音楽らしく聞こえるところは大したものだと評価しなければなるまい。いきなり冒頭の"Spanish Key"からインド風のヴォイスがかぶってくるが,これがMilesの音楽と違和感がなく混在していること自体に驚きさえ感じると言っては大袈裟か。これがMilesの音楽の普遍性だとすれば,やはりMiles恐るべしである。

ここ参加したメンバーがMilesバンドOBの代表的な顔ぶれかと言えば必ずしもそうではないが,それでもMilesの音楽を演奏するにあたっては適切かつ敬意を感じさせる演奏を心掛けているように思える。その中で,Wallace RoneyをバンドOBと呼ぶのは違和感が非常に強いものの,Milesそっくりの音色,フレージングを連発していて笑みを誘う。いずれにしてもこうしたセッション・アルバムをかなり一貫性を感じさせるレベルまで仕上げたBob Beldenのプロデュースをほめなければなるまい。

Cosey メンバーではRoneyのラッパが出てくるといかにもMiles的と思ってしまうから,Roneyが目立つのは当然として,Miles側人脈ではLiebmanがいい仕事をしている。Sternは相変わらずのフレージングで自己主張しているのがこれまた笑みを誘う。また,各々1曲ずつの参加ながら,きっちり見せ場を作っていくChick CoreaとJohn McLaughlinはさすがの存在感。McLaughlinの新譜はインド人ミュージシャンとの共演らしい(Shaktiではない)から,本作での演奏はその新作への布石と考えることができるかもしれない。また,懐かしやMichael HendersonもPete CoseyもBadal Royも皆生きていたのねぇと思わせるが,Pete Coseyが結構激しいギター・ソロを聞かせるのには驚いた。ついでにCoseyの写真もアップしてしまおう。

インド側ではLouiz Banks,Gino Banks(この2人は親子らしい)が非常にコンテンポラリーな響きを打ち出している。彼らがおそらくインドの伝統的な楽器(聞いたことがない名前ばかりだ)との橋渡しをする上で重要な役割を果たしているのではないかと想像される。

演奏では2曲目の"All Blues"などはかなり伝統的な響きで,インドを感じさせるのはシタールだけというように感じてしまうので,冒頭の゛Spanish Key゛とのギャップが大きく,やや半端に感じるところもある。私としては後期Milesの曲で纏めていれば本作に対する評価は更に高くなっていたと思うが,それでもこれは本当に大きく期待を上回る一作だった。星★★★★。いずれにしてもMilesのファンは買っても損はしない。

尚,来る5/9にはNYCのTown Hall,5/31にはSF,6/1にはLAでこのアルバムに参加した一部メンバーによるライブも開催されるそうである。行けるわけはないのだが,ちょっと興味をそそられるイベントではある。

Recorded during November 2006 and July 2007

Personnel:

Miles Alumni: Gary Bartz(as), Ron Carter(b), Jimmy Cobb(ds), Chick Corea(p, key), Pete Cosey(g), Michael Henderson(b), Adam Holzman(key), Robert Irvving III(org), Dave Liebman(ss, fl), John McLaughlin(g), Marcus Miller(b-cl), Ndugu Chancler(ds), Benny Rietveld(b), Wallace Roney(tp), Badal Roy(tabla), Mike Stern(g), Lenny White(ds), Vince Wilburn, Jr.(ds)

Inidian Musicians: Gino Banks(ds), Louiz Banks(p, key), Ravi Chariy(sitar), Rakesh Chaurasia(fl), Selva Ghanesh(kanjira), Sikki Gurucharan, Dilshad Khan(sarangi), Shankar Mahadevan(vo), Rudresh Mahanthappa(as), Pandit Brij Narain(sarod), Sridhar Parthasarathy(mridangam, vo), Taufiq Qureshi(djembe, perc, vo), Kala Ramnath(vln), U. Shrinivas(mandolin), A. Sivaman(perc), Vikku Vinayakram(ghatam)

2008年5月 4日 (日)

スムーズ・ジャズ両巨頭によるプロジェクト盤

Benoit_freema "The Benoit Freeman Project゛ David Benoit & Russ Freeman(GRP)

世の中にスムーズ・ジャズなる呼び名が出てきてどれぐらいになるかはわからないが,私が在米中にお世話になったNYのFM曲WQCD(101.9 FM)では結構早い時期からスムーズ・ジャズと言っていたように思う。この局,流しっぱなしにするにはこれ以上のものはないという感じの音楽を掛けていて,TVを見るとき,CDを聞くとき以外は私は常にこの局からの放送を聞いていたと言っても過言ではない。ちなみに東にWQCDあれば,西にはサンフランシスコのKKSF(103.7 FM)があるが,KKSFでもおそらく同じような時期にスムーズ・ジャズという表現を使ったのではないかと想像している。

まぁスムーズ・ジャズというのは毒にも薬にもならないライト・フュージョンというのが一般的な考え方であろうが,そうしたスムーズ・ジャズの中でもちゃんと評価すべきミュージシャンが皆無だったわけではない。本日取り上げたアルバムのコ・リーダーの2人などは,凡百のスムーズ・ジャズに比べれば随分レベルの高い人として評価してもよいと思う。David BenoitとRuss Freemanはこれまでも共演経験があったし,一緒にツアーもやっていたことがあるはずなので,相応の接点は持っていたはずだが,それでもこのプロジェクトが発表になったときに喜んだリスナーは私だけではないだろう(私はRippingtonsをドライビング・ミュージックとしてよく使っていた)。

当時のこの2人が所属していたGRPレーベルは今のConcordレーベルのごとく,非常に多彩なミュージシャンと契約していたが,彼らの人気に目を付けた一時的なプロジェクトと考えることも可能だが,それでも本アルバムの全編を貫くBenoit及びFreemanらしさというのはある意味大したものである。ワンパターンと言えばそのとおりだが,それも言葉を変えれば予定調和とか,様式美という言い方だって出来るのである。冒頭の゛Reunion゛などは360°どこから聞いてもRuss Freemanである。このアルバムもリリースから15年近くが経過しているが,現在の音楽と言っても通用するぐらいの鮮度はまだ保っているように思う(スムーズ・ジャズなんて進歩を遂げるタイプの音楽ではないという話しもあるが...)。

このアルバムもオーケストレーションが仰々しいとか,"After the Love Has Gone"なんてまんまEW&Fのようだとか文句のつけようはいくらでもあるが,こうした音楽にケチをつけること自体野暮である。こういうものだと思って聞けば,全然問題ない。無思想に心地よさに身を委ねればよい。星★★★☆。尚,彼らは2004年には第2作を発表しているので,そちらもそのうち取り上げることにしよう。

Personnel: David Benoit(p), Russ Freeman(g, key, perc), Nathan East(b), Abe Laboriel(b), John Robinson(ds), Tony Morares(ds), Mike Baird(ds), Steve Reid(perc), Kenny Loggins(vo), Vesta(vo), Phil Perry(vo), Anjani Thomas(vo), Steven George(vo), Jerry Hey(tp, fl-h), Gary Grant(tp), DDan Higgins(as)

2008年5月 3日 (土)

Dave Grusin的映画音楽回顧集

Cinemagic "Cinemagic" Dave Grusin (GRP)

文字通りDave Grusinによる映画音楽集であるが,このアルバムの特徴はGrusinが手掛けた映画音楽を豪華なメンバーにより「再演」しているということである。確かにメンバーはそれなりに豪華であるし,オケはロンドン交響楽団で,サウンド・プロダクションはかなりお金が掛かったものとなっている。しかし,映画音楽集という特性ゆえ,ジャズ的な要素はかなり希薄であり,これをジャズ/フュージョンだと思って聞くと結構違和感があることには注意が必要である。しかし,上質なBGMとして聞けば,これはかなりいけている。

曲はGrusinが手掛けた映画の中でも比較的有名なものばかりが選ばれていると思うが,日本語タイトルで言えば次の通りである(収録曲順)。

「黄昏」,「天国からきたチャンピオン」,「トッツィー」,「グーニーズ」,「愛すれど心さびしく」,「恋に落ちて」,「チャンプ」,「コンドル」,「リトル・ドラマー・ガール」

いくつかの映画は2曲収録されているものがあり,どうしてなんでこれが2曲なのか,あるいはどうしてあれはないのかという声もあろうが,全体的に見ればこの作品が制作された1987年というタイミングでは適切な選曲と言えるだろう。ちなみに「恋に落ちて」のテーマ曲は゛Mountain Dance゛なので,ここでも同アルバムのバージョンが収められているのが例外である以外は新規の再録音となっている。

この中で私にとって思い出深いのは゛Tootsie゛だろうか。Stephen Bishopの歌う゛It Might Be You゛もよかったし,Dustin Hoffmanが女装して街を闊歩するシーンのバックに流れた(と記憶している)゛An Actor's Life゛の曲が好きで,私はサウンドトラック盤を買ってしまったぐらいだったからである。まぁここでの演奏も悪くはないが,インストの゛An Actor's Life゛はさておき,私としては゛It Might Be You゛でのBishopのボーカルの不在が痛い。"Mountain Dance゛は新録にこだわっていないのであるから,ここはオリジナル・トラックを収録してもよかったかもしれない。また,「愛すれど心さびしく」のタイトル・トラック゛A Heart Is a Lonely Hunter゛はGrusinの"One of a Kind゛にもいい演奏があったから,そちらを採用するというオプションもあったようにも思える。そうは言っても,この作品はレトロスペクティブでありながら,新録対応するというのが基本コンセプトだから,まぁ文句は言うまい。

いずれにしても何とも映画音楽的な響きが横溢するアルバムである。星★★★☆。

Personnel: Dave Grusin(p, key, arr), Don Grusin(synth), Lee Ritenour(g), Abraham Laboriel(b), Harvey Mason(ds), Mike Fisher(perc), Emil Richards(perc), Chuck Findley(tp), Charley Loper(tb), Tom Scott(ts, ss), Ernie Watts(ts), Eddie Daniels(cl), The London Symphony Orchestra

on "Mountain Dance": Dave Grusin(p), Jeff Mironov(g), Marcus Miller(b), Harvey Mason(ds), Rubens Bassini(perc), Ian Underwood(synth)

2008年5月 2日 (金)

どこへ行ったかMarvin "Smitty" Smith

Smith "Keeper of the Drums" Marvin "Smitty" Smith (Concord)

これまでも何人かのミュージシャンに関して「どこへ行ったか...」と書いてきたが,最近,Marvin "Smitty"Smithの音沙汰を聞かないと思っていたら,なんのことはない,NBCの"Tonight Show"のバンド・レギュラーになっていたようである。私は米国のトークショーでは完全にDavid Letterman派なので,米国出張中でも"Tonight Show with Jay Leno"を見ることはまずないので全く気がつかなった。こうしたTV番組のレギュラーになることにより生活が安定するのはいいことだが,ジャズの第一線から遠ざからせるには惜しいドラマーのように思える。

そのSmithの初リーダー作がConcordレーベルからというのも意外なら,ここに参加しているSteve Colemanのプレイぶりも意外であるが,これは胸のすくような快演アルバムである。いずれにしても当時の若手オールスターと呼んでも過言ではないメンバーによるこのサウンドに感じられる勢いはRalph Petersonの"V" Quintetに近い気もするが,80年代後半から90年代初頭(日本のバブル期)にはこうしたサウンドが結構多かったのだなぁと今にして思ってしまう。

ここではかなりモダンなサウンドというべき演奏が展開されているが,SmithはM-Baseでもこうしたモダンでもなんでもござれの多才なドラマーだったと言える。しかもここに収録されている曲はすべてSmithのオリジナルということで作曲能力も大したものである。優秀なドラマーは作曲能力にも優れるということはBrian BladeやManu Katcheも証明しているが,Smithも例外ではない。アレンジャーは誰なのか明確な記述がないが,"Love Will Find a Way"では゛La Fiesta"を引用したりしているから,ある程度きっちり書き込んだあるはずで,これもSmithの仕事ならば,これまた大したものである。アルバム・タイトルは単なる「リズム・キーパー」のようにも取れるが,いやいやそれに留まらぬ多才ぶりということで,全ての要素を加味して星★★★★。

冒頭に書いたように,こうしたアルバムを残せる人材がTV番組のレギュラーに安住してしまって,レコーディングの機会が減ってしまったのはやはり残念なことである。是非今一度シーンへの復帰を待望したいところだが,Jay Lenoは2008年度で"Tonight Show"を降板するらしいから,それに伴い,同番組のバンマス,Kevin Eubanksともどもジャズ界に復帰してくることを望みたい。そういう意味ではBranford Marsalisが同番組のバンドを短期間で降りたのは彼にとっても,ジャズ界にとっても大正解であったように思う。

Recorded in March 1987

Personnel: Marvin "Smitty" Smith(ds), Wallace Roney(tp), Robin Eubanks(tb), Steve Coleman(as, ss), Ralph Moore(ts), Mulgrew Miller(p), Lonnie Praxico(b)

2008年5月 1日 (木)

Buzzy Feitonのリズム・カッティングが最高のDave Weckl Band

Weckl "Rhythm of the Soul" The Dave Weckl Band (Stretch)

Dave Wecklと言えば,Chick Corea Elektric / Akoustic Bandを通じて一躍メジャーな存在になったと言えるが,Chickの元を離れてからは,自らがリーダーを務めるバンド形式に強いこだわりを示しているように思う。よって,最近ではたまにMike Sternのバンドに参加する以外はセッション・ワークは殆どやっていないようだし,活動は自己のバンドに絞っているように見える。

しかしながら,いくら有能なメンバーを揃えていても,それほど有名どころを擁しているわけではないので,日本での認知度そのものは最近はあまり高くないのは残念である。私はむしろこうしたWecklのポリシーを感じさせる活動を評価しており,Chickという親分抜きでもちゃんと勝負できるミュージシャンであるということは今一度多くの人に認識して欲しい気がする。

Stretchレーベルでの第1作となったこのアルバムでも,Wecklのバンドに対する姿勢は貫かれている。ここでの演奏は基本的にレギュラー・バンドとしての演奏であり,豪華なゲストを迎えているわけではない。むしろそうした取組みを通じて,Wecklはレギュラー・バンドとしてのタイトなコンビネーションや「ノリ」を実現しており,全編を通じて非常に楽しめる出来となっている。私はこのブログで豪華ゲストを迎えたWecklの初リーダー作への違和感を示したことがある(懐かしのDave Weckl初リーダー作:多才さは必ずしも美徳ならず)が,この作品では作品としての一貫性があるため,初リーダー作のような問題がないのが素晴らしい。

Wecklの手数や鋭いドラミングぶりはいつも通りであるが,本作において重要な役割を演じているのがギターのBuzzy Feitonである。一部でFrank Gambaleも参加しているが,Feitonがここで聞かせる鋭いリズム・ギターやロック・フレイバー溢れるソロが,従来のWecklのカラーとの違いを生み出しており,何とも素晴らしいバイ・プレイヤーぶりを示していることは特筆に値する。Buzzy FeitonはWeckl Bandの次作"Synergy"にも参加しているので,当時このバンドのレギュラーだったと考えられるが,Fatonがもたらした効果は非常に大きかったと言える。私はWecklのバンド活動を評価しつつ,この作品はFeitonの参加ゆえに☆分は確実に評価が高まったと思う。ということで星★★★★。

尚,本作の収録曲は全曲がキーボードのJay OliverとWecklの共作であるが,どこまでWecklが関与しているのかは不明ながら,優れた作曲能力を示していると思う。いずれにしても大したドラマー,ミュージシャンである。

Personnel: Dave Weckl(ds), Bob Malach(ts), Steve Tavaglione(ts, as, ss), Buzz Feiton(g), Frank Gambale(g, el-sitar), Jay Oliver(key), Tom Kennedy(b), John Patitucci(b), Dave Goldblat(key)

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