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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2008年4月30日 (水)

逢坂剛:薀蓄開陳趣味趣味小説

Photo 「墓石の伝説」 逢坂 剛(講談社文庫)

逢坂剛の西部劇好きは川本三郎との共著「大いなる西部劇」でもとっくに証明済みだが,これは小説というフォーマットを借りて徹底的に西部劇や付随する歴史に関する薀蓄を開陳した本である。ここまでいくと,「文芸」というよりも「趣味」の世界という気がするが,それでも私はかなりの西部劇好きなので結構楽しませてもらった。しかしながら,一般的な評価はきっと「?」ということになるだろう。

今回は西部劇をネタに使っているが,同じ岡坂神策シリーズの映画関係ネタということでは「牙をむく都会」と同系列の作品ということになる。「牙をむく都会」でも顕著だった薀蓄が,本作では更に輪をかけた状態になっており,これは完全にマニアックな世界に突入していると言われても否定できない。その薀蓄を開陳するためのシークエンスとして映画監督と西部開拓史研究家の鼎談という形式を取っているが,西部劇に興味のない人間にとっては,こんなダイアログは全く必要ない(あるいは退屈なだけか,意味不明な暗号にしか見えない)ということになるだろう。西部劇好きの私は読みながら「へ~」と何回も言わされてしまったが,西部劇がどうのこうの言わずとも,エンタテインメントとしてはそれなりに楽しめることは事実だとしても,これはやはり特定の読者にしか勧められない。

また,この小説を逢坂剛らしいサスペンス小説だと思って購入した読者は,裏切られること甚だしい。最後まで一向にサスペンスフルな展開など登場しないから,そうした観点で,これをサスペンスだと謳う本文庫版の背表紙の惹句にだまされてはならない。あくまでもこれは西部劇好きによる西部劇好きのための小説でしかないのである。よってこの本に対する私個人の評価と,一般的な評価では大きく異なってくるのは仕方がないところである。あっというまに読了してしまった私個人は星★★★☆ぐらいには評価できるが,一般の読者にとっては星★☆ぐらいと言っておくのが妥当のような気がする。どう見てもやはりこれは行き過ぎなのである。そりゃ同好の志にはいいだろうけどねぇ...。

2008年4月29日 (火)

Renee RosnesがJoe Hendersonを迎えた佳作

Renee "For the Moment" Renee Rosnes (Blue Note)

Renee Rosnesがカナダ出身の「美人ピアニスト」としてシーンに登場して20年近くになると思うが,その後OTBに参加したり,SF Jazz Collectiveに参加したりと,今や堂々たる中堅である。そんな彼女が注目を浴びたのはBlue Note(正確に言うと日本のSomethin' Elseに吹き込んだものを米国ではBlue Noteが発売したもの。こういうのがバブル期には多かったなぁ)にアルバムを吹き込むようになってからであろう。この作品はそのBlue Noteでの2作目であるが,注目は前のボスであるJoe Hendersonの参加である。

私はこのアルバムの発売記念ライブをNYCのBlue Noteで見る機会があったのだが,そのライブでもこのアルバムでもJoe Hendersonが結構ソフトなトーンを聞かせるなぁと感じた。これはリーダーであるReneeに花を持たせる意味もあったのだろうと思うが,それでもHenderson,いいフレーズを連発している。そうしたHendersonの好演に応えるかのように,Reneeもいい曲を提供するとともに,いい演奏を展開している。

Renee Rosnesはそれなりのドライブ感で演奏していると思うが,そうは言いながらもやはり力感には乏しい(ゴリゴリ感は皆無である)部分は否定できない。しかし,それを埋めて余りあるフレージングの素晴らしさを示しているし,このアルバムの段階で「なかなかできる」ということは実証している。星★★★★。

Renee Rosnesは既にこのときからして期待の若手だったわけだが,最近は華々しさには欠けるものの,きっちりアルバムを出し続けているのは大したものである。やはり堂々たる中堅である。尚,本作にも参加しているBilly Drummondとは別れて,今はBill Charlap夫人のReneeであるが,ジャズ・ピアニスト同士の夫婦って家ではどういう生活ぶりなんだろうか。まぁどうでもいいことだが...。

Recorded on February 15& 16, 1990

Personnel: Renee Rosness(p), Joe Henderson(ts), Steve Wilson(ss, as), Ira Coleman(b), Billy Drummond(ds)

2008年4月28日 (月)

よく見れば凄いメンツのジョージ大塚の1978年作

Maracaibo_2 "Maracaibo Cornpone" ジョージ大塚 (Trio)

このアルバム,久し振りに聞いたが,よくよく見れば結構なメンツである。この当時の日本のレーベルの海外制作盤(鈴木良雄の"Wings"とか山口真文の"Mabumi"とかがそうだ)にはこういうことが多いので見逃せないが,それにしても好き者が見れば膝を乗り出すこと間違いなしというメンバーである。サウンドはいかにもその当時のコンテンポラリー・サウンドという感じであるが,期待は裏切られることはない。

これだけのメンバーが揃っているのであれば,菊地の「ススト」のようなもう少し緊張感のある演奏でもいいようには思えるが,これはこれで楽しめるから文句を言うのは野暮というものである。私が一番いいと思うのはRichie Beirach作の"Who Got?"であるが,何ともこのメンバーらしいコンテンポラリーな4ビートが楽しめる。この感覚,誤解を恐れずに言えば,Stepsのそれに近い感覚があるかもしれないが,メンツが違うので,響きには当然違いはある。あくまで感覚の問題である。ここでのVitousのアルコは相変わらずの音(しかも相当リバーブがかかっていたりする)で,どうなのよという反応もありえるが,これは好き嫌いの問題である(ちなみに私はVitousのアルコは苦手)が,バッキングのベース・ランニングなどはなかなかよい。

サウンド的には当時はやりだったヤマハのエレクトリック・グランドが結構使われているあたりに時代を感じさせるところもあるが,演奏そのものは今でも十分通用するもので,古臭さはそれほど感じない。曲ではBeirachの2曲が私の好みだが,ピアノ・プレイの観点でもBeirachの貢献度は大きい。これでもう少しSteve Grossmanがブリブリ吹いていてくれれば文句ないところなのだが,それはないものねだりということであろう。ただ,ミキシングのせいもあるかもしれないが,Grossmanのソプラノに今一つ力強さが感じられないのが残念ではある。いずれにしても70年代の日本のレーベルやミュージシャンには進取の精神が強く感じられるということを痛感させられる好アルバムである。星★★★★。

でもこのアルバム,地味なアルバム・デザインで結構損をしているのではないかと思うがどうだろうか?

Recorded on May 25& 26, 1978

Personnel: ジョージ大塚(ds), 菊地雅章(key, synth-ds), 増尾好秋(g), Steve Grossman(ss), John Abercrombie(g), Richard Beirach(p, key), Miroslav Vitous(b), Nana Vasconcelos(perc, vo)

2008年4月27日 (日)

コレクターはつらいよ(4)

Rentree99 "Les Inrockuptibles Presentent Musiques Rentree 99"(Promotional)

以前,この(Brad Mehldauの)「コレクターはつらいよ」シリーズ(そんなもんあるんかいっ!?)の第3弾(記事はこちら)でチラッと書いた「注目のアルバム」を欧州の友人の協力をもらってようやくゲットした。

このアルバムはフランスの雑誌"Les Inrockuptibles"の付録とおぼしきアルバムなのだが,ここにBrad Mehldauのソロ・ピアノ未発表曲が収録されているのである。しかも弾いているのがJames Taylor作"Fire And Rain"である。MehldauもTaylorも好きな私の目の色が変わるのは当然だが,これが何とも美しいピアノ・ソロで奏でられるのだからこれはたまらん。おそらくこの演奏はラジオ出演時の演奏と思われるが,CD収録の演奏は大変残念なことにあっという間にフェイド・アウトしてしまうのである。この編集は無粋極まりないと文句も言いたくなるし,もっと聞かせてくれーと叫びたくなるのは私だけではないだろうが,まぁ雑誌のオマケゆえ仕方ないか。

このCD,フランスのオークション・サイトでは結構見かけるのだが,発送がフランスに限るとか書いてあって泣く泣く諦めていたものを,欧州の友人に頼んだら親切にも現地でゲットして日本へ送ってくれたものである。あぁ何とも美しい友情,持つべきものは友人である。PayPal使ってさっさと送金せねば!

しかし,こんなものまで集めだしたら本当に大変なことになってしまうが,だからこそ「コレクターはつらいよ」なのである。もはやここまできたら引き下がることが出来ない境地と言えよう。ますますビョーキ度を増す私である。

Recorded on September 21, 1999

Personnel: Brad Mehldau(p)

2008年4月26日 (土)

かなり確実になごめるJohn Sebastianの佳作アルバム

John_sebastian "Tarzana Kid゛ John Sebastian(Reprise)

このアルバムは結構懐かしい。私は繰り返し書いてきたように,結構シンガーソングライター好きである。これは私の従兄の影響もあるのだが,こんなアルバムをティーンエイジャーの頃から聞いていてよかったのかどうかという疑問はあるにせよ,結構早い時期からカット盤(死語!)で聞いていたアルバムである。

このアルバムの何かいいかと言えば,この何とも言えないレイドバックしたというか,ゆるゆるというか,どう表現していいのかわからないルーツ・ミュージック的な音楽が展開されているという点につきる。こうしたゆるいグルーブは今聞いても心地よいが,その昔私は本当にこれを聞いていいと思っていたのかと思わず回想モードに入ってしまう。いずれにしても,私がこのアルバムに関心を抱いた最大の原因は参加しているメンツによるところが大きい。もちろん,冒頭の゛Sitting in Limbo"から全編を通じてSebastianの歌唱も大いに楽しめるのだが,特にアメリカン・ロック好きにとってはそれでもやはりバック(下のメンツを見よ!)に目が行ってしまうのが人情である。

このアルバム,全体を通じていい出来だと思うのだが,ただ最後に収められたインスト曲゛Harpoon゛だけは出来そこないのフュージョン的映画音楽みたいで,どうも居心地が悪い。この違和感も買った当時から変わらないのだが,なんでこんな曲を入れたのかねぇ。明らかに浮いている。この曲があるゆえに星★★★★になってしまうが,ほかの曲は本当にすばらしい出来。本家Lowell Georgeを迎えたSebastian版"Dixie Chicken゛も結構楽しめる。それにしても総収録時間が30分そこそこというのは今のセンスでは本当に短い。通勤時間で結局2.5回聞いてしまった。

尚,TOTOのDavid Paichがストリングスのアレンジをしているが,これは彼にとっても結構早い時期の仕事ではないだろうかと想像している。

Personnel: John Sebastian(vo, g, dulcimar, hca, banjo, marimba), Russell Dashell(g), Amos Garrett(g), Jerry McKuen(g), Lowell George(g, vo), Ry Cooder(g, mandolin), Buddy Emmons(steel-g), David Grissman(mandolin), David Lindley(vln), Kenny Altman(b), Milt Holland(ds), Jim Gordon(ds), Kelly Shanahan(ds), Bobbye Hall(perc), Richie Olsen(cl), The Pointer Sisters(vo), EmmyLou Harris(vo), Phil Everly(vo), David Paich(strings arr)

2008年4月25日 (金)

Peter Asplund:やはりスウェーデン・ジャズ恐るべし

Peter_asplund ゛As Knights Conquer゛ Peter Asplund(Prophone)

ブログのお知り合い,すずっくさんやcrissさんがご紹介されていたので購入したアルバムである。そうしたご紹介なかりせば,私がこのCDに関心を持つことすらなかったであろう。そういう意味ではこのお二人に感謝したくなるような好アルバムである。

そもそも私はトランペットのワンホーン・アルバムが結構好きで,このアルバムもまずそういう編成であるところが気にいったのだが,演奏は私の想像をはるかに上回る素晴らしさである。冒頭のいかにも北欧的な響きの゛In a Pensive Place゛からしてこの手のサウンド好きにはたまらないものがあるが,オリジナルとスタンダードを組み合わせたプログラムにしても,全編を通じた演奏のトーンにしてもこれはなかなかに優れたアルバムとなっている。やはり私のような中年にはこれぐらい落ち着いたトーンが適している。この人たちはスタンダードをややいじり過ぎるきらいがないわけではない(特にどうしてこういうイントロ/アレンジ?と感じさせるところがある)が,これぐらいは全くの許容範囲である。そんなことを気にさせないサウンドや各プレイヤーの技量である。また,オリジナルが全て素晴らしいかというと決してそうとも言えないのだが,それも全体を通して聞けば,ほとんど気にならなくなるのである。

ここでのクァルテットはレギュラー・バンドのようだが,リーダーのAsplundはどちらかと言えばコンベンショナルなモダン・スタイルのようにも思える。そこにバンドとしての緊張感をもたらすのは新主流派的響きが強く,切れ味の鋭いJacob Karlzonのピアノのように感じられるが,この両者が生み出す絶妙なバランス,あるいはシナジーがバンドとしての魅力を非常に高めているのが素晴らしい。是非しばらくこのコンビネーションで演奏活動を続けて欲しいものである。

私はここでの演奏を聞いていて,このメンバーによるライブを是非見てみたい(乞来日!)という衝動に駆られるほどだが,このアルバム,日本人の嗜好に相当合っていると感じるので,認知度さえ高まればずっとメジャーになれる存在に間違いない。今後,私も微力ながらこのバンドをプッシュしていきたいと思うが,未聴の方には是非だまされたと思って聞いてみて欲しいと思うし,気が早いが私の2008年度のベスト盤候補に入ってくるであろうアルバムである。星★★★★☆。やはりスウェーデン・ジャズ恐るべしであった。

Recorded on October 28, 29, 30 and December 5, 6, 7, 2007

Personnel: Peter Asplund(tp,fl-h), Jacob Karlzon(p), Hans Andersson(b), Johan Lofcrantz Ramsay (ds)

2008年4月24日 (木)

Princeのオーバー・プロデュースが顕著なMavis Staples作品

Mavis ゛The Voice" Mavis Staples (Paiseley Park)

私はMavis Staplesの゛We'll Never Turn Back"を昨年のベスト・アルバムの一枚に加えているが,Ry Cooderの素晴らしいプロデュースと助演とも相俟って,Staplesが最高の歌唱を聞かせていたと思う。そのMavis Staplesが一時期Princeと共演していたというのは今となっては信じ難いが,本作ではそのPrinceが製作総指揮に当たっている。私はPrinceをある程度評価しているので,StaplesがPrinceと共演するとどういうことになるかという興味だけで中古で拾った一枚である。

結論から言えば,Princeがからんだファンク・アルバムとしての出来は悪くないのだが,これは歌い手がMavis Staplesである必要がないアルバムのように思える。あまりにもPrince色に染まり過ぎなのである。これだけPrinceが作曲やプロデュースあるいは演奏に参加していれば,そうなっても仕方がないのかもしれないし,そこがPrinceの凄いところだと言えばそのとおりである。しかし,本作のタイトルではないが,私のようにMavis Staplesの「声」そのものが好きな人間にとってはやはりこれは行き過ぎである。

これに比べれば゛We'll Never Turn Back゛やJoe Henryがプロデュースした゛I Believe to My Soul"はMavisの声をしっかり活かしたものであるように思う。Ry Cooderでさえやり過ぎと言う評論家もいたように記憶するが,彼らはこのPrinceはどう評価すると言うのだろうか。いずれにしても私にはあまりにもToo Muchである。星★★。

参加ミュージシャンが多いので,Personnelは省略するが,目立っているのはPrinceとSanbornとも共演が多いRicky Petersen。親父のPops Staplesもバックグラウンド・ヴォーカルで参加しているが,きっとやりにくかっただろうなぁ。

2008年4月23日 (水)

またも痛風発作である

先月にスキー場で痛風発作に襲われた話を書いたが,あれから1ヶ月も経っていないのに,またも発作である。今度は生まれて初めて左足のそれも痛風では最もポピュラーな親指の付け根あたりに発症である。

今回の症状はいままでの発作の中でも一,二を争う強烈な痛みを伴うものだが,体は正直である。左足が信じられないぐらい腫れ上がっている。今日などはあまりの痛さに病院で点滴を受けたのだが,そのときも足が腫れ過ぎて靴がはけないため,サンダルで病院まで這うようにして行った。歩を進めるのもままならない私の姿はまさに惨めである。

痛風は結局のところ生活習慣病であるから,自業自得の謗りは免れないのだが,それにしても最近発作が頻発し過ぎである。ここまでくると付き合いの酒も自粛することを真剣に考えなければならないかなと思うのだが,喉元過ぎればなんとやらで,発作の嵐が去れば,すぐに飲酒生活に戻っていく自分の姿は想像に難くない。これってほとんど二日酔いの朝の「もう酒やめた」と言いつつも,酒が抜けた夕方には「飲みに行くか」と言っているのと全くモードと同じである。

馬鹿は死ななきゃ治らないということであろう。それにしても今回の痛風は痛い。本当に「夜も眠れぬ痛さ」である。明日の朝には改善していることをひたすら願うのみである。

Herbie Hancock御用達のLionel Louekeを激安ゲットしたものの...

Loueke "Karibu" Lionel Loueke (Blue Note)

最近ではHerbie Hancockとの諸作に参加したり,ライブでもHancockと来日しているLionel Louekeの新作である。彼が参加しているHancockのアルバムは私も保有しているが,特にLouekeというプレイヤー自身に関心を持ったことはないし,印象にも残っていない。しかし,それでも本国で去る3月に発売されたばかりのこのアルバムがなぜか¥980でバーゲン品扱いされていたものだから,たとえ失敗してもまぁいいかという感じで購入である。HancockとShorterも2曲ずつ入っているし。

Louekeはアフリカのベニン(どこにあるのかは知らない)出身ということで,何かとカメルーン出身のRichard Bonaが引合いに出されるわけだが,どうしてこのご両人,楽器だけでも勝負できる(特にBonaはそうだ)のに,やたらに歌いたがるのか。これがアフリカの特性なのかというと,そう言えば南アフリカ出身のJonathan Butlerもやたらに歌っていたから,アフリカンはそういうものということか? しかし,LouekeにしてもBonaにしてもButlerよりははるかにアフリカっぽいが,それにしてもである。このブログでは未レビューだが,Richard Bonaの最新ライブを聞いてもこのアルバムを聞いても,何とも言えない違和感があるのである。

Bonaに比べれば,このLouekeのアルバムはずっとジャズ的ではある。それはLouekeのギター・フレーズと言うよりも,バックのメンツの演奏ぶりによるところが大きいように思う。結局Louekeのギターはアコースティックゆえにボサノバ的に響くところもあるが,何ともつかみどころがないのである。まぁそれでもギターだけ聞いていれば,聞き流すこともできるし悪いことはないのだが,繰り返しになるが,どうしてこうも歌いたがるのか。私にとってははっきり言ってやり過ぎにしか思えないし,その声が気になってくると,最後は耳障りに感じてしまう。Richard Bonaもそうなのだろうが,私にはアフリカ的な発声がどうも合わないのではないかと思ってしまう。でもKing Sunny Adeはそんなことはなかったので,やはりこの2人の声が私に合わないのであろう。

いずれにしても,このアルバム,やはりHancock,Shorterなかりせば,今後もあまり聞かないかもしれない。私が今後Louekeというギタリストを追うことはないだろうし,やはり\980でよかったと言っておこう。星★★☆。

Recorded in September 2007

Personnel: Lionel Loueke(g,vo), Massimo Biolcati(b), Frenc Nemeth(ds), Herbie Hancock(p), Wayne Shorter(ss)

2008年4月22日 (火)

こりゃ驚いた!Was(Not Was) 18年振りの新作

Was ゛Boo゛ Was (Not Was) (Rykodisc)

Was (Not Was)の新作が届いた。おそらく1990年の"Are You Okay?゛以来であるから18年振りのアルバムである。その間もDon WasはBonnie Raitt,Bob Dylan,The Rolling Stones等を手掛ける名プロデューサーとして名を馳せていたが,バンドとしては本当に久し振りである。実際にバンドとしての活動を再開したのは2004年ぐらいらしく,現在はツアーもやっているというのは信じられないが,まずはこのバンドの復帰を喜ぼう。

Was (Not Was)の音楽の特徴はさまざまな音楽が混在しているという点につきると思うが,これが本作でも全く変わっていないというか,録音が新しいテクノロジーでよりシャープになった以外,以前のWas (Not Was)のまんまである。一曲目からいかにもこのバンドらしい音が飛び出してきて,思わず笑みを誘う。少なくとも私が聞いた彼らの最後のアルバム,"What's Up, Dog?"と非常に近似性が高いように思わせ,まさに「三つ子の魂何とやら...」である。よって,今回もソウル,ファンク,ロック,フォーク等の要素がごった煮状態で,彼らのファンにとっては何とも言えない出来といえるだろう。

これが21世紀の現在において,どういうオーディエンスに受け入れられるかは疑問な部分もあるが,私は久し振りにWas (Not Was)を聞いて,非常に懐かしくも新鮮な気分に浸ることができた。下にあるようなゲスト陣がどういう仕事をしているかについてはもう少しよく聞いてみないとわからないが,まぁ昔からのファンは失望させられることはないと言っておこう。星★★★★。尚,゛Mr. Alice Doesn't Live Here Any More゛はBob DylanとDon & David Wasの共作である。

Personnel: Sweet Pea Atkinson(vo), Sir Harry Bowen(vo), Donald Ray Mitchell(vo), David Was(fl, hca, key, vo), Don Was(b, key, vo), David McMurray(sax), Randy Jacobs(g), Jamie Muhoberac(key), Luis Resto(key) with Kris Kristofferson(vo), James Gadson(ds), Curt Bisquera(ds), Lenny Castro(perc), Wayne Kramer(g), Booker T. Jones(org), Val McCullum(g), Greg Leisz(pedal steel), Marcus Miller(b), Tim Drummond(b), Portia Griffin(vo), Arnold McCuller(vo), Myrna Smith(vo), Sallly Dworsky(vo), Doc KLupta(bs), Lee Thornton(tp), Rayse Biggs(tp)

2008年4月21日 (月)

サルサの祝祭

Blades "Metiendo Mano!゛ Willie Colon Presents Ruben Blades(Fania)

サルサはラテンのダンス音楽にジャズあるいはロック的な要素が混ざって出来あがった音楽である。いずれにしても基本的にはダンス音楽であるから,乗りが全てである。

本日紹介するアルバムはそのサルサの世界でも非常に有名なアルバムだが,最近,リマスターされて発売されたものをゲットしたものである。これで積年の課題が一つクリアされたと言っては大袈裟か。このアルバムのジャケはずっと昔から知っていたが,別に私はサルサ好きというわけでもないし,ほかに持っているのはFania Allstarsのベスト盤ぐらいのものである。それでもこのアルバムは出来がよいことはすぐにわかる。言葉がわからなくてもである。

ある意味執拗なまでに繰り返されるリズム/フレーズ(時として,CDプレイヤーが読み取りエラーを起こしているのではないかと心配になるぐらい繰り返されるのだ)にBladesの歌が乗っかっていると言う感じなのだが,このラテンのリズムに思わず乗せられてしまうのである。通常の通勤途上であれば,音楽を聞きながら熟睡の世界に入る私が,このアルバムを聞いていると寝られないのである。それほど刺激的であり,祝祭的な音楽である。それにしてもWillie Colon率いるバンドに乗るRuben Bladesの声の何と魅力的なことか。これはやはりこの手の音楽を代表するアルバムとして一度は聞いておいて損はないような気がする。星★★★★★。

面白いのはホーンが基本的にトロンボーンばかりということである。しかもジャケの写真を見ると,Colonが吹いているのはバルブ・トロンボーンである。不勉強でわからないが,これってサルサの流儀なのだろうか?あるいはColon流なのだろうか?そうした中でトロンボーンが本業のTom Maloneがトロンボーンを吹かずに参加しているのはご愛敬と言うべきか。

Personnel: Willie Colon(perc, tb), Ruben Blades(vo, g), Yomo Toro(g, vo), Sonny Bravo(p), Jose Torres(p), Tom "Bones" Malone(sunth, tuba, harp), Sal Cuevas(b), Milton Cardona(ds, perc), Jose Mangual Jr.(perc, vo), Nicky Marrero(perc), Lewis Kahn(tb),  Leopoldo Pineda(tb), Papo Vasquez(tb),

2008年4月20日 (日)

異色の共演?Tim Hagens vs. Marc Copland

Beautiful_lily_2 "Beutiful Lily" Tim Hagans(Pirouet)

輸入盤屋をうろついていたら私が結構ひいきにするMarc Coplandのコーナーに見たことのないアルバムがあった。リーダーはTim Hagansである。

Tim Hagansと言えば,以前Blue NoteからHagans~Belden名義で出した"Re Animation Live!"では最近のDave Douglas Keystoneの雛型のようなサウンドを聞かせていたのが懐かしいが,そのアルバムではターンテーブルを交えた強力なリズムに乗って,フレーズは新主流派という感じの演奏を聞かせていた。また,共演がMilesオタクのBob Beldenということもあろうし,Hagans自身もMilesの影響を感じさせて,Milesが存命なら,こうしたリズムで演奏をしていたかもしれないというような感じのアルバムであった。

そのHagansが私が「静謐ピアニスト」と呼ぶCoplandと共演,しかもHagansの1ホーン・クァルテット,しかも下記のようなメンツとあっては,ますます興味が湧くところである。冒頭は静かな幕開けで,これはCopland主導かと思わせるのだが,それがいきなり新主流派的な演奏に転じてビックリさせられる。上述のとおり,Hagansは新主流派的出自をこれまでも感じさせたが,Coplandがこんな演奏をするというのは意外であった。全編を通じて,静謐系と新主流派が交互に出てくるような印象が強いアルバムだが,Wayne Shorterの"Footprints"もやっている(ただし,このアレンジはあまり好きになれないが...)ぐらいなので,やはりこれはHagansの新主流派的な指向がより強く出ていると考えるべきだろう。

Hagansファンにはよかろうが,Coplandファンはやはり面食らうことが多いのではないかと思えるアルバムである。決して悪い出来ではないが,やはりイメージがちょっと違うので星★★★ぐらい。

それにしてもこのアルバム,Copyright表示は2005年となっているが,今まで発売されていた記憶はないので敢えて新譜扱いとしたが,もし間違っていたらごめんなさい。

Recorded on January 20 and 21, 2005

Personnel: Tim Hagens(tp), Marc Copland(p), Drew Gress(b), Bill Stewart(ds)

2008年4月19日 (土)

思わずオリジナル盤にまで手を出したジャケ買い盤

John_williams "The John Williams Trio" John Williams(Emarcy)

John Williamsと言ってもスターウォーズのWilliamsでもなければ,クラシック・ギタリストのWilliamsでもない。れっきとしたジャズ・ピアニストであるが,決してメジャーな人とは言えまい。1957年にフロリダに移住後はシーンから遠ざかっていたようだから,メジャーでなくても当然だが...。

本作はそんなJohn Williamsの数少ないリーダー作であるが,いつも私はこのアルバムのジャケットを見ると極めて「ジャズ」的な印象を受けてしまう。もちろん,それはBlue NoteレーベルのFrancis Wolff~Reid Milesコンビによるジャケであっても同じようなものと言ってしまえばその通りであるが,非常に雰囲気のあるジャケットである。このジャケを手に入れたくて私がオリジナル盤にまで手を出したのは後にも先にもこの一枚だけである。

私はパッケージがどうのこう言うよりも,本質的には音楽が聞ければいいというタイプの人間である。よって,どんなに音が優れているからと言ってオリジナル盤に手を出すようなことはなかったし,それ以前にそんな金銭的な余裕もなかった。それはどんなに好きなアルバムでも例外はない。この一枚を除いてである。それほど私はこのジャケットのJohn Williamsの写真に魅かれてしまったということである。まさにこういうのを音が聞こえてきそうなジャケットと言いたいが,実際に収録されている音楽に失望させられることもない。期待通りの軽快なジャズ・ピアノが楽しめる好盤である。私はジャケットだけでこのアルバムに星★★★★★としたいぐらいだが,演奏含めても星★★★★☆には値する。それにしてもここに収録されている"Someday My Prince Will Come"はやや異色である。このテンポといい,この演奏といい,これは同曲としてはかなり変わっている。

ちなみに,本作はここに掲示したジャケで紙ジャケ化されたことがあるが,私が保有しているアルバムにはこの写真のようなこうしたくすみ(黄ばみ)はない。私のLPにはコーディングが施されているからくすまないのは当然だが,どうせ再発するならその辺までこだわって欲しかったねぇ。ちょいとマニアックになってしまった。

いずれにしても,年を取って部屋にもう少し余裕を持てる状態になれるのであれば,このジャケットを壁面に飾って毎日眺めてニヤニヤしたいものである(変態?)。

Recorded on June 15, 24 and October 11, 1955

Personnel: John Williams(p), Bill Anthony(b), Chuck Andrus(b), Ernie Farrow(b), Frank Isla(ds), Jack Eddie(ds)

2008年4月18日 (金)

Dominique Di Piazzaつながりで購入したAntonio Farao盤

Womans_perfume "Woman's Perfume" Antonio Farao (CAM)

先日John McLaughlinの"Que Alegria"を取り上げたときに,そこでベースを弾いているDominique Di Piazzaが気になり,いろいろ調べていたらこのアルバムに参加していることがわかって,本日取り上げるこのアルバムをようやく入手するに至った私である。ブロガーの皆さんがこのアルバムを結構取り上げていたから,もう少し早く入手していてもよかったのだが,輸入盤の発売を待っているうちに遅くなってしまった。相変わらずこのアルバムの輸入盤は見たことがないが,私が入手したのも結局は国内盤である。こんなことなら待つことなかった。私はDi Piazzaに興味を持って購入したので,ほかの皆さんとはちょいと事情が違っているとしても,ようやくという感じである。

私は通常,輸入盤でCDを購入しているクチだが,このアルバムは国内盤で良かったかもしれない。というのも,このアルバムは映画音楽家Armando Trovajoliへのトリビュート作なのだが,彼が作曲した映画のタイトルをイタリア語で示されても,さっぱりわからなかったであろうからである。Faraoの前作,"Takes on Pasolini"なら,Pasoliniの撮った映画のタイトルを考えれば,大体どの映画か想定できても,Trovajoliという名前は不勉強にして初耳だし,いちいち映画のことまで調べるわけにもいかない(逆にこのアルバムのライナーを書いている小沼純一なる人はDi PiazzaのこともCeccarelliのこともちっとも調べていないというかなりの手抜きぶり)。といっても,日本語で書かれた映画のタイトルを見ても,知っている映画はないし,別にどうでもいいのだが...。

それはさておき,演奏はどうか。冒頭から非常にクリアに録音されたピアノが聞こえてくるのだが,冒頭からストレート・アヘッドな演奏である。ここにエレクトリック・ベースっていうのはどうかなぁという感想は誰もが持つかもしれないし,確かにこうした演奏にはウッドの方がいいように思える。ただ,アルバム全体を通してみれば,4曲含まれるFaraoのオリジナルは美しいメロディ・ラインを持つ曲なので,これはエレクトリック・ベースでも問題ない,あるいはエレクトリック・ベースの方がいいぐらいであり,全体的な響きを踏まえてDi Piazzaを選択したのだろうと思えるのである。私にはエレクトリック・ベース・アレルギーはないので,これはこれで全く問題ない。

私のイメージではFaraoはもう少し強いタッチのピアニストというイメージがあったのだが,このアルバムを聞いていると誤解を恐れずに言えば,Joe Sampleの美しいタッチでもう少しストレートなジャズを弾くとこんな感じになるかもなぁと思わせる。久しく前作"Take on Pasolini"も聞いていないので,改めてそっちも聞いてみて,最近のFaraoの動きを確認すべきかもしれない。いずれにしても録音もいいし,三者三様の演奏も楽しめるので,十分評価してよい佳作だと思う。星★★★★。

Recorded on September 6-8, 2006

Personnel: Antonio Farao(p), Dominique Di Piazza(el-b), Andre Ceccarelli(ds)

2008年4月17日 (木)

クセのない歌唱がなかなかよいDorothy Dandridge

Dandridge ゛Smooth Operator゛ Dorothy Dandrigde(Verve)

タイトルだけ見ているとSadeかっ!と言いたくなるようなアルバムであるが,れっきとしたジャズ・ヴォーカル・アルバムである。Dorothy Dandrigeという人はクラブ・シンガーであり,役者であった人らしい。私は未見だが全黒人キャストの「カルメン」(゛Carmen Jones゛)ではオスカーにもノミネートされている。しかし,晩年は不遇だったようで,最後は抗うつ剤のオーバードーズで亡くなってしまったのだが,まさに美人薄命を地でいったような人である。

このアルバムは1999年にリリースされたものであるが,何といっても注目は1958年録音の12曲でOscar Petersonトリオ+1が伴奏を務めていることであろう。このアルバムはその演奏と,1961年録音のオケ伴奏の全16曲が収録されているが,オケ伴奏はオケ不詳ということもあり,どうしてもPetersonとの演奏に関心が向いてしまうのは仕方ないところである。

演奏はと言えば,やはりクラブ・シンガーらしいというか,強烈な個性には乏しく,曲によってはキーがかなりギリギリの曲もあるが,逆に言えばクセがないがゆえに万人受けする可能性もあろう。基本的にスロー・チューンばかりというのが難点であるが,手堅い伴奏に乗ってDandridgeはそれっぽく歌っている。これはやはりナイトキャップ向けの音楽と言ってよいが,それにしてもこのアルバムが40年以上にも渡って未発表だったというのはどうなのだろうか。ここでは珍しくPetersonがチェレスタを弾いている曲もあり,まぁいかにもという伴奏であり,同じようなメンツで伴奏した゛Anita Sings the Most゛とは全然違うのが面白い。

いずれにしても,大した演奏ではないと認めつつ,酒を飲んでいるとたまに聞きたくなるアルバムではある。ホテルのバーで生のシンガーがいなければ,このCDを掛ければいいという感じだろうか。星★★★。尚,Peterson伴奏の12曲とオケ伴奏の4曲ではあまりに雰囲気が違い過ぎるので,私はPeterosonとの12曲しかほとんど聞いたことがない。このギャップは大き過ぎるので,後半4曲はなくてもよかったと言っては言い過ぎか。

Recorded in January, 1958 and February, 1961

Personnel: Dorothy Dandridge(vo), Oscar Peterson(p, celeste), Herb Ellis(g), Ray Brown(b), Alvin Stoller(ds), Unknown Orchestra

2008年4月16日 (水)

Gonzalo Rubalcabaのソロ・ピアノは従来のイメージと違う

Gonzalo "Solo" Gonzalo Rubalcaba (Blue Note)

Gonzalo Rubalcabaが本国キューバに留まらぬ活動を開始して,結構な時間になる。Montreuxのライブが出たのが私が在米中の頃であるから,もう17~8年前ということになるだろうか。私は熱心なRubalcabaのリスナーではないが,印象としてはスピーディでタイトなバンド演奏(特に自分のバンドではそうだ)を展開するというイメージが強い。しかし,このRubalcabaのおそらくは「初」ソロ・アルバムは,そうした印象をかなり覆していると言っても過言ではない。冒頭からして何とも「静謐」なイメージなのである。そもそもジャケットの絵からしてもRubalcabaっぽくない。このジャケの絵はTor Lundvallという人の作品らしいのだが,この人,ミュージシャンでもあるらしい。但し,Rubalcabaとの接点は全く不明である。

雰囲気がいつもと違うとは書いたが,例えば2曲目の゛Quasar゛はいつものGonzalo的と言ってもよいし,アルバムのそこかしこに彼らしさは出てくることはある。しかし,全体的なトーンとしては明らかにこれまでとは違うのである。それがいいか悪いかは別にしても,私のように特に彼への思い入れが強くないような人間でもGonzaloの弾くベーゼンドルファーの美しい響きは十分楽しめる。特に最後の3曲゛Here's That Rainy Day"~Charlie Haden作"Nightfall" そして"Besame Mucho"というのがオジさんにはしみるねぇ。

いずれにしても,本作は私は輸入盤屋のバーゲン品として¥780とか¥980でゲットしたものなので,費用対効果は十分だったと思う。だからと言って,Rubalcabaの追っかけになることはないが...。星★★★☆。

Recorded on June 8, 9 & 10, 2005

Personnel: Gonzalo Rubalcaba(p)

2008年4月15日 (火)

懐かしの「仮面の忍者 赤影」

Photo_2 「仮面の忍者 赤影 第1部 金目教編」(東映ビデオ)

私の友人の美人弁護士が次の特撮モノはいつ書くのかと聞くものだから,「次は赤影じゃ」と言ってしまった手前,今回はその「赤影」の登場である。

今にして思えば,昔は時代劇特撮モノがいくつかあったなぁと思い出される。「快傑ライオン丸」然り,「仮面の忍者 嵐」然りである。しかし,今の子供が時代劇に関心など示すはずもなく,こうしたジャンルはもはや死滅状態と言ってよい。そんな中で,このジャンルにおける新旧を通じての人気ナンバーワンはこの「赤影」をおいてほかにはあるまい。子供の頃にこの番組に熱狂していた私は,このシリーズのDVDが出た際には喜び勇んで購入に走ったわけだが,財力の問題もあり,全4部のうちの2部までの購入で止まってしまったのは情けない。

負け惜しみ的に言えば,これは単なる財力の問題だけではなく,「第1部 金目教編」が突出した魅力を持っていたということにもよるのかもしれない。加えて,「赤影」は1話完結ではないので,これをシリーズとして見続けるのはなかなか時間的にも大変という理由もあるように思う。この辺が,私がこのDVDを見る機会があまりない最大の原因である(実際,家人に馬鹿にされながらも,ウルトラセブンは今でもたまに見ている)。

それはさておき,第1部の冒頭のナレーション「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃、琵琶湖の南に「金目教」という怪しい宗教が流行っていた。それを信じない者は、恐ろしい祟りに見舞われるという。その正体は何か?藤吉郎は金目教の秘密を探るため飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は…赤影参上!!」に続いて「忍者マーチ」(「ヤンパラ,ヤンパラ,ヤッパパパ,ヤンパー...」である。わかる人にはわかるこのリズム・フィギュア。)が鳴り始めた瞬間,血湧き肉躍らせた同時代人は私だけではあるまい。

ということで,番組の中身については全然書いていないが,またそれは機会を改めるとしよう。やはり一つの時代を作った番組と言っていいと思う。

2008年4月14日 (月)

Chris Andersonが亡くなったそうである

Chris_anderson ゛Blues One゛ Chris Anderson(DIW)

やや旧聞に属するが,Chris Andersonが去る2月に亡くなったそうである。享年81歳。重度の身体障害に盲目というハンディキャップを抱えた割には長命だったのが救いであるが,また味わいのあるピアニストがこの世を去ったことになる。

Chris AndersonはHerbie Hancockに影響を与えたとされているが,このアルバムを聞く限りそうした感覚は強く感じられない。むしろどちらかと言えば独特なスタイル(決して流麗とは言えない引っ掛かるようなフレージングと言えばよいかもしれない)のずっと渋いピアノを弾く人だと思う。このアルバムは90年代の初頭に日本のDIWレーベルによって吹き込まれた久々のAndersonの作品として一部で話題になったものだが,こうした人を発掘してくる日本のレコード会社のセンスは認めるべきであろう。

Andersonは晩年はNaimレーベルにCharlie Hadenとのデュオ作を吹き込んだり,多少は以前よりも注目を浴びるようにはなっていたが,やはり地味な存在だったことには間違いない。こうした人が定期的に出演していたBradley'sというクラブの慧眼ぶりはやはり凄いということになるが,それもここで共演しているRay Drummond経由のことかもしれない。Drummondは結構Bradley'sに出演していた記憶があるので,おそらくはその紹介によるものではないかと考えられるからである。

いずれにしてもここでも共演者の控え目な伴奏に乗ってChris Andersonのピアノが楽しめる佳作アルバムである。尚,Andersonのソロで演じられる゛Summer of '42(おもいでの夏)゛ってのはやや異色である。Thelonious Monkのようだとまでは言わないが,かなり訥々とした「おもいでの夏」ではある。星★★★★。

謹んでご冥福をお祈りしたい。

Recorded on May 18, 1991

Personnel: Chris Anderson(p), Ray Drummond(b), Billy Higgins(ds)

2008年4月13日 (日)

倉木麻衣の英語の発音はいかん

テレビを見ていると倉木麻衣が"Top of the World"を歌っているCMが流れていたが,私はこのCMの倉木の歌を聞くと,どうしようもない違和感に襲われる。

その原因が彼女の稚拙な英語の発音にあることは明らかである。あれは完全なカタカナ英語をそのまま歌っていて,本当の英語的な発音になっていないというのが私の見解である。本質的にミュージシャンには耳のいい人が多いから,発音もそれっぽく聞こえるようにこなすことができる。その代表的な例が美空ひばりである。美空ひばりはほとんど英語教育を受けていないはずだが,彼女が歌う"Lover Come Back to Me"なんてそれっぽく聞こえる。それは歌詞の意味を理解しなくても,「音」がどう響くかを理解できる彼女の耳の良さに起因しているはずである。

それに比べて立命館大学ご卒業の倉木麻衣の発音は,居心地が悪いこと甚だしいのである。少なくとも元歌のCarpentersヴァージョンをちゃんと聞いたとは思えぬひどさと言えよう。こういうのを聞くと,歌手としての倉木は勉強不足,あるいはもしちゃんと原曲を聞いて勉強しているのであれば,彼女の耳に問題があると思わざるをえない。

英語の難しさというのは,書いてあるとおり読んでもそれっぽくは聞こえないことがあることである。例えば,私が映画を見ていてよくあるセリフに"Get Out of Here"(日本語にすれば「逃げろっ!」ぐらいの使い方が多い)というのがあるが,このフレーズ,通常であればどう聞いても「ゲットアウトオブヒア」とは聞こえないのである。同様に,Carpentersの元歌をよく聞けば,倉木の発音と明らかに違うことは誰にでも感じ取れるはずである。

いずれにしても,倉木麻衣が今後グローバルな活動を目指すならば,今の彼女の発音能力(おそらくリスニング能力も)ではかなり厳しいだろう。コマーシャルとは言え,英語で歌うならもう少しまともに歌って欲しいものである。あれに比べれば松田聖子の英語曲,"Dancing Shoes"なんて相当頑張っていた。"Sweet Memories"の頃はなんじゃそりゃというレベルだったが,そこから相当進歩していたのは,アメリカ・デビューへのモチベーションが高かったせいと考えることができるとしても,大したものである。たまに松田聖子が英語を喋る姿を見ることがあると,彼女の英語,なかなかそれっぽいのである。このあたりは倉木にはまだまだ進歩の余地があるということを示している。

まぁ気にしなければどうでもいいことなのだが,何かと比較される(ことが多かった)宇多田が英語がうまいだけにもう少し何とかした方がいいだろう。老婆心ながら。

カナダ人トリオをバックにしたPaul Desmondの未発表音源現る

Desmond_edmonton ゛Edmonton Festival '76゛ Paul Desmond Quartet(Gambit)

Paul Desmondが亡くなったのは1977年であるが,その前年の未発表音源が発売になった。これはDesmondファンにはたいへん嬉しい快挙である。しかもバックは晩年のDesmondを支えたカナダ人トリオ,もちろん私がひいきにするEd Bickert入りである。

カナダ人をバックにしたDesmondのライブ盤はHorizon,Artist House,Telarcの3つのレーベルから発表されていて,それらは全てトロントの"Bourbon Street゛における実況だったが,今回はアルバータ州エドモントンのジャズ・フェスにおけるライブである。エドモントンはカルガリーの北なので,この演奏が録音された4月はジャズ・フェスにはまだ寒い時期ではないのかと思ってしまうが,そんなことは全く関係のないDesmondの演奏ぶりである。しかも,クラブであろうが,コンサートであろうが,DesmondはDesmondであったということを実証するような出来で,これはたまらん。曲はトロント・ライブと大差なく,ここでしか聞けないのは゛Someday My Prince Will Come゛ぐらいであるが,私にとってはこのメンツの未発表録音が聞けるだけで嬉しいので,曲目なんて関係ないのである。音も決してクリアとは言えないが,鑑賞する上では全く問題ないのも嬉しい。

演奏はと言えば,翌年肺がんで亡くなるとは思えない演奏ぶりという言い方もできるが,本当にいつものDesmondで,安心して聞くことができる。いかなるシチュエーションでも,いかなる共演者とでも,Desmondは駄演というのができない人なのである。曲目ゆえに既にトロント3部作を保有のリスナーには勧めにくいのも事実なのは事実だが,それでもPaul Desmondファンは必聴,必携のアルバムである。やはりPaul Desmondは素晴らしい。よくぞ発売してくれたという感謝も込めて星★★★★★。但し,この芸のないジャケットは何とかして欲しいなぁ。

Recorded Live at Edmonton Jazz Festival on April 14, 1976, in Edmonton, Alberta, Canada

Personnel: Paul Desmond(as), Ed Bickert(g), Don Thompson(b), Jerry Fuller(ds)

2008年4月12日 (土)

Ray Brwon対Elvin Jonesに注目

Brown ゛Something for Lester゛ Ray Brown(Contemporary)

ベースの大御所,Ray Brownの愛すべき佳作アルバムである。このアルバムはLP時代から聞いているが,LPのときはもっぱらB面ばかり聞いていたような気がする。CDの時代になって全編を通して聞くようになって,なんでB面ばかり聞いていたのかと不思議に思うこともあるのだが,今にして思えばやはりそれはB面冒頭を飾っている゛Georgia on My Mind゛のせいだろうなぁと何となく感じる。それぐらい,私はその演奏が好きだったのである。

それはさておき,このアルバム,さすがBrownのリーダー・アルバムだけにベースのソロ・スペースが非常に豊富であり,音のバランスも通常のものよりもベースが目立つようにミキシングされている。それがこのアルバムに対する好き嫌いをわける可能性もあるが,そこはBrown御大,私はこれぐらいなら許容できる範囲である。Brian Brombergではそうはいくまい(別に彼に恨みがあるわけではないが,ミュージシャンとしての質の違いは明らか)。

このアルバムのポイントはそうしたRay BrownとElvin Jonesとの共演ということになるのではないかと思う。ElvinはColtraneとの燃えるような競演の印象が強いが,例えばArt PepperのVanguardでのライブを聞けばわかるとおり,非常に繊細なドラミングもこなせる人である。即ちパワー一辺倒のドラマーではないのである。そうした特性はこのアルバムでも十分に顕われており,Brownともある意味「意外な」相性を示している。そうしたコンビにはさまれて,ピアノのCeder Waltonが割を食った点は否めないが,全編で快調なピアノを聞かせている。

これで録音がもう少し三者対等のようなバランスであれば,更にこのアルバムはより優れたものになっていたかもしれないが,そこはベーシストのアルバム,ある程度目をつぶる必要もあるだろう。それでもやはりこのアルバムの゛Georgia on My Mind゛は久々に聞いてもよかった。アルバム最後を飾るHorace Silver作゛Sister Sadie゛もよい。やっぱりB面の勝ちである。星★★★★。

Recorded on June 22-24, 1977

Personnel: Ray Brown(b), Ceder Walton(p), Elvin Jones(ds)

2008年4月11日 (金)

斎藤由香さんのこと

斎藤由香さんを皆さんご存知だろうか。週刊新潮で窓際OLコラムを連載していらっしゃる本職はサントリー勤務のエッセイストである(最近はどちらが本職かわからない?)。斎藤さんのお父上は北杜夫氏。ということはおじいちゃんは斎藤茂吉,伯父さまが斎藤茂太先生である。

ご本人は覚えてらっしゃらないだろうが,私はこの斎藤さんと旅行に行ったことがある。勿論,2人ではない。たまたま参加したツアーが同じだっただけである。時は私が大学卒業寸前,私の友人(♂である)と一緒に欧州各国を旅するというツアーであった。それにしても今にして思えば何で私(及び私の♂の友人)がよりによってロマンチック街道の旅なんぞに行っていたのかが不思議でならないが,そのツアーに斎藤さんも参加されていた。確か2週間近いツアーだったので,斎藤さんとも何度かお話する機会があったが,それは感じのよい人だった。

その斎藤さんの本をたまに読ませてもらうのだが,やはり血筋と言うべきか。この文才は天賦のものと思う。また,そのユーモアの感覚はお父さん譲りということも出来よう。よくもまぁ職場のことをなんだかんだと書けるものだといつも感心してしまうが,私も職場の女性の皆さんには同じように見られているということかと考えると空恐ろしくなるのも事実である。

斎藤さんの本には女性たちが職場のアホ上司を罵倒する表現が多い(あそこまではっきり書かれると逆に爽快である)が,それと同時にご家族に関する記述が多いのも特徴である。こうしたところに斎藤さんの結構強い家族愛を感じてしまうのは私だけだろうか。そうした意味では私には斎藤さんは「いい人」のように思える。そうでなければ,あれだけの人脈も築けまいし,多くの文人たちから愛されることもなかろう。

その彼女が祖母上について記したこれまた愛に溢れた近作「猛女とよばれた淑女 祖母・斎藤輝子の生き方」(新潮社)を私も読ませて頂くために,会社の帰りに購入してきた。まだごく一部しか読んでいないが,それだけでもこの本にも家族愛が通奏低音のように流れていることが強く感じられるのである。

ご本人は「窓際OL」などとのたもうているが,彼女の著作を見ていれば,OLを辞めても(というかサントリーは決して手放すまい)十分食っていけるわとつくづく思う。私のように毎日駄文を垂れ流すしょうもないブロガーとは所詮出来が違うのである。ここは斎藤さんがサントリーでご担当のマカやアラビタでも飲んで私もあやかることとするか。

でも斎藤さん,絶対私のことなんて覚えてないだろうなぁ。当たり前か。

2008年4月10日 (木)

Grover Washington, Jr.:これも時代を映す鏡である

Winelight_2 "Winelight" Grover Washington, Jr. (Elektra)

ジャズ界においては空前のヒット作の一つと言ってよいだろう。Bill Withersが参加した"Just the Two of Us"(当初の邦題は「クリスタルの恋人たち」という噴飯ものであった...)はBillboardシングル・チャート2位まで上がっているし,アルバムもプラチナ・レコードとなっている。こうした音楽に対してコアなジャズ・ファンからはよく文句も出てくるところであるが,私はこのアルバムについては好意的である。アドリブで命を刻むようなジャズではないが,ジャズだとかジャズでないと考えず,心地よい音楽として聞けばよいだけである。私が米国のある銀行を訪問した時にはBGMに本アルバムの゛Let It Flow゛がかかっていて驚いたことがあるが,これも心地よさの表れと考えてよかろう。

音楽は所謂スムーズ・ジャズの走りと言ってもよいもので,優れたミュージシャンによる演奏は,どの曲を聞いてもやはり「心地よい」のである。また,現在の世の中に溢れかえるスムーズ・ジャズとは一線を画していると言ってよいのは,収録された曲のよさということになる。これだけのメンツで,相応の曲をやれば,それなりの演奏が出来て当たり前と言う気もするが,それにしてもバッキング・メンバーの適切な伴奏に乗って,Groverのソプラノとテナーがそれこそ破綻なく流れている。

特に伴奏の適切さということではEric Galeのギターが特によいように思うが,Marcus Miller,Steve Gaddのリズム隊も素晴らしい。そして一聴してRichard TeeとわかるRhodes(全曲でTeeが弾いているわけではないが,すぐわかる)の響きも素晴らしい。私はなんだかんだと言いつつ,このアルバムをたまに聞いているのだから,まぁそれなりのアルバムとして評価することの異論はない。時代を映し出した鏡としての役割も含めてちょいと甘いが星★★★★としておこう。

Recorded in June and July, 1980

Personnel: Grover Washington, Jr.(ss, ts), Bill Withers(vo), Eric Gale(g), Marcus Miller(b), Steve Gadd(ds), Ralph MacDonald(perc), Richard Tee(key), Paul Griffin(key), Bill Eaton(synth), Ed Walsh(synth), Raymond Chew(key), Robert Greenidge(steel ds), Hilda Harris(vo), Yvonne Lewis(vo), Ullanda McCullough(vo)

2008年4月 9日 (水)

大阪にて(正確には大阪ではないが...)

私は2歳から高校卒業までを関西で過ごしたので,心は生粋の関西人のつもりである。しかし周りが阪神ファンばかりなので,敢えて近鉄ファンで通したり,天邪鬼な関西人ということもできる。それでも,東京生まれの家人からはいつもある特定の「発音」がおかしいと言われることがあるのだが,私の関西出身の友人も同じような発音をしているから,関西特有の発声方式は身に付けていることは間違いないだろう。そうした発声が関西を離れて四半世紀以上を経過しても抜けないから,やはり自分は関西人である(と開き直る)。

そうした私が大阪に出張すると「必ず」行く店がある。一切の例外なしの「必ず」というのが我ながらのアホぶりである。そこは私が子供の頃から通っている焼肉屋であるが,ここが誰にも教えたくない(というか,極めて限定的な友人にしか教えていない)ほどうまい店である。よってここでも場所や名前を明かすつもりはないが,ここの焼きシャブ,ハラミ,キモユッケはいつ食してもうまいのだ。

ここは所謂大阪の市街地ではないが,阪急の梅田からなら10分そこそこで行けるので,寄り道をしてでも必ず訪れる価値がある店である。今回もやはりうまかった。でも大阪出張ってあまりないのが残念。次はいつ行けるのか。

小編成でのJohn McLaughlinもまた楽しい

Que_alegria "Que Alegria" John McLaughlin(Verve)

私のボキャブラリーは限定的で,このブログでも「なんだかんだ言って私はXXXのファンである」というようなフレーズを連発しているような気がするが,そのXXXにはJohn McLaughlinも当てはまる。よくよくCDラックを見ると結構な数のMcLaughlinものがあって思わず苦笑してしまうが,好きなものは仕方がない。

John McLaughlinのギター・フレーズはワン・パターンと言えばワン・パターンなのだが,本人及び共演者のテクニックに裏打ちされた演奏を聞いているうちに興奮させられてしまうのである。そうしたMcLaughlinが80年代後半から90年代初頭に,ギター,ベース,パーカッションというトリオで演奏していたのだが,このアルバムの前にもRoyal Festval Hallでのライブがあったから,当時はこういうフォーマットにこだわって演奏していたということになるのだろう。

もちろん,Mahavishnu Orchestraやその後の"The Hearts of Things"バンドがMcLaughlinらしい編成ということにはなるのだろうが,こうした小編成でもMcLaughlinの魅力は十分感じられる。一部でギター・シンセも使っているが,基本はアコースティック・ギターで勝負しており,McLaughlinらしいテクが大規模なバンド編成以上に楽しめてしまう気がするのである。

しかし,バンド編成は小規模でも,メンツがテクニシャンであることはいつも通りである。パーカッションはTrilok Gurtu(CMPレーベルの彼のリーダー・アルバムにはJoe ZawinulやPat Methenyがどうしたわけか参加していたなぁ)だが,一部でドラムスを演奏しているように思わせるのは珍しい。また,ベースのDominique Di Piazzaがこれまた大したテクニシャンである。この人については詳しくは知らないが,ブロガーの皆さんが取り上げているAntonio Faraoの"Woman's Perfume"に参加しているようなので,私はまだ未購入のFarao盤も聞いてみたくなるような演奏ぶりである。

いずれにしても,こうした小編成は全員にとってある意味ごまかしがきかないので,McLaughlinのギターを楽しむにはまたこれもよしということになる。McLaughlinのキャリアではあまり目立っていないアルバムであるが,私は結構好きである。星★★★★。ちなみに冒頭では"Belo Horizonte"を再演しているのも私が嬉しくなる理由の一つ。

Recorded during November 29 and December 3, 1991

Personnel: John McLaughlin(g, g-synth), Dominique Di Piazza(b), Trilok Gurtu(perc), Kai Eckhardt(b)

2008年4月 8日 (火)

Larry Carltonのライブ盤は悪くないのだが...

Carlton_2 "Last Nite" Larry Carlton (MCA)

なんだかんだと言いながら私は結構な数のLarry Carltonのアルバムを保有しているが,アルバム・アーチストとしてのLarry Carltonははっきり言ってあまり面白いと思ったことはない。それなら買わなければいいのだが,買ってしまうのがへぼとは言え,ギタリストの性かもしれない。

このアルバムはLarry CarltonがBaked Potatoで録音したライブ盤であり,"So What"や"All Blues"をやっていることがまず異色である。しかし,この2曲の演奏はなかなか雰囲気があって悪くないと思う。こういう路線もありなのである。そのほかはCarltonらしい選曲で,彼のギターも十分堪能できるアルバムと言えるが,それでも一般的にはこの作品は地味な位置付けにあるのだろうと思う。Carltonもそれはわかっているらしく,ライナーには次のような記述がある:

"As a producer of this recording, my intent was to allow all of the musicians to play their hearts out with no forethought about sales or public opinion. As the artist of this recording, I sincerely appreciate the Producer's intent."

なるほど。売れなくても確信犯ということである。そうだとしてもこのアルバムはCarltonのプレイを聞く限りにおいては決して悪いものではない。しかし,このアルバムには決定的な問題がある。それはオーバーダビングされたホーン・セクションである。これが全くライブ感の乏しいサウンドで,私にとっては邪魔以外の何物でもない。何を意図してこのような処理が施されたのは不明だが,これはプロデューサーとしてCarltonの完全なミスチョイスである。

このオーバーダビングがあるゆえに,私はこのアルバムを高く評価することはできないのである。聞いてもらえばわかるが,とにかく雰囲気をぶち壊しにしている。このガックリ感は相当に罪深いということで,演奏は嫌いではないのに星★★☆ぐらいになってしまう。惜しいねぇ。

Recorded Live at the Baked Potato on February 17, 1986

Personnel: Larry Carlton(g), Terry Trotter(key), Abe Laboriel(b), John Robinson(ds), Alex Acuna(perc), Rick Marotta(ds), Jerry Hey(tp), Gary Grant(tp), Mark Russo(sax)

2008年4月 7日 (月)

Bill Evansの参加が貴重なDave Pike作品

Dave_pike ゛Pike's Peak゛ Dave Pike(Epic)

CDラックを眺めていると,こんなCDを持っていたのかと思わされることがたまにある。実はこのCDも買ったことを全然覚えていなかったものである。それもご丁寧に紙ジャケである。おそらく中古で拾ったものであろうが,聞く前にラックにしまい込んでしまったのが失念の最大の理由であろう。

このアルバムはDave Pikeにとっての2作目のリーダー作らしいが,ほとんどそんなことに注目する人はいなくて,大方のリスナーの目当てはBill Evansの参加と言うことになってしまうある意味Dave Pikeにとっては幸せ(Bill Evans目当てに購入する人間が多いから印税は入る)なのか不幸(彼のリーダー作であることはほとんど無視される)なのかよくわからない。それでも私の記事も当然のことながらEvans中心に書かざるをえないのである。

このアルバムは゛Why Not"という曲から始まるが,これは曲名からも明らかなように゛So What゛に基づいて書かれた曲である。ということは最後の方に゛So What゛と同じ成り立ち(Dドリアン~E♭ドリアン)の゛Impressions゛そっくりのフレーズが出てきても全く不思議はない(即ち,ライナーで岡崎某氏がこの曲の原曲が゛Impressions゛だとこだわっていることには何の意味もない。言っちゃ悪いが,ジャズ評論家なんてこの程度のものである)。いずれにしても゛Kind of Blue゛でピアノを弾いたEvansがこの演奏のピアニストを務めているのは偶然でなく,意図的であることは明らかである。しかし,ある意味この曲だけがモードなので,他の曲から浮いている印象を与えているのは仕方がないところか。続く゛In a Sentimental Mood"ではEvansらしいピアノ・ソロが聞ける。3曲目の"Vierd Blues゛はMiles Davisオリジナルらしいが,元がMiles作ではかなりマイナーな方の゛Collectors Item゛に入っているのでは普通は知らなくて当たり前か。いずれにしても普通のブルースである。

この作品で珍しいと言えるのはEvansが゛Besame Mucho"を弾いているということだろうが,これはまぁ私にとっては可もなく不可もなくというところだろうか。ほんの少しなのだがテンポが速いのが味わいを落としているように感じるのは私だけだろうか。Evansのピアノ・ソロは無難だがあまり面白いとは言えない。Evansにラテンは合わないことを本人も自覚しているからこそ,ここでの録音が唯一なのだろう。最後の゛Wild in the Wind"はEvansのイントロがまさにという感じである。ただ,リーダーのソロが長過ぎるのが難点で,もっとEvansを出せっ!と思うリスナーも多いだろう。

作品全体としては,Evansが入って一本芯が通ったというところだろうが,Dave Pikeはヴァイブ奏者として決して個性的とは思えないし,唸り(鼻歌?)もしつこくてやや辟易とさせられるのが難点。決して悪いアルバムではないが,Evansなかりせば,やはり誰も買わないのではないかと思ってしまう。星★★★。これを敢えて買うぐらいなら,EvansのRiversideの諸作を聞いていればいいように感じる。

Recorded on February 6 & 8, 1962

Personnel: Dave Pike(vib), Bill Evans(p), Herbie Lewis(b), Walter Perkins(ds)

2008年4月 6日 (日)

追悼,Charlton Heston

Heston Charlton Hestonが亡くなったそうである。いつというのは定かではないが,4/5のことらしい。晩年は全米ライフル協会の会長を務めて,Michael MooreからおちょくられていたHestonであるが,昔は大作と言えばこの人みたいなところがあった。

今となっては結構恥ずかしいのだが,私が映画をよく見ていた中学生の頃は実はHestonのファンであった。その後,私はClint Eastwoodに宗旨替えをしたが,事実そうなのだから仕方がない。この人は史劇から西部劇,SFまでこなしてしまう幅の広い役者だったが,私にとってはやはり「ベン・ハー」や「十戒」のイメージが強い。彼の映画が私の宗教観に影響を及ぼしているのはおそらく間違いないのである。

晩年は先に述べたとおり,タカ派のイメージが強かったHestonだが,もともとはリベラルな人だったようである。何が彼を民主党員から共和党員に鞍替えさせたのかは定かではないが,ここに掲げた写真から見てもRepublicanって感じは強いなぁ。(人を見かけで判断してはまずいが...)

今,私がどの映画を見て彼を追悼するかというと,Orson Wellsとの対決が楽しい「黒い罠」であろうか。あの映画もまたHestonの側面であったことも事実なのである。合掌。

まさに超絶のギター・トリオ

Friday ゛Friday Night in San Francisco" Al Di Meola/John McLaughlin/Paco De Lucia (Columbia)

懐かしや超絶ギター・トリオの強烈なライブ盤である。ライブならではの三者の激しいテクニックの応酬が収められ,オーディエンスも異様な盛り上がりを示している。確かにこれを聞いて燃えないギタリストはいないだろうし,ギターを弾く,弾かないは関係なしにでも燃えるオーディエンスは多いだろう。

確かに冒頭から演奏そのものは十分に楽しめるし,「地中海の舞踏」にはやはり燃える。しかしである。フレーズをしつこく繰り返したり,このトリオとは全く場違いな"Pink Panther"を挿入したりして,若干悪乗りが過ぎる感は否定できない。もちろんライブということもあるから,目くじらを立てる必要はないのだろうが,本来の技の応酬だけで聴衆を魅了できるはずだけに,CDとして鑑賞音楽として聞く立場の私にとっては,こうした遊びの多さは気に入らない。ライブの会場にいたらこんなことは決して言わないとしても,やはり気に入らないのである。特に2曲目゛Short Tales of the Black Forest"にその傾向が顕著。

それがLPで言えばB面に相当する曲になると途端に真っ当な技の応酬になるのは大変結構である。特にEgberto Gismonti作゛Frevo Rasgado゛なんてかなり凄い。Di Meola作の"Fatasia Suite゛はDi Meolaがアルバム゛Casino゛の中で一人多重録音していたものをトリオで演奏したものだが,゛Frevo Rasgado゛のような一貫した高揚感がないのは曲のせいだろう。確かに最後のアンサンブルになると一気に加熱してくることは認めるとしても,やはりGismontiにはかなわない。そして最後はMcLaughlinのオリジナル゛Guardian Angel゛で幕を下ろすわけだが,この曲は作りが地味なだけにむしろ各者のテクニックの見せ所となるような気がする佳曲である。

ということで,全体を通して聞けば,やはりこれは相当に楽しめるアルバムではある。ちょっとシニカルな見方をしつつも,結局はこの3人に乗せられている単純な私である。星★★★★。

それにしてもよく指が動く人たちである。同じ人間とは思えない。へぼギタリストの負け惜しみである。またこの作品も発表から四半世紀以上である。時の流れとは恐ろしい。

Recorded Live at the Warfield Theater, SF on December 5, 1980

Personnel: Al Di Meola(g), John McLaughlin(g), Paco De Lucia(g)

2008年4月 5日 (土)

「猫」のMcLeanを久々に聞いた

Mclean "The Jackie McLean Quintet" Jackie McLean(Ad Lib)

CDの買い過ぎで,CDの収納スペースに問題が発生すると棚を整理することがある。そんな時,「お~っ,暫く聞いてないなぁ」というCDにぶつかることが多々ある。これもそんな一枚。本当に暫く聞いてなかったなぁ。こんなことだから家人からは,一回聞いただけで一生聞かないCDなんて山ほどあるんじゃないのなどと皮肉を言われるのだが,いえいえそんなことはありませんということで本ブログにも登場である。

このアルバムのタイトルは実はよくわからない。私が保有しているFresh Soundの横帯には上記のタイトルが書いてあるが,ジャケットからすれば"The New Tradition Presenting Jackie McLean"になるのだろうか。そんなこんなもあって一般には「猫のマクリーン」と呼ばれて親しまれているアルバムで,McLeanの初リーダー作である。

Jackie McLeanという人のアルトはなんとなくフラットした感覚があって,私はどうも落ち着かなくて音楽に没入できないことがある。晩年に息子のRene McLeanとバンドを組んでいた頃にライブで見たことがあるのだが,その時もそうした感覚が強く,何とも言えない違和感が残った。それが個性だと言われてしまえばそれまでだが,これは感覚の問題だから仕方がないのである。しかし,本作ではそうしたフラット感が感じられないのがまずよい。そう言えばSonny Clarkの"Cool Struttin'"もそうだったような気がする。

演奏は典型的なハードバップである。冒頭の"It's You or No One"から軽快にバウンスしており,これは楽しい。McLeanに比べるとDonald Byrdがやや軽いのが難点だが,まぁ難しいことは言うまい。ピアノはMal Waldronが弾いているが,後になぜ彼が情念系ピアニストと呼ばれるようになったのか全くわからないような優れたバップ・ピアノを聞かせる。2曲目はMcLeanのオリジナル・ブルースだが,ブルースを吹いてもMcLeanはうまい。このとき24歳とはとても思えない。そう言えばMilesの゛Dig゛のときはまだ19歳だったんだものねぇ。早熟な人は恐ろしい。3曲目はMcLeanの最も有名なオリジナルと言ってもよい"Little Melonae"である。さすがオリジナルだけあって,McLeanのソロは破綻がない。いいねぇ。

LPならばB面にうつる4曲目の"The Way You Look Tonight"は私には今イチである。McLeanとByrdのソロ・リレーのような形で演奏されているが,ご両人ともフレーズが軽過ぎてこれは好きになれない。また,次の"Mood Malody"はMal Waldronのオリジナルということもあるが,テーマ部の演奏はほかの曲とはちょいと雰囲気が違っている。しかし,アドリブ・パートになると通常のハード・バップに戻るから面白い。そして最後はCharlie Parker因縁の"Lover Man"である。これをByrd抜きで演奏したのは当然の選択である。何とも言えないMcLean節全開である。全編こんな感じならもっとよかったのになぁ。

ということで全体を通してみれば,このアルバムはMcLeanのフレージングを楽しめばよいのではないかという気がしてきた。それぐらいMcLeanが突出していたということになるのだろうが,大将がMcLeanならMal Waldronは副将である。"Left Alone"での名共演ぶりはこの段階で予想されていたということになるのだろう。

初リーダー作ということを考えれば十分によく出来ているとは思うが,評価としては星★★★☆ぐらいが妥当なところだろう。

しかし,まじでCDの収納場所が限界に近づいてきた。どうしよう...

Recorded on October 21, 1955

Personnel: Jackie McLean(as), Donald Byrd(tp), Mal Waldron(p), Doug Watkins(b), Ronald Tucker(ds)

2008年4月 4日 (金)

Nicolette Larsonの人柄がしのばれるトリビュート・コンサート実況盤

Nicolette ゛A Tribute to Nicolette Larson: Lotta Love Concert" Various Artists (Rhino)

数々のアルバムで楚々としたバックグラウンド・ヴォーカルを聞かせただけでなく,自作でも爽やかな声で多くのファンを獲得したNicolette Larsonが亡くなったのは1997年12月のことである。45歳というのはあまりに若いが,脳浮腫だったそうである。このアルバムはNicolleteの死後約3ヶ月後に開催されたトリビュート・コンサートの実況であるが,Nicoletteの友人たちが繰り広げる演奏を聞いていると,Nicoletteの人柄が偲ばれる。このコンサートでずっとドラムスを叩き続けた旦那のRuss Kunkelはどのような気持ちだっただろうか。

このライブには,それほど派手ではない(と言ってもオールスターだが)がアメリカン・ミュージック好きが見たら膝を乗り出すこと間違いなしのメンツが揃っている。各々のプレイヤーがNicoletteに対する思いを込めて歌っていると思うが,中でも私が特に感銘を受けるのがBonnie Raittが自身のギターとFreeboのベースだけでしっとりと歌い上げるLibby TitusとEric Kazの名曲゛Love Has No Pride゛である。コーラス隊がCrosby & Nashとあっては悪いはずがないが,これが誠に泣ける名唱である。

また,曲そのものが泣かせるJackson Browneの゛The Dancer゛やLinda Ronstadtが後半ではスペイン語で歌い上げるしっとりとした゛Blue Bayou゛,更にはCS&Nのハーモニーがしみじみと決まる゛In My Life゛等に中年オヤジの涙腺は思わずゆるんでしまうのである。Dan Fogelbergのような賑々しい演奏もいい(と言ってもJoe Walshはやり過ぎのような...)が,やはりトリビュートにはしっとりとした曲というのが日本人のメンタリティには合うということである。

そして最後は゛You've Got a Friend"だもんなぁ。ベタと言えばベタだが,Carol King~Bonnie Raitt~Linda Ronstadtと歌い継がれるだけでも参るところに,ここで聞かれる全員のコーラスを現場で聞いたら,私はきっと泣いていただろうと確信する。

さぁ皆さん,今一度このアルバムを聞いてNicolette Larsonを偲びましょう。それにしてもジャケを飾るNicoletteのポートレートの愛らしいこと。星★★★★。

Recorded Live at Santa Monica Civic Auditorium on February 21 & 22, 1998

Personnel: Jackson Browne(vo, g, p), Jimmy Buffet(vo, g), David Crosby(vo), Stephen Stills(vo, g), Graham Nash(vo, hca), Dan Fogelberg(vo, g), Emmylou Harris(vo, g), Carole King(vo, p), Little Feat (Paul Barrere(vo, g), Fred Tacket(g), John Cleary(key), Kenny Gradney(b), Richie Hayward(ds, vo), Sam Clayton(perc, vo)), Bonnie Raitt(vo, g), Linda Ronstadt(vo), Michael Ruff(vo, p), Joe Walsh(vo, g) with Waddy Wachtel(g), Steve Farris(g), Claig Doerge(key), John Gilutin(key), Leland Sklar(b), Russ Kunkel(ds), Lenny Castro(perc) with Mike Finnegan(key), Gerald Johnson(b), Joe Vitale(ds), Freebo(b), Rudy Guess(g), Rosemary Butler(vo), Valerie Carter(vo), Sherry Kondor(vo), Mary Kay Place(vo)

2008年4月 3日 (木)

Brand X系ジャズ・ロックを聞かせるGary Boyleだが...

Gary_boyle ゛The Dancer゛ Gary Boyle(Gull)

「こんなものまで紙ジャケットで」と私はしょっちゅうこのブログに書いているが,この作品にも同じことを言いたくなるようなアルバムである。Gary Boyleだ,Isotopeだと言って,今の日本でどの程度の人が反応するかはよくわからないが,このアルバムが発売された1977年当時にはジャズ誌にもレビューが掲載されたりして,ちょっとした話題になったアルバムである。それでもこのアルバムが出たからといって色めき立つ人って本当に多いのだろうか?(買っている私は人のことは言えないが...。)

冒頭の゛Cowshed Shuffle゛からしていかにもBrand X的に響くが,よくよく見ればプロデューサーが当時Brand XにいたRobin Lumleyだし,Lumleyがエレピを弾いているから,そうしたサウンドになるのも不思議はない。この曲では何とZombiesのRod Argentがミニ・ムーグで結構いけているソロを聞かせるが,有能なミュージシャンは何をやらしてもうまいということか。この1曲目を聞いているとこのアルバムに対する期待が高まる。しかしである。2曲目のタイトル・トラックでいきなりずっこける。はっきり言って曲がつまらない上に,アレンジが軽薄である。これは作曲,アレンジを担当したZoe Kronbergerの責任。3曲目の゛Now That We're Alone゛はBoyleが参加しないインタールード的な曲であるが,4曲目のBoyleがアコースティック・ギターに持ち替える゛Lullaby for  a Sleepy Dormouse (for George)"でムードを持ち直している。2,3曲目はLumleyが参加していないことからして,私の嗜好に合ったサウンドを生んでいるのはLumleyの持ち込むテイストということになるのではないかと判断されるLPで言えばSide Aである。

LPで言えばSide Bに当たる5曲目以降にはLumleyが全面的に参加しているが,5曲目の゛Armond Burfi゛がこれまた曲が面白くない。6曲目の゛Pendle Mist゛でまたまたブリティッシュなウェットな感覚を示して持ち直す。7曲目の゛Apple Crumble゛はサウンドは再度Brand X的に転じるが,これも演奏はさておき曲が今イチだし,Dave MacRaeのピアノ・ソロがまたつまらん。そして最後はHerbie Hancock作゛Maiden Voyage゛である。この曲はBoyleの以前のボスであるBrian Augerに捧げられているが,演奏としてはBoyleのギター・ソロはまだしもアレンジが駄目である。Herbieの演奏が持つムードもへったくれもないのである。

ということで,全体的に見れば,Lumleyが参加しているかどうかはほとんど関係なかったわけだが,私にとってはこのアルバムを聞いている時間があるならBrand Xを聞いている方がはるかにましという程度の出来である。もちろん,アルバムの中にははっとさせる瞬間もいくつかあるが,それはどちらかと言えば数少ない瞬間でしかないのである。冒頭の"Cowshed Shuffle゛が一番よかったというのでは,期待させておいて...ということでガックリ感が強まっただけである。結局,そこでのRod ArgentのソロとSimon Phillipsのバッキングがこのアルバムの目玉と言えるかもしれない。星★★。

Personnel: Gary Boyle(g), Robin Lumley(key), Rod Argent(key), Zoe Kronberger(key), David MacRae(key), Doni Harvey(b), Steve Shone(b), Simon Phillips(ds), Jeff Seopardie(ds), Maurice Pert(perc), Maggie Pert(vo)

2008年4月 2日 (水)

あまりに美しいピアノとギターの多重録音

Diary "Diary" Ralph Towner(ECM)

1曲目の"Dark Spirit"におけるTownerによるギターとピアノの多重録音を聞いて,感じるところがないとすれば,その人はECMレーベルとは縁がないと言い切ってしまおう。それぐらい美しい響きである。私はRalph Townerのファンであるから,多少の贔屓目はあるとしても,この響きには本当にうっとりさせられてしまう。そして続く2曲目"Entry in a Diary"ではTownerの必殺12弦ギターの登場である。私はこの冒頭の2曲を聞くだけで「ほぼ」昇天モードである。4曲目ではPaul Winter Consortでも演奏した"Icarus"を今度は12弦とピアノで多重録音である。ここまで来れば私は「完全に」昇天する。ECMかくあるべし。

私はTownerの最高傑作は"Solo Concert"だと思っている(なんてたってブログ開設2日目に「Ralph Townerの魅力」という記事にしている)。しかし,そこはライブ音源,多重演奏はできないのである。現代のテクノロジーを駆使すれば,今ならできてしまうかもしれないが,時はまだまだ1970年代である。ライブの場でのこの演奏の再現は無理だった。Townerはここではギターとピアノだけでなく,ギターとゴングの多重演奏も聞かせて,ライブ盤とは違う雰囲気を生み出すのに成功しているから,この作品はこの作品でちゃんと評価しなければならないのである。最高傑作はライブ盤に譲るとしても,これはTownerの代表作の一つに数えてよい。当然星★★★★★である。

尚,最後に収められたピアノ・ソロによる佳曲"The Silence of a Candle"は一聴,George Winstonのようにも響くが,当然,こちらの方がオリジナルのスタイルであって,Townerのピアノとして認識すべきものであることは強調しておきたい。ちなみにGeorge Winstonは自身のHPの"Influence"のところにギタリストとしてのTownerを挙げているが,私としてはピアニストとしてのTownerにも影響されとるだろうと突っ込みを入れたい。

閑話休題。最近はあまり多重録音をしていないと思われるTownerであるが,1973年という段階で,多重録音をうまく使ってTownerの魅力をここまで引き出したプロデューサー,Manfred Eicherは本当に大した人物である。Eicherにも星★★★★★を謹呈したい。素晴らしい。

Recorded on April 4 and 5, 1973

Personnel: Ralph Towner (g, p. gong)

2008年4月 1日 (火)

硬質なピアノの響きが美しいPaul Bley

Open_to_love ゛Open, to Love" Paul Bley (ECM)

Paul Bleyが耽美派と呼ばれるのはこのアルバムゆえではないかと思わせる美しいアルバムである。何ともピアノの音が硬質に捉えられているが,その響きの美しさはやはりECM的と言ってよいだろう。たまに挿入されるピアノ弦のはじきがまた何とも言えない雰囲気を作り出しているのがECM好きにはたまらない。

収録されているのはPaul Bleyのオリジナルが2曲,前妻Carla Bleyが3曲,後妻(実際結婚したかどうかはしらんが...。大体このアルバムを吹きこんだ頃にはもう別れていた)Annette Peacockが3曲,なおかつPaul Bleyのオリジナルには゛Harlem゛なんて曲があるという一体この人たちの人間関係はどないなってんねんと突っ込みを入れたくなるような選曲である。あるいはPaul Bley版「別れても好きな人」か。

そんなことはさておき,非常に音数が少なく,ある意味明瞭なメロディ・ラインを示すのは前出の゛Harlem゛ぐらいだと言っても過言ではない。ほかの曲はテンポ設定もあろうが,どういうメロディなのか,あるいはどこまでが書かれたメロディで,どこからがアドリブなのか凡人の私には掴み難いのである。ある意味現代音楽的な響きとも言えるが,それでもここで紡ぎ出されるピアノ・サウンドが美しいということは理解できる。この音楽をどう評価するのかは非常に難しいところであるが,私としては星★★★☆ぐらいだろうか。

いずれにしても,この音楽を聞いていて,どういうシチュエーションで聞くのが最適なのかは悩むところである。酒を飲みながらって感じではないし,食事のBGMにはなりそうにもない。しかし,真っ当に対峙すれば気分が落ち込みそうな予感もあるし,うーむ,なかなか難しい。ということで,私にとってはこれはしょっちゅう聞きたくなるようなアルバムではないのだが,必ず特定の頻度で聞きたくなるという点では,Peter Serkinが弾いた武満徹の音楽のようなものかもしれない。

それにしても,こういう演奏をしながら唸るPaul Bleyには困ったものだが,一時のKeith Jarrettほどの唸りではないので,それほど演奏を聞く妨げにはならない。あ~よかった。

Recorded on September 11, 1972

Personnel: Paul Bley (p)

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