映像でクライバーを見る歓び
"Beethoven: Synmphonies Nos. 7 & 4" Carlos Keiber / Concertgebouw Orchestra Amsterdam (Philips)
早いものでカルロス・クライバーが亡くなって今年で4年ということになる。しかし,私の脳裏からクライバーの姿が消えたことはほとんどないぐらいの強烈な印象を残した人であった。私は幸運にもカルロス・クライバーを生で3回観ることができたのだが,最初は1986年のバイエルン国立管弦楽団との来日公演で2度,もう1度は在米中の1990~91年シーズンのメトロポリタン・オペラハウスでの「ばらの騎士」でである。Metでは金もないので,座席は天井桟敷ではあったが,$19という破格の(嘘のように安い)値段でクライバーの指揮によるこのオペラを観られたのは本当にラッキーだった。その「ばらの騎士」ではパバロッティが歌手役で1曲歌っていたのも今となってはいい思い出である。
しかし,私の中で最も記憶に残っているのは86年に来日したときに神奈川県民ホールで見たベートーベンの4番,7番の演奏である。本日紹介しているDVDでも同じような姿が見られるが,まさしく踊るがごとき指揮ぶりに私の友人と私はそれこそ血湧き肉踊らされたという感覚であった。はっきり言って,私はベートーベンを聞きながら「乗って」しまったのである。勝手に足やからだが動いていたというのが正直なところである(後の席のお客さん,ごめんなさい)が,それまでレコードで聞いていたクライバーの演奏同様,「躍動感」の塊りのような演奏であるから,それも仕方がないところである。
ここでの映像を見ていても,ライブの場で受けた印象と大きな違いはないので,そうした私の記憶や興奮を呼び戻すのにはこのDVDに収められた演奏で十分である。この強烈なスピード感とダイナミズムに一度身を委ねてしまえば,ほかの大概の演奏では満足がいかなくなってしまうのはある意味当然である。この演奏を「品格」に乏しいと呼ぶ人もいよう。しかし,私はこの演奏の興奮度というものはやはり貴重であると思う。
それほど多くはない私のクラシックのライブ体験の中で,私がその場で本当に「燃えた」のはクライバーのライブと,88年のロンドンにおけるテンシュテット~ロンドン・フィルのマーラー5番(出張中にこれを観られた私は幸福者と言わざるをえまい)をおいてほかにはない。今,映像で見直してもやはりクライバーは不世出の指揮者である。星★★★★★。是非,クライバーの表情を見ながら鑑賞して頂きたい傑作映像ソフト。
Recorded Live at Concertgebouw, Amsterdam on October 19 & 20, 1983
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