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2008年1月31日 (木)

酒の友として好適なDave Peckトリオ

Good_road "Good Road" Dave Peck (Let's Play Stella)

最近,買ったCDの整理が悪く,このアルバムも「積んどく」盤として埋もれてしまっており,発売されたのはそんなに前ではないが,「おー,そう言えばこれも買ったなぁ」という感覚で,久し振りに聞いたような気がするアルバムである。

Dave Peckはシアトル出身のピアニストで,長きに渡ってBud Shankの伴奏を務めていたことでも知られる人であるが,日本での知名度はまだまだ限定的であろう(そうでもない?)。しかし,このアルバムでの演奏は,結構日本人の心の琴線に触れそうな響きに満ちている。ドラムスがJoe LaBarberaということもあるが,一聴してBill Evansを想起することは仕方がなかろう。しかし,タッチはEvansよりもはるかにソフトに聞こえる。このアルバムは決して刺激的な音楽ではなく,また,真剣に鑑賞するというよりも,心地よくバックを流れる音楽として捉えるべきのように思える。

曲は1曲がPeckのオリジナルである以外は全てスタンダードと言ってよい曲ばかりであるが,冒頭の"Yesterdays"からして,通常の"Yesterdays"っぽくなく始まっており,情念とかソウルとか言った感覚とは無縁の「大人しい」ピアノがリリカルに展開されている。DownBeat誌はPeckのピアノを"Lyrical and pastel, swinging and bluesy, with a ringing crystalline touch"と評したそうであるが,ブルージーかどうかは別にして,その評価はかなり的を得ていると思う。Peckは音楽教育にも関わっているらしいのだが,さもありなんという感じの演奏と言うこともできるぐらい破綻が感じられない音楽であり,小音量でバーで流すには最適な音楽と言ってもよいだろう。但し,カクテル・ピアノというよりも,あくまでも詩的なピアノなので念のため。

私のように通勤時間に音楽を楽しむ比率がかなり高い人間にとってはなかなか何度も聞くチャンスには恵まれないかもしれないが,そんな私でも,夜(特に深夜),妻子が寝静まった後,酒を片手にひそかに一人で楽しむにはなかなかよいアルバムである。星★★★☆。

尚,このアルバムと同じメンツによるトリオで,シアトルのJazz Alleyというクラブで吹き込んだライブ・アルバムが2008年には発売されるらしいので,また買ってみようかなぁ。確かにクラブで聞いても楽しそうだし。

Recorded on June 8 - 11, 2003

Personnel: Dave Peck(p), Jeff Johnson(b), Joe LaBarbera(ds)

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2008年1月30日 (水)

Pat Methenyの新作はファンも納得の素晴らしい出来

Metheny "Day Trip" Pat Metheny with Christian McBride & Antonio Sanchez (Nonesuch)

Pat Methenyの久々のトリオ・アルバムが発売されたので早速聞いてみたが,これが非常によい。私としては期待が大き過ぎたBrad Mehldauとの共演がピンとこなかっただけに,このアルバムにもあまり期待していないというかMethenyそのものへの期待値が下がりつつあっただけに,この逆転打は長年のファンとしては嬉しいところである。これはMcBrideとSanchezという共演者に恵まれて,不思議なケミストリーが生じた結果と言えるだろう。これを聞いているとMehldauはやはりMethenyに対して遠慮し過ぎたのだと思わざるをえなくなる。

そもそも冒頭の"Son of Thirteen"からリスナーを興奮へと誘う出来である。この曲とか3曲目の"Let's Move"のような曲をやられてしまうともうメロメロである。これはたまらん。

また,アルバムの構成としても飽きないようにプログラムが工夫されていて,大いに楽しめる。アコースティック・ギターはあくまでも美しく,バックも控え目にMethenyを盛り立てているのがよいし,ボサノバ・タッチの"Snova"も雰囲気たっぷりである。9曲目の"Red One"はややMethenyとしては異色な響きで,Wayne Krantzのようにも聞こえるが,途中でレゲエのリズムまで飛び出すある意味新機軸である。いずれにしても全編に渡って3者のコラボレーションが大いに堪能できるアルバムである。

加えて私がこのアルバムに好感を抱くのは,ギター・シンセサイザーの利用が最小限であることや,あの無意味なピカソ・ギターを使っていないこともあるかもしれない。共演のMcBride,Sanchezの好演も嬉しいが,McBrideのソロはどれもよく出来ていて,その実力のほどがよくわかる。Methenyとの相性の良さは意外なような気もするが,うまい人は何をやってもうまい。MehldauもMcBrideぐらいやっていてくれれば...というのはないものねだりか。

たった1日で録音されたこのアルバム,ジャズ的なフレイバーが横溢しているとも言えるが,共演者の好演も含めて,私にはここ数年のPat Methenyのアルバムでは最も楽しめた。ということで星★★★★☆。次はいよいよPMGの出番か。

Recorded on October 19, 2005

Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Christian McBride(b), Antonio Sanchez(ds)

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2008年1月29日 (火)

Warren Bernhardt:元祖スムーズ・ジャズ?

Bernhardt "Manhattan Update" Warren Bernhardt(Novus)

冒頭からしっとりした"Sara's Touch"でスタートするというのがBernhardtらしいと言うべきだろうか。Warren Bernhardtと言えば,一時期Steps Aheadのメンバーだったり,Steely Danのツアー・メンバーだったり(そう言えば浦安のNKホールで見たときにいたなぁ。ドラムスは確かPeter Erskineだったし,サックスはChris PotterだったようなBob Sheppardだったような...)と様々な活動があるが,どちらかと言えばセッションマンとしての活動がメインのように感じられる人である。しかし,DMPレーベルには結構な数のリーダー作も残しているので,日本と本国ではそのイメージに乖離があるかもしれないが,私の中では結構リリカルなピアノを弾くプレイヤーとの印象が強いのはこのアルバムの冒頭の"Sara's Touch"のせいもあるかもしれない。(ちなみにこのアルバムがStepsの"Smokin' in the Pitt"でも演奏される"Sara's Touch"の初演か。)

アルバム全編を通して聴いても,リリカルという印象は変わらない。当時のフュージョン・アルバムにしてはアップ・テンポの曲が少ないのはある意味特殊である。唯一のアップテンポと言ってよいタイトル・トラックがこれまた当時の典型的なフュージョンって言う感じなのは微苦笑を誘うが,普通のアルバムならこれがA面1曲目に座っていそうなものである。また,このアルバムがフュージョン系のものとして珍しいのは,ほぼ固定メンツで録音されていることだろうか。Bernhardtの個性もあるだろうが,それゆえにアルバム全体のトーンが一定なのである。但し,管(普通ならMichael Breckerを迎えるだろう)が入っていないことも影響しているかもしれないが,サウンドはかなり軽く,NYCレコーディングらしい感覚はほとんど感じられない。それがこのアルバムに対する好みを決めるのではないかと思う。ある意味,フュージョンらしい「決め」もあまりなく,耳障りのよいイージー・リスニング系の音楽だと言われても仕方がないのである。

但し繰り返すが,聞き心地はかなりよいので,「ながら音楽」として流しておくにはちょうどよいかもしれない。今にして思えば元祖「スムーズ・ジャズ」みたいな感じだろうか。星★★★。

それにしても,このBernhardt,1938年生まれということだから今年で70歳である。よくよく考えると,これってかなり恐ろしい事実である。まぁでもこのアルバムが吹き込まれたときには40代前半であるから,別に不思議はないか。でもこのときには結構なベテランだったのねぇと妙な感心の仕方をしてしまう私である。最近では自主レーベルでショパンやラヴェルやラフマニノフなんかも録音しちゃったみたいだし,うーむ,捉えどころがない。

Recorded in January 1980

Personnel: Warren Bernhardt(p, key), David Spinozza(g), Mike Mainieri(vib), Anthony Jackson(b), Tony Levin(b), Steve Gadd(ds), Errol "Crusher" Bennett(perc), Pat Rebillot(p, key), Ed Walsh(synth prog)

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2008年1月28日 (月)

Tone CenterレーベルのJeff Beckトリビュートだが...

Freeway_jam "Freeway Jam to Beck and Back" Various Artists (Tone Center)

おなじみTone Centerレーベルのトリビュート・シリーズの最新作はJeff Beckである。私は昔から結構なJeff Beck好きであるが,それは決して衰えることのないKeith Richardsと並ぶロッカーとしての雰囲気や,ギター一本で勝負するそのスタイルに男気を感じてしまうところからと言ってもよい。もちろん,ギター・サウンドが好きだからというのが一番の理由であるが,それにしてもカッコいいオヤジである。

ということで,多彩な顔ぶれによるJeff Beckトリビュートであるこの作品も,ミュージシャンの間でも,そうしたBeckへのリスペクトが顕われているものとは思うのだが,作品としてはあまりよろしくない。何が問題か。相応のミュージシャンを集めたリズム・セクションがバッキングを務めているにもかかわらず,音があまりに軽いのである。それゆえにJeff Beckの音楽が持つヘヴィネスというものが全く失われ,有名ギタリストたちが,Jeff Beckの曲を軽く弾いているだけにしか聞こえないのには失望させられてしまった。これなら以前発売された"Jeffology"というロック系ギタリストによるトリビュート盤の方がはるかにましであったように思える(どこへ行ったかわからんのではっきりとは言えないが...)。

救いはMike Sternが弾く"Diamond Dust"である。曲のよさとMike Sternの個性がある程度マッチしていて,これはそれなりに楽しめる。また,(ジャム・バンド系)John Scofieldらしさが横溢する"Over Under Sideways Down"もそれなりに楽しめるが,私がジョンスコに求めるのはこうした世界ではない。最悪なのはプロデューサー,アレンジャーも兼ねるJeff Richmanが弾く"El Becko"である。同じJeffでもBeckオヤジとは大違いのこのギタリストのせいで,このアルバムはくだらないものになってしまったと言いきってしまおう。はっきり言って私が聞いたいくつかのTone Centerのトリビュートものの中では最悪の出来。星★☆。こんなもんを聞く暇があるなら,Jeff Beckのアルバムを聞いている方がはるかに有益な時間が過ごせる。

Personnel: Steve Morse(g), John Scofield(g), Eric Johnson(g), Adam Rogers(g), Jeff Richman(g), Mike Stern(g), Warren Haynes(g), Chris Duarte(g), Greg Howe(g), Walter Trout(g), Mitchel Forman(key), Stu Hamm(b), Vinnie Colaiurta(ds), Simon Philips(ds)

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2008年1月27日 (日)

Tom Harrellの素晴らしいメロディ・センス

Harrell_2 私が初めてTom Harrellのライブを見たのはNYCのBirdlandでのことだったが,そのときは彼の抱える身体的精神的事情を知らなかったために,見ていて非常に不思議な思いをさせられたものである。ほかのプレイヤーのソロの間はずっとうつむき加減なHarrellが自分のソロになると,鋭いフレーズを連発するという落差に驚かされたというのが事実である。

そのTom Harrellを某所(知っている人は皆知っているが,諸事情を踏まえ,場所も共演者も敢えて書かないことにする)において久々に見る機会があったのだが,Tom Harrellの素晴らしいメロディ・センスは健在であったというのがまずは第一印象。あれだけ暖かい聴衆に囲まれれば,それなりの調子を発揮できるのも当然と言えば当然かもしれないが,フリューゲルを中心に,後半ではトランペットでもよいソロを聞かせていた。

私が感心してしまうのは,Tom Harrellのラッパの音域は決して広いものではない(強烈なハイノートはほとんどに吹かない,あるいは吹けない)にもかかわらず,ある意味限られた音によって紡ぎ出されるフレーズが人の心を掴んでしまうことである。ギミックなしであのフレージングというのは大した才能と言ってもよい。また,ステージで演奏したHarrellのオリジナル,"Moon Alley"も"Sail Away"もそりゃ皆好きだよなーという感じの佳曲であり,作曲の才能も見直す機会となった。

今回も自身がラッパを吹くとき以外は下を向いているか,ステージの袖に引っ込んでいたが,アンコールを求める声を無視するかのように,あくまでも「冗談で」ステージから降りようとする素振りを見せるなどお茶目なところも見せたTom Harrellであった。

今回のライブ,Tom Harrellに気を使ってか,かなりお手軽な選曲ということもできるのだが,そこはHarrell信者の集いのようなものであったから,どうこう言うのは野暮であろう。いずれにしてもこの機会を与えてくれた八木ブラザース(大きい方)にこの場を借りて感謝しておきます。ありがとうございました。

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2008年1月26日 (土)

追悼,Dan Fogelberg

Innocent_age 雑誌を見ていたらDan Fogelbergが亡くなったという信じられない記事が出ていた。2007年12月16日,進行性前立腺がんとの闘病の末のことだったそうである。56歳というあまりに若すぎる死はショックである。彼のWebサイトには次のような記述があった。

"He fought a brave battle with cancer and died peacefully at home in Maine with his wife Jean at his side. His strength, dignity, and grace in the face of the daunting challenges of this disease were an inspiration to all who knew him."

これは彼の人となりを示し,彼を追悼するに最適な言葉であろう。ここは"The Innocent Age"を聞いて,Dan Fogelbergのご冥福をお祈りしたい。まさに「イノセンス」を音楽で体現するような声,そして人であった。合掌。そしてR.I.P.

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Marcin Wasilewski:何ともECM的なECMレーベル作

January "January" Marcin Wasilewski Trio (ECM)

なんともはやECMレーベルのファンが随喜の涙を流して喜びそうな美しいピアノ・トリオ・アルバムである。音数の少ない中で展開される徹底したECMの美学とも言うべきこの演奏は,長年のこのレーベルのファンをも魅了すること間違いなしである。

曲もリーダーWasilewskiのオリジナル(一部メンバーの共作を含む)に加えて,"Cinema Paradiso"(そう「ニュー・シネマ・パラダイス」である)やPrinceの"Diamond & Pearls"なんかが収められているのが,ECMとしては異色といえば異色なのだが,そこはレーベル・カラーの枠にきっちり入った演奏でこれまた嬉しくなってしまう。

音楽としては静謐という表現が相応しいものであり,この音楽にスリルを求めてはならない。録音も含めたピアノの美しい音,それを適切に支えるベースとドラムスのコンビネーションに静かに身を委ねればよいのである。寒風吹きすさぶ今年の冬だが,この音楽を聞いて,じっと寒波が去るのを待つというのもある意味おつである。"January"というタイトルもまさしくそんな感じでいいなぁ。

いずれにしても,Simple Acoustic Trioの名でも知られる彼らのECMレーベルでの2枚目となるこのアルバムは,彼らのECM第1作をはるかに凌駕するものと聞いたし,この1作で私にとってWasileuskiは,Tord Gustavsenと並んで今後のECMを支えていって欲しいピアニストとなった。ECMレーベルのファンのみならず,欧州ジャズのファンにも強く勧めたいアルバムである。久々にECMらしい音楽を堪能したような気がするという満足度を含めて星★★★★★。さすがManfred Eicher,いいところを押さえている。私のツボに完全にはまってしまった。

それにしても,ミュージシャンの名前,どう発音するんだろうなぁ...。ポーランドだからしょうがないか。

Recorded in February 2007

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Stawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

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2008年1月25日 (金)

Dori Caymmi:なごみのブラジリアン・フュージョン

Dori "Kicking Cans" Dori Caymmi(Qwest)

以前,Toninho Hortaについて書いたとき,私はこのアルバムが結構好きなのだと述べた。久し振りにこのアルバムを聞いてみたが,やはりこれは何とも心地よいものであった。

このアルバムは1993年にDori Caymmiが何とQuincy JonesがオーナーのQwestレーベルに,結構豪華なソロイストを迎えて発表したおそらくはアメリカ市場を強く意識したアルバムである。よって曲名も全て英語である。アルバムのタイトルは「缶蹴り」である。何のこっちゃという気がしないでもないが,どことなく郷愁を誘うという考え方も可能か。

ところで,QuincyとCaymmiというのはなかなか結びつきそうにないコンビネーションだが,QuincyがCaymmiの父のDorival Caymmiの音楽を聞いて感銘を受けたと話したのをきっかけにするものとライナーには書いてあるが,まぁそうした背景情報はさておいてもこれはよくできたブラジリアン・フュージョンであり,Caymmiのソフトな(ヘタウマとも言える)ボーカルを聞いていると,時が本当に心地よく流れていって,何とも言えずなごめるアルバムとなっている。まぁ"Brazil"なんてベタな選曲もあるが,ちょいとひねってそこはかとなくマイナー調で演奏をしている。

そして驚かされるのがソロイストの面々(詳しくは下記パーソネルを参照願いたい)。冒頭のBranford Marsalisなんて,非常にソフトにそれっぽく吹いているし,上述の"Brazil"で出てくるHerbie HancockはどうやってもHerbieだったという演奏で,相応に適材適所の配置と言ってよいように思う。

繰り返しになるが,これはフュージョン・ミュージックがブラジル音楽といい感じでクロスしたアルバムとして私は大いに楽しめたし,やはりこの心地よさは捨て難い魅力を今でも持っている。ブラジル音楽の本質からは離れているという批判もあるかもしれないが,よい意味でイージー・リスニング的な香りを漂わせる佳作である。これはフュージョン界の名エンジニア,Don Murrayの録音によるところも大だろう。星★★★★。

Personnel: Dorri Caymmi(g, vo), Don Grusin(key), Gregg Karukas(key), Billy Childs(p), Abraham Laboriel(b), Jerry Watts(b), John Patitucci(b), Claudio Solon(ds), Maichael Shapiro(ds), Paulinho da Costa(perc), Everaldo Ferreira(perc), Yutaka Yokokura(koto), Susi Katayama(accr), Ivan Lins(vo), Arnold McCuller(vo), Kevyn Lettau(vo), Kate Markowitz(vo) with Feautured Soloists: Branford Marsalis(ss), Ricardo Silveira, Teco Cordoso(al-fl), Herbie Hancock(p), Dave Grusin(p)

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2008年1月24日 (木)

トロンボーンのテクニシャン,Conrad Herwigの初リーダー作

Herwig "With Every Breath" Conrad Herwig(Sea Breeze→Ken)

穐吉敏子オーケストラ等のビッグバンド畑で活躍し,最近はCriss Crossレーベルからもアルバムを発表しているConrad Herwigの初リーダー・アルバムだと思われるが,なかなかのメンバーによる演奏を収めたアルバムとなっている。穐吉オーケストラのバンド・メイトJim Snideroとの2管をRichie Beirachトリオがバッキングしており,私がこのアルバムを買った理由はHerwig云々というよりも,この共演のメンツゆえというのが正直なところである。

私はトロンボーンという楽器の真っ当なリスナーではないが,ここでのHerwigの高速フレーズを聞いていると,おー,これはうまいんだろうなぁと思ってしまう。Herwigはこのアルバムを録音した当時,まだ20代後半という年齢だったはずだが,テクニックとしては既に一級品だったと言ってよいだろう。

このアルバムで聞かれるHerwig,Snideroの結構飛ばした演奏も気持ちよいが,ここで注目されるのがBeirachのバッキングである。Beirachは熱いピアノを聞かせており,最近のピアノ・トリオでお茶を濁すBeirachからは想像できない世界である。しかし,昔は結構こうしたごりごりした演奏もしていたのだぁと思ってしまう。ライブ・アンダー・ザ・スカイのColtraneトリビュート然り,Quest然り,Lookout Farm然りである。

こうした演奏を聞いていると,(録音当時の)若手でも演奏のレベルは高いと思わされるが,惜しむらくは録音のせいか(あるいはうちのオーディオ・セットがいかんのか),音が軽いというか音圧が低く,ジャズ固有のゴリゴリ感が薄い。何となく小綺麗にまとまっていると言えばわかっていただけるだろうか。破綻が少ないゆえに文句を言いたくなるというのは贅沢かもしれないが,これでもう少しスリルが感じられる演奏(あるいは音)であればよかったと思う。あと,Ron McClureのベースはちょっと電気的過ぎて趣味ではない音なのも残念。ということでトータルでは星★★★。

尚,このアルバムのライナー・ノートは(サックスの)Bill Evansが書いているが,お友達モード爆発の持ち上げようで,微笑を誘う。私が保有しているのはビッグバンド専門レーベルのようなSea BreezeレーベルのLPだが,ジャケのイメージが見つからないため,CDのジャケをアップしておく。LPのジャケには育ちのよさげなHerwigが写っているんだが...。

Recorded in NYC, circa 1987

Personnel: Conrad Herwig(tb), Jim Snidero(as, ss, fl), Richie Beirach(p), Ron McClure(b), Adam Nassbaum(ds)

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2008年1月23日 (水)

イタリア映画温故知新:「刑事」

Photo 「刑事(Un Maledetto Imbroglio)」 ('59 伊)

監督:Pietro Germi

出演:Pietro Germi, Claudio Gora, Franco Fabrizi, Eleonora Rossi Drago, Cristina Gaioni, Pietro Germi, Claudia Cardinale

警察ものながら何とも哀しげなトーンに彩られた映画である。私が見たのはLD版で,画質も結構ひどいものだったが,現在発売されているDVDでは多少リストアされていることを祈る。

Claudia_3 この映画,何と言っても冒頭から流れる主題歌「死ぬほど愛して(Sinno Me Moro)」の"Amore, Amore, Amore, Amore Mio"というフレーズを聞いているだけで郷愁を誘われる。それだけでもヨーロッパ的であるが,また,ラスト・シーンのClaudia Cardinaleの姿が哀しさを増幅させ,アメリカ映画にはこの味は出せないよなーとつい思ってしまう私である。

筋書きは殺人事件を取り巻く人間模様劇ながら,警察関係者以外で出てくる男が全部情けない奴か悪党である。その一方で,女性は「綺麗」か「魔性」か「薄幸」かというオトコ心をそそるキャラばかりというのもイタリアっぽい。そうした中で,監督,主演を務めるPietro Germi(殺人課の警部役である)はある意味Richard Widmark的な渋さであるが,その一方で女に会えずに電話で言い訳ばかりしている情けないエピソードも挿入されているのが笑いを誘う。

これが本当の名画と言えるかどうかは微妙だが,様々なエピソードを交えながら,当時のイタリアの生活風景を描写した映像はやはり今でも魅力的である。でもやはりこの映画は主題歌とClaudia Cardinaleの哀しげな目が最も印象的ではないかと思う。Cardinaleは後の「ウエスタン(Once Upon a Time in the West)」なんかとは全く違う初々しさながら,もの凄い目ぢからを発揮している。それも含めて星★★★★。

こういうのを見ると,たまにヨーロッパの古い映画も見ないといかんと痛感させられる。やっぱ白黒映画はいいわ。

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2008年1月22日 (火)

Weather ReportとManhattan Transferの共演は...

Playboy "In Performance at the Playboy Jazz Festival" Various Artists(Elektra Musician)

このライブ・アルバムが出てから随分な時間が経過したが,このアルバムのハイライトは今も昔もライブにおけるWeather ReportとThe Manhattan Transfer共演による"Birdland"であることは間違いない事実であろう。私も実はこの2枚組でまともに聞いてきたのはその部分だけのような気がする。今回,この記事を書くために本当に久々に全編を聞いてみたのだが,時代の経過ゆえの感慨もあったのでそれについて書いてみたい。

LP1枚目のA面はPieces of a Dreamの"Take the A Train"から始まるが,そもそも私はこのバンドに関心を抱いたことがないし,彼らのようなフュージョン・グループが敢えてこの曲をやる意義は全く見出せない。彼らは2曲目に入っているその名も"Pop Rock"のような曲をやっていればよいのである。この面ではGrover Washington, Jr.がアルバム"Winelight"から2曲やっているが,彼のサックスの響きがスタジオでもライブでも殆んど変わらないのはある意味驚異的。あのまんまの音がライブの場でも再演されている。

そして注目のW.R./M.T.のコンビが登場するのはB面だが,そのサイドの頭2曲はWoody Shaw入りのDexter Gordon Quintetの演奏が入っている。Woody Shawが惜しくも早逝したのは1989年のことだが,このアルバムが吹き込まれた82年頃というのはまだWoody Shawの活動のピーク期にあった頃で,"Fried Bananas"におけるWoodyの音圧に驚かされる。2曲目の"You've Changed"がDexterのショーケースとなっており,Woodyの出番が殆んどないのは誠に残念。

そしてWeather Reportが単独で"Volcano for Hire"を軽快に決める。Wayne Shorterのテナーが最高である。これはJaco退団後のVictor Bailey~Omar Hakimのリズム隊によるものだが,私はこのメンツはもう少し評価されてもいいのではないかと思っている。今にして思えば"Live Under the Sky"で見た彼らの演奏は結構強烈だった。そしてM.T.入りの"Birdland"の登場となるわけだが,聴衆の熱狂ぶりが凄くて,ほとんど歓声が音割れしているぐらいである。しかしながら,彼らが共演したことによるシナジーを生んでいるかと言えば,それはまた別の話である。別にこれならばW.R.がバックでなくてもいつものM.T.の"Birdland"と大差ないのである。まぁ,どっちが先かはわからないのだが,M.T.がW.R.の"Procession"にゲスト参加していることもあって,結局はこれはフェスティバル特有のサプライズ演出に過ぎない。沢尻エリカではないが,「別に...」って感じの演奏と言っては冷たすぎるだろうか。

2枚目のディスクはまずArt Farmer/Bennie GolsonのJazztetコンビにNancy Wilsonが加わるというものだが,私は申し訳ないがNancy Wilsonの声がどうにも苦手なので,ここは彼女抜きのコンボの演奏を楽しみたい。"Stablemates"や"I Remember Clifford"なんてさすがに手馴れた演奏で楽しめる。Golsonは"Stablemates"で,Farmerは"I Remember..."でショーケース的に吹きまくっている。それでもってやっぱり私はNancy Wilsonはダメ。聴衆には受けているが,これは生理的なレベルの問題なので何も言えない。

最後のサイドDはThe Great Quartetという名前だけ聞けばなんのこっちゃというバンドの演奏だが,このHubbard~Tyner~Carter~Jonesという組合せはMilestone Jazz StarsとMcCoyの"4X4"アルバムからFreddieを引っ張ってきたようなある意味豪華なメンツである。しかし,演奏の方はと言うと,このメンツならではの昂揚感に乏しくてはっきり言って面白くない。まぁこれもフェスティバル向けのお祭りセッションって感じなので,目くじら立てても仕方がないが,ちょいとお気楽すぎやしないか。よかったのは「言い出しかねて」のエンディングのFreddieのソロだけではねぇ。

ということで,このアルバム,メンツの組み合わせ的にも何だかな~というものだし,やっぱりトータルでは今イチである。これでは再発要望も高まらないのは仕方ないか。結局一番よかったのはWR単独の演奏とBenny Golsonだったりして。ということで星★★。

Recorded in June 1982

Personnel: Pieces of a Dream(Curtis D, Harmon(ds, perc), James K, Lloyd(key), Cedric A. Napoleon(b)), Grover Washington, Jr.(as), Richard Lee Stecker(g), Darryl Washington(ds), Leonard "Dr." Gibbs(perc), Dexter Wansel (synth), Dexter Gordon(ts), Woody Shaw(tp), David Eubanks(b), Kirk Lightsey(p), Eddie Gladden(ds), Weather Report(Joe Zawinul(key), Wayne Shorter(ts, ss), Omar Hakim(ds), Jose Rossy(perc), Victor Bailey(b)), The Manhattan Transfer(Tim Hauser, Janis Siegel, Cheryl Bentyne, Alan Paul), Art Farmer(fl-h), Benny Golson(ts), Michael Wolfe(p), James B. Williams(b), Roy McCurdy(ds), Nancy Wilson(vo), Freddie Hubbard(tp), McCoy Tyner(p), Ron Carter(b), Elvin Jones(ds)

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2008年1月21日 (月)

ECMファンも注目すべき新レーベル Inner Ear

Now "Now" Vigleik Storaas Trio(Inner Ear)

輸入盤屋をうろついていたら,大変美しいピアノ・トリオが聞こえてきた。一聴するとECMレーベルの音楽のようにも響く,明らかにヨーロッパのピアノ・トリオである。ジャケはJan Garbarekの"Dis"のようでもあり,よくよく見てみるとInner Earという聞いたこともないノルウエーの新興レーベルである。ご丁寧に「私たちは新興レーベルで,これが3枚目のリリースとなります」と書いてある。

更によくよく見てみると,何と録音はECMでもおなじみのRanbow Studioだし,エンジニアはこれまたECMでおなじみのJan Erik Kongshaugである。ECMのように響くのもむべなるかなという感じである。最近のECMも相変わらずいいのだが,New Series追加以降,昔ながらのサウンド・カラーがそれほど明確とは言えなくなってきたのではないかと思っていた私のようなリスナーが,まさに一聴して気に入ってしまったのである。とういうことで,個人的には注目すべきレーベルの登場と考えざるをえない。レーベル名称は直訳してしまえば「内耳」であるが,それでは身も蓋もないので,「内に秘めた聴覚」ぐらいに訳しておけば,ECMのかつてのレーベル・キャッチコピー"The Most Beautiful Sound Next to Silence"にも通ずるような部分があるようにも感じられるではないか(うーむ,ややこじつけか)。

このレーベル,ToreとRogerのJohansen兄弟がオーナーらしいのだが,出ているアルバムは本作を含めてまだ3枚。今からECMのコンプリートは厳しいが,この新興レーベルなら全部集めてみたくなるような演奏である(ということで,私は一気に3枚購入してしまった)。

いずれにしても,本作はとにかく美しい響き,あるいはそれらしい曲が楽しめるアルバムであり,ヨーロッパ・ピアノ・トリオ好きにはたまらないものではないかと思う。このレーベル,引き続きウォッチしていくこととしたい。まずはご祝儀的に星★★★★★。

Recorded on April 12 & 13, 2007

Personnel: Vigleik Straas(p), Mats Eilertsen(b), Per Oddvar Johansen(ds)

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2008年1月20日 (日)

"Decoy":B面でMilesのファンク爆発

Md "Decoy" Miles Davis(Columbia)

復帰後のMiles Davisのアルバムでどれが好みかと言われれば,"We Want Miles"は別格にして,私はこの"Decoy"というアルバムが結構好きである。次作"You're Under Arrest"になると,ポップさが増し過ぎて,私にはちょっとと言う世界に入ってしまった。もちろん,"You're Under Arrest"の歌心は非常に素晴らしいものだと思うのだが,ファンクネスが後退してしまっていて,非常に微妙なのである。

それに比べれば,このアルバムのファンクネスは素晴らしいし,Milesのラッパもおそらく復帰後随一の「鳴り」っぷりである。特にLPならB面に収められたMiles~John Scofield共作による3曲こそ,私がこの時代のMiles Davisに求めていた音楽だと言ってしまおう。よって,LP時代はこのアルバムはほとんどB面しか聞いた記憶がない。A面は冒頭の"Decoy"や"Code M.D."はいいのだが,そのほかの2曲がテクノの出来損ないのような響きで私には魅力が感じられない。それに比べてB面は"What It Is"の初っ端からDarryl Jonesのスラッピング・ベースが興奮度を高める。これで乗れない人は,ファンク期のMilesを聞いても駄目だろうと言い切ってしまっては暴言かもしれないが,Milesかくあるべしという演奏なのである。思わずアンプのボリューム・ノブを右に回すのは私だけではないはずである。そしてGil Evansがアレンジに絡んだ"That's Right"でスロー・ダウンしながらも,Milesは朗々としたソロを聞かせた後,John ScofieldとBranford Marsalisがなかなかに素晴らしいソロを聞かせる。そして最後の"That's What Happened"にファンクを炸裂させて(ここでまたボリューム・ノブを右に回したくなる)締めるという展開が素晴らしい。ちなみに"What It Is"と"That's What Happened"はライブ音源らしいが,それゆえの熱さという気もするが,この完成度は驚異的である。

こうして聞いてくると,MilesとJohn Scofieldの相性の良さが際立っているように思うし,後のライブでも"That's What Happened"はよく演奏されていたから,Milesもこの曲には魅力を感じていたものと想像される。やはり今聞いても燃えるものは燃える。星★★★★☆。

尚,このアルバムではサックスはBranford MarsalisとBill Evansが参加している(共演はない)が,演奏に両者の個性の違いがよく出ていて面白い。Bill Evansのソロがそれまでの作品と同様のフレージングを感じさせるのに対し,Branfordが違った感覚を持ち込んでいて,ことサックスのパートに限って言えば,Branford参加曲の方が新鮮に響いている。このまま,BranfordがMilesのバンドに参加していたらどういうことになっていたのだろうか。想像するだけで興味深い。

Personnel: Miles Davis(tp,key), Branford Marsalis(ss), Bill Evans(ss), John Scofield(g), Robert Irving, III(key), Darryl "The Munch" Jones(b), Al Foster(ds), Mino Cenelu(perc)

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2008年1月19日 (土)

Duke Pearsonの渋いピアノ・トリオ盤

Pearson "Bag's Groove" Duke Pearson(Jazz Line)

後にBlue Noteレーベルのプロデューサーとしても活躍するDuke Pearsonのアルバムでは,Blue Noteに吹き込んだ"Profile"や"Tender Feelin's"が人気盤として挙げられるのだろうが,同じくピアノ・トリオで吹き込まれたこのアルバムも捨て難い魅力を持つものである。但し,まるで仏像のような格好のPeasonのジャケットで損をしているのはもったいない(これではなかなか買う気が起こらないだろう...)。

このアルバムを魅力的にしているのはPeasonのピアノ・タッチもそうなのだが,収録曲のよさということになるだろう。私にとって最も魅力的に響くのはB面冒頭の"Jeannine"である。私がこの曲を初めて聞いたのはThe Manhattan Transferのライブにおけるボーカル・バージョンだったのだが,そこでなかなかいい曲だなぁと関心を持って聞いたこのPeasonのオリジナル・バージョンは更によかった。ホーン入りバージョンもあるこの曲だが,ホーンによるファンキーな響きよりも,私はこのピアノ・トリオ・バージョンの方が圧倒的に好みである。

そのほかの収録曲も魅力的(特に"Le Carrousel"や"I'm an Old Cow Hand"がよい)だが,最後に収められた"Exodus"(「栄光への脱出」である)が結構しみじみした演奏となっており,意外とよい。曲の特性からすれば,もっと脂っこくなりそうなものだが,決してそうなっていない。Eddie Harrisではこうはいかないのである。

まぁこのアルバムが歴史的名盤かと言えばそんなことはないが,ボリュームを絞って酒でも飲みながら聞くとますますその魅力が増すタイプの音楽であり,ひそかに愛されるべき好盤。星★★★★。

Recorded on August 1, 1961

Personnel: Duke Peason(p), Thomas Howard(b), Lex Humphries(ds)

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2008年1月18日 (金)

Joe Farrell:メンツにしては出来が...

Farrell "Sonic Text" Joe Farrell(Contemporary)

Joe Farrellと言えば,はっきり言ってReturn to Foreverやその他のChick Coreaのアルバム以外で聞く機会はほとんどない。しかし,アルバム"Friends"や"Mad Hatter"所収の"Humpty Dumpty"等を聞いていると,テナーで4ビートを吹かせるとかなりいけるのではないかと思わせる人である。そのJoe Farrellがフロントのパートナーに何とFreddie Hubbardを迎え,全曲メンバーのオリジナルで固めたストレート・ジャズ作である。

冒頭のタイトル・トラックから快調に飛ばしており,うれしくなる出来で期待を持たせる。2曲目の"When You're Awake"も曲は今イチながら,Freddieのフリューゲルホーンが美しく,Farrellのテナーもコクのある表現でなかなかよい。3曲目のFreddieのオリジナル"The Jazz Crunch"ではCablesがエレピを弾いている。曲は普通のジャズ・ロックって感じだし,盛り上がってきたところでフェードアウトしたりと問題ありだが,CablesのエレピはArt Pepperのバックのときとは全然表情が違って面白いと思う。そう言えばCablesは渡辺香津美の"Lonsome Cat"のバックでもエレピを弾いていたなぁ。

B面に移って,"If I Knew Where You're at"でFarrellはソプラノに持ち替えるが,これまた曲が今イチである。続くCablesの"Sweet Rita Suite(Part 1): Her Spirit"ではイントロでは結構盛り上がるかと思わせるが,フルートとミュート・トランペットでのメロディ・ラインにはずっこける。その後のFarrellのフルート・ソロ,Cablesのピアノ・ソロはよいだけに何とかならなかったものか。そして最後は最も長尺の"Malibu"である。この曲は各人のソロがかなりいけていて楽しめるが,なんともTony Dumasのベースがうるさいのが邪魔。

全編を通して聞けば,このアルバム,各人のソロはそこそこ楽しめるが,曲にあまり魅力がないというのが決定的な問題であるように思える。また,このアルバムのもう一つの難点はPeter Erskineのドラムスを殆んど活かせていないところにある。Erskineならもっとこのバンドをプッシュできたはずだが,バンドに化学変化をもたらすだけの影響を及ぼしていないというか,こんなビートばかり叩かされてはどうしようもなかったという気もする。あと,もう少しFreddieが爆発してくれていたならなぁと思う。Freddieが最もFreddieらしいのが最後の曲っていうのももったいない。ということで,このアルバムはこのメンツからすればもう少しいいものにできたはずだが,プロデューサーのJohn Koenigの力不足と言われても仕方あるまい。星★★★。

Recorded on November 27 and 28, 1979

Personnel: Joe Farrell(ts, ss, fl), Freddie Hubbard(tp, flh), George Cables(p, el-p), Tony Dumas(b, el-b), Peter Erskine(ds)

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2008年1月17日 (木)

映像でクライバーを見る歓び

Photo "Beethoven: Synmphonies Nos. 7 & 4" Carlos Keiber / Concertgebouw Orchestra Amsterdam (Philips)

早いものでカルロス・クライバーが亡くなって今年で4年ということになる。しかし,私の脳裏からクライバーの姿が消えたことはほとんどないぐらいの強烈な印象を残した人であった。私は幸運にもカルロス・クライバーを生で3回観ることができたのだが,最初は1986年のバイエルン国立管弦楽団との来日公演で2度,もう1度は在米中の1990~91年シーズンのメトロポリタン・オペラハウスでの「ばらの騎士」でである。Metでは金もないので,座席は天井桟敷ではあったが,$19という破格の(嘘のように安い)値段でクライバーの指揮によるこのオペラを観られたのは本当にラッキーだった。その「ばらの騎士」ではパバロッティが歌手役で1曲歌っていたのも今となってはいい思い出である。

しかし,私の中で最も記憶に残っているのは86年に来日したときに神奈川県民ホールで見たベートーベンの4番,7番の演奏である。本日紹介しているDVDでも同じような姿が見られるが,まさしく踊るがごとき指揮ぶりに私の友人と私はそれこそ血湧き肉踊らされたという感覚であった。はっきり言って,私はベートーベンを聞きながら「乗って」しまったのである。勝手に足やからだが動いていたというのが正直なところである(後の席のお客さん,ごめんなさい)が,それまでレコードで聞いていたクライバーの演奏同様,「躍動感」の塊りのような演奏であるから,それも仕方がないところである。

ここでの映像を見ていても,ライブの場で受けた印象と大きな違いはないので,そうした私の記憶や興奮を呼び戻すのにはこのDVDに収められた演奏で十分である。この強烈なスピード感とダイナミズムに一度身を委ねてしまえば,ほかの大概の演奏では満足がいかなくなってしまうのはある意味当然である。この演奏を「品格」に乏しいと呼ぶ人もいよう。しかし,私はこの演奏の興奮度というものはやはり貴重であると思う。

それほど多くはない私のクラシックのライブ体験の中で,私がその場で本当に「燃えた」のはクライバーのライブと,88年のロンドンにおけるテンシュテット~ロンドン・フィルのマーラー5番(出張中にこれを観られた私は幸福者と言わざるをえまい)をおいてほかにはない。今,映像で見直してもやはりクライバーは不世出の指揮者である。星★★★★★。是非,クライバーの表情を見ながら鑑賞して頂きたい傑作映像ソフト。

Recorded Live at Concertgebouw, Amsterdam on October 19 & 20, 1983

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2008年1月16日 (水)

John Coltrane温故知新

Coltrane "My Favorite Things" John Coltrane(Atlantic)

今更ながら告白してしまうと,私はこのアルバム(LP)を購入してから随分な時間が経過しているのだが,このアルバムのB面は聞いたことがない(あるいは聞いた記憶がない)。結局私にとってはこのアルバムはタイトル・トラックを聞くためにあって,それもColtraneよりMcCoyのピアノが聞きたくて聞いてきたような気がする。このアルバムを京都のYAMATOYAさんで初めて聞いて買おうと決めた瞬間からずっとそうだ。Coltraneの"My Favorite Things"は"Selflessness"版とかでいいのであって,このアルバムには上記のような感覚を抱いていたのだった。

しかし,さすがにそういう聞き方で人生損をしてはいないかと考えるようになって,久々にこのアルバムを通しで聞いてみた。タイトル・トラックの演奏は後年の激しいバージョンに比べれば何ともおとなしいものである。そしてやはりMcCoyのソロがよく,このゆったり流れる6/8拍子が私にとっては何とも心地よい。私はプロフィールにも書いているが,人生で最も回数を見た映画は"The Sound of Music"だが,その中の曲がこうなってしまうのだから初めて聞いたときの驚きたるやなかったが,それでもより激しさを増す以前のこの演奏は今聞けばまだまだ「普通」である。

2曲目の"Everytime We Say Goodbye"はこれまた後のColtraneからは想像もできないような演奏である。ここではソプラノを吹いているが,曲としてはテナーの方がいいような気もするし,ソプラノも捨てがたいと非常にアンビバレントな気分になってしまう。でもこのCole Porterの曲はいい曲である。

B面は2曲ともGeorge Gershwin作であるが,私の中でColtraneとGershwinがうまく結びつかなかったというのも,こちらの面を聞いてない理由になるかもしれない。1曲目の"Summertime"は意表を突いたミディアム・テンポで,Coltraneフレーズのてんこ盛りである。何ともSheets of Soundsなソロではないか。聞いてみてもやはり私はこの演奏を聞いた記憶がない。LPの盤面を見てもプレイバックした様子がほとんどうかがえないほど綺麗なものである。全く勿体ないことをしてきたものである。

そして最後は"But Not for Me"だが,通常バラードで演奏されることが多いこの曲もColtraneはミディアムで演奏している。しかもテーマは崩しまくっており,これは原曲のよさを殺しているような気がする演奏である。アドリブ部は非常にスインギーに演奏しているが,なぜテーマをここまで崩したのかよくわからない。しかし全体的に聞いてみれば,B面も無視するには惜しい(特に"Summertime")演奏であり,自分の不明にまたまた恥じ入ってしまった。反省もこめて星★★★★☆。

Coltraneと言えば"Giant Steps"も何年も聞いていないなぁ。温故知新で近々聞いてみることにしよう。

Recorded on October 21, 24 and 26, 1960

Personnel: John Coltrane(ts, ss), McCoy Tyner(p), Steve Davis(b ), Elvin Jones(ds)

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2008年1月15日 (火)

Blue Man Group:ナンセンスもここまで行けば心地よい

Pink_s 日本で長期公演中の"Blue Man Group"を見に行った。当初1月一杯の予定が,少なくとも4月までの延長が決まったようであるから,大した人気である。

Blue Man Groupの公演は私がNYCに一時期住んでいた頃からやっていたはずである。それもEast VillageのAstor Place Theaterというオフ・オフ・ブロードウェイのようなところ(回りはニューヨーク大学の学生ばかりである)でやっていて,私もいつか行こうと思いながら,結局はこの年になるまで行き損ねていたというのが実態である。しかし,今はBlue Man Groupも増殖し,世界各地で公演をしているようである(メンバーがどんどん増えているということだろう)。

この人気の秘訣は,ほとんど言葉なしに展開される徹底的にナンセンスなパフォーマンスと,バックエンドあるいは彼らが繰り広げる強烈に「ロック」な演奏が世界共通の言語として通用するからだと思う。いずれにしてもここまで笑わせてもらったのは久し振りである。ということで,この人気,おそらくこうした口コミとリピーターに支えられているのではないかと思われるが,関心がある人は行って損はないと思う。

あー,面白かった。私ももう一回行きたくなってしまった。

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2008年1月14日 (月)

レベルの高い日本のビッグバンドの実力を示す好盤

Black_pearl "Black Pearl" 高橋達也と東京ユニオン(Zen)

これは懐かしいアルバムである。懐かしさの源泉はB面2曲目"With the Force of Nature"にあることは言うまでもない。一定以上の年齢の人間ならわかるが,「オレたちひょうきん族」の「ひょうきんベストテン」のテーマ曲である。しかし,それだけでこのアルバムを評価してはならないのは当たり前の話である。

このアルバムのA面はHerbie Hancockのオリジナル3曲をGarnett Brownの編曲で演奏しており,Herbie本人も客演している。一方B面はSlide Hamptonによるアレンジで3曲演奏し,Slide本人に加えてRichie Coleが客演しているのである。件の"With the Force of Nature"を除けば,やはり一般的な注目はHerbie参加のA面に集まるのは当然である。冒頭からスピード感溢れるタイトル・トラックで飛ばし,"Speak Like a Child"でスロー・ダウンし,再度"Darts"で勢いよくというのは流れとして非常によい。但し,"Speak Like a Child"は私としては今イチ(やはりこの曲はオリジナル版に限る)というところなので,どうせならここは飛ばしまくるという選択肢もあったように思う。

一方のB面はアレンジ名人Slide Hamptonであるから,いかにもモダン・ビッグ・バンドと言うべき演奏が続いている。客演するSlide,Richie Coleのソロも快調である。Richieは"Last Tango in Paris"を引用しながらなかなかよいソロを展開している。この頃のRichieは本当に勢いがあった。そして最後がMal Waldron作"Soul Eyes"というのが渋い。スローからアップへの転換を図って,最後にスローに戻すこの名曲"Soul Eyes"でアルバムを締めくくるというのは粋である。

ということで,ゲストの力を借りつつも,A面とB面で随分個性が違う曲をきっちり演奏して,日本のビッグバンドの実力を発揮したアルバムとして本作はもっと評価されてよいし,CD化してもよいのではないかと思う。星★★★★。

Recorded on September 23-26, 1980

Personnel: 高橋達也と東京ユニオン:高橋達也,森口則夫(ts),堀恵二,柳沼寛(as),多田賢一(bs),多田善文,竹田恒夫,大坂潔,河東伸夫(tp),西山健治,松林辰郎,松本治,山崎通晴(tb),金山正浩(p),和田淳生(b),中村秀樹(ds),川野秀俊,大久保博行(g) with Herbie Hancock(p, key),Slide Hampton(tb),Richie Cole(as)

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2008年1月13日 (日)

Toninho Horta:ギターの技が素晴らしい

Toninho_horta "Toninho in Vienna" Toninho Horta (Pao)

ブログのお知り合い,oza。さんがご紹介されていたのを契機に購入したアルバムである。これが相当よい。冒頭から思わず膝を乗り出す素晴らしさのこのアルバム,基本的にToninhoの1本に彼の鼻歌のようなスキャットが加わるという形態のスタジオ録音であるが,Toninhoのギターのうまさをつくづく感じられるアルバムになっている。一部でバイオリンが加わったり,ギターの多重録音があったりするが,あくまでこれはToninhoのソロ・アルバムであり、彼のギターを楽しむべきアルバム。曲も"Summertime"と"Cry Me a River"以外はオリジナル。

このアルバムのToninhoの声を聞いていると,Dori Caymmi(私は彼の"Kicking Cans"というアルバムが好きなのだ)を思い起こしてしまったが,ブラジリアンにはそれなりに共通項があるということだろうか。ただ,このスキャットというか鼻歌,多少好き嫌いがわかれるところではないかと思う。私は決して嫌いではないが,あんまりやり過ぎてもねぇというところはある。Toninhoのギター・テクニックをすれば,ギター1本でも勝負できるはずであり、私はもう少し減らしてもいいように思う。

それにしても,oza。さんも書かれているとおり,このアルバムでは録音の良さゆえに左手の運指がかなりリアルに伝わってくる。私のような凡庸なギタリストには,一体どう弾いてんねんというところもあるが,これも楽しみの一つであろう。

最後に文句を一つ。このアルバムのライナーは一体何が言いたいのかよくわからないもので,このアルバムとほとんど関係のないことがずらずらと書いてあるのはいかがなものか。ライナーもCDの一部だということを全く理解していないライターが書いたとしか思えぬまさしく駄文(だから無署名なのだろう)なので,これは減点対象とせざるをえない。Toninhoには何の責任もないが,半星減点して星★★★★。

Recorded on May 12, 2005 and May 15, 2006

Personnel: Toninho Horta(g, vo), Rudy Berger(vln)

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2008年1月12日 (土)

Bobby ShewとTom Harrellによるトランペット・バトル

Bobby_shew "Playing with Fire" Bobby Shew Quintet (Mama)

最近,巷(と言っても一部かもしれないが)で何かと話題のTom Harrellが参加した2トランペットによるバトル・アルバムである。いかにもバトルと言うべき演奏が繰り広げられていて非常に楽しめるアルバムである。

私がもともとこのアルバムを買ったきっかけは学生時代から馴染みのジャズ喫茶で聞かせてもらったことだが,その段階からほとんど「一聞き惚れ」みたいな感覚だった記憶がある。そもそも私は昔からBobby Shewが好きで,秋吉敏子がプロデュースした彼の初リーダー作"Debut"(Discomate)は結構長いこと探しまわってゲットしたのも懐かしい。ということで,私がこのアルバムを買ったのももとはと言えばBobby Shewのアルバムだったからと言っても過言ではないのだが,それ以上に演奏が熱いのである。ある意味Bobby Shewのキャラよりもはるかに熱い演奏と言ってもよいだろう。ShewとHarrellに急速調の曲で2小節交換なんかをやられてしまえば,興奮度が高くなるのは当たり前である。二人とも飛ばしまくっている。尚,奇数番目の曲ではShewのソロが先発,偶数番目の曲ではHarrellが先発というのも何とも麗しいミュージシャンシップではないか。

こうしたアルバムが,録音された1986年からリリースされた1997年まで10年以上眠っていたというのは,今にしてみれば信じ難い事実である。それも発売したのがMamaのようなある意味商売っ気抜きの会社というのも,米国のレコード業界の実態を示すようなものであるが,このアルバム,もっと多くの人に知ってもらいたいものである。とにかくこのアルバムを世にリリースしたMama Foundationと私に聞く機会を与えてくれたお店のマスターに感謝,感謝。

それにしても燃えるこのアルバム,その興奮度とTom Harrellの昨今の話題を含めて星★★★★☆。メンツも録音された1986年というタイミングを考えれば意表を突いているので要注目。

Recorded on September 17, 1986

Personnel: Bobby Shew(tp, flh), Tom Harrell(tp, flh), Kei Akagi(p, el-p), John Patitucci(b), Roy McCurdy(ds)

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2008年1月11日 (金)

Chick Corea 5 Trios(ディスク3):バランスの取れたトリオ

Chick_chillin "Five Trios: Chillin' in Chelan" Chick Corea (Stretch)

Chick CoreaのFive Trioシリーズ。今回はディスク3。タイトルにあるようにWashington州Chelan(どこにあるかはよく知らん)のワイナリーで録音されたライブ盤。今回はメンツがメンツだけにかなりストレートなジャズ演奏が聞かれ,私はこのBoxシリーズで評価した2枚(ディスク4及び5)よりは随分と楽しめた。

McBride,Ballardという鉄壁と言ってよいリズム隊に乗って,Chickのフレージングも非常にジャズっぽく迫る演奏である。McBrideは昔からアルコが結構うまい(彼がまだティーンエージャーの頃,Bradley'sで初めて見た時はそれこそ目が点になった)が,ここでも"Sophisticated Lady"で見事なアルコを聞かせる。これだけアルコで弾いたのは久し振りではなかろうか。ドラムスのBallardはやや叩き過ぎという側面もあるし,スネアのチューニングがちょいと軽いようなのは気になるが,ピアノ・トリオにおけるドラムスの煽り方としては結構な出来だと思う。さすがだてにBrad Mehldauが雇ったわけではないと思わせる。

このアルバムは収録曲もChickのオリジナルのほか,有名ジャズメンのオリジナルが多く収められて