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2007年10月31日 (水)

素晴らしいChristine McVieのソロ・アルバム

Mcvie ゛Christine McVie゛ Christine McVie(Warner Brothers)

当時人気絶頂を誇ったFleetwood MacのChristine McVieが1984年にまさに「満を持して」リリースしたソロ・アルバムである。それ以前の彼女のソロ・アルバムはまだChicken Shack時代(1970)の゛Christine Perfect Album゛に遡るので,いかに久々かというのは言わずもがなであるが,これが素晴らしい出来である。

Fleetwood MacにおいてはStevie NicksとChristineの女性2本柱のボーカルが魅力だったが,一般に人気があったのはその見た目からしてもStevieの方である。しかし,私にとってはその声の魅力からしてもソングライティングの才能からしても,はるかにChristineの方を評価している。このアルバムも佳曲満載,Christineのポップ・センス全開の傑作となっている。冒頭の゛Love Will Show Us How゛からワクワクするようなサウンドである。スマッシュヒットした゛Got a Hold on Me(恋のハートビート)"ももちろんよいが,その他も全曲に渡って駄曲がない。

このアルバムはClaptonやSteve Winwood等のゲスト参加に目が向きがちだが,基本的には4ピースのバンドが演奏の骨格を成しており,これがタイトによくまとまっているのがこのアルバムを成功に導いた一つの要因であろう。また,名プロデューサーRuss Titlemanのツボを得たプロデュースも見逃せないところであり,全編を通じてだれないというのは大したものである。(と言うよりも,Titlemanのプロデュース作はほとんど私のテイストに合致しているので,私にとってはいいのはある意味当然なのだが...)

そうは言いながら,Steve Winwoodのこのアルバムへの貢献は大きく,全5曲に参加,特に゛One in a Million"ではソウルフルなリード・ボーカル(つまりChristineとのデュエット曲である)も聞かせており,これがまたたまらない出来なのである。

Christineはその後,Fleetwood Macを脱退,一時的に゛The Dance゛でMacに復帰したもののの,それからは2004年にひょっこりとアルバム゛In the Meantime゛をリリースしたぐらいである。しかし,このアルバムを聞けば,まだまだ現役で頑張って欲しい歌手であると思わざるを得ない。星★★★★☆。

Personnel: Christine McVie(vo, key, perc), Todd Sharpe(g, vo), George Hawkins(b, vo), Steve Ferrone(ds, perc) with Lindsay Buckingham(g, vo), Eric Clapton(g), Ray Cooper(perc), Mich Fleetwood(ds), Eddy Quintela(key), Steve Winwood(vo, p, key)

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2007年10月30日 (火)

Freddie Hubbardの未発表ライブ音源

Hubbard ゛Fastball: Live at the Left Bank゛ Freddie Hubbard (Hyena)

HyenaレーベルのLeft Bankでのライブと言えば,Stan Getz盤を思い出すが,Getz盤と時期は随分と異なるが,同じ場所でのFreddie Hubbardのライブ音源が出ている。Freddieと言えば,リスナーを燃えさせるフレージングで私も好きなラッパだが,このライブ盤は今イチである。

どうもこのアルバムでのFreddieは勢いまかせというか,相変わらず威勢はいいのだが,フレージングがあまり面白くない。また,せっかく結構いいメンツを揃えているのに,それを活かしていないのも気になる。Kenny Barronは結構ソロ・スペースをもらっているが,Bennie Maupinなんて全然目立っていない。これがMaupinの実力と言ってしまえばそれまでだが,そのMaupinもLee MorganとのLighthouseでのライブはずっとよかったから,これはFreddieとの相性の問題かもしれない。

Freddieはリーダーとしては決定的な傑作を残していないように思えるが,これがリーダーとしての彼の限界のように思えてきた。結局,彼はプレイヤーであって,リーダーではないのだろう。プレイヤーとしてのFreddieを活かすためには,同等あるいはそれ以上のパートナーかリーダーが必要だったということであろう。Jazz Messengers,あるいはVSOPやHerbie Hancockの゛Maiden Voyage゛で光っていたのは,リーダーのBlakeyやHancockゆえという側面を感じざるをえない。ということで,星★★☆。このCD,値段が安かったから文句はないが...。(十分言っている?)

Recorded Live at the Famous Ballroom, Baltimore, on April 23, 1967

Personnel: Freddie Hubbard(tp), Benny Maupin(ts), Kenny Barron(p), Herbie Lewis(b), Freddie Waits(ds)

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2007年10月29日 (月)

Keiko Leeによるポップ・ソング・カバー集

Keiko_lee ゛In Essence゛ Keiko Lee(Sony)

私はKeiko Leeのファンというわけではないのだが,前作のHank Jonesと吹き込んだ「ベイシー」でのライブは素晴らしい出来だった。そのKeiko Leeによる新作は私は完全に収録曲で買ってしまったようなものである。目が点になるようなポップ・チューン揃いであり,Keiko Leeのディープ・ボイスでこれらの歌を歌ったら一体どうなるのだという興味があったからである。

オリジナルを歌っている人々の名前を挙げれば,Bill Withers,Michael Jackson,Bonnie Raitt,Patti Austin,James Ingram,George Benson,Stevie Wonder,Donny Hathaway,Boz Scaggs,Doobie Brothers,Carol King,Bee Gees,Simon & Garfunkelである。これは参ったかという曲目である。全体的にKeiko Leeは力を入れずに軽く歌っているように思えるが,出来はいいものもあれば,悪いものもあって,全体的な評価は微妙。

特にいかんのが,Michael Jacksonの゛Off the Wall゛からの゛I Can't Help It゛である。これは全く彼女の声とミスマッチで,どうも居心地が悪いこと甚だしい。逆によかったのが,"That's Enough for Me゛で,私はこの曲はLee Ritenourのインスト・バージョンで聞いていたが,このボーカル版はなかなかよい。オリジナルのPatti Austinのアルバム゛Havana Candy゛が聞きたくなってしまった。そのほか,゛I Can't Make You Love Me"は彼女の声にぴったり(Bonnie Raittもハスキー・ボイスだから当然か)だし,ギターだけをバックに歌うという意表を突いたアレンジの゛One Hundred Ways゛も面白い。゛Someday We'll All Be Free゛もはまっている。ということで,ポップス・ファンも結構聞けるアルバムとして,評価としては星★★★☆としておくが,これをジャズ・ボーカルと呼ぶのにはやや無理があるように思う。私はこのアルバムを聞いていて,70年代のGRPレーベルのような雰囲気を感じてしまった(Angela Bofillのアルバムの伴奏だけ残して声をKeiko Leeに変えたという感じである)と言えば,わかる人にはわかってもらえるかもしれない。よって,カテゴリーなんて関係ないという人にはある程度受けるだろうということである。

尚,ゲスト・ソロイストとしてDavid SanbornとRandy Breckerが参加しているが,Sanbornは昔のような歌心が感じられなくなったように思う。むしろRandy Breckerの方が好演と言えるだろう。

Recorded on June 3-8, 2007

Personnel: Keiko Lee(vo, p, key), 吉田次郎(g), 松木恒秀(g), RomeroLubambo(g), A.T.N. Stadwik(key), 野力奏一(key), Carl Carter(b), Oliver Gene Lake, Jr.(ds), Cyro Baptista(perc), David Sanborn(as), Randy Brecker(tp), Ole Mathisen(ss, ts), Marlon Saunders(vo), Lenora Zenzarai Helm(vo)

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2007年10月28日 (日)

突然Joni MitchellとJames Taylorの共演ライブ盤現る!

Joni_james ゛The Circle Game゛ Joni Mitchell & James Taylor(Woodstock Tapes)

CDショップをうろついていたら,どう聞いてもJoni MitchellとJames Taylorの,それも若い頃の声としか思えない音が聞こえてきたので,何事かと思って見てみると,題記のCDがかかっていた。Joni復活に伴うJoni見直しの機運に乗って,Neil YoungのArchiveシリーズのような乗りかと思ってしまったが,いずれにしてもこれはファンとしては買わざるをえないと思ってしまった。

この音源,実は昔からブートでは出まわっていたものであるが,今回の発売元であるWoodstock Tapesなる会社も相当怪しい。会社のWebサイトもないし,真っ当なCDショップに入ってきていると言っても、これもブートと言ってしまえば所詮はブートである。しかし,今回BBCで放送された曲目だけながら,プレスCDだし,値段も手頃,パッケージもデジパックでそれなりにしっかり作ってあるし,放送音源ゆえ音も悪くない。そして何よりもCDショップで聞いた音楽があまりにもよかったので,私は迷うことなく即購入である。

演奏はJoniのソロ,Taylorのソロ,二人のデュエットから構成されているが,何とも若々しい声ではないか。現在のJoniのスモーキー・ボイスとは全く異なる世界だが,昔はこうだったんだよなぁと思わず郷愁にひたってしまった(胸キュンという死語を使ってもよい...)。こういう共演の音源を聞けただけで私は星★★★★★(音楽を真っ当に評価すれば星は減るが,あくまでもノスタルジーも含めて)である。

Recorded Live at Royal Albert Hall, London, on October 28, 1970

Personnel: Joni Mitchell(vo, g, p), James Taylor(vo, g)

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2007年10月27日 (土)

私をアメリカン・ミュージックへと誘ったCSN&Yのライブ

4_way_street ゛4 Way Street" Crosby, Stills, Nash & Young (Atlantic)

私は結構子供の頃から洋楽にはまっていた(もちろん歌っている内容などわかるわけはないが)方だとは思うが,BeatlesやCarpentersを経てDeep Purpleにはまり,そしてなぜかYesに走ったという相当おかしな道程をたどってきた。それが中学生ぐらいまでである。その私をアメリカン・ロックの道へ引きずり込んだのがこのアルバムである。CSN&Yをアメリカン・ロックと呼ぶことに語弊があるなら,アメリカン・ミュージックと言ってもよい。

私がこのアルバムを初めて耳にしたのは後に私も住むこととなる従兄の下宿だったのだが,そのときの印象はあまりに鮮烈であった。これほど一瞬にして私の心を捉えた音楽はそう多くはない。特にLPで言えば一枚目のアコースティック・サイド,中でもNeil Youngの声と歌には私はまいってしまったのである。このアルバムのロック的な演奏はLP2枚目に片寄せされているから,このLPの1枚目ばかり聞いている私が誘われたのはやっぱりSSWあるいはアメリカン・ミュージックの世界なのだろう。

それにしてもNeil Youngである。LPで言えばB面の゛Cowgirl in the Sand" と"Don't Let It Bring You Down゛で決まりである。今はCDとなったこのアルバムだが,1枚目のこの2曲目が現れる瞬間こそが今でも私にとっての至福の瞬間である。

CDになって,LP収録曲にプラスして各メンバーのフィーチャー曲が4曲追加されたが,私にとってははっきり言ってそれは蛇足以外の何物でもないし,はっきり言ってなくてもよいように思える。私にとっては,オリジナルに従ってNeil Youngを楽しむことこそがこのアルバムの真っ当な聞き方であり,作法である。そうした聞き方をする限りは星★★★★★以外の評価はありえない。また,ロック・サイドとも言うべき2枚目のディスクにおいても,ハイライトはYoung作の゛Southern Man゛と"Ohio゛である。ギター・ソロはいい加減なものだが,この熱さが重要なのである。

それにしてもこのアルバムに収められた聴衆のひどいリズム感だけは何とかならないものか。アメリカ人はもう少しまともなリズム感を持っていると思っていたが,ここに集ったおそらくはアングロサクソン系白人はリズム感が最低な手拍子を連発し,集中をそぐこと甚だしい。ださださのニューミュージックのライブ盤かっ?と悪態の一つもつきたくなるのが自然な反応だと思うが,私の思い込みだろうか?

Recorded in Live in 1970

Personnel: David Crosby, Stephen Stills, Graham Nash, Neil Young with Johnny Barbata(ds), Calvin Samuels(b)

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2007年10月25日 (木)

非常に渋いユニットであるAzimuth

Azimuth ゛How It Was Then... Never Again" Azimuth (ECM)

ピアノ,ヴォーカル,トランペットという異色の編成のAzimuthの現在のところの最新作のはずだが,それでも発売から既に12年経過してしまっている。しかし,そうした歳月の経過を感じさせないのがこのグループのよいところである。ECMには計5作のAzimuthの音源があるが,どれを聞いてもはずれはない。

スタイルが特殊なだけにサウンドも古びようがないということもあるのだが,本作を久し振りに聞いてみて思うのが,Kenny Wheelerの音色とフレージングが素晴らしいということである。TaylorのピアノとWinstonのヴォーカルの間を縫って,絶妙かつ鋭いフレーズで切り込んでくるのである。

これをジャズ的と聞かれれば,決してそんなことはなく,ある意味ではアンビエント的な響きもある。私としてはまさにECM的だと言いたくなるような演奏であるが,John Taylorは同じECMでのPeter Erskineのトリオのときとはかなり雰囲気が違っているが,ピアノの響きは大変美しく,これはこれで相当楽しめる。゛Whirlpool゛に聞かれる彼ら3人のコラボレーションなど絶妙であり,はまるとなかなか抜けられない世界だと私は思っている。星★★★★。

本作が発売されるまでの,前作とのインターバルも10年あったが,復活の可能性はないのだろうか。彼らの現在形を聞いてみたいような気もするし,どこかのボランティア精神溢れるプロモーターが日本に呼んでくれないものか。日本にはECMマニアが相当数いるので,それなりに客席はうまると思うが...。まぁそれはありえない話か。

それにしてもこの作品の国内盤が発売されたというのは今にしてみれば信じがたいような気もする。

Recorded in April, 1994

Personnel: John Taylor(p), Norma Winston(vo), Kenny Wheeler(tp flh)

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2007年10月24日 (水)

「また逢う日まで」と言っても尾崎紀世彦ではない!

Photo 「また逢う日まで」('50 東宝)

監督:今井正

出演:岡田英次,久我美子,滝沢修,風見章子,杉村春子

先日,「青い山脈」についてこのブログに書いたが,あれ以来というわけでもないが,昔の日本映画が気になって仕方がなく,今回は「青い山脈」と同じ今井正監督の「また逢う日まで」を見た。タイトルを見て誤解してもらっては困るが,尾崎紀世彦のヒット曲にあやかった映画ではなく,1950年制作のれっきとした反戦的ラブストーリーである。同じ今井正監督でも,「青い山脈」が健康的なリベラリズムに満ちていたのと違い,こちらの映画は随分と暗いトーンに満ちている。これが実は今井正の本質なのか?

同年のキネマ旬報のベスト10で,この映画が「羅生門」を抑えてトップという事実には驚かされるが,この映画,悲劇的なラブストーリーとしては確かによく出来てはいる。ただ岡田英次の台詞回しがあまりにも素人っぽくて私としてはのめり込めない部分も多々あった。久我美子は現代で言えば沢口靖子的な美人ぶりだが,いずれにせよ,彼ら二人は相当にバタくさい。そんな彼ら主役二人よりも誰よりも私を泣かせたのは,久我美子の母親役の杉村春子である。あれだけの出番で,最もこのドラマを際立たせたのは杉村春子と言いたいほど素晴らしい。ラストのラストでついに私の涙腺をゆるませたのは杉村春子の動きそのものなのである。

岡田英次の父に扮した滝沢修の格好のよさにも頭が下がる。ラスト・シーンの一瞬の演技にこの人の名優ぶりを思い知らされた思いである。また,私の同時代的には母親女優であった風見章子の当時の美形ぶりにも驚かされた。

この映画の名シーンとして知られるガラス越しのキス・シーンはこの時代性を理解しない限り,「何のこっちゃ」となるわけだが,こうした純情な時代も過去には存在していたということである。即物的なAVとは対極にある世界とでも言いたいが,今の若者にこのシーンを見せてもその意味はきっと理解できないのだろうなぁなどと考える私も相当にオジンくさい。

いずれにしても,メロドラマの王道としては「哀愁」的,男女のすれ違いでは「めぐり逢い」的とも言える作品である。終戦後の厭戦気分という世の中を反映したことが,おそらくはキネ旬1位につながったということのように思えるが,個人的には星★★★★ぐらい。

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2007年10月23日 (火)

Phil Woods:祝Michel Legrand来日ってわけではないが...

Phil_woods ゛Images゛ Phil Woods / Michel Legrand and His Orchestra (RCA)

誰も予想していなかった来日(エンニオ・モリコーネもそうだったが...)を控えて一気にMichel Legrandに対する注目度が高まっているのに呼応するわけではないのだが,今日はこのPhil WoodsとMichel Legrandの共演盤について書いてみたい。

まずはこのジャケットである。これを見ただけで普通のジャズ・ファンはこのアルバムを買う気をなくすだろうが,ある意味,このジャケットは音との整合性が保たれているという気がしないでもない。即ち,これはもはやジャズ・アルバムと言ってよいかどうか疑問だからである。音楽としては,明かなオーバー・アレンジメント(やり過ぎ!)であり,かなりイージー・リスニング的なのは否定しようのない事実だから,そもそもこのアルバムはストレートなジャズではありませんよとこのジャケットが語っているようにも思える。

しかし,ここでのPhil Woodsの「朗々と」という表現が適切なアルトのトーンを聞けば,ジャズがどうこうとか,アドリブがどうこうということはどうでもよくなって,これはこれでいいアルバムなのではないかと思わせてくれるのだから不思議である。だって,「風のささやき」に「おもいでの夏」ですよ。それに゛Song for You゛や"We've Only Just Begun゛なんて曲をWoodsのアルトで吹かれたら,それはポピュラー畑の音楽が好きだったら,これは参ってしまうのは仕方がないのではないか。

私はこのアルバムでのWoodsのトーンは十分魅力的なものと思うし,そもそも曲がいい。ケチをつけようと思えばいくらでもつけられるが,それをするかしないかは「踏み絵」のようなものかもしれない。私は様々な音楽の中で,ジャズを最も愛好しているのは事実だが,幅広い音楽を聞いているリスナーなら,このアルバムには文句は言わないと思うのだが,ジャズ原理主義者はそうは行くまい。だからこそ「踏み絵」だと言うのだが,本来,多様なスタイルを吸収することができるのがジャズの魅力でもあり,私にはこんなアルバムがあってもいいと思う。

まぁA&MレーベルでのWes Montgomeryの諸作におけるWesのギターの代わりに,Phil Woodsのアルトが入っていますぐらいで考えればいいのではないかと思う。とは言え,私はDon SebeskyよりここでのLegrandのアレンジの方がフィットするが...。但し,冒頭のパイプ・オルガンには驚かされ,かつのけぞった。星★★★☆。

Personnel: Phil Woods(as), Michel Legrand(p, arr) and his Orchestra

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2007年10月22日 (月)

ちょっと仕事の話を...

Umpqua1 ずーっと趣味の話ばかりを書いてきたこのブログであるが,ちょっと気分を変えて,私の仕事の一部についても書いてみたい。私は仕事で金融機関の店舗をリデザインするということに取り組んでいる(それだけではないが...)。私の父は昔,内装屋(格好よく言えばインテリア・ショップ)を営んでおり,私は昔から内装に接することが多かったこともあるのだが,何とも因果を感じるこの頃である。私の母も,「何が役に立つかわからへんなぁ」などと妙な関心の仕方を示している。

そんな私の金融機関の店舗に対する考え方に大きな影響を与えたのが,米国オレゴン州を本拠とするUmpqua Bankである。以前このブログで「銀行が盛り上げるローカル・ミュージシャンたち」という記事を書いたのだが,そこに書いた銀行こそが実はそのUmpqua Bankなのである(その記事では銀行名は意図的に書かなかった)。

この銀行は,その斬新な店舗デザイン(この写真を見よ!誰も銀行とは思うまい。ラックなんてバックライトが当たっている!))もさることながら,ローカル・コミュニティとのつながりを重視する姿勢や,行員の素晴らしいサービス・レベル(何と言っても笑顔や接客の態度が素晴らしいのだ)で,非常に大きな効果を上げている。私はこの銀行にCustomer Experienceという概念の真髄を見ていると言っては大袈裟かもしれないが,日本の金融機関には大いに見習って欲しい銀行である。私はこの銀行の店舗を訪れる度に啓発されるところ大である。11月にはまた新たな取組みの店舗が開く予定なので,今からPortlandを訪れるのが楽しみである。

今後,たまにはこうした記事も当ブログにアップしていこうと思う。まぁ関心のある人は少ないだろうが...。

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2007年10月21日 (日)

Chris Potter Undergroundのライブ作

Chris_potter ゛Follow the Red Line: Live at the Village Vanguard" Chris Potter Underground (Emarcy)

Chris Potterがベースレス編成の゛Undreground゛をリリースしたのは2006年初頭のことであったが,その彼が今回は名門Village Vanguardでのライブを発表した。私は゛Underground゛が発表された時にAmazonに次のようなレビューを投稿した。

『Chris PotterがWayne Krantz(g),Craig Taborn(Rhodes),Nate Smith(ds)という異色のメンバー,編成(2曲でAdam Rogersがギターで加わる)でのぞんだ作品である。冒頭からSteve ColemanらM-Base的なサウンドに驚かされるが,全編を通して聞いてみると,これだけとがったメンバーで演奏する必然性は残念ながら感じられないし,TabornのRhodes低音部にベースを代替させた効果も疑問。確かにこれまでのPotterとは異なるイメージを打ち出した意欲作ではあるが,若干上滑り気味と評価せざるをえない。KrantzとTabornがいれば,より丁丁発止の演奏を期待するというのが人情というものだろう。収穫はNate Smithの鋭いドラミング。』

ということで,期待が大きかっただけにやや肩透かしを食ったというのが正直な感想だった訳だが,今回はVanguardでのライブということもあって,より熱い演奏を期待するのは当然である。今回のギターがWayne KrantzでなくAdam Rogersというのはやや残念であるが,私は前作よりも今回の作品の方が好ましく感じられる。

その評価はやはりライブならではのダイナミズムゆえということになろうが,Potterのフレージングも前作よりもはるかにダイナミックに聞こえるのがよいし,聴衆も相当の反応を示している。前作同様ここでもNate Smithのドラミングがバンドをドライブさせており大変素晴らしいが,TabornはFender Rhodesでいい音を聞かせているものの,サウンド的にはもう少し暴れてもらってもよいような気がする。しかし,前作よりはこのTabornの方がよいことは間違いない。Adam RogersはKrantzほどの変態感はないが,まぁまぁ善戦しているというところである。ただし私はやはりWayne Krantzでこのバンドのライブを聞いてみたいところである。それもVanguardよりもより下世話な55Barがこのバンドには相応しいかもしれない。

私は前作は星★★★という評価だったが,本作はライブならではの熱さを評価して星★★★★☆としよう。今回のリリースを契機に久し振りに前作を聞いてみてみることにするか。また違う感覚があるかもしれない。

ところで,バック・インレイに書かれた曲の収録時間が,実際よりもかなり短く記載されているのはなぜなのか?謎である。

Recorded Live at the Village Vanguard on February 15-17, 2007

Personnel: Chris Potter(ts, b-cl), Craig Taborn(el-p), Adam Rogers(g), Nate Smith(ds)

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2007年10月20日 (土)

出張中に見た映画(2)

Confess_of_pain 「傷だらけの男たち(Confess of Pain))」(香港,'07)

監督:Andrew Lau, Alan Mak

出演:Tony Leung Chiu Wai, 金城武, Jing Lei Xu, Shu Qi

出張中に見た映画シリーズの第2弾であるが,香港映画っぽく何とも暗いトーンに包まれた映画であった。「インファナル・アフェア」がハリウッドでリメイクされ,「ディパーテッド」となり,オスカーまで取ってしまったが,この映画もレオナルド・ディカプリオでリメイクされることが決定されているとのことである。こうした事実は香港映画の質の高さを裏付けるのではなく,ハリウッドの才能が枯渇し始めていることを示しているだけだと言いたい。おそらくディカプリオは金城武が演じた役を演じるのだろうが,それがどうしたと言っておこう。

まぁ映画の筋としては,大したことのない話なので詳しくは触れないが,この映画の特徴としてフラッシュバックの多用があるものの,これはやや使い過ぎというレベルに達しており,ややしつこさを感じさせる。また,もう1人の主役であるとトニー・レオンは金城武に花を持たせるかのような役割に留まっていて,両者の演技比べというようなレベルにはならないのがもったいないような気がする。

さらに映画のクロージング・テーマが日本の配給元であるAvexに気を使ったか,浜崎あゆみなのには笑ってしまった。映画には余韻というものが必要なのであって,浜崎に何の魅力も感じない私にとっては,「何だかなぁ~」というセレクションである。いずれにしても,金城武は健闘しているものの,映画としてもシナリオとしても「インファナル・アフェア」の方がはるかによく出来ており,この作品は可もなく不可もなくという程度の出来である。ということで星★★★。

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2007年10月19日 (金)

GRPレーベル版Beatlesトリビュート

Grp_beatles "I Got No Kicks Against Modern Jazz" Various Artists (GRP)

先日,NYCレーベルのギタリストによるBeatlesトリビュート盤を取り上げたが,今回も同様のコンピレーションとして,GRPレーベルのBeatlesトリビュート盤を取り上げることにしたい。

GRPレーベルは,Dave GrusinとLarry Rosenが設立したレーベルとして古くはEarl KlughやNoel Pointer等をリリースしていたのが70年代のことである。それが急速に契約アーチストを拡大したのが90年代。その頃のレーベル・パワーは強烈であった。95年でLarry Rosenが社長職を退いてからは,契約アーチストも減ってしまい,その当時に比べると,現在のGRPレーベルってどうなのよって感じになってしまったが,一時期のスムーズ・ジャズにとどまらず,より幅広い音楽をサポートしてきた意義は決して小さいものでない。結局,Dave GrusinとLarry Rosenの人徳でミュージシャンが契約していたのではないかと思われる。

それはさておき,このアルバムはGRPレーベルの最後の豪華作と言っても過言ではないぐらいのプレイヤーが集まって,Beatlesの曲を演奏したものであるが,私個人としてはNYCレーベルの方のギター・トリビュート版の方を評価している。理由はいろいろあるのだが,冒頭のGeorge Bensonによる"Long and Winding Road"からの激唱ぶりにのけぞらされてしまうのがその最たる理由と言ってはBensonに酷か。それ以外にも理由があるとすれば,全般として演奏がお手軽に聞こえるという点だろう。これだけの豪華メンツが集まった割りに演奏の個性が希薄かつあまりに予定調和的で,もう少しそれぞれのミュージシャンならではのBeatles解釈が聞きたかったような気がする。それだけ曲の力が強過ぎるということの表れと言ってもよいかもしれないが,これだけの人たちなのだからもう少し何とかなっただろうという気がする。特にがっくりくるのがChick Corea版"Eleanor Rigby"である。この程度の解釈ならChickが弾く理由はない。期待が大きい分,がっくり感も強くなるのである。

その中で,結構いいのがDiana Krallの"And I Love Him(原曲はもちろん"Her"だが,女性シンガーの慣わしとして"Him"と歌っている)"やRamsey Lewisの"Michelle",スインギーに決めるArturo Sandovalの"Blackbird"ってところだろうか。最後のDave Grusinによる"Yesterday"は例のメロディが出てこない限り,Grusinの自作のように響かせて健闘しているのだが,やっぱりあのメロディ・ラインが出てくると,個性が失せるように聞こえるのがこの曲の恐ろしさというところだろう。 全体的には悪くはないものの,それでも星★★★が限界である。

尚,国内盤には木住野佳子による超ストレートな"Imagine"が収録されている。

Personnel: George Benson(g), McCoy Tner(p), Groove Collective, Diana Krall(vo, p), Tonm Scott(as), Ramsey Lewis(p), Lee Ritenour(g), Nelson Rangell(as), Chick Corea(p), Russ Freeman(g), Spyro Gyra, David Benoit(p), Arturo Sandval(tp), Dave Grusin(p), 木住野佳子(p)

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2007年10月18日 (木)

出張中に見た映画(1)

Die_hard 「ダイハード4.0(Live Free or Die Hard)」(米,'07,Fox)

監督:Len Wiseman

出演:Bruce Willis, Timothy Olyphant, Justin Long, Maggie Q

若い頃と違って,完全に中年化した私にとっては,海外出張も結構きついものとなってきたが,そうした出張の辛さを和らげてくれるのが,飛行機の中で見る映画である。今回は出張場所が中国(深セン)だったので,往復1本ずつしか見ていないが,それでもまぁきっちりと暇つぶしはさせてもらった。

で,今回はダイハード・シリーズの第4作である。私はこのシリーズのファンというわけでもない(一度も劇場に見に行ったことはない)のだが,本作は劇場に見に行こうかと思いながら行きそびれていたので,往路ではこの映画を見ることにした。

それにしても相変わらずの荒唐無稽というかありえないシナリオの連続で,Bruce Willis扮するJohn McClaneが死なないのは偶然の産物じゃないか!とか,国家機密がそんなに簡単にハッキングされるかい!と突っ込みも入れたくなるが,まぁこれはそんな難しいことを言いながら見る映画でもないので,それはそれでまぁ目をつぶることにしよう。ただ,あまりにもありえないので,苦笑を禁じえない部分も多々ありである。

しかし,冒頭にも書いたとおり,この無思想ぶりというか無茶苦茶ぶりは飛行機で見るには丁度よいばかばかしさで,それなりには楽しませてもらったが,評価としては星★★★が精一杯。それでも甘いぐらいであるが,機上の楽しみということでちょいとオマケしておいた。

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2007年10月17日 (水)

Wilson Phillips復活作:Carnieはどこへ?

Wilson_phillips "California" Wilson Phillips (Sony)

私は女性ボーカルが結構好きである。と言ってもジャズ・ボーカルではなく(嫌いなわけではないが...),基本的にはアメリカン・フォーク,SSW,ロック系のシンガーを好んでいる。Joni Mitchell,Laura Nyro,Ricky Lee Jones,Fleetwood Mac(特にChristine McVie),Tracy Thorn等それこそ枚挙に暇がないのだが,Wilson Phillipsもそうした範疇に入れてよい。一時期,Chynna Phillipsが抜けてWilson Sisters(親父のBrianを入れてThe Wilsonsと呼んでもよい)で活動していた彼女たちが2004年に久々(12年振りだったそうだ)にリリースしたのがこのアルバムである。

アルバム・カバーを見て,まずブルネットで太っちょのCarnie Wilsonはどこへ行ってしまったのかと思うのだが,情報によれば,Carnieは胃のバイパス手術により,何と体重をほぼ半減させたとのことである。このアルバムのジャケの中央に写るブロンドがCarnieと気づく人はそう多くはなかったはずである。それにしても何たる変わりようか。

だからと言って,彼女らの音楽が変わったわけではない。このアルバムでは,60年代~70年代の曲をカバーしているが,これが結構よい。Peter Usherという大物プロデューサーの手腕と,彼女たちの音楽性がマッチして,アメリカン・ミュージック好きには特に楽しめる出来となったと思う。音楽的な深みがないとか,軽いとかいう批判もあろうが,彼女たちの声とハーモニーで,いい曲を歌えばそれなりのアルバムができるということである。私にとっては十分楽しめるアルバムであったし,それぞれの曲の魅力を再認識する契機とすればいいのだ。ということで,難しいことは言いっこなしで,このアルバムを楽しもう。星★★★★。尚,最後に収められたWilson姉妹の親父との共演゛In My Room゛に続いて,シークレット・トラックとしてEaglesでおなじみの゛Already Gone゛のアコースティック・バージョン(本編にはエレキ・バージョン収録)が収められているので為念。

Personnel: Wison Phillps(Carnie Wilson, Wendy Wilson and Chynna Phillips), Dean Parks(g), Dean Rolfe(g), Larry Klein(b), Lee Sklar(b), Russ Kunkel(ds), Dan Dugmore(pedal steel), Roger Manning(p), Jon Gilutin(org) and Others

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2007年10月16日 (火)

豪華(?)ギタリストによるBeatlesへのトリビュート

Come_together ゛Come Together: Guitar Tribute to the Beatles" Various Artists (NYC)

Mike MainieriのNYCレーベルから発売されたギタリストによるBeatlesトリビュート盤である。これがギタリストの選択の素晴らしさと相俟って実によく出来ている。ここで登場するギタリストはそれこそ多様なスタイルを持つ人たちであるが,それぞれのスタイルでBeatlesの曲を演奏していて好感が持てるのである。

私にとってはRalph Townerの参加が最も嬉しいところだが,そのTownerのクラシック・ギターによる゛Here, There,  and Everywhere"はツボにはまった名演と言ってよい。Steve Khanの゛Within You, Without You / Blue Jay Way"は選曲の勝利だし,Marc Johnson, Peter Erskineとの当時のレギュラー・トリオで登場するJohn Abercrombieもよい。Gary WillsとKirk CovingtonというTribal Techのリズムに何とGordon Beckを従えたAllan Holdsworthの゛Michelle゛はHoldsworth節炸裂である(Willisは比較的地味)。最後を締めくくるToots Thielmansの゛Yesterday゛も口笛,ハーモニカを交え,口笛はやや苦しいが,味わい深い出来となっている。そのほかの演奏もアーシーな演奏あり,アシッド風あり,多重録音ありと様々であるが,Beatlesの原曲のよさもあり,私は大いに楽しめたアルバムである。けちをつけようと思えばつけられるが,まぁこうしたコンピレーションには野暮というものである。プロデューサーとしてのMike Mainieriの手腕も含めて星★★★★☆。これに続いて第2弾も制作されたが,ギタリストの質がかなり落ちるので,私は本作の方を強く推薦したい。

尚,ゲスト的に3曲に参加するNana Vasconcelosのパーカッションとヴォイスがよいアクセントとなっていることは特筆に値する。

Personnel: Mark Whitfield(g), Toninho Horta(g), Ralph Towner(g), Steve Khan(g), Zachary Breaux(g), Adrian Belew(g), John Abercrombie(g), Allan Holdsworth(g), Leni Stern(g), Larry Coryell(g), Toots Thielmans(g, hca, whistle) and Others

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2007年10月15日 (月)

Fred Hersch:カザルス・ホールでの演奏が蘇る美しい演奏の数々

Songs_without_words_2 "Songs Without Words" Fred Hersch(Nonesuch)

先日のカザルス・ホールにおけるソロ・リサイタルがあまりによかったので注文していたCDがようやく届いた。まさにあのときの演奏が蘇ると言ってよい美しい演奏群である。3枚組というボリュームであるが、1枚目が自作、2枚目がジャズ・オリジナルへのトリビュート、3枚目がCole Porter集ということで、私は飽きることがなく聞けた。また、以前の記事にも書いたが、ライブでの選曲とも重なりが結構あるので、今一度あのライブを思い出すには最適なアルバムである。

このアルバムとPalmettoレーベルから発売されているライブ・アルバム"In Amsterdam: Live at the Bimhuis"を聞けばあのカザルス・ホールの演奏をほぼ追体験できると言ってもよいかもしれないが、あのカザルスでのピアノの響きに比較的近いのは"Songs..."の方である。Amsterdamのライブ盤はややピアノの音が硬質に感じられ、あのカザルス・ホールのような天上から降りてくるような響きとはやや異なっている。しかし、この"Songs..."のピアノの響きの美しさはカザルス的であり、私ははっきり言ってうっとりしてしまった。このような音楽と接するまで、私は発売後6年半も掛かってしまったことは何とも情けない。もっと早くから聞いていれば、私の人生はもっと潤いがあったかもしれないと、やや大げさであるが言いたくなるような音楽である。

私は多くのピアノ好きの方に声を大にしてこのアルバムを推薦したいという思いに駆られる素晴らしい演奏である。3枚組ゆえやや値は張るものの、この演奏から得られる満足感を思えば安いものである。いずれにしても星★★★★★以外にはありえない傑作と評価する。尚、一部ほかのミュージシャンが加わるが、全30曲中24曲は完全ソロ・ピアノである。また、共演者もHerschの美意識にうまく寄り添っているのでソロでない曲も安心して聞ける。

私がこの音楽を聞いているのが出張中の中国は深センというのが若干微妙ではあるが、移動や仕事で疲れた体や心を癒す音楽としては最高である。これは本当にたまらん。

Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Reid Anderson(b), Tom Rainey(ds), Nasheet Waits(ds), Rich Perry(ts), Ralph Alessi(tp)

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2007年10月14日 (日)

既にイージーリスニング化しているWes Montgomery

Bumpin_2 ゛Bumpin'゛ Wes Montgomery(Verve)

Wes Montgomeryがイージーリスニング化した作品としてはA&Mの3部作が有名であるが,別にA&Mに移籍する前から,その兆候は合った。゛California Dreamin'゛然り,この作品然りである。Wesの最高傑作は疑うことなく゛Full House゛だと思っているリスナーにとっては,こうしたWesの路線は実は微妙である。決して嫌いではないのだが,こういう演奏ってWesの本質ではなかろうと思ってしまう。

この作品は冒頭の2曲は結構快調で,おおーこれはいけるかもしれんと思わされるが,その後が続かない。何も゛The Shadow of Your Smile゛や゛Here's That Rainy Day゛のような曲を敢えてボサノバにする必要は全く感じられない。こうした違和感は最後の゛Musty゛にならないと解消しないのである。私にとってはWesにはもっとドライブしたギターを弾いて欲しいのである。

ということで,軽快にスイングする曲もあるものの,どうもトータルなアルバムとしてバランスがよろしくないのが残念である。゛Quiet Morning"などは安っぽい映画音楽にしか聞こえないし,"Con Alma゛はコンガの響きがあまりにショボい。こういう曲が入っていると途端にさめてしまう私である。星★★☆。それにしても,このアルバムほど,ジャケットの渋さと音楽の落差が大きいのも珍しい。

Recorded in May, 1967

Personnel: Wes Montgomery(g), Bob Cranshaw(b), Helcio Milito(ds), Grady Tate(ds), Candido Camero(perc), Roger Kellaway(p), Don Sebesly(arr), Arnold Eidus, Lewis Eley, Paul Gershman, Louis Haber, Julius Held, Harry Lookofsky, Gene Orloff, Jos Malignaggi, Sol Shapiro(vln)  George Ricci, Charies McCracken(cel) Margaret Ross(hp)

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2007年10月13日 (土)

コレクターはつらいよ(2)

Vinicius ゛Cymbals゛ Vinicius Cantuaria(Naive)

Caetano Velosoのバックでも鳴らしたVinicius Cantuariaの新作がなぜかフランスのNaiveレーベルから発売になったが,本作にはBrad Mehldauがピアノで2曲だけだが参加している。Mehldauのコンプリート・コレクターを目指す私としては買わないわけにはいかない。

ViniciusとBrad Mehldauの共演はこれが初めてではなく,2001年にTransparentmusicから発売された゛Vinicius゛でも2曲の共演経験があるから,今回のアルバムにMehldauが参加することに大きな驚きはない。しかしながら,彼らがどういう経緯で共演に至ったかは全くわからないのだが,こういうアルバムは結構フォローするのが厳しいので,今回も危うく見逃すところであった。

で,結果はどうなのよということになるが,全体としてはコンテンポラリーなボサノバ・アルバムとして楽しめるが,ここでの2曲のピアノの客演がMehldauでなければならないかと言うと,決してそんなことはないという程度のものである。Mehldau節が爆発している訳でもない(というよりごく普通なのだ)ので,こういうアルバムはコレクター泣かせということになると思う。

それでも,私はViniciusの結構なファンなので,Mehldau抜きでも買ったかもしれないが,こういうアルバムを聞くと,いずれにしてもやっぱりコレクターは辛いのだとつくづく思わざるをえない(そんならやめればええやんと言われても仕方ないが...)。星★★★☆。

Recorded in 2007

Personnel: Vinicius Cantuaria(vo, g, perc, others), David Binney(ts), Eric Frielander(cello), Michael Leonhart(tp), Brad Mehldau(p), Marc Ribot(ac-g), Marivaldo Dos Santos(perc), Jenny Scheinman(vln)

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2007年10月12日 (金)

゛Maiden Voyage゛:私が買った最初のジャズ・アルバム

Maiden_voyage ゛Maiden Voyage゛ Herbie Hancock(Blue Note)

「処女航海」である。このアルバムは私が初めて買ったジャズLPである。背伸びをしたくなる高校生が,日本語タイトルに惹かれて買ったと記憶している。ちょうど当時,キング・レコードからBlue Noteの超弩級の名盤の数々が確か\1,800で発売されたときのシリーズの一枚である。ほかのアルバムがカタカナのタイトルばかりの中で,この「処女航海」というタイトルが異彩を放っていたのだろう。

当然,当時の私はタイトル・トラックがモードで書かれているなんてことは認識もしていなかったが,先日,某所で食事をしているときに,この曲がBGMとして流れてきて,私はFreddie Hubbardのソロを全部歌えてしまったのに,我ながら驚いてしまったのだが,なんで先発でソロを取るGeorge Colemanでもなく,リーダーのHancockのソロでもないのかというと,やはり当時でもFreddieのソロに最も魅力を感じていたということだろう。さらに,当時は次々と音楽ソフトを購入する余裕はなかったから,数少ないLPを繰り返し聞いていたし,フレーズを記憶してしまうのもまぁ当然と言えば当然かもしれない。そうは言いつつ,ここでのFreddieのソロは今聞いても素晴らしい。

このアルバムの全5曲中3曲は後のHancockのライブにおいて,重要なレパートリーとなったものであり,Hancockの作曲家としての才能がよく捉えられていると思う。ここでの゛The Eye of the Hurricane゛は後のVSOPでの演奏のような爆発力はないが,やはりこれも曲としては相当いけている。それまで゛Watermelon Man゛とか゛Cantaloup Island゛のような下世話な曲を書いていたHancockが作曲家としてひと皮むけたことを強く示しているのではないか。私はこのA面冒頭からの2曲ばかりを聞いていると言っても過言ではないが,そのほかの曲も佳曲揃いである。私としてはVSOPの爆発力を以ってややフリーなアプローチも有する゛Survival of the Fittest"を演奏していたら面白かったのではないかと思う。

繰り返しになるが,人生で初めて買ったジャズのLPがこのアルバムでよかったと今にして思う。これがOrnette Colemanの゛Golden Circle゛やMonkのBlue Note盤,あるいは゛Amazing Bud Powell゛だったら,今でもジャズを聞き続けていることはなかったかもしれないのである。そうした点にも感謝して星★★★★★を謹呈する。尚,Milesのバンドではとかく揶揄されがちなGeorge Colemanのベストに近いプレイが収められている点も見逃してはならない。

Recorded on May 17, 1965

Personnel: Herbie Hancock(p), Freddie Hubbard(tp), George Coleman(ts), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

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2007年10月11日 (木)

やっぱり"I Remember Clifford゛になってしまうのだろうなぁ

Lee_morgan_3 ゛Lee Morgan Vol. 3゛ Lee Morgan (Blue Note)

このアルバムが録音されたのは1957年3月24日,Lee Morganの誕生日は1938年7月10日であるから,録音時にはまだMorganは18才だったということになるが,この素晴らしいフレージングからは,そんな年齢だとは決して感じさせることのない天才振りを如何なく発揮している。まさに恐るべしである。

このアルバムは全曲Benny Golsonの作編曲による演奏を収めたものだが,私にはGolsonの書いたテーマ・アンサンブルよりも,各人のソロ・プレイを聞いている方がずっと楽しめるのが難点のアルバムである。Lee Morganのソロといい,共演者のソロといい,相当のレベルの演奏が収められているのだが,特に冒頭の"Hasaan's Dream゛などはずっこけるような曲調で,テーマだけ聞いているとガックリきてしまうのである。そうしたこのアルバムで゛I Remember Clifford゛ばかりに注目が集まるのは,この曲のテーマ部分が,ほぼMorganのソロによるものとなっており,Golson,Gryceによるアンサンブルがそれを邪魔していないからではないかと思わざるをえない。

それにしても,到底18才とは思えぬ成熟度を示す演奏がこの"I Remember Clifford"には収められており,何とも言えぬ名バラードとなっている。この曲でソロを取るのはMorganとピアノのWynton Kellyのみであり,夭折したClifford Brownを追悼する気持ちが強く感じられる演奏になっているのが成功要因であり,ここでGolsonやGryceがソロを突っ込んだら,この演奏は決してメジャーなものにはならなかったであろう。

全編を通じて聞けば,私にとってはやはりGolsonの作編曲に魅力を感じられないのがマイナス要因となり,両手を上げて評価することはできない。私にとってのLee Morganはアンサンブル・プレイヤーというよりもソロイストなのである。先述のとおり各人のソロのレベルは高いので,十分楽しめるアルバムではあるが,曲の魅力が゛I Remember Clifford゛が突出しすぎており,全体としては星★★★☆程度と思う。採点が辛すぎるだろうか?

Recorded on March 24, 1957

Personnel: Lee Morgan(tp), Gigi Gryce(as), Benny Golson(ts), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Charlie Persip(ds)

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2007年10月10日 (水)

Keith Jarrettの新譜における違和感

Keith ゛My Foolish Heart: Live at Montreux" Keith Jarrett/Gary Peacock/Jack DeJohnette (ECM)

Keith Jarrettのスタンダード・トリオによる新作であるが,録音は2001年に遡るため,彼らの現在形とは言えないライブ・アルバムである。しかし,このアルバムを聞き通したときの違和感は何なのだろうか。

多くのリスナーがCD1の後半からCD2の前半の都合3曲で展開されるストライド・ピアノあるいはラグタイム・ピアノ的なサウンドに違和感をおぼえるはずである。ここでこの3曲を続けたことはKeithの意図的なものであることはKeith自身によるライナーからも間違いないが,誰がこのトリオにこんな演奏を求めるというのか。それが大きな違和感としてこのアルバムに影を落としているし,ライブの場でも聴衆は戸惑ったに違いない。

ジャズの伝統へのコミットメント云々というならば,ジャズ界の原理主義者Wynton Marsalisと変わりがない。Keith,Gary,Jackという素晴らしいトリオに期待するのは原理主義ではなく,彼らの美意識に彩られたスタンダードの再構築ではないのか。私には今回の中盤の演奏が,そうした美意識をないがしろにした単なる伝統主義,保守主義にしか聞こえない。Keithが何を言おうと,私はこの演奏を支持することは出来ない。

この3曲を除けば,いつものスタンダード・トリオの演奏で安心して聞くことができるが,このトリオのファンの私と言えどもさすがにマンネリズムを感じるようになってきた。件の3曲がマンネリ打破のために演奏されたものだとしたら,それにしてはあまりにシャビーな出来であるし,何のためにこれらの曲を差し挟んだのか私には全く理解できないのである。いつもながらスリルを感じさせてくれる瞬間や,息を呑む美しさを体現する瞬間がいくつもあるが,それでも私がこのトリオに求めるレベルには全く達していない。これは完全にプログラムのミスであり,Keithのライナーでの発言は負け惜しみに聞こえる。このアルバムを何度も聞くぐらいなら,これまでの作品を聞いた方がましである。だから国内盤のライナーでの青木和富氏も歯切れが悪いのだと言ってはうがち過ぎか。このトリオとしては明らかな失敗作として星★★。この程度なら今更発表する意義は私は感じない。

Recorded on July 22, 2001

Personnel: Keith Jarrett(p), Gary Peacock(b), Jack DeJohnette(ds)

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2007年10月 9日 (火)

Stefano Di Battista:新作はBaptiste TrotignonのハモンドB3に注目

Battista ゛Trouble Shootin'゛ Stefano Di Battista(Blue Note)

以前にも書いたが,私は欧州のサックス・プレイヤーではRosario Giuliani,Stefano Di Battista,Perico Sambeatの3人に注目しているが,その中でもBlue Noteレーベル所属ということで,このStefano Di Battistaが一歩リードした存在かもしれない。その彼の新作が発売になった。

今回の作品の注目はNaiveレーベルの゛Fluide゛という作品(そう,澤野からも発売されたあの緑のアルバムである)で人気を集めるBaptiste Trotignonが全編でハモンドB3を弾いていることである。ここで聞かれるハモンドの真っ当な響きやペダルの使い方にはある意味で驚かされるが,結構これがいけており,やるものだと思わせる。

この作品を聞いていると,私の中では,Di Battistaというプレイヤーはもっと疾走感のある演奏をするイメージが強いのだが,この作品はオルガン付きというのもあるかもしれないが,結構ゆったりした作りに聞こえる。全体的に「軽い」のである。しかしながら,この「軽さ」はBattistaだけの責任とは言い切れないように思える。どうも私が違和感があるのは,ミキシングのせいもあるかもしれないが,Eric Harlandのドラムスがかなり叩いている割にはバックで鼓舞する,あるいは煽るという感覚が乏しい点である。これが本作の演奏をややスリルに乏しく聞こえさせている要因のように思えてならない。また,ベースの代わりにハモンドのペダルが使われていることもやや響きの軽さの要因かもしれない。

だが,Di BattistaのオリジナルにKenny Burrell,Horace Silver,Bobby Timmonsの曲を加えるという構成からしても,このアルバムのコンセプトは「ファンキー」のはずだが,そこはやはりイタリア出身だけに,黒人のようにコテコテにはならない(汗臭くないファンキーと言うべきか)ものの,それなりに楽しめる演奏ではある。確かに本作はDi Battistaの多彩な才能を証明してはいるが,私はDi Battistaにはよりバップ的な演奏を展開してもらいたいと思う。まだ若いんだから,もっとスリリングにやって欲しい。ということで,次作への期待も込めてやや辛いが星★★★。

尚,2曲で参加しているNicola Stiloなるフルート奏者は私は初めて聞いたが,なかなかのプレイヤーであったことを付け加えておく。

Recorded on April 12 and 13, 2007

Personnel: Stefano Di Battista(as, ss), Fabrizio Bosso(tp), Baptiste Trotignon(org), Russell Malone(g), Nicola Stilo(fl), Eric Legnini(p)

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2007年10月 8日 (月)

Marc Copland:注目はMichael Breckerとの共演だが...

Marc_copland_and ゛Marc Copland And...゛ Marc Copland(hatOLOGY)

いつも美しいピアノを聞かせるMarc Coplandが゛Hauted Heart and Other Ballads゛のトリオにゲストとしてJohn AbercrombieとMichael Breckerを迎えた作品であるから,期待が高まるのが人情というものである。但し,AbercrombieとBreckerは個別でのゲスト出演なので,ここには彼らの共演は収められていない。いずれにしても,ここでの注目がBreckerとの共演に集まることは当然である。

結果はと言えば,2曲目のCoplandオリジナル゛See You Again゛はまだしも,8曲目のHerbie Hancock作゛Cantaloupe Island゛はさすがにないだろう。どう考えても,Coplandの個性ともBreckerの個性と