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2007年8月31日 (金)

Keith Jarrettのヨーロピアン・クァルテット:このフォーク・タッチがたまらない

My_song"My Song" Keith Jarrett (ECM)

今やKeith Jarrettと言えばStandard Trioかソロかと言う感じになってしまっているが,管入りの彼のバンドはアメリカン・クァルテットも,ヨーロピアン・クァルテットのどちらもよかっただけに,一度ぐらい再編してもらえないかと思いたくもなる。特に私はフォーク・タッチが色濃く出たヨーロピアン・クァルテットを生で見てみたいという欲求にかられてしまう。

以前にも書いたかもしれないが,私は長い間Chick CoreaあるいはHerbie Hancock派で通してきており,必要以上にKeith Jarrettを毛嫌いしていたのが事実である。その昔はKeithの唸り声を聞くと発情期の猫のようで虫酸が走るとも言っていたぐらいなので,このアルバムの魅力に気づいたのも随分後になってからのことになってしまった。当然のことながら,このアルバムが出た頃は,彼らのライブを見ようなどという意思などあるはずもなく,その結果,このバンドを見る機会も永遠に断たれてしまったかもしれないと思うと残念である。

しかし,今このアルバムを聞いてみれば,KeithとJan Garbarekのサウンド的な相性が抜群であるとともに,Keithにしては親しみやすい曲,演奏ということがこのアルバムを魅力的にしていることがわかる。Garbarekはテナーでもソプラノでもたいへん心地よくKeithのピアノと共鳴させており,曲もGarbarekのために書かれているようにも感じてしまうほどフィットしている。その結果,締め上げられるようなスリルなどは感じさせるものではないが,非常に快適に時間が過ぎていくのである。そうした点では緊張感が恐ろしく強いアメリカン・クァルテット最終作"Survivors' Suite"との落差が大きい(もちろん良い意味で)。

今や中年となった私にとって,締め付けられるような緊張感より,この音楽の方が魅力的に感じられ,自らの若かりし頃のKeithに対する無理解を深く反省せざるをえない。曲はどこから聞いてもよい(やや"Mandala"だけが浮いている)が,フォーク・タッチと言う点ではやはり"Country"か。いずれにしても,軟弱と言われようがどうしようが,今の私の心を捉えて離さぬ曲の数々である。星★★★★★。

最後になってしまったが,この演奏を魅力的にしている要素としてDanielssonとChristensenの慎ましいリズム・バッキングがあることは声を大にして言っておく。

Recorded in November, 1977

Personnel: Keith Jarrett(p, perc), Jan Garbarek(ts, ss), Palle Danielsson(b), Jon Christensen(ds)

2007年8月30日 (木)

That's Entertainment:眠れなくなる映画

Thats 「ザッツ・エンタテインメント("That's Entertainment")」(米,'74,MGM)

監督:Jack Haley, Jr.

出演:Fred Astair, Bing Crosby, Gene Kelly, Frank Sinatra, Elizabeth Taylor and Others

この前の日曜日の夜,アンソロジーだから適当なところでやめて寝ればいいやと思って深夜過ぎに見始めたのが運のつき,結局眠れなくなるほど楽しんでしまった映画である。

1974年と言えば,私が最も映画をよく見ていた時代であるが,この映画もロードショー時に見に行ったはずである。今にして思えば,こんな映画を見に行くなんて,随分老成した中学生だったなぁと思わざるをえないが,初見のときも,今回も同じように興奮させられてしまったと言っては大袈裟だろうか。否。そんなことはない。ここに収められているのはまさしく至芸である。時代を越えて,オーディエンスを感動させる技の数々。特にFred Astair。なんたるエレガンス。これこそ人間国宝級の技である。

CG全盛の現代において,MGMミュージカルの芸術の数々がどれほどの感動を聴衆に与えるかはわからない。しかし,同じ作り物(フィクション)ではあっても,決してCGで味わうことのできないヒューマンな「芸」の数々を堪能した結果,月曜日からの仕事もそっちのけで夜中まで私は画面に釘付けにされたのである。

確かにMGMミュージカルなんて現実味に乏しいルーティン・ワークであり,馬鹿馬鹿しいと言えばそのとおりの部分もある。しかし,ここに収められた素晴らしいダンスや歌を見もせず,聞きもせずそう思っては決してならない。人間の技を駆使して,人を感動させる術を,馬鹿馬鹿しい映画でも持っていたのだと痛感させらる映画である。Astair以外にも,例えばEleanor Powellを見よ。そしてAnn Millerを見よ。これだけの名シーンを980円で楽しめるなんて,私は幸せ者である(とマジで思ってしまった)。

さぁ皆も買いなさい。そして見なさい。たった980円で20世紀の芸(もちろん芸術と言っても過言ではないが,やはりこれは「芸」である)の数々を2時間強に渡って楽しむことができる。久し振りにこの映画を見ても,やっぱり私は興奮させられるだけの「芸」に溢れていた。最高である。星★★★★★。

2007年8月29日 (水)

Miles Davis:ほとんどフリージャズと化したLost Quintet

Md_lost "Lost Quintet at Final" Miles Davis(Premier)

いつも言っていることだが,私はブートレッグを声高に推薦することはできるだけしたくないのだが,音源が結構貴重だったりする場合はその限りではないと思っている。本日紹介のCDも,明らかに英語として違和感のあるタイトルはいただけない(ブートレッグにはよくあることだが...)が,レコード会社が満たすことができない消費者の欲求を満たすものとして,敢えて紹介しよう。

今やMiles Davisのブートレッグはそれこそ山ほど(星の数ほどと言ってもよいだろう)出ているが,私の中では60年代後半から70年代の音源が興味の中心となっている。その中でも私を興奮させるのがMiles Davisの60年代後半のバンドだが,このバンドがLost Quintetと言われるのは公式のスタジオ録音が発表されていないことによる。はっきり言ってこれだけのバンドの音源が少ないというのはあまりにも惜しいことであるが,逆に言えば,スタジオ録音の枠にこのバンドをはめることが無理という気もする。それほど強烈なバンドである。

このブートレッグは既に発売されていた音源だが,ここで紹介しているPremier盤はCD-Rでなく,プレス盤というのが「売り」ながら,それは大したことではない(そもそもタイトルもそのままのCD-Rも既に流通している。ブートレッガーねずみ算である)。まずはこの音源を聞いてみればよい。冒頭の"Directions"から興奮の坩堝に叩きこまれること間違いなしである。Sonyからも"1969 Miles: Festiva De Juan Pins"等も発掘されているが,私はこのバンドをもっと聞きたいという欲求にかられる演奏である。バンド全員がよいのは当然だが,私は燃えるWayne Shorterの演奏というのはこのバンドでの演奏が白眉だと思う。Shorterが燃えれば,私も燃えてしまうのである。バックを支えるメンツもフロントの2人を煽りまくっている。CoreaもDeJohnetteももはやフリー・ジャズである。Milesはフリーから離れた位置にあったミュージシャンだと思うが,Milesのバンドが最もフリーに傾斜した瞬間がこのバンドのライブにあったと言ってよい。Sonyには音源が残っているはずだから,出し惜しみせずもっと出せと言っておこう。

しかしながら,このブートレッグの世界,一度はまると抜けられないアリ地獄のようなものである。くれぐれも真っ当な方々は,足を踏み入れる前に今一度よく考えた方がいい。私はこういうアリ地獄なら自分から身を投じてしまうが...。

Recorded Live in Rotterdam on November 9, 1969

Personnel: Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ts, ss), Chick Corea(el-p), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds)

2007年8月28日 (火)

富樫雅彦:またも追悼記事は寂しい

Togashi "Spritual Nature" 富樫雅彦(East Wind)

先日のMax Roachに続いて,8/22に富樫雅彦も亡くなったそうである。享年67歳。最近は体調が悪かったらしく,演奏活動からは遠ざかっていたような富樫ではあるが,それにしてもまだ若過ぎる死である。謹んで冥福を祈りたい。

富樫が不慮の事故により下半身の自由を失ったのは極めて不幸なことだと言われているが,いかんせん,ドラマーとしての富樫の凄みを知るすべもない私としては,本日紹介している"Spritual Nature"のような音源に頼らざるをえない。

しかし,私は決して富樫にとっていいリスナーであったわけではない。いまだに私はこのアルバムのよさを理解できずにいるし,富樫は私にとって結構敷居の高いミュージシャンであることは間違いのない事実である。私がこのブログを始めた当初,富樫の"Session in Paris Vol.1: Song of Soil"を取り上げたことがあるが,あのアルバムはDon Cherry,Charlie Hadenというメンツもあり,比較的とっつきやすいものだったのに対し,本作を含めた多くの富樫の音源はリスナーを跳ね返してしまう厳しさにあふれている。この゛Spiritual Nature"は私の理解を越えた世界にあり,フリー・ジャズとも言いきれず,時折顔を出す牧歌的なサウンドもジャズ的ではない。これはもはやジャズというよりも現代音楽だというのが私の解釈である。

世評では高く評価されたこのアルバムも,そうした意味では決してポピュラーにはなりえない音楽である。私はプロの批評家ではないので勝手に言わせてもらうが,素人でこの音楽がFavoriteという人は私のセンスではありえない世界である。もしそうした人が本当にいるとしても,かなり「スノッビッシュ」な感じを与える。

いずれにしても,このアルバムは私にとっての「踏み絵」のような存在であり,相変わらず微妙である。久し振りに再聴してもやっぱり何がいいのかよくわからなかった。私の修行が足りないということだろうか...。しかし,時折顔を出すスリリングな瞬間と,追悼の意味を込めて星★★★☆。尚,追記しておくが,翠川のベースの音が素晴らしい。

Recorded on April 9 and 29

Personnel: 富樫雅彦(perc),渡辺貞夫(fl, sn, al-fl),鈴木重男(fl, as),中川昌三(fl, b-fl),佐藤允彦(p, perc),翠川敬基(cello, b),中山正治(perc),豊住芳三郎(perc),田中昇(perc)

2007年8月27日 (月)

多くのギタリストにチャンスを与えたECMレーベル

Steve_eliovson "Dawn Dance" Steve Eliovson(ECM)

今や多数のカタログを擁するECMレーベルであるが,その歴史を振り返れば,多くのギタリストにチャンスを与えてきたレーベルだと思う。その中で今や最もメジャーになったのはもちろんPat Methenyであるが,そのほかにも多くのギタリストがECMレーベルを去来した。Steve Eliovsonもその一人である。

本作はEliovsonのECMレーベルにおける唯一の作品であり,全編をアコースティック・ギターで通したアルバムで,Colin Walcottが共演している。Colin Walcottと言えばOregonであるから,当然,このアルバムでもRalph Towner的な響きを想定することもできるが,雰囲気はかなり違う。これはEliovsonが全編でスチール弦を使っていることもある(Townerはスチール弦は12弦専門である)が,この多重録音を多用したアルバムにおいて,伴奏のアルペジオは指弾きと思われるのに対し,メロディ・ラインの演奏にはピックを使用した単音フレーズで対応していることがTownerとの雰囲気の違いであるように思える。また,メロディアスと言えばメロディアスなラインを紡いではいるものの,Townerのリリシズムの域には及ばないような気がする。

Eliovsonのギターは時に速弾き的フレーズも交えているが,基本的にはかなり落ち着いたトーンで美しい音楽を全編で聞かせており,フォークとエスニック・ミュージックとヒーリングが交じりあったような典型的ECMレーベルのサウンドになっていると言ってもよいだろう。ややハーモニクスの多用が気になると言えば気になるが,Walcottとの相性もよく,ECMレーベルの音楽を愛好するリスナーは必ずや気に入るタイプの音楽である。

但し,EliovsonによるECMレーベルでの作品が本作一作で終ってしまったこともあり,なかなか注目を浴びる機会の少ないアルバムではある。あまり目立つことはないとは言え,埋もれさせるには惜しい作品である。ジャケットはご覧のとおりの素晴らしさ。星★★★★。

Recorded in January, 1981

Personnel: Steve Eliovson(g), Colin Walcott(perc)

2007年8月26日 (日)

Ned Doheny:このウエストコースト的サウンド

Ned_2 "Ned Doheny" Ned Doheny(Asylum)

私はジャズと並んで,ロックも結構好きなくちだが,その中でも一時期Woodstock系を中心とするシンガーソングライターに入れあげていた時期がある。それが徐々に幅を広げ,シンガーソングライターでもウエスト・コーストやスワンプ系にも触手を伸ばしていたものである。

シンガーソングライターは渋さ追求型,爽やかさ重視型,ロック指向型等いろいろなタイプに分かれるが,Ned Dohenyはその中では典型的爽やかさ重視型であり,かつ典型的なウエスト・コースト・サウンドである。これがなかなかよい。

この1973年の彼のデビュー作の成功はDohenyの書く曲のよさもあるが,ほぼ固定的なメンバーで制作されたことによる手作り感というか,仲間による音楽という感覚が強く表れている点にあるように思う。はっきり言って有名どころの客演はGraham Nashが1曲でバックグラウンド・ボーカルを取る以外ほとんどない。しかし,そうしたことが全然問題になっていないことは明らかであり,全編を通じ非常にいい感じの音楽が流れていくのである。よってアルバムを聴き終った後の後味も大変よい。

情報によればNed Dohenyは良家のぼんぼんらしいのだが,彼の音楽性がそうした血筋によるものというのは言い過ぎとしても,この破綻のなさは大したものである。むしろ,プロデューサーを兼ねるDohenyが金にモノを言わせて豪華メンバーを揃えないところにも,彼のミュージシャンとしての矜持を感じさせ非常に好感が持てる。

全編でDohenyはギターも弾いているが,テクニシャンとかそういう類のギタリストではないが,でしゃばり過ぎず,かと言ってちゃんと自己主張もするその適切な使い方はまたまた好感度大である。

いずれにしても,このアルバムはDohenyの作曲能力と適切なプロダクションの成果としてより多くの人に聞いて欲しいアルバムである。冒頭の"Fineline"からウエスト・コースト・ロック好きははまること請け合いである。特にJ.D. Southerあたりのファンには受けるだろう。星★★★★☆。

Personnel:Ned Doheny(vo, g), David Parlatta(b), Brian Garofalo(b), immy Caleri(p, org), Richard Kermode(p), Mike Utley(org), Gary Mallaber(ds) and Others

2007年8月25日 (土)

Al Cohnはなぜ人気が出ないのか

Al_cohn "Nonpareil" Al Cohn (Concord)

Zoot Simsとの2テナー・チームで鳴らしたAl Cohnであるが,相方のZootが日本では結構人気が高く,中古盤市場でも高値で取引されているのに比べると,このAl Cohnはなぜか日本であまりポピュラリティを獲得できないままである。名チームと言われたこの2人のプレイヤーにもかかわらず,この違いは何なのだろうか。

Al CohnがConcordレーベルに残したこのアルバムを久々に聞いてみると,Zootとの違いはその音色ではないかと思えてきた。Zootのサックスはよりソフトなサウンドであるのに対し,Al Cohnのテナーはトーンが硬質に聞こえるのである。演奏は十分にスイング感に満ちているし,ソロ・フレーズとてZootに対しそれほど遜色があるとは思えない。しかしながら,個性や音色の違いで楽しみもある2テナーの演奏に対し,Al Cohnのソリッドなトーンだけ聞かされると,確かにやや疲れるのは事実であり,楽しむというところまでいけないのである。これがトーンがまろやかでくつろぎ感に勝るZoot Simsの人気面での勝因ではないかと思わざるをえない。

だからと言って,Al Cohnを過小評価するのは可哀相だが,かく言う私もどっちを取るかと言えば,やはりZootになってしまうのである。このアルバムではLou Levyの好演も嬉しいところだが,Al Cohnのテナーのトーンで「イパネマの娘」をやられたりすると違和感があるのも事実である。音の好き嫌いも含めて全体としてはまぁ平均点というところで,星★★★ぐらいが妥当な評価であろう。Monty Budwigのベース音がよろしくないのも減点対象。

Recorded in April, 1981

Personnel: Al Cohn(ts), Lou Levy(p), Monty Budwig(b), Jake Hanna(ds)

2007年8月24日 (金)

Dan Penn:渋さの極致

Dan_penn "Do Right Man" Dan Penn(Sire)

ソウル・ミュージック界において,数々の名曲を残しているDan Pennが自らの曲を歌唱した渋いアルバム。この声にしてこの曲を歌われたら,私のようなアメリカン・ミュージック好きはメロメロである。なんてたって,冒頭から"The Dark End of the Street"だ。

バックをMuscle Shoalsのミュージシャンと盟友Spooner Oldhamが固めたこのアルバムは,まさにアメリカン・ミュージックの良心と言っても過言ではない。極論してしまえば,このアルバムを聞いてこのよさがわからないという人はアメリカン・ミュージックへの嗜好にずれがあると言ってもよい。もちろん,音楽の質からして,若者にこのよさがわかるかと言えば,それは難しかろう。しかし,私のような中年にとっては,この音楽が与える落ち着き,渋さ,くつろぎはどの側面から見ても素晴らしい。まさしく,これはたまらない出来である。

このアルバムに多言は無用である。ソウル好き,シンガーソングライター好きの双方に両手を挙げて推薦する大傑作。だまされたと思って聞いてみて頂ければ幸いである。決して後悔することはないだろう。当然のことながら星★★★★★である。

Personnel: Dan Penn(vo), Reggie Young(g), Jimmy Johnson(g), David Hood(b), Roger Hawkins(ds), Florence Flash(ds), Spooner Oldham(org, p), Bobby Emmons(p), David Briggs(key), Carson Whitsett(key) and Others

2007年8月23日 (木)

Stanley Cowellのイメージとは異なる作品

Stanley_cowell "Back to the Beautiful" Stanley Cowell (Concord)

Stanley Cowellと言えば,Strata-Eastレーベルの主宰者の一人である。よって,私が持つCowellのイメージは同レーベルの音楽と重なっているのだが,そのイメージを覆されたアルバムである。何と言っても,Strata-Eastとは対極にあるとも言えるConcordレーベルからの作品なので,当然と言えば当然ではある。タイトルに偽りなく,Cowellによる美しいピアノ・タッチが随所で楽しめる作品である。特にそれはLP時代ならA面に位置付けられる前半に強く感じられる。

プログラム後半はCowellのオリジナルが多くなり,やや様相が変わってきて,美的なセンスだけではないCowellっぽさがそこかしこに顔を出してくる。それをよしとするか否かがこのアルバムの評価の分かれ目ではないかと思うが,私にとっては前半のトーンで通してもよかったのでは内科というのが正直なところである。前半でも"It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)"を8ビートで演奏するような変わった取組みもあるが,トーンやフレージングは結構一貫していた。それが後半ではCowellのオリジナルのバラエティの豊かさゆえに,やや冗漫な印象を与えているように思える。フレージングは結構いけているだけに,これは曲の印象によるところが大きいように思う。特に"Carnegie Six"に私は強い違和感をおぼえた。そうした点をひっくるめても,特に前半を評価して星★★★☆としよう。

このアルバムでもう一点注目に値するのは3曲で参加するSteve Colemanによるストレート・アヘッドな演奏であろう。通常は変拍子をバシバシ決めるM-Base派の総帥,Colemanがストレートな演奏をしてもうまいということがわかる。それは例えばMarvin Smitty Smithの"Keeper of the Drums"(Concord)でもわかっていたことだとしても,いつもながら,「うまい人は何をやってもうまい」のである。

Recorded in July 1989

Personnel: Stanley Cowell(p), Steve Coleman(as, ss), Santi W. Debriano(b), Joe Chambers(ds)

2007年8月22日 (水)

懐かしのAsia(なんだろうなぁ)

Asia "Anthologia" Asia (Geffen)

本年,何とオリジナル・メンバーで来日してしまったAsiaである。ついでにそのときのライブ盤まで出てしまった。私も公演に関心がなかったわけではないが,結局は行かずに終ってしまった(Greg Lake入りのAsia武道館公演に失望させられた悪しき記憶もあったが)。しかし,80年代のスーパーグループというか,プログレ断末魔というか非常に微妙な位置付けにあるAsiaのライブが完売というのはいささか驚かされたのは事実である。世の中,好きものは沢山いるということである。

本作はそのAsiaのGeffenレーベル時代を回顧する2枚組である。これを聞けば明らかだが,デビュー・アルバムが突出した出来だったということである。"Alpha"以降は第一作に見られるプログレ~ポップの融合的な良さが後退し,過剰なポップ指向だけが鼻についてくる。先の日本公演でも,第一作からの演奏が多かったようだから,本人たちもそれは自覚しているということであろうが,第一作の曲群は今聞いても結構いけている。

いずれにしてもこのアルバムはGeffenレーベルに残されたアルバム及びシングルB面等を網羅した良心的でよく出来たコンピレーションであり,私にとってはAsiaはこれだけ持っていればええわというものとなっている。それにしてもリマスタリングによるこの音圧は驚かされる。そうした点への評価も込めて星★★★★。

しかしながら,本当にプログレの真髄に触れたいのであれば,Asiaではなく,メンツの出処であるKing Crimson,Yes,EL&Pを聞くのが正しい姿であろう。Asiaから入ってプログレを極めるという道筋もあろうが,やはりそれはあまり正しいやり方ではないだろうし,真っ当な道を歩めるとは限らない。あくまでもこれはオジさんの妄言かもしれないが...。

Personnel: John Wetton(vo, b), Steve Howe(g, vo), Geoffrey Downes(key), Cal Palmer(ds, perc), Mandy Meyer(g), Steve Lukather(g), Ron Komie(g), and Others

2007年8月21日 (火)

Joe Chambersの新主流派的サウンド

Joe_chambers "Mirrors" Joe Chambers (Blue Note)

このアルバムは随分前に近所のCDショップのバーゲン品でゲットしたものだが,予想を上回る作品で嬉しくなってしまった。だからCDショップめぐりはやめられない。

Joe Chambersと言えば,60年代Blue Noteの新主流派的アルバムに多数名を連ねたドラマーであるが,その後の活動はそれほど派手だったとは思えない。それが90年代後半になって突如としてリーダー・アルバムを発表したものだから,結構驚いた記憶がある。

このアルバムではなかなかのメンツ(中堅という表現がぴったりのミュージシャンばかりである)を集めて,基本的にChambersのオリジナルを演奏している。例外の2曲がMichael Jacksonの"Lady in My Life"とJanet Jacksonの"Come Back to Me"というのが何でやねんと思わせるが,ほかのChambersのオリジナルからは若干浮いているものの,前者ではChambersがヴァイブのプレイを聞かせており,これがなかなかよいし,それほど違和感なく仕上がっている。全体を通して聞けば,Chambersの作曲能力が結構優れていることを認識できるし,演奏も新主流派を更にクールにしたような印象で,かなり楽しめる佳作である。星★★★★。

ところで,このアルバムには本来アルトが主楽器のVincent Herringがテナーをメインで参加しているのが珍しい。Cannonballの再来とHerringが言われたのも随分前になってしまったが,最近はあまり音沙汰を聞かなくなってしまったHerring,最近どうしているのだろうか。結構期待していたのだが...。

Recorded on July 7 and 8, 1998

Personnel: Vincent Herring(ts, as, ss), Eddie Henderson(tp), Mulgrew Miller(p), Ira Coleman(b), Joe Chambers(ds, vib)

2007年8月20日 (月)

Wynton Marsalisが常にこうならば...

Elvin_wynton "Tribute to John Coltrane -A Love Supreme" Elvin Jones Special Quartet (Sony)

私はWynton Marsalisというトランペッターを結構高く評価している方だと思うのだが,彼の言動や演奏活動がより多くの支持を得ることの妨げになっているように思えるのは惜しい限りである。

誤解を恐れずに言えば,Wynton Marsalisはジャズ界の原理主義者であり,その伝統を重視する姿勢については理解できないわけではないが,私から言わせれば行き過ぎの部分がある。そうした彼の姿勢がある意味,訳のわからん活動や訳のわからん演奏につながっており,本来のトランペッターとしての実力に水を差しているように思えてならない。

だからと言って,このアルバムや゛J Mood゛のようなアルバムで聞かせる彼のエキサイティングなトランペット・プレイを否定することはできないし,このアルバムを聞いて興奮しないジャズ・ファンはいないだろう。何と言ってもやっているのが「至上の愛」であり,Elvinに鼓舞されたWyntonがラッパを吹きまくっている。私がWyntonに求めたいのはこうしたプレイである。うまくて,鋭い。こういう演奏を「常々」していれば,日本でも人気沸騰間違いないところなのだが...。また,基本的なアレンジはWyntonが行っているので,そもそも気合の入り方が違う。

私は残念ながらこの演奏を生で見たわけではないが,一度WyntonとElvinの共演は目撃している。そのときはElvin Jones Jazz MachineにWyntonが客演したものだった(場所は今はなきBottomlineである)が,その他のメンツとの実力差が露骨に出ていて,「何だかな~」の世界であった記憶がある。ついでに言えば,「花嫁人形」なんぞを演奏されて,ずっこけたのも事実である。その点,このアルバムは,基本的にWyntonのバンドにElvinが入ったようなかたちになっているので,ミュージシャンの実力については問題はない。そうは言っても,ここでも"Happy Birthday for Yuka"なんていう余計な曲が入っているので,またしても「何だかな~」なのだが,それを除けば大変素晴らしい出来である。星★★★★☆。

残念ながら,このアルバムは現在廃盤のようだが,つまらんアルバムを再発するぐらいなら,こういうアルバムを常にカタログに残しておくべきである。だから日本のレコード会社のやることはよくわからん。

Recorded on December 4, 1992

Personnel: Elvin Jones(ds), Wynton Marsalis(tp), Marcus Roberts(p), Reginald Veal(b)

2007年8月19日 (日)

追悼Max Roach

Bud_powell "The Bud Powell Trio Plays" Bud Powell(Roulette)

Max Roachが8/15にNYCにて亡くなったそうである。享年83歳。最近のRoachの演奏活動についてはフォローしてこなかった私だが,本ブログでも取り上げた高校時代に購入した"Live in Tokyo"にはお世話になった。

Roachの名演は枚挙に暇がないが,その中で追悼の意味を込めて本日はBud PowellのRoulette盤を取り上げたい。もちろん,本盤の主役はピアノのPowellなのだが,それを見事に支えるRoachのドラミングが素晴らしい。特に急速調で演奏される"Indianna"や"Bud's Bubble"のRoachのブラシ・ワークには何度聞いても興奮させられる。

では,なぜRoachの追悼に例えば「サキコロ」やBrown~Roachクインテットではなく,このアルバムなのか?それは(私の記憶が確かならば,)このアルバムが私のRoach初体験盤だったはずだからである。私がジャズを聞き始めたのは高校時代に遡るが,何もわからぬまま名盤ガイドのような本に従ってこのアルバムを購入したものの,当時は「何だか音が悪いなぁ」ぐらいの感想しか持ちえなかった私である。しかし,時を経るに従い,より多くの音源に触れる機会が増えると,このアルバム(特にRoachが参加の前半8曲)の凄さがわかってきた。先に挙げた2曲(特に゛Indianna゛)のブラシはまさしく神業と言われたものだが,大してジャズを聞いていない高校生ごときにその凄まじさがわかるはずもないと今にして思う。しかし,長年,ジャズという音楽に接してきたからこそ,この演奏の本質が今では理解できると信じている。

もちろん,Bud Powellとの共演ということならば,"The Amazing Bud Powell"でもいいのだが,やはり原体験を重視し,このアルバムを挙げさせてもらった。

Max Roachはいろいろな社会運動にも取り組んだことにより,評価にブレが生じてしまったように思えるが,ドラマーとしては間違いなく稀代の「マスター」であった。バップ時代からの彼の活動を思い,ここに冥福を祈りたい。

(以下は本アルバムのRoach関連音源のみのデータ)

Recorded on January 10, 1947

Personnel: Bud Powell(p), Curly Russell(b), Max Roach(ds)

2007年8月18日 (土)

西山瞳:いろんな人がいるもんだ

Cubium "Cubium" 西山瞳(Spice of Life)

西山瞳というピアニストについては全く知らなかったのだが,あるCDショップを探索中に店でかかっていたものに妙にひかれて購入したものである。

MJQについての記事でも書いたが,この音楽も「汗臭さ」を一切感じさせない音楽である。影響を受けたのがEnrico Pieranunziというのには思わず「へぇ~っ」と唸ってしまうが,それはBill Evansの隔世遺伝ということになることをお若いご本人が自覚しているかどうかは知る由もない(あるいは確信犯的にそう言うのを避けているのではないかとうがった見方もしたくなる)。

そうした影響を踏まえたタッチも音色も美しいので,ある意味万人向けのピアノ・トリオとなっているのは間違いなく,ちょっと聞いた感じは悪くない。世に多く存在する「エバンス派」愛好家には間違いなく支持される類の音楽である。ただし,全編を通して聞くと,ピアニストとしてはもう少し個性を出してもらわないとなぁという気もする。むしろ,作曲家としては結構耳ざわりのよい曲を書いているので,そちら方面を伸ばすということも考えてよかろう。

本人曰く「人生で大きな影響を受けた音楽家に黒人アーティストはいないので,無理にアメリカのジャズをやろうとは全く思っていません」とのことだが,この言葉ははっきり言ってカッコつけ過ぎである。ジャズは懐が広い音楽だというのが私の持論だが,それゆえに彼女のスタイルも受容されうるという謙虚な姿勢も必要である。西山瞳がどれだけの音楽に触れてきたのかは知らないが,世の中を跋扈する所謂「エバンス派」と同化しないで欲しいものである。隔世遺伝の先祖であるBill EvansはMilesやCannonballと演奏を重ねた上で彼独自のスタイルを築いたということをよく考えるべきである。

そうした「ええカッコしい」の姿勢は批判もしたくなるが,このCD,決して出来は悪くない。己の実力を自覚し,更に研鑽を積めば,今後の飛躍が期待できるピアニストであることは間違いない。是非頑張って欲しいものである。星★★★☆。

Reccorded on May 26 and 27, 2006 in Stockholm

Personnel: 西山瞳(p), Hans Backenroth(b), Anders Kjellberg(ds)

2007年8月17日 (金)

MJQ:やはり"Softly as in a Morning Sunrise"である

Concorde "Concorde" The Modern Jazz Quartet (Prestige)

MJQである。やれ室内楽的だ,対位法的な手法がどうのこうのと言われることも多いMJQであるが,何ともブルース・フィーリングを感じさせる演奏を残しており,これは立派なジャズとしか言いようがない。

確かにJohn Lewisの指向が強く出た場合,バップ・フィーリングなどは演奏に表れないものの,バップだけがジャズではないということを知らしめた功績は大きい。彼らの音楽には例えばArt Blakeyに代表されるような「汗臭さ」がないため,あらゆる意味で万人に受け入れ易いように思われる。よって,おそらくはジャズの裾野を広げる役割は極めて大きかったのではないだろうかと想像している次第である。

長い歴史を持つMJQであるから,数々の傑作をものにしており,その中でどれを選ぶかはもはやリスナーの趣味である。私がこのアルバムを「いの一番」に選ぶ理由は個人的な思い出深さにほかならない。私が大学時代を過ごした町に"Duo"という店があった(残念ながら今はもうないはずだ)のだが,そこのエンディング・テーマが本作に収められた"Softly as in a Morning Sunrise"だった。何度,そのエンディング・テーマを聞いたか(即ち閉店まで粘った)はわからないが,いずれにしても私にとっては懐かしい曲である。私たちがその店に通っていたのは,同店でバイトをしていた美人ウェイトレスゆえのところもあるが,役者志望だった彼女は今何をしているのだろうか...。

それはさておき,そうした理由で私にとってはこのアルバムはその一曲のためにあるようなものなのだが,ほかの演奏も無視するにはあまりに惜し過ぎる。曲,演奏のバランスもよく,アルバムとしては相当よく出来ている。ある意味,"Softly..."しか聞いていなかったのは勿体ないことだと思ったのは随分後になってからのことだが,いずれにしても,MJQでも屈指の傑作という評価には間違いない。

でもやっぱり"Softly as in a Morning Sunrise"が好きなのよねェ。星★★★★★。

Recorded on July 2, 1955

Personnel: Milt Jackson(vib), John Lewis(p), Percy Heath(b), Connie Kay(ds)

2007年8月16日 (木)

コレクターはつらいよ

Hottest_state "The Hottest State: The Original Motion Picture Soundtrack" (Hickory)

私はBrad Mehldauのコレクターとして,彼の参加しているアルバム(ブートレッグは除く)は全て入手しようと日夜頑張っているのだが,こうしたコレクターの財布泣かせなのが,1曲だけ参加のアルバムということになる。発行枚数の少ないプロモ盤に比べれば,入手ははるかに楽ではあるが,こうしたアルバムをきっちりフォローしていくのもなかなか楽ではない。

このアルバムは1週間ほど前に発売されたものだが,これもあやうく見逃しかねないアルバムであった。たまたま入ったCDショップでのポップで発見,即購入である。Ethan Hawkeが監督したこの映画については内容はよくわかっていないが,音楽をJesse Harrisが全面的に担当し,Brad Mehldauはそのうち1曲(この映画のテーマ曲と思しき"Never See You")をピアノ・ソロで美しく決めている。

この1曲のためだけにこのサウンドトラックを買わなければならないとすれば,確かに辛いところもあったのだが,このアルバム,Willie Nelson,Emmylou Harris,Bright Eyes等に加え,Norah JonesやJesse Harris本人の本アルバムのための演奏も収められており,アメリカン・ミュージック好きにとっては結構お買い得なアルバムとも言える。

ただ,サウンドトラック盤の例で言えば,Brad MehldauはStanley Kubrickの"Eyes Wide Shut"にも1曲収録されているが,これは"Art of the Trio, vol.1"からの借用というパターンなのだが,それは買って,ライナーをチェックしてみないとわからないので,私にとっては一番困るのである。私はコレクターだが,同じ音源をいくつも集める趣味はない。あくまでも彼の公的なオリジナル演奏を全て収集したいだけなのである。そうした意味で,無駄な出費を避けるためにもコレクター間の情報ネットワークは重要であり,私としては同好の志大歓迎である。

閑話休題。このアルバムに関しては,私の音楽の嗜好とあっているので大いに結構である。詳しいパーソネルは省略するが,Jesse Harrisファンは買って損はない。星★★★★。

2007年8月15日 (水)

あなどってはならないMike Sternのストレート・アヘッド・ジャズ

Dedication "Dedication" Bunny Brunel / Mike Stern / Billy Childs / Vinnie Colaiuta (Musidisc)

以前にも書いたが,私は結構なMike Sternファンである。ワンパターンと言われようが,好きなものは好きなので仕方がない。

このアルバムは92年にフランスのMusidiscなるレーベルから突如発売され,初めてこれを聞いたとき,私は結構狂気乱舞したおぼえがある。何せ曲がよい。冒頭の4曲からしてShorer作"Fall"~Steve Swallow作"Falling Grace"~Hancock作"Dolphin Dance"~Shorter作"Pinocchio"である。これだけで注目するなという方が無理というものである。本作では収録曲の性格もあり,いつものSternのハード・ディストーションは聞かれない。しかし,そのコーラスを掛けまくったギター・サウンドもファンにはたまらないのである。

ミュージシャンの並びからすると,これはBrunelのリーダー作なのだろうが,Brunelにあまり関心を抱けない私にとっては,本作はSternのモダン・ジャズ・アルバムとしての位置付けである。こうしたアルバムでもSternの手癖はちゃんと出ていて,随所で微笑を誘うので,ファンも安心してよい。いつもと違うのはディストーションの踏み込みがないだけである。それにしてもこのSternの芸の広さ,決して侮ってはなるまい。それまでSternが"Stella by Starlight"を弾くなんてのは想定外だったはずであるが,これがまた結構しみる出来なのである。これは嬉しい驚きであった。"Relaxin' at Camarillo" では"Jean Pierre"のフレーズが飛び出し,これまた笑みを誘う。星★★★★☆。尚,1曲にChick Coreaがゲスト参加している。

Recorded on September 14-16 and October 16, 1992

Personnel: Bunny Brunel(b), Mike Stern(g), Billy Childs(p), Vinnie Colaiuta(ds), Chick Corea(p)

2007年8月14日 (火)

Jack Wilkinsファン必聴のアルバム

Bob_brookmeyer "The Bob Brookmeyer Small Band" Bob Brookmeyer(Gryphon)

バルブ・トロンボーン奏者,Bob Brookmeyerの1978年発表のライブ盤である。リーダーの楽器も地味だし,演奏も別に華々しいわけではない。しかし何ともくつろげるアルバムではある。

このアルバム,なかなかのメンツ(ベース,ドラムスはBill Evans系列プレイヤーである)を揃えて,スタンダードにリーダーのオリジナルを交えるという構成でかなり楽しめる。しかしながら,本盤に私が注目したのは,リーダーのBrookmeyerには悪いが,全てはJack Wilkinsによるところ大である。一体日本にJack Wilkinsファンがどれぐらいいるのかはわからないが,ChiaroscuroやCTIへの吹き込みを通じて一時注目を浴びたことはあるが,結局はBrecker Brothersつながりでの注目という要素が強く,ご本人自体は決してメジャーになれない人である。これだけのテクニックを持っているのになぜなのかよくわからないのだが,私の感覚では,プロデューサーにあまり恵まれていないというのが正直なところである。上述のレーベルでの吹き込みはそれなりにしっかりとした制作が行われているが,その他のアルバムの中には???なものがあるのが辛い。それでも,私は彼の新作が出るとつい買ってしまうから,やっぱり私はWilkinsファンなのだろう。

本作はGryphonというマイナーながら良心的なレーベルのオーナー・プロデューサー,Norman Schwarzプロデュースで作品としてよく出来ているし,Wilkinsのギターが私にはリーダーのバルブ・トロンボーン以上に魅力的である。バックにしろ,ソロにしろ,これは大したギタリストだと思わせる演奏の数々である。

ただ,何と言ってもこの作品も存在は極めて地味であるから,世間の注目を集めるまでは至っていない。せっかくのよい作品なのに惜しい限りだが,CDで再発されただけでも喜ぶべきかもしれない。

評価としてはJack Wilkinsに対して星★★★★★(ファン心理込み)。作品としては星★★★★ぐらいだろうか。

Recorded Live at the Sandy's Jazz Revival, Beverly, Massachusetts, on July 28 and 29, 1978

Personnel: Bob Brookmeyer(v-tb), Jack Wilkins(g), Michael Moore(b), Joe LaBarbera(ds)

2007年8月13日 (月)

エレクトリックSteps Ahead 1986年の東京ライブ:これは燃える

Steps_ahead_live "Live in Tokyo 1986" Steps Ahead (NYC)

私はこのときの演奏を以前はレーザーディスクで楽しんでいたのだが,今回,中古でCDをゲットしたのを機に,音だけでこの演奏を聞いてみた。私は映像つきのソフトについてどうこういうつもりはないのだが,映像があると音楽に完全集中できない部分は否定できない。よって,私はどちらかと言えばCD派であり,LP派である。そもそもジャズ系のライブで凝った映像も撮りようもないわけなので,音だけでも別に問題はない。

今や,我が家にレーザーディスクのプレイヤーもないし,ソフトも実家に眠ったままなので,私がこの演奏に触れたのは随分と久し振りのことである。冒頭の゛Beirut゛からして随分とエレクトリックな印象が強いのはBreckerがEWIを吹いているからだけではないだろう。MainieriのヴァイブもMIDIにつないで,まるでシンセサイザーのような響きを生み出している。オリジナルのStepsはフュージョン系ミュージシャンによるネオ4ビート的な趣を持つバンドであったから,それからすると随分と印象の違いは大きい。

しかしながら,このときのメンツはキーボード抜きであり,編成上も従来のStepsあるいはSteps Aheadの延長線上で語ることには無理があるように思える。そもそもこのときの演奏はアルバム"Magnetic"からの選曲が多いし,テクノロジーの利用も従来以上に感じられるので,これが新しいSteps Aheadの姿だったとも言えるかも知れない。それに加えてMike SternもDaryl JonesもSteve Smith(あのJourneyのSteve Smithである)もそれまでのSteps Aheadのアルバムには参加したことがなかったはずだから,印象が異なるのも当然である。

しかし,これだけのメンバーが集まれば,当然のことながら熱い演奏が展開されており,やはりこれは燃えるのは当然である。ここまでBreckerがEWIを吹きまくったアルバムはそうはないだろう。ある意味そこが評価の分かれ目かもしれないが,私はこのアプローチ,決して嫌いではない。そもそも私はMike Sternの相当なファンなので,それだけでも実はOKなのである。相変わらずの手癖が出まくっているが,これが私にはたまらないのである。

まぁこれはSteps Aheadというよりも当時のフュージョン・オールスターズと言った方が適切かもしれないが,それでもこれはこれで十分スリリングなセッションだったと思う。それにしても,Jones~Smithのリズム・セクションは鉄壁と言ってよかろう。星★★★★。

Recorded Live at 簡易保険ホール on July 30, 1986

Personnel: Michael Brecker(ts, EWI), Mike Mainieri(vib), Mike Stern(g), Daryl Jones(b), Steve Smith(ds)

2007年8月12日 (日)

久々に元祖「ターミネーター」を見た

Terminater 「ターミネーター("The Terminater")」(米,'84,Orion)

監督:James Cameron

出演:Arnold Schwarzenegger, Michael Biehn, Linda Hamilton, Paul Winfield, Lance Henriksen

最近はDVDも廉価盤が多数発売され,映画好きにとっては大変結構なご時世となった。この作品も1,000円という値段につられて勢いで購入してしまった。逆に言うと,その値段でなければ買わないというのも事実である。

本作を見るのも随分久し振りだが,私自身はこの映画,決して嫌いではないので,相変わらず楽しめた。シリーズ化された本作の展開は皆さんよくご承知であろうから,私がここでどうこう言うまでもない。しかし,今回,再見して思うのは,この映画(あるいはシリーズ)ではSchwarzeneggerは悪玉でなければならないと言うことである。それがT2,T3になって,Schwarzeneggerの役割が変わったことにより,私はどんどん興味を失っていったのは事実だ。

確かに本作のSFXはショボいことこの上ないが,逆に言えばCGに頼らない手作りのよさとも言えるわけで,私は決して嫌いではない。シナリオそのものも「タイム・パラドックス」について目をつぶれば,結構よく書けている。セリフそのものが,続編へ引き継がれたこと自体もそのことを示している。Michael BiehnがLinda Hamiltonに発する"Come with Me If You Want to Live."はその典型である。

それにしても本作でのSchawarzeneggerの無慈悲ぶりはある意味爽快感すら覚えてしまうが,彼の喋りとも相俟って,結構笑えると言えば笑える。メイクやヘアースタイルなどはかなり無理があるが,Schawarzeneggerなら笑ってすませられるところもよい。また,この映画を成功に導いたのはLinda Hamiltonのキャスティングだろう。これが普通の美人女優なら白けるだろうが,Hamiltonのような普通の人っぽいところがいいのではないかと今回見ていて思ってしまった。

久々に見て,Paul WinfieldやLance Henriksenが出ていて,今更ながらへぇ~っと思ってしまったが,それだけ彼らの役回りは記憶にも残らないようなものとも言える。やられ方もあっさりしたものであるが,あくまでも彼らは脇ということで,まぁ仕方あるまい。

いずれにしても,本作は娯楽作としては十分楽しめるものであり,まぁ難しいことは抜きにして単純に楽しめばいいのではないかと思う。これで1,000円ならいいんじゃないということで,星★★★★。

2007年8月11日 (土)

Gerald Albrightがストレート・ジャズ風に吹くと...

Albright "Live at Birland West" Gerald Albright (Atlantic)

タイトルはライブ盤のようになっているが,ライブ音源は全10曲中前半5曲だけである。まず,これからして看板に偽りありである。Gerald Albrightはスムーズ・ジャズの人であって,何が彼をいきなりColtraneの"Impressions"で幕をあけるこのアルバムの制作に駆り立てたのかは分からない。しかし,結果はどうか。私はやはり違和感をおぼえざるをえない。

最初の"Impressions"から違和感は明らかである。一向に燃えないのである。これは明らかにAlbrightのフレージングがつまらないからだが,2曲目の"Georgia on My Mind"のフュージョン風アレンジでその違和感は更に増幅されていく。結局,これはスムーズ・ジャズのプレイヤーが,「私にもジャズ・オリジナルやスタンダードも吹けまっせ」的な発想で吹きこんだとしか思えないのである。5曲目は"C Jamm Blues"なんて曲なものだから,おーっ,Duke Ellingtonかと思いきや本家は"C Jam Blues"であって,これはAlbrightのオリジナルの騒がしいだけの曲である。あーアホくさっ。

後半のスタジオ・サイドに移っても,いかにもジャズ風ではあるが,リアル・ジャズにはなりきれない中途半端な演奏が続いて,はっきり言って辟易としてくる。そもそもTony Dumasの増幅されまくったベース音を聞いているだけで不愉快である。いずれにしても,「どう,私って器用でしょう」という感覚が強く感じられ,嫌らしさすらおぼえてしまう。この程度のアルバムでCannonball Addereyに捧げるとは片腹痛いわ。この人はちゃんと住む世界を自覚して演奏する方がよい。星★。

Personnel: Gerald Albright(as, ts), Patrick Moten(org, syn), Tony Dumas(b), Derek Nakamoto(key), Onaje Allan Gumbs(p, syn), Land Richards(ds) with Kirk Whalum(ts), Eddie Harris(ts), Joe Sample(p), Patrice Rushen(p),  Harvey Mason(ds), Leon "Ndugu" Chanler(ds) and Others

2007年8月10日 (金)

これも夜に適したジャズである

Toots "Footprints" Toots Thielemans (Emarcy)

このアルバム,実は長年に渡って私が愛聴しているアルバムの一つである。Toots Thielemansと言えば,Quincy Jonesとの共演や,Bill Evansとの"Affinity"も印象深いが,私はこのアルバムの冒頭の"Footprints"が好きで,その結果,このアルバムを何度もプレイバックしているのである。

ここでもToots得意のギターと口笛のユニゾンが聞けるが,これが何とも素晴らしいのである。もちろん,"Footprints"はWayne Shorter屈指の名曲と思うが,私の心の琴線をくすぐったのがこの演奏である。もちろん,そのほかで聞かれる演奏も素晴らしいのだが,私にとっては,このアルバムは"Footprints"のためにあると言っても過言ではない。

不思議なことに,私が所有する米国盤のアルバム・タイトルは"Footprints"なのだが,国内盤のジャケットはご覧頂けるとおり,"Windmills of Your Mind(風のささやき)"となっている。商売ッ気を感じさせて私にとってはこれは結構微妙だが,音楽の内容には関係ない。

アルバム中の曲のほとんどがミディアム~スローの曲ばかりなので,これはやはり夜向きの音楽である。中でもサティの"Gymnopedie #1"をやっているのには驚いたが,これがまた結構心に染みる出来である。これはTootsによるアレンジの勝利であり,ちゃんとジャズの名バラードのように聞こえる。Tootsのギターとハーモニカによる一人デュエットで演じられる"When I Fall in Love"も素晴らしい。また,ハーモニカ・ソロで演じられる国内盤のタイトル・トラック"Windmills of Your Mind"ははまり過ぎである。何だかんだと言ってもこれもたまらん。

とは言え,アルバムとしてはもう少し起伏があってもよいかなとも思える。しかし,こうした演奏だからこそ,夜に合うのであり,私はこれでも十分楽しめる。もちろん,酒付きならなおよしである。星★★★★☆。

Recorded on December 19 and 20, 1989

Personnel: Toots Thielemans(hca, g, whistle), Mulgrew Miller(p), Rufus Reid(b), Louis Nash(ds)

2007年8月 9日 (木)

Peterson/Jackson/Brownで悪いはずがない

Very_tall "The Very Tall Band" Oscar Peterson, Ray Brown and Milt Jackson (Telarc)

Oscar PetersonとMilt Jacksonと言えば,1961年の"Very Tall"や1971年の"Reunion Blues"等で共演を果たしているが,このアルバムは,Ray BrownのNYのBlue Noteでのホスティング・シリーズの一環として,彼らが再会を果たした時の実況盤である。

これだけの大物揃いだけに,演奏のクォリティは既に保証されたようなものだが,私が思うのは,Milt Jacksonの平均点の高さである。ある意味彼には駄作が作れないのだと言ってもよいぐらい,作品のアベレージが高い大したミュージシャンである。ここでも私の期待をこの人は決して裏切らなかった。

とは言え,私は決してこの大御所たちの熱心なリスナーだったという訳ではない。よって偉そうに語る資格はないのだが,この演奏を聞けば,ジャズの楽しさを多くの人がその場で理解できると思わせることが彼らの立派さである。大物の共演ゆえ,Petersonのピアノ・ソロ,Jacksonのヴァイブ・ソロ,更にはBrownのベース・ソロによる演奏も収められているが,アルバム単位の制作としては,やはりこの3人の共演をフルに収めるべきであったと思う。それがこのアルバムの玉に瑕と言ったところだが,そうしたリスナーは今年になって突然発売された続編゛What's Up?゛を購入すればよい。そんなことなら,最初から2枚組で出してくれという話もあるが,野暮は言うまい。それでもJackosnのソロによる"Nature Boy"はため息が出るぐらいよいということは言っておこう。星★★★★。それにしてもこのジャケのセンス,何とかならんものか。これだけで購入意欲をそいだら,それはそれでもったいないアルバムなのだから。

Recorded Live at Blue Note in NYC, on November 24-26, 1998

Personnel: Oscar Peterson(p), Milt Jackson(vib), Ray Brown(b), Kariem Riggins(ds)

2007年8月 8日 (水)

超豪華メンツによるFlora Purimのフュージョン作

Flora "Everyday Everynight" Flora Purim(Milestone)

いやはやそれにしても凄いメンツによるアルバムである。主要なPersonnelを書き出しただけでも強烈だが,そうしたメンツが適材適所で使われているところが,このアルバムの優れた点である。

本作はフランス人コンポーザー,アレンジャー,Michel ColombierとFloraのコラボレーション作であるが,Michel Colombierという人は,映画音楽を書いても,かなりスリリングな音楽を書く人だったイメージが強い。私の中では「相続人」や「危険を買う男」などのイメージが強く残っているが,そこにはある意味でジャズ・フュージョン的な香りがあったことも事実である。彼が米国に活動拠点を移してからのことはよくわからないが,私にとってはそういう人だったので,彼がリーダー・アルバムに多くのフュージョン系ミュージシャンを招聘したり,このアルバムを作ったことには大きな違和感はなかった。

本作の出来はと言えば,上述のとおり,有能なミュージシャンを適材適所に使って,Floraの魅力を引き出したことは評価してよいと思う。その好例が"Samba Michel"である。多くの曲でColombierはRhodesやピアノを弾いているのだが,この曲(これだけではないが...)では,伴奏をGeorge Dukeに任せている。この選択はまさに正しいと言わざるをえない鋭いバッキングをDukeが見せていることは見逃してはなるまい。ある意味,これだけのミュージシャンが集えば,「船頭多くして何とやら...」というリスクもあるが,ここではそうした問題は全く気にならない。

Flora Purimにもっとブラジル色を期待すると,やや肩透かしを食らうかもしれないが,これはこれですぐれたフュージョン・ボーカル・アルバムとして認められて然るべきアルバムだと思う。星★★★★。でも,どうしても私は彼女の声は好きになれないが(爆)。

Personnel: Flora Purim(vo), Randy Brecker(tp), Raul De Souza(tb), David Sanborn(as), Michael Brecker(ts), Lee Ritenour(g), Jay Graydon(g), Oscar Castro Neves(g), Herbie Hancock(p, el-p), George Duke(key), David Foster(p, el-p), Michel Colombier(p, key, arr), Jaco Pastorius(b, vo), Alphonso Johnson(b), Byron Miller(b), Dennis Belfield(b), Havey Mason(ds), Chester Thompson(ds), Airto Moreira(perc, vo) & Others

2007年8月 7日 (火)

Terence Blanchardによる映画音楽集

Jazz_in_film "Jazz in Film" Terence Blanchard (Sony Classical)

Jazz Messengers出身のと言っても最近はあまり意味がないようにも思うが,そのJM出身のTerence Blanchardが作り上げた映画音楽集である。映画音楽集と言っても,あくまでもジャズあるいはジャズ的な音楽が使われたものだけに限定されているので,「タラのテーマ」とか「エデンの東」とか「ジョーズ」とかをやっているわけではない。

収録されているのは「欲望という名の電車」,「チャイナタウン」,「地下街の住人」,「ある殺人」,「質屋」,「タクシードライバー」,「黄金の腕」にBlanchardの自作「クロッカーズ」という渋いというか,なるほどというものばかり。一曲だけDuke Ellington作の"Degas' Racing World"というのは邦題のわからない(あるいは未公開か。いずれにしてもドガに関するドキュメンタリー・フィルムとライナーにはある。)ものを収めた全9曲である。演奏はかなりの長尺が多いが,アルバムを全体のトーンは相当ムーディと言ってよいだろう。これをジャズ・アルバムと言うことにはやや抵抗もあるが,このムード満点の演奏は評価してよい。私にとってこのアルバムはやはり夜の帳がおりてから,酒を飲みながら聞く音楽である。ややホーンのアンサンブルが分厚すぎるかな(あるいは過剰アレンジメント)と思わせる瞬間もあるが,それがまた映画音楽的と言えばそのとおりであり,おそらくはBlanchardはそうしたムードも重視したのではないかと思われる。トータルで言えば星★★★☆ぐらいと評価するが,繰り返すがムードは満点である。

尚,本作で注目されるのはメンツの豪華さである。詳しくは下記のPersonnelをご覧頂きたいが,このアルバムはKenny Kirklandにとって,最後期の演奏のはずである。Kirklandは98年の11月に亡くなったが,このアルバムは同年3月,4月の録音だからである。よってかどうかは別にして,このアルバムはKenny Kirklandに捧げられているのも当然である。Kirklandはここではほぼ助演に徹しているが,それにしても早逝が惜しまれるミュージシャンであると改めて感じざるをえない。

Recorded on March 17, 18 and April 7, 1998

Personnel: Terence Blanchard(tp), Joe Henderson(ts), Donald Harrison(as), Steve Turre(tb), Kenny Kirkland(p), Reginald Veal(b), Carl Allen(ds)

2007年8月 6日 (月)

ジャズの要素としてリラクゼーション

Garland_2 "At the Prelude" Red Garland (Prestige)

ジャズは懐の広い音楽であり,様々なタイプの音楽があるから,その楽しみ方も様々である。ジャズにスリルを求めるリスナーもいれば,ひたすらリラックスできることを求めるリスナーもいる。その中で個々の嗜好に応じた楽しみ方をすればよいが,それも一定のクォリティが保たれていることが前提となる。ジャズなら何でもよいというわけではないということは当然のことである。

本作は,Red Garlandが50年代後半に録音したライブ盤だが,ここでは究極のリラクゼーションとでも言うべきピアノ・トリオの演奏が展開されており,ジャズの「スリル」とは対極にあると言ってよい。あくまでも予定調和的にスインギーであり,酒でも楽しみながら聞くには好適である。よって,本作は「カクテル・ピアノ」的なものとして認識されており,Garlandの作品の中では一般的な評価は決して高くない。しかしながらジャズにくつろぎを求めるリスナーにとっては,これほど楽しめる演奏もそう多くはなかろう。曲もスタンダードが中心で,肩肘はらずにジャズ・ピアノを楽しむにはうってつけである。この軽快なスイング感こそ本作の「肝」である。もちろん,Garlandにはもっとよい作品はある。"Groovy"でもよいし,"Soul Junction"でもよい。それでもこのアルバムが多くの人に愛されるのは,この洒脱なスイング感あってのことと思う。

逆に言えば,それがRed Garlandの限界でもあったわけで,結局この世界から逸脱することを彼は選ばなかったし,逸脱することも出来なかったのだろう。そうした冒険心のなさと言うか,進取の精神の欠如と言ってもよい彼の資質ゆえに,ミュージシャンとして50年代以上の輝きを放つことがなかったと考えることができるように思える。

だからと言って,このアルバムが「愛すべき小品」であることには何の違いもないし,今後もリラクゼーション派のリスナーからは支持を受け続けていく作品である。ちゃんと聞けば凡百のラウンジ・ピアニストとは違うという点にもきっと気づくはずである。星★★★☆。

Recorded Live at the Prelude in NYC on October 2, 1959

Personnel: Red Garland(p), Jimmy Rowser(b), Specs Wright(ds)

2007年8月 5日 (日)

久々にBrad Mehldauの入手困難盤シリーズ:その4

Deregulating_jazz "Deregulating Jazz" Brad Mehldau(Warner Brothers)

Pat Methenyとの来日も迫ってきたMehldauであるが,その入手困難盤シリーズを久々に書いてみたい。Mehldauのディスコグラフィ上,入手が難しいのはプロモーション盤での未発表演奏ということになる。Joshua Redmanのプロモーション盤然り,Warnerの"Ample Sampler"然りである。後者については私も未だにゲットできておらず,これは気長に待つしかない。

そのプロモーション盤の中でも,Brad Mehldauというミュージシャンに的を絞ったアルバムが,本作である。本作は全7曲であるが,うち5曲はWarner Brothersのアルバムからの既発音源なので,それが本作を探すことの理由ではない。本盤の価値は2曲のアルバム未収録音源である(2)の"Paranoid Android"と(6)の"Bottle Up And Explode"ということになる。但し,前者はStarbucksを通じて発売されたチャリティ・アルバム"Groundwork - Act to Reduce Hunger"にも収録されており,発売されたのはそちらの方が先のはずである。ということでは貴重度は全て(6)に起因するということになる。

その(6)だが,米国のFM(KRCW)の番組,"Morning Becomes Eclectic"の出演時の演奏を収めたもので,Mehldauは美しいピアノ・ソロを聞かせている。同番組の出演時の記録としては"Morning Becomes Eclectic"(まんまや!)というアルバムにこちらもソロによる"Exit Music"が収録されているが,こちらはちゃんと市販されているので,入手は容易である。この番組,ロック系が中心だが,素晴らしいミュージシャンが目白押しで出演しており,ここでの音源を収録したアルバムはお宝揃いである。同番組のWebサイトは一見の価値ありということで紹介しておく。http://www.kcrw.com/music/programs/mb

話がやや脱線したが,本盤はMehldauのプロモ盤としてはよく出来たものであり,彼の魅力をコンパクトにまとめたものだと思う。プロモ盤ということは割り引く必要があるが,それでも星★★★★☆。私はこのCDをeBayで入手したが,その後もたまに見掛けるので,入手希望者は気長にチェックしよう。

それにしてもMehldauコンプリートを狙うコレクターは辛いというのが正直な感想である。私自身,このエネルギーがいつまでキープできるか心配である。それでも,これからもBrad Mehldauはフォローしていきたいと思わせるミュージシャンである。

2007年8月 4日 (土)

King CrimsonがTV CMに使われるとは...

Larks "Larks' Toungue in Aspic" King Crimson(EG)

夜のニュースを見ていたら,コマーシャルで"Easy Money"が流れてきて,思わずびっくりしてしまった。CMはトヨタのISTのものだったと思うが,それにしても何で"Easy Money"なのか,あるいは何でKing Crimsonなのかはクリエイターに聞いてみないと分からない。

その"Easy Money"が収められた本アルバムは私にとってのCrimson初体験盤である。何せプログレの世界はYesから入ってしまった私が,YesよりもずっとハイブラウなCrimsonに到達するには随分と時間が掛かってしまったが,今となっては,私の中でのバンドとしての評価は圧倒的にCrimsonの方が上である。それはハードロックにおけるDeep PurpleとLed Zeppelinの関係に似ている(Purpleでその世界に入り,最終的にはZeppelinの方を評価)。それだけ昔の私は悪く言えばお子ちゃま趣味,実際のところ,一部の音楽を聞いてわかった気になっていただけだったということであるが,このアルバムを初めて聞いたときはかなりのショックを受けたものである。本盤が私のCrimson原体験であり,"In the Court of Crimson King"が歴史に残る名盤とは理解していても,私はこのアルバムの方を今でも好んでいる。

冒頭のパーカッション・ソロに続くFrippのギターにまずはノックアウトされるが,何とスリリングな演奏であろうか。Crimsonはそのインプロビゼーション指向からしても,ジャズ愛好家にも受け入れられうるバンドだが,緊張感をはらみつつ,鋭いフレーズがめくるめくように展開されるのはまさに快感である。とにかくアルバム全体を貫くテンションはロックを超越していると言ってもよい。

Jamie Muirはフリー・ジャズのアルバムにも参加しているぐらいだし,Frippのギター・テクニックもロックの枠をはみ出したものである。そもそもバイオリンの導入というのも,Mahavishunu Orchestraの影響とも言えるわけで,ある意味,これはジャズ・ロック的と言ってもよいかもしれない。しかしこの演奏は,John Wettonの素晴らしいボーカル,Bill Brufordの鋭いドラミングとも相俟って,当然凡百のジャズ・ロックとはなっていない。とにかくこんな音楽聞いたことないというのが,私の最初の感想だったと思う。もっと早く聞いておけばよかったともその当時思ったことを今更のように懐古する私である。星★★★★★。

やはりこのアルバムでの5人こそが今も昔も私にとっての最強のKing Crimsonである。

Recorded in January and February 1973 in London

Personnel: David Cross(vln, viola, mellotron), Robert Fripp(g, Mellotron, Devices), John Wetton(b, vo), Bill Bruford(ds), Jamie Muir(perc & allsorts)

2007年8月 3日 (金)

これが本当の藤原伊織の遺作らしい

Photo 「遊戯」 藤原伊織 (講談社)

藤原伊織が亡くなったのは今年の5月のことであった。その折,私は「ダナエ」が彼の遺作のように思い,当ブログにも記事を書かせてもらったのだが,先日,彼の本当の遺作である(らしい)本作が発売された。

本作は一組の男女を主人公とする連作が収められているが,これが結構いい出来である。相変わらず設定に無理がある部分もあるし,おそらくは完結していない連作ゆえに,説明不足の部分もある。しかし,何とも言えない人間心理の機微を,エンタテインメントのかたちでよく表したという点で,彼の筆致については高く評価すべきだと思う。つくづく惜しい作家を私たちは失ってしまったと思わざるをえない。

本作を読んでいて感じたのは,この小説の主人公の造形が極めて魅力的であり,非常にビビッドなイメージを読者に与えているということである。また,藤原の広告代理店出身というバックグラウンドを反映した業界知識も適切に活かされており,私は「ダナエ」よりもこの作品の方が素直に楽しめた。

もちろん,それは彼の生存中に読んだか死後に読んだかというやや感傷的なファクターもあろう。しかしながら,私には特に身長約180cmと設定された女性主人公が魅力的であった。それゆえ,誰か藤原の遺志を次いで,この続編を書いてくれないものかとも思ってしまったぐらいである。それぐらいの筆力はより多くの人に知ってもらいたいと思う。改めて藤原伊織への追悼の意味を込めて星★★★★★。

2007年8月 2日 (木)

Judy Collins:68歳にしてこの美声!

Judy_collins "Judy Collins Sings Lennon & McCartney" Judy Collins (Wildflower)

女性の年をばらすのはマナー違反ではあるが,往年の名フォークシンガー,Judy Collins,1939年生れの68歳である。彼女には失礼ながら,さすがに白黒のジャケにはちょっと怖いものもある。

Judy Collinsと言えば,Joni Mitchellの"Both Sides Now(青春の光と影)"を逸早く世に紹介した人であるが,もちろん年齢を重ねて声質は若干変わっているだろうが,それでもこの美声である。Joniがタバコの吸い過ぎで,かなりのディープ・ボイスになっているのとはえらい違いである。まるで昔のJoni Mitchellが歌っているような錯覚をしてしまう。

そのJudy Collinsが今回はLennon & McCartney集に取り組んだものであるが,選曲は彼女の声や年齢にフィットしたものとなっており,ロック・タッチの曲はほとんどない。一聴して地味と言えば地味だが,心地よい余韻を残すアルバムとなっている。ある意味,これはフォークとは言えないし,決してロックのアルバムでもない。あくまでもJudyという素敵な声を持つ歌手がBeatlesの曲を淡々と歌ったものである。そうした意味では刺激も振幅もスリルもないが,私はこのアルバムを聞いていて,何となく教会(あるいはその界隈)やピクニック等で音楽を聞いているような気分になってしまった。それぐらい清涼感たっぷりである。日曜の午後に遅いランチでも食べながら聞くと,結構いい感じと言えばお分かり頂けるだろうか。

まぁそうは言っても私も音楽の趣味については枯れたとは思っていないので,そう頻繁に聞くタイプの音楽ではないが,我が家に客人が訪れたときなどのBGMでかけると受けるかもしれないなぁなどと勝手に想像している。かつ,このCDに合う酒は間違いなくカリフォルニア・ワインだと言っておこう。星★★★☆。

それにしても,こんなアルバムにKing CrimsonのTony Levinがベースで全面参加し,楚々とした伴奏を聞かせているのが何とも意外である。

2007年8月 1日 (水)

感動に値しない秋川雅史

Photo 「千の風になって」 秋川雅史 (テイチクエンタテインメント)

このCD,今でも売れ続けているそうである。Amazonにアクセスすると,クラシックのおすすめとしてこのアルバムが表示されていた。私はクラシックも好きだが,この秋川なるテナーを紅白歌合戦で見て,私は家人にこのテナーは下手くそだと言ったおぼえがあるが,いまでもその気持ちには一切変わりはないし,それぐらいの審美眼はあるわと言いたい。

だいたいこんな音程がフラットしまくったテナーを聞いて,クラシックの歌手を聞いた気になられては困ると言わざるをえない。こんなものに金を払う余裕があるのならば,パバロッティでもドミンゴでも,カレーラスでもホセ・クーラでもいいから,もうちょっとましな歌手を聞いてからにして欲しいものである。歌詞に感動し涙するのは個人の勝手だが,歌に感動するのと歌詞に感動するのは全く次元の違う世界の話である。私はこの程度の歌手の下手くそな歌には一切感動できないし,感情移入も一切不可能である。「この程度」であるから,どうせすぐに化けの皮ははがれるであろうし,すぐ飽きられること必定である。ということで,秋川には稼げる時にどうぞお稼ぎをとだけ言っておこう。

そもそもこの歌は新井満が自由語訳として発表したものに,自ら曲をつけたものであり,聞くのであれば本質的には新井満バージョンから聞くのが本来の姿であるように思える。新井満はシンガー・ソングライターとしても一家言を持つ人だから私ならそうする(但し,この曲に興味はないので,金を出して聞く気はしない)。

それはそれでいいとして,私は作家としての新井満が好きだったが,最近やたらに所謂自由訳ばかりを連発し,印税を稼ぐ彼の姿勢には疑問を感じざるをえない。ちょっと「千の風になって」が売れたものだからいい気になっているのではないか。彼の小説を待ちつづける市井のファンもいることを新井は全く理解していないとしか思えない。John Lennonの"Imagine"まで自由訳するに至ってはいい加減にしてくれと言いたい。英語は英語で読むからこそ,自由な解釈が生れるのであって,何でもかんでも訳せばいいというものではない。最近では「般若心経」まで自由訳したらしいから,何をか言わんやである。解釈するのではなく,あるがままに(音としてだけでもよい)受けとめることの重要さもあるはずである。

これが最近のメディア・ミックスの成功例の一つだとしても,私には音楽的な意義は何も見出せないし,最近秋川の声がTVコマーシャルで流れるに至っては,不快感しか覚えないのである。商売繁盛は大いに結構だが,私個人にとっては不快極まりない音楽であり,声であり,メディア戦略である。私はこういう音楽(あるいは大したことのない歌手)がさっさとこの世から消えてもらうことを祈るばかりである。評価としては無星としか言えない。

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