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2007年7月31日 (火)

「このミス」の評価が当てにならんことを実証するような作品

Photo 「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午 (文春文庫)

地方出張をしていると,移動時に軽い本が読みたくなることがある。本書は名古屋に出張したときに,ある書店で大量に平積みされていた文庫本で,試しに買ってみた。私にとってはこれが作者の初体験だが,ちなみにこの書籍,2004年度版「このミステリーがすごい」国内第1位だそうである。そうしたランキングは売上げに直結するわけだから,私としても,相応の期待がなかったわけではない。

しかし,この本,私としては極めて微妙である。この「落ち」を読んで「やられた」と思うか,「何じゃそりゃ」と思うかは個人の勝手だが,「このミス」の評者たちは前者の反応,私は後者の反応をしただけである。確かに人の思い込みの怖さを痛感させられると言えばそうとも言える。また,何だかんだと言いつつ,私もあっという間に読了してしまったので,それなりには楽しめる。しかし,これをミステリーと呼べるかと言えばこれまた微妙なところであるし,期待に応える出来かと言えば,それも?である。この「落ち」だけで,本作を2004年度最高作とは言えないだろうし,もっと優れた小説などいくらでもありそうなものである。だから私にとっては「このミス」など当てにならないということになる。

結局のところ,筋書きはさておき,この「落ち」をどう評価するかでこの本に対する考え方は変わってくるということである。確かに伏線はちゃんと張ってあると言えばその通りだが,私にしては「それにしても・・・」である。地方出張の移動時間の暇つぶしにはよかったが,長い間,記憶に残るような本ではないというのが私の評価である。星★★。

2007年7月30日 (月)

参議院議員選挙結果について思う

結果ははなからわかっていた話であるが,その通りの結果がこの度の選挙で出た。私はリベラルな人間なので,自民党がLiberal Democratic Party(LDP)という英文名称を使うことに強い違和感をずっと感じてきていた。アメリカで言えば,共和党=保守,民主党=リベラルという色の違いがあっていいのだが,自民党は嫌いだとしても,日本の民主党もリベラルとは言えないよなーと思っていたのも事実である。しかしながら,LDPが完膚なきまでに叩きのめされたのは,私にとっては爽快であった。George W. Bushをじょーじ・どあほう・ぶっしゅと呼び,一国の宰相を"Shinzo Aho"と言っている人間にとっては当然の結果である。

しかし,これだけでは画竜点睛を欠いている。東京都で何の思想もなく,選挙権の行使にも全く関心のなかった「まるかわたまよ」なる候補者に当選確実がついたそうである。私は選挙運動で泣けば人の同情を買える,あるいは,物好きな一部上場会社社長を後援会長に据え,そのコネを使いまくって認知度向上を図ろうとするこの「まるかわ」くんは泡沫候補だと信じてきたが,こういう輩を当選させる一部の東京都民の民度はあまりにも低いと言わざるをえない。(また,その後援会長を引き受ける当該企業の社長も社長である。業績を考えればほかにやることがいくらだもあるだろうと言っておきたい。)

私はこのブログは音楽,映画,読書あるいは私の趣味のために運営してきた。しかし,私には私の政治信条もある。今回の選択を民意だと言い張ることは出来よう。しかし,なんでLDPの中でも「ほさかさんぞう」君ではなく,「まるかわたまよ」君なのか。私には「まるかわ」君に投票した人々の意図は決して理解することはできないし,この民度の低さは「おぶちゆうこ」君を当選させたどこかの県民に通じるものを感じさせる。向う六年間,東京都民あるいは日本国民は,この泡沫参議院議員のために税金を空費することになるということがなぜわからないのか。

LDPが大敗したことは今後の日本の政治にとってはいいことだとは思うが,細かいことを見れば,なんでそうなるのという選挙区も多数ある。「おざわいちろう」君はこのタイミングで体調を崩したらしいが,体調が悪かろうがなんだろうが,出てくるのが「おざわ」君のつとめであったと思う。今のままでいけば,民主党は「どいたかこ」君時代の社会党のような一時的な(マドンナ)ブームに終る可能性もあると真剣に考えていないのだとすれば,この国の政治は終っている。LDP大敗を喜びつつ,将来が心配になって,思わず書いてしまった。

私の今の気持ちを言い表す最も適切な言葉は「アンビバレント」ってことになるのだろうなぁ。

Deep Purple:私の洋楽の原点の一つ

Deep_purple_2"Made In Japan: the Remastered Edition" Deep Purple (EMI)

ブログを始めて200本目の記事は,私の音楽人生を懐古してみたい(大袈裟な!)。

私が強く洋楽を意識して聞くようになったのは,小学生の高学年の頃である。当時はラジオでもっぱら音楽を聞いていたわけだが,洋楽と言ってもCarpentersやBeatles程度であった。英語も習う前であるから,月刊平凡あるいは月刊明星の付録の歌本に書いてあるカタカナ詞をまねしながら口ずさむ,その程度のうぶな小学生であった。そんな私に衝撃を与えたのがFMから流れてきた"Highway Star"であった。とにかく,子供心に「何だこれは...」と思い,かつ世の中にこんなカッコいい音楽があるのかと思わせたのが,本作に収められた"Highway Star"だったのである。

日本で録音されたライブ盤の草分け的な位置付けにもある本作を,私は繰り返し聞いて来たし,その後,"Burn"ぐらいまではPurpleをちゃんと聞いていた。その後,私はプログレの世界へ走ってしまったので,Purpleのまじめなリスナーではなくなったが,それでもこのアルバムだけは別であった。高校生になってジャズに走っても,このアルバムは聞いていたし,今でもそれは変わりはない。

そんなアルバムが,初出から25年目を記念してリマスター(ミキシングはRoger GloverとIan Paiceが行っている)され,原盤ではカットされていた曲を追加した2枚組として発売されたのは1998年のことである。私はずっと,日本盤のアルバム・ジャケよりも,黄金の英国盤"Made in Japan"の方が雰囲気があって好きだったが,それが黒の"Made in Japan"となって更によくなったように思う。音源としてのよさは不変なところに,音とジャケがよくなって,曲も追加ということならば,ファンはこのアルバムをゲットすべきである。もちろん,3日間の来日公演を全部収めた3枚組というマニアックなセットもあるが,私はこれを持っていれば,普通の人は十分だと思う。

今聞いても,このアルバムには興奮させられるし,おそらくそれはこれからも変わりはないだろう。私がいかに中年あるいは壮年、老人となろうが,こうした音楽的な興奮は忘れずにいたいものである。このアルバムが日本という国で録音されたことを我々は誇りに思うべきである。Deep Purple黄金期の素晴らしい遺産として当然星★★★★★である。

Recorded on August15 and 16 in Osaka and August 17 in Tokyo, 1972

Personnel: Ian Gillan(vo), Richie Blackmore(g), Jon Lord(key), Roger Glover(b), Ian Paice(ds)

2007年7月29日 (日)

今更Joni MitchellのGeffen Boxの国内盤が発売だそうである

Joni_geffen "Complete Geffen Recordings" Joni Mitchell (Geffen)

昨今,豪華アーティストによる"A Tribute to Joni Mitchell"の発売や,Herbie HancockによるJoni Mitchell Projectの制作,更にはJoni本人による新作の9月発売など,Joni Mitchellを再評価する動きが顕在化するとともに,彼女に対する注目が巷で高まっているのは彼女の熱烈なファンとしては大変結構なことである。

こうした動きに便乗して,本日紹介のボックス・セットがJoni復活のタイミングに併せて国内盤として発売されるようである。しかし,このボックス,私にとっては疑問の多いものである。私はこのボックスの輸入盤が発売されてすぐ(もう4年も前のことである)に,Amazonのレビューに次のように書いた。

『JoniのGeffenレーベル時代は,売れ行きからすればJoniの「冬の時代」と称されることが多いが,"Wild Things Run Fast"から"Night Ride Home"に至る時期に,音楽的な問題があったという指摘が全くあたらないことを証明する素晴らしい音源ばかりである。しかし,この4枚組は,未発表音源はわずか3曲,更にBoxの中身もはやりの紙ジャケ風にはしているが,オリジナル・ジャケットには不忠実なシングル・ジャケット仕様で,全く中途半端な出来と言わざるをえない。Joniのコメント等を含め,ブックレットの出来がいいだけに,この半端さは致命的であり,よほどのマニアにしか薦められない。但し,音楽的には素晴らしい。評価はボックスとしての出来(星★★)のみだが,Rhinoレーベルに編集を頼みたかったと思うのは筆者だけか。』

今回発売の国内盤は情報によると,オリジナルに忠実なWジャケットの紙ジャケ仕様になるらしいので,輸入盤の問題の一部は解決するとしても,音源としては上に書いたコメントと大きな違いはない。それよりも,なぜ今更のようにこのボックスが発売されるのかということが,私には解せない。これこそ便乗商法そのものであるが,国内のレコード会社は,Joni Mitchellの音楽にリスペクトも何もないから,4年前にはこのボックスの発売を見送り,今回のように便乗可能と判断すれば,オリジナル・ジャケットに忠実というほんの小さな付加価値をつけるだけで,\10,000という馬鹿げた値段をつけて発売するということである。

Joni Mitchellは多くのミュージシャンからも尊敬を集める素晴らしいアーチストであり,より真っ当な評価と真っ当な取扱いを求めたいが,こうした便乗商法は一時的なものに終ることは必定である。結局日本のレコード会社のメンタリティなどその程度のものであり,もう少し音楽に対して真摯に活動して欲しいものである。なぜ,こうしたムーブメントが生じているのかを理解し,音楽及びアーティストに対する尊敬を示すべきである。こんなことをやっているから,Joniは一時的にレコーディングからの引退を宣言したのである。こういう人たちには少しはRhinoを見習えと言っておく。

2007年7月28日 (土)

Gil EvansのMonday Night Orchestraについて思う

Atsweetbasil "Complete Gil Evans & the Monday Night Orchestra at Sweet Basil" Gil Evans (Electric Bird)

Gil Evansについては,アルバム"Priestessについて書いたことがある(記事はこちら)。Gil Evansはアレンジャーという職業柄もあるが,基本的にMusicians' Musicianであって,決して日の当たる世界を歩んできた人ではない。しかし,Miles Davisとのコラボレーションからも分かるとおり,ジャズ界の偉人の1人である。

そのGil Evansが世間から奇跡的な注目を浴びたのは,キングレコードが"Live at Sweet Basil"の録音シリーズを発表した頃である。本日紹介するのは,そのキングレコードのライブ音源を集大成したものである。私は"Priestess"の記事で,このSweet Basilのライブについて,「このSweet Basilにおける所謂Monday Night Orchestra(MNO)については,その活動は評価に値するものの,創造性という観点では徐々に力を失っていった(あるいはマンネリ化した)」と真っ正直に書いているが,バンドとしてはかなり魅力的であったことは敢えて付け加えておいてもよいだろう。

ここには1984年と86年の演奏が8枚のCDに収められているが,私にとっては84年の方が魅力的に聞こえる。それは86年の演奏が,バンド・メンバーのアレンジを採用していることもあるかもしれないが,最大の理由は私が初めてこのバンドを聞いたときの感覚を84年の演奏の方が強く感じさせるからではないかと思う。

かなりの昔の話になるが,私が初めてNYCを訪れたのは大学生時代の1983年のことである。幸い,私はそのときにGil Evans & MNOのライブをSweet Basilで見ることができたのだが,今でもそのときのことは鮮烈に記憶している。そのときのメンバーはGil,Lew Soloff,大野俊三,Miles Evans,Tom Malone,David Sanborn,Nelson Rangell,George Adams,Pete Levin,Hiram Bullock,Mark Egan,Adam Nasbaumだったはずである。私はこのときのライブに興奮し,3セット全部聞いた(Sanbornは病みあがりで1セットだけで退場)が,George Adamsがウイスキーをラッパのみしながら,テナーを吹いていたのが懐かしい。

そのときの演奏(本CDもそうだが)はGilのアレンジというよりも,バンドによる自発性の高い演奏であり,レベルの高いソロイストによるコラボレーションと言うべきであった。例えば,ソロイストのバックでホーン・アンサンブルがリフを吹いているが,それはほとんどLew Soloffの指示によるものであり,決して事前に書かれたものではないのである。一方のGilはエレピで何らかのサインを出しているのも事実であり,そういう意味では,彼はここではアレンジャーというより,指揮者に近い役割を果たしていたと言ってもよいだろう。

そういう性格のバンドであるから,MNOはソロイストが誰かによって,相当出来にも違いが出てくるバンドであったように思える。そうした意味では1984年の録音ではHannibal Marvin Petersonの存在が大きい。彼はLive Under the Skyでこのバンドで来日した時も素晴らしいソロを取っていたが,やはり只者ではない。また,84年にはGeorge Adamsがテナーで参加していたが,86年はBill Evansに代わっており,Adamsの持つ下世話さが失せたのも86年の難点である。

しかし,全体を通して聞けば,スリルに溢れたアルバムであることは間違いない。これはこれで大いに楽しめるが,曲のダブりもあるので,かなりマニアックなボックス・セットと言ってもよい。確か1万か2万セット限定のシリアル番号付きであったはずである。現在は本セットがどれぐらいの価格で流通しているかはわからないが,見つけたら買っても損はしない。但し,相当のマニア向けなので,それだけは覚悟して購入すべきである。星★★★★。

Recorded Live at Sweet Basil in NYC on August 20 and 27, 1984 and December1 & 22, 1986

2007年7月27日 (金)

タフな7月

今月は異常に忙しい日が続き、今週もイベントや海外からの来客対応で、記事を書く暇もない。これまで結構粘って続けてきたので、また明日から気分を改めて書きたいと思う。ということで本日は開店休業。読者の皆様ごめんなさい m(._.)m

2007年7月26日 (木)

Bradley's:私が愛したジャズ・クラブ

Eubanks_2 "Live at Bradley's" Kevin Eubanks(Blue Note)

私がNYCに在住していたのは1990年~92年という短い期間であったが,その間に私が様々な音楽に接することができたのは振り返れば幸せなことであった。カーネギー・ホール,リンカーン・センター,タングルウッドでのクラシックを中心とするコンサートも思い出だが,やばり私の音楽の嗜好の中心はジャズなので,さまざまなジャズ・クラブで,あるいはコンサート・ホールで,さまざまなジャズ・ミュージシャンの生演奏に触れることができたのは最高の思い出である。この2年間に私は一生分ライブに行ってしまったと言っては大袈裟だが,それぐらいジャズ・クラブにはよく通ったものである。

その中で,私が最も世話になったのが,University Place(Washington Squareのそば)にあったBradley'sである。本当にこの店にはよく行った。もっぱら私がこの店に行くのは2軒目としてなのだが,ジャズ・クラブのはしごの幸福感を覚えさせてくれるという意味では,この店に勝る店はなかったし,今もない。この店がクローズしてしまったのは全く以って残念というほかはない。

Bradley'sのどこがよかったかと言えば,店の"Intimacy"とミュージシャンのセレクションである。金のない私はもっぱらバーでライブを聞いていたが,この店に限って言えば,テーブルよりバーの方がずっと雰囲気が味わえる稀有な店であり,それが私にとっての"Intimacy"そのものである。また,店の作りからドラムスが入らない演奏が結構多く,それがまた,NYCの喧騒から逃れ,1軒目のライブで疲れた心を和ませてくれる効果があったようにも思う。よく最後まで粘って朝帰りしたのも今となってはいい思い出である。そう言えば,デビュー間もないティーンエージャーの頃のChristian McBrideを聞いてぶっ飛んだのもこの店だった。

ということで,本日紹介のアルバムもドラムレスである。こういう演奏が定常的に行われていたのだが,NYCとはそういう街なのである。ジャケに写ったこのアルバム録音以降の出演者を見れば,このクラブのポリシーがわかるというもの。Chris AndersonとRay Drummondのデュオ,更にはJacky Terrasonトリオですよ。私が結構通ったのもお分かり頂けよう。

このCD,演奏はもちろんよいが,我が思い出のBradley'sに感謝して星★★★★★。このクラブで録音されたライブ盤はどれを取ってもはずれなしである。それぐらいよいクラブだったことの証だと言っておこう。

Recorded Live at Bradley's in NYC on May 21, 1994

Personnel: Kevin Eubanks(g), James Williams(p), Robert Hurst(b)

2007年7月25日 (水)

Paul Desmondのトロントにおけるライブ・トリロジー第3作

Desmond_telarc "Like Someone in Love" Paul Desmond (Telarc)

Paul Desmondがカナダ人トリオをバックに吹き込んだトロントでのライブ盤については,既に第1作"The Paul Desmond Quartet Live"を紹介している(記事はこちら)が,本日はその第3作について書きたい。

なぜ,第2作が飛ばされているかと言えば,当該作品が未CD化のためである。Artist Houseレーベルから発売されたその第2作も素晴らしい出来なのだが,如何せんジャケのイメージもなかなか見つからない状況なので,まずは入手しやすいこちらのアルバムを紹介することにした。

本作もカナダ,トロント,Bourbon Streetにおけるライブの模様を収録したものだが,本作はArtist Housu盤に先駆けること約7ヶ月,同地における同一メンバーとの演奏を収めた未発表音源として1992年に発売されたものである。プロデューサーとしてArtisit House盤同様,John Snyderがクレジットされているので,おそらくは同地において発表を前提に継続して録音されていた音源の一つと考えることが出来る。ほかの2作とは異なり,ここでの演奏はスタンダード曲のみとなっているが,相変わらずのDesmondサウンドで安心して聴くことができる。

バックをつとめるEd Bickert(g),Don Thompson(b),Jerry Fuller(ds)との相性も素晴らしい。Desmondとしては本当はJim Hallとの共演を望んでいたということなのだが,Hallのスケジュールが空かず,HallからEd Bickertを紹介されたらしい。しかし,ここでのBickertの演奏を聞けば,Hallの推薦が極めて正しかったことが証明されている。それにしても,このEd Bickert,愛用の楽器はFender Telecasterである。私もTelecasterを弾いているが,私の腕もヘボなせいもあるが,どうやってもこんな音は出ない。これはほとんどマジックの世界と言ってよい。Bickertの好演も含めて星★★★★★。こんな演奏を眼前でやられたら,今の私なら随喜の涙をこぼすだろう。

最後にこのジャケット・デザインだけは何とかならなかったものかと言っておきたい。これは明らかな手抜きである。まぁ仕方ないか。

Recorded on March 29, 1975 at the Bourbon Street Jazz Club in Toronto, Canada

Personnel: Paul Desmond(as), Ed Bickert(g), Don Thompson(b), Jerry Fuller(ds)

2007年7月24日 (火)

Dolphyファンこそ必聴のColtraneのVanguardボックス

"The Complete 1961 Village Vanguard Recordings" John Coltrane (Impulse)

Coltrane_vanguard_boxこれからは偉人について語ると宣言したので,今回はJohn Coltraneだが,真の主役は実はEric Dolphyである。

本作は世評の高い1961年ColtraneのVanguardのライブ音源の集大成盤である。これまで,このときのセッションは複数のアルバムに分散されていたのだが,それを演奏順に集大成したボックス・セットであり,これはファンにとってはたいへんありがたいコンピレーションである。まずそれを喜びたいが,喜びはそれだけには留まらない。

ここに収められた演奏のテンションは全編に渡って強烈であり,リーダー以下メンバーも完璧に近い演奏を展開している。これぞ熱い(時として暑苦しい)ジャズの典型であるが,本盤で最も注目すべきはEric Dolphyの演奏である。従来盤ではソロをカットされるという憂き目にあったDolphyの演奏がここでは完全に復活収録されていることが誠に喜ばしい。これが喜びその2である。はっきり言ってしまえば,ここでのDolphyのソロの魅力はColtraneを凌駕していると言っても過言ではない。それにColtraneがインスパイアされて,この激演が生れたと解釈すれば,このアルバムのMVPはDolphyにほかならない。よって,このアルバムはContraneのファンはもちろんだが,Dolphyのファンこそが「いの一番」に入手しなければならないアルバムである。録音も生々しく,目の前でTraneとDolphyが動き回るようである。

私はColtraneの大ファンというわけではないとしても,それなりには聞いてきたつもりでいる。その中でもこのボックス・セットが私に与えたインパクトは非常に大きかったし,日頃あまり聞くことがないColtraneのアルバムの中でも,このボックス・セットは例外的に聞くことが多いのである。それも偏にEric Dolphyのおかげと言ってはColtraneファンに失礼だが,それほどこのセットはDolphyの,そしてColtraneの凄い演奏の数々なのである。偉人と偉人が出会って,完璧なシナジーが生れた最適事例の一つ。星★★★★★以外にはありえない。

Recorded Live at the Village Vanguard in NYC on November 1, 2, 3 & 5, 1961

Personnel: John Coltrane(ts, ss), Eric Dolphy(as, b-cl), Garvin Bushell(oboe, contrabassoon), Ahmed Abdul-Malik(oud), McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Reggie Workman(b), Elvin Jones(ds), Roy Haynes(ds)

2007年7月23日 (月)

皆でDon Siegelをちゃんと評価しよう

Charley 「突破口!("Charley Varrick")」 (米,' 74,United Artists)

監督:Don Siegel

出演:Walter Matthaw, Joe Don Baker, Felicia Ferr, Andy Robinson, Sheree North, John Vernon

Don Siegelと言えば普通は「ダーティ・ハリー」である。確かにDon Siegelは今や巨匠と化したClint Eastwoodの師匠のような立場にあり,Eastwoodとのつながりも深いが,決してそれだけではない人である。低予算でこれだけ人をワクワクさせる監督もいないのであって,もっと評価されて然るべき人である。

今回,"Don Siegel Collection"という4枚組みのボックスセットが発売されたが,そこに収められているのが,「突破口!」,「ガンファイターの最後」,「殺人者たち」,「ドラブル」という渋いセレクションである。本日はそのうちの「突破口!」について書くが,これが冒頭からB級っぽい雰囲気と明らかに低予算というのを感じさせ,私のようなオジさんはそれだけでワクワクしてしまう。

はっきり言って筋書きは無茶苦茶である。しかし,こうした話をちゃんと時間だけもたせるだけでなく,きっちり落とし前もつけるところがDon SiegelのDon Siegelたる所以である。終った後は結構爽快なので,昔の映画館なら拍手が沸くのではないかと思わせる。まぁ,それでもやっぱり話は無茶苦茶なので,お芸術指向の映画ファンが決して見てはならない映画とも言える。しかし,そうしたお芸術指向の映画ファンには決して理解されないであろうこの映画の持つテンポを私は評価するのであって,小さいことには目をつぶるぐらいの度量が必要である。

この映画の主役,Walter Matthawはここでも飄々とした演技を見せており,いつも通りである。また,「ダーティ・ハリー」で狂気の犯人,「さそり」を演じたAndy Robinsonがここでも相当の変態ぶりを示すとともに,Joe Don Bakerがあくまでもにくたらしくて,これまたうれしくなる出来である。金を掛けなくても,CGを使わなくても,面白い映画は出来るのだということを認識させてくれる映画として,星★★★★☆を謹呈しよう。早くほかの3本も見なければ!!

尚,このDVDのジャケ写真がなかなか見つからないので,ここにはアメリカ版のDVDを掲示している。購入の際はご注意を。

2007年7月22日 (日)

Herb Gellerの最高傑作

Gellers "The Gellers" Herb Geller (Emarcy)

私は長年Emarcyレーベル時代のHerb Gellerに強く惹かれ続けている。その時代が彼の絶頂期であったことは間違いないだろうが,そのEmarcyレーベルには本作のほか,"Herb Geller Plays","Herb Geller Sextet"の3作を残しており,それぞれに素晴らしい出来である。その中でも特にワンホーンの"Plays"と本作が私は好きだが,どちらをとるかと言われれば,この"The Gellers"を取る。ただし,あくまでも好みの問題である。

Gellerはウエスト・コーストのプレイヤーであるが,本作ではイースト・コーストのハード・バッパーに勝るとも劣らない熱い演奏を展開している。冒頭の急速調でとばす"Araphoe"からしてスリリングである。この曲,"Cherokee"のコード進行に基づくらしいのだが,これははっきり言ってテーマなどはあってなきが如しであり,アドリブ一発勝負のようなものである。これを聞いたら,やれEastだ,やれWestだという議論が馬鹿馬鹿しくなること間違いなしである。とにかく全編を通じて,バップ・フィーリング溢れるワクワクするような出来である。

また,本作(及びEmarcy3部作)の魅力の高めている点として,妻Lorraine Gellerの見事なピアノ・プレイが挙げられる。一聴しただけでは女性とはわからない力強いタッチで,急速調でもグイグイ飛ばすその演奏は非常に魅力的である。Lorraineのピアノは1950年代半ばの女性プレイヤーの演奏としては画期的なものであり,より評価されて然るべきものと思う。つくづくの夭折が惜しまれるピアニストである。Lorraineを失ったHerb Gellerがこの当時の輝きを取り戻すことはなかったことを考えれば,ジャズ界にとっても,Herb Gellerにとっても彼女の死は痛恨事であった。

いずれにしても,これはHerb Gellerのキャリアの中でも最高の作品であるとともに,Lorraine Gellerにとっても,その能力がピークに達しているものと思う。Herb Gellerは日本での知名度は決して高いとは言えないが,本作は見逃すにはあまりに惜しいアルバムである。皆さんにも是非聞いてもらいたいアルバムとして強く推薦する。星★★★★★。

Recorded on April 20, 21 & 26, 1955 in Los Angeles

Personnel: Herb Geller(as), Lorraine Geller(p), Keith "Red" Mitchell(b), Mel Lewis(ds)

2007年7月21日 (土)

私にとってのDavid Sanborn最高作

Straight_cd "Straight to the Heart" David Sanborn (Warner Brothers)

先日,Sanbornについては"A Change of Heart"について書いた。あれはあれでカッコいいアルバムなのだが,私にとっては彼の単独リーダー・アルバムの中での最高傑作は本作品である。

本作品はスタジオ・ライブ形式で収録されたものであり,同一メンバーによる映像も"Love & Happiness"というタイトルで残されている。その映像版も白黒映像と多様なカット割でそれはそれはスタイリッシュな出来なので,ファンは必見なのだが,今回は若干比較を加えながら書くこととしたい。

Straight_dvd このアルバム,映像と比較してみると,CDにはパーカッション,ホーン,コーラスがダビングされていたりして,より精緻なプロデュースが行われている。よくよく比較すれば,映像版と異なる演奏も収められていることがわかるのだが,音楽としてだけ評価すれば,やはりこの音盤に軍配が上がるように思う。全体を通して,各人のソロのレベルも高いので,映像版も音だけでも楽しめるのだが,決定的なのは"Run for Cover"におけるMarcus Millerのベース・ソロである。これだけは明らかに映像版よりこちらの方がはるかによい。これほどイケてるスラッピング・ベースはなかなか聞くことはできまい。

映像版を見ていると,かなりの部分がヘッド・アレンジのようで,意外とラフなアレンジメントで演奏されていたことがわかり興味深いが,アンサンブルとしては破綻がないのが凄い。これが一流ミュージシャンの実力というものであろう。曲としてはJames Ingramでおなじみの"One Hundred Ways"はじめ佳曲満載。Hiram Bullockもでぶっちょな腹を揺らしながらグルーブしているし,Marcus Millerは絶好調,Buddy Williamsもタイトに決めている。1曲目の"Hideaway"がこれほどカッコよい曲だとは,オリジナルのテンポでは感じなかったが,ここでは随分テンポを速めて素晴らしい演奏が展開されており,冒頭から私はいつもノックアウトされてしまうのである。そして,グルーブは"Run for Cover"でピークに達する。昔のLPで言えばA面だけでこのアルバムは星★★★★★である。

このアルバム,国内盤が1,500円で発売されるそうであるから,未聴の方は買って損はあるまい。もちろん,輸入盤はもっと安く手に入るはずだから,国内盤にこだわる必要はない。それにしてもこの頃のSanbornはイカしていた。

Personnel: David Sanborn(as), Don Grolnick(key), Hirum Bullock(g, vo), Marcus Miller(b, syn, vo), Buddy Williams(ds), Hamish Stewart(vo), Ralph McDonald(perc), Errol "Crusher" Bennett(perc), Michael White(perc) and Others

2007年7月20日 (金)

この音楽が果たしてジャズの裾野を広げるのか

Boehlee "Romeo and Juliet" Karel Boehlee Trio (M&I)

European Jazz Trioの初代ピアニスト,Karel Boehleeのリーダー作である。日本のM&Iレーベル向けに録音されたものだが,私はこのアルバムを聞いて,どう評価すればいいのかわからないというのが正直なところである。

確かに耳あたりは心地よい。ペダルを多用し,音の余韻を楽しませるようなタッチは結構美しいと思うが,そうした音楽なら別にジャズである必要はない。ピアノ・サウンドの美しさを楽しむのであれば,私にとってはショパンでもシューマンでもよい話である。結局は編成だけはトラディショナルなピアノ・トリオの形態を保持しているものの,ジャズ的な雰囲気は極めて希薄である。Michel Legrandを中心に,フランス系の曲を集めたというのがその理由でないことは明らかである。同じLegrandをピアノ・トリオでやってもBill Evansならこうはならない。「枯葉」然りである。要はプレイヤーの資質,プロデューサーの矜持の問題である。

プロデューサーや,これをゴールドディスクに認定したスウィング・ジャーナル誌は,こうした音楽でジャズ・ファンの裾野が広がればよいと言うかもしれない。しかし,こうした耳あたりのよい音楽がジャズの原体験となった場合,本当にそれがさまざまなスタイルを持つジャズという音楽への入り口になるかと言えば,おそらくは逆効果ではなかろうか。こうした音楽から入れば,こうした音楽しか期待しなくなるとも言えるのである。

私がジャズを聞き始めたのは高校生の頃であったが,それは斜に構えたカッコつけだったと言われても否定し難いところがあるのは事実である。そうした私がディープなジャズの世界を本質的に理解したのは,浪人中にジャズ喫茶でほとんど1日中ジャズを浴びるように聞かされてからである。それまではMonkもParkerも全くその魅力がわかっていなかったのである。私のジャズ原体験はHerbie Hancockの"Maiden Voyage"だったからまだましだとしても,本盤を聞いて,「だからジャズっていいんだよねぇ」と思ってしまった若者,その他のリスナーが,例えばMonkの"Brilliant Corners"を聞いたらどう思うだろうか。これは自分の求める世界と違うから,「エバンス派」だけ聞いてればいいと思ってしまったとすれば,それは大きな不幸である。

もちろん,「わかる」,「わからない」という議論はある意味不毛である。しかし,私はジャズという音楽が持つ幅広い魅力を理解すれば,音楽に接する楽しみははるかに大きなものになると思うし,その上で好き嫌いを決めてもよい話である。

この音楽は,別に流し聞きをするには全く問題はないと思うが,これが本当に推薦に値する音源かと言えば,決してそんなことはない。この程度の音楽に大枚はたくのであれば,偉人たちの名盤が廉価で発売されているので,そちらからちゃんと聞いた方がはるかに健康的である。その上で,この音楽が好きだと言うならば,私はそれに文句を言う筋合いではない。

いずれにしても,私としてはジャズに何となくオシャレさを求める皆さんだけにどうぞとしか言うことはできない駄盤である。これよりもひどいアルバムも世の中には多数あるので,星★★としておく。

Recorded on September 5 and 6, 2002 in Amsterdam

Personnel: Karel Boehlee(p), Hein van DeGeyn(b), Hans van Oosterhout(ds)

2007年7月19日 (木)

"'Four'&More":疾風怒涛の如き激演

Miles_4more_2 "'Four'&More" Miles Davis (Columbia)

これまでこのブログではMilesを含めてあまりジャズの偉人については記事を書いてこなかった。それは決して意図的なものではないのだが,私が書かなくても誰か書くよね~的な考えがなかったわけでもない。しかし,今までも彼らの音楽は聞いてきたし,今でも聞いているので,今後はもう少しそうした偉人についてもスペースを割くようにしたいと思う。そこで本日はMiles Davisである。

私は結構なMilesファンであるが,死の直前のMilesの演奏まで好きなわけではない。最後に私がMilesを見たのは私が米国滞在中のAvery Fisher HallにおけるB.B.Kingとのダブルビルだったが,はっきり言って聴衆に媚びるようなMilesの所作,あるいはワンパターンに陥った演奏など,はっきり言って私にとっては辛い思い出となってしまった。もちろん,その後間もなくMilesが帰らぬ人となるなど夢想だにしなかったが,それでもその当時はさすがにMilesも苦しいと思い始めていたのは事実である。

しかし,そうした最後期を除けば,Milesは私を魅了し続けてきたし,今でも多くの音源は鮮度を保っている。"Somethin' Else"然り,"Kind of Blue"然り,"Bitches Brew"然りである。これは素晴らしいことである。その中で,今日は"'Four ' & More"である。このアルバムは,私のMiles歴の中でもかなり早い時期に入手したアルバム(当然LPの時代である)だったが,最初に聞いたときの衝撃はいまだに忘れられない。より具体的に言えば,"Kind of Blue"で聞きなれていたはずの"So What"が「なんでこうなるの?」という衝撃である。このスピード感,荒荒しさは何なのかとその当時は思ったものである。

ご承知の通り,このアルバムは"My Funny Valentine"と対を成すアルバムであるが,ハイブラウなリリシズムに満ちたのが"Valentine"だとすれば,このアルバムは疾風怒濤,まさに鬼神と化したMilesである。全てを急速調で飛ばしに飛ばすこのアルバムを聞いて興奮しないリスナーは,暴言を承知で言えば,ジャズの世界と無縁と諦めた方がよい。強烈と言ってもいいし,凄いといってもよいのだが,これはもはや次元の違う世界に行ってしまっている。HancockもTony Williamsもこれはトランス状態と言っても過言ではない。何が彼らをそうさせたのかを知る由もないが,とにかく強烈この上ない史上稀に見る激演である。

"So What"も速いが,"Walkin'"はもっと速い。これでは「徒歩」ではなく「全力疾走」である。いやはやの世界だが,録音されたのが真冬の2/12ということだから,きっとNYCには寒風吹きすさんでいたのだろう。そうした季節を踏まえて,人の心も体も心も熱くするための激演だったと考えることにしよう。久々に聞いてみたが,やはり私は興奮の坩堝にたたき込まれた。やはりMilesは偉大である。星★★★★★。

Recorded at the Philharmonic Hall, NYC on February 12, 1964

Personnel: Miles Davis(tp), George Coleman(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Anthony Willimas(ds)

2007年7月18日 (水)

Rachel ZによるWayne Shorter曲集

Rachel_z "On the Milky Way Express" Rachel Z Trio (Tone Center)

ジャケだけ見ていると思わずのけぞるようなアルバムだが,これはRachel Zが女性だけのトリオで吹き込んだWayne Shorter曲集であり,ジャケの印象だけでこのアルバムが見過ごされるのは惜しいことである。

Rachel Z(本名はRachel Nicolazzoと言う)はShorterの"High Life"にも参加していたし,Herbie Hancockと並んでその影響の大きさをWebサイトでも明らかにしているので,こうしたアルバムを吹き込むことについては特に違和感はないし,ある意味彼女にとって当然のことだっただろう。ここでは基本的にはアコースティック・ピアノだけに専念し,伝統的なピアノ・トリオ・フォーマットで演奏を行っているが,力強さには欠けるものの,手堅く安定した演奏を展開しており,Rachel ZのファンあるいはShorterのファンは買っても損した気にはなるまい。

ピアノのフレージングに関しては,やはりHerbieの影響が顕著であるが,バンドメイツ含めてなかなかの好演である。Rachel Zにはこうした安定感があるところが,いろいろなレコーディングに呼ばれる理由であろう。同じようなShorter曲集ということではEnrico Pieranunziにも作品があるが,イメージ的にはPieranunzi盤ほどの意外性はないが,これはこれで楽しめる出来となっている。星★★★☆。

ちなみに私はRachelのライブを2回見ている。一度目はSteps Aheadの一員として,二度目はAl Di Meolaのバンドでであるが,場所は2回ともNYCのBlue Noteにおいてであった。一度目は彼女がプロ入りしてまだ日が浅い頃だと思うが,今でも(多分小柄な)彼女がキーボードを弾く姿が目に浮かぶ。結構当時は可愛いという印象だった彼女がハイブラウなフュージョンを演奏しているというギャップが面白かった。二度目のときは,私のテーブルの横に座っていたのが彼女のご両親で,一家で彼女を応援している姿が微笑ましかった。その後,丁寧にサイン入りのカードを送ってくれる律儀な彼女は今でも私の中では好感度の高いミュージシャンである。

閑話休題。それにしても,このアルバム,ハード・フュージョンを得意とするTone Centerレーベルからのものだが,このレーベル,ジャケのセンスだけは何とかならんものかと常々思ってしまう。

Personnel: Rachel Z(p), Miriam Sullivan(b, el-b), Allison Miller(ds)

2007年7月17日 (火)

素晴らしいRachael Yamagataのデビュー作

Rachael "Happenstance" Rachael Yamagata(RCA Victor)

このアルバムが発売されたのは2004年,私が購入したのはそれから随分経ってからのことである。いずれにしても彼女の日本公演が終ってしまってからだったのは私にとっては痛恨事である。そう思わせるほど,このアルバムはよい。

何がよいか。彼女の声と作曲能力である。私はJoni Mitchell,Ricky Lee Jones,Laura Nyroなどの女性ボーカリストが好きなのだが,私のフレイバーにこれほどフィットしたボーカリストは近年いない。はっきり言ってしまえば,Nora Jonesよりはるかに好きである。まさにピンポイントで私の心をえぐられたと言ってもよいだろう。

アルバムはどこから聞いてもいい出来だが,どちらかと言えば,ダークな基調を持つ音楽である。そこが好き嫌いの分かれ目だと思う。いずれにしてもチャラチャラしたところは一切ない大人のためのアルバムと言ってもよい。私にはある意味,この「暗い」感覚がたまらないのである。尚,13曲目が終った後,約3分30秒の無音状態の後にシークレット・トラックが入っている。最後を締めるこの弾き語りを聞き逃すことなかれ。星★★★★★。尚,本盤の国内盤のジャケットはRachaelの本質と異なるようなポートレートが使われていて,私ははっきり言って気に入らない。彼女の本質を示すにはここに掲げた原盤のジャケットこそ相応しい。

それ以来,Rachael Yamagataの動静はあまり伝わってきていないが,彼女のWebサイトによれば,"New Album Coming Soon"とある。今から期待が高まっている私である。

2007年7月16日 (月)

これまた懐かしの"Sugar"

Sugar "Sugar" Stanley Turrentine (CTI)

「いなたい」というわかったようでよくわからない表現こそが適切なアルバムである。3曲目には"Impressions"が収録されているが,これほど「ユル~い」同曲が聞けるのはこのアルバムをおいてほかにないと言っては言い過ぎか。

私はStanley Turrentineの熱心なリスナーではないが,やはりブルージーでアーシーなサックス・プレイヤーということになるのだろう。そうした人が,この編成で吹けば,そりゃこういうサウンドになるわというある意味(よい意味で)予定調和的なアルバムと言ってもよいだろう。よって,Coltrane作"Impressions"をやっても,全くなモーダルなアプローチではなく,どこまでも「いなたい」のである。

タイトル・トラック"Sugar"などは微笑ましいと言わざるをえない曲であり,実際聞いていて思わず笑ってしまうのだが,これはこういうものとして楽しめばよいだけの話である。これもジャズの懐の広さを示すものとしてリスナーにも受容する心の広さが必要である。腕組みしながら深刻ぶって聞くのだけが,ジャズに接する方法ではない。

ただし,Freddie Hubbardは今イチなので,Freddieファンは期待することは禁物である。これはおそらくTurrentineとの相性の問題である。ハード・ヒッター,Freddieにこのゆるさは無理ということもできよう。変な例えをするなら,松坂大輔がナックルボーラーになるようなものである。

本作をトータルで見れば星★★★程度の出来だが,微笑ましさを評価するならば,☆ぐらいオマケしてもよいかもしれない。

Recorded in April, 1970

Personnel: Stanley Turrentine(ts), Freddie Hubbard(tp), George Benson(g), Lonnie L. Smith, Jr.(el-p), Butch Cornell(org), Ron Carter(b), Billy Kaye(ds), Richard "Pablo" Landrum(perc)

2007年7月15日 (日)

John Patitucciのトータルな才能

Sketchbook "Sketchbook" John Patitucci (GRP)

John Patitucciと言えば,Chick CoreaのElektric Bandでシーンに登場し,そのバカテクぶりに多くの人が驚いたのももう20年近く前のことになる。Patitucciは現在も継続的にリーダー・アルバムを発表しているが,私の中ではGRPレーベルから作品を発表している頃のPatittucciがよい。

特にGRPでの最初の3アルバムはどれもカッコいいのだが,その中でも私はこのリーダー第3作"Sketchbook"が特に好きである。Patitucciのベーシストとしての技が聞けるのはもちろんなのだが,このアルバム,彼の作曲能力も侮れないことを証明している。そうしたPatitucciの才能は評価した上で,私がこのアルバムが好きなのはMichael BreckerとJohn Scofieldの素晴らしい客演によるところが大きい。

特にScofieldは私が彼に求める姿を"Scophile"で思いきり聞かせてくれており,これはたまらない。最近のScofieldはこうしたスタイルで弾かなくなってしまったのが残念だが,このScofield節を聞いて,燃えないリスナーはScofieldファンではないと言ってしまおう。Scofieldを煽るVinnie Colaiutaのドラミングもよい。この曲,Patitucciのオリジナルなのだが,Scofieldが書いたと言っても信じてしまうリスナーも多いだろう。それぐらいはまっているのである。

一方のBreckerは,冒頭の"Spaceship"でフュージョン・サックスの王道を聞かせるとともに,その名も"'Trane"ではストレート・アヘッドなテナーで迫る。はっきり言って,私はこのアルバムを聞くときは,この3曲が中心になってしまうのだが,もちろんそのほかの曲も楽しめることは保証しよう。後にPatitucciはブラジル色を強く出した"Mistura Fina"というアルバムをGRPに残しているが,ブラジル指向の萌芽はこのアルバムでも聞ける。

それにしても"Scophile"である。繰り返すが,これはたまらん。これだけなら星★★★★★を献上してもよいが,トータルでは星★★★★というところ。

Personnel: John Patitucci(b), Michael Brecker(ts), John Scofield(g), Peter Erskine(ds), Vinnie Colaiuta(ds), Terri Lyne Carrington(ds), Alex Acuna(ds, perc), John Beasley(p, key), David Witham(key), Jon Crosse(ss), Dor Caymmi(vo), Ricardo Silveira(g), Paulinho Da Costa(perc), Judd Miller(key)

2007年7月14日 (土)

疲れた体を癒す音楽も必要である

Russell_malone "Heartstrings" Russell Malone(Verve)

この10日ばかり,きついスケジュールの国内出張が続き,はっきり言ってバテバテである。こうしたときにはおとなしく家に帰ればいいものを,ついフラストレーションがたまって飲みに行ってしまい墓穴を掘っている自分が情けない。久々に「疲れた~っ!」という感覚(Exhaustedという表現こそ似つかわしい)をおぼえているが,かなりの音楽好きの私が,音楽すら聞く気にならないというのだから,かなり重症である。

そうしたときには,無思想にくつろげる音楽こそが私に救いの手を差しのべるが,このRussell Maloneのストリングス付きバラード・アルバムはまさにそうした類の音楽である。渋い選曲を,美しいストリングスに乗せて演奏したこのアルバム,ジャズ的スリル,技ありのインプロビゼーションの世界等といった世界とは無縁である。とにもかくにも淡々と美しい音楽が流れていくだけである。疲弊した体と頭にはこれは助かる。

ストリングスの編曲陣は,Johnny Mandel,Alan Broadbentというのはなるほどという線だが,Dori Caymmiが4曲を担当しているのが意外と言えば意外である。ここで3人が提供している控え目で落ち着いたアレンジメントは大変好ましく,この自己主張しないストリングスというのがとにかく疲れた私には心地よかった。

これだけのメンツを集めているのであるから,各人にもっとソロ・スペースを与えてもよさそうなものだが,アルバムのコンセプトが技を聞かせることではないので,まぁこれはこれで納得できるものである。もはやイージー・リスニングではないかと言われればその通りであるが,こうした音楽が必要なときもあるのである。まさにTommy Lipumaプロデュースらしい作品と言えよう。星★★★★。

Recorded on January 15, 16 in NYC

Personnel: Russell Malone(g), Kenny Barron(p), Christian McBride(b), Jeff "Tain" Watts(ds)

2007年7月13日 (金)

最もイカしたDavid Sanborn

Change_of_heart "A Change of Heart" David Sanborn (Warner Brothers)

David Sanbornも最近は随分と渋みを感じさせるアルバムが多くなったが,彼が最もイカしていたのはこのアルバムの頃だと思う。このアルバムが出たのが1987年だったが,この翌年に今はなき「ライブアンダーザスカイ」で見たSanbornグループのカッコよさは今でも忘れられない(Hiram Bullockが会場を走り回りながらギターを弾いていたのも懐かしい)。そのときもこのアルバムからの曲から結構演奏されたと記憶している。来日時のメンツで吹き込まれた(はずの)ブートレッグ"Alpenhorn"と曲はかぶっているはずなので,その収録曲を見る限り,少なくともこのアルバムから"Chicago Song"や"The Dream"更には"Summer"等をやったのではなかろうか。

このアルバムは,ある意味,かなりロックやファンクのフレイバーに満ちており,Sanbornの歌心というよりも,「ノリ」が強く打ち出されていて,アルバムのどこから聞いても相当なカッコよさである。プロデューサーが複数で,若干毛色の違う曲がないわけでもないのだが,Michael Colinaが製作総指揮として仕切っているので,アルバムとしての一貫性は相応に保たれていると言ってよい。

もちろん,歌伴をするときのような雰囲気はこのアルバムにはなく,Sanbornはひたすらぶあついバック・サウンドに乗って吹きまくっている。そこが好き嫌いのわかれるところであろうが,私としてはトータルな意味でのこのアルバムのカッコよさを評価したいと思う。

私はそう言いつつ,"Double Vision"や"Sraight to the Heart"をより愛聴しているが,今でもこのアルバムを聞いていると,体がリズムに勝手に反応してしまい,娘に「パパ乗ってるし...」と指摘を受けてしまっている。録音から20年経過しても,いまだに私を乗せる音楽として評価し,星★★★★☆。

Personnel: David Sanborn(as), Hiram Bullock(g), Hugh McCracken(g), Nicky Moroch(g), Mac Rebennnack(p), Phillip Saisse(key), Don Grolnick(el-p), Bernard Wright(key), Ronnie Foster(key), Michael Sembello(key, vo), Marcus Miller(b), Anthony Jackson(b), Steve Ferrone(ds), Steve Gadd(ds), Micky Curry(ds), John Robinson(ds), Mino Cinelu(perc), Paulinho da Costa(perc) and Others

2007年7月12日 (木)

Crowded House:このポップさはなんだ!

Crowded_house "Time on Earth" Crowded House (Parlophone)

これが私のCrowded House初体験である。とあるCDショップでかかっていたのを聞いて,ある意味「一聞き惚れ」してしまったのだが,このポップさが何とも素晴らしい。ちょっと聞いた感じでは,Prefab Sproutの"Jordan"を思い出してしまった。

情報によれば,彼らにとっては14年振りのオリジナル・アルバムということであるが,Ethan JohnsとSteve Lillywhiteという二人の敏腕プロデューサーによって制作された本作は,どこから聞いてもポップなサウンド満載であり,何とも素晴らしい出来である。Ethan Johnsと言えば,Ray LaMontagneのアルバムのプロデュースで,私の中では一気に注目度が高まっていたのだが,このアルバムで更に目が離せない存在となった。

アルバム全体の出来はNeil Finnの曲作りに負うところが多いように思うが,演奏には破綻はなく,これはかなりよい出来と聞いた。こんなバンドと知っていれば,もっと早くに注目していたが,やはり私も勉強が足りない。そうした点では某CDショップに感謝である。だからCDショップ通いはやめられない。世の中では元The SmithのJohnny Marrの客演が注目されているようだが,それなしでも注目に値する佳作である。星★★★★☆。

Personnel: Neil Finn(vo, g, key, vib), Nick Seymour(b, b-vo), Mark Hart(p, key, g, b-vo), Matt Sherrod(ds, perc), Ethan Johns(ds, b-vo, g, sitar), Johnny Marr(g), and Others

2007年7月11日 (水)

VSOP Live under the Skyの完全盤

Luts "V.S.O.P Live Under the Sky" Herbie Hancock (Columbia)

2004年に発売された1979年V.S.O.P.来日時の模様を収めた完全盤である。ディスク2枚に2日間の演奏が収録されているが,何かと伝説呼ばわりされている「豪雨の中の演奏」はディスク2に収められている。

もともとこのアルバムが発売された時のマスター・テイクは豪雨の中でない方の7/26の演奏であるが,日本人の琴線にはアンコール曲を除いて未発表であった7/27の豪雨の中の演奏の方が触れるのはある意味当然である。ライナーには27日の演奏は全て未発表と書いてあるが,アンコールは既に公開されていたので,この記述にはそもそも誤りがあるし,そもそも27日の演奏が1997年に日本でのみリリースされた「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ伝説」で既に公開済みの可能性もある。しかし,そうしたデータ的なところは別にしても,手頃な価格の2枚組として流通するようになったことはめでたい限りである。

しかしながら,である。V.S.O.P.クインテットはメンツがメンツだけに,演奏が悪かろうはずはないが,正直なところ最初ほどの驚きがなくなっていたのは事実であろう。特にこのときの来日時にスタジオ録音された"5 Stars"はもはや煮詰まりつつあるバンドの姿を浮き彫りにしていたように思う。だが,ライブというセッティングにおいては,これだけの実力者,特にHerbieは言うまでもなく,聴衆を乗せるのがうまいFreddie HubbardやTony Williamsという役者の存在ゆえ,熱い演奏となっていることは言うまでもないし,演奏自体は大いに楽しめる。特にあの「豪雨」がこのライブ(プレイヤー及び聴衆)を更に燃えさせるものとなったことは想像に難くない。

私はこの演奏が録音されたときは関西在住の受験を控えた高校三年生であったから,当然のことながら,この場にいることはできなかったが,それを追体験できるという意味では,ありがたいアルバムであるとともに,屋外ジャズ・フェスティバルの楽しさを広く知らしめたという点で,"Live under the Sky"というのは意義のあるイベントであった。そうした意味も含めて星★★★★☆。

Recorded on July 26 & 27, 1979 at 田園コロシアム

Personnel: Herbie Hancock(p), Freddie Hubbard(tp), Wayne Shorter(ts, ss), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

2007年7月10日 (火)

懐かしの"Steve Grossman in New York"

Grossman "Steve Grossman in New York" Steve Grossman (Dreyfus)

私にとっては大変懐かしいアルバムである。なぜ懐かしいかと言えば,私はこのアルバムが録音されていた"Sweet Basil"にラッキーにも居合せることができたからである。時は1991年,私がNYCに在住中であったが,今にして思えば,一生分のライブに行ってしまったかもしれないぐらい,よくビレッジには通ったものである。

Steve Grossmanは当時,仏Dreyfusレーベルから音源は発表していたものの,ライブを見る機会はあまりなかったし,また,バックがMccoy Tynerトリオとあっては,行かざるをえないと当時の私は思ったはずである。ライナーを読んでいる限り,彼らが出演した週は全てSold-outだったらしいから,ニューヨーカーにとっても,この機会は貴重だったということである。演奏はGrossmanとMcCoyの相性はどうかなと思わせるところもあるし,Grossmanは必ずしも絶好調とは言えないように思えるのだが,まぁ期待には応えるレベルにはあった。

意外なのは一曲目の"Speak Low"からのArt Taylorの激しいドラミングである。どちらかというとArt Taylorはこんなに叩く人ではないと思うのだが,ここでは完全にGrossmanを煽っているとしか思えない。また,"Softly as in a Morning Sunrise"や"Impressions"など,ファンの心をくすぐる選曲も嬉しいところである。"Impressions"では冒頭からMcCoy節が炸裂している。こうでなくてはライブは燃えない。McCoy,Taylorに煽られてGrossmanもこの曲が一番激しい。

いずれにしても,バラード,急速調の双方でGrossmanのライブ・セッティングを捉えた音源としてはある意味貴重であるが,先にも書いたとおり,期待が大きい分,もっと行けるだろうという感覚が残るので星★★★★。

Recorded on September 13, 14 at Sweet Basil in NYC

Personnel: Steve Grossman(ts), McCoy Tyner(p), Avery Sharpe(b), Art Taylor(ds)

2007年7月 9日 (月)

どこへ行ったかChico Freeman

Chico_freeman"The Outside Within" Chico Freeman (India Navigation)

Chico Freemanがヤング・ライオンズとか何とか言って,持ち上げられたことも今は昔。最近ではほとんど音沙汰もなくなってしまってしまったが,Bobby WatsonたちとのThe Leadersというバンドでの吹き込みやツアーは続けているようである。

しかし,Freemanが最も輝いていたのは,このアルバムを吹き込んだ1970年代後半(リリースは81年だが...)であり,当時の有望株が必ずしも順調に育つわけではないということを実証しているのは残念なことである。あるいは時代が彼のようなミュージシャンを求めなくなったとも言えるかもしれない。

だが,このアルバムの2曲目"Undercurrent"を聞けば,Freemanが当時いかにイケているミュージシャンであったかがよくわかる。もちろん,このアルバムでは共演者の力も大きいが,ここでのテナーのフレーズ,あるいはDeJohnetteとのデュオ・パートなど,今聞いてもゾクゾクする。これは結構たまらん出来である。私はこの曲だけでも星★★★★★をつけたくなるほどのスリルを感じてしまうし,大音量で聞きたいという欲求にかられてしまう。そのほかの曲も悪くないが,"Undercurrent"があまりにも突出した出来を示している。

振り返れば,Chico Freemanの音楽は,ロフト系のジャズマンほどフリーではないが,適度にモダンより一歩進んだスタイルを持ち合わせていたことが,1970年代後半から80年代前半という時代の雰囲気にちょうどフィットしていたのかもしれない。しつこいようだが,それにしても"Undercurrent"である。あまり市場でも見掛けないが,このアルバムを見つけたら,2曲目を聞くためだけに買っても損はしないと言ってしまおう。

Personnel: Chico Freeman(ts, b-cl), John Hicks(p), Cecil McBee(b), Jack DeJohnette(ds)

2007年7月 8日 (日)

久し振りに"Blues-ette"を聞いた

Fuller "Blues-ette" Curtis Fuller (Savoy)

私は日頃次々とCDを買ってきては家人の顰蹙を買っているが,そういう生活をしていると,新譜や新規入手盤を聞くだけで手一杯で,なかなか手持ちのCD(特に所謂名盤はそうだ)を聞く機会がないのが実情である。それでも,たまには気分転換に手持ちのCDを聞くことも必要である。そうでもしないと,持っているのかいないのかわからなくなって,同じCDを複数買ってしまうことも...。

さて,このCD,そうした所謂名盤の一つであり,トロンボーン奏者,Curtis Fullerの代表作に挙げられるものである。曲ではTV CMでも使われた冒頭の"Five Spot After Dark"が有名過ぎて,それだけ聞いてこのアルバムを聞いた気になっている場合も多いのではないだろうか。

しかし,その"Five Spot After Dark"は私には上品過ぎて,どうも馴染めないところがあるのも事実である。久々にこのアルバムを聞いてもちょっとした違和感をおぼえてしまう。これはこの曲が有名になり過ぎたことも一因であろうが,アレンジメントがうまく書かれすぎているという点にも起因しているようにも思える。私としてはこの曲なら,テーマの部分より,各人のソロの方が楽しめるし,2曲目以降の方がジャズ的な楽しみにも満ちているように思う。タイトル・トラックを聞いていると,Benny Golsonがちゃんとテナーを吹ける奏者であることがよくわかるし,それに続くFlanaganのソロもよい。くつろぎの中にも,ジャズ的魅力があるのだ。

結局,このアルバムにジャズ的なスリルを求めるのは無理だが,各々の曲には各々の魅力があり,それなりに楽しめるアルバムだと思う。"Five Spot After Dark"も新鮮な気持ちで聞けばよい話である。しかし,歴史を揺るがす名盤というほどのものではないという評価が妥当であって,私としては星★★★★程度の評価である。ただ楽しめるアルバムであることは保証できる。

尚,余談だが,日本では「ブルース・エット」と呼ばれることが多いこのアルバムであるが,正しい発音はどう考えても「ブルーゼット」である。こういう誤りが日本人の英語をいい加減なものにしていくように思えてならない。Miles Davisの"Bitches Brew"を「ビッチェス・ブリュー」と呼ぶのと同じぐらいひどいなぁ。

Recorded on May 21, 1959

Personnel: Curtis Fuller(tb), Benny Golson(ts), Tommy Flanagan(p), Jimmy Garrison(b), Al Harewood(ds)

2007年7月 7日 (土)

Trio of Doom:これこそパワー・トリオだが,アルバムとしては...

Trio_of_doom "Trio of Doom" John McLaughlin/Jaco Pastorius/Tony Williams (Columbia)

このメンツを見て,興奮しないフュージョン・ファンはいないはずである。Tony Williams' Lifetimeからオルガンが抜けて,ベースが代わるとこうなるが,それにしても冒頭のTonyのドラム・ソロから"Dark Prince"の激しさには嬉しくなってしまう。

もともと彼らの音源はキューバにおけるライブ,"Havana Jam"2部作の中の一部として発表されていたが,なんとその音源はスタジオ録音に拍手をかぶせたものであり,実際のライブの模様ではなかったというのだから笑ってしまう。なんでそんなことが起こったかは,McLaughlinによるライナーから想像がつくのだが,なんとTony Williamsのシンバル用のマイクがつながっていなかったという噴飯ものの話である。しかし,録音から28年を経て公開されたキューバでのライブでは,そのTonyのシンバルの音がかなり修復されている。現代テクノロジー恐るべしであるが,いずれにしてもこの一期一会バンドの音源がこうして発表されたことをまずは喜ぶべきであろう。

"Havana Jam"はさまざまなミュージシャンのショウケース的なイベントであったから,このバンドの持ち時間が短いのは仕方がないが,このメンツでライブが30分に満たないというのはやや欲求不満が残るし,このトリオならもっと激しく演奏してもいいような気もする。Jacoは先輩を立てたのか,予想よりもおとなしめである。

それにしても,スタジオ録音の別テイクとして収録されている"Para Oriente"ははっきり言ってボツ・テイクであって,このようなものまで公開する必要があるのかという疑問もあるところである。これを入れても40分に満たない収録時間であるから,単なる収録時間稼ぎかとの謗りを受けても仕方あるまい。ライブ音源の公開はめでたいが,アルバム全体としては星★★★程度の評価しかできないのは残念。しかし,上述のとおり,冒頭の2曲には興奮させられた。

Recorded on March 3, 1979 in Havana, Cuba and on March 8, 1979 in NYC

Personnel: John McLaughlin(g), Jaco Pastorius(b), Tony Williams(ds)

2007年7月 6日 (金)

Dolphyの未発表録音以外の意味はない

Mingus "Cornell 1964" Charles Mingus Sextet with Eric Dolphy (Blue Note)

私はEric Dolphyは好きだが,Charles Mingusにはそれほどの思い入れはない。それでも"Mingus Presents Mingus"の両者の共演には興奮したクチである。この二人の共演作は結構あるが、このアルバムはDolphyの死のほぼ3ヶ月前の未発表演奏としては重要だと喧伝されている。しかし,Mingusと一緒ということなら,"Mingus in Europe"(Enja)という録音がこの1ヶ月ぐらい後に残されているのであって,3ヶ月前がそれほど重要だとも,演奏の貴重度が高いとも思えない。それを思えばこのアルバムのセールスを東芝EMIとスウィング・ジャーナル誌が煽っているだけにしか思えないので私は認められない。

録音そのものは概ね聞けるレベルは確保しているが,フロントに比べると,リズム・セクションの音があまりにもしょぼい。Dolphyの音は比較的ライブに捉えられているのは幸いだが,本当にこのアルバムがありがたいものかどうかは評価に苦しむというのが正直なところである。曲を聞いていても何じゃこりゃというのもあるので,私はこのアルバムは高くは評価できない。やはり"Last Date"こそがDolphyのラスト・アルバムに相応しい。星★★★。

Recorded on March 18, 1964 at Cornell University, Ithaca, NY

Personnel: Johnny Coles(tp), Eric Dolphy(as, fl, bcl), Clifford Jordan(ts), Jaki Byard(p), Charles Mingus(b), Dannie Richmond(ds)

2007年7月 5日 (木)

会心のと言ってよいDave Liebmanのテナー復帰作

Liebman_1"Return of the Tenor" Dave Liebman (Double-Time)

Dave Liebmanは多作の人である。リーダー・アルバムは言うに及ばず,いろんな国のいろんな人のアルバムに,まさに神出鬼没に客演して,我々を困らせてくれる。そのLiebmanがいつの頃からかテナー・サックスを吹くのをやめてしまい,ソプラノとフルートに専念していたことはよく知られた事実である。

ライナーにLiebmanが書いているが,70年代後半のポスト・コルトレーン時代には世に似たようなテナー奏者が溢れたものの,Steve GrossmanやLiebman自身が切り開いた地平を越えることはなく,パターン化していったことに失望し,テナーからインスピレーションを得ることがなくなったから,テナーの演奏をやめたのだそうだ。

そのLiebmanが「満を持して」なのかどうかはわからないが,リーダー作(他人のアルバムではちょこちょこ吹いていたはずだ)で久々にテナーを握り,かつテナー一本で通したこのアルバムは,Liebmanのテナーを聞きたいと思っていたリスナーを驚喜させたはずである。収録されているのは超有名スタンダードばかりだが,Liebmanはジャム・セッション的な雰囲気を生み出したかったとも書いている。しかし,そこはLiebmanである。これだけの有名曲を吹いても,一筋縄ではいかない演奏ばかりで,こうしたスタイルを愛する私のような人間はまたまた喜んでしまった。決してギミックではないのだが,普通ではないのである。"Secret Love"なんか転調まで入れてるし...。まぁそこがLiebmanらしくてよい。

このアルバムは当時のLiebmanのレギュラー・グループによるものだが,全員好演している。特にピアノのPhil Markowitzがよい。ギターのVic Jurisもいいが,コーラスを利かせ過ぎて,Mike Sternが弾いているのかと思ってしまった(註:私はMike Sternは相当好きなので別に問題はない)。それがよりコンテンポラリーな雰囲気を生んでいるのは事実だが,曲からすればフルアコで渋く決めるという手もあったように思う。

いずれにしても,このアルバムはLiebmanのテナーへの復帰を高らかに宣言したアルバムとして,Liebmanファンは必聴である。星★★★★☆。

Recorded in January, 1996

Personnel: Dave Liebman(ts), Vic Juris(g), Phil Markowitz(p), Tony Marino(b), Jamey Haddad(ds)

2007年7月 4日 (水)

今更ながら「マイアミ午前5時」は佳曲である

Photo_13 「マイアミ午前5時」 松田聖子(CBSソニー)

隠れたファンが多い松田聖子の佳曲である。アルバム単位では"Pineapple"こそが彼女の最高作である(少なくとも私はそう思っている)ことは既にこのブログにも書いた。しかし,そのほかのアルバムにも,アルバムのみの収録曲として埋もれさせるには惜しい佳曲が松田聖子にはいくつかあり,この曲もその一つである。作曲の来生たかおとの相性の良さを感じさせるとともに,もろに大村雅朗を感じさせるアレンジメントが微笑ましい限りである。

この曲の初出は1983年の「ユートピア」だが,なぜこの曲がファンの心を捉えるかと言えば,曲のよさはもちろんなのだが,私にはこの曲に聞かれる「声のひっくり返り」ではないかと思える。具体的に言えば「マイアミの午前5時」という歌詞の「ごぜ(ーッ)ん」的発声である。この微妙さ,わかる人にはわかってもらえると思うが,これこそがアイドル,松田聖子の真骨頂である。

振り返ってみれば,アルバム"Pineapple"から"Candy","ユートピア"へと続く3作が私にとっては松田聖子のピークだったように思うが,これらのアルバム(あるいは収録曲)に心を寄せるファンが多いのはまさしくご同慶の至り,大いにうなずける話である。間違いなく1980年代前半という時代を切り取った音楽として星★★★★★。

2007年7月 3日 (火)

時代を感じさせるが,McLaughlin節が炸裂するMahavishnu Orchestra

Birds_of_fire "Birds of Fire" Mahavishnu Orchestra (Columbia)

強力なメンツによる高い演奏能力を誇ったMahavishnu Orchestraであるが,私がそこに行きつくまでには結構時間が掛かってしまった。

私はかなりのJohn McLaughlinのファン(何と言っても17枚組モントルー・ライブだって保有している)なのだが,敢えてMahavishnuだけは避けてきたようにも感じる。再編Mahavishnuは結構聞いていたが,オリジナル・メンバー盤にはついぞ手を出さないままであった。ようやく聞くようになったのは"Lost Trident Session"が発売された頃だから1999年当時ということになろうが,McLughlinのファンなんだったら,もっと早く手を出しておけばよかったと後悔したことは言うまでもない。やはり私は天邪鬼なのだと思ってしまう。

さて,この"Birds of Fire"は1973年の作品であるが,サウンドとしてはやはり時代を感じさせるが,もはやジャズというカテゴリーには留められない音楽であり,このテンションはある意味,King Crimson的だと言っても過言ではないが,ここにはMcLaughlinのイギリス的特質が出ているように感じられてならない。また,MahavishnuをMahavishnuたらしめているのはこのメンバーであり,再編後ではこうはいかない。再編Mahavishnuはヴァイオリンに代わってサックスが参加しているという構成だけではないように思える。Billy CobhamはWarner Brothersから発売された再編第1作にも参加していたが,そこでも悪くない演奏だったものの,これに比べればまるで地味に聞こえてしまう。それを生み出しえたのはこの5人のメンバーなのだと感じる。

現在はLegacyレーベルからリマスター・バージョンが発売されており,Cobhamのドラムスもよりクリアに聞けるようになっているが,やはりこのリズムは強烈である。McLaughlinのギター・フレーズは相変わらずのMcLaughlin節だが,バンドが一体となってユニゾンで突き進む様はかなり濃い世界だと言わざるをえない。逆に言ってしまえば,Jeff Beckと共演すると途端に「俺が俺が」になってしまうJan Hammerが地味に聞こえるのだから,いかに回りがディープな連中かということである。

ジャズ界で最もプログレッシブ・ロック的な作品として,ロック・ファンも聞いておいて損はなかろう。それにしても濃く,暑苦しい。星★★★☆。

Recorded in August, 1972

Personnel: John McLaughlin(g), Jerry Goodman(vln), Jan Hammer(key), Ricl Laird(b), Billy Cobham(ds)

2007年7月 2日 (月)

買ってしまったBilly's Boot Camp

脱メタボリック宣言はしたものの,日頃の不摂生ゆえなかなか体重が落ちないのに業を煮やしたわけではないのだが,ちまたで話題のBilly's Boot Campを買ってしまった。

現在,たいへんな人気らしく,注文から納品まで2週間とか言われていたが,1週間でデリバリーされたので,さっそく基本プログラムに取り組んでみたが,これは想像以上のきつさである。一般のエアロビクスでは,ここまで筋肉には負担はかからない。よせばいいのにBilly's Band(皆さんもCMで見たことがあるあのゴムみたいなものである)も使ってしまったので,余計に負荷がかかり,翌日の筋肉痛は確実な状況である。

このプログラムをフルにこなすためには,筋肉痛に耐えることがまずは第一であろうが,実際これは相当きついので,14,700円つぎ込んだ人々は相当に覚悟が必要であろう。

しかし,最近の深夜のこの商品のパワー・プロモーションは凄い。UHF局の深夜枠はほとんどジャックされているのではないかと思うぐらいだが,私のような人間にまで買わせるのだから,この広告戦略(及び先日のBilly Blanksの来日及び強烈なプロモーション活動)は機能したと言わざるをえない。

私は仕事の都合上,7日間連続でプログラムに取り組むことはできないが,まぁできるだけ頑張ることにしよう。辛くなったら,エアロビクスと交互にやるなどして,継続することをまずは心掛けたいと思う。いつまで続くかは相当不安になってしまった第1日目の基本プログラムである。

それにしても,我ながら相変わらずのアホぶりである。

2007年7月 1日 (日)

Egberto Gismontiが来日するそうだ

Gismonti "Solo" Egberto Gismonti (ECM)

何とEgberto Gismontiが来日するそうである。8/20,第一生命ホール1回限りの公演で,結構Short Noticeなのが困りものだが,ネット上では既にいろいろな情報が飛び交っている。世の中,マニアは多いのねぇと感心してしまうが,それにしても久々である。情報によれば15年振りの来日らしい。この機を逃せば,次はいつになるかわからないので,ファンは何をおいてでも駆けつけるべきであろう。

と興奮気味に記事を書き始めたが,私はそれほどのGismontiフリークとは言えない。聞いているアルバムはECMレーベルのものだけである。一部の熱心なファンからは,それではGismontiを聞いたことにはならんとお叱りを受けそうだが,それでも既に結構な数のアルバムがECMにも残されているので,それなりの愛好者ではある。

私が初めてGismontiを聞いたのは,ECMのその名もずばり"Solo"というソロ・アルバムであった。当時のECMは結構な数のギタリストと契約をしており,私の記憶が確かなら,その頃,日本において売れる前のPat MethenyやJohn AbercrombieとECMギター・フェスティバルとかいうジョイント・ライブが開催されたのではなかっただろうか?いずれにしても,なぜ私がこのアルバムを買う気になったのかははっきりしないのであるが,私もギタリストのはしくれ(下手くそだが)として,聞く気になったのであろう。と言っても,ここではギターだけを弾いているわけではなく,得意のピアノも聞かせている。

このアルバムを聞いていて思うのは,特殊なギター(ライナーによれば,8弦ギターはRalph Townerから借用したものらしい)のサウンドがまるで天上からの響きのように聞こえてしまうと言っては大袈裟だろうか。とにかく,それまで聞いたことのない響きに「なんだこれは」と感じたのも,もう27~8年前のことになる。もし,今度の来日公演で,私が最初に感じたような響きを聞かされたら,どのように感じるかが楽しみである。今度の来日公演,ソロで来るらしいので,当然それを期待してしまう。来日へのご祝儀を含めて星★★★★★。

Recorded in November, 1978

Personnel: Egberto Gismonti (g, p, perc, vo)

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