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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2007年6月30日 (土)

「危機」に次ぐYesの傑作

Yes "Going for the One" Yes (Atlantic)

邦題は「究極」である。この作品は一旦脱退したRick Wakemanの復帰作として話題になったものだが,だらけた「海洋地形学の物語」や明らかに従来のYesとイメージが異なる"Relayer"の後に発表され,昔からのファンを驚喜させたアルバムであった。

この作品を聞くと,従来のYesに比べて美しいメロディー・ラインの曲が多いとともに、タイトなリズムが特徴となっていることがわかるのだが,このアルバムの凄いところは一曲として駄曲がないことである。

LP時代の表現を使えば,このアルバムに針をおろした瞬間,昔からのファンは一曲目のリズム・カウントとスライド・ギターに面食らいつつ、新しいリズム・フィギュアに驚いたものである。しかし,2曲目以降の美しいメロディを聞いて安心し、最後の"Awaken"で感動のピークを迎えるというシナリオを辿っていったはずである。特に"Awaken(悟りの境地)"のWakemanのピアノが美しく,やはりYesはこうでなくてはならないと考えるのである。また,"Parallels"における荘厳なパイプ・オルガンの響きを聞いても同様である。"Relayer"だけで脱退したPatrick Morazを否定するわけではないのだが,やはりMorazの音楽性はWakemanほどのYesとの親和性を示していなかったことを痛感させられるのが,これらの曲だと思えばいいだろう。

緊張感という観点では"Close to the Edge"には及ばないが、Yesのキャリアの中でも優れた出来を示す傑作であり,私としてはこれがYes「最後の傑作」という評価である。あまりにポップになり過ぎた"Tormato"やTrevor Rabinが入った"90125"は,もはや私の期待するYesのイメージではないのである。Yesミュージックかくあるべし。星★★★★★。

Personnel: Jon Anderson(vo, g, harp), Steve Howe(g,vo), Chris Squire(b, vo), Rick Wakeman(key), Alan White(ds, perc)

2007年6月29日 (金)

オリジナルStepsの傑作

Steps "Smokin' in the Pit" Steps (NYC)

もはや多くを語る必要のない傑作である。もとは日本のBetter Daysレーベルに吹きこまれてたものだが,本作はMike MainieriのNYCレーベルからの再発であり,オリジナルに5曲追加されているのが目玉である。ジャケが変わっており,味わいはイマイチになってしまったが,演奏とは関係ない問題である。

どの演奏もそれぞれ素晴らしいと思うが,私としては,渡辺香津美が客演した"Not Ethiopia"と香津美抜きの同曲のバージョン違いが面白かった。

Eddie Gomezを除けばフュージョン畑のミュージシャンたちが,こうした演奏に走ったのかはよくわからないものの,新感覚の4ビート(4ビートだけではないが)を聞かせているのが不思議と言えば不思議だが,うまい人は何をやってもうまいということがよくわかる演奏である。新感覚度という点では,やはりGaddのドラミングが新鮮ということになろうが,叩き過ぎという批判もあろうものの,やはりこのドラミングは凄い。

こんメンツで4小節交換などを眼前でやられていたら,今ならおそらく悶絶しているが,当時の私はこうした音楽に興味があまりなかったし,そもそも関西在住の受験生が,六本木にこの時期に行けるはずもなかったが,ライブを見逃したのはかえすがえすも残念と言わざるをえない。星★★★★☆。

Recorded on December 15-16, 1979 at Roppongi Pit Inn

Personnel: Mike Mainieri(vib), Michael Brecker(ts), Don Grolnick(p), Eddie Gomez(b), Steve Gadd(ds), 渡辺香津美(g)

2007年6月28日 (木)

エレクトリック Al Di Meolaの最高傑作はこれをおいてほかにない

Elegant_gypsy "Elegant Gypsy" Al Di Meola (CBS)

驚異的速弾きと正確なピッキング,決まりまくるユニゾン・フレーズ,Paco De Luciaとのギター・バトルなど,Al Di Meolaの特徴を余すところなく捉えた70年代の傑作。最もロック寄りのフュージョン・ミュージックと言えるだろうが,初出からおよそ四半世紀を経た現在もその音楽的魅力は色褪せていない。このテンションの高さはJeff Beckの"Wired"と比肩しうるものと言える。

この後,Di Meolaはパターン化の罠にはまってしまい,まともなエレクトリック・アルバムは"Kiss My Axe"まで待つ必要があるが,このアルバムではまだまだ鮮度が高かった。私はこのアルバムがDi Meola初体験(RTFは後付けで聞いた)だったので,異様なインパクトを感じてしまい,初めて聞いたときの衝撃は今でも記憶に新しい。スピード感はそれまでのフュージョンと明らかに違うし,ミュートを利かせた速弾きもそれまで聞いたことがなかったものである。それこそ目が点である。Paco De Luciaとの競演「地中海の舞踏」もそれに輪をかけたが,この作品を聞いて,ギタリストとしての道を諦めた人間も多いのではないかと言っては言いすぎか。

いずれにしても,アコースティック化,タンゴ化を進める以前のエレクトリック期のDi Meolaの最高傑作。参りました。星★★★★★。

Personnel: Al Di Meola(g), Paco De Lucia(g), Jan Hammer(key), Barry Miles(key), Anthony Jackson(b), Steve Gadd(ds), Lenny White(ds), Mingo Lewis(perc)

2007年6月27日 (水)

Paul Desmondのトロントにおけるライブ・トリロジー第1作

Desmond "The Paul Desmond Quartet Live" Paul Desmond (Horizon)

Paul Desmondと言えばDave Brubeck Quartetであり,"Take Five"である。そのことに異議はない。しかし,天邪鬼の私はDave Brubeckと一緒でないPaul Desmondを愛聴している。というより,Dave Brubeckが苦手なだけであり,Desmondの責任ではないのだが,それにしてもPaul Desmondはいかなる局面においても素晴らしい演奏をする平均点の高いプレイヤーであった。

そのDesmondがカナダはトロントのクラブ,Bourbon Streetで録音したライブ音源である。確かこのクラブはMassey Hallの近所にある趣味のよい演奏を聞かせる場所であったと記憶している。私がたまたま訪れた時はRob McConnellのバンドが出演していたように思うが,いずれにしても,Desmondにもぴったりの場所と言ってもよいだろう。本作ではEd Bickert(g),Don Thompson(b),Jerry Fuller(ds)のカナダ人トリオを従え,リラクゼーション満点の演奏を展開しており,Desmondファンには堪えられない出来となっている。

私はこの演奏がCDで再発される以前,このLPを結構必死で探していたものだが,これを地元の中古盤屋で見つけた時はそれは嬉しかった。CDが2000年になって再発されて以降は,もっぱらCDで楽しんでいるが,フォーマットは関係なく,LPだろうがCDだろうが,よいものはよい。冒頭の"Wendy"からリリシズムに溢れた趣味のよい演奏が展開されており,ファンにとってはたまらない。ファンキーやバップやフリーだけがジャズではないことを知らしめる音楽である。この演奏は日頃の生活に疲れた中年の心を癒す音楽として私にとって極めて重要な位置付けにある。私にとって最高の音楽の一つであり,バックのカナダ人トリオの好演も特筆に価する。星★★★★★。3部作の残り2作については改めて書くことにしよう。

尚,全くの余談だが,このジャケ写真を見ていると浪速のモーツァルト,キダタローを思い出してしまうのは私だけだろうか...

Recorded in October and November, 1975 at Bourbon Street in Toronto, Canada

Personnel: Paul Desmond(as), Ed Bickert(g), Don Thompson(b), Jerry Fuller(ds)

2007年6月26日 (火)

Uncle Moe's Space Ranchまさかの第2作

Uncle_moe "Moe's Town" Uncle Moe's Space Ranch (Tone Center)

まさかこのバンドが第2作を出してくるとは思わなかった。私が第1作についてこのブログに書いた(リズムが強烈な燃えるハード・フュージョン)のは4月のことだった。基本的には一作限りのスペシャル・プロジェクトだと思っていたのだが,これは嬉しい誤算であった。本作でも基本的に第1作と同じメンツでの強烈なプレイが楽しめる。

冒頭のチープなリズム・ボックスのような音に思わずのけぞらされるものの,その後はリスナーの期待通りのハード・フュージョンが展開されるが,2曲目で聞かれるスライドはBrett Garsedが弾いているようだが,またまたうまい人は何を弾いてもうまのねぇと感心させられてしまった。ほかの曲では手数や変態度が爆発しているだけに,このスライドの渋さには唸らされるものがあった。やるものである。

本作で注目に値するのはかなり長尺のドラム・ソロが登場する最後の"Nitro Squirrel (Multiple Moe)"だと思うが,さすがDennis Chambersと思いきや,実はこの曲だけVirgil Donatiなるドラマーが叩いている。もしかするとツイン・ドラムスかもしれないが,このDonatiというドラマーも相当のテクニシャンぶりである。Billy Sheehanと組んだバンドでのレコーディングも行っているので,NiacinでSheehanと組んだDennis Chambersのようなものということで,メンツ的には齟齬はきたしていない。

いずれにしても,ハード・フュージョンとは言うものの,これはジャズの範疇で捉えられる音楽ではないので,ロックとの複数カテゴリーにした。それにしてもごっついバンドである。まさか,まさかの第3作はあるのか?星★★★★。

Personnel: Brett Garsed(g), TJ Helmerich(g), Gary Willis(b), Dennis Chambers(ds), Scott Kinsey(key), Ric Fierabracci(b on 6, 8), Virgil Donati(ds on 9), Djemel Chergui(el-vo on 8)

2007年6月25日 (月)

Annie Lennoxの"Medusa"はボーナス・ディスク付きをゲットしよう

Annie_1 "Medusa/...Live in Central Park" Annie Lennox (RCA)

Eurythmicsのともはや言う必要もないAnnie Lennoxであるが,中古盤屋ではとんでもない安値がつけられていることがあり,思わず「なんでやねん」と突っ込みたくなるほどであるが,日本ではもはや過去の人なのだろうか?

そのAnnie Lennoxがソロ作第2弾として発表した"Medusa"はソウルフルな声を持つAnnie Lennoxというヴォーカリストとしての魅力を活かしきったカバー・アルバムである。私はこのアルバムを聞いて,Neil Youngの"Don't Let It Bring You Down"に痺れてしまったが,本作については,そうした曲におけるエレクトロニクスの多用を評価しない人もいるのは事実である。

しかし,Annie Lennoxの声は,バックがいかにエレクトロニクス的でも,人間としての声の魅力に溢れているところが素晴らしいのであって,私はそれを活かした選曲やバッキングを評価している。そういう意味では"Yazoo"というバンドも同じ意味で好きだった。

ということで,"Medusa"は単体でも星★★★★☆には値する作品だと思うのだが,本作にはセントラル・パークでのライブ音源をオマケに付けた2枚組があり,このライブの出来がまたいいので,このボーナスを合わせて評価すると星★★★★★と言うことになる。このセントラル・パークのライブの模様は後年DVDとして発表されたぐらいだから,よほど評価が高かったものと思うが,映像なしでもそのよさは十分伝わってくる。このライブに関しては,パーソネル情報がない,テープつなぎの編集があまりよろしくないと言ったケチのつけようはあるが,こういうオマケならいつでも歓迎である。

Annie_2 尚,"Medusa"の文字が薄い水色のものが2枚組である。通常のCDは"Medusa"の文字が赤なので,すぐ見分けがつく。水色の"Medusa"を見つけたら即ゲットしよう。(但し,私の保有するCDには上の写真のような"...Live in Central Park"の文字はなく,バック・インレイの横にその文字が印刷されている。いずれにしても,"Medusa"の文字は薄い水色である。)

Recorded in 1995 (Disc 2 Recorded on September 9, 1995 at Central Park, NYC)

Personnel: Annie Lennox(vo), Marius De Vries(key, prog), Peter John-Vettese(key), Andy Richards(key), Matthew Cooper(key), Louis Jardim(b, perc), Tony Pastor(g), Dan Gillen(ds), Neil Conti(ds), Doug Wimbish(b), Judd Lander(hca), Mark Feltham(hca), Danny D(prog), Steve Sidelnyk(prog), Ann Dudley(arr), Paul Simon(g, vo on "Something So Right on disc 2)

2007年6月24日 (日)

Coryell / Khanの見事なアコースティック・デュオ

Twofortheroad"Two for the Road" Larry Coryell & Steve Khan (Arista)

これも懐かしいアルバムである。タイトルを見ると,映画好きはAudrey Hepburnの「いつも二人で」を思い出してしまうものだが,当然関係は一切ない。

当時としてはアコースティック・ギターのデュオなどというセッティングが極めて珍しかったが,冒頭の"Spain"にはかなりショックを受けるとともに,ぞくぞくするようなスリルを味わってしまった。この演奏のスピード感ゆえに,こちらの"Spain"の方がオリジナルのChick Corea版よりもいいと思っているのは私だけではないだろう。昔聞いたときに比べるとイントロは結構ゆったりしていると感じるのだが,その後はスピーディな演奏に転じて,リスナーを興奮させてくれる。

そのほかにもWayne Shorterの"Juju"に"Fottprints",更にはBobby Hutchersonの"Bouque"等,選曲も渋いが,演奏も素晴らしい。こうしたギターのバトルものは,後のSuper Guitar Trio(Di Meola,Paco,McLaughlinもしくはCoryell)でメジャー化したが,このアルバムはその先鞭をつけたものとして,より多くの人に知って欲しいアルバムである。しかしながら,1990年にCDで再発されて以降はマーケットに出ていないようなのが残念である。そのCDには原盤に加えて,1978年のモントルー・ライブ(こちらはCoryellのソロ)3曲が追加収録されているが,別にそんなオマケなしでも十分通用する作品である。私はこのアルバムのLPを2回買って2回売り,今回,ようやくCDで入手したのだが,売った私がバカでしたと思わせる出来。ギター好きは必聴。星★★★★☆。

Recorded live in Montreux in 1975 & 1978

Personnel: Larry Coryell(g), Steve Khan(g)

2007年6月23日 (土)

ECMとしては異色のメンツによるアルバム

Torn "Cloud About Mercury" David Torn(ECM)

これはECMレーベルとしては相当異色のメンバーにより録音されたアルバムである。何と言っても,リズム隊が"Discipline" King CrimsonのTony LevinとBill Brufordである。ECMレーベルの歴史を見ても,こんなメンツはこのアルバムしかない。だからと言って,もろにCrimson的なプログレをやっているわけではないが,それでもそこかしこにそうしたタッチは聞かせている。

サウンドもECMとしてはかなり異色であり,メンツゆえ当然と言えば当然だが,ロック色がかなり強い。ジャズ的な世界に押しとどめているのはMark Ishamのトランペットだけであると言ってもよいだろう。聞いていて思うが,よくレーベル・オーナーのManfred Eicherがこのアルバムをプロデュースしたものである。彼の趣味とはかなり違う世界なのだが...

だからと言って,このアルバムが出来が悪いというわけではない。これはよく出来たジャズ・ロックであり,ECMというレーベル・カラーへのこだわりがなければ,何の問題もなく聞けるのである。しかし,世の中に結構存在するECMフリークにとっては微妙なアルバムではないだろうか。やはり通常のECMレーベルの作品とイメージが違いすぎるというのが偽らざる感想である。

私もかなりのECM好きだが,ロックもOKなので,本作には何の問題も感じないが,むしろCrimsonリズム隊にはもっと暴れまわって欲しかったというのが正直なところである。総合すると星★★★ぐらいだろうか。やはり私にとってもやや微妙である。

Recorded in March, 1986

Personnel: David Torn(g), Mark Isham(tp, flh, syn), Tony Levin(Stick, syn-b), Bill Bruford(ds, perc, syn-ds)

2007年6月22日 (金)

短期間でのPoliceの進化を実感できるライブ盤

Police "Live" The Police(A&M)

最近の再結成を受けて,何かと話題になることが多くなったPoliceだが,このアルバムは1995年に突如発売されたライブ盤2枚組である。本アルバムには1979年と1983年の2種類のライブが収められており,わずか4年の間にこのバンドがいかに進化したかを強く感じさせるアルバムとなっている。

まずディスク1に収録された1979年のボストンでのライブの模様を収めたラジオ音源であるが,テクノロジーなどに一切依存しない「生」のバンドの姿を収めている。とにかく勢いでぶちかますという感じの音である。「若くて青い」と言ってもよいし,当時のパンクとレゲエをミックスさせたサウンドが何とも懐かしい。この音源が収録されたボストンのOrpheum Theatreは3,000人級の由緒正しいコンサート・ホールだが,その程度の人気は「白いレガッタ」当時から確保していたということである。

一方,ディスク2に収められたのは1983年のアトランタ"The Omni"での"Synchronisity"ツアーの模様である。会場も南部のMadison Square Gardenと呼ばれるアリーナへと出世しているが,サウンド・プロダクションも女性コーラス隊だけでなく,テクノロジーも活用して,いかにも「プロ」的な作りへ進化を遂げている。しかし,Police特有のスピード感は健在で,非常に楽しめる出来となっている。但し,この音源はおそらくDVD化されている"Synchoronicity Concert"と同じと思われ,レア度は決して高いものではないことには注意が必要である。

そうした意味では,私としては,出来云々を別にしても,ディスク1の方が興味深く聞けたが,いずれにしても,トリオにしてこのサウンドは大したものである。星★★★★。

The Police: Stuart Copland, Sting, Andy Summers with Tessa Niles(b-vo), Dolette McDonald(b-vo) and Michelle Cobbs(b-vo) on Disc 2 Only

2007年6月21日 (木)

Chaka Khan:何と言っても"I Feel For You"である。

Chaka "I Feel for You" Chaka Khan(Warner Brothers)

何と言ってもPrince作のタイトル・トラックが最高のChaka Khanの1984年の作品である。Grandmaster Melle MelのラップとStevie Wonderのハーモニカに導かれてスタートするこの曲のカッコよさは一体なんだ!制作からほぼ四半世紀を経ても,それは全く不変である。これは凄い。

とタイトル・トラックにばかり興奮しているが,このアルバム,実は無茶苦茶金が掛かっているはずである。Arif Mardinの製作総指揮のもと,集ったプロデューサーはMardin以下9人もいる。バックに集ったメンツもかなり豪華である。ほとんど曲毎にプロデューサーが違うが,Mardinが最終的にしきっている(であろう)ため,アルバムとしての一貫性には問題はない。

このアルバムが目指したところは「ブアツい」バック・トラックにChakaのボーカルを乗せるということであり,ミックス的にもChakaのボーカルとサウンドの一体化を図っているかのように聞こえる。よって,Chakaのボーカルを楽しみたいという筋にはあまりおすすめできないアルバムとも言えるが,これはあくまでもそのような意図で制作されたサウンド・プロダクションを楽しむべきものであろう。

アルバムを通して聞けば,バラードでは抜群の歌のうまさを聞かせ,アップビートな曲では完璧な「ノリ」を実現するChaka Khanの幅広いタレントをうまく捉えたアルバムだと思うが,リスナーの期待によって好き嫌いがわかれることは致し方なかろう。いずれにしても,このアルバムはソウルとかR&Bというカテゴリーをはるかに超越してしまっている。星★★★★(タイトル・トラックだけなら星★★★★★である)。

2007年6月20日 (水)

Eduardo Casalla:タンゴだけではないアルゼンチン

Casalla "Improntas" Eduardo Casalla Cuarteto(Ensamble)

アルゼンチンと言えばタンゴである。普通はピアソラぐらいしかアルゼンチンのミュージシャンなんて知らない。しかし,このアルバム,れっきとしたアルゼンチン盤であるが,何とも渋い(淡々としたと言ってもよい)演奏をしている。世の中,どの国にもジャズ・ミュージシャンはいるのねェ~と妙な感心の仕方をしてしまうが,アルゼンチンというジャズ界では相当エキゾチックな国から届けられたこのアルバムが意表を突いてよいのである。これには正直驚かされた。

リーダーのCasallaはドラマーであるが,ライナーの写真からして彼とベースのHernan Merloは相当のベテランに見える。そのほかの二人は90年代にバークリー音楽院を卒業しているらしいので,リーダーたちに比べると若手である。この4人が聞かせるのがトランペットの1ホーン・クァルテット,しかも1曲目はこれまた渋いBilly Strayhorn作の"Isfaham"である。その後は若手組のオリジナルと有名曲を交えながら演奏が進むが,全編を通してレベルは結構高い。3曲目のWayne Shorter作"Yes or No"などはかなりスリリングである。5曲目にBill Evansの"Re: Person I Knew"をラッパ入りで演奏しているのは珍しいが,違和感はない。最後の"Milestones"も曲があまりにもシンプルな構成の曲だけに,下手をするとずっこける展開というのもありうるが,ここでは無難にこなしている。

ということでこのアルバム,演奏そのものも悪くないのだが,おそらくそれを更によく聞こえさせるのがアルバムの比較的ソフトな録音及びミキシングではないかと思う。この聞いていて疲労感をおぼえさせない音の貢献度は高い。これをゴリゴリの音で取られてはこうはいかなかったであろう。

いずれにしても冒頭のフレーズを繰り返すわけではないが,アルゼンチンにもちゃんとしたジャズ・ミュージシャンがいるということを実証したアルバムである。決して侮ってはならない。星★★★★。とここまで書いて,そう言えばGato Barbieriもアルゼンチンだったと思い出したが,ここでの演奏はGatoよりはるかに上品かつ好ましいものだと断言しておこう。尚,詳しいレコーディング・データの記載がないので何とも言えないが,このアルバムが発売されたのは2001年なので,録音はその前年あたりだろう。

Personnel: Eduardo Casalla(ds), Ernesto Jodos(p), Hernan Merlo(b), Juan Cruz Urquiza(tp, fl-h)

2007年6月19日 (火)

Chet BakerとCTIはミスマッチのようでそうでもない

Baker "She Was Too Good to Me" Chet Baker (CTI)

「枯葉」という邦題で知られたChet BakerのCTIにおける多分唯一のリーダー・アルバムである。ChetとCTIとは何ともミスマッチな感が強いが,ピアノがフェンダー・ローズ(Bob James!)なのと,ストリングスやフルートがバックに入ること,更にはメンツがやたらに豪華なことを除けば,Chet Bakerのほかのアルバムと違いがあるわけではない。これはあくまでも好き嫌いの問題であるが,私にとっては気楽に聞ける音楽と言える。むしろ,晩年に乱作気味にリリースされた諸作より好ましいと思えるぐらいである。

もちろん,本作はBakerの最高傑作ではない。"Chet Baler Sings"等Pacific Jazzの諸作の方が出来としてはよいに決まっているのだが,これはこれとして単独で楽しむという心の広さを持つべきである。また,Chet Bakerは一時期,前歯を暴漢に折られて,暫くラッパが吹けなかったところからの復帰ということもあるので,更に心の広さが必要になるだろう。そうした中,Bakerのトランペットは急速なフレーズはあまり吹けないようだが,ソロそのものは結構快調だし,ボーカルも聞けるから,ファンにとっては嬉しい作品ではないだろうか。

尚,本作には,ドラマーとしてSteve Gadd(①~④)とJack DeJohnette(その他)が参加しているが,二人のドラマーの個性が強く出ていて面白いとともに,Gaddの4ビート・セッティングでのドラミングが聞ける結構初期のアルバムではないだろうか。別にStepsのときでなくても,Gaddは4ビートを叩けるということがよくわかる演奏である。

それにしても,どこから聞いてもCTI的というのはプロデューサーのCreed Taylor及びアレンジャーのDon Sebeskyゆえではあるが,それにしても典型的なCTIサウンドという気がする。ここまで個性がはっきりしていれば,逆に大したものである。星★★★☆。

Recorded in July, October and November. 1974

Personnel: Chet Baker(tp, vo), Paul Desmond(as), Bob James(el-p), Ron Carter(b), Steve Gadd(ds), Jack DeJohnette(ds), Dave Friedman(vib), Hubert Laws(fl), Remeo Penque(fl, cl), George Marge(al-fl. oboe) & Strings

2007年6月18日 (月)

熱いサックス奏者,Rosario Giulianiの新作

Rosario "Anything Else" Rosario Giuliani(Dreyfus)

私は勝手にRosario Giuliani,Stefano Di Battista,Perico Sambeatの3人を欧州アルト三羽烏(これも死語だ)と呼んでいるが,そのGiulianiの新譜が4月に出ていたようだが,今までノーマークだったのを先般購入したので,今回紹介することにしよう。

Rosario Giulianiのアルバムはいつもかなりハードバップ的な演奏を聞かせて,結構CDショップ店頭でかかっていたりすると,つい手に取って見てしまったり,あるいは買ってしまうというタイプのミュージシャンである。ということは,大音量で聞けば,少なくとも第一印象はかなりいけたアルバムを作る人である。今回は2曲がピアノのDado Moroni,1曲がOrnette Coleman作であるのを除けば,Giulianiのオリジナルで固めており,一般的には意欲作ということになるのだろうが,サウンドとしては2ホーンのハードバップ・アルバムであり,いつもながらの印象を与えてくれる。

今回のアルバムでは,結構,ラッパのFlavio Boltoroに大きなソロ・スペースを与えるとともに,ソロもBoltoroから入るという構成が目立つ。Boltoroもシャープな演奏でそれに応えており,ある意味リーダーを食っているのではないかと考えてしまうぐらいである。一方,Giulianiのソロは相変わらずだが,本作では以前に見られたエネルギー感やスピード感は抑制された感があるものの,それでもまだまだ熱い演奏を展開しており,フレージングも魅力的である。6曲目の"Backfire"等はこちらの期待通りという典型的な演奏である。私にとってはこれが本来求めるべき姿なのだが,ほかの演奏もかなりの出来であり,「新しい」熱いジャズを聞きたいときには,このアルバムが役に立つかもしれない。期待も込めて星★★★★。

いずれにしても,こういうアルバムを聞くと,イタリアのジャズ・シーンの充実ぶりを強く感じるが,本当に大したものである。欧州ジャズ・ファン(と言っても,ヨーロッパ的なところは希薄であるが...)は必聴であるとともに,ハードバップ・ファンにもお薦めできる作品である。

2007年6月17日 (日)

Max Roachの東京ライブはリーダーのドラムスとBilly Harperが激烈!

Max_roach "Live in Tokyo" Max Roach Quartet (Denon)

このアルバムは私がジャズを聞き始めた頃にLPを買ったもので,今聞くと相当に懐かしいものである。ジャズを聞き始めたばかりの高校生が聞くには当時はちょいと荷が重かったが,懐かしのPCM録音(何のことはないデジタル録音である)ゆえの当時喧伝された音の良さというのにつられて購入したと記憶している。

その後,私は結構このアルバムが好きになり,長年LPで愛聴してきたが,現在保有しているのは,当時LP2枚に分売されていた演奏をCD1枚にまとめたお徳用盤である。今,このアルバムを聞いて思うのは,本盤のハイライトが鋭いRoachのドラミングであることはもちろんだが,それとためをはるのがBilly Harperのテナーという点である。Harperのテナーは暑苦しいと言えば確かにそのとおりである。しかし,そうしたハードなブローイングをRoachも後ろから煽っているとしか思えないところが笑えるし,それに乗せられ更に暑苦しくブローするHarperが凄い。

収録された曲では,冒頭の"Calvery"が圧倒的であるが,そのほかの曲も総じてよい出来である。長尺の"Scott Free"もかなり強烈で,しかも全編を通じて相当暑苦しい。さすが昔年の闘士と言われたMax Roachだけのことはある。きっとこの人は根が「熱い」人なのだろうと思わざるをえない。いずれにせよ,こうした音楽はできるだけボリュームを上げて聞きたいが,住宅事情ゆえそうもいかないのが残念ではある。

尚,4曲目の"Mr. Papa Joe"はRoachがハイハットだけで演奏しているが,こういうのを重要無形文化財に指定したいぐらいの名人芸と言っておこう。ある意味でのジャズの醍醐味をまだまだ青かった私に教えてくれたことにも感謝して星★★★★☆。

Recorded on January 21, 1977 at 郵便貯金会館(東京)

Personnel: Max Roach(ds), Billy Harper(ts), Cecil Bridgewater(tp), Reggie Workman(b)

2007年6月16日 (土)

Jerome Kernの名曲満載盤だが...

Makowicz "The Music of Jerome Kern" Adam Makowicz Trio (Concord)

一風変わった名前のピアニストである。調べてみるとポーランド出身というAdam MakowiczがJerome Kernの曲ばかりに挑んだピアノ・トリオ盤である。それにしても,よくぞここまで並べた名曲群。ややマイナーなのは3曲目の"Who"ぐらいのもので,あとは超有名曲のオンパレード(死語?)である。

このアルバム,Concordレーベルらしい趣味のよさげなピアノ・トリオ(一聴して地味である)という評価もできようが,残念なのはピアニストの技量がJerome Kernの曲の魅力に負けているという点である。このMakowiczというピアニスト,ソロのところどころにややアバンギャルドな奏法を挿入してくるのだが,そうしたフレージングにあまり魅力を感じないのである。どうせなら真っ当に弾き続けてカクテル・ピアノっぽくしてもらった方がいいぐらいにしか思えないし,6曲目の"Ol' Man River"等はアレンジからして完全に策に溺れていると言わざるをえない。これではまるで"Strike up the Band"である。こういうのを松田聖子なら「ムードを知らない人,あ~焦るわ(秘密の花園)」と言う。"Smoke Gets in Your Eyes"然り。

ということで,別に聞き流す分には別に問題ないアルバムであるが,よくよく聞くと実は大したことがないということがわかる。結構ソロ・スペースをもらったGeorge Mrazは健闘しているが,それでも星★★☆が精一杯というところである。名曲は必ずしも名演を生まず。

Recorded on September 16-17, 1992

Personnel: Adam Makowicz(p), George Mraz(b), Alan Dawson(ds)

2007年6月15日 (金)

John Scofield初期の傑作

Sco "Electric Outlet" John Scofield(Gramavision)

John Scofieldが最も凄かったのはDennis Chambers入りのエレクトリック・バンド時代(今でも新宿ピットインの扉の向うから洩れてきた音を思い出すと興奮する)だと思うが,それに先立つこの作品も侮れない出来である。何しろメンバーがよい。ゲスト的に参加するDavid SanbornにRay Andersonとはどんな組み合わせだという気もするが,これが意外とScofieldとの相性がよい。また,この頃のSteve Jordanのドラムスも今ほどスネアの音が硬くないのがよい。

このアルバムはある意味,Chambersとのファンク爆発前夜という趣で,Scofieldのギターもやや抑制気味なのだが,曲は結構粒が揃っているし,演奏もタイトで非常に楽しめる出来である。ベースのパートはScofieldがシンセ・ベースで対応しているというのは珍しいが,後のScofieldの爆発的個性の萌芽が感じられるというか,その先駆けとなった作品だと評価してよいと思う。私はこのアルバムを聞くことが実は多いのだが,それはややパターン化しがちなScofieldを,ホーンの参加がいいアクセントになって救っているからとも言えるだろう。

今にして思えば,Gramavisionというのは結構とんがったレーベルだったが,エレクトリックでそうしたレーベルのトーンを当時代表していたのがこのアルバムだったと言ってはほめ過ぎだろうか?アルバム全体としては次作"Still Warm"を推すリスナーも多いが,このアルバムを聞けば,Scofieldのかっこよさはここでも十分表れているし,あまりないScofieldとホーンの共演という意味でも,貴重かつより評価してよいアルバムだと思う。Sanbornの演奏もかなりハイブラウな出来だが,だまされたと思って,このアルバム5曲目の"Filibuster"を聞いてみて欲しい。確実に腰が浮く。

Scofieldとともにプロデューサーを務めたSteve Swallowが目指したのはこうした乗りと,恐らくはそのほかの曲にも聞かれるよりルースなファンク感を切り取ることであるが,間違いなくそれは成功している。Chambersとの共演のような狂おしいような昂揚感はないものの,Scofieldの魅力は十分楽しめるアルバムである。星★★★★☆。

Personnel: John Scofield(g, DMX-b), Steve Jordan(ds), David Sanborn(as), Ray Anderson(tb), Peter Levin(synth)

2007年6月14日 (木)

Eastwoodの「シェーン」へのオマージュ

Pale 「ペイルライダー("Pale Rider")」 (米,'85,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Clint Eastwood, Michael Moriarty, Carrie Snodgress, Christopher Penn, Richard Dysart, Sydney Penny, Richard Kiel, Doug McGrath, John Russell

誰もが一見して気づいてしまうClint Eastwoodによる「シェーン」へのオマージュと言うべき作品である。しかし,そのトーンは「シェーン」よりははるかにダークである。これがEastwoodらしいところと言えばそのとおりである。「恐怖のメロディ」で監督デビューしたEastwoodも,監督業が相当板についてきた時期の作品と言ってよく,非常に安定した作風で,映画としても結構よく出来ている。

Palerider4 「シェーン」との類似性は細かく言うだけ野暮というほどはっきりしているが,EastwoodはAlan Laddほど健康的でないし,「シェーン」ならBrandon De Wildeに相当するMeagan役のSydney Pennyは子役というには色気があり過ぎる(というよりも相当可愛い)が,それでもさまざまなプロットはどこからどう見ても「シェーン」である。私は西部劇ファンとして「シェーン」は屈指の名作と断言するが,この作品も「シェーン」と比較すれば,難癖つけることはできるのだが,単独作品としては楽しめるものであり,印象的なシーンも多い。冒頭の馬群を見るだけでも西部劇ファンはワクワクすること間違いなしである。

それよりも,私は1985年というまさに西部劇不遇の時代に,敢えてこの作品を世に問うたEastwoodに拍手を送りたい。この作品はちゃんとしたドラマになっていて,西部劇に対するEastwoodの想いがよく表れていると言ってもよいだろう。この映画は全編を覆うトーンはかなり暗いし,単純明快,勧善懲悪というステレオタイプな西部劇ではないので,アクションの爽快感などは期待できない。しかし,この映画は何度見ても飽きないという大した作品なのである。ということで私はこの作品を結構高く評価している。星★★★★☆。

 

2007年6月13日 (水)

アクション俳優としてのClint Eastwood最高作

Dirty_harry 「ダーティハリー("Dirty Harry")」 (米,'71,Warner Brothers)

監督:Don Siegel

出演:Clint Eastwood, Harry Guardino, Reni Santoni, John Vernon, Andy Robinson

久し振りに映画のことを書いてみよう。最近は「硫黄島からの手紙」等で監督としての巨匠と呼ばれることが多くなってしまったClint Eastwoodであるが,その手腕は認めるとしても,私の世代は役者としてのEastwoodにしびれた世代であり,アクション俳優としてのEastwoodこそが,私の中の彼のイメージである。

その俳優歴の中でも,最高傑作と呼ぶべき作品はやはりこの"Dirty Harry"をおいてほかにはない。これぞハードボイルドと言いたくなる「男の中の男」の世界である。男の体臭だけのCharles Bronsonではこうはいかない。

この映画は,Don Siegelのシャープな監督ぶり,かっこよすぎるEastwoodが素晴らしいのはもちろんであるが,数々の決めせりふに満ちた脚本の良さや,102分という極めて適切な尺に収めた編集もより高く評価すべきである。また,これぞ悪役と言うべきAndy Robinsonの怪演もこの作品を印象付けるのに大きな役割を果たしている。こんなに「悪い」奴はなかなかいるものではない。

また,この映画を見ていて思うのはサンフランシスコという街の魅力である。冒頭の俯瞰シーンは私のアメリカ人の友人曰くBank of AmericaタワーからHoliday Innのプールを映したものらしいが,全編に登場するいろいろな街の風景は,たまにこのサンフランシスコを訪れる機会があると,「ここかー」という声をいまだに上げてしまうぐらい印象に残っている。特に,教会のシーンが出てくるNorth Beach地区は出張のたびに訪れる店があるのだが,行く度にこの映画の音楽で使われている女性のスキャットを口ずさんでしまうぐらいである(病的?)。Steve McQueenの"Bullitt"もSFが舞台だが,あの映画は車が坂をすっ飛んでいたイメージばかりが強いが,この映画は違う。

いずれにしても,この映画には多数の印象的なシーンや台詞があり,私の中でのアクション映画のひな型になっていると言っても過言ではないぐらいの印象を私に残している。はしご車で自殺願望男を救出するシーンなど,不要と言えば不要なエピソードであり,ほかにもけちのつけようはいくつかあるのだが,それには目をつぶることにしよう。この映画が私に与えたインパクトだけで星★★★★★である。今でもこの映画を見ると,ついEastwoodのセリフをコピーしてしまうアホ親父と化す私である。

2007年6月12日 (火)

Charlie Hadenのモントリオール・テープ・シリーズECM編

Haden_gismonti "In Montreal" Charlie Haden and Egberto Gismonti (ECM)

Charlie Hadenが1989年にモントリオール・ジャズ・フェスティバルのホスト・ミュージシャンを務めたときの音源はいくつか発売されている(Liberation Music Orchestraまである)が,そのシリーズとしてECMレーベルから発売されたのが本作品である。

HadenとGismontiと言えば,Jan Garbarekも交えたトリオ作が2作あり,ECM好きにとってはたまらない出来になっていた。よって,Garbarek抜きとは言え,この作品には期待してしまうのでは当然である。かつ,デュオ名人と言われるHadenがGismontiと組んだデュオ・セッティングではその期待値は倍増してしまう。

結果はどうだったか。聴衆の盛り上がりからもわかるとおり,これは期待通りと言えるだろう。GismontiのECMレーベルでの作品発表が近年停滞する中,彼が最近どのような活動をしているのかを知る由もない(というかフォローしていない)が,これだけギターやピアノを弾きまくるのを聞ける作品もないわけで,長年のGismontiファンにとっても嬉しい作品である。ピアノを弾くと残響の少ないKeith的だが、いずれにしても大したギタリストであり、ミュージシャンである。星★★★★。

Personnel: Charlie Haden(b), Egberto Gismonti(g, p)

2007年6月11日 (月)

主流派になった(?) Bobby Hutcherson

Bobby_hutcherson "For Sentimental Reasons" Bobby Hutcherson (Kind of Blue)

Bobby Hutchersonの名前を聞くと,私はついEric Dolphyの"Out to Lunch"を思い出してしまうし,Hutchersonの"Happenings"然りで,所謂新主流派として考えてしまうわけだが,このアルバムでのHutchersonはそうしたイメージとは異なり,かなり保守的なサウンドを聞かせている。

それはほとんどがスタンダードで固められた選曲だからということもあるだろうし,基本的にバラードが多いということもあるのだが,Hutchersonならそれでももう少しとがった演奏をしそうな印象があるのは私の思い込みだろうか。私はHutchersonの熱心なリスナーと言えないし,近年の活動状況もよく知らないから,このアルバムが突然変異なのかどうかもわからないのだが,それでもやはり私のHutcherson感を覆す演奏である。

ではこのアルバムが悪い出来かと言えば,決してそうではない。イメージが違うだけなのである。これは私にとっての新たなナイトキャップ音楽と言ってよい類のものであり,これは間違いなく,夜に酒をチビチビやりながら聞くのに適した音楽である。これまでのHutchersonならば,つい身構えて聞いてしまうというところであろうが,本アルバムは,そうした緊張感を持たずに気楽に楽しめるのがよい。

どの曲でもHutchersonのヴァイブは美しい音色を聞かせるが,中でもRosnesとのデュオで演奏される"Somewhere"(そう。あの「ウエストサイド物語」のである。)が意外な選曲ながら,結構しみる。また,最後をソロでの"I'll Be Seeing You"というのはややベタな選曲という気もするが,美しい余韻を残すという点では成功しているように思う。

先にナイトキャップ音楽と書いたが,このアルバムは肩肘はらず気楽に楽しむべき音楽であり,ソロがどうこういうのは野暮であろう。たまにはこうしたアルバムを聞くのもいいものである。星★★★☆。

Recorded on November 20 and 21 in NYC

Personnel: Bobby Hutcherson(vib), Renee Rosnes(p), Dwayne Burno(b), Al Foster(ds)

2007年6月10日 (日)

脱メタボリック宣言?

私も中年オヤジとして,家人からやれ「デブ」だ,「メタボリック」だと揶揄される体型になってしまったが,この夏は久々にダイエットに取り組むことにした。今や「健康オタク」とも言われる取組みようであるが,いつまで続くかは定かではない。しかし,このブログに書いてしまえば,中途半端ではやめられなくなるだろうと期待して,ここに書くことにした。

現在取り組んでいるのは次のような「運動」である。①朝の通勤時,オフィス最寄駅の一つ手前の駅で降りて歩く(約18分),②オフィスのビルの階段を10階分歩いて上る(階段200段),③週末早朝サイクリング(20~30キロ/回),④家での半身強化プログラム+エアロビクス(45分),⑤ジョーバフィットのダイエット・プログラム(15分),⑥Wiiスポーツ(テニス)。

これらを毎日やるわけではないが,酒を飲んで帰ったときはさすがに④は無理なので,⑤か⑥でごまかすとか,③についても,土,日の両方ではなく,どちらかだけという結構いい加減なものである。また,これから梅雨の時期になると①,③は厳しくなっていく(それが継続を妨げる要因である)が,向う半年での8キロ減量を目指して,気長に取り組むことにしよう。尚,⑤は家人が購入したので,便乗して使わせてもらっているが,有酸素運動と組み合わせると意外ときつい。バカにしてはいかんと反省。

これらの組合せでも駄目なら,巷で話題のBilly's Boot Campでも始めるしかないだろう。しかしながら,何を中心にしようが一時的にやせたとしても,それでやめたらリバウンド確実なので,結局は何かをやり続けるしかないということである。まさに「継続は力なり」である。

2007年6月 9日 (土)

懐かしのDave Weckl初リーダー作:多才さは必ずしも美徳ならず

Weckl "Master Plan" Dave Weckl(GRP)

Chick CoreaのElektric Bandで一躍シーンに登場したDave Wecklが1990年にリリースした初リーダー作である。Wecklはその手数とシャープでタイトなドラミングが特徴であるが,ここでもそうした彼の特性がよく表れている。

初リーダー作だけあって,このアルバムはWecklの多才さを実証するかのようなプログラムになっている。ホーン入りのキメを重視したフュージョンから,ブラジル,スムーズ・ジャズ系,更には4ビートまで,自分は何でも叩けますよとでも言いたいかのような曲群となっている。それがある意味,多才さの裏返しというべきか,アルバムを捉えどころのないものにしてしまっているところがあるのは残念である。

注目がChick CoreaとMike Breckerが参加した"Garden Wall",Steve Gaddとのツイン・ドラムスによるCorea作”Master Plan"に集まるのは当然であるが,録音のせいか前者はBreckerのトーンがやや細いように感じられ,本来ならもっと興奮させられそうなものがそうなっていない。Elektric Bandのバンドメイト,John PatitucciのGRPでのアルバムにおけるBreckerがよかっただけに,これは相性の問題かと思わせる。また,タイトル曲"Master Plan"はまんまElektric Band的であるが,せっかくのGaddの客演も初リーダー作へのご祝儀程度にしか感じられないものに留まっている。また,1曲だけピアノ・トリオにより演じられる"Softly, as in a Morning Sunrise"も唐突な感覚が強い。

結局,このアルバムの弱点はWeckl初リーダー作という位置付けを重視しすぎたことによるオーバー・プロダクション(言い換えればプロデューサーを兼ねたWecklの気負いとも言えるだろう)にあるように思える。豪華なゲストを迎えた本作より後年のWecklのバンドによる作品を,はるかにまとまりを感じさせるものとして好ましく思うのは私だけだろうか。演奏のレベルが高いだけに,これはややもったいないと言わざるをえない。ここはしっかりと別のプロデューサーを立てるべきだった。星★★★。

Personnel: Dave Weckl(ds), Jay Oliver(key), Chick Corea(key), Ray Kennedy(p), Eric Marienthal(ss, as), Jerry Hey(tp), Bill Reichenback(tb), Scott Alspach(tp), Peter Mayer(g, vo),  Anthony Jackson(b), Tom Kennedy(b), Steve Gadd(ds)

2007年6月 8日 (金)

David Liebman対スウェーデン人トリオ

Visiones "Live at Visiones" Lars Danielsson, David Liebman, Jon Christensen, Bobo Stenson(Dragon)

これは渋いアルバムである。アルバムのカバーからすれば,Lars Danielssonをリーダーとするスウェーデン人トリオがDavid Liebmanを迎えて,今はなきNYCはVisionesで録音したライブ作である。

VisionesはNYCのBlue Noteのすぐそばにあったクラブだったが,派手なプログラムのBNに比べると,通好みというか渋いアーティストが登場するなかなかいいクラブだった。私が行った中では何と言っても,QuestのLiveが思い出深いが,渋すぎるプログラムが災いしたか,クラブとして長持ちしなかったのが惜しまれる。このアルバムはQuestからLiebmanを迎えているが,本来の主役はスウェーデン人トリオである。ECMレーベル・ファンが見れば,思わず膝を乗り出すメンツである。米国において,こうしたメンツがどの程度のポピュラリティを確保できるかは甚だ疑問だが,私の期待をはるかに上回る素晴らしい出来を示している。

このアルバムは,Liebmanがテナーに復帰する前のアルバムなので,全編ソプラノを吹いている(最後の曲に笛らしい音がするが,クレジットがない。聞けばわかるが,終曲は田舎の祭りかっ!とも言いたくなる部分もある)が,ここではいつにも増してクールなLiebmanを聞くことができる。これはひとえに共演陣の特性によるものと思われるが,「熱い」Liebmanを期待する向きには肩透かしを食らう可能性が強い。しかし,基本的に熱くならないところが,スウェーデン・トリオらしいのであって,これはこうした個性として聞くべきアルバムである。

ある意味,グリニッチ・ヴィレッジのど真ん中のような場所で,こうした演奏が展開されていたこと自体が奇跡的である。NYCでのライブ音源ながら,極めて北欧的なクールネスに満ちたアルバムであるとともに,どんなミュージシャンにも合わせることができるLiebmanの多才さを示した音源と言える。ゴリゴリの4ビートを好むジャズ・ファンはこうしたアルバムに手を出してはならない。ジャズと言っても,もはや別世界のサウンドである。好みは絶対にわかれるので,注意が必要だが,この手のサウンド好きは必聴。星★★★★。

Recorded Live at Visiones on March 8-9, 1996

Personnel: Lars Danielsson(b), David Liebman(ss), Jon Christensen(ds), Bobo Stenson(p)

2007年6月 7日 (木)

懐かしのMatthew Sweetの"Girlfriend"エンハンス盤

Girlfriend "Girlfriend (Legacy Edition)" Matthew Sweet (Volcano)

ジャケットを飾るTuesday Weldのポートレートが何とも愛らしいMatthew Sweetの懐かしの傑作アルバム"Girlfriend"のレガシー・エディションである。私はこのアルバムを完全に「ジャケ買い」したわけだが,内容も素晴らしかった本盤が,本バージョンの発売を機に,改めて注目されるとすればそれはめでたいことである。(余談だが,私にとってTuesday Weldと言えば,「シンシナティ・キッド」である。この人は基本的にファニー・フェイスだと思うが,あの映画でも可愛かった...)

本盤ではリマスタリングによる音質向上が図られているとともに,ディスク2として92年にプロモーション用に配布(一部ファンクラブを通じても流通したとの噂もあり)された"Goodfriend - Another Take on Girlfriend"をそのまま収録したおり,こちらは相当にレア度が高く,注目に値する。

ディスク1は,オリジナル・アルバムの日本盤仕様と全く同一(ボーナス3曲)を収めたものだが,久々に再聴しても本作が傑作であるという認識には全く変わりがない。また,注目の"Goodfriend"の方も,自宅でのデモ録音,BBC出演時の模様やライブを収めた演奏は大いに楽しめる。近年,Sweetが元BanglesのSusanna Hoffsと組んだ"Under the Covers, Vol. 1"でも,Neil Youngをカバーしていたが,ここに収められたYoung作"Cortez the Killer"でも,ほとんどYoungとCrazy Horseになりきっての演奏を繰り広げ,Neil Young好きを露にするSweetとバンドの面々が微笑ましい。

このアルバムが発売されたのは1991年のことだったが,その後,Matthew Sweetはそこそこ活動しながらも,このアルバムを凌駕する作品はものにしていないというのが実情であろう。実際のところ,Lloyd Cole,Robert Quine,Greg Leisz,Fred Maher等に支えられたこの作品はある意味出来すぎていたが,一発屋と言われようが本盤は素晴らしく,これだけでMatthew Sweetの名が人の心に刻まれたのだから,それはある意味彼にとっては幸せなことである。ジャケ写真を含めて星★★★★★。

2007年6月 6日 (水)

ライブにおける特定聴衆の品性を疑うEnrico Pieranunziの日本ライブ盤

Pieranunzi "Live in Japan" Enrico Pieranunzi (CAM)

日本でも人気の高いEnrico PieranunziがMarc Johnson,Joey Baronという永年の盟友と2004年に来日したときの演奏を捉えたライブ盤である。収録場所がいくつかに分かれているため,聴衆の反応や雰囲気に違いがあるものの,演奏としてのクォリティは一貫して高く,さすがと思わせる出来である。Enricoらしい美しいトーンや旋律と,ときにコレクティブ・インプロビゼーション的なアプローチを組み合わせて,2枚組というボリュームながら飽きさせないのは立派。ということで,私はこのアルバムを音楽的にはある程度評価している。

しかし,このライブ盤には決定的かつ絶対に許しがたい欠陥がある。場の雰囲気を全く省みないある一人の無節操な聴衆による奇声(まさしく「奇声」にほかならない)が、リスナーがこうした美しい演奏を楽しむ妨げになっているのはあまりに不幸と言わざるを得ない。私はこの奇声を聞きたくがないために,このCDをほとんど聞かなくなってしまったのだが,はっきり言ってこの「とち狂った」聴衆はライブ会場でも顰蹙を買っていたはずである。こんな馬鹿げた「騒音」が「美的」と言われるPieranunziのアルバムに収録されること自体が私としては信じられない。最悪なのはこのアルバムが今年になって欧州でも発売されてしまったことである。日本の恥をさらすような「奇声」がこれで日本以外にも響き渡ることになるかと思うと,情けないこと甚だしい。

私はこんな客を放置したプロモーター,奇声を編集でカットしなかったレコード会社に強く抗議する意味を込めて,このアルバムは「評価対象外」とする。冒頭にも書いたが,ミュージシャンはちゃんとした仕事をしており,彼らには全く責任はないのであって,音楽芸術に全く敬意を払えない一聴衆の行為こそが強く糾弾するに値する。ライブ会場で演奏に乗ることは勝手だが,人に迷惑をかけてもよいというものではないはずである。私はこのアルバムは即刻廃盤とし,再編集して再発すべきだと強く思う。

ライブを楽しみに会場に足を運んだ聴衆,その演奏をCDで聞くことを楽しみに本盤を購入したリスナー,そしてトリオ3名の全てを冒涜しているこの「バカ男」には「恥を知れ」と言っておく。そこだけスキップして聞けばいいだろうという声もあろうが,そんな面倒なことをしている暇は私にはない。よって,Pieranunziのライブ盤なら聴衆も上品な"Live in Paris"を聞くことになるのである。

Recorded on March 18, 19, 23, 24 and 25 2004 in Tokyo and Yokohama

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Marc Johnson(b), Joey Baron(ds)

2007年6月 5日 (火)

アクセス履歴を見ていてわかるHummingbirdの意外な人気

Diamond_nights 私はこのブログを細々と運営しており,アクセスの多く(もちろん大した数字ではないが...)が私の友人,知人に支えられたものである。しかし,最近アクセス解析を見ていて気がつくのは,私が4/20にアップした「ほとんど奇跡!Hummingbird全作紙ジャケで再発!」というコンテンツに結構なアクセスがあるということである。こうしたアクセスはGoogleやYahoo!等の検索エンジン経由だが,これが私も「へぇ~っ」と唸るような数字になっているのである。

HummingbirdはJeff Beck Groupの残党を核とする渋いバンドである。アルバムも国内外でずっと廃盤になっており,日本での人気も大したことはないだろうと思っていたのだが,ご同慶のいたりと言うべきか,結構趣味人というのは沢山いるのだなーと妙に関心をしてしまった。今回再発された3枚がCDショップでかなり品薄になっているというのにも驚かされてしまうが,一体どういう人が買っているのだろうか?

かく言う私も悩みつつ3枚ともゲットしてしまったが,それにしても不思議だ。日本のCD市場は現在紙ジャケット天国のようになっているが,ここまで人気沸騰に近い紙ジャケ・アルバムはそれほど多くなかったように思える。Santanaの"Lotus"の紙ジャケット盤だってこんなではなかった。いずれにしてもディープな趣味人は沢山いるということはよくわかった。そう言えばLittle Featの紙ジャケも相当なペースでさばけているなぁ。

レコード会社も品薄感をあおらずに,追加プレスするぐらいの度量があってもよさそうなものだが,さすがに基本がマイナーのHummingbirdではそうもいかないかもしれない。

2007年6月 4日 (月)

相変わらずよいFred Herschの新譜

Hersch_1 "Night & the Music" Fred Hersch(Palmetto)

私をHerschをMarc Coplandと並ぶ「静謐ピアニスト」と勝手に呼んでいるが,いつまでたっても日本では地味な存在というのが現状だろう。

そんな日本でも,Fred Herschと言えばConcordレーベルに残したピアノ・トリオ盤"Horizons"を愛するファンが実は結構多い。私もこれまで"Horizons"を聞いてきたくちであるが,そのHerschがトリオによる新作をリリースしたが,これが期待を裏切らぬ出来である。

Herschのよさはその美しいタッチにあると思うが,そのよさはこのアルバムでも存分に発揮されている。選曲も自作,ベースのGressのオリジナルをスタンダード,モンクのオリジナルと交えるというのも申し分ない。"Rhythm Spirit"と題された2曲目はシャープなNasheet Waitsのドラムスが活躍する文字通りリズミックな曲となっているのが意表を突くが,そのほかはいつものHersch的である。そもそも個性的なモンク作"Misterioso"さえHersch色に染めたのは大したものである。この徹底ぶりが嬉しいところである。星★★★★☆。

それにしても,ここでのベースのGressの音が素晴らしい。電気的な増幅を全く感じさせない,これぞベースという響きである。どこかのレコード会社みたいに低音だけ重視すればよいというものではない。ベースの録音はかくありたい。

ところで,Fred Herschがソロで9月に来日するそうである。東京は日本大学カザルスホールという渋いロケーションである。これはやはり行っておかないと,次はいつ見られるかわからないので(NYCならタイミングさえ合えば,Village Vanguardで見られる可能性はあるが...),取り敢えずチケットをゲットすることにしよう。

Recorded on December 4 and 5, 2006

Personnel: Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Nasheet Waits(ds)

2007年6月 3日 (日)

Jess Rodenはもっと評価してよいシンガーである

Jess_roden "Live at the Robin" Jess Roden & the Humans (Mystic)

Jess Rodenというシンガーが一時的にでも日本で注目を集めたとしたなら,それは彼がStomu Yamashitaの"Go Too"に参加した当時のことではないかと思うが,それ以降彼の名前を耳にすることはほとんどないと言ってよいのではないか。しかし,このライブ・アルバムを聞けば,彼が無視されるにはあまりにもったいないシンガーであることがわかる。何と言っても,その歌声が素晴らしい。Paul Rogersばりと言っても過言ではない。

一般にJess Rodenはブルー・アイド・ソウル・シンガーだと言われることが多いようだが,本アルバムではそうした路線(Willie DixonやBuddy Guyのオリジナルには当然顕著に出ている)も保ちつつ,骨太なロックを聞かせている。私の好みとしては,ロック路線で突っ走った方がいいようにも思うが,Rodenのキャリアを考えれば,こうしたバランスも仕方あるまい。しかし,意外と言えば意外な選曲ながら,最後に収められたNeil Youngの"Rockin' in the Free World"のようなロックな世界を聞いてもらえば,私の言うこともわかってもらえそうに思う。

これが録音されたRobin Hood R&B Clubというのはキャパが400名ぐらいということなので,Jess Rodenは本国でも決してメジャーというわけではないとしても,毎度ライブハウスは満員にするぐらいのポピュラリティはあったということである。バック・バンドのHumansも手堅くもソリッドな演奏を聞かせており,こんなライブを聞かせれば,ある程度の人気も保てるのは当然と思わせるものとなっている。

このアルバムは1996年に吹きこまれていながら,発売は2004年までずれ込んだが,この発売を実現したプロデューサーであるHumansのベース・プレイヤー,Nick Grahamに感謝したくなる出来であり,星★★★★☆。

たまたま知ったCDがツボにはまるというのは何とも嬉しいものである。

Recorded Live on July 26 and November 1, 1996 at the Robin Hood R&B Club in Dudley

Personnel: Jess Roden(vo, hca), Gary Grainger(g), Bill Burke(g), Nick Graham(b, vo), Leo Brown(ds)

2007年6月 2日 (土)

懐かしのStuffのゆる~いグルーブ

Stuff "The Right Stuff" Stuff (Warner Brothers)

懐かしのStuffである。当時の精鋭スタジオ・ミュージシャン集団として大きな注目を集めたのは1970年代後半のことである。Stuffはフュージョン・バンドだと言われることが多いが,メンツゆえにこのStuffというバンドをジャズまたはフュージョンの文脈で捉えることには相当無理がある。あくまでも彼らの音楽性はR&Bとして聞いた方がはるかに自然である。

このアルバムは彼らが所属したWarner Brothersの音源を適切にまとめたベスト盤だが,基本的にStuffというバンドは,グループとしてのグルーブを追求していることがよくわかる。これだけの実力者が揃いながら,個々人が個性を打ち出していないのはある意味驚きである。その中でこのバンドで最も個性を感じさせるのはRichard Teeということになるだろうが,アコースティックでもエレピでも一音聞いてそれとわかってしまうのがTeeの凄いところである。

本盤は基本的に第一作,第二作の音源をベースにライブ音源をプラスしたという位置付けである。彼らのアルバムで一番売れたのは恐らくVan McCoy(!)がプロデュースした"More Stuff"だろうが,私はStuffとしてバンドとしての魅力は第一作の所収の(1)~(4)の方に強く感じる。

しかし何と言っても最も強烈なのは日本でのライブを収めたStevie Wonder作の"Signed, Sealed, Delivered I'm Yours"である。この曲にはChris Parkerが参加していないが,それゆえにSteve Gaddの個性がよくわかるチューンとなっている。ドラマーが一人いないだけで,この違いというのがある意味では凄いが,Teeのピアノ・ソロとGaddのドラミングだけで興奮の坩堝である。このGaddを聞くだけでもこのアルバムは価値があるかもしれない。星★★★★。

Personnel: Eric Gale(g), Cornell Dupree(g), Richard Tee(p, key), Gordon Edwards(b), Steve Gadd(ds), Chris Parker(ds)

2007年6月 1日 (金)

Mike SternとBob Berg参加の燃えるライブ

Ukis_uotila "Jukkis Uotila Band Live" Jukkis Uotila (Stunt)

意外なメンツで録音されたハード・フュージョンの傑作である。ここでリーダーを務めるUotilaはフィンランド出身,Jansson,Danielssonはスウェーデン出身という北欧組に,SternとBergという爆裂2人組が加わるというから,ひょっとしてコンテンポラリーな4ビートかとも思わせるのだが,中身は完全なフュージョンである。それもかなり熱い。

全曲がリーダーUotilaの作曲になる4曲から構成されているが,何と言っても終曲の"The Individualist"が強烈である。冒頭からSternの強烈なソロから入り,もはやハード・ロック真っ青の世界が展開されていて,こうしたサウンドが好みのリスナーにはたまらない。そこに至るまでの3曲はクールな曲調の中に熱いソロが組み込まれていて,そちらも大いに楽しめるのだが,この4曲目ではそこまでやるかというぐらい,バンド全体の疾走感が楽しめる。急造バンドとは言え,それなりの実力者揃いなので,演奏のレベルはかなり高い。星★★★★☆。

このアルバム,1990年に発売されたものだが,市場からは消えつつあるようで,最近はあまりお目にかからなくなったが,Mike Sternのファンは必携のアルバムである。Miles DavisのバンドでMike Sternがより幅広く認知された頃はイモ・ギタリストと揶揄されたのも今は昔。結構ワンパターンなところはあるが,それでも私はMike Sternがかなり好きである。世の中,予定調和という言葉もあるし,ファンにとってはそこがよいのだ。

尚,Mike Sternを生で見る(聞く)ならニューヨークのウエスト・ヴィレッジにある55 Bar(http://www.55bar.com/)がお薦めである。はっきり言って相当下世話な場所であるが,チャージは安いし,間近でMikeの演奏が見られる。Mikeは月曜,水曜に登場することが多い。Sternを見逃しても,Wayne Krantz等も結構聞けるので,行くところがないとこの55 Barは実に役に立つ場所である。前回,この店に行ったときは,そのKrantzが出ていたが,矢野顕子が来ていたのがかなり意外であった。

いずれにしても,スーツを着用して行くような店では決してないので,お上品な皆さまは避けた方がベターだが,ダウンタウンの雰囲気は相当に濃厚に楽しめる場所である。(なんだか随分話がそれてしまった。)

Recorded Live in Copenhagen on April 10, 1989 and in Gothenburg on April 11, 1989

Personnel: Jukis Uotila(ds), Mike Stern(g), Bob Berg(ts), Lars Jansson(key), Lasse Danielsson(b)

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