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2007年5月31日 (木)

Doobie Brothersの洗練の極致

Living_on_the_fault_line "Livin' on the Fault Line" Doobie Brothers (Warner Brothers)

私はDoobiesの最高傑作は前期は"Stampede"で,後期は1977年にリリースされたこのアルバムだと思っていると書いたのは随分前のことだ。今日は後期(再編前)のDoobiesにとって,なぜこれが最高なのかを書いてみたい。

このアルバムには"What a Fool Believes"のような特大ヒットは含まれていない。"Little Darling"は結構ヒットしたが,彼らのキャリアの中ではやはり"Minute by Minute"の影に隠れてしまったアルバムという位置付けにあることは事実である。しかし,このアルバムの曲や演奏のクォリティは私は"Minute by Minute"より高いと感じる。

本作はMichael McDonald加入以降のロック,ソウルのミックス具合を極限まで高めたアルバムであり,そこにジャズ的なセンスも加わって,サウンドの洗練度が高いことは冒頭の"You're Made That Way"のMcDonaldによるフェンダー・ローズのイントロから明らかになる。その後に続く楽曲群においても,リズム・アプローチにしても,挿みこまれるソロにしても,とても"China Grove"や"Listen to the Music"を歌っていたバンドのものとは思えないほどのソフィスティケーションを示しているのである。

曲はどれを取ってもよい出来であるが,McDonaldとCarly Simonの共作"You Belong to Me"やタイトル・トラックなどしびれる出来である。特にこのタイトル・トラックのフュージョン的アプローチには驚かされるが,途中で出てくるVictor Feldmanによるヴァイブ・ソロとそのバックのリズム・フィギュアが最高である。このサウンドは西海岸的と言うよりも,ニューヨーク的と言った方がよいかもしれない。ジャケットにサンフランシスコのTransamerica Towerの写真が使われていることだけが,Doobiesを西海岸のバンドだと思わせると言っては言い過ぎか。

このアルバム,カントリー的な終曲"Larry the Logger Two-step"がアルバムとしてのバランスを崩してがっくり来るが,ほかがあまりによいので,ちょいと甘いが星★★★★★である。

こんなアルバムに「運命の掟」なんていう訳のわからぬ邦題をつけるセンスを疑うが,ある意味本作は真のアダルト・オリエンティッド・ロックであり,もはや前期Doobiesの豪快なアメリカン・ロックの世界ではない。一時病欠していたTom Johnstonが本作では全面的に復帰しているが,もはやこのバンドに彼のいる場所は全くなく,このアルバムでもほとんどその存在をアピールできていない。よって,本作を最後に正式に脱退したことは当然のことである。

Personnel: Patrick Simmons(g, vo), Tom Johnston(g, vo), Jeff Baxter(g), Michael McDonald(key, vo), Tyran Porter(b), Keith Knudsen(ds, vo), John Hartman(ds) with Bobby LaKinde(conga, vo), Dan Armstrong(el-sitar), Norton Buffalo(hca), Victor Feldman(vib), Rosemary Butler(vo), Maureen McDonald(vo)

2007年5月30日 (水)

追悼,藤原伊織

Photo_12 「ダナエ」 藤原伊織 (文藝春秋)

藤原伊織が去る5/17に亡くなった。59歳というあまりに若すぎる死が大変惜しまれる。

藤原伊織が大きな注目を集めたのはもちろん直木賞,江戸川乱歩賞をダブル受賞した「テロリストのパラソル」以降であるが,読者を引きずり込む彼の筆力はおそらくは遺作となった短編集「ダナエ」まで健在であった。後年の長編作「蚊トンボ白鬚の冒険」や「シリウスの道」も筆力は優れていながら,設定やプロットに無理を感じさせるところもあっただけに,次作の「テロリスト...」や「ひまわりの祝祭」のようなハードボイルド長編を期待していた私のような読者も多かったはずである。それは果たせなかったが,ここで紹介している「ダナエ」という短編集も侮れない作品であり,短編だからと言って敬遠するべきではない。 むしろ藤原の早逝を追悼して読んでみれば,更に彼の死が極めて勿体ないことであったことがわかるであろうなかなか泣かせる佳作である。星★★★★。

私は発売直後にこの短編集を読んだが,まさかその数ヶ月後にこのようなことになるとは思わなかった。今,この段階で「ダナエ」を読めば,おそらくは全く違った感慨もあるのだろうが,私は未読だった短編集「雪が降る」を読んで,彼を追悼することにしよう。合掌。

2007年5月29日 (火)

くつろぎ感抜群のBill Charlapのヴァンガードでのライブ盤

Charlap "Live at the Village Vanguard" Bill Charlap Trio (Blue Note)

ジャズという音楽に何を求めるかにもよるが,このアルバムはくつろぎ感満点であり,リラクゼーションを重視するジャズ・ファンにとっては誠に素晴らしいアルバムである。こういう音楽に私はつくづくジャズ音楽の「粋さ」を感じてしまう。

Village Vanguardと言えば,多くのジャズの偉人たちが優れたアルバムを吹き込んできたある意味ではジャズの聖地である。現代のピアニストの中でCharlapはそのVanguardに定期的に出演するピアニストの一人であるが,ここでも期待に背かぬその演奏ぶりには嬉しくなる。

全9曲中6曲がスタンダード,残る3曲がGerry Mulligan,George Wallington,Jim Hallのジャズ・オリジナルであるが,スタンダード中Harold Arlenの曲が3曲含まれているのが目立つ。いずれにしても,訳のわからない自作にこだわるよりは,はるかに潔い態度である。

Bill Charlapは日本のVenusレーベルからもNew York Trio名義で結構な枚数のピアノ・トリオを発売しているが,私としてはこちらのトリオの方が長年の付き合いを感じさせて好ましいコンビネーションのように思える。バックの両Washingtonはリーダーを立てて,出過ぎないところが何とも慎ましい。録音されてから4年近くと結構な時間が経っているが,それはこのアルバムの持つある意味での地味さ,あるいはその慎ましさゆえに,発売が見送られてきたからかもしれない。しかし,このアルバムを聞けば,きっちりマーケットに流通させるベきものだることはすぐにわかる。

とは言え,本作は曲によってやや出来不出来があるようにも思えるし、歴史的名盤の地位を得るような類のものではない。だが,ちゃんとその存在が認知されさえすれば,多くのジャズ・ファンに永く愛されるものになるだろう。私がひいきにするBrad Mehldauを除けば,近年,ピアノ・トリオで繰り返し聞きたいと思わせたのはKenny BarronのBradley'sでのライブぐらいであったが,このアルバムも暫くは私の愛聴盤となると思われる佳作である。星★★★★☆。

Recorded Live at the Village Vanguard in September 2003

Personnel: Bill Charlap(p), Peter Washington(b), Kenny Washington(ds)

2007年5月28日 (月)

Robert Palmerの強烈なライブ

Palmer "Live at the Apollo" Robert Palmer (Eagle)

Robert Palmerがパリで心臓発作で亡くなったのは2003年9月のことである。54歳という早すぎる死であった。そのPalmerの生前,2001年にリリースされたのがこのライブ・アルバムである。PalmerとApollo Theaterという組合せは意表を突いているが,だからと言ってやっている音楽が「黒人音楽の殿堂」Apollo Theaterに合わせたものではなく,あくまでもPalmerのハイパー・ロック路線が基本である。録音されたのは80年代後半と思われるが,なぜこのアルバムが2001年になって唐突に発売されたかは今もって謎である。

選曲はアルバム"Power Station"や"Riptide"のハイパー・ロック路線を中心に,"Pride"に聞かれるカリビアン路線を混ぜたものとなっており,Palmerのキャリア上最も充実していた時期をカバーしていると言えるだろう。特に終盤の「これでもかと」盛り上げていくハードなロック路線は強烈で,"Addicted to Love"の路線を好むリスナーにとっては満足できるものである。演奏はレギュラー・バックバンドを従えたものであり,荒さはあるものの安定していて,結構楽しめるライブ盤となっている。ブックレットに記載されているが,彼らは物凄い数のライブをこなしており,Apolloの公演がその年の米国ツアー締めくくりと言うこともあって,バンドのまとまりはピークに達していたと考えてよい。星★★★★。

幸い,私はRobert Palmerのライブを仕事で出張中のロンドン(Hammersmith Odeon)と東京で2回見るチャンスに恵まれたが,どちらもステージでもPalmerがおしゃれなスーツで決めていたのが印象的である。あれだけハードなロックをやっても,汗を感じさせない不思議なミュージシャンであった。

Personnel:Robert Palmer(vo),David Rosenthal(key), Alan Mansfield(key), Eddie Martinez(g), Frank Blair(b), Don Wynn(ds), Brie Howerd(perc), BJ Nelson(vo)

2007年5月27日 (日)

ブートレッグについて考える

昔から海賊盤というのは世の中に存在した。海賊盤を日本でもブートレッグ(あるいはブート)と呼ぶようになったのはいつの頃からか。以前,Michael Breckerの完全ソロ・ライブというブートレッグを紹介した時にも書いたのだが,私は正面切ってブートレッグをこのブログで紹介することには躊躇がある。ブートレッグはあくまでも趣味人(あるいは所謂オタク:自分をオタクと認めるようなものだが...)の世界であって,健全な音楽のリスナーに薦めることはやはり控えるべきだと思う。即ち,そこに足を一旦踏み入れると抜け出せなくなるから危険なのだ。

しかし、ここまでブートレッグが氾濫するにはそれなりの理由があるのも事実である。例えば,Miles Davisのボックス・セットによくある批判であるが,本当にマニアックな人々が聞きたい音源を,そうしたボックス・セットがちゃんとカバーしていないことがその根本的な原因である。プロデューサーとしては,何でもかんでも音源を収録してしまえば,ボックスの価格が吊り上がり,販売に影響するという判断もあることは間違いないので,最大公約数的なチョイスに走ることも責められるものではない。

ただ、Miles DavisのJohn Coltraneとのボックスが出たときには,その制作過程で"Kind  of Blue"セッションや"Round Midnight"セッションの全貌も明らかになっていたはずである。それを意図的ではないとしても,出し惜しみするから結局はブートレッガー(関係者による流出は間違いないところだが)の餌食になるのである。そうした意味では,プロデューサーのリスナー心理の無理解というのも,その根底にあるのではないかと思う。

とか何とか言っても,私も結構ブートレッガーを潤わせている方なので,あまり大きなことは言えた義理ではないが,ファン心理というのは人がどうこう言おうと微妙なのだ。マニアックと言われようが,欲しいものは欲しいし,聞きたいものは聞きたい。これが今日も私の財布を軽くさせていく...。ある意味では厳しい世界である。

2007年5月26日 (土)

Jeff Beckのオフィシャル・ブートレッグ第2弾

Beck_live "Official Bootleg USA '06"Jeff Beck (Sony)

2003年NYC録音のオフィシャル・ブートレッグが日本で発売されたのは一昨年のことだったが,シリーズ第2弾がこの度発売された。本来このCDはライブ会場での限定発売から,Beckのサイト上での発売を経て,日本では正式な流通ルートに乗ったものであり,パターンとしては前作と似ている。

前作には比較的新しいレパートリーが多く含まれていたように思うが,今回はBeckのキャリア上でのヒット曲を更にカバーしているという色彩が強い。しかし,フレージングに関しては「昔の名前で出ています」的なところは全くなく,Beckのギターははっきり言ってぶっ飛んでいる。これが本当に還暦を過ぎた人間なのか。

珍しいのはBilly Cobhamの"Spectrum"所収の"Stratus"が演奏されていることだろう。Cobham盤ではTommy Bolinが弾いていたこの曲をBeckがどう料理するかは興味深いところであったが,ここはもう少しテンポを上げて飛ばした方がよかったように思う。4曲目に"'Cause We've Ended as Lovers(哀しみの恋人たち)"が入っているのは信じられないが,Beckは素晴らしいボリューム・コントロールぶりを聞かせる。最後にはアンコール的な"Over the Rainbow"が入っているが,そう言えばEric Claptonもライブでこの曲をやっていた。彼らにはこの曲に対する何らかの思い入れがあるということだろうか...。

いずれにしても,このCDはBeckのサイトでも15ドルもするので,送料込みにすれば,この国内盤を買っても逆に元が取れてしまうかもしれない。前作は確かもっと安く売れられていたはず(確か9ドルとか10ドルとかだったはずである)だが,このあたりにはやや商魂のたくましさを感じてしまうものの,ファンにとってはうれしいものであろう。

音楽的には,本作はなかなか豪華なメンツを集めている割には,出来としてはブート第1作の方が優れているように思える。いろいろな要因は考えられるが,やはり私としてはドラマーの差だと言いたい。Vinnie Colaiutaはソリッドで堅実なドラマーではあるが,前作のTerry Bozzioのような爆発力はない。Beckのフレージングがフレージングだけに,ここはもっとバンド全体で爆発してもよかったのではないかと思う。ということで,どちらがいいかと言えば,私は前作の方を好ましく感じる。

もう一点,問題を指摘するならば,Jason Rebelloのシンセ・サウンドの軽さである。私はJan Hammerのファンという訳ではないが,"Wired"等に聞かれるHammerのRhodesやシンセの響きがBeckとの相性がよかったのは事実である。RebelloをHammerサウンドの継承者として認識することには問題もあろうが,緊張感やサウンドという観点から,もう少し何とかなったように思える演奏である。ちなみに前作のキーボードはTony Hymasだが,Beckとの相性では,Hammer-Hymas-Rebelloという順番になるだろう。ベースのPalladinoは極めて堅実。決して悪い出来とは思わないが,全体的には星★★★☆というところだろう。

Recorded in June, 2006

Personnel: Jeff Bsck(g), Jason Rebello(key, p), Pino Palladino(b), Vinnie Colaiuta(ds)

2007年5月25日 (金)

Bill Evans:"You Must Believe in Spring"のトリオによるスイスでのライブ

Evans_in_switzerland "Live in Switzerland 1975" Bill Evans Trio (Gambit)

このCDを初めて聞いたのは馴染みのジャズ喫茶においてであったが,その出来のよさに思わず耳をそばだてたと記憶している。本作を発売しているGambit Recordsというのは結構よくわからない会社なのだが,おそらくは放送音源の発掘を中心としているレーベルだろう。

日本でのBill Evansの人気は圧倒的なものがあり,CDショップでも「エバンス派」なるポップがやけに目に付き,Evans的なら売れるのかっ!と皮肉も言いたくなるぐらいである(余談ながら,特に理由があるわけではないのだが,私は「エバンス派」という表現が虫酸が走るほど嫌いである。)。

その本家Bill Evansにようるスイスでのライブ音源であるが,なぜこのCDに注目しなければならないかと言えば,バックがEddie Gomez(b),Eliot Zigmund(ds)というあの静謐なる傑作"You Must Believe in Spring"のメンツだからである。あのアルバムは,私の感覚では結構愛聴しているリスナーが多い優れたアルバムであるから,このライブ音源にも期待が集まるのも当然である。

もちろん,スタジオ盤と違ってライブなので,よりホットな演奏をしているが,Evansの美しいフレージングはここでも十分に楽しめるし,おそらくは結構珍しいレパートリーを演奏しているように思える。録音状態も悪くないので,Zigmundのサトルなドラミングもそこそこ楽しめるものとなっている。"You Must..."やラスト・トリオ等,後期Evansのファンは必聴のアルバムと言ってよいだろう。もちろん,Riverside4部作や"You Must..."のようには行かないが,これは比較的優れた発掘音源だったと評価し,星★★★★。

Recorded Live on February 6, 1975 in Epalinges, Switzerland

Personnel: Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Eliot Zigmund(ds)

2007年5月24日 (木)

豪華なメンバーで録音されたAndy Summersのフュージョン作

Summers "World Gone Strange" Andy Summers (Private Music)

Policeのギタリスト,Andy Summersのアルバムをジャズのカテゴリーに入れるのもどうかという話もあるが,これは1991年にリリースされた完全なフュージョン・アルバムなので,ジャズに分類することにする。

Police解散後はRobert Frippとの共演や,ジャズへの傾斜("Green Chimmnies"というThelonius Monk集まで作ってしまった!)等,完全に趣味の世界を突っ走るAndy Summersであるが,最もフュージョン色が強まったのが本作及びこの前作である"Charming Snakes"だろう。Herbie Hancock,Bill Evans(saxの方)やMark Isham等が参加した"Charming Snakes"も捨て難いが,Mike Mainieriがプロデュースに当たった本作にはその筋の強者が集まっており,より完成度が高いように思える。

本作でSummers(g)を支えるリズム・セクションはMitchell Forman(key),Tony Levin(b),Chad Wackerman(ds)とかなり強力である。更にゲストとして,Eliane Elias,Victor Bailey,Nana Vasconselos,その他を迎えており,Mainieri(あるいはSteps Ahead)人脈を活かした豪華な布陣である。前作と異なり(1曲を除いて)ホーンが入っていない分,Summersのソロ・スペースが豊富になっており,Summersファンには嬉しいところである。

本作では全曲Summersが作曲しているが,一般のフュージョンよりもウェットな感覚が強く,その辺りがSummersらしいとも言える。本作を歴史的な名作とは言わないが,凡百のスムーズ・ジャズとは一線を画した快作であり,より多くのリスナーに注目して欲しい作品である。星★★★★。ただし,このアルバムはもはや廃盤となり,マーケットからは姿を消してしまったようだが,心配することはない。しょっちゅう中古盤でお目に掛かるので,入手はそれほど困難ではない。

ところで,余談だがこのアルバムが出た当時,私はAndy Summersのライブをニューヨークのタウンホールで見たことがある。そのときはMichael Brecker Bandとのダブルビルだったのだが,どちらかと言うとオーディエンスはジャズ寄りの人たちが多かったようで,一部でBreckerが引っ込んで,休憩後Summersがかなりロック・タッチの演奏を展開するや,ぞろぞろと客が帰っていったのが妙に印象に残っている(最初ほぼ満員だったのが,最後まで残ったのは3割ぐらいしかいなかったように記憶している)。決して悪い演奏だったとは思わないので,このアルバムのような演奏をすれば,もう少し聴衆に受けたのではないかと思うのだが,ややロック度が強すぎたかもしれない。こうした逸話からしても,Police解散後ある意味日陰の道を歩み続けたSummersがPolice再結成に向かうのも致し方ない話なのかもしれない。

Recorded between May 21 and June 14, 1991

Personnel: Andy Summers(g), Mitchell Forman(key), Tony Levin(b), Chad Wackerman(ds), Eliane Elias(p, vo), Victor Bailey(b), Nana Vasconcelos(perc), Manolo Badrena(perc), Mino Cinelu(perc), Mike Mainieri(marimba), Bendik(ss)

2007年5月23日 (水)

あまりに早熟過ぎてその後が今一歩のRoy Hargrove

Hargrove "Public Eye" Roy Hargrove (Novus)

このアルバムは結構懐かしい。私が米国に在住していた頃,Sonny Rollinsのカーネギー・ホールでのライブに行くチャンスがあったのだが,そこにゲストで登場したのがこのRoy Hargroveであった。そこで吹いたのがこのアルバムに収録されている"Once in a While"であったが,若いくせに何とも言えないコクのある演奏をされて,私は思わずうなってしまった。そこで早速購入したのがこのアルバムである。

当時から「期待の新人」と騒がれていたRoy Hargroveであるが,本作はNovusレーベルに吹き込んだリーダー作第2弾である。ドラムスのBilly Higgins以外は若手で固めたバンドであるが,とても当時20歳そこそこの若者が演奏しているとは思えない成熟ぶりを示しているのは,カーネギーで聞いたとおりである。冒頭に収められた軽くバウンスするタイトル曲"Public Eye"から期待が高まる演奏を展開している。

本作ではミディアム以上のテンポの曲とバラードがほぼ交互に演奏されるプログラムが組まれている。バラード演奏にはまだまだ青臭さの残る曲もあるが,年齢を考えればかなりの水準とは言えるものである。ただ,ミディアム・ファストの曲の方が溌剌とした印象を与えるのは致し方がないところである。総合的に見れば相当によく出来たアルバムであり,こうした演奏を耳にすれば,Hargroveに対するLee Morganの再来と言う当時の評価はあながち間違ったものではない。星★★★★。

しかし,その後のキャリアを見ると,Hargroveがその才能を完全に開花させたとは言えないのは残念である。結構いいアルバムもあるにはあったが,その後マンネリを感じさせるようになってからは,私も彼のアルバムを必ず買うということもなくなってしまった。結局のところ,方向性の定まらないリーダー作を連発するよりも,優れたバンド・リーダーの下での修行期間(MorganがArt Blakeyの下で修行したようにである)も必要だったのではないかと感じさせる。とは言っても,最近のアルバムは聞いていないから,今はどうなのかはわからないが...。

尚,余談だが,本作に参加しているChristian McBrideを初めて生で聞いた(確かBradley'sでだ)ときもぶっ飛んだ記憶がある。あまりに興奮して,知り合いに「McBrideは凄い」というような葉書をAir Mailで出したのは湾岸戦争勃発前後だった。(こうした懐古主義が私の年齢ゆえか...)

Recorded in October 1990

Personnel: Roy Hargrove(tp), Antonio Hart(as), Stephen Scott(p), Christian McBride(b), Billy Higgins(ds)

2007年5月22日 (火)

Wilcoの素の魅力に溢れた新作

Wilco "Blue Sky Blue" Wilco(Nonesuch)

いまだにオルタナ・カントリーというジャンルはよくわからないのだが,その代表格と言われるWilcoの新作が出た。このサウンド,私にとってはフォーク・ロックと呼んでいいものだが,これがなかなかよい。

何がよいかというと,一聴してわかるのだが,サウンド,エンジニアリングに無駄な装飾がないということである。即ち,余計なエコーやエフェクトが掛かっていないので,非常に生々しいサウンドに聞こえるのである。これは相当自信がないとできないことであるが,映画に例えれば,CGに頼らない手作りのよさと言うことが出来る。私は最近のCG偏重が映画を駄目にしていると信じているが,このアルバムは職人により丁寧に作られた優れた小品を見る思いである。

Wilcoにアバンギャルド系ギタリスト,Nels Clineが加入したのには驚かされたが,ここでは全く前衛的なサウンドは聞かせることなく,何とも渋くも素晴らしいギター・プレイを展開してるのが更に驚きである。有能な人はやれば何でもできるのねェと感心してしまう。アルバムに収められた音楽そのものは非常に素朴な響きを持ったものであり,緊張感を持つ音楽というよりも,落ち着いたフォーク・ロックの現在形と呼ぶのが最も適切のように思える。アメリカン・ロック好きにはたまらないアルバムだと思う。本作にもJim O'Rourkeが引き続き関わっているが,私にはその意義を語るほど,O'Rourkeという人を知らないので,何とも言えない。

尚,このアルバムにはDVD付きのバージョンもあるようだが,私が入手したのはCDのみものである。もちろん,映像なしでも十分楽しめるアルバムである。星★★★★☆。

Personnel: Jeff Tweedy(vo, g), John Stirratt(b), Glen Kotche(ds, perc), Mikael Jorgensen(p, key), Nels Cline(g), Pat Sonsone(g, org), Jim O'Rourke(effect, g, perc), Karen Waltuch(vln, vla)

2007年5月21日 (月)

結構イケテるRushの新作

Rush "Snakes & Arrows" Rush (Atlantic)

カナダ出身のハード・プログレの雄,Rushの新作である。高い演奏能力に根差したある意味での仰々しさがRushの特性であるが,今回もその仰々しさは不変である。私は常々Rushの演奏能力は高く評価しつつも,Geddy Leeのヴォーカルの弱さがこのバンドを決定的にブレークさせない原因だと思ってきた。これがもっと野太いヴォーカリストか,あるいはYesのJohn Andersonのようなクリア・ボイスだったらこのバンドへの評価も全く違ったものになったのではないかと思う。

今回のアルバムでもそうした感覚は変わらないのだが,むしろ,このアルバムでは意図的にヴォーカルのミキシング・レベルを抑制しているように思えるところがよい。

曲は相変わらずのRush節炸裂であり,ファンが期待するサウンドが連続している。メンバー3人の手数の多さには半ば呆れるが,これこそがRushの個性であるから,これをうるさいと感じるリスナーはRushの音楽とは無縁だと思った方がよいだろう。私は決してRushの大ファンというわけではないのだが,グランジには堪えられない中年オヤジをかろうじて現代ハードロック的なところに留めさせてくれるバンドだと思う。音楽性がどうのこうのというより,この爽快感が私にとっては貴重である。是非ボリュームを上げて聞きたい一枚である。星★★★★。

2007年5月20日 (日)

ウルトラセブン第12話について思う

ウルトラセブンについて語るぞと宣言し,初っ端の話題がこれかと,やや気が引けるのだが,敢えてControversialな話題に触れてみたい。

多くの人がご存知のとおり,ウルトラセブンの第12話「遊星より愛をこめて」は欠番になっている。DVDのデジタル・ウルトラ・シリーズでウルトラセブンが復刻された時も,このエピソードが復活することはなかった。

このエピソードの監督をつとめた実相寺昭雄監督(惜しくも昨年亡くなった。合掌)が,著書の中でも触れているが,このエピソードの不幸は,エピソードそのものの内容ではなく,その後の雑誌における「とある記述」が放送禁止を招いてしまったことにあることである。確かに本編中にも「ヤバい」表現がないわけではないが,テレビ放映版にそれほど大きな罪はないように思える。

この話題は,いろいろな意味で「表現の自由」対「人権保護」ということを考えさせるものだが,誤解を恐れずに言うならば,これが放送禁止というのは若干過剰反応のように感じるというのが正直な感想である(悪いのはあくまでも雑誌の方である)。ウルトラマンでフジ隊員を演じた桜井浩子が出ているし,アンヌ隊員の私服姿が見られる話なのに惜しい。と言っても,こればかりは仕方のない話である。

(ところで,放送禁止になってから数十年のエピソードに対して,なぜそこまではっきり言えるかと皆さん疑問に思うかもしれないが,それがネット社会のマジック,あるいは恐ろしいところである,とだけ言っておこう。もちろんすぐわかることだがはっきりとは書きづらいところである。)

2007年5月19日 (土)

Alan Parsons Projectのリマスター・ベスト盤

App "The Essential Alan Parsons Proect" Alan Parsons Project (Arista)

私ぐらいの中年オヤジにとって,Alan Parsons Project(APP)は懐かしいバンドである。彼らが一世を風靡したとは言わないまでも,結構日本にも根強いファンを持っていることは,今から何年前か忘れたが,東京国際フォーラムでの彼らのライブを見たときにも強く感じたものである。

最近はProject名義でのアルバムの発売はないAPPだが,最近,過去のアルバムのリマスター・プロジェクトが開始されたようで,それに伴い,3枚組のベスト・アルバムも発売された。これまで,APPのベストと言えば,97年に発売された2枚組の"The Definitive Collection"がマストであった訳だが,今回の3枚組はその2枚組のエンハンス盤と考えると,購入も躊躇されるのだが,よくよく見ると結構曲のかぶりも少ないし,値段も手頃なため,つい買ってしまった。音源は未聴なので,音がどれぐらい改善しているのかは評価できないのだが,このアルバム,決定的な欠点がある。

その欠点とはブックレットの情報があまりに少ないことである。バンドの性格上,パーマネントなメンバー構成でないAPPについては,ちゃんと曲毎のメンツ情報を提供するのが筋なのだが,本盤のブックレットにはそれがない。あるのはAlan ParsonsとEric Woolfsonのバイオグラフィだけで,それではずっとバンドを支えたIan Bairnsonとかはどないなんねんっ!と文句もつけたくなるのはいただけない。

しかし,それを除けば何とも素晴らしい名曲揃い。Eric Woolfsonの声はやはりOne & Onlyの味わいに溢れているし,まさにAdult Oriented Rockを体現した好バンドであった。今一度,このアルバムで彼らの曲や声の持つ魅力にひたりたいと思う。ブックレットの手抜きを差し引き星★★★★☆とするが,APP未聴のリスナーにはお薦めできる好コンピレーションである。

2007年5月18日 (金)

予告:近いうちにウルトラセブンを語ることにします

Photo_11 このブログを結構見てくれている友人と飲みに行ったのだが,いつになったら「円谷シリーズ」は始まるのだと聞かれてしまった。このブログの本題とは異なるが,リクエストに応えて近いうちに円谷プロの傑作「ウルトラセブン」について語ると約束してしまおう。

私の同年代たるもの,アンヌ隊員に胸をときめかせたに違いないので,そういう観点も含めて語ってみたいと思う。乞うご期待(?)

2007年5月17日 (木)

感動的なMichael Breckerの遺作

Brecker "Pilgramage" Michael Brecker (WA/Emarcy)

去る1月に亡くなったMichael Breckerの遺作が発売された。メンツ的にはバラード・アルバム"Nearness of You"に近いが,それにしても豪華なメンバーが集ったものである。病魔と戦っていたBreckerを励まそう(あるいは鼓舞しよう)という美しいミュージシャンシップが感じられるではないか。

私がこのCDを聞いた環境にもよるのかもしれないが,Breckerのフレージングそのものには大きな変化はないように聞こえるものの,サックスの音圧がやや弱々しく聞こえるのは,Breckerの体調を考えれば致し方のないことかもしれない。また,これまでならBreckerのソロ・スペースがもっとあったであろうところに,共演者のソロが長くなっているのも仕方のないところである。しかしながら,死期の迫った人の音楽とは到底思えない出来を示しているのはさすがである。普通ならもっと「白鳥の歌」的な静謐な世界を演出してもよいようなものだが,敢えて急速調の曲を多くするところに私は強くBreckerの矜持(あるいは生への強い意思とでも言うべきか)を感じる。

いずれにしても,もう二度とBreckerのサックスを聞くことはできないと覚悟していたファンに,Breckerは命を削りながら大変大きな遺産を残したと言うこともできよう。そこに私は感動する。

バックを支えるメンバーもこれがBreckerとは最後かもしれないという気持ちがあったのだろう。相当気合の入った演奏を聞かせており,長尺曲の多いアルバム全体を盛り上げている。近年のJack DeJohnetteでは最も激しく叩いたのではないかと思わせるドラム,相変わらずのHancock,Mehldau,Methenyの強力なソロ,目立たないが素晴らしいバッキングを展開するPatitucciとどれもがBreckerに対するリスペクトを感じさせるものとして,ある意味音楽以上に感動を与える。

やや感情的になってしまったが,音楽に加えて,ミュージシャンたちが与えるくれる感動を含めてこのアルバムには星★★★★★を謹呈し,改めてMichael Breckerに対する哀悼の意を表したい。

尚,私はBrad Mehldauのコレクターなので,Mehldau参加アルバムは無条件に購入しているが,本アルバムへのMehldauの参加は,このアルバムのプロデューサーにMethenyが名を連ねていることから,おそらくはMethny/Mehldauプロジェクトの延長線上でのものではないかと想像している。BreckerとMehldauは既にCharlie Hadenの"American Dream"で共演経験はあるが,やはりここでは上記の経緯と考えるのが妥当のように思う。

Recorded in August, 2006

Personnel: Michael Brecker(ts), Herbie Hancock(p, key), Brad Mehldau(p), Pat Metheny(g), John Patitucci(b), Jack DeJohnette(ds)

2007年5月16日 (水)

友人のブログ

今日は私の友人の美人弁護士(しがないサラリーマンの私とは違って,友人は医者だとか弁護士だとか立派な職業についている。)のブログ:「悠法律事務所」(http://yuu-kamikawa.cocolog-nifty.com/law/) をご紹介しよう。私のブログを彼女のブログでも紹介してもらったので,今回はお礼を込めてのご紹介だが,この舌鋒鋭いブログを読んでいると,私の音楽批評など甘いものだと思ってしまう。

これだけの批評精神を毎日持続するのは誠に立派である。昨年,高校の卒業以来初の同窓会で,それこそ卒業以来初めて再会したのだが,ここまでやっているとは思いませんでした。それにしても人は見かけによらない。

日本人好みの哀愁旋律満載のArt Farmer盤

Farmer  "To Sweden with Love" Art Farmer Quarter Featuring Jim Hall (Atlantic)

スウェーデンという国の音楽は,日本人の心に琴線に触れるような哀愁を帯びたメロディが多く,Stan Getzのオハコ"Dear Old Stockholm"は最もよく知られたナンバーである。そのような哀愁を帯びた曲を,Art Farmerの繊細なフリューゲル・ホーンが奏でるとなれば悪いわけはない。Art Farmerという奏者は,個性や技術としての傑出度という点では疑問もあるが,このフリューゲルの響きはやはりなかなか捨て難い。

ここではJim Hallとの双頭クァルテットとしての演奏となっており,通常伴奏者に徹することが多いHallにも多くのソロ・スペースが与えられているが,FarmerとHallの相性は音楽性が似ていることもあり,非常によい。一方,リズムがSteve Swallowのベースはさておき,Pete LaRocaがドラムスというのはやや意表を突く人選であるが,LaRocaの鋭いドラミングが,ともすれば甘く流れそうになる演奏に,適度なスパイスを与えているように感じる。

曲は6曲中5曲がスウェーデン民謡のアレンジ,最後の1曲は同国の現代オリジナルのようであるが,どの曲も美しいメロディー・ラインが魅力的なものである。ゴリゴリのジャズはちょっとという向きにもお薦めの美しいアルバムである。星★★★★。

Recorded on April 28 & 30, 1964

Personnel: Art Farmer(fl-h), Jim Hall(g), Steve Swallow(b), Pete LaRoca(ds)

2007年5月15日 (火)

Steve Colemanは確かに時代の寵児であった

Coleman "Sine Die" Steve Coleman & Five Elements (Pangea)

Steve ColemanがStingのレーベル,Pangeaから1988年に発表した傑作アルバムである。こうした作品をものにしたことは評価すべきであるが,その後のColemanが徐々に勢いを失ったことは誰の目にも明らかである。

確かに80年代の後半には,彼らのM-Baseサウンドがシーンを席巻したこともある。複雑なリズム・フィギュアに,ホーンのユニゾンや先鋭的なソロを組み合わせたのがM-Baseサウンドの特徴と言えると思うが,いかんせんこうした取組みはパターン化し,聴衆から飽きられるのも早い。同じくM-Base派と言われたGary Thomasが失速したのが早かったのも同じ理由である。Colemanの不幸は,こうしたテクスチャーだけの音楽に留まるべきでない実力を有していたにもかかわらず,この手の音楽にこだわったことである。スマートなCassandra WilsonはM-Baseに見切りをつけ,ディープなアメリカン・ミュージックへ転換を図ったのは正解だった。

しかし,ここで聞かれるサウンドは確かにかなりのカッコよさである。この変拍子に「乗れ!」と言われても困るが,体を揺らすこのグルーブは何とも言い難い魅力があるし,その魅力は約20年を経た今でも変わらない。時代の断面を切り取った音楽と言っては言い過ぎかもしれないが,確かにこれはあの時代をシーンを代表していた。Steve Colemanのリーダー作は数々あれど,私にとってはこれが彼の最高作品である。星★★★★☆。

尚,リーダーでない作品にはもっといいのがあるという話がのも事実である。Dave Hollandとの"Triplicate"なんぞは正直痺れる出来である。

Recorded in 1987/1988

Personnel: Steve Coleman (as), Graham Haynes (tp), Robin Eubanks (tb), James Weidman (key), David Gilmore (g), Kevin Bruce Harris (b), Marvin "Smitty" Smith (ds), Cassandra Wilson (vo),  Branford Marsalis (ts), Gary Thomas (ts), Greg Osby (as), Jimmy Cozier (bs), Geri Allen (key), Lonnie Plaxico (b)

2007年5月14日 (月)

何とも心地よいChick Coreaの"Friends"

Friends "Friends" Chick Corea (Polydor)

本作が発売された当時はフュージョン全盛期。そうした時代だったからということもあろうが,Chickのジャズ(4ビート?)回帰等と騒がれた作品である。しかし,ここではFender Rhodes Electric Pianoも多用しているし,リズム・パターンも様々で,決してハード・コアなジャズ・アルバムではない。むしろ,Chickのキャリアの中でも屈指の音楽的な楽しさに溢れたアルバムであり,非常にリラックスして聴ける好盤の持つこの心地よさは貴重である。楽しく,軽やかな演奏であり,爽やかな余韻を残す音楽と私は評価している。

Chickのピアノは押し並べて好調であり,メンバーもそれぞれ好演で応えているが,ここではJoe FarrellがChickとの抜群の相性を示し,テナー,ソプラノ,フルートのそれぞれにかなりの出来を示しているのはもっと評価すべきである。FarrellはChick以外とではとたんに大したことのないプレイヤーになってしまうが,Chickとの共演では見違えるようになってしまうから不思議である。これがまさに「相性」というものであろう。

Eddie Gomezのベースは相変わらずのハイピッチ・トーンで私の趣味ではないが,もう一方のリズムを支えるSteve Gaddのドラムスは当時フュージョン・ドラマーとしか考えられていなかったGaddとしては異色ではあるものの,きっちりGaddの音になっているのがよい。"Samba Song"や"Capuccino"で聞かれる正統派4ビートには,多くのリスナーが驚かされたものである。これがGaddには失礼だが「意外に」よいのである。これが後のStepsでの活動の端緒になったのではないかと考えるがどうだろう?

いずれにしても本作がChick Coreaの最高傑作ということではないが,Chickの諸作の中でも,私にとってプレイバック頻度の最も高いナイスなアルバムである。星★★★★☆。

Recorded in January, 1978

Personnel: Chick Corea(p, el-p), Joe Farrell(reeds, fl), Eddie Gomez(b), Steve Gadd(ds)

2007年5月13日 (日)

今こそWoody Shawを再評価しよう

Stepping_stone "Stepping Stones" Woody Shaw (CBS)

Woody Shawが亡くなったのは1989年,彼が45歳のときである。あまりに若過ぎる死は誠に惜しいと言わざるをえないが,彼の不運はその活動の全盛期が,ジャズの沈滞期と呼ぶに相応しい1970年代後半から1980年代前半にぶつかってしまったことではないかと思う。時代さえ違えば,彼ほどのミュージシャンであれば,もっと高く評価され,人気も出たはずだが,世の中はフュージョン全盛で,彼の音楽に対する注目が高まらなかったのは彼にとって本当に不幸であった。

Woody Shawのミュージシャンとしてのメジャー・レーベルのCBSと契約を果たし,好作品を連発した70年代後半が最も波に乗っていた時期ということになるが,その時期に発売された"Stepping Stone"のエンハンス版が本盤である。オリジナル収録曲に加え,未発表曲2曲,"Woody Shaw III"に収録された1曲を収めているが,まさに「胸のすくような」快演続きである。録音のせいか,Gumbsのピアノが軽く響くようにも思えるが,クインテット全体としても好調,中でもWoddy Shawのフレージングが素晴らしい。

1980年代に起こったハードバップ・リバイバルがもう少し早ければ,Woody Shawの人生は変わっていたかもしれない。この時期,ライブでShawの演奏に接することができる米国の聴衆からは相応に支持されていたが,日本ではそんな動きをヴィヴィッドに感じることができなかったのが残念である。いずれにしても,今の時代にこれほどの快演を聞く機会はあまりないので,今こそ彼を再評価するときだと感じざるをえない。星★★★★☆。

Recorded Live at the Village Vanguard on August 5 & 6, 1978

Personnel: Woody Shaw(cor, fl-h), Carter Jefferson(ts, ss), Onae Allan Gumbs(p), Clint Houston(b), Victor Lewis(ds)

追伸:ブログのお知り合いkenさんから,TBを頂いているのだが,相性が悪いようなので,URLを貼り付けておきます。kenさんの記事はこちら

2007年5月12日 (土)

物凄いテンションのKeith Jarrettのアメリカン・クァルテット

Survivor "Survivors' Suite" Keith Jarrett (ECM)

私はこのブログを始める前は,Amazonにしこしことレビューを投稿していたのだが,以前Amazonでレビューしたアルバムについても,見直しを加えて書くことにしたいと思う。ちなみに本ブログでも既に何本か見直し版をアップしており,実は昨日のKenny Kirklandもそうであった。

さて,この作品はKeith Jarrettのリーダーとしてのキャリアの中でも,最もハードな演奏が収められた傑作アルバムである。特にLPではB面に相当する"Conclusion"に聞かれるフリーなアプローチには,「ケルン・コンサート」等の美的な世界を期待するリスナーはのけぞること必至である。

静謐なイントロに始まり,徐々にテンションを高める演奏はまさに"Suite(組曲)"としての完成度が極めて高いが,この締め上げられるようなテンションに一般のリスナーがどこまでついてこれるかは微妙である。この演奏はそれほどの緊張感に満ちた演奏であり,ここまで緊張感が高まりすぎると,行きどころを失った結果バンドとしては崩壊への道を辿るのが必定のように思えるが,このアメリカン・クァルテットが時をおかずして瓦解したことも頷ける話である。そうしたKeithのアメリカン・クァルテット最後の輝きを収めた作品としてより大きな注目を集めるべき作品である。

はっきり言って耳に心地よい作品ではないが,コレクティブ・インプロビゼーションの理想的な姿として記憶に留めるべき名品であり,強く推薦に値する作品である。Keithは決してソロ・ピアノとスタンダーズ・トリオだけの人だけではないのである。星★★★★★。

Recorded in April, 1976

Personnel: Keith Jarrett(p, ss, perc, others), Dewey Redman(ts, perc), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds, perc)

2007年5月11日 (金)

Kenny Kirkland唯一のリーダー作にして大傑作

Kirkland "Kenny Kirkland" (GRP)

98年に惜しくも43歳で世を去ったKenny KirklandがGRPレーベルに残した唯一の単独リーダー作だが,これが嬉しくなるような大傑作である。

Kirklandはそのシャープなフレージングや新主流派からStingの伴奏(Stingのライブ・アルバム"Bring on the Night"におけるタイトル・トラックから連なるメドレーにおけるピアノ・ソロは激烈な歴史的名ソロである!)まで何でもこなすオールラウンドなプレイ・スタイルから多数のレコーディングを残しているが,リーダー作は本作と,Jeff Watts,Charles FambroughとのJFK名義による"Thunder and Rainbows"(現在はJeff Wattsのリーダー作"Megawatts"として流通している)しかない。ある意味で"Musicians' Musician"の代表のようなプレイヤーと言ってもよいのだが,本作でのKirklandは,初リーダー作という気負いを感じさせることなく,新主流派的演奏とラテン・タッチをうまく交えつつ,自身の多才さを取りこんで完璧な出来に仕上げているのが素晴らしい。

ピアノのラインに,適切にシンセサイザーを絡めるのがKirkland流とも言えようが,こうした適切なサウンド・プロダクション振りも素晴らしい。ジャズ・ファンからすれば,冒頭の"Mr.JC"から一気に興奮の頂点へいざなわれてしまうが,全編を通じて素晴らしい演奏の連続である。より多くのリスナーに聴いてもらいたい90年代初頭の大傑作である。星★★★★★。

私のニューヨーク在住当時(このアルバムが発売された直後であるから,おそらく1991年),Kirklandのクラブ・ギグを今はなき"Fat Tuesday's"で見ることができたのは,今でもラッキーだったと思う。素晴らしい演奏だったのが今でも思い出される。あまりにも早過ぎる死が惜しまれるミュージシャンである。

Recorded in NYC

Personnel: Kenny Kirkland(p, key), Branford Marsalis(ts, ss), Roderick Ward(as), Charnett Moffet(b), Chris McBride(b), Robert Hurst(b), Andy Gonzalez(b), Jeff "Tain" Watts(ds), Steve Berrios(ds, perc), Jerry Gonzalez(perc), Don Alias(perc)

2007年5月10日 (木)

追悼Andrew Hill

Andrew_hill "Time Line" Andrew Hill (Blue Note)

Andrew Hillが去る4/20に75歳で亡くなった。Andrew Hillという人は非常に癖のある曲を書き,演奏する人なので,ある意味ジャズを聞く人間にとっては「踏み絵」のような人である。そうした意味では私にとってはThelonius Monkにも近いものを感じさせる人であった。

そのHillのおそらくは遺作となったのが,Blue Noteから昨年発売された本作であるが,まさに現代に甦る60年代新主流派の響きとも言うべき作品である。全8曲が新曲で占められたこのアルバムは共演者(通好みというか,渋いというか...)の好演もあり,非常に優れたアルバムとなっている。先述のとおり,かなり60年代的響きに溢れているので,これが21世紀という時代とマッチしているのかという疑問がないわけではないが,Andrew Hillの意欲,創造性を評価するとともに,追悼の意を込めて星★★★★★とさせて頂こう。

それにしても,やはりこの人のアルバムは売れないのか,私はこのアルバムをバーゲン品480円でゲットしたが,このように優れたアルバムをそんな低価格で入手していいのかとつい思ってしまった。

Personnel:  Andrew Hill(p), Charles Tolliver(tp), Greg Tardy(ts, cl, bcl), John Herbert(b), Eric McPherson(ds)

2007年5月 9日 (水)

「大統領の陰謀」はクールなサスペンス

Photo_10 「大統領の陰謀( "All the President' s Men")」 (米, ' 76, Warner Brothers)

監督:Alan J. Pakula

出演:Dustin Hoffman, Robert Redford, Jason Robards, Hal Holbrook, Jack Warden, Martin Balsam

GWに見た映画シリーズ第3弾。私は公開時にこの映画を見ているが,DVDでそれ以来約30年ぶりの再見となった。ご承知のとおり,米国政治史上最大の醜聞,ウォーターゲート事件を暴いたワシントン・ポスト紙の記者,Bob WoodwardとCarl Bernsteinの活躍を描いた社会派サスペンスである。

ネタがネタだけに派手なアクションがあるわけでもない非常に地味な作りではあるが,そこから感じられる「クールな」サスペンスが出色であった。こうしたクールさを初公開時に中学生だった私に理解せよというのは無理だったかもしれないが,当時はそのよさがさっぱり理解できなかった記憶がある。しかし,多くの年月を経て,この映画のよさがわかる年齢になったということか。

主演のHoffman,Redfordが適役かというと疑問もあるが,二人とも抑制された演技で好感は持てる。しかし,演技陣で出色なのはJason Robardsである。様々な映画賞でBest Supporting Actorを総なめにしたに相応しい渋さである。こうした映画が,こうした役者陣で撮れるところが,アメリカ映画界の懐の深さである。日本でロッキード事件を映画にしようとしてもこうは行くまい。

この映画を見るにつけ,後にRichard Nixon元大統領が権力にしがみつくことのみっともなさがあからさまになるが,日本の政治家諸氏にもこうした映画を見て,自らの襟を正して欲しいものである。星★★★★☆。

尚,私が購入したDVDは690円という超低価格だったが,こうした映画がそのような破格の安値で手に入ることは非常にありがたいことだが,ほかにも地味でも良心的な映画はいくらでもある。そうした過去の遺産こそ低価格で発売して欲しいものである。

2007年5月 8日 (火)

Kenny Burrellの"'Round Midnight":酒飲みジャズ・ファンの友

Kenny_burrell "'Round Midnight" Kenny Burrell (Fantasy)

ジャズに対して何を求めるか。それは丁丁発止のソロの応酬等のスリリングな展開であってもよいし,酒の友としてのリラクゼーションでもよい。それはリスナーが選べばよい。

このアルバムははっきり言って,リラクゼーション・オンリーという類のアルバムであって,これにスリルを求めるべきではなく,こういうものだと思って聞けばよい。私にとってこのアルバムは,妻子が寝静まってからグラスを傾けながら小音量で聞く(「聴く」ではない)ためのアルバムである。そうした瞬間の私にとっては重要なアルバムなのである。

本作はあくまでも(少なくとも私にとっての)くつろぎを重視した作品であって,芸術的にどうこう,あるいはギター・フレーズがどうこうということを語るようなものではないし,目くじらを立てること自体野暮である。世の中には,エレクトリック・ピアノの使用を許せないという保守派のジャズ・ファンもいるが,フェンダー・ローズの音色をむしろ愛好する私のような人間にとっては,そんな保守派の意見に対してはそれがどうしたと言いたい。とにかく,このアルバム全体を支配するくつろぎ感に身を委ねればいいのである。

本作ははっきり言って大した作品ではないのだが,私の保有するそれほど数が多いとは言えないKenny BurrellのCDの中でのプレイバック頻度が最も高いのはこのCDである。誰にでもそういうCDがあっていいと思う。星★★★☆(半星は私のナイト・ライフへの貢献度によりオマケ)。

Recorded in 1972

Personnel: Kenny Burrell(g), Richard Wyands(key), Joe Sample(key on #3), Reggie Johnson(b), Lenny McBrowne(ds), Paul Humphrey(ds on #3)

2007年5月 7日 (月)

Ann Burton:このクセのなさが癖になる

Ann_burton "Burton for Certain" Ann Burton (Trio→Absord)

オランダ出身のAnn Burtonはそのクセのない歌いっぷりが,リラクゼーション指向のジャズ・ファンの心を捉えてきたと思うが,このトリオ・レーベル原盤の本作もそのBurtonのよさがよく出ていると思う。

Ann Burtonは決して大向こうを唸らせるような大歌手ではない。しかし,何ともホッとするというか,本当によい意味でくつろげるアルバムを作る人であり,彼女が77年に来日した際に日本で録音されたこのアルバムも選曲のよさを含めて,結構ファンが多いアルバムである。私のようなロックも愛好する人間にとっては,Eaglesの"Desperado"やCarpentersの"Rainy Days And Mondays",更にはPaul Simonの"Still Crazy After All These Years"等がチョイスされているのが嬉しいところ。それを相変わらずのBurtonのすっきりした歌いぶりでやられると,酒量もつい増えるというものだ。

あいにく手許のCDにはライナーが欠落しているので,1977年としか録音日はわからないが,来日公演に帯同したKen McCarthyと日本人リズムをバックに曲毎に出来にばらつきはあるもののなかなかの好演を展開している。別に歴史に残る音源ではないが,こうしたくつろぎはジャズの一つの魅力であり,Burtonはそれを体現したシンガーだったと言えるだろう。難癖つけようと思えばいくらでもできるが,それは野暮というもの。夜中にウィスキー片手に小音量で楽しむのに最適の音楽の一つ。星★★★☆。

Personnel: Ann Burton(vo), Ken McCarthy(p), 稲葉国光(b), 大隈寿男(ds)

2007年5月 6日 (日)

椿三十郎:本作をリメイクとは暴挙の至り

Photo_7 「椿三十郎」('62 東宝)

監督:黒澤明

出演:三船敏郎,仲代達矢,加山雄三,入江たか子,団令子,小林桂樹,伊藤雄之介

GWに見た映画シリーズ第2弾。久々に「椿三十郎」をDVDで見たが,これは1時間35分という何とも適切な尺で取られたワクワクするような痛快時代劇である。見事な殺陣はもちろんのこと,入江たか子,小林桂樹,伊藤雄之介のような笑えるキャラクターを配したり,「椿」のシーンなど視覚的に記憶に残るシーンを収めたエンターテインメント性の高い作品になっている。ある意味,痺れるような緊迫感には乏しいが,それでも最後の決闘シーンなどは黒澤ならではのものである。この映画の素晴らしさは現代にも十分通用するものだと思うが,黒澤のほかの傑作と比較するとすれば,星★★★★☆という評価になるだろう。

しかし,この映画をリメイクするというのには驚いた。リメイク作を監督する森田芳光の時代劇やアクション演出は未知数だが,椿三十郎を織田裕二が演じるというのはいかがなものか。オリジナルの中で入江たか子演じる睦田の奥方が,三十郎を「抜き身」のようで「ギラギラ」していると評しているが,これは三船敏郎だから成り立つのであって,織田裕二にそうした感覚が生み出せるかは大いに疑問である。また,仲代達矢が演じた室戸半兵衛に豊川悦史というのはわからないでもないが,仲代の生み出した(「あいつは一人でも虎だ」という)鋭さをどこまで出せるものか...。

シナリオはオリジナルのままということらしいので,これは森田監督にとっても極めてハードルの高いチャレンジとなることは明白である。ただ,発表されている役者陣でオリジナルを越えることは極めて困難であろうし,そもそもプロデューサーが「愚作の帝王」角川春樹というのでは,そもそも期待も高まるものではない。冒頭にも書いたとおり,シナリオそのものは現代にも受け入れられるものであり,相応のつくりをしておけば黒澤のオリジナルを知らない層にはそれなりに受け入れられても,映画の動員を支えるベテランはそう簡単には出来に納得するものではない。

結論は新作の公開時に明らかになるとしても,これは私にとってはやはり暴挙だと思わざるをえない。

2007年5月 5日 (土)

スウェーデン発の素晴らしいJoni Mitchell作品集

A_bird_that_whistles  "Songs of Joni Mitchell" A Bird That Whistles (EMI Svenska)

スウェーデンのミュージシャン4人から成る臨時編成バンドによる全曲Joni Mitchellの曲を演奏した1996年のアルバムである。

このアルバムを聞いていて思うのは,Joni Mitchellへのリスペクトが非常に素直なかたちで表れているという点であり,選曲もJoniのキャリアを広くカバーしているところが素晴らしい。また,"Hejira"のベースなどは,もろJaco Pastoriusのようでもあり,伴奏にも相応のリスペクトが込められているのが好感が持てる。全11曲のうち,7曲がライブ,4曲がスタジオでの録音だが,双方とも非常にインティメートな感覚が強く,落ち着いて聞くことができる。ボーカルのIrma Schultzの声は,若い頃のJoniを彷彿とさせるものがあり,最小限の伴奏(ギター,ベース,パーカッション)にもよくフィットしている。

もう10年以上の前の作品であり,スウェーデン原盤の上,恐らくは廃盤らしいため,なかなかジャケットの情報もネット上でゲットできなかった。このページには私の携帯で撮影したものを掲載しているが,このアルバムはJoni Mitchellのファンは聞いておいて損はない。中古盤屋で見つけたら,即買い求めることをお薦めする。音楽的な深みは到底Joniには及ばないが,彼らのJoniに対するリスペクトの姿勢を評価して大甘ではあるが,星★★★★☆。

Track 3-5, 8-11Recorded Live at Lydmar Hotel & Restaurant in March4-5, 1996 Track 1, 2, 6&7 Recorded at EMI Studio, Stockholm in March 1996

Personnel: Irma Schltz(vo), Jack Mittelman(g, vo, b), Andrs Kotz(b, vo, g), Ola Swenson(perc, vo)

2007年5月 4日 (金)

何ともキャッチーなKinki Kidsの新曲

Kinki_kids "Brand New Song" Kinki Kids(Johnny's Entertainment)

何を隠そう私はSMAPのファンである(最近は彼らの音楽にあまり魅力を感じないので「だった」と言うべきかもしれないが...)。完全にプロデューサーが趣味で作ったとしか思えない豪華なバックの面々に支えられたSMAPの音楽は結構フュージョン・ファンにも支持されるものと思うが,SMAPのそうした時期を支えたCHOKKAKUが今回のKinki Kidsの新曲に関わっている。

曲はコマーシャル・ソングだけあって,相当キャッチーであり,ある意味確信犯的な作りと言える。街中でこの曲が聞こえてくると,つい「シュビドゥー・・・」と鼻歌一つ口ずさんでしまうのが何とも気恥ずかしいが,それほどキャッチーなのである。次の私のカラオケ・ソングはこれで決まったとも言える。

毎週つい見てしまう「新・堂本兄弟」などではかなり真摯に音楽に取り組んでいるところを見せる彼らであるが,本作では本当か嘘かはわからないものの,プロデュースは「Kinki Kids」となっている。もしそうした姿勢の延長線上でCDを作っているなら彼らも大したものである。まぁそれでもデビュー曲「硝子の少年」には及ばないかなということで星★★★★。

ちなみにここで紹介したCDは通常盤に含まれない1曲とこの曲のカラオケも収めたスペシャル・パッケージの初回盤であるが,通常盤にはこの初回盤に収録されていない曲を一曲入れるというかなり掟破りの商魂を見せている。やはりジャニーズ恐るべしであるが,ファンはそれでも買ってしまうのだろうなぁ。

2007年5月 3日 (木)

メンツで買ってしまった寺井尚子のライブ盤

Terai "Naoko Live" 寺井尚子(One Voice)

はっきり言って寺井尚子には何の興味もないのだが,Lee Ritenourがプロデュース,ギターを弾いているし,バックのメンツもよく,しかも中古で値段も手頃だったので買ったCDである。そうでなければ,決して手は出さない。

このライブ盤は,同じくRitenourプロデュースで制作された"Princess T"の発売を受けてのコンサート・ツアーの実況盤である。演奏はそれなりに楽しめるが,それにしてもベタな選曲ではないか。冒頭の"Spain"から何とも非ジャズ・ファンを「アランフェス」で幻惑しようという狙いが垣間見えて,私にはある意味興醒めである。リズムのかったるい"Black Market"もRitenourのソロがなければ聞く気がしない。"Cantaloupe Island"も選曲としてはいかがなものかという感が強い。もちろん,"Black"も"Cantaloupe"も"Princess T"の収録曲ゆえの,ここでの採用は理解できるのだが,こうした曲で全くグルーブしない演奏を聞かされてもこちらも困る。

プロデューサーのRitenourとしては,寺井の様々な音楽性を聞かせようとしたのだろうが,ある意味これはイージー・リスニング的でもあるため,"Beijos"等の曲では川井郁子かっ!と悪態の一つもつきたくなる。バックのメンツは優秀なので,それなりに破綻なく演奏を聞かせるが,グルーブの欠如は致命的。全体としては私にとって縁のない世界であることを再認識した次第。星★★。

それにしても,寺井尚子のファン層というのはどういう人たちなんだろうか。関心あるなぁ。

Recorded Live at 愛知芸術劇場 on December 9. 2000

Personnel: 寺井尚子(vln), Lee Ritenour(g), Alan Pasqua(p, key), Dave Carpenter(b), Harvey Mason(ds), Jochem Van Del Saag(syn, vo)

2007年5月 2日 (水)

「ロシアより愛をこめて」:このアナログなよさ

Russia「ロシアより愛をこめて( "From Russia with Love")」 (1963, United Artists)

監督:Terence Young

出演:Sean Connery, Daniela Bianchi, Lotte Lenya, Robert Shaw, Bernard Lee

GWに入って見た映画(DVD)について書いてみたい。007シリーズも製作開始以来45年という年月が経過したが,シリーズ最高傑作はやはりこの作品なのだろうと思う。初期の作品はもちろん時代ということもあるが,テクノロジーに依存しない手作り感が濃厚であり,それがある意味我々のような年代の郷愁を誘うと言っては大袈裟か。

近年の007シリーズは新兵器が荒唐無稽化し過ぎて,なんじゃそりゃの世界もあったが,最新作"Casino Royale"はヒューマン・タッチへの揺り戻しが感じられるものになっていたのは大変結構なことである。

本作を傑作にしている要因は,Daniela Bianchiの美貌,Robert Shawの悪役ぶり,Lotte Lenyaの怪演などいくつかあるが,ConneryとShawのオリエント急行内でのまさしく「肉弾戦」やトラックとヘリの追跡劇に見られるリアルな感覚ではないかと思う。もちろん,脚本には冗長性や破綻がないわけではないが,115分という適切な尺で与えられる満足度は極めて高いと思う(これに比べると"Casino Royale"は長過ぎる)。久々に再見しても私にとっての満足度は高いものだった。

尚,今回発売されているDVDはデジタル・リマスターで映像がかなり美しくなっているし,サウンドもサラウンド仕様になっているので,昔見た感覚と随分違っていたように感じたが,一部コマ落ちがあるように見えるのは,マスター・フィルムの保存状態ゆえか,私のDVDプレイヤーゆえかはわからない。いずれにしても,美しくなった映像でDaniela Bianchiの美貌が楽しめたのは非常に嬉しかった。Daniela Bianchiは口パクらしいが,あんな美女の前ではどうでもよいことである。彼女の美貌も含めて星★★★★★。

ダニエラ・ビアンキ 写真

2007年5月 1日 (火)

私にとってのJoni Mitchell最高作

Hejira "Hejira" Joni Mitchell (Asylum)

私はかなり熱烈なJoni Mitchellのファンと言ってよいと思うが,そうしたファンにとって,彼女の最高傑作は何かというのは結構酷な質問である。何かを取れば,何かが落ちるということで,ああでもない,こうでもないと考え込んでしまうかもしれない。私も好きなアルバム,そうでもないアルバムはあるが,総合的な観点での最高傑作はこのアルバム(邦題は「逃避行」である)だと考えている。

Norman Seefによるジャケットも素晴らしいが,ここに収められた楽曲群のレベルの高さはまさに筆舌に尽くしがたい。曲のよさを更にバックの優れたミュージシャンたちが増幅させており,これぞまさしく芸術的な「シナジー」が働いていると言いたい。曲のよさを引き立てるかのように,バックの演奏はどちらかと言えば地味に聞こえる(ミニマルと言ってもよい)のだが,例えば"One and Only"のJaco Pastoriusのベースにしても,Larry Carltonのギター・ソロにしても,ちゃんと自己主張すべきところは自己主張している。必要最低限の伴奏だけで,最大の効果を発揮していると言っても過言ではない。

冒頭の"Coyote"から最後の"Refuge of the Road"まで一切の駄曲なしであり,個人的には"Amelia"が特に気に入っているが,このアルバムは何度聞いていも素晴らしい。その後のライブでも,繰り返し演奏される曲が,このアルバムに多数収められていることからしても,Joniにとっても会心の作品であったことは想像に難くない。Joni Mitchellの魅力が余すところなく捉えられた作品として,星★★★★★では足りないぐらいだと言いたい。素晴らしい。

Personnel: Joni Mitchell(vo, g), Larry Carlton(g), Jaco Pastorius(b), Max Bennett(b), Chuck Domanica(b), John Guerin(ds), Bobby Hall(perc), Victor Feldman(vib), Neil Young(hca), Abe Most(cl), Chuck Findley(tp), Tom Scott(reeds)

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