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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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2007年2月28日 (水)

Stanley Clarkeを番頭としたフュージョン・オールスターズによるライブだが...

Greek "Live at the Greek" Stanley Clark & Friends (Epic)

詳細なレコーディング・データがないが,90年代に入ってから録音されたフュージョン・オールスターによるライブ盤である。プロデューサーはStanley Clarkeが行っており,Stanley Clark & Friendsとなっているので,Clarkeの発案によるものであろう。

各人の曲をフィーチャーしながら,そこに"All Blues"や"Goodbye Porkpie Hat"のような有名ジャズ・オリジナルを挿入するというプログラムはある意味ごく当たり前と言える。このメンツであるから悪い演奏にはなっていないのであるが,これだけのメンバーを揃えることによるシナジーが感じられないのは問題だろう。特に"Goodbye Porkpie Hat"がいかん。Jeff Beckが"Wired"で聞かせた演奏の方が遥かに素晴らしいようでは,ジャズマンの沽券に関わるというものだ。

結局のところ,こうしたセッション・アルバムにありがちな「一丁上がり」的なプロダクションが問題である。Carltonがソロでしっとり聞かせる"Her Favorite Song"の前半ような曲(後半はこれまたお気軽ブルースで頂けないが...)もあるだけに何とも勿体ない。最後がお決まりの"School Days"で,ClarkeとCobhamのバトルが楽しめるが,それにしてもあまりに冗長にやられれば辟易としてくる。そうした点を総合すれば星★★がいいところ。「船頭多くして船山に登る」の最適事例。

Recorded Live at the Greek Theater

Personnel: Stanley Clarke(b), Larry Carlton(g), Billy Cobham(ds, perc), Deron Johnson(key), Najee(reeds, fl)

2007年2月27日 (火)

これぞ芳醇な響き:Chalie HadenとKenny Barronの素晴らしきデュオ

Charlie_haden "Night and the City" Charlie Haden / Kenny Barron (Verve)

Charlie Hadenは多くのデュエット・アルバムを発表し,その多くが名作の誉れ高いが,そのデュオ名人Hadenが,インティマシー溢れるピアニスト,Kenny Barronと組むとなれば,それだけで成功は予想されている。結果はこれが予想を遥かに上回る素晴らしさである。まさにこれこそ芳醇な響きと言わずして何と言うだろう。ビンテージ・ワインの如き香り立つ演奏である。

ほとんどがスローな曲調で構成されるアルバムなのだが,一切だれることなく演奏が展開されているのがまずは驚きである。またこの非常に美しいKenny BarronのピアノのトーンとHadenの腰の据わったベースとの相性も抜群であり,私はIridiumでこの演奏に立ち会った聴衆に嫉妬を感じずにいられない。この録音が行われた96年当時と言えば,IridiumはまだLincoln Centerの近所にあったはずだが,現在の場所に移転後のIridiumにはこうした音楽はやや不釣合いに思える。むしろ,今はなきNYCのクラブ,Bradley'sが健在ならば,Bradley'sでこうした演奏を聞きたかったと感じてしまうと言っては酷だろうか。

いずれにしても,ここに収められたほとんどが10分を越える長尺の演奏7曲のどれもが美しく,素晴らしい。こんな演奏を生で聞かされたら,私は失神確実であったであろう。Hadenのデュオ美学の究極と評価し,当然のことながら星★★★★★に値する大人のためのジャズである。

Recorded Live on September 20, 21, 22, 1996 at the Iridium, NYC

Personnel: Charlie Haden(b), Kenny Barron(p)

2007年2月26日 (月)

Gato Barbieri:そのお下劣サウンド

Gato "The Best of the Early Years" Gato Barbieri(BMG)

今の時代,Gato Barbieriと言って,どれぐらいのリスナーが反応するかは全く疑問であるが,このアルバムは1997年の復帰作"Que Pasa"のヒットを受けて,70年代初頭のFlying Dutchmanレーベルに吹き込んだ3作("Fenix", "Bolivia", "Underfire")から選曲されたコンピレーションである。

Gatoと言えば,このユニークなサウンドというのがトレードマークとも言えようが,はっきり言って,個人の趣味からすれば下品またはお下劣という表現こそ相応しい。時代が中南米的なエキゾチズムを求めたのかもしれないが,いずれにしても大したサックス・プレイヤーでもなければ,大した作曲家でもない。賞味期限が過ぎれば,すぐに飽きられる音楽なのであって,シーンでの活躍期間が限られていても,それは仕方がないことである。

結局のところ,私にとっては,Gatoの名前は"Last Tango in Paris"とともに残るだけである。過ぎ去りし時代を懐かしむという効能はあろうが,本盤に収められた音楽への評価としては星★★で十分である。胸焼けがする音楽と言っておこう。

Recorded in 1971/1973 in NYC

Personnel: Gato Barbieri(ts), John Abercrombie(g), Ron Carter(b), Jean-Francois Jenny Clark(b), Stanley Clarke(b), Airto Moreira(perc), James M'tume(perc), Lonnie Liston Smith(key), Nana Vasconceros(prec), Lenny White(ds) and Others

2007年2月25日 (日)

Herbie Hancockのファンク炸裂!

Photo_1 "Flood" Herbie Hancock (CBS)

Herbie Hancockの"Headhunters"に始まるファンク路線の集大成とも言える東京でのライブ・アルバムであるが,これが相当強烈である。冒頭はお決まりの「処女航海」で幕を開けるが,その後の徹底したファンクの「洪水」はタイトルに偽りなしである。

本盤のハイライトは2曲目の"Actual Proof"であるが,ここでのHerbieの暴れっぷりはまさに尋常ではない。一歩間違えればフリー・ジャズのようなキーボード・プレイに燃えないジャズ・ファンはいないだろう。そのほかの演奏ももちろん悪くないが,この演奏が激し過ぎて,そのほかの演奏がかすんでしまうのは残念である。

また、このアルバムを支えているのが,Paul Jacksonの素晴らしいベース・プレイである。Jacksonの生み出すグルーブがHerbieを鼓舞していると言ってもよいが、それにしてもJacksonの指はよく動くものだと感心してしまう。

いずれにしてもこうした演奏が日本で展開されたことに,Herbieの手抜きなしの真摯な姿勢を感じるし、この演奏を生で見られた聴衆は幸せである。もちろん,これがHerbieの最高傑作だとは言わないが,このファンクネス振りは星★★★★☆には十分相当する。

それにしても,本盤だけではないが,Herbieのファンク・アルバムのジャケの異様さだけは勘弁してもらいたいものである。購入意欲が失せること甚だしい。

Recorded Live on June 28 at Shibuya Kokaido and July 1st at Nakano Sunplaza, 1975

Personnel: Herbie Hancock(key), Bennie Maupin(ts, ss, bcl, fl, perc), Paul Jackson(b), Mike Clark(ds), Bill Summers(perc), Blackbird McNight(g)

2007年2月23日 (金)

中森明菜の最高の名曲はデビュー曲である

Photo ゛スローモーション゛ 中森明菜 (ワーナーパイオニア)

中森明菜がデビューを果たしたのは1982年。もはや四半世紀前のこととなってしまったことにまずショックを受ける。

明菜がブレイクするのは2枚目のシングル「少女A」においてであるが,そのパターンは山口百恵の「ひと夏の経験」のそれとかぶるものがある。それが明菜のプロモーション戦略であったことに今にして思い当たるわけだが,その後の明菜の活躍ぶりは衆知の事実であり,その戦略は見事に当たったと言える。

しかし,このデビュー曲こそ最高だと思っている私にとっては,「少女A」は極めて違和感の強いものであった。なぜこの名曲が売れず,駄曲とは言わないが,明らかに「スローモーション」よりレベルの低い「少女A」が売れたのかさっぱり理解できない。これが「イメージ」の訴求力の怖いところであるが,今聞いても,この「スローモーション」は音楽的に圧倒的に素晴らしい。ややイントロ等,アレンジには改善の余地があるように思うが,曲としての魅力は今でも不変であり,星★★★★☆。オジさんがカラオケで明菜を歌うならこの曲か「ソリチュード」である。

蛇足ながら,タイムスリップグリコにこの曲のCDが付いていたことがあるが,そのセレクションは慧眼と言ってよい。

ライブでのBoz Scaggsのオール・タイム・ベスト

Boz "Greatest Hits Live" Boz Scaggs (Gray Cat)

タイトルに偽りなしのBoz Scaggsのオール・タイム・ベストとでも言うべき選曲の2枚組ライブ盤である。プロデュースには長年の盟友,David Paichが当たっているとともに,アレンジもほぼオリジナル・バージョンに近いものなので,長年のファンも大いに楽しめる。逆に言うと予定調和と言えばそのとおりなのだが,ファンが期待するかたちのBoz Scaggsはやはりこういうものではないかと思う。

名盤"Silk Degrees"からの5曲が選ばれており,最大のセレクションとなっているのは当然であるが、中でも名曲"Harbor Lights"の収録が嬉しい。原曲ではフリューゲル・ホーンのソロが渋かったが、ここでのソプラノ・サックスも味わい深いものの,オリジナルには及ばない。しかしよい曲はよい。

Boz Scaggsが現時点でどういうポジションにあるのかというと,それはそれで微妙だが,長年のファンにとっては,「昔の名前で出ています」で結構。懐メロは不滅の魅力を放つということである。

予想以上のバンドの出来のよさと,それほど衰えを感じさせないBozの歌唱は星★★★★には値するだろう。輸入盤なら値段も安く,コスト・パフォーマンスもよい。但し,既にベスト盤(特に゛My Time: Boz Scaggs Anthhology")をお持ちの向きには,不要かもしれない。

Recorded Live at Great American Music Hall, SF

Personnel: Boz Scaggs(vo, g), Jim Cox(key), Michael Bluestein(key), Drew Zingg(g), Matt Bissonette(b), John Ferraro(ds), Ms. Mone't(vo), Barbara Wilson(vo), Rich Armstrong(tp), Charles McNeal(sax)

 

2007年2月21日 (水)

渡辺貞夫の「カリフォルニア・シャワー」は日本ジャズ界空前のヒット作だが...

California_shower "California Shower" 渡辺貞夫 (JVC)

渡辺貞夫が放った日本ジャズ界最大のヒット作である。ここでは米国の有能なミュージシャンに囲まれて,非常に軽い乗りで,楽しげな演奏を繰り広げている。ある意味能天気と言ってもよいぐらいである。このアルバムがジャズ界の裾野を広げることに貢献したことに異論はないのだが,これを名盤と呼ぶことには躊躇がある。

常々,私は渡辺貞夫という人の作曲能力に疑問を感じてきた。本作に収められたナベサダ作曲の曲も,Grusinのアレンジなしで聞いたとすれば,これは何ともしょぼい曲に思えるのである。"Turning Pages of Wind"などのバラード曲では比較的善戦しているとは思うが,タイトル曲などはよくよく聞けば大した曲ではない。

そうした弱点をカバーしているのが,アレンジャーのDave Grusinと素晴らしいギター・ソロを聞かせるLee Ritenourだと思う。この二人がいなければ,このアルバムがどうなっていたかと考えてしまう。

今となってはこのアルバムも随分と時代を感じさせるものになったが,録音から30年近くを経たことを考えれば致し方がないところだろう。決して悪いアルバムだとは思わないが,評価としては星★★★程度のものだと思う。

Recorded in March, 1978 in LA

Personnel: 渡辺貞夫(as, sn, fl), Dave Grusin(key), Lee Ritenour(g), Chuck Rainey(b), Harvey Mason(ds), Paulinho Da Costa(perc), Oscar Brasher(tp), George Bohanon(tb), Ernie Watts(ts)

2007年2月20日 (火)

Joni Mitchellの素晴らしいライブDVD

Joni_mitchell "Refuge of the Road" Joni Mitchell

Joni Mitchellには数種類ライブDVDがあり,どれも傑作だが,本作は暫く市場から姿を消していた1983年の"Wild Things Run Fast"期のライブを収めたものである。これが凄い演奏である。

そもそも"Wild Things Run Fast"はJoniのレコーディングの中でも,結構ロック色の強いものだったが,このライブでもタイトなバック・バンドの演奏にかなりロック寄りのフレイバーが横溢している。中でもMichael Landauのギター・プレイがロック色を最も打ち出しているが,このLandauの技の数々を見るだけでもこのDVDは価値があると言ってしまおう。そのほかのメンツもYellowjacketsのRussell Ferrante,Stingとも共演したVinnie Colaiuta,更には当時のダンナのLarry Kleinと粒が揃っている。

JoniはJoniで煙草を片手にロックンロールしまくっていて,かなりイカしたオバチャン状態である。あんなに煙草を吸っては,声の質が変わるのも無理からぬと思ってしまう。映像はライブ・シーンにいろいろな映像がコラージュされていて,それはそれでよく出来ているが,ここはライブの演奏の素晴らしさを味わいたい。Joniにフォーク的な演奏を期待する向きには,結構ショッキングな演奏とも言えるが,これは優れたロックDVDだと思って見ればよいだろう。こうした傑作がリージョン・フリーで,2,000円もしない値段で買えるのは実にありがたいことである。

Joni Mitchellのファンのみならず,Michael Landauのファン必見の傑作として星★★★★★。

Personnel: Joni Mitchell(vo, g, p), Russell Ferrante(key), Michael Landau(g), Larry Klein(b), Vinnie Colaiuta(ds)

2007年2月19日 (月)

Don Henleyが放った傑作

Don_henley "The End of Innocence" Don Henley (Geffen)

Eaglesの(とやはり言わなければならないのだろう...)Don Henleyが豪華なゲストを迎えて,1989年にリリースした傑作アルバムである。

このアルバムの何がよいかと言えば,曲のクォリティである。全10曲全てがよいというわけではないのだが,バラードとロック・タッチの曲のブレンドが素晴らしい。特にタイトル・トラック,"New York Minutes","The Heart of the Matter"のミディアム/スロー3曲は泣かせる出来である。

タイトル曲"The End of Innocence"はHenleyとBruce Hornsbyの共作であるが,ここで聞かれるHornsbyのピアノは相変わらずの瑞々しさ(Hornsbyの"The Way It Is"を髣髴とさせる)で,Henleyとの相性もことのほかよい。但し,Wayne Shorterのソプラノ・サックスのソロは,もう少し何とかならなかったか。Shorterファンとしてはこのソロには納得がいかないものがあるが,Joni Mitchellのアルバムではないので,これも仕方がない部分もあろう。

ストリングスの響きが美しい"New York Minute"やMadison Square Gardenでのライブで隣のアメリカ人のお姉ちゃんが一緒に歌いまくっていたのも懐かしい"The Heart of the Matter"も何ともよい。歌手Don Henleyの成熟を感じさせるに十分な名唱だと思う。

冒頭に豪華なゲストを迎えてと書いた(詳しくはライナーを参照されたい)が,基本的にはHenleyとDanny Kortchmarの二人によりプロデュースされていて,ゲストの配置も適材適所の実によくできた大人のためのロック・アルバムである。Henleyのソロ・キャリアでは確実に最高の出来。星★★★★☆。

2007年2月18日 (日)

Leo Kottke:この恐るべき12弦ギターの響き

Leo_kottke "My Feet Are Smiling" Leo Kottke(Capitol→BGO)

やはり日本では知る人ぞ知るの存在なのであろう。一時期,Rickee Lee Jonesとの共演でも一部の注目を集めたことはあるものの,Leo Kottkeと言ってムズムズする日本人はやはり少数派と言わざるをえまい。近年はPhishのMike Gordonとの共演でやや知名度が上がったのは事実であるが,それでもやはりマイナーな人である。

しかし,この完全ソロ・ライブを聞けば,「何じゃこりゃ」という反応が出ること,あるいは多くのアコースティック・ギタリストの目が点になることは確実なアルバムである。この12弦ギターでのフィンガリングやスライド・ギターの響きを聞くと,一体この人の手はどうなっているのか訳がわからなくなってくる。どう聞いてもゲージの太い弦を使っているのであるが,どのように弾きこなしているのか見当すらつかない。これにはまさに「信じられない」という表現しか見つけることができないというのが本音であり,私からすればまさに化け物である。特に冒頭の2曲は強烈。12弦の話ばかりしているが,本アルバムでも聞けるとおり,もちろん6弦もうまいので念のため。

歌はまさしくヘタウマの世界であるが,このアルバムはKottkeのギターの神業を聞いていればよい。とにかくこのギターにはより多くのリスナーに一度でも耳を傾けて欲しいものである。ギターだけで星★★★★★に値する。

尚,ジャケ写真はNorman Seeffによるもの。相変わらず渋い。いずれにしても,こうしたアルバムがCD化される英国にも相当の好き者がいるらしいが,是非カタログから消えないでいることを切望する。

Recorded on December 19/20, 1972 at Tyrone Guthrie Theater, Minneapolis

Personnel: Leo Kottke(g, vo)

2007年2月17日 (土)

Weather Reportのボックス・セット:DVDは強烈だが...

Weather_report "Forecast: Tomorrow" Weather Report (Sony)

Weather Reportの歩みを集大成したCD3枚組+DVDのボックス・セットであるが,これが非常に微妙な出来である。

通常のボックス・セットに比べるとまず未発表音源の少なさ(3曲だけである)が気になる。もちろん,未発表のアウトテイクが駄演揃いならば仕方がないとしても,Weatherほどのグループである。まだまだ隠れた名演があるに違いないことは,以前リリースされた"Live and Unreleased"で実証されている。このボックスでは明らかに出し惜しみをしているとしか思えないのは問題だろう。また,歴史を振り返る上で,その萌芽となったMiles,Cannonballらとの演奏を収録することの意味は否定しないが,それなら枚数を増やして,より多くのWeatherとしての演奏を収録するのが筋である。もちろん,収められた演奏はどれも素晴らしいものだが,さすがにこの編集方針は苦しい。ZawinulとShorterが共同プロデューサーとして名を連ねているが,両名の作品への自信ゆえか,おそらくはこれが逆効果となったと考える。

とCDには文句のあるところであるが,最も注目すべきDVDについては素晴らしい出来である。Zawinul,Shorter,Jaco,Erskineという最強クァルテットでの映像は初出ではないものの,これまで市販されていたDVDの画像をはるかに上回るクリアな映像が素晴らしい。Zawinulの手の動きもバッチリ捉えられているし,Jacoのライブでの暴れっぷりが見られるのも貴重と言えよう。尚,ライナーに添えられた収録当日に関するErskineのコメントは泣かせるものがある。(同梱のブックレットはよく出来ているので,必読。)

このDVDさえなければ,これまでWeatherのCDを保有しているリスナーであれば,改めて買い足す必要もあまりなかったと言えるのだが,さすがにこの映像を見せられては買わないわけにはいかないだろう。このボックスは,ファンを「買うべきか,買わざるべきか」とハムレット的な微妙な気持ちにさせる罪な作品である。ということでDVDには星★★★★★。CD音源にはリマスターによる音質向上にオマケして星★★★。総合すれば星★★★★となるが,何とも惜しい。

Personnel: Joe Zawinul(key), Wayne Shorter(ts, ss), Miloslav Vitous(b), Alphonso Johnson(b), Jaco Pastorius(b), Victor Bailey(b), Peter Erskine(ds), Leon Chancler(ds), Omar Hakim(ds), Bobby Thomas(perc), Alex Acuna(ds, perc) and Others

2007年2月16日 (金)

女性オルガン・プレイヤー大高清美の快作

Out_of_sight "Out of Sight" Kiyomi Otaka (Zizo)

女性オルガニスト,大高清美が超強力リズム隊と放ったフュージョン・アルバムである。何と言っても相手はTribal TechのGary WillisにChick Corea Elektric Band出身のDave Wecklという手数では業界有数の人たちなので,大高の弾きっぷりが注目されるところである。

結果としては,共演者を立てるところは立てつつも,ナイスなグループを作り出しているのは立派。録音のせいか,若干サウンドが軽いような気がするし,リーダーの大高自身がもう少し激しく弾きまくってもよかったと思うが,これはこれで十分に楽しめる。あとは人々の記憶に残るような作曲能力を磨けばなおよいだろう。

いずれにしても,女性ということを抜きにしても,このメンツとの共演に挑むのは勇気が必要だったと思う。是非,今後も挑戦的な録音を続けて欲しいものであるという期待も込めて星★★★★。

それにしても,やっている音楽とジャケットの写真の落差には笑える。

Recorded on October 26/27, 2001 in California, USA

Personnel: Kiyomi Otaka(org), Gary Willis(b), Dave Weckl(ds)

2007年2月15日 (木)

ケルン・コンサート:これが本当に即興なのか...

Keith "The Köln Concert" Keith Jarrett (ECM)

Keith Jarrettにとっても,ECMレーベルにとっても最大のヒット作と言ってよい作品である。"Facing You"以来,前人未到のソロ・ピアノの世界へと歩み出したKeithが1975年に吹き込んだライブ盤だが,この美的感覚は録音以来30年以上を経過した今でも不変である。

あまりにもジャズ喫茶でのリクエストが頻発し,このアルバムに食傷してしまったリスナーが多いのも事実であるが,好き嫌いは別に,この演奏の持つ美しさは真っ当に評価せざるをえないだろう。ここではもちろんKeithのピアノが主役なのだが,一方でこの美的感覚を支えているのがMartin Wielandのエコー処理を含めたエンジニアリングと言える。ピアノの響きだけでは多分こうはならない。

いずれにしても,あまりによく出来た演奏ゆえにこれが本当に完全即興で演奏されているのかという声もあるし,特にアンコールで弾かれるPart IIcは作曲されたものと言っても通じるぐらいである。非常に有名なPart Iも途中からはフォーク/ゴスペル・タッチなどが即興的に出てきているのをうかがわせるが,冒頭の4音は本当に即興ですかと言いたくなるほど決まりすぎである。

このアルバムはその後のECMレーベルのカラーを決定付けたと言っても過言ではないし,レーベル活動を支える資金源となったという点で,ECMレーベルのファンとしてはこのアルバムに感謝せざるをえないだろう。そういった意味で星★★★★★とする。

告白してしまえば,若い頃は実は私はKeith嫌いのChick Corea好きで通っていたが,今や私にとってはKeithの方がはるかに重要なピアニストとなっている。その契機となったのは決してこのアルバムではないのだが,今でもたまにこのアルバムを聴くとやはり心地よい。万人に受け入れられうる美的音楽として推薦する。

Recorded on January 24, 1975, in Köln, Germany

Keith Jarrett (p)

2007年2月14日 (水)

懐かしのJulie Andrews日本公演

Julie_andrews "An Evening with Julie Andrews" Julie Andrews (RCA)

私のプロフィールにも書いているが,私が人生の中で最も多くの回数見た映画は「サウンド・オブ・ミュージック」である。私を知る人からすれば,「似合わない」という声も飛んできそうだ。

私が初めてこの映画を見たのは中学生の頃にリバイバル公開された時であった。それ以来,私は主演のJulie Andrewsのファンとなり,一時期はファンクラブにも属していたことはほとんど知る人もいない(当然だが...)。

そのJulieが初来日公演を行ったのが1977年。当時の高校生にとっては確か7,500円というチケット代は負担が大きかった(小遣い3ヶ月分ぐらい?)が,私もそのライブに駆けつけた。このLPは私が行った大阪公演の模様をほぼ完全に収録していると記憶する。第一部のバックバンドのインスト演奏が終り,Julieが登場した時の熱い思いを今でも強烈に記憶している。

収録曲はJulieの映画出演作の曲を交えたものとなっているが,実はそれら以外の曲の方が印象に残る出来になっている。冒頭の"I'll Play for You"やStephen Sondheim作の"Being Alive",更にはしっとり最後を締めくくる"I'd Rather Leave While I'm in Love"などはポピュラー・シンガーとしてのJulieの実力を知らしめる名歌唱である。もちろん聴衆に受けたのは映画からの曲の方だが,しっかりとしたポリシーを持った選曲は評価されるべきだと思うし,日本公演だからと言って,一切の手抜きがないのは彼女の人柄を表しているように思えてならない。

今後,このアルバムがCD化されることなどはほぼ期待できないだろうが,私の青春の想い出として密かに楽しむレコードとして紹介した。やや歌唱に乱れが見られるところもあるが,星★★★★には相当する出来。それにしても"Being Alive"は名曲である。

Recorded Live on September 21, 1977 at 大阪フェスティバルホール

2007年2月13日 (火)

L.A.コンフィデンシャル,この傑作のDVDが廃盤とは...

La_confiential "L.A. Confidential" (1997)

監督:Curtis Hanson

出演:Kevin Spacey, Russel Crowe, Guy Pearce, James Cromwell, Kim Basinger, Danny DeVito and Others

私が音楽以前に趣味としていたのは映画である。近年はなかなか劇場に足を運ぶ余裕もなくなっていたが,たまに見るとやはり映画は楽しい。ということで,このブログでは,たまに映画についても書いてみようと思う。

「L.A.コンフィデンシャル」は1997年の犯罪映画の傑作なのだが,本国のアカデミー賞では物量作戦の「タイタニック」にいいところをさらわれ(結果,本作は脚色賞と助演女優賞のみに留まった...),日本ではDVDすら永らく廃盤という憂き目にあうという何とも不幸な映画である。

しかし,この映画,重層的ながらスピーディな脚本の素晴らしさや,冒頭からエンディングまで見事に仕上げたCurtis Hansonの素晴らしい監督振り,充実の役者陣(またまた怪演を繰り広げるSpacey,カッコよ過ぎるCrowe,あまりの美しさに慄然となるBasinger等々),更には素晴らしいセットと,まさに映画的なよさに満ち溢れている。

私は声を大にして言いたいが,制作されて10年しか経っていないこうした優れた映画が,見たいときに見られない今の日本の環境はあまりに不幸である。契約関係をさっさとクリアにして,日本でもこのDVDを即刻再発すべきだ。もちろん中古市場でも探せばないわけではないが,ある程度の金額の出費を覚悟しなければならない。マルチ・リージョン対応のDVDプレーヤーを保有している私は米国盤を購入(送料込みでも2,000円ぐらいである)し,英語字幕でこの映画を楽しんだが,より多くの人にこの映画のよさを知って欲しいと思う。そのためには日本盤DVDの再発が必須なのである。

アカデミー賞では大勝した「タイタニック」よりはるかに優れた映画だと断言して,星★★★★★。それにしても国内でのDVD廃盤状態は「何でやねん」と言わざるをえない。

2007年2月12日 (月)

ギター界の手数王,Pat Martino

Pat_martino_live "Live" Pat Martino (Muse)

ジャズ・ギター界でも屈指の手数を誇るPat Martinoがライブ・セッティングにおいて,まさにその手数を爆発させた演奏である。特に3曲目の"Sunny"で激しく繰り出される16分音符の連打にはまさしく「目が点」になること請け合いである。しかもそれは,ハンマリング,プリングなしに音符のほとんど全てが正確にピッキングされているのである。

こうしたMartinoの特徴はある意味,ワンパターンに陥りやすいのも確かなので,ここまでやられると「もたれる」というリスナーがいても不思議はない。しかし,その「ここまでやるか」という感覚が私には爽快に感じられる。また,伴奏陣が全編フェンダー・ローズ,フェンダー・ベースを弾いているというのが,70年代という時代を強烈に感じさせるところが,中年リスナーには嬉しいところである。2曲目の"The Great Stream"におけるMartinoとThomasのユニゾンなどにはゾクゾクしてしまう。

ジャズ・ギター界でのMartinoの位置付けは歴史的な偉人と言うよりも,独自のスタイルを築いた稀有なスタイリストと言うべきであろうが,そうしたMartinoのスタイリストとしての特性を聞くには最適なアルバムと言えるだろう。私の趣味への合致度を足して,星★★★★☆。

Recorded in September 1972

Personnel: Pat Martino(g), Ron Thomas(el-p), Tyrone Brown(el-b), Sherman Ferguson(ds)

2007年2月11日 (日)

McCoy Tyner vs. Mike Brecker

Mccoy_tyner "Infinity" McCoy Tyner Trio Featuring Michael Brecker (Impulse/GRP)

John Coltrane Quartetを支えたMcCoy Tynerが,Michael Breckerと共演して,その上,Coltraneレパートリーの"Impressions"をやるとなれば,それだけで色めきたつジャズ・ファンも多いだろうし,かく言う私もその一人であった。

結果はどうか。Breckerはかなり健闘しているが,如何せんトーンが軽く,Coltraneの世界を再現するまでには至っていないし,音楽的な深みにも欠ける。このアルバムは,そうした期待が大き過ぎると失望感が強くなるが,普通のジャズ・アルバムとして聞けばそれほど悪い出来ではない。Breckerは急速調でもバラードでも,以前に比べればジャズ的なフレイバーが増しているし,McCoyは以前ほどの剛腕は聞けなくなったものの,相変わらずのプレイぶりである。そうした意味では,安心して二人の共演は楽しむことができるので,買って損をすることはない。繰り返すが,過剰な期待を掛けなければいいだけである。

このアルバムで違和感があるのは,ベースの電気増幅が強過ぎる点である。一部エレクトリック・ベースも弾いているようだが,あまりにも電気的なベースの響きには興醒めさせられる瞬間がある。名エンジニア,Rudy Van Gelderをしてもこれはどうしようもなかったということか。どうせなら,McCoyのレギュラー・トリオにこだわらず,もう少し真っ当なリズムを揃えるべきだった。

ということで,このアルバムにはいろいろな考えが交錯して評価が難しいが,星★★★といったところが妥当な評価だと思う。

Recorded on April 12-14, 1995

Personnel: McCoy Tyner(p), Michael Brecker(ts), Avery Sharpe(b), Aaron Scott(ds), Valentino Anastacio(perc on 1, 6)

2007年2月10日 (土)

松田聖子の最高傑作

Pineapple_2 "Pineapple" 松田聖子(Sony)

現在の松田聖子には全く何の興味もない私だが,アイドル時代の松田聖子は間違いなく「時代のアイコン」であった。このアルバムは,その絶頂期と言ってよい1982年に松田聖子が放った日本歌謡界の歴史に残る奇跡的な傑作である。

このアルバムを傑作たらしめているのは,ここに収められた楽曲のクォリティにほかならない。名コンビ松本隆の作詞に,来生たかお,原田真二,財津和夫,呉田軽穂(松任谷由実)の作曲陣が提供した全10曲のいずれもが,凡百のアイドルのアルバムと一線を画す素晴らしい出来であり,冒頭の来生作曲の"P.・R・E・S・E・N・T"からすでに傑作を予感させるものとなっているし,全編を通じてだれることはない。

本来アイドル歌手は,シングル盤依存型アルバムと相場が決まっているわけだが,本アルバムは予算を確保し,アルバムとして丁寧に制作されている。これはまさに英断と言ってよいが,それほど当時の松田聖子への期待値が高かったということの裏返しと言うこともできるだろう。そもそも松田聖子のアルバムには,結構優れた曲が多いが,このアルバムは全編に渡ってのハイ・クォリティというのが凄い。

当時の松田聖子はデビュー当時の伸びやかな声質から,ややハスキーさを持ち合わせた声質への変化を遂げていた時期であるが,そうした変化ともうまくマッチした楽曲群が,このアルバムを今でも魅力的なものとしている。発売から25年を経たとは思えぬ傑作アルバムとして星★★★★★。学生時代,本アルバムを購入した当日に,あまりの出来のよさにこのLPを何度も聞き返したのが懐かしく思い出される。

Pineapple 尚,ジャケは裏の写真の方が絶対可愛いので,そちらもアップしてしまおう(笑)。

Recorded in March/April 1982

2007年2月 9日 (金)

Paul DesmondのRCA時代を回顧する

Paul_desmond "The Complete Paul Desmond RCA Victor Recordings Featuring Jim Hall" Paul Desmond (RCA)

ジャズ界の稀代のスタイリストの一人であるPaul Desmondが,タイトルの通り,RCAレーベル在籍中にJim Hallとのコンビで吹き込んだアルバムを集大成した5枚組である。とにかく,このアルトの音を聞けば,ほかのアルト・プレイヤーとは決定的に異なることがすぐにわかる。

Paul Desmondと言えば,一般にはDave Brubeckとの活動で知られ,Desmondの最も有名なオリジナル曲はBrubeckとの"Take Five"であることは否定し難い事実である。しかし,私のようにDesmondは好きだが,Brubeckが苦手なリスナーにはこのRCAボックスや,Warnerに吹き込んだ"First Place Again"あるいは晩年のライブ盤こそが,本来のDesmondを楽しめるアルバムなのである。

ここではJim Hallという地味ながら繊細なギターを聞かせる名手をパートナーに,それこそDesmond節とも言うべき,リリカルなアルトを全編に渡って楽しむことができる。これらの音源はジャズ界の歴史に残るような演奏とは言えないし,全部が全部素晴らしいかというと決してそうでもない。しかし,密やかにグラスを傾けながらでも,あるいは午後のひとときにでも楽しめ,リラクゼーション効果も期待できる音楽である。私はこのアルバムは小音量で楽しむことが常となっているが,傾聴するというよりも,何かをしながらでも決して妨げにならない音楽だと思えばよい。このボックスにも入院中にお世話になったことが思い出される。それも踏まえて星★★★★★。

いずれにしても,Desmondの演奏にはまさにリリシズムという表現こそ相応しいと感じさせるのに十分なボックス・セットである。世の中でこのボックスを見掛けることも本当に少なくなったが,見つけたら買って損はない。特に「ゴリゴリのジャズは...」というジャズの初心者リスナーにも自信を持ってお薦めしよう。

Recorded between 1961-1965

Personnel: Paul Desmond(as), Jim Hall(g) and Others...

2007年2月 8日 (木)

Dave Grusin 最大のヒット作

Mountain_danc "Mountain Dance" Dave Grusin (JVC)

Dave Grusinは古くはAndy Williamsの音楽監督やQuincy Jonesの黒子を務め,多くの映画音楽もものにしたベテランである。本作は"California Shower"等での渡辺貞夫とのコラボレーションの成功を受けて,日本でも知名度が増したGrusinにJVCレーベルが委嘱した当時のクロスオーバー・アルバムであり,Grusinとしても最大のヒット・アルバムだと思う。

Grusinは基本は作曲家,アレンジャーとしての資質に優れ,プレイヤーとしてはどうかという疑問もあったが,ここでは曲のよさを活かして,適確なアレンジ,手堅い演奏で健闘していると言えるだろう。 また,本当に若い頃(ティーンエイジャーだったと記憶する)のMarcus Millerのベースが全編で聞けるが,最初からこの人は大したベース・プレイヤーだったことがよくわかる。

収録曲では,映画「恋におちて」主題曲として用いられたタイトル曲が出色の出来である。(今でも小売業の店頭でかかっていたりすると,その度に懐かしんでいる私は単なる中年オヤジである...。) そのほかにも"Friends and Strangers"など佳曲揃いであるが,中でも強力に推薦したいのが,最後に収められたHarvey Mason作の"Either Way"。こういうのを隠れた名曲と言う。Masonは結構いい曲を書くので,作曲家としても侮れない。

尚,本作に収められている"Captain Caribe"はGrusinも参加したGentle ThoughtsやEarl Klugh演奏でもお馴染みの,往時のシーンを代表する曲の一つだが,ここでの演奏はややシンセの使い方やリズムの使い方に難があるし,Jeff Mironovのギターも力み過ぎで出来としては今一歩。

ところで,本盤の米国GRP盤のジャケットはカウボーイ・ハットにウェスタン・ルックで微笑むGrusinの写真という悶絶ものなので,購入するならまだましな日本盤を。と言ってもオリジナルのLPでのGrusinのポートレートはかなり引きつった表情の写真だったことを覚えているリスナーはもはや少数か。本盤のジャケットはセカンド・エディションでまだまともなポートレートとなっているのはご愛嬌。録音から30年近く経過しても,対して古臭さを感じさせないのは結構立派。トータルとしては星★★★★☆。

Recorded in December 1979, in NYC

Personnel: Dave Grusin(key), Harvey Mason(ds), Marcus Miller(el-b), Jeff Mironov(g), Ian Underwood(synth), Edward Walsh(synth), Rubens Bassini(perc)

2007年2月 7日 (水)

輝かしきカーペンターズの時代

Carpenters "Twenty Two Hits of the Carpenters" Carpenters (A&M)

1970年代初頭,日本でも圧倒的な人気を誇ったCarpentersのベスト盤である。アルバム単位でCarpentersを聞きたいと思ったことは私にはないが,この見事なばかりのシングル曲コレクションを聞けば,彼らが時代の寵児であったことは間違いのない事実だと再認識できる。

1970年初頭と言えば,私が小学校の高学年の頃であるが,ラジオ(AMの深夜放送)でのエアプレイの頻度は,洋楽ではCarpentersがダントツであったと記憶しているが,ここまで日本での人気が高まった理由は,彼らの音楽の「わかりやすさ」ではなかったかと思う。Karen Carpenterのディクションが日本人の感覚にフィットしたこともあるだろうし,音楽がかかっていても生活の妨げにならないという「ながら族」にとっての適切性(刺激の少なさ)もあろう。

いずれにしても,今,彼らの音楽を聞いて思うのは,ここに収められている曲のほとんどを歌えてしまうということに対する驚きであるが,まだまだ未成熟であった私の音楽体験に,ある意味洋楽のよさを教えてくれたのはCarpentersであったように思う。なんでこんな曲がヒットするのか疑問に思える曲がないわけではないが,私の洋楽の原体験の一つとして,彼らには改めて感謝せざるをえない。その意味でこのアルバムは星★★★★★に相当する。

しかしながら,あれほど圧倒的な人気を誇った彼らが,日本での人気にかげりが生じたのは,あまりに期待の大き過ぎた日本公演からだったのは皮肉なことである。私は今でも当時TV放送された武道館公演でのひばり児童合唱団を伴った最悪の"Sing"のことが忘れられない。あの日本の聴衆に媚びるような演出による「がっくり感」は,子供心ながら私にもショックを与えたし,多くのファンに失望感をおぼえさせたように思う。

そうは言っても,ここに収められた曲の数々はエバーグリーンと言ってもよいものであるし,今でもその輝きは失せていない。まさしく一つの時代の断面を切り取った音楽であり,このベスト盤を聞くとカラオケで歌いたくなってしまうのが私の中年たる所以か...。

2007年2月 6日 (火)

Dionne Warwickの超お買い得コンピレーション

Dionne "Legends" Dionne Warwick (Arista→Sony BMG)

Dionne Warwickが1979年から1993年までにAristaレーベルに残した数々の楽曲を収めた3枚組コンピレーションである。本CDセットは英国盤であるが,破格の安値(9ポンド弱!)がついているのは驚きであると同時に,この値段でこれだけのボリュームの音楽を楽しめるとは全くもってありがたい。

Dionneの全盛期がこのアルバムに収められた時代だとは思わないが,それなりにその時代にフィットしたAOR的なサウンドを聞かせており,なかなかの佳曲揃いなので,これはこれで楽しめる。ここに60年代を中心とするBurt Bacharachとのコンビによるベスト盤を揃えれば,Dionneのキャリアは総括できると言っても過言ではない。

いずれにしても全52曲,ネットなら日本でも2,500円程度で買えてしまうこのアルバム,1曲あたり50円とは何とお買い得か!詳細なクレジットやライナーノートがないのは,画竜点睛を欠くとのそしりは免れないとしても,このハイ・コスト・パフォーマンスだけで星★★★★★に値する。

2007年2月 5日 (月)

Yesでこそ光るRick Wakeman

Rick_wakeman "Live at the BBC" Rick Wakeman (Hux)

1976年,"No Earthly Connection"を発売した頃に,英国BBCで放送された音源をまとめたライブCD2枚組である。WakemanのソロCDでは「ヘンリー8世の6人の妻たち」はロック・インストとして,「ホワイトロック」は映画音楽としてよく出来ていたが,どうもそれ以外のCDは本人の性格もあるのかもしれないが,音楽が仰々しいのが多くてよろしくない。

このライブCDも,BBCに音源が残っていたからCD化したと言われてしまえば,身も蓋もなのだが,正直言って2枚組にするほどのものかと文句もつけたくなる代物である。同じような曲を,Wakemanのワンマンショー的にやられてしまっては,食傷せざるをえない。このCDの問題は演奏される曲の魅力の薄さもあるが,オーケストラとの共演ならまだごまかしのきく「地底探検」や「アーサー王」からの曲も,ブラス2本ではどうしようもないところである。

結局のところ,WakemanはYesのキーボード奏者として演奏しているときが,最も輝くということを自覚しているがゆえに,Yesへの脱退と加入を繰り返しているのではないかと勘ぐりたくもなる。いずれにしても,Wakemanはキーボード・プレイヤーとしては一流かもしれないが,作曲能力含めたトータルなソロ・プレイヤーとしてはあまりに魅力のない人だったということを再認識させるアルバムと言えよう。Yesの他のメンバーがWakemanに欠けていた作曲能力を補うとともに,Wakemanの「俺が俺が」的自我の強さを抑制させる効果を持つ一方,Wakemanはキーボードでバンド全体の演奏能力を高めていたというシナジーがYesでは利いていたが,ソロではやはり厳しい。

このアルバムには「久々に駄盤を買ってしまった」と反省させられてしまった。厳しすぎる評価かもしれないが,このがっくり感(アルバムを買うのを結構躊躇した私にとってはある程度予想通りあるいは既視感ありとも言えるが...)ゆえに星★。Rick Wakeman命と言われる方にしかお薦めできないアルバムという評価が妥当と思う。ただ,こうした駄盤をつかむのも修行の一つ。審美眼をもっと磨かねばと更に反省。

Recorded at Hammersmith Odeon on June 17, 1976 (disk 1) and at the Maltings, Farnham, Surrey, on April 27, 1976 (disk 2)

Personnel: Rick Wakeman(key), Ashley Holt(vo), Roger Newell(b), John Dunsterville(g), Tony Fernandez(ds), Reg Brooks(tb), Martin Shields(tp)

2007年2月 4日 (日)

Annette Peacockの好アンソロジー

Annette_peacock "My Mama Never Taught Me How to Cook: the Aura Years 1978-1982" Annette Peacock (Aura→Sanctuary)

Annette PeacockがAuraレーベルに残した音源,即ち1978年の"x-Dreams"及び1979年の"Perfect Release"の全曲と,1982年のレーベル・コンピレーション"The Collection"からPeacockの2曲("Perfect Release"のアウトテイク)を加えて構成された非常にお買い得なコンピレーションである。これらの音源のオリジナル・フォームでのCDはかなり高値となりつつあるので,オリジナルにこだわるコレクター以外で,純粋に音楽だけ楽しめればよいという向きには本盤を薦める。

Annette Peacockのシンガーとしての位置付けや評価というのはどういうものなのか,実ははっきりしないのであるが,Auraレーベル時代の音源は,おそらく彼女のもっともロック寄りの演奏と考えてよいように思える。Mick Ronson,Chris Spedding,Bill Bruford,Max Middleton等のバックの助演陣を見れば,彼女の人脈を理解するヒントになるだろう。私の好みもあるのだが,助演陣ではMax Middletonのエレクトリック・ピアノが特によい。Jeff Beckの"Blow by Blow"で聞かせた世界がよみがえってくる。

いずれにしてもここに収められた音楽は英国的なウエットな感覚に溢れており,これはかなりよい。Patti Smithが好きなリスナーであれば気に入るタイプの音楽だろう。ということで,優れた編集方針とお買い得感も含めて星★★★★★。

2007年2月 3日 (土)

Steve Millerの傑作の30周年記念盤

Steve_miller_1 "Fly Like an Eagle 30th Anniversry Edition" Steve Miller Band (Capitol)

"Fly Like an Eagle"こそSteve Miller Bandの最高傑作という評価に間違いはないところだが,その傑作がリマスター,ボーナス・トラックの追加に加えて,Steveへのインタビュー(ドキュメンタリー),2005年のライブ映像,更には本作の5.1サラウンド音源まで追加したディスク2を付けての何とも太っ腹なエディションとして昨年再発された。

本盤が発売されて30年も経ってしまったのかというのが,このアルバムと同時代人としての私の本音であり,時の流れに愕然とさせられるが,時間が経過してもよいものはよい。本編の音楽は既に世評も高いところなので,ディスク2の2005年のベイエリアでのライブ映像を中心に述べると,Steve Millerオールタイム・ベストというべきヒット曲てんこ盛りの演奏に加えて,ゲストを迎えて(大多数を占める中年オーディエンスも)盛り上がっている。ゲストの中では強烈なブルースを聞かせるJoe Satrianiが凄い。

SatrianiとSteve Miller Bandとは何とも珍妙な組合せにも思えるが,ライナーによれば,Satrianiが初めて見たロック・コンサートはSteve Miller Bandであり,またこのバンドのリード・ギタリストになるのがSatrianiの長年の夢だったというのは意外な事実である。

いずれにしても,このライブ映像は現在のSteve Miller Bandの非常に高い演奏能力を見事に実証している。ライブ映像とともに収められたインタビューには字幕こそないが,貴重な映像や本作のバックグラウンド情報,Steveのギター・フレーズ解説等を含んでいて,結構面白い。私としては,ライブ映像では比較的若々しく見えるSteveとインタビュー時の完全に爺さん化したSteveのギャップに結構笑ってしまった。

今の時代のリスナー(あるいは若者)がこうした音楽に興味を示すかどうかは甚だ疑問であるが,長年のファンにとっては嬉しい再発であることは間違いない。世の中,デラックス・エディションだ,XX周年記念盤だと言ってはさまざまなCDが再発されていて,商魂のたくましさだけを感じさせるものもあるが,本盤の編集方針は極めてリスナー思いということで,星★★★★★。

Personnel:Steve Miller(vo, g), Gary Mallaber(ds, perc), Lonnie Turner(b), James Cotton(hca), Curly Cooke(g), Les Dudel(g), John McFee(dobro), and More...

2007年2月 1日 (木)

Steve Reichの格安ノンサッチ・ボックス

Reich "Phases: A Nonesuch Retrospective" Steve Reich (Nonesuch)

ミニマル・ミュージックの巨匠,Steve ReichがNonesuchレーベルに残した音源をまとめて,Reich生誕70周年を記念して発売された5枚組ボックス・セットである。

Reichのミニマル・ミュージックは一度はまると癖になってなかなか抜け出せなくなってしまうのだが,このボックス・セットの魅力は何と言ってもその価格である。米国でのリスト・プライスは$34.99と1枚$7未満で,Reichの代表的な曲の数々を楽しめるのだから,これはお買い得と言えるだろう。日本でも相当の格安価格で購入可能である。

私のようなジャズ・ファンにとっては,Pat Methenyのために書かれた"Electric Counterpoint"に注目が集まるのは当然だが,そもそも"First Circle"で,Reichの"Clapping Music"へのシンパシーを感じさせたMethenyであるから,この組み合わせは特に驚くには値しないし,MethenyもここではあくまでもReichの世界でギターを弾いている。そう言えば,東京ミュージックジョイ(?)とかいうコンサート・イベントでMethenyがこの曲を弾いていたのも懐かしい。

しかしながら,それだけに留まらずReichのミニマル・ワールドが"Drumming"のような70年代の曲から,2005年発売の"You Are(Variations)"まで幅広く堪能できるアルバムとして,大いに推薦したい。ミニマル初心者にもお薦めでき,裾野を広げるのに貢献しうるセットとして星★★★★★。

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