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2007年1月31日 (水)

千手観音,Billy Cobhamのゆるいグルーブ

Drumnvoice_1 "Drum'n' Voice All that Groove" Billy Cobham (Just Groove)

Recorded in Milan, Italy

Personnel: Billy Cobham(ds),Rossana Nicolosi(b),Lino Nicolosi(g),Pino Nicolosi(key),Dora Nicolosi(vo),Michael Brecker(ts),Randy Brecker(tp),Eddie Gomez(b) and Many More...

イタリアのフュージョン・グループとおぼしきNovecentoを構成するNicolosiファミリーとジャズ界の「千手観音」,Billy Cobhamのコラボレーション・アルバムであるが,ミディアム・テンポを中心とした曲でのCobhamの「ゆる~い」グルーブが楽しめるアルバムである。

ゆるいグルーブと言っても,Cobhamの正確無比のドラミングは健在であり,ギミックを感じさせることなく,ステディに叩くCobhamが何と言っても素晴らしい。昔日の爆発力はないが,よい意味で枯れたドラミングを披露している。曲はボーカル曲を交え,バラエティに富んではいるものの,はっきり言って大したことはない。しかし,Cobhamのドラムに気を取られていると,それが気にならないから不思議なものである。

ゲストとしてRandy Brecker,Michael Brecker,Eddie Gomezがそれぞれ1曲ずつ客演しているが,Brecker兄弟が共演しているわけではないし,ゲストという位置付けに留まっている。ここでの主役はあくまでもCobhamなのである。

Cobhamのドラミングがこのアルバムを凡百のフュージョン・アルバムになることから救っているが,全体の評価としては星★★★と言ったところだろう。しかし,そこそこは楽しめるアルバムではある。

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2007年1月30日 (火)

ここまで来ると爽快なフリー・ジャズ

Montreux "Montreux Afterglow" 山下洋輔 (Frasco)

Recorded Live on July 9, 1976, in Montreux, Switzerland

Personnel: 山下洋輔(p),坂田明 (as, vo),小山彰太(ds)

昨今ではニューヨーク・トリオでの演奏が中心となっている山下洋輔であるが,ややコンベンショナルな演奏に傾いた最近の演奏よりも,洋輔の魅力は「どしゃめしゃ」なフリー・ジャズにこそあるのではないかと感じるリスナーも多いのではないかと思う。

洋輔のフリー・ジャズの中で,最も楽しく聞けるのがこのスイスでのモントルー・ジャズ・フェスティバルにおける実況録音盤"Montreux Afterglow"であろう。フラスコ・レーベルでの洋輔の演奏は総じてレベルが高いが,ここでの洋輔トリオの一体感とパワー溢れる演奏は爽快そのものと言いたい。特にLPではA面一面を占めたAlbert Ayler作"Ghost"が最高である。ピアノを激しく打鍵(肘打ちだろう)しすぎて,LPだと音が割れるような感覚さえする強烈な洋輔のピアノ,ハナモゲラ・ボーカルが笑える坂田のアルトとボーカル,音はやや軽いが,ビビッドに反応する小山のドラムスと,尺の長い演奏も時間を忘れるほどの快演である。この演奏を聞けば,フリー・ジャズは眉間に皺を寄せて聞くものではないということがよくわかるし,ある意味,フリー・ジャズへの間口を広げたと言う意味で,このトリオあるいはこの演奏が果たした意義は大きいと思う。

こうした傑作アルバムが長年廃盤の憂き目にあっているというのは信じられないが,本盤が最後にマーケットに出たのは,1998年に洋輔のフラスコ・レーベルでの仕事を集大成した紙ジャケ仕様,豪華18枚組(!)「ピアニストを聴け!」の一部としてだから,入手はますます難しくなっているのではないか。だいたい,18枚組に25,000円を出すのはよほどの物好き(私も含む)だけであって,そもそも何セット作ったのかもわからないような代物である。今の時代,この手の音楽は発売しても枚数がさばけるものではないかもしれないが,カタログがどんどん減少していく日本のジャズ・マーケットは何とも寂しい状況と言わざるをえない。この傑作には星★★★★★を謹呈して,再発を強く要望しておこう。

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2007年1月29日 (月)

耽美派? Marc Copland

Marc_copland "Some Love Songs" Marc Copland (Pirouet)

Recorded on January 17/18, 2005 in NYC

Personnel: Marc Copland(p),Drew Gress(b),Jochen Ruckert(ds)

ジャズ界のピアニストで耽美派と言われるのはPaul Bleyというのが相場だが,現在,耽美派というか,美的なセンスに溢れたタッチでアルバム全編を飾れるのはMarc Coplandが筆頭ではないだろうか。

そのCoplandが超マイナー・レーベルと言ってよいHatologyレーベルとしては破格のヒット作"Haunted Heart & Other Ballads"を発表したのが2001年のことである。そのアルバムも大変美しいアルバムであったが,本作はHatology盤と全く同じメンバーで吹きこまれたものであり,同作に惹かれたリスナーとしては,期待せざるをえないアルバムであった。

1曲目がJoni Mitchellのアルバム"Ladies of the Canyon"から"Rainy Night House"というのは渋いが,その冒頭から我々の期待を裏切らない出来の非常に美しい演奏が続いている。1曲だけWayne Shorter作の"Footprints"にやや違和感をおぼえるし,最後の"My Foolish Heart"はBill Evansの決定的な演奏の前にはいかなる演奏も不利なところがあるということを差し引いても,「新耽美派」の面目躍如の出来を示している。

相変わらずMarc Coplandの日本での知名度は限定的だが,こうしたアルバムを通じて,より多くのリスナーに聴いてもらいたいものである。Hatlogy盤には及ばないが,星★★★★には十分相当する佳作だと思う。

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2007年1月28日 (日)

こう吹いて欲しいというように吹くEnrico Rava

Enrico_rava "The Words And Days" Enrico Rava Quintet (ECM)

Recorded in December 2005

Personnel: Enrico Rava(tp),Gianlual Petrella(tb),Andrea Pozza(p),Rosario Bonaccorso(b),Roberto Gatto(ds)

昨今,ECMレーベルからの発売ペースを上げるEnrico Ravaの新作である。これまでレギュラーであったStefano Bollaniの名前は見られないのは残念だが,新ピアニストのAndrea Pozzaが十分その穴を埋めている。演奏そのものは,リスナー(少なくとも私)がRavaにはこう吹いて欲しいというトーンで吹いたアルバムであり,それだけで嬉しくなってしまう。

音楽としては,映画音楽的というか,情景を切り取るようなゆったりとした曲調が多く,メランコリックでメロディアスなRavaが楽しめるというべきだろう。RavaがVenusレーベルに吹きこんだ”Renaissance"を好むリスナーならば,このアルバムも好むことは確実だと思う。

曲そのものの魅力にはばらつきがあるが,演奏としては大いに私の心の琴線をくすぐってくれたので,星★★★★☆。この路線をRavaには続けて欲しいものである。

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何とも軽快なスイング感が楽しめるアルバム

West_coast "West Coast Wailers" Conte Candoli & Lou Levy (Atlantic)

Recorded on August 16, 17, 1955 in LA

Personnel: Conte Candoli(tp),Bill Holman(ts),Lou Levy(p),Leroy Vinnegar(b),Laurence Marable(ds)

これは楽しいアルバムである。往年の西海岸ジャズの楽しさに溢れた"West Coast Wailers"が紙ジャケット仕様で発売された。CDではこれが初の発売のようであるが,まずはこの発売を喜びたい。ここには「エモーション」や「ソウル」とかいう響きはないものの,ひたすらにスインギーな演奏が収められている。冒頭の"Lover Come Back to Me"は意表を突く演奏ながらも,ワクワクするような演奏で,全編への期待が高まるが,それは裏切られることはない。

Candoliの何とも明るいトーンのトランペットや,平均点の高いLevyのソロ,更には後にはビッグバンドを率いることとなるBill Holmanのテナー奏者としての実力を知ることができるこのアルバムは,結構聞き所が多い。中でも,Levyのよさが際立っている。Candoliのトーンは明るすぎるようにも思える部分もあり,本来エモーショナルな演奏が多い"Lover Man"でさえ,彼らにかかると軽く響くのはご愛嬌であるが,全編を通じて,これは相当に楽しめるアルバムと言ってよいだろう。

日本のジャズ愛好家には西海岸ジャズを過小評価することも多いが,本盤では過剰なアレンジが施されているわけでもなく,リラクゼーション,楽しさと提供するこうしたアルバムはもっと評価してもよいのではないだろうか。西海岸ジャズのよさを再認識させることを期待して星★★★★☆。尚,リマスタリングによる音のよさも特筆できることを付記しておく。

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2007年1月25日 (木)

三日月顔の女流ピアニスト対Roy Hargrove

Anke_helfrich "Better Times Ahead" Anke Helfrich Trio Featuring Roy Hargrove (Double Moon)

Recorded on November 8/9, 2005

Personnel: Anke Helfrich(p),Roy Hargrove(tp, fl-h on 3,4,6),Martin Gakonovski(b),Dean Terzic(ds)

Anke Helfrichなる女性ピアニストについてはこれまで聞いたことがないが,アルバムにもあるRoy Hargroveがワンホーン・セッティングで客演していることに惹かれて入手したアルバムである。発売は2006年夏場だったらしいので,新譜というにはいささか問題があるが,私にとっての新譜として扱わせて頂く。詳しいバイオは不明であるが,このピアニスト,オランダでジャズを学んだとあるので,オランダ人なのだろうか。それにしてもこのジャケットや裏ジャケ写真に写ったこの人の顎は見事なものだ。これが本当の「三日月」フェイスである。

閑話休題。このアルバムはHargroveの欧州樂旅の機会を捉えての共演盤であるらしいのだが,Hargroveが吹いているのは3曲だけである。肝心の演奏はと言えば,いきなり5拍子で軽快にスイングする1曲目からなかなかの出来と思わせるものである。澤野商会から発売してもいいのではないかと思ってしまうような,女性らしい繊細なトーン(逆に言えば力強さには欠ける)で旋律を紡いでいくさまは好感が持てるし,トリオ全員のレベルも高い。

Hargroveが登場するのは3曲目からである。これが冒頭2曲と異なるThelonius Monk的なアプローチにやや面食らうが,作曲も兼ねるリーダーは,アルバムにMonkの2曲も含まれているので,Monkからかなりの影響を受けていると考えてよいだろう。Hargroveはワンホーンと言うこともあり,客演する3曲で相当の吹きっぷりであるが,なかでも4曲目のフリューゲルホーンによるバラード表現が素晴らしい。Hargroveのリーダー作"Public Eye"(Novus)には"Once in a While"というワンホーンでの名バラードが含まれていたが,それを想起させる演奏である。

全体を通してみれば,リーダーのHelfrichは作曲(相当バラエティ豊かである)にもピアノにもかなりの才能を持つミュージシャンだと思うので,次はトリオだけで勝負してもいいだろう。本アルバムはHargroveの好もしい客演振りとリーダーの今後の活動に期待を込めて,ちょいとオマケして星★★★★としよう。

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David Friesenとギターの共演盤

David_friesen"Connection" David Friesen(ITM)

Recorded on Feb.12/13, 2005 in Phoenix, Arizona(Disk1) and January 21/22, 2001 in California(Disk2)

Personnel: David Friesen(b),LarryKoonse(g),Joe LaBarbera(ds,Disk2のみ)

70年代の後半に確かInnerCity(?)とか言うレーベルからアルバムを発売し,局地的に注目を浴びたことがあるDavid Friesenだが,その後もしぶとくアルバムは発売してきた。私もひいきのDenny Zeitlin(p)とのデュオぐらいは購入していたが,それ以外には別に興味があったとは言えない。

このアルバムがそんな私の購入意欲をそそったのは,①2枚組で結構安価なこと,②ディスク1はギター~ベースのデュオという私が好むセッティングだったこと,③ディスク2には後期Bill Evans Trioのドラマー,Joe LaBarberaが参加し,半数はスタンダードを演奏していることなどが挙げられる。結論から言えば,演奏そのものは決して悪くはないのだが,平均的な出来というのが正直なところであり,星にすれば★★★☆というところであろう。

こうした音楽をライブの場で聞けば,別の感慨もあるはずだが,CDでの鑑賞音楽としては別に2枚組で発売するほどのものではないように思う。また,ここでは録音のせいもあるかもしれないが,Friesenのベースの音には好き嫌いが分かれるだろう。少なくとも私にはやや高音域の多用が鼻につくのが難点である。

また,本作に全面参加するLarry Koonseは某CDショップ店頭ではかなりプッシュされているようだが,それほど優れたギタリストだろうか?Friesenとの相性は悪くないとは思うが,別にここでのギタリストが彼である必然性はないように思う。但し,コスト・パフォーマンスは悪くないので,十分に元は取れる音源ではある。これでオリジナルを忘れて,スタンダードに徹してくれれば,尚よかったが....

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2007年1月23日 (火)

2ndも素晴らしいJohn Legend

John_legend "Once Again" John Legend (Sony BMG)

第1作"Get Lifted"も高く評価されたJohn Legend待望の第2作であるが,これが期待を上回るスイートなアルバムとなった。

このアルバムの素晴らしいところは,John Legendの歌唱そのものに加えて,粒揃いの佳曲群である。次から次へと何とも印象的なメロディーを連発されれば,多くのリスナーがメロメロにならざるをえない傑作である。多少第1作と感じが変わっているので,前作の路線を期待するリスナーはやや面食らうかもしれないが,ソウル・ミュージック好きなら,この出来には文句は言うまい。私は本作の方が好みであるが,これぞソウルの王道,ソウルの良心と言ってはほめ過ぎか。

本作の日本盤は価格が抑えられているだけでなく,ボーナス・トラックが3曲追加されていて,そのうちの1曲は私があまりのよさに感銘を受けたSergio Mendezとの共演作"Please Baby Don't"であるから,相当お買い得感ありである。Sergio Mendesの"Timeless"の未購入リスナーには国内盤を推奨しよう。

いずれにしても,Anthony Hamiltonと並んで,今後のソウル界を担う男性ボーカリストはJohn Legendをおいてほかにない。素晴らしいアルバムに喜んで星★★★★★を謹呈する。

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2007年1月21日 (日)

富樫雅彦のパリ・セッション

Photo "Session in Paris Vol.1: Song of Soil" 富樫雅彦(Paddle Wheel→Take One)

Recorded on July 12 & 13, 1979 in Paris

Personnel: 富樫雅彦(perc),Don Cherry(tp, cor, bamboo-fl, perc),Charlie Haden(b)

音楽的にとっつきにくいという点ではナンバーワンと言ってもよい富樫雅彦であるが,79年に吹きこまれたアルバムは,参加メンバーにも恵まれて,非常に魅力的なアルバムに仕上がっている。

富樫のアルバムはある意味,ジャズというカテゴリーを超越してしまっていて,一般人の理解を越えている部分もあり,多くのリスナーは富樫のLPやCDを頻繁に聞こうと思わないというのが正直なところであろう。しかし,このアルバムはCherry,HadenというOrnette Colemanの初期のクァルテットの2名の参加を得て,ジャズ的なスリルが横溢しているところが,ほかの富樫の(特にソロ・)アルバムと異なっている点だと思う。編成的にもメンツ的にもECMレーベル的と言ってもよく,私のようなECMレーベル好きには結構たまらないものがあるアルバムである。

残念なのは,こうしたアルバムが長きに渡って廃盤状態が続いていることである。私は幸い,中古盤で本盤を先日入手したばかりだが,このCDもそもそも三重県のプライベート・レーベルであるTake Oneレコードが,音源をキング・レコードから借用して発売したものであり,その後は一切市場に出回っていないと思う。今の世の中,富樫のCDが売れるとは思わないが,こうした優れた音源はカタログにのせておく必要は強く感じてしまう。現在ならネットでの配信だけでも何とかならないものかと思う。こうした音源の再評価への希望もこめて星★★★★☆。

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2007年1月20日 (土)

スウィングジャーナルを批判する

本日(2007/1/20),スウィングジャーナル(SJ)誌2月号が発売され,恒例のジャズディスク大賞が発表になった。金賞(年間最高作)はChick Coreaの「スーパー・トリオ」だそうである。

確かにこのCDに収められた演奏は悪くない。私は本作が発売された時にAmazonのレビューに次のように書いた。ここにはそのままを掲載する。

「Chick Corea(p),Christian McBride(b),Steve Gadd(ds)という強力なメンツで吹き込まれたライブ盤。いきなり飛び出す"The Mad Hatter"所収の"Humpty Dumpty"から好調な演奏で嬉しくなる。そのほかに"Friends"から2曲というのが意外と言えば意外な選曲ながら,Corea~Gadd共演の再現と言う観点での選曲(Quartet#2も同様)と考えるべきであろう。特に"Sicily"の演奏が素晴らしい。しかしながら,トリオとして見れば,ご両人と本来がRay Brown系のMcBrideとの相性は今一歩と言う感がするのは致し方がないところか。ここはEddie GomezかJohn Patitucciの方がよかったかもしれない。また、何とももったいないのが,"Spain"のフェードアウト。収録時間の関係上仕方がないとは言え,盛り上がってきたところでのフェードアウトは何とも辛い。いずれにしても,日本のみの発売ということで、ファン必携であることは間違いない。」

ということで,私もいいのか悪いのかはっきりしない微妙なレビューを書いてしまっているわけだが,基本的には本作は悪い作品ではないし,買って損はない。しかし,これがジャズの年間最高作ですかと言ったら,そんなことはあるまい。Coreaの作品では"Return to Forever"やGary Burtonとのチューリッヒでのライブが同誌金賞を受賞しているが,とても同列に並べる気にはなれない作品である。確かに昨年のジャズの新譜は総じてレベルが低かったように思うし,全てを聞いているわけではないので,何とも言えない部分はあるが,それにしてもである。

そもそも,昨今のSJ誌のレビューを見ている限り,そこに並べられているのは決して批評ではなく,レコード会社におもねったおべんちゃら記事がほとんどである。レビューの星の数を見れば明らかであるが,SJ誌で毎月批評される膨大なCDのほとんどが4星(優秀)以上というのは明らかにおかしいのである。あれだけの作品が発売されていれば,駄盤,愚作が含まれていても当然であるが,無星,1~2星の作品などはここ暫くお目にかかったことがない。今や,同誌に評文を寄せるライター諸氏には批評家としての矜持があるとは思えないし,同誌のレビューには批評としての意義はほとんどないと言わざるをえない。

そんなことは皆さん百もご承知と言われるかもしれないが,少なくともプロのライターたる者,音楽はもっと真摯な姿勢で評価して欲しいものである。昔は私もSJ誌を通じてジャズに関して多くを学ばせてもらったが,今や情報提供元としての意義しか見出せなくなったのは誠に残念である。真っ当な批評家が世を去ったり,引退してしまったことも一因だろうが,それにしても最近は目に余る。(だからと言って,寺島靖国氏のような輩が持ち上げられるのもおかしいと思うが。)

閑話休題。少なくともこのブログではしっかりした審美眼を持って,音楽に接したいと決意を新たにする次第である。信じるは自分の経験と耳(及び直感)だけである。

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2007年1月19日 (金)

Joni Mitchellの画集

Voices_1 "Voices: The Work of Joni Mitchell" (Mendel Art Gallery)

偉大なるミュージシャン,Joni Mitchellは自作の絵画を自らのCD(あるいはCSN&Yの"So Far"等もそうだ)のアートワークとして採用し,画家としても高い評価を得ているのは周知の事実である。そのJoniの美術作品の回顧展が地元であるカナダ,サスカトゥーンのMendel Art Galleryにて開かれたのは2000年のことであった。

この本は,その回顧展のカタログ本として出版されたものであるが,そもそもの印刷部数が少なかったらしく,米国のAmazon Market Placeなどでも結構な値段がついている。しかし,全64ページに渡り,懐かしのアルバム・ジャケットや抽象,具象,セルフ・ポートレートまでJoniの素晴らしい作品が並んでいるので,ファンは必携の作品である。苦労してでも手に入れる価値はあると断言しておこう。美術書ゆえ装丁も素晴らしい。

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2007年1月18日 (木)

追悼,Michael Brecker

Blue_motreux Michael Breckerが去る1月13日,ニューヨークの病院にて白血病のため亡くなったそうである。かねてより骨髄異形成症候群により,長期の離脱を余儀なくされていたが,白血病への進行が心配もされていた。それにしても57歳とは早過ぎる死である。今後,枯れたBreckerの演奏を期待していただけに残念でならない。謹んで冥福を祈りたい。

私は決してMichaelの信奉者ではないし,昔はChick Coreaの"Three Quartets"での演奏ぶりを毛嫌いしていたぐらいである。しかし,その後長くBreckerのレギュラー・ピアニストをつとめたJoey CalderzzoのBlue Noteレーベルからのデビュー盤のプロデュースぶりや,同作での控え目ながら熱い客演に感心してからは,随分と私も熱心にBreckerを聞くようになった。今となっては,数年前にDave Liebman,Joe LovanoとBreckerがテナー3本でNYCはBirdlandでバトルを繰り広げたのを見たのが最後になってしまったのは残念なことである。それも私は時差ボケでかなりの時間,居眠りをしていたのだから情けないこと甚だしい。後悔先に立たずの典型である。

そうした私がBreckerを追悼するならば,Brecker Brothersにしてはゆるいグルーブがたまらない"Blue Montruex"(Arista)のタイトル・トラックを選びたい。さすがに"Heavy Metal Bebop"では追悼できそうにないが,しんみりとするよりもこれぐらいの「乗り」があった方が,Breckerには相応しいように思う。

合掌。

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2007年1月16日 (火)

Eric Dolphyのソロだけで十分なアルバム

Dolphy_berlin_concert "Berlin Concerts" Eric Dolphy (Enja)

Recorded Live in Berlin on August 30, 1961

Personnel: Eric Dolphy(as, fl, b-cl),BennyBailey(tp),Pepsi Auer(p),George Joyner(b),Buster Smith(ds)

異能のプレイヤー,Eric Dolphyのベルリンのライブ音源をEnjaレーベルが発掘したものである。Dolphyと言えば,"Five Spot"か"Out to Lunch"か"Last Date"かというのが,一般的な評価であり,そのことに私も異論はない(但し,私としては"Out to Lunch"よりもはるかに"Far Cry"を愛聴しているが...)。

ではなぜここで敢えて本作をここで取り上げるのか。共演者がいかにイモであろうとも,Dolphyは独自の異空間を作り上げることを実証しているからである。本作を聞いてもらえばわかるが,ここでのDolphyと共演者とのギャップは一体なんだと思わせるほどレベルが違いすぎる。「並」のミュージシャンとDolphyを対比することで,Dolphyの真の異能ぶりを把握することができ,ミュージシャンの「松竹梅」をあからさまにするアルバムとして,これはこれで面白いアルバムである。

よって,本作ではDolphyのバスクラ・ソロで演奏される"God Bless the Child"が最も魅力的なのは致し方がないところである。Dolphyのソロは総じてレベルが高いが,やはり共演者に足を引っ張られているのは事実なので,作品全体としては星★★★という評価になろう。ラッパはせめてFreddie Hubbardあたりにして欲しかったし,コンピングのうるさいピアノはいなくてもよかったと言っては言い過ぎかもしれないが,私にとってはDolphyのソロだけ聞いていればよく,Dolphyが登場しない場面は,完全に聞き流してしまう作品である。

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2007年1月15日 (月)

Gil Evansの傑作

Priestess "Priestess" Gil Evans (Antilles)

Recorded Live at Saint George Church on May 13, 1977

Personnel: Gil Evans(p),Lew Soloff(tp),Ernie Royal(tp),Marvin "Hanninbal" Peterson(tp),James Knepper(tb),John Clark(fr-h),Howard Johnson(tuba),Robert Stewart(tuba),David Sanborn(as),Arthur Blythe(as),George Adams(ts),Pete Levin(key),Keith Loving(g),Steve Neil(b),Susan Evans(ds)

Miles Davisとの諸作におけるアレンジャーとしての名声に比して,ミュージシャンとしては「過小評価」の代名詞とも言うべきGil Evansであるが,そのGilがようやくスポットライトを浴びるようになったのは,NYCのクラブ,"Sweet Basil"において,毎週月曜日にセッションを展開するようになってからである。このSweet Basilにおける所謂Monday Night Orchestra(MNO)については,その活動は評価に値するものの,創造性という観点では徐々に力を失っていった(あるいはマンネリ化した)のは,Evansの年齢を考えれば致し方のないところである。

Gil Evansの最高傑作は私は"Public Theater"でのライブ盤2枚と信じて疑わないが,作品としてはややとっつきにくさがあることも事実である。そこで,MNO的なある意味での聞きやすさと優れたソロが同時に聞ける,より万人向けのアルバムとして,この"Priestess"を推奨したい。

本作はGil Evansの65歳の誕生日にNYCで収録したライブ盤である。プロデューサーはThe Band等を手掛けたJohn Simonというのは意外であるが,Simonはここにも収録されている"Short Visit"(ここにはGil Evans Orchestraも参加)が入ったDavid Sanbornの"Heart to Heart"のプロデューサーも務めていたので,その縁での制作となったのではものであろう。

本作での"Short Visit"でのSanbornのアルト・ソロも泣かせるが,本盤最高の聞き物は冒頭に収められたBilly Harper作のタイトル・トラック"Priestess"であると断言してしまおう。ここでのSanbornのアルト・ソロ及びLew Soloffのトランペット・ソロは長いGil Evansのキャリアの中でも,歌心,フレージング,放出されるエネルギーなど,全ての点で最上位に置いてよいソロである。こんな演奏を生で聞かされたらそれこそ悶絶ものであるが,あまりに彼らのソロが素晴らしいため,本当にアドリブかと疑いの目も向けたくなるような出来である。ほかの演奏も素晴らしいが,この"Priestess"一曲で本作は星★★★★★に値する。

本作はそもそもオリジナル盤が発売されるまで長年オクラ入りしており,初出は1983年頃だったと記憶している(私がNYCでMNOを目の当たりにして,目が点になったのも83年。今でもメンツを覚えているぐらいだ。)。こうした扱いを受けるところに,当時のGil Evansに対する過小評価がにじみ出ているが,更に情けないのが,このような素晴らしい演奏が永らく廃盤という事実である。日本のレコード会社には駄盤を紙ジャケット化して再発する暇があるなら,こうした作品を見直してちゃんと発売するべきだと言いたい(と思わず感情的になってしまった)。

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2007年1月14日 (日)

Michael Landauの裏リーダー作と言っても過言ではない

Dgarfield2005 "The State of Things" David Garfield & Friends (ESC)

Personnel: David Garfield(key),Michael Landau(g),Steve Tavaglione(sax),Allan Holdsworth(g),Eddie Van Halen(g),Jimmy Johnson(b),Vinnie Colaiuta(ds),Lenny Castro(perc) & More...

詳しいレコーディング・データが記載されていないが,LA界隈のフュージョン・シーンで活躍するミュージシャンが大挙登場するアルバムである。このアルバム,Michael Landauの裏リーダー作と言ってよいぐらい,ファンが期待するトーンでLandauがそれこそ「弾きたおしている」ものとなっている。リーダーのGarfieldには申し訳ないが,本作はLandauを聞くためのアルバムと私は位置付けている。

Michael Landauはセッション・ギタリストとして,数々の作品に貢献しているが,私が初めてLandauを見た(意識した)のは,1980年代(だったと思う)にBoz Scaggs,Joe Walsh,Mike McDonald等が代々木でジョイント・ライブをやったときのBozのバック・バンドのギタリストとしてであった。当時からSteve Lukather的なうまいギタリストだと思ったが,更に強烈な印象を持ったのが,Joni Mitchellのライブ・ビデオ"Refuge of the Road"での強烈なプレイぶりである。同作はJoniの映像作としても優れているが,とにかくLandauのはじけ方が凄まじいので,Landauファンは必見である。随分長い間,廃盤状態が続いていたが,現在はリージョン・フリーのDVDがAmazon等で安価で入手できるのがありがたい。

このCDでのLandauの弾きっぷりはそのJoniの映像作を彷彿とさせると言ってよいぐらいのもので,Landauのソロ・アルバムよりずっとよいようにも思え,いずれにしてもファンとしては必聴である。しかし,作品全体としては3曲挿み込まれるジャズ・スタンダード"Milestones","Naima","Nardis"がどうにも浮いているし,出来も大したことがないので,居心地が悪いこと甚だしい。どうせならロック・タッチの作品で統一したした方が,リスナーとしては嬉しかったであろう。と言うことで,Landauのギターには星★★★★☆ぐらいを与えてもいいが,作品全体としてはプロデュースの失策ゆえ,星★★★がいいところだろう。Landauのギターが素晴らしいだけに,何とも惜しい。

尚,本作はフュージョン作ゆえ,本来カテゴリーはジャズであるべきだが,Landauのプレイは完全にロックなので,カテゴリーもロックとした。

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2007年1月13日 (土)

シブいギタリスト,Ed Bickert

Ed_bickert_at_last "At Last" Ed Bickert (Mambo Maniacs)

Recorded Live at George's, Toronto, June 1975

Personnel: Ed Bickert(g),Don Thompson(b),Terry Clarke(ds)

Paul Desmondの晩年の諸作において伴奏を務めたことで知られるカナダ出身のギタリスト,Ed Bickertは決してメジャーになることのない渋いギタリストである。ジャズ・ギタリストには珍しく,フェンダーのテレキャスターで奏でられるそのサウンドを聞く限りは,それがソリッド・ボディのギターとは信じられないぐらいの柔らかい音を出している。BickertはConcordレーベルにも作品を残しているが,ほとんどが廃盤状態であるのも情けないが,こうした優れたギタリストがほとんど注目されることがないのは誠に惜しい限り。そうした中で,Suckvilleレーベルでの作品("At the Garden Party"が特に素晴らしい)や本作は比較的入手しやすいので,まずはこうした作品からEd Bickertの魅力に触れて欲しいものである。

本作はそのBickertが(多分)本拠地のトロントで録音したライブ盤であるが,ベース,リズムもカナダ人のトリオである。ベースのThompson,ドラムスのClarkeはJim Hallとも来日したコンビであるが,ここでの演奏もある意味Jim Hall的なインティマシーに溢れたものとなっていて素晴らしい。もとはベーシスト,Gene ParlaのPMレコードからの発売を前提に録音されていたものらしいが,長年のオクラ入りを経て,本作が発売されたのは,録音から30年を経た2005年であった。演奏そのものは地味な印象も強いし,スリルがどうこうという演奏ではないが,ジャズ・クラブで聞いたら,おいしく酒が飲めることが保証できるようなリラクゼーション満点の演奏と言ってもよいかもしれない。Ed Bickertに対するより高い評価を祈念して星★★★★☆とさせて頂こう。

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2007年1月12日 (金)

Brad Mehldauの入手困難盤(3)

Groundwork "Groundwork - Act To Reduce Hunger" Various Artists (Starbucks)

Recorded Live at the Orange County Performing Arts Center on December 4, 1999

Personnel: Brad Mehldau (p), on Track 8 "Paranoid Android" Only

本作は国連食糧農業機関による飢餓対策に対するベネフィット・アルバムとして,2001年に米国のスターバックスを通じて発売されたものである。おそらくはスタバの店頭でも販売されていたものと思うが,ネットでの注文に対しては,米国,カナダのみの配送が可能ということで,米国の友人に依頼してようやく入手したCDである。Brad Mehldauは上記の1曲のみの参加であるが,このほかにはEmmylou Harris,Madonna,Bll Frisell,Tom Waits,Youssou N'Dour,Moby,Daniel Lanois,Joe Henry,Sheryl Crow等のレア音源(リミックス,別テイク,ライブ等)が含まれているので,好事家には要注意のアルバムである。残念ながら,このCDはスタバのネット通販でももはや流通していないようなので,今後の入手はこちらもオークション・サイトをチェックする以外にはないなかなかの難物である。尚,このMehldauの音源であるが,後にWarnerからのプロモ盤"Deregulating Jazz"に収録されることとなり,音源としてのレア度は下がったし,プロモ盤を持っていれば,Mehldauのディスコグラフィー的には"Groundwork"は不要という話もあるが,上記のような理由によって,"Groundwork"の意義が下がることはない。コンピレーションしての作品の評価は難しいが,稀少度込みで星★★★★ぐらいとしておこう。

"Deregulating Jazz"に関しては,こちらもプロモ盤ゆえなかなかに入手は難しいが,eBayではたまに見かけることがある。こちらにもここでしか聞けないレア音源(放送録音)が含まれているので,"Deregulating Jazz"については改めて述べることとしよう。

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2007年1月11日 (木)

Yesが最も輝いた頃

Close_to_the_edge "Close to the Edge" Yes (Atlantic)

Personnel: Jon Anderson(vo),Bill Bruford(perc),Steve Howe(g, vo),Chris Scqire(b, vo),Rick Wakeman(key)

今となってはお恥ずかしい話だが,私がプログレの世界に足を踏み入れたのは中学生の頃に聞いたEL&Pの「展覧会の絵」とRick Wakemanの「ヘンリー8世の6人の妻」からである。その後,自らの嗜好はRick Wakeman経由でYesへと向かったわけだが,現在の「昔の名前で出ています」的なYesにはあまり食指を動かされない(とか言いながら,Rhinoから出た3枚組ライブ・アンソロジー等もつい買ってしまっている)が,若い頃は相当いれ込んでいたものである。そこで本日のお題はそのYesである。

Yesの黄金期はSteve Howe加入後の"The Yes Album"あるいは上記のメンバーが揃った"Fragile(こわれもの)"からというのが衆目の一致するところであるが,その音楽が最も高いレベルに達したのはこのアルバム(邦題「危機」とは付けも付けたりである)と言ってよい。優れた作曲能力と高い演奏能力,鉄壁のアンサンブルとコーラス・ワークがRoger Deanのアート・ワークとも相俟って,ロックの総合芸術とでも呼びたい傑作である。よって,評価も星★★★★★以外にはありえない。

LP時代にはA面全てを占めた"Close to the Edge",B面の"And You And I",更には最後の"Siberian Khatru"まで緊張感を保った演奏が繰り広げられるのが凄い。ある意味ではここまで完成度を高めてしまうと,次はどうなるのかと不安になるが,Yesはその後,ある程度の水準は維持しつつも,本アルバム当時の輝きを取り戻すことはなかったというのが事実であろう。(とは言え,私はRick Wakemanが一度脱退後,復帰して制作した"Going for the One:究極"も相当好きだが...。)

現在,本作はRhinoレーベルからリマスタリングを施し,ボーナス・トラックを付したバージョンがリリースされている。現在はこちらが決定版となろうが,リマスタリングによる音質向上はいいとしても,別テイクやリハーサル版の演奏をオマケにつけるのは,ファンとしては嬉しいのは事実であるものの,本作については蛇足のようにも感じる。まぁ聞きたくなければ,聞かないでスキップすれば済むことだから問題ではないが,それほどまでにこのアルバムの完成度は高い。

ちなみに,本作のプロデューサーはEddie OffordとYes自身のコンビであるが,後にEddie OffordがLevon Helm & RCO Allstarsの傑作1stアルバムのプロデュースをしているのには,Yesとの音楽の落差の大きさに思わず笑ってしまった(あくまで余談だが...)。

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2007年1月10日 (水)

チューリッヒの奇跡:Corea / Burtonデュオの最高傑作

Corea_burton_live Chick Corea and Gary Burton in Concert, Zurich, October 28, 1979 (ECM)

Recorded as noted in the title.

Personnel: Chick Corea(p),Gary Burton(vib)

世の中に奇跡的名演というものはいくつか存在すると思うが,1979年10月28日,スイスはチューリッヒのLimmathausにおいて実況録音されたこの2枚組LPこそ,Chick Corea~Gary Burtonの名コンビが生み出したジャズ界の奇跡の一つである。このコンビ,ECM第一作の静謐な"Crystral Silence"や躍動的な第2作"Duet"でも素晴らしい演奏を聞かせてくれたが,このライブの前にはその2枚もかすんでしまうほどの超弩級の傑作であり,星★★★★★では足りないぐらいのものである。

現在発売されているCDでは,収録時間の関係からLPのC面に相当する"I'm Your Pal / Hullo, Bolinas"と"Love Castle"が削除されているのが何とも痛い。これらが各人のソロ・チューンということでそのような扱いをされているものと思うが,この2曲も味のある名演であることを考えれば,この判断は決して正しいとは言えない。特にCoreaがソロで演奏する"Love Castle"は”My Spanish Heart"版の演奏よりも遥かに素晴らしいものと感じるリスナーは私だけではないはずである。よって,この演奏はLP(できればドイツECMオリジナル盤)で保有するのが現在でも正しい姿だと思う。

もちろん,デュオで展開される演奏はどれも素晴らしいが,美とスリルを同時に体現した"Crystal Silence"にはため息が出る思いである。この後,このデュオの演奏は弦楽四重奏との共演の"Lyric Suite for Sextet"と"Native Sense",更にはCoreaの"Rendezvous in New York"で1曲聞けるだけだが,このライブを上回る演奏は生れていない。本作はジャズ史上に残る名デュオの最高傑作と断言してよい作品であるとともに,今後も彼らがこれを上回る演奏を残す確率は非常に低いと言えるだろう。

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2007年1月 9日 (火)

Derek Trucksは天才である

Derek_trucks "Live at Georgia Theatre" Derek Trucks Band (Sony Music)

Recorded in Athens, GA on October 23, 2003

Personnel: Derek Trucks(g),Todd Smallie(b, vo),Yonrico Scott (ds, perc, vo),Kofi Burbridge(key, fl, vo),Mike Mattison(vo),Count M'Butu(perc)

最近はEric Claptonのツアーにも参加し,何かと話題のDerek Trucksであるが,元々注目を浴びたのは1999年にAllman Brothers Bandに参加してからのことであろう。しかし,このDerek Trucksが自己名義のバンドを結成したのは1994年,本人が何と15歳のときというのであるから恐れ入るしかない。本アルバムはDerek Trucks Bandの初のライブ・アルバムであるが,本アルバムに収められたスライド・ギターを聞けば,まさに天才と呼ぶべき恐るべき才能を示している。近年,スライドと言えばSonny Landrethの牙城であったが,音楽性の幅広さやギタリストとしての腕はDerek Trucksの方が上という評価が妥当だろう。

尚,このアルバムは日本国内では全7曲の1枚ものとしてリリースされているが,Derek Trucksの演奏を存分に楽しみたい向きには,海外版の2枚組(全13曲)を推奨する。こうした短縮版が国内で発売されたのは,日本でのポピュラリティがまだまだだったからということもあろうが,この才能を過小評価してはならないだろう。ClaptonがDuane Allmanの役割に近いものをライブで担わせているのも,その才能を評価して上でのことと考えるべきである。

2枚組アルバムとして,演奏にやや冗長感があることは否めないが,これはこれで十分に楽しめるアルバムである。将来の更なる飛躍に期待も込めて星★★★★。

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2007年1月 8日 (月)

熱く燃えるJohn Tropea Band!

John_tropea "Live at Mikell's" John Tropea Band (Video Arts Music)

Recorded at Mikell's on April 22-24, 1980

Personnel: John Tropea (g),Will Lee(b, vo),Steve Gadd(ds),Rick Marotta(ds),Don Grolnick(key),Richard Tee(p),Chris Palmaro(key),Jimmy Maelen(perc),David Spinozza(g),Neil Jason(b),John Faddis(tp),Alan Rubin(tp),Randy Brecker(tp),Sam Burtis(tb),Dave Taylor(tb),George Young(reeds),Lou Marini(reeds),Lou Delgato(reeds),Rony Cuber(reeds),Tony Price(tuba),Lani Groves(vo),Diva Gray(vo),Gordon Grody(vo)

いやはやこのメンツを見よという感じのオールスターが,今はなきマンハッタンのアップタウンにあったMikell'sに集結した際のライブである。オープニングのMCは何とJohn Belushiが行っており,お祭りムードも満点である。このMikell'sというクラブは以前,Stuffが本拠としたことで有名な店であり,多くのスタジオ・ミュージシャンたちが,スタジオ・ワークから解放されて,自らの音楽の表現の場としてここで演奏していたが,本盤は参加メンバーの数からしても,そうした機会とはやや意味合いの異なるレコーディングを目的としたスペシャル・ギグだったと言えると思う。編成やメンツからすれば,拡大版"Saturday Night Live Band"という趣があるとも言えるだろう。

それにしても,Gadd~Marottaというツイン・ドラムスが強烈極まりない(Grolnick作の"Can't Have It All"や"Muff"ではほとんどStuff化している)が,そこにTropeaを中心とするプレイヤーが熱いソロを展開しており,ブ厚いホーン・セクションとも相俟って,フュージョン好きには堪えられない「燃える」アルバムに仕上がっている。ホーン・プレイヤーにもソロ・スペースが与えられるとともに,ライナーにはきっちりソロイストも記載されており,一部の曲ではTeeやSpinozzaをゲスト的に迎えていることからしても,これがリリースを前提に制作されていたものであることがわかる。なぜこのアルバムが世に出るまで15年近くを要したのかは今もって不思議と言わざるをえない。

やはりここではアップ・テンポで飛ばす曲により大きな魅力を感じるが,Deodato作の"Dreams"のような美しい曲も見逃しがたい魅力を放つ。スタジオ・ミュージシャンたちのレベルの高さを実証する音源である。今日のスムーズ・ジャズとは明らかに一線を画する音楽として評価し,星★★★★☆。

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2007年1月 7日 (日)

Aldo Romanoが60~70年代ポップに挑む

Flower_power "Flower Power" Aldo Romano/Rémi Vignolo/Baptiste Trotignon (Naive)

Recorded on April 26, 2006

Personnel: Aldo Romano(ds),Rémi Vignolo(b),Baptiste Trotignon(p)

上記のトリオが1960年代から70年代のポピュラー・ソングをジャズ化したアルバムであるが,ジャケットからしてサイケな雰囲気が横溢(中ジャケの3人のファッションを見よ!)しているものの,演奏は決してサイケデリックなものではなく,コンテンポラリーなピアノ・トリオ・アルバムとして評価すべき作品である。

選曲は多岐に渡っており,冒頭のMichel Polnareff (!)から,Murray Head(ノーランズ(!!)がカバーした"Say It Ain't So, Joe),Serge Gainsbourg,Robert Wyatt,Pink Floyd,Led Zeppelin,James Taylor,Bob Dylan,Simon & Garfunkel,Léo Ferré,Elton John,Doorsとはっきり言って無茶苦茶なのだが,そうした曲をピアノ・トリオ・アルバムとしてある程度の一貫性を保って仕上げているのは立派。しかし,曲により,選曲に無理を感じさせる(と言うか,あまりにもベタな)ものもあり,出来,不出来があるのは致し方がないところ。概して欧州系の曲の方が出来がよいように感じさせるのは,このメンツでは仕方のないところとも言え,評価としては星★★★☆というところか。

本作での注目はピアノのBaptiste Trotignonということになるが,Trotignonと言えば,同じNaiveレーベルから発売され,後に澤野商会からもリリースされたジャケの緑が印象的な"Fluide"で輸入盤好きを喜ばせたが,本作でも随所で美しいフレージングは健在ながら,トータルな意味では"Fluide"の方が優れているように思う。Zeppelinの"Black Dog"の激しい打鍵はBaptisteの新しい一面とも言えるが,"Fluide"的なタッチを求めるリスナーは思わずのけぞってしまうこと確実であろう。

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2007年1月 6日 (土)

Pat Methenyの最高傑作

Travels_3 "Travels" Pat Metheny Group (ECM)

Recorded between July and October, 1982

Personnel: Pat Metheny(g),Lyle Mays(ley),Steve Rodby(b),Danny Gottlieb(ds),Nana Vasconcelos(perc, vo)

長年Pat Methenyの音楽に親しんできた人間にとって,Patの最高傑作は何かというと意見が分かれるのは承知の上で,私のとっての最高傑作という意味では,ECMレーベルでのライブ盤,"Travels"を推したい。

本盤での白眉は冒頭に収められた"Are You Going with Me?"だと断言してしまうが,お馴染みのイントロから導かれるLyle Maysのソロを聞くだけでため息がもれるほどの名演である。最初から譜面におこしてあったのではないかと思わせるLyleのソロを引き継いで,熱を帯びた演奏が展開されており,この一曲だけでノックアウトされること請け合いである。

そのほかにも初期を代表する"Phase Dance"や"San Lorenzo"がオリジナルより早めのテンポで演奏されていて大いに楽しめるほか,本作が初出となった美しい"Farmer's Trust"や現在のライブのアンコールで演奏されることも多い"Song for Bilbao"等,現在のPat Methenyの原点とも言うべき演奏が収められている。近年"Bilbao"が演奏されるときには,本作の"Straight on Red"でのパーカッションのパターンが挿入されており,長年のファンの笑みを誘うが,その元ネタが本作にあることを知れば,更に楽しめると言えよう。

また,ここでNanaのパーカッションとヴォーカルが絶妙のアクセントとなっている(少なくとも"Offramp"よりはるかに素晴らしい)が,後のPedro Aznarの加入により,NanaがPat Metheny Groupに及ぼした好影響(例えばブラジリアン・リズム)が過小評価されているのは残念である。

いずれにしても,曲,演奏ともに優れているのに加え,前期のPatのキャリアを総括した「ベスト盤」的な意味合いも持ちうる傑作であると評価したい。当然星★★★★★を謹呈する。

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2007年1月 5日 (金)

Lee Ritenourのダイレクト・カッティング盤

Gentle_thoughts "Gentle Thoughts" Lee Ritenour & His Gentle Thoughts(JVC)

Recorded in North Hollywood, CA, May 1977

Personnel: Lee Ritenour(g),Ernie Watts(sax, fl),Dave Gruisin(key),Patrice Rushen(key),Anthony Jackson(el-b),Harvey Mason(ds),Steve Forman(perc)

唐突ではあるが,Lee Ritenourである。日本のJVCレーベルがダイレクト・カッティング(DC)盤と称して,音の良さを強調して発売したLee Ritenourのシリーズ第1弾である。DC盤はこの後"Sugarloaf Express"等全部で4から5作品制作されたと記憶しているが,その中でも最高傑作と呼んでいいのが本作品であろう。本作の白眉は超絶的なスピードでユニゾンが展開される"Captain Fingers"であるが,後にDVD作"Overtime"として再編されたGentle Thoughtsを見ると,Anthony Jacksonが指弾きであの高速フレーズを弾いているのがわかり,目が点になる思いであったが,本作の演奏は更にスピードが速いのが凄い。

DC盤は直接アルバムのカッティングを行う方式なので,演奏の失敗が許されないというところで,「プレッシャーを感じさせず」云々という批評もあったが,実は本人たちはおそらくそんなことは微塵も感じていなかったのではないか?それほどの確実なテクニックを持ったプロ集団の「仕事」と言わざるをえない。

"Captain Fingers"以外にも,Earl Klughやナベサダでお馴染みの"Captain Caribe"やDave Grusinの佳曲"Chanson"等も収録されており,全編を通じて楽しめる本CDは「クロスオーバー」の聖典と言っては大げさであるが,ある意味,一時代を象徴する音楽となっており,同時代人の私にとっては誠に懐かしいものである。ジャケのセンスが最悪なのはいただけないが,音楽としては今聴いても十分楽しめるものとなっているので,星★★★★には十分相当する。いずれにしても,Ritenourは非常に平均点の高い(愚作の類がない)ミュージシャンとして,どのアルバムもそれなりに楽しめるという点で,より評価してよいように思う。単なる「杏里のダンナ」では決して終らないミュージシャンである。

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2007年1月 4日 (木)

Brad Mehldauの入手困難盤(2)

Joshua_redman_france_musique_1

"Joshua Redman Live" (Warner Brothers Promotional Copy)

Recorded on January 4(track 3/4) and 7(track 1/2), 1994

Personnel: Joshua Redman(ts),Brad Mehldau(p),Larry Grenadier(b),Brian Blade(ds)

Brad Mehldauの入手困難盤シリーズ第2弾として,Joshua Redmanのプロモーション盤を紹介しよう。収められているのは,パリのVirgin Megastoreにおける当時のJoshuaのレギュラー・クァルテット(Redman,Mehldau,Larry Grenadier,Brian Bladeという今にして思えば凄いメンツである)によるライブ2曲と,ラジオの放送音源と思われるBradとJoshuaのデュオ2曲である。特にデュオというセッティングでの演奏は珍しいところで,Bradのピアノを楽しめるという点ではこちらの方がはるかにいい。演奏としては相応に楽しめるが,そこはプロモ盤ゆえ,それほどの完成度を求めるべきものでもないが,オ