2008年7月 7日 (月)

今年で結成47年!New Orleans Rascals1995年の記録

Nor "New Orleans Rascals with Topsy Chapman" New Orleans Rascals

私がこのブログを始めて以来初のディキシーランド・ジャズである。私の亡くなった父は晩年はモダンな演奏も好んで聞くようになったが,まだ若い頃はモーツァルト以外ではディキシーランド・ジャズを聞いていた。一方の私はBeatles/Carpenters→ハードロック→プログレ→フュージョン→モダン・ジャズという感じで音楽を聞いてきたので,ディキシーランド・ジャズとの接点はほとんどない。保有しているアルバムもGeorge Lewisの"Jazz at Vespers゛を大昔にLPで買ったきりで,ここ暫く聞いたことがないような状態である。よって,私はこうした音楽を語る資格があるかと言うと,これは明らかにない。

それでもって,そんな私がなぜこのアルバムなのよというのは当然の疑問である。このアルバム,友人の美人弁護士からのいただきものである。New Orleans Rascals(以下NORと略す)は1961年(!)に結成された日本で屈指のアマチュア・バンドであるが,ここでクラリネットを吹く河合良一氏はその美人弁護士の伯父上であり,そんな縁もあってのご紹介である。

それにしても1961年結成で,現在も活動中と言うのがNORの凄いところである。このアルバムはそのNORがヴォーカルにTopsy Chapman(もとはゴスペル系らしい)を迎えての95年のライブ盤であるが,久々にこうした音楽を聞いてついついなごんでしまった私である。このゆったり感は,ストレスフルな生活や日頃の憂さをしばし忘れるには結構効用があるのではないかと思ってしまった次第である。このアルバムではChapmanのボーカルの録音がオフ気味なのがちょいと惜しいが,それでもなごみ感十分の演奏は楽しめる。それにしても河合氏のクラの音,素晴らしいねぇ。入手経緯もあるので採点は控えるが,ちょっと毛色は違うものの,本盤を聞いて,Eddie Condonのライブ盤を久々に聞きたくなってしまった私である。

いずれにしてもここまできたら当然NORはゴールドジュビリーを目指して頑張って頂きたいものである。私の同僚のやぎさんも「放し飼いトリオ」というバンドで活動中であるが,アマチュア・バンド恐るべしと言っておこう。

Recorded Live at 伊丹アイフォニックホール on November 10, 1995

Personnel: New Orleans Rascals【志賀奎太郎(tp),福田恒民(tb),河合良一 (cl),尾崎善康(p),川合純一(bj),石田信雄(b),木村陽一(ds)】 with Topsy Chapman(vo)

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2008年7月 6日 (日)

Karl-Martin Almqvist:スウェーデンの新主流派?

Karlmartin "Stretching a Portfolio" Karl-Martin Almqvist Quartet (Prophone)

最近は皆さんのおかげ(?)で欧州ジャズを聞く機会が増えてきたが,何の情報もなく自分でCDを選んで購入するのはある意味ギャンブルに近いものがある。CDショップの店頭でたまたま出くわしたこのアルバムに関しても私が得られた情報は,スウェーデンのテナーによるワンホーン・クァルテットで,レーベルが以前買ってたいへんよかったPeter Asplund盤と同じProphoneということだけである。ジャケットも何だかなぁというものだが,まぁ自分の審美眼を磨くための投資だと思って買ってみた。

結果はどうか。これは悪くない。演奏全体のレベルは結構高い。さすがスウェーデンである。響きはクールな新主流派的な感じであり,暑苦しさはほとんど感じさせない。逆に言えば高揚感には乏しいとも言えるのだが,そこはスウェーデンだからこういうものだろう。

本作では多くがリーダーの自作で占められているが,収められている曲の個性(作曲そのもの)が多様で,どういう指向なのかよくわからない部分もある。例えばミディアム・ファストで演じられる゛Survival Instincts"とそれに続くメランコリックな゛Home゛,さらにはその次の゛Two Step゛を聞いて,同じ人の曲と思う人がどれだけいるだろうか。ほかにももう少し書きようがあったのではないかと思わせる曲もあり,演奏レベルと作曲能力は必ずしも合致しないと感じられる部分もある。

しかしである。トータルとしては高い演奏能力は実証されているし,これはこれで楽しめるアルバムではあった。星★★★☆。でも私にはこの世界での修行がまだまだ足りないなと思ってしまった次第である。よくよく調べてみると,この人,中古で拾った西山瞳のライブ盤に客演していて,初体験ではなかったのであるが,西山のアルバムがあまりピンとこなくて,完全に失念していた次第。あきませんな。

Recorded on February 11 & 12, 2008

Personnel: Karl-Martin Almqvist(ts), Jonas Stholm(p), Filip Augustoson(b), Sebastian Voegler(ds)

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2008年7月 5日 (土)

山下洋輔の保守的25周年記念盤

Ways_of_time ゛Ways of Time" 山下洋輔(Verve)

昨日に続いて山下洋輔である。このアルバムは最初のフリー・ジャズ・トリオ結成から25年を経過したのを記念して,お馴染みの曲を再演したアルバムである。演奏は悪くないのだが,洋輔にしてはかなり保守的なサウンドで,爽快感さえ感じさせるよりフリーなアプローチを期待する私のようなリスナーは肩透かしを食らう演奏となっている。

いきなり幕開けから長ーい名前を音楽化したものとしては「寿限無」に続く第2弾゛Picasso゛である。ここでの客演するJoe Lovanoの演奏からしても,結構コンベンショナルではじける感覚に乏しいし,そのほかの曲でもフリーというよりも真っ当なモダン・ジャズという感じである。それがいいか悪いかと言えば,山下洋輔と思って聞かなければそれはそれでいいのだが,やはりどうも私には居心地が悪い。肘でもてのひらでもいいからもっと鍵盤を叩いてくれーと思うのは私だけではあるまい。

ここでのコアを形成するニューヨーク・トリオそのものが,結成以来そんなにフリーという感覚を放出してこなかったが,ここまで来るとかなり普通だなぁという気がしてしまうのである。上にも書いたとおり,演奏自体は決して悪くないのだが,これは私が山下洋輔に期待するものではないというところがこのアルバムの決定的な問題である。ファンとは勝手なものだが,イメージが違うのだから仕方がない。山下洋輔は25周年記念ながら敢えてリユニオンのようなかたちは取らなかったと語っているが,それはそれでまぁ別に悪いことではない。しかし,彼には悪いが,山下洋輔の「フリー・ジャズ」のファンとしては星★★が精一杯。フラスコ・レーベルのアルバムでも聞き直すとするか。

Recorded on May 31and June 1, 1994

Personnel: 山下洋輔(p), Cecil McBee(b), Pheeroan AkLaff(ds), Joe Lovano(ts), Tim Byrne(as, bs)

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2008年7月 4日 (金)

山下洋輔が当時の若手を従えて

Playground 「プレイグラウンド」山下洋輔ニュートリオ(Verve)

私にとって山下洋輔と言えば,今も昔も゛Montreux Afterglow"なのだが,実は学生時代には大学祭に呼んでしまったぐらいの結構なファンである。あるいは「であった」と過去形で言うべきかもしれない。現在の山下洋輔はフリー度が低下し,かなりコンベンショナルな感じが強くなっているが,それでも燃えるグランドピアノを演奏する「ピアノ炎上2008」を開いたりと相変わらずのお茶目なところも持った人である。

その山下洋輔が90年代前半に当時の若手を従えて結成したニュートリオによるアルバムだが,このトリオでのアルバムは本作だけだと思う。しかし,一作ではもったいなかったのではないかと思わせるようなスピード感溢れる作品(ライブでもこのトリオの演奏は爽快なスピード感があった。)となっていて,私は結構この作品が気に入っている。

リズムを担う小松康,堀越彰のご両人はロック・ビートもいけるかなりのテクニシャンで,山下とのコンビネーションも悪くない。制作サイドでは彼らだけではちょっと弱いと考えたのか,管も何曲かで加わるが,トリオで勝負するという選択肢もあったように思える。しかし,本作の中で,最も聞き応えがあるのは「おじいさんの古時計」なので,まぁその選択は正しかったということになろう。この「古時計」であるが,まさに"Montreux Afterglow"の"Ghost゛へのオマージュとも言うべき演奏である。ここでの菊地は゛Ghost゛において坂田明が聞かせた「赤とんぼ」の引用を意識していることは明らかで,山下も゛Ghost゛同様のドシャメシャ度で受けて立っているのが微笑ましい。

これに比べるとほかの曲はやや大人しく聞こえるが,先にも書いたとおり,演奏のスピード感は十分楽しめると思う。今やこのアルバムも廃盤というのは惜しいような気がするが,中古盤市場ではかなりの安値で出回っているので,入手はそれほど難しくあるまい。星★★★☆。

Recorded on October 23 & 24, 1992

Personnel:山下洋輔(p),小松康(b), 堀越彰(ds),林栄一(as),菊地成孔(ts)

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2008年7月 3日 (木)

Al Green:これぞソウルの王道である

Al_green ゛Lay It Down" Al Green(Blue Note)

このゆるやか,あるいはたおやかと言ってもよいグルーブに満ちたアルバムを聞いて,私はまさにこれぞ「王道」と思ってしまった傑作アルバムである。

Blue NoteでのAl Greenと言えば,2003年の"I Can't Stop゛もよかったが,このアルバムは適材適所というか,Al Greenへのリスペクト全開のゲストたちの好演もあって,私としてはそれを上回る出来になったと言ってしまおう。だって,Anthony HamiltonにCorrine Bailey RaeにJohn Legendだ。みんな私が次代を担うソウルの逸材と思う人たちばかりである。その彼らが全身全霊でサポートしているのだ。悪いはずがないではないか。

難しいことは考える必要はない。Al Greenの声とこの素晴らしいソウルのグルーブがあれば,私はしばらくほかのソウルのアルバムは必要としない。繰り返す。これこそ「王道」である。今年のベスト・アルバム入り間違いなしの超傑作。星★★★★★以外にはありえない。たまらん。

Personnel: Al Green(vo), Anthony Hamilton(vo), Corrine Bailey Rae(vo), John Legend(vo), Chalmers "Spanky" Alford(g), James Poyser(org, p, key), Adam Blackstone(b), Ahmir "?uestlove" Thompson(ds), Jaguar Wright(vo), Mercedes Martinez(vo), Neal Sugarman(ts), Ian Hendrickson-Smith(bs), David Guy(tp), Randy Bowland(g), Owen Biddle(b), Gabriel Roth(b), Homer Steinweisee(ds), Danny Sadowick(perc), Larry Gold(strings arr)

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2008年7月 2日 (水)

Pendulumボックスのディスク3:苦行を終え,昇天す

Pendulum 今日はPendulumボックスのディスク3である。このディスクも未発表曲ばかりが4曲である。演奏のトーンはディスク2と全然変わらない。本当に見事なまでに同じである。本ディスクも1曲当たりの演奏時間が全部17分を越え,どれもが相当のハイ・テンポで演じられている。ディスク2を評して私は「若気の至り」と書いたが,その印象はここでも変わらない。"Blue Bossa゛や゛Well You Needn't゛でここまでやるかという印象である。

このディスク3全編を聞いてみて,このアルバムの頃はDave LiebmanとRandy Breckerにかなりの実力差があるように感じるのはきっと私だけではあるまい。ここでのBreckerはやや荒削りに過ぎるというきらいがあって,ちょっと微妙である。その一方,Liebmanはいくつか危うい局面もあるが,かなりスタイルとして完成されていることは明らかであろう。そのLiebmanの気合がピークに達するのが終曲゛Impressions゛であろう。Brecker抜きで演奏が始まり,Liebmanソロはクァルテット形式から,サックスとドラムスのデュオ形式に突入するというのはある意味では予想どおりというか,ベタな展開であるが,それでもこの演奏を聞いて燃えないジャズ・ファンはいるまいと思ってしまう。

私がこの未発表音源ディスク2枚を聞き通すにはかなりの体力を必要とし,我が同僚,やぎさんが言うとおり,苦行のような感もあったわけだが,この"Impressions"を聞き終えて昇天である。これだけでも私は「許す」と言いたい。やはり買うだけの価値はあった。この曲によりちょっと甘めで星★★★★とするが,また同じことを言ってしまおう。このボックスが出たことこそに意義があるのである。よって,ボックスとしては当然星★★★★★となる。間違いなく年末にはベスト・リイシューとして一票を投じさせてもらおう。

それにしても,こうして未発表音源を聞いてきて,オリジナルの゛Pendulum゛がいかにベスト・テイクを集めたものであったかが強く感じられるという別の意味での収穫もあった。オリジナルのプロデューサーであるJohn Snyderの審美眼は極めて正しい。まさしく慧眼である。

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2008年7月 1日 (火)

Daniele Scannapieco:やはりラテン系は熱いのだ

Daniele_scannapieco_2 "Lifetime" Daniele Scannapieco (Picanto)

私のブログのお知り合いの皆さんは欧州ジャズに造詣が深い方ばかりで,私のようにどちらかというと聞く音楽が米国系が主で,欧州系はECMレーベルが中心のような人間にとっては,ほとんどの場合,皆さんがアップされている記事が私のアルバム購入時の決め手となっている。このアルバムも皆さんが盛んに記事にされているのに影響されて購入したものだが,同じレーベルから出ているDominique Di Piazzaは買ったものの,完全に見過ごしていたアルバムである。結果はどうだったか。やはり「吉」である。

不勉強にして私はDaniele Scannapiecoというミュージシャンについては初耳であった。実は私にこのアルバムの購入を決めさせた大きな要因がStefano Di Battistaの参加である。ライナーをよくよく見ると,全9曲中7曲の作曲にDi Battistaが関わっており,これはScannapiecoとDi Battistaの双頭アルバムと言ってもよいように思えてきてしまうし,演奏でもDi Battistaはこうでなければならんというような演奏を展開していて,私は「おいおい,自分の名義のアルバムよりいいのではないか」と思ってしまったぐらいである。

私は欧州ジャズはその地域毎に音楽の特性に違いがよく出ているように考えている。造詣の深い方々には怒られてしまうかもしれないが,誤解を恐れず極めて大雑把に言えば,スウェーデンは透徹,ノルウェーは(エレクトロニクスも取り入れた)ややコンテンポラリーな感じ,英国は完全フリーかモダン・トラッド,フランスはちょっとひねくれた音楽といったところであろうか。その中で,イタリアはラテン系らしい特に管が入ると熱く燃えるハード・バップ的演素が多いように思う。このアルバムも例外ではなく,冒頭から思わず乗せられてしまうような演奏である。大体私が好きなイタリア系ジャズはこの手のものか,Enrico Pieranunzi系美的世界のどちらかである。ということで,このアルバムも私の好みにジャスト・フィットということで非常に楽しめた。

で,全然リーダーのScannapiecoについて触れていないので最後に書いておくと,私はこのテナーの音色が好きである。柔らかい音色とテクニックも十分と思わせるフレージングのギャップが楽しめる。しかし,この音色ゆえにメカニカルという印象を与えないところが気に入った。やはり欧州ジャズは奥が深いと改めて思った次第である。星★★★★☆。以前,スウェーデン・ジャズ恐るべしと書いたが,イタリア・ジャズもまた同様。もう少し勉強せねば。

ということで,このアルバムは単体としても楽しめるが,Stefano Di Battistaのファンは見逃してはならない好アルバムである。それにしても,なんで録音がパリなのかねぇ(録音日はデータなし)。

Personnel: Daniele Scannapieco(ts), Stefano Di Battista(as, ss), Flavio Boltro(tp, fl-h), Julian O. Mazariello(p, org), Dario Rosciglione(b), Andre Ceccarelli(ds), Bernard Arcadio(p)

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