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2016年おすすめ作

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2018年1月19日 (金)

昨年12月に観たライブがよくて,今更ながらJon Cowherdの"Mercy"を購入。

"Mercy" Jon Cowherd(ArtistShare/Blue Note)

Jon_cowherd昨年12月のNYC出張時に,たまたま観ることができたJon CowherdのMercy Projectであるが,その時の演奏が非常にタイトで素晴らしいものであった(記事はこちら)ので,そのもととなったこのアルバムが猛烈に気P,出張中に発注したものがようやく到着した。

アルバム自体は2013年にリリースされたもので,随分と時間が経っているが,それにしてもなかなかのメンツで,ある意味,John PatitucciのElectric Guitar Bandと兄弟みたいな編成である。いずれにしても,よくよく調べてみれば,このアルバムからギターをNYC同様,Steve Cardenasに代えたバンドで来日もしていたんだねぇ。このメンツだったら行きたいと思ったはずだが,そうしなかったのはなぜなのかと思って,当時のブログを確認してみると,彼らが来日した14年の2月にはAaron Parksのソロと,Roy Hargroveのビッグバンドを観に行っている。さすがに当時は月3本というのは...と思っていたに違いないが,今の私なら絶対行っている(笑)。観に行っておけばよかったなぁと思っても後悔先に立たず。

そして,このアルバムであるが,Brian Blade Fellowshipのような感じの曲もありながら,Fellowshipほどはアメリカーナってほどでもない。しかし,曲は結構粒ぞろいで,しかもこのメンツであるから,クォリティの高い演奏は大いに楽しめる。こういう演奏は極力リアルタイムで聞いておかねばならんと反省してしまった。まぁ,このジャケは何とかならんものかと思えるが,音楽ははるかに趣味がよい(爆)。強烈なダイナミズムのようなものは感じないが,コンテンポラリー・ジャズの一つの方向であることは間違いないだろう。星★★★★。

尚,本作はなかなか入手は容易ではないかもしれないが,送料さえ払えば,今でもArtistShareのサイトで購入は可能である。

尚,録音された年が記載されていないが,リリースのタイミングを考えるとおそらく2012年ということにしておこう。

Recorded on December 12-14, 2012

Personnel: Jon Cowherd(p, key), Bill Frisell(g), John Patitucci(b), Brian Blade(ds)

2018年1月18日 (木)

Art Garfunkelの"Watermark"に関する逸話。

"Watermark" Art Garfunkel(Columbia)

Watermark私はArt Garfunkelが結構好きだが,アルバム単位で言うと"Angel Claire"と"Scissors Cut"が好き過ぎて,ほかのアルバムはそれほどプレイバックする機会は少ないというのが実態。むしろほかのアルバムを聞くよりも,ベスト盤を聞いている方が多いかもしれない。

このアルバムに関しては基本的にArtieと相性のよいJimmy Webbの曲がほとんどを占めるということで,大いに期待できるものだったはずだが,曲のクォリティが思ったほど高くないのが意外というか,ちょいと痛い。まぁ,このアルバムにおいて,ひと際目立っているのはPaul SimonとJames Taylorと共演した"(What a) Wonderful World"ってことになるだろうが,Jimmy Webbの曲ではないので,ほかの曲と明らかにテイストが違う。また,この曲がオリジナル・プレスには入っていなかったというから驚きである。

そのオリジナル・プレスに入っていた曲が"Fingerpaint"という曲だが,これがYouTubeで聞いてみると地味。しかもオリジナルLPのB面の曲順は現在の並びと全然違っている。ということで,確かにセールス的には"(What a) Wonderful World"があるかないかで全然違うだろうなぁとは思わせる。こういうのはこのアルバムだけではなくて,"Scissors Cut"でも行われたが,"Scissors Cut"の曲変更は私は明らかに失敗で,オリジナルこそが"Scissors Cut"のあるべき姿と思っている。それに比べれば,まぁこっちはまだ許せると思うのは差し替えられた"Fingerpaint"が決定的な名曲,名演ではないということがある。まぁ,それでも貴重な音源であることは間違いなく,これが収録されているオリジナル盤はそう簡単には見つからないだろうから,ここにもYouTubeから音源を貼り付けておこう。

もう一つ,このアルバムには重要なポイントがある。このアルバムで私が一番いいと思っているのは"Mr. Shuck'n Jive"であるが,ここにPaul Desmondのアルト・サックスが入っていることは,長年のPaul Desmondファンの私としては見逃してはならない事実なのだ。なぜならば,これがPaul Desmondのラスト・レコーディングだからだが,まさに誰がどう聞いてもPaul Desmondと言うべきアルトが聞ける。しかもこういう泣ける曲での出番というのが素晴らしい。

アルバムとしては星★★★☆ぐらいでいいと思うが,いろいろな逸話が出てくるアルバムということになるなぁ。

Personnelは参加ミュージシャン多数なので省略するが,Jimmy Webbが全面的にキーボードを弾いていたり,ゲスト・ミュージシャンも多彩である。

2018年1月17日 (水)

Michael Breckerの非公式ライブ盤を久しぶりに聞く。

"The Michael Brecker Band Live"(Jazz Door)

_20180107Jazz Doorというのは不思議なレーベルであった。おそらくは放送音源をCD化して販売してしまうのだが,ブートまがいとわかっていても,結構珍しいなぁと思わせる音源があって,ついつい買ってしまうという人が多かったのではないか。今でもこういう商売はHi Hatレーベルに受け継がれていて,決してなくならないところに,根強いニーズってのがあるんだろうとうかがわせる。私もなんだかんだ言って何枚か保有している。これもそうした一枚。

これを購入したのはメンツが強力であるからにほかならないが,Michael BreckerがまだEWIを吹いている頃の演奏で,今にして思えば,私にとってはMike Sternが入っていることがやはり大きい。冒頭はいきなりマイキーのアルバム"Time in Place"から"Gossip"である。アルバムでもMichael Breckerが吹いていたので,その延長線上での演奏という感じだろう。この演奏は89年のライブとあるが,詳細のデータは記述がないが,この年にはほぼこのメンツでツアーをしていたようである。懐かしのLive under the Skyにも89年,Airtoを加えた編成で来日しており,その時の映像が残っているので,貼り付けておこう。ちなみに,89年のLive under the Skyには行ったような気もするのだが,このバンドは見た記憶はない。私が見たのはThe MeetingとSaxophone Workshopであったか?Roberta Flackも見たのか?だが,Tシャツは買った覚えがあるので,間違いなく行っているな(笑)。いずれにしても今にして思えば,89年のプログラムは例年よりは地味だったような気もするが,私がもう少し音楽の嗜好が変わって,マイキーもBreckerも今ぐらいに評価していたら,このバンドの演奏は見たいと思ったはずである。趣味って変わるもんだよなぁとつくづく思う。

そしてこのアルバムであるが,いやいや激しいものである。最後の"Original Rays"におけるBreckerのEWIによるカデンツァから,テナーによるテーマに移行する時の感覚なんて,今聞いてもぞくぞくする。非公式音源ではあるが,音もいいので持っていて損はない。これは媒体では結構高値がついているが,今やストリーミングでも聞けるし,ダウンロードも可能なのだから,そっちで聞いていれば十分ではあるが,89年という時期の彼らの演奏を切り取ったドキュメントとして相応に評価したい。星★★★★。

日本は89年と言えば,バブル経済爛熟期であったが,Live under the Skyというイベントがバブルが崩壊した92年に終焉を迎えたことを,今更ながら感慨深く思い出している私である。

Recorded Live in 1989

Personnel: Michael Brecker(ts, EWI), Mike Stern(g), Joey Calderazzo(p, key), Jeff Andrews(b), Adam Nussbaum(ds)

2018年1月16日 (火)

Ray Lamontagne:この素晴らしき歌唱に浸る。

"Live from Bonnaroo 2005" Ray Lamontagne(RCA)

Bonnaroo私がRay Lamontagneという人に出会ったのは"Till the Sun Turns Black"でのことであった。そこでの歌いっぷりに心底まいってしまい,彼のアルバムは全部買っている。だが,このブログに彼のアルバムについて書いたことがないのは,その後のアルバムが"Till the Sun Turns Black",あるいはデビュー作"Trouble"ほど,私に響いてこなかったということがある。まぁ,ちゃんと聞いていないからだという話もあるが,一聴して「これはっ!」って感じがなかったのである。

だが,今回,久しぶりにこのライブ盤を聞いて,やっぱり凄い歌い手であるという認識を新たにした。デビュー作"Trouble"のリリースが2004年だが,その翌年,米国のBonnaroo Music and Arts Festivalに出演した時の模様を収めたライブ音源である。このBonnarooは日本で言えば,フジ・ロック・フェスティバルのようなものと思えばいいだろうが,デビューの翌年,そのデビュー作からの曲を6曲収めたこのライブEPは,この人の曲の素晴らしさ,歌手としての訴求力を強く感じさせて素晴らしい。

一般的な感覚で言えば,フォークあるいはSSWの文脈で捉えられるべき演唱であるが,シンプルな演奏,歌唱でありながら,聴衆を惹きつける魅力は十分と思える。私がこの人に感じた魅力はこういうものだったのだなぁということを改めて認識させられた。こういう素晴らしい音楽はもっと取り出しやすいところに置いとけよっていう反省も込めて,星★★★★☆。このディスクそのものはなかなか見つかりにくいかもしれないが,ストリーミングでも聞けるので,ご関心のある方は是非お試しを。

Recorded Live at Bonnaroo Music and Arts Festival on June 10, 2005

Personnel: Ray Lamontagne(vo, g, hca), Chris Thomas(b), Larry Ciancia(ds)

2018年1月15日 (月)

Levon Helm & the RCO All Starsの発掘ライブ盤を聞く。

”Live at the Palladium NYC New Year's Eve 1977" Levon Helm & the RCO All Stars(Levon Helm Studios)

Palladium私は若い頃から渋いシンガー・ソングライター系の音楽を好んで聞いてきたが,当然,その流れでThe Bandあるいはウッドストック系の音楽に触れる機会も多かった。特に大学時代は,その手のレコードを買うために中古番屋に足しげく通ったことも懐かしい。帰省する機会にがればあったで,大阪や神戸のショップにも出没し,その筋のアルバムを探していたのだから,暇なものである(苦笑)。

そんな私がそうした音楽的な嗜好を示すのを加速させたアルバムに"Levon Helm & the RCO All Stars"があるが,本当にこれは好きだった(アルバムに関する記事はこちら)。彼らのライブ・アルバムが突然リリースされたのは2006年のことであるから,もはや10年以上前である。その後,Levon Helmが逝き,Donald "Duck" Dunnが逝ったのを考えると,時の流れを感じざるをえない。そもそもこの音源が録音されてから40年以上の月日が経過しているのだから,当たり前と言えば当たり前なのだが,若い頃からこういう音楽に魅力を感じていたって,どれだけ私は若年寄的だったのかと思ってしまうが,好きなものは好きなのだ。

このライブ音源は,アルバムのプロモーション的なところもあったと思うが,Booker T. Jones以外の主だったメンツが参加しているというのは結構凄いことである。当時のNew York Timesの記事では,この時のライブはかなり批判的に書かれている(ご関心のある方はこちらをどうぞ)が,このアルバムを聞く限り,そんなに酷い演奏だとは思えない。70年代後半という時代がこういうレビューを書かせるのかなぁなんて思うが,私のようにこの手の音楽が好きな人間にとっては何の問題もない。

この演奏が収録されたPalladiumというヴェニューは,Union Squareのそばにあったはずで,在米中に,私は何かの機会でここには一度だけ行ったことがあるはずだ。だが,何で行ったのかがどうしても思い出せない。まぁ,25年以上も前のことになれば,記憶が薄れるのも当然なのだが,何で行ったのかが気になって仕方がない(苦笑)。覚えているものは鮮明に覚えている(少なくとも自分でチケットを取ったものはほとんど忘れていないはず)ので,これは誰かに付き合って行ったってことかもしれない。

いずれにしても,これだけのメンツが揃ってライブをやっていて,その場にいられた人は間違いなく幸せだと思える発掘盤。星★★★★☆。この人たちのライブは本当に聞いてみたかったなぁ。

Recorded Live at the Palladium, NYC on December 31, 1977

Personnel: Levon Helm(ds, vo), Mac Rebennack "Dr. John"(p, key, vo), Paul Butterfield(hca, vo), Fred Carter, Jr.(g), Steve Cropper(g), Donald "Duck" Dunn(b), Howard Johnson(bs, tuba),  Tom Malone(tb), Lou Marini(sax), Alan Rubin(tp)

2018年1月14日 (日)

ジャズ系ブログ界で話題沸騰?今年最初の新譜は本田珠也のIctus Trio。

"Ictus" 本田珠也Ictus Trio(Song X Jazz)

Ictus今年になって全然新譜を買っていなかったのだが,これが今年初の新譜に関する記事ということになる。本作は私のお知り合いの皆さんが取り上げられており,これは聞いておいた方がいいだろうということでの購入である。

本田珠也に関しては以前"Planet X"についてこのブログに記事をアップしたことがある(記事はこちら)が,そこでの音楽とは全く異なるもの。違い過ぎやろと言ってしまえばその通りであるが,むしろこういう音楽が日本のミュージシャンによって作られたことに,ある種の驚きさえ感じた私である。ブログのお知り合いのkenさんは「初期ECMの味わいに実に近い」と評されているが,まさにそういう感じなのだ。

そもそもレパートリーの中心を構成するのがCarla Bleyの曲というのが素晴らしい試みであり,そこにスタンダード2曲と,ピアノの佐藤浩一のオリジナルを交えるという構成も,明確な狙いを感じる。Carla Bleyのオリジナルの持つ「甘い毒」みたいな部分と,アバンギャルドな部分を見事に表出しながら,そこにはさまれたスタンダードとオリジナルが何の違和感もなく混在しているのは結構凄いことではないか。スタンダードさえも,彼らの感覚で再構築されたものとなっており,こういう「筋の通った」アルバムは,ミュージシャンたちの強い意志を感じさせて,無条件に支持したくなる。

ただ,誤解を恐れずに言えば,これはある程度ジャズに接してきたリスナーには受け入れられても,これからジャズを聞いてみようというようなリスナーにはちょっと勧めにくいのも事実である。しかし,この心地よさというよりも,ヒリヒリするような緊張感をもたらしながら,美学も兼ね備えた音楽にはしびれてしまった私である。

繰り返しになるが,こうしたアルバムが日本から生まれたことを喜びたい。そして非常に生々しい音で録音されている点も評価して星★★★★★としてしまおう。新年早々縁起がいいわいと言いたくなってしまった。

Recorded on May 16, 2017

Personnel: 本田珠也(ds),佐藤浩一(p),須川崇志(b, cello)

 

2018年1月13日 (土)

保有していることすら忘れていたStefano Bollani盤(爆)。

"Les Fleurs Bleues" Stefano Bollani(Label Bleu)

BollaniCDの保有枚数が増えてくると,どうしてこのCDを保有しているのか全く思い出せないものも出てくる。だからいつも家人に「一生のうちにもう聞かないCDって結構あるんじゃないの?」と聞かれても否定できない。このCDもどういう風に買ったのか全く思い出せないのだが,たまたま棚から発見してプレイバックしてみた。よくよく見れば,リズムはScott ColleyにClarence Pennという魅力的なメンツ。へぇ~(笑)。だが,ソロ・ピアノでの演奏も多く,全面参加ではないので注意が必要である。

Stefano BollaniについてはECMのアルバムやら,Venusレーベルのアルバムを聞いてきたが,本作を聞いて思ったのは,うまいねぇということである。その一方で,多様な要素が詰め込まれた感じがして,Bollaniの本質はどこにあるのか実はよくわからないというのも事実であった。美的な要素,ダイナミズム,アブストラクトな感覚等が混在して,どうも落ち着かない。Juliette Grécoで知られる"Si Tu T'Imagines"では歌っちゃうし...。

私はStefano Bollaniについては,正直言って"Stone in the Water"とか"Mi Ritorni in Mente"のような美感,あるいは甘さを備えたアルバムが好みなので,この多様性はちょっとなぁって感じがする。一曲ごとのクォリティは結構高いので,何でもできてしまうStefano Bollaniってのはわかるのだが,これを聞くなら,私は上述の2枚を聞き続けた方がいいと思える作品。やっぱりどうして買ったのかよくわからん(苦笑)。ということで星★★★が精一杯。

Recorded on May 23,October 21 & 22, 2001

Personnel: Stefano Bollani(p), Scott Colley(b), Clarence Penn(ds)

2018年1月12日 (金)

Franck Avitabileって最近は何をやっているのだろうか?

"Lumières" Franck Avitabile(Les Vents de Vanves)

_20180106_2私がこのブログでFranck Avitabileの"Paris Sketches"を酷評したのももはやほぼ9年前に遡る(記事はこちら)。ライブ活動はしているようだが,それ以来,彼のリーダー作は途絶えているようだし,最近は何をやっているのかねぇと思ったところで,久々のプレイバックである。

前述の記事にも書いたが,昔の私の同僚が,個人的にもやり取りをされるぐらいのFranck Avitabileのファンで,このアルバムもその方からの頂きものである。ちなみにその方,Avitabile以外ではBarney Wilenのファンという,なかなかのフレンチ・ジャズのマニアであった(笑)。本作はAvitabileの正式デビュー前のもので,中古盤屋でも結構な高値がついている作品であるが,現在は本人のサイトでも手に入るようなので,稀少性はなくなったかもしれない。

だが,ここで聞かれる演奏を聞けば,非常に才能のあるピアニストだってことがよくわかる。私はフランスのジャズというのは若干癖が強いと感じることが多いのだが,ここで聞かれる演奏は極めてストレート・アヘッドなものであり,アドリブで展開されるFranck Avitabileのメロディ・センスも立派なものである。久しぶりに聞いてみて,これなら評価されて然るべきだと再認識したが,それにしては"Paris Sketches"はいけてなかったねぇ。あれが今のところの最新リーダー作というのは惜しい気がするが,やはりミュージシャンはブレてはいけないということの証ということにしよう。いずれにしても,本作はオリジナル曲も粒ぞろいで,なかなかいいと思う。星★★★★。

Recorded on March 22 and 23,1997

Personnel: Franck Avitabile(p),Louis Petruciani(b), Thomas Grimmonprez(ds)

2018年1月11日 (木)

リズムは同じでピアノが変わるとどうか?:ずっと聞いてなかったCarsten Dahl盤

"In Our Own Sweet Way" Carsten Dahl / Mads Vinding / Alex Riel (Storyville)

_20180104_2このメンツを見るだけで反応される方もいるだろう。私が昨年のベストの一枚に挙げた"Yesterdays"のピアノがEnrico PieranunziからCarsten Dahlに代わっただけで,リズムは同じMads VindingとAlex Rielである。ピアノが変わるだけでどんな違いが出るのかが興味深いところであるが,このトリオは3人とも同じデンマーク出身ということで,おそらくはリズム隊にとっても,Pieranunziよりも共演回数は多いだろうし,頻度も高いはずである。それはこのアルバムが2005年から2007年にかけて,Copenhagen Jazzhouseという同じヴェニューにおいて録音されていることからもうかがわれる。

デンマークには優秀なミュージシャンは多数いるが,このトリオはデンマークを代表するジャズ・ミュージシャンにより構成されたトリオということができるであろう,彼の地におけるオール・スターのバンドと言ってよいだろう。

Carsten Dahlについてはこのブログで,Arild Andersen,Jon Chtistensenとのトリオによる"Space Is the Place"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,あちらがECM的クールさを持つ演奏だったのに対し,こちらはどちらかと言えば暖かいサウンドと言ってよい。はるかに聞き心地がよく,そしてより多くの層に魅力的に響くはずである。それは本作がDahlのオリジナルで占められた"Space Is the Place"と異なり,トラッドの"Maria gennem torne går"を除いて,よく知られたジャズ・オリジナル,スタンダードを演奏しているからということもあるだろう。

いずれにしても,このアルバムはバラッドとスウィンガーをうまくブレンドさせて,結構楽しめるアルバムである。Enrico Pieranunziほどの抒情性は感じられないかもしれないが,相応に美的センスにも溢れ,寝かしておいたのはよくなかったなぁと反省した次第。まぁ埋もれていたのだから仕方がないが。私としては,やはりEnrico Pieranunziとの共演の方を高く評価するが,これはこれで聞いて損はないアルバム。星★★★★。

Recorded Live at Copenhagen Jazzhouse between 2005 and 2007

Personnel: Carsten Dahl(p), Mads Vinding(b), Alex Riel(ds)

2018年1月10日 (水)

Bobby Watson入りの永井隆雄4のライブ盤が楽しい。

"Live at the Someday" 永井隆雄 (Someday)

_20180104私にとってBobby Watsonについての記憶は結構鮮烈である。まずはその時の話から。私がNYCに在住していたのは1990年8月から1992年の6月という短い期間であったが,そんな期間においても,数多くのライブに接する機会があったことは私にとっては幸せなことだった。当時はニューポート・ジャズ・フェスティバルがJVCジャズ・フェスティバルと言われていたころで,91年のフェスにおけるライブにも何本か足を運んだ。当時のNY Timesの記事をWebで検索してみて,私がBobby Watsonを見たのは”Be-Bop: 40 & Younger"だったことがわかる。40歳以下の中堅,若手ミュージシャンによるセッション・ライブであったのだが,そこにいたのがBobby Watsonである。

NY Timesの記事を紐解いてみると,出演予定者としてはIra Coleman, Billy Drummond, Jon Faddis, James Genus, Christopher Hollyday, Christian McBride, John Marshall, Mulgrew Miller, Lewis Nash, Billy Pierce, Wallace Roney, Renee Rosnes, Bobby Watson, James Williams, Kenny Washington,そしてRoy Hargroveとある。ここに書いてあるメンツが全部出たかについては記憶が定かではないが,その中で最も強烈な印象を残したのがBobby Watsonだったことは間違いない事実なのである。サーキュラー・ブリージングも使った強烈なソロ・フレーズでは,同じアルトのChristopher Hollydayを圧倒し,格の違いを見せつけた。もちろん,Bobby Watsonは早くからJazz Messengersにも参加していたから,キャリアとしても違うって感じだったが,それにしても強烈だったのである。

そんなBobby Watsonであるが,本人のアルバムには正直言ってあまり面白いものがなく,この人は,特にライブの場において,共演者として場をさらう感じがいいのではないかと思っている。本作もそんな感じだと言ってよい。

歯科医との二足の草鞋を履く永井隆雄が,新大久保SomedayにBobby Watsonを迎えたこのライブは,ブローイング・セッション的と言ってしまえばその通りであるが,まぁFeaturingとは言いながらも,実際の主役はBobby Watsonであったということになるだろう。MCもBobby Watsonがやってるしねぇ。いずれにしても,ここに聞かれるBobby Watsonの歌心溢れるソロを聞いていて,91年夏のことを思い出してしまう私である。通常バラッドで演奏される"In a Sentimental Mood"でこれだけ盛り上げてしまうのがBobby Watsonらしい。そして,"E.T.A."の強烈なことよ。いずれにしても楽しいことこの上ないアルバムである。甘いの承知で星★★★★☆。

Recorded Live at Someday on November 29, 1988

Personnel: 永井隆雄(p),Bobby Watson(as), 鈴木良雄(b),磯見博(ds)

2018年1月 9日 (火)

正月休みに読んだ「屍人荘の殺人」だが...。

Photo「屍人荘の殺人」 今村昌弘(東京創元社)

正月休みを使って読んだのが,「このミス」ほかで絶賛されているこの本。気楽に読める本と思って年末に買ったものだが,う~む...。

本格ミステリーとしては論理の組み立てに矛盾はないので,そうした点に注目しながら読んでみると面白いのかもしれないが,この設定はさすがに...って感じであった(ネタバレになるので,詳しく書けない)。ある意味,この設定はギミックそのものであり,次作は一体どうするのよ?と言いたくなるストーリーである。まぁ,そこそこ面白くは読ませてもらったが,この訳のわからない設定を用いなければ,業界ランキングで評価されないのだとすれば,それは実は不幸なことではないかと思わされた一冊。全面否定はしないが,さすがにこれは無理があった。星★★★で十分だろう。

この手のランキングに頼るよりも,自分の審美眼を信じて本は買った方がいいねという事例。特に私の場合は「このミス」とは相性悪いねぇ(苦笑)。

2018年1月 8日 (月)

私にとってはジョンスコ前史って感じのライブ盤

"Live '81" John Scofield / Steve Swallow / Adam Nussbaum(Enja)

Shinola私がジョンスコの音楽に惹かれたのはGrammavisionレーベルにおける"Electric Outlet"や"Still Warm"の頃だと思う。それはMiles Davisのバンドへの参加や,Marc Johnsonの"Bass Desires"への参加の時期とも重なるが,それ以降の活躍ぶりについては,皆さんはよくご存じの通りのところである。だが,ジョンスコは70年代半ばぐらいから活動が活発化しており,日野皓正のバンドの一員として日本に招聘されたこともあった。そもそもジョンスコの名前を初めて聞いたのは日野の「ヒップ・シーガル」か「メイ・ダンス」あたりではなかったか。そして,初リーダー作は日本のトリオ・レーベルから,日野皓正を迎えてリリースされており,その後の活躍ぶりを知る我々にとっても,なかなか感慨深い事実である。

Out_like_a_lightそうは言いながら,私にとってはやはりGrammavisionレーベル以降のジョンスコこそが彼の真骨頂を発揮していると思うが,EnjaやAristaでのアルバムもそこに至る道のりとして聞いてきた私である。本日取り上げるアルバムはEnjaから出たライブ盤"Shinola"と"Out Like a Light"を2 in 1にしたお徳用アルバムだが,こういう編集方針なら大歓迎である。メンツもSteve SwallowとAdam Nussbaumというのはなかなかに魅力的。私にとってはジョンスコ前史とでも言うべき時期の演奏であるが,久しぶりに聞いてみるとかなり面白かった。

本作を聞いてみて,ジョンスコらしい変態的フレージングは既に出来上がっていると思えるが,それよりも,この自由度の高いフォーマットでの演奏には現在のWayne Krantzと重なる部分を感じてしまったのは意外である。もちろん,Krantzの方が自由度は高いし,ロック的なフィーリングもはるかに強い。そして,私が現在ではジョンスコよりWayne Krantzの音楽を好んでいることは間違いないが,私がGrammavisionレーベル前,そして,私がもう少し若い頃にこうした音楽にリアルタイムで接していたら,現在私がKrantzに感じるような魅力やらシンパシーを,もっと早い段階でジョンスコにも感じていたのではないかと思わされてしまった。それは偏に自由な感覚という点に同質性をおぼえてしまったからである。特にそういう感覚が強いのは,演奏時間は短いが完全にロックな"Shinola"だろう。

それ以外はそんなに激しいという感じはしないのだが,ジョンスコのウネウネ感はこの段階でよく出ている。例えば,デニチェンとやっているようなファンクとも異なりながら,やっぱりジョンスコのギターだと感じさせるところが個性ってやつだよねぇ。Milesがジョンスコを雇ったのもそうした点を評価してのことと思う。お得感も込みで半星オマケで星★★★★。

Recorded Live in Munich on December 12, 13 & 14, 1981

Personnel: John Scofield(g), Steve Swallow(b), Adam Nussbaum(ds)

2018年1月 7日 (日)

遅ればせながらAlessandro Galatiの"Cold Sand"を聞く。

"Cold Sand" Alessandro Galati (Atelier Sawano)

_20180102_2ブログのお知り合いであり,ジャズ界のスズニカ伯爵夫人ことSuzuckさんが,昨年のインスト部門のナンバー・ワンに挙げられていたアルバムである。となれば聞いておかねばなるまいということで,Apple Musicをチェックしたがない!ってことは購入する以外に手がない(爆)。ってことで,遅ればせながら入手したものである。

私はAlessandro Galatiについては"On a Sunny Day"についても,ブログのお知り合いの皆さんの情報に基づき,後付けで聞いて非常に素晴らしいアルバムだと思っていた(記事はこちら)。だからと言って,リアルタイムで追っかけるほどの思い入れもないという適当なリスナーである。だが,この人のアルバムの持つ「抒情的で静謐で美しい音楽」としての特性は,こうして聞いてみるとやはり捨て難い魅力を持っている。ひとくちに「抒情的で静謐で美しい音楽」と言ってしまえば,Enrico Pieranunziだってそういう感じがする部分もあるが,同じイタリア人でも奏でられる音楽はEnrico Pieranunziとはかなり違うと言ってよい。Pieranunziはもう少しビートを明確にする部分もあると思うが,Galatiの作品はよりアブストラクトな中から美感を浮かび上がらせるって感じだろうか。

前々から思っていることを改めて書いてしまえば,この人の音楽は美しさだけを追求するのではなく,一種独特な毒があると思えるのだ。「綺麗な花には棘がある」ではないが,この単なる耽美的な響きには陥らないところに,今回もこの人の音楽の特性を感じてしまった。毒を感じさせた後に,とろけるようなメロディ・ラインを紡ぎだされたら,それが快感になってしまうという感じだろうか。

この「毒」と「蜜」のバランスに多分多くの人はやられてしまう。そういう中毒性を感じさせるのがAlessandro Galatiの音楽なのではないかと,訳のわからないことを考えている私である。いずれにしても,Galatiのピアノ・タッチは基本的に美的であり,甘美さは最後に収められた"Uptown"でピークに達する(そこにもちょっとした毒は感じるが...)が,この芸風にはやっぱりやられてしまうなぁと思ってしまった。それに"Here, There and Everywhere"の配置が絶妙過ぎて参ってしまった私。星★★★★☆。

Recorded on September 13 & 14, 2016

Personnel: Alessandro Galati(p), Gabriele Evangelista(b), Stefano Tamborrino(ds)

2018年1月 6日 (土)

今年最初のライブはSimon Phillips Protocolだったのだが...。

_20180106今年最初のライブとしてブルーノート東京で行われたSimon Phillips Protocolを観に行ってきた。

今回は年始ということもあり,まだ世の中は休みを継続している人も多いらしく,客席は7割程度の入りって感じだったのは意外であった。私は私で仕事始めの後の会社の新年会(1時間程度のものでガッツリの飲み会ではない)に参加してからの参戦となったのだが,これがよくなかった。

Protocol_at_blue_note正直言って,演奏後半の記憶が飛んでいる。新しいギタリスト,Greg Howeを迎えての彼ららしいタイトな演奏を聞いていたにもかかわらず,私は睡魔に襲われていたようだ。だいたいが飲み過ぎッて話があって,いつもは見とがめられることもないステージの隠し撮りをスタッフに見つかってしまったのは,座席からSimon Phillipsの表情がうかがえず,真剣にアングルを考えていたからに相違ない。それによって,緊張感も切れたって感じで,眠りに落ちたということだろう。

ということで,今回は真っ当な感想を書けないのは実に情けないし,公演終了後のサイン会でも正直呂律が回っていなかったのは恥ずかしい限りであるが,Greg HoweにはAndy Timmonsよりよかったぜぃなんて軽口を叩いているのだから,相当な酔っ払いである。しかし,彼らの演奏はいつもながらのタイトで強力な演奏だったことは間違いない。

次回のライブは飲み会の後というシチュエーションは回避して,ちゃんと聞くことにしよう。新年早々ゆえの失敗ということで。それでもきっちり戦利品はゲットしたが,キーボードのOtmaro Ruizはサイン会の時に,自分はアルバムには入っていないけどいいのかなんて実に謙虚なことを言っていたが,そんなことを気にする私ではない。ということで,今回もバンド4人分のサインを頂いた。写真もほとんど撮れなかったが,数少ないものの一枚をアップしておこう。

いずれにしても,山火事で自宅が焼失し,米国ツアーの一部をキャンセルしていたSimon Phillipsの姿を拝めただけでもよしとすることにしよう。年初から大いに反省してる私である(爆)。

Live at ブルーノート東京 on January 5, 2018

Persoonel: Simon Phillips(ds), Greg Howe(g), Otmaro Ruiz(key), Ernest Tibbs(b)

«Petruciani入りのCharles Lloydのライブ盤を聞く。

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