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2017年おすすめ作

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2019年7月24日 (水)

ECMにおける廃盤アルバムのストリーミング:今日はArt Lande。

Art-lande ”Desert Marauders" Art Lande and Rubisa Patrol(ECM)

長い間CD化もされることなく,廃盤の憂き目に遭っていたECMのアルバムは結構ある訳だが,それらをストリーミング/ダウンロードのデジタル音源としてリリースするというのはある意味ECMにとっての英断だ。なぜなら,ECMは彼らの音楽はLPもしくはCDで聞くのが正しいとしているからだが,媒体化するにはセールス上のリスクも伴うということで,それらは基本的に売れないと判断されたか,あるいは何らかの事情で廃盤化していたものであろう。いずれにしても,ストリーミング/ダウンロード・オンリーとは言え,今までなかなか聞くことができなかった音源が簡単に聞けるようになるのはECMファンにとってはありがたいことである。

今日取り上げる本作はArt Lande and Rubisa Patrol名義の第2作だが,第1作はCDでもリリースされていたのに,なぜこちらはCD化されないのか不思議に思っていた。実は私はこのアルバム,中古で入手した国内盤LPで保有しているのだが,裏ジャケがかなりかびていることもあって,実家に置いたままになっているため,久しく音源として聞いたことはない。なので,この作品を聞くのは実に久しぶりのこととなった。

しかし,改めて聞き直してみて,これがなぜ廃盤になっていたのか不思議に思えるほど,なかなかいけているアルバムである。第1作からはドラマーが変わっているが,その他のメンツは不変。Art Landeの美しいピアノ・タッチに,Mark Ishamのラッパが鋭く切れ込むと思えば,リリカルなトーンも聞かせるというかたちで,ECMらしさという骨格はしっかりと形成されているアルバムである。

私は出張の道すがら,本作をストリーミングで聞いていたのだが,これってこんなによかったかなぁなんて実は思っていた。正直なところ,私もそこそこECMのアルバムは保有しているが,それらを常々聞いている訳ではないし,そんなに頻繁にプレイバックする訳でもない。なので,買ったはいいが,ほとんど聞いていないみたいなのも結構あると反省しているが,改めて保有音源を聞き直すことも必要だなぁと思わされたのであった。星★★★★。Art Landeは今でも現役で頑張っているが,今はどういう音楽をやっているのかもちょっと気になってきた(笑)。

いずれにしても,これからJAPOを含めて40枚のストリーミングを行うと宣言しているから,大いに楽しみになってきた。次はJack DeJohnetteでも聞くかねぇ。

Recorded in June 1977

Personnel: Art Lande(p), Mark Isham(tp, fl-h), Bill Douglass(b, fl), Kurt Wortman(ds)

2019年7月23日 (火)

突然リリースされたScott Hendersonの新作。

_20190721 "People Mover" Scott Henderson(自主制作盤)

前作"Vibe Station"がリリースされたのが約4年前のことであったが,あれはあれでScott Hendersonらしいカッコいいアルバムであったと思う。そんなScott Hendersonの新作が突然リリースされた。Scott Hendersonサイトに行けば,サイン入りCDも販売しているが,基本的にはダウンロード/ストリーミング中心でのリリースだと思われるが,私はCD Babyで媒体購入したもの。今回も前作同様,レコード会社の記載がないので,自主制作ってことだろうが,面白いのは前作でドラムスを叩いていたAdam Hertzがエンジニアリングを担当していることか。結構こういう家内制手工業的なノリがこの筋のミュージシャンには多いよなぁ。

今回のアルバムを聴いてみると,いつものScott Hendersonに比べると,イケイケ感はやや抑制されているように思える。考えてみれば,スコヘンも今年で65歳ってことを考えれば,いつまでもキレッキレのイケイケってのも無理って話もあるが,抑制はされていても,何じゃこれは?みたいな変拍子もあり,十分変態なので長年のファンも満足であろう。

ベースのRomain Labayeはフランス出身のベースで,Nguyên Lêのバンドにも参加しているようである。ドラムスのArchibald Ligonniereもフランス出身のようだが,スコヘンがなぜ彼らと組んだのかは不明だが,市井のミュージシャンはスコヘンに憧れもあるだろうし,リズム側からのアプローチがあったのかもしれない。ってことで,私にとっては馴染みのないリズム隊なのだが,実力は十分に感じられるから大したものだと思った。

残念ながら,スコヘンのようなミュージシャンが自主制作でしかアルバムをリリースできないのが現実であるが,それでもちゃんとクォリティを保ってアルバムをリリースし続けることは立派なことである。こうした活動を支えるのもファンの責任というものである(きっぱり)。ただ,“Vibe Station”との比較という意味においては星★★★★。

因みにScott Hendersonのサイトには10月アジア・ツアーという記述があるが,日本には来るのだろうか?と言うより是非また来日して欲しいものである。

Personnel: Scott Henderson(g), Romain Labaye(b), Archibald Ligonniere(ds), Scott Kinsey(e-perc)

2019年7月22日 (月)

Steve KuhnからのJoachim Kühnってなんでやねん(爆)。

_20190720-3 "Abstracts" Joachim Kühn(Label Bleu)

名前の響きが近いからってことで,ミュージシャンのラスト・ネームのアルファベット順に格納されている我が家のCDラックにおいてはSteve KuhnとJoachim Kühnはお隣さんなのである(笑)。ってことで,昨日取り上げたSteve Kuhn盤の近辺から取り出したのが本作。

Joachim Kühnは誰しもが認める硬派のミュージシャンであろう。彼の音楽を聞いていると「甘い」感覚は皆無であり,大体において非常にテンションが高い音楽が展開される。それはJenny-Clark~Humairとのトリオでもそうだし,ソロ・ピアノにおいてもそうである。なので,プレイバックしようとするにはそれ相応の覚悟が必要な場合もある。このアルバムなんかはアルバム・タイトルからして"Abstracts"と敷居が高いと思わせるが,中身はやっぱり硬派である。

ライナーには「ジャズ・ミュージシャンが50歳になったら,何をする?」なんて書いてあって,Joachim Kühnが選んだのが「(エンジニアの)Walter Quintusとスタジオに入って,何の制約もなしに,何も考えず,演奏し,忘我の境地に至る(”Trance")ことだ。」なんて書いている。面白いおっさんだ。

それでもって展開するのが完全即興のピアノな訳だが,聞いていて何となくCecil Taylorを想起させる響きと言うべきか。背筋を伸ばして対峙しなければならないとさえ思わせる音楽だが,美的な感覚も時折挿入するものの,全編を通してタイトル通りアブストラクトな演奏が続く。厳しい音楽であり,聞く者の感情移入は不要という感じの音である。なので,こういう音楽に抵抗がない人間にとっては全然問題ないが,受け入れがたいと感じる人にとっては何がいいのか全然わからんというものだろう。現代音楽のピアノも好きな私にとっては全然問題ないが,それでもこれは「厳しい」音楽だと思う。そういう意味で,50歳の誕生日の記念を兼ねてこんな演奏をしてしまうJoachim Kühnは,やはり変なおっさんである(爆)。星★★★☆。

Recorded on February 15 and August 8, 1993 and on March 15, 1994

Personnel: Joachim Kühn(p)

2019年7月21日 (日)

久しぶりに聞いたSteve Kuhn盤。

_20190720-2 "Watch What Happens" Steve Kuhn(MPS)

私はなんだかんだと言って,Steve Kuhnのアルバムは結構保有している。だが,Steve Kuhnに限った話ではないが,ストリーミングへの依存度が高くなるにつれ,CDをプレイバックする機会は減っている。なので,このアルバムを聞くのも久々であるが,メンツもPalle DaelssonとJon Christensenという,後のKeith Jarrettのヨーロピアン・クァルテットの二人が務めていることもすっかり失念していたのだから,私もいい加減なものである。自分で言うのもなんだが,昔は結構データ魔とも言われていたこともあった私である。しかし,Googleを筆頭とするネット依存が高まって,記憶している必要がなくなると,以前はおぼえていることが当たり前であったことすら記憶に留まらなくなるということが増えてしまった。決していいことだとは言えないよなぁと改めて思ってしまうが,これも時代の流れか。

それはさておきである。MPSレーベルにはコンベンショナルなものから,やや尖がった音楽まで,いろいろなタイプのミュージシャンが去来したが,Steve Kuhnのこのアルバムは丁度中間的な位置づけにあるような感じの音である。ラストに収められたCarla Bley作の"Ad Infinitum"のイントロこそやや不思議な響きを有するが,全編を通してSteve Kuhnらしい瑞々しいピアノ・タッチが聞ける。Steve Kuhnは"Trance"のようなアルバムによって,ともすれば「耽美的」みたいなイメージもあるものの,この人は私にとっては真っ当なジャズ・ピアニストという感じがする。もちろん,独自の美学を炸裂させるアルバムもあるが,多様なスタイルをこなしながらも,モダンな感覚のピアノを聞かせてくれる人と思う。

このアルバムもそういう感じで,収録時間も36分強なので,あっという間に時間が過ぎていく。ちょいとJon Christensenのバスドラが過剰のようにも思える瞬間もあるが,全体としてはそこそこよく出来たピアノ・トリオのアルバムと言ってよいだろう。私としてはもっと好きなSteve Kuhnのアルバムもあるので,星★★★★程度の評価となるものの,久しぶりに聞いてみて,なかなかいいアルバムだと思えた。まぁ,ヴォイスを入れちゃう辺りは時代を感じるが...(笑)。それもまたSteve Kuhnらしいってことにしておこう。

Recorded on July 4, 1968

Personnel: Steve Kuhn(p), Palle Danielsson(b), Jon Christensen(ds)

2019年7月20日 (土)

中古でゲットしたJay Hoggardのソロ・ライブ。

_20190720 "Solo Vibraphone" Jay Hoggard(India Navigation)

数日ぶりの音楽記事の投稿である。前にも書いたことがあるが,私はIndia Navigationレーベルのアルバムは見つければ,基本的に買うようにしている。だからと言って必死に追い掛けている訳ではないが,先日のCecil McBee盤に続いて購入したのがこのアルバム。タイトル通り,Jay Hoggardによるヴァイブ・ソロによるライブ盤である。

Jay Hoggardという人については,GRPレーベルからもアルバムを出しているが,India NavigationとGRPというそれこそ対極みたいなレーベルからリーダー作を出してしまうところがある意味ユニークである。そして,このアルバムはIndia Navigationとしてはフリー度,アグレッシブ度控えめなアルバムとなっている。まぁ,ヴァイブ・ソロなんだから,そんなに激しくなりようもないって気もするが(笑)。

そんなJay Hoggardは今でも活動を継続しているが,レーベルもContemporaryやらGramavisionやらMuseやらと渡り歩いていて,ある意味節操がない(笑)。というか,活動の軸足はどこに置いているのか想像もつかないというのが正直なところである。そんなJay Hoggardの初リーダー作が本作。

本作はクレジットによると,米国の公共ラジオ放送NPRの番組の公開録音によるものらしいが,ヴァイブ・ソロと言えば,Gary Burtonをついつい思い出してしまう中,Gary Burtonがバリバリの現役でやっている1970年代の後半に,初リーダー作としてそうした演奏スタイルに挑むのは結構チャレンジングであったのではないか。それでもヴァイブラフォンらしい美しい楽器の響きを聞かせて,これは結構いけていると思わせる。まぁ,それはIndia Navigationというレーベルから出ているということを考えなければって感じだが,想定していたよりも実に美的かつオーセンティックな響きってところだろう。例外は曲名からして刺激的な”May Those Who Love Apartheid Burn in Hell"で,この曲については,特に冒頭部分はほかの曲とは感触が異なる。それでも決して「ど」フリーではないが。

Jay-hoggard そして,LP時代のジャケを見れば,まぁこれは売れる訳ないわねぇと思わせるものであり,そこは実にIndia Navigationらしいって気もする。尚,このCDにはLPには含まれていなかった"Airmail Special"が追加されているが,やっぱりヴァイブラフォン奏者としてはLionel Hamptonの影響は確実に受けているのねぇってこともわかって,実に興味深かった一枚。星★★★★。

Recorded Live at the Public Theater on November 18, 1979

Personnel: Jay Hoggard(vib)

2019年7月19日 (金)

ブログ更新停滞中...。

事情を知っている人もいらっしゃるが,訳あってブログ更新が停滞中。一両日中の復活を図ります。

2019年7月15日 (月)

”Talk Is Cheap”は素晴らしいアルバムだが,この拡大盤はねぇ...。

Keith-richards-talk-is-cheap ”Talk Is Cheap (Deluxe Version)" Keith Richards(Mindless)

本作のオリジナル・ヴァージョンに関しては,Keith Richardsの初ソロ作にして掛け値なしの傑作という評価は今でも揺らぐものではない。しかし,この拡大盤は正直言って買う価値はなかったと言いたい。

このヴァージョンのキモはボーナス・ディスクに格納された曲群であるが,ジャム・セッションに毛の生えた程度のものをオマケにつけられてもねぇという感覚しかない。ディスカウント目的の併せ買いとして買ったものだったが,これは全くの失敗であった。オリジナル・アルバムには喜んで星★★★★★なのだが,この拡大盤には無星で十分だ。ファンの心理につけ込んだ悪徳商売の代表。私もバカげた買い物をしたものである。くだらない。実にくだらない。

2019年7月14日 (日)

ECM移籍前のMarcin Wasilewski Trio a.k.a. Simple Acoustic Trioのライブ盤。

_20190713 "XX Festival Intenacional de Jazz de Getxo Europar Jazzaldia 1996” Simple Acousitic Trio(Hilargi)

現在はECMレーベルを代表するピアニスト,ピアノ・トリオとなったと言っても過言ではないMarcin Wasilewski Trioであるが,その昔はSimple Acoustic Trioと名乗って活動していた。私もその時代まで遡ってアルバムを保有している訳ではないのだが,彼らのSimple Acoustic Trio名義のリーダー作として唯一保有しているのが,このライブ盤である。

今や,出すアルバム,参加するアルバムの全てが素晴らしいとさえ言いたくなるような彼らだが,このアルバムがレコーディングされた四半世紀近く前から既に完成度が高かったことを改めて認識させられる作品。こういうのを聞いてしまうと,彼らのアルバムは全部買うべきなのかと思ってしまうが,ストリーミングで聞けるから,まぁそこまでは行かない(苦笑)。それでもそう思わせるに十分な魅力に満ちた演奏ぶりである。

_20190713-2 ジャケ裏の作曲者表示が適当だったりといういい加減(Ornette ColemanをD. Collemanと書いたり,WasilewskiをVasilewskiとミスタイプしている)さはあるが,演奏はその限りではなく,彼ららしいリリシズムと陰影を感じさせるこうした演奏をライブでやっているというのが凄いことである。若い時(この時,Wasilewskiはまだ20歳か21歳である)から,無茶苦茶優秀なピアニストだったのねぇと感心せざるをえない。いやいや凄いわ。驚きも込めて星★★★★★としてしまおう。

それにしても,来日時にこのアルバムにもサインしてもらってよかったわぁ(相変わらずのミーハー)。

Recorded Live during the 20th Getxo International Jazz Festival

Personnel: Marcin Wasilewski(p),Salwomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

2019年7月13日 (土)

Fred Herschとビッグバンドの共演やいかに。

_20190710 "Begin Again" Fred Hersch & the WDR Big Band (Palmetto)

私はFred Herschのファンである。それもかなりのと言ってよい。だからと言って,彼が参加しているアルバムを全部買おうとは思っていないが,基本的にはリーダー・アルバムは買う。なので,本作のリリースがアナウンスされた時も買うことは決めていた。しかし,その一方で一抹の不安も抱えていたことも事実である。Fred Herschのピアノ・スタイルはリリカルであるから,それがビッグバンドと共演するとどうなるのか?彼の繊細なタッチが活かされるのかという点が非常に気になっていたからだ。そもそも私はビッグバンドをあまり聞かないから,余計にそう思ってしまうのだ。正直言ってしまえば,Fred Herschのピアノを聞きたいならば,ソロかトリオ,あるいは一部のデュオ音源を聞いていればいいというのが実感だけに,ビッグバンドか~と思ってしまった。それはアレンジャーがあのVince Mendozaだからと言っても,やっぱり不安であった。そしてこのアルバムを聞いてみて思ったことを書いてみたい。

結論から言えば,これは悪くない。Vince MendozaもFred Herschのピアノを意識して,非常にソフトなアレンジを行っている。ある意味,昔のGil Evansのアレンジ,"Miles Ahead"辺りのサウンドのようにも響くと言えばいいだろうか。そして,Fred Herschのオリジナルの曲の美しさもちゃんと活かしている。そうした意味では成功していると言ってよいだろう。だが,ビッグバンドゆえに,ソロイストはFred Herschだけという訳にはいかない。もちろん,主役はFred Herschであることには間違いないのだが,露出は当然のことながら控えめになる。そこをどう考えるかによって,評価そのものにも変化が生じることは仕方がないだろう。

それでも,Fred Herschの持つ音楽の美学,繊細さは十分に残っていて,何度か聞いているうちに最初に感じたような違和感が薄れていくから不思議である。なので,自分としても,このアルバムは一回聞いただけで直感的に判断してはいかんという感 じになってきた。聞くほどにそのよさを感じるようになるというところか。Hersch以外のソロイストも,アンサンブルも善戦していて,このビッグバンドの間口の広さなり,実力なりも感じられる。ということで,私にとってはFred Herschを聞くならいの一番にこれってことにはならないが,昨今のFred Herschの創造力の高まりも評価したくなり,甘いとは思いつつ半星オマケして星★★★★☆としてしまおう。

Recorded between January 28 and February 4, 2019

Personnel: Fred Hersch(p), Vince Mendoza(arr, cond), The WDR Big Band: Johan Horlen(as), Karolina Strassmayer(as), Oliver Peters(ts), Paul Heller(ts), Jens Neufang(bs), Ludwig Nuss(tb), Andrea Andreoli(tb), Andy Hunter(tb), Mattis Cederberg(b-tb,tuba), Wim Both(tp), Rob Bruynen(tp), Andy Hederer(tp), Ruud Breuls(tp), Paul Shigihara(g), John Goldsby(b), Hans Dekker(ds) 

2019年7月11日 (木)

João Gilbertoの訃報からのボサ・ノヴァ続きで,今日はVerveのコンピレーション。

_20190708-2”Novabossa: Red Hot on Verve" Various Artists (Verve)

これを取り上げる前によりコンテンポラリーなミュージシャンによる"Red Hot + Rio"を取り上げてもよかったのだが,正調ボサ・ノヴァを収めたこっちを聞いていた。

このRed HotシリーズはAids撲滅を進めるためのNPOであるRed Hot Organizationが,その活動を推進するためにリリースしているコンピレーション群であるが,本作は”Red Hot + Rio"の番外編として制作されたものと思われる。そこに収められたのはインタールードを含めたVerve音源中心の全23曲のボサ・ノヴァ,サンバの名曲の数々である。

結局はコンピレーションなので,時代の変化とともに,必ずしもボサ・ノヴァ,サンバと言えない音も含まれてはいるので評価は微妙になる訳だが,非常に気持ちよく聞けるアルバムである。そうは言っても,Verve音源中心だけにやっぱりStan Getzの演奏が増えてしまうのだが,それでもRoberto MenescalやらEdu LoboやらTamba Trioやらとおいしいところは押さえてあるので,気楽にボサ・ノヴァ,あるいはブラジル音楽を聞きたいと思ったらこういうのもいいかもねぇ。こういう機会でもないとなかなか取り出さないアルバムだが,それもJoãoのおかげってことで。

2019年7月10日 (水)

今日はJoão GilbertoからのBebel Gilberto。

_20190708 "Tanto Tempo" Bebel Gilberto(Ziriguiboom)

今日はJoão Gilbertoの娘のBebel Gilbertoである。そして母親は昨日取り上げたStan Getzとのアルバムでヴォーカルを担当していたHeloisa (Miúcha) Buarque de Hollandaなので,血筋のよさは保証付きみたいなものだ。WikipediaにはBebelが両親から言われたこととして, "He taught me to be a perfectionist. But my mother taught me how to lose it."なんて書いてあるが,なるほどねぇって感じである。そうやってバランスを保つのかってことだ。写真を見ると,顔は母親のDNAが強いようだが(笑)。

このアルバム,リリースされたのは2000年のことだが,それ以来,このアルバム,結構な売れ行きを示しているらしい。私がこのアルバムを購入する気になった記憶が曖昧だが,やはりJoão Gilbertoの娘がどういう音楽をやるのかに感心があったからだろう。

そして,本作はボサノヴァにエレクトロニカをスパイスとして使ったような実にこじゃれた音楽である。まぁ,これなら一定のリスナーに受けるのもわかるし,欧米でのセールスが好調だったのは,特に米国においては,所謂スムーズ・ジャズ系のリスナーにも受け入れられたってことではないかと思える。本質的にはボサノヴァが根底にあるので,穏やかさが感じられる音楽だが,それに加えてBebel Gilbertoの声がかなり魅力的。正直なところ,私はボサノヴァはシンプルに演奏して欲しいクチなので,エレクトロニカあるいはプログラミングはもう少し控えめにして欲しいと思える"Alguem"のような曲もあるが,それでもまぁ邪魔ってほどではない。

ある意味,イージー・リスニング的にも響く部分もあるが,どういうシーンのBGMにもフィットしそうな音楽である。星★★★★。

尚,Personnelは文字が小さくて老眼にはきついので省略するが,Celso Fonsecaのギターだけをバックに歌う"Samba e Amor"なんて実に素敵なものである。そのほかにもJoão DonatoやCarlinhos Brown等が華を添えている。

2019年7月 9日 (火)

João Gilbertoを偲んで,改めてStan Getzとの共演作を聞く。

_20190707 "The Best of Two Worlds" Stan Getz Featuring João Gilberto(Columbia)

João Gilbertoの訃報を受けて,私がいの一番に聞いたのは38曲入りの「ジョアン・ジルベルトの伝説」であったが,もちろんそれだけでは終われない。と言いつつ,私はJoão Gilbertoのリーダー・アルバムは実はそれしか保有していないのだから,大したことは言えない。ということで,手許にある中で,あまり聞くチャンスは多いとは言えないColumbiaレーベルにおけるリユニオン・アルバムを取り出した。

Stan GetzとJoão Gilbertoは”Getz/Gilberto"の録音時もめたという逸話も残っているが,このアルバムは"The Best of Two Worlds"と大きく出て,しかもJoão Gilbertoはジャケでは笑顔で写っている。まぁ,お仕事でやりましたってことなのかもしれないが,このアルバム録音の翌年にはKeystone Korner出演時の録音が後に発掘され,このブログでも取り上げた(記事はこちら)。なので,実のところ,それほど無茶苦茶な不仲ではなかったのかもしれないが,商売っ気の強いStan Getzに,João Gilbertoが何らかの反感を抱いていたとしても不思議はない。そうした意味で,このリユニオン・アルバムについては,いつまで経っても"Getz/Gilberto"と比較されてあまりいい評判は聞いたことがないのだが,今回,改めて聞いてみて,実はそこそこよく出来たアルバムだと思えた。

まぁ,明らかにGetzが吹き過ぎな部分もあるところは,プロデューサーがGetz自身なのだから仕方ないとしても,その辺にブラジル音楽好きはネガティブな反応を示すことは十分考えられるが,私としては十分許容範囲ってところである。ただ,"Just One of Those Things"とかはJoão Gilbertoにはちょっと不釣り合いだろうと思えてしまう。そうした瑕疵はあったとしても,それでもこの二人の共演を聞けるというのは,先述のライブ盤同様貴重なことだと思えば文句も出ない。ってことで,星★★★★は十分与えらえると思う。

ちなみに,ここで歌っているのは当時のJoão Gilbertoの奥方のHeloisa (Miúcha) Buarque de Hollanda。そういうところも"Getz/Gilberto"にAstrad Gilbertoを出してきたのと同趣向ってのもGetzらしいねぇ。

Recorded on May 21, 1975

Personnel: Stan Getz(ts), João Gilberto(g, vo, perc), Heloisa (Miúcha) Buarque de Hollanda(vo), Al Dailey(p), Oscar Castro-Neves(g), Clint Houston(b), Steve Swallow(b), Billy Hart(ds), Grady Tate(ds), Airto Moreira(perc), Reuben Bassini(perc), Ray Armando(perc), Sonny Carr(perc)

2019年7月 8日 (月)

追悼,João Gilberto。

Joao-gilberto

João Gilbertoが亡くなった。言うまでもなく,ボサ・ノヴァの開祖の一人として,多大な影響力を持つ人だった。そして,"Getz/Gilberto"により,ブラジル音楽とジャズの橋渡しをしたことでもその功績は多大。更に彼がいなければ"Saudade"という表現がこれほど世に認知されることもなかったのではないかとも言いたくなる。まさに巨星墜つとはこのことである。世界はまた大きな宝を失った。

R.I.P.

2019年7月 7日 (日)

1曲目冒頭の響きに驚いてそこでやめてはいけない”Wishes”

_20190706-2 "Wishes" Kochi(East Wind)

先日,East Windレーベルの第1作,その名も"East Wind"のアルバムについて,このブログに書いた。その後,NYに渡った菊地雅章と日野皓正が組んで吹き込んだアルバムが本作である。グループ名のKochiは「東風」であるから,East Windやんけ!って話もあるが,敢えてKochiとした理由は謎である。

それはさておきであるが,このアルバムの冒頭には多くのリスナーが驚き,戸惑うのではないか。まさに雅楽の響きを模したものであり,菊地は琵琶まで弾いてしまうし,更にシンセで笙みたいな音を出しているのだから,これはやっぱり驚く。しかし,ここで挫折しては,このアルバムの本質に触れることなく終わってしまうことは言うまでもない。あくまでも雅楽のような響きは導入部に過ぎず,その後に来るファンク・フレイヴァーこそが本作の魅力である。バンドのメンバーからしても,Anthony Jacksonを除けば,Miles Davisのバンド関係者が集まっていて,Milesの隠遁がなければ,こういう音楽をやっていたのかもしれないと思ってもよさそうな音である。2曲目の"Caribbean Blue"を聞いていると,後の「ススト」のプロトタイプと呼びたくなるような音である。

"East Wind"とは全然タイプが違うが,70年代中盤にこのようなアルバムが作られていたということは結構凄いことではあるが,やはりMiles Davisの影響下にある音楽という評価も成り立つだろう。主役はあくまでも菊地と日野であるが,助演したメンバーもそれぞれに聞きどころありであり,特にDave Liebmanのフルートにはしびれるねぇ。星★★★★☆。

Recorded on August 11, 12 & 14,1976

Personnel: 菊地雅章(p, el-p, org, synth, 琵琶),日野皓正(tp, perc), Steve Grossman(ts, ss), Dave Liebman(ss, fl), Reggie Lucas(g), Anthony Jackson(b), Al Foster(ds), Mtume(perc)

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