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2016年おすすめ作

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2018年12月19日 (水)

Antonio Sanchez同様に,怒りを音楽へと昇華させたWayne Escoffery。

"Vortex" Wayne Escoffery(Sunnyside)

_20181218このアルバムを新譜と呼ぶには,リリースから時間が経ち過ぎているが,まぁ今年のリリースだから許してもらうことにしょう。正直言って,このアルバム,ほかのアルバムとの抱き合わせで購入したものなのだが,これを見逃していた(聞き逃していた)ことは実にもったいないことだったと反省した一枚である。

Wayne EscofferyはTom Harrellのバンドで,その名前が知られるようになったというのが妥当なところだろうが,昨今はリーダーとしてもアルバムをリリースしていて,私も彼のアルバムは結構買っているし,Cotton Clubでのライブも見に行った(その時の記事はこちら)。このアルバムはその時のライブとベース以外は同じメンツで吹き込まれているが,メンツゆえにライブでも激しさを打ち出した彼らだったが,本作の演奏も相当の熱量で迫ってくる。それはDavid KikoskiにRalph Petersonという剛腕を従えているということもあるが,この熱量を生んでいるのがWayne Escofferyの差別への怒りである。そうした観点ではAntonio Sanchezの新作同様に,この音楽を生み出すモチベーションは怒りなのである。

だが,そうした怒りは露骨に表現されるというよりも,非常に活力のあるジャズ・アルバムとして出来上がったところがよい。こういう熱い演奏を聞いていると,やっぱりジャズにはこういうエネルギーが必要な時もあるよなぁと思う。美的なジャズもまたよしではあるが,たまに聞くフリー・ジャズや,こうしたタイプの演奏を聞いていると,ジャズという音楽の懐の深さを改めて感じた私である。正直言ってこのジャケは購買意欲をそそるものではないが,それでもこの音楽を聞いたら,その魅力はすぐにわかるってところである。

なので,私も結構贔屓にしているJeremy Peltの1曲でのゲスト参加が不要にさえ思えてしまうという具合なのだ,いずれにしても,Wayne Escofferyの実力,そしてサイドマンの力量も十分に感じられる力作。もっと早く聞いておくべきであった。星★★★★☆。

Recorded on March 4, 2016 and March 7, 2017

Personnel: Wayne Escoffery(ts, ss), David Kikoski(p), Ugonna Okegwo(b), Ralph Perterson, Jr.(ds), Jeremy Pelt(tp), Kush Abadey(ds), Jaquelene Acevedo(perc)

2018年12月17日 (月)

出張中に見た映画('18/12編)

Movies_2018_12

今回の欧州出張は,結構体力的にもきつく,いつもよりは控えめな本数になってしまったが,それは正直言って,見たいと思える映画が少なったからだということもできる。

実のところ,今回見たのは次の5本なのだが,どうもなぁという感覚が強い。JALももう少し機内エンタテインメントの映画を考えた方がいいと思った出張であった。

  1. 「ザ・プレデター(The Predator)」
  2. 「スカイスクレイパー(Skyscraper)」
  3. 「日日是好日」
  4. 「ザ・スクエア 思いやりの聖域(The Square)」
  5. 「マイル 22(Mile 22)」

実は期待していたのはカンヌでパルム・ドールを取った「ザ・スクエア 思いやりの聖域」だったのだが,なんでこの映画が評価されるのか,そして2時間半以上の尺が必要なのか全く理解できなかった私である。むしろ,なんてことはないストーリーなのだが,ほのぼのしてしまう「日日是好日」の方がはるかに真っ当な映画に思えた私であった。

そのほかの3本は,チョイスした自分を呪いたくなるようなしょうもない映画。「スカイスクレイパー」なんて,「タワーリング・インフェルノ」をはるかにくだらなくした映画に過ぎないし,「ザ・プレデター」なんて,オリジナルの「プレデター」の足元にも及ばない愚作であった。「マイル22」は95分間ドンパチを続けるというこれまた噴飯ものの映画であった。そもそもそんな簡単にハッキングってできるんかい?って思ってしまったが。いずれにしても,選択肢が少ないんだから仕方ないって話もあるが,今回はまじでがっくりきた。

ってことで,一番面白く見られたのは「日日是好日」。時の流れが女優の見た目に反映されていないのはイマイチ感もあるが,樹木希林に免じてよしとしよう。それにしても多部未華子は可愛くなったねぇ(笑)。

2018年12月16日 (日)

帰国前のロンドンにて。

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スイスからロンドンに移動し,ひと仕事こなして帰国の途についた私である。

ロンドンからの帰国便は夜出発なので,土曜日の昼はフリーってことで,久々にTate Modernに行ってきた。

ロンドンは悪天候で,アプローチのあまりよくないTate Modern訪問は結構きつい道のりであった。まぁ,それでも絵画,彫刻,インスタレーションと強烈なコレクションは壮観であった。

そして実に面白かったのがChristian Marclayの”The Clock“。これって映像のコラージュなのだが,実際の時刻とシンクロした映像が映されるのだ。私が見ていたのは14時過ぎだったが,”Hook“とか,”The Taking of Pelham 123“とか,”3:10 to Yuma“が組み合わされて,例えば14:17ならそういう映像が組み合わされるというユニークな作品であった。全部見るには24時間って凄いよねぇ。

ってことでTate Modernの造形がわかる写真と”The Clock“のポスターをアップしておこう。それにしても寒かった。

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2018年12月14日 (金)

バーゼルの風情

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スイスのバーゼルでの仕事が終わり,これからロンドンに移動し,もう一仕事である。

バーゼルという街は初めて来たが,国際決済銀行の本部があるとは思えない,こじんまりとした街であった。ある意味,非常に落ち着いた雰囲気があって,きっと住みやすいところだと思わせる。

空港に着いた時は,スイス側とドイツ/フランス側の出口が分かれていることに気づかず,難儀してしまった。

いずれにしても,仕事で来ているので,街の様子を見聞する余裕はなかったが,それでも昨日のランチタイムに会場を抜け出し,1時間ほど散歩できてよかった。ってことで,写真はライン川を渡って向かった大聖堂への道すがら。公開時間ではなかったので,聖堂内に入れなかったのはつくづく残念。それにしても,写真からも想像できるような底冷えのする街を歩くのも風情があったってことで…。

2018年12月12日 (水)

この記事がアップされる頃には...

前にも同じような記事をアップしたことがあるが,またも海外出張である。今年は本当に海外が多くて,師走になってまで行くことになることになるとは思わなかった。

それでもって,今回の出張先はスイスのバーゼル。スイスに仕事で行くのはジュネーヴ以来,2回目だなぁ。ということで,バーゼルの街並みの写真をアップしておくが,仕事での短期の滞在ゆえ,美しい街並みを愛でる余裕はないかなぁ。それでも大聖堂だけは是非行ってみたいものだ。

それにしても,この観覧車は...。私から言わせれば,町の景観を台無しにしているように思うが...。

Basel

2018年12月11日 (火)

JLF解散後にリリースしたJeff Lorberのソロ・アルバム第1弾。

"It's a Fact" Jeff Lorber(Arista)

_20181208_2なんだかんだ言ってJeff Lorberの音楽が好きな私であるが,いつも書いているように,そこに感じるのは「中庸の美学」なのだ。突出したことはやらないが,安定感のあるフュージョンを聞きたければ,私はJeff Lorber,特にJeff Lorber Fusion(JLF)のアルバムを聞けばいいと思っている。だからと言って,何でもいいという訳ではないし,私もJeff Lorberのアルバムをすべては保有していないから,大したことは言えた筋合いではない。しかしである。やはりこの人の音楽は一般的なリスナーに対しても十分な訴求力を持つものだろうと思っている。どういう場にでも合ってしまうってところだろうか。

そんなJeff Lorberが第1期(?)のJLFを解散して,ソロ名義でリリースした第1作が本作。振り返ってみれば,1982年のリリースなので,既に35年以上前なのねぇ。正直言って私がこの人の音楽に目覚めたのは,ずっと後のことであり,リアルタイムでは聞いていない。それはJLFについても同じである。ジャズ喫茶でプレイバックされているのは聞いたことがあるかもしれないが,若い頃には彼らの音楽の魅力に気づく余裕もなかったかもしれないなぁと思ってしまう。

このアルバムも購入したのは後付けで,しかも中古でのゲットではなかったかと記憶しているが,JLFからよりポップな感覚を強めたってところであろう。まだこの頃はKenny GがKenny Gorelickで参加しているのも懐かしいが,JLFのタイトさよりも,よりライトな感覚が強くなっているところをどう評価するかってところではないかと思う。私としては,タイトさが残る"Full Moon"やら"Always There"のような曲が好みではあるが,後のスムーズ・ジャズなるカテゴリーの萌芽と言ってもよいような演奏。それを時代を先取りしていたとまで言おうというつもりはないが,それがJeff Lorberのプロデューサーとしての嗅覚につながっているのかもしれないなんて思ってしまった。

でも正直言って,私はJeff Lorber名義のアルバムより,JLFのアルバムの方にはるかにシンパシーを感じてしまうのも事実なのだ。ってことで,ちょっと軽いなぁってこともあり,星★★★ぐらいにしておこう。評価はその程度だが,楽しんで聞けるのは間違いない。

Personnel: Jeff Lorber(p, key, g), Marlon McClain(g), Nathan East(b), John Robinson(ds), Greg Walker(vo), Arnold McCuller(vo), Sylvia St. John(vo), Lynne Davis(vo), Kenny Gorelick(ts, ss, fl), Paulinho Da Costa(perc), Tom Browne(tp, fl-h), Pat Kelly(g), Pete Chrstrieb(horn)

2018年12月10日 (月)

またもユーミン。今日は「悲しいほどお天気」。

「悲しいほどお天気」 松任谷由実(東芝EMI)

_2018120812月に入り,新譜もそうは入ってこないってことで,なぜかユーミンをプレイバックする機会が増えているのは,単なる気まぐれなのだが,今日は「悲しいほどお天気」である。

このアルバムは結構地味な感じがするのだが,ユーミンのファンの中ではこのアルバムが結構好きな人がいるのではないか?ライブでも定番のように演奏されていた(と言っても,彼女のライブなんて何年も見たことはないので,現在はどうかは知る由もないが...)"DESTINY"のような人気曲もあるが,印象的な佳曲の多いアルバムだと思っている。そして,各々の曲に英語タイトルがついているのが面白いが,ちゃんと歌詞と連動したタイトルになっていて,なるほどねぇと思わせる。

  1. ジャコビニ彗星の夜(The Story of Giacobini's Comet)
  2. 影になって(We're All Free)
  3. 緑の町に舞い降りて(Ode of Morioka)
  4. DESTINY
  5. 丘の上の光(Silhouetts)
  6. 悲しいほどお天気(The Gallery in My Heart)
  7. 気ままな朝帰り(As I'm Alone)
  8. 水平線にグレナディン(Horizon & Grenadine)
  9. 78
  10. さまよいの果て波は寄せる(The Ocean And I)

冒頭の「ジャコビニ彗星の夜」からして,しっとりしたいい曲だが,2曲目の「影になって」なんて,メロウ・ソウルっぽいアレンジも決まっていて,心地よいのだ。そして爽やかな感覚の「緑の町に舞い降りて」の後に来る"DESTINY"の曲調は,ある意味このアルバムの中では浮いている。このディスコ的な感じを持つベース・ラインも現れるノリのよいバックの演奏に対して,歌われる歌詞の暗いことよ(笑)。だって,「冷たくされていつかは見返すつもりだった それからどこへ行くにも着かざってたのに どうしてなの 今日に限って やすいサンダルをはいてた」って凄い歌詞だよねぇ。このギャップが強烈なのだ。それに続く「丘の上の光」との曲調の落差も大きい。

LP時代ならばB面に移ってからの構成もA面と似ている感じがする。A面の"DESTINY"に相当するのが"78"ってことになるが,上田正樹がアレンジを担当したバックのコーラスが,ほかの曲との違いを際立たせている。タイトル・トラック「悲しいほどお天気」というしっとりした佳曲で始まり,「気ままな朝帰り」に聞かれる「家なんか出てしまおう」の部分のフレージングや歌いっぷりなんて,おぉっ,ユーミン的って思わせるのも微笑ましい。「水平線にグレナディン」なんて高水健司のベース・ソロが入るというのも珍しいが,「海を見ていた午後」を彷彿とさせる。そこへタロットをテーマにした"78"は"DESTINY"同様の異質感があるのだ。アルバムの構成にメリハリをつけるという点では,まさにメリハリがついているのだが,メリハリつき過ぎって感じもする。そして最後が「さまよいの果て波は寄せる」だもんなぁ。Eaglesの"Hotel Claifornia"で言えば,"Last Resort"的なエンディングって感じ。

これも実は久しぶりに聞いたのだが,それでもやっぱり好きだなぁ。

2018年12月 9日 (日)

Art Ensemble of Chicagoのボックスが届く。いつ聞くねん?(苦笑)

"The Art Ensemble of Chicago and Associated Ensembles" Various Artists(ECM)

Aec_and_associated_ensembles一部の好き者の間(爆)で話題のボックス・セットである。ECMにおけるArt Ensemble of Chicago(AEC)のアルバムと,AECのメンバーが参加したアルバムを集成したものであり,18アルバム,21枚組のセットである。正直なところ,これを全部聞くのは大変だなぁと思いつつ,私はECM好きの割に,ここに入っているかなりの数のアルバムを保有していなかったので,丁度ええわということで購入である。

なぜ,かなりの数を私が保有していないか?それは不勉強ゆえにAECの音楽の魅力がよくわかっていなかったということが一番大きい。そうは言いながら,AECが山下洋輔と共演した"First Time"やら,Brigitte Fontaineとやった「ラジオのように」とかも聞いているし,Lester Bowieのリーダー及び参加アルバムは比較的持っている。結局のところ,AEC単独での活動,あるいはそこで展開される音楽にやや苦手感があったのかもしれないなぁと思っている。ということで,今日は18アルバム中"I"となっている"Nice Guys"をプレイバックしている。

"Nice Guys" The Art Ensemble of Chicago(ECM)

Nice_guys思えば,私はこのアルバムを,昔LPで保有していた。多分買ったのは10代の後半だったと思うが,その頃には全くこういう音楽を理解できていなかったというのは上述の通りである。だから売り払うのも早かった。その後,私はどっぷりとECMというレーベルにはまっていくわけだが,それでもAECはフォローの対象からははずれていたのである。

ということなので,このアルバムを聞いたのは何十年ぶりってことになってしまうが,やっぱり変わっているというか,この人たちにしかできない音楽だなぁって気がする。完全なフリーではなく,それこそ「アンサンブル」として演じられるところが,この人たちの面白さなのかなぁと改めて感じた私である。でも,最後に収められた"Dreaming of the Master"とかの路線は非常によかった。多分,以前はB面のこの曲まで行きつかなったんだろうなぁ(笑)。星★★★★。

Recorded in May 1978

Personnel: Lester Bowie(tp, celeste, b-ds), Joseph Jerman(ts, ss, as, sopranino, cl, fl, conch shell, vib, gongs, congas, whistles, vo), Roscoe Mithcell(as, ts, ss, piccolo, fl, oboe, cl, gongs), Malachi Favors Maghostut(b, perc, melodica), Famoudou Don Moye(ds, bells, bike horns, congas, tympani, marimba, bongos, chimes, conch shells\, whistle, wood blocks, cowbells)

2018年12月 8日 (土)

随分と印象が変わってきた平野啓一郎:「ある男」

「ある男」 平野啓一郎(文藝春秋)

Photo平野啓一郎が「日蝕」でデビューした時,なんと敷居の高い小説だろうと思ったのも随分前のことだが,その後,「決壊」のようなキリキリするような話を書いたかと思えば,「マチネの終わりに」のような恋愛小説を手掛けて,私の中で,この人の印象は随分と変わってきた。その平野啓一郎が「マチネの終わりに」に次いで発表した小説を先日読み終えた。

一言で言えば,随分この人の書く小説はわかりやすくなったと思う。そして,この本,非常に面白く読める。「愛したはずの夫は、まったくの別人であった。」というキャッチコピー通りの展開なのだが,そこに挿入される主人公である弁護士,城戸の夫婦間のやり取りや,その他の登場人物の造形が一つ一つ考えさせられるところがある。やや,ストーリーの展開に,そんなことあるか?と思わせる部分もあるが,そこは話の面白さに目をつぶることとしよう。

ネット上では,主人公の城戸が,在日三世から帰化をしたというプロファイルに文句をつけているネトウヨみたいな連中もいるが,そうした設定がなければ,ヘイト・スピーチに関するくだりも全く意味をなさなくなる。そもそも作家が自身の思想や考え方を小説に投影して何の問題があるのかと思ってしまうが,そうした社会の不寛容さが,この小説を執筆する際のボトムラインにあったのではないかと思ってしまう。

いずれにしても,ストーリーの展開についついページをめくらされ,そして,読後感はある種の清涼感を覚えさせるのは「マチネの終わりに」同様である。感情移入の点では,私にとっては「マチネの終わりに」の方が好きだが,この小説もよくできていると思わせてくれて,満足感のあるものであった。星★★★★☆。結局,この人の小説は,私にフィットするってことかもしれないなぁ。

«久しぶりにユーミンでも。

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